(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】加工装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20231017BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20231017BHJP
B24B 49/04 20060101ALI20231017BHJP
B24B 49/12 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
H01L21/78 F
H01L21/78 B
B24B27/06 M
B24B49/04 Z
B24B49/12
(21)【出願番号】P 2019149046
(22)【出願日】2019-08-15
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 崇史
【審査官】渡井 高広
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-246015(JP,A)
【文献】特開昭57-167651(JP,A)
【文献】特開2005-078406(JP,A)
【文献】特開2008-004806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B24B 27/06
B24B 49/04
B24B 49/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分割予定ラインを備える被加工物を保持面で保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物の該分割予定ラインに沿って加工する加工ユニットと、を備える加工装置であって、
該チャックテーブルに保持された被加工物を撮影するカメラと、
該カメラで撮影した画像を表示する表示ユニットと、
該加工ユニット及び該カメラに対し、該チャックテーブルを該保持面と平行なX方向及びY方向に相対的に移動させる移動ユニットと、
各構成要素を制御する制御ユニットと、を備え、
該制御ユニットは、
該移動ユニットが被加工物を撮影する該カメラを該チャックテーブルに対して相対的に移動させる検査ルートを
該分割予定ライン上に設定し、該分割予定ライン上に設定した該検査ルートを登録する検査ルート登録部を備え、
該検査ルート登録部に登録された該検査ルートの始点と終点との間の各検査位置において、該検査ルート登録部に登録された該検査ルートに従って該チャックテーブルに対して相対的に移動する該カメラで被加工物を撮影した画像を、該表示ユニットに表示させる加工装置。
【請求項2】
該カメラで撮影した画像が記録される画像記録部を備える請求項1に記載の加工装置。
【請求項3】
該制御ユニットは、所定の該分割予定ラインが選択されることで、所定の該分割予定ラインの一方の端から他方の端までの全部を該検査ルートに設定して、該検査ルート登録部に登録させる請求項1に記載の加工装置。
【請求項4】
該制御ユニットは、なぞられた部分を該検査ルートに設定して、該検査ルート登録部に登録させる請求項1に記載の加工装置。
【請求項5】
該制御ユニットは、なぞられた部分を最近接の分割予定ライン上の位置に自動的に補正して該検査ルートに設定して、該検査ルート登録部に登録させる請求項1に記載の加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャックテーブルに保持された被加工物を撮影、表示する加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハやセラミックス、樹脂パッケージ基板、SiCウェーハ、サファイアウェーハ等各種板状の被加工物を個々のチップに分割するために、切削ブレードを用いる切削装置やレーザー光線を用いるレーザー加工装置などといった加工装置が使用される。このような加工装置は、分割予定ラインに沿って加工を施し、加工痕(切削溝やレーザー加工痕)を形成する。このような加工装置には、オペレータがその加工結果を確認するため、定期的、又は任意のタイミングで加工処理が停止されて、加工痕(切削溝やレーザー加工痕)を観察することができる機能が備えられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
