(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物及びパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/11 20060101AFI20231017BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20231017BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
G03F7/11 502
G03F7/11 503
H01L21/30 502D
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2020202636
(22)【出願日】2020-12-07
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】郡 大佑
(72)【発明者】
【氏名】甲斐 佑典
(72)【発明者】
【氏名】前田 和規
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-041791(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0053087(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0022251(KR,A)
【文献】国際公開第2017/154921(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/11
H01L 21/027
G03F 7/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(A-1)で示される化合物および熱架橋性ポリシロキサンを含有するものであることを特徴とするケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物。
【化1】
(R
1はメチル基、エチル基、プロピル基、アリル基、プロパルギル基を表し、R
2は、水素原子、アセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、アントラノイル基を表し、R
3はメチル基、エチル基、プロピル基、アリル基、プロパルギル基、または下記一般式(A-2)で表される基を表す。)
【化2】
(破線は結合手を表し、R
1,R
2は前記と同じ。)
【請求項2】
前記熱架橋性ポリシロキサンが、下記一般式(Sx-1)で表される繰返し単位、下記一般式(Sx-2)で表される繰返し単位、及び下記一般式(Sx-3)で表される部分構造のいずれか一つ以上を含むものであることを特徴とする請求項1に記載のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物。
【化3】
【化4】
【化5】
(式中、R
4、R
5、R
6はそれぞれ同じでも異なってもよい炭素数1~30の1価の有機基である。)
【請求項3】
更に酸発生剤を含有するものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物。
【請求項4】
前記酸発生剤がスルホニウム塩であって、高エネルギー線の作用により酸を発生する光酸発生剤であることを特徴とする請求項3に記載のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物。
【請求項5】
被加工体にパターンを形成する方法であって、
被加工体上に塗布型有機膜材料を用いて有機膜を形成する工程と、
前記有機膜の上に、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成する工程と、
前記ケイ素含有レジスト下層膜上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜用組成物を用いてレジスト上層膜を形成する工程と、
前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程と、
前記回路パターンが形成された前記レジスト上層膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト下層膜にエッチングでパターンを転写する工程と、
前記パターンが転写された前記ケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターン転写する工程と、
前記パターンが転写された前記有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写する工程と
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項6】
被加工体にパターンを形成する方法であって、
被加工体上に炭素を主成分とするハードマスクをCVD法で形成する工程と、
前記ハードマスクの上に、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成する工程と、
前記ケイ素含有レジスト下層膜上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜用組成物を用いてレジスト上層膜を形成する工程と、
前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程と、
前記回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト下層膜にエッチングでパターンを転写する工程と、
前記パターンが転写された前記ケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記ハードマスクにドライエッチングでパターン転写する工程と、
前記パターンが転写された前記ハードマスクをマスクにして前記被加工体にドライエッチングでパターンを転写する工程と
を含むことを特徴とするパターン形成方法。
【請求項7】
前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程におけるパターン形成を、波長が10nm以上300nm以下の光リソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティング又はこれらの組合せによるパターン形成とすることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載のパターン形成方法。
【請求項8】
前記被加工体を、半導体装置基板、金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜又は金属酸化窒化膜とすることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【請求項9】
前記被加工体を構成する金属をケイ素、ガリウム、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、インジウム、ヒ素、パラジウム、タンタル、イリジウム、アルミニウム、鉄、モリブデン、コバルト又はこれらの合金とすることを特徴とする請求項5から請求項8のいずれか一項に記載のパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物、及び、該組成物を用いるパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大規模集積回路(LSI)の高集積化と高速度化に伴い、パターン寸法の微細化が急速に進んでいる。リソグラフィー技術は、この微細化に併せ、光源の短波長化とそれに対応するレジスト組成物の適切な選択により、微細パターンの形成を達成してきた。その中心となったのは単層で使用するポジ型フォトレジスト組成物である。この単層ポジ型フォトレジスト組成物は、塩素系あるいはフッ素系のガスプラズマによるドライエッチングに対しエッチング耐性を持つ骨格をレジスト樹脂中に持たせ、かつ露光部が溶解するようなスイッチング機構を持たせることによって、露光部を溶解させてパターンを形成し、残存したレジストパターンをエッチングマスクとして被加工基板をドライエッチング加工するものである。
【0003】
ところが、使用するフォトレジスト膜の膜厚をそのままで微細化、即ちパターン幅をより小さくした場合、フォトレジスト膜の解像性能が低下し、また現像液によりフォトレジスト膜をパターン現像しようとすると、いわゆるアスペクト比が大きくなりすぎ、結果としてパターン崩壊が起こってしまうという問題が発生した。このため、パターンの微細化に伴いフォトレジスト膜は薄膜化されてきた。
【0004】
一方、被加工基板の加工には、通常、パターンが形成されたフォトレジスト膜をエッチングマスクとして、ドライエッチングにより基板を加工する方法が用いられるが、現実的にはフォトレジスト膜と被加工基板の間に完全なエッチング選択性を取ることのできるドライエッチング方法が存在しない。そのため、基板の加工中にレジスト膜もダメージを受けて崩壊し、レジストパターンを正確に被加工基板に転写できなくなるという問題があった。そこで、パターンの微細化に伴い、フォトレジスト組成物にはより高いドライエッチング耐性が求められてきた。しかしながら、その一方で、解像性を高めるために、フォトレジスト組成物に使用する樹脂には、露光波長における光吸収の小さな樹脂が求められてきた。そのため、露光光がi線、KrF、ArFと短波長化するにつれて、フォトレジスト組成物に使用する樹脂もノボラック樹脂、ポリヒドロキシスチレン、脂肪族多環状骨格を持った樹脂へと変化してきたが、現実的には基板加工時のドライエッチング条件におけるエッチング速度は速いものになってきてしまっており、解像性の高い最近のフォトレジスト組成物は、むしろエッチング耐性が弱くなる傾向にある。
【0005】
このことから、より薄くよりエッチング耐性の弱いフォトレジスト膜で被加工基板をドライエッチング加工しなければならないことになり、この加工工程における材料及びプロセスの確保は急務になってきている。
【0006】
このような問題点を解決する方法の一つとして、多層レジスト法がある。この方法は、フォトレジスト膜(即ち、レジスト上層膜)とエッチング選択性が異なる下層膜をレジスト上層膜と被加工基板の間に介在させ、レジスト上層膜にパターンを得た後、レジスト上層膜パターンをドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより下層膜にパターンを転写し、更に下層膜をドライエッチングマスクとして、ドライエッチングにより被加工基板にパターンを転写する方法である。
【0007】
多層レジスト法の一つに、単層レジスト法で使用されている一般的なレジスト組成物を用いて行うことができる3層レジスト法がある。この3層レジスト法では、例えば、被加工基板上にノボラック樹脂等による有機膜を成膜し、その上にケイ素含有レジスト下層膜を成膜し、その上に通常の有機系フォトレジスト膜をレジスト上層膜として形成する。フッ素系ガスプラズマによるドライエッチングを行う際には、有機系のレジスト上層膜は、ケイ素含有レジスト下層膜に対して良好なエッチング選択比が取れるため、レジスト上層膜パターンはフッ素系ガスプラズマによるドライエッチングによりケイ素含有レジスト下層膜に転写することができる。この方法によれば、直接被加工基板を加工するための十分な膜厚を持ったパターンを形成することが難しいレジスト組成物や、基板の加工に十分なドライエッチング耐性を持たないレジスト組成物を用いても、ケイ素含有膜(レジスト下層膜)にパターンを転写することができ、続いて酸素系又は水素系ガスプラズマによるドライエッチングによるパターン転写を行えば、基板の加工に十分なドライエッチング耐性を持つノボラック樹脂等による有機膜のパターンを得ることができる。有機膜パターンを形成した後に残ったケイ素含有レジスト下層膜は、一般に、フッ素系ガスプラズマによるドライエッチング、もしくはアルカリ系、フッ素系などのエッチング液によるウェットエッチングにより、欠陥の原因となる残渣とならないよう除去される。エッチング速度が不十分な場合、ケイ素含有レジスト下層膜由来の残渣が残って欠陥となる、あるいは長時間のエッチング処理が必要となって被加工基板にダメージを与えるなどの問題を生じる可能性が高まる。このように、正確なパターニング、及び円滑な除去のため、ケイ素含有レジスト下層膜には、適切なエッチング速度が必要とされる。
【0008】
一方、近年においては、ArF液浸リソグラフフィー、EUVリソグラフィーなどの登場により、より微細なパターンの形成が可能となりつつあるが、一方で超微細パターンは接地面積が小さいため極めて倒れ易く、パターン形状の改善とともにパターン倒れの抑制が非常に大きな課題である。このため、パターン倒れ抑止効果の高いケイ素含有レジスト下層膜の開発が急務となっている。
【0009】
