IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユミコアの特許一覧

特許7368474多金属団塊からの金属回収のためのプロセス
<>
  • 特許-多金属団塊からの金属回収のためのプロセス 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-16
(45)【発行日】2023-10-24
(54)【発明の名称】多金属団塊からの金属回収のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C22B 3/08 20060101AFI20231017BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20231017BHJP
   C22B 1/02 20060101ALI20231017BHJP
   C22B 47/00 20060101ALI20231017BHJP
   C22B 23/00 20060101ALI20231017BHJP
   C22B 15/00 20060101ALI20231017BHJP
【FI】
C22B3/08
C22B3/44 101Z
C22B1/02
C22B3/44 101B
C22B47/00
C22B23/00 102
C22B15/00 105
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021535799
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-14
(86)【国際出願番号】 EP2019084306
(87)【国際公開番号】W WO2020126632
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-10-05
(31)【優先権主張番号】18215028.4
(32)【優先日】2018-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】501094270
【氏名又は名称】ユミコア
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・ダニエルス
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・スコイエ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・バルテス
(72)【発明者】
【氏名】マルゴ・ネヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン・レイセン
【審査官】岡田 隆介
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-119743(JP,A)
【文献】特開昭50-140319(JP,A)
【文献】特開昭55-058340(JP,A)
【文献】特開昭54-115625(JP,A)
【文献】特開昭48-061311(JP,A)
【文献】米国特許第04208379(US,A)
【文献】中国特許出願公開第102358919(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 3/08
C22B 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多金属団塊(1)からMn、Ni、Co、およびCu金属を回収するためのプロセスであって、前記プロセスは、SO含有ガスを酸性水性条件で浸出剤として用いて前記金属を浸出するステップを備え、
前記浸出するステップは、二段階プロセスにより行われ、前記二段階プロセスは、
第1の浸出ステップ(L1)であって、硫酸の第1の酸性水溶液(11)中でpH2~4で団塊を第1の量のSO含有ガス(10)と接触させることでMn、Ni、およびCoの大部分を溶解させ、それによって分離した第1の浸出溶液(2)および第1の浸出残渣(3)を生じさせる第1の浸出ステップ(L1)と、
第2の浸出ステップ(L2)であって、硫酸の第2の酸性水溶液(13)中でpH1.5未満で前記第1の浸出残渣(3)を第2の量のSO含有ガス(12)と接触させることでCuの大部分を溶解させ、それによって分離した第2の浸出溶液(4)および第2の残渣(5)を生じさせる第2の浸出ステップ(L2)と、備えることを特徴とする、プロセス。
【請求項2】
第1の硫化物沈殿剤(14)を用いてpH2~4で前記第1の浸出溶液(2)からNiおよびCoを沈殿させ、それによって分離したMn含有水相(6)およびNiおよびCo含有固相(7)を得る、第1の沈殿ステップ(P1)をさらに備える、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記第1の硫化物沈殿剤(14)は、HSである、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
