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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】接合型半導体ウェーハの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/20 20100101AFI20231017BHJP
   H01L 21/02 20060101ALI20231017BHJP
   H01L 21/20 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
H01L33/20
H01L21/02 B
H01L21/20
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021170297
(22)【出願日】2021-10-18
(65)【公開番号】P2023060611
(43)【公開日】2023-04-28
【審査請求日】2023-05-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】石崎 順也
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-100120(JP,A)
【文献】国際公開第2021/024768(WO,A1)
【文献】特開2020-181980(JP,A)
【文献】特表2018-505567(JP,A)
【文献】特開2005-347647(JP,A)
【文献】特開2005-259832(JP,A)
【文献】特開2007-207981(JP,A)
【文献】特開2010-092965(JP,A)
【文献】国際公開第2021/148803(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接合型半導体ウェーハの製造方法であって、
出発基板上にエッチストップ層をエピタキシャル成長する工程と、
エッチストップ層上に化合物半導体機能層をエピタキシャル成長する工程と、
ドライエッチング法にて、前記化合物半導体機能層に素子を形成するための分離溝を形成する工程と、
前記分離溝の表面に対してウェットエッチング法でエッチングを行う工程と、
前記化合物半導体機能層と異なる材料の可視光透過性基板を、可視光透過性熱硬化性接合材を介して、前記化合物半導体機能層と接合する工程と、
前記出発基板を、前記可視光透過性基板と接合した前記化合物半導体機能層から除去して、接合型半導体ウェーハを得る工程と
を有し、
前記ウェットエッチングのエッチング代を50nm以上とすることを特徴とする接合型半導体ウェーハの製造方法。
【請求項2】
前記接合する工程と、前記出発基板を除去して接合型半導体ウェーハを得る工程と、前記分離溝を形成する工程と、前記ウェットエッチング法でエッチングを行う工程とを、この第1の順で行うか、又は
前記分離溝を形成する工程と、前記ウェットエッチング法でエッチングを行う工程と、前記接合する工程と、前記出発基板を除去して接合型半導体ウェーハを得る工程とをこの第2の順で行うことを特徴とする請求項1に記載の接合型半導体ウェーハの製造方法。
【請求項3】
前記分離溝を形成する工程において、前記化合物半導体機能層に前記分離溝を形成して、前記素子の一辺を100μm以下とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の接合型半導体ウェーハの製造方法。
【請求項4】
前記素子を発光層と窓層とを有するマイクロLED構造体とすることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の接合型半導体ウェーハの製造方法。
【請求項5】
前記可視光透過性基板として、サファイア、石英、ガラス、SiC、LiTaO、及びLiNbOからなる群より選択されるもの用いることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の接合型半導体ウェーハの製造方法。
【請求項6】
前記可視光透過性熱硬化性接合材として、BCB、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、SOG、ポリイミド、及びアモルファスフッ素系樹脂からなる群より選択されるものを用いることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の接合型半導体ウェーハの製造方法。
【請求項7】
前記可視光透過性熱硬化性接合材として、厚さが0.01~0.6μmのものを用いることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の接合型半導体ウェーハの製造方法。
【請求項8】
前記可視光透過性熱硬化性接合材を熱硬化させないことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の接合型半導体ウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接合型半導体ウェーハの製造方法に関し、特にマイクロLED用の接合型半導体ウェーハの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
出発基板から化合物半導体機能層(エピタキシャル機能層)のみを分離し、別の基板へ移載する技術は、出発基板の物性に起因する制約を緩和し、デバイスシステムの設計自由度を上げるために重要な技術である。
【0003】
マイクロLEDデバイスにおいては、出発基板のままでは駆動回路に移載するのが難しく、移載技術が必須である。マイクロLEDデバイスに適した駆動回路への移載を可能とするドナー基板を作製するためには、化合物半導体機能層を永久基板としての可視光透過性基板に接合後、出発基板を除去し、移載を実現する技術が必要である。
【0004】
また、マイクロLEDデバイスにおいては、ドナー基板作製の問題と同時に、マイクロLEDサイズを小さくすることで輝度低下が発生する問題がある。
【0005】
特許文献1では、半導体エピタキシャル基板と仮支持基板とを誘電体層を介して熱圧着接合する技術と、ウェットエッチングで仮支持基板とエピタキシャル機能層を分離する技術とが開示されている。
【0006】
特許文献1では、エピタキシャルウェーハ表面に酸化物層を形成して仮支持処理を行った後、犠牲層エッチングを行って出発基板を剥離している。しかし、特許文献1の技術を用いて小サイズ化したマイクロLEDは実現可能だが、輝度低下に対する改善策は示されていない。
【0007】
特許文献2では、分離溝を形成して犠牲層露出後、接合を行い、犠牲層エッチングを実施して出発基板を分離する技術が開示されている。
【0008】
このように、特許文献2では、分離溝を形成し、分離溝を介して犠牲層エッチングを行っている。しかし、特許文献2の技術を用いて小サイズ化したマイクロLEDは実現可能だが、輝度低下に対する改善策は示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2021-27301号公報
【文献】国際公開第WO2014/020906号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
マイクロLEDディスプレイ実装用のLEDダイスが搭載された移載準備ウェーハは、マイクロLEDディスプレイを実現するために必要な構造体である。エキシマレーザーの照射によるレーザーリフトオフを実現するため、LEDダイスを、サファイア基板などの可視光透過性基板にレーザーで吸収される接合材で接合する必要がある。接合材は、可視光に対して透明で、スピンコートなどの簡便な方法で塗布でき、特に、塗布時には液体で、熱・光・時間等の処理により硬化する材料であることが好ましい。
【0011】
従来は、特許文献1及び2のように、可視光透過性基板上に一様の接合膜を形成し、エピウェーハを接合後、出発基板の除去を行い、LED素子を形成していた。この場合、素子を形成する工程では、ドライエッチング処理を行っているが、通常はICP工程を適用する。その際、エッチング処理部側面にダメージが入る。このダメージは、顕著な電流リークとしては認識できないが、EL発光時に輝度低下を発生させる。特にマイクロLEDのような小サイズになるとその傾向が顕著であり、問題となる。
