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特許7368110切削ブレードの製造方法、及び切削ブレード
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】切削ブレードの製造方法、及び切削ブレード
(51)【国際特許分類】
   B24D 3/00 20060101AFI20231017BHJP
   B24D 5/12 20060101ALI20231017BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20231017BHJP
   B24D 3/02 20060101ALN20231017BHJP
【FI】
B24D3/00 340
B24D5/12 Z
H01L21/78 F
B24D3/02 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019105683
(22)【出願日】2019-06-05
(65)【公開番号】P2020199556
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平阪 尚子
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-516481(JP,A)
【文献】特開平11-028670(JP,A)
【文献】特表2015-516352(JP,A)
【文献】特開2018-078166(JP,A)
【文献】特開平03-196976(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 3/00
B24D 5/12
H01L 21/301
B24D 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削ブレードの製造方法であって、
砥粒を結合材で結合して、第1面と該第1面の背面の第2面とを有した円環状の切削ブレードを形成するブレード形成ステップと、
形成された円環状の該切削ブレードの外周縁に開口し該第1面から該第2面に貫通したスリットを形成するスリット形成ステップと、を備え、
該スリット形成ステップでは、該切削ブレードの該第1面にレーザビームを照射して該切削ブレードの該第1面から該第2面に向かう厚み方向中央に至る第1の溝を形成するとともに、該切削ブレードの該第2面に該レーザビームを照射して該第1の溝に連通する第2の溝を形成して該第1面から該第2面に貫通したスリットを形成するとともに、該レーザビームを該スリットが該切削ブレードの厚み方向中央を基準に該第1面側と該第2面側とで断面形状が対称となるように照射する切削ブレードの製造方法。
【請求項2】
砥粒を結合材で結合して、第1面と該第1面の背面の第2面とを有した円環状であるとともに厚みが一定の切り刃を有した切削ブレードであって、
該切り刃の外縁部に該第1面から該第2面に貫通したスリットが形成され、
該スリットは、該切削ブレードの該厚み方向中央を基準に該第1面側と該第2面側とで断面形状が対称であるとともに、該第1面と該第2面との双方から該厚み方向中央に向かうにしたがって徐々に幅が狭く形成されている、切削ブレード。
【請求項3】
該結合材は樹脂からなる、請求項2に記載の切削ブレード。
【請求項4】
該切削ブレードの該切り刃の該第1面から該第2面に至る厚みは0.23mmより厚く、0.5mm以下であり、
該スリットの該第1面及び該第2面における幅は、50μm以下で10μm以上である、請求項2または請求項3に記載の切削ブレード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削ブレードの製造方法、及び切削ブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
QFN(Quad Flat Non-leaded Package)基板、CSP(Chip Scale Packaging)基板などの分割予定ラインに電極等の金属部品が設けられたパッケージ基板を切削する切削ブレードとして、外周縁に開口したスリットが形成された所謂スリット入り切削ブレードが存在している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
本出願人は、スリットが形成された切削ブレードでパッケージ基板を切削すると、発生するバリのサイズを抑えることができ、更に、スリット幅が狭い程、バリのサイズをより抑えることができる事を見いだした。
【0004】
