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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-17
(45)【発行日】2023-10-25
(54)【発明の名称】製造システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20231018BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20231018BHJP
【FI】
G06Q50/04
G05B23/02 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023512711
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(86)【国際出願番号】 JP2022030089
【審査請求日】2023-02-21
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003285
【氏名又は名称】千代田化工建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 秀紀
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-520643(JP,A)
【文献】特表2020-530159(JP,A)
【文献】特開昭48-000274(JP,A)
【文献】特開2019-123678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 8/00-19/32
C07B 61/00
G05B 19/00-46、23/00-02
G06N 20/00-20
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続した第1プロセス及び第2プロセスを実行する製造システムであって、
化学反応、分離、乾燥のいずれかである前記第1プロセスを実行することによって原料から第1処理物を得る第1装置と、
化学反応、分離、乾燥のいずれかである前記第2プロセスを実行することによって前記第1処理物から第2処理物を得る第2装置と、
前記第1装置の状態である第1装置情報を検出する少なくとも1つの第1センサと
記第1装置の複数の制御パラメータを含む、予め設定された第1条件リストに基づいて前記第1装置を制御すると共に、前記第2装置の複数の制御パラメータを含む、予め設定された第2条件リストを修正し、修正した前記第2条件リストに基づいて前記第2装置を制御する制御装置とを有し、
前記第1装置情報は、前記原料の流量と、前記第1装置の入口温度、前記第1装置の出口温度、前記第1装置の内部温度、及び前記第1装置の内部圧力の少なくとも1つとを含み、
前記第1条件リストは、前記第1装置の目標内部温度、前記第1装置の目標内部圧力、前記第1装置内の前記原料の目標流量の少なくとも1つを含み、
前記第2条件リストは、前記第2装置の目標内部温度及び前記第2装置の目標内部圧力の少なくとも1つを含み、
前記制御装置は、
前記原料の性状に関する原料情報及び前記第1装置情報を含む入力に対して、前記第1処理物の収率を出力する第1モデルに基づいて前記第1処理物の収率を取得し、
前記第1処理物の収率を含む入力に対して、前記第2条件リストの修正値を出力する第2モデルに基づいて前記第2条件リストの修正値を取得し、
前記第2条件リストと、前記第2条件リストの修正値とに基づいて修正された前記第2条件リストを取得し、
前記第1モデル及び前記第2モデルは、機械学習モデル及び数理モデルの少なくとも一方を含む製造システム。
【請求項2】
前記第2装置の状態である第2装置情報を検出する少なくとも1つの第2センサを更に有し、
前記第2装置情報は、前記第2装置の入口温度、前記第2装置の出口温度、前記第2装置の内部温度、及び前記第2装置の内部圧力の少なくとも1つを含み、
前記第2モデルへの入力は、前記第2装置情報を更に含む請求項1に記載の製造システム。
【請求項3】
前記制御装置は、
前記原料情報、前記第1装置情報、及び前記第1処理物の収率を含む入力に対して、前記第1装置の状態に関する情報であって、前記第1センサが検出しない情報である推定第1装置情報を出力する第3モデルに基づいて前記推定第1装置情報を取得し、
前記推定第1装置情報及び前記第1処理物の収率の少なくとも1つを含む入力に対して、前記第1条件リストの修正値を出力する第4モデルに基づいて前記第1条件リストの修正値を取得し、
前記第1条件リストと、前記第1条件リストの修正値とに基づいて修正された前記第1条件リストを取得し、
前記第1条件リストに代えて、修正した前記第1条件リストに基づいて前記第1装置を制御する請求項1に記載の製造システム。
【請求項4】
前記第1プロセスは化学反応であり、
前記原料情報は、前記原料の組成、前記原料の密度、及び前記原料の分子量の少なくとも1つを含み
記推定第1装置情報は、前記第1装置の内部に設けられた触媒の活性度、前記第1装置の熱交換効率、前記第1装置内の前記原料の流動状態の少なくとも1つを含む請求項に記載の製造システム。
【請求項5】
前記第1プロセスは分離であり、
前記原料情報は、前記原料の組成、前記原料の密度、及び前記原料の分子量の少なくとも1つを含み
記推定第1装置情報は、前記第1装置の熱交換効率及び前記第1装置内の前記原料の流動状態の少なくとも1つを含み、
前記第1条件リストは、前記第1装置の内部温度、前記第1装置の内部圧力、前記第1装置内の前記原料の流量の少なくとも1つを含む請求項に記載の製造システム。
【請求項6】
前記第1プロセスは乾燥であり、
前記原料情報は、前記原料の組成、前記原料の密度、及び前記原料の分子量の少なくとも1つを含み
記第1条件リストは、前記第1装置の内部温度、前記第1装置の内部圧力、及び前記第1装置の昇温速度の少なくとも1つを含む請求項に記載の製造システム。
【請求項7】
前記第1プロセスはバッチプロセスである請求項1~のいずれか1つの項に記載の製造システム。
【請求項8】
前記第1モデルは、前記原料情報、前記第1装置情報、及び前記第1処理物の収率を教師データとした機械学習によって作成された機械学習モデルである請求項1~のいずれか1つの項に記載の製造システム。
【請求項9】
前記第2モデルは、前記第1処理物の収率、及び前記第2条件リストの修正値を教師データとした機械学習によって作成された機械学習モデルである請求項1~のいずれか1つの項に記載の製造システム。
【請求項10】