【0012】
以上のような現状から、マイクロLEDにおいてサイズを小さくするほど輝度が低下する(輝度ドゥループ)問題に対する解決策が必要であった。
【0013】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、素子を基板上に作製した際、輝度低下の発生が抑制された素子とすることができる接合型半導体ウェーハの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明では、接合型半導体ウェーハの製造方法であって、
出発基板上にエッチストップ層をエピタキシャル成長する工程と、
エッチストップ層上に化合物半導体機能層をエピタキシャル成長する工程と、
ドライエッチング法にて、前記化合物半導体機能層に素子を形成するための分離溝を形成する工程と、
前記分離溝の表面に対してウェットエッチング法でエッチングを行う工程と、
前記化合物半導体機能層と異なる材料の可視光透過性基板を、可視光透過性熱硬化性接合材を介して、前記化合物半導体機能層と接合する工程と、
前記出発基板を、前記可視光透過性基板と接合した前記化合物半導体機能層から除去して、接合型半導体ウェーハを得る工程と
を有することを特徴とする接合型半導体ウェーハの製造方法を提供する。
【0015】
このような接合型半導体ウェーハの製造方法であれば、ドライエッチングで形成される分離溝の表面のダメージ層がウェットエッチングによって除かれるので、マイクロLED等の小さいサイズの発光素子の輝度低下を抑制することができる。
【0016】
前記接合する工程と、前記出発基板を除去して接合型半導体ウェーハを得る工程と、前記分離溝を形成する工程と、前記ウェットエッチング法でエッチングを行う工程とを、この第1の順で行うか、又は
前記分離溝を形成する工程と、前記ウェットエッチング法でエッチングを行う工程と、前記接合する工程と、前記出発基板を除去して接合型半導体ウェーハを得る工程とをこの第2の順で行うことができる。
【0017】
本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法では、各工程を上記第1の順で行っても良いし、或いは上記第2の順で行っても良い。
【0018】
前記分離溝を形成する工程において、前記化合物半導体機能層に前記分離溝を形成して、前記素子の一辺を100μm以下とすることができる。
【0019】
本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法では、形成する素子を一辺が100μm以下のものとする場合に、特に効果が顕著となる。
【0020】
前記素子を発光層と窓層とを有するマイクロLED構造体とすることができる。
【0021】
本発明は、素子が発光層と窓層とを有するマイクロLED構造体に対し、特に有効である。
【0022】
また、前記ウェットエッチングのエッチング代を50nm以上とすることが好ましい。
【0023】
ウェットエッチングのエッチング代を50nm以上とすることで、確実に分離溝の表面のダメージを除去でき、発光効率の低下を確実に抑制することができる。
【0024】
前記可視光透過性基板として、例えば、サファイア、石英、ガラス、SiC、LiTaO、及びLiNbOからなる群より選択されるもの用いることができる。
【0025】
また、前記可視光透過性熱硬化性接合材として、例えば、BCB、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、SOG、ポリイミド、及びアモルファスフッ素系樹脂からなる群より選択されるものを用いることができる。
【0026】
可視光透過性基板及び可視光透過性熱硬化性接合材の材料は、これらのものを用いることができるが、特に限定されない。
【0027】
前記可視光透過性熱硬化性接合材として、厚さが0.01~0.6μmのものを用いることが好ましい。
【0028】
可視光透過性熱硬化性接合材の厚さを0.01~0.6μmとすることで、接合材の厚さ分布を比較的小さくできるので、好ましい。
【0029】
前記可視光透過性熱硬化性接合材を熱硬化させなくてもよい。
【0030】
可視光透過性熱硬化性接合材を熱硬化させないようにすれば、可視光透過性基板を剥離する必要がある場合に容易に剥離できる。
【発明の効果】
【0031】
以上のように、本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法であれば、素子、特にはマイクロLEDを基板上に作製した際、輝度低下の発生が抑制された素子とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第一の実施形態の一部を示す概略断面図である。
図2】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第一の実施形態の他の一部を示す概略断面図である。
図3】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第一の実施形態の他の一部を示す概略断面図である。
図4】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第一の実施形態の他の一部を示す概略断面図である。
図5】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第一の実施形態の他の一部を示す概略断面図である。
図6】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第一の実施形態の他の一部を示す概略断面図である。
図7】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第一の実施形態の他の一部を示す概略断面図である。
図8】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第一の実施形態の他の一部を示す概略断面図である。
図9】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第一の実施形態の他の一部を示す概略断面図である。
図10】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第一の実施形態で得られる接合型半導体ウェーハの一例の概略断面図である。
図11】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第二の実施形態の一部を示す概略断面図である。
図12】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第二の実施形態の他の一部を示す概略断面図である。
図13】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第二の実施形態の他の一部を示す概略断面図である。
図14】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第二の実施形態の他の一部を示す概略断面図である。
図15】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第二の実施形態の他の一部を示す概略断面図である。
図16】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第二の実施形態の他の一部を示す概略断面図である。
図17】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第二の実施形態の他の一部を示す概略断面図である。
図18】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第二の実施形態の他の一部を示す概略断面図である。
図19】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第二の実施形態の他の一部を示す概略断面図である。
図20】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第二の実施形態で得られる接合型半導体ウェーハの一例の概略断面図である。