一方、スリットは、放電加工や切削ブレード、レーザビームの照射等で形成している。放電加工は、時間がかかる上、ボンド材がレジンボンドである切削ブレードを加工できない。そこで、ボンド材がレジンボンドである切削ブレードを他の切削ブレードで切削して、スリットを形成することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-370140号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したスリットの幅を狭くするには、スリットを形成するために使用する切削ブレードの刃厚をスリットの幅に対応して薄くなくてはならない。しかしながら、刃厚の薄い切削ブレードで切削ブレードを切削しようとしても刃厚の薄い切削ブレードが破損してしまうことがある。
【0007】
レーザビームを照射するレーザー加工では、スリットの断面形状が先細りとなり、スリットの幅が切削ブレードの第1面と第2面側とで異なることとなり、パッケージ基板の加工品質が悪化するという問題がある。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、加工品質の悪化を抑制しながらも幅の狭いスリットを形成することを可能とする切削ブレードの製造方法、及び切削ブレードを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の切削ブレードの製造方法は、切削ブレードの製造方法であって、砥粒を結合材で結合して、第1面と該第1面の背面の第2面とを有した円環状の切削ブレードを形成するブレード形成ステップと、形成された円環状の該切削ブレードの外周縁に開口し該第1面から該第2面に貫通したスリットを形成するスリット形成ステップと、を備え、該スリット形成ステップでは、該切削ブレードの該第1面にレーザビームを照射して該切削ブレードの該第1面から該第2面に向かう厚み方向中央に至る第1の溝を形成するとともに、該切削ブレードの該第2面に該レーザビームを照射して該第1の溝に連通する第2の溝を形成して該第1面から該第2面に貫通したスリットを形成するとともに、該レーザビームを該スリットが該切削ブレードの厚み方向中央を基準に該第1面側と該第2面側とで断面形状が対称となるように照射することを特徴とする。
【0010】
本発明の切削ブレードは、砥粒を結合材で結合して、第1面と該第1面の背面の第2面とを有した円環状であるとともに厚みが一定の切り刃を有した切削ブレードであって、該切り刃の外縁部に該第1面から該第2面に貫通したスリットが形成され、該スリットは、該切削ブレードの該厚み方向中央を基準に該第1面側と該第2面側とで断面形状が対称であるとともに、該第1面と該第2面との双方から該厚み方向中央に向かうにしたがって徐々に幅が狭く形成されていることを特徴とする。
【0011】
前記切削ブレードにおいて、該結合材は樹脂からなっても良い。
【0012】
前記切削ブレードにおいて、該切削ブレードの該切り刃の該第1面から該第2面に至る厚みは0.23mmより厚く、0.5mm以下であり、該スリットの該第1面及び該第2面における幅は、50μm以下で10μm以上であっても良い。
【発明の効果】
【0013】
本願発明は、加工品質の悪化を抑制しながらも幅の狭いスリットを形成することを可能とするという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態1に係る切削ブレードの平面図である。
図2図2は、図1中のII-II線に沿う断面図である。
図3図3は、図1中のIII-III線に沿う断面図である。
図4図4は、図1に示された切削ブレードの加工対象の被加工物の一例の平面図である。
図5図5は、実施形態1に係る切削ブレードの製造方法を示すフローチャートである。
図6図6は、図5に示された切削ブレードの製造方法のブレード形成ステップで形成された円環状の切削ブレードの平面図である。
図7図7は、図6中のVII-VII線に沿う断面図である。
図8図8は、図5に示された切削ブレードの製造方法のスリット形成ステップにおいて、ブレード形成ステップで形成された複数の切削ブレードをテープに支持した状態の一例を示す斜視図である。
図9図9は、図5に示された切削ブレードの製造方法のスリット形成ステップで用いられるレーザ加工装置の一例を示す斜視図である。
図10図10は、図5に示された切削ブレードの製造方法のスリット形成ステップにおいて、スリットを形成する状態を模式的に示す側面図である。
図11図11は、図5に示された切削ブレードの製造方法のスリット形成ステップにおいて、第1の溝が形成された切削ブレードの平面図である。
図12図12は、図11中のXII-XII線に沿う断面図である。
図13図13は、図5に示された切削ブレードの製造方法のスリット形成ステップ後の切削ブレードの外周縁の接線と平行でかつ第1面と第2面との双方と直交する断面図である