前記制御装置は、前記第1処理物の収率に含まれる値と目標値との差が閾値以上であるときに、前記第1処理物の収率と前記第2モデルとに基づいて前記第2条件リストの修正値を取得する請求項1~のいずれか1つの項に記載の製造システム。
【請求項11】
前記制御装置は、修正した前記第1条件リスト及び修正した前記第2条件リストを記憶する記憶部を有する請求項4~のいずれか1つの項に記載の製造システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数の制御パラメータを含む条件リストに基づいて装置を制御し、所定の処理を実行するバッチ処理型の製造システムを開示している。製造システムの制御装置は、予め設定された基準条件リストをユーザの要求に応じて修正することによって条件リストを生成する。ユーザの要求は、例えば製造量の増減や、製品の品質レベルの変更等を含む。制御装置は、機械学習モデルを使用して、ユーザの要求に対応する修正された条件リストを生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2003-531440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
製造システムには、連続した複数のプロセスを含むものがある。このような製造システムでは、上流側のプロセスを実行する装置の能力の低下により、下流側のプロセスに入力される中間製品の状態に変動が生じる。装置の能力の低下は、例えば触媒の劣化やファウリングによって発生する。その結果、最終製品の収量や品質等の状態を制御することが困難になる。
【0005】
本発明は、以上の背景を鑑み、連続した複数のプロセスを有する製造システムにおいて、最終製品の状態を制御するという課題を有する。
ことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、連続した第1プロセス及び第2プロセスを実行する製造システム(1)であって、原料から第1処理物を得るための前記第1プロセスを実行する第1装置(2)と、前記第1処理物から第2処理物を得るための前記第2プロセスを実行する第2装置(3)と、前記第1装置の状態である第1装置情報を検出する少なくとも1つの第1センサ(21)と、前記第2装置の状態である第2装置情報を検出する少なくとも1つの第2センサ(23)と、前記第1装置の複数の制御パラメータを含む第1条件リストに基づいて前記第1装置を制御すると共に、前記第2装置の複数の制御パラメータを含む第2条件リストに基づいて前記第2装置を制御する制御装置(30)とを有し、前記制御装置は、前記原料の性状に関する原料情報及び前記第1装置情報を含む入力に対して、前記第1処理物の性状に関する第1処理物情報を出力する第1モデルに基づいて前記第1処理物情報を取得し、前記第1処理物情報を含む入力に対して、前記第2条件リストの修正値を出力する第2モデルに基づいて前記第2条件リストの修正値を取得し、前記第2条件リストと、前記第2条件リストの修正値とに基づいて修正された前記第2条件リストを取得し、修正した前記第2条件リストに基づいて前記第2装置を制御する。
【0007】
この態様によれば、第2プロセスに供給される第1処理物の性状が推定され、第1処理物の性状に基づいて第2条件リストが修正される。これにより、第2処理物の状態を制御することができる。すなわち、連続した複数のプロセスを有する製造システムにおいて、最終製品の状態を制御することができる。
【0008】
上記の態様において、前記制御装置は、前記原料情報、前記第1装置情報、及び前記第1処理物情報を含む入力に対して、前記第1装置の状態に関する情報であって、前記第1センサが検出しない情報である推定第1装置情報を出力する第3モデルに基づいて前記推定第1装置情報を取得し、前記推定第1装置情報及び前記第1処理物情報の少なくとも1つを含む入力に対して、前記第1条件リストの修正値を出力する第4モデルに基づいて前記第1条件リストの修正値を取得し、前記第1条件リストと、前記第1条件リストの修正値とに基づいて修正された前記第1条件リストを取得し、修正した前記第1条件リストに基づいて前記第1装置を制御してもよい。
【0009】
この態様によれば、推定第1装置情報に基づいて第1条件リストが修正される。これにより、第2プロセスに供給される第1処理物の状態を制御することができる。
【0010】
上記の態様において、前記第1プロセスは化学反応であり、前記原料情報は、前記原料の組成、前記原料の密度、及び前記原料の分子量の少なくとも1つを含み、前記第1装置情報は、前記第1装置の入口温度、前記第1装置の出口温度、前記第1装置の内部温度、前記第1装置の内部圧力、及び前記第1装置内の前記原料の流量の少なくとも1つを含み、前記第1処理物情報は、前記第1処理物の収率を少なくとも含み、前記推定第1装置情報は、前記第1装置の内部に設けられた触媒の活性度、前記第1装置の熱交換効率、前記第1装置内の前記原料の流動状態の少なくとも1つを含み、前記第1条件リストは、前記第1装置の内部温度、前記第1装置の内部圧力、前記第1装置内の前記原料の流量の少なくとも1つを含み、前記第2条件リストは、前記第2装置の内部温度、前記第2装置の内部圧力、前記第2装置内の前記第1処理物の流量の少なくとも1つを含んでもよい。
【0011】
この態様によれば、化学反応である第1プロセスにより得られる第1処理物の状態と、第2プロセスにより得られる第2処理物の状態とを制御することができる。
【0012】
上記の態様において、前記第1プロセスは分離であり、前記原料情報は、前記原料の組成、前記原料の密度、及び前記原料の分子量の少なくとも1つを含み、前記第1装置情報は、前記第1装置の入口温度、前記第1装置の出口温度、前記第1装置の内部温度、前記第1装置の内部圧力、及び前記第1装置内の前記原料の流量の少なくとも1つを含み、前記第1処理物情報は、前記第1処理物の収率を少なくとも含み、前記推定第1装置情報は、前記第1装置の熱交換効率及び前記第1装置内の前記原料の流動状態の少なくとも1つを含み、前記第1条件リストは、前記第1装置の内部温度、前記第1装置の内部圧力、前記第1装置内の前記原料の流量の少なくとも1つを含み、前記第2条件リストは、前記第2装置の内部温度、前記第2装置の内部圧力、前記第2装置内の前記第1処理物の流量の少なくとも1つを含んでもよい。
【0013】
この態様によれば、分離である第1プロセスにより得られた第1処理物の状態と、第2プロセスにより得られた第2処理物の状態とを制御することができる。
【0014】
