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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】ウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/005 20120101AFI20231017BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20231017BHJP
   B24B 37/10 20120101ALI20231017BHJP
   B24B 7/04 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
B24B37/005 Z
H01L21/304 631
H01L21/304 622Q
B24B37/10
B24B7/04 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019144397
(22)【出願日】2019-08-06
(65)【公開番号】P2021024034
(43)【公開日】2021-02-22
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 雄貴
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-109357(JP,A)
【文献】特開2001-035821(JP,A)
【文献】特開2005-183532(JP,A)
【文献】特開2003-086553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/005
H01L 21/304
B24B 37/10
B24B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削砥石によって所定の厚みに研削されたウェーハの被研削面に形成された酸化膜を、遊離砥粒と研磨液と固定砥粒を含まない研磨パッドとを用いた研磨によって除去する、ウェーハの加工方法であって、
ウェーハをチャックテーブルによって保持する保持工程と、
該チャックテーブルに保持された該ウェーハを研削砥石によって所定の厚みに研削する研削工程と、
該研磨パッドを回転させるとともに、該ウェーハを保持している該チャックテーブルを、該研磨パッドよりも早い回転数で回転させながら、該ウェーハの被研削面に該遊離砥粒および該研磨液を供給し、該ウェーハの被研削面に該研磨パッドを押し付け、該ウェーハの被研削面の酸化膜を除去する第1研磨工程と、
該研磨パッドを回転させるとともに、該ウェーハを保持している該チャックテーブルを、該研磨パッドよりも早い回転数で回転させながら、該ウェーハの被研磨面に遊離砥粒を含まない該研磨液を供給し、該ウェーハの被研磨面に該研磨パッドを押し付け、該ウェーハの該被研磨面から該遊離砥粒を流しながら、該ウェーハの被研磨面を研磨する第2研磨工程と、
を含むウェーハの加工方法。
【請求項2】
該第1研磨工程では、該研磨液に所定量の該遊離砥粒を投入する、
請求項1記載のウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハを研削砥石によって所定の厚みに研削した後、スラリーを供給しウェーハを研磨パッドでCMP研磨する研削研磨加工装置を用いた加工がある(特許文献1参照)。
【0003】
研削研磨加工装置では、チャックテーブルの保持面で吸引保持したウェーハを、研削砥石によって研削する。その後、そのチャックテーブルを研磨パッドの直下に位置づけ、ウェーハにスラリーを供給しながら、研磨パッドでウェーハを研磨する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-060871号公報
【文献】特開平9-306881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スラリーの中には、通常、細かな遊離砥粒が含まれている。このため、ウェーハの外周縁に、遊離砥粒が付着する。さらに、研磨パッドが回転しながらウェーハに押し付けられるため、ウェーハの下面とチャックテーブルの保持面と間に遊離砥粒が進入し、ウェーハの下面(保護テープの表面)および保持面に、遊離砥粒が付着する。保持面に付着した遊離砥粒は、次に保持されるウェーハの厚み精度を悪化させる。
