(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】蛍光体、発光装置、照明装置、画像表示装置及び車両用表示灯
(51)【国際特許分類】
C09K 11/64 20060101AFI20231019BHJP
C09K 11/59 20060101ALI20231019BHJP
C09K 11/61 20060101ALI20231019BHJP
C09K 11/62 20060101ALI20231019BHJP
C09K 11/63 20060101ALI20231019BHJP
C09K 11/77 20060101ALI20231019BHJP
C09K 11/78 20060101ALI20231019BHJP
C09K 11/79 20060101ALI20231019BHJP
C09K 11/80 20060101ALI20231019BHJP
C09K 11/85 20060101ALI20231019BHJP
C09K 11/08 20060101ALI20231019BHJP
H01L 33/50 20100101ALI20231019BHJP
F21V 9/38 20180101ALI20231019BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20231019BHJP
【FI】
C09K11/64
C09K11/59
C09K11/61
C09K11/62
C09K11/63
C09K11/77
C09K11/78
C09K11/79
C09K11/80
C09K11/85
C09K11/08 J
H01L33/50
F21V9/38
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2023016168
(22)【出願日】2023-02-06
【審査請求日】2023-02-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 恭太
(72)【発明者】
【氏名】来島 友幸
(72)【発明者】
【氏名】大石 敦史
(72)【発明者】
【氏名】広崎 尚登
【審査官】黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】Xuejie Zhang et al.,ACS Applied Materials & Interfaces,2016年,8,19612-19617,DOI: 10.1021/acsami.6b05485
【文献】Dianpeng Cui et al.,Journal of Luminescence,2018年,199,271-277,DIO: 10.1016/j.jlumin.2018.03.035
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/
H01L 33/50
CAplus/REGISTRY(STN)
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式[1]で表される組成を有する結晶相を含み、かつ、
B(ホウ素)の含有量をb(質量ppm)としたとき、Log
10(b)の値が3.5以下である、蛍光体。
Re
xMA
aMB
bMC
cD
dX
e [1]
(上記式[1]中、
MAは
Srを含み、
MBは
Liを含み、
MCは
Al及びGaから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
DはN(窒素)及びO(酸素)から成る群から選ばれる1種以上の元素であり、
かつ、N(窒素)を含み、
XはF、Cl、Br、及びIから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
Reは
Euを含み、
a、b、c、d、e、xは、それぞれ、下記式を満たす。
0.7≦a≦1.3
0.9≦b≦1.3
c=3.0
3.2≦d≦4.8
0.0≦e≦0.2
0.0<x≦0.2)
【請求項2】
下記式[2]で表される組成を有する結晶相を含み、かつ、
B(ホウ素)の含有量をb(質量ppm)としたとき、Log
10(b)の値が3.5以下である、蛍光体。
Re
xMA
aMB
b(Al
1-yMC’
y)
cD
dX
e [2]
(上記式[2]中、
MAは
Srを含み、
MBは
Liを含み、
MC’は
Gaを含み、
DはN(窒素)及びO(酸素)から成る群から選ばれる1種以上の元素であり、
かつ、N(窒素)を含み、
XはF、Cl、Br、及びIから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
Reは
Euを含み、
a、b、c、d、e、x、yは、それぞれ、下記式を満たす。
0.7≦a≦1.3
0.9≦b≦1.3
c=3.0
3.2≦d≦4.8
0.0≦e≦0.2
0.0<x≦0.2
0.0<y≦1.0)
【請求項3】
B(ホウ素)の含有量をb(質量ppm)としたとき、Log
10(b)の値が3.0以下である、請求項1又は2に記載の蛍光体。
【請求項4】
前記式[1]又は式[2]において、MAの80モル%以上が
Srである、請求項1又は2に記載の蛍光体。
【請求項5】
前記式[1]又は式[2]において、MBの80モル%以上がLiである、請求項1又は2に記載の蛍光体。
【請求項6】
前記式[1]において、MCの80モル%以上がAl及びGaから成る群より選ばれる1種以上の元素から成る、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項7】
前記式[1]において、MCの80モル%以上がAlである、請求項1に記載の蛍光体。
【請求項8】
前記式[2]において、MC’の80モル%以上がGaである、請求項2に記載の蛍光体。
【請求項9】
前記式[1]又は式[2]において、Reの80モル%以上がEuである、請求項1又は2に記載の蛍光体。
【請求項10】
前記式[1]又は式[2]で表される組成を有する結晶相の空間群がP-1である、請求項1又は2に記載の蛍光体。
【請求項11】
発光スペクトルにおいて620nm以上、660nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する、請求項1又は2に記載の蛍光体。
【請求項12】
発光スペクトルにおける半値幅(FWHM)が70nm以下である、請求項1又は2に記載の蛍光体。
【請求項13】
第1の発光体と、前記第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する1以上の蛍光体を含む第2の発光体とを備え、
前記第2の発光体が請求項1又は2に記載の蛍光体を含む、発光装置。
【請求項14】
前記第2の発光体が更に黄色蛍光体及び/又は緑色蛍光体を含む、請求項13に記載の発光装置。
【請求項15】
前記黄色蛍光体及び/又は緑色蛍光体は、ガーネット系蛍光体、シリケート系蛍光体、窒化物蛍光体、及び酸窒化物蛍光体のいずれか1種以上を含む、請求項14に記載の発光装置。
【請求項16】
請求項13に記載の発光装置を光源として備える照明装置。
【請求項17】
請求項13に記載の発光装置を光源として備える画像表示装置。
【請求項18】
請求項13に記載の発光装置を光源として備える車両用表示灯。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体、発光装置、照明装置、画像表示装置及び車両用表示灯に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーの流れを受け、LEDを用いた照明やバックライトの需要が増加している。ここで用いられるLEDは、青又は近紫外波長の光を発するLEDチップ上に、蛍光体を配置した白色発光LEDである。
