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  • 特許-口腔機能の訓練のために用いられる器具 図1
  • 特許-口腔機能の訓練のために用いられる器具 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】口腔機能の訓練のために用いられる器具
(51)【国際特許分類】
   A61H 1/02 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
A61H1/02 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019137974
(22)【出願日】2019-07-26
(65)【公開番号】P2021019821
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-07-20
(73)【特許権者】
【識別番号】515279946
【氏名又は名称】株式会社ジーシー
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100099645
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 晃司
(72)【発明者】
【氏名】津賀 一弘
(72)【発明者】
【氏名】加藤 伸一
(72)【発明者】
【氏名】山中 克之
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第347594(JP,Z1)
【文献】特表2015-511519(JP,A)
【文献】特開2010-042193(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔機能の訓練のために用いられる器具であって、
環状である本体と、
前記本体の環状である内外を連通する第一孔と、
前記本体に設けられ前記第一孔に対向して設けられた第二孔と、を備え、
前記第二孔は前記本体を貫通していない、
環状具。
【請求項2】
前記本体は、可撓性を有する弾性部材からなる請求項1に記載の環状具。
【請求項3】
前記本体には、前記第一孔を延長するように突起部が設けられている請求項1又は2に記載の環状具。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の環状具と、
前記環状具に保持された棒状具と、を有し、
前記棒状具は、
棒状である支持棒と、
前記支持棒の一端に配置された、患者の口腔内に含まれるべき部材と、を有し、
前記支持棒が、前記第一孔を貫通し、前記第二孔に前記支持棒の他端が挿入され、前記患者の口腔内に含まれるべき部材が、前記本体の前記環状の外側に配置される、口腔機能リハビリテーション器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔機能の訓練に用いられる器具に関し、特に摂食嚥下訓練の際に利用される器具に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化社会に伴い認知症患者の増加も懸念されており、認知症の治療だけでなく、リハビリテーション(機能の維持又は回復の訓練、機能の訓練)法の開発が急がれている。認知症の主な症候は中核症状と呼ばれる認知機能障害と、周辺症状と呼ばれる精神症状、及び、行動障害がある。
【0003】
行動障害の1つに摂食嚥下障害があり、認知症の進行とともに活動性の低下に伴う食事の自立度の低下が見られるようになる。食事の自立度の低下により食事量が減少すると低栄養や脱水を招き、さらなる認知機能の低下に繋がることが報告されている。さらには、重度の認知症患者では誤嚥等の摂食障害の危険性も高まり、これにより肺炎発症のリスクも高まる。
【0004】
こうした摂食嚥下障害への対応には、摂食嚥下指導と摂食嚥下訓練とがある。
摂食嚥下指導は食事環境の設定や食具及び食形態の調整等が一般的である。
一方、摂食嚥下訓練には、実際に安全に食べる練習を行う直接訓練と、摂食嚥下機能の維持や回復を目指す基礎訓練とがある。
このうち基礎訓練は、顎、口腔、頸部に運動負荷をかけることにより行うものが多く、機能低下を防止する点でも重要とされており、臨床において様々な方法が適用されている。
【0005】
