(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 67/03 20060101AFI20231018BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20231018BHJP
C08K 5/1515 20060101ALI20231018BHJP
C08K 3/20 20060101ALI20231018BHJP
C08K 3/24 20060101ALI20231018BHJP
C08K 5/16 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
C08L67/03
C08L63/00 C
C08K5/1515
C08K3/20
C08K3/24
C08K5/16
(21)【出願番号】P 2019140901
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】五島 一也
(72)【発明者】
【氏名】牛島 隆二
【審査官】古妻 泰一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-271492(JP,A)
【文献】国際公開第2010/140622(WO,A1)
【文献】特表2006-515035(JP,A)
【文献】日本難燃剤協会 会員各社商品紹介,2022年11月28日,https://www.frcj.jp/2015/company/company05.html
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 67/03
C08L 63/00
C08K 5/1515
C08K 3/20
C08K 3/24
C08K 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部と、
(B)トルエン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトンからなる群から選択される有機溶媒の含有量が50ppm以下であ
り、エポキシ当量が32,000g/eq以上であるハロゲン化エポキシ系難燃剤と、
(C)耐加水分解性向上剤0.1~10質量部と、を含有し、
組成物全体におけるエポキシ基の総含有量が
0.0071mol/kg以上0.0155mol/kg以下である難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物であり、
前記耐加水分解性向上剤が、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、及びこれらの組み合わせから選択される1種以上を含有することを特徴とする、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項2】
(B)ハロゲン化エポキシ系難燃剤の含有量が、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、3~50質量部である、請求項
1に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項3】
(B)ハロゲン化エポキシ系難燃剤が臭素化エポキシ系難燃剤である、請求項1
または2に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項4】
五酸化アンチモン、三酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウムからなる群から選択される難燃助剤をさらに含有する、請求項1から
3のいずれか一項に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1から
4のいずれか一項に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を射出成形してなる成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物およびその成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)は、機械的特性、電気的特性、耐熱性など各種特性に優れるため、エンジニアリングプラスチックとして自動車部品や電気・電子機器部品など種々の用途に広く利用されている。これらのうち、電気・電子機器部品用途では、トラッキング等による発火を防ぐため、使用される材料には難燃性が要求されている。ポリブチレンテレフタレート樹脂は、それ自体では難燃性が不足するため、難燃剤を添加した難燃性樹脂組成物として使用されている。
【0003】
このようなポリブチレンテレフタレート樹脂に添加される難燃剤の一種としてハロゲン化エポキシ系難燃剤があり、特許文献1には、臭素化エポキシ化合物系難燃剤の製造方法が紹介されている。この製造方法は、芳香核含有アルコール類のジグリシジルエーテル、多価フェノール類のジ-もしくはポリグリシジルエーテル、芳香族二塩基酸のジグリシジルエステル、アルキルフェノール類のモノグリシジルエーテル、ヒドロキシ安息香酸のモノグリシジルエーテルエステル、p-アミノフェノールの(β-メチル)エピクロルヒドリン付加生成物、または芳香族ジ-もしくはポリアミン類などをベースとするポリグリシジルアミンなどの芳香族を有するエポキシ化合物、あるいはそれらの前駆体であるクロルヒドリン化合物に対して臭素添加による臭素化を行い、得られた臭素化ブロムヒドリン化合物または臭素化クロルヒドリン化合物を、アルカリ金属の水酸化物を用いて、脱臭化水素または脱塩化水素を経て閉環エポキシ化することを特徴としている。
【0004】
また特許文献2には、エンジニアリング熱可塑性プラスチック用の臭素化エポキシ化合物系難燃剤が紹介されている。この難燃剤の分子量は7,000~50,000ダルトンであり、エポキシ当量は10,000g/eqを超えることが好ましいとされている。
【0005】
さらに臭素化エポキシ化合物系難燃剤は、それ自体の反応により増粘しうることが知られており、溶融混練時の増粘によりスクリューへの付着物が生成し、その炭化物が成形品に混入することによる黒色異物(BS:Black Speck)の発生を抑制するため、分子量やエポキシ当量の範囲を調整するということがなされていた。例えば特許文献3では、エポキシ当量が600~1500g/eqのエポキシ化合物を用いることにより、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の成形品における黒色異物(炭化物)の発生を抑制できることが紹介されている。このような黒色異物(炭化物)は、成形品の外観を悪化させるのみならず、脆弱部あるいは応力集中部として、成形品の破壊の起点となるおそれがあるため、これを抑制することが要求される。
【0006】