上記の態様において、前記第1プロセスは乾燥であり、前記原料情報は、前記原料の組成、前記原料の密度、及び前記原料の分子量の少なくとも1つを含み、前記第1装置情報は、前記第1装置の内部温度、前記第1装置の内部圧力、及び前記第1装置の昇温速度の少なくとも1つを含み、前記第1処理物情報は、前記第1処理物の収率を少なくとも含み、前記第1条件リストは、前記第1装置の内部温度、前記第1装置の内部圧力、及び前記第1装置の昇温速度の少なくとも1つを含み、前記第2条件リストは、前記第2装置の内部温度、前記第2装置の内部圧力、前記第2装置内の前記第1処理物の流量の少なくとも1つを含んでもよい。
【0015】
この態様によれば、乾燥である第1プロセスにより得られる第1処理物の状態と、第2プロセスにより得られる第2処理物の状態とを制御することができる。
【0016】
上記の態様において、前記第1プロセス及び前記第2プロセスはバッチプロセスであってもよい。
【0017】
上記の態様において、前記第1モデル及び前記第2モデルは、機械学習モデル及び数理モデルの少なくとも一方を含んでもよい。
【0018】
上記の態様において、前記制御装置は、前記第1処理物情報に含まれる値と目標値との差が閾値以上であるときに、前記第1処理物情報と前記第2モデルとに基づいて前記第2条件リストの修正値を取得してもよい。
【0019】
上記の態様において、前記制御装置は、修正した前記第1条件リスト及び修正した前記第2条件リストを記憶する記憶部(30B)を有してもよい。
【発明の効果】
【0020】
以上の態様によれば、連続した複数のプロセスを有する製造システムにおいて、最終製品の状態を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】製造システムの構成図
図2】条件リスト修正処理のフロー図
図3】変形例に係る条件リスト修正処理のフロー図
図4】製造システムの構成図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る製造システムの実施形態について説明する。
【0023】
製造システム1は、連続した第1プロセス及び第2プロセスを実行する。製造システム1は、原料から第1処理物を得るための第1プロセスを実行する第1装置2と、第1処理物から第2処理物を得るための第2プロセスを実行する第2装置3とを有する。
【0024】
第1プロセス及び第2プロセスは、バッチプロセスである。他の実施形態では、第1プロセス及び第2プロセスは、連続プロセスであってもよい。第1プロセス及び第2プロセスのそれぞれは、化学反応、分離、乾燥のいずれかであるとよい。分離は、抽出、晶析、蒸留、遠心分離、膜分離、吸着分離、平衡分離のいずれかであるとよい。
【0025】
第1装置2は、第1プロセスを実行する第1装置本体5を有する。第1装置本体5は、化学反応を行うための反応器、分離を行うための分離器、又は乾燥を行うための乾燥器であるとよい。第2装置3は、第2プロセスを実行する第2装置本体6を有する。第2装置本体6は、第1装置本体5と同様に、反応器、分離器、又は乾燥器であるよい。
【0026】
反応器は、回分式反応器(バッチ式反応器)又は連続式反応器であってよい。反応器は、槽型反応器、管型反応器、連続槽型反応器等の公知の反応器であるとよい。反応器の内部には、触媒が設けられるとよい。
【0027】
分離器は、抽出装置、晶析装置、蒸留装置、遠心分離器、膜分離装置、吸着分離器、又は平衡分離器であるとよい。抽出装置は、ソックスレー抽出装置、クーニ式抽出装置等の公知の抽出装置であるとよい。晶析装置は、クリスタルオスロ型晶析装置、逆円錐型晶析装置等の公知の晶析装置であるとよい。蒸留装置は、単式蒸留器、連続式蒸留器等の公知の蒸留装置であるとよい。
【0028】
第1装置2は、第1装置本体5の入口に接続された少なくとも1つの原料供給管8A、8Bを有する。本実施形態では、原料供給管8A、8Bは、第1原料を第1装置本体5に供給するための第1原料供給管8Aと、第2原料を第1装置本体5に供給するための第2原料供給管8Bとを含む。第1原料供給管8Aには第1流量制御弁11Aが設けられている。第1流量制御弁11Aは、第1原料供給管8Aを流れる第1原料の流量を制御する。第2原料供給管8Bには第2流量制御弁11Bが設けられている。第2流量制御弁11Bは、第2原料供給管8Bを流れる第2原料の流量を制御する。
【0029】
第1装置2は、第1装置本体5の出口と第2装置3の入口とを接続する接続管13を有する。接続管13は、第1装置本体5で生成された第1処理物を第2装置本体6に供給する。
【0030】
第2装置3は、第2装置3の入口に接続された少なくとも1つの第3原料供給管8Cを有してもよい。本実施形態では、第3原料供給管8Cは1つであり、第3原料を第2装置本体6に供給する。第3原料供給管8Cは省略されてもよい。例えば、第2装置本体6が蒸留装置である場合に、第3原料供給管8Cが省略されるとよい。第3原料供給管8Cには第3流量制御弁11Cが設けられている。第3流量制御弁11Cは、第3原料供給管8Cを流れる第3原料の流量を制御する。
【0031】
第2装置3は、第2装置本体6の出口に接続された出口管15を有する。
【0032】
第1装置2は、第1装置本体5の温度を調節するための第1温度調節器18を有する。第2装置3は、第2装置本体6の温度を調節するための第2温度調節器19を有する。第1温度調節器18及び第2温度調節器19は、加熱器、冷却器、熱交換器の少なくとも1つを含む。加熱器は、例えば電気や、燃料の燃焼熱を利用して加熱を行うとよい。熱交換器は、熱媒体が流通するジャケットと、熱媒体の流量を制御する制御弁とを有するとよい。
【0033】
第1装置2には、第1装置2の状態である第1装置情報を検出する少なくとも1つの第1センサ21が設けられている。第1装置情報は、第1装置本体5の入口温度、第1装置本体5の出口温度、第1装置本体5の内部温度、第1装置本体5の内部圧力、及び第1装置本体5内の原料の流量の少なくとも1つを含む。また、第1装置情報は、第1装置本体5に供給される各原料の流量、第1装置本体5から排出される第1処理物の流量を含むとよい。第1センサ21は、第1装置本体5の入口温度を測定する第1入口温度センサ21A、第1装置本体5の出口温度を測定する第1出口温度センサ21B、第1装置本体5の内部温度を測定する第1内部温度センサ21C、第1装置本体5の内部圧力を測定する第1圧力センサ21D、第1装置本体5内の原料の流量を測定する第1装置本体流量センサ21Eを含むとよい。また、第1センサ21は、第1原料供給管8Aに設けられた第1原料流量センサ21Fと、第2原料供給管8Bに設けられた第2原料流量センサ21Gと、接続管13に設けられた第1処理物流量センサ21Hとを含むとよい。
【0034】