しかしながら、このような摂食嚥下訓練の多くは、指示に対する本人の理解が必要であり、認知機能が低下している高齢者のような場合には実施が困難である場合が多い。従って、認知症である高齢者に対しても実施可能な摂食嚥下訓練が必要とされている。
【0006】
そのために、より簡易な訓練方法が必要とされるが、その1つとして飴を舐める行動を繰り返し行わせる方法がある。これは棒付きの飴を毎日、又は、数日に1回、一定の時間の間に亘って舐めさせることにより、認知症である高齢者の口腔機能の維持、向上、及び改善を図るものであり、個人差はあるものの、ある程度の効果が認められることがわかっでいる。
しかしながら、単に細長い棒の先端に飴が取り付けられたものを用いたとき、認知症が進んだ患者では、この飴を持ち続けることができず、落としてしまう危険性がある。
【0007】
このような問題を解決するため、例えば特許文献1に開示されているような器具がある。これは棒の一端に配置された網状の部材の中に飴を配置し、他端側には取手を設ける構造としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2010-42193号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、特許文献1に記載のようなこれまでの器具は、その構造が非常に複雑であった。また、患者ができるだけ自分で作業できる観点から、より安定して手に保持されるように構成する要望もあった。
【0010】
そこで本発明は、上記問題に鑑み、より簡易な構造であり、患者が持ち易い構造の口腔機能の訓練に用いられる器具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
1つの態様は、口腔機能の訓練のために用いられる器具であって、環状である本体と、本体の環状である内外を連通する第一孔と、本体に設けられ第一孔に対向して設けられた第二孔と、を備える、環状具である。
【0012】
第二孔は本体を貫通していないように構成してもよい。
【0013】
本体は、可撓性を有する弾性部材からなるように構成してもよい。
【0014】
本体には、第一孔を延長するように突起部が設けられてもよい。
【0015】
他の態様は、上記の環状具と、環状具に保持された棒状具と、を有し、棒状具は、棒状である支持棒と、支持棒の一端に配置された、患者の口腔内に含まれるべき部材と、を有し、支持棒が、第一孔を貫通し、第二孔に支持棒の他端が挿入され、患者の口腔内に含まれるべき部材が、本体の環状の外側に配置される、口腔機能リハビリテーション器具である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、より簡易な構造であり、患者が持ち易い構造である口腔機能を訓練するための器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、口腔機能リハビリテーション器具10を正面から見た図である。
図2図2は、口腔機能リハビリテーション器具10の分解図である。
図3図3は、環状具21を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1図2は1つの形態を説明する図であり、口腔機能リハビリテーション器具10を示した図である。図1は口腔機能リハビリテーション器具10を正面から見た図、図2は口腔機能リハビリテーション器具10の分解正面図である。
本形態の口腔機能リハビリテーション器具10は、環状具11及び棒状具15を有している。
【0019】
環状具11は、口腔機能の訓練のために用いられる器具の1つであり、棒状具15を保持して持ち手として機能する。環状具11は、環状である本体12、第一孔13、及び、第二孔14を有している。
【0020】
本体12は環状であり、本形態では円形の環である。ただし、環の形状は特に限定されることはなく四角形や三角形などでもよいし、その他の形状であってもよい。
本体12の正面視(図1図2の視点)における大きさは特に限定されることはないが、図2にAで示した、第一孔13及び第二孔14が並ぶ方向に対して直交する方向(以下、幅方向と記載することがある。)における大きさが、後述する口腔内含有材17の幅方向の大きさ(図2にaで示した大きさ。)より大きいことが好ましい。より好ましくは40mmより大きく150mm以下である。これにより、本体12が患者の口腔内に入り難くなり、誤嚥を起こし難くなる。また、これによりある程度の大きさを確保することができ、患者が掴みやすいため持ち手として利点が高まり、落とし難くもなる。
