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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】ウエーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20231017BHJP
【FI】
H01L21/78 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019078270
(22)【出願日】2019-04-17
(65)【公開番号】P2020177994
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110003524
【氏名又は名称】弁理士法人愛宕綜合特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】竹村 優汰
【審査官】三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-139362(JP,A)
【文献】特開平06-224296(JP,A)
【文献】特開2009-021317(JP,A)
【文献】特開2008-004806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法であって、
ウエーハを保持手段に保持する保持工程と、
分割予定ラインに関連する領域を撮像手段で撮像し、切削ブレードと分割予定ラインとを一致させるアライメント工程と、
切削ブレードを分割予定ラインに位置付けて切削する切削工程と、
を含み、
該アライメント工程の前、又は後に、最も外側にある最外分割予定ラインを検出する最外側検出工程を実施し、
分割予定ラインが切削され形成された切削溝を該撮像手段によって撮像し、撮像された分割予定ラインが、切削工程の後の工程においても特定可能な空切りを含まない最外分割予定ラインから数えて何番目の分割予定ラインの切削溝であるかが記憶される切削溝記憶工程が含まれるウエーハの加工方法。
【請求項2】
該最外側検出工程は、ウエーハに形成された特徴点と該最外分割予定ラインとの位置関係情報を予め記憶しておき、該撮像手段によって撮像されたウエーハの該特徴点と該位置関係情報とに基づいて該最外分割予定ラインを検出する請求項1に記載のウエーハの加工方法。
【請求項3】
該特徴点は、ウエーハの結晶方位を示すための形状によって特定される請求項2に記載のウエーハの加工方法。
【請求項4】
該切削工程において、該最外側検出工程によって検出された最外分割予定ラインから順次切削加工が実施される請求項1乃至3のいずれかに記載のウエーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IC、LSI等のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハは、ダイシング装置によって個々のデバイスチップに分割され携帯電話、パソコン等の電気機器に利用される。
【0003】
ダイシング装置は、ウエーハを保持する保持手段と、該保持手段に保持されたウエーハを撮像し、分割すべき領域である分割予定ラインを検出して切削ブレードと分割すべき領域との位置合わせ(アライメント)を実施する撮像手段と、該保持手段に保持されたウエーハを切削する切削ブレードを回転可能に備えた切削手段と、該保持手段と該切削手段とをX軸方向に相対的に加工送りする加工送り手段と、該保持手段と該切削手段とをX軸方向と直交するY軸方向に相対的に割り出し送りする割り出し送り手段と、ダイシング装置の作動部等を制御する制御手段とから概ね構成されていて、ウエーハを分割予定ラインに沿って高精度に切削することができる(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平07-045556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来におけるアライメントでは、ウエーハを撮像手段によって撮像して検出される分割予定ラインを、X軸方向に沿った方向に位置付けると共に、切削ブレードと分割予定ラインとをX軸方向において一致させてはいるものの、撮像手段によって検出される分割予定ラインが、最も外側にある分割予定ライン(以下「最外分割予定ライン」という。)からみて何番目であるのかについては検出していない。したがって、実際に分割予定ラインに沿った切削加工を開始するに際しては、保持手段上におけるウエーハ位置付け誤差範囲内で存在し得る最大領域を考慮して、余裕を見て実際にウエーハがある領域よりも外側から切削を開始し、何本か空切りをしてから順次分割予定ラインを切削する。さらに、ウエーハ上の所定の方向の分割予定ラインのすべてに対して切削加工を実施した後も、ウエーハが存在し得る最大領域を考慮して、何本か空切りとなる切削が続けられる。このように実施される空切りによって、ウエーハを個々のデバイスチップに分割する際の生産性が悪化するという問題がある。
