(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】無機多孔質担体、及びこれを用いた核酸の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 31/26 20060101AFI20231017BHJP
B01J 32/00 20060101ALI20231017BHJP
B01J 35/10 20060101ALI20231017BHJP
C07H 21/00 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
B01J31/26 M
B01J32/00
B01J35/10 301G
C07H21/00
(21)【出願番号】P 2021511254
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2020008325
(87)【国際公開番号】W WO2020202953
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】P 2019067997
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(72)【発明者】
【氏名】原 秀作
(72)【発明者】
【氏名】北原 真樹
(72)【発明者】
【氏名】原 孝志
(72)【発明者】
【氏名】有村 孝
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108176387(CN,A)
【文献】特開2011-088843(JP,A)
【文献】国際公開第2013/062105(WO,A1)
【文献】特表2006-502856(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 ー 38/74
C07H 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるリンカーを有し、
下記無機多孔質体は、Survival Bone Rate(SBR)の値が5.0%以上である、無機多孔質担体。
【化1】
[式中、*を付された結合は、無機多孔質体のシラノール基の酸素原子への結合を表す。
nは、1、2又は3の整数を表す。
Rは、それぞれ独立して、アルコキシ基及びフッ素原子からなる群から選ばれる置換基を有してもよい炭素数が3~10のアルキル基;アルキル基、アルコキシ基及びフッ素原子からなる群から選ばれる置換基を有してもよいフェニル基;ヒドロキシル基;又は、炭素数が1~4のアルコキシ基を表す。
Lは、単結合、炭素数が1~20のアルキレン基、又は、炭素数2~20のアルキレン基であって、当該アルキレン基を構成する少なくとも1つの-CH
2-CH
2-基に、-O-、-NH-、-NH-CO-及び-NH-CO-NH-からなる群から選ばれる何れかの基Qが挿入されている基:-CH
2-Q-CH
2-を含む基を表す。ただし、基Qと結合しているメチレン基の炭素原子は、さらに別の基Qと同時に結合することはない。]
【請求項2】
下記一般式(2)で表されるリンカーを有し、
下記無機多孔質体は、Survival Bone Rate(SBR)の値が5.0%以上である、無機多孔質担体。
【化2】
[式中、*を付された結合は、無機多孔質体のシラノール基の酸素原子への結合を表す。
nは、1、2又は3の整数を表す。
Rは、それぞれ独立して、アルコキシ基及びフッ素原子からなる群から選ばれる置換基を有してもよい炭素数が3~10のアルキル基;アルキル基、アルコキシ基及びフッ素原子からなる群から選ばれる置換基を有してもよいフェニル基;ヒドロキシル基;又は、炭素数が1~4のアルコキシ基を表す。
Lは、単結合、炭素数が1~20のアルキレン基、又は、炭素数2~20のアルキレン基であって、当該アルキレン基を構成する少なくとも1つの-CH
2-CH
2-基に、-O-、-NH-、-NH-CO-及び-NH-CO-NH-からなる群から選ばれる何れかの基Qが挿入されている基:-CH
2-Q-CH
2-を含む基を表す。ただし、基Qと結合しているメチレン基の炭素原子は、さらに別の基Qと同時に結合することはない。
R
bは、反応性の基が保護あるいは脱保護されたヌクレオシド又はヌクレオチドを表す。
L
1は、R
bの1級又は2級のヒドロキシル基の酸素原子と結合している2価の基を表す。]
【請求項3】
前記無機多孔質体が、前記無機多孔質体の連続スライス像約4μm×2.5μm×1μmの解析領域の範囲内において、全細孔の長さの総和に対する全貫通孔の長さの総和の割合が97%以上である、請求項1又は2に記載の無機多孔質担体。
【請求項4】
前記無機多孔質体は、前記無機多孔質体の連続スライス像の厚み約1.0μmに対して、定量解析ソフトTRI/3D-BON-FCS64にて、解析パラメータをPathL.Max=6.0xPathL、検索パス数=50000、出力パス数=50000として、解析したときに得られるOutput I ratio on From(OIR)の値が80%以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の無機多孔質担体。
【請求項5】
前記無機多孔質体の細孔径の最頻値(モード径)が0.04μm以上1μm以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の無機多孔質担体。
【請求項6】
前記無機多孔質体の体積当たり比表面積が、0.1m
2/mL以上100m
2/mL以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の無機多孔質担体。
【請求項7】
前記無機多孔質体の体積当たり細孔容積が、0.05mL/mL以上0.6mL/mL以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載の無機多孔質担体。
【請求項8】
前記無機多孔質体の気孔率が、50%以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載の無機多孔質担体。
【請求項9】
前記リンカーの担持密度が、前記無機多孔質体の質量当たり比表面積に対して、0.1μmol/m
2以上5.0μmol/m
2以下である、請求項2~8のいずれか一項に記載の無機多孔質担体。
【請求項10】
前記無機多孔質体の粒子径(メジアン径)が、1μm以上1000μm以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の無機多孔質担体。
【請求項11】
前記無機多孔質体がシリカ、シリカゲル、ゼオライト又はガラスである、請求項1~10のいずれか一項に記載の無機多孔質担体。
【請求項12】
前記一般式(2)中のL
1が、スクシニルリンカー又はユニバーサルリンカーである、請求項2~11のいずれか一項に記載の無機多孔質担体。
【請求項13】
請求項2における一般式(2)中のR
bが、反応性の基としてヒドロキシル基が保護されたヌクレオシド又はヌクレオチドを表す無機多孔質担体を用い、
前記のヌクレオシドの5’位のヒドロキシル基の保護基を脱保護する工程(A)、
前記工程(A)において生成したヌクレオシドの5’位のヒドロキシル基と、第2のヌクレオシド塩基を有するアミダイト化合物とを縮合反応させて、ホスファイトを生成する工程(B)、
前記工程(B)において生成したホスファイトを酸化させて、ヌクレオチドを生成する工程(C)、及び、
前記工程(C)において生成したヌクレオチドの5’位のヒドロキシル基の保護基を脱保護する工程(D)、
を含む、核酸の製造方法。
【請求項14】
前記工程(D)において生成した生成物と、次に導入予定のヌクレオシド塩基を有するアミダイト化合物とをさらに縮合反応させて、ホスファイトを生成する工程(B’)、
前記工程(B’)において生成したホスファイトを酸化させて、オリゴヌクレオチドを生成する工程(C’)、及び、
前記工程(C’)において生成したオリゴヌクレオチド鎖末端の5’位のヒドロキシル基の保護基を脱保護する工程(D’)、
を含む、請求項13に記載の核酸の製造方法。
【請求項15】
前記の工程(B’)、工程(C’)及び工程(D’)からなる一連の工程を、さらにm回(mは、1以上の整数を表す。)繰り返して、m個のアミダイト化合物を反応させた後、伸長した核酸を切り出す工程(E)を含む、請求項14に記載の核酸の製造方法。
【請求項16】
請求項1~12のいずれか一項に記載の無機多孔質担体のホスホロアミダイト法による核酸の製造における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、日本国特許出願2019-067997号(2019年3月29日出願)に基づくパリ条約上の優先権および利益を主張するものであり、ここに引用することによって、上記出願に記載された内容の全体が本明細書中に組み込まれるものとする。
【0002】
本発明は、無機多孔質担体、及びこれを用いた核酸の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
核酸の化学合成法としては、ホスホロアミダイト法による固相合成法が広く用いられている。この方法では、まず、シランカップリング剤等を用いて無機多孔質体上にアミノ基等の官能基を導入し、前記官能基に核酸の3’末端となるヌクレオシドを結合させる。その後、前記ヌクレオシドを起点として、固相担体上で核酸伸長反応を行う。
【0004】
固相合成法では、合成する核酸の鎖長が長くなると、合成効率が急速に低下し、多量の副生成物(目的鎖長より短鎖長の物質)が混入する結果になりがちである。これは、多孔質担体の細孔内で核酸分子が伸長するにつれ、細孔が閉塞され、伸長反応の阻害や副反応等が生じているためと考えられる。
核酸分子の伸長による細孔の閉塞を防ぐには、無機多孔質体の表面に膨潤性の高分子を被覆することが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2009/0005536号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、合成する核酸が長くなるほど、細孔の閉塞が起こりやすくなるため、核酸合成の純度は低下しやすい。特に、40mer以上の長鎖核酸を合成する場合、従来の固相担体では、目的鎖長よりも短鎖長の核酸が生成しやすく、長鎖核酸の純度が問題となる。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、核酸の製造において純度をより高められる無機多孔質担体、及びこれを用いた核酸の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を採用する。
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を採用する。
すなわち、本発明の第1の態様は、下記一般式(1)で表されるリンカーを有し、下記無機多孔質体は、Survival Bone Rate(SBR)の値が5.0%以上であることを特徴とする、無機多孔質担体である。
【0009】
【化1】
[式中、*を付された結合は、無機多孔質体のシラノール基の酸素原子への結合を表す。
nは、1、2又は3の整数を表す。
Rは、それぞれ独立して、アルコキシ基及びフッ素原子からなる群から選ばれる置換基を有してもよい炭素数が3~10のアルキル基;アルキル基、アルコキシ基及びフッ素原子からなる群から選ばれる置換基を有してもよいフェニル基;ヒドロキシル基;又は、炭素数が1~4のアルコキシ基を表す。