図21】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第三の実施形態の一部を示す概略断面図である。
図22】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第三の実施形態の他の一部を示す概略断面図である。
図23】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第三の実施形態の他の一部を示す概略断面図である。
図24】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第三の実施形態の他の一部を示す概略断面図である。
図25】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第三の実施形態の他の一部を示す概略断面図である。
図26】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第三の実施形態の他の一部を示す概略断面図である。
図27】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第三の実施形態の他の一部を示す概略断面図である。
図28】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第三の実施形態の他の一部を示す概略断面図である。
図29】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第三の実施形態の他の一部を示す概略断面図である。
図30】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第三の実施形態の他の一部を示す概略断面図である。
図31】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第三の実施形態の他の一部を示す概略断面図である。
図32】本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第三の実施形態で得られる接合型半導体ウェーハの一例の概略断面図である。
図33】比較例の接合型半導体ウェーハの製造方法の一部を示す概略断面図である。
図34】比較例の接合型半導体ウェーハの製造方法の他の一部を示す概略断面図である。
図35】比較例の接合型半導体ウェーハの製造方法の他の一部を示す概略断面図である。
図36】比較例の接合型半導体ウェーハの製造方法の他の一部を示す概略断面図である。
図37】比較例の接合型半導体ウェーハの製造方法の他の一部を示す概略断面図である。
図38】比較例の接合型半導体ウェーハの製造方法の他の一部を示す概略断面図である。
図39】比較例の接合型半導体ウェーハの製造方法の他の一部を示す概略断面図である。
図40】比較例の接合型半導体ウェーハの製造方法で得られた接合型半導体ウェーハの概略断面図である。
図41】実施例1~3、及び比較例についての、素子設計サイズと発光効率との関係を示したグラフである。
図42】実施例2における、エッチング代と発光効率との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
上述のように、素子を基板上に作製した際、輝度低下の発生が抑制された素子とすることができる接合型半導体ウェーハの製造方法の開発が求められていた。
【0034】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、ドライエッチングで形成される分離溝の表面のダメージ層をウェットエッチングによって除くことにより、素子の輝度低下を抑制することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0035】
即ち、本発明は、接合型半導体ウェーハの製造方法であって、
出発基板上にエッチストップ層をエピタキシャル成長する工程と、
エッチストップ層上に化合物半導体機能層をエピタキシャル成長する工程と、
ドライエッチング法にて、前記化合物半導体機能層に素子を形成するための分離溝を形成する工程と、
前記分離溝の表面に対してウェットエッチング法でエッチングを行う工程と、
前記化合物半導体機能層と異なる材料の可視光透過性基板を、可視光透過性熱硬化性接合材を介して、前記化合物半導体機能層と接合する工程と、
前記出発基板を、前記可視光透過性基板と接合した前記化合物半導体機能層から除去して、接合型半導体ウェーハを得る工程と
を有することを特徴とする接合型半導体ウェーハの製造方法である。
【0036】
以下、本発明について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
(第一の実施形態)
以下、図1図10を参照しながら、本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第一の実施形態を説明する。
【0038】
まず、図1に示すように、第一導電型のGaAs出発基板1上に、第一導電型のGaAsバッファ層(図示しない)積層後、エッチストップ層2をエピタキシャル成長する。図1に示すエッチストップ層2は、第一導電型のGaInP第一エッチストップ層及び第一導電型のGaAs第二エッチストップ層(それぞれ図示しない)を含む。
【0039】
次に、図1に示すように、エッチストップ層2上に、第一導電型のAlGaInP第一クラッド層31a、ノンドープのAlGaInP活性層31b、第二導電型のAlGaInP第二クラッド層31c、第二導電型のGaInP中間層、第二導電型のGaP窓層32を順次エピタキシャル成長する。なお、GaInP中間層は図示していない。これにより、エッチストップ層2上にエピタキシャル成長した化合物半導体機能層(エピタキシャル機能層)3として発光素子構造を有するエピタキシャルウェーハ10を準備する。ここで、第一クラッド層31aから第二クラッド層31cまでをダブルヘテロ(DH)構造部31と称する。
【0040】
次に、図2に示すように、エピタキシャルウェーハ10の化合物半導体機能層3上に、可視光透過性熱硬化性接合材として例えばベンゾシクロブテン(BCB)をスピンコートし、可視光透過性熱硬化性接合材塗布膜(BCB塗布膜)4を得る。
【0041】
そして、図3に示すように、化合物半導体機能層3上に、被接合ウェーハとして可視光透過性基板5、例えばサファイアウェーハを、BCB塗布膜4を間に挟んで対向させて重ね合わせ、熱圧着することで、エピタキシャルウェーハ10の化合物半導体機能層3とサファイアウェーハ5とがBCB塗布膜4を介して接合した接合型半導体ウェーハ(エピタキシャルウェーハ接合基板)11を作製する。
【0042】
スピンコートにてBCB塗布膜4を塗布する際、厚さは例えば0.01~0.6μm程度とすることができる。この範囲内の厚さは、接合材であるBCBの塗布膜4の厚さ分布を比較的小さくできるので、好ましい。
【0043】
ただし、接合後に90%以上の面積歩留まりを保つためには0.05μm以上のBCB層厚とすることが好適である。また、70%以上の接合面積歩留まりを維持すればよいのであれば、0.01μm以上のBCB層厚とすれば良い。
【0044】
本実施形態においては、可視光透過性基板5をサファイアとして例示したが、可視光透過性基板5は、サファイアに限定されるものではなく、化合物半導体機能層3と異なる材料であって、平坦性が担保されて、かつエキシマレーザー光の吸収率の低い材料であればどのような材料も選択可能である。サファイアの他、例えば、合成石英等の石英、ガラス、SiC、LiTaO又はLiNbOを選択することができる。
【0045】
また、可視光透過性熱硬化型接合材としてBCBを例示したが、可視光透過性熱硬化型接合材は、BCBに限定されるものではなく、可視光透過性及び熱硬化性を有するものであれば、どのような材料でも選択可能である。BCBの他、例えば、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、SOG(spin-on-glass:スピン-オン-グラス)、PI(Polyimide:ポリイミド)、アモルファスフッ素系樹脂(例えばCytop(登録商標))などを用いてもよい。
【0046】
