IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 愛知製鋼株式会社の特許一覧

特許7368719クランクシャフト用トリミング型及びクランクシャフトのトリミング方法
<>
  • 特許-クランクシャフト用トリミング型及びクランクシャフトのトリミング方法 図1
  • 特許-クランクシャフト用トリミング型及びクランクシャフトのトリミング方法 図2
  • 特許-クランクシャフト用トリミング型及びクランクシャフトのトリミング方法 図3
  • 特許-クランクシャフト用トリミング型及びクランクシャフトのトリミング方法 図4
  • 特許-クランクシャフト用トリミング型及びクランクシャフトのトリミング方法 図5
  • 特許-クランクシャフト用トリミング型及びクランクシャフトのトリミング方法 図6
  • 特許-クランクシャフト用トリミング型及びクランクシャフトのトリミング方法 図7
  • 特許-クランクシャフト用トリミング型及びクランクシャフトのトリミング方法 図8
  • 特許-クランクシャフト用トリミング型及びクランクシャフトのトリミング方法 図9
  • 特許-クランクシャフト用トリミング型及びクランクシャフトのトリミング方法 図10
  • 特許-クランクシャフト用トリミング型及びクランクシャフトのトリミング方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】クランクシャフト用トリミング型及びクランクシャフトのトリミング方法
(51)【国際特許分類】
   B21K 1/08 20060101AFI20231018BHJP
   B21J 13/00 20060101ALI20231018BHJP
   B21J 13/02 20060101ALI20231018BHJP
   B21J 5/02 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
B21K1/08
B21J13/00 A
B21J13/02 C
B21J5/02 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019207997
(22)【出願日】2019-11-18
(65)【公開番号】P2021079400
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-07-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000116655
【氏名又は名称】愛知製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000648
【氏名又は名称】弁理士法人あいち国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 圭吾
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-320014(JP,A)
【文献】実開昭54-074733(JP,U)
【文献】特開平01-278933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21K 1/08
B21J 13/00
B21J 13/02
B21J 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲にバリを備えたクランクシャフトから上記バリを分離除去するためのトリミング型であって、
上記クランクシャフトの外形状に沿って打ち抜き穴を有すると共に、該打ち抜き穴の内周上端にバリ取り刃を設けた下型と、
上記クランクシャフトに当接して該クランクシャフトを相対的に押圧して上記バリを上記バリ取り刃に当接させる上型とを有し、
上記下型の上記バリ取り刃は、
上記クランクシャフトの軸方向輪郭に沿った縦切断刃と上記クランクシャフトの軸方向に交差する方向の横方向輪郭に沿った横切断刃とが連なるコーナー切断刃部の少なくとも一部において、
上記縦切断刃と上記横切断刃のうち、一方は、上記クランクシャフトの輪郭から上記バリのみの部分まで延長された延長切断刃を有し、他方は、上記延長切断刃よりも下方にずれた位置に時間差切断刃として配置されており、
少なくとも、上記クランクシャフトのフロント軸の側面に対応する両側の上記縦切断刃からそれぞれ延長された一対の上記延長切断刃が設けられ、上記フロント軸の先端面に対応する上記横切断刃が上記時間差切断刃として上記延長切断刃よりも下方にずれて配置されており、