【0006】
また、従来のダイシング装置においては、切削加工を実施する際に、所定方向の分割予定ラインに対して実施した切削加工の本数は制御手段に記憶されているものの、空切り加工と実際にウエーハを切削した加工とを区別せずに該本数をカウントしている。よって、ウエーハに対して切削加工を実施している最中に切削ブレードが破損した場合、空切りを含む切削加工の本数の中で何番目の切削加工を実施している最中に切削ブレードの破損が生じたのかは把握できても、何本目の切削加工から実際にウエーハへの切削が開始されたのかが把握されていないことから、最外分割予定ラインからみて何番目の分割予定ラインにおいて切削ブレードが破損したのか検証できないという問題がある。
【0007】
さらに、定期的に、又は任意的に撮像手段によって切削加工を施した分割溝を撮像して、切削溝の幅、チッピング等の切削溝の状態を記憶する等しておき、後工程においてデバイスチップの品質に問題があることが判明した場合に、ウエーハ上のいずれの分割予定ラインに施された切削加工に原因があったのかを遡って検証しようとしても、撮像された分割溝が、ウエーハ上において最外分割予定ラインからみて何番目の分割予定ラインを切削したものであるのかが把握されておらず、いずれの分割予定ラインにおいて加工不良が発生したのかを追及することが困難であるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記事実に鑑みなされたものであり、その主たる技術課題は、空切りすることなく効率よく分割予定ラインを切削することができ、切削加工がウエーハ上のいずれの分割予定ラインを切削するものであるのかを明確に特定できるウエーハの加工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、複数のデバイスが分割予定ラインによって区画され表面に形成されたウエーハを個々のデバイスチップに分割するウエーハの加工方法であって、ウエーハを保持手段に保持する保持工程と、分割予定ラインに関連する領域を撮像手段で撮像し、切削ブレードと分割予定ラインとを一致させるアライメント工程と、切削ブレードを分割予定ラインに位置付けて切削する切削工程と、を含み、該アライメント工程の前、又は後に、最も外側にある最外分割予定ラインを検出する最外側検出工程を実施し、分割予定ラインが切削され形成された切削溝を該撮像手段によって撮像し、撮像された分割予定ラインが、切削工程の後の工程においても特定可能な空切りを含まない最外分割予定ラインから数えて何番目の分割予定ラインの切削溝であるかが記憶される切削溝記憶工程が含まれるウエーハの加工方法が提供される。
【0010】
該最外側検出工程は、ウエーハに形成された特徴点と該最外分割予定ラインとの位置関係情報を予め記憶しておき、該撮像手段によって撮像されたウエーハの該特徴点と該位置関係情報とに基づいて該最外分割予定ラインを検出することが好ましい。
【0011】
該特徴点は、ウエーハの結晶方位を示すための形状によって特定されるようにしてもよい。また、該切削工程において、該最外側検出工程によって検出された最外分割予定ラインから順次切削加工が実施されるようにすることが好ましい。さらに、該分割予定ラインが切削され形成された切削溝を該撮像手段によって撮像し、撮像された分割予定ラインが、最外分割予定ラインから数えて何番目の分割予定ラインの切削溝であるかが記憶される切削溝記憶工程を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のウエーハの加工方法は、ウエーハを保持手段に保持する保持工程と、分割予定ラインに関連する領域を撮像手段で撮像し、切削ブレードと分割予定ラインとを一致させるアライメント工程と、切削ブレードを分割予定ラインに位置付けて切削する切削工程と、を含み、該アライメント工程の前、又は後に、最も外側にある最外分割予定ラインを検出する最外側検出工程を実施し、分割予定ラインが切削され形成された切削溝を該撮像手段によって撮像し、撮像された分割予定ラインが、切削工程の後の工程においても特定可能な空切りを含まない最外分割予定ラインから数えて何番目の分割予定ラインの切削溝であるかが記憶される切削溝記憶工程が含まれることにより、空切りを実施することなく効率よく分割予定ライン切削することができ、切削加工がウエーハ上のいずれの分割予定ラインを加工するものであるのかを明確に特定できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態のウエーハの加工方法に好適なダイシング装置の斜視図である。