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0016】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る切削ブレードを図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係る切削ブレードの平面図である。図2は、図1中のII-II線に沿う断面図である。図3は、図1中のIII-III線に沿う断面図である。図4は、図1に示された切削ブレードの加工対象の被加工物の一例の平面図である。
【0017】
実施形態1に係る図1図2及び図3に示す切削ブレード1は、図示しない切削装置に装着されて、図4に例示する被加工物200を切削して、個々のパッケージチップ220に分割するものである。実施形態1において、切削ブレード1の加工対象の被加工物200は、QFN(Quad Flat Non-leaded Package)基板である。
【0018】
被加工物200は、図4に示すように、銅を含む金属(即ち、銅合金)からなる金属プレート201と、樹脂層210とを備える。
【0019】
金属プレート201は、平面形状が矩形の平板状に形成され、デバイス領域202と、デバイス領域202を囲繞する非デバイス領域203とが設けられている。実施形態1において、デバイス領域202は、三つ設けられているが、デバイス領域202の数は、三つに限定されない。デバイス領域202は、図4に示すように、複数の領域204を区画する分割予定ライン205を有している。領域204は、デバイスチップ206を搭載している。分割予定ライン205は、領域204に搭載されたデバイスチップ206と図示しないワイヤにより接続された電極部207が設けられている。電極部207は、金属から構成され、実施形態1に係る切削ブレード1により長手方向の中央が切断される金属部材であり、非デバイス領域203に連結されている。
【0020】
樹脂層210は、熱可塑性樹脂により構成され、金属プレート201の領域204の表面に搭載したデバイスチップ206及びワイヤを封止(被覆)している。樹脂層210は、金属プレート201のデバイスチップ206を搭載した表面側では、デバイスチップ206を含むデバイス領域202全体を封止(被覆)している。また、樹脂層210は、金属プレート201の表面の裏側の裏面側では、図4に示すように、デバイスチップ206を搭載した領域204と、電極部207とを露出させた状態で分割予定ライン205内を封止している。
【0021】
被加工物200は、各デバイス領域202の分割予定ライン205の幅方向の中央が切断されて、電極部207が二分割されて、個々のパッケージチップ220に分割される。このように、実施形態1に係る切削ブレード1の加工対象である被加工物200は、切削ブレード50で切削される分割予定ライン205に金属からなる電極部207が配置されたパッケージ基板であるQFN基板である。なお、実施形態1では、被加工物200は、分割予定ライン205に電極部207が配置されたQFN基板であるか、これに限定されず、CSP(Chip Scale Packaging)基板でも良い。
【0022】
また、本発明では、被加工物200は、シリコン、サファイア、ガリウムなどを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のウエーハであって、表面に格子状に形成された複数の分割予定ラインによって区画された領域にデバイスが形成され、分割予定ライン205に金属により構成された金属部材であるTEG(Test Element Group)又CMP(Chemical Mechanical Polishing)用のダミーパターンが形成されたものでも良い。要するに、本発明の切削ブレード1の加工対象の被加工物200は、切削ブレード1により切削される分割予定ライン205に金属部材が設けられているものであれば良い。
【0023】
実施形態1に係る切削ブレード1は、図1及び図2に示すように、極薄のリング形状に形成された切削砥石であり、切削装置に装着されて、切削液が供給されながらスピンドルにより軸心回りに回転されることで、被加工物200を切削加工するものである。実施形態1に係る切削ブレード1は、環状の切り刃2で構成された所謂ワッシャブレードであるが、金属で構成された円環状の支持基台の外周に切り刃を支持した所謂ハブブレードでも良い。
【0024】
実施形態1に係る切削ブレード1は、砥粒を結合材で結合して、切り刃2が図1に示すように円環状に形成されている。切削ブレード1は、図2に示すように、第1面3と、第1面3の背面の第2面4とを有している。第1面3と第2面4は、それぞれ、平坦に形成され、互いに平行に配置されている。
【0025】
切削ブレード1は、図1及び図2に示すように、切り刃2の外縁部に複数のスリット5を備えている。スリット5は、切り刃2の周方向に等間隔に配置されている。スリット5は、切り刃2の外周縁6に開口し、第1面3から第2面4に向かって切り刃2を貫通している。各スリット5は、切削ブレード50-2の切り刃2の外周縁6から切削ブレード50-2の内周方向に径方向に沿って直線状に形成されている。
【0026】