オペレータは、例えば、1本の分割予定ラインを蛇行無く加工できているかどうか確認する場合、分割予定ラインの端から端まで観察位置(撮影位置)を移動させながら、表示ユニットに表示される画像で加工痕の蛇行を目視で確認する。オペレータは、この際、観察位置(撮影位置)を移動させるための動作ボタンをずっと押しながら観察位置(撮影位置)を移動させるが、全ての被加工物でこの動作を実施させる場合、オペレータは同じボタン操作を繰り返し実施しなければならず、煩わしいという問題があった。また、所定の分割予定ラインで観察することが決まっている場合、この動作ボタンを操作しながらその分割予定ラインを探し出す必要があるため、その探し出す作業も手間がかかるという問題があった。このように、従来の加工装置では、どの被加工物も決まった位置を観察する、という作業のためにオペレータの作業時間及び工数がとられているという問題があった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、被加工物の決まった位置を観察する作業の作業時間及び工数を低減することができる加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の加工装置は、分割予定ラインを備える被加工物を保持面で保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物の該分割予定ラインに沿って加工する加工ユニットと、を備える加工装置であって、該チャックテーブルに保持された被加工物を撮影するカメラと、該カメラで撮影した画像を表示する表示ユニットと、該加工ユニット及び該カメラに対し、該チャックテーブルを該保持面と平行なX方向及びY方向に相対的に移動させる移動ユニットと、各構成要素を制御する制御ユニットと、を備え、該制御ユニットは、該移動ユニットが被加工物を撮影する該カメラを該チャックテーブルに対して相対的に移動させる検査ルートを該分割予定ライン上に設定し、該分割予定ライン上に設定した該検査ルートを登録する検査ルート登録部を備え、該検査ルート登録部に登録された該検査ルートの始点と終点との間の各検査位置において、該検査ルート登録部に登録された該検査ルートに従って該チャックテーブルに対して相対的に移動する該カメラで被加工物を撮影した画像を、該表示ユニットに表示させることを特徴とする。
【0007】
該カメラで撮影した画像が記録される画像記録部を備えてもよい。また、該制御ユニットは、所定の該分割予定ラインが選択されることで、所定の該分割予定ラインの一方の端から他方の端までの全部を該検査ルートに設定して、該検査ルート登録部に登録させてもよい。また、該制御ユニットは、なぞられた部分を該検査ルートに設定して、該検査ルート登録部に登録させてもよい。また、該制御ユニットは、なぞられた部分を最近接の分割予定ライン上の位置に自動的に補正して該検査ルートに設定して、該検査ルート登録部に登録させてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本願発明は、被加工物の決まった位置を観察する作業の作業時間及び工数を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る加工装置の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る加工装置における検査ルート登録方法の設定画面の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る加工装置における検査ルート登録の一例を説明する上面図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る加工装置において登録された検査ルートの一例を説明する上面図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る加工装置において登録された検査ルートに従って撮影した画像の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態2に係る加工装置における検査ルート登録の一例を説明する上面図である。
【
図7】
図7は、実施形態2に係る加工装置において登録された検査ルートの一例を説明する上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0011】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る加工装置1を図面に基づいて説明する。
