(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】デプスフィルター
(51)【国際特許分類】
B01D 39/16 20060101AFI20231017BHJP
D04H 3/007 20120101ALI20231017BHJP
D04H 3/073 20120101ALI20231017BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20231017BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20231017BHJP
B32B 27/02 20060101ALI20231017BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20231017BHJP
D04H 1/4282 20120101ALI20231017BHJP
【FI】
B01D39/16 A
B01D39/16 D
B01D39/16 E
D04H3/007
D04H3/073
D04H3/16
B32B5/26
B32B27/02
B32B27/32
D04H1/4282
(21)【出願番号】P 2021509448
(86)(22)【出願日】2020-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2020013004
(87)【国際公開番号】W WO2020196515
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2019064342
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507416827
【氏名又は名称】JNCフィルター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】峯尾 良太
(72)【発明者】
【氏名】西原 尚人
(72)【発明者】
【氏名】山口 修
(72)【発明者】
【氏名】可成 一気
【審査官】本間 友孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-126721(JP,A)
【文献】特開2015-097979(JP,A)
【文献】特開2000-279727(JP,A)
【文献】国際公開第2018/021426(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 39/00-41/04
D04H 1/00-18/04
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、濾過層と、表皮層とをこの順に有するデプスフィルターであって、
前記基材層及び前記表皮層は、平均繊維径が
343μmから500μmである繊維から構成される不織布が巻回され、熱融着されてなる層であり、
前記濾過層は、濾過層のみに含まれる不織布とネットとを少なくとも含む積層体が二重以上に巻回された層であり、
前記基材層を構成する不織布の平均繊維径及び前記表皮層を構成する不織布の平均繊維径は、前記濾過層のみに含まれる不織布の平均繊維径よりも大きい、デプスフィルター。
【請求項2】
前記濾過層のみに含まれる不織布が、スルーエア不織布及びメルトブロー不織布からなる群から選ばれる少なくとも1種である、
請求項1に記載のデプスフィルター。
【請求項3】
前記濾過層のみに含まれる不織布が、0.1~200μmの範囲の平均繊維径を有するスルーエア不織布である、
請求項1又は2に記載のデプスフィルター。
【請求項4】
前記基材層を構成する不織布及び前記表皮層を構成する不織布が、ポリオレフィン系繊維の不織布を1種以上含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載のデプスフィルター。
【請求項5】
前記ポリオレフィン系繊維の不織布が、メルトブロー不織布又はスルーエア不織布である、
請求項4に記載のデプスフィルター。
【請求項6】
前記ネットは、1~5mmの範囲の目合いであり、50~300μmの範囲の平均繊維径を有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載のデプスフィルター。
【請求項7】
前記濾過層のみに含まれる不織布は、不織布中の繊維の交点で繊維同士が融着及び/又は接着している、
請求項1~6のいずれか1項に記載のデプスフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子を含む流体を濾過するためのデプスフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
微粒子を含む流体として、スラリーや粉体を含むゲル状流動体がある。スラリーの具体例として、リチウム二次電池材料のスラリーが公知である。リチウム二次電池材料のスラリーにおいては、濾過後の乾燥時間の短縮や揮発した液体の凝縮量を減らすこと等を目的として、高濃度化が進んでいる。
【0003】
