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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】映像変換装置及びそのプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 5/20 20060101AFI20231019BHJP
   G06T 5/00 20060101ALI20231019BHJP
   H04N 21/2343 20110101ALI20231019BHJP
【FI】
H04N5/20
G06T5/00 740
H04N21/2343
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019170335
(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公開番号】P2021048510
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 幸博
【審査官】三沢 岳志
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-144404(JP,A)
【文献】特開2015-181217(JP,A)
【文献】国際公開第2014/203746(WO,A1)
【文献】Methods for conversion of high dynamic range content to standard dynamic range content and vice-versa,Report ITU-R BT.2446-0,米国,ITU,2019年09月04日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 5/20
G06T 5/00
H04N 21/2343
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
HDR映像がHDR制作されたか又は元のSDR映像から変換されたかを示す映像ソース識別子と、前記元のSDR映像から前記HDR映像に変換された場合の変換方式及び変換特性を示す変換方式・特性識別子とに基づいて、前記HDR映像を変換後のSDR映像に変換する映像変換装置であって、
前記HDR映像と共に前記映像ソース識別子及び前記変換方式・特性識別子が入力され、入力された前記映像ソース識別子及び前記変換方式・特性識別子に基づいて変換方式及び変換特性を識別し、識別した変換方式及び変換特性によって前記HDR映像を前記変換後のSDR映像に変換する映像変換手段、
を備え
前記映像変換手段は、
前記映像ソース識別子がHDR制作されたことを示す場合、トーンマッピングによって前記HDR映像を前記変換後のSDR映像に変換し、
前記映像ソース識別子が前記元のSDR映像から変換されたことを示し、かつ、前記変換方式・特性識別子が逆トーンマッピングで変換されたことを示す場合、前記逆トーンマッピングの逆特性を与えるトーンマッピングによって前記HDR映像を前記変換後のSDR映像に変換し、
前記映像ソース識別子が前記元のSDR映像から変換されたことを示し、かつ、前記変換方式・特性識別子が直接マッピングで変換されたことを示す場合、前記直接マッピングの逆特性を与える変換関数によって前記HDR映像を前記変換後のSDR映像に変換することを特徴とする映像変換装置。
【請求項2】
前記HDR映像に前記映像ソース識別子及び前記変換方式・特性識別子を付加する識別子付加手段、をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の映像変換装置。
【請求項3】
HDR映像レベルに基づいて、HDR映像を変換後のSDR映像に変換する映像変換装置であって、
前記HDR映像が入力され、入力された前記HDR映像に所定の映像レベル以上の成分が含まれないか否かを判定する映像判定手段と、
前記映像判定手段の判定結果に基づいて前記HDR映像の由来を判定し、判定した前記HDR映像の由来に基づいて、前記HDR映像を前記変換後のSDR映像に変換する映像変換手段と、
を備え
前記映像変換手段は、
前記判定結果が前記HDR映像に前記所定の映像レベル以上の成分が含まれないことを示す場合、直接マッピングの逆特性を与える変換関数によって前記HDR映像を前記変換後のSDR映像に変換し、
