(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】オーバーレイ計測システム用の自動レシピ最適化
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20231019BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20231019BHJP
G01B 21/00 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
H01L21/66 J
G03F7/20 521
G01B21/00 A
(21)【出願番号】P 2022503926
(86)(22)【出願日】2020-07-20
(86)【国際出願番号】 US2020042699
(87)【国際公開番号】W WO2021016144
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-06-26
(32)【優先日】2019-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ ウェイフア
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ シミン
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0323316(US,A1)
【文献】特表2017-536584(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0064280(US,A1)
【文献】国際公開第2018/072980(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G03F 7/20
G01B 21/00
H01L 21/027
G01B 11/00-11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーバーレイ計測サブシステムと通信可能に結合されるべく構成されたコントローラを含むオーバーレイ計測システムであって、前記コントローラが1個以上のプロセッサに、
前記オーバーレイ計測サブシステムから1個以上のオーバーレイ測定値を受信させ、
前記1個以上の測定値を用いて1個以上の品質尺度を生成させ、
主成分分析(PCA)を用いて1個以上の品質尺度から主成分の組を抽出させ、
入力データであって当該主成分の組のサブセットを含み且つ当該サブセットの各主成分が閾値分散よりも大きい分散を有している入力データを生成させ、
前記入力データを教師付き機械学習アルゴリズムの入力マトリクスに入力して予測モデルを訓練させ、
前記予測モデルの出力ベクトル内で、前記オーバーレイ計測サブシステムのレシピ又はハードウェア構成の少なくとも一方を識別させるプログラム命令を実行すべく構成された1個以上のプロセッサを含むオーバーレイ計測システム。
【請求項2】
前記オーバーレイ計測システムの前記レシピ又はハードウェア構成の少なくとも一方が最小残差値と相関する、請求項1に記載のオーバーレイ計測システム。
【請求項3】
前記1個以上のプロセッサを含んでいる前記コントローラが更に、前記1個以上のプロセッサに、前記オーバーレイ計測サブシステムを前記最小残差値と相関する前記レシピ又は前記ハードウェア構成の少なくとも一方に適合させる1個以上の制御命令を提供させるプログラム命令を実行すべく構成されている、請求項2に記載のオーバーレイ計測システム。
【請求項4】
前記予測モデルの前記出力ベクトルが、複数の予測モデルの複数の出力ベクトルの平均を含んでいる、請求項1に記載のオーバーレイ計測システム。
【請求項5】
前記入力マトリクスが複数の列及び行を含み、各列がある種の品質尺度を表し、各行が前記オーバーレイ計測サブシステムの前記レシピ又はハードウェア構成を表している、請求項1に記載のオーバーレイ計測システム。
【請求項6】
前記出力ベクトルが複数の行を含み、各行が残差値を表している、請求項1に記載のオーバーレイ計測システム。
【請求項7】
前記教師付き機械学習アルゴリズムが線形回帰を含んでいる、請求項1に記載のオーバーレイ計測システム。
【請求項8】
