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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】グラフェンペリクルリソグラフィ装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 23/28 20060101AFI20231017BHJP
   B01J 23/30 20060101ALI20231017BHJP
   B01J 23/42 20060101ALI20231017BHJP
   B01J 23/72 20060101ALI20231017BHJP
   B01J 23/755 20060101ALI20231017BHJP
   B01J 27/22 20060101ALI20231017BHJP
   C01B 32/184 20170101ALI20231017BHJP
   G03F 1/62 20120101ALI20231017BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
B01J23/28 M
B01J23/30 M
B01J23/42 M
B01J23/72 M
B01J23/755 M
B01J27/22 M
C01B32/184
G03F1/62
G03F7/20 503
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020542421
(86)(22)【出願日】2019-02-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2019052997
(87)【国際公開番号】W WO2019170356
(87)【国際公開日】2019-09-12
【審査請求日】2022-01-31
(31)【優先権主張番号】18160866.2
(32)【優先日】2018-03-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18212646.6
(32)【優先日】2018-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】クルガノワ,エフゲニア
(72)【発明者】
【氏名】ギースバーズ,アドリアヌス,ヨハネス,マリア
(72)【発明者】
【氏名】クライン,アレクサンダー,ルードウィク
(72)【発明者】
【氏名】ナザレヴィッチ,マキシム,アレクサンドロヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ノッテンブーム,アーノウド,ウィレム
(72)【発明者】
【氏名】ピーター,マリア
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン ツヴォル,ピーター-ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ヴレス,デイビッド,フェルディナンド
(72)【発明者】
【氏名】ヴォレブレクト,ステン
(72)【発明者】
【氏名】フォールトハイゼン,ウィレム-ピーター
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0205705(US,A1)
【文献】特表2017-512181(JP,A)
【文献】特開2018-035010(JP,A)
【文献】特開2014-055086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 - 38/74
C01B 32/00 - 32/991
G03F 1/62
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラフェンを生成するために使用される触媒であって、
(i)遷移金属を含む第1の層と、
(ii)基層と、
(iii)金属酸化物及び/又は金属シリサイドを含む中間層と、を含み、
前記中間層が前記基層と前記第1の層との間に配設された触媒。
【請求項2】
前記第1の層の前記遷移金属が、Mo、W、Pt、Cu及びNiから選択される、請求項1に記載の触媒。
【請求項3】
(i)金属酸化物及び/又は金属シリサイドを含む中間層を基層上に設ける工程と、
(ii)遷移金属を含む第1の層を設ける工程と、を含む触媒を調製する方法。
【請求項4】
(i)請求項1又は2に記載の触媒の表面上に炭素を堆積させる工程と、
(ii)前記触媒上にグラフェン層を形成する工程と、を含むグラフェンを合成する方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の触媒の前記グラフェンの合成における使用。
【請求項6】
非晶質炭素、グラフェン、遷移金属の炭化物、SiO2及びc‐Siの層を含む、多層ペリクルスタック。
【請求項7】
前記遷移金属が、Mo、W、Pt、Cu及びNiから選択される、請求項6に記載の多層ペリクルスタック。
【請求項8】
キャッピング層をさらに含む、請求項6又は7に記載の多層ペリクルスタック。
【請求項9】
前記キャッピング層が、モリブデン、アルミニウム、ルテニウム及びモリブデン、モリブデン及びホウ素、ジルコニウム及びホウ素、イットリウム及びホウ素、又はランタン及びホウ素のうちの少なくとも1つを含む、請求項8に記載の多層ペリクルスタック。
【請求項10】
前記グラフェンの層が前記キャッピング層の下方にある、請求項8又は9に記載の多層ペリクルスタック。
【請求項11】
請求項4に記載の方法に従って生成されたグラフェンを含むペリクル。
【請求項12】
キャッピング層とペリクルコアとを備える、請求項11に記載のペリクル。
【請求項13】
前記キャッピング層が、モリブデン、アルミニウム、ルテニウム及びモリブデン、モリブデン及びホウ素、ジルコニウム及びホウ素、イットリウム及びホウ素、又はランタン及びホウ素のうちの少なくとも1つを含む、請求項12に記載のペリクル。
【請求項14】
前記キャッピング層が、ルテニウム、モリブデン、ホウ素、イットリウム、ランタン、ホウ素、ジルコニウム、炭素、ニオブ、シリコン、アルミニウム、窒素、又は酸素のうちの1つ以上を含む、請求項12に記載のペリクル。
【請求項15】
前記キャッピング層が、ルテニウム、アルミニウム、ルテニウム及びモリブデン、モリブデン及びホウ素、ジルコニウム及びホウ素、イットリウム及びホウ素、並びにランタン及びホウ素のうちの1つ以上から選択される、請求項14に記載のペリクル。