【0006】
したがって、本発明の目的は、チャックテーブルに保持されたウェーハに研削加工および研磨加工を実施する際、ウェーハの下面と保持面との隙間に遊離砥粒が進入することを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかるウェーハの加工方法(本加工方法)は、研削砥石によって所定の厚みに研削されたウェーハの被研削面に形成された酸化膜を、遊離砥粒と研磨液と固定砥粒を含まない研磨パッドとを用いた研磨によって除去する、ウェーハの加工方法であって、ウェーハをチャックテーブルによって保持する保持工程と、該チャックテーブルに保持された該ウェーハを研削砥石によって所定の厚みに研削する研削工程と、該研磨パッドを回転させるとともに、該ウェーハを保持している該チャックテーブルを、該研磨パッドよりも早い回転数で回転させながら、該ウェーハの被研削面に該遊離砥粒および該研磨液を供給し、該ウェーハの被研削面に該研磨パッドを押し付け、該ウェーハの被研削面の酸化膜を除去する第1研磨工程と、該研磨パッドを回転させるとともに、該ウェーハを保持している該チャックテーブルを、該研磨パッドよりも早い回転数で回転させながら、該ウェーハの被研磨面に遊離砥粒を含まない該研磨液を供給し、該ウェーハの被研磨面に該研磨パッドを押し付け、該ウェーハの該被研磨面から該遊離砥粒を流しながら、該ウェーハの被研磨面を研磨する第2研磨工程と、を含む。
【0008】
また、本加工方法における該第1研磨工程では、該研磨液に所定量の該遊離砥粒を投入してもよい。
【発明の効果】
【0009】
本加工方法では、第1研磨工程において、遊離砥粒を含む研磨液を用いて、ウェーハの上面に形成された酸化膜を除去している。さらに、第2研磨工程において、遊離砥粒を含まない研磨液を用いている。第2研磨工程では、ウェーハの上面から酸化膜が除去されているため、ウェーハの材料(シリコンなど)と研磨液との反応により、遊離砥粒を用いなくても、ウェーハの上面を研磨することが可能である。
【0010】
これにより、第1研磨工程においてウェーハの上面に供給された遊離砥粒は、第2研磨工程において用いられる遊離砥粒を含まない研磨液によって、ウェーハの上面から流される。したがって、ウェーハにおける下面とチャックテーブルとの隙間に遊離砥粒が進入すること、および、ウェーハの下面およびチャックテーブルに遊離砥粒が付着することを、抑制することができる。
【0011】
また、第1研磨工程では、研磨液に投入される遊離砥粒の量は、予め定められた所定の量であってもよい。これにより、第1研磨工程において、遊離砥粒の量が少なすぎて、ウェーハの上面に酸化膜が残存してしまうこと、あるいは、遊離砥粒の量が多すぎて、第2研磨工程後において遊離砥粒が残存してしまうこと、を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】加工装置の構成を示す斜視図である。
図2】保持工程を示す説明図である。
図3】研削工程を示す説明図である。
図4】第1研磨工程を示す説明図である。
図5】第2研磨工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に示す加工装置1は、粗研削手段30、仕上げ研削手段31、および研磨手段4を備え、いずれかのチャックテーブル5上に保持されたウェーハWを、粗研削手段30および仕上げ研削手段31により研削する。さらに、加工装置1は、ウェーハWの被研削面を、研磨手段4により、遊離砥粒と研磨液と固定砥粒を含まない研磨パッドとで研磨する。
【0014】
図1に示すウェーハWは、たとえば、円形の半導体ウェーハである。ウェーハWの表面Waには、図示しないデバイスが形成されている。ウェーハWの表面Waは、図1においては下方を向いており、保護テープTが貼着されることによって保護されている。ウェーハWの裏面Wbは、研削処理および研磨処理が施される被加工面となる。
【0015】
加工装置1は、第1の装置ベース10と、第1の装置ベース10の後方(+Y方向側)に配置された第2の装置ベース11とを有している。第1の装置ベース10上は、ウェーハWの搬出入等が行われる領域である搬出入領域Aとなっている。第2の装置ベース11上は、加工領域Bとなっている。この加工領域Bでは、粗研削手段30、仕上げ研削手段31または研磨手段4によって、チャックテーブル5に保持されたウェーハWが加工される。
【0016】