パターン倒れの改善のためシロキサン構造の側鎖構造に密着性や熱硬化触媒機能などの効果を持つ置換基を導入したArF又はEUVリソグラフィー用ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物が提案されている(特許文献1、2)。これらの導入によりパターン倒れ抑止効果は改善しているものの、EUVリソグラフィーなどを用いたより微細化が進んだ最先端の用途では、パターン倒れは依然として大きな課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】WO2020/085508号
【文献】WO2020/196563号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、多層レジスト法において、超微細パターンの倒れ抑止効果が高く、パターン形状が良好なレジストパターンを形成可能できるケイ素含有レジスト下層膜を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は、
下記一般式(A-1)で示される化合物および熱架橋性ポリシロキサンを含有するものであるケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を提供する。
【化1】
(R
1はメチル基、エチル基、プロピル基、アリル基、プロパルギル基を表し、R
2は、水素原子、アセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、アントラノイル基を表し、R
3はメチル基、エチル基、プロピル基、アリル基、プロパルギル基、または下記一般式(A-2)で表される基を表す。)
【化2】
(破線は結合手を表し、R
1,R
2は前記と同じ。)
【0013】
半導体装置製造プロセスで用いられるArF又はEUVなどの紫外線レーザーを用いたリソグラフィー工程において、一般式(A-1)で示されるイソシアヌル酸構造を有する化合物を含有する本発明の組成物から形成されるケイ素含有レジスト下層膜を用いることで、その上に形成されたフォトレジストパターンに対しては良好な密着性を付与することができる。
【0014】
前記熱架橋性ポリシロキサンが、下記一般式(Sx-1)で表される繰返し単位、下記一般式(Sx-2)で表される繰返し単位、及び下記一般式(Sx-3)で表される部分構造のいずれか一つ以上を含むものであることが好ましい。
【化3】
【化4】
【化5】
(式中、R
4、R
5、R
6はそれぞれ同じでも異なってもよい炭素数1~30の1価の有機基である。)
【0015】
上記熱架橋性ポリシロキサン(Sx)が上記特定の構造を含むものである場合、本発明の効果がより十分に発揮される。
【0016】
更に酸発生剤を含有するものであることが好ましい。
【0017】
必要に応じて酸発生剤を添加することにより、パターン形状、露光感度等を微調整できる。
【0018】
前記酸発生剤がスルホニウム塩であって、高エネルギー線の作用により酸を発生する光酸発生剤であることが好ましい。
【0019】
この場合、他の性能の低下を最小限に抑えながら、レジスト上層膜のパターン形状、露光感度等を適度に調整することができ、加えてレジスト上層膜由来の残渣低減に効果的な場合もある。
【0020】
また、本発明は、被加工体にパターンを形成する方法であって、
被加工体上に塗布型有機膜材料を用いて有機膜を形成する工程と、
前記有機膜の上に、上記のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成する工程と、
前記ケイ素含有レジスト下層膜上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜用組成物を用いてレジスト上層膜を形成する工程と、
前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程と、
前記回路パターンが形成された前記レジスト上層膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト下層膜にエッチングでパターンを転写する工程と、
前記パターンが転写された前記ケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記有機膜にエッチングでパターン転写する工程と、
前記パターンが転写された前記有機膜をマスクにして前記被加工体にエッチングでパターンを転写する工程と
を含むパターン形成方法を提供する。
【0021】
また、本発明は、被加工体にパターンを形成する方法であって、
被加工体上に炭素を主成分とするハードマスクをCVD法で形成する工程と、
前記ハードマスクの上に、上記のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成する工程と、
前記ケイ素含有レジスト下層膜上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜用組成物を用いてレジスト上層膜を形成する工程と、
前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程と、
前記回路パターンが形成されたレジスト上層膜をマスクにして前記ケイ素含有レジスト下層膜にエッチングでパターンを転写する工程と、
前記パターンが転写された前記ケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして前記ハードマスクにドライエッチングでパターン転写する工程と、
前記パターンが転写された前記ハードマスクをマスクにして前記被加工体にドライエッチングでパターンを転写する工程と
を含むパターン形成方法を提供する。
【0022】
上記パターン形成方法は、レジスト上層膜のパターン倒れが抑制され、かつ、良好なレジストパターンを提供可能である。また、ドライエッチングによるケイ素含有レジスト下層膜へのパターン転写に優れ、さらに、パターニング終了後に残存するケイ素含有レジスト下層膜の除去が容易で残渣による欠陥が生じ難いため、特に微細なパターンの形成に実用的なパターン形成方法である。
【0023】
前記レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程におけるパターン形成を、波長が10nm以上300nm以下の光リソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティング又はこれらの組合せによるパターン形成とすることが好ましい。
【0024】
上記レジスト上層膜のパターン形成方法が上記特定のパターン形成方法である場合、本発明の効果がより十分に発揮される。
【0025】
前記被加工体を、半導体装置基板、金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜又は金属酸化窒化膜とすることが好ましい。
【0026】
被加工体が上記特定のものである場合、本発明の効果がより十分に発揮される。
【0027】
更に、前記被加工体を構成する金属をケイ素、ガリウム、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、インジウム、ヒ素、パラジウム、タンタル、イリジウム、アルミニウム、鉄、モリブデン、コバルト又はこれらの合金とすることが好ましい。
【0028】
被加工体を構成する金属が上記特定の金属である場合、本発明の効果がより十分に発揮される。
【発明の効果】
【0029】
複数のイソシアヌル酸構造を有する化合物を含有した本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いたケイ素含有レジスト下層膜は、超微細な上層レジストパターンを倒れなく形成可能なだけでなく、良好なパターン形状を形成可能である。また、レジスト上層膜と有機膜またはハードマスクとのドライエッチング選択性に優れるため、歩留まり良く半導体装置用のパターンを基板に形成できる。さらに、本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いたケイ素含有レジスト下層膜は、有機材料との間で高いエッチング選択性が得られることから、形成されたフォトレジストパターンを、ケイ素含有レジスト下層膜、有機膜またはハードマスクへと順にドライエッチングプロセスを用いて転写可能である。また、本発明においては、形成されたケイ素含有レジスト下層膜が十分なエッチング速度を有するため、パターニング終了後に残存するケイ素含有レジスト下層膜の除去が容易で、残渣による欠陥が生じ難いため、特に微細なパターンの形成に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、半導体素子などの製造工程におけるリソグラフィーで用いられる塗布型ケイ素含有膜を形成するための組成物及びこれを用いたパターン形成方法に関するものである。
【0031】
前述のように、多層レジスト法において、超微細パターンの倒れ抑止効果が高く、かつ良好なレジストパターンを形成可能であり、適切なエッチング速度を有するケイ素含有レジスト下層膜を与えるケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物、及びこれを用いた超微細パターン形成方法が求められていた。
【0032】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、特定構造のイソシアヌル酸構造を有する化合物をケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物に配合することにより、多層レジスト法において、超微細パターンの倒れを抑制し、かつ良好なレジストパターンを形成可能であり、さらに加工に適切なエッチング速度を有するケイ素含有レジスト下層膜を与えることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0033】
すなわち、本発明は、
下記一般式(A-1)で示される化合物および熱架橋性ポリシロキサンを含有するものであるケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物である。
【化6】
(R
1はメチル基、エチル基、プロピル基、アリル基、プロパルギル基を表し、R
2は、水素原子、アセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、アントラノイル基を表し、R
3はメチル基、エチル基、プロピル基、アリル基、プロパルギル基、または下記一般式(A-2)で表される基を表す。)
【化7】
(破線は結合手を表し、R
1,R
2は前記と同じ。)
【0034】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
<ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物>
本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物は、下記一般式(A-1)で示される化合物および熱架橋性ポリシロキサンを含有することを特徴とするケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物である。
【化8】
(R
1はメチル基、エチル基、プロピル基、アリル基、プロパルギル基を表し、R
2は、水素原子、アセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、アントラノイル基を表し、R
3はメチル基、エチル基、プロピル基、アリル基、プロパルギル基、または下記一般式(A-2)で表される基を表す。)
【化9】
(破線は結合手を表し、R
1,R
2は前記と同じ。)
【0036】
[一般式(A-1)で示される化合物]
上記一般式(A-1)で表される化合物としては下記などが例示できる。R3は前記と同じである。
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
上記一般式(A-2)で表される構造としては下記などが例示できる。
【0043】
【0044】
【0045】
上記一般式(A-1)で表される化合物の好ましい例としては下記などが例示でき、具体的にはR1がアリル基またはプロパルギル基、R2が水素原子、アセチル基、アクリル基、R3がアリル基または上記一般式(A-2)で表される基であることが好ましく、R1がアリル基またはプロパルギル基、R2が水素原子、アセチル基、R3がアリル基であることがさらに好ましい。
【0046】
【0047】
【0048】
〔一般式(A-1)で示される化合物の合成方法〕
本発明に用いられる一般式(A-1)で表される化合物を得る手段として、特に限定されないが、下記反応式で表されるようなエポキシ化合物とイソシアヌル酸誘導体との付加反応(STEP1-1)、R2が水素原子でない場合は、続くアシル化反応(STEP1-2)により得ることができる。ただし、R3が(A-2)の場合は、エポキシ化合物として三官能のエポキシ化合物を用いて同様の反応(STEP2-1、STEP2-2)を行うことにより得ることができる。下記式中のR1,R2,R3は前記と同じ。
【0049】