第2の硫化物沈殿剤(15)を用いてpH0.5~1.5で前記第2の浸出溶液(4)からCuを沈殿させ、それによって分離した金属含有水相(8)およびCu含有固相(9)を得る第2の沈殿ステップ(P2)と、
前記第1の酸性水溶液(11)として使用するために前記金属含有水相(8)の大部分を前記第1の浸出ステップ(L1)に再循環させるステップと、をさらに備える、請求項1~3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記第2の硫化物沈殿剤は、HSおよび/または単体硫黄およびSO(15)の混合物である、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
加熱および/または水の蒸発によってMn含有水相(6)からMnを結晶化させ、それによって分離したMn含有固体を得る結晶化ステップと、
850°Cより高い温度で加熱することで前記Mn含有固体を熱分解し、それによってMn酸化物および分離したSO含有ガスを形成する熱分解ステップと、
浸出剤(10、12)として使用するために前記SO含有ガスをいずれか1つまたは両方の浸出ステップ(L1、L2)に再循環させるステップと、をさらに備える、請求項1~5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
過剰なSO含有ガスが浸出剤(12)として前記第2の浸出ステップ(L2)に供給され、それによって前記第1の浸出ステップ(L1)において浸出剤(10)として使用するために未反応のSOのストリームを得る、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記SO含有ガスは、SOも含有する、請求項1~7のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、多金属団塊からの有価金属回収のためのプロセスに関係する。深海マンガン団塊とも呼ばれる多金属団塊は、海底にある鉄および水酸化マンガンの同心円層で形成された岩石の凝結物である。
【背景技術】
【0002】
今日まで、最も経済的に興味深い団塊は、クラリオン・クリッパートン断裂帯(CCFZ)で発見されている。この地帯の団塊は、通常、27%のMn、1.3%のNi、1.1%のCu、0.2%のCo、6%のFe、6.5%のSi、および3%のAlを含有する。経済的に関心のある他の元素は、Zn、Mo、および希土類である。
【0003】
70年代以降、多金属団塊を処理するために多くのプロセスが調査されている。利用可能なプロセスの最近の包括的な報告は、T. Abramovski et al, Journal of Chemical Technology and Metallurgy, 52, 2, 2017, 258-269の論文で見つけることができる。
【0004】
ケネコット(Kennecott)およびインコ(INCO)は、工業プロセスの開発を試みた。ケネコットはキュプリオンアンモニアプロセス(Cuprion ammoniacal process)を開発したが、いくつかの会社は硫酸塩、塩化物、そして最近では硝酸塩媒体中での湿式精錬プロセスを開発した。インコは、マットの製造を伴う高温治金法を研究した。より最近では、合金の製造が提案されている。これらのプロセスは、いずれもパイロットスケールを超えなかった。
【0005】
キュプリオンプロセスは、Coの回収率が低い、COガスによる団塊の還元が遅い、およびマンガン残渣の値が低いという問題に直面している。浸出残渣中のMnおよびFeを排除するためにオートクレーブ浸出を利用するラテライトプロセス(lateritic processes)から派生した硫酸塩プロセスは、Mnの不十分な物価安定策だけでなく、浸出の技術的問題に直面している。他の硫酸塩ベースのプロセスは、大量の試薬の消費および/または致命的な硫酸アンモニウムの生成につながる。塩化物および硝酸塩ルートは、熱加水分解および熱分解による試薬の再生のためにエネルギー消費量が高い。高温治金処理の前に団塊を乾燥させることは、高いエネルギー消費量にもつながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第3,906,075号明細書
【文献】米国特許第4,138,465号明細書
【非特許文献】
【0007】
【文献】T. Abramovski et al, Journal of Chemical Technology and Metallurgy, 52, 2, 2017, 258-269
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