ところで、ポリブチレンテレフタレート樹脂はポリエステル樹脂であるため、加水分解による物性の低下が起こりやすいという欠点も有する。このため、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品が湿熱環境下で用いられる場合、加水分解による物性の低下が発生し、さらに成形品中に上述のような異物が混入していると、成形品が破壊しやすくなる。そこで、ポリブチレンテレフタレート樹脂の耐加水分解性を向上させる技術として、特許文献4では、ポリブチレンテレフタレート樹脂に、アクリル系コアシェルポリマー、エポキシ化合物、および芳香族カルボジイミド化合物を添加したポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特公昭60-016952号
【文献】特許第5143419号
【文献】特許第6100983号
【文献】特開2006-104363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、難燃剤としてハロゲン化エポキシ系難燃剤を用いるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物において、当該組成物からなる成形品が湿熱環境下で使用される際の加水分解による物性の低下を抑制するとともに、当該成形品の破壊の起点となる異物の混入を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記を課題とする研究の過程で、難燃剤としてハロゲン化エポキシ系難燃剤を用い、特定の耐加水分解性向上剤を含むポリブチレンテレフタレート樹脂組成物において、ハロゲン化エポキシ系難燃剤中の有機溶媒の含有量を一定量以下とし、かつポリブチレンテレフタレート樹脂組成物全体におけるエポキシ基の総含有量を一定量以下とすることにより上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下の(1)~(6)に関する。
(1)(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部と、(B)トルエン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトンからなる群から選択される有機溶媒の含有量が50ppm以下であるハロゲン化エポキシ系難燃剤3~50質量部と、(C)耐加水分解性向上剤0.1~10質量部と、を含有し、組成物全体におけるエポキシ基の総含有量が0.0155mol/kg以下である難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物であり、前記耐加水分解性向上剤が、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物、及びこれらの組み合わせから選択される1種以上を含有することを特徴とする、難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(2)(B)ハロゲン化エポキシ系難燃剤のエポキシ当量が30,000g/eq以上である、(1)に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(3)(B)ハロゲン化エポキシ系難燃剤の含有量が、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、3~50質量部である、(1)または(2)に記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(4)(B)ハロゲン化エポキシ系難燃剤が臭素化エポキシ系難燃剤である、(1)から(3)のいずれかに記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(5)五酸化アンチモン、三酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウムからなる群から選択される難燃助剤をさらに含有する、(1)から(4)のいずれかに記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物。
(6)(1)から(5)のいずれかに記載の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を射出成形してなる成形品。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、難燃剤としてハロゲン化エポキシ系難燃剤を用いる難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物において、当該難燃剤中の有機溶媒の含有量を一定量以下とし、かつ難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物全体におけるエポキシ基の総含有量を一定量以下とすることで、当該難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を用いた成形品中への異物の混入を抑制することができ、かつ当該成形品の湿熱環境下における加水分解による物性の低下を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
【0013】
[難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物]
以下、本実施形態の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の各成分の詳細を例を挙げて説明する。
【0014】
((A)ポリブチレンテレフタレート樹脂)
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)は、少なくともテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体(C1-6のアルキルエステルや酸ハロゲン化物等)を含むジカルボン酸成分と、少なくとも炭素原子数4のアルキレングリコール(1,4-ブタンジオール)又はそのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)を含むグリコール成分とを重縮合して得られるポリブチレンテレフタレート樹脂である。本実施形態において、(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂はホモポリブチレンテレフタレート樹脂に限らず、ブチレンテレフタレート単位を60モル%以上含有する共重合体であってもよい。
【0015】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の末端カルボキシル基量は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されないが、30meq/kg以下が好ましく、25meq/kg以下がより好ましい。