トリミング時においては、上記フロント軸の側面の上記縦切断刃およびその延長上の上記延長切断刃によるバリの切断が行われ、その後、時間差をもって上記フロント軸の先端面に対応する上記時間差切断刃としての上記横切断刃によるバリの切断が行われるように構成されている、クランクシャフト用トリミング型。
【請求項2】
上記クランクシャフトのクランクアーム及びカウンターウエイトに対応する上記コーナー切断刃部の少なくとも一部において、上記横切断刃から延長された上記延長切断刃を有するとともに、上記縦切断刃が上記時間差切断刃として配置されている、請求項1に記載のクランクシャフト用トリミング型。
【請求項3】
周囲にバリを備えたクランクシャフトから上記バリを分離除去するクランクシャフトのトリミング方法であって、
請求項1又は2に記載のクランクシャフト用トリミング型における上記下型と上記上型との間に上記バリを備えた上記クランクシャフトを配置し、
上記下型と上記上型とを相対的に接近させて上記バリを分離除去する際に、上記延長切断刃及び上記時間差切断刃を有する上記コーナー切断刃部においては、上記延長切断刃による上記バリの切断の後に、上記時間差切断刃によるバリの切断を行う、クランクシャフトのトリミング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクシャフト用トリミング型及びクランクシャフトのトリミング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用エンジン等に使用されるクランクシャフトは、鍛造加工により成形した際に、クランクシャフトの周囲にバリを備えた状態となるため、その後にバリを除去するトリミング工程が追加される。トリミング工程は、通常は、打ち抜き穴の内周上端にバリ取り刃を設けた下型と、クランクシャフトを相対的に押圧してバリをバリ取り刃に当接させる上型とを有するトリミング型を用いて実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-79348号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トリミング工程においては、トリミング型を用いてクランクシャフトを打ち抜いてバリを切断除去するが、その際の剪断力によってクランクシャフトにダメージが生じる場合がある。例えば、バリが引きちぎられたような跡を残す割れが生じる場合がある。特に、クランクシャフトの両端の軸部の側面と端面等における、軸方向に沿った縦切断とそれに交差する横切断とが交わるコーナー状の切断部又はその近傍において、割れが生じやすい傾向がある。
【0005】
このようなトリミング時の割れを防止するために、例えば特許文献1に記載のトリミング型の構成が提案されている。このトリミング型の構成は、トリミング型における刃部の凹状角部の一部に山形形状に突出した突出部を設けるというものである。この構成のトリミング型を用いることによって若干の改善が見られたものの、割れを完全に防止することはできておらず、さらなる改善策の検討がなされている。
【0006】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、従来よりも、トリミング時の割れ発生率を大幅に減少させることができる、クランクシャフト用トリミング型及びクランクシャフトのトリミング方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、周囲にバリを備えたクランクシャフトから上記バリを分離除去するためのトリミング型であって、
上記クランクシャフトの外形状に沿って打ち抜き穴を有すると共に、該打ち抜き穴の内周上端にバリ取り刃を設けた下型と、
上記クランクシャフトに当接して該クランクシャフトを相対的に押圧して上記バリを上記バリ取り刃に当接させる上型とを有し、
上記下型の上記バリ取り刃は、
上記クランクシャフトの軸方向輪郭に沿った縦切断刃と上記クランクシャフトの軸方向に交差する方向の横方向輪郭に沿った横切断刃とが連なるコーナー切断刃部の少なくとも一部において、
上記縦切断刃と上記横切断刃のうち、一方は、上記クランクシャフトの輪郭から上記バリのみの部分まで延長された延長切断刃を有し、他方は、上記延長切断刃よりも下方にずれた位置に時間差切断刃として配置されており、
少なくとも、上記クランクシャフトのフロント軸の側面に対応する両側の上記縦切断刃からそれぞれ延長された一対の上記延長切断刃が設けられ、上記フロント軸の先端面に対応する上記横切断刃が上記時間差切断刃として上記延長切断刃よりも下方にずれて配置されており、