Lは、単結合、炭素数が1~20のアルキレン基、又は、炭素数2~20のアルキレン基であって、当該アルキレン基を構成する少なくとも1つの-CH
2-CH
2-基に、-O-、-NH-、-NH-CO-及び-NH-CO-NH-からなる群から選ばれる何れかの基Qが挿入されている基:-CH
2-Q-CH
2-を含む基を表す。ただし、基Qと結合しているメチレン基の炭素原子は、さらに別の基Qと同時に結合することはない。]
【0010】
本発明の第2の態様は、下記一般式(2)で表されるリンカーを有し、下記無機多孔質体は、Survival Bone Rate(SBR)の値が5.0%以上であることを特徴とする、無機多孔質担体(以下この無機多孔質担体を「固相担体」と記すこともある。)である。
【0011】
【化2】
[式中、*を付された結合は、無機多孔質体のシラノール基の酸素原子への結合を表す。
nは、1、2又は3の整数を表す。
Rは、それぞれ独立して、アルコキシ基及びフッ素原子からなる群から選ばれる置換基を有してもよい炭素数が3~10のアルキル基;アルキル基、アルコキシ基及びフッ素原子からなる群から選ばれる置換基を有してもよいフェニル基;ヒドロキシル基;又は、炭素数が1~4のアルコキシ基を表す。
Lは、単結合、炭素数が1~20のアルキレン基、又は、炭素数2~20のアルキレン基であって、当該アルキレン基を構成する少なくとも1つの-CH
2-CH
2-基に、-O-、-NH-、-NH-CO-及び-NH-CO-NH-からなる群から選ばれる何れかの基Qが挿入されている基:-CH
2-Q-CH
2-を含む基を表す。ただし、基Qと結合しているメチレン基の炭素原子は、さらに別の基Qと同時に結合することはない。
R
bは、反応性の基が保護あるいは脱保護されたヌクレオシド又はヌクレオチドを表す。
L
1は、R
bの1級又は2級のヒドロキシル基の酸素原子と結合している2価の基を表す。]
【0012】
本発明の第2の態様における、ある1実施態様によれば、前記無機多孔質体は、前記無機多孔質体の連続スライス像約4μm×2.5μm×1μmの解析領域の範囲内において、全細孔の長さの総和に対する全貫通孔の長さの総和の割合は、97%以上であってもよい。
本発明の第2の態様における、ある1実施態様によれば、前記無機多孔質体は、前記無機多孔質体の連続スライス像の厚み約1.0μmに対して、定量解析ソフトTRI/3D-BON-FCS64にて、解析パラメータをPathL.Max=6.0xPathL、検索パス数=50000、出力パス数=50000として、解析したときに得られるOutput I ratio on From(OIR)の値が80%以上であってもよい。
本発明の第2の態様における、ある1実施態様によれば、前記無機多孔質体の細孔径の最頻値(モード径)は、0.04μm以上1μm以下であってもよい。
本発明の第2の態様における、ある1実施態様によれば、前記無機多孔質体の体積当たり比表面積は、0.1m2/mL以上100m2/mL以下であってもよい。
本発明の第2の態様における、ある1実施態様によれば、前記無機多孔質体の体積当たり細孔容積は、0.05mL/mL以上0.6mL/mL以下であってもよい。
本発明の第2の態様における、ある1実施態様によれば、前記無機多孔質体の気孔率が、50%以上であってもよい。
本発明の第2の態様における、ある1実施態様によれば、前記リンカーの担持密度が、前記無機多孔質体の質量当たり比表面積に対して、0.1μmol/m2以上5.0μmol/m2以下であってもよい。
本発明の第2の態様における、ある1実施態様によれば、前記無機多孔質体の粒子径(メジアン径)は、1μm以上1000μm以下であってもよい。
本発明の第2の態様における、ある1実施態様によれば、前記無機多孔質体は、シリカ、シリカゲル、ゼオライト又はガラスであってもよい。
本発明の第2の態様における、ある1実施態様によれば、前記一般式(2)中のL1が、スクシニルリンカー又はユニバーサルリンカーであってもよい。
【0013】
本発明の第3の態様は、前記一般式(2)中のRbが、反応性の基としてヒドロキシル基が保護されたヌクレオシド又はヌクレオチドを表す無機多孔質担体を用い、前記のヌクレオシドの5’位のヒドロキシル基の保護基を脱保護する工程(A)、前記工程(A)において生成したヌクレオシドの5’位のヒドロキシル基と、第2のヌクレオシド塩基を有するアミダイト化合物とを縮合反応させて、ホスファイトを生成する工程(B)、前記工程(B)において生成したホスファイトを酸化させて、ヌクレオチドを生成する工程(C)、及び、前記工程(C)において生成したヌクレオチドの5’位のヒドロキシル基の保護基を脱保護する工程(D)を含むことを特徴とする、核酸の製造方法である。
【0014】
本発明の第3の態様における、ある1実施態様によれば、核酸の製造方法は、前記工程(D)において生成した生成物と、次に導入予定のヌクレオシド塩基を有するアミダイト化合物とをさらに縮合反応させて、ホスファイトを生成する工程(B’)、
前記工程(B’)において生成したホスファイトを酸化させて、オリゴヌクレオチドを生成する工程(C’)、及び、
前記工程(C’)において生成したオリゴヌクレオチド鎖末端の5’位のヒドロキシル基の保護基を脱保護する工程(D’)
を含んでいてもよい。
本発明の第3の態様における、ある1実施態様によれば、核酸の製造方法は、前記の工程(B’)、工程(C’)及び工程(D’)からなる一連の工程を、さらにm回(mは、1以上の整数を表す。)繰り返して、m個のアミダイト化合物を反応させた後、伸長した核酸を切り出す工程(E)を含んでいてもよい。
【0015】
本発明の第4の態様は、前記第1の態様に係る無機多孔質担体、又は前記第2の態様に係る固相担体、のホスホロアミダイト法による核酸の製造における使用である。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る無機多孔質担体によれば、核酸の製造において純度をより高められる。
本発明に係る核酸の製造方法によれば、核酸の製造において純度をより高められ、特に長鎖核酸を高純度で得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】定量解析ソフトによる、細孔の短径(Thickness)、長径(Width)、分岐点間距離(Length)の定義を説明する図である。
【
図2】定量解析ソフトによる、末端細孔の定義を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書中、ある数値範囲について、「AからB」または「A~B]という場合には、特に断らない限り、「A以上から(~)B以下」の範囲を意味する。
【0019】
(無機多孔質担体)
本発明の第1の態様である無機多孔質担体について説明する。
【0020】
<無機多孔質体>
本実施形態の無機多孔質担体を構成する無機多孔質体は、Survival Bone Rate(SBR)の値が5.0%以上である。
【0021】
かかる無機多孔質体は、典型的には、シランカップリング剤を担持することができる、シラノール基を有するものである。かかる無機多孔質体として典型的には、シリカ、シリカゲル、ゼオライト、ガラス、石英が例示され、好ましくはシリカ、シリカゲル、ゼオライト又はガラスである。これらのものは、市販のものを使用するか、あるいは以下のような合成方法で調製したものを使用してもよい。
【0022】
[シラノール基を含む無機多孔質体の製造方法]
シラノール基を含む無機多孔質体の製造方法としては、乾式法と湿式法が例示される。前者の具体例としては、燃焼法やアーク法が挙げられ、後者の具体例としては、沈降法、ゾルゲル法、水熱合成法等の合成方法が挙げられる(参考文献:TOSOH Research & Technology Review Vol. 45 (2001).)。
かかる無機多孔質体の調製は、例えば、ケイ酸塩、アルコキシシラン、クロロシラン類等を原料とし、溶媒やテンプレートを用いて前記のような合成方法で調製される。
【0023】
かかる無機多孔質体の調製は、例えば、1.シリカを析出させた後、シリカの骨格中に含まれる溶媒を除去する方法、2.シリカ以外の、例えばアルミニウムやホウ素などの異種金属を混ぜて固体を析出させた後、シリカ成分とシリカ以外の成分とに相分離させ、シリカ以外の成分を除去する方法、3.アンモニウム塩や高分子をテンプレート剤として混ぜてシリカを析出させた後、テンプレート剤を除去する方法、又は、4.析出させたシリカを凝集させる方法、のいずれかを用いて行うことができる。これら2つ以上の方法を組み合わせて用いてもよい。
前記の1および3の、溶媒又はテンプレート剤を除去する方法としては、乾燥、超臨界抽出、焼成等を用いることができる。
前記の4.の方法で凝集させるシリカとしては、シリカ、シリカゲル、ゼオライト、ガラス、石英、またはそれらの2種以上を用いることができる。
【0024】
前記ゼオライトとは、その骨格を構成する元素としてケイ素及び酸素を含むものであり、実質的にケイ素と酸素から骨格が構成される結晶性シリカであってもよいし、骨格を構成する元素としてさらに他の元素を含む結晶性メタロシリケート等であってもよい。
メタロシリケート等の場合、ケイ素及び酸素以外に存在し得る元素としては、例えば、Be、B、Al、Ti、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Sb、La、Hf、又はBi等から選ばれるいずれか1種が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上が含まれていてもよい。また、これらのケイ素及び酸素以外に存在し得る元素に対するケイ素の原子比は、好ましくは5以上であり、さらに好ましくは500以上である。
【0025】
前記ゼオライトは、ケイ素化合物、水及び第四級アンモニウム水酸化物を含む混合物を用いた水熱合成反応により合成することができる。
前記ケイ素化合物としては、非晶質シリカ;珪酸ナトリウム、珪酸カリウム等の珪酸アルカリ;及び、オルトケイ酸テトラメチル、オルトケイ酸テトラエチル、オルトケイ酸テトラプロピル、オルトケイ酸テトラブチル等のオルトケイ酸テトラアルキルが挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
前記第四級アンモニウム水酸化物としては、水酸化テトラアルキルアンモニウムが好ましい。水酸化テトラアルキルアンモニウムとしては、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化n-プロピルトリメチルアンモニウム、水酸化テトラ-n-プロピルアンモニウム、水酸化テトラ-n-ブチルアンモニウム、水酸化トリエチルメチルアンモニウム、水酸化トリ-n-プロピルメチルアンモニウム、水酸化トリ-n-ブチルメチルアンモニウム等、またはそれらの2種以上が挙げられる。
【0026】
水熱合成に付する前記混合物中のケイ素に対する水のモル比は、5~100が好ましく、より好ましくは10~60である。
水熱合成に付する前記混合物中のケイ素に対する第四級アンモニウムイオンのモル比は、0.1~0.6が好ましく、より好ましくは0.2~0.5である。
水熱合成に付する前記混合物中のケイ素に対する水酸化物イオンのモル比は、通常0.1~0.6、好ましくは0.2~0.5に調整される。該混合物中のケイ素に対する水酸化物イオンのモル比が大きいほど、得られるゼオライトの1次粒子径は小さくなる傾向にある。
【0027】