【0016】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は本発明の目的を阻害しない範囲で特に制限されないが、0.60dL/g以上1.2dL/g以下であるのが好ましく、0.65dL/g以上0.9dL/g以下であるのがより好ましい。このような範囲の固有粘度のポリブチレンテレフタレート樹脂を用いる場合には、得られるポリブチレンテレフタレート樹脂組成物が特に成形性に優れたものとなる。また、異なる固有粘度を有するポリブチレンテレフタレート樹脂をブレンドして、固有粘度を調整することもできる。例えば、固有粘度1.0dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂と固有粘度0.7dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂とをブレンドすることにより、固有粘度0.9dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂を調製することができる。ポリブチレンテレフタレート樹脂の固有粘度は、例えば、o-クロロフェノール中で温度35℃の条件で測定することができる。
【0017】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の調製において、コモノマー成分としてテレフタル酸以外の芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を用いる場合、例えば、イソフタル酸、フタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル等のC8-14の芳香族ジカルボン酸;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC4-16のアルカンジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸等のC5-10のシクロアルカンジカルボン酸;これらのジカルボン酸成分のエステル形成性誘導体(C1-6のアルキルエステル誘導体や酸ハロゲン化物等)を用いることができる。これらのジカルボン酸成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0018】
これらのジカルボン酸成分の中では、イソフタル酸等のC8-12の芳香族ジカルボン酸、及び、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等のC6-12のアルカンジカルボン酸がより好ましい。
【0019】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の調製において、コモノマー成分として1,4-ブタンジオール以外のグリコール成分を用いる場合、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,3-オクタンジオール等のC2-10のアルキレングリコール;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール;シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA等の脂環式ジオール;ビスフェノールA、4,4’-ジヒドロキシビフェニル等の芳香族ジオール;ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加体、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド3モル付加体等の、ビスフェノールAのC2-4のアルキレンオキサイド付加体;又はこれらのグリコールのエステル形成性誘導体(アセチル化物等)を用いることができる。これらのグリコール成分は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0020】
これらのグリコール成分の中では、エチレングリコール、トリメチレングリコール等のC2-6のアルキレングリコール、ジエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール、又は、シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール等がより好ましい。
【0021】
ジカルボン酸成分及びグリコール成分の他に使用できるコモノマー成分としては、例えば、4-ヒドロキシ安息香酸、3-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、4-カルボキシ-4’-ヒドロキシビフェニル等の芳香族ヒドロキシカルボン酸;グリコール酸、ヒドロキシカプロン酸等の脂肪族ヒドロキシカルボン酸;プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、カプロラクトン(ε-カプロラクトン等)等のC3-12ラクトン;これらのコモノマー成分のエステル形成性誘導体(C1-6のアルキルエステル誘導体、酸ハロゲン化物、アセチル化物等)が挙げられる。
【0022】
(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂の含有量は、樹脂組成物の全質量の10~90質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましく、30~70質量%であることがさらに好ましい。
【0023】
((B)ハロゲン化エポキシ系難燃剤)
本発明のハロゲン化エポキシ系難燃剤に用いられるエポキシ化合物は、1分子中にエポキシ基を1つ以上含有している。エポキシ化合物としては、熱安定性と耐加水分解性を高める観点から、芳香族エポキシ化合物を用いることが好ましい。芳香族エポキシ化合物の例としては、ビフェニル型エポキシ化合物、ビスフェノールA型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物などが挙げられる。 またエポキシ化合物として、2種以上の化合物を任意に組み合わせて使用することも可能である。
【0024】
上記のエポキシ化合物のエポキシ当量は30,000g/当量(g/eq)以上であることが好ましく、32,000g/eq以上であることがより好ましく、34,000g/eq以上であることがさらに好ましく、36,000g/eq以上であることがよりさらに好ましく、36,500g/eq以上であることが特に好ましい。エポキシ当量をこの範囲にすることにより、本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物から得られた成形品の外観を良好なものとすることができ、成形時の押出機や成形機のスクリューへの付着物の発生を抑制することができる。また、本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物から得られた成形品の機械的特性を良好な値とすることができる。
【0025】
また、本発明のハロゲン化エポキシ系難燃剤は、臭素化エポキシ系難燃剤であることが好ましい。
【0026】