【0003】
このようなタイプの白色発光LEDとしては、青色LEDチップ上に、青色LEDチップからの青色光を励起光として、赤色に発光する窒化物蛍光体と緑色に発光する蛍光体を用いたものが近年用いられている。LEDとしては、更なる発光効率が求められており、赤色蛍光体としても発光特性に優れた蛍光体、及びその様な蛍光体を備える発光装置が所望されている。
【0004】
発光装置に用いられる赤色蛍光体としては、例えば一般式K2(Si,Ti)F6:Mn、K2Si1-xNaxAlxF6:Mn(0<x<1)で表されるKSF蛍光体、一般式(Sr,Ca)AlSiN3:Euで表されるS/CASN蛍光体等が知られているが、KSF蛍光体についてはMnで賦活された劇物であるため、より人体及び環境に優しい蛍光体が求められている。また、S/CASN蛍光体については発光スペクトルにおける半値幅(以下、「スペクトル半値幅」、或いは「A full width at half maximum」「FWHM」と記載する場合がある。)が80nm~90nm程度と比較的広いものが多く、発光波長領域が比視感度の低い波長領域を含みやすいため、変換効率を改善する観点から、よりスペクトル半値幅の狭い赤色蛍光体が求められている。
【0005】
また、近年の発光装置に適用し得る赤色蛍光体として、例えば、特許文献1には実施例においてSrLiAl3N4:Euの組成式で表される蛍光体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の蛍光体は、窒化ホウ素製るつぼを用いることでホウ素が蛍光体に混入し、発光特性が低下する可能性があった。これに対し、近年では、これまで以上に精緻な化合物設計に基づくより発光強度の良好な蛍光体、及び変換効率が良好な発光装置が求められている。
【0008】
上記課題に鑑みて、本発明は、発光ピーク波長が良好で、スペクトル半値幅が狭く、発光強度の高い蛍光体を提供することを目的とする。
また、本発明は、演色性、色再現性、及び/又は変換効率が良好な発光装置、照明装置、画像表示装置及び/又は車両用表示灯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は鋭意検討したところ、特定組成で表される結晶相を含むとともに、特定元素の含有量を一定以下に調整した蛍光体、又は該蛍光体を備える発光装置を用いることで、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成させた。非限定的ないくつかの実施形態を以下に示す。
【0010】
本発明の態様1は、
下記式[1]で表される組成を有する結晶相を含み、かつ、
B(ホウ素)の含有量をb(質量ppm)としたとき、Log10(b)の値が3.5以下である、蛍光体である。
RexMAaMBbMCcDdXe [1]
(上記式[1]中、
MAはCa、Sr、Ba、Na、K、Y、Gd、及びLaから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
MBはLi、Mg、及びZnから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
MCはAl、Si、Ga、In、及びScから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
DはN(窒素)及びO(酸素)から成る群から選ばれる1種以上の元素であり、
XはF、Cl、Br、及びIから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
ReはEu、Ce、Pr、Tb、及びDyから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
a、b、c、d、e、xは、それぞれ、下記式を満たす。
0.7≦a≦1.3
0.7≦b≦1.3
2.4≦c≦3.6
3.2≦d≦4.8
0.0≦e≦0.2
0.0<x≦0.2)
【0011】
本発明の態様2は、
下記式[2]で表される組成を有する結晶相を含み、かつ、
B(ホウ素)の含有量をb(質量ppm)としたとき、Log10(b)の値が3.5以下である、蛍光体である。
RexMAaMBb(Al1-yMC’y)cDdXe [2]
(上記式[2]中、
MAはCa、Sr、Ba、Na、K、Y、Gd、及びLaから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
MBはLi、Mg、及びZnから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
MC’はSi、Ga、In、及びScから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
DはN(窒素)及びO(酸素)から成る群から選ばれる1種以上の元素であり、
XはF、Cl、Br、及びIから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
ReはEu、Ce、Pr、Tb、及びDyから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
a、b、c、d、e、x、yは、それぞれ、下記式を満たす。
0.7≦a≦1.3
0.7≦b≦1.3
2.4≦c≦3.6
3.2≦d≦4.8
0.0≦e≦0.2
0.0<x≦0.2
0.0<y≦1.0)
【0012】
本発明の態様3は、態様1又は2の蛍光体において、
B(ホウ素)の含有量をb(質量ppm)としたとき、Log10(b)の値が3.0以下である、蛍光体である。
【0013】
本発明の態様4は、態様1~3のいずれか1つの蛍光体において、
前記式[1]又は式[2]において、MAの80モル%以上がCa、Sr及びBaから成る群より選ばれる1種以上の元素である、蛍光体である。
【0014】
本発明の態様5は、態様1~4のいずれか1つの蛍光体において、
前記式[1]又は式[2]において、MBの80モル%以上がLiである、蛍光体である。
【0015】
本発明の態様6は、態様1及び3~5のいずれか1つの蛍光体において、
前記式[1]において、MCの80モル%以上がAl及びGaから成る群より選ばれる1種以上の元素から成る、蛍光体である。
【0016】
本発明の態様7は、態様1及び3~6のいずれか1つの蛍光体において、
前記式[1]において、MCの80モル%以上がAlである、蛍光体である。
【0017】
本発明の態様8は、態様2~5のいずれか1つの蛍光体において、
前記式[2]において、MC’の80モル%以上がGaである、蛍光体である。
【0018】
本発明の態様9は、態様1~8のいずれか1つの蛍光体において、
前記式[1]又は式[2]において、Reの80モル%以上がEuである、蛍光体である。
【0019】
本発明の態様10は、態様1~9のいずれか1つの蛍光体において、
前記式[1]又は式[2]で表される組成を有する結晶相の空間群がP-1である、蛍光体である。
【0020】
本発明の態様11は、態様1~10のいずれか1つの蛍光体において、
発光スペクトルにおいて620nm以上、660nm以下の範囲に発光ピーク波長を有する、蛍光体である。
【0021】
本発明の態様12は、態様1~11のいずれか1つの蛍光体において、
発光スペクトルにおける半値幅(FWHM)が70nm以下である、蛍光体である。
【0022】
本発明の態様13は、
第1の発光体と、前記第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する1以上の蛍光体を含む第2の発光体とを備え、
前記第2の発光体が態様1~12のいずれか1つの蛍光体を含む、発光装置である。
【0023】