図2】保持工程により保持されたウエーハの平面図である。
図3】アライメント工程において、撮像手段によりウエーハを撮像する態様を示す斜視図である。
図4】(a)アライメント工程におけるウエーハの平面図、(b)アライメント工程完了前の表示手段における表示、(c)アライメント工程完了後の表示手段における表示を示す図である。
図5】(a)最外側検出工程におけるウエーハの平面図、(b)最外側検出工程においてマクロモードの撮像手段で撮像した画像、(c)最外側検出工程においミクロモードの撮像手段で撮像した画像を示す図である。
図6】(a)切削工程においてウエーハが切削される態様を示す斜視図、(b)切削工程によって形成された切削溝を撮像した画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のウエーハの加工方法に係る実施形態について添付図面を参照して、詳細に説明する。
【0015】
図1には、本実施形態を実施するのに好適なダイシング装置1の斜視図が示されている。ダイシング装置1は、本実施形態における被加工物であるウエーハ10に切削加工を施す装置である。以下に、図1を参照しながら、ダイシング装置1について説明する。
【0016】
ダイシング装置1は、基台2を備え、基台2には、ダイシングテープTを介して環状のフレームFと一体化されたウエーハ10を複数枚収容可能なウエーハカセット3が配設される。ウエーハカセット3が載置されるテーブルは、昇降可能に構成されている。
【0017】
ウエーハカセット3の後方には、ウエーハカセット3から切削加工前のウエーハ10を搬出するとともに、加工後のウエーハ10をウエーハカセット3に搬入する搬出入手段5が配設されている。ウエーハカセット3と搬出入手段5との間には、搬出入対象のウエーハ10が一時的に載置され、フレームFに保持されたウエーハ10を一定の位置に位置合わせする仮置き手段7が配設されている。
【0018】
仮置き手段7の近傍には、ウエーハ10を保持するフレームFを吸着して搬送する旋回アームを有する搬送手段8が配設されている。搬出入手段5によってウエーハカセット3から仮置き手段7上に搬出されたウエーハ10は、搬送手段8により吸着されて搬送される。
【0019】
基台2には、保持手段として機能するチャックテーブル9が配設されている。ウエーハ10は、搬送手段8によって、図1にて搬送位置に位置付けられたチャックテーブル9上に搬送される。チャックテーブル9に搬送されたウエーハ10は、ダイシングテープTを介してチャックテーブル9に吸引保持される。チャックテーブル9は、切削手段30とチャックテーブル9とを相対的に加工送りする加工送り手段(図示は省略)を備える。該加工送り手段は、チャックテーブル9を、図中矢印Xで示すX軸方向に進退動可能に構成される。また、チャックテーブル9のX軸方向の移動経路の上方には、ウエーハ10の表面を撮像する撮像手段20が配設されている。
【0020】
撮像手段20は、後述する制御手段50(図3を参照)に接続されている。撮像手段20によって撮像された画像情報は、制御手段50に伝送されて適宜記憶され、制御手段50に接続された後述する表示手段6に表示させることが可能である。また、ダイシング装置1には、チャックテーブル9の位置を検出する図示しない位置検出手段が配設されており、撮像手段20によって撮像された画像の位置が、ダイシング装置1上におけるいずれの座標位置にあるのかを正確に検出することが可能である。さらに、撮像手段20は、チャックテーブル9上の比較的広い領域を撮像するマクロモードと、狭い領域を拡大して撮像するミクロモードに切り替え可能に構成されている。
【0021】
図1に戻り説明を続けると、撮像手段20のX軸方向で隣接する位置には、切削手段30が配設されている。切削手段30は、切削ブレード32が回転可能に装着され、チャックテーブル9に保持されたウエーハ10を切削し、個々のデバイスチップに分割する。切削手段30は、図示しない移動手段により、切削ブレード32の位置を矢印Yで示すY軸方向、及び矢印Zで示すZ軸方向に移動させることができる。
【0022】
切削手段30によって切削加工が施されたウエーハ10は、チャックテーブル9と共に図中手前側の搬送位置に移動され、搬送手段41により吸着されて、切削加工によって切削屑等が付着し汚染されたウエーハ10を洗浄する洗浄手段40まで搬送される。
【0023】
洗浄手段40によって洗浄され乾燥処理が施されたウエーハ10は、搬送手段8によりウエーハ10を支持するフレームFが吸着されて仮置き手段7に搬送され、搬出入手段5によりウエーハカセット8の所定の収納場所に戻される。
【0024】
