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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】粘着剤層
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/38 20180101AFI20231017BHJP
   C09J 133/04 20060101ALI20231017BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231017BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J133/04
B32B27/00 M
B32B27/30 A
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022531610
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-02-07
(86)【国際出願番号】 KR2020018031
(87)【国際公開番号】W WO2021118247
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-05-31
(31)【優先権主張番号】10-2019-0164158
(32)【優先日】2019-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0167239
(32)【優先日】2019-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、ビュン スー
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヒュン チョル
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヒョン ギュ
【審査官】澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-534391(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0144913(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
B32B 27/00,27/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1領域および第2領域を含む粘着剤層であって、
前記粘着剤層は、アルキル(メタ)アクリレート単位、下記の化学式1の単位、極性官能基含有単位および下記の化学式2の単位を含むアクリル共重合体を含み、
前記アルキル(メタ)アクリレート単位は、炭素数1~10のアルキル基を有し、
前記極性官能基含有単位は、前記アルキル(メタ)アクリレート単位100重量部に対し10重量部以上95重量部以下の割合でアクリル共重合体に含まれ、
前記アクリル共重合体で前記化学式1の単位の重量(A)と前記極性官能基含有単位の重量(B)の比率(A/B)は1.5超過10以下であり、
前記化学式2の単位は前記アルキル(メタ)アクリレート単位100重量部に対し0.001~5重量部の割合で前記アクリル共重合体に含まれる、
前記第1領域および前記第2領域の下記の数式1によるクリープ変形率の差の絶対値が20%以上であり、下記の数式2による回復率の差の絶対値が15%以下である、粘着剤層:
[数式1]
C60=100×(C60.1-C60.2)/C60.2
[数式2]
R60=100×(R60.1-R60.2)/R60.2
数式1および2でDC60はクリープ変形率の差であり、C60.1は前記第1領域の60℃でのクリープ変形率であり、C60.2は前記第2領域の60℃でのクリープ変形率であり、DR60は回復率の差であり、R60.1は前記第1領域の60℃での回復率であり、R60.2は前記第2領域の60℃での回復率である。
[化学式1]
【化1】
化学式1でR は水素またはアルキル基を表し、R は炭素数11~13のアルキル基を表す。
[化学式2]
【化2】
化学式2でR は水素またはアルキル基を表し、R は芳香族ケトン基または(メタ)アクリロイル基である。
【請求項2】
前記第2領域の60℃でのクリープ変形率が100%以上である、請求項1に記載の粘着剤層。
【請求項3】
数式1によるクリープ変形率の差は負数である、請求項1または2に記載の粘着剤層。
【請求項4】
前記第1領域の60℃での回復率が80%以上である、請求項1から3のいずれか一項に記載の粘着剤層。
【請求項5】
数式2による回復率の差は正数である、請求項1から4のいずれか一項に記載の粘着剤層。
【請求項6】
下記の数式3によるクリープ変形率の差の絶対値が5%以上である、請求項1から5のいずれか一項に記載の粘着剤層:
[数式3]
CM20=100×(CM20.1-CM20.2)/CM20.2
数式3でDCM20はクリープ変形率の差であり、CM20.1は前記第1領域の-20℃でのクリープ変形率であり、CM20.2は前記第2領域の-20℃でのクリープ変形率である。
【請求項7】
前記第2領域の-20℃でのクリープ変形率が30%以上である、請求項6に記載の粘着剤層。
【請求項8】
数式3によるクリープ変形率の差は負数である、請求項6または7に記載の粘着剤層。
【請求項9】
下記の数式4による回復率の差の絶対値が20%以下である、請求項6から8のいずれか一項に記載の粘着剤層:
[数式4]
RM20=100×(RM20.1-RM20.2)/RM20.2
数式4でDRM20は回復率の差であり、RM20.1は前記第1領域の-20℃での回復率であり、RM20.2は前記第2領域の-20℃での回復率である。
【請求項10】
前記第1領域の-20℃での回復率が70%以上である、請求項9に記載の粘着剤層。
【請求項11】
数式4による回復率の差は正数である、請求項9または10に記載の粘着剤層。
【請求項12】
結晶性アクリル共重合体を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の粘着剤層。
【請求項13】
融点が-20℃以下であるアクリル共重合体を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の粘着剤層。
【請求項14】
基材フィルム;および前記基材フィルムの一面または両面に形成された請求項1から13のいずれか一項に記載の粘着剤層を含む、粘着フィルム。
【請求項15】
光学フィルム;および前記光学フィルムの一面または両面に形成された請求項1から13のいずれか一項に記載の粘着剤層を含む、光学積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2019年12月10日付で提出された大韓民国特許出願第10-2019-0164158号および2019年12月13日付で提出された大韓民国特許出願第10-2019-0167239号に基づいて優先権を主張し、該当大韓民国特許出願文献に開示された内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本出願は粘着剤層に関する。
【背景技術】
【0003】
フレキシブル(Flexible)デバイスは新しい概念のデバイスであり、その例にはいわゆるフォルダブル(Foldable)デバイスやローラブル(Rollable)デバイスが含まれる。フォルダブルデバイスがフォールディングされたり、ローラブルデバイスがローリングされる時、フォールディング部位またはローリング部位とそうでない部位では異なる類型の力が加えられ、前記フォールディング部位またはローリング部位内でもフォールディング軸またはローリング軸との距離関係によって異なる類型の力が加えられる。
【0004】
デバイスが粘着剤層を含む場合に、図1に例示的に示した通り、フォルダブルデバイスのフォールディング部位内でフォールディング軸と重複するかそれと隣接した部分100では粘着剤層を厚さ方向に圧縮し、長さ方向に伸張させる力が加えられるが、フォールディング軸と遠い外郭のフォールディング部位200では粘着剤層が厚さ方向に膨張する形態で力が加えられることになる。
【0005】
前記のようにフォールディングまたはローリング部位とそうでない部位、そしてフォールディングまたはローリング部位内でも位置によって加えられる力の程度および形態が異なるため、部位にかかわらず同じ物性の粘着剤層が適用されると、少なくとも一個以上の部位で粘着剤層の不良が発生することになる。前記粘着剤層の不良には粘着剤層の浮き、剥離、凝集破壊および/または気泡の発生などが含まれる。
【0006】
このような問題を解決するために、特許文献1などにはフォールディングまたはローリング部位とそうでない部位で互いに異なる物性を有するように製造した粘着剤層が開示されている。
【0007】
特許文献1に開示された方法は、紫外線のような電磁波の照射によって架橋される類型の粘着剤層の一部の領域にのみ電磁波を照射して電磁波が照射された領域とそうでない領域で物性の差を誘導する方式である。
【0008】
しかし、特許文献1には、粘着剤層の電磁波が照射された領域とそうでない領域間の物性の差が具体的にどのように設定されれば、フォルダブルまたはローラブルデバイスで有利な効果が発生するかについては記載されていない。
【0009】
また、特許文献1に開示された粘着剤層では互いに異なる物性を有する領域間の物性の差を大きくしていくのが難しい。
【0010】
すなわち、フレキシブルデバイスでフォールディングまたはローリング部位に適用される粘着剤およびフォールディングまたはローリング部位内でもフォールディングまたはローリング軸と重複するか、隣接した部位に適用される粘着剤は相対的に低い弾性率と高いクリープ変形率(creep strain)を示した方が有利であるが、フォールディングまたはローリング部位以外の部位、そしてフォールディングまたはローリング部位内でもフォールディング軸またはローリング軸とは離れた外郭部位に適用される粘着剤は相対的に高い弾性率および低いクリープ変形率(creep strain)を示した方が裁断性や作業性の側面で有利である。
【0011】
特許文献1に開示された方式は同一の粘着剤層に電磁波の照射量の差を設けて物性の差を誘導する方式である。ところが、前記のような方法では、電磁波の照射量の差による架橋密度の差を通じて粘着剤層に一定水準以上の物性の偏差を誘導することは可能であるが、同一の材料に対して弾性率やクリープ変形率などの物性の偏差を大きくすることには限界がある。
【0012】
また、特許文献1ではフォールディングまたはローリング部位とそうでない部位での物性差については関心を有しているものの、フォールディングまたはローリング部位内でも部位によって異なる類型の力が異なる程度で加えられることについては考慮していない。
【0013】
物性によっては、フォールディングまたはローリング部位に適用される粘着剤と異なる部位に適用される粘着剤間、そしてフォールディングまたはローリング部位内でもフォールディング軸またはローリング軸と重複するか隣接した部位に適用される粘着剤とフォールディング軸またはローリング軸と遠い外郭部位に適用される粘着剤間では物性の差が小さい方が有利な場合もある。例えば、前記弾性率とクリープ変形率の差は大きい方が有利であるが、剥離力や回復率などはできるだけ小さい差を示した方が有利である。
【0014】