第1の装置ベース10の正面側(-Y方向側)には、第1のカセットステージ150および第2のカセットステージ151が設けられている。第1のカセットステージ150には、加工前のウェーハWが収容される第1のカセット150aが載置されている。第2のカセットステージ151には、加工後のウェーハWが収容される第2のカセット151aが載置されている。
第1のカセット150aおよび第2のカセット151aは、内部に複数の棚を備えており、各棚に一枚ずつウェーハWが収容されている。
【0017】
第1のカセット150aおよび第2のカセット151aの開口(図示せず)は、+Y方向側を向いている。これらの開口の+Y方向側には、ロボット155が配設されている。ロボット155は、ウェーハWを保持する保持面を備えている。ロボット155は、加工後のウェーハWを第2のカセット151aに搬入する。また、ロボット155は、第1のカセット150aから加工前のウェーハWを取り出して、仮置き装置152の仮置きテーブル152aに載置する。
【0018】
仮置き装置152は、仮置きされたウェーハWの位置を調整するものであり、ロボット155に隣接する位置に設けられている。仮置き装置152は、仮置きテーブル152aの近傍に、ウェーハWの外周を撮像するカメラ153を有している。さらに、仮置き装置152は、図示しない算出部を備えている。算出部は、ウェーハWの外周の撮像画像から、ウェーハWの中心位置を算出する。さらに、算出部は、ウェーハWの中心位置からチャックテーブル5の中心位置までの、距離および方向を算出する。仮置き装置152は、算出結果に基づいて、ウェーハWの位置がウェーハWをチャックテーブル5に搬送しやすい位置となるように、ウェーハWを載せた仮置きテーブル152aを回転させる。
【0019】
仮置き装置152に隣接する位置には、搬入機構(ローディングアーム)154aが設けられている。搬入機構154aは、ウェーハWの裏面Wbを吸引保持する吸引面を有する吸引パッドを備えている。搬入機構154aは、仮置きテーブル152aに仮置きされたウェーハWを吸引パッドによって吸引保持して、加工領域B内における仮置き装置152の近傍に位置しているチャックテーブル5へ搬送し、そのテーブル面50に載置する。
【0020】
チャックテーブル5は、ウェーハWを吸着するテーブル面50を備えている。テーブル面50は、図示しない吸引源に連通されて、保護テープTを介して、ウェーハWを吸引保持することが可能である。チャックテーブル5は、テーブル面50にウェーハWを保持した状態で、テーブル面50の中心を通りZ軸方向に延在する中心軸を中心として、回転可能である。
【0021】
本実施形態では、第2の装置ベース11上に配設されたターンテーブル6の上面に、4つのチャックテーブル5が、周方向に等間隔を空けて配設されている。ターンテーブル6の中心には、ターンテーブル6を自転させるための図示しない回転軸が配設されている。ターンテーブル6は、この回転軸によって、Z軸方向に延びる軸心を中心に自転することができる。ターンテーブル6が自転することで、4つのチャックテーブル5が公転される。これにより、チャックテーブル5を、仮置き装置152の近傍、粗研削手段30の下方、仕上げ研削手段31の下方、および研磨手段4の下方に、順次、位置付けることができる。
【0022】
第2の装置ベース11上の後方(+Y方向側)には、第1のコラム12が立設されている。第1のコラム12の前面には、ウェーハWを粗研削する粗研削手段30、および、粗研削送り手段20が配設されている。
【0023】
粗研削送り手段20は、Z軸方向に平行な一対のガイドレール201、このガイドレール201上をスライドする昇降テーブル203、ガイドレール201と平行なボールネジ200、ボールネジ200を回転駆動するモータ202、および、昇降テーブル203の前面(表面)に取り付けられたホルダ204を備えている。ホルダ204は、粗研削手段30を保持している。
【0024】
昇降テーブル203は、ガイドレール201にスライド可能に設置されている。図示しないナット部が、昇降テーブル203の後面側(裏面側)に固定されている。このナット部には、ボールネジ200が螺合されている。モータ202は、ボールネジ200の一端部に連結されている。
【0025】
粗研削送り手段20では、モータ202がボールネジ200を回転させることにより、昇降テーブル203が、ガイドレール201に沿って、Z軸方向に移動する。これにより、昇降テーブル203に取り付けられたホルダ204、および、ホルダ204に保持された粗研削手段30も、昇降テーブル203とともにZ軸方向に移動する。