基台2の前面側には、オペレータが加工条件等の装置に対する指示を入力するための操作手段4が配設される。また、基台2の上部には、作業者に対する案内画面や後述する撮像手段によって撮像された画像が表示される表示手段6が設けられている。表示手段6は、切削加工に関連する情報等を表示するだけでなく、表示画面に触れることで情報を入力可能なタッチパネル機能を備えることができる。
【0025】
ダイシング装置1は、概ね上記したとおりの構成を備えており、ダイシング装置1によって実施される本実施形態のウエーハの加工方法について、以下に説明する。
【0026】
本実施形態のウエーハの加工方法を実施するに際し、図2に示すような複数のデバイス12が分割予定ライン14によって区画され表面に形成されたウエーハ10を用意する。ウエーハ10には、ウエーハ10の結晶方位を特定するために形成されたノッチ16が形成されている。分割予定ライン14の方向は、結晶方位に基づいており、分割予定ライン14は、ノッチ16とウエーハ10の中心とを結ぶ方向に沿う第一の方向と、該第一の方向に直交する第二の方向に沿って形成される。
【0027】
ウエーハ10の所定の位置、例えば、複数のデバイス12が形成された領域の外側のいずれかの位置に、デバイス12とは明確に区別される特徴点18が形成される。本実施形態の特徴点18は、例えば、十字形状をなしており、ウエーハ10の表面に対するレーザー加工、エッチング、プリント加工等により形成される。該第一の方向に平行な分割予定ライン14において、最も外側にあり且つ最初に切削される分割予定ライン14を最外分割予定ライン14(X1)とし、該第二の方向に平行な分割予定ライン14において、最も外側にあり且つ最初に切削される分割予定ライン14を最外分割予定ライン14(Y1)とする。制御手段50には、特徴点18の基準位置(中心)に対する最外分割予定ライン14(X1)の位置関係情報(例えば、第二の方向における右方向(正の方向)に170mm離れた位置にあること)、及び、特徴点18の基準位置(中心)に対する最外分割予定ライン14(Y1)の位置関係情報(例えば、第一の方向における下方向(負の方向)に150mm離れた位置にあること)が、予め記憶される。
【0028】
ウエーハ10は、図示しない周知のテープ貼り機によって、ダイシングテープTを介して、環状のフレームFに支持される。その際、ウエーハ10は、フレームFの開口Faの略中心に位置付けられると共に、ノッチ16の方向が所定の方向になるように位置付けられる。以上のように形成されたウエーハ10は、フレームFに支持された状態で、ウエーハカセット8に複数枚収容されてダイシング装置1に搬入され、カセット昇降手段上に載置される。
【0029】
ウエーハカセット8に収容された状態のウエーハ10を用意したならば、操作手段4、又は表示手段6によって所定の加工条件を入力し、切削加工の開始を指示することにより、切削加工が開始される。切削加工が開始されると、図1に示すウエーハカセット3に収容されたウエーハ10が、搬出入手段5によって引き出され、仮置き手段7、及び搬送手段8よってウエーハ10を保持手段として機能するチャックテーブル9に搬送され、チャックテーブル9上に載置されて、図示しない吸引手段の作動により吸引保持される(保持工程)。
【0030】
上記した保持工程を実施し、チャックテーブル9上にウエーハ10を吸引保持したならば、分割予定ライン14に関連する領域を撮像手段20で撮像し、切削ブレード32と分割予定ライン14とを一致させるアライメント工程を実施する。より具体的には、図示しない加工送り手段を作動して、チャックテーブル9をX軸方向に移動して、図3に示すように、ウエーハ10を、撮像手段20の直下に位置付ける。なお、分割予定ライン14に関連する領域とは、分割予定ライン14を含む領域、又は、分割予定ライン14の位置を特定するために利用されるマークを含む領域である。
【0031】
撮像手段20の直下にウエーハ10を位置付けたならば、図4(a)に示すウエーハ10の分割予定ライン14に関連する領域A及び領域Bを撮像する。領域A(又は領域B)をアライメント工程が完了していない状態で撮像した画像の一例を示す図4(b)から理解されるように、分割予定ライン14は、X軸方向に沿って表示される表示手段6のヘアラインLに対して傾きを有している場合がある。これは、フレームFにウエーハ10を支持させる際に生じる微小な位置ズレ、及び、チャックテーブル9に吸引保持される際に生じる微小な変位等によって生じるズレに起因する。アライメント工程によってこのズレを修正すべく、領域A及び領域Bを撮像し、各デバイス12に形成されているアライメント用のマーク12Aに着目して、該アライメント用のマーク12Aの上下方向のズレ量を検出する。そして、領域A及び領域Bの距離と、該アライメント用のマーク12Aの上下方向のズレ量とに基づいて、分割予定ライン14をダイシング装置1のX軸方向と平行にするための回転角度を算出する。そして、チャックテーブル9を、図示しない回転駆動手段により、図4(a)中の矢印Rで示す方向において該回転角度回転させることにより、分割予定ライン14を、図4(b)に示すヘアラインLで示されるX軸方向に沿った方向に精密に修正する。さらに、図4(c)に示すように、撮像手段20によって撮像された領域の分割予定ライン14を、表示手段6における中心位置に一致させるように、チャックテーブル9の位置を調整する。このようにしてアライメント工程を実施することによって、切削手段30の切削ブレード32による切削位置と、分割予定ライン14とをX軸方向で見て正確に一致させることができる。