第2装置3には、第2装置3の状態である第2装置情報を検出する少なくとも1つの第2センサ23が設けられている。第2装置情報は、第2装置本体6の入口温度、第2装置本体6の出口温度、第2装置本体6の内部温度、第2装置本体6の内部圧力、及び第2装置本体6内の原料の流量の少なくとも1つを含む。第2センサ23は、第2装置本体6の入口温度を測定する第2入口温度センサ23A、第2装置本体6の出口温度を測定する第2出口温度センサ23B、第2装置本体6の内部温度を測定する第2内部温度センサ23C、第2装置本体6の内部圧力を測定する第2圧力センサ23D、第2装置本体6内の原料の流量を測定する第2装置本体流量センサ23Eを含むとよい。また、第2センサ23は、第3原料供給管8Cに設けられた第3原料流量センサ23Fと、出口管15に設けられた第2処理物流量センサ23Gとを含むとよい。
【0035】
製造システム1は、第1装置2及び第2装置3を制御する制御装置30を有する。制御装置30は、MPU(マイクロプロセッサ)30A、不揮発性メモリを含む記憶部30B、揮発性メモリ30C、及びインターフェース30Dを有する演算装置である。制御装置30は、記憶部30Bに記憶されたプログラムをマイクロプロセッサが実行することによって各種のアプリケーションを実現する。制御装置30は、第1装置2の複数の制御パラメータを含む第1条件リストに基づいて第1装置2を制御する。また、制御装置30は、第2装置3の複数の制御パラメータを含む第2条件リストに基づいて第2装置3を制御する。第1条件リスト及び第2条件リストは、制御装置30の記憶部30Bに記憶されている。また、後述する修正された第1条件リスト及び修正された第2条件リストも制御装置30の記憶部30Bに記憶されている。
【0036】
制御装置30は、複数の第1センサ21と、複数の第2センサ23と、第1~第3流量制御弁11A~11Cと、第1温度調節器18と、第2温度調節器19とに接続されている。また、制御装置30は、オペレータによって操作される入力装置32と接続されている。制御装置30は、複数の第1センサ21、複数の第2センサ23、及び入力装置32から信号を受け付ける。また、制御装置30は、第1~第3流量制御弁11A~11C、第1温度調節器18、及び第2温度調節器19を制御する。
【0037】
制御装置30は、第1装置2の複数の制御パラメータを含む第1条件リストに基づいて第1装置2を制御すると共に、第2装置3の複数の制御パラメータを含む第2条件リストに基づいて第2装置3を制御する。第1条件リストに含まれる制御パラメータは、第1流量制御弁11Aの開度、第2流量制御弁11Bの開度、及び第1温度調節器18の制御量を含むとよい。第1温度調節器18が電気加熱器である場合、制御量は例えば供給電力であるとよい。また、第1温度調節器18が熱交換器である場合、制御量は例えば熱媒体の流量を制御するための制御弁の開度であるとよい。
【0038】
また、第1条件リストに含まれる制御パラメータは、例えば、第1原料供給管8Aを流れる第1原料の目標流量、第2原料供給管8Bを流れる第2原料の目標流量、接続管13を流れる第1処理物の目標流量、第1装置本体5の目標入口温度、第1装置本体5の目標内部温度、第1装置本体5の目標出口温度を含んでもよい。制御装置30は、第1原料流量センサ21Fが検出した第1原料の流量と、第1原料の目標流量とに基づいて第1流量制御弁11Aの開度を設定してもよい。制御装置30は、第2原料流量センサ21Gが検出した第2原料の流量と、第2原料の目標流量とに基づいて第2流量制御弁11Bの開度を設定してもよい。制御装置30は、第1処理物流量センサ21Hが検出した第1処理物の流量と、第1処理物の目標流量とに基づいて第3制御弁の開度を設定してもよい。制御装置30は、第1入口温度センサ21Aが検出した第1装置本体5の入口温度と、第1内部温度センサ21Cが検出した第1装置本体5の内部温度と、第1出口温度センサ21Bが検出した第1装置本体5の出口温度と、第1装置本体5の目標入口温度と、第1装置本体5の目標内部温度と、第1装置本体5の目標出口温度とに基づいて第1温度調節器18の制御量を設定してもよい。
【0039】
第2条件リストに含まれる制御パラメータは、第3流量制御弁11Cの開度、及び第2温度調節器19の制御量である。第2温度調節器19が電気加熱器である場合、制御量は例えば供給電力であるとよい。また、第2温度調節器19が熱交換器である場合、制御量は例えば熱媒体の流量を制御するための制御弁の開度であるとよい。
【0040】
また、第2条件リストに含まれる制御パラメータは、例えば、接続管13を流れる第1処理物の目標流量、第3原料供給管8Cを流れる第3原料の目標流量、出口管15を流れる第2処理物の目標流量、第2装置本体6の目標入口温度、第2装置本体6の目標内部温度、及び第2装置本体6の目標出口温度を含んでもよい。制御装置30は、第3原料流量センサ23Fが検出した第3原料の流量と、第3原料の目標流量とに基づいて第3流量制御弁11Cの開度を設定してもよい。制御装置30は、第2入口温度センサ23Aが検出した第2装置本体6の入口温度と、第2内部温度センサ23Cが検出した第2装置本体6の内部温度と、第2出口温度センサ23Bが検出した第2装置本体6の出口温度と、第2装置本体6の目標入口温度と、第2装置本体6の目標内部温度と、第2装置本体6の目標出口温度とに基づいて第2温度調節器19の制御量を設定してもよい。
【0041】
第1条件リスト及び第2条件リストは、既に存在するものであってもよく、製造システム1のために新たに作成されたものであってもよい。第1条件リスト及び第2条件リストは、物質収支の整合性が取れるように設定されている。具体的には、第2プロセスの処理物(第2処理物)の収量が400g/分である場合において、第2プロセスの原料の1つ(第1処理物)の流量が300g/分必要となる。そのため、第2プロセスの原料の1つ(第1処理物)を生産する第1プロセスの第1条件リストは、第1処理物を300g/分生産するように調節される。すなわち、第1プロセスから供給される第1処理物の質量と、第2プロセスに供給される第1処理物の質量とが同じになるように設定されている。
【0042】
また、第1条件リスト及び第2条件リストは、プロセス条件(温度、圧力、流量等)の整合性が取れるように設定されている。例えば、第1条件リストに含まれる第1装置本体5の目標出口温度と第2条件リストに含まれる第2装置本体6の目標入口温度とが一致するように設定されている。
【0043】
制御装置30は、第1装置2及び第2装置3を制御している間に、図2に示す条件リスト修正処理を所定の時間間隔毎に実行し、第1条件リスト及び第2条件リストを修正する。そして、制御装置30は、修正した第1条件リストに基づいて第1装置2を制御し、修正した第2条件リストに基づいて第2装置3を制御する。
【0044】