前記教師付き機械学習アルゴリズムが決定木(DT)を含んでいる、請求項1に記載のオーバーレイ計測システム。
【請求項9】
前記教師付き機械学習アルゴリズムがサポートベクトル機械回帰(SVM-R)を含んでいる、請求項1に記載のオーバーレイ計測システム。
【請求項10】
前記教師付き機械学習アルゴリズムがガウス過程(GP)を含んでいる、請求項1に記載のオーバーレイ計測システム。
【請求項11】
前記教師付き機械学習アルゴリズムがニューラルネットワーク(NN)を含んでいる、請求項1に記載のオーバーレイ計測システム。
【請求項12】
オーバーレイ計測サブシステムと、
前記オーバーレイ計測サブシステムと通信可能に結合されるべく構成されたコントローラを含むオーバーレイ計測システムであって、前記コントローラが、1個以上のプロセッサに、
前記オーバーレイ計測サブシステムから1個以上のオーバーレイ測定値を受信させ、
前記1個以上の測定値を用いて1個以上の品質尺度を生成させ、
主成分分析(PCA)を用いて前記1個以上の品質尺度から主成分の組を抽出させ、
入力データであって前記主成分の組のサブセットを含み且つ前記サブセットの各主成分が閾値分散よりも大きい分散を有している入力データを生成させ、
前記入力データを教師付き機械学習アルゴリズムの入力マトリクスに入力して予測モデルを訓練させ、
前記予測モデルの出力ベクトル内で、前記オーバーレイ計測システムのレシピ又はハードウェア構成の少なくとも一方を識別させるプログラム命令を実行させるべく構成された1個以上のプロセッサを含むオーバーレイ計測システム。
【請求項13】
前記オーバーレイ計測システムの前記レシピ又は前記ハードウェア構成の少なくとも一方が最小残差値と相関する、請求項12に記載のオーバーレイ計測システム。
【請求項14】
前記1個以上のプロセッサを含む前記コントローラが更に、前記1個以上のプロセッサに、前記オーバーレイ計測サブシステムを前記最小残差値と相関する前記レシピ又は前記ハードウェア構成の少なくとも一方に適合させる1個以上の制御命令を提供させるプログラム命令を実行すべく構成されている、請求項13に記載のオーバーレイ計測システム。
【請求項15】
前記オーバーレイ計測サブシステムが、撮像に基づく、又は散乱計測に基づくオーバーレイ計測サブシステムを含んでいる、請求項12に記載のオーバーレイ計測システム。
【請求項16】
予測モデルを訓練する方法であって、
オーバーレイ計測サブシステムから1個以上のオーバーレイ測定値を受信するステップと、
前記1個以上の測定値を用いて1個以上の品質尺度を生成するステップと、
主成分分析(PCA)を用いて前記1個以上の品質尺度から主成分の組を抽出するステップと、
入力データであって前記主成分の組のサブセットを含み且つ前記サブセットの各主成分が閾値分散よりも大きい分散を有している入力データを生成するステップと、
前記予測モデルを訓練すべく前記入力データを教師付き機械学習アルゴリズムの入力マトリクスに入力するステップと、
前記予測モデルの出力ベクトル内で、前記オーバーレイ計測サブシステムのレシピ又はハードウェア構成を識別するステップを含む方法。
【請求項17】
前記オーバーレイ計測サブシステムの前記レシピ又はハードウェア構成の少なくとも一方が最小残差値と相関する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記オーバーレイ計測サブシステムを前記最小残差値と相関する前記レシピ又は前記ハードウェア構成の少なくとも一方に適合させる1個以上の制御命令を提供するステップを更に含んでいる、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記オーバーレイ計測サブシステムが、撮像に基づく、又は散乱計測に基づくオーバーレイ計測サブシステムを含んでいる、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記予測モデルの前記出力ベクトルが、複数の予測モデルの複数の出力ベクトルの平均を含んでいる、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記入力マトリクスが複数の列及び行を含み、各列がある種の品質尺度を表し、各行が前記オーバーレイ計測サブシステムの前記レシピ又はハードウェア構成を表している、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記出力ベクトルが複数の行を含み、各行が残差値を表している、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記教師付き機械学習アルゴリズムが線形回帰を含んでいる、請求項16に記載の方法。