【0050】
【0051】
上記、STEP1-1、またはSTEP2-1で示されるエポキシ化合物とイソシアヌル酸誘導体との反応は、エポキシ化合物中のエポキシ量のモル量を1モルとした場合、イソシアヌル酸誘導体の仕込量は、0.3~2.0モルが好ましく、より好ましく0.5~1.5モルであり、さらに好ましくは0 .75 ~ 1.25モルである。
【0052】
エポキシ単位に対してイソシアヌル酸誘導体の仕込み量が不足でなければ、未反応のエポキシ基が残存せず、保存安定性に影響しない。エポキシ単位に対してイソシアヌル酸誘導体の仕込み量が過剰でなければ、未反応のイソシアヌル酸誘導体が残存せずアウトガスが発生しない。
【0053】
上記のような原料から合成される化合物は、通常、溶剤中または溶剤中かつ反応触媒存在下、室温又は必要に応じて冷却又は加熱下でエポキシ化合物とイソシアヌル酸誘導体とを反応させることで得ることができる。
【0054】
用いられる溶媒(溶剤)としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセロール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤類、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の炭化水素類、アセトニトリル等のニトリル類、アセトン、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル類、γ-ブチロラクトン等のラクトン類、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド等の非プロトン性極性溶媒類が例示でき、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。これらの溶媒は、反応原料100質量部に対して0~ 2000質量部の範囲で使用できる。
【0055】
反応触媒としては、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、ベンジルトリエチルアンモニウムブロミド、ベンジルトリメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムクロリド、テトラメチルアンモニウムブロミド、テトラメチルアンモニウムアイオダイド、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、テトラエチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムクロリド、テトラブチルアンモニウムブロミド、テトラブチルアンモニウムアイオダイド、テトラブチルアンモニウムハイドロゲンサルフェート、トリオクチルメチルアンモニウムクロリド、トリブチルベンジルアンモニウムクロリド、トリメチルベンジルアンモニウムクロリド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、N-ラウリルピリジニウムクロリド、N-ラウリル4-ピコリニウムクロリド、N-ラウリルピコリニウムクロリド、トリメチルフェニルアンモニウムブロミド、N-ベンジルピコリニウムクロリド等の4級アンモニウム塩類、テトラブチルホスホニウムクロリド、テトラブチルホスホニウムブロミド、テトラフェニルホスホニウムクロリド等の4級ホスホニウム塩、トリス〔2-(2-メトキシエトキシ)エチル〕アミン、トリス(3,6-ジオキサヘプチル)アミン、トリス(3,6-ジオキサオクチル)アミン等の第3級アミン類等が挙げられる。使用量は原料に対して0.001~100重量% 、好ましくは0.005~50重量%の範囲である。
【0056】
反応温度は-50℃から溶媒の沸点程度が好ましく、室温から150℃ が更に好ましい。反応時間は0.1~100時間から適宜選択される。
【0057】
反応方法としては、エポキシ化合物、イソシアヌル酸誘導体、触媒を一括で仕込む方法、エポキシ化合物とイソシアヌル酸誘導体を分散または溶解後、触媒を一括添加または溶媒で希釈し滴下する方法、または触媒を分散または溶解後、エポキシ化合物とイソシアヌル酸誘導体を一括添加または溶媒で希釈し滴下する方法がある。反応終了後、精製などをせずにそのまま用いてもよいが、系内に存在する未反応の原料、触媒等を除去するために有機溶剤へ希釈後、分液洗浄を行って回収することもできる。
【0058】
このとき使用する有機溶剤としては、反応生成物を溶解でき水と混合すると2層分離するものであれば特に制限はないが、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、エチルシクロペンチルメチルエーテル等のエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、ジクロロエタン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤類、及びこれらの混合物などを挙げることが出来る。この際に使用する洗浄水は、通常、脱イオン水や超純水と呼ばれているものを使用すればよい。洗浄回数は1回以上あればよいが、10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られるとは限らないため、好ましくは1~5回程度である。
【0059】
分液洗浄の際に未反応のイソシアヌル酸または酸性成分を除去するため塩基性水溶液で洗浄を行ってもよい。塩基としてはアルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ土類金属の炭酸塩、アンモニア、および有機アンモニウムなどが挙げられる。
【0060】
さらに分液洗浄の際に系内の金属不純物または塩基成分を除去するため、酸性水溶液で洗浄を行ってもよい。酸としては塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ヘテロポリ酸等の無機酸類、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸類などが挙げられる。
【0061】
塩基性水溶液、酸性水溶液による分液水洗はいずれか一方のみでもよいが、組み合わせて行うこともできる、分液水洗は塩基性水溶液、酸性水溶液の順に行うのが金属不純物除去の観点から好ましい。
【0062】
上記、塩基性水溶液、酸性水溶液による分液水洗後、続けて中性の水で洗浄してもよい。洗浄回数は1回以上行えばよいが、好ましくは1~5回程度である。中性水は上記で述べた脱イオン水や超純水などを使用すればよい。洗浄回数は1回以上あればよいが、回数が少なくては塩基成分、酸性成分を除去できないことがある。10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られるとは限らないため、好ましくは1~5回程度である。
【0063】
さらに分液操作後の反応生成物は減圧または常圧で溶剤を濃縮乾固または晶出操作を行い粉体として回収することもできるが、ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を調製する際の操作性改善のため適度な濃度の溶液状態にしておくことも可能である。このとき濃度が過剰に濃くなければ粘度が高すぎず操作性を損なわない。過剰に薄くなければ溶剤の量が過大とならず経済的である。このときの濃度としては、0.1~50質量%が好ましく、さらに好ましくは0.5~30重量%である。
【0064】
このときの溶剤としては、得られた化合物を溶解できるものであれば特に制限はないが、具体例を挙げると、シクロヘキサノン、メチル-2-アミルケトン等のケトン類;3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコールモノtert-ブチルエーテルアセテート等のエステル類が挙げられ、これらを単独あるいは2種類以上を混合して用いることができる。
【0065】
STEP1-2またはSTEP2-2で表される反応は公知の方法により容易に進行するが、アシル化剤としては、酢酸、アクリル酸、メタクリル酸、安息香酸、1-ナフタレンカルボン酸、2-ナフタレンカルボン酸、2-アントラセンカルボン酸、9-アントラセンカルボン酸などに対応する酸クロリドまたは酸無水物が好ましい。酸クロリドを用いる場合、無溶媒あるいは塩化メチレン、アセトニトリル、トルエン、ヘキサン等の溶媒中、STEP1-1またはSTEP2-1で得られた化合物と酸クロリドとトリエチルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン等の塩基を順次又は同時に加え、必要に応じ、冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。また、酸無水物を用いる場合は、トルエン等の溶媒中、STEP1-1またはSTEP2-1で得られた化合物とトリエチルアミン、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン等の塩基を順次又は同時に加え、必要に応じ、冷却あるいは加熱するなどして行うのがよい。得られた反応生成物は水洗等の精製操作を施し、粉体または溶液として回収することができる。溶液として回収する場合の溶剤としてはSTEP1-1、STEP2-1で得られた化合物を溶液として回収する時に用いる溶剤として挙げられたものが例示され、このときの濃度としては、0.1~50質量%が好ましく、さらに好ましくは0.5~30重量%である。
【0066】
なお、本発明で用いられる一般式(A-1)で表される化合物は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることが出来る。これらの化合物の添加量は、ベースポリマー(後述する方法で得られた熱架橋性ポリシロキサン)100質量部に対して、好ましくは0.01~40質量部、より好ましくは0.1~30質量部、さらに好ましくは1~20質量部である。
【0067】
このような化合物を例えば、ケイ素含有レジスト下層膜に用いることで、その上に形成されたフォトレジストパターンに対しては良好な密着性を示し、また上部に形成されたレジストパターンと下部に形成された、例えば有機膜との両方に対して高いエッチング選択性を示すので、形成されたフォトレジストパターンをケイ素含有レジスト下層膜、有機下層膜の順にドライエッチングプロセスを用いてパターンを転写する際に、良好なパターン形状でパターンを転写することができる。これにより、最終的には、上層レジストで形成されたパターンを基板に高い精度で転写することができる。
【0068】
[熱架橋性ポリシロキサン]
本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物は、上記一般式(A-1)で示される化合物の1種又は2種以上に加え、熱架橋性ポリシロキサン(Sx)を含む。
【0069】
本発明に用いられる熱架橋性ポリシロキサン(Sx)は、下記一般式(Sx-1)で表される繰返し単位、下記一般式(Sx-2)で表される繰返し単位、及び下記一般式(Sx-3)で表される部分構造のいずれか一つ以上を含有することが好ましい。
【化23】
【化24】
【化25】
(式中、R
4、R
5、R
6はそれぞれ同じでも異なってもよい炭素数1~30の1価の有機基である。)
【0070】
上記熱架橋性ポリシロキサン(Sx)は、以下の加水分解性モノマー(Sm)を加水分解縮合することにより製造され得る。
【0071】