従来、このようなスラリーから固形分を濾過し、精製するために、フィルターが用いられている。しかしながら、スラリーは高濃度になるほどその粘度が上昇し、スラリーに含まれる粉体同士の相互作用が強まるため、フィルターによる濾過は困難になる。例えば、水用のカートリッジフィルターをスラリーの濾過に用いると、スラリーに含まれる粉体がフィルターの平均孔径より小さくても、フィルターを通過するときに粉体粒子の凝集(ブリッジ)が生じてみかけ粒径が増大し、目詰まりを起こすことが知られている。これをラッシュ現象という。
【0004】
特許文献1は、粘性流体の濾過において、差圧によって濾過精度が変化する、フィルター寿命が短くなるといった問題を解消するとともに、脈圧や高差圧が生じても柔らかいゲル状固形物を捕捉しうるフィルターを提案している。特許文献1の発明は、フィルターの主濾過層において、熱融着処理して空隙率50~80%とした第一の主濾過層と、熱融着処理していない空隙率80%以上の第二の主濾過層とを有し、第二の主濾過不織布は、空隙率が第一の主濾過不織布の1.2倍以上となるように構成するものである。
【0005】
また形態保持性がよく、濾過精度と濾過ライフとのバランスに優れた高精度濾過フィルターを得るために、少なくとも2層の不織布が積層されており、上層側の不織布の充填率を0.3~0.8とし、下層側の不織布の充填率を0.01~0.25としたフィルター用不織布が提案されている(特許文献2)。特許文献2の発明の目的は、サブミクロン粒子等の微小粒子を高精度で濾過することである。特許文献2の発明は、フィルターの下層側に充填率の低い不織布層を配置することによって、不織布層とサポート材との接触面に微小な空間を保持し、またクッション材としても作用させて、フィルターの利用効率と形態保持性を向上させるものである。
【0006】
さらに、特許文献3の発明は、粉体粒子の凝集(ブリッジ)が発生しにくく、濾過差圧が生じるまでの時間の長い、すなわち濾過ライフの長いフィルターを提供することを課題とする。特許文献3では、基材層と濾過層と表皮層とを有するフィルターにおける濾過層を、少なくともスルーエア不織布とネットとを積層した積層体が多重に巻回され、かつ圧着されていない層とし、また、基材層及び表皮層を構成する不織布の平均細孔径が、濾過層を構成するスルーエア不織布の平均細孔径よりも大きくなるようにしたものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2010-137121号公報
【文献】特開2000-218113号公報
【文献】特開2015-97979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のとおり、フィルターについて様々な改良が行われてきたが、高濃度・高粘度のスラリーに対して十分な濾過精度を有し、長時間の濾過を可能とするフィルターは未だ得られていない。特に、リチウム二次電池材料のスラリーにおいては、高濃度化・高粘度化が進む一方で、このようなスラリーには粗大粒子が含まれているのが現状である。そこで、高粘度のスラリー中の粗大粒子を除去しつつ、かつ、微粒子を確実に通過させるフィルターが求められている。リチウム二次電池材料のスラリーにおいて、有用な微粒子の粒径はおよそ数μm~50μmであることが多い。
この状況に鑑み、本発明は、高濃度・高粘度の粉体微粒子を含む流体に対しても濾過精度がよく、長時間の濾過を可能とするための耐圧性能にも優れたフィルターを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明者らは上記課題に取り組む中で、高粘度のスラリーがフィルターを通過する際にフィルターに大きな負荷がかかるため、フィルターにはこの負荷に耐えうる耐圧性能が必要であること、さらに、高濃度スラリーの濾過ではラッシュ現象が多発し、目詰まりが生じやすくなっていることを見出し、これらを主な着眼点としてフィルターの改良に取り組んだ。そして、フィルターの基材層及び表皮層として、従来よりも平均繊維径が大きな繊維で構成される不織布を採用することによって、フィルターの耐圧性が向上することを見出した。一般に、繊維径の大きな繊維を用いた不織布は、細孔径も大きくなるため、濾過精度が損なわれる傾向にあると考えられている。しかしながら本発明では、特定値以上の平均繊維径を有する繊維を用いることによって、高濃度かつ高粘度スラリーの濾過に際し、表皮層が効果的に粗大粒子を捕捉することで表面閉塞を抑制し、また、基材層の繊維と濾過層の繊維とから形成される細孔形状が良好な通液性を確保できる。さらに、表皮層と濾過層の両方が全体として濾過機能を有する構造となるため、分級性能ないし濾過精度を維持できる。さらに、適度に不織布間が融着しているため、耐圧性に優れ、濾過ライフの長いデプスフィルターが得られることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
すなわち本発明は以下の構成を有する。
[1]基材層と、濾過層と、表皮層とをこの順に有するデプスフィルターであって、
前記基材層及び前記表皮層は、平均繊維径が150μm以上である繊維から構成される不織布が巻回され、熱融着されてなる層であり、
前記濾過層は、濾過層のみに含まれる不織布とネットとを少なくとも含む積層体が二重以上に巻回された層であり、
前記基材層を構成する不織布の平均繊維径及び前記表皮層を構成する不織布の平均繊維径は、前記濾過層のみに含まれる不織布の平均繊維径よりも大きい、デプスフィルター。