図2に示すように、制御装置30は、条件リスト修正処理において、最初に原料の性状に関する原料情報を取得する(S1)。オペレータが入力装置32を使用して原料情報を入力し、制御装置30が入力された原料情報を記憶する。なお、制御装置30は、プロセス解析技術に基づく予想処理によって原料情報を生成し、原料情報として記憶してもよい。本実施形態では、原料情報は、第1原料、第2原料、第3原料に関する情報を含むとよい。原料情報は、各原料の組成、各原料の密度、各原料の分子量の少なくとも1つを含むとよい。
【0045】
次に、制御装置30は、第1センサ21からの信号に基づいて第1装置情報を取得する(S2)。続いて、制御装置30は、第2センサ23からの信号に基づいて第2装置情報を取得する(S3)。
【0046】
次に、制御装置30は、原料情報及び第1装置情報を含む入力に対して、第1処理物の性状に関する第1処理物情報を出力する第1モデルに基づいて第1処理物情報を取得する(S4)。第1処理物情報は、第1処理物の収率を少なくとも含む。また、第1処理物情報は、第1処理物の結晶サイズ、及び第1処理物の結晶形の少なくとも1つを含んでもよい。また、第1処理物情報は、第1処理物の密度、及び第1処理物の比熱の少なくとも1つを含むとよい。
【0047】
第1モデルは、原料情報及び第1装置情報を含む入力と、第1処理物情報を含む出力との関係を規定するモデルである。第1モデルは、機械学習モデル及び数理モデルの少なくとも一方を含む。第1モデルは、例えば、原料情報、第1装置情報、及び第1処理物情報を教師データとした機械学習によって作成された機械学習モデルであるとよい。第1処理物情報は、教師データを作成するために、実測又はシミュレーションによって取得されるとよい。また、第1モデルは、物理法則及び化学法則を含む自然法則に基づいて作成された数理モデルや、経験則に基づいて作成された数理モデルであってもよい。また、第1モデルは、機械学習モデルと、数理モデルとを組み合わせて形成されてもよい。
【0048】
次に、制御装置30は、第1処理物情報を含む入力に対して、第2条件リストの修正値を出力する第2モデルに基づいて第2条件リストの修正値を取得する(S5)。第2条件リストの修正値は、第2条件リストに含まれる各制御パラメータの修正値を含む。第1装置2からの第1処理物の収率が変化する、すなわち第2装置3に投入される第1処理物の流量が変化すると、第2装置3から出される第2処理物の収率も変化し得る。第1処理物の収率が変化した場合であっても第2処理物の目標収率を達成するために、製造システム1は、変化した第1処理物の収率に対応するような第2条件リストを設定するための第2条件リストの修正値を算出する。第2モデルは、第1処理物情報を含む入力と、第2条件リストの修正値を含む出力との関係を規定するモデルであるとよい。第2モデルは、例えば、第1処理物情報及び第2条件リストの修正値を教師データとした機械学習によって作成された機械学習モデルであるとよい。第2条件リストの修正値は、教師データを作成するために、実測又はシミュレーションによって取得されるとよい。また、第2モデルは、物理法則及び化学法則を含む自然法則に基づいて作成された数理モデルや、経験則に基づいて作成された数理モデルであってもよい。また、第2モデルは、機械学習モデルと、数理モデルとを組み合わせて形成されてもよい。また、第2モデルの入力は、第1処理物情報に加え、第2装置情報も含むことが望ましい。
【0049】
次に、制御装置30は、第2条件リストと、第2条件リストの修正値とに基づいて修正された第2条件リストを取得する(S6)。例えば、制御装置30は、第2条件リストに含まれる各制御パラメータに、第2条件リストの修正値に含まれる各制御パラメータの修正値を加算することによって、修正された各制御パラメータを含む修正された第2条件リストを取得するとよい。制御装置30は、修正された第2条件リストを記憶部30Bに記憶する。
【0050】
次に、制御装置30は、原料情報、第1装置情報、及び第1処理物情報を含む入力に対して、第1装置2の状態に関する情報であって、第1センサ21が検出しない情報である推定第1装置情報を出力する第3モデルに基づいて推定第1装置情報を取得する(S7)。推定第1装置情報は、第1センサ21によって検出される第1装置2の情報と異なる情報である。第1装置2が反応器である場合、推定第1装置情報は、第1装置2の内部に設けられた触媒の活性度、第1装置2の熱交換効率、第1装置2内の原料の流動状態の少なくとも1つを含む。第1装置2が分離器である場合、推定第1装置情報は、第1装置2の熱交換効率及び第1装置2内の原料の流動状態の少なくとも1つを含む。
【0051】
第3モデルは、原料情報、第1装置情報、及び第1処理物情報を含む入力と、推定第1装置情報を含む出力との関係を規定するモデルである。第3モデルは、機械学習モデル及び数理モデルの少なくとも一方を含む。第3モデルは、例えば、原料情報、第1装置情報、第1処理物情報、及び推定第1装置情報を教師データとした機械学習によって作成された機械学習モデルであるとよい。第1処理物情報及び推定第1装置情報は、教師データを作成するために、実測又はシミュレーションによって取得されるとよい。また、第3モデルは、物理法則及び化学法則を含む自然法則に基づいて作成された数理モデルや、経験則に基づいて作成された数理モデルであってもよい。また、第3モデルは、機械学習モデルと、数理モデルとを組み合わせて形成されてもよい。
【0052】
次に、制御装置30は、推定第1装置情報及び第1処理物情報の少なくとも1つを含む入力に対して、第1条件リストの修正値を出力する第4モデルに基づいて第1条件リストの修正値を取得する(S8)。第1条件リストの修正値は、第1条件リストに含まれる各制御パラメータの修正値を含む。第4モデルは、推定第1装置情報及び第1処理物情報を含む入力と、第1条件リストの修正値を含む出力との関係を規定するモデルである。第4モデルは、例えば、推定第1装置情報、第1処理物情報、及び第1条件リストの修正値を教師データとした機械学習によって作成された機械学習モデルであるとよい。第1条件リストの修正値は、教師データを作成するために、実測又はシミュレーションによって取得されるとよい。また、第4モデルは、物理法則及び化学法則を含む自然法則に基づいて作成された数理モデルや、経験則に基づいて作成された数理モデルであってもよい。また、第4モデルは、機械学習モデルと、数理モデルとを組み合わせて形成されてもよい。また、第4モデルの入力は、推定第1装置情報及び第1処理物情報に加え、第1装置情報も含むことが望ましい。
【0053】
次に、制御装置30は、第1条件リストと、第1条件リストの修正値とに基づいて修正された第1条件リストを取得する(S9)。例えば、制御装置30は、第1条件リストに含まれる各制御パラメータに、第1条件リストの修正値に含まれる各制御パラメータの修正値を加算することによって、修正された各制御パラメータを含む修正された第1条件リストを取得するとよい。制御装置30は、修正された第1条件リストを記憶部30Bに記憶する。