【請求項24】
前記教師付き機械学習アルゴリズムが決定木(DT)を含んでいる、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記教師付き機械学習アルゴリズムがサポートベクトル機械回帰(SVM-R)を含んでいる、請求項16に記載の方法。
【請求項26】
前記教師付き機械学習アルゴリズムがガウス過程(GP)を含んでいる、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記教師付き機械学習アルゴリズムがニューラルネットワーク(NN)を含んでいる、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、半導体ウエハ及びマスク計測に関する。特に、本開示は、正確且つ精密な計測データを収集すべくオーバーレイ計測システムのレシピ又はハードウェア構成を最適化することに関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願との相互参照
本出願は、米国法典第35編第119条(e)項に基づき、Weihua Li及びShiming Weiを発明者とする2019年7月23日出願の米国仮特許出願第62/877,397号「ARCHER AUTOMATIC RECIPE OPTIMIZATION WITH MACHINE LEARNING APPROACH」の優先権を主張するものであり、本明細書にその全文を引用している。
【0003】
オーバーレイ計測システムは、最先端の設計ノードにおけるインライン監視及びウェーハ配置のため製品上のオーバーレイ誤差の正確なフィードバックを提供すべく設計されている。従来のオーバーレイ計測システムの例としてKLA-Tencor Archer(商標)シリーズの計測システムが含まれる。性能が向上した撮像及び散乱計測に基づく測定アプリケーションの両方において、従来のシステムは、大量生産における工程変動が生じても安定したオーバーレイ測定及び制御が行えるよう設計されている。最近では1nmの解像度で調整可能なレーザー技術が出現しているため、オーバーレイの正確度、及び撮像/散乱計測オーバーレイ目標と、メモリ及び論理層用の両方における素子オーバーレイ誤差との相関が更に向上している。
【0004】
撮像に基づくオーバーレイ計測システム(例:KLA-Tencor Archer(商標)シリーズのオーバーレイ計測システム)で最適な測定波長を選択するための従来の自動レシピ自動化(ARO)スキームには総当たり(BF)スキーム及び全欠陥計測(MOAB)スキームが含まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2015/0323316号
【文献】米国特許出願公開第2017/0109646号
【文献】米国特許出願公開第2006/0064280号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
残差は最も一般的に用いられる正確度の指標(例:測定されたオーバーレイと実際のオーバーレイの差)であるため、BF-AROスキームは各種のレシピ(例:ハードウェア構成)によりオーバーレイ計測サブシステムを動作させ、各レシピについて残差値を収集することを伴う。各レシピは、波長、偏光、帯域幅、及び開口数(NA)の特定の組み合わせを含んでいる。オーバーレイ計測システムは、サンプル上の数十又は数百個の部位を測定し、高次ウェーハ及び高次場モデルの残差(例:W3F3残差)に基づいてレシピがランク付けされる。BF-AROスキームは簡単且つ直接的であるが、多数のサンプリングレシピを測定するのに時間を要する。従って、BF-AROスキームでは全ての可能な組み合わせに対応できる訳ではない。換言すれば、最小残差を与えるレシピが最終的なランキングで欠落している恐れがある。