開示するプロセスは、証明された拡張可能な浸出技術によってこれらの問題を解決することを目的としている。このプロセスは、浸出剤としてSOの使用を必要とする。
【0009】
これに関連して、米国特許第3,906,075号は、SOおよび硫酸を使用する単一ステップの浸出プロセスを開示していることに留意されたい。Mn、Ni、Co、およびCuは同時に浸出される。この文献は、マンガンがMnSOとして結晶化した後、酸化物に分解され、それによって浸出ステップで再利用するためのSOが生成されることも説明する。Cuは単一の浸出液ストリーム(stream)から抽出される必要がある。このプロセスのコストおよび複雑さは、処理される容量を考慮するとかなりのものだが、液液抽出が通常使用される。
【0010】
同様の文脈において、米国特許第4,138,465号は、特に亜硫酸として浸出ステップに供給される計量された量のSOを使用する場合、十分に制御された浸出条件下で、Ni、Mn、Co対Cuの間の選択性を達成できることを開示する。注目すべきは、選択性は、材料が100メッシュ以下に細かく粉砕された場合にのみ達成されることである。まずMn、Ni、およびCoが浸出し、Cu含有残渣を残し、Cu含有残渣は分離され、COおよびNHの混合物を使用して第2の浸出ステップにかけられる。CuをそのままにしながらNi、Mn、およびCoを溶解するために必要な亜硫酸の正確な量は、必然的に変動する材料の金属含有量に依存するため、このプロセスは工業的見地からあまり堅固ではない。最適な条件からの逸脱は、不純な浸出液のストリーム、またはさらなる処理を必要とする残渣につながる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示の目的は、工業的に堅固な方法で、Mg、Ni、およびCo対Cuの間の選択性を与えるプロセスを提供することである。これは、二段階浸出を利用して達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】プロセスを説明する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
メインユニットの操作は以下の通りである。
L1:第1の浸出
P1:第1の沈殿
L2:第2の浸出
P2:第2の沈殿
【0014】
また、金属含有水相(8)の第1の浸出ステップ(L1)への任意選択のリサイクル、および過剰な試薬(12)の第1の浸出ステップ(L1)への任意選択の移送も示されている。これらの選択肢は点線で表される。
【0015】
開示する多金属団塊(1)からMn、Ni、Co、およびCu金属を回収するためのプロセスは、SO含有ガスを酸性水性条件で浸出剤として用いて金属を浸出するステップを備え、浸出するステップは、二段階プロセスにより行われ、二段階プロセスは、
第1の浸出ステップ(L1)であって、硫酸の第1の酸性水溶液(11)中でpH2~4で団塊を第1の量のSO含有ガス(10)と接触させることでMn、Ni、およびCoの大部分を溶解させ、それによって分離した第1の浸出溶液(2)および第1の浸出残渣(3)を生じさせる第1の浸出ステップ(L1)と、
第2の浸出ステップ(L2)であって、硫酸の第2の酸性水溶液(13)中でpH1.5未満で第1の浸出残渣(3)を第2の量のSO含有ガス(12)と接触させることでCuの大部分を溶解させ、それによって分離した第2の浸出溶液(4)および第2の残渣(5)を生じさせる第2の浸出ステップ(L2)と、備えることを特徴とする。
【0016】
第1の浸出ステップは、希硫酸溶液(11)中で団塊(1)をSOと接触させることにより弱酸性条件で行われる。これにより、ほとんどのMn、Co、およびNiが溶解するが、Cuは基本的に残渣(3)中に残る。pH2~4は、水溶液中の硫酸(11)、SOに任意選択的に存在するSO(10)、または任意選択的に第2の沈殿(P2)から再循環される金属含有水相(8)のいずれかを投入することによって得られる。
【0017】
第2の浸出ステップは、希硫酸溶液(13)中で第1の浸出残渣(3)をSOと接触させることにより、より酸性のpHで行われる。これにより、残渣(3)が使い果たされ、特にCuが溶解する。pH1.5未満は、水溶液の硫酸(13)、またはSOに任意選択的に存在するSO(12)を投入することによって得られる。
【0018】
このアプローチは第1のステップ(L1)で弱酸性条件を使用し、Cuの溶解を回避しながらほとんどのMn、Co、およびNiが溶解するのを確実なものとする。この第1の浸出溶液(2)は、好ましくは0.2g/L未満のCu、または団塊中のCuの10%未満を含有する。第1の浸出溶液(2)は、より好ましくは0.1g/L未満のCu、または団塊中のCuの5%未満を含有する。かなりの量のCuが存在しないおかげで第1の沈殿ステップ(P1)では、ほとんどCuフリーのCoおよびNiの沈殿物が生じる。ほとんどのCuは、残留Mn、Ni、Coだけでなく、Feとともに、第2のより酸性の浸出ステップ(L2)で溶解される。