一方、図2にBで示した、第一孔13及び第二孔14が並ぶ方向(以下、縦方向と記載することがある。)における大きさも、幅方向と同様に、口腔内含有材17の縦方向の大きさより大きいことが好ましい。より好ましくは、40mmより大きく150mm以下である。
【0021】
また、本体12を構成する環状にされた線材の断面形状(線材が延びる方向に直交する断面形状)は、円形、四角形、三角形、星型、不定形、その他の幾何学形状等、適宜設定することができる。
そして、図2にCで示した本体12の線材の幅は、棒状具15の支持棒16の幅方向大きさ(図2にbで示した大きさ。)より大きいことが好ましい。より好ましくは3mmより大きく30mm以下である。従って本体12の線材の断面が円形であるときは直径が3mmより大きく30mm以下であることが好ましい。
この幅Cが支持棒16の幅bより小さいと患者が口腔機能リハビリテーション器具10を落としやすくなる傾向にある。一方、幅Cが支持棒16の幅bに対して大きすぎ、例えば30mmより大きくなると、環状具11における持ち手として機能が低下して掴み難くなる傾向にある。
【0022】
本体12の材料は特に限定されることはないが、可撓性を有する弾性部材により形成されていることが好ましい。これによれば変形が容易であるため患者の手に合った形に変形してフィット感を得ることができるなど、持ち易さ、握り易さを高めることが可能となる。また、このような弾性材料により構成することで、後述する第一孔13及び第二孔14に対して支持棒16を差し込んだときに、支持棒16を締め付けるように配置することができるため、支持棒16を安定して環状具12に保持することができるようになる。
そのための具体的な材料としては例えばシリコーンゴム、エラストマーなどを挙げることができる。
【0023】
第一孔13及び第二孔14は、本体12に設けられた孔であり、ここに棒状具15の支持棒16を差し込んで、棒状具15を環状具11に保持する。
第一孔13と第二孔14とは本体12の対向した位置に配置されていることが好ましい。これにより、円滑に支持棒16を差し込んで第一孔13及び第二孔14に配置することができる。
本形態で第一孔13は貫通孔であり、環状である本体12の環の外側と環の内側とを貫通するように設けられている。
一方、本形態で第二孔14は貫通しない底を有する孔であり、環状である本体12の内側が開口し、環状である本体12の外側には貫通していない。これにより支持棒16の端部を第二孔14の底部で支えることができ、より安定して棒状具15を環状具11に保持することができる。ただし、これに限定されることはなく、第二孔14も貫通孔であってもよい。
【0024】
このように、第一孔13及び第二孔14に支持棒16を差し込むことにより、環状具11に棒状具15を保持することで、棒状具15を環状具11に対して着脱することが可能となる。これにより、環状具11に対して棒状具15を交換することができるためコストの観点から有利である。
そのため、第一孔13、及び第二孔14の開口の面積は、支持棒16の横断面(長手方向に直交する断面)の断面積より若干小さくされていることが好ましい。これにより支持棒16を第一孔13及び第二孔14に差し込んだときに、第一孔13及び第二孔14が支持棒16を締め付けて安定して保持することができる。その他、第一孔13及び第二孔14の内面に突起や切れ目を入れることで挿入しやすくしたり、抜け難くしたりしてもよい。
【0025】
図3には、変形例にかかる環状具21を示した。環状具21には、上記した環状具11に加えて、第一孔13を延長するように本体12の外周側に突起部22を具備している。
これによれば、第一孔13を延長することができるため支持棒16の保持力をさらに高めることができる。また、口腔内含有材17を患者が口に含んだときに、突起部22を患者が口唇で挟むことができるため、口腔内含有材17を患者が口に含んだときの安定性を高めることができる。
突起22の形状は特に限定されることはないが、口腔内含有材17を患者が口に含んだときの心地よさを考慮すると、突起22は頂部が除去された円錐状であることが好ましい。
【0026】
棒状具15は、飴等の患者の口腔内に含有される部材が備えられた器具であり、支持棒16及び口腔内含有材17を有している。
【0027】
支持棒16は棒状であり、その一端に口腔内含有材17が取り付けられている。
支持棒16の長さは特に限定されることはないが、図1に示したように棒状具15が環状具11に取り付けられた姿勢で、口腔内含有材17が環状具11の外側に突出して配置される長さとすることがよい。従って、支持棒16の長さは、図2にBで示した、本体12のうち、第一孔13と第二孔14とが並ぶ方向における本体12の大きさより長くなることが好ましい。