ところが、通常粘着剤の剥離力や回復率の差の程度は該当粘着剤の弾性率やクリープ変形率の差の程度と同一の傾向を有しつつ変化するため、同一粘着剤に対して弾性率やクリープ変形率の差は大きくしつつ、剥離力や回復率の差は相対的に小さくすることは非常に難しい問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】韓国公開特許公報第10-2016-0047035号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本出願は粘着剤層に関する。本出願では、互いに物性が異なる第1および第2領域を少なくとも含む粘着剤層であって、弾性率やクリープ変形率(creep strain)のように物性の領域間の差が大きいほど有利な物性の差は領域別に相対的に大きく維持され、剥離力や回復率のように物性の領域間の差が小さいほど有利な物性の差は領域別に相対的に小さく維持される粘着剤層を提供することを一つの目的とする。
【0017】
本出願では前記のような第1および第2領域が同一の組成の粘着剤で形成されている粘着剤層を提供することを一つの目的とする。
【0018】
本出願はまた、フォルダブルデバイスやローラブルデバイスのようなフレキシブルデバイス用粘着剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本明細書で言及する物性の中で測定温度が該当物性に影響を及ぼす場合に特に別途に規定しない限り、前記物性は常温で測定した物性である。
【0020】
本明細書で用語常温は特に加温および減温されていない状態での温度であり、約10℃~30℃の範囲内のいずれか一つの温度、例えば、約15℃以上、18℃以上、20℃以上または約23℃以上でありながら、約27℃以下の温度を意味し得る。また、特に別途に規定しない限り、本明細書で言及する温度の単位は℃である。
【0021】
本明細書で言及する物性の中で測定圧力が該当物性に影響を及ぼす場合に特に別途に規定しない限り、前記物性は常圧で測定した物性である。
【0022】
本明細書で用語常圧は特に加圧および減圧されていない状態での圧力であり、通常大気圧水準である約1気圧程度の圧力を意味する。
【0023】
本明細書で言及する物性の中で測定湿度が該当物性に影響を及ぼす場合に特に別途に規定しない限り、前記物性は前記常温および常圧状態での自然そのままの湿度で測定した物性である。
【0024】
本出願は粘着剤層に関する。本出願の粘着剤層は、第1および第2領域を少なくとも含むことができる。前記第1および第2領域は、互いにクリープ変形率(creep strain)特性および/または貯蔵弾性率特性が異なる領域である。前記クリープ変形率(creep strain)および/または貯蔵弾性率特性が互いに異なるのであれば、第1および第2領域は他の物性は互いに同一であってもよい。
【0025】
前記第1および第2領域は単一の粘着剤層(1層の粘着剤層)内に形成されていてもよい。したがって、前記第1および第2領域は同一の粘着剤層の表面を形成していてもよい。
【0026】
一つの例示において、前記第1および第2領域は該当領域の粘着剤層が同一の組成を有する状態で互いに貯蔵弾性率特性および/またはクリープ変形率(creep strain)特性が異なるように形成されたものであり得る。
【0027】
前記において、第1および第2領域の粘着剤層が同一の組成を有するとは、前記第1および第2領域の粘着剤層がそれぞれ同一の共重合体を含むことを意味する。
【0028】
第1および第2領域がそれぞれ架橋剤を含む場合、該当架橋剤も同一の種類であり得る。
【0029】
前記において、共重合体が同一であるとは、共重合体が同一の種類の単量体単位を実質的に同じ含量で含んでいることを意味する。前記において、実質的に同じ含量は、両共重合体の同一単量体単位の含量が完全に同一であるか、差があるとしてもその差が10重量%以内、9重量%以内、8重量%以内、7重量%以内、6重量%以内、5重量%以内、4重量%以内、3重量%以内、2重量%以内または1重量%以内である場合を意味する。同一の組成の第1および第2領域がそれぞれ2種以上の共重合体を含む場合にも2種以上の共重合体の種類は同一であり、それら間の比率は実質的に同一であってよい。前記において、2種以上の共重合体の実質的に同じ含量は、共重合体間の比率が完全に同一であるか、差があるとしてもその差が10重量%以内、9重量%以内、8重量%以内、7重量%以内、6重量%以内、5重量%以内、4重量%以内、3重量%以内、2重量%以内または1重量%以内である場合を意味する。
【0030】
また、同一の組成の第1および第2領域にそれぞれ同じ架橋剤が含まれる場合、その含量は同一であるか互いに異なり得、含量が異なる場合に第1領域に含まれる架橋剤の含量と第2領域に含まれる架橋剤の含量の差は10重量%以内、9重量%以内、8重量%以内、7重量%以内、6重量%以内、5重量%以内、4重量%以内、3重量%以内、2重量%以内または1重量%以内であり得る。
【0031】
また、本明細書で用語共重合体は、単量体混合物の重合反応の結果物を意味する。また、用語単量体単位は単量体が前記重合反応後に共重合体を形成している状態を意味する。
【0032】
粘着剤層の第1および第2領域は互いに異なるクリープ変形率(creep strain)特性を有することができる。
【0033】
フレキシブルデバイスで、フォールディングまたはローリング部位に適用される粘着剤層は、他の部位に適用される粘着剤層に対しフォールディングまたはローリング時に多くの応力を受け、変形も激しい。また、フォールディングまたはローリング部位内でもフォールディング軸またはローリング軸と重複するか隣接した部位の粘着剤は外郭部位の粘着剤に対し多くの応力を受け、変形が激しい。したがって、前記部位に適用される粘着剤層は変形に効果的に対処し、応力を効率的に緩和できるように形成されることが有利である。
【0034】
例えば、前記第1および第2領域のうち第2領域がフォールディングまたはローリング部位に適用される粘着剤層であるか、あるいは前記第2領域がフォールディング軸またはローリング軸と重複するか、隣接して存在する粘着剤層である場合、前記第1および第2領域のクリープ変形率(60℃)の差の絶対値は20%以上であることが有利であり得る。前記クリープ変形率の差は下記の数式1によって定められ得る。
【0035】
[数式1]
C60=100×(C60.1-C60.2)/C60.2
数式1でDC60はクリープ変形率の差であり、C60.1は前記第1領域の60℃でのクリープ変形率であり、C60.2は前記第2領域の60℃でのクリープ変形率である。
【0036】
他の例示において、前記クリープ変形率の差の絶対値は25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上または80%以上であるか、100%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下または50%以下程度であってもよい。
【0037】
一つの例示において、前記クリープ変形率の差は負数であり得る。
【0038】
クリープ変形率が大きいほどフォールディングまたはローリング時に応力を緩和し変形に効果的に追従できるが、粘着剤層の裁断性と貯蔵安定性などが低下する。したがって、フォールディングまたはローリング部位やフォールディング軸またはローリング軸隣接部位のように変形が激しい部位に使われる粘着剤層とそうでない部位に適用される粘着剤層とのクリープ変形率の差は大きいほど有利であるが、従前の粘着剤層を使う場合、前記のような差を大きく設定することが難しい。しかし、本出願では前記差を効果的に制御することができる。
【0039】
本出願の粘着剤層では前記第2領域のクリープ変形率を相対的に高く維持しつつ、前記第1領域のクリープ変形率を効果的に大きく設定することができ、一例示において、前記第2領域の60℃でのクリープ変形率は100%以上、150%以上、200%以上、250%以上、300%以上、350%以上、400%以上、450%以上または500%以上程度であり得る。前記第2領域の60℃でのクリープ変形率の上限は特に制限されないが、例えば、1,000%以下、950%以下、900%以下、850%以下、800%以下、750%以下、700%以下、650%以下,600%以下、550%以下,500%以下、450%以下または400%以下程度であり得る。このような範囲を有する第2領域がフォールディングまたはローリング部位に適用されたり、フォールディング軸またはローリング軸の近くに適用されると、フォールディングまたはローリング時に加えられる応力を効果的に緩和しつつ変形にもよく追従することができ、このような第2領域のクリープ変形率が第1領域と前記差を示すことによって、裁断性と貯蔵安定性なども確保される粘着剤層が提供され得る。
【0040】
前記粘着剤層の第1および第2領域のクリープ変形率(-20℃)の差の絶対値は5%以上であり得る。前記クリープ変形率の差は下記の数式3により定められ得る。
【0041】
[数式3]
CM20=100×(CM20.1-CM20.2)/CM20.2
数式3でDCM20はクリープ変形率の差であり、CM20.1は前記第1領域の-20℃でのクリープ変形率であり、CM20.2は前記第2領域の-20℃でのクリープ変形率である。
【0042】
他の例示において、前記クリープ変形率の差の絶対値は7%以上、9%以上、11%以上、13%以上、15%以上、17%以上、19%以上、21%以上、23%以上、25%以上、27%以上または29%以上であるか、100%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下または15%以下程度であってもよい。
【0043】
一つの例示において、前記クリープ変形率の差は負数であり得る。
【0044】
一例示において、前記第2領域の-20℃でのクリープ変形率は30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、100%以上、105%以上、110%以上または115%以上程度であり得る。前記-20℃でのクリープ変形率は他の例示において、1,000%以下、950%以下、900%以下、850%以下、800%以下、750%以下、700%以下、650%以下,600%以下、550%以下,500%以下、450%以下、400%以下、350%以下、300%以下、250%以下、200%以下、150%以下、100%以下、90%以下、80%以下または70%以下程度であり得る。
【0045】
前記のような第2領域のクリープ変形率および第1および第2領域のクリープ変形率の比率下で、フォールディングまたはローリング時に加えられる応力を効果的に緩和しつつ変形にもよく追従することができ、裁断性と貯蔵安定性なども確保される粘着剤層が提供され得る。
【0046】
前記特性を有することによって、粘着剤層がフレキシブルデバイスに低温から高温領域に亘って効果的に適用され得る。
【0047】
他の例示において、類似する趣旨で粘着剤層の第1および第2領域は互いに異なる貯蔵弾性率特性を有することができる。
【0048】
例えば、前記第1および第2領域のうち第2領域がフォールディングまたはローリング部位に存在する領域であるか、またはフォールディング軸またはローリング軸と重複するか、隣接して存在する粘着剤層である場合、前記第1および第2領域の貯蔵弾性率(60℃)の差の絶対値は10%以上であることが有利であり得る。前記貯蔵弾性率の差は下記の数式5によって定められ得る。
【0049】
[数式5]
M60=100×(M60.1-M60.2)/M60.2
数式5でMC60は貯蔵弾性率の差であり、M60.1は前記第1領域の60℃での貯蔵弾性率であり、M60.2は前記第2領域の60℃での貯蔵弾性率である。
【0050】