次に、図4に示すように、GaAs出発基板1をアンモニア過水などの選択エッチング液によりウェットエッチングで除去する。これにより、GaAs出発基板1を、可視光透過性基板5と接合した化合物半導体機能層3から除去する。
【0047】
エッチストップ層2の第一エッチストップ層が露出したら、エッチャントを塩酸系に切り替えてGaInP第一エッチストップ層を選択的に除去し、次いでエッチャントを硫酸過水系に切り替えて第二エッチストップ層を除去する。これにより、エッチストップ層2を除去し、図5に示すように第一クラッド層31aを露出させる。
【0048】
次に、化合物半導体機能層3上に、フォトリソ法にて、レジストマスクまたはハードマスクを形成し、第一クラッド層31aからGaP窓層32までを塩素系プラズマを用いたドライエッチング法にてエッチングして、分離溝6を形成する。これにより、図6に示すように、化合物半導体機能層3に、分離溝6によって分離された島状パターンの素子(素子分離端)100を形成する。素子100がマイクロLED用素子である場合、素子100の一辺を100μm以下とすることが好ましい。
【0049】
図6では、分離溝6を形成する際に、接合層であるBCB塗布膜4もエッチングする状態を示しているが、BCB塗布膜4を除去する工程に限定されるものではなく、BCB塗布膜4を分離溝6の底部に残留させてもよい。BCB塗布膜4を除去する場合、化合物半導体機能層3をエッチングした場合の材料ガスからフッ素系ガスに切り替えてエッチング処理を行う。
【0050】
次に、ドライエッチング法による分離溝形成工程実施後、例えば硫酸過水(SPM)溶液にて、図6に示す分離溝6の表面6aのウェットエッチング処理を行う(分離溝6の表面6aに対してウェットエッチング法でエッチングを行う工程)。これにより、図7に示すように、分離溝6の表面6a(化合物半導体機能層3の側面の一部)がウェットエッチングされた表面6bとなる。このようにウェットエッチングを行うことでドライエッチングにより生じた分離溝6の表面6a、すなわち化合物半導体機能層3の側面のダメージ層が除かれるので、素子100、例えばマイクロLEDの輝度低下を抑制することができる。
【0051】
ウェットエッチング処理は、素子(素子分離端)100の活性層31b部のダメージが十分に除去できるように50nm以上のエッチング代とすることが好ましい。このようにウェットエッチングを50nm以上行うことで分離溝6の表面6aのダメージ層がより確実に除かれるので、素子100、例えばマイクロLEDの輝度低下を更に抑制することができる。
【0052】
ウェットエッチング法で硫酸過水溶液を用いる場合、硫酸過水溶液における各成分の混合比として、例えば、硫酸:過水:水を1:1:20の比率を採用することができるが、この比率に限定されない。硫酸と過水の比率によってもダメージエッチングの速度が変化するため、例えば硫酸:過水:水を20:1:1など硫酸が過剰、またはその逆に過水が過剰の条件としても同様の効果が得られる。ウェットエッチング法は、硫酸過水溶液以外のエッチャントを用いることもできる。
【0053】
次に、素子100の表面上にフォトリソ法にてレジストパターン、またはハードマスクパターンを形成し、例えば塩素系プラズマを用いたドライエッチング法にて素子100をエッチングし、図8に示すように、第二クラッド層31cの一部を露出させる。
【0054】
図8においては、第二クラッド層31cの中間部分までエッチングされた状態を示しているが、この深さに限定されるものではなく、活性層31bを通り過ぎてエッチングされていればどのような深さであっても同様の効果が得られる。例えば、活性層31bの一部が深さ方向に完全になくなった状態、かつ、第二クラッド層31cがほとんどエッチングされない状態、あるいは、第二クラッド層31cの一部分が深さ方向に完全にエッチングされ、GaP窓層32が露出した状態でも、同様な効果が得られる。
【0055】
次に、素子100の表面にSiOなどのパッシベーション(PSV)膜7を形成し、次いで、図9に示すように、素子(素子分離端部)100における露出した活性層31bの側面を被覆し、第一クラッド層31aおよび第二クラッド層31cのそれぞれの一部が露出するように加工したPSVパターン膜7を作製する。
【0056】
なお、PSV膜7はSiO膜に限定されるものではなく、絶縁性を有する材料であれば、どのような材料も選択可能である。
【0057】
また、PSV膜7は、例えば、TEOSとOとを用いたP-CVD(プラズマCVD)法にて成膜することができる。しかし、PSV膜7の形成方法は、この方法に限定されるものではなく、PSV膜7を形成できれば、例えば、スパッタ法、PLD法、ALD法、ゾルゲル法などの方法で形成しても同様の効果が得られる。
【0058】
次に、図10に示すように、PSVパターン膜7の開口部から露出した第1クラッド層31aの一部及び第2クラッド層31cの一部のそれぞれに電極8及び9を形成し、熱処理を施してオーミック接触を実現する。
【0059】
ここで電極8及び9の材料はAu系材料を採用することができる。そしてP型層の近傍に電極を設ける場合は化合物半導体機能層3の近傍(0.5μm以内)にBe又はZn含有Au金属層を設けることが好ましい。N型層の近傍に電極を設ける場合は化合物半導体機能層3の近傍(0.5μm以内)にGe又はSi含有Au金属層を設けることが好ましい。
【0060】
また、図10では、第二クラッド層31cに接し、第一クラッド層31aの高さまで電極9を設けたリード層を有するデザインを例示しているが、リード構造を有するデザインに限定されず、リード構造を設けず、第二クラッド層31cに接する電極9の厚さを第一クラッド層31aの電極8より厚く設計して段差を縮小する構造としても良い。
【0061】
以上に説明した本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第一の実施形態によれば、図10に示すような、可視光透過性基板5に可視光透過性熱硬化性接合材塗布膜4を介して接合した複数の素子100を含む接合型半導体ウェーハ11を製造することができる。図10において、複数の素子100は、発光素子であり、より具体的には、発光層である活性層31bと窓層32とを有するマイクロLED構造体である。
【0062】
本実施形態では、図7を参照しながら説明したように、ドライエッチング法による分離溝形成工程の後、分離溝6の表面6a、具体的には化合物半導体機能層3の表面(側面)に対してウェットエッチング法でウェットエッチングを行うことにより、ドライエッチングで形成された化合物半導体機能層3の表面のダメージ層を除去できる。そのため、マイクロLEDである素子100の輝度低下を抑制することができる。
【0063】
(第二の実施形態)
次に、図11図20を参照しながら、本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第二の実施形態を説明する。
【0064】
第二の実施形態は、概して、分離溝6を形成した後、素子100に対してドライエッチングを行い、そのあとで分離溝6の表面6aに対してウェットエッチングを行う点で主に、第一の実施形態と異なる。
【0065】
まず、図11に示すように、第一の実施形態で説明したのと同様の手順で、第一導電型のGaAs出発基板1上にエッチストップ層2をエピタキシャル成長し、次いで、エッチストップ層2上に化合物半導体機能層3をエピタキシャル成長する。これにより、図11に示す、エッチストップ層2上にエピタキシャル成長した化合物半導体機能層(エピタキシャル機能層)3として発光素子構造を有するエピタキシャルウェーハ10を準備する。
【0066】
次に、図12に示すように、エピタキシャルウェーハ10の化合物半導体機能層3上に可視光透過性熱硬化性接合材として例えばベンゾシクロブテン(BCB)をスピンコートし、可視光透過性熱硬化性接合材塗布膜(BCB塗布膜)4を得る。
【0067】
そして、図13に示すように、化合物半導体機能層3上に、被接合ウェーハとして可視光透過性基板5、例えばサファイアウェーハを、BCB塗布膜4を間に挟んで対向させて重ね合わせ、熱圧着することで、エピタキシャルウェーハ10の化合物半導体機能層3とサファイアウェーハ5とがBCB塗布膜4を介して接合した接合型半導体ウェーハ(エピタキシャルウェーハ接合基板)11を作製する。
【0068】
スピンコートにてBCBを塗布する際、その厚さは、第一の実施形態と同様に、0.01~0.6μm程度とすることができる。