前記混合物中のケイ素に対するカリウムのモル比は、0~0.1に調整することが好ましく、0.04~0.1に調整することがより好ましい。該混合物中のケイ素に対するカリウムのモル比は、例えば、ケイ素化合物の使用量を調節することや、各原料、特に第四級アンモニウム水酸化物に不純物として含まれ得るカリウム化合物の含有量を制御することにより、適宜調整することができる。
【0028】
前記混合物が水熱合成反応に付される際、水熱合成における温度は、80~160℃が好ましく、100~140℃がより好ましい。また、水熱合成時間は、1~200時間が好ましく、12~72時間がより好ましい。水熱合成における圧力は、絶対圧で、0.10~1.0MPaの範囲が好ましく、より好ましくは0.11~0.50MPaの範囲である。
水熱合成の方法は、特に限定されないが、例えば、前記混合物をオートクレーブ等の反応容器に封入し、密閉状態で前記温度条件下、撹拌することにより行われる。
【0029】
前記の無機多孔質体の調製における1.~4.のいずれか、又はそれら2つ以上を組み合わせた方法により得られた無機多孔質体は、その形態として粒子が好ましく、球状に成形されていてもよいし、塊状又は破砕状でもよいが、これらを担体として使用する際、核酸合成カラムへの充填性の観点から、球状又は破砕状が好ましい。成形法としては、特に限定されないが、噴霧乾燥法やエマルジョン法を用いることができる。
【0030】
前記Survival Bone Rate(SBR)の値は、集束イオンビーム搭載走査型電子顕微鏡(FIB-SEM)により取得した無機多孔質体の連続スライス像を、3次元定量解析ソフトにて解析することにより求めることができる。
【0031】
≪連続スライス像の取得≫
無機多孔質体の連続スライス像は、FIB-SEMにより取得することができる。FIB-SEMによる連続スライス像の取得は、公知の方法により行うことができる。具体例としては、例えば、以下のような方法が挙げられる。
まず、無機多孔質体の内部にエポキシ樹脂等の硬化性樹脂を含浸させて無機多孔質体の空隙部を埋めた後、前記樹脂を硬化させて樹脂包埋試料を作製する。次に、前記樹脂包埋試料を切削し、切削面をPt-Pd蒸着やカーボン蒸着等で加工し、FIB-SEM観察用試料を作製する。前記FIB-SEM観察用試料を、FIB加工で所定の間隔でスライスし、断面SEM像を得ることを繰り返して、所定の枚数の断面SEM像を取得する。このようにして、無機多孔質体の連続スライス像を取得することができる。
前記FIB加工の間隔は、例えば厚さ5nmとすることができる。SEM観察の加速電圧は、例えば2.1kVとすることができる。FIB-SEMとしては、各社製品を特に制限なく用いることができるが、例えば、FEI社製のHELIOS600が挙げられる。
取得した連続スライス像は、適当な画像解析ソフト(例えば、visualization sciences Group製;Avizo ver.6.0)を用いて適宜位置補正を行ってもよい。
その後、定量解析ソフトを用いて、適宜トリミング処理及びノイズ処理を行った後、連続スライス像の2階調化処理を行い、無機担体部と空隙部とを識別して、2値化スライス像を取得する。定量解析ソフトとしては、例えば、TRI/3D-BON-FCS64が挙げられる。TRI/3D-BON-FCS64を用いる場合、トリミングは、例えば、トリミング機能にて、約4μm×2.5μm×1μm程度の大きさにトリミングすることができる。また、例えば、3D 3×3のメディアンフィルターを適用して細かなノイズ除去を行うことができる。さらに、Auto-LWの1画面処理ループ機能にて画像の2階調化を行い、多孔質層を構成する無機担体部と空隙部とを識別し、識別した無機担体部、空隙部それぞれについて、孤立構造部、孤立空隙部を除去するために、例えば、5voxel以下を削除してもよい。その後、空隙部を256諧調の白になるようにして、2値化連続スライス像を得ることができる。
【0032】
≪(a)SBR≫
無機多孔質体の連続スライス像を、適当な定量解析ソフトで解析することにより、Survival Bone Rate(SBR)の値を求めることができる。
SBRとは、一般的には、骨粗鬆症に対する残存骨梁比を示すパラメータであり、骨梁部を電気が流れる流路とみなして算出される値である。
本明細書において、「無機多孔質体のSBR」とは、無機多孔質体における細孔ネットワーク構造を、電気が流れる流路とみなして算出されるSBRを意味する。
【0033】
SBRは、例えば、定量解析ソフトであるTRI/3D-BON-FCS64を用いて連通孔解析(3D-VNET)を実行することにより求めることができる。TRI/3D-BON-FCS64を用いたSBRの算出は、以下のように行うことができる。
まず、連通孔計測で、NodeStrut中間ファイル出力を実行し、中間ファイルを作成する。このとき、対象データは2値化した空隙部とし、CTデータはトリミングした領域の外周1画素(6面の箱)とし、対象領域はCTデータをInvertしたもの(箱の中身部分)とする。次に、流路詳細解析にて、作成した中間ファイルを指定し、連続スライス像のZ方向1枚目を流れ始めの面「From」とし、最後の1枚を終わりの面「To」として流路解析を実行することにより、SBRを算出することができる。前記流路解析における体積抵抗率ρは1.0とする。同ソフトによる解析の具体的な方法としては、例えば、後述の実施例に記載の方法が挙げられる。
【0034】
SBRは、流路の流れ易さの指標となる値であり、SBRが大きいほど流れ易いネットワーク構造であることを示す。具体的には、連続スライス像の画像解析から得られた連通孔(複数の細孔が連通し一つの流路となっている部分)の断面積Sと長さLから内部抵抗を算出し、「From」-「To」間に電圧1Vを印加したとして、連通孔ごとの電流を求める。求められた電流の総和と印加電圧Vから解析領域内の細孔全体の等価抵抗が求まる。この等価抵抗が小さいほど流れ易いネットワーク構造であることを意味する。さらにいえば、細孔ネットワークの等価抵抗をRE、等価断面積をSE、From-To間の距離をLEとすると、RE=ρLE/SEと表現でき、等価抵抗は等価断面積が大きくなると小さくなる。SBRは、この等価断面積を基準となるFrom面の面積で除した値であり、入力面積に対して、どの程度の等価断面積を有しているか、すなわち、どの程度流れ易いネットワークであるかを示す指標となる。
【0035】
前記無機多孔質体は、SBRの値が5.0%以上であることを特徴としている。SBRの値は、6.0%以上であることが好ましい。SBRの上限値は、特に限定されないが、8.0%以下であることが好ましい。SBRの好ましい範囲の例としては、5.0%以上8.0%以下であり、より好ましくは6.0%以上8.0%以下である。
【0036】
≪他の条件≫
本実施形態の無機多孔質担体で用いる無機多孔質体は、無機多孔質体の連続スライス像約4μm×2.5μm×1μmの解析領域の範囲内において、全細孔の長さの総和に対する全貫通孔の長さの総和の割合が97%以上であることが好ましい。また、無機多孔質体の連続スライス像の約1μmの厚みに対して、定量解析ソフトTRI/3D-BON-FCS64にて、解析パラメータをPathL.Max=6.0xPathL、検索パス数=50000、出力パス数=50000として、解析したときに得られるOutput I ratio on From(OIR)の値が80%以上であることが好ましい。
【0037】
≪(b)全細孔の長さの総和に対する全貫通孔の長さの総和の割合≫
無機多孔質体の連続スライス像を、適当な定量解析ソフトで解析することにより、全細孔の長さの総和に対する全貫通孔の長さの総和の割合を求めることができる。
ここで、「全細孔の長さの総和」とは、無機多孔質体全体に存在する全細孔の長さの総和、又は定量解析ソフトで解析した解析領域に存在する全細孔の長さの総和を意味する。
「貫通孔」とは、末端が行き止まりでない細孔を意味する。「貫通孔の長さ」とは、1つの貫通孔の長さを意味し、「全貫通孔の長さの総和」とは、無機多孔質体全体に存在する全貫通孔の長さの総和、又は定量解析ソフトで解析した解析領域に存在する全貫通孔の長さの総和を意味する。
【0038】
定量解析ソフトによる解析は、例えば、以下のように行うことができる。
まず、前記のように取得した無機多孔質体の連続スライス像に対して、定量解析ソフトにより、適宜トリミング処理及びノイズ処理を行った後、連続スライス像の2階調化処理を行い、無機担体部と空隙部とを識別する。次に、識別された空隙部について、定量解析ソフト上で細線化処理を行い、3個以上のネットワーク又は幅の異なるネットワークの結合点を細孔の分岐点とする(
図1参照)。また、解析領域と非解析領域との境界と細孔との交点を解析領域端とする。前記分岐点間、解析領域端間及び分岐点から解析領域端の間(分岐点-解析領域端間)を1つの細孔とみなし、分岐点間、解析領域端間及び分岐点-解析領域端間の各距離を算出する。次に、末端が行き止まり(末端点)である細孔について、分岐点から末端点まで及び末端点から末端点の間を末端細孔と定義し、前記分岐点から末端点までの長さ及び末端点から末端点までの長さを末端細孔の長さとして算出する(
図2参照)。
これにより、全細孔の長さの総和は、前記(全分岐点間、全解析領域端間及び全分岐点-解析領域端間の距離の総和+全末端細孔の長さの総和)と定義できる。また、全細孔の長さの総和に対する全末端細孔の長さの総和の割合は、(全末端細孔の長さの総和/全細孔の長さの総和)と定義できる。したがって、全細孔の長さの総和に対する全貫通孔の長さの総和の割合は、(1-全細孔の長さの総和に対する全末端細孔の長さの総和の割合)として算出することができる。
【0039】
前記のような解析が可能な定量解析ソフトとしては、例えば、TRI/3D-BON-FCS64(ラトックシステムエンジニアリング製)が挙げられる。TRI/3D-BON-FCS64では、ソフトの解析機能である骨計測の海綿骨計測にて、MIL有効長r1=0.5、NdNd有効長r2=1.5、NdTm有効長r3=2.0として、連続スライス像の構造解析を行うことにより、全細孔の長さの総和に対する全末端細孔の長さの総和の割合を算出することができる。同ソフトによる解析の具体的な方法としては、例えば、後述の実施例に記載の方法が挙げられる。
【0040】
前記無機多孔質体は、無機多孔質体の連続スライス像約4μm×2.5μm×1μmの解析領域の範囲内において、全細孔の長さの総和に対する全貫通孔の長さの総和の割合が97%以上であることが好ましい。前記の割合が大きいことは、無機多孔質体における細孔の流路が途切れることが少ないことを意味する。前記の割合は、98%以上であることが好ましく、98.5%以上であることがより好ましく、99%以上であることがさらに好ましい。
【0041】
≪(c)OIR≫
前記のように取得した無機多孔質体の連続スライス像を、定量解析ソフトTRI/3D-BON-FCS64で解析することにより、Output I ratio on From(OIR)の値を求めることができる。
OIRは、無機多孔質体の細孔ネットワークを電気が流れる流路とみなし、連続スライス像のZ方向1枚目を流れ始めの面「From」とし、最後の1枚を終わりの面「To」として、「From」から「To」までどれだけの割合の電流が流れたかを表す値である。
【0042】
OIRは、例えば、定量解析ソフトであるTRI/3D-BON-FCS64を用いて連通孔解析(3D-VNET)を実行することにより求めることができる。TRI/3D-BON-FCS64を用いたOIRの算出は、以下のように行うことができる。