【0007】
MOAB-AROスキームは高々5個のサンプリング部位しか必要としないため、評価時間が大幅に短縮される。カーネル3シグマ(K3S)、周期比(PR)、及びコントラスト精度(CP)を含む3種類の重要な尺度を組み合わせて単一の決定面すなわちMOAB決定面を設定する。MOAB決定面に基づいて、測定値に適しないレシピを排除することができる。しかし、MOAB決定面の値は残差と強く相関しない。従って、MOAB-AROスキームで推奨されるレシピは必ずしも残差が最小のレシピとは限らない。
【0008】
散乱計測に基づくオーバーレイ計測サブシステムの場合、共振モデリング(RM)AROスキームに加え、BF-AROスキームも適用可能である。RM-AROスキームにおいて、共振領域でオーバーレイ値が計算され、その際にオーバーレイの正確度は波長により劇的に変化する。RM-AROは必要なサンプリング部位が少ないため、測定時間が短くて済む。しかし、RM-AROは高品質の共振領域を必要とするが、いくつかのサンプル層では利用できない場合がある。更に、撮像及び散乱計測に基づく計測サブシステムの両方におけるオーバーレイ測定用に多波長方式が最近開発されたことを受けて、波長の数の増大に対して可能なレシピが指数的に増大しており、これは上述のAROスキームの能力を越えている。
【0009】
多数のサンプリング部位に起因して評価時間が長いという課題を解決して、尺度と残差の出力品質の間の橋渡しを直接確立すべく、代替的なARO解決策が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の1個以上の例示的実施形態によるオーバーレイ計測システムを開示する。1個の例示的実施形態において、オーバーレイ計測システムは、オーバーレイ計測サブシステムと通信可能に結合されるべく構成されたコントローラを含んでいる。別の例示的実施形態において、コントローラは、1個以上のプロセッサにオーバーレイ計測サブシステムから1個以上のオーバーレイ測定値を受信させ、1個以上の測定値を用いて1個以上の品質尺度を生成させ、主成分分析(PCA)を用いて1個以上の品質尺度から主成分の組を抽出させ、入力データであって当該主成分の組のサブセットを含み且つ当該サブセットの各主成分が閾値分散よりも大きい分散を有している入力データを生成させ、当該入力データを教師付き機械学習アルゴリズムの入力マトリクスに入力して予測モデルを訓練させ、当該予測モデルの出力ベクトル内で、当該オーバーレイ計測システムのレシピ又はハードウェア構成を識別させるプログラム命令を実行すべく構成された1個以上のプロセッサを含んでいる。
【0011】
本開示の1個以上の例示的実施形態によるオーバーレイ計測システムを開示する。1個の例示的実施形態において、オーバーレイ計測システムはオーバーレイ計測サブシステムを含んでいる。別の例示的実施形態において、オーバーレイ計測システムは、オーバーレイ計測サブシステムと通信可能に結合されるべく構成されたコントローラを含んでいる。別の例示的実施形態において、コントローラは、1個以上のプロセッサにオーバーレイ計測サブシステムから1個以上のオーバーレイ測定値を受信させ、1個以上の測定値を用いて1個以上の品質尺度を生成させ、主成分分析(PCA)を用いて1個以上の品質尺度から主成分の組を抽出させ、入力データであって当該主成分の組のサブセットを含み且つ当該サブセットの各主成分が閾値分散よりも大きい分散を有している入力データを生成させ、当該入力データを教師付き機械学習アルゴリズムの入力マトリクスに入力して予測モデルを訓練させ、予測モデルの出力ベクトル内で、最小残差値を有するレシピ又はハードウェア構成を識別し、当該オーバーレイ計測システムを、当該最小残差値を有するレシピ又はハードウェア構成に適合させる1個以上の制御命令を提供するプログラム命令を実行させるべく構成された1個以上のプロセッサを含んでいる。
【0012】