【請求項16】
前記ペリクルコアが、請求項に記載の方法に従って生成されたグラフェンを含む、請求項12に記載のペリクル。
【請求項17】
請求項11から16のいずれか一項に記載のペリクルを備えたリソグラフィ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は触媒に関する。具体的には、本発明はグラフェンを生成するための触媒に関し、生成されたグラフェンはEUVレチクルでの使用に適している。本発明はまた、ペリクルを窒化ホウ素で覆うことに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板上に付与するように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば集積回路(IC)の製造に用いることができる。リソグラフィ装置は、例えばパターニングデバイス(例えばマスク)にあるパターンを基板上に設けられた放射感応性材料(レジスト)層上へ投影することができる。
【0003】
[0003] 基板上にパターンを投影するために、リソグラフィ装置は電磁放射を使用することができる。この放射の波長は、その基板上に形成可能なフィーチャの最小サイズを決定する。4~20nmの範囲内、例えば6.7nm又は13.5nmの波長を有する極端紫外線(EUV)放射を使用するリソグラフィ装置は、例えば193nmの波長を有する放射を使用するリソグラフィ装置よりも小さいフィーチャを基板上に形成するのに使用することができる。
【0004】
[0004] リソグラフィ装置では、レーザなどの放射源による液体スズ小滴のイオン化によってEUV放射が生成される。液体スズ小滴を放射源の前を通過させ、放射がスズ小滴に衝突するとき、スズ小滴がイオン化されEUV放射を放出する。このようにしてEUV放射を生成することに関連する1つの問題は、スズがリソグラフィ装置の様々な部分、例えばパターニングデバイスを汚染する可能性があることである。
【0005】
[0005] リソグラフィ装置での使用に適したパターニングデバイスはレチクルであってよい。レチクルは、リソグラフィ装置の内側からの粒子や汚染物質で汚染される可能性がある。粒子は、レチクルの前側、レチクルの後側、並びにレチクルの側部及び/又は縁のうちの1つ以上を汚染する可能性がある。粒子は、レチクルの側部にあるクランプの相互作用によって生成する可能性がある、又は粒子は、例えばリソグラフィ装置で使用されるガスから生じる無機汚染物質、露光中に基板からスパッタされたレジストデブリ、又は装置の部品間の機械的接触などの任意の他の源から生じる可能性がある。汚染物質は金属粒子又は金属酸化物粒子を含む可能性がある。
【0006】
[0006] レチクル汚染の問題は、特に極端紫外線(EUV)リソグラフィに関連している。通常、リソグラフィ装置内での汚染からレチクルを保護するのに保護要素を使用することができる。しかしながら、EUVリソグラフィでは、使用されるEUV放射の波長に起因して使用できない保護要素もある。
【0007】
[0007] 保護要素にはペリクルが含まれる可能性がある。ペリクルは、EUVレチクルの汚染を防止する、薄くて概ね(少なくともEUV放射に対して)透過的な膜である。EUV放射での使用に適したペリクルは、EUV放射がEUVペリクルによって吸収されないように高いEUV透過性を有することが求められる。EUVペリクルはまた、高い熱抵抗性を有することが求められる。EUVペリクルはまた、高い強度を有することが求められる。EUVペリクルは、EUVペリクルが経験する高い温度によって使用中に破損する可能性がある。
【0008】
[0008] グラフェンは、その低いEUV放射吸収度及び強度特性から、EUVペリクルに組み込むのに有用な材料であることが分かっている。また、グラフェンEUVペリクルは非常に薄い膜として生成することができる。しかしながら、グラフェン薄膜の強度はグラフェン表面の均一性、及びグラフェン薄膜の厚さの均一性に依存する。粗いグラフェン表面層及び厚さのばらつきは、グラフェン膜構造に弱点をもたらす可能性がある。グラフェン膜の弱点によって、グラフェン薄膜は破損する可能性があり、結果としてより頻繁な交換が必要になる。
【0009】
[00009] グラフェンの発見以来、高品質の素材を製造するいくつかのアプローチが探求されてきた。単層グラフェン膜と数層グラフェン膜とを合成する既存の方法には、表面に炭素源を堆積させる炭素蒸着(CVD)が含まれる。しかしながら、複数の層からなる薄層グラフェン膜を迅速かつ確実に成長させ得る表面を提供することが課題である。
【0010】
[00010] グラフェン層の合成には、シリコンウェーハで支持されたモリブデン触媒が使用されている。モリブデンは、他の遷移金属と比較してシリコンに匹敵する熱膨張係数をもたらした結果、熱応力が小さくなる。シリコンウェーハはまた熱酸化され、その結果、モリブデンはシリコンウェーハの薄い二酸化シリコン表面層(熱酸化物層としても知られている)に支持される。正確な触媒機構は解明されていないが、モリブデンは、触媒が使用されている場合、後に触媒の機能を果たすと考えられる炭化モリブデンに変換される。
【0011】
[00011] しかしながら、EUVペリクルで使用するグラフェン層を生成する現在の方法は一般に、滑らかでないグラフェン表面、厚さにばらつきがある膜、及び不規則、不均質な形態をもたらす。これによって、既知の触媒を使用し、既知の方法を用いて生成されたグラフェンはEUVペリクルとしての使用に適さなくなっている。
【0012】
[00012] したがって、高い表面均一性及び高い厚さ均一性を有するグラフェンを生成する必要性がある。さらに、グラフェン層全体に欠陥のないウェーハスケールのグラフェンを提供する必要性がある。このような特性を有するグラフェン膜は、EUVペリクルで使用するために、適切に高い熱安定性を有し、EUVに対して適切に透過性であり、高い強度を有する。
【0013】
[00013] したがって、ペリクルとしての使用に適したグラフェンを生成する改善された方法を提供することが望ましい。
【0014】
[00014] ペリクルは、H*及びHO*などのフリーラジカル種を含む雰囲気中でエッチングされることがあるため、使用により時間とともに劣化する可能性がある。ペリクルは非常に薄いため、フリーラジカル種との反応はペリクルを弱体化させ、最終的にはこれを故障させる可能性がある。
【0015】