[2]前記濾過層のみに含まれる不織布が、スルーエア不織布及びメルトブロー不織布からなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]に記載のデプスフィルター。
[3]前記濾過層のみに含まれる不織布が、0.1~200μmの範囲の平均繊維径を有するスルーエア不織布である、[1]又は[2]に記載のデプスフィルター。
[4]前記基材層を構成する不織布及び前記表皮層を構成する不織布が、ポリオレフィン系繊維の不織布を1種以上含む[1]~[3]のいずれか1項に記載のデプスフィルター。
[5]前記ポリオレフィン系繊維の不織布が、ポリオレフィン系繊維のメルトブロー不織布又はスルーエア不織布である、[4]に記載のデプスフィルター。
[6]前記ネットは、1~5mmの範囲の目合いであり、50~300μmの範囲の平均繊維径を有する、[1]~[5]のいずれか1項に記載のデプスフィルター。
[7]前記濾過層のみに含まれる不織布は、不織布中の繊維の交点で繊維同士が融着及び/又は接着している、[1]~[6]のいずれか1項に記載のデプスフィルター。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高濃度・高粘度のスラリーに対しても、濾過精度、耐圧性能に優れ、また、粗大粒子を除去するとともに微粒子は通過させる分級性能に優れ、さらに目詰まりが生じ難いフィルターを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施例のデプスフィルターの断面である。
【
図2】本発明の比較例(比較例1)であるデプスフィルターの濾過ライフ評価結果である。
【
図3】本発明の実施例(実施例1)であるデプスフィルターの濾過ライフ評価結果である。
【
図4】本発明の実施例(実施例2)であるデプスフィルターの濾過ライフ評価結果である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のデプスフィルターは、基材層と、濾過層と、表皮層とをこの順に有するデプスフィルターであって、基材層及び表皮層は、平均繊維径が150μm以上である繊維から構成される不織布が巻回され、熱融着されてなる層であり、濾過層は、濾過層のみに含まれる不織布とネットとを少なくとも含む積層体が二重以上に巻回された層であり、前記基材層を構成する不織布の平均繊維径及び前記表皮層を構成する不織布の平均繊維径は、前記濾過層のみに含まれる不織布の平均繊維径よりも大きい、デプスフィルターである。
【0014】
本発明のデプスフィルターは、基材層及び表皮層が、平均繊維径が150μm以上である繊維から構成される不織布が巻回され、熱融着されてなる層であるという特徴を有する。特定の理論に拘束されるものではないが、この特徴によれば、表皮層が粗大粒子を捕捉する役割を果たしていること、また、基材層及び表皮層の不織布と、濾過層の不織布との組み合わせが、高濃度のスラリーの濾過に適した細孔形状となっていること、さらには、デプスフィルターにおいて、最適な流路が形成されていること、また、濾過層において、基材層用不織布と濾過層のみに含まれる不織布とが適度に融着していることによって、デプスフィルターの耐圧性が向上し、かつ、基材層用不織布としてより細繊度の不織布を採用する場合と比較して、濾過ライフの長い優良なフィルターが得られるものと考えられている。
【0015】
<濾過層を構成する不織布>
本発明のデプスフィルターの濾過層は、濾過層のみに含まれる不織布とネットとを少なくとも含み、基材層用不織布も含む積層体が、二重以上に巻回されて構成される。濾過層のみに用いられる不織布としては、所望の性能が得られる限り特に制限されないが、例えば、スルーエア不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布等を用いることができる。中でも、スルーエア不織布及びメルトブロー不織布からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。特に、嵩高く、不織布の厚み方向(濾過する流体の流れ方向)にも繊維配向が分布する点から、スルーエア不織布を用いることが好ましい。
【0016】
スルーエア不織布とは、熱風接着プロセスで得られた不織布をいう。熱風接着プロセスとは、オーブン中にコンベアベルト又はロータリードラムを備えて、ウェブを通過させた後、一方に吸引することで、接着効果を高め、厚さ方向に均一な不織布を得る方法であり、エアスルー方式とも称される。スルーエア不織布は、エアスルー不織布とも称される。スルーエア不織布は、一般に、捲縮を有する短繊維をカード機に通してウェブとし、得られたウェブを熱風処理し、短繊維同士の交絡点を熱融着させて得られる。スルーエア不織布を構成する短繊維としては、安定した性能を維持するために、短繊維の交点で短繊維同士が融着及び/又は接着していることが好ましい。このことから、短繊維として、熱融着性複合繊維が好ましく利用できる。
【0017】