【0019】
第2の残渣(5)は、浸出可能な金属で使い果たされる。第2の残渣(5)は、主にシリカやアルミナなどの価値の低いミネラルを含有する。
【0020】
化学量論的に過剰なSOは、浸出ステップ(L1、L2)の収率および反応速度を高めるのに役立つことができることに留意されたい。同様に、化学量論的に過剰な硫化物は、P1の沈殿反応の収率および反応速度を高めるのに役立つことができる。
【0021】
「大部分」という表現は、元素に関連する場合、プロセスに供給される元素の総量に関して、その元素の50重量%を超える割合を示す。
【0022】
有利な実施形態によれば、プロセスは、
第1の硫化物沈殿剤(14)を用いてpH2~4で第1の浸出溶液(2)からNiおよびCoを沈殿させ、それによって分離したMn含有水相(6)およびNiおよびCo含有固相(7)を得る、第1の沈殿ステップ(P1)をさらに備える。
第1の硫化物沈殿剤(14)は、好ましくはHSである。
【0023】
硫化物の沈殿は、確かにNiとCoに対して選択的であるが、Cuも不可避的に沈殿する。溶液のCu含有量が少ないことで、ほとんどCuフリーの濃縮されたNiおよびCoの生成物が確実に得られる。このような生成物は、リチウムイオン電池用のカソード材料の製造など、Cuが望ましくない用途に適している。
【0024】
有利な実施形態によれば、プロセスは、
第2の硫化物沈殿剤(15)を用いてpH0.5~1.5で第2の浸出溶液(4)からCuを沈殿させ、それによって分離した金属含有水相(8)およびCu含有固相(9)を得る第2の沈殿ステップ(P2)と、
第1の酸性水溶液(11)として使用するために金属含有水相(8)の大部分を第1の浸出ステップ(L1)に再循環させるステップと、をさらに備える。
第2の硫化物沈殿剤(15)は、好ましくはHSおよび/または単体硫黄およびSOの混合物である。
【0025】
Cuは得られた第2の浸出溶液(4)から選択的に沈殿させることができ、結果としてMn、Ni、Coだけでなく、Feも金属含有水相(8)中に溶質として残る。
【0026】
この金属含有水相(8)の第1の浸出ステップ(L1)への再循環は、いくつかの有利な点を有する。上述したように、第1のステップ(L1)で浸出されなかった残留Mn、Ni、およびCo金属のほとんどは、より酸性の第2の浸出ステップ(L2)において溶解する。これらの3つの回収された金属は、第1の浸出ステップ(L1)に再循環され、第1の浸出溶液(2)に含まれる(report)。したがって、この実施形態の有利な点は、向上した収率である。特にFeは、主に第2の浸出ステップ(L2)で溶解されるため、Feはさらに顕著に収率が向上する。FeはMnの経路をたどる。これは、両元素が鉄鋼業界で一般的に利用されるため、有益である。さらなる有利な点は、再循環された金属含有水相(8)が、第1の浸出ステップ(L1)において団塊によって消費される酸の少なくとも一部を供給することである。第2の浸出溶液(4)のpHは、再循環の場合、さもなければ第1の浸出ステップ(L1)の酸の必要量を超えることがあるため、好ましくは0.5未満であってはならない。
【0027】
「大部分」という表現は、ストリームに関連する場合、そのストリームの50容積%を超える割合を示す。
【0028】
有利な実施形態によれば、プロセスは、
加熱および/または水の蒸発によってMn含有水相(6)からMnを結晶化させ、それによって分離したMn含有固体を得る結晶化ステップと、
550℃、好ましくは850°Cより高い温度で加熱することでMn含有固体を熱分解し、それによってMn酸化物および分離したSO含有ガスを形成する熱分解ステップと、
浸出剤(10、12)として使用するためにSO含有ガスをいずれか1つまたは両方の浸出ステップ(L1、L2)に再循環させるステップと、をさらに備える。
【0029】
溶解されたマンガンを硫酸塩および/またはジチオネートとして結晶化し、それを熱分解にかけ、それにより、浸出段階への再循環に適したSOおよびSOの混合物を生じさせることが好ましい。石炭などの還元剤を混合する場合、550°Cで分解が始まることがあり、さもなければ少なくとも850°Cの温度が必要である。Mnは、典型的な団塊の中で群を抜いて最も豊富な金属である。したがって、硫酸マンガンおよび/またはジチオネートに存在する硫黄を再循環させることは、浸出段階の必要量を大幅に満たす。
【0030】
有利な実施形態によれば、過剰なSO含有ガスが浸出剤(12)として第2の浸出ステップ(L2)に供給され、それによって第1の浸出ステップ(L1)において浸出剤(10)として使用するために未反応のSOのストリームを得る。
【0031】