[00015] したがって、既知のペリクルと比較して化学安定性及び熱安定性が改善されたペリクルを提供することが望ましい。
【0016】
[00016] 本願は、概してリソグラフィ装置、特にEUVリソグラフィ装置との関連におけるペリクルについて言及しているが、本発明はペリクル及びリソグラフィ装置のみに限定されず、本発明の主題は任意の他の適切な装置又は状況で使用できることが理解される。
【0017】
[00017] 例えば、本発明の方法は、スペクトル純度フィルタにも同様に適用することができる。実際のEUV源、例えばプラズマを使用してEUV放射を生成するものなどは、所望の「帯域内」EUV放射だけでなく、望ましくない(帯域外)放射も放出する。この帯域外放射は、深紫外線(DUV)放射範囲(100~400nm)において最も顕著である。さらに、あるEUV源、例えばレーザ生成プラズマEUV源の場合、通常10.6ミクロンのレーザからの放射はかなり帯域外の放射をもたらす。
【0018】
[00018] リソグラフィ装置では、いくつかの理由でスペクトル純度が望まれる。1つの理由は、レジストが帯域外の放射の波長に敏感であるため、そのような帯域外放射にレジストが暴露された場合に、レジストに付与されるパターンの像品質が劣化する可能性があるからである。さらに、ある種のレーザ生成プラズマ源における帯域外放射の赤外放射、例えば10.6ミクロンの放射は、リソグラフィ装置内のパターニングデバイス、基板及び光学部品に、望ましくない不必要な加熱を引き起こす。このような加熱は、これらの要素の損傷、寿命の低下、及び/又はレジストコート基板上に投影及び付与されるパターンの欠陥又は歪みを引き起こすことがある。
【0019】
[00019] 典型的なスペクトル純度フィルタは、例えば、モリブデンなどの反射性金属でコーティングされたシリコン基礎構造物(例えば、アパーチャを備えたシリコングリッド、又は他の部材)から形成することができる。典型的なスペクトル純度フィルタは、使用中、例えば、入射する赤外放射及びEUV放射からの高い熱負荷にさらされる可能性がある。この熱負荷によって、スペクトル純度フィルタの温度が800℃を超えることもある。シリコン基礎構造の剥離及び劣化は、水素の存在により促進される。水素は、デブリ(例えば、粒子などのデブリ)がリソグラフィ装置の所定部に入ったり、所定部から出たりするのを抑制するために、スペクトル純度フィルタが使用される環境内のガスとしてしばしば使用される。したがって、スペクトル純度フィルタはペリクルとして使用することができ、逆もまた同様である。したがって、本願における「ペリクル」への言及は「スペクトル純度フィルタ」への言及でもある。本願では主にペリクルについて言及しているが、全ての特徴は、同様にスペクトル純度フィルタに適用することができる。
【0020】
[00020] リソグラフィ装置(及び/又は方法)では、レジストコート基板にパターンを付与するために使用される放射の強度損失を最小限に抑えることが望ましい。この理由の1つは、例えば露光時間を短縮してスループットを増加するために、理想的にはできるだけ多くの放射が基板へパターンを付与するのに利用可能であるべきであるからである。同時に、リソグラフィ装置を通過し、かつ基板上に入射する望ましくない(例えば、帯域外の)放射の量を最小限に抑えることが望ましい。さらに、リソグラフィ方法又はリソグラフィ装置で使用されるスペクトル純度フィルタが、確実に適度な寿命を有し、かつ、スペクトル純度フィルタが暴露され得る高い熱負荷及び/又はスペクトル純度フィルタが暴露され得る水素(など、例えばH*及びHO*を含むフリーラジカル種)によって急速に経時劣化しないことが望ましい。したがって、改善された(又は代替的な)スペクトル純度フィルタであって、例えば、リソグラフィ装置及び/又は方法で使用するのに適したスペクトル純度フィルタを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0021】
[00021] 本発明は、既知の触媒及びグラフェンペリクルを生成する方法に関連する上述の問題を考慮してなされたものである。
【0022】
[00022] 本発明の第1の態様によれば、(i)遷移金属を含む第1の層と、(ii)基層と、(iii)中間層と、を含み、中間層が基層と第1の層との間に配設された触媒が提供される。遷移金属は、例えばMo、W、Pt、Cu及びNiの群から選択することができる。
【0023】
[00023] 理論による制約を企図するものではないが、表面欠陥や厚さのばらつきなどのグラフェンの不規則性は、合成時に使用される触媒の表面均一性が不良であることに起因すると考えられる。触媒の第1の層は、活性触媒剤又は触媒剤前駆体を含む。本発明は基層と第1の層との間に配設された中間層を提供し、中間層は第2の触媒層のより滑らかな表面、ひいてはより高品質のグラフェンを提供する。
【0024】
[00024] 一部の実施形態では、中間層は金属酸化物を含んでよい。好ましくは、中間層は二酸化ジルコニウムを含む。
【0025】
[00025] 二酸化ジルコニウムが最大の効果を示す一方、チタン、ハフニウム、銅、アルミニウム、マンガン、及び銀などの他の金属の酸化物は効果がやや小さいことが分かった。
【0026】
[00026] 理論による制約を企図するものではないが、中間層の結晶構造は、モリブデンの結晶構造が相互作用し得る好ましい格子面を提供すると考えられる。特に、基板とモリブデンとの間に中間層が存在することが欠陥の少ない表面を提供すると考えられる。また、理論による制約を企図するものではないが、二酸化ジルコニウムはモリブデンと相互作用し、共触媒の機能を果たすことができると考えられる。中間層は、触媒が生成されているとき、モリブデンの堆積中のモリブデンの成長に影響を及ぼす。中間層は炭化モリブデンの形成にも影響を及ぼす。中間層は触媒上のグラフェンの成長にも影響を及ぼす。多層グラフェンは、それ自体が二酸化シリコン層を含み得るSi基板上にモリブデン層を備えた既知の触媒と比較して、中間層を備えた触媒上により迅速に成長することが分かった。
【0027】
[00027] 代替的又は付加的に、中間層は金属シリサイドを含んでよい。金属シリサイドは任意の適切な金属のケイ化物であってよいが、好ましくはケイ化モリブデンである。金属シリサイド、具体的にはケイ化モリブデンを含む中間層の存在は、多層グラフェンの触媒上での成長を加速させることが分かった。
【0028】
[00028] 中間層はまた、付加的又は代替的に炭素を含んでよい。炭素は非晶質炭素(a‐C)であってよい。驚くべきことに、非晶質炭素は、モリブデン触媒上に堆積されるとき、約800℃から約1000℃、好ましくは約900℃に加熱されるとグラフェンに変換されることが分かった。