本発明の態様14は、態様13の発光装置において、
前記第2の発光体が更に黄色蛍光体及び/又は緑色蛍光体を含む、発光装置である。
【0024】
本発明の態様15は、態様14の発光装置において、
前記黄色蛍光体及び/又は緑色蛍光体は、ガーネット系蛍光体、シリケート系蛍光体、窒化物蛍光体、及び酸窒化物蛍光体のいずれか1種以上を含む、発光装置である。
【0025】
本発明の態様16は、
態様13~15のいずれか1つの発光装置を光源として備える照明装置である。
【0026】
本発明の態様17は、
態様13~15のいずれか1つの発光装置を光源として備える画像表示装置である。
【0027】
本発明の態様18は、
態様13~15のいずれか1つの発光装置を光源として備える車両用表示灯である。
【発明の効果】
【0028】
本発明により、発光ピーク波長が良好で、スペクトル半値幅が狭く、発光強度の高い蛍光体を提供することができる。
また、本発明により、演色性、色再現性、及び/又は変換効率が良好な発光装置、照明装置、画像表示装置及び/又は車両用表示灯を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、比較例1及び実施例1~4の蛍光体におけるB(ホウ素)の含有量をb(質量ppm)としたときのLog
10(b)の値を横軸にプロットし、比較例1の輝度を1.0としたときの比較例1及び実施例1~4の蛍光体の相対輝度を縦軸にプロットした図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明について実施形態や例示物を示して説明するが、本発明は以下の実施形態や例示物等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変形して実施することができる。
【0031】
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。また、本明細書中の蛍光体の組成式において、各組成式の区切りは読点(、)で区切って表わす。また、カンマ(,)で区切って複数の元素を列記する場合には、列記された元素のうち1種又は2種以上を任意の組み合わせ及び組成で含有していてもよいことを示している。例えば、「(Ca,Sr,Ba)Al2O4:Eu」という組成式は、「CaAl2O4:Eu」と、「SrAl2O4:Eu」と、「BaAl2O4:Eu」と、「Ca1-xSrxAl2O4:Eu」と、「Sr1-xBaxAl2O4:Eu」と、「Ca1-xBaxAl2O4:Eu」と、「Ca1-x-ySrxBayAl2O4:Eu」(但し、式中、0<x<1、0<y<1、0<x+y<1である。)とを全て包括的に示しているものとする。
【0032】
<蛍光体>
本発明は一実施形態において、下記式[1]で表される組成を有する結晶相を含み、かつ、B(ホウ素)の含有量をb(質量ppm)としたとき、Log10(b)の値が3.5以下である、蛍光体である(以下、「本実施形態の蛍光体[1]」と称す場合がある。)。
RexMAaMBbMCcDdXe [1]
(上記式[1]中、
MAはCa、Sr、Ba、Na、K、Y、Gd、及びLaから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
MBはLi、Mg、及びZnから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
MCはAl、Si、Ga、In、及びScから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
DはN(窒素)及びO(酸素)から成る群から選ばれる1種以上の元素であり、
XはF、Cl、Br、及びIから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
ReはEu、Ce、Pr、Tb、及びDyから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
a、b、c、d、e、xは、それぞれ、下記式を満たす。
0.7≦a≦1.3
0.7≦b≦1.3
2.4≦c≦3.6
3.2≦d≦4.8
0.0≦e≦0.2
0.0<x≦0.2)
【0033】
また、本実施形態の蛍光体[1]と後述する本実施形態の蛍光体[2]とをまとめて、「本実施形態の蛍光体」と称す場合がある。
【0034】
本発明は別の実施形態において、本実施形態の蛍光体[1]を備える発光装置である。
【0035】
式[1]中、Reにはユーロピウム(Eu)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)及びイッテルビウム(Yb)等を用いることができるが、発光波長及び発光量子効率を向上する観点から、Reは好ましくはEu、Ce、Pr、Tb、及びDyから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、より好ましくはEuを含み、更に好ましくはReの80モル%以上はEuであり、より更に好ましくはReはEuである。
【0036】
式[1]中、MAはカルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、イットリウム(Y)、ガドリニウム(Gd)、及びランタン(La)から成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、好ましくはCa、Sr、及びBaから成る群より選ばれる1種以上の元素を含み、より好ましくはMAはSrを含む。また、好ましくは、MAの80モル%以上がCa、Sr及びBaから成る群より選ばれる1種以上の元素であり、より好ましくはMAがCa、Sr及びBaから成る群より選ばれる1種以上の元素から成る。
【0037】
式[1]中、MBはリチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、及び亜鉛(Zn)から成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、好ましくはLiを含み、より好ましくはMBの80モル%以上はLiであり、更に好ましくはMBはLiである。
【0038】
式[1]中、MCはアルミニウム(Al)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、及びスカンジウム(Sc)から成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、好ましくはAl、Ga又はSiを含み、より好ましくはAl及びGaから成る群より選ばれる1種以上の元素を含み、更に好ましくはMCの80モル%以上はAl及びGaから成る群より選ばれる1種以上の元素から成り、特に好ましくはMCの90モル%以上はAl及びGaから成る群より選ばれる1種以上の元素から成り、最も好ましくはMCはAl及びGaから成る群より選ばれる1種以上の元素から成る。
【0039】
一実施形態において、MCの80モル%以上はAlであり、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上、さらに好ましくは98モル%以上がAlである。MCの80モル%以上がAlであることで、S/CASN等の既存の赤色蛍光体と同程度の発光ピーク波長及び発光強度を示し、かつスペクトル半値幅が狭い赤色蛍光体を提供することができる。この様な赤色蛍光体を用いることで、従来と同程度かそれ以上の変換効率(Conversion Efficiensy、Lm/W)を維持しつつ、演色性又は色再現性に優れる発光装置を提供することができる。
【0040】