【0032】
ところで、上記したように、最外分割予定ラインの位置を把握せずにアライメント工程によって得られる位置情報に基づき切削工程を開始する場合は、ウエーハ10が存在し得る最大領域を考慮して、実際にウエーハ10がある領域よりも外側に切削開始位置を設定して切削を開始し、複数回の空切りを伴う切削加工を実施する必要があり、生産性を悪化させるという問題がある。本実施形態では、この空切りを回避すべく、最外分割予定ラインを検出する最外側検出工程を実施する。以下に、図5を参照しながら、その手順の一例について説明する。
【0033】
最外側検出工程を実施するに際し、撮像手段20は、ウエーハ10上の比較的広い領域を撮像するマクロモードに設定される。そして、図5(a)に示すように、ウエーハ10上の予め定められた位置に形成された特徴点18が含まれるように設定された領域Cを、撮像手段20の直下に位置付け、マクロモードによって撮像し、表示手段6に表示する(図5(b)を参照)。
【0034】
図5(b)に示す表示手段6の表示画像に示されるように、撮像手段20をマクロモードに設定して比較的広い領域Cを撮像することにより、デバイス12とは明確に異なる特徴点18を容易に捕えることができる。特徴点18を含む領域をマクロモードで撮像したならば、手動により、又はパターンマッチング等を含む自動制御プログラムにより、チャックテーブル9を移動して、特徴点18を撮像手段20による撮像領域の中心に位置付ける。さらに、撮像手段20をミクロモードに切り替えて、より狭い領域Dを拡大して表示し、特徴点18の基準位置である中心18aを表示手段6によって表示される表示領域の中心に正確に位置付ける(図5(c)を参照)。これにより、ダイシング装置1における特徴点18の中心18aの座標位置18a(X,Y)が正確に把握され、制御手段50に記憶される。そして、ウエーハ10上に形成された特徴点18の座標位置18a(X,Y)と、上記した位置関係情報に基づいて、最外分割予定ライン14(X1)のX座標の位置がX1=X+170mmであること、及び最外分割予定ライン14(Y1)のY座標の位置がY1=Y-150mmであることが検出される(最外側検出工程)。最外側検出工程によって検出された最外分割予定ライン14(X1)のX座標の位置、及び最外分割予定ライン14(Y1)のY座標の位置は、制御手段50に記憶される。
【0035】
なお、本実施形態では、アライメント工程を実施した後に、最外側検出工程を実施したが、最外側検出工程を先に実施して特徴点18の座標位置を正確に特定した後、アライメント工程を実施して分割予定ライン14と、切削ブレード32による切削位置と一致させるようにしてもよい。
【0036】
上記したように、アライメント工程及び最外側検出工程を実施したならば、切削手段30の切削ブレード32を、X軸方向に沿って平行に位置付けられた最外分割予定ライン14(Y1)上に位置付けて、チャックテーブル9をX軸方向に移動しながら切削加工を実施する。最外分割予定ライン14(Y1)を切削したならば、切削手段30をY軸方向で割り出し送りして、図6(a)に示すように、最外分割予定ライン14(Y1)と平行な分割予定ライン14(Y2)、14(Y3)、14(Y4)・・・を順次切削加工する。本実施形態によれば、最外分割予定ライン14(Y1)の座標位置が検出されて、その位置が正確に把握されていることから、図6(a)に示すように、空切りをすることなく、切削加工を実施することができる。なお、図6(a)では、説明の都合上、切削加工を実施するための切削手段30は省略されている。
【0037】
