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  • 特許-スパッタリング装置 図1
  • 特許-スパッタリング装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】スパッタリング装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/35 20060101AFI20231019BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
C23C14/35 B
H01L21/285 S
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019115908
(22)【出願日】2019-06-21
(65)【公開番号】P2021001376
(43)【公開日】2021-01-07
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】石橋 哲
(72)【発明者】
【氏名】大久保 裕夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 大士
【審査官】今井 淳一
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-020979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/35
H01L 21/285
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一のターゲットが配置される真空チャンバを備え、ターゲットのスパッタ面内で互いに直交する二軸をX軸方向及びY軸方向とし、ターゲットのスパッタ面に背向する側に、線状の中央磁石とこの中央磁石の周囲を所定間隔で囲う周辺磁石とを有する磁石ユニットの複数個が、各磁石ユニットの中央磁石がY軸方向に合致する姿勢で且つX軸方向に間隔を存して並設され、各磁石ユニットを同期させてX軸方向に往復動する駆動手段を更に備えるものにおいて、
駆動手段は、X軸方向一端に位置する磁石ユニットによって作用する、磁場の垂直成分がゼロとなる位置を通る線が中央磁石の延在方向に沿ってのびてレーストラック状に閉じるようにスパッタ面から漏洩する磁場が、ターゲットのX軸方向一端より内方に存する第1折返し位置と、X軸方向他端に位置する磁石ユニットによって作用する、磁場の垂直成分がゼロとなる位置を通る線が中央磁石の延在方向に沿ってのびてレーストラック状に閉じるようにスパッタ面から漏洩する磁場が、ターゲットのX軸方向他端より内方に存する第2折返し位置との間で各磁石ユニットを往復動させ、
X軸方向両端に位置する磁石ユニットが第1折返し位置または第2折返し位置に達した際にX軸方向両端のプラズマがターゲット側の外端に向けて拡がるように、ターゲットのX軸方向両端より外方に位置させてこのターゲットのY軸方向の外縁に沿ってのびる補助磁石を更に備え、
前記補助磁石が、ターゲットの外周縁部を囲うにように設けられることを特徴とするスパッタリング装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリング装置に関し、より詳しくは、単一のターゲットのスパッタ面に背向する側に、線状の中央磁石とこの中央磁石の周囲を所定間隔で囲う周辺磁石とを有する磁石ユニットの複数個が、各磁石ユニットの中央磁石がY軸方向に合致する姿勢で且つX軸方向に間隔を存して並設される(所謂、マルチマグネット方式の)ものに関する。
【背景技術】
【0002】
上記スパッタリング装置は例えば特許文献1で知られている。このものでは、一般に、中央磁石の同磁化に換算したときの体積を各周辺磁石の同磁化に換算したときの体積の和と同等になるように各磁石ユニットが構成され、各磁石ユニットによって、磁場の垂直成分がゼロとなる位置を通る線が中央磁石の延在方向に沿ってのびてレーストラック状に閉じるようにターゲットのスパッタ面前方に釣り合った閉ループの漏洩磁場を作用させている。そして、真空雰囲気の真空チャンバ内に希ガスを含むスパッタガスを導入し、ターゲットに所定電力を投入すると、スパッタ面の前方にレーストラック状のプラズマの複数がX軸方向に間隔を置いて並ぶように発生する。
【0003】
ターゲットは、通常、成膜対象としての基板に対応する輪郭を持つこの基板より一回り大きい面積で形成され、プラズマで電離されたスパッタガスのイオンでターゲットがスパッタリングされたとき、ターゲットのスパッタ面は、プラズマの形状が転写されるかの如く、侵食されていく。そして、ターゲットをその全面に亘って均等に侵食させるために、スパッタリング中、各磁石ユニットを同期させてX軸方向に往復動させることが一般である。
【0004】