まず、上述したSBR算出における中間ファイル作成と同様の方法で作成した中間ファイルを用いて、連通孔全パス解析にて連続スライス像の厚み方向「FROM」~「TO」間のOIRを算出する。このとき解析パラメータは、PathL.Max=6.0xPathL、検索パス数=50000、出力パス数=50000とする。同ソフトによる解析の具体的な方法としては、例えば、後述の実施例に記載の方法が挙げられる。
【0043】
OIRは、Fromから入力された電流が3次元解析領域の横面に逃げず、どの程度To面まで流れたか、すなわち直線的な流れ易さを示す指標となる。OIRが大きいほど、流れ易いネットワーク構造であることを示す。
【0044】
前記無機多孔質体は、無機多孔質体の連続スライス像の厚み約1μmに対して、OIRの値が80%以上であることが好ましい。前記OIRの値は、85%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。
【0045】
前記無機多孔質体は、(a)SBRの値が5.0%以上であることに加えて、(b)無機多孔質体の連続スライス像約4μm×2.5μm×1μmの解析領域の範囲内において、全細孔の長さの総和に対する全貫通孔の長さの総和の割合が97%以上であることが好ましい。また、前記無機多孔質体は、(a)SBRの値が5.0%以上であることに加えて、(c)無機多孔質体の連続スライス像の厚み約1μmに対して、定量解析ソフトTRI/3D-BON-FCS64にて、解析パラメータをPathL.Max=6.0xPathL、検索パス数=50000、出力パス数=50000として、解析したときに得られるOutput I ratio on From(OIR)の値が80%以上であることが好ましい。中でも、前記無機多孔質体は、前記(a)及び(b)の条件を満たすことが好ましく、(a)~(c)の全ての条件を満たすことがより好ましい。
【0046】
前記無機多孔質体において、形状及び粒径等の他の特性は特に限定されず、通常、核酸固相合成に用いられる無機多孔質体と同等の特性を採用することができる。
【0047】
[水銀圧入法]
無機多孔質体の細孔径及び細孔容積は、以下のようにして求めることができる。
まず、試料の入った容器内を真空排気した上で、容器内に水銀を満たす。水銀は表面張力が高く、そのまま(常圧)では試料の表面の細孔に水銀は浸入しないが、水銀に圧力をかけ、徐々に昇圧していくと、径の大きい細孔から径の小さい細孔へと順に、徐々に細孔の中に水銀が浸入していく。圧力を連続的に増加させながら細孔への水銀圧入量を測定していくことにより、水銀に加えた圧力と水銀圧入量との関係から水銀圧入曲線が得られる。
【0048】
ここで、細孔の形状を円筒状と仮定し、水銀に加えられた圧力をP、その細孔径(細孔直径)をD、水銀の表面張力をσ、水銀と試料との接触角をθとすると、細孔径(細孔直径)は、次式(A)で表される。
【数1】
水銀の表面張力σは一般に、0.48~0.49N/mの値が用いられ、接触角θは130~140°の値が使用される。
【0049】
σ、θは定数であるから、式(A)より、水銀に加えられた圧力Pと細孔径Dとの関係が求められる。そのときの水銀浸入体積を測定することにより、細孔容積を導くことができる。すなわち、水銀に加えられた圧力Pと、水銀が浸入する細孔径Dとの間には相関があることから、得られた水銀圧入曲線に基づいて、試料の細孔径の大きさとその体積との関係を表す細孔分布曲線を得ることができる。
【0050】
尚、水銀圧入法による細孔径のおおよその測定限界は、下限が約0.004μm以上、上限が約200μm以下である。水銀圧入法による測定は、水銀ポロシメータ等の装置を用いて行うことができる。水銀ポロシメータの具体例としては、AutoPoreIV9520(Micromeritics社製)等が挙げられる。
【0051】
本実施形態における無機多孔質体は、水銀圧入法により測定される細孔分布において、細孔径の最頻値(モード径)が0.04μmから1μmであり、好ましくは0.04μmから0.5μmであり、より好ましくは0.04μmから0.3μmである。
モード径が、前記範囲の下限値以上であれば、核酸伸長反応の際、細孔内でのオリゴ核酸同士の立体障害が生じにくく、目的の鎖長まで安定に伸長反応が進みやすくなる。一方、前記範囲の上限値以下、すなわち1μm以下であれば、担体としてオリゴ核酸を得るための充分な表面積が確保されやすい。
モード径は、水銀圧入法により得られる細孔径分布(X軸を細孔径の値とし、Y軸を細孔容積を細孔径で微分した値としたグラフとする)において、ピークトップのX軸の値から求められる細孔径をいう。
【0052】
本実施形態における無機多孔質体の大きさは、特に限定されないが、カラム充填効率及びカラム充填時の送液速度等の観点から、レーザー回折法(散乱式)により測定される粒子径(メジアン径、以下同じ)が1~1000μmであることが好ましく、5~500μmであることがより好ましく、10~300μmであることがさらに好ましい。
【0053】
無機多孔質体の細孔容積は、特に限定されない。一般的には、カラム当たりの核酸の生成量を高めるために、核酸の鎖長に関わらず、体積当たりの細孔容積(mL/mL)は高い方が好ましい。体積当たり細孔容積は0.05~0.6mL/mLであることが好ましく、0.05~0.5mL/mLであることがより好ましい。
前記体積当たり細孔容積は、水銀圧入法により得られる嵩密度(g/mL)と、細孔径が0.04μmから1μmの範囲にある累積細孔容積(mL/g)との積により求められる。
【0054】
前記無機多孔質体の体積当たり比表面積は、特に限定されない。カラム当たりの核酸の生成量を高めるために、核酸の鎖長に関わらず、体積当たり比表面積は高い方が好ましい。体積当たり比表面積として具体的には、0.1~100m2/mLであることが好ましく、1~50m2/mLであることがより好ましく、3~20m2/mLであることがさらに好ましい。
体積当たり比表面積は、水銀圧入法により得られる嵩密度(g/mL)と、N2吸脱着等温線測定により得られる、質量当たり比表面積(m2/g)との積により求められる。なお、ここでの質量当たり比表面積は、αs-plot法といった手法により、αs=1.7~2.1の範囲の平均勾配から求められる値を用いる。
【0055】
無機多孔質体の気孔率は、特に限定されず、一般的には、カラム当たりの核酸の生成量を高めるために、核酸の鎖長に関わらず、高い方が好ましい。前記気孔率は、水銀圧入法により求められ、50%以上であることが好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。
ここでの気孔率は、水銀圧入法の測定範囲である細孔径0.004~200μmの範囲での細孔容積から算出する。すなわち、0.004μmから200μmの範囲にある累積細孔容積(mL/g)と嵩密度(g/mL)との積により求められる。
【0056】
本実施形態の無機多孔質担体は、下記一般式(1)で表されるリンカーを有する。
【0057】
【化3】
[式中、*を付された結合は、無機多孔質体のシラノール基の酸素原子への結合を表す。
nは、1、2又は3の整数を表す。
Rは、それぞれ独立して、アルコキシ基及びフッ素原子からなる群から選ばれる置換基を有してもよい炭素数が3~10のアルキル基;アルキル基、アルコキシ基及びフッ素原子からなる群から選ばれる置換基を有してもよいフェニル基;ヒドロキシル基又は炭素数が1~4のアルコキシ基を表す。
Lは、単結合、炭素数が1~20のアルキレン基、又は、炭素数2~20のアルキレン基であって、当該アルキレン基を構成する少なくとも1つの-CH
2-CH
2-基に、-O-、-NH-、-NH-CO-及び-NH-CO-NH-からなる群から選ばれる何れかの基Qが挿入されている基:-CH
2-Q-CH
2-を含む基を表す。ただし、基Qと結合しているメチレン基の炭素原子は、さらに別の基Qと同時に結合することはない。]
【0058】
前記式(1)中、Rにおけるアルキル基は、直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基又は環状アルキル基のいずれであってもよく、収率を高められやすいことから、分岐鎖状アルキル基であることが好ましい。Rにおけるアルキル基は、炭素数が3~10であり、炭素数が3~6であることが好ましく、炭素数が3又は4であることがより好ましい。
Rにおけるアルキル基としては、例えば、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基等の直鎖状アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、2-エチルヘキシル基、3,7-ジメチルオクチル基等の分岐鎖状アルキル基;及び、シクロプロピル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基が挙げられる。
【0059】
Rで表されるアルキル基に置換していてもよい置換基は、アルコキシ基、フッ素原子である。このアルコキシ基としては、炭素数が1~3のアルコキシ基が挙げられる。
【0060】
Rで表されるフェニル基に置換していてもよい置換基は、アルキル基、アルコキシ基、フッ素原子である。ここでのアルキル基としては、炭素数が1~5のアルキル基が挙げられる。ここでのアルコキシ基としては、炭素数が1~3のアルコキシ基が挙げられる。
【0061】
前記式(1)中のnが1である場合、複数のRは、相互に同一であってもよいし異なっていてもよく、合成上(例えば、簡便さ、効率さ)の点から、同一であることが好ましい。
【0062】
前記式(1)中、Rにおけるアルコキシ基は、炭素数が1~4であり、炭素数1~3のアルキコキシ基が好ましく、メトキシ基、又はエトキシ基がより好ましい。
【0063】
前記式(1)中、Lにおけるアルキレン基は、直鎖状アルキレン基、分岐鎖状アルキレン基のいずれであってもよく、収率を高められやすいことから、直鎖状アルキレン基であることが好ましい。Lにおけるアルキレン基は、炭素数が1~20であり、炭素数が1~10であることが好ましく、炭素数が1~6であることがより好ましい。
【0064】
また、Lにおけるアルキレン基は、炭素数2~20のアルキレン基であって、当該アルキレン基を構成する少なくとも1つの-CH2-CH2-基に、-O-、-NH-、-NH-CO-及び-NH-CO-NH-からなる群から選ばれる何れかの基Qが挿入されている基:-CH2-Q-CH2-を含む基を表すものでもよい。
【0065】
ただし、本実施形態において、前記一般式(1)で表されるリンカーは、基Qと結合しているメチレン基の炭素原子は、さらに別の基Qと同時に結合することはない。
【0066】
かかる無機多孔質担体としては、例えば、以下のような式(1-1)、(1-2)もしくは(1-3)で表されるリンカーの何れか、又はこれらから選ばれる複数の形態のものを包含するものが例示される。
【0067】
【0068】
前記の式(1-1)、(1-2)及び(1-3)中、*、R及びLは、前記式(1)中の*、R及びLについての説明と同様である。
【0069】
本実施形態の無機多孔質担体は、例えば、前記無機多孔質体を、下記一般式(3)で表されるシランカップリング剤で表面処理する方法により製造することができる。
【0070】
【化5】
[式中、nは、1、2又は3の整数を表す。
Rは、それぞれ独立して、アルコキシ基及びフッ素原子からなる群から選ばれる置換基を有してもよい炭素数が3~10のアルキル基;アルキル基、アルコキシ基及びフッ素原子からなる群から選ばれる置換基を有してもよいフェニル基;ヒドロキシル基;又は、炭素数が1~4のアルコキシ基を表す。
R