前記判定結果が前記HDR映像に前記所定の映像レベル以上の成分が含まれることを示す場合、トーンマッピングによって前記HDR映像を前記変換後のSDR映像に変換することを特徴とする映像変換装置。
【請求項4】
コンピュータを、請求項1から請求項の何れか一項に記載の映像変換装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、HDR映像をSDR映像に変換する映像変換装置及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
高ダイナミックレンジ(HDR: High Dynamic Range)映像方式の標準化と放送方式への導入によって、HDR番組の制作及び放送が増加している。HDR番組制作においては、HDRカメラを用いて撮影したHDR映像と共に、SDR(Standard Dynamic Range)カメラで撮影した映像を用いることや、過去に制作されたSDR番組素材をHDR番組中に挿入することがある。
【0003】
従来、SDR映像をHDR映像らしく見えるように変換してからHDR番組に利用することが行われている。このような変換方式は、「逆トーンマッピング(ITM: Inverse Tone Mapping)」と呼ばれており、非特許文献1に3つの方式が例示されている。このITMで変換した場合、HDR映像らしくは見えても、元のSDR番組の制作意図を損なう可能性がある。そこで、元のSDR番組の制作意図を維持しつつHDR番組で利用できるように、「直接マッピング(DM: Direct Mapping)」が用いられることがある(図9、非特許文献2,3)。この直接マッピングでは、図10に示すように、例えば、元のSDR映像で0-100%の信号レベルが、変換後のHDR映像で0-75%の信号レベルにマッピングされる。ここで、この75%の信号レベルは、HDR映像の基準白レベルと規定されている(非特許文献3)。
なお、HDR映像に変換する前のSDR映像を「元のSDR映像」と記載し、HDR映像から変換されたSDR映像を「変換後のSDR映像」と記載する。
【0004】
放送方式としてSDRしか規定のないハイビジョン放送(例えば、地上デジタル放送)でHDR番組を放送する場合、HDR映像をSDR映像に変換する必要がある。HDR映像をSDR映像に変換する方式は、「トーンマッピング(TM: Tone mapping)」と呼ばれており、非特許文献1に3つの方式が例示されている。また、前記した非特許文献3には、トーンマッピングの基本的な考え方(図11)が示されている。このトーンマッピングの特性例を図12に示す。
【0005】
以上をまとめると、図13に示すように、HDR映像には「HDR制作されたHDR映像」と「SDR映像から変換されたHDR映像」が含まれる。また、SDR映像からHDR映像への変換には、「直接マッピング」と「逆トーンマッピング」が用いられる。そして、これら由来の異なるHDR映像を「トーンマッピング」によってSDR映像に変換することになる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Report ITU-R BT.2446「Methods for conversion of high dynamic range content to standard dynamic range content and vice-versa」
【文献】Report ITU-R BT.2390「High dynamic range television for production and international programme exchange」
【文献】ARIB TR-B43「高ダイナミックレンジ映像を用いた番組制作の運用ガイドライン」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
由来の異なるHDR映像を「トーンマッピング」によって一律にSDR映像に変換した場合、変換後のSDR映像が、元のSDR映像とは見え方が異なってしまうという問題がある。図14には、元のSDR映像と変換後のSDR映像との信号レベルの関係を図示した。元のSDR映像の階調特性が正しく再現されている場合、両SDR映像の信号レベルは、図14の破線で表されるように線形の関係となり、元のSDR映像と変換後のSDR映像の階調特性は一致する。
【0008】