他の例示において、前記貯蔵弾性率の差の絶対値は15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上または45%以上であるか、100%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下または15%以下程度であってもよい。
【0051】
一つの例示において、前記貯蔵弾性率の差は正数であり得る。
【0052】
貯蔵弾性率が小さいほどフォールディングまたはローリング時に応力を緩和し変形に効果的に追従できるが、粘着剤層の裁断性と貯蔵安定性などが低下する。したがって、フォールディング部位やローリング部位に適用される粘着剤、またはフォールディングまたはローリング部位内でもフォールディング軸またはローリング軸と近い部位に適用される粘着剤層とそうでない部位に適用される粘着剤層との貯蔵弾性率の差は大きいほど有利であるが、従前の粘着剤層を使う場合、前記のような差を大きく設定することが難しい。しかし、本出願では前記差を効果的に制御することができる。
【0053】
本出願の粘着剤層では前記第2領域の貯蔵弾性率を相対的に低く維持しつつ、前記第1領域の貯蔵弾性率を効果的に大きく設定することができ、一例示において、前記第2領域の60℃での貯蔵弾性率は50,000Pa以下、45,000Pa以下、40,000Pa以下、35,000Pa以下、30,000Pa以下、25,000Pa以下、20,000Pa以下または15,000Pa以下程度であるか、1,000Pa以上、1500Pa以上、2,000Pa以上、2500Pa以上、3,000Pa以上、3,500Pa以上、4,000Pa以上、4,500Pa以上、5,000Pa以上、5,500Pa以上、6,000Pa以上、6,500Pa以上、7,000Pa以上、7,500Pa以上、8,000Pa以上、8,500Pa以上、9,000Pa以上、9,500Pa以上、10,000Pa以上、11,000Pa以上、12,000Pa以上、13,000Pa以上、14,000Pa以上、15,000Pa以上または16,000Pa以上程度であってもよい。このような範囲を有する第2領域がフォールディングまたはローリング時に変形が多い部位に適用されると、フォールディングまたはローリング時に加えられる応力を効果的に緩和しつつ変形にもよく追従することができ、このような第2領域の貯蔵弾性率が第1領域と前記差を示すことによって、裁断性と貯蔵安定性なども確保される粘着剤層が提供され得る。
【0054】
前記粘着剤層で第1および第2領域の貯蔵弾性率(30℃)の差の絶対値は3%以上であり得る。前記貯蔵弾性率の差は下記の数式6により定められ得る。
【0055】
[数式6]
M30=100×(M30.1-M30.2)/M30.2
数式6でDM30は貯蔵弾性率の差であり、M30.1は前記第1領域の30℃での貯蔵弾性率であり、M30.2は前記第2領域の30℃での貯蔵弾性率である。
【0056】
他の例示において、前記貯蔵弾性率の差の絶対値は5%以上、7%以上、9%以上、11%以上、13%以上または15%以上であるか、100%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下または10%以下程度であってもよい。
【0057】
一つの例示において、前記貯蔵弾性率の差は正数であり得る。
【0058】
一例示において、前記第2領域の30℃での貯蔵弾性率は50,000Pa以下、45,000Pa以下、40,000Pa以下、35,000Pa以下、30,000Pa以下または25,000Pa以下程度であるか、1,000Pa以上、1,500Pa以上、2,000Pa以上、2,500Pa以上、3,000Pa以上、3,500Pa以上、4,000Pa以上、4,500Pa以上、5,000Pa以上、5,500Pa以上、6,000Pa以上、6,500Pa以上、7,000Pa以上、7,500Pa以上、8,000Pa以上、8,500Pa以上、9,000Pa以上、9,500Pa以上、10,000Pa以上、11,000Pa以上、12,000Pa以上、13,000Pa以上、14,000Pa以上、15,000Pa以上、16,000Pa以上、17,000Pa以上、18,000Pa以上、19,000Pa以上、20,000Pa以上、21,000Pa以上、22,000Pa以上、23,000Pa以上または24,000Pa以上程度であってもよい。
【0059】
前記のような第2領域の貯蔵弾性率および第1および第2領域の貯蔵弾性率の比率下で、フォールディングまたはローリング時に加えられる応力を効果的に緩和しつつ変形にもよく追従することができ、裁断性と貯蔵安定性なども確保される粘着剤層が提供され得る。
【0060】
前記特性を有することによって、粘着剤層がフレキシブルデバイスに低温から高温領域に亘って効果的に適用され得る。
【0061】
前記粘着剤層で前記第1および第2領域の貯蔵弾性率(-20℃)の差の絶対値は1%以上であり得る。前記貯蔵弾性率の差は下記の数式7により定められ得る。
【0062】
[数式7]
M20=100×(M20.1-M20.2)/M20.2
数式7でDM20は貯蔵弾性率の差であり、M20.1は前記第1領域の-20℃での貯蔵弾性率であり、M20.2は前記第2領域の-20℃での貯蔵弾性率である。
【0063】
他の例示において、前記貯蔵弾性率の差の絶対値は3%以上、5%以上、7%以上、9%以上、11%以上、13%以上または15%以上であるか、100%以下、95%以下、90%以下、85%以下、80%以下、75%以下、70%以下、65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下、8%以下、6%以下、4%以下または2%以下程度であってもよい。
【0064】
一つの例示において、前記貯蔵弾性率の差は正数または負数であり得る。
【0065】
また、一例示において、前記第2領域の-20℃での貯蔵弾性率は500,000Pa以下、450,000Pa以下、400,000Pa以下、350,000Pa以下、300,000Pa以下、250,000Pa以下、200,000Pa以下、150,000Pa以下、140,000Pa以下、130,000Pa以下または120,000Pa以下程度であるか、10,000Pa以上、15,000Pa以上、20,000Pa以上、25,000Pa以上、30,000Pa以上、35,000Pa以上、40,000Pa以上、45,000Pa以上、50,000Pa以上、55,000Pa以上、60,000Pa以上、65,000Pa以上、70,000Pa以上、75,000Pa以上、80,000Pa以上、85,000Pa以上、90,000Pa以上、95,000Pa以上、100,000Pa以上、110,000Pa以上または115,000Pa以上程度であってもよい。
【0066】
前記のような第2領域の貯蔵弾性率および第1および第2領域の貯蔵弾性率の比率下で、フォールディングまたはローリング時に加えられる応力を効果的に緩和しつつ変形にもよく追従することができ、裁断性と貯蔵安定性なども確保される粘着剤層が提供され得る。
【0067】
また、前記特性を有することによって、粘着剤層がフレキシブルデバイスに低温から高温領域に亘って効果的に適用され得る。
【0068】
本出願の粘着剤層の第1および第2領域は、前記クリープ変形率特性および貯蔵弾性率特性のうちいずれか一つの特性を満足するかあるいは両者をすべて満足してもよい。
【0069】
前記クリープ変形率特性および/または貯蔵弾性率特性を満足する第1および第2領域は、両者がいずれも一定水準以上の回復率を有するように形成され得る。すなわち、前述した通り、フォールディングまたはローリング部位に適用される粘着剤層の領域(例えば、第2領域)は、高いクリープ変形率および/または低い貯蔵弾性率を有することが有利であるが、クリープ変形率が過度に高いか、貯蔵弾性率が過度に低いと、変形(フォールディングまたはローリング)後に回復する特性が低下する。したがって、例えば、フォールディング後に再びデバイスを展開すると、フォールディングされていた部位でフォールディング跡などが観察されたりするという問題が発生し得る。このような場合、前記第2領域は回復率が高いように設定されることが必要であるが、通常クリープ変形率が高いか、貯蔵弾性率が低い領域は回復率が低下する傾向を見せる。しかし、本出願では前記第2領域が第1領域に比べて相対的に高いクリープ変形率および/または低い貯蔵弾性率を示しながらも、前記第1領域と共に一定水準以上の回復率を示すように形成され得る。
【0070】
したがって、一例示において、前記第1および第2領域は下記の数式2による回復率の差の絶対値が15%以下であり得る。
【0071】
[数式2]
R60=100×(R60.1-R60.2)/R60.2
数式2でDR60は回復率の差であり、R60.1は前記第1領域の60℃での回復率であり、R60.2は前記第2領域の60℃での回復率である。
【0072】
前記回復率の差の絶対値は他の例示において、約13%以下、11%以下、9%以下、7%以下、5%以下または3%以下程度であるか、0%以上、0.5%以上、1%以上、1.5%以上、2%以上、2.5%以上、3%以上、3.5%以上、4%以上、4.5%以上または5%以上程度であってもよい。
【0073】
前記回復率の差は正数であり得る。
【0074】
また、前記粘着剤層で前記第1領域の60℃での回復率は80%以上、85%以上または90%以上であるか、100%以下、98%以下、96%以下、94%以下、92%以下または90%以下程度であり得る。
【0075】
一例示において、前記第1および第2領域は下記の数式4による回復率の差の絶対値が20%以下であり得る。
【0076】
[数式4]
RM20=100×(RM20.1-RM20.2)/RM20.2
数式4でDM20は回復率の差であり、RM20.1は前記第1領域の-20℃での回復率であり、RM20.2は前記第2領域の-20℃での回復率である。
【0077】
前記回復率の差の絶対値は他の例示において、約19%以下、約17%以下、約15%以下、約13%以下、11%以下、9%以下、7%以下、5%以下または3%以下程度であるか、0%以上、0.5%以上、1%以上、1.5%以上、2%以上、2.5%以上、3%以上、3.5%以上、4%以上、4.5%以上、5%以上、5.5%以上、6%以上、6.5%以上、7%以上、7.5%以上、8%以上、8.5%以上または9%以上程度であってもよい。
【0078】
前記回復率の差は正数であり得る。
【0079】
また、前記粘着剤層で前記第1領域の-20℃での回復率は70%以上、75%以上、80%以上、85%以上または90%以上であるか、100%以下、98%以下、96%以下、94%以下、92%以下または90%以下程度であり得る。
【0080】
前記のように、第1および第2領域を形成することによってフレキシブルデバイスに適用されて繰り返される変形(フォールディングおよび/またはローリング)に効果的に対応し、変形前後に不良(例えば、変形跡の観察など)がなく、低温から高温領域に亘って設計された特性が安定的に維持される粘着剤層が提供され得る。
【0081】
前記クリープ変形率特性および/または貯蔵弾性率特性を満足する第1および第2領域は、両者がいずれも一定水準以上の剥離力を有するように形成され得る。すなわち、前述した通り、フォールディングまたはローリング部位でない領域に適用される粘着剤層は低いクリープ変形率および/または高い貯蔵弾性率を有することが有利であるが、クリープ変形率が過度に低いか、貯蔵弾性率が過度に高いと、該当領域の剥離力が低くなるのが一般的な傾向であり、このような場合、使用過程で浮きや剥離または気泡の発生などの不良が発生しやすい。しかし、本出願では前記第1領域が第2領域に比べて相対的に低いクリープ変形率および/または高い貯蔵弾性率を示しながらも、前記第2領域と共に一定水準以上の剥離力を示すように形成され得る。