【0029】
[00029] 一部の実施形態では、基層はシリコンを含む。シリコンはまた、二酸化シリコンを含んでよい。二酸化シリコンは層内にあってよい。中間層は、好ましくはシリコン層又は二酸化シリコン層上に配設される。
【0030】
[00030] 第1の層は、例えばMo、W、Pt、Cu及びNiの群から選択された遷移金属を含んでよい。
【0031】
[00031] ある実施形態では、第1の層は金属モリブデン又は元素モリブデンを含んでよい。第1の層は炭化モリブデンを含んでよい。第1の層が金属モリブデン又は元素モリブデンを含む場合に触媒を使用してグラフェンを生成するとき、モリブデンは炭化モリブデンを形成する。したがって、モリブデンを含む第1の層についての言及は、モリブデンがその金属形態又は元素形態にある場合と、モリブデンがそのモリブデン炭化物形態にある、又は任意の中間位置にある場合の両方を含む。
【0032】
[00032] 本発明の第2の態様では、(i)金属酸化物、金属シリサイド、及び/又は炭素を含む中間層を基層上に設ける工程と、(ii)例えばMo、W、Pt、Cu及びNiの群から選択された遷移金属を含む第1の層を設ける工程と、を含む触媒を調製する方法が提供される。
【0033】
[00033] 好ましくは、中間層はジルコニウムを含む。好ましくは、中間層は二酸化ジルコニウムを含む。
【0034】
[00034] ある実施形態では、中間層はケイ化モリブデンを含む。
【0035】
[00035] ある実施形態では、中間層は炭素、好ましくは非晶質炭素(a‐C)を含む。
【0036】
[00036] 中間層はスパッタリング、化学蒸着、又は任意の他の適切な方法によって形成することができる。中間層は、ジルコニウムターゲット、ジルコニウム酸化物ターゲットからのスパッタリングによって、又はクロススパッタリングによって設けることができる。中間層は、酸素の存在下中にジルコニウムをスパッタすることによって設けることができる。酸素は、中性ガス、イオン化ガス又はプラズマなどの任意の適切な形態であってよい。
【0037】
[00037] 第1の層はスパッタリング、化学蒸着、又は任意の他の適切な方法によって形成することができる。
【0038】
[00038] 基層は本明細書に開示される任意の基層であってよい。基層は好ましくはシリコンを含むが、任意の他の適切な基層を使用することができる。
【0039】
[00039] 本発明の第3の態様によれば、本発明の第1の態様に係る、又は本発明の第2の態様に係る方法により調製された触媒の表面上に炭素を堆積させる工程と、触媒上にグラフェン層を形成する工程と、を含むグラフェンを合成する方法が提供される。
【0040】
[00040] グラフェンを生成するための触媒は知られているが、驚くべきことに、金属酸化物又は金属シリサイドの中間層を備える触媒は改善された性能を提供することが分かった。例えば温度、圧力、及び炭素源などの条件が同じ実験において、多層グラフェン層の厚さは、従来技術の触媒を使用した場合は90分後に約6.5nmであることが分かった。これに対して、本発明に係る触媒は、同じ条件下で90分後に約17~約18.5nmの厚さを有する多層グラフェン層を形成した。また、このグラフェンは、従来技術による触媒上に成長させたグラフェンと比較して、本発明に係る触媒上に成長させた場合に著しく均一であった。また、XRD研究によって、二酸化ジルコニウム層は、中間層を使用せずにモリブデン層を成長させることと比較した場合に、より高い結晶配向性をもたらすモリブデン層の成長に影響を及ぼすと判断された。このことは、本発明に係る触媒により示される改善された性能を少なくとも部分的に提供すると考えられる。
【0041】
[00041] 本発明の第3の態様に係る方法の一部の実施形態では、基層はシリコンを含む。一部の実施形態では、基層はさらに二酸化シリコンを含む。一部の実施形態では、第1の層及び中間層のうちの1つ以上はスパッタリングによって形成される。
【0042】
[00042] 方法はさらに、触媒の表面からグラフェンを除去することを含んでよい。生成された多層グラフェンは、従来技術の触媒を使用して生成された多層グラフェンと比較して厚さがより均一である。これによって、本発明の触媒又は方法を用いて生成された多層グラフェンは、ペリクル、例えばEUVペリクルでの使用に特に適したものとなる。
【0043】
[00043] 一部の実施形態では、炭素源は炭素質ガスとして又は炭素の流れとして提供される。例えばメタンやエタンなどの炭化水素ガスなどの任意の適切な炭素質ガスを使用することができる。炭素質ガスは飽和ガスであっても不飽和ガスであってもよい。不飽和ガスには、反応性が高く、水素含有量が低いために特に望ましいとされるエテン及びエチンが含まれる。使用される温度及び圧力は、当業者なら知っている任意の適切なパラメータから選択することができる。
【0044】
[00044] 炭素は炭素蒸着によって堆積させることができる。炭素は任意の適切な温度で堆積させることができる。適切な温度は約700℃から約1000℃の範囲であってよい。
【0045】
[00045] 驚くべきことに、化学蒸着を用いることなく触媒上にグラフェン層を成長させることが可能であることが認められた。従来の方法では、約800℃から約1000℃の範囲の温度で触媒上に多層黒鉛を成長させる。炭素は、水素及びアルゴン(ただし、ヘリウムなどの任意の希ガス、又は他の不活性ガスも使用できる)の存在下で、メタンなどの炭素含有ガスによって提供される。驚くべきことに、化学蒸着を用いることなくグラフェンを成長させることが可能であることが認められた。非晶質炭素層を触媒上に堆積させ、その後に非晶質炭素をグラフェンに変換するために非晶質炭素及び触媒を約800℃から約1000℃、好ましくは約900℃の温度まで加熱することによって、非晶質炭素層をグラフェン層に変換することが可能であることが認められた。
【0046】