本開示の1個以上の例示的実施形態による予測モデルを訓練する方法を開示する。1個の例示的実施形態において、本方法は、オーバーレイ計測サブシステムから1個以上のオーバーレイ測定値を受信するステップを含んでいる。別の例示的実施形態において、本方法は、1個以上の測定値を用いて1個以上の品質尺度を生成するステップを含んでいる。別の例示的実施形態において、本方法は主成分分析(PCA)を用いて1個以上の品質尺度から主成分の組を抽出するステップを含んでいる。別の例示的実施形態において、本方法は、入力データであって当該主成分の組のサブセットを含み且つ当該サブセットの各主成分が閾値分散よりも大きい分散を有している入力データを生成するステップを含んでいる。別の例示的実施形態において、本方法は、予測モデルを訓練すべく当該入力データを教師付き機械学習アルゴリズムの入力マトリクスに入力するステップを含んでいる。別の例示的実施形態において、本方法は、当該予測モデルの出力ベクトル内で、当該オーバーレイ計測システムのレシピ又はハードウェア構成を識別するステップを含んでいる。
【0013】
上述の一般的な記述及び以下の詳細な記述は例示及び説明目的に過ぎず、請求項に記載する本発明を必ずしも限定するものではないことを理解されたい。本明細書に組み込まれてその一部を構成する添付の図面は本発明の実施形態を示しており、一般的な説明と合わせて本発明の原理の説明に資するものである。
【0014】
本開示の多くの利点は、添付の図面を参照することにより当業者の理解が深まろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1A】本開示の1個以上の実施形態による、オーバーレイ計測システムの簡略模式図である。
【
図1B】本開示の1個以上の実施形態による、オーバーレイ計測サブシステムの簡略模式図である。
【
図1C】本開示の1個以上の実施形態による、オーバーレイ計測サブシステムの簡略模式図である。
【
図2】本開示の1個以上の実施形態による、機械学習に基づく自動レシピ最適化(ARO)の簡略フロー図である。
【
図3A】本開示の1個以上の実施形態による、機械学習アルゴリズムの性能を評価するための交差検証方法を示すフロー図である。
【
図3B】本開示の1個以上の実施形態による、機械学習アルゴリズムの性能を評価するための交差検証方法を示すフロー図である。
【
図4】本開示の1個以上の実施形態による、各種の機械学習アルゴリズムを適用してレシピを予測した結果を示す表である。
【
図5】本開示の1個以上の実施形態による、予測モデルを訓練し、当該予測モデルに基づいてオーバーレイ計測サブシステムを調整する方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
上述の一般的な記述及び以下の詳細な記述が例示及び説明目的に過ぎず、請求項に記載する本発明を必ずしも限定するものではないことを理解されたい。本明細書に組み込まれて一部を構成する添付の図面は本発明の実施形態を示しており、一般的な説明と合わせて本発明の原理の説明に資するものである。添付の図面に示す開示内容を詳細について以下に言及する。
【0017】
本開示は、オーバーレイ測定のため調整可能な波長を有する光照射を用いるオーバーレイ計測システムを目的とする。オーバーレイ測定が可能な波長のこのような連続的な選択に際して、正確且つ安定した測定に最適な波長(例:最適なレシピ又はハードウェア構成)を選択するアルゴリズムを用いてよい。特に、本開示は、オーバーレイ計測サブシステムの最適なレシピを高速且つ正確に識別する機械学習アルゴリズムを目的とする。
【0018】
レシピは、オーバーレイ信号の生成に用いる測定パラメータの組を含んでいてよい。例えば、オーバーレイ計測システムのレシピは、照射波長、サンプルから発される放射の検出波長、サンプルへの照射スポットサイズ、入射角、入射偏光、オーバーレイ目標上の入射光の位置、オーバーレイ計測ツールの焦点体積内でのオーバーレイ目標の位置等を含んでいてよいが、これらに限定されない。従って、オーバーレイレシピは、2個以上のサンプル層のオーバーレイの判定に適したオーバーレイ信号を生成するための測定パラメータの組を含んでいてよい。
【0019】