当業者は、後述する反応による化学量論に基づいて、浸出ステップに必要な酸および二酸化硫黄の量を容易に決定するだろう。好ましい実施形態では、化学量論的に過剰なSOは、第2の浸出段階(L2)でのみ導入される。過剰分は、第2の浸出段階(L2)の反応器から出る。過剰分は、第1の浸出ステップ(L1)に循環される。
【0032】
有利な実施形態によれば、SO含有ガスは、SOも含有する。
【0033】
SO含有ガスとは、かなりの量のSO、好ましくは10容積%超、より好ましくは40容積%超のSOを含有するガスを意味する。浸出ステップで注入されるSO含有ガスの容積は、そうでなければ実用的でなくなることがある。ガスの他の主成分は、N、およびMn含有固体の熱分解ステップで使用される燃料の燃焼生成物を含み得る。
【0034】
SOおよびSOの混合物は、硫黄の燃焼などの外部ソースから得ることができる。その特定の場合では、混合物は主としてSOを含有し、ごく微量のSOを含有する。
【0035】
必要なSOの量は、基本的に浸出化学量論によって決定づけられる。pH2~4での第1の浸出ステップでは、各Ni、Mn、およびCoの大部分が以下のように反応する。
【0036】
MnO+SO→MnSOおよび、MnO+2SO→MnS
【0037】
NiO+HSO→NiSO+H
【0038】
CoO+HSO→CoSO+H
【0039】
プロセスへの供給に関しては、Ni、Mn、およびCoの大部分が浸出される。Cuは、少量のNi、Mn、およびCoとともに、基本的に第1の残渣中に残る。
【0040】
第2の浸出ステップでは、pH1.5未満で、Cuだけでなくほとんどすべての未溶解のNi、Mn、およびCoが以下のように溶解される。
【0041】
MnO+SO→MnSOおよびMnO+2SO→MnS
【0042】
NiO+HSO→NiSO+H
【0043】
CoO+HSO→CoSO+H
【0044】
CuO+HSO→CuSO+H
【0045】
プロセスへの供給に関しては、Cuの大部分が浸出される。このステップでは、第1の残渣中に残された少量のNi、Mn、およびCoが回収される。したがって、第2の残渣は、Ni、Mn、Co、およびCuがなくなる(depleted)。
【0046】
任意選択の熱分解では、SOとSOの混合物が以下の反応により生じる。
【0047】
MnSO→MnO+SO
【0048】
MnS→MnO+2SO
【0049】
2SO+O→2SO
【0050】
Na、K、およびMgなどの一部の不純物は、再循環を利用してプロセスを連続的に実行する場合、時間とともに蓄積し得る。この問題は、ブリードストリーム(bleed stream)を提供することによって既知の手段により解決され、それによって再循環量の割合が100%未満に多少限定される。ブリードストリームは不純物を除去するために個別に処理されるが、いくらかの硫黄含有種も含有する。この硫黄の損失は比較的少量だが、外部ソースからSO、SO、または硫酸を追加することにより補うことができる。
【実施例
【0051】
[実施例1]
【0052】
この実施例は、金属含有水相(8)の再循環を伴わない二段階浸出プロセスを説明する。したがって、第1の浸出ステップ(L1)を基本的に不純物のない酸性水溶液で行った。
【0053】
第1の浸出ステップ(L1)では、平均粒子径(D50)が100μmの1kg(乾燥)の粉砕団塊を、18g/LのHSOを含有する3.9Lの弱酸性溶液にブレンドした。スラリーを連続的に攪拌し(500rpm)、95℃に加熱した。1.5時間の間、総量550gのSOガスをスラリーに注入した。反応終了時にpH3になった後、スラリーを濾過により分離した。残渣(3)を水で完全に洗浄し、乾燥させた。
【0054】
第2の浸出ステップ(L2)では、残渣(3)を1.52Lの水にリパルプ(repulped)した。スラリーを連続的に攪拌し(500rpm)、80℃に加熱した。1.5時間の間、総量400gのSOおよび150gのHSOをスラリーに徐々に加えた。約100gのSOガスを効率的に消費した。反応終了時にpH0.9になった後、スラリーを濾過により分離した。残渣(5)を水で完全に洗浄し、乾燥させた。
【0055】
第1の浸出ステップの濾液(2)を、NiおよびCoの沈殿(P1)のために処理した。この目的のために、濾液を80℃にし、液体表面にArを吹き付けながら連続的に攪拌(300rpm)した。3.9Lの濾液の場合、NiおよびCoを沈殿させるために363mLのNaSH(34gS/L)が必要だった(つまり、Ni、Co、Cu、およびZnの化学量論的な必要量の160%)。NaSHを2g/分でゆっくりと加えた。スラリーを濾過し、固形物を水で洗浄し、40℃の真空ストーブで乾燥させた。
【0056】