式[1]中、DはN(窒素)及びO(酸素)から成る群から選ばれる1種以上の元素である。DにおけるN(窒素)の割合は任意に調整することができるが、好ましくは50モル%以上であり、より好ましく70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上であり、100モル%であってもよい。DにおけるN(窒素)の割合を適宜調整することで、結晶相全体の電荷バランスを保ち、又は発光ピーク波長を調整することができる。
【0041】
式[1]中、Xはフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、及びヨウ素(I)から成る群から選ばれる1種以上の元素を含む。すなわち、特定の実施形態においては、結晶構造安定化及び蛍光体全体の電荷バランスを保つ観点から、上記DにおけるNは、その一部がXで表した上記ハロゲン元素で置換されていてもよい。
【0042】
本実施形態の蛍光体[1]におけるB(ホウ素)の含有量をb(質量ppm)としたとき、Log10(b)の値は通常3.5以下であり、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2.2以下である。Log10(b)の値の下限は特に制限されず、値が小さいほど好ましく、負の値でもよい。Log10(b)の値が負の値となることは、ホウ素の含有量が1ppm未満であることを示す。
前記Log10(b)の値を上記上限以下とすることで、蛍光体の発光強度を向上させることができる。
【0043】
前記Log10(b)の値は上記上限以下とする方法は、本発明の効果を失わない限り特に制限されない。特定の実施形態においては、原料混合粉にホウ素と異なる元素又はその化合物を分散又は付着させる方法、反応容器の表面を前記ホウ素とは異なる元素又はその化合物でコーティングする方法、前記ホウ素とは異なる元素又はその化合物を含む材質から成る反応容器を用いて合成を行う方法、などを採用することができる。
前記ホウ素とは異なる元素は、発明の効果を得られる限り制限されないが、るつぼの材質として使用可能な元素を用いることができ、一実施形態ではMo、W、Nb、Ta、Ni、Pt、及びIrから成る群より選ばれる1以上の元素を含み、好ましくはMo、W、Nb、Ta、及びNiから成る群より選ばれる1以上の元素を含み、より好ましくはMoを含む。
なお、後述の実施例においては、一例としてMoを用いた。
【0044】
本実施形態の蛍光体が良好な輝度、スペクトル半値幅及び/又は発光強度を示す理由は定かではないが、ホウ素が混入することで発光特性に劣る相が生成する可能性があり、これを防ぐことで、発光特性が向上するものと考えられる。
【0045】
前記式[1]及び後述する式[2]は、本発明の効果が損なわれない限り、明記した以外の成分が含まれていてもよい。
前記明記した以外の成分としては、式[1]及び後述する式[2]を構成するいずれかの元素と元素番号が1つ~2つ異なる元素、意図的に加えた元素の同族元素、意図的に加えた希土類元素と別の希土類元素、及び原料にハロゲン化物を用いた際のハロゲン元素、その他各種原料に不純物として一般的に含まれ得る元素などが挙げられる。
前記明記した以外の成分が含まれる場合としては、例えば、新たな効果の発現を目的としてMA、MB、MC及びD、並びに、後述するMC’、X及びReのいずれかのサイトに、前記明記した以外の元素が含まれる場合や、原料の不純物由来、及び粉砕工程、合成工程等の製造プロセス等において、前記明記した以外の成分が不可避的に、又は意図せず導入される場合が考えられる。また、微量添加成分としては反応助剤、及び原料由来の成分などが挙げられる。
【0046】
上記式[1]中、a、b、c、d、e、xは、それぞれ、蛍光体に含まれるMA、MB、MC、D、X及びReのモル含有量を示す。
【0047】
aの値は、通常0.7以上、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上であり、通常1.3以下、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下である。
bの値は、通常0.7以上、好ましくは0.8以上、より好ましくは0.9以上であり、通常1.3以下、好ましくは1.2以下、より好ましくは1.1以下である。
cの値は、通常2.4以上、好ましくは2.6以上、より好ましくは2.8以上であり、通常3.6以下、好ましくは3.4以下、より好ましくは3.2以下である。
dの値は、通常3.2以上、好ましくは3.4以上、より好ましくは3.6以上、更に好ましくは3.8以上であり、通常4.8以下、好ましくは4.6以下、より好ましくは4.4以下、更に好ましくは4.2以下である。
eの値は特に制限されないが、通常0.0以上であり、通常0.2以下、好ましくは0.1以下、より好ましくは0.06以下、更に好ましくは0.04以下、より更に好ましくは0.02以下である。
xの値は、通常0.0より大きく、好ましくは0.0001以上、より好ましくは0.001以上であり、通常0.2以下、好ましくは0.15以下、より好ましくは0.12以下、更に好ましくは0.1以下、より更に好ましくは0.08以下である。xの値が上記下限以上又は上記下限より大きい値であることで、良好な発光強度の蛍光体を得ることができ、xの値が上記上限以下であることで、Reが良好に結晶内に取り込まれ、発光中心として機能しやすい蛍光体を得ることができる。
【0048】
b、c、d、eが上記範囲にあることで、結晶構造が安定化する。また、d、eの値は蛍光体全体の電荷バランスを保つ目的で適度に調節できる。
【0049】
また、aの値が上記範囲にあることで、結晶構造が安定化し、異相の少ない蛍光体が得られる。
【0050】
b+cの値は、通常3.1以上、好ましくは3.4以上、より好ましくは3.7以上であり、通常4.9以下、好ましくは4.6以下、より好ましくは4.3以下である。
b+cの値が上記範囲であることで、結晶構造が安定化する。
【0051】
d+eの値は、通常3.2以上、好ましくは3.4以上、より好ましくは3.7以上であり、通常5.0以下、好ましくは4.6以下、より好ましくは4.3以下である。
d+eの値が上記範囲であることで、結晶構造が安定化する。
【0052】
いずれの値も上記した範囲であると得られる蛍光体の発光ピーク波長及び発光スペクトルにおける半値幅が良好である点で好ましい。
【0053】
なお、前記蛍光体の元素組成の特定方法は特に限定されず、常法で求めることができ、例えばGD-MS、ICP分光分析法、又はエネルギー分散型X線分析装置(EDX)等により特定できる。
【0054】
本発明は一実施形態において、下記式[2]で表される組成を有する結晶相を含み、かつ、B(ホウ素)の含有量をb(質量ppm)としたとき、Log10(b)の値が3.5以下である、蛍光体である(以下、「本実施形態の蛍光体[2]」と称す場合がある。)。
RexMAaMBb(Al1-yMC’y)cDdXe [2]
(上記式[2]中、
MAはCa、Sr、Ba、Na、K、Y、Gd、及びLaから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
MBはLi、Mg、及びZnから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
MC’はSi、Ga、In、及びScから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
DはN(窒素)及びO(酸素)から成る群から選ばれる1種以上の元素であり、
XはF、Cl、Br、及びIから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
ReはEu、Ce、Pr、Tb、及びDyから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、