トリミング時においては、上記フロント軸の側面の上記縦切断刃およびその延長上の上記延長切断刃によるバリの切断が行われ、その後、時間差をもって上記フロント軸の先端面に対応する上記時間差切断刃としての上記横切断刃によるバリの切断が行われるように構成されている、クランクシャフト用トリミング型にある。
【0008】
本発明の他の態様は、周囲にバリを備えたクランクシャフトから上記バリを分離除去するクランクシャフトのトリミング方法であって、
上記のクランクシャフト用トリミング型における上記下型と上記上型との間に上記バリを備えた上記クランクシャフトを配置し、
上記下型と上記上型とを相対的に接近させて上記バリを分離除去する際に、上記延長切断刃及び上記時間差切断刃を有する上記コーナー切断刃部においては、上記延長切断刃による上記バリの切断の後に、上記時間差切断刃によるバリの切断を行う、クランクシャフトのトリミング方法にある。
【発明の効果】
【0009】
上記クランク型を用いてトリミングを行う際に、上記延長切断刃及び時間差切断刃を有する上記コーナー切断刃部においては、縦切断刃と横切断刃のうち一方によるクランクシャフトの輪郭に沿った切断と延長切断刃によるバリのみの切断がまず直線的に行われる。これにより、その後、時間差をもって行われる時間差切断刃による切断は、クランクシャフトの輪郭に沿った直線的な部分だけとなる。
【0010】
そのため、上記のごとく切断されるクランクシャフト自身のコーナー部に対しては、コーナー状の剪断力が加わるのではなく、直線的な剪断力が、2回に分けて時間差で加わることとなる。それゆえ、従来よりも一度に加わる剪断力が小さくなると共に、時間差をもって分散することとなり、クランクシャフト自身のコーナー部に生じるダメージを抑制することができる。
【0011】
さらに上記延長切断刃によって、バリのみの切断が余分に行われるため、その後の時間差切断刃による切断時には、切断部位へのバリからの拘束力が小さくなり、よりスムーズな切断が可能となる。
【0012】
したがって、上記下型のコーナー切断刃部のうち、少なくとも従来ダメージが生じやすかった部位を切断する位置に、上記延長切断刃及び時間差切断刃を配置することによって、トリミング時の割れ発生率を大幅に減少させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例における、バリ付きクランクシャフトを示す説明図。
図2】実施例における、(a)クランクシャフト、(b)クランクシャフトから分離除去したバリ、をそれぞれ示す説明図。
図3】実施例における、トリミング型の下型を示す平面図。
図4】実施例における、位置Aの延長切断刃及び時間差切断刃の配置状態を平面的に示す説明図。
図5】従来における、位置A相当部のバリ取り刃の状態を立体的に示す説明図。
図6】実施例における、位置Aの延長切断刃及び時間差切断刃の配置状態を立体的に示す説明図。
図7】実施例における、位置Bの延長切断刃及び時間差切断刃の配置状態を平面的に示す説明図。
図8】実施例における、位置Cの延長切断刃及び時間差切断刃の配置状態を平面的に示す説明図。
図9】実施例における、位置Dの延長切断刃及び時間差切断刃の配置状態を平面的に示す説明図。
図10】実施例における、位置Eの延長切断刃及び時間差切断刃の配置状態を平面的に示す説明図。
図11】実施例における、トリミング型によってクランクシャフトのバリを分離除去を行っている状態を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
上記クランク型の下型には、通常、多数のコーナー切断刃部が存在する。そのすべてに対して上記延長切断刃と上記時間差切断刃を設けてもよいが、従来の経験から割れが生じやすいコーナー部に対応する部分だけに設けてもよい。
【0015】
例えば、クランクシャフトの両端軸部においては、トリミングにより割れが生じやすい傾向がある。そのため、上記クランクシャフトの両端軸部に対応する上記コーナー切断刃部の少なくとも一部において、上記縦切断刃から延長された上記延長切断刃を有するとともに、上記横切断刃が上記時間差切断刃として配置されている構成をとることができる。
【0016】
また、上記クランクシャフトのクランクアーム及びカウンターウエイトに対応する上記コーナー切断刃部の少なくとも一部において、上記横切断刃から延長された上記延長切断刃を有するとともに、上記縦切断刃が上記時間差切断刃として配置されている構成をとることもできる。
【0017】