スリット5は、少なくとも外周縁6の接線と平行でかつ第1面3と第2面4との双方と直交する断面において、図3に示すように、切削ブレード1の切り刃2の厚み方向中央10(図3中に一点鎖線で示す)を基準に第1面3側と第2面4側とで断面形状が対称である。厚み方向中央10は、切削ブレード1の切り刃2の厚みを二等分する仮想的な線である。スリット5は、少なくとも外周縁6の接線と平行でかつ第1面3と第2面4との双方と直交する断面において、切削ブレード1の切り刃2の厚み方向中央10を基準に線対称形状に形成されている。なお、実施形態1では、スリット5は、第1面3と第2面4との双方側から切り刃2を構成する母材に対して吸収性を有する波長のレーザビーム(図10に示す)101が照射されて形成される。実施形態1では、スリット5は、前述した断面において、第1面3と第2面4との双方側から厚み方向中央10に向かうにしたがって徐々に幅が狭く形成されている。
【0027】
また、実施形態1では、切削ブレード1の切り刃2の厚み11(図2及び図3に示す)は、0.23mmよりも厚く、かつ0.5mm以下である。なお、切削ブレード1の切り刃2の厚み11が、0.23mmよりも厚く、かつ0.5mm以下であるには、厚み11が0.23mm以下であると、スリット5を形成する際に、第1面3と第2面4のいずれか一方側から照射されたレーザビーム101によりスリット5を形成できるが、形成されたスリット5がいずれ一方側から他方側に向かって徐々に先細に形成されて、厚み方向中央10を基準に対称形状とならずに、切削した際のバリがパッケージチップ220の製造上許される大きさを超えてしまうからである。
【0028】
また、切削ブレード1の切り刃2の厚み11が、0.25mmよりも厚く、かつ0.5mm以下であるには、厚み11が0.5mmを超えると、第1面3と第2面4との双方側からレーザビーム101を照射しても、スリット5が切削ブレード1の切り刃2を貫通しないからである。
【0029】
また、実施形態1では、スリット5の第1面3及び第2面4における幅53は、50μm以下でかつ10μm以上である。なお、スリット5の幅53が、50μm以下でかつ10μm以上であるのは、幅53が10μmより狭いとスリットなし切削ブレードとバリの状態かわらずバリがパッケージチップ220の製造上許されるものではなく、幅53が50μmを超えると、切削した際のバリがパッケージチップ220の製造上許される大きさを超えてしまうからである。
【0030】
また、実施形態2において、スリット5は、12個形成されているが、本発明では、スリット5の数は、これに限定されない。
【0031】
また、実施形態1に係る切削ブレード1は、環状の切り刃2が砥粒を結合材である樹脂で固定した所謂レジンブレードであるが、本発明では、砥粒を結合材であるメタルボンドで固定した所謂メタルブレードでも良く、砥粒を結合材であるビトリファイドボンドで固定した所謂ビトリファイドブレードでも良く、砥粒を結合材である電鋳ボンドで固定した所謂電鋳ブレードでも良い。
【0032】
次に、実施形態1に係る切削ブレードの製造方法を図面に基づいて説明する。図5は、実施形態1に係る切削ブレードの製造方法を示すフローチャートである。実施形態1に係る切削ブレードの製造方法は、図5に示すように、ブレード形成ステップST1と、スリット形成ステップST2とを備える。
【0033】
(ブレード形成ステップ)
図6は、図5に示された切削ブレードの製造方法のブレード形成ステップで形成された円環状の切削ブレードの平面図である。図7は、図6中のVII-VII線に沿う断面図である。ブレード形成ステップST1は、砥粒を結合材である樹脂で結合して、第1面3と第1面3の背面の第2面4とを有した円環状の切削ブレード1-1(図6に示す)を形成するステップである。なお、切削ブレード1-1は、スリット5が形成されていないこと以外、切削ブレード1と構成が等しいので、切削ブレード1と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0034】
実施形態1において、ブレード形成ステップST1では、砥粒を結合材である樹脂に混合し、ホットプレス法等により焼成、熱硬化の後、研磨仕上げ等から施されて、図6及び図7に示す切削ブレード1を形成する。ブレード形成ステップST1で形成された切削ブレード1は、スリット5が形成されていない。
【0035】
(スリット形成ステップ)
図8は、図5に示された切削ブレードの製造方法のスリット形成ステップにおいて、ブレード形成ステップで形成された複数の切削ブレードをテープに支持した状態の一例を示す斜視図である。図9は、図5に示された切削ブレードの製造方法のスリット形成ステップで用いられるレーザ加工装置の一例を示す斜視図である。図10は、図5に示された切削ブレードの製造方法のスリット形成ステップにおいて、スリットを形成する状態を模式的に示す側面図である。図11は、図5に示された切削ブレードの製造方法のスリット形成ステップにおいて、第1の溝が形成された切削ブレードの平面図である。図12は、図11中のXII-XII線に沿う断面図である、図13は、図5に示された切削ブレードの製造方法のスリット形成ステップ後の切削ブレードの外周縁の接線と平行でかつ第1面と第2面との双方と直交する断面図である。