[00046] 1つの方法では、1nmから1000nmの範囲、好ましくは10nmから600nmの範囲の層厚さを有する非晶質炭素層をモリブデン層上に堆積させ、その後にアニールを行った。アニーリングは、非晶質炭素をグラフェンに変換するために、約800℃から約1000℃、好ましくは約900℃の温度で行うことができる。アニーリング時間は1~180分、好ましくは5~60分の範囲であってよい。アニーリングは水素/アルゴン雰囲気中で行うことができる。モリブデンは、二酸化シリコンを含み得るシリコン基層で支持することができる。非晶質炭素を堆積させる触媒は、本発明の任意の態様に係る触媒であってよい。この実施形態では、触媒又は触媒層の厚さは、5nmから1000nm、好ましくは20nmから800nmの範囲であってよい。例えば、Cuを触媒として使用する場合、触媒層の厚さは、好ましくは100nmから1000nm、より好ましくは、より厚い触媒層を設けるために400nmから900nmの範囲である。このような触媒層は、非晶質炭素層の上、下、さらには両側に付与することができる。本発明の意義の範囲内で、本発明に係る触媒は触媒層と呼ばれることもあることに留意されたい。
【0047】
[00047] 別の態様では、非晶質炭素層を基層とモリブデン層との間に堆積させる。基層は、二酸化シリコンを含み得るシリコンを含んでよい。非晶質炭素を堆積させる触媒は、本発明の任意の態様に係る触媒であってよい。
【0048】
[00048] 非晶質炭素は、任意の適切な方法、例えばスパッタリングなどによって堆積させることができる。この方法はCVD装置の必要なく多層グラフェンの生成を可能にする。この方法は、アニール炉を使用してグラフェンを生成することを可能にする。
【0049】
[00049] 本発明の第4の態様によれば、グラフェンの合成における、本発明の第1の態様、第2の態様、又は第3の態様に係る触媒又は方法の使用が提供される。好ましくは、グラフェンは多層グラフェンである。
【0050】
[00050] 本発明の第5の態様によれば、本発明の任意の態様に従って生成されたグラフェンを含むペリクルが提供される。
【0051】
[00051] 本発明の触媒を使用して生成されたグラフェンは、既知の触媒を使用して生成されたグラフェンと比較して厚さがより均一である。これによって、このグラフェンはペリクル、特にEUVペリクルでの使用に極めて適したものとなる。
【0052】
[00052] ペリクルはキャッピング層とペリクルコアとを備えてよい。好ましくは、キャッピング層はペリクルコアを実質的に覆う。
【0053】
[00053] キャッピング層は任意の適切な材料であってよい。キャッピング材料は、モリブデン、アルミニウム、ルテニウム及びモリブデン、モリブデン及びホウ素、ジルコニウム及びホウ素、イットリウム及びホウ素、又はランタン及びホウ素を含んでよい。キャッピング層は、炭化ホウ素又は窒化ホウ素を含む前述の金属のいずれかを含んでよい。キャッピング層は、ホウ化ジルコニウム、ホウ化モリブデン、ホウ化イットリウム、ケイ化モリブデン、ケイ化イットリウム、二酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、酸化イットリウム、ダイヤモンド状炭素、酸化ニオブ、窒化炭素、窒化シリコン、炭化モリブデン、炭化ジルコニウム、炭化イットリウム、炭化シリコン、窒化ジルコニウム、又は酸化アルミニウムを含んでよい。
【0054】
[00054] 一部の実施形態では、キャッピング層は窒化ホウ素、好ましくは六方晶系結晶構造を有する窒化ホウ素を含む。他の実施形態では、窒化ホウ素は非晶質であるか又は立方晶窒化ホウ素である。使用する窒化ホウ素の結晶構造、すなわち立方晶系、六方晶系、又は無定形のどれを選ぶかは、最良の一致をもたらすコア材料の結晶構造に依存する。結晶構造は、堆積方法及び任意の堆積後の処理を調整することによって調整することができる。例えば六方晶窒化ホウ素は、化学蒸着によるグラフェンの成長に好まれるとされる。立方晶窒化ホウ素は、プラズマアシスト蒸着又は物理蒸着及びその後のプラズマ処理によって成長させることができる。立方晶窒化ホウ素は、ケイ化モリブデンなどの立方晶系結晶と機械的に最良に一致する。
【0055】
[00055] 窒化ホウ素を使用して、グラフェン、ケイ化モリブデン、ケイ化窒化モリブデン、ケイ化ジルコニウム、窒化ケイ化ジルコニウム、ホウ素、及び窒化シリコンを含むペリクルコア材料を覆うことができる。これらのペリクルコアは、前述のキャッピング層材料のいずれかによって覆うこともできる。
【0056】
[00056] 一部の実施形態では、EUVペリクルコアは、本発明のいずれかの態様に係る方法に従って生成されたグラフェンを含む。
【0057】
[00057] 本発明の第6の態様によれば、本発明の第5の態様に係るEUVペリクルを備えたEUVリソグラフィ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0058】
[00058] 本発明の実施形態を、単なる例として添付の概略図を参照して以下に説明する。
【0059】
図1】リソグラフィ装置及び放射源を備えたリソグラフィシステムを示す。
図2】中間層を示す本発明に係る触媒の概略的断面を示す。
図3a】従来技術の触媒及び本発明に係る触媒を使用して生成された多層グラフェン層の表面の対比を示す。
図3b】従来技術の触媒及び本発明に係る触媒を使用して生成された多層グラフェン層の表面の対比を示す。
図4】本発明に係る非晶質炭素層を含む触媒の概略的断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0060】
[00059] 図1は、放射源SO及びリソグラフィ装置LAを備えたリソグラフィシステムを示している。放射源SOは、EUV放射ビームBを生成し、このEUV放射ビームBをリソグラフィ装置LAに供給するように構成される。リソグラフィ装置LAは、照明システムILと、パターニングデバイスMA(例えばマスク)を支持するように構成された支持構造MTと、投影システムPSと、基板Wを支持するように構成された基板テーブルWTとを備える。
【0061】
[00060] 照明システムILは、EUV放射ビームBがパターニングデバイスMAに入射する前にEUV放射ビームBを調節するように構成される。そのため、照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11を備えることができる。ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11は共に、EUV放射ビームBに所望の断面形状と所望の強度分布とを与える。照明システムILは、ファセットフィールドミラーデバイス10及びファセット瞳ミラーデバイス11に加えて又はこれらの代わりに、他のミラー又はデバイスを備えることができる。
【0062】