加水分解性モノマー(Sm)として具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、トリプロポキシシラン、トリイソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリプロポキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、プロピルトリプロポキシシラン、プロピルトリイソプロポキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリプロポキシシラン、イソプロピルトリイソプロポキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ブチルトリプロポキシシラン、ブチルトリイソプロポキシシラン、sec-ブチルトリメトキシシラン、sec-ブチルトリエトキシシラン、sec-ブチルトリプロポキシシラン、sec-ブチルトリイソプロポキシシラン、t-ブチルトリメトキシシラン、t-ブチルトリエトキシシラン、t-ブチルトリプロポキシシラン、t-ブチルトリイソプロポキシシラン、シクロプロピルトリメトキシシラン、シクロプロピルトリエトキシシラン、シクロプロピルトリプロポキシシラン、シクロプロピルトリイソプロポキシシラン、シクロブチルトリメトキシシラン、シクロブチルトリエトキシシラン、シクロブチルトリプロポキシシラン、シクロブチルトリイソプロポキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリプロポキシシラン、シクロペンチルトリイソプロポキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリプロポキシシラン、シクロヘキシルトリイソプロポキシシラン、シクロヘキセニルトリメトキシシラン、シクロヘキセニルトリエトキシシラン、シクロヘキセニルトリプロポキシシラン、シクロヘキセニルトリイソプロポキシシラン、シクロヘキセニルエチルトリメトキシシラン、シクロヘキセニルエチルトリエトキシシラン、シクロヘキセニルエチルトリプロポキシシラン、シクロヘキセニルエチルトリイソプロポキシシラン、シクロオクチルトリメトキシシラン、シクロオクチルトリエトキシシラン、シクロオクチルトリプロポキシシラン、シクロオクチルトリイソプロポキシシラン、シクロペンタジエニルプロピルトリメトキシシラン、シクロペンタジエニルプロピルトリエトキシシラン、シクロペンタジエニルプロピルトリプロポキシシラン、シクロペンタジエニルプロピルトリイソプロポキシシラン、ビシクロヘプテニルトリメトキシシラン、ビシクロヘプテニルトリエトキシシラン、ビシクロヘプテニルトリプロポキシシラン、ビシクロヘプテニルトリイソプロポキシシラン、ビシクロヘプチルトリメトキシシラン、ビシクロヘプチルトリエトキシシラン、ビシクロヘプチルトリプロポキシシラン、ビシクロヘプチルトリイソプロポキシシラン、アダマンチルトリメトキシシラン、アダマンチルトリエトキシシラン、アダマンチルトリプロポキシシラン、アダマンチルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリイソプロポキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ベンジルトリプロポキシシラン、ベンジルトリイソプロポキシシラン、アニシルトリメトキシシラン、アニシルトリエトキシシラン、アニシルトリプロポキシシラン、アニシルトリイソプロポキシシラン、トリルトリメトキシシラン、トリルトリエトキシシラン、トリルトリプロポキシシラン、トリルトリイソプロポキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、フェネチルトリエトキシシラン、フェネチルトリプロポキシシラン、フェネチルトリイソプロポキシシラン、ナフチルトリメトキシシラン、ナフチルトリエトキシシラン、ナフチルトリプロポキシシラン、ナフチルトリイソプロポキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジイソプロポキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジエチルジプロポキシシラン、ジエチルジイソプロポキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジプロピルジエトキシシラン、ジプロピルジプロポキシシラン、ジプロピルジイソプロポキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジエトキシシラン、ジイソプロピルジプロポキシシラン、ジイソプロピルジイソプロポキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、ジブチルジエトキシシラン、ジブチルジプロポキシシラン、ジブチルジイソプロポキシシラン、ジsec-ブチルジメトキシシラン、ジsec-ブチルジエトキシシラン、ジsec-ブチルジプロポキシシラン、ジsec-ブチルジイソプロポキシシラン、ジt-ブチルジメトキシシラン、ジt-ブチルジエトキシシラン、ジt-ブチルジプロポキシシラン、ジt-ブチルジイソプロポキシシラン、ジシクロプロピルジメトキシシラン、ジシクロプロピルジエトキシシラン、ジシクロプロピルジプロポキシシラン、ジシクロプロピルジイソプロポキシシラン、ジシクロブチルジメトキシシラン、ジシクロブチルジエトキシシラン、ジシクロブチルジプロポキシシラン、ジシクロブチルジイソプロポキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジエトキシシラン、ジシクロペンチルジプロポキシシラン、ジシクロペンチルジイソプロポキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジエトキシシラン、ジシクロヘキシルジプロポキシシラン、ジシクロヘキシルジイソプロポキシシラン、ジシクロヘキセニルジメトキシシラン、ジシクロヘキセニルジエトキシシラン、ジシクロヘキセニルジプロポキシシラン、ジシクロヘキセニルジイソプロポキシシラン、ジシクロヘキセニルエチルジメトキシシラン、ジシクロヘキセニルエチルジエトキシシラン、ジシクロヘキセニルエチルジプロポキシシラン、ジシクロヘキセニルエチルジイソプロポキシシラン、ジシクロオクチルジメトキシシラン、ジシクロオクチルジエトキシシラン、ジシクロオクチルジプロポキシシラン、ジシクロオクチルジイソプロポキシシラン、ジシクロペンタジエニルプロピルジメトキシシラン、ジシクロペンタジエニルプロピルジエトキシシラン、ジシクロペンタジエニルプロピルジプロポキシシラン、ジシクロペンタジエニルプロピルジイソプロポキシシラン、ビス(ビシクロヘプテニル)ジメトキシシラン、ビス(ビシクロヘプテニル)ジエトキシシラン、ビス(ビシクロヘプテニル)ジプロポキシシラン、ビス(ビシクロヘプテニル)ジイソプロポキシシラン、ビス(ビシクロヘプチル)ジメトキシシラン、ビス(ビシクロヘプチル)ジエトキシシラン、ビス(ビシクロヘプチル)ジプロポキシシラン、ビス(ビシクロヘプチル)ジイソプロポキシシラン、ジアダマンチルジメトキシシラン、ジアダマンチルジエトキシシラン、ジアダマンチルジプロポキシシラン、ジアダマンチルジイソプロポキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、ジフェニルジプロポキシシラン、ジフェニルジイソプロポキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルエチルメトキシシラン、ジメチルエチルエトキシシラン、ジメチルフェニルメトキシシラン、ジメチルフェニルエトキシシラン、ジメチルベンジルメトキシシラン、ジメチルベンジルエトキシシラン、ジメチルフェネチルメトキシシラン、ジメチルフェネチルエトキシシラン等を例示できる。
【0072】
上記化合物として好ましくは、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、シクロヘキセニルトリメトキシシラン、シクロヘキセニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、フェネチルトリメトキシシラン、フェネチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、メチルエチルジメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、ジプロピルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、メチルフェニルジエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、ジメチルエチルメトキシシラン、ジメチルフェニルメトキシシラン、ジメチルベンジルメトキシシラン、ジメチルフェネチルメトキシシラン等を例示できる。
【0073】
加水分解性モノマー(Sm)として以上に例示した化合物に対応する上記R4、R5、R6で表される有機基の別の例として、炭素-酸素単結合又は炭素-酸素二重結合を1以上有する有機基を挙げることができる。具体的には、エーテル結合、エステル結合、アルコキシ基、ヒドロキシ基などからなる群から選択される1以上の基を有する有機基である。この例として次の一般式(Sm-R)で示されるものを挙げることができる。
【0074】
(P-Q1-(S1)v1-Q2-)u-(T)v2-Q3-(S2)v3-Q4-
(Sm-R)
(一般式(Sm-R)中、Pは水素原子、環状エーテル基、ヒドロキシル基、炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数1~6のアルキルカルボニルオキシ基、または炭素数1~6のアルキルカルボニル基であり、Q1、Q2、Q3、及びQ4は各々独立して-CqH(2q-p)Pp-(式中、Pは上記と同様であり、pは0~3の整数であり、qは0~10の整数(但し、q=0は単結合であることを示す。)である。)、uは0~3の整数であり、S1とS2は各々独立して-O-、-CO-、-OCO-、-COO-または-OCOO-を表す。v1、v2、及びv3は、各々独立して0または1を表す。Tは炭素以外の2価の原子、脂環、芳香環または複素環からなる2価の基である。Tとして、酸素原子等のヘテロ原子を含んでもよい脂環、芳香環または複素環の例を以下に示す。TにおいてQ2とQ3と結合する位置は、特に限定されないが、立体的な要因による反応性や反応に用いる市販試薬の入手性等を考慮して適宜選択できる。)
【0075】
【0076】
一般式(Sm-R)中の炭素-酸素単結合又は炭素-酸素二重結合を1以上有する有機基の好ましい例として、以下のものが挙げられる。なお、下記式中において、(Si)はSiとの結合箇所を示すために記載した。
【0077】
【0078】
【0079】
また、R
4、R
5、R
6の有機基の例として、ケイ素-ケイ素結合を含む有機基を用いることもできる。具体的には下記のものを挙げることができる。
【化29】
【0080】
また、R4、R5、R6の有機基の例として、酸で分解する保護基を有する有機基を用いることもできる。具体的には特開2013-167669号公報の[0043]段落から[0048]段落まで挙げられている有機基、特開2013-224279号公報の[0056]段落に示されているケイ素化合物から得られる有機基を挙げることができる。
【0081】
更に、R4、R5、R6の有機基の例として、フッ素原子を有する有機基を用いることもできる。具体的には特開2012-53253号公報の[0059]段落から[0065]段落に示されているケイ素化合物から得られる有機基を挙げることができる。
【0082】
上記加水分解性モノマー(Sm)は、上記部分構造中(Si)で示されているケイ素上に加水分解性基として1個、2個または3個の塩素、臭素、ヨウ素、アセトキシ基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基またはブトキシ基等が結合している。
【0083】
〔熱架橋性ポリシロキサン(Sx)の合成方法〕
(合成方法1:酸触媒)
本発明に用いられる熱架橋性ポリシロキサン(Sx)は、加水分解性モノマー(Sm)1種または2種以上の混合物を酸触媒の存在下、加水分解縮合を行うことで製造できる。
【0084】
このとき使用される酸触媒は、ギ酸、酢酸、シュウ酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸などの有機酸、フッ酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、リン酸等の無機酸を挙げることができる。触媒の使用量は、モノマー1モルに対して1×10-6~10モル、好ましくは1×10-5~5モル、より好ましくは1×10-4~1モルである。
【0085】
これらのモノマーから加水分解縮合により熱架橋性ポリシロキサン(Sx)を得るときの水の量は、モノマーに結合している加水分解性置換基1モル当たり0.01~100モル、より好ましくは0.05~50モル、更に好ましくは0.1~30モルを添加することが好ましい。100モル以下であれば、反応に使用する装置が小さくなり経済的になる。
【0086】
操作方法として、触媒水溶液にモノマーを添加して加水分解縮合反応を開始させる。このとき、触媒水溶液に有機溶剤を加えてもよいし、モノマーを有機溶剤で希釈しておいてもよいし、両方行ってもよい。反応温度は0~100℃、好ましくは5~80℃である。モノマーの滴下時に5~80℃に温度を保ち、その後20~80℃で熟成させる方法が好ましい。
【0087】
触媒水溶液に加えることのできる、又はモノマーを希釈することのできる有機溶剤としては、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸t-ブチル、プロピレングリコールモノt-ブチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン及びこれらの混合物等が好ましい。
【0088】
これらの溶剤の中で好ましいものは水溶性のものである。例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ブタンジオールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール縮合物誘導体、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等を挙げることができる。この中で特に好ましいのは、沸点が100℃以下のものである。
【0089】