上記したように、ウエーハ10上の最外分割予定ライン14(Y1)に平行な全ての分割予定ライン14に対して切削加工を実施したならば、先に切削加工を施した最外分割予定ライン14(Y1)と直交する分割予定ライン14に切削加工を施すべく、チャックテーブル9を90°回転させる。チャックテーブル9を90°回転させて、図5(a)に示した最外分割予定ライン14(X1)をX軸方向に沿う方向へ転換し、最外分割予定ライン14(X1)のX座標(X1)を、Y座標に変換(X1→Y(X1))して、最外分割予定ライン14(Y(X1))とする。次いで、この最外分割予定ライン14(Y(X1))に切削手段30の切削ブレード32を位置付けて、上記と同様に、最外分割予定ライン14(Y(X1))から切削加工を開始し、順次切削手段30を割り出し送りして、最外分割予定ライン14(Y(X1))と平行な全ての分割予定ライン14に対して切削加工を施す。以上のようにして、ウエーハ10上の全ての分割予定ライン14に対して切削加工を施すことができる(切削工程)。
【0038】
本実施形態によれば、空切りすることなく、最外分割予定ライン14(Y1)、及び最外分割予定ライン14(Y(X1))から切削加工を開始することができ、空切りすることなく全ての分割予定ライン14に対して切削加工を終了させることができる。そして、例えば、図6(a)に示すウエーハ10の最外分割予定ライン14(Y1)からみて3番目の分割予定ライン14(Y3)に対する切削加工を実施している最中に切削ブレード32が破損しエラーが発せられた場合、この情報を制御手段50のメモリに記憶しておくことにより、後工程において、何番目の分割予定ライン14で切削ブレード32が破損したのかを検証することができる。これにより。切削ブレード32の破損時に加工していた分割予定ライン14(Y3)に対する修正加工を容易に施すことが可能である。
【0039】
また、本実施形態では、分割予定ライン14が切削され形成された切削溝を、撮像手段20によって撮像して、撮像された分割予定ライン14が、最外分割予定ライン14(Y(X1))又は最外分割予定ライン14(Y1)から数えて何番目の分割予定ラインの切削溝であるかを制御手段50に記憶する(切削溝記憶工程)。このようにすることで、後工程において分割後のデバイスチップに不具合(切削幅不良、チッピング等)が生じていることが発見された場合に、制御手段50に記憶された、例えば、図6(b)に示すような画像を参照して、切削溝の幅や、チッピング14a、14b等の状態をチェックする。その際、記憶された切削溝の画像には、最外分割予定ライン14(Y1)からみて、何番目の分割予定ラインであるのかが関連付けられて記憶されていることから(図6(b)に示す画像は、分割予定ライン14(Y6)、すなわち最外分割予定ライン14(Y1)からみて6番目の画像)、いずれの分割予定ラインにおける切削溝に問題があったのかを確実に追及することができる。
【0040】
上記した実施形態では、図2に示したように、最外分割予定ライン14(X1)の座標、及び最外分割予定ライン14(Y1)の座標を特定するための特徴点18を十字形状で形成したが、本発明はこれに限定されず、その他の形状で構成することも可能である。また、特徴点18を形成せずに、例えば、図5(a)に示すウエーハ10上のノッチ16の角部16Aを特徴点として使用することも可能である。その場合は、最外側検出工程において、撮像手段20をマクロモードに設定して撮像する領域Cを、ノッチ16を含む領域に設定して撮像し、その後、撮像手段20をミクロモードに切り替えて撮像し、角部16Aの座標位置を検出する。制御手段50には、予め、特徴点として機能する角部16Aと最外分割予定ライン14(X1)との位置関係情報、及び、角部16Aと最外分割予定ライン14(Y1)との位置関係情報とを記憶しておき、角部16Aの座標位置と、該位置関係情報とにより、最外分割予定ライン14(X1)、最外分割予定ライン14(Y1)の座標位置を正確に検出することができる。上記特徴点18を使用した場合と同様に、空切りすることをせずに切削加工を実施することができる。
【0041】
さらにいえば、上記したノッチ16ではなく、図示しないオリエンテーションフラットが形成されている場合は、該オリエンテーションフラットとウエーハ10の外周とにより形成される角部を特徴点18に代えて利用することが可能である。また、本発明は、上記した特徴点18、ノッチ16、又はオリエンテーションフラットを使用して最外分割予定ライン14(X1)、及び最外分割予定ライン14(Y1)を検出することに限定されず、撮像手段20を利用して、最外分割予定ライン14(X1)、最外分割予定ライン14(Y1)を直接撮像してその座標位置を検出するものであってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1:ダイシング装置
2:基台
3:ウエーハカセット
4:操作手段
5:搬出入手段
6:表示手段
7:仮置き手段
8:搬送手段
9:チャックテーブル
10:ウエーハ
12:デバイス
14:分割予定ライン
16:ノッチ
18:特徴点
20:撮像手段
30:切削手段
32:切削ブレード
40:洗浄手段
41:搬送手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6