支持棒16の断面形状は特に限定されることはなく、円形、四角形、三角形、星型、不定形、その他幾何学形状等、適宜設定することができる。
【0028】
支持棒16の太さは、該支持棒16を環状具11に差し込んで使用する構造上、本体12より細ければよい。ここで「支持棒の太さが本体より細い」とは、支持棒16を環状具11に差し込んだ状態で、当該差し込まれた部位において支持棒16の全てが本体12の内部に配置される状態を意味する。
支持棒16の太さのより具体的な好ましい範囲は、本体12の太さにもよるが、本体12より細い範囲としつつ、直径が1mmより大きく、10mm以下である。支持棒16が円形断面以外であれば、断面積が0.75mmより大きく75mm以下である。
支持棒16の太さが本体12の太さに対して細すぎると、口腔内含有材17が抜ける可能性が大きくなり、逆に太すぎると支持棒16を環状具11に差し込み難くなる。
【0029】
また、支持棒16のうち、口腔内含有材17が取り付けられる端部は、当該口腔内含有材17が配置される部位に、溝や段差が形成されてもよい。これにより支持棒16から口腔内含有材17が外れることを抑制することができる。
【0030】
口腔内含有材17は、支持棒16の一端に保持される部材であり、患者が口腔内に含むべき材料によりなるものである。具体的には飴等が挙げられる。具体的には飴、キャラメル、ガム、グミ、マシュマロ等が挙げられる。その中でもある程度長い時間、口腔内に含有し続けられる飴がより好ましい。
【0031】
口腔内含有材17の形状や大きさは特に限定されることはないが、口腔内を傷つけ難い観点から球状であることが好ましい。その大きさはすぐに噛み砕いてしまうことを防止するとともに、仮に支持棒から外れても丸呑みをできない大きさを確保する観点から直径が10mm以上であることが好ましい。一方、大きすぎると口に含んだときにむせてしまうことがあるため、直径が40mm以下であることが好ましい。
【0032】
口腔内含有材17は、上記したように飴とすることができるが、その際には、フレーバーや甘味を付けることが好ましい。これにより患者の快適性を高めることができる。フレーバーとしては柑橘系やミント系等があげられ、甘味としてはショ糖が挙げられる。一方、血糖値上昇を防ぐ観点から甘味としてソルビトール、マンニトール、マルチトール、還元麦芽糖水飴、低糖化還元水飴、還元パラチノース、スクラロース、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、アセスルファム等の糖アルコールや人工甘味料を用いても良い。
さらには歯科の観点から、再石灰化効果や抗菌効果が期待できる材料を含ませても良い。具体的には、ラクトフェリン、カゼイン、カゼインフォスフォペプチド‐非結晶リン酸カルシウム複合体、塩化セチルピリジニウム、塩化ペンザルコニウム、イソプロピルメチルフェノール、塩酸クロルヘキシジン、グルコン酸クロルヘキシジン等が挙げられる。
【0033】
以上のような構成を有する口腔機能リハビリテーション器具10は、図1のように、環状具11の第一孔13を支持棒16が貫通し、第二孔14に支持棒16のうち口腔内含有材17が配置されていない端部が挿入されていることで、口腔内含有材17が環状具11の外側に突出して配置されているものとなる。
【0034】
患者は、口腔機能リハビリテーション器具10の本体12を握り、安静な姿勢及び状態で、口腔内含有材17を口に含んでこれを舐めることで訓練をする。これにより患者の咀嚼能力や嚥下能力を維持、改善させることが期待できる。
そして口腔機能リハビリテーション器具10によれば、本体12が大きく環状で形成されているため握りやすいため落とし難い。また、口腔内含有材17を網等を介さずに直接舐めることができるので口腔内における違和感も少ない。
【0035】
また、環状具11、及び、口腔機能リハビリテーション器具10によれば、構造が簡易であるとともに、口腔内に入る部分はほとんどないために衛生的で保守も容易である。また、環状具11に対して棒状具15を着脱可能としたので、棒状具を取り替えることができるため、経済的であるともいえる。
【符号の説明】
【0036】
10 口腔機能リハビリテーション器具
11、21 環状具
12 本体
13 第一孔
14 第二孔
15 棒状具
16 支持棒
17 口腔内含有材
22 突起部
図1
図2
図3