なお、有機溶剤の使用量は、モノマー1モルに対して0~1,000ml、特に0~500mlが好ましい。有機溶剤の使用量が少なくなると反応容器が小さくなり経済的である。
【0090】
その後、必要であれば触媒の中和反応を行い、反応混合物水溶液を得る。このとき、中和に使用することのできるアルカリ性物質の量は、触媒で使用された酸に対して0.1~2当量が好ましい。このアルカリ性物質は水中でアルカリ性を示すものであれば、任意の物質でよい。
【0091】
続いて、反応混合物から加水分解縮合反応で生成したアルコールなどの副生物を減圧除去等で取り除くことが好ましい。このとき反応混合物を加熱する温度は、添加した有機溶剤と反応で発生したアルコールなどの種類によるが、好ましくは0~100℃、より好ましくは10~90℃、更に好ましくは15~80℃である。また、このときの減圧度は、除去すべき有機溶剤及びアルコールなどの種類、排気装置、凝縮装置及び加熱温度により異なるが、好ましくは大気圧以下、より好ましくは絶対圧で80kPa以下、更に好ましくは絶対圧で50kPa以下である。この際除去されるアルコール量を正確に知ることは難しいが、生成したアルコールなどのおよそ80質量%以上が除かれることが望ましい。
【0092】
次に、反応混合物から加水分解縮合に使用した酸触媒を除去してもよい。酸触媒を除去する方法として、水と熱架橋性ポリシロキサン溶液を混合し、熱架橋性ポリシロキサンを有機溶剤で抽出する。このとき使用する有機溶剤としては、熱架橋性ポリシロキサンを溶解でき、水と混合させると2層分離するものが好ましい。例えばメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ブタンジオールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸t-ブチル、プロピオン酸t-ブチル、プロピレングリコールモノt-ブチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンチルメチルエーテル及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0093】
更に、水溶性有機溶剤と水難溶性有機溶剤の混合物を使用することも可能である。例えば、メタノール-酢酸エチル混合物、エタノール-酢酸エチル混合物、1-プロパノール-酢酸エチル混合物、2-プロパノール-酢酸エチル混合物、ブタンジオールモノメチルエーテル-酢酸エチル混合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル-酢酸エチル混合物、エチレングリコールモノメチルエーテル-酢酸エチル混合物、ブタンジオールモノエチルエーテル-酢酸エチル混合物、プロピレングリコールモノエチルエーテル-酢酸エチル混合物、エチレングリコールモノエチルエーテル-酢酸エチル混合物、ブタンジオールモノプロピルエーテル-酢酸エチル混合物、プロピレングリコールモノプロピルエーテル-酢酸エチル混合物、エチレングリコールモノプロピルエーテル-酢酸エチル混合物、メタノール-メチルイソブチルケトン混合物、エタノール-メチルイソブチルケトン混合物、1-プロパノール-メチルイソブチルケトン混合物、2-プロパノール-メチルイソブチルケトン混合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル-メチルイソブチルケトン混合物、エチレングリコールモノメチルエーテル-メチルイソブチルケトン混合物、プロピレングリコールモノエチルエーテル-メチルイソブチルケトン混合物、エチレングリコールモノエチルエーテル-メチルイソブチルケトン混合物、プロピレングリコールモノプロピルエーテル-メチルイソブチルケトン混合物、エチレングリコールモノプロピルエーテル-メチルイソブチルケトン混合物、メタノール-シクロペンチルメチルエーテル混合物、エタノール-シクロペンチルメチルエーテル混合物、1-プロパノール-シクロペンチルメチルエーテル混合物、2-プロパノール-シクロペンチルメチルエーテル混合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル-シクロペンチルメチルエーテル混合物、エチレングリコールモノメチルエーテル-シクロペンチルメチルエーテル混合物、プロピレングリコールモノエチルエーテル-シクロペンチルメチルエーテル混合物、エチレングリコールモノエチルエーテル-シクロペンチルメチルエーテル混合物、プロピレングリコールモノプロピルエーテル-シクロペンチルメチルエーテル混合物、エチレングリコールモノプロピルエーテル-シクロペンチルメチルエーテル混合物、メタノール-プロピレングリコールメチルエーテルアセテート混合物、エタノール-プロピレングリコールメチルエーテルアセテート混合物、1-プロパノール-プロピレングリコールメチルエーテルアセテート混合物、2-プロパノール-プロピレングリコールメチルエーテルアセテート混合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル-プロピレングリコールメチルエーテルアセテート混合物、エチレングリコールモノメチルエーテル-プロピレングリコールメチルエーテルアセテート混合物、プロピレングリコールモノエチルエーテル-プロピレングリコールメチルエーテルアセテート混合物、エチレングリコールモノエチルエーテル-プロピレングリコールメチルエーテルアセテート混合物、プロピレングリコールモノプロピルエーテル-プロピレングリコールメチルエーテルアセテート混合物、エチレングリコールモノプロピルエーテル-プロピレングリコールメチルエーテルアセテート混合物等が好ましいが、組み合わせはこれらに限定されることはない。
【0094】
なお、水溶性有機溶剤と水難溶性有機溶剤との混合割合は、適宜選定されるが、水難溶性有機溶剤100質量部に対して、水溶性有機溶剤0.1~1,000質量部、好ましくは1~500質量部、更に好ましくは2~100質量部である。
【0095】
続いて、中性水で洗浄してもよい。この水は、通常脱イオン水や超純水と呼ばれているものを使用すればよい。この水の量は、熱架橋性ポリシロキサン溶液1Lに対して、好ましくは0.01~100L、より好ましくは0.05~50L、更に好ましくは0.1~5Lである。この洗浄の方法は、両方を同一の容器にいれ掻き混ぜた後、静置して水層を分離すればよい。洗浄回数は、1回以上あればよいが、10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られるとは限らないため、好ましくは1~5回程度である。
【0096】
その他に酸触媒を除去する方法として、イオン交換樹脂による方法や、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のエポキシ化合物で中和したのち除去する方法を挙げることができる。これらの方法は、反応に使用された酸触媒に合わせて適宜選択することができる。
【0097】
このときの水洗操作により、熱架橋性ポリシロキサンの一部が水層に逃げ、実質的に分画操作と同等の効果が得られている場合があるため、水洗回数や洗浄水の量は触媒除去効果と分画効果を鑑みて適宜選択すればよい。
【0098】
酸触媒が残留している熱架橋性ポリシロキサン溶液及び酸触媒が除去された熱架橋性ポリシロキサン溶液、いずれにおいても、最終的な溶剤を加え、減圧で溶剤交換することで所望の熱架橋性ポリシロキサン溶液を得る。このときの溶剤交換の温度は、除去すべき反応溶剤や抽出溶剤の種類によるが、好ましくは0~100℃、より好ましくは10~90℃、更に好ましくは15~80℃である。またこのときの減圧度は、除去すべき抽出溶剤の種類、排気装置、凝縮装置及び加熱温度により異なるが、好ましくは大気圧以下、より好ましくは絶対圧で80kPa以下、更に好ましくは絶対圧で50kPa以下である。
【0099】
このとき、溶剤が変わることにより熱架橋性ポリシロキサンが不安定になる場合がある。これは最終的な溶剤と熱架橋性ポリシロキサンとの相性により発生するが、これを防止するため、安定剤として、特開2009-126940号公報[0181]~[0182]段落に記載されている環状エーテルを置換基として有する1価又は2価以上のアルコールを加えてもよい。加える量としては溶剤交換前の溶液中の熱架橋性ポリシロキサン100質量部に対して0~25質量部、好ましくは0~15質量部、より好ましくは0~5質量部であるが、添加する場合は0.5質量部以上が好ましい。溶剤交換前の溶液に必要であれば、環状エーテルを置換基として有する1価又は2価以上のアルコールを添加して溶剤交換操作を行えばよい。
【0100】
熱架橋性ポリシロキサンは、ある濃度以上に濃縮すると更に縮合反応が進行し、有機溶剤に対して再溶解不可能な状態に変化してしまう恐れがあるため、適度な濃度の溶液状態にしておくことが好ましい。また、あまり薄すぎると、溶剤の量が過大となるため、適度な濃度の溶液状態にしておくことが経済的で好ましい。このときの濃度としては、0.1~20質量%が好ましい。
【0101】
熱架橋性ポリシロキサン溶液に加える最終的な溶剤として好ましいものはアルコール系溶剤であり、特に好ましいものはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオールなどのモノアルキルエーテル誘導体である。具体的には、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ブタンジオールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジアセトンアルコール等が好ましい。
【0102】
これらの溶剤が主成分であれば、補助溶剤として、非アルコール系溶剤を添加することも可能である。この補助溶剤としては、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸t-ブチル、プロピオン酸t-ブチル、プロピレングリコールモノt-ブチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンチルメチルエーテルなどを例示できる。
【0103】
また、酸触媒を用いた別の反応操作としては、モノマー又はモノマーの有機溶液に、水又は含水有機溶剤を添加し、加水分解反応を開始させる。このとき触媒はモノマー又はモノマーの有機溶液に添加してもよいし、水又は含水有機溶剤に添加しておいてもよい。反応温度は0~100℃、好ましくは10~80℃である。水の滴下時に10~50℃に加熱し、その後20~80℃に昇温させて熟成させる方法が好ましい。
【0104】
有機溶剤を使用する場合は、水溶性のものが好ましく、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、ブタンジオールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、ブタンジオールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ブタンジオールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等の多価アルコール縮合物誘導体及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0105】
有機溶剤の使用量は、モノマー1モルに対して0~1,000ml、特に0~500mlが好ましい。有機溶剤の使用量が少ない方が、反応容器が小さくなり経済的である。得られた反応混合物の後処理は、前記の方法と同様で後処理し、熱架橋性ポリシロキサンを得ることができる。
【0106】
(合成方法2:アルカリ触媒)
また、熱架橋性ポリシロキサン(Sx)は、加水分解性モノマー(Sm)1種または2種以上の混合物をアルカリ触媒の存在下、加水分解縮合を行うことで製造することができる。
【0107】
このとき使用されるアルカリ触媒は、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、エチルメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、シクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジアザビシクロオクタン、ジアザビシクロシクロノネン、ジアザビシクロウンデセン、ヘキサメチレンテトラミン、アニリン、N,N-ジメチルアニリン、ピリジン、N,N-ジメチルアミノピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、コリンハイドロオキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロオキサイド、アンモニア、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム等を挙げることができる。触媒の使用量は、ケイ素モノマー1モルに対して1×10-6モル~10モル、好ましくは1×10-5モル~5モル、より好ましくは1×10-4モル~1モルである。
【0108】