各磁石ユニットは、プラズマの安定性等を考慮して、X軸方向一端に位置する磁石ユニットによって作用する漏洩磁場がターゲットのX軸方向一端より内方に存する第1折返し位置と、X軸方向他端に位置する磁石ユニットによって作用する漏洩磁場が、ターゲットのX軸方向他端より内方に存する第2折返し位置との間で往復動されることになるが、ターゲットのX軸方向両端では、スパッタ粒子の再付着が支配的となって非侵食領域として残ってしまう。このような非侵食領域を可及的に狭くしようとする場合、往復動のストロークを長くする(つまり、漏洩磁場がターゲットの外端により近接した位置を第1または第2の各折返し位置とする)ことが考えられるが、却って、非侵食領域が拡がる場合があることが判った。
【0005】
そこで、本願発明者らは、鋭意研究を重ね、次のことを知見するのに至った。即ち、上記スパッタリング装置では、通常、ターゲットの周囲を囲うようにしてアノードとして機能するシールド板が設けられる。このため、例えば、X軸方向一端の磁石ユニットで作用する漏洩磁場をターゲットのX軸方向外端に近接させていくと、X軸方向一端のプラズマのみが局所的に消失すること(その他のプラズマは消失しない)に起因することを知見するのに至った。一般に、ターゲットに電力投入するスパッタ電源は、ターゲットに対する出力電流や出力電圧の変化から、例えば異常放電(アーク放電)の発生を検知できるようになっているが、スパッタ面の前方に発生した複数のプラズマのうちいずれかが消失しても、その検知は事実上できず、また、成膜条件によっては成膜済みの基板を評価しても局所的なプラズマの消失を判別できない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-239841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の知見を基になされたものであり、単一のターゲットのスパッタ面に背向する側に磁石ユニットの複数個が並設すると共に各磁石ユニットを同期させてX軸方向に往復動させる場合に、非侵食領域を可及的に狭くできるようにしたスパッタリング装置を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のスパッタリング装置は、 単一のターゲットが配置される真空チャンバを備え、ターゲットのスパッタ面内で互いに直交する二軸をX軸方向及びY軸方向とし、ターゲットのスパッタ面に背向する側に、線状の中央磁石とこの中央磁石の周囲を所定間隔で囲う周辺磁石とを有する磁石ユニットの複数個が、各磁石ユニットの中央磁石がY軸方向に合致する姿勢で且つX軸方向に間隔を存して並設され、各磁石ユニットを同期させてX軸方向に往復動する駆動手段を更に備えるものにおいて、駆動手段は、X軸方向一端に位置する磁石ユニットによって作用する、磁場の垂直成分がゼロとなる位置を通る線が中央磁石の延在方向に沿ってのびてレーストラック状に閉じるようにスパッタ面から漏洩する磁場が、ターゲットのX軸方向一端より内方に存する第1折返し位置と、X軸方向他端に位置する磁石ユニットによって作用する、磁場の垂直成分がゼロとなる位置を通る線が中央磁石の延在方向に沿ってのびてレーストラック状に閉じるようにスパッタ面から漏洩する磁場が、ターゲットのX軸方向他端より内方に存する第2折返し位置との間で各磁石ユニットを往復動させ、X軸方向両端に位置する磁石ユニットが第1折返し位置または第2折返し位置に達した際にX軸方向両端のプラズマがターゲット側の外端に向けて拡がるように、ターゲットのX軸方向両端より外方に位置させてこのターゲットのY軸方向の外縁に沿ってのびる補助磁石を更に備えることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、基板がセットされた真空雰囲気の真空チャンバ内に希ガスを含むスパッタガスを導入し、単一のターゲットに所定電力を投入すると、スパッタ面の前方にレーストラック状のプラズマの複数がX軸方向に間隔を置いて並ぶように発生する。そして、各プラズマで電離されたスパッタガスのイオンでターゲットがスパッタリングされ、ターゲットから所定の余弦則に従い飛散したスパッタ粒子が基板表面に付着、堆積して成膜される。このようなスパッタリングによる成膜中、第1折返し位置と第2折返し位置との間で、各磁石ユニットを同期させて往復動させる。このとき、第1折返し位置と第2折返し位置は、漏洩磁場がターゲットのX軸方向両端より内方に存するため、X軸方向両端のプラズマが局所的に消失するといったことは発生しない。そして、補助磁石を設けたことで、X軸方向両端に位置する磁石ユニットが第1折返し位置または第2折返し位置に達したときには、X軸方向両端のプラズマがターゲット側の外端に向けて拡がるようになり、従来例のものと比較して、ターゲットのX軸方向両端近傍まで侵食領域を拡げることができる(言い換えると、ターゲットの外周縁部に残る非侵食領域を可及的に狭くすることができる)。
【0010】
本発明においては、前記ターゲットの外周縁部を囲うにように補助磁石が設けられていることが好ましい。これによれば、ターゲットの外周縁部に残る非侵食領域をより一層狭くでき、有利である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態のスパッタリング装置の構成を説明する模式断面図。