【0069】
ただし、接合後に90%以上の面積歩留まりを保つためには0.05μm以上のBCB層厚とすることが好適である。また、70%以上の接合面積歩留まりを維持すればよいのであれば、0.01μm以上のBCB層厚とすれば良い。
【0070】
本実施形態においては、可視光透過性基板5をサファイアとして例示し、可視光透過性熱硬化型接合材としてBCBを例示したが、これらに限定されるものではない。用いることができる他の例は、第一の実施形態で挙げたものと同様である。
【0071】
次に、図14に示すように、GaAs出発基板1をアンモニア過水などの選択エッチング液によりウェットエッチングで除去する。これにより、GaAs出発基板1を、可視光透過性基板5と接合した化合物半導体機能層3から除去する。
【0072】
エッチストップ層2の第一エッチストップ層が露出したら、エッチャントを塩酸系に切り替えてGaInP第一エッチストップ層を選択的に除去し、次いでエッチャントを硫酸過水系に切り替えて第二エッチストップ層を除去する。これにより、図15に示すように、エッチストップ層2を除去し、第一クラッド層31aを露出させる。
【0073】
次に、化合物半導体機能層3上に、フォトリソ法にて、レジストマスクまたはハードマスクを形成し、第一クラッド層31aからGaP窓層32までを塩素系プラズマを用いたドライエッチング法にてエッチングして、分離溝6を形成する。これにより、図16に示すように、化合物半導体機能層3に、分離溝6によって分離された島状パターンの素子(素子分離端)100を形成する。素子100がマイクロLED用素子である場合、素子100の一辺を100μm以下とすることが好ましい。
【0074】
次に、フォトリソ法にてレジストパターン、またはハードマスクパターンを形成し、例えば塩素系プラズマを用いたドライエッチング法にて素子100をエッチングし、図17に示すように第二クラッド層31cの一部を露出させる。
【0075】
図17においては、第二クラッド層31cの中間部分までエッチングされた状態を示しているが、この深さに限定されるものではなく、活性層31bを通り過ぎてエッチングされていればどのような深さであっても同様の効果が得られる。例えば、活性層31bの一部が深さ方向に完全になくなった状態、かつ、第二クラッド層31cがほとんどエッチングされない状態、あるいは、第二クラッド層31cの一部分が深さ方向に完全にエッチングされ、GaP窓層32が露出した状態でも、同様な効果が得られる。
【0076】
次に、素子100に対するドライエッチング工程後、例えば硫酸過水(SPM)溶液にて、図17に示す分離溝6の表面6aのウェットエッチング処理を行う(分離溝6の表面6aに対するウェットエッチング法でエッチングを行う工程)。これにより、図18に示すように、分離溝6の表面6a(化合物半導体機能層3の側面の一部)がウェットエッチングされた表面6bとなる。このようにウェットエッチングを行うことで、分離溝形成工程でのドライエッチング及び素子100に対するドライエッチングにより生じた分離溝6の表面6a、すなわち化合物半導体機能層3の側面のダメージ層が除かれるので、素子100、例えばマイクロLEDの輝度低下を抑制することができる。
【0077】
ウェットエッチング処理は、素子(素子分離端)100の活性層31b部のダメージが十分に除去できるように50nm以上のエッチング代とすることが好ましい。このようにウェットエッチングを50nm以上行うことで分離溝6の表面6aのダメージ層がより確実に除かれるので、素子100、例えばマイクロLEDの輝度低下を更に抑制することができる。
【0078】
ウェットエッチング法で使用できるエッチャントについては、第一の実施形態での説明を参照されたい。
【0079】
次に、素子100の表面にSiOなどのパッシベーション(PSV)膜7を形成し、次いで、図19に示すように、素子(素子分離端部)100における露出した活性層31bの側面を被覆し、第一クラッド層31aおよび第二クラッド層31cのそれぞれの一部が露出するように加工したPSVパターン膜7を作製する。
【0080】
なお、PSV膜7はSiO膜に限定されるものではなく、絶縁性を有する材料であれば、どのような材料も選択可能である。PSV膜の形成方法については、第一の実施形態での説明を参照されたい。
【0081】
次に、図20に示すように、PSVパターン膜7の開口部から露出した第1クラッド層31aの一部及び第2クラッド層31cの一部のそれぞれに電極8及び9を形成し、熱処理を施してオーミック接触を実現する。電極の材料については、第一の実施形態での説明を参照されたい。
【0082】
また、図20では、第二クラッド層31cに接し、第一クラッド層31aの高さまで電極9を設けたリード層を有するデザインを例示しているが、リード構造を有するデザインに限定されず、リード構造を設けず、第二クラッド層31cに接する電極9の厚さを第一クラッド層31aの電極8より厚く設計して段差を縮小する構造としても良い。
【0083】
以上に説明した本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第二の実施形態によれば、図20に示すような、可視光透過性基板5に可視光透過性熱硬化性接合材塗布膜4を介して接合した複数の素子100を含む接合型半導体ウェーハ11を製造することができる。図20において、複数の素子100は、発光素子であり、より具体的には、発光層である活性層31bと窓層32とを有するマイクロLED構造体である。
【0084】
本実施形態では、図18を参照しながら説明したように、ドライエッチング法による分離溝形成工程及び素子100に対するドライエッチングの後、分離溝6の表面、具体的には化合物半導体機能層3の表面に対してウェットエッチング法でウェットエッチングを行うことにより、ドライエッチングで形成された化合物半導体機能層3の表面(側面)のダメージ層を除去できる。そのため、マイクロLEDである素子100の輝度低下を抑制することができる。
【0085】
(第三の実施形態)
次に、図21図32を参照しながら、本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第三の実施形態を説明する。
【0086】
第三の実施形態は、概して、分離溝6を形成した後、分離溝6の表面6aに対してウェットエッチングを行い、そのあとで化合物半導体機能層3と可視光透過性基板5との接合を行う点で主に、第一の実施形態と異なる。
【0087】
まず、図21に示すように、第一の実施形態で説明したのと同様の手順で、第一導電型のGaAs出発基板1上にエッチストップ層2をエピタキシャル成長し、次いで、エッチストップ層2上に化合物半導体機能層3をエピタキシャル成長する。これにより、図21に示す、エッチストップ層2上にエピタキシャル成長した化合物半導体機能層(エピタキシャル機能層)3として発光素子構造を有するエピタキシャルウェーハ10を準備する。
【0088】
次に、化合物半導体機能層3上に、フォトリソ法にて、レジストマスクまたはハードマスクを形成し、第一クラッド層31aからGaP窓層32までを塩素系プラズマを用いたドライエッチング法にてエッチングして、分離溝6を形成する。これにより、図22に示すように、化合物半導体機能層3に、分離溝6により分離された島状パターンの素子(素子分離端)100を形成する。素子100がマイクロLED用素子である場合、素子100の一辺を100μm以下とすることが好ましい。
【0089】
次に、ドライエッチング法による分離溝形成工程実施後、例えば硫酸過水(SPM)溶液にて、図22に示す分離溝6の表面6aのウェットエッチング処理(ウェットエッチング法でエッチングを行う工程)を行う。これにより、図23に示すように、分離溝6の表面6a(化合物半導体機能層3の側面)がウェットエッチングされた表面6bとなる。このようにウェットエッチングを行うことでドライエッチングにより生じた分離溝6の表面6a、すなわち化合物半導体機能層3の側面のダメージ層が除かれるので、素子100、例えばマイクロLEDの輝度低下を抑制することができる。
【0090】
ウェットエッチング処理は、素子(素子分離端)100の活性層31b部のダメージが十分に除去できるように50nm以上のエッチング代とすることが好ましい。このようにウェットエッチングを50nm以上行うことで分離溝6の表面6aのダメージ層がより確実に除かれるので、素子100、例えばマイクロLEDの輝度低下を更に抑制することができる。