上記モノマーから加水分解縮合により熱架橋性ポリシロキサンを得るときの水の量は、モノマーに結合している加水分解性置換基1モル当たり0.1~50モルを添加することが好ましい。50モル以下であれば、反応に使用する装置が小さくなり経済的になる。
【0109】
操作方法として、触媒水溶液にモノマーを添加して加水分解縮合反応を開始させる。このとき、触媒水溶液に有機溶媒を加えてもよいし、モノマーを有機溶媒で希釈しておいてもよいし、両方行ってもよい。反応温度は0~100℃、好ましくは5~80℃である。モノマーの滴下時に5~80℃に温度を保ち、その後20~80℃で熟成させる方法が好ましい。
【0110】
アルカリ触媒水溶液に加えることのできる、又はモノマーを希釈することのできる有機溶媒としては、酸触媒水溶液に加えることのできるものとして例示した有機溶剤と同様のものが好ましく用いられる。なお、有機溶媒の使用量は、経済的に反応を行えるため、モノマー1モルに対して0~1,000mlが好ましい。
【0111】
その後、必要であれば触媒の中和反応を行い、反応混合物水溶液を得る。このとき、中和に使用することのできる酸性物質の量は、触媒で使用されたアルカリ性物質に対して0.1~2当量が好ましい。この酸性物質は水中で酸性を示すものであれば、任意の物質でよい。
【0112】
続いて、反応混合物から加水分解縮合反応で生成したアルコールなどの副生物を減圧除去等で取り除くことが好ましい。このとき反応混合物を加熱する温度は、添加した有機溶媒と反応で発生したアルコールの種類に依るが、好ましくは0~100℃、より好ましくは10~90℃、更に好ましくは15~80℃である。また、このときの減圧度は、除去すべき有機溶剤およびアルコールの種類、排気装置、凝縮装置及び加熱温度により異なるが、好ましくは大気圧以下、より好ましくは絶対圧で80kPa以下、更に好ましくは絶対圧で50kPa以下である。この際除去されるアルコール量を正確に知ることは難しいが、生成したアルコールのおよそ80質量%以上が除かれることが望ましい。
【0113】
次に、加水分解縮合に使用したアルカリ触媒を除去するため、熱架橋性ポリシロキサンを有機溶剤で抽出する。このとき使用する有機溶剤としては、熱架橋性ポリシロキサンを溶解でき、水と混合させると2層分離するものが好ましい。例えばメタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸t-ブチル、プロピオン酸t-ブチル、プロピレングリコールモノt-ブチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンチルメチルエーテル、及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0114】
更に、水溶性有機溶剤と水難溶性有機溶剤の混合物を使用することも可能である。
【0115】
アルカリ触媒を除去する際に用いられる有機溶剤の具体例は、酸触媒を除去する際に用いられるものとして具体的に例示した上述の有機溶剤や、水溶性有機溶剤と水難性有機溶剤の混合物と同様のものを用いることができる。
【0116】
なお、水溶性有機溶剤と水難溶性有機溶剤との混合割合は、適宜選定されるが、難溶性有機溶剤100質量部に対して、水溶性有機溶剤0.1~1,000質量部、好ましくは1~500質量部、更に好ましくは2~100質量部である。
【0117】
続いて、中性水で洗浄する。この水は、通常脱イオン水や超純水と呼ばれているものを使用すればよい。この水の量は、熱架橋性ポリシロキサン溶液1Lに対して、0.01~100L、好ましくは0.05~50L、より好ましくは0.1~5Lである。この洗浄の方法は、両方を同一の容器にいれ掻き混ぜた後、静置して水層を分離すればよい。洗浄回数は、1回以上あればよいが、10回以上洗浄しても洗浄しただけの効果は得られるとは限らないため、好ましくは1~5回程度である。
【0118】
洗浄済みの熱架橋性ポリシロキサン溶液に最終的な溶媒を加え、減圧で溶媒交換することで所望の熱架橋性ポリシロキサン溶液を得る。このときの溶媒交換の温度は、除去すべき抽出溶剤の種類に依るが、好ましくは0~100℃、より好ましくは10~90℃、更に好ましくは15~80℃である。また、このときの減圧度は、除去すべき抽出溶剤の種類、排気装置、凝縮装置及び加熱温度により異なるが、好ましくは大気圧以下、より好ましくは絶対圧で80kPa以下、更に好ましくは絶対圧で50kPa以下である。
【0119】
熱架橋性ポリシロキサン溶液に加える最終的な溶媒として好ましいものはアルコール系溶媒であり、特に好ましいものはエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどのモノアルキルエーテル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールなどのモノアルキルエーテルである。具体的には、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、ジアセトンアルコールなどが好ましい。
【0120】
また、アルカリ触媒を用いた別の反応操作としては、モノマーまたはモノマーの有機溶液に、水または含水有機溶媒を添加し、加水分解反応を開始させる。このとき触媒はモノマーまたはモノマーの有機溶液に添加してもよいし、水または含水有機溶媒に添加しておいてもよい。反応温度は0~100℃、好ましくは10~80℃である。水の滴下時に10~50℃に加熱し、その後20~80℃に昇温させて熟成させる方法が好ましい。
【0121】
モノマーの有機溶液又は含水有機溶媒として使用できる有機溶媒としては、水溶性のものが好ましく、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、アセトン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルなどの多価アルコール縮合物誘導体及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0122】
上記合成方法1又は2により得られる熱架橋性ポリシロキサンの分子量は、モノマーの選択だけでなく、重合時の反応条件制御により調整することができるが、重量平均分子量が100,000以下、より好ましくは200~50,000、更には300~30,000のものを用いることが好ましい。重量平均分子量が100,000以下であれば、異物の発生や塗布斑が生じることがない。なお、上記重量平均分子量に関するデータは、検出器としてRI、溶離溶剤としてテトラヒドロフランを用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準物質としてポリスチレンを用いて、ポリスチレン換算で分子量を表したものである。
【0123】
本発明で使用される熱架橋性ポリシロキサンの物性は、加水分解縮合時に使用される酸またはアルカリ触媒の種類や反応条件により異なる。そのため、目的とするレジスト下層膜の性能に合わせて適宜選択することができる。
【0124】
さらに、加水分解性モノマー(Sm)1種または2種以上と下記一般式(Mm)で示される加水分解性金属化合物の混合物を前記の酸またはアルカリ触媒を用いた条件で製造したポリシロキサン誘導体をレジスト下層膜形成用組成物の成分として用いることができる。
【化30】
(式中、R
7、R
8は炭素数1~30の有機基であり、m7+m8はUの種類により決まる価数と同数であり、m7、m8は0以上の整数、Uは周期律表のIII族、IV族、又はV族の元素で炭素及びケイ素を除くものである。)
【0125】
上記一般式(Mm)で示される加水分解性金属化合物としては、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ゲルマニウム、チタン、ハフニウムなどのある金属アルコキシドが例示でき、具体的には特開2020-118960号広報の[0107]~[0123]に記載のものが使用できる。
【0126】
(酸発生剤)
本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物には、更に1種又は2種以上の酸発生剤を配合してもよい。酸発生剤としては、熱酸発生剤、光酸発生剤、酸増殖剤など、酸前駆体として働く物質であれば、いずれを用いてもよいが、本発明においては、配合される酸発生剤がスルホニウム塩であって、高エネルギー線の作用により酸を発生する光酸発生剤であることがより好ましい。具体的には、特開2007-199653号公報中の[0061]~[0085]段落に記載されている材料を添加することができるがこれらに限定されない。
【0127】
上記酸発生剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。酸発生剤を添加する場合の添加量は、熱架橋性ポリシロキサン100部に対して好ましくは0.05~50部、より好ましくは0.1~10部である。
【0128】
〔その他の成分〕
(架橋触媒)
本発明においては、架橋触媒(Xc)をケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物に配合してもよい。配合可能な架橋触媒として、下記一般式(Xc0)で示される化合物を挙げることができる。
LaHbA (Xc0)
(式中、Lはリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、スルホニウム、ヨードニウム、ホスホニウム又はアンモニウムである。Aは非求核性対向イオンである。aは1以上の整数、bは0又は1以上の整数で、a+bは非求核性対向イオンの価数である。)
【0129】
具体的な(Xc0)として本発明で使用される架橋触媒としては、下記一般式(Xc-1)のスルホニウム塩、下記一般式(Xc-2)のヨードニウム塩、下記一般式(Xc-3)のホスホニウム塩、下記一般式(Xc-4)のアンモニウム塩、アルカリ金属塩等やアンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、ヨードニウム塩を構造の一部として有するポリシロキサン(Xc-10)が挙げられ、具体的には、特開2020-118960号公報中の[0124]~[0163]段落に記載されている材料など添加することができる。
【化31】
【化32】
(式中、R
204、R
205、R
206、R
207はそれぞれ炭素数1~12の直鎖状、分岐状又は環状のアルキル基、アルケニル基、オキソアルキル基又はオキソアルケニル基、炭素数6~20の置換あるいは非置換のアリール基、又は炭素数7~12のアラルキル基又はアリールオキソアルキル基を示し、これらの基の水素原子の一部又は全部がアルコキシ基等によって置換されていてもよい。また、R
205とR
206とは環を形成してもよく、環を形成する場合には、R
205、R
206はそれぞれ炭素数1~6のアルキレン基を示す。A
-は非求核性対向イオンを表す。R
208、R
209、R
210、R
211は、R
204、R
205、R
206、R
207と同様であるが、水素原子であってもよい。R
208とR
209、R
208とR
209とR
210とは環を形成してもよく、環を形成する場合には、R
208とR
209及びR
208とR
209とR
210は炭素数3~10のアルキレン基を示す。)
【0130】
上記架橋触媒(Xc-1)、(Xc-2)、(Xc-3)、(Xc-4)、(Xc-10)は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋触媒の添加量は、ベースポリマー(例えば、上記方法で得られた熱架橋性ポリシロキサン(Sx))100質量部に対して、好ましくは0.01~50質量部、より好ましくは0.1~40質量部である。
【0131】
本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物には、さらに下記の原料を配合することもできる。
【0132】
(有機酸)
本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物の安定性を向上させるため、炭素数が1~30の1価又は2価以上の有機酸を添加することが好ましい。このとき添加する酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、サリチル酸、トリフルオロ酢酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、シュウ酸、マロン酸、メチルマロン酸、エチルマロン酸、プロピルマロン酸、ブチルマロン酸、ジメチルマロン酸、ジエチルマロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、クエン酸等を例示することができる。特にシュウ酸、マレイン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、クエン酸等が好ましい。また、安定性を保つため、2種以上の酸を混合して使用してもよい。
【0133】