[00061] このように調節された後、EUV放射ビームBはパターニングデバイスMAと相互作用する。この相互作用の結果、パターン付きEUV放射ビームB’が生成される。投影システムPSは、パターン付きEUV放射ビームB’を基板Wに投影するように構成される。この目的のため、投影システムPSは、基板テーブルWTにより保持された基板Wにパターン付きEUV放射ビームB’を投影するように構成された複数のミラー13、14を備えることができる。投影システムPSは、パターン付きEUV放射ビームB’に縮小係数を適用し、これによってパターニングデバイスMAにおける対応するフィーチャよりも小さいフィーチャの像を形成することができる。例えば、4又は8の縮小係数を適用することができる。投影システムPSは、図1では2つのミラー13、14のみを有するものとして示されているが、投影システムPSは様々な数のミラー(例えば6個又は8個のミラー)を備えることができる。
【0063】
[00062] 基板Wは、前もって形成されたパターンを含むことができる。このような場合、リソグラフィ装置LAは、パターン付きEUV放射ビームB’により形成された像を、基板W上に前もって形成されたパターンと位置合わせする。
【0064】
[00063] 相対真空、すなわち大気圧を大きく下回る圧力の少量のガス(例えば水素)を、放射源SO、照明システムIL、及び/又は投影システムPS内に供給することができる。
【0065】
[00064] 放射源SOは、レーザ生成プラズマ(LPP)源、放電生成プラズマ(DPP)源、自由電子レーザ(FEL)又はEUV放射を生成できる他の任意の放射源であってよい。
【0066】
[00065] 以下の説明ではEUVレチクルについて言及しているが、任意の適切なパターニングデバイスMAを使用することができる。
【0067】
[00066] 本発明に係るスタック製造の例
厚さが500nmの熱成長SiO2膜で覆われた20~30Ωcmの抵抗率を有するp型Si(100)ウェーハをベース基板として使用した。Siウェーハの上に、二重層、Mo/a‐C(Moが上)又はa‐C/Moを堆積させ、4つのサンプルが得られた。サンプル1及び2はa‐C層上にMoを有していた。サンプル1は500nmの炭素層及び20nmのMo層を有していた。サンプル2は40nmの炭素層及び20nmのMo層を有していた。サンプル1及び2のスタックの層の順序は、Mo、a‐C、SiO2、c‐Siであった。サンプル3及び4はMoの上にa‐Cを有していた。サンプル3は500nmの炭素層及び50nmのMo層を有していた。サンプル4は40nmの炭素層及び50nmのMo層を有していた。サンプル3及び4のスタックの層の順序は、a‐C、Mo、SiO2、c‐Siであった。Mo層及びa‐C層は、それぞれMo及びCについて6N5及び4Nに等しい純度を有するターゲットから室温でスパッタされた。グラフェンを成長させるために、最高915℃の熱的アニールを行った。アニールガスは25ミリバールの圧力のArとH2の混合物で構成された。
【0068】
[00067] 温度プロファイルは、Si層及びMo層の熱応力を低下させるために915℃までゆっくりと昇温する、第1のステージから始まった3つのステージにランププロファイルを有していた。第1のステージは、200℃/分の速度で室温から525℃まで上昇する最速のステージであった。これに725℃までより遅いランプ速度(50℃/分)の第2のステージが続いた。第3の昇温速度は30℃/分で、最終温度(915℃)に達するまで続いた。昇温ステージの間に温度安定化のための1分間インターバルが取られた。成長は、異なる時間ウィンドウで915℃で行われた。冷却は、完全にヒータの電源を切る前に525℃まで制御された冷却速度25℃/分の速度で構成された。冷却は、熱慣性に起因して指数プロファイルを有していた。アニーリングはArとH2の混合物中で行われた。2つのガスの割合及び/又は成長時間を変化させることによって、ガス雰囲気が成長プロセスに及ぼす影響を調べた。表1は対応するレシピを示す。
【0069】
[00068] 4つの全てのサンプルについて、グラフェン成長は、a‐C層の上方又は下方のいずれかでスパッタされた触媒層によって行われることが観察された。成長メカニズムは、a‐Cの触媒層内部への拡散と、これに続くMo層上でのC析出及びグラフェン形成で構成された。Mo層/a‐C層(Mo層が上)から始まったサンプル1及び2では、アニーリングの後、スタックの層の順序はグラフェン、MoC、a‐C、SiO、c-Siとなった。a‐C層/Mo層(Mo層が下)から始まったサンプル3及び4では、アニーリングの後、スタックの層の順序はa‐C、グラフェン、Mo2C、SiO2、c-Siとなった。
【0070】
【表1】
【0071】
[00069] ラマン分光法及び断面透過型電子顕微鏡法TEMによって証明された最高品質のグラフェンは、厚さ20nmのMo層を厚さ500nmのa‐C膜に堆積させたサンプル1で得られた。ラマン分光法結果に基づいて、グラフェン層の品質はガス状炭化水素源を用いた従来のCVD堆積法で得られたものと少なくとも同程度に良好であることが分かった。グラフェンを成長させるのに使用された最低温度は約900℃であった。
【0072】
[00070] 本発明のさらなる実施形態では、中間アニール工程を使用してグラフェンを成長させること、したがって、アニールプロセスを2つの段階、すなわち、1)遷移金属炭化物触媒を生成するために約700℃の温度で行われる層スタックの第1のアニール工程と、その後の、2)約900℃で層スタックをアニールすることによってグラフェン層を成長させる第2のアニール工程とに分割することが有利であることが分かった。このような中間アニール工程(第1のアニール工程)は、スタック層に応力をより良好に再配分することができると推測される。
【0073】
[00071] 図2は本発明に係る触媒の概略図である。触媒は基層15、中間層16及び第1の層17を備える。中間層16は、中間層16が基層15と第1の層17との間に配設されるように基層15と第1の層17との間に堆積される。
【0074】
[00072] 基層15は任意の適切な材料であってよいが、好ましくはシリコンを含み、より好ましくはシリコンウェーハである。基層15は、熱酸化物層と呼ばれることもある二酸化シリコン層(図示せず)を含んでよい。中間層16及び熱層は好ましくは異なるものである。
【0075】
[00073] 使用時に、炭素源が設けられ、触媒は、炭素源を炭化する又は黒鉛化するのに必要な温度まで加熱される。炭素は触媒の表面に堆積されると、グラフェン層を形成する。時間の長さを調整してより厚い又はより薄い黒鉛層を得ることができる。