第2の浸出ステップの濾液(4)を、Cuの沈殿(P2)のために同様に処理した。この目的のために、濾液を60℃に加熱し、液体表面にArを吹き付けながら連続的に攪拌(300rpm)した。Cuは、162mLのNaSH(34gS/L)を1.75Lの濾液(つまり、Cuの化学量論的な必要量の100%)に2g/分でゆっくりと加えることにより沈殿した。スラリーを濾過し、固形物を水で洗浄し、40℃の真空ストーブで乾燥させた。
【0057】
さまざまな濾液および残渣の金属組成および量を表1Aに示した。収率は表1Bに報告した。
【0058】
【表1A】
【0059】
【表1B】
【0060】
第1の浸出ステップの間に、Mn、Ni、およびCoをCuに対して選択的に浸出した(それぞれ86%、81%、および85%対1%)。したがって、第1の浸出溶液(2)はほとんどCuフリーだった。これは、第1の硫化物沈殿ステップ(P1)においてNiおよびCoの前でもCuが不可避的に沈殿するため、有利である。したがって、不純物のないNiおよびCoの硫化物を得た。
【0061】
第2の硫化物沈殿ステップ(P2)では、硫化物を適切に投与することで、CoおよびNiを溶液中に残したまま、Cuを選択的に容易に沈殿させる。したがって、不純物のないCu硫化物を得た。
【0062】
[実施例2]
【0063】
この実施例は、金属含有水相(8)の再循環を伴う二段階浸出プロセスを説明する。したがって、第1の浸出ステップ(L1)を、またかなりの量の溶質を含有する酸性水溶液で行った。プロセスは連続的な方法で動作し、平衡状態に達したと想定される。
【0064】
第1の浸出ステップ(L1)では、平均粒子径(D50)が100μmの1kg(乾燥)の粉砕団塊をP2からの2.09Lの濾液(8)にブレンドし、そこに1.81Lの水を加えた。スラリーを連続的に攪拌し(500rpm)、95℃に加熱した。1.5時間の間、総量550gのSOガスを反応器に注入した。反応終了時にpH3になった後、スラリーをデカンテーション(decantation)によって分離した。
【0065】
表2Aにおいてそれぞれ3Sおよび3Lとしてタグ付けされた、固体残渣自体および透過液を含有するアンダーフロー(3)を第2の浸出ステップに供給した。オーバーフローは第1の沈殿ステップに進んだ。
【0066】
第2の浸出ステップ(L2)では、0.22Lの水をアンダーフロー(3)に追加した。スラリーを連続的に攪拌し(500rpm)、80℃に加熱した。1.5時間の間、総量400gのSOおよび150gのHSOをスラリーに徐々に加えた。約100gのSOガスを効率的に消費した。反応終了時にpH0.9になった後、スラリーを濾過により分離した。残渣(5)を水で完全に洗浄し、乾燥させた。
【0067】
第1の浸出ステップの濾液(2)を、NiおよびCoの沈殿(P1)のために処理した。この目的のために、濾液を80℃にし、液体表面にArを吹き付けながら連続的に攪拌(300rpm)した。3.11Lの濾液の場合、NiおよびCoを沈殿させるために428mLのNaSH(34gS/l)が必要だった(つまり、Ni、Co、Cu、およびZnの化学量論的な必要量の160%)。NaSHを1g/分でゆっくりと加えた。スラリーを濾過し、固形物を水で洗浄し、40℃の真空ストーブで乾燥させた。
【0068】
第2の浸出ステップの濾液(4)を、Cuの沈殿(P2)のために同様に処理した。この目的のために、濾液を60℃に加熱し、液体表面にArを吹き付けながら連続的に攪拌(300rpm)した。Cuは、163mLのNaSH(34gS/l)を2.09Lの濾液(つまり、Cuの化学量論的な必要量の100%)に1g/分でゆっくりと加えることにより沈殿した。スラリーを濾過し、固形物を水で洗浄し、40℃の真空ストーブで乾燥させた。金属含有水相(8)を、第1の浸出ステップで再利用した。
【0069】
さまざまな濾液および残渣の金属組成および量を表2Aに示した。収率は表2Bに報告した。
【0070】
【表2A】
【0071】
【表2B】
【0072】
実施例2は、実施例1による再循環を伴わない二段階浸出と比較した場合の再循環を利用する有利な点を実証する。
Mn、Ni、およびCoの全体的な(L1+L2)収率が向上し、それぞれ99%、98%、および98%に達した。
特に第2の浸出ステップのおかげでFeの回収率が向上し、全体的な回収率(L1+L2)が81%という結果になった。
第1の浸出ステップで必要な酸は、再循環された金属含有水相(8)によって供給されるため、酸の消費量が減少した。
【符号の説明】
【0073】
1 多金属団塊
2 第1の浸出溶液
3 第1の浸出残渣
4 第2の浸出溶液
5 第2の残渣
6 Mn含有水相
7 NiおよびCo含有固相
8 金属含有水相
9 Cu含有固相
10 第1の量のSO含有ガス(浸出剤)
11 第1の酸性水溶液(希硫酸溶液)
12 第2の量のSO含有ガス(浸出剤)
13 第2の酸性水溶液(希硫酸溶液)
14 第1の硫化物沈殿剤
15 第2の硫化物沈殿剤
L1 第1の浸出ステップ
L2 第2の浸出ステップ
P1 第1の沈殿ステップ
P2 第2の沈殿ステップ
図1