1は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を表す。Lは、単結合、炭素数が1~20のアルキレン基、又は、炭素数2~20のアルキレン基であって、当該アルキレン基を構成する少なくとも1つの-CH
2-CH
2-基に、-O-、-NH-、-NH-CO-及び-NH-CO-NH-からなる群から選ばれる何れかの基Qが挿入されている基:-CH
2-Q-CH
2-を含む基を表す。ただし、基Qと結合しているメチレン基の炭素原子は、さらに別の基Qと同時に結合することはない。]
【0071】
前記式(3)中、R及びLについての説明は、前記式(1)中のR及びLについての説明と同様である。
前記式(3)中、R1におけるアルキル基は、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基、又はエチル基がより好ましい。
【0072】
前記一般式(1)で表されるリンカーを有する無機多孔質担体の製造は、例えば、前記無機多孔質体と、特定のシランカップリング剤と、溶媒とを混合した後、溶媒を除去する方法で行われる。この場合、前記混合により、特定のシランカップリング剤が無機多孔質体の表面のシラノール基と共有結合して、一般式(1)で表されるリンカーを担持する無機多孔質担体が生成する。
【0073】
ここでの溶媒には、アセトニトリル、トルエン、アニソール、2-ヘプタノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、キシレン、メシチレン、ジクロロメタン、クロロベンゼン、水等、またはこれらの2種以上を用いることができ、これらの中でもトルエンが好ましい。
【0074】
前記の無機多孔質体及び溶媒は、シランカップリング剤同士の重合の抑制や、シランカップリング剤と無機多孔質体表面との反応促進の観点からは、脱水して用いることが好ましい。脱水方法は、特に限定されないが、例えば、無機多孔質体を減圧下で加熱する方法や、無機多孔質体を溶媒に分散させた後、常圧あるいは減圧下に溶媒を留去して共沸脱水する方法が挙げられる。
【0075】
無機多孔質体とシランカップリング剤と溶媒との前記混合の際、通常は反応促進のために溶媒の沸点近くまで加熱するが、これに限定されず、室温でもよいし、室温以下に冷却してもよい。
無機多孔質体とシランカップリング剤との反応は、通常、1~12時間程度で行うが、アミノ基を有するシランカップリング剤の場合、それ自身が反応を促進する触媒効果があるため、数分間程度で行ってもよい。
シランカップリング剤の添加量は、N2吸脱着測定により求められる、無機多孔質体の質量当たり比表面積に対して、通常、リンカーの担持密度が0.1~5.0μmol/m2になる量であり、好ましくは0.5~2.0μmol/m2になる量である。
シランカップリング剤との反応に使われなかったシラノール基は、所望であれば、トリメチルシリル基のような核酸合成に不活性な官能基でキャッピングしてもよい。
【0076】
このように、前記無機多孔質体を、特定のシランカップリング剤で表面処理することによって、アミノシリル基で修飾された無機多孔質担体を製造することができる。
【0077】
上記の一般式(3)のシランカップリング剤は、以下に示す反応経路(合成ルート1、合成ルート2、又は合成ルート3)により製造することができる。
【0078】
【0079】
合成ルート1(化合物1→化合物2→化合物3→化合物6の合成ルート)の説明:
例えば化合物1がトリクロロシランである場合、この化合物1に、Rに対応する有機リチウム化合物又は有機マグネシウム化合物を反応(求核置換反応)させて、化合物2を得る(Step1)。次いで、R1OH(例えばメタノール、エタノール、又はプロパノール等)を塩基の存在下で反応させるか、又はR1ONa等のアルコラートもしくは水(R1:水素)を反応させて、シラン化合物3を得る(Step2)。その後、末端オレフィンを有するアミン化合物又はハロゲン化合物である化合物4(例えば、アリルアミン、又は6-クロロ-1-ヘキセン)を、白金触媒の存在下でヒドロシリル化反応させて、シラン化合物6を合成することができる(Step3)。
あるいは、化合物1がアルコキシシラン(例えば、トリメトキシシラン、又はトリエトキシシラン等)である場合、この化合物1に、前記と同様の反応により、置換基(R)を求核置換反応によって導入し、その後、前記ヒドロシリル化反応によって,シラン化合物6を合成してもよい。又は、化合物1がアルコキシシラン(例えば、トリメトキシシラン、又はトリエトキシシラン等)である場合、この化合物1に、前記ヒドロシリル化反応を行い化合物5を得て、さらに、前記と同様の反応により、置換基(R)を求核置換反応によって導入してシラン化合物6を合成してもよい。
【0080】
合成ルート2(化合物1→化合物5→化合物7→化合物6)の説明:
例えば化合物1がトリクロロシランである場合、この化合物1を、白金触媒の存在下で、化合物4(Yはハロゲンを表す。mは1から18の整数を表す。)をヒドロシリル化反応させることにより、化合物5を得る。次いで、前記と同様の反応により、置換基(R)を求核置換反応によって導入して化合物7を得る。次いで、R1OH(例えばメタノール、エタノール、又はプロパノール等)を塩基の存在下で反応させるか、又はR1ONa等のアルコラートもしくは水(R1:水素)を反応させて、シラン化合物6(Lg:R1O基を表す)を得る。
【0081】
R1基(R:メトキシ基、エトキシ基、又はプロポキシ基等)の導入は、試薬としてメタノール、エタノール、又はプロパノール等を、化合物2(Lg:ハロゲン)又は化合物4(Lg:ハロゲン)を含む溶液に添加する方法、あるいは化合物2又は化合物6を、対応するアルコールもしくは対応するアルコールを含む溶液中に滴下する方法により行うことができる。
【0082】
合成ルート3(化合物6→シランカップリング剤の合成ルート)の説明:
上述の合成ルート1及び合成ルート2においては、官能基Y(アミノ基あるいはハロゲン原子)を有するシラン化合物6が得られる。
官能基Yがアミノ基である場合、シラン化合物6のアミノ基を、カルバモイル化あるいはアミド化あるいはウレイド化する方法を用いることにより、種々のシランカップリング剤を製造することができる。
官能基Yがハロゲン原子である場合、シラン化合物6に、アンモニアあるいは1級アミン化合物を反応させることにより、ハロゲン原子を脱離させてアミノ基もしくはイミノ基(-NH-)を導入するか、あるいはエーテル結合を導入することにより、種々のシランカップリング剤を製造することができる。
【0083】
上述した何れの反応においても、反応溶媒を用いることが好ましい。その反応溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、テトラヒドロフラン等、またはこれらの2種以上の有機溶媒が好ましい。
シラン化合物の精製には、通常、常圧あるいは減圧条件下での蒸留が用いられる。得られたシランカップリング剤の精製には、例えば、分液や蒸留、カラムクロマトグラフィーが用いられる。
【0084】
(核酸製造方法)
本実施形態の核酸の製造方法は、上述の無機多孔質担体を用い、公知の方法を適用して核酸を合成することができる。なかでもホスホロアミダイト法による核酸の製造が好適である。以下、ホスホロアミダイト法による核酸合成法について説明する。
【0085】
[固相担体の作製]
固相担体とは、上述の無機多孔質担体が有するアミノ基(-NH2)に、2価の基を介して、反応性の基が保護あるいは脱保護されたヌクレオシド、ヌクレオチド又はユニバーサルリンカーが結合したものをいう。
【0086】
本実施形態においては、下記一般式(2)で表されるリンカーを有し、下記無機多孔質体についてSurvival Bone Rate(SBR)の値が5.0%以上である無機多孔質担体を、固相担体として用いることができる。
【0087】
【化7】
[式中、*を付された結合は、無機多孔質体のシラノール基の酸素原子への結合を表す。
nは、1、2又は3の整数を表す。
Rは、それぞれ独立して、アルコキシ基及びフッ素原子からなる群から選ばれる置換基を有してもよい炭素数が3~10のアルキル基;アルキル基、アルコキシ基及びフッ素原子からなる群から選ばれる置換基を有してもよいフェニル基;ヒドロキシル基又は炭素数が1~4のアルコキシ基を表す。
Lは、単結合、炭素数が1~20のアルキレン基、又は、炭素数2~20のアルキレン基であって、当該アルキレン基を構成する少なくとも1つの-CH
2-CH
2-基に、-O-、-NH-、-NH-CO-及び-NH-CO-NH-からなる群から選ばれる何れかの基Qが挿入されている基:-CH
2-Q-CH
2-を含む基を表す。ただし、基Qと結合しているメチレン基の炭素原子は、さらに別の基Qと同時に結合することはない。
R
bは、反応性の基が保護あるいは脱保護されたヌクレオシド又はヌクレオチドを表す。
L
1は、R
bの1級又は2級のヒドロキシル基の酸素原子と結合している2価の基を表す。]
【0088】
前記式(2)中、R及びLについての説明は、前記式(1)中のR及びLについての説明と同様である。
【0089】
前記式(2)中、イミノ基(-NH-)と結合する2価の基L1としては、官能基としてスクシニル基を有するものが好ましい。
2価の基L1の典型的な例としては、スクシニルリンカー、ユニバーサルリンカー、又は前記式(2)中のイミノ基(-NH-)とユニバーサルリンカーとを連結する基と、ユニバーサルリンカーとから構成される連結基が例示される。
ユニバーサルリンカーとは、核酸合成の起点となるヌクレオチドのヒドロキシル基とホスファイトを形成する官能基(典型的には、ヒドロキシル基)と、前記式(1)で表されるリンカー末端のアミノ基と結合する能力を有する官能基とを有し、かつ、同一分子内に、合成された核酸を切り離す際の条件下で、リン酸のリン原子を求核攻撃する能力を有する隣接する保護された官能基(例えば、いずれも保護されたアミノ基、ヒドロキシル基、チオール基)を有する。
より詳しくは、2価の基L1としては、下記の式L10で表される連結基、又は式L11で表される連結基が例示される。
【0090】
【0091】
ここで、式L10及び式L11において、●を付した結合は、前記式(2)中のイミノ基(-NH-)への結合を表す。
#を付した結合は、前記式(2)中のRbの1級又は2級のヒドロキシル基の酸素原子との結合を表す。式L11において、Z1は、いずれも保護されたアミノ基、ヒドロキシル基又はチオール基を表す。Zに結合している酸素原子及びZ1は、互いに隣接(例えば、ビシナルに存在し、それぞれが結合しているZの炭素原子同士は、互いに直接結合している)している基を表す。
L12は、イミノ基(-NH-)とユニバーサルリンカーとを連結する基を表す(例えば、●-CO(CH2)2CO-&を表す。
&を付した結合は、Zとの結合を表す)。
【0092】
尚、ユニバーサルリンカーを用いた場合、合成したい核酸の3’末端がどのような種類のヌクレオシド又はヌクレオチドであっても、3’末端になるヌクレオシドホスホロアミダイドを通常の核酸自動合成において核酸を伸長する工程と同じように反応させて導入することができる。かかるユニバーサルリンカーとしては、例えば、下記の文献に記載の化合物が例示されるが、それらに限定されるものではない。
文献:A.P. Guzaev, and M. Manoharan, J AmChem Soc, 2003, 125, 2380-2381.
文献:R.K. Kumar, A.P. Guzaev, C. Rentel, and V.T.Ravikumar, Tetrahedron, 2006, 62, 4528.