上述した通り、本発明のハロゲン化エポキシ系難燃剤中のトルエン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトンからなる群から選択される有機溶媒の含有量は50ppm以下である。また、有機溶媒の含有量は40ppm以下であることが好ましく、30ppm以下であることがより好ましく、20ppm以下であることがさらに好ましく、10ppm以下であることがよりさらに好ましく、8ppm以下であることが特に好ましい。ハロゲン化エポキシ系難燃剤中の有機溶媒の含有量をこの範囲にすることにより、本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物から得られた成形品の外観を良好なものとすることができ、成形時の押出機や成形機のスクリューへの付着物の発生、ひいてはその炭化物の混入を抑制することができる。また、本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物から得られた成形品の機械的特性を良好な値とすることができる。
【0027】
(難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物全体におけるエポキシ基の総含有量)
上述した通り、本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物全体におけるエポキシ基の総含有量は、0.0155mol/kg以下である。また、組成物全体におけるエポキシ基の総含有量は、0.0150mol/kg以下であることが好ましく、0.0140mol/kg以下であることがより好ましく、0.0130mol/kg以下であることがよりさらに好ましく、0.0120mol/kg以下であることが特に好ましい。難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物全体におけるエポキシ基の総含有量をこの範囲にすることにより、本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物から得られた成形品の外観を良好なものとすることができ、成形時の押出機や成形機のスクリューへの付着物の発生、ひいてはその炭化物の混入を抑制することができる。また、本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物から得られた成形品の機械的特性を良好な値とすることができる。
【0028】
(難燃助剤)
本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、難燃助剤をさらに含有することが好ましい。難燃助剤としては特に限定されないが、五酸化アンチモン、三酸化アンチモン、アンチモン酸ナトリウムからなる群から選択される難燃助剤が好ましく、五酸化アンチモン、三酸化アンチモンがより好ましい。
【0029】
さらに、燃焼した樹脂が滴下することによる延焼を防ぐ目的で、ポリテトラフルオロエチレン等の滴下防止剤をあわせて使用することも好ましい。
【0030】
上記のハロゲン化エポキシ系難燃剤及び難燃助剤の樹脂に対する添加の範囲は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して前記ハロゲン化エポキシ系難燃剤3~50質量部であることが好ましく、5~48質量部であることがより好ましく、10~45質量部であることがさらに好ましい。なお、エポキシ基の総含有量は、ハロゲン化エポキシ系難燃剤以外に、後述する耐加水分解性向上剤等として添加するエポキシ系化合物(エポキシ樹脂等)の含有量を考慮して決定すれば良い。また、難燃助剤は1~40質量部の範囲が好ましい。ハロゲン化エポキシ系難燃剤及び難燃助剤の添加量が過少であると十分な難燃性を付与することができず、過大であると成形品としての機械的特性を悪化させることがある。
【0031】
((C)耐加水分解性向上剤)
本発明に用いられる(C)耐加水分解性向上剤は、本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物からなる成形品が湿熱環境下で使用される場合において要求される、耐加水分解性を向上させるために添加される。
【0032】
(C)耐加水分解性向上剤としては、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、オキサジン化合物などが挙げられ、これらの1種、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
カルボジイミド化合物としては、分子内に少なくともひとつの(-N=C=N-)で表されるカルボジイミド基を有する化合物を用いることができ、このようなカルボジイミド化合物は、例えば適当な触媒の存在下に、有機イソシアネートを加熱し、脱炭酸反応で製造できる。
【0034】
カルボジイミド化合物の例としては、ジフェニルカルボジイミド、ジ-シクロヘキシルカルボジイミド、ジ-2,6-ジメチルフェニルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジオクチルデシルカルボジイミド、ジ-o-トルイルカルボジイミド、ジ-p-トルイルカルボジイミド、ジ-p-ニトロフェニルカルボジイミド、ジ-p-アミノフェニルカルボジイミド、ジ-p-ヒドロキシフェニルカルボジイミド、ジ-p-クロルフェニルカルボジイミド、ジ-o-クロルフェニルカルボジイミド、ジ-3,4-ジクロルフェニルカルボジイミド、ジ-2,5-ジクロルフェニルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-o-トルイルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジシクロヘキシルカルボジイミド、p-フェニレン-ビス-ジ-p-クロルフェニルカルボジイミド、2,6,2′,6′-テトライソプロピルジフェニルカルボジイミド、ヘキサメチレン-ビス-シクロヘキシルカルボジイミド、エチレン-ビス-ジフェニルカルボジイミド、エチレン-ビス-ジ-シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´-ジ-o-トリイルカルボジイミド、N,N´-ジフェニルカルボジイミド、N,N´-ジオクチルデシルカルボジイミド、N,N´-ジ-2,6-ジメチルフェニルカルボジイミド、N-トリイル-N´-シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´-ジ-2,6-ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N´-ジ-2,6-ジ-tert -ブチルフェニルカルボジイミド、N-トルイル-N´-フェニルカルボジイミド、N,N´-ジ-p-ニトロフェニルカルボジイミド、N,N´-ジ-p-アミノフェニルカルボジイミド、N,N´-ジ-p-ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N´-ジ-シクロヘキシルカルボジイミド、N,N´-ジ-p-トルイルカルボジイミド、N,N′-ベンジルカルボジイミド、N-オクタデシル-N′-フェニルカルボジイミド、N-ベンジル-N′-フェニルカルボジイミド、N-オクタデシル-N′-トリルカルボジイミド、N-シクロヘキシル-N′-トリルカルボジイミド、N-フェニル-N′-トリルカルボジイミド、N-ベンジル-N′-トリルカルボジイミド、N,N′-ジ-o-エチルフェニルカルボジイミド、N,N′-ジ-p-エチルフェニルカルボジイミド、N,N′-ジ-o-イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′-ジ-p-イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′-ジ-o-イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N′-ジ-p-イソブチルフェニルカルボジイミド、N,N′-ジ-2,6-ジエチルフェニルカルボジイミド、N,N′-ジ-2-エチル-6-イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′-ジ-2-イソブチル-6-イソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′-ジ-2,4,6-トリメチルフェニルカルボジイミド、N,N′-ジ-2,4,6-トリイソプロピルフェニルカルボジイミド、N,N′-ジ-2,4,6-トリイソブチルフェニルカルボジイミドなどのモノ又はジカルボジイミド化合物、ポリ(1,6-ヘキサメチレンカルボジイミド)、ポリ(4,4′-メチレンビスシクロヘキシルカルボジイミド)、ポリ(1,3-シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(1,4-シクロヘキシレンカルボジイミド)、ポリ(4,4′-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(3,3′-ジメチル-4,4′-ジフェニルメタンカルボジイミド)、ポリ(ナフチレンカルボジイミド)、ポリ(p-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(m-フェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリルカルボジイミド)、ポリ(ジイソプロピルカルボジイミド)、ポリ(メチル-ジイソプロピルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリエチルフェニレンカルボジイミド)、ポリ(トリイソプロピルフェニレンカルボジイミド)などのポリカルボジイミドなどが挙げられる。また、ポリカルボジイミドには、m-キシリレンジイソシアネート、p-キシレンジイソシアネート、m-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、p-テトラメチルキシレンジイソシアネート等から合成されるキシリレン系ポリカルボジイミドも用いることができる。さらに、ジイソシアネート化合物を、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、シリコーンジオール、ポリオレフィンポリオール、ポリウレタンポリオール、アルキレン(炭素数21~)ジオール等のジオール化合物と反応させたカルボジイミド化合物を用いることもできる。これらの中でも、耐熱性の観点から、N,N´-ジ-2,6-ジイソプロピルフェニルカルボジイミド、2,6,2′,6′-テトライソプロピルジフェニルカルボジイミドなどの芳香族カルボジイミドが好ましく、また、ポリカルボジイミドが好ましい。
【0035】
エポキシ化合物としては、分子構造中にエポキシ基を含む化合物であればよく、グリシジルエーテル化合物、グリシジルエステル化合物、グリシジルアミン化合物、グリシジルイミド化合物、脂環式エポキシ化合物を好ましく使用することができる。
【0036】
グリシジルエーテル化合物の例としては、ブチルグリシジルエーテル、ステアリルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、o-フェニルフェニルグリシジルエーテル、エチレンオキシドラウリルアルコールグリシジルエーテル、エチレンオキシドフェノールグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス-(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンなどのビスフェノール類とエピクロルヒドリンとの縮合反応から得られるビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールFジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールSジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂などを挙げることができる。なかでも、ビスフェノールAジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂が好ましい。
【0037】
グリシジルエステル化合物の例としては、安息香酸グリシジルエステル、p-トルイル酸グリシジルエステル、シクロヘキサンカルボン酸グリシジルエステル、ステアリン酸グリシジルエステル、ラウリン酸グリシジルエステル、パルミチン酸グリシジルエステル、バーサティック酸グリシジルエステル、オレイン酸グリシジルエステル、リノール酸グリシジルエステル、リノレン酸グリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、イソフタル酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル、ビ安息香酸ジグリシジルエステル、メチルテレフタル酸ジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、シクロヘキサンジカルボン酸ジグリシジルエステル、アジピン酸ジグリシジルエステル、コハク酸ジグリシジルエステル、セバシン酸ジグリシジルエステル、ドデカンジオン酸ジグリシジルエステル、オクタデカンジカルボン酸ジグリシジルエステル、トリメリット酸トリグリシジルエステル、ピロメリット酸テトラグリシジルエステルなどを挙げることができる。なかでも、安息香酸グリシジルエステルやバーサティック酸グリシジルエステルが好ましい。
【0038】
グリシジルアミン化合物の例としては、テトラグリシジルアミノジフェニルメタン、トリグリシジル-p-アミノフェノール、トリグリシジル-m-アミノフェノール、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルトルイジン、テトラグリシジルメタキシレンジアミン、ジグリシジルトリブロモアニリン、テトラグリシジルビスアミノメチルシクロヘキサン、トリグリシジルシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレートなどを挙げることができる。