ここで、SDR映像が「直接マッピング」でHDR映像に変換され、このHDR映像を「トーンマッピング」を用いてSDR映像に変換した場合を考える。この場合、元のSDR映像と変換後のSDR映像との信号レベルは、図14の実線で表されるように非線形な関係となり、元のSDR映像と変換後のSDR映像の階調特性は異なる。つまり、全体的に変換後のSDR映像が元のSDR映像よりも明るく、明るい部分の階調が失われている。このように、変換後のSDR映像の階調特性は元のSDR映像の階調特性から変化しており、変換後のSDR映像は元のSDR映像とは異なる見え方になってしまう。
【0009】
そこで、本発明は、変換後のSDR映像の見え方が元のSDR映像と同様になる映像変換装置及びそのプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題に鑑みて、本発明に係る映像変換装置は、HDR映像がHDR制作されたか又は元のSDR映像から変換されたかを示す映像ソース識別子と、元のSDR映像からHDR映像に変換された場合の変換方式及び変換特性を示す変換方式・特性識別子とに基づいて、HDR映像を変換後のSDR映像に変換する映像変換装置であって、映像変換手段を備える構成とした。
【0011】
かかる構成によれば、映像変換手段は、HDR映像と共に映像ソース識別子及び変換方式・特性識別子が入力され、入力された映像ソース識別子及び変換方式・特性識別子に基づいて変換方式及び変換特性を識別し、識別した変換方式及び変換特性によってHDR映像を変換後のSDR映像に変換する。映像変換手段は、映像ソース識別子がHDR制作されたことを示す場合、トーンマッピングによってHDR映像を変換後のSDR映像に変換し、映像ソース識別子が元のSDR映像から変換されたことを示し、かつ、変換方式・特性識別子が逆トーンマッピングで変換されたことを示す場合、逆トーンマッピングの逆特性を与えるトーンマッピングによってHDR映像を変換後のSDR映像に変換し、映像ソース識別子が元のSDR映像から変換されたことを示し、かつ、変換方式・特性識別子が直接マッピングで変換されたことを示す場合、直接マッピングの逆特性を与える変換関数によってHDR映像を変換後のSDR映像に変換する。このように、映像変換装置は、元のSDR映像の変換方式及び変換特性を考慮し、HDR映像を変換後のSDR映像に変換する。
【0012】
また、前記した課題に鑑みて、本発明に係る映像変換装置は、HDR映像レベルに基づいて、HDR映像を変換後のSDR映像に変換する映像変換装置であって、映像判定手段と、映像変換手段と、を備える構成とした。
【0013】
かかる構成によれば、映像判定手段は、HDR映像が入力され、入力されたHDR映像に所定の映像レベル以上の成分が含まれないか否かを判定する。
映像変換手段は、映像判定手段の判定結果に基づいてHDR映像の由来を判定し、判定したHDR映像の由来に基づいて、HDR映像を変換後のSDR映像に変換する。
【0014】
ここで、直接マッピングで変換されたHDR映像には所定の映像レベル(一般にはHDR基準レベル)以上の成分が含まれないので、所定の映像レベル以上の成分の有無により元のSDR映像の変換方式を判定できる。映像変換手段は、判定結果がHDR映像に前記所定の映像レベル以上の成分が含まれないことを示す場合、直接マッピングの逆特性を与える変換関数によってHDR映像を変換後のSDR映像に変換し、判定結果がHDR映像に所定の映像レベル以上の成分が含まれることを示す場合、トーンマッピングによってHDR映像を変換後のSDR映像に変換する。このように、映像変換装置は、元のSDR映像の変換方式を考慮し、HDR映像を変換後のSDR映像に変換する。
【0015】
なお、本発明は、コンピュータが備えるCPU、メモリ、ハードディスクなどのハードウェア資源を、前記した映像変換装置として動作させるプログラムで実現することもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、変換後のSDR映像の見え方が元のSDR映像と同様になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係る映像変換装置の構成を示すブロック図である。
図2図1のHDR映像制作手段を説明する説明図である。
図3図1のSDR映像変換手段を説明する説明図である。
図4】第1実施形態に係る映像変換装置の動作を示すフローチャートである。
図5】変形例に係る映像変換装置を説明する説明図である。
図6】第2実施形態に係る映像変換装置の構成を示すブロック図である。