【0082】
したがって、前記クリープ変形率特性および/または貯蔵弾性率特性を満足する粘着剤層で前記第1および第2領域は下記の数式8による剥離力の差の絶対値が40%以下であり得る。
【0083】
[数式8]
PG=100×(PG.1-PG.2)/PG.2
数式8でDPGは剥離力の差であり、PG.1は前記第1領域のガラスに対する剥離力であり、PG.2は前記第2領域のガラスに対する剥離力である。
【0084】
前記剥離力は常温で測定した常温剥離力である。
【0085】
前記剥離力の差の絶対値は他の例示において、約35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下または5%以下程度であるか、0%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上または25%以上程度であってもよい。
【0086】
前記剥離力の差は負数であり得る。
【0087】
また、前記粘着剤層で前記第1領域のガラスに対する常温剥離力は500gf/inch以上、700gf/inch以上、900gf/inch以上、1000gf/inch以上または1100gf/inch以上であるか、3000gf/inch以下、2800gf/inch以下、2600gf/inch以下、2400gf/inch以下、2200gf/inch以下、2000gf/inch以下、1800gf/inch以下、1600gf/inch以下、1400gf/inch以下または1200gf/inch以下程度であってもよい。
【0088】
また、一例示において、前記クリープ変形率特性および/または貯蔵弾性率特性を満足する粘着剤層で前記第1および第2領域は下記の数式9による剥離力の差の絶対値が50%以下であり得る。
【0089】
[数式9]
PI=100×(PI.1-PI.2)/PI.2
数式9でDPIは剥離力の差であり、PI.1は前記第1領域のポリイミドフィルムに対する剥離力であり、PI.2は前記第2領域のポリイミドフィルムに対する剥離力である。
【0090】
前記剥離力は常温で測定した常温剥離力である。
【0091】
前記剥離力の差の絶対値は他の例示において、約45%以下、約40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下または10%以下程度であるか、0%以上、5%以上、10%以上、15%以上または20%以上程度であってもよい。
【0092】
前記剥離力の差は負数であり得る。
【0093】
また、前記粘着剤層で前記第1領域のポリイミドフィルムに対する常温剥離力は500gf/inch以上、700gf/inch以上、900gf/inch以上または1000gf/inch以上であるか、3000gf/inch以下、2800gf/inch以下、2600gf/inch以下、2400gf/inch以下、2200gf/inch以下、2000gf/inch以下、1800gf/inch以下、1600gf/inch以下、1400gf/inch以下、1200gf/inch以下または1000gf/inch以下程度であってもよい。
【0094】
前記のように、第1および第2領域を形成することによってフレキシブルデバイスに適用されて繰り返される変形(フォールディングおよび/またはローリング)に効果的に対応し、変形前後に不良(例えば、変形跡の観察など)がなく、浮き、剥離および/または気泡の発生などが発生しない粘着剤層が提供され得る。
【0095】
本出願の粘着剤層は少なくとも一つの前記第1領域および少なくとも一つの前記第2領域を含む限り、多様な形態で形成され得る。
【0096】
第1および第2領域はそれぞれ1個または2個以上形成されていてもよい。また、前記貯蔵弾性率および/またはクリープ変形率特性が前記第1および第2領域とは異なる第3領域も粘着剤層に形成されていてもよい。
【0097】
一つの例示において、前記粘着剤層内で貯蔵弾性率および/またはクリープ変形率が異なる領域の数は2個~50個の範囲内であり得る。前記において、貯蔵弾性率および/またはクリープ変形率が異なる領域の数が2個である場合は粘着剤層が前記第1領域と第2領域をそれぞれ1個ずつ含む場合である。前記貯蔵弾性率および/またはクリープ変形率が異なる領域の数は他の例示において、3個以上、4個以上、5個以上、6個以上、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上または12個以上であるか、49個以下、48個以下、47個以下、45個以下、40個以下、35個以下、30個以下または25個以下程度であってもよい。しかし、前記内容は本出願の例示的な事項に該当する。前記貯蔵弾性率および/またはクリープ変形率が異なる領域の数は具体的なフレキシブルデバイスの形態により変更され得る。
【0098】
粘着剤層内で前記第1および第2領域を含んだ貯蔵弾性率および/またはクリープ変形率が異なる領域の形成形態も具体的な適用用途により変更され得、これは特に制限されない。
【0099】
例えば、前記粘着剤層の前記第1および第2領域は、図2または図3に示された通り、フォールディングまたはローリングされる軸3000と並ぶ方向に形成されていてもよい。このとき、前記フォールディングまたはローリングされる軸は前記第1および第2領域のうち第2領域に含まれ得る。図2は前記第2領域がフォールディングまたはローリングされる軸と並ぶように1個形成された場合の例示であり、図3は前記第2領域がフォールディングまたはローリングされる軸と並ぶように2個形成された場合の例示である。前記第2領域は2個以上形成されていてもよいことは言うまでもない。
【0100】
また、前記第2領域は前記フォールディングまたはローリングされる軸と水平になるように形成されていてもよく、一定範囲の角度をなすように形成されていてもよい。例えば、前記第2領域は線の形態で形成されながら、前記フォールディングまたはローリングされる軸と約0度超過~180度以下の角度をなしながら形成されていてもよい。
【0101】
また、前記第1および第2領域は図4に例示的に示された通り、前記第1および第2領域のうちいずれか一つの領域(図4の場合、第2領域)が図形2000を形成するように備えられ得る。図4では第2領域が図形2000を形成する場合が例示されているが、前記図形2000は第1領域によって形成されてもよい。前記図形の形態も制限はなく、円形、楕円形、三角形、四角形および/またはその他の多角形などの多様な形態で形成され得る。
【0102】
粘着剤層内で前記第1および第2領域を含んだ貯蔵弾性率および/またはクリープ変形率が異なる領域の形成形態は前記例示的な場合に限定されず多様に変更され得る。
【0103】
一方、前記図2図4は前記第1および第2領域を含む粘着剤層の表面を観察した場合の例示である。
【0104】
一つの例示において、前記第1および第2領域を含んだ貯蔵弾性率および/またはクリープ変形率が異なる領域は粘着剤層の内部に形成されていてもよい。例えば、図5に示された通り、粘着剤層を側面から観察した時に前記第1領域1000と第2領域2000は粘着剤層の厚さ方向に沿って形成されていてもよい。図5で符号4000は後述する基材フィルムを示す。
【0105】
粘着剤層の一面または両面に後述する基材フィルムが存在する場合、図5に例示的に示した通り、前記第1領域1000と第2領域2000を含む貯蔵弾性率および/またはクリープ変形率が異なる領域は少なくとも前記基材フィルム4000と接するように形成されていてもよい。このような方式で前記領域を形成することによって、変形(フォールディングまたはローリングなど)時に基材に発生する応力を効果的に緩和し、被着体の屈曲に沿って前記粘着剤層が付着され得るため、段差埋め立て特性を向上させることができる。
【0106】
前記粘着剤層は公知の方法を含む多様な方式で形成することができる。この過程で後述する本出願の粘着剤層が適用されることによって、前記言及した領域間のクリープ変形率特性および/または貯蔵弾性率特性の差は大きく維持されるとともに、回復率および/または剥離力は一定水準以上の小さい差で形成される第1および第2領域を形成することができる。
【0107】
例えば、前記第1および第2領域は、粘着剤に印加される熱および/または照射される電磁波の量に差を設けて領域間の架橋密度の差を誘発する方式を通じて形成することができる。前記において、電磁波の範囲にはマイクロ波(microwaves)、赤外線(IR)、紫外線(UV)、X線およびガンマ線はもちろん、アルファ粒子線(alpha-particle beam)、プロトンビーム(proton beam)、ニュートロンビーム(neutron beam)または電子線(electron beam)のような粒子ビームなどが含まれ得、通常的には紫外線または電子線などであり得る。
【0108】
前記のような方式によって、通常架橋密度が高く形成された領域が前記第1領域となり、相対的に架橋密度が低く形成された領域が前記第2領域となる。
【0109】
前記において、電磁波の照射によって架橋密度の差を誘発する方式は特に制限されない。
【0110】
例えば、目的とする第1および第2領域のパターンによって粘着剤層の各箇所での電磁波の照射量および/または照射時間を制御することによって、架橋密度を調節することができる。例えば、粘着剤層で電磁波の照射量が多いか照射時間が長くなると粘着剤の架橋密度が増加して第1領域が形成され、その反対に電磁波の照射量が少ないか照射時間が短くなると第2領域が形成され得る。また、紫外線照射量が0である場合にも第2領域が形成され得る。
【0111】
前記のように電磁波の照射の差を設けて架橋密度を制御する方式は特に制限されない。例えば、レーザー加工装置またはステッパー(露光装置)等を利用して、電磁波をスポット(spot)照射する方法;電磁波に対する遮断または遮光マスクを使う方法などで電磁波照射の差を誘発することができる。
【0112】
前記スポット照射による方法は、電磁波をスポット照射しながら粘着剤層を移動させたり、またはスポット照射される電磁波自体を粘着剤層の平面上で移動させて架橋密度の偏差を誘発する方法である。この過程で、スポット照射される電磁波の直径、照射光源の移動経路、照射量または照射時間の制御を通じて架橋密度の偏差を誘発することができる。
【0113】
一方、遮断マスクを使って第1および第2領域を具現しようとする場合、遮断マスクを媒介として粘着剤層に電磁波が照射され得る。
【0114】
図6は一つの例示的な粘着剤層の第1および第2領域の形成方法を示す模式図であり、基材フィルムa上に形成された粘着剤層b上に透明な離型フィルムcを積層した後、遮断マスクdを媒介として電磁波を照射する過程を示す図面である。図面で電磁波は矢印で表示されている。図面では遮断マスクdの除去後に追加的に弱い電磁波を照射する場合が示されているが、前記後続工程は遂行されなくてもよい。
【0115】
前記において、遮断マスクは照射される電磁波を遮断して透過させないことができる素材で製造され得る。前記マスクを構成する素材は特に制限されず、例えばこの分野で公知になっている一般的な素材を適切に採用して使うことができる。
【0116】
遮光マスクを使って第1および第2領域などを形成してもよい。このような場合、前記粘着剤層には前記遮光マスクを媒介として電磁波が照射される。
【0117】
図7は、基材フィルムa上に形成された粘着剤層b上に透明な離型フィルムcを形成した後、遮光マスクeを媒介として紫外線を照射する過程を示す図面である。照射される電磁波は矢印で表示されている。