【0091】
次に、図24に示すように、エピタキシャルウェーハ10上に可視光透過性熱硬化性接合材として例えばベンゾシクロブテン(BCB)をスピンコートし、可視光透過性熱硬化性接合材塗布膜(BCB塗布膜)4を得る。図24に示すように、BCB塗布膜4の一部は、分離溝6の底部のエッチストップ層2上にも形成される。
【0092】
次に、図25に示すように、素子100の化合物半導体機能層3上に、被接合ウェーハとして可視光透過性基板5、例えばサファイアウェーハを、BCB塗布膜4を間に挟んで対向させて重ね合わせ、熱圧着することで、エピタキシャル10の化合物半導体機能層3とサファイアウェーハ5とをBCB塗布膜4を介して接合した接合型半導体ウェーハ(エピタキシャルウェーハ接合基板)11を作製する。BCB塗布膜4の厚さは、第一の実施形態と同様に、0.01~0.6μm程度とすることができる。
【0093】
ただし、接合後に90%以上の面積歩留まりを保つためには0.05μm以上のBCB層厚とすることが好適である。また、70%以上の接合面積歩留まりを維持すればよいのであれば、0.01μm以上のBCB層厚とすれば良い。
【0094】
本実施形態においては、可視光透過性基板5をサファイアとして例示し、可視光透過性熱硬化型接合材としてBCBを例示したが、これらに限定されるものではない。用いることができる他の例は、第一の実施形態で挙げたものと同様である。
【0095】
次に、図26に示すように、GaAs出発基板1をアンモニア過水などの選択エッチング液によりウェットエッチングで除去する。これにより、GaAs出発基板1を、可視光透過性基板5と接合した化合物半導体機能層3から除去する。
【0096】
エッチストップ層2の第一エッチストップ層が露出したら、エッチャントを塩酸系に切り替えてGaInP第一エッチストップ層を選択的に除去し、次いでエッチャントを硫酸過水系に切り替えて第二エッチストップ層を除去する。これにより、エッチストップ層2を除去し、図27に示すように、第一クラッド層31aを露出させる。
【0097】
次に、フォトリソ法とエッチングの組み合わせにより、図27に示すストリート部(チップとして分離する際の分離線)6cに埋まっているBCBの一部4aを除去し、図28に示すように新たな分離溝6dとする。
【0098】
次に、フォトリソ法にて素子100の表面にレジストパターン、またはハードマスクパターンを形成し、例えば塩素系プラズマを用いたドライエッチング法にて素子100をエッチングし、図29に示すように第二クラッド層31cの一部を露出させる。
【0099】
図29においては、第二クラッド層31cの中間部分までエッチングされた状態を示しているが、この深さに限定されるものではなく、活性層31bを通り過ぎてエッチングされていればどのような深さであっても同様の効果が得られる。例えば、活性層31bの一部が深さ方向に完全になくなった状態、かつ、第二クラッド層31cがほとんどエッチングされない状態、あるいは、第二クラッド層31cの一部分が深さ方向に完全にエッチングされ、GaP窓層32が露出した状態でも、同様な効果が得られる。
【0100】
次に、素子100のドライエッチング工程後に、図29に示すようにスパイク状に突起状態になって残ったBCBの一部4bを除去して、図30に示す状態にする。エッチング処理を行ってもよいが、BCBの一部4bは、機械強度が弱いため、高圧の液流処理を行うことで簡便に除去できる。あるいはアッシング処理を行っても簡便に除去ができる。
【0101】
次に、素子100の表面にSiOなどのパッシベーション(PSV)膜7を形成し、次いで、図31に示すように、素子(素子分離端部)100における露出した活性層31bの側面を被覆し、第一クラッド層31aおよび第二クラッド層31cのそれぞれの一部が露出するように加工したPSVパターン膜7を作製する。
【0102】
なお、PSV膜7はSiO膜に限定されるものではなく、絶縁性を有する材料であれば、どのような材料も選択可能である。PSV膜の形成方法については、第一の実施形態での説明を参照されたい。
【0103】
次に、図32に示すように、PSVパターン膜7の開口部から露出した第1クラッド層31aの一部及び第2クラッド層31cの一部のそれぞれに電極8及び9を形成し、熱処理を施してオーミック接触を実現する。電極の材料については、第一の実施形態での説明を参照されたい。
【0104】
また、図32では、第二クラッド層31cに接し、第一クラッド層31aの高さまで電極9を設けたリード層を有するデザインを例示しているが、リード構造を有するデザインに限定されず、リード構造を設けず、第二クラッド層31cに接する電極9の厚さを第一クラッド層31aの電極8より厚く設計して段差を縮小する構造としても良い。
【0105】
以上に説明した本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第三の実施形態によれば、図32に示すような、可視光透過性基板5に可視光透過性熱硬化性接合材塗布膜4を介して接合した複数の素子100を含む接合型半導体ウェーハ11を製造することができる。図32において、複数の素子100は、発光素子であり、より具体的には、発光層である活性層31bと窓層32とを有するマイクロLED構造体である。
【0106】
本実施形態では、図23を参照しながら説明したように、ドライエッチング法による分離溝形成工程の後、分離溝6の表面6a、具体的には化合物半導体機能層3の表面に対してウェットエッチング法でウェットエッチングを行うことにより、ドライエッチングで形成された化合物半導体機能層3の表面のダメージ層を除去できる。そのため、マイクロLEDである素子100の輝度低下を抑制することができる。
【0107】
先に説明した第一及び第二の実施形態では、化合物半導体機能層3と可視光透過性基板5とを接合する工程と、化合物半導体機能層3から出発基板1を除去して接合型半導体ウェーハ11を得る工程と、化合物半導体機能層3に分離溝6を形成する工程と、分離溝6の表面6aに対してウェットエッチング法でエッチングを行う工程とを、この第1の順で行っている。一方、第三の実施形態では、化合物半導体機能層3に分離溝6を形成する工程と、分離溝6の表面6aに対しウェットエッチング法でエッチングを行う工程と、化合物半導体機能層3と可視光透過性基板5とを接合する工程と、化合物半導体機能層3から出発基板1を除去して接合型半導体ウェーハを得る工程とをこの第2の順で行っている。つまり、本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法は、上記第1の順で行っても良いし、或いは上記第2の順で行っても良い。
【0108】
なお、本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法において、可視光透過性熱硬化性接合材を熱硬化させないようにすれば、可視光透過性基板を剥離する必要がある場合に容易に剥離できる。
【実施例
【0109】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0110】
(実施例1)
実施例1では、図1図10を参照しながら先に説明した本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第一の実施形態に従って、接合型半導体ウェーハを製造した。具体的には、以下の手順に従った。
【0111】
まず、図1に示すように、第一導電型のGaAs出発基板1上に、第一導電型のGaAsバッファ層(図示しない)積層後、エッチストップ層2をエピタキシャル成長した。エッチストップ層2は、0.3μmの厚さの第一導電型のGaIn1-xP(0.4≦x≦0.6)第一エッチストップ層、及び0.3μmの厚さの第一導電型のGaAs第二エッチストップ層を含んでいた。
【0112】
次に、図1に示すように、エッチストップ層2上に、第一導電型の(AlGa1-yIn1-xP(0.4≦x≦0.6、0<y≦1)第一クラッド層31a(厚さ1.0μm)、ノンドープの(AlGa1-yIn1-xP(0.4≦x≦0.6、0≦y≦0.6)活性層31b(厚さ0.1μm)、第二導電型の(AlGa1-yIn1-xP(0.4≦x≦0.6、0<y≦1)第二クラッド層31c(厚さ1.0μm)、第二導電型のGaInP中間層(図示しない;厚さ0.1μm)、第二導電型のGaP窓層32(厚さ4μm)を順次エピタキシャル成長した。これにより、エッチストップ層2上にエピタキシャル成長した化合物半導体機能層(エピタキシャル機能層)3としての発光素子構造を有するエピタキシャルウェーハ10を作製した。