図1は、実施形態1に係る加工装置1の構成例を示す斜視図である。実施形態1に係る加工装置1は、被加工物200を切削し、被加工物200に加工痕である切削溝300(
図5等参照)を形成する装置である。また、加工装置1は、被加工物200の加工中又は加工後の任意のタイミングで切削加工によって形成された切削溝300のうち予め設定された検査ルート400(
図4参照)上の切削溝300を撮像し、表示、記憶する装置でもある。なお、加工装置1は、本発明では、これに限定されず、被加工物200にレーザー光線を照射して被加工物200をレーザー加工し、レーザー加工によって形成されかつ検査ルート400上の加工痕であるレーザー加工溝を撮像し、表示、記憶するレーザー加工装置であってもよい。
【0012】
実施形態1において、加工装置1が切削する被加工物200は、
図1に示すように、例えば、シリコン、サファイア、シリコンカーバイド(SiC)、ガリウムヒ素などを母材とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハなどのウェーハである。被加工物200は、平坦な表面201の格子状に形成される複数の分割予定ライン202によって区画された領域にデバイス203が形成されている。被加工物200は、表面201の裏側の裏面204に粘着テープ205が貼着され、粘着テープ205の外縁部に環状フレーム206が装着されている。なお、被加工物200は、本発明では、これに限定されず、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状のパッケージ基板、セラミックス板、又はガラス板等でも良い。
【0013】
加工装置1は、
図1に示すように、チャックテーブル10と、切削加工を実施する加工ユニット20と、カメラ30と、表示ユニット40と、移動ユニット50と、制御ユニット60と、を備える。加工装置1は、
図1に示すように、加工ユニット20を2つ備えた、即ち、2スピンドルのダイサ、いわゆるフェイシングデュアルタイプの切削装置である。
【0014】
チャックテーブル10は、複数の分割予定ライン202を備える被加工物200を保持面11で保持する。チャックテーブル10は、被加工物200を保持する平坦な保持面11が上面に形成されかつ多数のポーラス孔を備えたポーラスセラミック等から構成された円盤形状の吸着部と、吸着部を上面中央部の窪み部に嵌め込んで固定する枠体とを備えた円盤形状である。チャックテーブル10は、移動ユニット50のX軸移動ユニット51により移動自在で、不図示の回転駆動源により回転自在に設けられている。チャックテーブル10は、吸着部が、図示しない真空吸引経路を介して図示しない真空吸引源と接続され、保持面11全体で、被加工物200を吸引保持する。また、チャックテーブル10の周囲には、
図1に示すように、環状フレーム206をクランプするクランプ部12が複数設けられている。
【0015】
加工ユニット20は、チャックテーブル10に保持された被加工物200を分割予定ライン202に沿って加工して切削溝300を形成する。加工ユニット20は、切削ブレード21と、スピンドルと、スピンドルハウジング22と、を備える。切削ブレード21は、Y軸周りの回転動作が加えられて、チャックテーブル10に保持された被加工物200を切削する。スピンドルは、Y軸方向に沿って設けられ、先端でY軸周りに回転可能に切削ブレード21を支持する。スピンドルハウジング22は、スピンドルをY軸周りの回転動作を可能に収納する。加工ユニット20は、スピンドルハウジング22が、チャックテーブル10に保持された被加工物200に対して、移動ユニット50のY軸移動ユニット52によりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、移動ユニット50のZ軸移動ユニット53によりZ軸方向に移動自在に設けられている。
【0016】
カメラ30は、チャックテーブル10に保持された被加工物200を撮影することで、観察支援処理の一部を担う。カメラ30は、実施形態1では、加工ユニット20と一体的に移動するように、加工ユニット20に固定されている。カメラ30は、チャックテーブル10に保持された切削加工処理前の被加工物200の分割予定ライン202、及び、切削加工処理後の被加工物200の加工痕である切削溝300を撮像する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。
【0017】