【0093】
前記式(2)中、Rbは、核酸伸長反応の起点となるヌクレオシドの5’位のヒドロキシル基が、トリチル系保護基(例えば、4,4’-ジメトキシトリチル(DMTr)基等)により保護されたものが好ましい。
ユニバーサルリンカーを用いる場合も同様に、核酸伸長反応の起点となるヒドロキシル基が、トリチル系保護基(例えば、4,4’-ジメトキシトリチル(DMTr)基等)により保護されたものが好ましい。
【0094】
前記式(2)で表されるリンカーを有する固相担体の調製は、典型的には、前記一般式(1)で表されるリンカーを有する無機多孔質担体と、化合物(Rb-L10-W)とを縮合反応させて行われる。このL10は、前記の式L10で表される連結基を表す。Wは、反応性の官能基(例えば、ヒドロキシル基)を表す。
【0095】
ヌクレオシドリンカーを用いる場合、合成するRNAの配列に応じて、3’末端の塩基に対応するヌクレオシドリンカーを選択する。前記ヌクレオシドリンカーとしては、アミノ基(-NH2)と反応する官能基としてスクシニル基を有するヌクレオシドリンカーを挙げられる。
【0096】
スクシニル基を含むヌクレオシドリンカーを以下に例示する。
式中の*は、前記式(2)中のイミノ基(-NH-)への結合を表す。TBDMSは、tert-ブチルジメチルシリル基を意味する。Acは、アセチル基を意味する。
【0097】
【0098】
ここでの縮合反応は、前記無機多孔質担体と、前記化合物(Rb-L10-W)と、縮合剤と、適切な溶媒とを混合し、通常、室温で振とうするか、あるいは縮合反応促進のために昇温して行われる。この縮合反応は、振とうせずに静置し、撹拌しつつ行ってもよい。
【0099】
前記縮合反応の際に用いる縮合剤には、一般にアミド縮合に使用されているものであれば用いることができる。縮合剤として具体的には、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDAC)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート(HATU)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-ベンゾトリアゾリウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート(HBTU)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドテトラフルオロボラート(TATU)、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-ベンゾトリアゾリウム3-オキシドテトラフルオロボラート(TBTU)、(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデンアミノオキシ)ジメチルアミノモルホリノカルベニウムヘキサフルオロホスファート(COMU)、O-[(エトキシカルボニル)シアノメチレンアミノ]-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスファート(TOTU)等、またはこれらの2種以上が例示される。N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)や、N,N-ジイソプロピルエチルアミンなどの添加剤を加えてもよい。
【0100】
縮合反応後の固相担体は、溶媒を用いてろ過を行うことにより濾別する。ろ過用の溶媒としては、アセトニトリル等が挙げられる。未反応のアミノ基に対してはキャッピング処理を行う。キャッピング処理剤には、例えば無水酢酸(無水酢酸-テトラヒドロフラン溶液など)やフェノキシ酢酸無水物(フェノキシ酢酸無水物/N-メチルイミダゾール溶液など等)が用いられる。キャッピングの成否は、ニンヒドリン試験で行う。4,4’-ジメトキシトリチル(DMTr)基などの保護基を有するヌクレオシドリンカーやユニバーサルリンカーを用いた場合、反応したヌクレオシドの定量は、酸によるDMTr基の切断と吸光度測定によって行う。
【0101】
前記(Rb-L1)の担持量は、N2吸脱着測定により求められる、無機多孔質体の質量当たり比表面積に対して、通常、0.1~5.0μmol/m2になる量であり、好ましくは0.5~2.0μmol/m2になる量である。
【0102】
本実施形態の固相担体は、核酸(DNA、RNA)の固相合成用基材として好適なものである。中でも、本実施形態の固相担体は、DNAに比べて安定性に問題のあるとされるRNAの合成に特に適している。
【0103】
以下、RNAの固相合成を例に挙げて、以下に示す反応経路(縮合反応、酸化、脱保護)を参照しながら核酸の製造方法について説明する。
尚、以下に示す反応経路については、前記式(2)中のRbにヌクレオシドを用いた例を示す。
【0104】
【0105】
反応経路を示す化学式中、R6は塩基;Trは保護基;Xは-H、-OH又は-OR7(R7は保護基)をそれぞれ表している。
【0106】
前記一般式(2)で表されるリンカーを有する固相担体(Sp-Nu)及びアミダイトモノマー(Am-1)のヌクレオシドを構成する塩基(R6)は、通常、核酸、典型的にはRNAを構成する天然の塩基であるが、非天然の塩基を場合によっては使用してもよい。かかる非天然の塩基としては、天然あるいは非天然の塩基の修飾アナログが例示される。
【0107】
R6で表される塩基としては、例えば、アデニン、イソグアニン、キサンチン、ヒポキサンチン及びグアニン等のプリン塩基;及び、シトシン、ウラシル及びチミン等のピリミジン塩基等が挙げられる。
【0108】
また、R6で表される塩基としては、例えば、2-アミノアデニン、2-アミノプリン、2,6-ジアミノプリン等のアミノ誘導体;5-メチルウラシル、5-メチルシトシン、7-メチルグアニン、6-メチルプリン、2-プロピルプリン等のアルキル誘導体;5-ハロウラシル及び5-ハロシトシン;5-プロピニルウラシル及び5-プロピニルシトシン;6-アザウラシル、6-アザシトシン及び6-アザチミン;5-ウラシル(シュードウラシル)、4-チオウラシル、5-(2-アミノプロピル)ウラシル、5-アミノアリルウラシル;8-ハロ化、アミノ化、チオール化、チオアルキル化、ヒドロキシル化及び他の8-置換プリン;5-トリフルオロメチル化及び他の5-置換ピリミジン;6-アザピリミジン;N-2、N-6及びO-6置換プリン(2-アミノプロピルアデニンを含む);ジヒドロウラシル;3-デアザ-5-アザシトシン;7-デアザアデニン;N6-メチルアデニン、N6,N6-ジメチルアデニン;5-アミノ-アリル-ウラシル;N3-メチルウラシル;置換1,2,4-トリアゾール;2-ピリジノン;5-ニトロインドール;3-ニトロピロール;5-メトキシウラシル;ウラシル-5-オキシ酢酸;5-メトキシカルボニルメチルウラシル;2-チオウラシル、5-メチル-2-チオウラシル;5-メトキシカルボニルメチル-2-チオウラシル;5-メチルアミノメチル-2-チオウラシル;3-(3-アミノ-3-カルボキシプロピル)ウラシル;3-メチルシトシン;N4-アセチルシトシン;2-チオシトシン;N6-メチルアデニン;N6-イソペンチルアデニン;2-メチルチオ-N6-イソペンテニルアデニン;N-メチルグアニン;O-アルキル化塩基等;およびこれらの2種以上が挙げられる。
【0109】
また、プリン化合物及びピリミジン化合物は、例えば、米国特許第3,687,808号、「Concise Encyclopedia Of Polymer Science And Engineering」,858~859頁,クロシュビッツ ジェー アイ(Kroschwitz J.I.)編、John Wiley&Sons、1990、及びイングリッシュら(Englischら)、Angewandte Chemie、International Edition,1991,30巻,p.613に開示されるものが含まれる。
【0110】
好適なアミダイトモノマー(Am-1)としては、下記化学式(Am-1’)で表される化合物において、R7がtert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)基、ビス(2-アセトキシ)メチル(ACE)基、(トリイソプロピルシリルオキシ)メチル(TOM)基、(2-シアノエトキシ)エチル(CEE)基、(2-シアノエトキシ)メチル(CEM)基、パラ-トルイルスルホニルエトキシメチル(TEM)基、又は(2-シアノエトキシ)メトキシメチル(EMM)基などで保護された、TBDMSアミダイト(TBDMS RNA Amidites、商品名、ChemGenes Corporation)、ACEアミダイト、TOMアミダイト、CEEアミダイト、CEMアミダイト、TEMアミダイト(Chakhmakhchevaの総説:Protective Groups in the Chemical Synthesis of Oligoribonucleotides、Russian Journal of Bioorganic Chemistry, 2013, Vol. 39, No. 1, pp. 1-21.)、EMMアミダイト(国際公開第2013/027843号に記載)等が例示される。
【0111】
【化11】
[式中、R
7は、ヒドロキシル基の保護基を表す。R
6は、保護された核酸塩基を示す。]
【0112】
本実施形態の固相担体は、ヌクレオシドやヌクレオチド以外の2価の基を核酸配列に組み込むために使うこともできる。例えば、プロリン骨格を有するアミダイト(後述のアミダイトPなど)を、アミダイト法により、核酸配列に組み込むことができる(国際公開第2012/017919号の実施例A4の方法と同様の方法を参照)。また、下記の構造式(Am-11)、(Am-12)及び(Am-13)でそれぞれ表されるアミダイト(国際公開第2013/103146号の実施例A1~A3参照)を使用することもできる。
【0113】
【化12】
[式中、iPrはイソプロピル基を表す。DMTrは4,4’-ジメトキシトリチル基を表す。Tfaはトリフルオロアセチル基を表す。]
【0114】
[RNAの固相合成]
前記一般式(2)で表されるリンカーを有する固相担体(Sp-Nu)を脱保護(-Tr)して、固相担体(Am-2)を得る。この後、アミダイトモノマー(Am-1)と、固相担体(Am-2)とを縮合反応させて、反応生成物(Am-3)を得る。この後、反応生成物(Am-3)を酸化して、生成物(Am-4)を得る。この後、生成物(Am-4)を脱保護(-Tr)して、生成物(Am-5)を得る。次いで、アミダイトモノマー(Am-1)と生成物(Am-5)とをさらに縮合反応させて、ホスホジエステル結合を伸長していく。
このように、伸長したオリゴヌクレオチド鎖末端の5’位のヒドロキシル基を、所望の配列となるように、一連の脱保護、縮合反応、酸化のサイクルを必要なだけ繰り返し、この後、固相担体から切り出すことにより、所望の配列の核酸分子を製造することができる。
【0115】
より詳しくは、以下の工程を含む製造方法により核酸が製造される。
工程(A):前記一般式(2)中のRbが、反応性の基としてヒドロキシル基が保護されたヌクレオシド又はヌクレオチドを表す無機多孔質担体を用い、前記のヌクレオシドの5’位のヒドロキシル基の保護基を脱保護する工程;
工程(B):前記工程(A)において生成したヌクレオシドの5’位のヒドロキシル基と、第2のヌクレオシド塩基を有するアミダイト化合物とを縮合反応させて、ホスファイトを生成する縮合工程;
工程(C):前記工程(B)において生成したホスファイトを酸化させて、ヌクレオチドを生成する酸化工程;
工程(D):前記工程(C)において生成したヌクレオチドの5’位のヒドロキシル基の保護基を脱保護する工程。
【0116】
前記の工程(A)~(D)を含む製造方法は、任意に以下の工程を含む。
工程(B’):前記工程(D)において生成した生成物と、次に導入予定のヌクレオシド塩基を有するアミダイト化合物とをさらに縮合反応させて、ホスファイトを生成する工程;
工程(C’):前記工程(B’)において生成したホスファイトを酸化させて、オリゴヌクレオチドを生成する工程;
工程(D’):前記工程(C’)において生成したオリゴヌクレオチド鎖末端の5’位のヒドロキシル基の保護基を脱保護する工程;
工程(E):前記の工程(B’)、工程(C’)及び工程(D’)をからなる一連の工程、さらにm回(mは、1以上の整数を表す。)繰り返して、m個のアミダイト化合物を反応(核酸伸長反応)させた後、伸長した核酸を切り出す工程。
【0117】
本実施形態における核酸伸長反応は、一般的なホスホロアミダイト法の手順に従い行うことができる。