【0118】
前記において、遮光マスクは照射される電磁波に対する遮光率が約40%~95%または50%~90%の範囲内である素材で製造されたマスクを意味する。前記マスクを構成する素材は特に制限されず、この分野で公知になっている一般的な素材を適切に採用して使うことができる。このような、遮光マスクに所定のパターンを形成し、これを媒介として電磁波を照射することになると、図7に示された通り、同じ照射条件下でも、パターンが形成された部分は電磁波が透過して強い電磁波が照射され、パターンが形成されていない部分は照射される電磁波の一部のみが透過して弱い電磁波が照射されることになる。これに伴い、強い電磁波が照射された領域と弱い電磁波が照射された領域はそれぞれ第1および第2領域として形成され得る。
【0119】
他の例示においては、印刷パターンが形成された透明フィルム(例えば離型フィルムなど)を使って前記第1および第2領域を形成してもよい。すなわち、照射される電磁波を吸収する特性を有するインクで離型フィルム上にパターンを印刷した後、該当印刷パターンを経由して電磁波が粘着剤層に照射されるようにすることによって前記第1および第2領域を形成することができる。図8は基材フィルムa、粘着剤層bおよび離型フィルムcが順次形成された構造で前記離型フィルムc上に印刷パターンc1、c2、c3、c4、c5、c6、c7を形成し、電磁波(矢印)を照射する場合の模式図である。この方法では印刷パターンc1、c2、c3、c4、c5、c6、c7それぞれの電磁波に対する透過率を異なるように設定することによって、より微細に第1および第2領域が形成された粘着剤層を具現することができる。
【0120】
本出願では前記方式の他にも多様な方式を適用して架橋密度の差を誘導し、その結果第1および第2領域を形成することができる。
【0121】
一方、前記過程で照射される電磁波の量にも特別な制限はない。適切な第1および第2領域が形成されるように前記電磁波の形態も選択され得、例えば、前記電磁波は、約1,000mJ/cm~5,000mJ/cmの範囲内の光量で照射することができる。このとき、照射される電磁波の波長にも特に制限はなく、粘着剤層の架橋が可能な波長の電磁波が照射され得る。一例示において、前記電磁波はFusion D-bulb装備の光源を通じて照射され得る。
【0122】
本出願の前記粘着剤層はアクリル共重合体を含むことができる。用語アクリル共重合体は、アクリル単量体単位を全体単量体単位で50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上または90重量%以上含む共重合体を意味する。前記アクリル単量体単位の共重合体内での比率は100重量%以下、99重量%以下、98重量%以下、97重量%以下、96重量%以下または95重量%以下程度であってもよい。
【0123】
前記において、アクリル単量体は、アクリル酸、メタクリル酸またはその誘導体(例えば、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステル)を意味する。
【0124】
粘着剤層は、前記アクリル共重合体を重量割合で50重量%以上、55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上または90重量%以上含むことができる。粘着剤層内でアクリル共重合体の含量比率は100重量%以下、99重量%以下、98重量%以下、97重量%以下、96重量%以下または95重量%以下程度であってもよい。
【0125】
前記アクリル共重合体としては、アルキル(メタ)アクリレート単位、下記の化学式1の単位、極性官能基含有単位および下記の化学式2の単位を含むアクリル共重合体を使うことができる。
【0126】
前記において、単位は単量体単位を意味する。
【0127】
[化学式1]
【化1】
化学式1でRは水素またはアルキル基を表し、Rは炭素数11~13のアルキル基を表す。
【0128】
[化学式2]
【化2】
化学式2でRは水素またはアルキル基を表し、Rは芳香族ケトン基または(メタ)アクリロイル基である。
【0129】
前記のような単量体単位を含むアクリル共重合体は、目的とする第1および第2領域を形成することに効果的である。
【0130】
特に、前記アクリル共重合体は、前記化学式1の単位および/または極性官能基含有単位の所定比率下でいわゆる結晶性共重合体で形成されるか、結晶性共重合体と類似する性質を有することになる。本明細書で用語結晶性共重合体は、本明細書の実施形態に記載されたDSC(Differential Scanning Calorimeter)測定方法で所定範囲で融点(melting point)が確認される共重合体を意味する。
【0131】
通常アクリル共重合体は非結晶性の共重合体として知られている。しかし、前記化学式1の単位が所定割合で存在する場合、そして場合によって前記化学式1の単位が所定割合で存在する極性官能基と相互作用する場合、このような共重合体は結晶性を示すか、少なくとも結晶性と類似する性質を示し得る。このように結晶性を有するか、あるいは結晶性と類似する性質を示す共重合体が適用される場合、前述した特性の第1および第2領域を有する粘着剤層を効率的に形成することができる。したがって、このような共重合体が適用された粘着剤層を通じて前記の第1および第2領域を含む粘着剤層を効果的に形成することができる。
【0132】
前記共重合体に含まれるアルキル(メタ)アクリレート単位としては、例えば、炭素数1~10のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートから由来した単位を使うことができる。前記アルキル基は、他の例示において、炭素数2~20、炭素数3~10、炭素数4~10、炭素数4~10、炭素数4~9または炭素数4~8のアルキル基であり得る。前記アルキル基は直鎖または分枝鎖であり得、置換または非置換されたものであり得る。一例示において、前記アルキル基として、直鎖または分枝鎖でありながら、非置換されたアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレートを使って前記単位を形成することができる。
【0133】
前記アルキル(メタ)アクリレートの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルブチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレートまたはイソオクチル(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0134】
前記アクリル共重合体は、前記アルキル(メタ)アクリレート単位を約10~80重量%の範囲内の割合で含むことができる。前記アルキル(メタ)アクリレート単位の比率は他の例示において、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上または45重量%以上であるか、75重量%以下、70重量%以下、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下または45重量%以下程度であってもよい。このような範囲内で目的とする粘着剤層を効果的に形成することができる。
【0135】
前記極性官能基含有単位は、極性官能基を有する単量体によって形成された単位である。このような単量体は通常重合性基(ex.炭素炭素二重結合)および極性官能基を同時に含む。
【0136】
極性官能基を有する単量体としてはヒドロキシ基含有単量体、カルボキシ基含有単量体および窒素含有単量体などが挙げられ、本出願では特にヒドロキシ基含有単量体を適用することが有利であるが、これに制限されるものではない。
【0137】
前記ヒドロキシ基含有単量体としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートまたは2-ヒドロキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられ、カルボキシ基含有単量体の例としては、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシ酢酸、3-(メタ)アクリロイルオキシブチル酸、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル酸、アクリル酸二重体、イタコン酸、マレイン酸およびマレイン酸無水物などが挙げられ、窒素含有単量体の例としては、(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドンまたはN-ビニルカプロラクタムなどが挙げられるが、これに制限されるものではない。前記のうち一種または2種以上の混合が使われ得る。
【0138】
前記極性官能基含有単位は前記アルキル(メタ)アクリレート単位100重量部に対し約5~100重量部の割合でアクリル共重合体に含まれ得、このような比率下で粘着剤層の耐久性と粘着性と剥離力を安定的に維持することができる。前記極性官能基含有単位は他の例示において、前記アルキル(メタ)アクリレート単位100重量部に対し10重量部以上、15重量部以上、20重量部以上、25重量部以上、30重量部以上、35重量部以上、40重量部以上または45重量部以上含まれるか、95重量部以下、90重量部以下、85重量部以下、80重量部以下、75重量部以下、70重量部以下、65重量部以下、60重量部以下、55重量部以下、50重量部以下、45重量部以下、40重量部以下、35重量部以下、30重量部以下または25重量部以下で含まれてもよい。
【0139】
前記化学式1の単位は長鎖のアルキル基を含む単位であり、このような単位は一定比率以上共重合体に含まれ、必要に応じて極性官能基と相互作用して共重合体に結晶性または結晶性と類似する性質を付与することができる。
【0140】
化学式1の単位でRは水素または炭素数1~4のアルキル基であり得、具体的には水素、メチルまたはエチル基であり得る。
【0141】
化学式1でRは炭素数11~13のアルキル基であり、このようなアルキル基は直鎖または分枝鎖であり得、置換または非置換されたものであり得る。一例示において、前記Rは直鎖でありながら、非置換されたアルキル基であり得る。例えば、ラウリル(メタ)アクリレートおよび/またはテトラデシル(メタ)アクリレートなどを使って化学式1の単位を形成することができる。
【0142】
前記化学式1の単位は前記アルキル(メタ)アクリレート単位100重量部に対し約50~300重量部の割合でアクリル共重合体に含まれ得る。前記化学式1の単位の比率は他の例示において、前記アルキル(メタ)アクリレート単位100重量部に対し約55重量部以上、60重量部以上、65重量部以上、70重量部以上、75重量部以上、80重量部以上、85重量部以上、90重量部以上または95重量部以上であるか、280重量部以下、260重量部以下、240重量部以下、220重量部以下、200重量部以下、180重量部以下、160重量部以下、140重量部以下、120重量部以下、100重量部以下または90重量部以下程度であってもよい。
【0143】
アクリル共重合体の化学式2の単位は、側鎖に芳香族ケトン基または(メタ)アクリロイル基を含む単位である。
【0144】
粘着剤層内で前記芳香族ケトン基または(メタ)アクリロイル基は、その状態で存在するか下記の水素除去反応またはラジカル反応を経た後の状態で存在してもよい。
【0145】
化学式2の単位で芳香族ケトン基は、電磁波に露出する時に重合体鎖から水素除去(hydrogen abstraction)を誘導する芳香族ケトン基またはそのような芳香族ケトン基を含む置換基を意味する。