【0039】
グリシジルイミド化合物の例としては、N-グリシジルフタルイミド、N-グリシジル-4-メチルフタルイミド、N-グリシジル-4,5-ジメチルフタルイミド、N-グリシジル-3-メチルフタルイミド、N-グリシジル-3,6-ジメチルフタルイミド、N-グリシジル-4-エトキシフタルイミド、N-グリシジル-4-クロルフタルイミド、N-グリシジル-4,5-ジクロルフタルイミド、N-グリシジル-3,4,5,6-テトラブロムフタルイミド、N-グリシジル-4-n-ブチル-5-ブロムフタルイミド、N-グリシジルサクシンイミド、N-グリシジルヘキサヒドロフタルイミド、N-グリシジル-1,2,3,6-テトラヒドロフタルイミド、N-グリシジルマレインイミド、N-グリシジル-α,β-ジメチルサクシンイミド、N-グリシジル-α-エチルサクシンイミド、N-グリシジル-α-プロピルサクシンイミド、N-グリシジルベンズアミド、N-グリシジル-p-メチルベンズアミド、N-グリシジルナフトアミド、N-グリシジルステラミドなどを挙げることができる。なかでも、N-グリシジルフタルイミドが好ましい。
【0040】
脂環式エポキシ化合物の例としては、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビニルシクロヘキセンジエポキシド、N-メチル-4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸イミド、N-エチル-4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸イミド、N-フェニル-4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸イミド、N-ナフチル-4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸イミド、N-トリル-3-メチル-4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸イミドなどを挙げることができる。
【0041】
また、その他のエポキシ化合物として、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化鯨油などのエポキシ変性脂肪酸グリセリド、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノゾラック型エポキシ樹脂などを用いることができる。
【0042】
さらに、エポキシ化合物としては、α,β-不飽和酸のグリシジルエステル、例えばアクリル酸グリシジルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、エタクリル酸グリシジルエステル等のエポキシ化合物を、ランダム、ブロックまたはグラフト共重合により他のモノマーと共重合させた、エポキシ変性樹脂あるいはエポキシ変性エラストマー、具体的には、α-オレフィンと、α,β-不飽和酸のグリシジルエステルからなるグリシジル基含有共重合体や、エポキシ基含有ビニル系単量体をグラフト重合してなるポリオルガノシロキサン/ポリアルキル(メタ)アクリレ-ト複合ゴムグラフト共重合体、主鎖にエポキシ基を有するスチレン/ブタジエン共重合体エラストマー等を用いることもできる。
【0043】
オキサゾリン化合物の例としては、2-メトキシ-2-オキサゾリン、2-エトキシ-2-オキサゾリン、2-プロポキシ-2-オキサゾリン、2-ブトキシ-2-オキサゾリン、2-ペンチルオキシ-2-オキサゾリン、2-ヘキシルオキシ-2-オキサゾリン、2-ヘプチルオキシ-2-オキサゾリン、2-オクチルオキシ-2-オキサゾリン、2-ノニルオキシ-2-オキサゾリン、2-デシルオキシ-2-オキサゾリン、2-シクロペンチルオキシ-2-オキサゾリン、2-シクロヘキシルオキシ-2-オキサゾリン、2-アリルオキシ-2-オキサゾリン、2-メタアリルオキシ-2-オキサゾリン、2-クロチルオキシ-2-オキサゾリン、2-フェノキシ-2-オキサゾリン、2-クレジル-2-オキサゾリン、2-o-エチルフェノキシ-2-オキサゾリン、2-o-プロピルフェノキシ-2-オキサゾリン、2-o-フェニルフェノキシ-2-オキサゾリン、2-m-エチルフェノキシ-2-オキサゾリン、2-m-プロピルフェノキシ-2-オキサゾリン、2-p-フェニルフェノキシ-2-オキサゾリン、2-メチル-2-オキサゾリン、2-エチル-2-オキサゾリン、2-プロピル-2-オキサゾリン、2-ブチル-2-オキサゾリン、2-ペンチル-2-オキサゾリン、2-ヘキシル-2-オキサゾリン、2-ヘプチル-2-オキサゾリン、2-オクチル-2-オキサゾリン、2-ノニル-2-オキサゾリン、2-デシル-2-オキサゾリン、2-シクロペンチル-2-オキサゾリン、2-シクロヘキシル-2-オキサゾリン、2-アリル-2-オキサゾリン、2-メタアリル-2-オキサゾリン、2-クロチル-2-オキサゾリン、2-フェニル-2-オキサゾリン、2-o-エチルフェニル-2-オキサゾリン、2-o-プロピルフェニル-2-オキサゾリン、2-o-フェニルフェニル-2-オキサゾリン、2-m-エチルフェニル-2-オキサゾリン、2-m-プロピルフェニル-2-オキサゾリン、2-p-フェニルフェニル-2-オキサゾリン、2,2′-ビス(2-オキサゾリン)、2,2′-ビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2′-ビス(4,4′-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2′-ビス(4-エチル-2-オキサゾリン)、2,2′-ビス(4,4′-ジエチル-2-オキサゾリン)、2,2′-ビス(4-プロピル-2-オキサゾリン)、2,2′-ビス(4-ブチル-2-オキサゾリン)、2,2′-ビス(4-ヘキシル-2-オキサゾリン)、2,2′-ビス(4-フェニル-2-オキサゾリン)、2,2′-ビス(4-シクロヘキシル-2-オキサゾリン)、2,2′-ビス(4-ベンジル-2-オキサゾリン)、2,2′-p-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2′-m-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2′-o-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2′-p-フェニレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2′-p-フェニレンビス(4,4′-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2′-m-フェニレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2′-m-フェニレンビス(4,4′-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2′-エチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2′-テトラメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2′-ヘキサメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2′-オクタメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2′-デカメチレンビス(2-オキサゾリン)、2,2′-エチレンビス(4-メチル-2-オキサゾリン)、2,2′-テトラメチレンビス(4,4′-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2′-9,9′-ジフェノキシエタンビス(2-オキサゾリン)、2,2′-シクロヘキシレンビス(2-オキサゾリン)、2,2′-ジフェニレンビス(2-オキサゾリン)などが挙げられる。さらには、上記した化合物をモノマー単位として含むポリオキサゾリン化合物なども挙げることができる。
【0044】
オキサジン化合物の例としては、2-メトキシ-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン、2-エトキシ-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン、2-プロポキシ-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン、2-ブトキシ-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン、2-ペンチルオキシ-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン、2-ヘキシルオキシ-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン、2-ヘプチルオキシ-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン、2-オクチルオキシ-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン、2-ノニルオキシ-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン、2-デシルオキシ-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン、2-シクロペンチルオキシ-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン、2-シクロヘキシルオキシ-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン、2-アリルオキシ-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン、2-メタアリルオキシ-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン、2-クロチルオキシ-5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジンなどが挙げられ、さらには、2,2′-ビス(5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)、2,2′-メチレンビス(5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)、2,2′-エチレンビス(5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)、2,2′-プロピレンビス(5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)、2,2′-ブチレンビス(5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)、2,2′-ヘキサメチレンビス(5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)、2,2′-p-フェニレンビス(5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)、2,2′-m-フェニレンビス(5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)、2,2′-ナフチレンビス(5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)、2,2′-P,P′-ジフェニレンビス(5,6-ジヒドロ-4H-1,3-オキサジン)などが挙げられる。さらには、上記した化合物をモノマー単位として含むポリオキサジン化合物などが挙げられる。
【0045】
上記オキサゾリン化合物やオキサジン化合物の中では、2,2′-m-フェニレンビス(2-オキサゾリン)、2,2′-p-フェニレンビス(2-オキサゾリン)が好ましい。
【0046】
(C)耐加水分解性向上剤の添加量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対し、0.1~10質量部であり、0.2~8質量部であることが好ましく、0.3~5質量部であることがより好ましい。
【0047】
また、(C)耐加水分解性向上剤の添加量は、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物中の末端カルボキシル基量を1として、カルボジイミド基、エポキシ基、オキサゾリン基、オキサジン環の合計官能基含有量が0.3~5当量となるように設定しても良い。好ましい合計官能基含有量は0.5~3当量、より好ましくは0.8~2当量である。
【0048】
(添加剤) 本発明の組成物には必要に応じて、難燃性と耐加水分解性以外の所望の特性を付与するために、一般に熱可塑性樹脂等に添加される公知の物質を添加併用することができる。例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の安定剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、染料や顔料等の着色剤、可塑剤、流動性向上剤、靱性向上剤、耐衝撃性向上剤、耐加水分解性向上剤に該当するもの以外の樹脂、充填剤等、いずれも配合することが可能である。特に充填剤は剛性や低反り性を賦与する目的で有効であり、目的に応じて繊維状、粉粒状又は板状の充填剤が用いられる。
【0049】
繊維状充填剤としては、円形断面ガラス繊維、アスベスト繊維、カーボン繊維、シリカ繊維、シリカ・アルミナ繊維、ジルコニア繊維、チタン酸カリウム繊維、更にステンレス、アルミニウム、チタン、銅、真鍮等の金属の繊維状物などが挙げられる。なお、フッ素樹脂、アクリル樹脂などの高融点の有機質繊維状物質も使用することができる。