a、b、c、d、e、x、yは、それぞれ、下記式を満たす。
0.7≦a≦1.3
0.7≦b≦1.3
2.4≦c≦3.6
3.2≦d≦4.8
0.0≦e≦0.2
0.0<x≦0.2
0.0<y≦1.0)
【0055】
また、本発明は別の実施形態においては、本実施形態の蛍光体[2]を備える発光装置である。
【0056】
前記式[2]におけるMA、MB、D、X、Re元素の種類及び構成は、前記式[1]と同様とすることができる。
また、本実施形態の蛍光体[2]における前記Log10(b)の好ましい値や蛍光体の製造方法についても、前記本実施形態の蛍光体[1]と同様とすることができる。
【0057】
式[2]中、MC’はSi、Ga、In、及びScから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、結晶安定性及び発光強度を向上する観点から、好ましくはGa及びSiから成る群から選ばれる1種以上の元素を含み、より好ましくはGaを含む。
更に好ましい特定の実施形態においては、式[2]中、MC’の80モル%以上はGaであってもよく、あるいは、MC’はGaから成ってもよい。
【0058】
前記式[2]におけるa、b、c、d、e及びxの値及び好ましい範囲は、前記式[1]と同様とすることができる。
【0059】
前記式[2]におけるyの値は、0.0より大きく、通常0.01以上、好ましくは0.015以上、より好ましくは0.03以上、更に好ましくは0.05以上、特に好ましくは0.1以上であり、通常1.0以下、好ましくは0.7以下、より好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.3以下、特に好ましくは0.25以下である。
【0060】
yの値が上記下限以上であることで、蛍光体の発光ピーク波長が短波化し、この様な蛍光体を用いることで、演色性又は色再現性の良好な発光装置を提供できる。また、yの値が上記上限以下であることで、発光強度が良好な蛍光体を得ることができ、この様な蛍光体を用いることで変換効率の良好な発光装置を提供できる。目的に応じて好ましい発光強度と発光ピーク波長を得るため、yの値は適宜調整することができる。
【0061】
[結晶相の粒径]
本実施形態の蛍光体の結晶相の粒径は、体積基準の中央粒径(体積メジアン粒径)で通常2μm以上35μm以下であり、下限値は、好ましくは3μm以上、より好ましくは4μm以上、更に好ましくは5μm以上であり、また上限値は、好ましくは30μm以下、より好ましくは25μm以下、更に好ましくは20μm以下、特に好ましくは15μm以下である。
体積基準の中央粒径(体積メジアン粒径)が上記下限以上であると結晶相がLEDパッケージ内で示す発光特性を向上する観点から好ましく、上記上限以下であると結晶相がLEDパッケージの製造工程においてノズルの閉塞を回避できる点から好ましい。
蛍光体の結晶相の体積基準の中央粒径(体積メジアン粒径)は、当業者に周知の測定技術により測定できるが、好ましい実施形態においては、例えばレーザー粒度計により測定できる。本明細書における実施例において、体積基準の中央粒径(体積メジアン粒径、(d50))とは、レーザー回折・散乱法を測定原理とする粒度分布測定装置を用いて、試料を測定し、粒度分布(累積分布)を求めたときの体積基準の相対粒子量が50%になる粒子径と定義される。
【0062】
{蛍光体の物性など}
[空間群]
本実施形態の蛍光体において、式[1]又は式[2]で表される組成を有する結晶相の結晶系(空間群)は、発明の効果が得られる限り制限されないが、一実施形態においては正方晶のP42/m、単斜晶のP-1等とすることができ、好ましくはP-1である。本実施形態の蛍光体における空間群は、粉末X線回折又は単結晶X線回折にて区別しうる範囲において統計的に考えた平均構造が上記の長さの繰り返し周期を示していれば特に限定されないが、「International Tables for Crystallography(Third,revised edition),Volume A SPACE-GROUP SYMMETRY」に基づく2番に属するものであることが好ましい。
上記の空間群であることで、発光スペクトルにおける半値幅(FWHM)が狭くなり、発光効率の良い蛍光体が得られる。
ここで、空間群は常法に従って求めることができ、例えば電子線回折や粉末又は単結晶を用いたX線回折構造解析及び中性子線回折構造解析等により求めることができる。
【0063】
[発光スペクトルの特性]
本実施形態の蛍光体は、適切な波長を有する光を照射することで励起し、発光スペクトルにおいて良好な発光ピーク波長及びスペクトル半値幅(FWHM)を示す赤色光を放出する。以下、上記発光スペクトル及び励起波長、発光ピーク波長及びスペクトル半値幅(FWHM)について記載する。
【0064】
(励起波長)
本実施形態の蛍光体は、通常270nm以上、好ましくは300nm以上、より好ましくは320nm以上、更に好ましくは350nm以上、特に好ましくは400nm以上、また、通常500nm以下、好ましくは480nm以下、より好ましくは460nm以下の波長範囲に励起ピークを有する。即ち、近紫外から青色領域の光で励起される。
なお、発光スペクトルの形状、及び下記発光ピーク波長及びスペクトル半値幅の記載は励起波長によらず適用できるが、量子効率を向上させる観点からは、吸収及び励起の効率が良い上記範囲の波長を有する光を照射することが好ましい。
【0065】
(発光ピーク波長)
本実施形態の蛍光体は、発光スペクトルにおけるピーク波長が通常620nm以上、好ましくは625nm以上、より好ましくは630nm以上である。また、この発光スペクトルにおけるピーク波長は通常670nm以下、好ましくは660nm以下、より好ましくは655nm以下である。本実施形態の蛍光体は、例えば、発光スペクトルにおいて620nm以上、660nm以下の範囲に発光ピーク波長を有することができる。
【0066】
蛍光体の発光スペクトルにおけるピーク波長が上記範囲であることで、発光色が良好な赤色となり、これを用いることで演色性又は色再現性の良い発光装置を提供できる。また、蛍光体の発光スペクトルにおけるピーク波長が上記上限以下であることで、赤色の視感度が良好で、ルーメン当量lm/Wの良好な発光装置を提供できる。
【0067】
発光装置においては、用途に応じてピーク波長の異なる蛍光体を用いることができる。ピーク波長の異なる蛍光体を得る方法は特に制限されないが、1つの方法としては、MC元素の構成を変えることで実現できる。
【0068】
一実施形態においては、前記式[1]においてMCにAlを用い、かつAlの比率を高くすることで発光ピーク波長が長い蛍光体を得ることができる。この実施形態においては、発光ピーク波長は好ましくは640nm以上、より好ましくは645nm以上であり、通常670nm以下、好ましくは660nm以下である。発光波長がこの範囲にある蛍光体を備えることで、例えば照明用途に用いる発光装置において、発光効率と演色性を両立させた発光装置、又は液晶ディスプレイのバックライトユニットに用いる発光装置において、発光効率と色再現範囲を両立させた発光装置を提供できる。
【0069】
別の一実施形態においては、Al及びMC’元素を用いる前記式[2]で表される組成を有する結晶相を含む蛍光体とすることで、発光ピーク波長が相対的に短い蛍光体を得ることができる。この実施形態においては、発光ピーク波長は通常615nm以上、好ましくは620nm以上、より好ましくは625nm以上、更に好ましくは630nm以上であり、通常660nm以下、好ましくは645nm以下、より好ましくは640nm以下である。発光波長が上記範囲にある蛍光体を用いることで、演色性又は色再現性の良好な発光装置を得ることができる。
【0070】
(発光スペクトルの半値幅)