図7図6のSDR映像変換手段を説明する説明図である。
図8】第2実施形態に係る映像変換装置の動作を示すフローチャートである。
図9】従来の直接マッピングを説明する説明図である。
図10】従来の直接マッピングの特性を示すグラフである。
図11】従来のトーンマッピングを説明する説明図である。
図12】従来のトーンマッピングの特性を示すグラフである。
図13】従来のHDR番組制作とSDR映像への変換を説明する説明図である。
図14】元のSDR映像とHDR映像から変換されたSDR映像との信号レベルの関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
[映像変換装置の構成]
以下、本発明の各実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各実施形態において、同一の手段には同一の符号を付し、説明を省略した。
図1を参照し、第1実施形態に係る映像変換装置1の構成について説明する。
映像変換装置1は、HDR映像をSDR映像に変換するものであり、図1に示すように、HDR映像制作手段10と、記憶手段20と、SDR映像変換手段30とを備える。
【0019】
<HDR映像制作手段>
HDR映像制作手段10は、SDR映像やHDR映像といった映像素材からHDR番組制作を行うものであり、図2に示すように、HDR変換手段11と、切替手段12と、識別子付加手段13とを備える。なお、図2では、HDR変換手段11を「SDR→HDR変換」と図示し、識別子付加手段13を「識別子付加」と図示した。
【0020】
HDR変換手段11は、映像素材としてSDR映像が入力された場合、このSDR映像をHDR映像に変換するものである。例えば、HDR変換手段11は、映像変換装置1の利用者より、SDR映像からHDR映像への変換方式の指示を受け付けて、指示された変換方式でSDR映像をHDR映像に変換する。この変換方式は、「逆トーンマッピング」又は「直接マッピング」の何れかである。ここで、「逆トーンマッピング」には、非特許文献1に示されるように複数の方式があり、また、それぞれの方式では異なる変換特性の設定が可能であるため、変換特性も識別する必要がある。「直接マッピング」においても、基準レベルの設定によって変換特性が変わるため、変換特性を識別する必要がある。そして、HDR変換手段11は、変換したHDR映像を切替手段12に出力し、前記した変換方式及び変換特性を生成して識別子付加手段13に出力する。
【0021】
切替手段12は、HDR変換手段11で変換されたHDR映像、又は、切替手段12に直接入力されたHDR映像を切り替えて、識別子付加手段13に出力するものである。ここで、切替手段12によるHDR映像の切り替えは、番組制作の過程で番組制作者が行う操作である。切替手段12は、HDR変換手段11からのHDR映像に切り替えられた場合、元のSDR映像から変換されたHDR映像であることを示す映像ソース識別子を生成し、識別子付加手段13に出力する。一方、切替手段12は、直接入力されたHDR映像に切り替えられた場合、HDR制作されたHDR映像であることを示す映像ソース識別子を生成し、識別子付加手段13に出力する。
【0022】
識別子付加手段13は、切替手段12から入力されたHDR映像のフレーム毎に映像ソース識別子及び変換方式・特性識別子を付加するものである。そして、識別子付加手段13は、映像ソース識別子及び変換方式・特性識別子が付加されたHDR映像を記憶手段20(図1)に書き込む。
なお、映像ソース識別子がHDR制作されたHDR映像であることを示す場合、変換方式・特性識別子が「変換なし」であることを示すよう設定する。
【0023】
図1に戻り、映像変換装置1の構成の説明を続ける。
記憶手段20は、映像ソース識別子及び変換方式・特性識別子が付加されたHDR映像を記憶するメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置である。このHDR映像は、後記するSDR映像変換手段30によって参照される。
【0024】
<SDR映像変換手段>
SDR映像変換手段30は、記憶手段20に記憶されているHDR映像をSDR映像に変換するものである。図3に示すように、SDR映像変換手段30は、識別子抽出手段31と、映像変換手段32と、切替手段33とを備える。
なお、図3では、識別子抽出手段31を「識別子抽出」と図示し、トーンマッピングによって変換されたSDR映像を「SDRTM映像」と図示し、直接マッピングの逆特性を与える変換関数によって変換されたSDR映像を「SDRDM映像」と図示した。