【0054】
制御装置30は、修正された第1条件リストを取得した後に、条件リスト修正処理を終了する。制御装置30は、条件リスト修正処理を実行することによって、修正された第1条件リストと、修正された第2条件リストとを取得する。そして、制御装置30は、修正された第1条件リストと、修正された第2条件リストとに基づいて、第1装置2及び第2装置3を制御する。例えば、制御装置30は、修正された第1条件リストと、修正された第2条件リストとに基づいて、第1~第3流量制御弁11A~11Cと、第1温度調節器18と、第2温度調節器19とを制御する。また、第1装置2及び第2装置3が遠心分離機である場合には、制御装置30は、第1装置2及び第2装置3の回転数及び処理時間を制御するとよい。
【0055】
第1プロセスが化学反応である場合、原料情報は、原料の組成、原料の密度、及び原料の分子量の少なくとも1つを含むとよい。第1装置情報は、第1装置2の入口温度、第1装置2の出口温度、第1装置2の内部温度、第1装置2の内部圧力、及び第1装置2内の原料の流量の少なくとも1つを含むとよい。第1処理物情報は、第1処理物の収率を少なくとも含むとよい。推定第1装置情報は、第1装置2の内部に設けられた触媒の活性度、第1装置2の熱交換効率、第1装置2内の原料の流動状態の少なくとも1つを含むとよい。第1条件リストは、第1装置2の内部温度、第1装置2の内部圧力、第1装置2内の原料の流量の少なくとも1つを含むとよい。第2条件リストは、第2装置3の内部温度、第2装置3の内部圧力、第2装置3内の第1処理物の流量の少なくとも1つを含むとよい。
【0056】
第1プロセスが分離である場合、原料情報は、原料の組成、原料の密度、及び原料の分子量の少なくとも1つを含むとよい。第1装置情報は、第1装置2の入口温度、第1装置2の出口温度、第1装置2の内部温度、第1装置2の内部圧力、及び第1装置2内の原料の流量の少なくとも1つを含むとよい。第1処理物情報は、第1処理物の収率を少なくとも含むとよい。推定第1装置情報は、第1装置2の熱交換効率及び第1装置2内の原料の流動状態の少なくとも1つを含むとよい。第1条件リストは、第1装置2の内部温度、第1装置2の内部圧力、第1装置2内の原料の流量の少なくとも1つを含むとよい。第2条件リストは、第2装置3の内部温度、第2装置3の内部圧力、第2装置3内の第1処理物の流量の少なくとも1つを含むとよい。
【0057】
第1プロセスが抽出である場合、原料情報は、原料の組成、原料の密度、及び原料の分子量の少なくとも1つを含むとよい。第1装置情報は、第1装置2の入口温度、第1装置2の出口温度、第1装置2の内部温度、第1装置2の内部圧力、及び第1装置2内の原料の流量の少なくとも1つを含むとよい。第1処理物情報は、第1処理物の収率を少なくとも含むとよい。推定第1装置情報は、第1装置2の熱交換効率及び第1装置2内の原料の流動状態の少なくとも1つを含むとよい。第1条件リストは、第1装置2の内部温度、第1装置2の内部圧力、第1装置2内の原料の流量の少なくとも1つを含むとよい。第2条件リストは、第2装置3の内部温度、第2装置3の内部圧力、第2装置3内の第1処理物の流量の少なくとも1つを含むとよい。
【0058】
第1プロセスが晶析である場合、原料情報は、原料の組成、原料の密度、原料の分子量、及び原料に含まれる種晶のサイズの少なくとも1つを含むとよい。第1装置情報は、第1装置2の入口温度、第1装置2の出口温度、第1装置2の内部温度、第1装置2の内部圧力、及び第1装置2内の原料の流量の少なくとも1つを含むとよい。第1処理物情報は、第1処理物の収率、第1処理物の結晶サイズ、及び第1処理物の結晶形の少なくとも1つを含むとよい。推定第1装置情報は、第1装置2の熱交換効率及び第1装置2内の原料の流動状態の少なくとも1つを含むとよい。第1条件リストは、第1装置2の内部温度、第1装置2の内部圧力、第1装置2内の原料の流量の少なくとも1つを含むとよい。第2条件リストは、第2装置3の内部温度、第2装置3の内部圧力、第2装置3内の第1処理物の流量の少なくとも1つを含むとよい。
【0059】
第1プロセスが蒸留である場合、原料情報は、原料の組成、原料の密度、及び原料の分子量の少なくとも1つを含むとよい。第1装置情報は、第1装置2の内部温度、第1装置2の内部圧力、及び第1装置2内の原料の流量の少なくとも1つを含むとよい。第1処理物情報は、第1処理物の収率、第1処理物の密度、及び第1処理物の比熱の少なくとも1つを含むとよい。推定第1装置情報は、第1装置2の熱交換効率及び第1装置2内の原料の流動状態の少なくとも1つを含むとよい。第1条件リストは、第1装置2の内部温度、第1装置2の内部圧力、第1装置2内の原料の流量の少なくとも1つを含むとよい。第2条件リストは、第2装置3の内部温度、第2装置3の内部圧力、第2装置3内の第1処理物の流量の少なくとも1つを含むとよい。
【0060】
第1プロセスが遠心分離である場合、原料情報は、原料の組成、原料の密度、及び原料の分子量の少なくとも1つを含むとよい。第1装置情報は、第1装置2の内部温度、第1装置2の内部圧力、及び第1装置2の回転数の少なくとも1つを含むとよい。第1処理物情報は、第1処理物の収率を少なくとも含むとよい。第1条件リストは、第1装置2の内部温度、第1装置2の内部圧力、第1装置2の回転数、及び処理回数の少なくとも1つを含むとよい。第2条件リストは、第2装置3の内部温度、第2装置3の内部圧力、第2装置3内の第1処理物の流量の少なくとも1つを含むとよい。
【0061】
第1プロセスが乾燥である場合、原料情報は、原料の組成、原料の密度、及び原料の分子量の少なくとも1つを含むとよい。第1装置情報は、第1装置2の内部温度、第1装置2の内部圧力、及び第1装置2の昇温速度の少なくとも1つを含むとよい。第1処理物情報は、第1処理物の性状(水飽和度、含水率、密度等)を少なくとも含むとよい。第1条件リストは、第1装置2の内部温度、第1装置2の内部圧力、及び第1装置2の昇温速度の少なくとも1つを含むとよい。第2条件リストは、第2装置3の内部温度、第2装置3の内部圧力、第2装置3内の第1処理物の流量、及び第1装置2の昇温速度の少なくとも1つを含むとよい。
【0062】
実施形態に係る製造システム1によれば、第2プロセスに供給される第1処理物の性状が推定され、第1処理物の性状に基づいて第2条件リストが修正される。これにより、第2処理物の状態を制御することができる。すなわち、連続した複数のプロセスを有する製造システム1において、最終製品の状態を制御することができる。また、推定第1装置情報に基づいて第1条件リストが修正される。これにより、第2プロセスに供給される第1処理物の状態を制御することができる。以上により、第1装置2の能力が低下した場合においても、第2処理物の収量や品質等の状態を制御することができる。