【0113】
次に、図2に示すように、エピタキシャルウェーハ10の化合物半導体機能層3上に、熱硬化型接合部材としてベンゾシクロブテン(BCB)をスピンコートし、BCB塗布膜4を得た。
【0114】
そして、図3に示すように、化合物半導体機能層3上に、被接合ウェーハであるサファイアウェーハ5を、BCB塗布膜4を間に挟んで対向させて重ね合わせ、熱圧着することで、エピタキシャルウェーハ10の化合物半導体機能層3とサファイアウェーハ5とをBCB塗布膜4を介して接合した接合型半導体ウェーハ(エピタキシャルウェーハ接合基板)11を作製した。スピンコートにてBCBを塗布する際、設計膜厚は0.6μmとした。
【0115】
次に、図4に示すように、GaAs出発基板1をアンモニア過水溶液によりウェットエッチング処理して除去し、GaInP第一エッチストップ層を露出させた。次に、エッチャントを塩酸系に切り替えてGaInP第一エッチストップ層を選択的に除去し、GaAs第二エッチストップ層を露出させた。次に、エッチャントを硫酸過水系に切り替えてGaAs第二エッチストップ層を選択的に除去し、図5に示すように第一クラッド層31aを露出させた。
【0116】
次に、化合物半導体機能層3上に、フォトリソ法にて、レジストマスクを形成し、塩素系プラズマを用いたドライエッチング法にて、第一クラッド層31aからGaP窓層32までをエッチングして、図6に示す分離溝6を形成した。これにより、図6に示すように、化合物半導体機能層3に、島状パターンの素子100を形成した。
【0117】
島状パターンの素子100を形成後、硫酸過水系溶液にて、図6に示す分離溝6の表面6aに対するウェットエッチング処理を行った。エッチング代は50nmとした。これにより、図7に示すように、分離溝6の表面6aである化合物半導体機能層3の側面の一部が、ウェットエッチングされた表面6bとなった。
【0118】
硫酸過水の混合比は硫酸:過水:水を1:1:20の比率とした。
【0119】
次に、素子100の表面上にフォトリソ法にてレジストパターンを形成し、塩素系プラズマを用いたドライエッチング法にて素子100をエッチングし、図8に示すように、第二クラッド層31cの一部を露出させた。
【0120】
次に、素子100の表面にSiO膜7を形成し、次いで、図9に示すように、素子100における露出した活性層31bの側面を被覆し、第一クラッド層31aおよび第二クラッド層31cのそれぞれの一部が露出するように加工したPSVパターン膜(SiO膜)7を作製した。SiO膜7はTEOSとOとを用いたP-CVD法にて成膜した。
【0121】
次に、図10に示すように、SiO膜7の開口部から露出した第1クラッド層31aの一部及び第2クラッド層31cの一部のそれぞれに電極8及び9を形成し、熱処理を施してオーミック接触を実現した。電極8及び9はAu系材料を採用した。
【0122】
以上により、図10に示す、サファイアウェーハ5にBCB塗布膜4を介して接合した複数の素子100を含む接合型半導体ウェーハ11を製造した。複数の素子100は、発光層である活性層31bと窓層32とを有するマイクロLED構造体である。
【0123】
(実施例2)
実施例2では、図11図20を参照しながら先に説明した本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第二の実施形態に従って、接合型半導体ウェーハを製造した。具体的には、以下の手順に従った。
【0124】
まず、実施例1と同様の手順で、図11に示すエピタキシャルウェーハ10を作製した。
【0125】
次に、実施例1と同様の手順で、エピタキシャルウェーハ10の化合物半導体機能層3上に、熱硬化型接合部材としてベンゾシクロブテン(BCB)をスピンコートし、図12に示すBCB塗布膜4を得、次いで、図13に示す、エピタキシャルウェーハ10の化合物半導体機能層3とサファイアウェーハ5とをBCB塗布膜4を介して接合した接合型半導体ウェーハ11を作製した。スピンコートにてBCBを塗布する際、設計膜厚は0.6μmとした。
【0126】
次に、実施例1と同様の手順で、GaAs出発基板1を図14に示すように除去し、次いでエッチストップ層2を除去して、図15に示すように、第一クラッド層31aを露出させた。
【0127】
次に、実施例1と同様の手順で、ドライエッチング法にて、図16に示す分離溝6を形成して、島状パターンの素子100を形成した。
【0128】
次に、素子100の表面上にフォトリソ法にてレジストパターンを形成し、塩素系プラズマを用いたドライエッチング法にて素子100をエッチングし、図17に示すように、第二クラッド層31cの一部を露出させた
【0129】
この後、硫酸過水系溶液にて、図17に示す分離溝6の表面6aに対するウェットエッチング処理を行った。エッチング代は50nmとした。これにより、図18に示すように、分離溝6の表面6aである化合物半導体機能層3の側面の一部が、ウェットエッチングされた表面6bとなった。
【0130】
硫酸過水の混合比は硫酸:過水:水を1:1:20の比率とした。
【0131】
次に、素子100の表面にSiO膜7を形成し、次いで、図19に示すように、素子100における露出した活性層31bの側面を被覆し、第一クラッド層31aおよび第二クラッド層31cのそれぞれの一部が露出するように加工したPSVパターン膜(SiO膜)7を作製した。SiO膜7はTEOSとOとを用いたP-CVD法にて成膜した。
【0132】
次に、図20に示すように、SiO膜7の開口部から露出した第1クラッド層31aの一部及び第2クラッド層31cの一部のそれぞれに電極8及び9を形成し、熱処理を施してオーミック接触を実現した。電極8及び9はAu系材料を採用した。
【0133】
以上により、図20に示す、サファイアウェーハ5にBCB塗布膜4を介して接合した複数の素子100を含む接合型半導体ウェーハ11を製造した。複数の素子100は、発光層である活性層31bと窓層32とを有するマイクロLED構造体である。
【0134】
(実施例3)
実施例3では、図21図32を参照しながら先に説明した本発明の接合型半導体ウェーハの製造方法の第三の実施形態に従って、接合型半導体ウェーハを製造した。具体的には、以下の手順に従った。
【0135】
まず、実施例1と同様の手順で、図21に示すエピタキシャルウェーハ10を作製した。
【0136】
次に、化合物半導体機能層3上に、フォトリソ法にて、レジストマスクを形成し、塩素系プラズマを用いたドライエッチング法にて、第一クラッド層31aからGaP窓層32までをエッチングして、図22に示す分離溝6を形成した。これにより、図22に示すように、化合物半導体機能層3に、島状パターンの素子100を形成した。
【0137】
島状パターンの素子100を形成後、硫酸過水系溶液にて、図22に示す分離溝6の表面6aに対するウェットエッチング処理を行った。エッチング代は50nmとした。これにより、図23に示すように、分離溝6の表面6aである化合物半導体機能層3の側面の一部が、ウェットエッチングされた表面6bとなった。
【0138】
硫酸過水の混合比は硫酸:過水:水を1:1:20の比率とした。
【0139】
次に、図24に示すように、エピタキシャルウェーハ10上に可視光透過性熱硬化性接合材としてベンゾシクロブテン(BCB)をスピンコートして、BCB塗布膜4を得た。スピンコートにてBCBを塗布する際、設計膜厚は0.6μmとした。
【0140】
次に、図25に示すように、素子100の化合物半導体機能層3上に、被接合ウェーハであるサファイアウェーハを、BCB塗布膜4を間に挟んで対向させて重ね合わせ、熱圧着することでエピタキシャルウェーハ10の化合物半導体機能層3とサファイアウェーハ5とをBCB塗布膜4を介して接合した接合型半導体ウェーハ11を作製した。
【0141】
次に、図26に示すように、GaAs出発基板1をアンモニア過水溶液によりウェットエッチング処理して除去し、GaInP第一エッチストップ層を露出させた。次いで、エッチャントを塩酸系に切り替えてGaInP第一エッチストップ層を選択的に除去し、GaAs第二エッチストップ層を露出させた。次いで、エッチャントを硫酸過水系に切り替えてGaAs第二エッチストップ層を選択的に除去し、図27に示すように、第一クラッド層31aを露出させた。