熱融着性複合繊維は特に制限されないが、例えば、融点差を有する2種類以上の成分からなるものが使用できる。具体的には、高融点成分と低融点成分とからなる複合繊維が例示できる。複合繊維の高融点成分としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ナイロン6、ナイロン6,6、ポリ-L-乳酸などの熱可塑性樹脂が例示でき、複合繊維の低融点成分としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンなどのポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート共重合体、ポリ-DL-乳酸、プロピレン共重合体、ポリプロピレンなどの熱可塑性樹脂が例示できる。中でも、高融点成分と低融点成分とがポリプロピレン及びポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂から構成される、ポリオレフィン系繊維であることが好ましい。
【0018】
熱融着性複合繊維の高融点成分と低融点成分の融点差は、特に限定されないが、熱融着の加工温度幅を広くするためには、融点差が15℃以上であることが好ましく、30℃以上であることがより好ましい。また、複合の形態は特に限定されないが、同心鞘芯型、偏心鞘芯型、並列型、海島型、放射状型などの複合形態を採用することができる。特に嵩高性を持たせるためには偏心鞘芯型複合繊維が好適である。
【0019】
濾過層のみに含まれる不織布は、単一種類の繊維から構成される単繊不織布であってもよいし、異なる2種類以上の繊維を含んでなる混繊不織布であってもよい。混繊不織布である場合、混繊不織布に含まれる繊維の種類は、発明の効果が得られる限り2種類以上であればよく、3種類、4種類、それ以上でもよいが、2種類であることが好ましい。
【0020】
濾過層のみに含まれる不織布を構成する繊維として、平均繊維径が0.1~200μmの範囲である繊維を用いることができる。濾過液の性状や濾過の目的に応じて、用いる繊維の平均繊維径を適宜選択することが可能である。本発明のデプスフィルターでは、濾過層がスラリーに含まれる捕捉すべき粒子を捕捉する機能を実質的に担うと考えられているところ、平均繊維径をこの範囲とすることによって、回収したい微粒子は通過させる一方で、粗大粒子等の捕捉すべき粒子を確実に捕捉できると考えられている。
【0021】
濾過層のみに含まれる不織布の平均繊維径は、基材層及び表皮層を構成する不織布の平均繊維径よりも小さい(すなわち、基材層及び表皮層を構成する不織布の平均繊維径は、前記濾過層のみに含まれる不織布の平均繊維径よりも大きい)。具体的には例えば、濾過層のみに含まれる不織布として、平均繊維径が0.1~200μm、好ましくは1~180μm、特に好ましくは10~130μmであるものを用いることができる。
【0022】
濾過層のみに含まれる不織布の目付は、繊維の材質、繊維径との関係からある程度規定されるが、例えば、5~100g/m2のものを用いることができ、好ましくは、20~60g/m2のものであり、より好ましくは、25~55g/m2のものである。目付が25~55g/m2であれば、濾過層の厚みと濾過性能を調整するための選択範囲が広がるので、好ましい。
【0023】
また、濾過層には、前述の不織布に加えて、さらに別の種類の不織布が積層されていることも好ましい。具体的には例えば、平均繊維径が0.1~200μmである、スルーエア不織布、メルトブロー不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布等を用いることができる。中でも、スルーエア不織布又はメルトブロー不織布であって、他の濾過層用不織布と異なる平均細孔径や平均繊維径を有するものを用いることが好ましい。
【0024】
濾過層のみに含まれる不織布に用いられる熱融着性複合繊維は、本発明の効果を妨げない範囲で機能剤を含んでいてもよく、機能剤としては、抗菌剤、消臭剤、帯電防止剤、平滑剤、親水剤、撥水剤、酸化防止剤、耐候剤などを例示できる。また、熱融着性複合繊維は、その表面を繊維仕上げ剤で処理されていてもよく、これによって親水性や撥水性、制電制、表面平滑性、耐摩耗性などの機能を付与することができる。
【0025】
<ネット>
本発明のデプスフィルターの濾過層は、基材層用不織布に加えて、前述の1種類又は2種類以上の濾過層のみに含まれる不織布とネットとが二重以上に巻回されてなる。濾過層に用いられるネットは、デプスフィルターの捕集効率には影響しないが、巻回される不織布の間に間隙を作り出すとともに、濾過層の形態を保持し、耐圧性能を維持・向上させるために用いられる。そのため、ネットは、50~300μmの範囲の繊維径のモノフィラメントを用いることが好ましく、60~280μmの範囲の繊維径のモノフィラメントを用いることがより好ましい。さらに、ネットの目合いは1~5mm目とすることが好ましく、1~4mm目とすることがより好ましい。この範囲のネットを用いることで、捕集効率に影響を与えず、かつフィルターの強度が確保されるため、より濾過ライフの長いフィルターを得ることができる。
【0026】
ネットを構成するモノフィラメントは、特に限定はないが、熱可塑性樹脂から構成されていることが好ましく、例えば、単一構成繊維、複合繊維、混繊繊維が利用できる。モノフィラメントに使用できる熱可塑性樹脂は、溶融紡糸可能な熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、例えば、熱融着性複合繊維として例示した熱可塑性樹脂が使用できる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,12等を挙げることができ、なかでも、ポリプロピレン、ナイロン6又はナイロン6,6が特に好ましい。モノフィラメントには、これらの1種類の熱可塑性樹脂を用いても、2種類以上の熱可塑性樹脂の混合物を用いてもよい。また、モノフィラメントが複合繊維の場合、熱融着性複合繊維で例示したような熱可塑性樹脂の組み合わせを使用することで、熱処理によりモノフィラメント同士の交点を熱融着させることができるため、目ずれが生じないことから好ましい。
【0027】
<濾過層の構成>
本発明のデプスフィルターの濾過層は、基材層用不織布に加えて、上記の濾過層のみに含まれる不織布とネットとを少なくとも積層した積層体を二重以上に巻回して形成される。濾過層のみに含まれる不織布とネットの積層順は特に制限されないが、この不織布とネットを各1枚ずつ、すなわち、この不織布とネットとが1層ずつ交互になるように巻くことが好ましい。このように形成された濾過層は、不織布と不織布の間に目の粗いネットが挟み込まれた構造になり、不織布同士が密着することなく積層される。濾過層のみに含まれる不織布として、2種類以上の不織布を併用する場合には、まず1種類の不織布とネットとを積層して所定の長さまで巻回し、次いで、別の種類の不織布とネットとを積層して所定の長さまで巻回することができる。
【0028】
濾過層に用いる積層体は、全てが熱融着されていてもよいが、熱融着されていない部分を有していてもよい。熱融着されていない部分を有していると、不織布の嵩高さが保持される。なお、「熱融着されていない」とは、濾過層の少なくとも一部が、「熱融着によって一体的に硬化された形態」以外の形態である、という意味である。フィルターの形態保持性を高める等の目的で、濾過層の一部が熱融着されていてもよい。また、濾過層と基材層の間や、濾過層と表皮層の間が、熱圧着、熱融着ないし接着されていてもよい。
【0029】
また、必要に応じて、前述の不織布とネット以外にも、さらなる不織布やネット等が積層されていてもよい。例えば、不織布及びネットに加えて、目の粗いメルトブロー不織布を挿入して、3層構造の積層体を巻回し、濾過層の保形性や捕集効率を向上させることができる。濾過層にメルトブロー不織布を積層する場合、基材層や表皮層に用いるのと同じメルトブロー不織布を用いることが好ましい。
【0030】
捕集効率は、対数透過則から、流体が通過する濾過層の厚みによって制御されることが公知であり、濾過層の厚み(積層体の巻き数)は、求める捕集効率に応じて適宜選択することができる。濾過層の厚み(積層体の巻き数)が大きいほど、捕集効率は向上し、粒径の小さい粉体を捕集できる。
【0031】
<基材層用不織布>
本発明に用いる基材層用不織布は、平均繊維径が150μm以上であり、濾過層のみに含まれる不織布の平均繊維径よりも大きく、熱融着が可能で、熱融着後にデプスフィルターの基材層として必要な保形性を確保できれば特に制限されず、メルトブロー不織布、スルーエア不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布等を用いることができる。
【0032】
基材層用不織布としてメルトブロー不織布を用いる場合、メルトブロー不織布を構成する繊維の種類やその製造方法は特に限定されず、公知の繊維や製造方法を使用することができる。例えば、メルトブロー不織布は、熱可塑性樹脂を溶融押出し、メルトブロー紡糸口金から紡出し、さらに高温高速の気体によって極細繊維流としてブロー紡糸し、捕集装置で極細繊維をウェブとして捕集し、得られたウェブを熱処理し、極細繊維同士を熱融着させることで製造できる。メルトブロー紡糸で用いる高温高速の気体は、通常、空気、窒素ガス等の不活性気体が使用される。気体の温度は200~500℃、圧力は0.1~6.5kgf/cm2の範囲が一般に用いられる。
【0033】
基材層用不織布として用いるメルトブロー不織布の平均繊維径は、濾過液の性状や濾過の目的に応じて適宜選択することが可能であるが、濾過層のみに含まれる不織布の平均繊維径よりも大きいものとする。具体的には例えば、平均繊維径が150~1000μmであることが好ましく、150~700μmであることがより好ましく、150~500μmであることが最も好ましい。平均繊維径が150μm以上であれば、高濃度かつ高粘度スラリーの濾過に際しても、表面閉塞を抑制しつつ、通液性も良好であり、メルトブロー不織布を構成する繊維の力学強度が高く、繊維の単糸切れや繊維層の破れが生じにくくなる。また、メルトブロー不織布を構成する繊維の平均繊維径が500μm以下であれば、基材層不織布と濾過層不織布とで形成される細孔形状が、高濃度スラリーに対しても良好な通液性を与え、かつ耐圧性も得られるため好ましい。また、基材層用不織布の平均繊維径は、ネットの繊維径よりも小さいことが好ましい。また、基材層不織布と濾過層不織布とが適度に融着していると、耐圧性能が向上するため好ましい。
【0034】
基材層用不織布としてスルーエア不織布を用いる場合、スルーエア不織布を構成する繊維の種類やその製造方法は、所定の平均繊維径を有し、本発明の効果が得られる限り特に限定されず、公知の繊維や製造方法を使用することができる。スルーエア不織布を用いる場合、好ましい平均繊維径の具体的な範囲は、メルトブロー不織布を用いる場合と同じである。