カメラ30は、チャックテーブル10に保持された切削加工処理前の被加工物200を撮像して、被加工物200と切削ブレード21との位置合わせを行なうアライメントを遂行するため等の画像を得、得た画像を制御ユニット60に出力する。また、カメラ30は、チャックテーブル10に保持された切削加工後の被加工物200を撮像して、得た画像を制御ユニット60に出力する。
【0018】
表示ユニット40は、切削加工の各動作や画像及びカメラ30が撮像した切削溝300の画像などを表示する液晶表示装置などにより構成され、制御ユニット60と情報通信可能に電気的に接続されている。表示ユニット40は、同様に制御ユニット60と情報通信可能に電気的に接続されている報知ユニット41及び入力ユニット42と連携されている。
【0019】
報知ユニット41は、切削加工及びカーフチェックを含む観察支援処理に関する各動作の状態に基づいて報知する発光ダイオード(Light Emitting Diode、LED)などにより構成される。入力ユニット42は、オペレータが切削加工の加工条件、及び検査ルート400等の情報等を入力及び登録等する際に用いるものであり、表示ユニット40に設けられたタッチパネルと、キーボード等とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0020】
移動ユニット50は、
図1に示すように、X軸移動ユニット51と、Y軸移動ユニット52と、Z軸移動ユニット53と、を備える。X軸移動ユニット51は、チャックテーブル10を加工ユニット20に対して相対的に、水平方向の一方向であるX軸方向に沿って加工送りする。Y軸移動ユニット52は、加工ユニット20をチャックテーブル10に対して相対的に、水平方向の別の一方向でありX軸方向に直交するY軸方向に沿って割り出し送りする。Z軸移動ユニット53は、加工ユニット20をチャックテーブル10に対して相対的に、X軸方向とY軸方向との双方と直交し鉛直方向に平行なZ軸方向に沿って切り込み送りする。
【0021】
制御ユニット60は、加工装置1の各構成要素をそれぞれ制御して、被加工物200に対する切削加工及びカーフチェックを含む観察支援処理に関する各動作を加工装置1に実施させるものである。
【0022】
制御ユニット60は、実施形態1では、コンピュータシステムを含む。制御ユニット60は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有する。演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、加工装置1を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して加工装置1の各構成要素に出力する。
【0023】
制御ユニット60は、検査ルート登録部61と、画像記録部62と、を備える。検査ルート登録部61及び画像記録部62は、いずれも、制御ユニット60の記憶装置により実現される。検査ルート登録部61は、移動ユニット50が被加工物200を撮影するカメラ30をチャックテーブル10に対し相対的に移動させる検査ルート400を登録する。検査ルート登録部61は、より詳細には、オペレータが観察する被加工物200の決まった位置を経路に含む検査ルート400を登録する。画像記録部62は、カメラ30で撮影した画像を記録する。画像記録部62は、より詳細には、検査ルート400の経路上の各位置においてカメラ30で撮影した被加工物200の画像を記録する。
【0024】
また、加工装置1は、
図1に示すように、切削加工前後の被加工物200を収容するカセット70と、カセット70の収容前後の被加工物200を仮置きする仮置きユニット71と、切削加工後の被加工物200を洗浄する洗浄ユニット90と、被加工物200をチャックテーブル10、カセット70、仮置きユニット71及び洗浄ユニット90の間で搬送する搬送ユニット80と、をさらに備える。
【0025】
加工装置1は、被加工物200の分割予定ライン202の本数、分割予定ライン202同士の間隔等の情報を含む加工条件が制御ユニット60に登録された後に、搬送ユニット80がカセット70内から被加工物200を1枚取り出して仮置きユニット71で所定の位置に位置付けた後、チャックテーブル10の保持面11に載置する。加工装置1は、チャックテーブル10の保持面11で被加工物200を吸引保持して、アライメントを遂行した後、加工ユニット20から被加工物200に切削水を供給しながら、回転駆動源及び移動ユニット50によりチャックテーブル10と加工ユニット20とを分割予定ライン202に沿って相対的に移動させて、加工ユニット20の切削ブレード21で被加工物200の分割予定ライン202を切削して切削溝300を形成する。加工装置1は、被加工物200の全ての分割予定ライン202を切削すると、被加工物200を洗浄ユニット90で洗浄した後にカセット70内に収容する。