【0146】
粘着剤層が電磁波に露出する時、前記芳香族ケトン基は他の重合体鎖からまたは重合体鎖の他の部分から水素原子を除去することができる。このような除去はラジカルの形成を引き起こし、ラジカルは重合体鎖の間にまたは同一重合体鎖内に架橋結合を形成することができる。このような芳香族ケトン基の範疇には、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、またはアントラキノンの誘導体のような芳香族ケトン基が含まれる。
【0147】
このような芳香族ケトン基を有する化学式2の単位を誘導できる単量体には、4-ベンゾイルフェニル(メタ)アクリレート、4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-4´-メトキシベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ-4´-メトキシベンゾフェノン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-4´-ブロモベンゾフェノンおよび/または4-アクリロイルオキシエトキシ-4´-ブロモベンゾフェノンなどがあるが、これに制限されるものではない。
【0148】
一方、前記化学式2の単位で(メタ)アクリロイル基は、適切なラジカル開始剤の存在下で電磁波に露出する時にフリーラジカル重合を誘導する(メタ)アクリロイル基またはそれを含む置換基を意味する。このような(メタ)アクリロイル基は電磁波の照射によって前記芳香族ケトン基と類似する作用をすることができる。
【0149】
前記Rが(メタ)アクリロイル基である化学式2の単位は、例えば、前駆体共重合体を製造し、次いで不飽和試薬化合物とさらに反応させて(メタ)アクリロイル基を導入して形成することができる。通常的に前記(メタ)アクリロイル基の導入は(1)前駆体共重合体上の求核性基と不飽和試薬化合物上の求電子性基(すなわち、不飽和試薬化合物は求電子性基および(メタ)アクリロイル基の両方を含む)の間の反応、または(2)前駆体共重合体上の求電子性基と不飽和試薬化合物上の求核性基(すなわち、不飽和試薬化合物は求核性基および(メタ)アクリロイル基の両方を含む)の間の反応を伴う。求核性基と求電子性基の間のこれらの反応は典型的に開環反応、付加反応または縮合反応である。
【0150】
このような場合、前駆体共重合体はヒドロキシ、カルボキシ(-COOH)、または無水物(-O-(CO)-O-)基を有する。前駆体共重合体がヒドロキシ基を有する場合、不飽和試薬化合物は(メタ)アクリロイル基に加えて時々カルボキシ(-COOH)、イソシアネート(-NCO)、エポキシ(すなわち、オキシラニル)または無水物基を有する。前駆体共重合体がカルボキシ基を有する場合、不飽和試薬化合物は(メタ)アクリロイル基に加えて時々ヒドロキシ、アミノ、エポキシ、イソシアネート、アジリジニル、アゼチジニルまたはオキサゾリニル基を有する。前駆体(メタ)アクリレート共重合体が無水物基を有する場合、不飽和試薬化合物は(メタ)アクリロイル基に加えて時々ヒドロキシまたはアミン基を有する。
【0151】
一つの例示において、前駆体共重合体はカルボキシ基を有し、不飽和試薬化合物はエポキシ基を有することができる。例示的な不飽和試薬化合物には、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートおよび4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルが含まれる。他の例において、前駆体共重合体は無水物基を有し、これはヒドロキシ-置換されたアルキル(メタ)アクリレート、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどである不飽和試薬化合物と反応する。さらに他の例において、前駆体共重合体はヒドロキシ基を有し不飽和試薬化合物はイソシアネート基および(メタ)アクリロイル基を有する。そのような不飽和試薬化合物にはイソシアネートアルキル(メタ)アクリレート、例えばイソシアネートエチル(メタ)アクリレートが含まれるがこれに限定されない。
【0152】
前記(メタ)アクリロイル基は一例示において、化学式CH=CHR-(CO)-Q-L-(ここで、Lは連結基でありQはオキシ(-O-)または-NH-である)で表示され得る。前記でLはアルキレン、アリーレンまたはこれらの組み合わせを含み、(メタ)アクリロイル基を形成するように反応する、前駆体共重合体および特定不飽和試薬化合物により選択的に-O-、-O-(CO)-、-NH-(CO)-、-NH-、またはこれらの組み合わせをさらに含む。一部の特定例において、前記(メタ)アクリロイル基は、前駆体共重合体の化学式-(CO)-O-R-OHで表示されるヒドロキシ-含有基と化学式HC=CHR-(CO)-O-R-NCOで表示されるイソシアネートアルキル(メタ)アクリレートである不飽和試薬化合物との反応によって形成されるHC=CHR-(CO)-O-R-NH-(CO)-O-R-O-(CO)-である。前記でRおよびRはそれぞれ独立的にアルキレン基、例えば1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、または1~4個の炭素原子を有するアルキレンである。また、前記でRはメチルまたは水素である。
【0153】
一方、化学式2の単位でRは、水素または炭素数1~4のアルキル基であり得、具体的には水素、メチルまたはエチル基であり得る。
【0154】
前記化学式2の単位は前記アルキル(メタ)アクリレート単位100重量部に対し約0.001~5重量部の割合でアクリル共重合体に含まれ得、このような比率下で電磁波の照射によって目的とする第1および第2領域を効果的に形成することができる。
【0155】
前記化学式2の単位の比率は他の例示において、前記アルキル(メタ)アクリレート単位100重量部に対し約0.003重量部以上、0.005重量部以上、0.007重量部以上、0.009重量部以上、0.01重量部以上、0.015重量部以上、0.02重量部以上、0.025重量部以上、0.03重量部以上、0.035重量部以上、0.04重量部以上、0.045重量部以上、0.05重量部以上、0.055重量部以上、0.06重量部以上、0.065重量部以上、0.07重量部以上、0.075重量部以上、0.08重量部以上、0.085重量部以上、0.09重量部以上、0.1重量部以上であるか、4.5重量部以下、4重量部以下、3.5重量部以下、3重量部以下、2.5重量部以下、2重量部以下、2重量部以下、1.5重量部以下、1重量部以下、0.5重量部以下、0.3重量部以下、0.1重量部以下、0.08重量部以下、0.06重量部以下、0.04重量部以下または0.02重量部以下程度であってもよく、このような比率下で電磁波の照射によって目的とする第1および第2領域を効果的に形成することができる。
【0156】
アクリル共重合体は、前述した単量体単位に追加で、目的を毀損しない限り(例えば、共重合体の結晶性を毀損しない限り)、他の単量体単位を適切に含むことができる。
【0157】
一つの例示において、前記粘着剤層に含まれるアクリル共重合体は結晶性アクリル共重合体であり得る。前述した通り用語結晶性共重合体は、本明細書の実施形態に記載されたDSC(Differential Scanning Calorimeter)測定方法で所定範囲で融点(melting point)が確認される共重合体を意味する。
【0158】
一つの例示において、前記アクリル共重合体としては、前記方式で確認される融点が約-20℃以下程度である結晶性アクリル共重合体を使うことができる。前記結晶性アクリル共重合体の融点は他の例示において、約-25℃以下、-30℃以下、-35℃以下または-40℃以下であるか、-100℃以上、-95℃以上、-90℃以上、-85℃以上、-80℃以上、-75℃以上、-70℃以上、-65℃以上、-60℃以上、-55℃以上、-50℃以上または-45℃以上程度であってもよい。このような融点を有するアクリル共重合体は、目的により電磁波の照射前後に適切な貯蔵弾性率、クリープ変形率、剥離力および回復率を有する粘着剤層を形成することができる。
【0159】
前記結晶性アクリル共重合体の具体的な組成は特に制限されない。一例示において、前記結晶性アクリル共重合体は前述した4種の単位を少なくとも含む共重合体であり得る。ただし、前述したアクリル共重合体がすべて結晶性を示すものではない。アクリル共重合体が結晶性を示すためには前述した単位の中で化学式1の単位がアルキル(メタ)アクリレート単位100重量部に対し少なくとも70重量部以上含まれる必要がある。結晶性アクリル共重合体で前記化学式1の単位の比率は、他の例示において、前記アルキル(メタ)アクリレート単位100重量部に対し75重量部以上、80重量部以上、85重量部以上、90重量部以上、95重量部以上または100重量部以上であるか、2000重量部以下、1500重量部以下、1000重量部以下、900重量部以下、800重量部以下、700重量部以下、650重量部以下,600重量部以下、550重量部以下,500重量部以下、450重量部以下、400重量部以下、350重量部以下、300重量部以下、250重量部以下、200重量部以下または150重量部以下程度であってもよい。
【0160】
また、結晶性アクリル共重合体で前記化学式1の単位の重量(A)と前記極性官能基含有単位の重量(B)の比率(A/B)は、1.5超過であり得る。前記比率(A/B)は他の例示において、1.7以上、1.9以上、2.1以上、2.3以上、2.5以上、2.7以上、2.9以上、3.1以上、3.3以上、3.5以上、3.7以上または3.9以上であるか、10以下、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2.5以下または2以下程度であってもよい。また、結晶性アクリル共重合体で前記極性官能基含有単位はヒドロキシ基含有単位であり得る。
【0161】
また、結晶性アクリル共重合体では、前記アルキル(メタ)アクリレート単位を約20~70重量%の範囲内の割合で含むことができる。前記アルキル(メタ)アクリレート単位の比率は他の例示において、25重量%以上、30重量%以上、35重量%以上、40重量%以上または45重量%以上であるか、65重量%以下、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下または45重量%以下程度であってもよい。このような範囲内で目的とする粘着剤層を効果的に形成することができる。
【0162】
理由は明確でないが、前記割合で含まれる各単量体単位の相互作用または規則性によってアクリル共重合体に結晶性が付与され、融点が確認されるものと考えられる。
【0163】
前記アクリル共重合体としては、重量平均分子量が100万以上である共重合体を使うことができる。本明細書で重量平均分子量はGPC(gel permeation chromatography)により測定されたポリスチレン換算値を意味する。
【0164】
前記共重合体の重量平均分子量は、一例示において110万以上、120万以上、130万以上、140万以上、150万以上、160万以上、170万以上、180万以上、190万以上または200万以上であるか,500万以下、400万以下、300万以下、250万以下または200万以下程度であってもよい。
【0165】