【0036】
スリット形成ステップST2は、ブレード形成ステップST1で形成された円環状の切削ブレード1の外周縁6に開口し第1面3から第2面4に向かって切り刃2を貫通したスリット5を形成するステップである。実施形態1において、スリット形成ステップST2では、図8に示すように、複数の切削ブレード1の第2面4を支持部材である円板状のテープ300に貼着し、テープ300の外縁部にリング状の環状フレーム301を貼着して、複数の切削ブレード1を環状フレーム301の開口302内に支持する。なお、実施形態では、切削ブレード1を支持する支持部材として、テープ300を用いたが、本発明では、支持部材として、テープ300の他に、シリコン又はガラス等で構成された基板を用い、基板上に接着部材を介して切削ブレード1を固定しても良い。
【0037】
実施形態1において、スリット形成ステップST2では、図9に示されたレーザ加工装置100を用いて、パルス状のレーザビーム101を照射してスリット5を形成する。図9に示されたレーザ加工装置100は、複数の切削ブレード1をテープ300を介して保持面102に保持するチャックテーブル103と、チャックテーブル103に保持された切削ブレード1にレーザビーム101を照射するレーザビーム照射ユニット104と、チャックテーブル103に保持された切削ブレード1を撮像する撮像ユニット105と、チャックテーブル103を水平方向と平行なX軸方向に移動させるX軸移動ユニット106と、チャックテーブル103を水平方向と平行でかつX軸方向と直交するY軸方向に移動させるY軸移動ユニット107と、レーザビーム照射ユニット104を鉛直方向と平行なZ軸方向に移動させるZ軸移動ユニット108と、チャックテーブル103をZ軸方向と平行な軸心回りに回転させる回転移動ユニット109と、各構成要素を制御する制御ユニット110等を備える。
【0038】
レーザビーム照射ユニット104は、図10に示すように、パルス状のレーザビーム101を発振するレーザ発振器111と、レーザ発振器111が発振するレーザビーム101のパルス幅を調整するパルス幅調整手段112と、レーザ発振器111が発振するレーザビーム101の繰り返し周波数を調整する繰り返し周波数調整手段113と、レーザ発振器111が発振するレーザビーム101の出力を調整するパワー調整手段114と、レーザ発振器111が発振するレーザビーム101をチャックテーブル103の保持面102に向けて反射するミラー115と、レーザ発振器111が発振するレーザビーム101を集光する集光レンズ116とを備える。なお、パルス幅調整手段112、繰り返し周波数調整手段113、及びパワー調整手段114の機能は、コンピュータのCPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置が、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0039】
レーザ加工装置100は、チャックテーブル103の保持面102に切削ブレード1を保持し、撮像ユニット105で切削ブレード1-1を撮像して、レーザビーム照射ユニット104と切削ブレード1とを位置合わせするアライメントを遂行した後、各移動ユニット106,107,108,109が所望の位置にスリット5を形成するように、チャックテーブル103とレーザビーム照射ユニット104とを相対的に移動させながら、レーザビーム照射ユニット104がレーザビーム101を切削ブレード1に照射して、切削ブレード1にスリット5を形成する。
【0040】
実施形態1において、スリット形成ステップST2では、レーザ加工装置100が、チャックテーブル103にテープ300を介して切削ブレード1-1の第2面4側を吸引保持し、チャックテーブル103の周囲のクランプ部117が環状フレーム301をクランプする。スリット形成ステップST2では、レーザ加工装置100が、撮像ユニット105で切削ブレード1-1を撮像してアライメントを遂行した後、各移動ユニット106,107,108,109がチャックテーブル103とレーザビーム照射ユニット104とを相対的に移動させながら、各切削ブレード1-1の第1面3の各スリット5を形成する所望の位置に向けてレーザビーム101を照射する。
【0041】
なお、実施形態1では、各スリット5を形成する所望の位置をX軸方向と平行し、波長が355nmのレーザビーム101を、繰り返し周波数を30kHz以上でかつ40kHz以下とし、チャックテーブル103をX軸方向に200mm/sec以上でかつ400mm/sec以下の加工送り速度で移動して、各スリット5を形成する所望の位置に向けてレーザビーム101を照射する。また、実施形態1では、レーザビーム101の集光点を厚み方向中央10よりもチャックテーブル103側に位置付けて、切削ブレード1-1の第1面3にレーザビーム101を照射する。