【0025】
識別子抽出手段31は、HDR映像に付加されている映像ソース識別子及び変換方式・特性識別子を抽出するものである。そして、識別子抽出手段31は、HDR映像と、映像ソース識別子及び変換方式・特性識別子とを映像変換手段32に出力する。
【0026】
映像変換手段32は、識別子抽出手段31から入力された映像ソース識別子及び変換方式・特性識別子に基づいて変換方式及び変換特性を識別し、識別した変換方式及び変換特性によってHDR映像をSDR映像に変換するものである。本実施形態では、3通りの変換方式があるので、順次説明する。
【0027】
<<第1の変換方式:HDR制作されたHDR映像の場合>>
第1の変換方式では、映像ソース識別子がHDR制作されたことを示している。この場合、映像変換手段32は、トーンマッピングによってHDR映像をSDR映像に変換する。ここで、映像変換手段32では、HDR映像を最適なSDR映像に変換できるように任意の特性を予め設定しておき、その特性でトーンマッピングを行う。
なお、第1の変換方式では、変換方式・特性識別子が「変換なし」を示しており、映像変換手段32は、変換方式・特性識別子を参照する必要はない。
【0028】
<<第2の変換方式:逆トーンマッピングに由来するHDR映像の場合>>
第2の変換方式では、映像ソース識別子がSDR映像から変換されたことを示し、かつ、変換方式・特性識別子が逆トーンマッピングで変換されたことを示している。この場合、映像変換手段32は、逆トーンマッピングの逆特性を与えるトーンマッピングによってHDR映像をSDR映像に変換する。この逆トーンマッピングの逆特性は、変換方式・特性識別子が示す逆トーンマッピングの特性に基づき、その逆特性を求めて逐次設定する。逆トーンマッピングの特性が既知であれば、その逆特性を予め設定しておけばよい。
【0029】
<<第3の変換方式:直接マッピングに由来するHDR映像の場合>>
第3の変換方式では、映像ソース識別子がSDRから変換されことを示し、かつ、変換方式・特性識別子が直接マッピングで変換されたことを示している。この場合、映像変換手段32は、直接マッピングの逆特性を与える変換関数を用いて、HDR映像をSDR映像に変換する。例えば、直接マッピングの特性が図10で表される場合、直接マッピングの逆特性を与える変換関数として、図10の逆関数を映像変換手段32に予め設定しておけばよい。
【0030】
切替手段33は、映像変換手段32で変換されたSDR映像(SDRTM映像、SDRDM映像)を、映像ソース識別子に従ってフレーム毎に切り替えて外部(例えば、図示を省略した番組送出装置)に出力するものである。
なお、図3では、第1又は第2の変換方式で変換されたSDR映像がSDRTM映像となり、第3の変換方式で変換されたSDR映像がSDRDM映像となる。また、第1及び第2の変換方式では、トーンマッピングで変換する点は同じであるが、トーンマッピングで変換するときの特性が異なることになる。
【0031】
[映像変換装置の動作]
図4を参照し、映像変換装置1の動作について説明する。
図4に示すように、ステップS1において、HDR変換手段11は、映像素材としてSDR映像が入力された場合、そのSDR映像をHDR映像に変換する。なお、映像素材としてHDR映像が入力された場合、ステップS1の処理を行わずに、ステップS2の処理に進めばよい。
【0032】
ステップS2において、識別子付加手段13は、HDR映像に映像ソース識別子及び変換方式・特性識別子を付加する。映像ソース識別子及び変換方式・特性識別子が付加されたHDR映像は、記憶手段20に記憶される。
ステップS3において、識別子抽出手段31は、記憶手段20からHDR映像を読み出して、そのHDR映像に付加されている映像ソース識別子及び変換方式・特性識別子を抽出する。
【0033】
ステップS4において、映像変換手段32は、映像ソース識別子及び変換方式・特性識別子に基づいて変換方式を判定し、判定した変換方式によってHDR映像をSDR映像に変換する。前記したように、映像変換手段32は、第1~第3の変換方式の何れかにより、HDR映像をSDR映像に変換する。
【0034】
[作用・効果]