【0142】
次に、フォトリソ法にてレジストマスクを形成し、フッ素系プラズマを用いたドライエッチング法にて、ストリート部(チップとして分離する際の分離線)部6cに埋まっているBCBの一部4aを除去し、図28に示すように新たな分離溝6dとした。なお、ドライエッチング法はICP法を採用した。
【0143】
次に、フォトリソ法にて素子100の表面にレジストパターン、またはハードマスクパターンを形成し、塩素系プラズマを用いたドライエッチング法にて素子100をエッチングし、図29に示すように第二クラッド層31cの一部を露出させた。
【0144】
素子100のドライエッチング工程後に、図29に示すようにスパイク状に突起状態になって残ったBCBの一部4bを除去して、図30に示す状態にした。
【0145】
次に、素子100の表面にSiO膜7を形成し、次いで、図31に示すように、素子(素子分離端部)100における露出した活性層31bの側面を被覆し、第一クラッド層31aおよび第二クラッド層31cのそれぞれの一部が露出するように加工したPSVパターン膜(SiO膜)7を作製した。SiO膜7はTEOSとOとを用いたP-CVD法にて成膜した。
【0146】
次に、図32に示すように、SiO膜7の開口部から露出した第1クラッド層31aの一部及び第2クラッド層31cの一部のそれぞれに電極8及び9を形成し、熱処理を施してオーミック接触を実現した。電極8及び9はAu系材料を採用した。
【0147】
以上により、図32に示す、サファイアウェーハ5にBCB塗布膜4を介して接合した複数の素子100を含む接合型半導体ウェーハ11を製造した。複数の素子100は、発光層である活性層31bと窓層32とを有するマイクロLED構造体である。
【0148】
(比較例)
比較例では、図33図40を参照しながら以下に説明する手順で、図40に示す接合型半導体ウェーハ11を製造した。
【0149】
まず、実施例1と同様の手順で、図33に示すエピタキシャルウェーハ10を作製した。
【0150】
次に、実施例1と同様の手順で、エピタキシャルウェーハ10の化合物半導体機能層3上に、熱硬化型接合部材としてベンゾシクロブテン(BCB)をスピンコートし、図34に示すBCB塗布膜4を得、次いで、図35に示す、エピタキシャルウェーハ10の化合物半導体機能層3とサファイアウェーハ5とをBCB塗布膜4を介して接合した接合型半導体ウェーハ11を作製した。スピンコートにてBCBを塗布する際、設計膜厚は0.6μmとした。
【0151】
次に、実施例1と同様の手順で、GaAs出発基板1を図36に示すように除去し、次いで、エッチストップ層2を除去して、図37に示すように、第一クラッド層31aを露出させた。
【0152】
次に、化合物半導体機能層3上に、フォトリソ法にて、レジストマスクを形成し、塩素系プラズマを用いたドライエッチング法にて、第一クラッド層31aからGaP窓層32までをエッチングし、島状パターンの素子を形成した。更に、島状パターンの素子の表面上にフォトリソ法にてレジストパターンを形成し、塩素系プラズマを用いたドライエッチング法にて素子をエッチングし、図38に示すように、第二クラッド層31cの一部が露出した素子100を形成した。
【0153】
次に、素子100の表面にSiO膜7を形成し、次いで、図39に示すように、素子100における露出した活性層の側面を被覆し、第一クラッド層31aおよび第二クラッド層31cのそれぞれの一部が露出するように加工したPSVパターン膜(SiO膜)7を作製した。SiO膜7はTEOSとOとを用いたP-CVD法にて成膜した。
【0154】
次に、図40に示すように、SiO膜7の開口部から露出した第1クラッド層31aの一部及び第2クラッド層31cの一部のそれぞれに電極8及び9を形成し、熱処理を施してオーミック接触を実現した。電極8及び9はAu系材料を採用した。
【0155】
以上により、図40に示す、サファイアウェーハ5にBCB塗布膜4を介して接合した、複数の素子100を含む接合型半導体ウェーハ11を製造した。複数の素子100は、発光層である活性層31bと窓層32とを有するマイクロLED構造体である。
【0156】
以上説明したように、比較例は、ドライエッチング法による分離溝6形成工程後にウェットエッチングを行わない点で、実施例1~3と大きく異なっていた。
【0157】
[評価]
更に、図41に、実施例1~3、比較例について電流密度8[A/cm]におけるマイクロLED100の一辺のサイズを15~250μmの間で変化させたときのマイクロLEDサイズと外部量子効率(発光効率)との関係を示す。
【0158】
図41から、比較例においては、マイクロLEDサイズが小さくなるにつれて急速に発光効率が低下しているが、実施例1~3においては、低下の程度がおだやか、または変動しないことが分かる。すなわち、本発明によれば、マイクロLEDなどの素子を基板上に作製した際、輝度低下の発生が抑制された素子とすることができる。
【0159】
実施例1及び3においては、分離溝6をドライエッチングにより形成した後には分離溝6の表面6aに対するウェットエッチング処理を行ったが、図8又は図29に示すように第二クラッド層31cの一部を露出するためのドライエッチング後にはウェットエッチング処理を行わなかった。そのため、実施例1及び3においては、活性層31b側面全てにはウェットエッチング処理が施されていないため、マイクロLEDサイズの小サイズ化に伴い、発光効率の低下傾向が僅かながら生じているが、比較例より、その程度は緩和されていることが分かる。
【0160】
一方、素子100のドライエッチング後にウェットエッチング処理を行い、活性層31bの側面全てにウェットエッチング処理が施された実施例2においては、マイクロLEDの小サイズ化に伴う発光効率低下は極めて軽微であることが分かる。
【0161】
また、実施例2(ウェットエッチング有り)と比較例(ウェットエッチングなし)とについての、一辺100μmサイズのダイスの窓層32と活性層31bとの表面粗さ(単位:nm)の比較を表1に示す。
【0162】
【表1】
【0163】
ウェットエッチングを行った実施例2のGaP窓層32部のラフネス(表面粗さ)は、ウェットエッチング処理を行っていない比較例のそれと大きな変化はないが、活性層31b部のラフネスは、ウェットエッチング処理の有無で大きく変化している。これはウェットエッチングにより、活性層31b部側面の表面がエッチングされたことを示している。
【0164】
また、図42に、実施例2の上記条件で、製造する素子100の一辺15μmとして、ウェットエッチングにおけるエッチング代(設計エッチング幅)を変化させた場合の発光効率の変化を示す。
【0165】
図42から、エッチング代の増加により、発光効率低下度合いが改善していることが分かる。一方、50nm以上のエッチング代では、改善効果は少なくなることが分かる。このことから、50nm以上のエッチング代でウェットエッチングを行うことにより、ウェットエッチングによる効果を顕現化できることが判った。ただし、図42から明らかなように、0nmより大きいエッチング代でウェットエッチングを行えば、ウェットエッチングを行わない(エッチング代:0nm)の場合よりも、発光効率の低減を抑制できる。
【0166】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0167】
1…出発基板、 2…エッチストップ層、 3…化合物半導体機能層、 4…可視光透過性熱硬化性接合材塗布膜(BCB塗布膜、接合層)、 4a及び4b…BCBの一部、 5…可視光透過性基板(サファイアウェーハ)、 6及び6d…分離溝、 6a…分離溝の表面、 6b…分離溝のウェットエッチングされた表面、 6c…ストリート部、 7…パッシベーション膜(PSVパターン膜)、 8及び9…電極、 10…エピタキシャルウェーハ、 11…接合型半導体ウェーハ、 31…ダブルヘテロ構造部、 31a…第一クラッド層、 31b…活性層、 31c…第二クラッド層、 32…窓層、 100…素子(素子分離端、マイクロLED)。
図1
図2
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