図2】(a)図1に示す磁石ユニットの配置を説明する上面図、(b)A-A線に沿う断面図、(c)B-B線に沿う断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、基板Swを矩形のガラス基板とし、基板Swの一方の面に所定の薄膜を成膜するものを例に本発明のスパッタリング装置の実施形態について説明する。以下においては、ターゲットから基板Swに向かう方向を上とし、磁石ユニットが往復動する方向をX軸方向とし、上、下、左、右といった方向を示す用語は、図1を基準とする。
【0013】
図1を参照して、スパッタリング装置SMは、所謂マルチマグネット式のものであり、真空成膜室10を画成する真空チャンバ1を備える。真空チャンバ1には、排気管21を介してロータリーポンプ、ターボ分子ポンプ等の真空ポンプ2が接続され、真空成膜室10を所定圧力に真空排気できるようにしている。真空チャンバ1にはまた、ガス導入手段3が設けられている。ガス導入手段3は、真空チャンバ1内のガス導入部31に接続されるガス管32を有し、ガス管32にはマスフローコントローラ33が介設され、流量制御されたスパッタガス(酸素等の反応ガスを含む場合もある)が真空成膜室10に導入されるようになっている。
【0014】
真空成膜室10の上部空間には、図示省略の基板保持手段により、基板Swがその下面(成膜面)を開放して保持されている。基板保持手段としては公知ものが利用できるため、これ以上の説明は省略する。そして、真空成膜室10の下部空間には、基板Swに対向させてカソードユニットCuが設けられている。
【0015】
カソードユニットCuは、基板Swに対応する輪郭を有し、基板Swより一回り大きい面積の単一のターゲットTgと、ターゲットTgの下方(ターゲットTg上面のスパッタ面41と背向する側)に配置されて、X軸方向に等間隔で並設される複数個(本実施形態では、9個)の磁石ユニットMg1~Mg9とを備える。ターゲットTgとしては、基板Sw表面に成膜しようとする薄膜の組成に応じて適宜選択され、公知の方法で所定形状(本実施形態では、平面視矩形の略直方体)に作製されている。
【0016】
ターゲットTgの下面にはバッキングプレート42が接合され、ターゲットTgのスパッタリング時、バッキングプレート42に冷媒を循環させてターゲットTgを冷却できるようにしている。そして、ターゲットTgは、そのスパッタ面41が基板Swに対向する姿勢で絶縁板43を介して真空チャンバ1に設けられる。ターゲットTgには、スパッタ電源5からの出力51がバッキングプレート42を介して接続され、ターゲットTgに対して負の電位を持つ直流電力を投入できるようにしている。また、真空成膜室10には、主にバッキングプレート42への着膜を防止するためのシールド板6が、ターゲットTgの周囲を囲うようにして環状に設けられている。シールド板6としては、金属製または絶縁物製のものを使用することができ、金属製のものをアース接地して使用する場合には、シールド板6はスパッタリング時、ターゲットTgのアノードとして機能する。
【0017】
各磁石ユニットMg1~Mg9は、同一の形態を有し、図1中、X軸方向左端のもの(Mg1)を例に説明すると、磁石ユニットMg1は、ターゲットTgに平行に設けられた磁性材料製の支持板(ヨーク)71を有する。支持板71には、その中央部に線状に配置される中央磁石72と、中央磁石72の周囲を所定間隔で囲うように支持板71の外周縁に沿って配置される周辺磁石73とが上側の極性をかえて設けられている(図2参照)。そして、各磁石ユニットMg1~Mg9の中央磁石72がY軸方向に合致する姿勢でX軸方向に間隔を存して、且つ、ターゲットのスパッタ面41と各磁石ユニットMg1~Mg9との距離が所定間隔となるように各磁石ユニットMg1~Mg9が並設されている。
【0018】
各磁石ユニットMg1~Mg9は、中央磁石72の同磁化に換算したときの体積を各周辺磁石73の同磁化に換算したときの体積の和と同等になるように設計されている。これにより、磁場の垂直成分がゼロとなる位置を通る線が中央磁石72の延在方向に沿ってのびてレーストラック状に閉じるようにターゲットTgのスパッタ面41上方に釣り合った閉ループの漏洩磁場が作用する。
【0019】
各磁石ユニットMg1~Mg9は、モータやエアーシリンダ等の駆動手段8の駆動軸81に夫々一体に連結され、X軸方向左端に位置する磁石ユニットMg1によって作用する漏洩磁場Mf1がターゲットTgのX軸方向左端より内方に存する第1折返し位置p1と、X軸方向右端に位置する磁石ユニットMg9によって作用する漏洩磁場Mf2がターゲットTgのX軸方向右端より内方に存する第2折返し位置p2との間で、平行で各磁石ユニットMg1~Mg9が一体に往復動されるようになっている。以下に、上記スパッタリング装置SMを用いた成膜方法について説明する。
【0020】