以上のように、映像変換装置1では、HDR映像がSDRから変換されている場合に元のSDR映像の変換方式を考慮し、HDR映像をSDR映像に変換するので、変換後のSDR映像の見え方が元のSDR映像と同様になる。つまり、映像変換装置1では、映像素材がHDR制作されたか又はSDR映像から変換されたか、逆トーンマッピング又は直接マッピングの何れで変換されたかによらず、明るさや階調再現特性の違いがなく、元のSDR映像と変換後のSDR映像との見え方に差異がない。このように、映像変換装置1では、高品質なSDR番組を制作することができる。
【0035】
以上、第1実施形態を詳述してきたが、本発明は前記した第1実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
前記した第1実施形態では、映像ソース識別子及び変換方式・特性識別子が別々の識別子であることとして説明したが、これに限定されない。つまり、映像変換装置1では、映像ソース識別子及び変換方式・特性識別子をまとめて、1つの映像ソース・変換方式・特性識別子としてもよい。
【0036】
前記した第1実施形態では、映像ソース識別子及び変換方式・特性識別子をHDR映像に付加し、識別子が付加されたHDR映像を記憶手段20に一端記憶することとして説明したが、これに限定されない。例えば、デジタルインターフェースを介して、HDR映像制作手段とSDR映像変換手段とを直接接続し、映像ソース識別子及び変換方式・特性識別子をデジタルインターフェースの補助データ領域に多重することとしてもよい。また、映像変換装置1Bは、図5に示すように、切替手段12から出力されるHDR映像及び映像ソース識別子とHDR変換手段11から出力される変換方式・特性識別子とを映像変換手段32に直接入力してもよい。この場合、映像変換装置1Bは、映像ソース識別子及び変換方式・特性識別子をHDR映像に付加せずともよい。なお、図5では、映像変換手段32を「HDR→SDR変換」と図示した。
【0037】
(第2実施形態)
[映像変換装置の構成]
図6を参照し、第2実施形態に係る映像変換装置1Cについて、第1実施形態と異なる点を説明する。
第2実施形態では、映像ソース識別子や変換方式・特性識別子を用いずに、HDR映像レベルにより変換方式を判定する点が、第1実施形態と異なる。
【0038】
図6に示すように、映像変換装置1Cは、映像ソース解析・判定手段(映像判定手段)40と、SDR映像変換手段(映像変換手段)50とを備える。
なお、映像変換装置1Cに入力されるHDR映像は、第1実施形態における切替手段12から出力されるHDR映像と同等であり、HDR制作されたものと、SDR映像から変換されたものとが混在している。なお、SDR映像をHDR映像に変換する手法は第1実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0039】
<映像ソース解析・判定手段>
映像ソース解析・判定手段40は、HDR映像が入力され、入力されたHDR映像に所定の映像レベル以上の成分が含まれるか否かをHDR映像のフレーム毎に判定するものである。つまり、映像ソース解析・判定手段40は、公知の手法でHDR映像の信号レベルを解析し、所定の映像レベル以上の成分が含まれないか否かを判定する。そして、映像ソース解析・判定手段40は、HDR映像と共に、その判定結果をSDR映像変換手段50に出力する。
【0040】
ここで、所定の映像レベルをHDR基準レベルとすることが好ましい。HDR基準レベルとは、非特許文献3で定義されているHDR映像の基準白レベル(HLG方式のHDR映像の場合、75%信号レベルのHLG基準白)のことである。この所定の映像レベルは、映像ソース解析・判定手段40に予め設定しておくこととする。
【0041】
<SDR映像変換手段>
SDR映像変換手段50は、映像ソース解析・判定手段40から入力された判定結果に基づいてHDR映像の由来を判定し、判定したHDR映像の由来に基づいて、HDR映像をSDR映像に変換するものである。図7に示すように、SDR映像変換手段50は、変換映像出力手段51と、切替手段52とを備える。
【0042】
変換映像出力手段51は、HDR映像をSDR映像に変換し、変換後のSDR映像を切替手段52に出力する。本実施形態では、2通りの変換方式があるので、順次説明する。
【0043】
<<第1の変換方式:直接マッピングに由来するHDR映像の場合>>
第1の変換方式は、HDR映像が直接マッピングによってSDR映像から変換されている場合に対応する。この場合、所定の映像レベル以上の成分が含まれないと判定されることから、HDR映像からSDR映像への変換に直接マッピングを用いたと推定できる。従って、変換映像出力手段51は、直接マッピングの逆特性を与える変換関数によってHDR映像をSDR映像に変換する。