【0063】
製造システム1によれば、パラメータの条件リストが規定されている既存のプロセス同士を組み合わせた連続プロセスを、確実かつ簡便に運転させることができる。また、製造システム1によれば、複数のプロセスを含む連続プロセス中に、新たに1つのプロセスを挿入することが容易である。また、新たなプロセスが挿入された連続プロセスを、確実かつ簡便に運転させることができる。
【0064】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、図2に示す条件リスト修正処理において、ステップS7~S9は、省略されてもよい。すなわち、第1条件リストの修正は省略されてもよい。また、図2に示す条件リスト修正処理において、ステップS5~S6が省略されてもよい。すなわち、第2条件リストの修正は行われず、第1条件リストの修正のみが行われてもよい。また、上記実施形態において、第2モデルは、第2条件リストの修正値を取得するように説明されたが、第2モデルは、第2装置3に対する運転指示を出力するようにも構成されてもよい。例えば、第1モデルにより出力される第1処理物情報たる第1処理物の収率が許容範囲を超える場合には、第2モデルは、第2装置3を停止させる運転指示を出力し得る。
【0065】
また、制御装置30は、条件リスト修正処理において、第1処理物情報に含まれる値と目標値との差が閾値以上であるときに、第1処理物情報と第2モデルとに基づいて第2条件リストの修正値を取得してもよい。具体的には、図3に示すように、条件リスト修正処理において、ステップS4とステップS5の間に、第1処理物情報に含まれる値と目標値との差が閾値以上であるか否かを判定するステップS11が設けられるとよい。そして、第1処理物情報に含まれる値と目標値との差が閾値以上である場合(ステップS11の判定結果がYes)に、ステップS5を実行するとよい。制御装置30は、第1処理物情報に含まれる値と目標値との差が閾値未満である場合(ステップS11の判定結果がNo)に、ステップS5~S9を省略して条件リスト修正処理を終了するとよい。この態様によれば、第1処理物情報に含まれる値と目標値との差が閾値以上である場合に、第1条件リスト及び第2条件リストが修正される。
【0066】
また、制御装置30の記憶部30Bは、修正された第1条件リスト及び修正された第2条件リストを経時的に記憶するように構成され、第1モデル、第2モデル、第3モデル、第4モデルは、記憶部30Bに記憶された修正された第1条件リスト及び第2条件リストに基づいて適宜修正されるように構成されてもよい。例えば、修正された第1条件リスト及び修正された第2条件リストを用いて制御を行ったが目標とする第2処理物(最終製品)の収率が得られなくなった場合、第1モデル、第2モデル、第3モデル、又は第4モデルのいずれかの設定が不適切である可能性が考えられる。この場合、記憶部30Bに経時的に記憶された第1条件リスト及び第2条件リストを参照することにより、第2処理物の目標収率が得られなくなった時点での条件リストを確認することにより、第1~第4モデルのうちのどのモデルに不具合が生じているかを特定することができる。不具合が特定されたモデルは、再学習に供されたり、オペレータによってパラメータを再設定されたりすることによって修正されることができる。
【0067】
また、上記実施形態では、第1プロセス及び第2プロセスを含む場合について説明したが、プロセスの数は2つに限定されず、より多くのプロセスを含んでもよい。例えば、製造システム1は、第1プロセス、第2プロセス、及び第3プロセスの3つのプロセスを含み、第1プロセスを実行する第1装置2から出力される第1処理物の収率に基づいて、第2プロセスを実行する第2装置3の第2条件リスト又は第3プロセスを実行する第3装置50の第3条件リストを修正するように構成されてもよいし、第2装置3から出力される第2処理物の収率に基づいて、第3条件リストを修正するように構成されてもよい。すなわち、上記実施形態で説明した第1プロセス及び第2プロセスは、連続した2つのプロセスであり、第1プロセスの上流側に任意の個数のプロセスが設けられてもよく、第2プロセスの下流側に任意の個数のプロセスが設けられてもよい。
【0068】
図4に製造システム1の一例を示す。図4では、各センサ、流量制御弁、及び制御装置が省略され、制御システム1の要部のみが示されている。図4に示すように、製造システム1は、第1プロセス、第2プロセス、及び第3プロセスを順に実行する。第1プロセスは、物質Aと物質Bとを触媒Nの下で化学反応させ、物質Cを生成する。第1プロセスから第2プロセスに供給される第1処理物は、物質A及び物質Bと、物質Cとを含む。第2プロセスは、第1処理物中の物質Cと、新たに投入される物質Dとを化学反応させ、物質Eを生成する。第2プロセスから第3プロセスに供給される第2処理物は、未反応の物質A、物質B、物質C、及び物質Dと、物質Eとを含む。第3プロセスは、第2プロセスから供給される物質A~Eを含む第2処理物から物質Eを第3処理物として抽出する。第1プロセスは反応器である第1装置2によって実行され、第2プロセスは反応器である第2装置3によって実行され、第3プロセスは抽出装置である第3装置50によって実行される。
【0069】
第1装置2の複数の制御パラメータを含む第1条件リストには、物質Aの目標流量10L/h、物質Bの目標流量15L/h、第1装置本体5の目標内部温度300℃、第1装置本体5の目標内圧120kPa、物質Cの目標収率80%、物質Cの目標流量20L/hが設定されている。
【0070】
第2装置3の複数の制御パラメータを含む第2条件リストには、物質A及び物質Bの合計の目標流量5L/h、物質Cの目標流量20L/h、物質Dの目標流量20L/h、第2装置本体6の目標内部温度250℃、第2装置本体6の目標内圧80kPa、物質Eの目標収率75%、物質Eの目標流量33.75L/hが設定されている。
【0071】
第3装置50の複数の制御パラメータを含む第3条件リストには、物質A、物質B、物質C、及び物質Dの合計の目標流量11.25L/h、物質Eの目標流量33.75L/h、第3装置本体51の目標内部温度200℃、第3装置本体51の目標内圧100kPa、物質Eの目標収率67%が設定されている。
【0072】
第1条件リスト、第2条件リスト、及び第3条件リストは、各プロセスにおける各物質の流量が互いに整合するように設定されている。例えば、第1プロセスにおいて生成される物質Cの目標流量と、第2プロセスに供給される物質Cの目標流量とが整合している。また、第1条件リスト、第2条件リスト、及び第3条件リストは、各プロセスにおける各反応装置の温度が互いに整合するように設定されている。
【0073】