【0050】
粉粒状充填剤としては、ガラスビーズ、ガラス粉、石英粉末、カオリン、クレー、珪藻土、ウォラストナイト、酸化鉄、酸化チタン、アルミナ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、その他、炭化珪素、窒化珪素、各種金属粉末等が挙げられる。
【0051】
また、板状無機充填剤としては、マイカ、ガラスフレーク、各種金属箔等が挙げられる。
【0052】
充填剤の種類は特に限定されず、1種又は複数種以上の充填剤を添加することができる。特に、円形断面ガラス繊維、チタン酸カリウム繊維、マイカ、ウォラストナイトを使用することが好ましい。
【0053】
充填剤の添加量は特に規定されるものではないが、ポリブチレンテレフタレート樹脂100質量部に対して200質量部以下が好ましい。充填剤を過剰に添加した場合は成形性に劣り靭性の低下が見られる。
【0054】
[難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法]
本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の形態は、粉粒体混合物であってもよいし、ペレット等の溶融混合物(溶融混練物)であってもよい。本発明の一実施形態のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物の製造方法は特に限定されるものではなく、当該技術分野で知られている設備及び方法を用いて製造することができる。例えば、必要な成分を混合し、1軸又は2軸の押出機又はその他の溶融混練装置を使用して混練し、成形用ペレットとして調製することができる。押出機又はその他の溶融混練装置は複数使用してもよい。また、全ての成分をホッパから同時に投入してもよいし、一部の成分はサイドフィード口から投入してもよい。
【0055】
本発明の難燃性ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物は、上述の溶融混練に供給する各成分(原料)の段階、及び/又は、成形品を成形する際のペレットの段階で、真空乾燥を行い(真空乾燥工程)水分を除去することにより、加工時の加水分解を抑制することができる。
【実施例】
【0056】
以下、実施例 により本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。なお、特性評価は以下の方法により行った。
【0057】
(1)難燃性
表1に示す成分、組成(質量部)でドライブレンドした材料を、30mmφのスクリューを有する2軸押出機((株)日本製鋼所製)に供給して260℃で溶融混練し、得られたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットを、140℃で3時間乾燥させた後、シリンダー温度250℃、金型温度70℃にて射出成形し、UL94に準拠し、厚さ1/32インチの試験片を作製して燃焼性を評価した。結果を表1に示す。
【0058】
(2)耐加水分解性
表1に示す成分、組成(質量部)でドライブレンドした材料を、30mmφのスクリューを有する2軸押出機((株)日本製鋼所製)に供給して260℃で溶融混練し、得られたポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットを、140℃で3時間乾燥後、シリンダー温度260℃、金型温度80℃の条件で射出成形し、ISO3167 Type1Aの引張試験片を作製し、ISO527-1,2に準拠して引張破断歪を測定した。また、同じ引張試験片を、プレッシャークッカーテスト(PCT)装置を用いて、121℃、100%RHで60時間、高温高湿処理した後に、前記測定方法と同様に引張破断歪の測定を行い、処理前に対する保持率(処理後の引張破断歪÷処理前の引張破断歪×100(%))を求め、60時間処理時点での保持率が90%以上である場合を◎、80%以上である場合を○、80%未満である場合を×として耐加水分解性を評価した。結果を表1に示す。
【0059】
(3)スクリュー付着物
難燃性の評価と同様にして得たポリブチレンテレフタレート樹脂組成物のペレットを、140℃で3時間乾燥させた後、以下の手順で溶融混練し、黒色付着物の量を目視観察し、付着物の発生が著しいものを「×」、比較的少ないものを「○」、少ないものを「◎」とした。結果を表1に示す。
手順1:東洋精機社製ラボプラストミルを用いて、シリンダー温度275℃、スクリュー回転数20rpmにて、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を10分間押し出す。
手順2:シリンダー温度275℃のままスクリューを停止し、シリンダー内のポリブチレンテレフタレート樹脂組成物を120分間滞留させる。
手順3:シリンダー温度275℃、スクリュー回転数21rpmとして、ポリブチレンテレフタレート樹脂組成物にて10分間パージする。
手順4:シリンダー温度275℃、スクリュー回転数60rpmとして、ポリエチレン樹脂にて5分間パージする。
手順5:シリンダー温度200℃、スクリュー回転数60rpmとして、トーヨーカラー社製パージ材「リオクリン-Z」にて5分間パージする。
手順6:スクリューを引き抜き、綿ネルで軽く拭き、パージ材を除去した後、スクリューの黒色付着物の量を観察する。
【0060】
【0061】
表1に記載の各成分の詳細は下記の通りである。
(A)PBT樹脂:ウィンテックポリマー株式会社製、末端カルボキシル基濃度20meq/kg、固有粘度0.7dL/gのポリブチレンテレフタレート樹脂
(B-1)臭素化エポキシ系難燃剤1:エポキシ当量36800g/eq、有機溶媒量5ppm、重量平均分子量約18000の臭素化エポキシ化合物
(B-2)臭素化エポキシ系難燃剤2:エポキシ当量43200g/eq、有機溶媒量0ppm、重量平均分子量約20000の臭素化エポキシ化合物
(B-3)臭素化エポキシ系難燃剤3:エポキシ当量28600g/eq、有機溶媒量60ppm、重量平均分子量約9000の臭素化エポキシ化合物
(B-4)臭素化エポキシ系難燃剤4:エポキシ当量19900g/eq、有機溶媒量4ppm、重量平均分子量約23000の臭素化エポキシ化合物
(B’-1)臭素化ポリアクリレート難燃剤:ICL JAPAN株式会社製、ペンタブロモベンジルポリアクリレート FR-1025(エポキシ当量0g/eq)
(C-1)耐加水分解性向上剤1:芳香族カルボジイミド(ラインケミージャパン社製、STABAXOL P)
(C-2)耐加水分解性向上剤2:エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、jER 1004K(エポキシ当量925g/eq))
ガラス繊維:日本電気硝子社製、ECS03T-127(平均繊維径13μm、平均繊維長3mm)
三酸化アンチモン:日本精鉱社製、PATOX-M
滴下防止剤:ポリテトラフルオロエチレン樹脂