通常、共重合体の重量平均分子量が低く設定されるほど、電磁波の照射による物性(貯蔵弾性率および/またはクリープ変形率)の変化が大きいため、第1および第2領域間の物性の差を大きく具現するためにはできるだけ低い重量平均分子量を有する共重合体を使うことが有利である。ところが、共重合体の重量平均分子量が低いと、高温および/または高湿条件下での耐久性の側面で不利である。しかし、本出願の場合、前述した特定共重合体を使うことによって、重量平均分子量を適正な水準に維持した状態でも第1および第2領域を効果的に具現することができる。
【0166】
前記粘着剤層は、架橋剤を追加で含むことができる。架橋剤は、前記アクリル共重合体と反応して架橋構造を具現していてもよい。
【0167】
架橋剤の種類は特に限定されず、例えばイソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アジリジン系化合物および金属キレート系化合物のような一般的な架橋剤を使うことができる。このような類型の架橋剤は熱の印加によって架橋構造を具現するいわゆる熱架橋剤であり、後述するラジカル架橋剤とは異なるものである。前記イソシアネート系化合物の具体的な例としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソボロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネートおよび前記のうちいずれか一つのポリオール(ex.トリメチロールプロパン)との反応物からなる群から選択された一個以上が挙げられ;エポキシ系化合物の具体的な例としてはエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、N,N,N´,N´-テトラグリシジルエチレンジアミンおよびグリセリンジグリシジルエーテルからなる群から選択された一個以上が挙げられ;アジリジン系化合物の具体的な例としてはN,N´-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、N,N´-ジフェニルメタン-4,4´-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリエチレンメラミン、ビスイソフタロイル-1-(2-メチルアジリジン)およびトリ-1-アジリジニルホスフィンオキシドからなる群から選択された一個以上が挙げられるが、これに制限されるものではない。また、前記で金属キレート系化合物の具体的な例としては、アルミニウム、鉄、亜鉛、錫、チタン、アンチモン、マグネシウムおよび/またはバナジウムのような多価金属がアセチルアセトンまたはアセト酢酸エチルなどに配位している化合物などが挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0168】
粘着剤層で前記架橋剤は前記アクリル共重合体100重量部に対して0.01重量部~10重量部または0.01重量部~5重量部の量で含まれ得る。前記範囲で粘着剤層の凝集力と耐久性などを考慮して調節され得る。一つの例示において、前記架橋剤の比率は、約0.05重量部以上、約0.1重量部以上、約0.15重量部以上、約0.2重量部以上または約0.25重量部以上であるか、約4重量部以下、約3重量部以下、約2重量部以下、約1重量部以下、約0.8重量部以下、約0.6重量部以下または約0.4重量部以下程度であってもよい。
【0169】
粘着剤層は前記架橋剤として、前記熱架橋剤とは異なる類型の架橋剤として、いわゆるラジカル架橋剤を含むことができる。このような架橋剤はラジカル反応によって架橋構造を具現する。このようなラジカル架橋剤としては、いわゆる多官能性アクリレートが例示され得、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペート(neopentylglycol adipate)ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバル酸(hydroxyl puivalic acid)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(dicyclopentanyl)ジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアヌレート、アリル(allyl)化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチルプロパンジ(メタ)アクリレート、アダマンタン(adamantane)ジ(メタ)アクリレートまたは9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン(fluorine)などのような2官能性アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、3官能型ウレタン(メタ)アクリレートまたはトリス(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアヌレートなどの3官能型アクリレート;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレートまたはペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの4官能型アクリレート;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートなどの5官能型アクリレート;およびジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートまたはウレタン(メタ)アクリレート(ex.イソシアネート単量体およびトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートの反応物などの6官能型アクリレートなどが挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0170】
粘着剤層で前記ラジカル架橋剤も目的により適正割合で存在することができ、例えば、前記アクリル共重合体100重量部に対して0.01重量部~10重量部または0.01重量部~5重量部の量で含まれ得る。
【0171】
ただし、前記ラジカル架橋剤は必須成分には該当しない。すなわち、目的とする第1および第2領域の形成のためにラジカル架橋剤は粘着剤層に含まれなくてもよい。
【0172】
粘着剤層は、前記成分の他にも必要に応じて適正な添加成分を含むことができ、例えば、ラジカル開始剤や紫外線吸収剤、光安定剤、可塑剤などの成分を追加で含んでもよい。
【0173】
このような本出願の粘着剤層の厚さは特に制限されず、適用される用途を考慮して通常の粘着剤層の厚さを有することができる。
【0174】
本出願はまた、基材フィルムおよび前記基材フィルムの一面または両面に形成された前記粘着剤層を含む粘着フィルムまたは光学積層体に関する。
【0175】
すなわち、本出願の粘着剤層は、基材フィルムの一面または両面に形成されて粘着フィルムを形成したり、光学フィルムである前記基材フィルムの一面または両面に形成されて光学積層体を形成することができる。
【0176】
この時、適用され得る前記基材フィルムの種類は特に制限されない。前記基材フィルムとしては通常的に粘着フィルムの形成に適用され得る基材フィルムが適用され得る。
【0177】
例えば、基材フィルムとしては、PET(poly(ethylene terephthalate))フィルム、PTFE(poly(tetrafluoroethylene))フィルム、PP(polypropylene)フィルム、PE(polyethylene)フィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、COP(cyclic olefin polymer)フィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン-ビニルアセテートフィルム、エチレン-プロピレン共重合体フィルム、エチレン-アクリル酸エチル共重合体フィルム、エチレン-アクリル酸メチル共重合体フィルムおよび/またはポリイミドフィルムなどが使われ得るが、これに制限されるものではない。
【0178】
前記のような基材フィルムの厚さなどは特に制限されず、目的に適合した範囲内で適正な厚さを有することができる。
【0179】
また、基材フィルムとして光学フィルムが適用されるのであれば、前記光学フィルムの種類にも特別な制限がない。一例示において、前記光学フィルムは偏光フィルム、偏光板あるいは位相差フィルムなどであり得る。このような場合にも前記光学フィルムは目的により適正な範囲の厚さを有することができる。
【0180】
前記粘着フィルムまたは光学積層体はまた、必要に応じて前記粘着剤層を使用する前まで保護するための離型フィルムまたは保護フィルムを追加で含むことができる。
【0181】
本出願はまた、前記粘着剤層、粘着フィルムまたは光学積層体を含むフレキシブルデバイスに関する。前記デバイスで前記粘着剤層、粘着フィルムまたは光学積層体の適用形態には特別な制限はない。例えば、前記粘着剤層は、前記デバイスでいわゆるOCA(Optically Clear Adhesive)またはOCR(Optically Clear Resin)の用途で使われ得、したがって前記粘着剤層、粘着フィルムまたは光学積層体の適用形態は通常のOCAまたはOCRの適用形態と同一であってもよい。
【0182】
このような場合に一例示において、前記フレキシブルデバイスは、ディスプレイパネルおよび前記ディスプレイパネルの一面または両面に存在する前記粘着剤層、粘着フィルムまたは光学積層体を含むことができる。このような場合に前記ディスプレイパネルは、一個以上のフォールディング軸またはローリング軸を通じてフォールディングまたはローリングされ得るように構成されていてもよい。また、このような場合、前記粘着剤層は前述した第2領域が前記フォールディング軸またはローリング軸と重複され得るようにデバイスに含まれていてもよい。
【0183】
前記において、第2領域が前記フォールディング軸またはローリング軸と重複するとは、前記ディスプレイパネルのディスプレイ面を正面から見る時前記第2領域と前記フォールディング軸またはローリング軸が重なることを意味し得る。
【0184】
前記のようなフレキシブルデバイスを構成する他の要素は特に制限はなく、公知になっているフレキシブルデバイスの構成要素が制限なく採用され得る。
【発明の効果】
【0185】
本出願では、互いに物性が異なる第1および第2領域を少なくとも含む粘着剤層であって、弾性率やクリープ変形率(creep strain)のように物性の領域間の差が大きいほど有利な物性の差は領域別に相対的に大きく維持され、剥離力や回復率のように物性の領域間の差が小さいほど有利な物性の差は領域別に相対的に小さく維持される粘着剤層を提供することができる。
【0186】
本出願では前記第1および第2領域が同一の組成の粘着剤で形成されている粘着剤層を提供することができる。
【0187】
本出願はまた、フォルダブルデバイスやローラブルデバイスのようなフレキシブルデバイス用粘着剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0188】
図1】フォルダブルデバイスでフォールディング時に発生する応力による変形を説明するための例示的な図面である。
図2】粘着剤層で第1および第2領域の形成形態を例示的に示した図面である。
図3】粘着剤層で第1および第2領域の形成形態を例示的に示した図面である。
図4】粘着剤層で第1および第2領域の形成形態を例示的に示した図面である。
図5】粘着剤層で第1および第2領域の形成形態を例示的に示した図面である。
図6】粘着剤層を形成するための電磁波の照射過程を模式的に表現した図面である。