【0035】
基材層用不織布の目付は、繊維の材質や繊維径との関係である程度規定されるが、例えば、5~100g/m2の目付を用いることができ、30~60g/m2の目付を用いることがより好ましい。この範囲の目付であれば、フィルターの外径調整及び基材層の強度設計の調節の観点から好適である。
【0036】
基材層用の不織布は、単一構成繊維からなる不織布、複合繊維からなる不織布、混繊繊維からなる不織布等が利用できる。また、メルトブロー不織布に使用できる樹脂は、溶融紡糸可能な熱可塑性樹脂であれば特に限定されないが、例えば、熱融着性複合繊維で例示したような熱可塑性樹脂が使用でき、単一の熱可塑性樹脂を用いても、2種類以上の熱可塑性樹脂の混合物を用いてもよい。さらに、熱可塑性樹脂には、本発明の効果を妨げない範囲で各種機能剤を含んでいてもよい。具体的には、抗菌剤、消臭剤、親水化剤、撥水化剤、界面活性剤などを含んでもよい。また、メルトブロー不織布は、その効果を妨げない範囲で機能付与のために二次加工を施されていてもよい。二次加工として具体的には、親水化や疎水化のコーティング処理、メルトブロー不織布を構成する極細繊維の表面に特定の官能基を導入する化学処理、滅菌処理などが例示できる。
【0037】
具体的に、基材層用不織布に用いる繊維としては、例えば、ポリエチレン(低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン)、ポリプロピレン(プロピレンを主成分とするプロピレン共重合体、結晶性ポリプロピレン)等のポリオレフィン系樹脂からなるポリオレフィン系繊維、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂からなるポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6,12等のポリアミド系樹脂からなるポリアミド系繊維が挙げられる。
【0038】
基材層は主にフィルターの強度を確保するための層であり、メルトブロー不織布が積層され、熱融着により一体化された層であることが好ましい。基材層の厚みや巻き数は、使用するメルトブロー不織布に応じて適切に設定されるが、フィルターの強度が確保され、かつ一定の濾過性能が得られれば特に制限されない。
【0039】
<表皮層>
表皮層はフィルターの最も外側(濾過液の上流側)に位置する層であり、特に大粒径の凝集物や夾雑物が濾過層内に侵入しないようにブロックするほか、濾過層を保護し、フィルター形態を保持することを主な目的とする層である。
【0040】
表皮層は平均繊維径が150μm以上である繊維から構成される不織布が巻回され、熱融着されてなる層である。表皮層に用いる不織布は、平均繊維径が150μm以上であり、かつ熱融着可能な繊維であれば、本発明の効果を生じる限り特に制限されない。材質も特に制限されず、平均繊維径、材質ともに、基材層用不織布で例示したのと同様のものが使用できる。表皮層用不織布は、基材層用不織布と同一でも異なっていてもよいが、基材層用不織布と同じ不織布を用いることが好ましい。具体的には例えば、表皮層用不織布及び基材層用不織布として、同じポリオレフィン系繊維のメルトブロー不織布又はスルーエア不織布を用いることができる。
【0041】
表皮層の巻き数や厚みは特に制限されないが、巻き数や厚みが大きくなると、濾過液が濾過層に達する以前に表皮層内でブリッジを形成するという不具合が生じることがあるので、なるべく薄い表皮層とすることが好ましい。例えば、メルトブロー不織布を1~5回、好ましくは1~2回巻回して、熱融着して形成することが、ブリッジの形成を低減できる点から好ましい。
【0042】
<デプスフィルターの製造方法>
本発明のデプスフィルターは、基材層用不織布、濾過層用不織布及びネット、表皮層用不織布の順に積層しながら巻回することで製造できる。具体的には、例えば、基材層用不織布であるメルトブロー不織布をまず熱融着させながら円柱状の鉄棒に巻き上げて、コアとなる基材層を形成する。続いて、濾過層用不織布であるスルーエア不織布及びネットを順に挿入し、加熱することなく巻き上げて濾過層を形成する。最後に、表皮層用不織布であるメルトブロー不織布を1~2回巻回して、熱融着させることで、デプスフィルターを形成する。
【0043】
上記方法において基材層を形成する温度は、巻き取り部分(円柱状の鉄棒)において基材層用不織布が溶融し、熱融着される温度であればよい。また製造ラインの速度は特に制限されないが、濾過層の形成時は、不織布にかかるテンションは10N以下であることが好ましく、テンションを掛けずに巻き上げることが好ましい。
【0044】
デプスフィルターの径や厚みは、目的とする性能や濾過液の性状に応じて適宜設定でき、特に制限されるものではないが、例えば、リチウム二次電池材料の製造工程におけるスラリー濾過に用いられるデプスフィルターである場合、内径が23~45mm程度、外径が60~80mm程度であるデプスフィルターとすることができる。このようなデプスフィルターは、例えば、基材層用不織布を0.2~20m程度、濾過層用不織布及びネットの積層体を0.2~8m程度、さらに表皮層を0.2~7m程度巻き取ることで製造することができる。