有機酸の添加量は本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物に含まれる熱架橋性ポリシロキサン100質量部に対して0.001~25質量部、好ましくは0.01~15質量部、より好ましくは0.1~5質量部である。
【0134】
あるいは、上記有機酸を本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物のpHに換算して、好ましくは0≦pH≦7、より好ましくは0.3≦pH≦6.5、更に好ましくは0.5≦pH≦6となるように配合することがよい。
【0135】
(水)
本発明では組成物に水を添加してもよい。水を添加すると、本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物中のポリシロキサン化合物が水和されるため、リソグラフィー性能が向上する。本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物の溶剤成分における水の含有率は0質量%を超え50質量%未満であり、特に好ましくは0.3~30質量%、更に好ましくは0.5~20質量%である。水の添加量が上記範囲内であれば、ケイ素含有レジスト下層膜の均一性が良好で、はじきが発生してしまう恐れもないし、リソグラフィー性能が低下する恐れもない。
【0136】
水を含む全溶剤の使用量は、ベースポリマーである熱架橋性ポリシロキサン(Sx)100質量部に対して100~100,000質量部、特に200~50,000質量部が好適である。
【0137】
(安定剤)
更に、本発明では組成物に安定剤を添加することができる。安定剤として環状エーテルを置換基として有する1価又は2価以上のアルコールを添加することができる。特に特開2009-126940号公報[0181]~[0182]段落に記載されている安定剤を添加するとケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物の安定性を向上させることができる。
【0138】
(界面活性剤)
更に、本発明では必要に応じて組成物に界面活性剤を配合することが可能である。このようなものとして、具体的には、特開2009-126940号公報[0185]段落に記載されている材料を添加することができる。
【0139】
(高沸点溶剤)
更に、本発明では必要に応じて組成物に沸点が180度以上の高沸点溶剤を添加することも可能である。この高沸点溶剤としては、1-オクタノール、2-エチルヘキサノール、1-ノナノール、1-デカノール、1-ウンデカノール、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,4-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ヘキサンジオール、2,4-ヘプタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、グリセリン、ガンマブチロラクトン、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジアセトンアルコール、酢酸n-ノニル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル、1,2-ジアセトキシエタン、1-アセトキシ-2-メトキシエタン、1,2-ジアセトキシプロパン、酢酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノプロピルエーテル、酢酸プロピレングリコールモノブチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等を例示できる。
【0140】
〔パターン形成方法〕
(パターン形成方法1)
本発明のパターン形成方法の一つは、被加工体上に塗布型有機膜材料を用いて有機膜を形成する工程と、前記有機膜の上に、本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成する工程と、上記ケイ素含有レジスト下層膜上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜用組成物を用いてレジスト上層膜を形成する工程と、上記レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程と、上記回路パターンが形成された上記レジスト上層膜をマスクにして上記ケイ素含有レジスト下層膜にエッチングでパターンを転写する工程と、上記パターンが転写された上記ケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして上記有機膜にエッチングでパターン転写する工程と、上記パターンが転写された上記有機膜をマスクにして上記被加工体にエッチングでパターンを転写する工程を含むパターン形成方法(所謂「多層レジスト法」)である。
【0141】
(パターン形成方法2)
また、本発明のパターン形成方法は、被加工体上に炭素を主成分とする有機ハードマスクをCVD法で形成する工程と、前記ハードマスクの上に、本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を用いてケイ素含有レジスト下層膜を形成する工程と、上記ケイ素含有レジスト下層膜上にフォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜用組成物を用いてレジスト上層膜を形成する工程と、上記レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程と、上記回路パターンが形成された上記レジスト上層膜をマスクにして上記ケイ素含有レジスト下層膜にエッチングでパターンを転写する工程と、上記パターンが転写された上記ケイ素含有レジスト下層膜をマスクにして上記ハードマスクにエッチングでパターン転写する工程と、上記パターンが転写された上記ハードマスクをマスクにして上記被加工体にエッチングでパターンを転写する工程を含むことを特徴とするパターン形成方法(所謂「多層レジスト法」)である。
【0142】
被加工体上(ケイ素含有レジスト下層膜の下)に塗布型の有機膜を形成する場合には、塗布型有機膜材料として、芳香環を含む化合物を含有するものを用いることが好ましい。塗布型有機膜材料としてこのようなものを用いれば、パターン倒れの発生を更に抑制することができる。
【0143】
一方、被加工体上(ケイ素含有レジスト下層膜の下)にCVDハードマスクを形成する場合には、炭素を主成分とするハードマスクをCVD法で形成すればよく、公知の方法で行えばよい。
【0144】
本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を使用しレジストパターンを形成すると、上記のように、ハードマスクや有機膜の組み合わせを最適化することで、フォトレジストで形成された超微細パターンを、パターン倒れを抑制しかつ良好な形状で基板上に形成できる。また、パターン形成後に残存したケイ素含有レジスト下層膜のエッチング等による除去が容易であるため、欠陥の原因となる残渣を抑制でき、また、過剰なエッチング条件による基板ダメージも防ぐことができる。
【0145】
ケイ素含有レジスト下層膜を形成する場合には、被加工体上に本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物をスピンコート法等で塗布することで行うことができる。スピンコート後、溶媒を蒸発させ、フォトレジスト組成物からなるレジスト上層膜や塗布型有機膜材料からなる有機膜とのミキシング防止のため、架橋反応を促進させるためにベーク(熱処理)を行う。ベークは50℃以上500℃以下、10~600秒の範囲内で行うことが好ましく、より好ましくは100℃以上400℃以下、10~300秒の範囲内で行うことが好ましい。
【0146】
また、ケイ素含有レジスト下層膜の形成は、被加工基板上に本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物を、上記同様スピンコート法等でコーティングし、酸素濃度0.1%以上21%以下の雰囲気中で焼成して硬化させることによりケイ素含有レジスト下層膜を形成することもできる。
【0147】
本発明のケイ素含有レジスト下層膜をこのような酸素雰囲気中で焼成することにより、十分に硬化した膜を得ることができる。ベーク中の雰囲気としては空気中でも構わないが、酸素を低減させるためにN2、Ar、He等の不活性ガスを封入しておくことにより、有機膜であるレジスト下層膜の酸化を防止することができる。酸化を防止するためには酸素濃度をコントロールする必要があり、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下である。
【0148】
本発明の組成物を用いて形成されるケイ素含有レジスト下層膜の厚さは適宜選定されるが、1~300nmとすることが好ましく、より好ましくは1~200nm、さらに好ましくは1~100nmとすることが好ましい。
【0149】
本発明のパターン形成方法において、レジスト上層膜用組成物は、化学増幅型のフォトレジスト組成物からなるものであれば、特に限定されない。なお、本発明では、アルカリ現像液を用いたポジ現像、有機溶剤の現像液を用いたネガ現像のどちらも採用できることから、ポジ型のレジスト上層膜材料、ネガ型のレジスト上層膜材料を現像方法に合わせて適宜選択すればよい。
【0150】
なお、ポジ型パターン形成方法では、レジスト上層膜形成、加熱処理後に、露光を行い、通常アルカリ現像液を用いてアルカリ現像を行い、ポジ型のレジストパターンを得る。また、露光後にポストエクスポジュアーベーク(PEB)を行うことが好ましい。
【0151】
当該アルカリ現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液等を使用することができる。
【0152】
また、ネガ型パターン形成方法では、レジスト上層膜形成、加熱処理後に、露光を行い、通常、有機溶剤を用いて有機溶剤現像を行い、ネガ型のレジストパターンを得る。また、露光後にPEBを行うことが好ましい。
【0153】
当該有機溶剤の現像液としては、4-メチルー2-ペンタノール、2-オクタノン、2-ノナノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、4-ヘプタノン、2-ヘキサノン、3-ヘキサノン、ジイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノン、アセトフェノン、メチルアセトフェノン、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸アミル、酢酸ブテニル、酢酸イソアミル、酢酸フェニル、ギ酸プロピル、ギ酸ブチル、ギ酸イソブチル、ギ酸アミル、ギ酸イソアミル、吉草酸メチル、ペンテン酸メチル、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチル、乳酸イソブチル、乳酸アミル、乳酸イソアミル、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、2-ヒドロキシイソ酪酸エチル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、酢酸フェニル、酢酸ベンジル、フェニル酢酸メチル、ギ酸ベンジル、ギ酸フェニルエチル、3-フェニルプロピオン酸メチル、プロピオン酸ベンジル、フェニル酢酸エチル、酢酸-2-フェニルエチルから選ばれる1種以上を成分として含む現像液等を使用することができる。
【0154】
本発明のパターン形成方法は、レジスト上層膜のパターン倒れが抑制され、かつ、良好なパターン形状が形成可能である。また、ドライエッチングによるケイ素含有レジスト下層膜へのパターン転写に優れ、さらに、パターニング終了後に残存するケイ素含有レジスト下層膜の除去が容易で残渣による欠陥が生じ難いため、特に微細なパターンの形成に実用的なパターン形成方法である。
【0155】
上記レジスト上層膜に回路パターンを形成する工程におけるパターン形成は、波長が10nm以上300nm以下の光リソグラフィー、電子線による直接描画、ナノインプリンティング又はこれらの組合せによるパターン形成であることが好ましい。
【0156】
上記被加工体は、半導体装置基板、金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、金属酸化炭化膜又は金属酸化窒化膜であることが好ましい。
【0157】
上記被加工体がこのようなものである場合、本発明の効果がより十分に発揮される。
【0158】
上記被加工体を構成する金属はケイ素、ガリウム、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、銀、金、インジウム、ヒ素、パラジウム、タンタル、イリジウム、アルミニウム、鉄、モリブデン、コバルト又はこれらの合金であることが好ましい。
【0159】
上記被加工体を構成する金属が上記特定の金属である場合、本発明の効果がより十分に発揮される。
【実施例】
【0160】