【0042】
実施形態1において、スリット形成ステップST2では、レーザ加工装置100が、チャックテーブル103に保持した全ての切削ブレード1-1の全てのスリット5を形成する所望の位置に向けてレーザビーム101を照射すると、レーザビーム101の照射、チャックテーブル103の吸引保持、クランプ部117のクランプを一旦停止する。
【0043】
すると、各切削ブレード1-1は、図11及び図12に示すように、切削ブレード1-1の第1面3から第2面4に向かう厚み方向中央に至る第1の溝51を形成する。こうして、スリット形成ステップST2では、切削ブレード1-1の第1面3にレーザビーム101を照射して切削ブレード1-1の第1面3から第2面4に向かう厚み方向中央10に至る第1の溝51を形成する。なお、実施形態1では、第1の溝51は、第1面3から第2面4に向うにしたがって徐々に幅53が狭く形成されている。
【0044】
その後、実施形態1において、スリット形成ステップST2では、全ての切削ブレード1-1の第1面3及び環状フレーム301にテープ300と同等の構成の支持部材である他のテープを貼着し、テープ300を剥がす。
【0045】
実施形態1において、スリット形成ステップST2では、レーザ加工装置100が、チャックテーブル103に切削ブレード1-1の第1面3側を吸引保持し、クランプ部117が環状フレーム301をクランプし、アライメントを遂行した後、第1面3にレーザビーム101を照射した時の同様に、切削ブレード1-1の第2面4にレーザビーム101を照射する。即ち、実施形態1では、レーザビーム101の集光点を厚み方向中央10よりもチャックテーブル103側に位置付けて、切削ブレード1-1の第2面4にレーザビーム101を照射する。
【0046】
すると、図13に示すように、第2面4から第1面3に向かいかつ第1の溝51に連通する第2の溝52を形成して、第1面3から第2面4に向かって切り刃2を貫通したスリット5を形成して、切削ブレード1を製造する。なお、実施形態1では、第2の溝52は、第2面4から第1面3に向うにしたがって徐々に幅53が狭く形成されている。
【0047】
以上説明したように、実施形態1に係る切削ブレードの製造方法は、スリット形成ステップST2において。第1面3側と第2面4側との双方からレーザビーム101を照射してスリット5を形成するため、スリット5の断面形状を厚み方向中央10を基準に対称形状にすることができ、スリット5の形状の非対称に起因する加工品質悪化を防止できる切削ブレード1を提供できる。
【0048】
また、実施形態1に係る切削ブレードの製造方法は、スリット形成ステップST2において。第1面3側と第2面4側との双方からレーザビーム101を照射してスリット5を形成するため、第1面3と第2面4とのいずれか一方側からレーザビーム101を照射してスリット5を形成する場合よりもスリット5の幅53を抑制することができる。
【0049】
その結果、実施形態1に係る切削ブレードの製造方法は、被加工物200の加工品質の悪化を抑制しながらも幅の狭いスリット5を形成することを可能とするという効果を奏する。
【0050】
また、実施形態1に係る切削ブレード1は、前述した切削ブレードの製造方法で製造されるために、厚み方向中央10を基準に第1面3側と第2面4側とでスリット5が対称形状に形成されるため、切削中に切削ブレード1がばたつくことが抑えられ、バリやチッピング等を改善できる。
【0051】
また、実施形態1に係る切削ブレード1は、結合材が樹脂であるために、切削液によって結合材が変質するおそれがあるが、乾式加工であるレーザ加工でスリット5を形成できるので、スリット5を形成する際に、結合材が変質するおそれがない。
【0052】
また、実施形態1に係る切削ブレード1は、厚み11が0.23mmより厚く、0.5mm以下であるために、厚み方向中央10を基準に切り刃2を貫通しかつ第1面3側と第2面4側とで対称形状のスリット5を形成できる。また、実施形態1に係る切削ブレード1は、スリット5の幅53が、50μm以下でかつ10μm以上であるので、バリを抑制した加工か可能となる。
【0059】
なお、本発明は、上記実施形態及び変形例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0060】
1,1-1 切削ブレード
3 第1面
4 第2面
5 スリット
6 外周縁
10 厚み方向中央
11 厚み
51 第1の溝
52 第2の溝
53 幅
101 レーザビーム
ST1 ブレード形成ステップ
ST2 スリット形成ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13