ここで、上記延長切断刃は、縦切断刃または横切断刃から少しでも延長して配置されれば上述した作用効果が生じるが、特に、10mm以上の長さを有するように構成することによって、より確実に上記作用効果を得ることができる。ただし、長すぎても効果が飽和するので、上限としては、型製造上の理由から20mm程度とすることが好ましい。
【0018】
また、上記時間差切断刃は、延長切断刃よりも下方にずれた位置、つまり、トリミング時に下型に対して上型が相対的に前進する方向にずれた位置に設けられるが、そのずれ量は、少なくとも、バリの厚み程度以上あればよい。具体的には確実に時間差を得るために、ずれ量は、5mm以上とすることが好ましく、型製造上の理由から、10mm以下程度の範囲内とすることが好ましい。
【0019】
なお、上記トリミング型の説明においては、下型及び上型という表現をし、下型が上型よりも下方に位置する状態で説明したが、実際に上記トリミング型を使用する際には、下型及び上型の相対的な組み合わせ関係を維持した状態で、全体の姿勢を左右上下において逆転等させて使用することももちろん可能である。
【実施例
【0020】
(実施例1)
本願のクランクシャフト用トリミング型及びクランクシャフトのトリミング方法に係る実施例につき図を用いて説明する。
本例のトリミング型1は、図1及び図2に示すごとく、周囲にバリ89を備えたクランクシャフト8からバリ89を分離除去するためのトリミング型である。トリミング型1は、図3に示すように、クランクシャフト8の外形状に沿って打ち抜き穴20を有すると共に、打ち抜き穴20の内周上端にバリ取り刃3を設けた下型2と、クランクシャフト8に当接してクランクシャフト8を相対的に押圧してバリ89をバリ取り刃3に当接させる上型4(図11)とを有する。
【0021】
下型2のバリ取り刃3は、図3図4図6図10に示すように、クランクシャフト8の軸方向輪郭に沿った縦切断刃31とクランクシャフト8の軸方向に交差する方向の横方向輪郭に沿った横切断刃32とが連なるコーナー切断刃部3cの少なくとも一部において、縦切断刃31と横切断刃32のうち、一方は、クランクシャフト8の輪郭からバリ89のみの部分まで延長された延長切断刃35を有し、他方は、延長切断刃35よりも下方にずれた位置に時間差切断刃36として配置されている。
以下、さらに詳説する。
【0022】
本例で処理するクランクシャフト8は、図2(a)に示すように、フロント軸81、ジャーナル82、クランクアーム83、クランクピン84、バランスウエイト85、後端フランジ部86、及び後端突出軸87等を備えたものであり、平面的に見ると多数のコーナー部を含む輪郭形状を有している。図3に示すように、下型2の打ち抜き穴20の内周上端に設けられたバリ取り刃3は、このクランクシャフト8の全周の輪郭に沿って設けられており、多数のコーナー切断刃部3cを備えている。
【0023】
本例では、図3に示すように、多数のコーナー切断刃部3cのうち、フロント軸81の先端側の位置A、クランクアーム83の先端側の位置B~D、及び、後端フランジ部86及び後端突出軸87を含む位置Eにおける複数のコーナー切断刃部3cについて、延長切断刃35と時間差切断刃36とを有する構成を採用した。
【0024】
図4は、図3における位置Aの部分を部分的に拡大したものである。そして、図5には、従来の同じ位置Aにおけるバリ取り刃3の配置状態を、異なる方向からみて立体的にわかるように示した。図6には、本例の位置Aにおけるバリ取り刃3の配置状態を、図5の場合と同様に示した。なお、図2(a)及び図3図5においては、クランクシャフト8のフロント軸81の延長上の軸方向を矢印Xにて示した。
【0025】
まず、図5に示すように、従来の位置Aのバリ取り刃3は、この部分だけを見れば、縦切断刃31も横切断刃32も打ち抜き方向においてほぼ同じ位置に配置され、かつ、フロント軸81の輪郭に合致するように配置されていた。
【0026】
これに対し、本例では、図4及び図6に示すように、位置Aにおける縦切断刃31と横切断刃32の構成を従来と異なる形態に変更した。これらの図において、バリ取り刃3を設けた面の位置が分かるように、ハッチングの種類を変えて示してある(他の図においても同様とした。)。すべてのバリ取り刃3は、打ち抜き穴20の内周上端に連なる所定の平面と打ち抜き穴20の内周面とにより形成される略直角の角部から構成されるため、バリ取り刃3に連なる平面の位置を上下させることによって、バリ取り刃3の上下方向の位置が変更されることとなる。
【0027】
これらの図に示すように、位置Aにおいては、フロント軸81の側面811(図2(a))に対応する両側2つの縦切断刃31に連ねてそれぞれ延長された延長切断刃35を設けた。そして、フロント軸81の先端面812(図2(a))に対応する横切断刃32を下方にずらして時間差切断刃36とした。