【0026】
粗研削手段30は、ホルダ204に固定されたスピンドルハウジング301、スピンドルハウジング301に回転可能に保持されたスピンドル300、スピンドル300を回転駆動するモータ302、スピンドル300の下端に取り付けられたホイールマウント303、および、ホイールマウント303の下面に着脱可能に接続された研削ホイール304を備えている。
【0027】
スピンドルハウジング301は、Z軸方向に延びるようにホルダ204に保持されている。スピンドル300は、チャックテーブル5のテーブル面50と直交するようにZ軸方向に延び、スピンドルハウジング301に回転可能に支持されている。
【0028】
モータ302は、スピンドル300の上端側に連結されている。このモータ302により、スピンドル300は、Z軸方向に延びる回転軸を中心として回転する。
ホイールマウント303は、円板状に形成されており、スピンドル300の下端(先端)に固定されている。ホイールマウント303は、研削ホイール304を支持している。
【0029】
研削ホイール304は、ホイールマウント303と略同径を有するように形成されている。研削ホイール304は、ステンレス等の金属材料から形成された円環状のホイール基台(環状基台)304aを含む。ホイール基台304aの下面には、全周にわたって、略直方体形状の複数の粗研削砥石304bが、環状に配置および固定されている。粗研削砥石304bは、チャックテーブル5に保持されたウェーハWの裏面Wbを研削する。粗研削砥石304bは、比較的大きな砥粒を含む砥石である。
【0030】
スピンドル300の内部には、Z軸方向に延びる研削水流路が形成されており、この研削水流路に図示しない研削水供給手段が連通している(ともに図示せず)。研削水供給手段からスピンドル300に対して供給される研削水は、研削水流路の下端の開口から粗研削砥石304bに向かって下方に噴出し、粗研削砥石304bとウェーハWとの接触部位に到達する。
【0031】
また、第2の装置ベース11上の後方には、第2のコラム13が、X軸方向に沿って第1のコラム12に隣接するように立設されている。第2のコラム13の前面には、ウェーハWを仕上げ研削する仕上げ研削手段31、および、仕上げ研削送り手段21が配設されている。
【0032】
仕上げ研削送り手段21は、粗研削送り手段20と同様の構成を有しており、仕上げ研削手段31をZ軸方向に研削送りすることができる。仕上げ研削手段31は、粗研削砥石304bに代えて、仕上げ研削砥石314bを備えていることを除いて、粗研削手段30と同様の構成を有している。仕上げ研削砥石314bは、比較的小さな砥粒を含む砥石である。
【0033】
第2の装置ベース11上の片側(-X方向側)には、第3のコラム14が立設されている。第3のコラム14の前面には、ウェーハWの被研削面を研磨する研磨手段4、研磨送り手段25、および、Y軸方向移動手段24が配設されている。
【0034】
Y軸方向移動手段24は、Y軸方向に平行な一対のガイドレール241、このガイドレール241上をスライドする可動板243、ガイドレール241と平行なボールネジ240、および、ボールネジ240を回転駆動するモータ242を備えている。
【0035】
可動板243は、研磨送り手段25および研磨手段4を有しており、ガイドレール241にスライド可能に設置されている。図示しないナット部が、可動板243の後面側(裏面側)に固定されている。このナット部には、ボールネジ240が螺合されている。モータ242は、ボールネジ240の一端部に連結されている。
【0036】
Y軸方向移動手段24では、モータ242がボールネジ240を回動させることにより、可動板243が、ガイドレール241に沿って、Y軸方向に移動する。これにより、可動板243上に配設された研磨送り手段25および研磨手段4も、可動板243とともにY軸方向に移動する。
【0037】
研磨送り手段25は、Z軸方向に平行な一対のガイドレール251、このガイドレール251上をスライドする昇降テーブル253、ガイドレール251と平行なボールネジ250、ボールネジ250を回転駆動するモータ252、および、昇降テーブル253の前面(表面)に取り付けられたホルダ254を備えている。ホルダ254は、研磨手段4を保持している。
【0038】
昇降テーブル253は、ガイドレール251にスライド可能に設置されている。図示しないナット部が、昇降テーブル253の後面側(裏面側)に固定されている。このナット部には、ボールネジ250が螺合されている。モータ252は、ボールネジ250の一端部に連結されている。