本実施形態の蛍光体は、発光スペクトルにおける半値幅が、通常80nm以下、好ましくは70nm以下、より好ましくは60nm以下、更に好ましくは55nm以下、特に好ましくは50nm以下であり、また通常10nm以上である。
発光スペクトルにおける半値幅が上記範囲内である蛍光体を用いることで、液晶ディスプレイなどの画像表示装置において色純度を低下させずに色再現範囲を広くすることができる。
また、発光ピーク波長及びスペクトル半値幅が上記上限以下にあることで、発光波長領域の視感度が相対的に高い蛍光体を提供でき、このような蛍光体を発光装置に用いることで、変換効率の高い発光装置を提供することができる。
【0071】
なお、前記蛍光体を波長450nm前後の光で励起するには、例えば、GaN系LEDを励起光源として用いることができる。また、前記蛍光体の発光スペクトルの測定、並びにその発光ピーク波長、ピーク相対強度及びスペクトル半値幅の算出は、例えば、市販のキセノンランプ等300~400nmの発光波長を有する光源と、一般的な光検出器を備える蛍光測定装置など、市販のスペクトル測定装置を用いて行うことができる。
【0072】
<蛍光体の製造方法>
本実施形態の蛍光体は、蛍光体を構成する各元素の原料を、各元素の割合が前記式[1]又は式[2]を満たすように混合し、加熱することで合成することができる。
【0073】
[蛍光体原料]
各元素(MA、MB、MC、MC’、Re)の供給源となる蛍光体原料は特に制限されないが、例えば各元素の単体、酸化物、窒化物、水酸化物、塩化物、フッ化物などハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などの無機塩、酢酸塩などの有機酸塩などが挙げられる。その他、前記元素群が2種以上含まれる化合物を用いてもよい。また、各化合物は水和物などであってもよい。
なお、後述の実施例においては、各元素の窒化物を蛍光体原料として用いた。
【0074】
各蛍光体原料の入手方法は特に制限されず、市販のものを購入して用いることができる。
各蛍光体原料の純度は特に制限されないが、元素比を厳密にする観点、及び不純物による異相の出現を避ける観点から、純度は高いほど好ましく、通常90モル%以上、好ましくは95モル%以上、より好ましくは97モル%以上、更に好ましくは99モル%以上であり、上限は特に制限されないが、通常100モル%以下であり、不可避的に混入する不純物が含まれていてもよい。
後述の実施例においては、いずれも純度95モル%以上の蛍光体原料を用いた。
【0075】
酸素元素(O)、窒素元素(N)、及びハロゲン元素(X)については、前記各元素の供給源となる蛍光体原料として酸化物、窒化物、及びハロゲン化物等を用いることで供給できるほか、合成反応の際に酸素又は窒素含有雰囲気とすることで適宜含ませることができる。
【0076】
[混合工程]
蛍光体原料の混合方法は特に制限されず、常法を用いることができる。例えば、目的とする組成が得られるように蛍光体原料を秤量し、ボールミル等を用いて十分混合し、蛍光体原料混合物を得る。上記混合方法としては、特に限定はされないが、具体的には、下記(a)及び(b)の方法が挙げられる。
(a)例えばハンマーミル、ロールミル、ボールミル、ジェットミル等の乾式粉砕機、又は、乳鉢と乳棒等を用いる粉砕と、例えばリボンブレンダー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー等の混合機、又は、乳鉢と乳棒を用いる混合とを組み合わせ、前述の蛍光体原料を粉砕混合する乾式混合法。
(b)前述の蛍光体原料に水等の溶媒又は分散媒を加え、例えば粉砕機、乳鉢と乳棒、又は蒸発皿と撹拌棒等を用いて混合し、溶液又はスラリーの状態とした上で、噴霧乾燥、加熱乾燥、又は自然乾燥等により乾燥させる湿式混合法。
【0077】
蛍光体原料の混合は、上記乾式混合法又は湿式混合法のいずれでもよいが、水分による蛍光体原料の汚染を避けるために、乾式混合法や非水溶性溶媒を使った湿式混合法が好ましい。
なお、後述の実施例においては、(a)の方法を採用した。
【0078】
[ホウ素と異なる元素の添加]
特定の実施形態においては、前記蛍光体の製造方法は、前記混合工程の後、得られた蛍光体原料混合物へホウ素と異なる元素又はその化合物を添加してもよい。
前記ホウ素と異なる元素を添加する方法は、蛍光体原料混合物にホウ素と異なる元素又はその化合物が分散し、あるいは付着すれば特に制限されず、常法を用いることができる。例えば気相法やゾル-ゲル法を用いてもよく、蛍光体原料混合物とホウ素と異なる元素又はその化合物とを混合し、加熱処理してもよい。また、例えば、反応容器の表面をホウ素と異なる元素又はその化合物でコーティングしてもよく、さらに、例えば、ホウ素と異なる元素又はその化合物を含む材質から成る反応容器を用いて合成を行ってもよい。
【0079】
[加熱工程]
加熱工程では、例えば、混合工程で得られた蛍光体原料混合物をるつぼに入れ、引き続き、それを500℃~1200℃の温度、好ましくは600℃~1100℃の温度で加熱する。
また、加熱工程の圧力は、目的の蛍光体が得られる限り常圧でも加圧状態でも構わないが、蛍光体原料に含まれる元素の揮発を防ぐために加圧することが好ましい。加圧する場合、圧力は通常0.1MPa以上200MPa以下であり、好ましくは100MPa以下である。圧力が上記範囲にあることで、蛍光体原料の良好な反応性を確保できる。
加圧の方法は制限されず、例えば密封した容器を加熱する方法、機械的に加圧する方法、又はガス圧を用いる方法などを用いることができる。
【0080】
るつぼの材質は蛍光体原料又は反応物と反応しないものが好ましく、アルミナ、石英、窒化ホウ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素等のセラミック、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、ニオブ(Nb)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)等の金属、あるいは、それらを主成分とする合金等が挙げられる。
なお、後述の実施例においては、窒化ホウ素製るつぼ、又は窒化ホウ素製るつぼを前記ホウ素と異なる元素でコーティングしたものを用いた。
【0081】
加熱は不活性雰囲気下で行うことが好ましく、窒素、アルゴン、ヘリウム等が主成分のガスを用いることができる。
なお、後述の実施例においては、窒素雰囲気下で加熱を行った。
【0082】
加熱工程では、上記の温度帯において、通常10分~200時間、好ましくは1時間~100時間、より好ましくは2時間~50時間にわたって加熱を行う。また、かかる加熱工程は1回で行ってもよく、複数回に分けて行ってもよい。加熱工程を複数回に分けて行う態様としては、欠陥を修復するために加圧下で加熱するアニール工程を含む態様、一次粒子又は中間物を得る一次加熱の後に、二次粒子又は最終生成物を得る二次加熱を行う態様などが挙げられる。
これにより、本実施形態の蛍光体が得られる。
【0083】
[蛍光体の選別]
以上の方法で概ね本実施形態の蛍光体を得られるが、反応容器中の微小な付着物、各試薬の不純物、各原料試薬のロット等、微細な差異によって、得られた蛍光体が本発明の要件の範囲からわずかに外れる粒子を一部に含む場合があるほか、粒子径の大きい物と小さい物、反射率等の異なる蛍光体等が混ざり合う場合がある。
このため、例えば、いくつか条件を変化させて蛍光体を製造し、得られた蛍光体を分級、洗浄等で選別し、反射率、XRDスペクトル等を分析し、本発明の要件を満たす蛍光体を選別することで、上記実施形態の蛍光体を確実に得ることができる。
【0084】
<発光装置>