【0028】
図3図7図9に示すごとく、クランクアーム83の先端側の位置B~Dについては、クランクアーム83に沿った横切断刃32に連ねて延長された延長切断刃35を設けた。さらに、クランクピン84側に延びる縦切断刃31を下方にずらして時間差切断刃36とした。
【0029】
図3及び図10に示すように、後端フランジ部86及び後端突出軸87を含む位置Eにおいては、6つの延長切断刃35と3つの時間差切断刃36を設けた。まず、図2(a)に示すように、後端フランジ部86の輪郭に対応する部分は、同図においてその上下に2カ所存在するが、それぞれにおいて、両側面861に沿った2つの横切断刃32に連ねて延長切断刃35を設けた。さらに、延長切断刃35の間の縦切断刃31を下方にずらして時間差切断刃36とした。
【0030】
また、同図に示すように、後端突出軸87に対応する部分は、上述したフロント軸81に対応する部分と同様に、後端突出軸87の側面871に対応する両側2つの縦切断刃31に連ねてそれぞれ延長された延長切断刃35を設けた。そして、後端突出軸87の後端面872に対応する横切断刃32を下方にずらして時間差切断刃36とした。
【0031】
本例では、上述した延長切断刃35の長さはいずれも約20mmとし、時間差切断刃36の延長切断刃35からのずれ量は、約10mmとしたが、この寸法については、所望の効果が得られる限り、変更可能である。
【0032】
なお、本例においては、上述した位置A~E以外の位置に存在するコーナー切断刃部3cについては、従来と同様に、輪郭に沿った縦切断刃31と横切断刃32とを連ねた状態を維持した。
【0033】
上記の構成の下型2を含むトリミング型1を用いてクランクシャフト8のトリミングを行うに当たっては、図11に示すごとく、下型2と上型4との間にバリ89を備えたクランクシャフト8を配置する。このとき、必要に応じて、上型4に対向すると共に下型2の打ち抜き穴20に挿通可能な予備下型(図示略)を用い、上型4と予備下型によってクランクシャフト8を挟持してクランクシャフト8の下型2に対する相対的な移動を制御することも可能である。図11においては、予備下型を用いない例を示してあり、バリ取り刃3の詳細な構成の図示は省略してある。
【0034】
バリ89の分離除去は、下型2と上型4とを相対的に接近させ、バリ89をバリ取り刃3に当接することにより行う。このとき、延長切断刃35及び時間差切断刃36を有するコーナー切断刃部3cにおいては、延長切断刃35が先にバリ89に当接し、その後、時間差を設けて時間差切断刃36がバリ89に当接する。
【0035】
すなわち、延長切断刃35及び時間差切断刃36を有するコーナー切断刃部3cにおいては、縦切断刃31又は横切断刃32とこれに連なる延長切断刃35とが、まずバリ89に当接し、これらによる切断が行われる。具体的には、縦切断刃31又は横切断刃32によるクランクシャフト8の輪郭に沿った切断と、延長切断刃35によるバリ89のみの切断が直線的に行われる。
【0036】
その後、延長切断刃35による切断と時間差をもって、時間差切断刃36がバリ89に当接し、切断が行われる。このとき、時間差切断刃36により切断する部分は、クランクシャフト8の輪郭に沿った直線的な部分だけとなる。
【0037】
そのため、上記のごとく切断されるクランクシャフト8のコーナー部に対しては、コーナー状の剪断力が加わるのではなく、直線的な剪断力が、2回に分けて時間差で加わることとなる。それゆえ、従来よりも一度に加わる剪断力が小さくなると共に、時間差をもって分散することとなり、クランクシャフト8自身のコーナー部に生じるダメージを抑制することができる。
【0038】
さらに延長切断刃35によって、バリ89のみの切断が余分に行われるため、その後の時間差切断刃36による切断時には、切断部位へのバリ89からの拘束力が小さくなり、よりスムーズな切断が可能となる。
【0039】
したがって、下型2のコーナー切断刃部3cのうち、少なくとも従来ダメージが生じやすかった部位を切断する位置に、延長切断刃35及び時間差切断刃36を配置することによって、トリミング時の割れ発生率を大幅に減少させ、ほぼ皆無にすることが可能となる。
【符号の説明】
【0040】
1 トリミング型
2 下型
3 バリ取り刃
3c コーナー切断刃部
31 縦切断刃
32 横切断刃
35 延長切断刃
36 時間差切断刃
4 上型
8 クランクシャフト
89 バリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11