以下、合成例及び実施例と比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの記載によって限定されるものではない。なお、下記例で%は質量%を示し、分子量MwはGPC測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0161】
[合成例]化合物(A1)~(A7)の合成
化合物(A1)~(A7)の合成には下記(B1)~(B5)を原料として用いた。
【化33】
【0162】
(合成例1)
化合物(A1)の合成
【化34】
窒素雰囲気下、温度計、還流管を取り付けた三口フラスコに(B1)20.0g、(B4)32.8g、BHT(ジブチルヒドロキシトルエン)0.05g、PGME(1-メトキシプロパノール)150gを加えた。内温80℃まで昇温し均一溶液とした後、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド1.00gを加え、110℃で7時間反応を行った。反応停止後、MIBK(メチルイソブチルケトン)400mlで希釈後、分液ロートへ移し換え、1%アンモニア水溶液100gで2回、3%硝酸水溶液100gで2回、超純水100mlで5回の順で洗浄を行った。有機相を回収し、濃縮乾固することにより化合物(A1)51.0gを得た。
【0163】
(合成例2)
化合物(A2)の合成
【化35】
窒素雰囲気下、温度計、還流管を取り付けた三口フラスコに(B2)を20.0g、(B4)29.8g、BHT0.05g、PGME150gを加えた。内温80℃まで昇温し均一溶液とした後、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド1.00g(0.4mmol)を加え、110℃で7時間反応を行った。反応停止後、MIBK400mlで希釈後、分液ロートへ移し換え、1%アンモニア水溶液100gで2回、3%硝酸水溶液100gで2回、超純水100mlで5回の順で洗浄を行った。有機相を回収し、濃縮乾固することにより化合物(A2)48.3gを得た。
【0164】
(合成例3)
化合物(A3)の合成
【化36】
窒素雰囲気下、温度計、還流管を取り付けた三口フラスコに(B2)を20.0g、(B5)29.2g、PGME150gを加えた。内温80℃まで昇温し均一溶液とした後、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド1.0gを加え、110℃で7時間反応を行った。反応停止後、MIBK400mlで希釈後、分液ロートへ移し換え、1%アンモニア水溶液100gで2回、3%硝酸水溶液100gで2回、超純水100mlで5回の順で洗浄を行った。有機相を回収し、濃縮乾固することにより化合物(A3)46.7gを得た。
【0165】
(合成例4)
化合物(A4)の合成
【化37】
窒素雰囲気下、温度計、還流管を取り付けた三口フラスコに(B3)20.0g、(B4)42.2g、BHT0.05g、PGME200gを加えた。内温80℃まで昇温し均一溶液とした後、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド1.0gを加え、110℃で7時間反応を行った。反応停止後、MIBK500mlで希釈後、分液ロートへ移し換え、1%アンモニア水溶液125gで2回、3%硝酸水溶液125gで2回、超純水125mlで5回の順で洗浄を行った。有機相を回収し、濃縮乾固することにより化合物(A4)59.7gを得た。
【0166】
(合成例5)
化合物(A5)の合成
【化38】
窒素雰囲気下、温度計、還流管を取り付けた三口フラスコに(B3)20.0g、(B5)41.4g、PGME200gを加えた。内温80℃まで昇温し均一溶液とした後、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド1.0gを加え、110℃で7時間反応を行った。反応停止後、MIBK500mlで希釈後、分液ロートへ移し換え、1%アンモニア水溶液125gで2回、3%硝酸水溶液125gで2回、超純水125mlで5回の順で洗浄を行った。有機相を回収し、濃縮乾固することにより化合物(A5)60.2gを得た。
【0167】
(合成例6)
化合物(A6)の合成
【化39】
化合物(A2)20.0g、ピリジン11.3g、N-メチルピロリドン80gを加え、窒素雰囲気下、室温で均一溶液とし、無水酢酸11.7gをゆっくりと滴下後、40℃で3時間反応を行った。反応終了後、MIBK200mlを加えた後、氷浴で冷却しながら超純水100gをゆっくり加え、反応をクエンチした。クエンチ後、分液ロートへ移し換え水層を除去し、有機層を2%NaHCO3水溶液100gで2回、3%硝酸水溶液60gで2回、純水60gで6回洗浄を行った後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF60gを加え均一溶液とした後、ヘキサン200gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、ヘキサン200gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を40℃で真空乾燥することで(A6)を18.5g得た。
【0168】
(合成例7)
化合物(A7)の合成
【化40】
化合物(A5)20.0g、トリエチルアミン11.1g、アンテージW-400 0.05g、N-メチルピロリドン80gを加え、窒素雰囲気下、氷浴中で均一溶液とし、アクリル酸クロリド7.9gをゆっくりと滴下後、室温で3時間反応を行った。反応終了後、MIBK200mlを加えた後、氷浴で冷却しながら5%塩酸水溶液100gをゆっくり加え、反応をクエンチした。クエンチ後、分液ロートへ移し換え水層を除去し、有機層を3%硝酸水溶液60g、純水60gで6回洗浄を行った後、有機層を減圧乾固した。残渣にTHF60gを加え均一溶液とした後、ヘキサン300gで晶出した。沈降した結晶をろ過で分別し、ヘキサン200gで2回洗浄を行い回収した。回収した結晶を40℃で真空乾燥することで(A7)を20.5g得た。
【0169】
[合成例]熱架橋性ポリシロキサン(C1)~(C3)の合成
【0170】
(合成例8)
ポリシロキサン(C1)の合成
【化41】
メタノール120g、10%硝酸0.1g及び超純水60gを加え、窒素雰囲気下、40℃で均一溶液とした後、テトラメトキシシラン49.4g、メチルトリメトキシシラン20.4g及びフェニルトリメトキシシラン5.0gの混合物をゆっくりと滴下した。滴下後、40℃で12時間加水分解縮合反応を行った。反応終了後、PGEE(プロピレングリコールエチルエーテル)600gを加え、水分及び副生アルコールを留去し、ポリシロキサン化合物(C1)のPGEE溶液400g(化合物濃度10%)として回収した。ポリシロキサン化合物(C1)のポリスチレン換算分子量を測定したところMw=2600であった。
【0171】
(合成例9)
ポリシロキサン(C2)の合成
【化42】
メタノール120g、10%硝酸0.1g及び超純水60gを加え、窒素雰囲気下、40℃で均一溶液とした後、テトラメトキシシラン38.1g、メチルトリメトキシシラン30.6g及び3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン5.9gの混合物をゆっくりと滴下した。滴下後、40℃で12時間加水分解縮合反応を行った。反応終了後、PGEE(プロピレングリコールエチルエーテル)600gを加え、水分及び副生アルコールを留去し、ポリシロキサン化合物(C2)のPGEE溶液440g(化合物濃度10%)として回収した。ポリシロキサン化合物(C2)のポリスチレン換算分子量を測定したところMw=2900であった。
【0172】
(合成例10)
ポリシロキサン(C3)の合成
【化43】
エタノール1400g、超純水700g及び25%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド50gを加え、窒素雰囲気下、40℃で均一溶液とした。2-(3、4―エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン138.6gとフェニルトリメトキシシラン37.2gの混合物をゆっくりと滴下後、40℃で2時間反応を行った。反応終了後、酢酸を35g加えて反応停止させ減圧でエタノールを留去した。留去後の溶液に酢酸エチル2000mlを加え水層を分別し、
有機層を超純水400mlで2回洗浄後、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)を1000g加え、水分および低沸点溶剤を留去することでポリシロキサン化合物(C3)のPGMEA溶液600g(化合物濃度20%)として回収した。ポリシロキサン化合物(C3)のポリスチレン換算分子量を測定したところMw=2800であった。
【0173】
[実施例、比較例]
上記合成例で得られた化合物(A1)~(A7)、ポリシロキサン化合物(C1)~(C3)、架橋触媒、光酸発生剤(表3記載のPAG1~3)、酸(マレイン酸)、溶剤、水を表1~3に示す割合で混合し、0.1μmのフッ素樹脂製のフィルターで濾過することによって、ケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物溶液をそれぞれ調製しそれぞれSol.1~Sol.41とした。
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
使用された架橋触媒は以下のとおりである。
TPSNO3・・・硝酸トリフェニルスルホニウム
QBANO3・・・硝酸テトラブチルアンモニウム
TEAHNf・・・トリエチルアンモニウムノナフレート
【0178】
使用された溶剤は以下のとおりである。
PGEE・・・プロピレングリコールエチルエーテル
PGMEA・・・プロピレングリコールメチルエーテルアセテート
【0179】
使用された光酸発生剤は以下の表4の通りである。
【表4】
【0180】
[実施例1-1~1-36、比較例1-1~1-5]
(EUVパターニング試験)
シリコンウエハー(Si基板)上にケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物Sol.1~41をスピンコートし220℃で60秒間加熱して、膜厚25nmのケイ素含有レジスト下層膜Film1~41(ポリシロキサンレジスト下層膜)を作製した。
【0181】
続いて、下記成分を表5の割合で溶解させたレジスト材料をFilm1~41上にスピンコートし、ホットプレートを用いて105℃で60秒間プリベークして膜厚35nmのレジスト膜を作製した。これに、ASML社製EUVスキャナーNXE3300(NA0.33、σ0.9/0.6、クアドルポール照明、ウエハー上寸法がピッチ36nmのL/Sパターン)を用いて露光し、ホットプレート上で100℃、60秒間PEBを行い、2.38質量%TMAH水溶液で30秒間現像を行って、寸法18nmのラインを得た。
【0182】
このライン寸法を(株)日立ハイテクノロジーズ製の測長SEM(CG5000)を用いて測長し、ライン幅15nmでパターン倒れが見られないときは良好とし、パターン倒れが見られたときは不良と評価した。また、断面形状(パターン形状)は(株)日立ハイテクノロジーズ製電子顕微鏡(S―4800)で観測し、裾引き形状が見られないときは良好とし、明らかな裾引き形状が見られたときは不良と評価した。パターンラフネスに関しては、(株)日立ハイテクノロジーズ製電子顕微鏡(CG4000)で観測した。
【0183】
レジスト材料に使用されたポリマー、クエンチャー、増感剤、界面活性剤及び有機溶剤は以下のとおりである。
【0184】
【0185】
【0186】
界面活性剤:3M社製FC-4430
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
CyHO:シクロヘキサノン
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
【0187】
【0188】
【0189】
【0190】
表6~7に示されるように、本発明のケイ素含有レジスト下層膜形成用組成物に必須である化合物(A1)~(A7)を添加した実施例1-1~1-36においてはパターンの倒れ抑止効果および良好なパターン形状が見られ、かつパターンラフネスも良好であることが確認された。
一方、比較例1-1~1-3においては本発明に用いる一般式(A-1)で示される化合物を含有していないためパターン倒れが発生し、また、パターン形状およびパターンラフネスが悪いものであった。さらに比較例1-4、1-5においてはPAGの添加によりパターン形状の改善がみられているが、一般式(A-1)で示される化合物が添加されていないためパターン倒れおよびパターンラフネスの劣化が観察された。このことからも本発明に用いられる化合物(A1)~(A7)の添加により、ライン幅15nm以上の微細なパターンの倒れを改善するだけでなく、パターンの形状改善およびパターンラフネス改善にも効果があることがわかる。
【0191】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。