【0039】
研磨送り手段25では、モータ252がボールネジ250を回転させることにより、昇降テーブル253が、ガイドレール251に沿って、Z軸方向に移動する。これにより、昇降テーブル253に取り付けられたホルダ254、および、ホルダ254に保持された研磨手段4も、昇降テーブル253とともにZ軸方向に移動する。
【0040】
研磨手段4は、ホルダ254に固定されたスピンドルハウジング41、スピンドルハウジング41に回転可能に保持されたスピンドル40、スピンドル40を回転駆動するモータ42、スピンドル40の下端に取り付けられたマウント43、および、マウント43の下面に着脱可能に接続されたに研磨パッド44を備えている。
【0041】
スピンドルハウジング41は、Z軸方向に延びるようにホルダ254に保持されている。スピンドル40は、チャックテーブル5のテーブル面50と直交するようにZ軸方向に延び、スピンドルハウジング41に回転可能に支持されている。
【0042】
モータ42は、スピンドル40の上端側に連結されている。このモータ42により、スピンドル40は、Z軸方向に延びる回転軸を中心として回転する。スピンドル40の内部には、軸方向に延びる研磨液流路が形成されている。
マウント43は、円板状に形成されており、スピンドル40の下端(先端)に固定されている。マウント43は、研磨パッド44を支持する。
【0043】
マウント43および研磨パッド44は、中央部分に、研磨液(遊離砥粒を含む研磨液、あるいは、遊離砥粒を含まない研磨液)を通すための貫通孔を有している。この貫通孔は、上述したスピンドル40の研磨液流路に連通されている。
研磨パッド44の直径は、マウント43の直径と同程度であり、また、チャックテーブル5の直径よりも大きい。
【0044】
研磨後のウェーハWは、搬出機構(ローディングアーム)154bによって搬出される。搬出機構154bは、ウェーハWの裏面Wbを吸引保持する吸引面を有する吸引パッドを備えている。搬出機構154bは、チャックテーブル5に載置されている研磨処理後のウェーハWの裏面Wbを、吸引パッドによって吸引保持する。その後、搬出機構154bは、ウェーハWをチャックテーブル5から搬出して、枚葉式のスピンナ洗浄ユニット156のスピンナテーブル157に搬送する。
【0045】
スピンナ洗浄ユニット156は、ウェーハWを保持するスピンナテーブル157、および、スピンナテーブル157に向けて洗浄水および乾燥エアを噴射するノズル158を備えている。
【0046】
スピンナ洗浄ユニット156では、ウェーハWを保持したスピンナテーブル157が、第1の装置ベース10内に降下される。そして、第1の装置ベース10内で、ウェーハWの裏面Wbに向けて洗浄水が噴射されて、裏面Wbがスピンナ洗浄される。その後、ウェーハWに乾燥エアが吹き付けられて、ウェーハWが乾燥される。
【0047】
スピンナ洗浄ユニット156によって洗浄されたウェーハWは、ロボット155により、第2のカセット151aに搬入される。
【0048】
次に、加工装置1によるウェーハの加工方法について、より詳細に説明する。
(1)保持工程
まず、ウェーハWが、搬入機構154aによって、図2に示すように、チャックテーブル5のテーブル面50に載置される。その後、テーブル面50が、図示しない吸引源に連通されて、保護テープTを介して、ウェーハWを吸引保持する。このようにして、ウェーハWが、チャックテーブル5によって保持される。
【0049】
(2)研削工程
(2-1)粗研削工程
保持工程の後、図1に示したターンテーブル6が自転することで、ウェーハWを保持しているチャックテーブル5が、粗研削手段30の下方に配置される。
続いて、粗研削手段30のモータ302が、スピンドル300を回転駆動する。これにより、スピンドル300の下端に取り付けられたホイールマウント303および研削ホイール304が回転される。この状態で、粗研削送り手段20によって、粗研削手段30が、Z軸方向に沿って研削送りされる。さらに、チャックテーブル5が、図示しない駆動源によって回転される。
【0050】
これにより、図3に示すように、矢印A1方向に回転する研削ホイール304の粗研削砥石304bが、矢印A2方向に回転するチャックテーブル5に保持されているウェーハWの裏面(上面)Wbに接触し、この裏面Wbを粗研削する。
【0051】
(2-2)仕上げ研削工程