【0045】
上記のように製造されるフィルターは、適切な大きさに切断し、両端にエンドキャップを貼付して円筒型フィルターとして好適に用いられる。
また、上記の製造方法は概要のみであり、上記の工程以外に必要に応じて、熱処理、冷却、薬剤処理、成型、洗浄等の公知の工程を実施することができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はそれらによって制限されるものではない。
【0047】
実施例中に示した物性値の測定方法や定義は次のとおりである。
1)平均繊維径の測定方法
電子顕微鏡で撮影したフィルターの断面より、1本当たりの繊維の長さ方向と直角方向の長さ(直径)を100本計測し、算術平均値を平均繊維径とした。この計算は、Scion Corporation社の画像処理ソフト「Scion Image」(商品名)を使用して行った。
2)目付の測定方法
250mm×250mmに切断した不織布の重量を測定し、単位面積当たりの重量(g/m2)を求め、これを目付とした。
【0048】
[実施例1]
(材料)
表皮層および基材層用不織布:目付けが47g/m2であり、平均繊維径が343μmの結晶性プロピレン(融点165℃)を主成分とするメルトブロー不織布を用いた。
濾過層用不織布:結晶性ポリプロピレン(融点165℃;芯)/高密度ポリエチレン(融点135℃;鞘)の偏心鞘芯型複合繊維(平均繊維径31μm)からなる、目付が30g/m2であり、平均細孔径が46μmであるスルーエア不織布を用いた。なお、平均細孔径は、スルーエア不織布を4枚重ねて測定した値である。
ネット:ポリプロピレンモノフィラメント(平均繊維径250μm)からなる、目合いが2.0mm目であるネットを用いた。
(フィルターの製造方法)
中芯(鉄棒)を予め150℃に加熱し、150℃で加熱を続けながら、この中芯に基材層用不織布を7m分、巻取った。続いて、濾過層用不織布とネットの挿入を開始した。濾過層用不織布及びネットの挿入長さは2mとし、基材層用不織布とともに巻き取った。このとき、最初の1mはヒーター出力7.8kW、150℃で加熱することで熱融着させた。残り1mはヒーター出力を0kWとし、加熱せず、熱融着させずに巻取り、濾過層を形成した。続いて、ヒーター出力7.8kWで加熱し、表皮層として基材層用メルトブロー不織布を熱融着させながら1m巻取り、円筒型のデプスフィルターを製造した。
【0049】
[実施例2]
(材料)
表皮層および基材層用不織布:目付けが47g/m2であり、平均繊維径が182μmの結晶性プロピレン(融点165℃)を主成分とするメルトブロー不織布を用いた。
濾過層用不織布:結晶性ポリプロピレン(融点165℃;芯)/高密度ポリエチレン(融点135℃;鞘)の偏心鞘芯型複合繊維(平均繊維径31μm)からなる、目付が30g/m2であり、平均細孔径が46μmであるスルーエア不織布を用いた。なお、平均細孔径は、スルーエア不織布を4枚重ねて測定した値である。
ネット:ポリプロピレンモノフィラメント(平均繊維径250μm)からなる、目合いが2.0mm目であるネットを用いた。
(フィルターの製造方法)
中芯(鉄棒)を予め150℃に加熱し、150℃で加熱を続けながら、この中芯に基材層用不織布を6.5m分、巻取った。続いて、濾過層用不織布とネットの挿入を開始した。濾過層用不織布及びネットの挿入長さは2mとし、基材層用メルトブロー不織布とともに巻き取った。このとき、最初の1mはヒーター出力7.8kW、150℃で加熱することで熱融着させた。残り1mはヒーター出力を0kWとし、加熱せず、熱融着させずに巻取り、濾過層を形成した。続いて、ヒーター出力7.8kWで加熱し、表皮層として基材層用メルトブロー不織布を熱融着させながら1m巻取り、円筒型のデプスフィルターを製造した。
【0050】
[比較例1]
(材料)
表皮層および基材層用不織布:目付50g/m2、平均繊維径107μmのプロピレンを主成分とするメルトブロー不織布を用いた。具体的には、プロピレン共重合体(融点135℃)と結晶性ポリプロピレン(融点165℃)との混繊比率が1:1からなる混繊メルトブロー不織布を用いた。平均繊維径は、混繊された不織布における平均繊維径である。
濾過層用不織布:ポリプロピレン/ポリエチレンの偏心鞘芯型複合繊維(平均繊維径31μm)からなる、目付が30g/m2であり、平均細孔径が46μmであるスルーエア不織布を用いた。なお、平均細孔径は、スルーエア不織布を4枚重ねて測定した値である。
ネット:ポリプロピレンモノフィラメント(平均繊維径250μm)からなる、目合いが2.0mm目であるネットを用いた。
(製造方法)
実施例1、2の基材層不織布に代えて、上記の基材層不織布を用いた以外は、実施例1と同じ方法で、円筒形のデプスフィルターを製造した。
【0051】
<補集効率>
実施例1、2及び比較例1のデプスフィルターについて、下記の試験粉体及び方法に従って初期捕集性能として捕集効率を測定した。
試験粉体はJIS Z 8901 試験用粉体に記載の7種を使用した。
JIS7種粉体を速度0.3g/minで水中に添加した試験流体を30L/minの流量でフィルターに通し、表皮層から基材層へと試験流体を流し、フィルター前後の粒子数を測定した(参考文献:ユーザーのためのフィルターガイドブック、日本液体清澄化技術工業会)。