本明細書において、「核酸伸長反応」とは、ホスホジエステル結合を介して、ヌクレオチドを順次結合させることにより、核酸鎖、特にRNA鎖を伸長させる反応を意味する。核酸伸長反応は、ホスホロアミダイト法を採用する核酸自動合成装置等を用いて行ってもよい。
【0118】
脱保護する工程では、固相担体上に担持されるRNA鎖末端の5’位のヒドロキシル基の保護基を脱保護する。一般的な保護基としては、トリチル系保護基(典型的には、DMTr基)が用いられる。脱保護は、酸を用いて行うことができる。脱保護用の酸としては、例えば、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、塩酸、酢酸、及びp-トルエンスルホン酸等が挙げられる。
【0119】
縮合工程では、前記の脱保護する工程により脱保護したRNA鎖末端の5’位のヒドロキシル基に対して、ヌクレオシドホスホロアミダイトを結合させて、ホスファイトを生成する。前記ヌクレオシドホスホロアミダイトとしては、5’位のヒドロキシル基が保護基(例えばDMTr基)で保護されたものを用いる。
【0120】
また、縮合工程は、前記ヌクレオシドホスホロアミダイトを活性化する活性化剤を用いて行うことができる。活性化剤としては、例えば、5-ベンジルチオ-1H-テトラゾール(BTT)、1H-テトラゾール、4,5-ジシアノイミダゾール(DCI)、5-エチルチオ-1H-テトラゾール(ETT)、N-メチルベンズイミダゾリウムトリフラート(N-MeBIT)、ベンズイミダゾリウムトリフラート(BIT)、N-フェニルイミダゾリウムトリフラート(N-PhIMT)、イミダゾリウムトリフラート(IMT)、5-ニトロベンズイミダゾリウムトリフラート(NBT)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBT)又は5-(ビス-3,5-トリフルオロメチルフェニル)-1H-テトラゾール(Activator-42)等、またはこれらの2種以上が挙げられる。
【0121】
縮合工程の後は、適宜、未反応の5’位のヒドロキシル基をキャッピングしてもよい。キャッピングは、無水酢酸-テトラヒドロフラン溶液、フェノキシ酢酸/N-メチルイミダゾール溶液等、またはこれらの2種以上の公知のキャッピング溶液を用いて行うことができる。
【0122】
酸化工程は、前記縮合工程により形成されたホスファイトを酸化する工程である。酸化工程は、酸化剤を用いて行うことができる。酸化剤としては、ヨウ素、m-クロロ過安息香酸、tert-ブチルヒドロペルオキシド、2-ブタノンペルオキシド、ビス(トリメチルシリル)ペルオキシド、1,1-ジヒドロペルオキシシクロドデカン、過酸化水素等が挙げられる。
酸化工程は、前記キャッピング操作の後で行ってもよいし、逆に、酸化工程の後でキャッピング操作を行ってもよいし、この順番は限定されない。
【0123】
酸化工程後は、脱保護工程に戻り、合成すべきRNAのヌクレオチド配列に応じて、上記の縮合反応、酸化、脱保護の工程を繰り返すことにより、所望の配列を有するRNAを合成することができる。
【0124】
所望の配列を有するRNA鎖の合成が完了した後は、アンモニア又はアミン類等を用いて、固相担体からRNA鎖を切断して回収する。
ここでのアミン類としては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、エチレンジアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等、またはこれらの2種以上が挙げられる。
ユニバーサルリンカーを用いる場合、RNA鎖の合成が完了した後は、アンモニア又はアミン類等を用いて、固相担体からの切断を行い、求核試薬によるユニバーサルリンカーの除去を行う。除去が完了した際には、末端ヌクレオチドの3’位はヒドロキシル基となり、ホスフェートはユニバーサルリンカーに結合して環状ホスホジエステルを形成する。
回収したRNAは、適宜、公知の方法で精製してもよい。
【0125】
以上説明した本実施形態の無機多孔質担体においては、特定の細孔ネットワーク構造有する無機多孔質体、すなわち前記(a)~(c)の内、少なくとも1つの条件を満たす無機多孔質体が採用されている。かかる担体は、末端が行き止まりである末端細孔の割合が少なく、細孔ネットワーク全体に核酸伸長反応にかかる原料が供給されやすい構造となっている。そのため、細孔内に原料が供給されないことによる核酸伸長反応の停止を抑制することができ、目的鎖長まで核酸伸長反応が進行する割合を高めることができる。したがって、本実施形態の核酸合成用基材によれば、目的鎖長のRNAの割合を高めることができ、長鎖RNA(例えば、40mer以上のRNA)を合成する場合であっても高純度のRNAを得ることができる。
【0126】
加えて、本実施形態の無機多孔質担体を核酸合成に適用することにより、特に40mer以上の長鎖RNAを合成する場合でも、高純度のRNAを得ることができる。RNA鎖の鎖長の上限は、特に限定されないが、例えば、200mer以下又は150mer以下とすることができる。
本明細書において、「RNAの純度」は、目的の鎖長の核酸が得られている割合(%)をいう。液体クロマトグラフィーによるクロマトグラムにおける面百値(すなわち、面積百分率値)、又はメインピークの半値幅により求められる。
【実施例】
【0127】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0128】
<無機多孔質体の作製>
無機多孔質体として、下記のSP(1)~SP(6)を用いた。無機多孔質体SP(1)~SP(6)のそれぞれについて、細孔径(モード径;μm)、粒子径(メジアン径;μm)、Survival Bone Rate(SBR)、Output I ratio on From(OIR)及び全細孔の長さの総和に対する全貫通孔の長さの総和の割合、体積当たり細孔容積(mL/mL)、体積当たり比表面積(m2/mL)、気孔率(%)を求めた。この結果を表1に示した。
SBR、OIR及び全細孔の長さの総和に対する全貫通孔の長さの総和の割合は、FIB-SEMにより求めた。細孔径(モード径;μm)、体積当たり細孔容積(mL/mL)及び気孔率(%)は、水銀圧入法により求めた。粒子径(μm)は、レーザー回折法(散乱式)によりメジアン径を測定した。体積当たり比表面積(m2/mL)は、水銀圧入法により得られる嵩密度(g/mL)と、N2吸脱着等温線測定により得られる、質量当たり比表面積(m2/g)との積により求めた。
【0129】
無機多孔質体SP(1):
特許第5875843号公報に記載の実施例1と同様の方法でゼオライト成形体を得た。得られたゼオライト成形体を、アセトニトリル溶媒中で縣濁させて縣濁液を調製した。次いで、目開き125μm及び38μmのJIS篩で前記縣濁液を順次篩った。その後、目開き38μmの篩上に残存した粉末固体を、室温にて風乾して、白色粉末状固体である無機多孔質体SP(1)を得た。
【0130】
無機多孔質体SP(2):
容量1.5Lのステンレス製オートクレーブに、オルトケイ酸テトラエチル[Si(OC2H5)4]155g、40質量%水酸化テトラ-n-プロピルアンモニウム水溶液136g、水酸化カリウム(純度85%)0.3g及び水162gを入れ、室温にて120分間激しく撹拌した。得られた混合液中のケイ素に対する、水、テトラ-n-プロピルアンモニウムイオン、水酸化物イオン及びカリウムイオンのモル比は、それぞれ18、0.36、0.38及び0.048であった。この混合液を、105℃にて48時間、300rpmの回転数で撹拌し、水熱合成反応を行った。得られた反応混合物を濾過し、濾液のpHが9.0以下になるまで繰り返し純水で洗浄した。得られたウェットケーキを110℃で乾燥させた後、乳鉢で粉砕した。得られた粉砕品を目開き2.36mm及び目開き1.00mmの篩いで順次篩別した。これを、管状炉を用い、530℃にて1時間窒素流通下に焼成し、次いで、さらに530℃にて1時間窒素と空気の混合ガス〔窒素:空気(体積比)=9:1〕流通下で焼成することにより白色の焼成物を得た。
次いで、上記で得られた焼成物10gをシャーレに入れ、水100mLを入れた2リットルのセパラブルフラスコ中に静置し、蓋を閉めた後、セパラブルフラスコを80℃の恒温槽に入れ、5時間放置した。セパラブルフラスコを取り出した後、20℃まで放冷した。この固体8gをオートクレーブに入れ、この中に、7.5質量%硝酸アンモニウム水溶液88gと25質量%アンモニア水溶液134gとの混合液222gを加え、90℃にて1時間撹拌した後、濾過により固体を分離した。この固体に対し、前記と同様の硝酸アンモニウム水溶液とアンモニア水溶液との混合液による処理をさらに2回繰り返した後、水洗、乾燥を行った。最後に、得られた白色固体を乳鉢で粉砕し、目開き106μm及び目開き38μmの篩いで順次篩別し、無機多孔質体SP(2)を得た。
【0131】
無機多孔質体SP(3):
無機多孔質体SP(3)として、市販の球状シリカゲル粉末(商品名:M.S.GEL、AGCエスアイテック株式会社製)を用いた。
【0132】
無機多孔質体SP(4):
特開2010-120780号公報に記載の実施例1における二重細孔多孔質体の作製法を参考にして、多孔質シリカを作製した。
エチレングリコール-プロピレングリコールブロック共重合体(商品名:Pluronic P123、BASF社製)5.5gを、0.01M酢酸水溶液40mLに溶解させた後、さらに尿素2.5gを溶解させた。この水溶液に、テトラエトキシシラン25mLを添加し、1時間撹拌して溶液を得た。得られた溶液を、60℃で24時間静置することで得られたゲルを、メタノール水で洗浄した。得られたゲルを60℃で乾燥し、250℃で10時間焼成して、多孔質シリカ粉体である無機多孔質体SP(4)を得た。
【0133】
無機多孔質体SP(5):
特許第5875843号公報に記載の実施例1と同様の方法でゼオライト焼成物を得た。次いで、得られた焼成物10gをシャーレに入れ、水100mLを入れた2リットルのセパラブルフラスコ中に静置し、蓋を閉めた後、セパラブルフラスコを80℃の恒温槽に入れ、24時間放置した。セパラブルフラスコを取り出した後、20℃まで放冷した。この固体8gをオートクレーブに入れ、この中に、7.5質量%硝酸アンモニウム水溶液88gと25質量%アンモニア水溶液134gとの混合液222gを加え、90℃にて1時間撹拌した後、濾過により固体を分離した。この固体に対し、前記と同様の硝酸アンモニウム水溶液とアンモニア水溶液との混合液による処理をさらに9回繰り返した後、水洗、乾燥を行い、無機多孔質体SP(5)を得た。
【0134】
[細孔の画像解析方法]
(FIB-SEMによる連続スライス像の取得)
無機多孔質体SP(1)~(5)について、FIB-SEMを用いて細孔の画像解析を行った。各無機多孔質体SPの内部にエポキシ樹脂を含浸させ、無機固相担体の空隙部を埋めた後、エポキシ樹脂を硬化させ、各無機多孔質体SPの断面が観察できるように切削し、その切削面にPt-Pd蒸着を行い、FIB-SEM観察用試料を作製した。
FIB-SEM(FEI製;HELIOS600)を用いて、切削面をFIB加工することにより、無機固相担体の内部の多孔質な構造が観察される加工面を作製した。得られた多孔質層の加工面に対して、加速電圧;2.1kVでSEM観察(反射電子像)を行った。上記SEM観察のスケールは、5nm/pixとした。
上記SEM観察後、試料の奥行き方向に5nmの厚さでFIB加工して新たな加工面を作製し、その新たな加工面に対してSEM観察(反射電子像)を行った。同様に、当該新たな加工面から5nmの厚さでFIB加工してさらに新たな加工面を作製し、そのさらに新たな加工面に対してSEM観察(反射電子像)を行った。このように、厚さ5nm間隔でFIB加工、加工面のSEM観察を繰り返して行うことにより各無機多孔質体SPの多孔質な内部構造の連続スライス像を取得した。
画像解析ソフト(visualization sciences Group製;Avizo ver.6.0)を用いて位置補正を行い、補正後の連続スライス像を得た。スケールはX,Y,Z軸5nm/pixとした。
【0135】
(定量解析ソフトによる3次元定量解析)
上記で得られた連続スライス像に対し、定量解析ソフトTRI/3D-BON-FCS64(ラトックシステムエンジニアリング製)で3次元定量解析を行い、細孔径、及び分岐数を算出した。
3次元定量解析は、まず連続スライス像をTRI/3D-BON-FCS64上で開き、トリミング機能にて、約4μm×2.5μm×1μm程度の大きさにトリミングし、3D 3×3のメディアンフィルターを適用して細かなノイズ除去を行った。次に、Auto-LWの1画面処理ループ機能にて画像の2階調化を行い、多孔質層を構成する無機担体部と空隙部とを識別した。識別した無機担体部、及び空隙部のそれぞれについて、孤立構造部、及び孤立空隙部を除去するため、5voxel以下は削除した。ノイズ除去後、空隙部を256諧調の白になるようにして3D保存し、2値化連続スライス像を得た。