粗研削後、図1に示したターンテーブル6が自転することで、ウェーハWを保持しているチャックテーブル5が、仕上げ研削手段31の下方に配置される。そして、粗研削工程と同様に、研削ホイール304が回転されるとともに、仕上げ研削送り手段21によって、仕上げ研削手段31が、Z軸方向に沿って研削送りされる。さらに、チャックテーブル5が、図示しない駆動源によって回転される。
【0052】
これにより、図3に示すように、矢印A1方向に回転する研削ホイール304の仕上げ研削砥石314bが、矢印A2方向に回転するチャックテーブル5に保持されているウェーハWの裏面Wbに接触し、この裏面Wbを仕上げ研削する。
【0053】
(3)第1研磨工程
仕上げ研削後、図1に示したターンテーブル6が自転することで、ウェーハWを保持しているチャックテーブル5が、研磨手段4の下方に配置される。
続いて、研磨手段4のモータ42が、スピンドル40を回転駆動する。これにより、スピンドル40の下端に取り付けられたマウント43および研磨パッド44が回転される。この状態で、研磨送り手段25によって、研磨手段4が、Z軸方向に沿って研磨送りされる。さらに、チャックテーブル5が、図示しない駆動源によって回転される。
【0054】
これにより、図4に示すように、矢印A1方向に回転する研磨パッド44が、矢印A2方向に回転するチャックテーブル5に保持されているウェーハWの裏面Wbに接触する。
なお、図4に示すように、研磨パッド44は、図示しないボルト等によってマウント43に取り付けられている円板45と、円板45の下面に接着される研磨部材46とを備えている。この研磨部材46が、ウェーハWの裏面Wbに接触する。研磨部材46は、たとえば不織布を含み、固定砥粒を含まない。
【0055】
また、研磨手段4では、図4に示すように、スピンドル40が、その内部に延びる研磨液流路SLを有している。また、マウント43および研磨パッド44が、それぞれ、中央部を貫通する貫通孔MHおよび貫通孔PHを有している。そして、これら研磨液流路SL、貫通孔MHおよび貫通孔PHは、Z軸方向に沿って連通されている。
【0056】
また、研磨液流路SLは、遊離砥粒バルブ100を介して、遊離砥粒供給源101に接続されている。さらに、研磨液流路SLは、研磨液バルブ102を介して、研磨液供給源103に接続されている。
なお、このようにスピンドル40の内部に延びる研磨液流路SLを備えないで、研磨パッドの研磨面に向かって研磨液および遊離砥粒を噴射するノズルを備えてもよい。
【0057】
そして、第1研磨工程では、研磨部材46がウェーハWの裏面Wbに接触する際に、遊離砥粒バルブ100および研磨液バルブ102が開放される。このため、第1研磨工程では、遊離砥粒供給源101からの遊離砥粒が、研磨液供給源103からの研磨液に投入される。そして、遊離砥粒を含む研磨液が、研磨液流路SL、貫通孔MHおよび貫通孔PHを介して、ウェーハWの裏面Wbに供給され、研磨パッド44の研磨部材46とウェーハWの裏面Wbとの接触部位に到達する。
【0058】
この状態で、回転するウェーハWの裏面Wbに、回転する研磨パッド44の研磨部材46が押し付けられる。これにより、ウェーハWの裏面Wbが、研磨部材46によって研磨される。
なお、研削工程を経たウェーハWの裏面Wbには、第1研磨工程の開始までに、2nm~3nmの厚みを有する酸化膜が形成される。第1研磨工程では、遊離砥粒を含む研磨液を用いることにより、裏面Wbの酸化膜を除去することができる。
【0059】
なお、遊離砥粒を含む研磨液を用いる第1研磨工程の処理時間(第1研磨工程における研磨加工時間)は、たとえば10秒である。また、ウェーハWの裏面Wb研磨液に投入される遊離砥粒の量は、予め定められた所定量である。たとえば、研磨液における遊離砥粒の含有量は、0.1-1%程度であってもよい。また、供給する研磨液は、0.25L/minで供給している。
【0060】
また、第1研磨工程における、ウェーハWの裏面Wbに対する研磨パッド44(研磨部材46)の押し付け圧力は、たとえば25kpaである。
さらに、スピンドル40の回転数、すなわち、研磨部材46の回転数は、たとえば500rpmであり、チャックテーブル5の回転数は、たとえば505rpmである。このように、チャックテーブル5の回転数を研磨部材46の回転数より僅かに早くすると、研磨液および遊離砥粒を研磨パッド全面に拡散させる事ができる。
【0061】
(4)第2研磨工程