【0044】
<<第2の変換方式:直接マッピングに由来しないHDR映像の場合>>
第2の変換方式は、HDR映像が直接マッピングによってSDR映像から変換されているものではない、すなわち、HDR制作されているか、又は、逆トーンマッピングによってSDR映像から変換されている場合に対応する。この場合、所定の映像レベル以上の成分が含まれると判定されることから、HDR映像からSDR映像への変換に直接マッピング以外を用いたと推定できる。従って、変換映像出力手段51は、トーンマッピングによってHDR映像をSDR映像に変換する。
【0045】
なお、第1実施形態と異なり、映像変換装置1Cでは、HDR制作されたHDR映像であるか、又は、逆トーンマッピングで変換されたHDR映像であるかを判定できない。このため、映像変換装置1Cでは、HDR制作されたHDR映像、及び、逆トーンマッピングで変換されたHDR映像の両方を、同一特性のトーンマッピングでSDR映像に変換している。
【0046】
切替手段52は、映像ソース解析・判定手段40の判定結果に基づいて、変換映像出力手段51から入力されたSDR映像を切り替えて外部(例えば、図示を省略した番組送出装置)に出力するものである。具体的には、切替手段52は、所定の映像レベル以上の成分が含まれないという判定結果の場合、直接マッピングの逆特性を与える変換関数によりHDR映像からSDR映像に変換されたSDRDM映像出力に切り替える。一方、切替手段52は、所定の映像レベル以上の成分が含まれるという判定結果の場合、トーンマッピングによりHDR映像からSDR映像に変換されたSDRTM映像出力に切り替える。
なお、図7では、第1の変換方式で変換されたSDR映像がSDRDM映像となり、第2の変換方式で変換されたSDR映像がSDRTM映像となる。
【0047】
[映像変換装置の動作]
図8を参照し、映像変換装置1Cの動作について説明する。
図8に示すように、ステップS10において、映像ソース解析・判定手段40は、HDR映像の信号レベルを解析する。
ステップS11において、映像ソース解析・判定手段40は、HDR映像に所定の映像レベル以上の成分が含まれないか否かを判定する。
【0048】
ステップS12において、変換映像出力手段51は、トーンマッピングによってHDR映像をSDR映像(SDRTM映像)に変換すると共に、直接マッピングの逆特性を与える変換関数によってHDR映像をSDR映像(SDRDM映像)に変換する。
【0049】
所定の映像レベル以上の成分が含まれない場合(ステップS13でYes)、直接マッピングによって変換されていると推定できるので、切替手段52は、SDRDM映像の出力に切り替える(ステップS14)。
所定の映像レベル以上の成分が含まれる場合(ステップS13でNo)、直接マッピングによって変換されていないと推定できるので、切替手段52は、SDRTM映像の出力に切り替える(ステップS15)。
【0050】
[作用・効果]
以上のように、映像変換装置1Cでは、HDR映像がSDR映像から変換されている場合、元のSDR映像の変換方式を考慮し、HDR映像をSDR映像に変換するので、変換後のSDR映像の見え方が元のSDR映像と同様になる。さらに、映像変換装置1Cでは、HDR映像に映像ソース識別子及び変換方式・特性識別子が付加されていなくても、HDR映像をSDR映像に変換できる。このようにして、映像変換装置1Cでは、高品質なSDR番組を制作することができる。
【0051】
前記した各実施形態では、映像変換装置を独立したハードウェアとして説明したが、本発明は、これに限定されない。例えば、本発明は、コンピュータが備えるCPU、メモリ、ハードディスク等のハードウェア資源を、前記した映像変換装置として動作させるプログラムで実現することもできる。これらのプログラムは、通信回線を介して配布してもよく、CD-ROMやフラッシュメモリ等の記録媒体に書き込んで配布してもよい。
【符号の説明】
【0052】
1,1B,1C 映像変換装置
10 HDR映像制作手段
11 HDR変換手段
12 切替手段
13 識別子付加手段
20 記憶手段
30 SDR映像変換手段
31 識別子抽出手段
32 映像変換手段
33 切替手段
40 映像ソース解析・判定手段(映像判定手段)
50 SDR映像変換手段(映像変換手段)
51 変換映像出力手段
52 切替手段
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