【0076】
[00074] 図3aは、中間層のない既知の触媒を使用して生成されたグラフェン層の100倍に拡大した光学顕微鏡画像を示し、図3bは、中間層を備えた本発明の触媒を使用して生成されたグラフェン層の100倍に拡大した光学顕微鏡画像を示している。本発明に従って生成されたグラフェンがはるかに良好な均一性を示すことは明らかである。また、このグラフェン層は、従来技術の触媒を使用する場合よりもはるかに迅速に生成されるため、生成時間が短縮され、熱エネルギー必要量が減少する。
【0077】
[00075] 図4a及び4bは、触媒に非晶質炭素を堆積させる2つのオプションを示している。具体的には、図4aは、非晶質炭素18をモリブデン層19の上に堆積させる実施形態を示す。モリブデンは基層20で支持することができ、基層20とモリブデン層19との間に中間層(図示せず)があってもよい。また、基層20の表面に熱酸化物(二酸化シリコン層)(図示せず)があってもよい。図4bは、非晶質炭素18がモリブデン層19と、シリコンを含み得る基層20との間に配設された実施形態を示す。触媒は本発明の任意の態様に係る触媒であってよい。
【0078】
[00076] 使用時に、非晶質炭素は、スパッタリングなどの任意の適切な手段によって堆積される。非晶質炭素を含む触媒は、非晶質炭素の少なくとも一部分のグラフェンへの変換が生じるのに十分な期間加熱される。
【0079】
[00077] 本発明に係るグラフェン成長法では、例えばW、Pt、Cu及びNiなどの他の遷移金属も触媒層として適していることがさらに分かった。グラフェン品質の観点から見れば、そしてペリクル製造プロセスフローについて、Mo触媒が特に良好な結果をもたらすことが分かった。
【0080】
[00078] さらに驚くべきことに、本発明に係る方法では、まずa‐C/Moを含む層スタックの上にキャッピング層(例えばSiC)を堆積させ、その後にキャッピング層の下にCVDを用いずにグラフェンを成長させることが可能であることも分かった。このようなアプローチは、堆積チャンバ内の雰囲気がグラフェン成長に及ぼす影響を取り除くことを可能にした。これによって、キャッピング層の堆積により生じる可能性があるグラフェン層(すなわち、グラフェン成長の後にキャッピング層を堆積させる場合)の損傷を回避することが可能になった。反応メカニズムの観点からはいまだ十分に理解されていないが、この発明を用いてキャッピング層の下に成長させたグラフェンはより高い品質を示し、これはラマンスペクトルの下側の欠陥ピークによって検出されることが分かった。本発明に従って付与され得るキャッピング層の例には、ホウ化ジルコニウム、ホウ化モリブデン、ホウ化イットリウム、ケイ化モリブデン、ケイ化イットリウム、二酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、酸化イットリウム、ダイヤモンド状炭素、酸化ニオブ、窒化炭素、窒化シリコン、炭化モリブデン、炭化ジルコニウム、炭化イットリウム、炭化シリコン、窒化ジルコニウム、又は酸化アルミニウムを含むキャッピング層が含まれるが、これに限定されない。
【0081】
[00079] 以上、本発明の特定の実施形態を説明してきたが、本発明は以上の説明以外にも実施できることが理解されるであろう。上記の説明は例示を意図したものであって制限的なものではない。したがって、上記の発明に以下に記載の特許請求の範囲から逸脱することなく変更を加えることができることは当業者には明らかであろう。特に、本発明の一態様について開示された特徴は、本発明の任意の他の態様と組み合わせることができる。
【0082】
[00080] 本文ではリソグラフィ装置の文脈において本発明の実施形態に特に言及しているが、本発明の実施形態は他の装置でも用いることができる。本発明の実施形態は、マスク検査装置、メトロロジ装置、又は、ウェーハ(もしくは他の基板)もしくはマスク(もしくは他のパターニングデバイス)等の物体を測定もしくは処理する任意の装置の一部を構成することができる。これらの装置は一般にリソグラフィツールと呼ぶことができる。そのようなリソグラフィツールは、真空条件又は周囲(非真空)条件を使用することができる。
【0083】
[00081] 以上、光学リソグラフィとの関連において、本発明の実施形態を用いることについて具体的に言及してきたが、本発明は、例えばインプリントリソグラフィなど、その他の適用例において使用されてもよく、文脈が許す限り、光学リソグラフィに限定されないことが理解されるであろう。
【0084】
[00082] 以上、本発明の特定の実施形態が記載されているが、本発明は、記載されている以外の方法で実施され得ることが理解されるであろう。上記の説明は、限定ではなく、説明を目的としている。したがって、以下に記載される特許請求の範囲および条項の範囲から逸脱することなく、そこに記載されるように本発明に改変を加えることができることは当業者には明らかであろう。
[条項1]
(i)遷移金属を含む第1の層と、
(ii)基層と、
(iii)中間層と、を含み、
前記中間層が前記基層と前記第1の層との間に配設された触媒。
[条項2]
前記第1の層の前記遷移金属が、Mo、W、Pt、Cu及びNiから選択される、条項1に記載の触媒。
[条項3]
前記中間層が、金属酸化物及び/又は金属シリサイド及び/又は炭素を含む、条項1又は2に記載の触媒。
[条項4]
前記金属酸化物が二酸化ジルコニウムである、条項3に記載の触媒。
[条項5]
前記金属シリサイドがケイ化モリブデンを含む、条項3に記載の触媒。
[条項6]
前記基層がシリコンを含む、条項1から5のいずれかに記載の触媒。
[条項7]
前記基層が二酸化シリコンを含む、条項6に記載の触媒。
[条項8]
前記第1の層が元素モリブデン及び/又は炭化モリブデンを含む、条項1に記載の触媒。
[条項9]
(i)金属酸化物、金属シリサイド、及び/又は炭素を含む中間層を基層上に設ける工程と、
(ii)遷移金属を含む第1の層を設ける工程と、を含む触媒を調製する方法。
[条項10]
前記中間層がジルコニウム及び/又はモリブデンを含む、条項9に記載の方法。
[条項11]
前記中間層が二酸化ジルコニウム及び/又はケイ化モリブデンを含む、条項10に記載の方法。
[条項12]
前記第1の層及び前記中間層のうちの少なくとも一方が、スパッタリング、化学蒸着、又は任意の他の適切な方法によって形成される、条項9から11のいずれか一項に記載の方法。
[条項13]
(i)条項1から12のいずれか一項に記載の触媒の表面上に炭素を堆積させる工程と、