粒子数はパーティクルセンサー(KS-63 リオン株式会社製)を用い、パーティクルカウンター(KL-11 リオン株式会社製)を使用して測定した。
捕集効率は以下の定義式によって求めた。
捕集効率(%)=(1-フィルター通過後の粒径xμmの粒子数/フィルター通過前の粒径xμmの粒子数)×100
捕集効率の測定結果を表1に示す。
【0052】
【0053】
表1に示されるとおり、実施例1のフィルターは100μm以上の粒子を100%捕集し、かつ30μmの粒子の捕集効率は30%未満であった(すなわち、半数以上通過させた)。実施例2のフィルターは100μm以上の粒子を100%捕集し、かつ30μmの粒子の捕集効率は50%未満であった(すなわち、半数以上通過させた)。一方、比較例1のフィルターは100μm以上の粒子を100%捕集し、30μmの粒子の捕集効率は57.2%であった(すなわち、半数以上捕集した)。50μmの粒子の捕集効率においても、実施例1は71.4%、実施例2は89.2%であるのに対して、比較例1は91.2%と高い値を示した。この結果は、実施例1、2のフィルターは、除去すべき粗大粒子を確実に捕集し、また比較例1のフィルターよりも、通過させるべき小粒子を確実に通過させることが可能であること、すなわち目詰まりが生じにくく、分級性能に優れることを示している。
【0054】
<耐圧性能>
実施例1、2及び比較例1のデプスフィルターついて、ラップフィルムを全面に巻きつけて覆い、フィルター表面を密閉することで、耐圧試験用サンプルとした。
このフィルターをハウジングに取り付け、ポンプにより水を送液し、流路内を水で満たした。次いで、ポンプの流量を上げることによって、系内の圧力を0.1MPaから0.02MPaずつ上げて1分間保持し、フィルターの変形を目視確認することによって、フィルターが変形する限界の圧力を測定した。
耐圧性能試験の結果を表2に示す。
【0055】
【0056】
<濾過ライフ>
実施例1、2及び比較例1のデプスフィルターについて、下記の粉体及び方法に従って、累積粉体添加量に対するフィルター前後の差圧変化を測定した。
試験粉体はJIS Z 8901 試験用粉体に記載の7種を使用した。
循環水量30L/minの水中に速度0.3g/minで前記試験粉体を添加した試験流体をフィルターに通液し、累積粉体添加量に対するフィルター前後の圧力差変化を追跡した(参考文献:ユーザーのためのフィルターガイドブック、日本液体清澄化技術工業会)。結果を
図2~4に示す。
【0057】
(考察)
実施例1、2のフィルターは、濾過時において耐圧性能が高いことがわかった。一方で、比較例1のフィルターは耐圧テストにおいて、より低圧でフィルターが潰れることがわかった。これは、実施例1、2のフィルターでは、基材層が太くて丈夫な繊維からなる不織布を含むのに対して、比較例1のフィルターは基材層に太い繊維を含まないことに起因すると考えられている。耐圧性能が高いことによって、より高粘度のスラリーを長時間濾過することが可能となる。
さらに、濾過ライフ試験の結果から、実施例1、2は濾過時においてフィルターの圧力上昇が緩やかであるため、フィルターを長期間使用可能であり、かつスラリーの通液量を増やすことが出来る。一方で、比較例1はスラリーを通液するにつれ急激に圧力が上昇した。その結果、スラリーの通液量が少なかった。ゆえに、実施例1、2のフィルターは、従来品である比較例1と比べて、濾過ライフに優れたフィルターであることがわかった。
また、実施例1、2のフィルターは、100μm相当の微粒子は除去し、50μm以下の所望の粒子の多くを通過させることができるため、比較例1のフィルターよりも目詰まりが生じにくく、分級性能が高いことが確認された。
これらの結果から、本願発明に係る実施例1、2のデプスフィルターは、濾過精度、濾過ライフおよび耐圧性能に優れることがわかった。
【0058】
図1に本発明の実施例のデプスフィルターの断面を示す。
図1のデプスフィルターにおいて、基材層1は、メルトブロー不織布が巻回されてなる層である。濾過層2は、スルーエア不織布と、メルトブロー不織布と、ネットとが重ねられて巻回されてなる層である。表皮層3は、メルトブロー不織布が巻回されてなる層である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のデプスフィルターは、様々な粒径を有するスラリーを濾過するにあたり、表皮層および基材層において、平均繊維径が150μm以上の太い繊維を含む不織布を配置しているため、耐圧性能が高い。さらに、本発明のデプスフィルターは、低濃度~高濃度(10ppm~70%)の微粒子(粉体)を含む懸濁液、スラリー、ゲル状流体から凝集物や夾雑物を除去し、粒径が一定以下の微粒子を得るために用いる濾過フィルターとして好適に用いられ、かつ濾過ライフが長いため濾過対象物についてより多く通液を可能とさせる。本発明のデプスフィルターは、リチウム二次電池の製造過程におけるスラリー濾過用フィルター、研磨剤スラリー、塗料用スラリー、顔料分散液、フィラーを含有する種々の流体、例えば、封止材、接着剤、フィルム用組成物およびコーティング剤を含む液体ないし流体を濾過するための工業用フィルターとして好適に用いられる。
【符号の説明】
【0060】
1 基材層
2 濾過層
3 表皮層