本発明は一実施形態において、第1の発光体(励起光源)と、前記第1の発光体からの光の照射によって可視光を発する1以上の蛍光体を含む第2の発光体とを備え、前記第2の発光体が本実施形態の蛍光体[1]又は本実施形態の蛍光体[2]を含む発光装置である。ここで、第2の発光体は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0085】
本実施形態における発光装置は、前記第2の発光体が、前記式[1]又は式[2]で表される組成を有する結晶相を含む本実施形態の蛍光体を含むほか、更に、励起光源からの光の照射下において、黄色、緑色、ないし赤色領域(橙色ないし赤色)の蛍光を発する蛍光体を含むことができる。
また、特定の実施形態において、本発明に係る発光装置は、前記第2の発光体が、前記式[1]又は式[2]で表される組成を有する結晶相を含む蛍光体を含み、更に黄色蛍光体及び/又は緑色蛍光体を含む、発光装置である。
具体的には、発光装置を構成する場合、黄色蛍光体としては、550nm以上、600nm以下の波長範囲に発光ピークを有するものが好ましく、緑色蛍光体としては、500nm以上、560nm以下の波長範囲に発光ピークを有するものが好ましい。また、橙色ないし赤色蛍光体は、通常615nm以上、好ましくは620nm以上、より好ましくは625nm以上、更に好ましくは630nm以上で、通常660nm以下、好ましくは650nm以下、より好ましくは645nm以下、更に好ましくは640nm以下の波長範囲に発光ピークを有するものである。
上記の波長領域の蛍光体を適切に組み合わせることで、優れた色再現性を示す発光装置を提供できる。尚、励起光源については、420nm未満の波長範囲に発光ピークを有するものを用いてもよい。
【0086】
以下、赤色蛍光体として、620nm以上660nm以下の波長範囲に発光ピークを有する、前記式[1]又は式[2]で表される組成を有する結晶相を含む本実施形態の蛍光体を用い、かつ、第1の発光体が300nm以上460nm以下の波長範囲に発光ピークを有するものを用いる場合の発光装置の態様について記載するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0087】
上記の場合、本実施形態に係る発光装置は、例えば、次の(A)、(B)又は(C)の態様とすることができる。
(A)第1の発光体として、300nm以上460nm以下の波長範囲に発光ピークを有するものを用い、第2の発光体として、550nm以上600nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体(黄色蛍光体)、及び前記[1]又は式[2]で表される組成を有する結晶相を含む本実施形態の蛍光体を用いる態様。
(B)第1の発光体として、300nm以上460nm以下の波長範囲に発光ピークを有するものを用い、第2の発光体として、500nm以上560nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体(緑色蛍光体)、及び前記[1]又は式[2]で表される組成を有する結晶相を含む本実施形態の蛍光体を用いる態様。
(C)第1の発光体として、300nm以上460nm以下の波長範囲に発光ピークを有するものを用い、第2の発光体として、550nm以上600nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体(黄色蛍光体)、500nm以上560nm以下の波長範囲に発光ピークを有する少なくとも1種の蛍光体(緑色蛍光体)、及び前記[1]又は式[2]で表される組成を有する結晶相を含む本実施形態の蛍光体を用いる態様。
【0088】
上記の態様における緑色蛍光体又は黄色蛍光体としては市販のものを用いることができ、例えば、ガーネット系蛍光体、シリケート系蛍光体、窒化物蛍光体、酸窒化物蛍光体などを用いることができる。すなわち、上記の態様において、黄色蛍光体及び/又は緑色蛍光体は、ガーネット系蛍光体、シリケート系蛍光体、窒化物蛍光体、及び酸窒化物蛍光体のいずれか1種以上を含むことができる。
【0089】
(黄色蛍光体)
黄色蛍光体に用いることができるガーネット系蛍光体としては、例えば、(Y,Gd,Lu,Tb,La)3(Al,Ga)5O12:(Ce,Eu,Nd);シリケート系蛍光体としては、例えば、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:(Eu,Ce);窒化物蛍光体及び酸窒化物蛍光体としては、例えば、(Ba,Ca,Mg)Si2O2N2:Eu(SION系蛍光体)、(Li,Ca)2(Si,Al)12(O,N)16:(Ce,Eu)(α-サイアロン蛍光体)、(Ca,Sr)AlSi4(O,N)7:(Ce,Eu)(1147蛍光体)、(La,Ca,Y、Gd)3(Al,Si)6N11:(Ce、Eu)(LSN蛍光体)などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
黄色蛍光体としては、上記蛍光体においてガーネット系蛍光体が好ましく、中でも、Y3Al5O12:Ceで表されるYAG系蛍光体が最も好ましい。
【0090】
(緑色蛍光体)
緑色蛍光体に用いることができるガーネット系蛍光体としては、例えば、(Y,Gd,Lu,Tb,La)3(Al,Ga)5O12:(Ce,Eu,Nd)、Ca3(Sc,Mg)2Si3O12:(Ce,Eu)(CSMS蛍光体);シリケート系蛍光体としては、例えば、(Ba,Sr,Ca,Mg)3SiO10:(Eu,Ce)、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:(Ce,Eu)(BSS蛍光体);酸化物蛍光体としては、例えば、(Ca,Sr,Ba,Mg)(Sc,Zn)2O4:(Ce,Eu)(CASO蛍光体);窒化物蛍光体及び酸窒化物蛍光体としては、例えば、(Ba,Sr,Ca,Mg)Si2O2N2:(Eu,Ce)、Si6-zAlzOzN8-z:(Eu,Ce)(β-サイアロン蛍光体)(0<z≦1)、(Ba,Sr,Ca,Mg,La)3(Si,Al)6O12N2:(Eu,Ce)(BSON蛍光体);アルミネート蛍光体としては、例えば、(Ba,Sr,Ca,Mg)2Al10O17:(Eu,Mn)(GBAM系蛍光体)などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
(赤色蛍光体)
赤色蛍光体としては、前記式[1]又は式[2]で表される組成を有する結晶相を含む本実施形態の蛍光体を用いるが、本実施形態の蛍光体に加えて、例えばMn賦活フッ化物蛍光体、ガーネット系蛍光体、硫化物蛍光体、ナノ粒子蛍光体、窒化物蛍光体、酸窒化物蛍光体などの他の橙色ないし赤色蛍光体を用いることができる。他の橙色ないし赤色蛍光体としては、例えば下記の蛍光体を用いることができる。
Mn賦活フッ化物蛍光体としては、例えば、K2(Si,Ti)F6:Mn、K2Si1-xNaxAlxF6:Mn(0<x<1)(まとめてKSF蛍光体);硫化物蛍光体としては、例えば、(Sr,Ca)S:Eu(CAS蛍光体)、La2O2S:Eu(LOS蛍光体);ガーネット系蛍光体としては、例えば、(Y,Lu,Gd,Tb)3Mg2AlSi2O12:Ce;ナノ粒子としては、例えば、CdSe;窒化物又は酸窒化物蛍光体としては、例えば、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu(S/CASN蛍光体)、(CaAlSiN3)1-x・(SiO2N2)x:Eu(CASON蛍光体)、(La,Ca)3(Al,Si)6N11:Eu(LSN蛍光体)、(Ca,Sr,Ba)2Si5(N,O)8:Eu(258蛍光体)、(Sr,Ca)Al1+xSi4-xOxN7-x:Eu(1147蛍光体)、Mx(Si,Al)12(O,N)16:Eu(Mは、Ca,Srなど)(αサイアロン蛍光体)、Li(Sr,Ba)Al3N4:Eu(上記のxは、いずれも0<x<1)などが挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