(ii)前記触媒上にグラフェン層を形成する工程と、を含むグラフェンを合成する方法。
[条項14]
炭素源が炭素質ガスとして又は炭素の流れとして提供される、条項13に記載の方法。
[条項15]
炭素層が非晶質炭素層である、条項13又は14に記載の方法。
[条項16]
触媒層が前記炭素層の上方及び/又は下方に設けられる、条項13又は15に記載の方法。
[条項17]
前記炭素が化学蒸着以外のプロセスによって堆積される、条項13から16のいずれかに記載の方法。
[条項18]
前記触媒の表面に堆積された前記炭素層を加熱してグラフェンを形成する、条項13から17のいずれかに記載の方法。
[条項19]
前記加熱が600℃から1200℃の範囲のアニーリング温度で行われる、条項18に記載の方法。
[条項20]
前記加熱が、遷移金属炭化物触媒を生成するための600℃から800℃の範囲の温度の第1のアニール工程を含む、条項18及び19に記載の方法。
[条項21]
前記加熱が、前記炭素をグラフェンに変換するための800℃から1200℃の範囲、好ましくは900℃から1100℃の範囲の温度の第2のアニール工程を含む、条項18又は19に記載の方法。
[条項22]
前記炭素層及び触媒層の上にキャッピング層を設け、その後に前記キャッピング層の下に前記グラフェン層を形成する中間工程を含む、条項13に記載の方法。
[条項23]
前記キャッピング層が、モリブデン、アルミニウム、ルテニウム及びモリブデン、モリブデン及びホウ素、ジルコニウム及びホウ素、イットリウム及びホウ素、又はランタン及びホウ素のうちの少なくとも1つを含む、条項22に記載の方法。
[条項24]
前記キャッピング層が、ホウ化ジルコニウム、ホウ化モリブデン、ホウ化イットリウム、ケイ化モリブデン、ケイ化イットリウム、二酸化ジルコニウム、モリブデン酸化物、イットリウム酸化物、ダイヤモンド状炭素、ニオブ酸化物、窒化炭素、窒化シリコン、炭化モリブデン、炭化ジルコニウム、炭化イットリウム、炭化シリコン、窒化ジルコニウム、又はアルミニウム酸化物を含む、条項22又は23に記載の方法。
[条項25]
前記炭素層が1nmから1000nmの範囲、好ましくは10nmから600nmの範囲の厚さを有する、条項13から24のいずれか一項に記載の方法。
[条項26]
触媒層が5nmから1000nm、好ましくは20nmから800nmの範囲の厚さを有する、条項13から25のいずれか一項に記載の方法。
[条項27]
前記触媒作用がCuである場合、前記触媒層の厚さが、100nmから1000nm、より好ましくは400nmから900nmの範囲にある、条項26に記載の方法。
[条項28]
得られた層スタックが、非晶質炭素と、グラフェンと、Mo2Cと、SiO2及びc‐Siと、任意選択的に条項23及び24で言及したキャッピング層とを含む、条項13から27のいずれか一項に記載の方法。
[条項29]
前記方法がさらに、前記触媒表面から前記グラフェン層を除去することを含む、条項13に記載の方法。
[条項30]
条項1から8のいずれか一項に記載の触媒の前記グラフェンの合成における使用。
[条項31]
前記グラフェンが多層グラフェンである、条項30に記載の触媒の使用。
[条項32]
非晶質炭素、グラフェン、遷移金属の炭化物、SiO2及びc‐Siの層を含む、多層ペリクルスタック。
[条項33]
前記遷移金属が、Mo、W、Pt、Cu及びNiから選択される、条項32に記載の多層ペリクルスタック。
[条項34]
キャッピング層をさらに含む、条項32又は33に記載の多層ペリクルスタック。
[条項35]
前記キャッピング層が、モリブデン、アルミニウム、ルテニウム及びモリブデン、モリブデン及びホウ素、ジルコニウム及びホウ素、イットリウム及びホウ素、又はランタン及びホウ素のうちの少なくとも1つ、例えばホウ化ジルコニウム、ホウ化モリブデン、ホウ化イットリウム、ケイ化モリブデン、ケイ化イットリウム、二酸化ジルコニウム、モリブデン酸化物、イットリウム酸化物、ダイヤモンド状炭素、ニオブ酸化物、窒化炭素、窒化シリコン、炭化モリブデン、炭化ジルコニウム、炭化イットリウム、炭化シリコン、窒化ジルコニウム、又はアルミニウム酸化物を含む、条項34に記載の多層ペリクルスタック。
[条項36]
前記グラフェンの層が前記キャッピング層の下方にある、条項34又は35に記載の多層ペリクルスタック。
[条項37]
条項13から29のいずれか一項に記載の方法に従って生成されたグラフェンを含むペリクル。
[条項38]
キャッピング層とペリクルコアとを備え、好ましくは前記キャッピング層が前記ペリクルコアを実質的に覆う、条項37に記載のペリクル。
[条項39]
前記キャッピング層が、モリブデン、アルミニウム、ルテニウム及びモリブデン、モリブデン及びホウ素、ジルコニウム及びホウ素、イットリウム及びホウ素、又はランタン及びホウ素のうちの少なくとも1つ、例えばホウ化ジルコニウム、ホウ化モリブデン、ホウ化イットリウム、ケイ化モリブデン、ケイ化イットリウム、二酸化ジルコニウム、モリブデン酸化物、イットリウム酸化物、ダイヤモンド状炭素、ニオブ酸化物、窒化炭素、窒化シリコン、炭化モリブデン、炭化ジルコニウム、炭化イットリウム、炭化シリコン、窒化ジルコニウム、又はアルミニウム酸化物を含む、条項38に記載のペリクル。
[条項40]
前記キャッピング層が、ルテニウム、モリブデン、ホウ素、イットリウム、ランタン、ホウ素、ジルコニウム、炭素、ニオブ、シリコン、アルミニウム、窒素、又は酸素のうちの1つ以上を含む、条項38に記載のペリクル。
[条項41]
前記キャッピング層が、ルテニウム、アルミニウム、ルテニウム及びモリブデン、モリブデン及びホウ素、ジルコニウム及びホウ素、イットリウム及びホウ素、並びにランタン及びホウ素のうちの1つ以上から選択される、条項40に記載のペリクル。
[条項42]
前記キャッピング層が、炭化ホウ素、炭化シリコン及び/又は窒化ホウ素を含む、条項38から41のいずれかに記載のペリクル。
[条項43]
前記キャッピング層が窒化ホウ素を含む、条項42に記載のペリクル。
[条項44]
前記窒化ホウ素が、六方晶系結晶構造、立方晶系結晶構造を有する、又は非晶質である、条項43に記載のペリクル。
[条項45]
前記ペリクルコアが、条項13から29のいずれか一項に記載の方法に従って生成されたグラフェンを含む、条項37から44のいずれか一項に記載のペリクル。
[条項46]
条項37から45のいずれか一項に記載のペリクルを備えたリソグラフィ装置。
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b