【0026】
図2は、実施形態1に係る加工装置1における検査ルート登録方法の設定画面110の一例を示す図である。
図3は、実施形態1に係る加工装置1における検査ルート登録の一例を説明する上面図である。
図4は、実施形態1に係る加工装置1において登録された検査ルートの一例である検査ルート400を説明する上面図である。
図5は、実施形態1に係る加工装置1において登録された検査ルート400に従って撮影した画像の一例を示す図である。なお、
図3及び
図4では、粘着テープ205及び環状フレーム206が省略されている。以下において、
図2から
図5を用いて、実施形態1に係る加工装置1が実施する観察支援処理の詳細を説明する。
【0027】
実施形態1に係る加工装置1が実施する観察支援処理では、制御ユニット60は、アライメント終了後、切削加工開始前に、まず、オペレータに観察可能にする被加工物200上の位置を経路に含む検査ルート400と、検査ルート400の画像を表示ユニット40に表示するタイミングと、を登録する。実施形態1に係る加工装置1が実施する観察支援処理では、例えば、
図2に示すような実施形態1に係る加工装置1における検査ルート登録方法の設定画面110をユーザインターフェイスとして、検査ルート400の登録方式の入力を受け付ける。実施形態1に係る加工装置1における検査ルート登録方法の設定画面110は、
図2に示すように、分割予定ライン202を選択する方式と、検査ルート400をなぞる方式とのいずれか一方の選択を設定して登録する画面である。
【0028】
分割予定ライン202を選択する方式では、選択された分割予定ライン202を一方の端から他方の端までの全部を検査ルート400の経路に含ませる旨を設定して登録する方式である。なお、分割予定ライン202を選択する方式は、観察支援処理における観察対象が分割予定ライン202に限定される場合が多いという必要性に応じて設けられたものである。
【0029】
検査ルート400をなぞる方式では、なぞられた部分をそのまま検査ルート400の経路に含ませる旨を設定して登録する方式である。なお、検査ルート400をなぞる方式では、選択箇所を最近接の分割予定ライン202上の位置に自動的に補正して、分割予定ライン202を選択する方式と同様に、分割予定ライン202を選択するように設定して登録することができる。また、検査ルート400をなぞる方式では、このような補正をせず、分割予定ライン202を選択する方式とは異なり、観察支援処理における観察対象として分割予定ライン202以外を設定して登録することもできる。
【0030】
実施形態1では、分割予定ライン202を選択する方式について説明する。検査ルート400をなぞる方式については、後述する実施形態2で説明する。なお、実施形態1に係る加工装置1における検査ルート登録方法については、本発明では、これらの方式に限定されず、入力ユニット42を介して設定及び登録をすることが可能な方式であれば、如何なる方式を採用してもよい。
【0031】
なお、以下において、X軸方向に沿った分割予定ライン202を選択する方式と、Y軸方向に沿った分割予定ライン202を選択する方式と、両方の分割予定ライン202を共に選択する方式とは、分割予定ライン202の向きを除いて同様であるため、X軸方向に沿ったものについて詳細な説明だけをし、Y軸方向に沿ったもの等については、その詳細な説明を省略する。
【0032】
実施形態1に係る加工装置1における検査ルート登録方法では、まず、制御ユニット60は、加工ユニット20による切削加工を実施して切削溝300を形成する前に、加工条件などを参照して、被加工物200の表面201の一部または全体の画像を表示ユニット40に表示させる。このアライメント用の画像は、具体的には、
図3に示すように、切削溝300が形成されていない被加工物200の上面図である。なお、制御ユニット60は、アライメントを遂行した時点で、全ての分割予定ライン202のチャックテーブル10の保持面11のXY座標での位置及び向きを検出、認識しており、XY座標を以って正確に規定可能な状態となっている。
【0033】
実施形態1に係る加工装置1における検査ルート登録方法では、次に、制御ユニット60は、入力ユニット42を介して、オペレータによる観察対象に含めたい分割予定ライン202の選択を受け付ける。実施形態1に係る加工装置1における検査ルート登録方法では、制御ユニット60は、例えば、