[発光装置の構成]
本実施形態に係る発光装置は、第1の発光体(励起光源)を有し、且つ、第2の発光体として少なくとも前記式[1]又は式[2]で表される組成を有する結晶相を含む本実施形態の蛍光体を使用することができ、その構成は制限されず、公知の装置構成を任意にとることが可能である。
装置構成及び発光装置の実施形態としては、例えば、特開2007-291352号公報に記載のものが挙げられる。その他、発光装置の形態としては、砲弾型、カップ型、チップオンボード、リモートフォスファー等が挙げられる。
【0093】
{発光装置の用途}
発光装置の用途は特に制限されず、通常の発光装置が用いられる各種の分野に使用することが可能であるが、演色性が高い発光装置は、中でも照明装置や画像表示装置の光源として、とりわけ好適に用いることができる。
また、発光波長が良好な赤色の蛍光体を備える発光装置は、赤色の車両用表示灯、又は該赤色を含む白色光の車両用表示灯に用いることもできる。
【0094】
[照明装置]
本発明は一実施形態において、前記発光装置を光源として備える照明装置とすることができる。
前記発光装置を照明装置に適用する場合、その照明装置の具体的構成に制限はなく、前述のような発光装置を公知の照明装置に適宜組み込んで用いればよい。例えば、保持ケースの底面に多数の発光装置を並べた面発光照明装置等を挙げることができる。
【0095】
[画像表示装置]
本発明は一実施形態において、前記発光装置を光源として備える画像表示装置とすることができる。
前記発光装置を画像表示装置の光源として用いる場合、その画像表示装置の具体的構成に制限はないが、カラーフィルターとともに用いることが好ましい。例えば、画像表示装置として、カラー液晶表示素子を利用したカラー画像表示装置とする場合は、前記発光装置をバックライトとし、液晶を利用した光シャッターと赤、緑、青の画素を有するカラーフィルターとを組み合わせることにより画像表示装置を形成することができる。
【0096】
[車両用表示灯]
本発明は一実施形態において、前記発光装置を光源として備える車両用表示灯とすることができる。
車両用表示灯に用いる発光装置は、特定の実施形態においては、白色光を放射する発光装置であることが好ましい。白色光を放射する発光装置は、発光装置から放射される光が、光色の黒体輻射軌跡からの偏差duv(Δuvとも言う)が-0.0200~0.0200であり、かつ色温度が5000K以上、30000K以下であることが好ましい。
車両用表示灯に用いる発光装置は、特定の実施形態においては、赤色光を放射する発光装置であることが好ましい。該実施形態においては、例えば、発光装置が青色LEDチップから照射される青色光を吸収して赤色に発光することで、赤色光の車両用表示灯としてもよい。
車両用表示灯は、車両のヘッドランプ、サイドランプ、バックランプ、ウインカー、ブレーキランプ、フォグランプなど、他の車両や人等に対して何らかの表示を行う目的で車両に備えられた照明を含む。
【実施例】
【0097】
以下、本発明のいくつかの具体的な実施形態を実施例により説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限り、下記のものに限定されるものではない。
【0098】
{測定方法}
[蛍光体組成の測定]
蛍光体サンプルにおけるSr,Al,Ga,Eu,Li,Bの含有量は、JIS K0116:2014に基づき、サンプルを塩酸溶液中で加圧酸分解したうえで適切な濃度に希釈し、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-OES)の手法により測定した。なお、Sr,Al,Ga,Euの含有量はCo標準溶液を内部標準として用いた発光強度比法を用い、Li及びBの含有量は各元素の検量線を作成して発光強度法によって決定した。
蛍光体サンプルにおけるNの含有量は、JIS R1603:2007の14.1(a、JIS R2015:2007の8.2等を参考に、加圧酸分解―水蒸気蒸留分離―中和滴定法にて測定した。なお、加圧酸分解には硫酸およびフッ化水素を含む溶液を用いた。
【0099】
[発光スペクトルの測定]
発光スペクトルは、分光蛍光光度計F-4500(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)にて以下の測定条件のとおり測定した。
・光源:キセノンランプ
・励起波長:455nm
・測定波長範囲:200~900nm
・測定間隔:0.2nm
色度座標の値は、480nm~800nmの発光スペクトルデータから、CIE1931 XYZ等式関数を用いて算出した。
【0100】
[量子効率の測定]
量子効率は、量子効率測定システムQE-2100(大塚電子株式会社製)にて以下の測定条件のとおり測定した発光スペクトルに基づいて算出した。
・光源:キセノンランプ
・励起波長:455nm
・測定波長範囲:200~850nm
・測定間隔:1.2~1.5nm
【0101】
<実施例1~4>
各元素の窒化物原料をSr:Li:Al:Ga:Eu=0.99:1:2.3:0.7:0.01となるように混合して得られた蛍光体原料混合物を、窒化ホウ素製るつぼの表面にMoをコーティングした反応容器に入れた。反応容器を密封した上で、窒素ガス雰囲気下最高温度845℃で5時間焼成し、複数回の実験を行った結果、B(ホウ素)の含有量の異なる蛍光体が得られたため、それぞれを実施例1~4とした。
【0102】
<比較例1>
表面にMoがコーティングされていない窒化ホウ素製るつぼを用いたほかは実施例1と同様にして、比較例1に係る蛍光体を得た。
【0103】
得られた蛍光体の結晶構造を粉末X線回折にて特定した結果、実施例1~4及び比較例1に係る蛍光体は空間群P-1に属するSrLiAl3N4:Euの回折パターンと良い一致を示した。
また、組成及び発光特性を上述の方法で測定した結果を表1に示す。
【0104】
【0105】
表1より、本実施形態の蛍光体は、前記ピーク半値幅(FWHM)が狭く、また発光強度の高い赤色蛍光体であることが分かる。
【0106】
また、比較例1及び実施例1~4の蛍光体におけるB(ホウ素)の含有量をb(質量ppm)としたときのLog
10(b)の値を横軸にプロットし、比較例1の輝度を1.0としたときの比較例1及び実施例1~4の蛍光体の相対輝度を縦軸にプロットしたグラフを、
図1に示す。
図1より、Log
10(b)が3.5以下である本実施形態の蛍光体は、発光強度が高いことが分かる。
【0107】
以上示すとおり、本実施形態によれば、発光ピーク波長が良好で、スペクトル半値幅が狭く、及び/又は発光強度の高い蛍光体を提供することができ、また、該蛍光体を備えることで、演色性又は色再現性が良好であり、かつ変換効率が良好な発光装置、照明装置、画像表示装置及び/又は車両用表示灯を提供することができる。
【0108】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明の蛍光体は、演色性、色再現性及び/又は変換効率が良好な発光装置を提供することができるため、照明装置、画像表示装置及び車両用表示灯に適用することができる。
【要約】
【課題】発光ピーク波長が良好で、スペクトル半値幅が狭く、発光強度の高い蛍光体を提供すること。また、演色性、色再現性、及び/又は変換効率が良好な発光装置、照明装置、画像表示装置及び/又は車両用表示灯を提供すること。
【解決手段】特定の式で表される組成を有する結晶相を含み、かつ、B(ホウ素)の含有量をb(質量ppm)としたとき、Log
10(b)の値が3.5以下である蛍光体、及び、前記蛍光体を第2の発光体として備える発光装置。
【選択図】
図1