第2研磨工程は、第1研磨工程に引き続いて実施される。この第2研磨工程では、図5に示すように、回転する研磨部材46が、回転するウェーハWの裏面Wbに接触した状態で、遊離砥粒バルブ100が閉じられる。これにより、遊離砥粒を含まない研磨液が、研磨液流路SL、貫通孔MHおよび貫通孔PHを介して、ウェーハWの裏面Wbに供給される。
【0062】
すなわち、第2研磨工程は、遊離砥粒を含まない研磨液を用いる研磨工程である。このような研磨液がウェーハWの裏面Wbに供給されている状態で、回転する研磨パッド44の研磨部材46が、回転するウェーハWの裏面Wbに押しつけられて、この裏面Wbを研磨する。
【0063】
なお、遊離砥粒を含まない研磨液を用いる第2研磨工程の処理時間(第2研磨工程における研磨加工時間)は、たとえば2分である。また、供給する研磨液は、0.25L/minで供給している。
また、ウェーハWの裏面Wbに対する研磨パッド44(研磨部材46)の押し付け圧力は、たとえば25kpaである。
さらに、スピンドル40の回転数、すなわち、研磨部材46の回転数は、たとえば500rpmであり、チャックテーブル5の回転数は、たとえば505rpmである。このように、チャックテーブル5の回転数を研磨部材46の回転数より僅かに早くすると、研磨液および遊離砥粒を研磨パッド全面に拡散させる事ができる。
【0064】
以上のように、本実施形態では、第1研磨工程において、遊離砥粒を含む研磨液を用いて、ウェーハWの裏面Wbに形成された酸化膜を除去している。さらに、第2研磨工程において、遊離砥粒を含まない研磨液を用いている。第2研磨工程では、ウェーハWの裏面Wbから酸化膜が除去されているため、ウェーハWの材料(シリコンなど)と研磨液との反応により、遊離砥粒を用いなくても、ウェーハWの裏面Wbを研磨することが可能である。
【0065】
これにより、第1研磨工程においてウェーハWの裏面Wbに供給された遊離砥粒は、第2研磨工程において用いられる遊離砥粒を含まない研磨液によって、ウェーハWの裏面Wbから流される。したがって、ウェーハWの下面である表面Waとチャックテーブル5のテーブル面50との隙間に遊離砥粒が進入すること、および、ウェーハWの表面Waおよびチャックテーブル5に遊離砥粒が付着することを、抑制することができる。
【0066】
また、第1研磨工程では、研磨液に投入される遊離砥粒の量は、予め定められた所定の量である。これにより、第1研磨工程において、遊離砥粒の量が少なすぎて、ウェーハWの裏面Wbに酸化膜が残存してしまうこと、あるいは、遊離砥粒の量が多すぎて、第2研磨工程後において遊離砥粒が残存してしまうこと、を抑制することができる。
【0067】
なお、研磨液としては、たとえば、特許文献2に記載されている研磨液を用いることができる。
また、第1研磨工程において遊離砥粒バルブ100を開放する時間、すなわち、研磨液に遊離砥粒を投入する時間は、第1研磨工程の全期間でもよいし、その一部でもよい。すなわち、第1研磨工程では、比較的に長い時間にわたって、遊離砥粒を、少量ずつ、研磨液に投入してもよい。あるいは、比較的に短時間(たとえば、第1研磨工程の開始直後)に、多くの量の遊離砥粒を投入してもよい。いずれの場合においても、研磨液に投入される遊離砥粒の量は、略同量であってよい。
【0068】
また、本実施形態では、研磨液を、研磨液流路SL、貫通孔MHおよび貫通孔PHを介して、ウェーハWの裏面Wbに供給している。これに代えて、研磨液を、チャックテーブル5の側方から、研磨パッド44の研磨部材46に向けて、上向きに噴射してもよい。この場合、第1工程では、遊離砥粒は、研磨液に混ぜられて同様に上向きに噴射されてもよいし、研磨液とは別に、研磨液流路SL、貫通孔MHおよび貫通孔PHを介して、ウェーハWの裏面Wbに供給されてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1:加工装置、10:第1の装置ベース、11:第2の装置ベース、
12:第1のコラム、13:第2のコラム、14:第3のコラム、
5:チャックテーブル、50:テーブル面、6:ターンテーブル、
20:粗研削送り手段、30:粗研削手段、304b:粗研削砥石、
21:仕上げ研削送り手段、31:仕上げ研削手段、314b:仕上げ研削砥石、
25:研磨送り手段、4:研磨手段、
40:スピンドル、44:研磨パッド、46:研磨部材、
MH:貫通孔、PH:貫通孔、SL:研磨液流路、
100:遊離砥粒バルブ、101:遊離砥粒供給源、
102:研磨液バルブ、103:研磨液供給源、
W:ウェーハ、Wa:表面、Wb:裏面、T:保護テープ
図1
図2
図3
図4
図5