図3に示す分割予定ライン202-1と分割予定ライン202-2とをオペレータが画面に表示させ選択することで、分割予定ライン202-1と分割予定ライン202-2の選択を受け付ける。実施形態1に係る加工装置1における検査ルート登録方式では、制御ユニット60は、このような分割予定ライン202-1,202-2の選択を受け付けると、表示ユニット40に表示させている画面において、選択を受け付けた分割予定ライン202-1,202-2を強調表示する等して、分割予定ライン202-1,202-2の選択を受け付けた旨をオペレータに視認可能にしてもよい。
【0034】
実施形態1に係る加工装置1における検査ルート登録方法では、次に、制御ユニット60は、分割予定ライン202-1,202-2の選択を受け付けた状態で、その他の分割予定ライン202の選択を受け付けることを終了すると、
図4に示すように、分割予定ライン202-1,202-2を経路に含む検査ルート400を生成する。実施形態1に係る加工装置1における検査ルート登録方法では、具体的には、制御ユニット60は、分割予定ライン202-1の一方の端から他方の端までの全部を経路に含む第1検査ルート部分401と、分割予定ライン202-2の一方の端から他方の端までの全部を経路に含む第3検査ルート部分403と、第1検査ルート部分401と第3検査ルート部分403とを最短で接続するための第2検査ルート部分402と、をそれぞれ生成し、第1検査ルート部分401、第2検査ルート部分402及び第3検査ルート部分403を接続して検査ルート400を生成する。
【0035】
なお、実施形態1に係る加工装置1における検査ルート登録方式では、選択された分割予定ライン202に基づく検査ルート部分401,403について、-X方向側の端を一方の端、すなわち始点とし、+X方向側の端を他方の端、すなわち終点と設定しているが、本発明ではこれに限定されず、始点と終点との設定を逆にして検査ルート部分の向きを逆にしたり、始点と終点との設定を分割予定ライン202毎に交互にして検査ルート部分の向きを交互にしたりするなど、検査ルート部分の向きの設定を適宜変更することができる。
【0036】
実施形態1に係る加工装置1における検査ルート登録方法では、制御ユニット60は、上記のように生成した検査ルート400を、検査ルート登録部61に登録させる。
【0037】
実施形態1に係る加工装置1が実施する観察支援処理では、制御ユニット60は、次に、上記のように生成し、検査ルート登録部61に登録させた検査ルート400に従って、移動ユニット50のX軸移動ユニット51及びY軸移動ユニット52によりカメラ30をXY平面内に沿って移動させて、カメラ30により、被加工物200における検査ルート400上の各検査位置の部分を撮影させて各撮影画像を取得する。
【0038】
実施形態1に係る加工装置1が実施する観察支援処理では、制御ユニット60は、具体的には、検査ルート400の第1検査ルート部分401上の始点を含む検査位置411と、第1検査ルート部分401上の中点を含む検査位置412と、第1検査ルート部分401上の終点を含む検査位置413と、検査位置411と検査位置412との間の全ての各検査位置と、検査位置412と検査位置413との間の全ての各検査位置と、検査ルート400の第3検査ルート部分403上の始点を含む検査位置414と、第3検査ルート部分403上の中点を含む検査位置415と、第3検査ルート部分403上の終点を含む検査位置416と、検査位置414と検査位置415との間の全ての各検査位置と、検査位置415と検査位置416との間の全ての各検査位置と、において、被加工物200を撮影して各撮影画像を取得する。
【0039】
実施形態1に係る加工装置1が実施する観察支援処理では、制御ユニット60は、例えば、
図5の(A)(B)(C)のそれぞれに示すように、検査位置411,412,413のそれぞれにおいて、被加工物200の分割予定ライン202と分割予定ライン202に沿って形成された切削溝300とが撮影された撮影画像を取得する。
【0040】
実施形態1に係る加工装置1が実施する観察支援処理では、制御ユニット60は、例えば、
図5の(A)(B)(C)のそれぞれに示す撮影画像も含め、検査ルート400の第1検査ルート部分401上の全ての各検査位置を撮影した各撮影画像を、表示ユニット40にオペレータが視認可能な所定の速度で次々に表示させる。また、実施形態1に係る加工装置1が実施する観察支援処理では、制御ユニット60は、検査ルート400の第3検査ルート部分403についても、検査ルート400の第1検査ルート部分401と同様に、各撮影画像を表示ユニット40に次々に表示させる。このようにすることで、オペレータは、被加工物200の決まった位置である、オペレータが選択した分割予定ライン202-1,202-2を、作業時間及び工数をあまりかけることなく、容易に観察することができ、例えば、分割予定ライン202-1,202-2に形成された切削溝300の蛇行の有無を容易に検査することができる。制御ユニット60は、このように次々に動画的に各撮影画像を表示ユニット40に表示させることで、オペレータが切削溝300の蛇行の発生を容易に目視で判別することを可能にする。
【0041】
また、制御ユニット60は、本発明ではこの表示形態に限定されず、例えば、検査位置411,412,413における撮影画像だけを選択的に順次表示してもよいし、それらの撮影画像を並べて一括して表示してもよく、これらの場合でも上記の表示形態と同様に、オペレータが切削溝300の蛇行の発生を容易に目視で判別することを可能にする。また、このような表示形態を実施する場合、制御ユニット60は、選択的に撮影画像を表示する箇所である検査位置411,412,413を検査ルート400と共に、検査ルート登録部61に登録させる。
【0042】
実施形態1に係る加工装置1は、以上のような構成を有するので、制御ユニット60が、移動ユニット50が被加工物200を撮影するカメラ30をチャックテーブル10に対して相対的に移動させる検査ルート400を登録する検査ルート登録部61を備え、検査ルート登録部61に登録された検査ルート400に従ってチャックテーブル10に対して相対的に移動するカメラ30で被加工物200を撮影した画像を、表示ユニット40に表示させる。このため、実施形態1に係る加工装置1は、オペレータが被加工物200の観察位置(撮影位置)を移動させるための動作ボタンをずっと押しながら観察位置(撮影位置)を移動させる等の煩わしい作業を必要としないので、被加工物200の決まった位置を観察する作業の作業時間及び工数を低減することができるという作用効果を奏する。また、このため、実施形態1に係る加工装置1は、被加工物200の決まった位置を観察する作業について、オペレータの熟練を不要とするという作用効果を奏する。
【0043】
また、実施形態1に係る加工装置1は、検査ルート400に従って移動するカメラ30で撮影した画像を記録する画像記録部62をさらに備える。このため、実施形態1に係る加工装置1は、オペレータが被加工物200の決まった位置を容易に再度観察することを可能にする。また、このため、実施形態1に係る加工装置1は、例えば、当該撮影画像が分割予定ライン202に沿ったものである場合、当該撮影画像を使用したカーフチェック等のその他の検査を可能にするという作用効果を奏する。また、このため、実施形態1に係る加工装置1は、被加工物200の加工の証明やトレーサビリティとしても使用可能な撮影画像というデータを自動的に蓄積することができるという作用効果を奏する。
【0044】
また、実施形態1に係る加工装置1は、アライメントを遂行するため等の被加工物200の画像を使用して、分割予定ライン202の選択を受け付けることで、選択を受け付けた分割予定ライン202に沿った部分を含む検査ルート400を生成する。このため、実施形態1に係る加工装置1は、オペレータが、所定の分割予定ライン202で観察することが決まっている場合に、その分割予定ライン202を探し出すための煩わしい作業を必要としないので、分割予定ライン202を観察する作業の作業時間及び工数を低減することができるという作用効果を奏する。実施形態1に係る加工装置1は、切削加工処理前に遂行したアライメントを利用して、分割予定ライン202を基準にして検査ルート400を生成するため、被加工物200のチャックテーブル10の保持面11上における載置位置がずれた場合でも、観察対象となった分割予定ライン202を好適に観察可能とすることができるという作用効果を奏する。
【0045】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る加工装置1を図面に基づいて説明する。
図6は、実施形態2に係る加工装置1における検査ルート登録の一例を説明する上面図である。
図7は、実施形態2に係る加工装置1において登録された検査ルート430の一例を説明する上面図である。なお、
図6及び
図7では、
図3及び
図4と同様に、粘着テープ205及び環状フレーム206が省略されている。