無機担体部と空隙部を識別した2値化連続スライス像に対して、前記定量解析ソフトの解析機能である骨計測の海綿骨計測にて、MIL有効長r1=0.5、NdNd有効長r2=1.5、NdTm有効長r3=2.0として構造解析を行い、全細孔の長さの総和に対する末端細孔長の割合を算出した。
全細孔の長さの総和に対する末端細孔長の割合とは、前記定量解析ソフトの3次元定量解析から求めることができるパラメータである。
図1に示す空隙が枝のように分岐するところを分岐点とし、分岐点間、解析領域端間及び分岐点から解析領域端の間を1つの細孔とみなし、これを細孔と定義した。無機担体部分と空隙部分とを識別し、識別された空隙部分について、前記定量解析ソフト上で細線化処理を行い、3個以上のネットワーク又は幅の異なるネットワークの結合点を細孔の分岐点とし、すべての分岐点間、解析領域端間及び分岐点から解析領域端の間の細孔についてそれぞれ短径(Thickness)、長径(Width)、距離(Length)を算出した。
【0136】
(全細孔の長さの総和に対する全貫通孔長の総和の割合の算出)
末端細孔とは、分岐点から細孔の端(行き止り:末端点)までの間及び末端点から末端点の間を末端細孔と定義し、その長さ(LENGTH)を末端細孔長とした(
図2参照)。解析領域内にある末端細孔の長さの総和を、同解析領域の全細孔の長さの総和で除することで、全細孔の長さの総和に対する全末端細孔の長さの総和の割合、すなわち、解析領域内にある全細孔に対する行き止り割合を算出した。また、全細孔に対する行き止まりでない細孔、すなわち貫通孔の割合を、1-(全細孔に対する行き止り割合)で算出した。この値が大きい場合、流路が途切れることが少ないことを意味する。
【0137】
(SBR及びOIRの算出)
前記定量解析ソフトのオプションである連通孔解析(3D-VNET)を実行し、Survival Bone Rate(SBR)、及びOutput I ratio on From(OIR)を算出した。
上述した細孔径の解析は、個々の細孔の大きさを求めたものだが、連通孔解析は、それらの細孔がどのように連通しているか、すなわち細孔のネットワーク構造を、電気回路と見なして流れ易さを定量化するオプション機能である。
まず、連通孔計測で、NodeStrut中間ファイル出力を実行し、中間ファイルを作成した。このとき、対象データは2値化した空隙部とし、CTデータはトリミングした領域の外周1画素(6面の箱)とし、対象領域はCTデータをInvertしたもの(箱の中身部分)とする。次に、流路詳細解析にて、作成した中間ファイルを指定し、連続スライス像のZ方向1枚目を流れ始めの面「From」とし、最後の1枚を終わりの面「To」として流路解析を実行し、流れ易さの指標となるSurvival Bone Rate(SBR)を算出した。このとき体積抵抗率ρは1.0とした。
さらに、連通孔全パス解析を実行し、「From」から「To」までどれだけの割合の電流が流れたかを表すOutput I ratio on From(OIR)を算出した。解析パラメータは、PathL.Max=6.0xPathL、検索パス数=50000、出力パス数=50000とした。
SBRとは、骨粗鬆症に対する残存骨梁比を示すパラメータであるが、骨梁部を電気が流れる流路と見なすと、SBRが大きいほど、流れ易いネットワーク構造であることを示す。具体的には、得られた連通枝(複数の細孔が連通し一つの流路となっている部分)の断面積Sと長さLから内部抵抗を算出し、「From」-「To」間に電圧1Vを印加したとして、連通孔の電流を求める。求めた電流の総和と印加電圧Vから、解析領域内の等価抵抗が求まる。この等価抵抗が小さいほど流れ易いネットワーク構造であることを意味する。さらにいえば、細孔ネットワークの等価抵抗をRE、等価断面積をSE、From-To間の距離をLEとすると、RE=ρLE/SEと表現でき、等価抵抗は等価断面積が大きくなると小さくなる。この等価断面積を基準となるFrom面の面積で除した値SBRは、入力面積に対して、どの程度の等価断面積を有しているか、すなわち、どの程度流れ易いネットワークであるかを示す指標となる。
次に、「To」まで連通しているパスの電流値の総和を求め、解析領域内の全電流で除することでOIRを得る。すなわち、OIRは、入力された電流が解析領域の横面に逃げず、どの程度To面まで流れたか、直線的な流れ易さを示す指標となる。
【0138】
[水銀圧入法による細孔分布の測定]
無機多孔質体SP(1)から無機多孔質体SP(5)について、水銀圧入法により、細孔径が約0.004~200μmの細孔分布(細孔容積を細孔径で微分した値)の測定を行った。
前記測定には、AutoPoreIV9520(Micromeritics社製)を用いた。前処理として、無機多孔質体に対し、150℃で4時間の恒温乾燥を行った。
【0139】
細孔径は、次式(A)を用いて算出した。
【数2】
P:圧力、D:細孔径、σ:水銀の表面張力、θ:水銀と試料との接触角
本測定において、水銀の表面張力σを0.48N/m、水銀と試料との接触角θを140°とした。
【0140】
細孔径の最頻値(モード径):
細孔径の最頻値(モード径)は、前記水銀圧入法により得られる細孔径分布(X軸を細孔径の値とし、Y軸を細孔容積を細孔径で微分した値としたグラフとする)において、ピークトップのX軸の値から求めた。
【0141】
気孔率(%):
気孔率(%)は、嵩密度(g/mL)と0.004μmから200μmの範囲にある累積細孔容積(mL/g)との積により算出した。
【0142】
<シランカップリング剤>
シランカップリング剤として、下記の(C1)成分、(C2)成分を用いた。
【0143】
(C1)成分:
市販の3-アミノプロピルジイソプロピルエトキシシランを購入して使用した。
【0144】
(C2)成分:
3-アミノプロピルトリエトキシシラン(TCI, CAS RN:919-30-2 製品コード:A0439)を使用した。
【0145】
<無機多孔質担体の製造>
各実施例の無機多孔質担体は、上記で製造した無機多孔質体SP(1)~SP(5)を、シランカップリング剤(C1)~(C2)成分で表面処理することにより得た。
【0146】
(実施例1)
無機多孔質体SP(1)2.00gを四つ口フラスコに入れ、トルエン100mLを加えた。撹拌下で、さらに(C1)成分4.8mgを加え、室温にて3時間撹拌した。その後、反応液を濾過し、トルエンで洗浄した後、減圧下で乾燥させて、実施例1の無機多孔質担体を得た。
【0147】
(実施例2)
無機多孔質体SP(1)を無機多孔質体SP(2)(2.00g)に変更し、かつ、(C1)成分の添加量を6.8mgに変更した以外は、実施例1の製造方法と同様にして、実施例2の無機多孔質担体を得た。
【0148】
(実施例3)
無機多孔質体SP(1)を無機多孔質体SP(3)(1.00g)に変更し、かつ、(C1)成分の添加量を2.4mgに変更した以外は、実施例1の製造方法と同様にして、実施例3の無機多孔質担体を得た。
【0149】
(実施例4)
無機多孔質体SP(1)を無機多孔質体SP(5)(2.00g)に変更し、かつ、(C1)成分の添加量を6.8mgに変更した以外は、実施例1の製造方法と同様にして、実施例4の無機多孔質担体を得た。
【0150】
(比較例1)
無機多孔質体SP(1)を無機多孔質体SP(4)(2.42g)に変更し、かつ、(C1)成分を(C2)成分(添加量:44.7mg)に変更した以外は、実施例1の製造方法と同様にして、比較例1の無機多孔質担体を得た。
【0151】
<固相担体の製造>
U-succinate(5’-O-ジメトキシトリチル-2’-O-tert-ブチルジメチルシリル-3’-O-スクシニルウリジン)25.1mgと、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-ベンゾトリアゾリウム3-オキシドヘキサフルオロホスファート(HBTU)12.5mgと、N,N-ジイソプロピルエチルアミン5.9μLと、アセトニトリル2.7mLとを混合し、この混合物に、各実施例及び比較例の無機多孔質担体300.0mgをそれぞれ加えた。
25℃で18時間静置した後、ろ過し、固体(残渣)をアセトニトリル10mLで洗浄した。洗浄後の固体に、無水酢酸と、2,6-ルチジンのTHF溶液(無水酢酸/2,6-ルチジン/THF、容量比1/1/8)1mLと、N-メチルイミダゾールのTHF溶液(N-メチルイミダゾール/THF、容量比16/84)1mLとを加えた。1分間静置した後にろ過し、固体をアセトニトリル10mLで洗浄した。洗浄後の固体を真空乾燥し、無機多孔質担体にヌクレオシドが担持した固相担体を得た。
【0152】
70%過塩素酸溶液をメタノールで希釈し、30%過塩素酸/メタノール溶液を調製した。上記で製造した、ヌクレオシドを担持した各固相担体10mgをメスフラスコに採取し、30%過塩素酸/メタノール溶液で10mLに希釈した。この溶液を30%過塩素酸/メタノール溶液でさらに10倍に希釈した後、498nmでの吸光度を測定し、ヌクレオシド担持密度を下式より算出した。その結果を表1に示した。
【0153】
【0154】
<オリゴ核酸の固相合成>
配列(A):5’-GCAGAGUACACACAGCAUAUACC-P-GGUAUAUGCUGUGUGUACUCUGCUU-3’(配列番号1,2)(49mer)。GCAGAGUACACACAGCAUAUACC(配列番号1)、GGUAUAUGCUGUGUGUACUCUGCUU(配列番号2)。
前記の配列(A)において、Pは、下記の波線で区切られた結合部位を表す。
【0155】
【0156】
前記の配列(A)からなるオリゴヌクレオチドを、ホスホロアミダイト法に基づき、核酸合成機(商品名NTS M-4-MX-E、日本テクノサービス株式会社製)を用い、3’側から5’側に向かって合成した(反応経路(上記縮合反応、酸化、脱保護)参照)。
かかる固相合成には、上記で製造した各固相担体を使用した。
また、アミダイトモノマーには、以下に示すアデノシンEMMアミダイト(米国特許出願公開第2012/035246号明細書の実施例4に記載)、シチジンEMMアミダイト(同US文献の実施例3に記載)、グアノシンEMMアミダイト(同US文献の実施例5に記載)、ウリジンEMMアミダイト(同US文献の実施例2記載)及びアミダイトP(国際公開第2017/188042号に記載)を使用した。
【0157】
【0158】
また、かかる固相合成には、デブロッキング溶液として高純度トリクロロ酢酸トルエン溶液を使用し、縮合剤として5-ベンジルメルカプト-1H-テトラゾールを使用し、酸化剤としてヨウ素溶液を使用し、キャッピング溶液としてフェノキシ酢酸溶液とN-メチルイミダゾール溶液とを使用した。
【0159】
合成終了後の固相担体を、蓋つきガラスバイアルに入れ、28%NH4OHとEtOHとの1:1ないし2:1溶液を加えた。その後、40℃下で4時間静置した。反応後の溶液を濾過し、水、EtOHで洗浄した。得られた溶液を乾燥して、未脱保護体の粗オリゴヌクレオチドとし、次いでニトロメタンの存在下でフッ化テトラ-n-ブチルアンモニウム(TBAF)を作用させて脱保護を行い、粗生成物を得た。
【0160】
[オリゴ核酸の純度の測定]
オリゴ核酸の純度の測定は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC;波長260nm、カラムDNAPacTM PA100 4×250mm)により行った。
前記粗生成物を、前記HPLCによって各成分に分離し、HPLCにより得られたクロマトグラムの総面積値に対する、目的鎖長の主生成物の面積値の百分率(クロマトグラムにおける面百値)から、オリゴ核酸の純度を算出した。その結果を表1に示した。
【0161】
【0162】
表1に示す結果から、実施例1~4の固相担体を用いた場合の方が、比較例1の固相担体を用いた場合に比べて、オリゴ核酸の純度が高いことが確認できる。
すなわち、本発明の適用した固相担体によれば、オリゴ核酸の製造において純度をより高められる、と言える。
【産業上の利用可能性】
【0163】
本発明により、長鎖核酸の合成においても純度を向上させることができる、核酸の製造方法が提供される。本発明の実施態様にかかる無機多孔質担体及びこれを用いた製造方法により得られる核酸は、医薬品の原料として有用である。
【配列表フリーテキスト】
【0164】
配列表の配列番号1および2は、本発明の製造方法に従って製造されるオリゴヌクレオシドの塩基配列を表す。
【配列表】