図7】粘着剤層を形成するための電磁波の照射過程を模式的に表現した図面である。
図8】粘着剤層を形成するための電磁波の照射過程を模式的に表現した図面である。
図9】クリープ変形率および回復率を測定する過程で使うグラフを例示的に表現した図面である。
図10】ダイナミックフォールディングテストで適用された試片の構造を示す図面である。
図11】ダイナミックフォールディングテストが遂行される過程を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0189】
以下、実施形態を通じて本出願を具体的に説明するが、本出願の範囲は下記の実施形態によって制限されるものではない。
【0190】
1.貯蔵弾性率の評価
貯蔵弾性率はARES G2(Advanced Rheometric Expansion System G2)(TA社)を使って評価した。厚さが約0.8mm程度である粘着剤層を直径が約8mm程度である円形に裁断して試片を製造した。前記粘着剤層は厚さが約25μm程度である粘着剤層を前記0.8mm程度の厚さとなるように重ねて製造した。直径が約8mmであるパラレルプレートフィクスチャ(parallel plate fixture)を使って前記試片に対して測定温度での貯蔵弾性率を評価した。前記評価時に評価条件は周波数1Hzおよびストレイン(strain)5%にした。
【0191】
2.クリープ変形率(Creep)および回復率評価
クリープ変形率(Creep)および回復率は次の方式で評価した。厚さが約0.8mm程度である粘着剤層を直径が約8mm程度である円形に裁断して試片を製造した。前記粘着剤層は厚さが約25μm程度である粘着剤層を前記0.8mm程度の厚さとなるように重ねて製造した。
【0192】
ARES G2(Advanced Rheometric Expansion System G2)(TA社)装備を使って前記試片を直径が約8mmであるパラレルプレートフィクスチャ(parallel plate fixture)に装着し、シアー(shear)方向に約10,000Pa程度のストレスを600秒の間試片に加え、ストレスを除去した後の変形率を図9に示された通り、確認して評価した。
【0193】
図9のグラフでx軸はストレスが加えられ始めた時点を0秒とする時間の経過を示す軸であり、y軸は粘着剤層の変形量(strain、%)を示す軸であって、前記変形量は下記の数式Aにより計算した結果である。
【0194】
[数式A]
変形量(単位:%)=100×(L-L)/L
数式AでLは粘着剤層の変形方向(ストレスが加えられた方向)への変形後の長さ(単位:mm)であり、Lは粘着剤層の変形前の初期厚さ(単位:mm)である。
【0195】
前記のような評価によって確認される粘着剤層の最大変形量(図9の10)をクリープ変形率値として指定した。
【0196】
また、回復率は下記の数式Bによって指定した。
【0197】
[数式B]
R%=100×(C-S)/C
数式BでR%は前記回復率であり、Cは前記クリープ変形率値(Creep、最大変形率)であり、Sは、前記約10,000Paのストレスを600秒の間試片に加えた後にストレスを除去し、再び600秒が経過した時点での試片の変形率(例えば、図9の20)である。
【0198】
3.剥離力評価
測定対象である粘着フィルム(離型フィルム/粘着剤層/基材フィルムの構造)を幅が約25mm程度であり、長さが約100mm程度である長方形に裁断して試片を製造した。引き続き離型フィルムを剥離し、粘着剤層をソーダライムガラス(soda lime glass)またはポリイミドフィルムにJIS Z 0237の規定により2kgのローラを使って付着し、常温で1日放置した。その後、TA(Texture Analyzer)装備(Stable Micro System社)を使って常温で180度の剥離角度および0.3m/minの剥離速度で粘着剤層を剥離して剥離力を測定した。
【0199】
4.融点およびガラス転移温度の評価
共重合体の融点およびガラス転移温度は、通常のDSC(Differential Scanning Calorimeter)装備を使った測定方法により測定した。装備としてはDSC-STAR3装備(Mettler Toledo社)を使った。試料(共重合体)約10mgを専用パン(pan)に密封し、昇温条件を10℃/minにして吸熱および発熱量を温度に応じて確認して融点などを測定した。
【0200】
5.重量平均分子量の評価
共重合体の重量平均分子量(Mw)は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)を使って測定し、測定条件は下記の通りである。重量平均分子量測定時に検量線の製作には標準ポリスチレン(Aglient system(製))を使って測定結果を換算した。
【0201】
<GPC測定条件>
測定機:Aglient GPC(Aglient 1200 series、U.S.)
コラム:PL Mixed B 2個連結
コラム温度:40℃
溶離液:THF(Tetrahydrofuran)
流速:1.0μL/min
濃度:~1mg/mL(100μl injection)
【0202】
6.ダイナミックフォールディングテスト
ダイナミックフォールディングテストは、図10に示されたような試片を製造して遂行した。図10に示された試片のように、両面にハードコーティング層100が形成された厚さ約50μm程度であるポリイミドフィルム200、粘着剤層300、偏光板400、粘着剤層300およびディスプレイパネル500を順次積層して製造された積層体を、横の長さが約7.8cmであり、縦の長さが約17cm程度である長方形の形態に裁断して試片を製造した。引き続き図11に示された通り、前記試片を5mm間隔の平行板の間に挟んで折り畳むフォールディングを25℃で20万回繰り返し、サンプルを回収した後にサンプルでの気泡の発生、浮き/剥離の発生およびハードコーティング層のクラックの発生などの不良を肉眼で観察した。前記不良のうち一つでも発生した場合をNGとして評価し、前記不良がすべて発生していない場合をPASSとして評価した。
【0203】
製造例1.共重合体(A)の製造
2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)、ラウリルアクリレート(LA)、4-ヒドロキシブチルアクリレート(HBA)および4-ベンゾイルフェニルメタクリレート(BPMA)を50:40:10:0.05の重量比率(2-EHA:LA:HBA:BPMA)で反応器内の溶媒であるエチルアセテートに投入し、ラジカル開始剤(2,2´-Azobis(4-methoxy-2,4-dimethylvaleronitrile))を約500ppm追加した後に約50℃で約8時間の間重合反応させて重合物(共重合体(A))を製造した。
【0204】
また、前記共重合体(重合物)(A)はガラス転移温度(Tg)が約-60℃程度であり、融点が約-40℃程度であった。
【0205】
製造例2~16.共重合体の製造
【0206】
適用された単量体の重量比率および重合物(共重合体)の重量平均分子量を下記の表1に示されたようになるようにしたことを除いては製造例1と同一にして共重合体(重合物)を製造した。
【0207】
【表1】
【0208】
実施形態1.
製造例1の共重合体(重合物)(A)100重量部対比約0.3重量部のイソシアネート架橋剤(xylylene diisocyanate)を配合して粘着剤組成物を製造した。前記製造された粘着剤組成物を基材フィルム(PET(poly(ethylene terephthalate))のフィルム上にコンマコーター(comma coater)で塗布し、130℃で約3分程度維持して厚さが約25μm程度である粘着剤層を形成した。
【0209】
実施形態2.
製造例1の共重合体(重合物)(A)の代わりに製造例2の共重合体(重合物)(B)を使ったことを除いては実施形態1と同一にして粘着剤層を形成した。
【0210】
実施形態3.
製造例1の共重合体(重合物)(A)の代わりに製造例3の共重合体(重合物)(C)を使ったことを除いては実施形態1と同一にして粘着剤層を形成した。
【0211】
実施形態4.
製造例1の共重合体(重合物)(A)の代わりに製造例4の共重合体(重合物)(D)を使ったことを除いては実施形態1と同一にして粘着剤層を形成した。
【0212】
実施形態5.
製造例1の共重合体(重合物)(A)の代わりに製造例5の共重合体(重合物)(E)を使ったことを除いては実施形態1と同一にして粘着剤層を形成した。
【0213】
試験例1.クリープ変形率および回復率の評価
実施形態および比較例の粘着剤層に対して紫外線を照射した場合、および照射していない場合におけるクリープ変形率および回復率をそれぞれ評価し、その結果を下記の表2および表3に記載した。
【0214】
前記において、紫外線の照射は、Fusion D-bulb装備の光源で紫外線を約3,600mJ/cm程度の光量で粘着剤層に照射して遂行した。
【0215】
【表2】
【0216】
【表3】
【0217】
前記実施形態1~5の場合の数式1および3によるクリープ変形率の差および数式2および4による回復率の差は下記の表4に整理された通りである。
【0218】
【表4】
【0219】
表2~表4の結果から本出願に係る粘着剤層は、紫外線が照射された領域とそうでない領域で相対的に大きいクリープ変形率の差を示すとともに、回復率の差は相対的に小さく制御されることを確認することができる.これに伴い、本出願の粘着剤層は、例えば、特許文献1に開示された通り、マスクを適用したパターン露光技術などに適用される場合に、クリープ変形率の差は大きく維持されながら、回復率の差は相対的に小さく維持される多領域粘着剤層を形成できるという点を確認することができる。
【0220】
試験例2.貯蔵弾性率および剥離力の評価
実施形態および比較例の粘着剤層に対して紫外線を照射した場合、および照射していない場合における貯蔵弾性率および剥離力をそれぞれ評価し、その結果を下記の表5および表6に記載した。前記で紫外線の照射は、試験例1の場合と同一に遂行した。下記で貯蔵弾性率の単位はPaである。
【0221】
【表5】
【0222】
【表6】
【0223】
前記実施形態1~5の粘着剤層の第1および第2領域に対する数式5~7による貯蔵弾性率の差は下記の表7に整理された通りであり、数式8および9による剥離力の差は下記の表8に整理された通りである。
【0224】
【表7】
【0225】
【表8】
【0226】
表5~表8の結果から本出願に係る粘着剤層は、紫外線が照射された領域とそうでない領域で相対的に大きい貯蔵弾性率の差を示すとともに、剥離力の差は相対的に小さく制御されることを確認することができる。これに伴い、本出願の粘着剤層は、例えば、特許文献1に開示された通り、マスクを適用したパターン露光技術などに適用される場合に貯蔵弾性率の差は大きく維持されながら、剥離力の差は相対的に小さく維持される多領域粘着剤層を形成できるという点を確認することができる。
【0227】
試験例3.ダイナミックフォールディングテスト
各実施形態の粘着剤層にマスクを媒介とした紫外線照射によって図2に示されたような第1領域1000および第2領域2000を形成し、前述した方式でダイナミックフォールディングテストを遂行した。ダイナミックフォールディングテストでフォールディング軸3000は第2領域2000の中心部と図2のように重複するようにした。その結果、実施形態の粘着剤層の場合はいずれも反復的なフォールディング後に不良が発生せず、フォールディング後にフォールディング跡も観察されなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11