図6及び
図7は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0046】
実施形態2に係る加工装置1は、実施形態1において、検査ルート登録方式を、分割予定ライン202を選択する方式から検査ルート430をなぞる方式に変更したものであり、その装置構成は同様である。ここで、検査ルート登録方式のなぞる方式とは、検査ルート430を一筆書きのようにして登録する方式でもよいし、検査ルート430のポイントを登録することで、そのポイントとポイントとを繋ぐ最短ルートが算出されて、一筆書きのような検査ルート430が登録される方式でもよい。なお、実施形態2に係る加工装置1は、分割予定ライン202上の位置に限定されず、例えば所定のデバイス203を登録する等してもよい。
【0047】
実施形態2に係る加工装置1における検査ルート登録方式では、制御ユニット60は、例えば、
図6に示す分割予定ライン202-1を+X方向側の端から-X方向側の端に向かってなぞり、分割予定ライン202-1の-X方向側の端から
図6に示す分割予定ライン202-2の-X方向側の端に向かって経路420に沿ってなぞり、分割予定ライン202-2を-X方向側の端から+X方向側の端に向かってなぞった一連の経路線の入力を受け付ける。実施形態2に係る加工装置1における検査ルート登録方式では、制御ユニット60は、このような検査ルート430のなぞりによる入力を受け付けると、表示ユニット40に表示させている画面において、検査ルート430のなぞりによる入力を受け付けた部分を強調表示して、検査ルート430のなぞりによる入力を受け付けた旨をオペレータに視認可能にする。
【0048】
実施形態2に係る加工装置1における検査ルート登録方式では、次に、制御ユニット60は、上記したような一連の経路線の入力を受け付けた状態で、検査ルート430をなぞる操作が終了すると、
図7に示すように、分割予定ライン202-1,202-2を経路に含む検査ルート430を生成する。実施形態2に係る加工装置1における検査ルート登録方式では、具体的には、制御ユニット60は、分割予定ライン202-1のなぞられた部分及び向きに対応する第1検査ルート部分431と、なぞられた経路420に対応する第2検査ルート部分432と、分割予定ライン202-2のなぞられた部分及び向きに対応する第3検査ルート部分433と、をそれぞれ生成し、第1検査ルート部分431、第2検査ルート部分432及び第3検査ルート部分433を接続して検査ルート430を生成する。
【0049】
ここで、実施形態2に係る検査ルート430は、分割予定ライン202-2の部分において、実施形態1に係る検査ルート400と向きが逆である。実施形態2に係る加工装置1では、これに伴い、制御ユニット60がカメラ30に撮影させる画像の取得順序、表示ユニット40にスライド表示させる際のスライド方向、及び、画像記録部62に記録させる画像の記録順序が、それぞれ逆になる。
【0050】
実施形態2に係る加工装置1は、以上のような構成を有するので、実施形態1に係る加工装置1と同様に、制御ユニット60が同様の検査ルート登録部61及び画像記録部62を備え、検査ルート登録部61に登録された検査ルート400に従って移動するカメラ30で被加工物200を撮影した画像を、表示ユニット40に表示させる。このため、実施形態2に係る加工装置1は、実施形態1に係る加工装置1と同様の作用効果を奏するものとなる。
【0051】
また、実施形態2に係る加工装置1は、アライメントを遂行するため等の被加工物200の画像を使用して、検査ルート430をなぞる方式で、検査ルート430の入力を受け付ける。このため、実施形態2に係る加工装置1は、オペレータの感覚に沿った形で検査ルート430を決定することができるので、オペレータが感覚的に快適な分割予定ライン202を観察の作業等をすることができるという作用効果を奏する。
【0052】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 加工装置
10 チャックテーブル
11 保持面
20 加工ユニット
30 カメラ
40 表示ユニット
50 移動ユニット
60 制御ユニット
61 検査ルート登録部
62 画像記録部
200 被加工物
202,202-1,202-2 分割予定ライン
300 切削溝
400,430 検査ルート
401,431 第1検査ルート部分
402,432 第2検査ルート部分
403,433 第3検査ルート部分
411,412,413,414,415,416 検査位置