基板Swを基板保持手段にセットした後、真空ポンプ2により真空成膜室10内を真空排気する。真空成膜室10内の圧力が所定圧力(例えば、10-5Pa)に達すると、ガス導入手段3を介してスパッタガス(酸素等の反応ガスを含む)を所定流量で導入し、各ターゲットTgに対してスパッタ電源5から所定の電力を投入する。これにより、スパッタ面41の前方にレーストラック状のプラズマの複数がX軸方向に間隔を置いて並ぶように発生する。そして、各プラズマで電離したスパッタガスのイオンによりターゲットTgがスパッタリングされ、ターゲットTgのスパッタ面41から所定の余弦則で飛散するスパッタ粒子が基板Sw表面に付着、堆積して基板Sw表面(下面)に薄膜が成膜される。
【0021】
スパッタリングによる成膜中、ターゲットTgのスパッタ面41は、プラズマの形状が転写されるかの如く、侵食される。このため、第1折返し位置p1と第2折返し位置p2との間で、各磁石ユニットMg1~Mg9を一体に平行で往復動させて、ターゲットTgをその全面に亘って均等に侵食させているが、ターゲットTgのX軸方向両端では、スパッタ粒子の再付着が支配的となって非侵食領域として残ってしまう。このような非侵食領域を可及的に狭くしようする場合、各磁石ユニットMg1~Mg9の往復動のストロークを長くすることが考えられるが、却って、非侵食領域が拡がってしまう。
【0022】
そこで、本実施形態では、ターゲットTgのX軸方向両端より外方に、ターゲットTgのY軸方向の外縁に沿ってのびる補助磁石としての永久磁石Mp1を、これに隣接する磁石ユニットMg1,Mg9の各周辺磁石73と極性を一致させて支持板91,92を介して夫々設けることとした。この場合、永久磁石Mp1の磁力や、永久磁石Mp1と折返し位置p1,p2にある磁石ユニットMg1,Mg9の各周辺磁石73との間のX軸方向の距離は、非侵食領域の面積を考慮して適宜選択される。
【0023】
以上によれば、第1折返し位置p1と第2折返し位置p2は、漏洩磁場Mf1,Mf2がターゲットTgのX軸方向両端より内方に存するため、X軸方向両端のプラズマが局所的に消失するといったことは発生しない。そして、永久磁石Mp1を設けたことで、X軸方向両端に位置する磁石ユニットMg1,Mg9が第1折返し位置p1または第2折返し位置p2に達したときには、X軸方向両端のプラズマがターゲットTg側の外端に向けて拡がるため、ターゲットTgのX軸方向両端近傍まで侵食領域を拡げることができる。なお、図2(a)に示すように、ターゲットTgの外周縁部を囲うように、即ち、ターゲットTgのY軸方向両端より外方に、ターゲットTgのX軸方向の外縁に沿ってのびる永久磁石Mp2を夫々設けておけば、ターゲットTgの外周縁部に残る非侵食領域を確実に狭くでき、有利である。
【0024】
次に、以上の効果を確認するため、図1に示すスパッタリング装置SMを用い、以下の実験を行った。本実験では、ターゲットTgとしてAlターゲットを用い、公知の方法で1800mm×2300mmの平面視略長方形に成形し、バッキングプレート42に接合した。基板Swとして、1500mm×1850mmのガラス基板を用い、成膜条件として、真空成膜室10内の圧力が0.3Paに保持されるように、Arガスを120sccmで導入した。また、スパッタ電源5からターゲットTgに170kWの直流電力を投入して、ターゲットTgをスパッタリングした。このとき、磁石ユニットMg1~Mg9のストロークを185mmとし、各磁石ユニットMg1~Mg9を一体に7mm/secの移動速度で往復動させ、基板Sw表面に400nmの膜厚で成膜した。
【0025】
これによれば、ターゲットTgのX軸方向両端に残る非侵食領域の幅は10mm以下であった。なお、比較実験として、上記スパッタリング装置SMを用い、ターゲットTgの外縁部に補助磁石としての永久磁石Mpを設けない点を除いて、上記と同条件で成膜したところ、ターゲットTgのX軸方向両端に残る非侵食領域の幅は15mmであった。以上の結果から、本発明のスパッタリング装置SMによれば、ターゲットTgのX軸方向両端近傍まで侵食領域を拡げることができ、ターゲットTgの外周縁部に残る非侵食領域をより一層狭くすることができることが判る。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術思想の範囲を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。上記実施形態では、ターゲットTgの外縁部に、補助磁石として永久磁石Mpを設置したものを例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、特に図示して説明しないが、補助磁石Mpとして電磁石を用いることもできる。また、上記実施形態では、駆動手段8により各磁石ユニットMg1~Mg9を一体にX軸方向に往復動するものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、X軸方向及びY軸方向に各磁石ユニットMg1~Mg9が一体に往復動するように構成することができる。この場合、永久磁石Mp2を設けたことと相俟って、より一層非侵食領域を狭くできる。
【符号の説明】
【0027】
Mf(Mf1,Mf2)…漏洩磁場、Mg(Mg1~Mg9)…磁石ユニット、Mp(Mp1,Mp2)…永久磁石(補助磁石)、SM…スパッタリング装置、Sw…基板、Tg…ターゲット、1…真空チャンバ、8…駆動手段、10…真空成膜室、41…スパッタ面。
図1
図2