第1プロセス~第3プロセスを組み合わせた連続プロセスの運転中、制御装置30は、第1モデルに基づいて第1プロセスによって生成される物質Cの収率を取得し、取得した物質Cの収率が第1条件リストに設定された物質Cの目標収率に一致するか否かを監視する。同様に、制御装置30は、第1-2モデルに基づいて第2プロセスによって生成される物質Eの収率を取得し、取得した物質Eの収率が第2条件リストに設定された物質Eの目標収率に一致するか否かを監視する。同様に、制御装置30は、第1-3モデルに基づいて第3プロセスによって生成される物質Eの収率を取得し、取得した物質Eの収率が第3条件リストに設定された物質Eの目標収率に一致するか否かを監視する。第1-2モデル及び第1-3モデルは、第1モデルと同様に作成されるとよい。すなわち、第1-2モデルは、第2装置3に供給される各物質の情報及び第2装置情報を含む入力と、第2処理物情報(物質E)を含む出力との関係を規定するモデルである。第1-3モデルは、第3装置50に供給される各物質の情報及び第3装置情報を含む入力と、第2処理物情報(物質E)を含む出力との関係を規定するモデルである。
【0074】
例えば、第1プロセスによる物質Cの許容収率が78%~82%の範囲(誤差2%の閾値)に設定され得る。この場合、第1モデルによって推定される物質Cの収率が許容範囲外となった場合、下流の第2プロセスが正常に運転できず、物質Eを生成することができない又は必要な収率を得ることができない可能性がある。これを回避するため、第2モデルは、第1モデルによって推定された第1プロセスから生産される物質Cの収率(78%)と、現在の第2プロセスの条件リストのパラメータを入力として、第2条件リストのパラメータの修正値を出力する。例えば、制御装置30は、第2モデルに基づいて、第2の条件リストのパラメータの修正値として、反応器内温度を10℃上げる、又は物質Dの流量を1L/h下げるといったような修正値を出力する。これにより、制御装置30は、修正された第2条件リストを取得する。以上のように、本発明によれば、第1プロセスから生産される物質Cの収率が目標値から変化した場合に、それに対応するように、リアルタイムで下流の第2プロセスの条件リストを修正することができる。これにより、連続プロセスを停止させることなく運転させることができる。
【0075】
制御システム1は、さらに、第1-2モデルによって推定された第2プロセスから生産される物質Eの収率と、現在の第3プロセスの条件リストのパラメータとを入力として、第3条件リストのパラメータの修正値を出力する第2-2モデルを備える。
【0076】
また、製造システム1は、各プロセスの推定装置情報を出力する第3モデル、第3-2モデル、第3-3モデルを備えている。第3モデルは、第1プロセスの現在の装置情報(第1プロセスの装置の現在の内部温度、内部圧力等)、原料情報(物質Aの現在の流量、物質Bの現在の流量等の第1装置情報)、及び第1処理物情報(物質Cの流量)を入力として推定第1装置情報(第1装置2の触媒活性、熱交換効率等)を出力する。第3-2モデルは、第2プロセスの現在の装置情報(第2プロセスの装置の現在の内部温度、内部圧力等の第2装置情報)、原料情報(物質Cの現在の流量、物質Dの現在の流量)、及び第2処理物情報(物質Eの流量)を入力として推定第2装置情報(第2装置6の触媒活性、熱交換効率等)を出力する。第3-3モデルは、第3プロセスの現在の装置情報(第3プロセスの装置の現在の内部温度、内部圧力等の第3装置情報)、原料情報(物質A+B+C+Dの現在の流量、物質Eの現在の流量)、及び第3処理物情報(物質Eの収量)を入力として推定第3装置情報(第3装置51の熱交換効率等)を出力する。
【0077】
さらに、製造システム1は、第1モデルにより出力された第1処理物情報、及び/又は第3モデルにより出力された推定第1装置情報に基づいて、第1条件リストを修正する第4モデルと、第1-2モデルにより出力された第2処理物情報、及び/又は第3-2モデルにより出力された推定第2装置情報に基づいて、第2条件リストを修正する第4-2モデルと、第1-3モデルにより出力された第3処理物情報、及び/又は第3-3モデルにより出力された推定第3装置情報に基づいて、第3条件リストを修正する第4-3モデルとを備えている。
【0078】
例えば、第1プロセスによる物質Cの許容収率が78%~82%の範囲(誤差2%の閾値)に設定され得る。この場合、第1モデルによって推定される物質Cの収率が許容範囲外となった場合、物質Cの収率を許容範囲内に収めるために、第3モデル、及び第4モデルを用いて第1条件リストを修正する処理が行われる。例えば、制御装置30は、第4モデルに基づいて、第1の条件リストのパラメータの修正値として、第1装置本体5の目標内部温度を10℃上げる、又は物質Bの流量を1L/h上げるといったような修正値を出力する。これにより、制御装置30は、修正された第1条件リストを取得する。
【0079】
以上のように、本発明によれば、予め運転パラメータの条件リストが策定されたプロセスを複数組み合わせた連続プロセスを運転する際に、各プロセスの実際の運転状態の変化にリアルタイムに対応して、条件リストを修正することができる。これにより、連続プロセスを停止させることなく、プロセス全体の運転を最適化することができる。
【符号の説明】
【0080】
1 :製造システム
2 :第1装置
3 :第2装置
5 :第1装置本体
6 :第2装置本体
8 :原料供給管
8A :第1原料供給管
8B :第2原料供給管
8C :第3原料供給管
11A :第1流量制御弁
11B :第2流量制御弁
11C :第3流量制御弁
13 :接続管
15 :出口管
18 :第1温度調節器
19 :第2温度調節器
21 :第1センサ
23 :第2センサ
30 :制御装置
30B :記憶部
32 :入力装置
50 :第3装置
51 :第3装置本体
【要約】
【課題】 連続した複数のプロセスを有する製造システムにおいて、最終製品の状態を制御する。
【解決手段】 制御システム1は、第1装置2と、第2装置3と、第1センサ21と、第2センサ23と、第1装置の複数の制御パラメータを含む第1条件リストに基づいて第1装置を制御すると共に、第2装置の複数の制御パラメータを含む第2条件リストに基づいて第2装置を制御する制御装置30とを有する。制御装置は、原料情報及び第1装置情報に対して、第1処理物の性状に関する第1処理物情報を出力する第1モデルに基づいて第1処理物情報を取得し、第1処理物情報に対して、第2条件リストの修正値を出力する第2モデルに基づいて第2条件リストの修正値を取得し、第2条件リストと、第2条件リストの修正値とに基づいて修正された第2条件リストを取得し、修正した第2条件リストに基づいて第2装置を制御する。
図1
図2
図3
図4