オーバーレイ測定の正確度及び/又は反復可能性は、オーバーレイレシピだけでなくオーバーレイ目標の特定のジオメトリに関連付けられた広範な要因、例えばサンプル層の厚さ、オーバーレイ目標特徴のサイズ、オーバーレイ目標の特徴の密度又はピッチ、又はサンプル層の組成にも依存し得るがこれらに限定されない。更に、オーバーレイ目標の特定のジオメトリは、サンプル全体にわたり予測可能及び予測不可能な仕方で変化し得る。例えば、加工された層の厚さは、サンプル全体にわたり既知の分布で変化し得る(例:厚さはサンプルの周縁よりも中央で若干大きいと思われる)又は処理ステップの欠陥又は無秩序なバラツキに関連付けられた無秩序な変動に応じて変化し得る。従って、たとえ処理バラツキが選択された製造公差内にあったとしても、特定のオーバーレイレシピがサンプルの全てのオーバーレイ目標に適用されたにも拘わらず同一の正確度及び/又は反復可能性が得られない場合がある。
【0020】
所与のアルゴリズムを用いるオーバーレイ測定は、オーバーレイ目標が、完全に均一な材料から形成された完全に均一なサンプル層に形成された完全に対称な特徴を含んでいるとの仮定の下で典型的に実行される。しかし、オーバーレイ目標の加工に関連付けられた処理バラツキは、加工されたオーバーレイ目標の設計された特徴(例:側壁の非対称性等)からの逸脱をもたらす場合がある。例えば、処理バラツキは、薄膜層の堆積、薄膜層のパターンの露光、薄膜層上の露光パターンのエッチングにおけるバラツキを含んでいてよい。この点に関して、加工されたオーバーレイ目標の設計特徴からの逸脱が測定信号に何らかの影響を及ぼした場合、オーバーレイ誤差が原因であると誤判断されて、オーバーレイ測定における不正確さとして発現する恐れがある。
【0021】
更に、所与のオーバーレイ目標及び所与のオーバーレイアルゴリズムに対して、レシピ(例:オーバーレイ計測サブシステムの異なるハードウェア構成)が異なる計測が処理誤差に対して異なる感度を示す場合がある。換言すれば、特定のオーバーレイ目標の加工に関連付けられた処理バラツキに対して比較的強靭である特定の測定レシピ(例:オーバーレイ目標を特徴付けるべくオーバーレイ計測サブシステムで用いられる波長、偏光等の特定の値)識別することが可能な場合がある。この点に関して、強靭且つ正確なオーバーレイ測定を実現することができる。
【0022】
本開示の目的のため、オーバーレイ計測サブシステムに関連付けられたオーバーレイ信号は、(例:1個以上のプロセッサ等を用いた分析を介して)2個以上のサンプル層へのオーバーレイ目標特徴の相対位置を含むオーバーレイを判定するのに充分な情報を有するオーバーレイ計測サブシステムの出力であると考えることができる。例えば、オーバーレイ信号は1個以上のデータセット、1個以上の画像、1個以上の検知器読取値等を含んでいても、含んでいなくてもよい。
【0023】
本開示全体にわたり用いる用語「サンプル」は一般に、半導体又は非半導体材料(例:ウェーハ等)形成された基板を指す。例えば、半導体又は非半導体材料は、単結晶シリコン、ガリウム砒素、及びリン化インジウム物を含んでいてよいが、これらに限定されない。サンプルは1個以上の層を含んでいてよい。例えば、このような層はレジスト、誘電材料、導電材料、及び半導体材料を含んでいてよいが、これらに限定されない。このような層の多くの異なる種類が当分野で知られており、本明細書で用いる用語サンプルは、このようなあらゆる種類の層が形成され得るサンプルを含むことを意図している。サンプル上に形成された1個以上の層はパターン化されてもされなくてもよい。例えばサンプルは、各々が反復可能なパターン化された特徴を有する複数のダイを含んでいてよい。このような材料の層の形成及び処理は最終的に慣性した素子を生成することができる。多くの異なる種類の素子をサンプル上に形成することができ、本明細書で用いる用語サンプルは、当分野で知られる任意の種類の素子が加工されているサンプルを含むことを意図している。更に、本開示の目的のため、用語サンプルとウェーハは交換可能であると解釈すべきである。また、本開示の目的のため、用語パターニング装置、マスク及びレクチルは交換可能であると解釈すべきである。
【0024】
図1Aは、本開示の1個以上の実施形態による、オーバーレイ計測システム100を示す概念図である。
【0025】
一実施形態において、オーバーレイ計測システム100は、任意の数のオーバーレイレシピに基づいてオーバーレイ目標からオーバーレイ信号を取得すべく構成されたオーバーレイ計測サブシステム102を含んでいる。例えば、オーバーレイ計測サブシステム102は、サンプル104に照射を向け、更に2個以上のサンプル層のオーバーレイの判定に適したオーバーレイ信号を生成すべくサンプル104から発せられた放射を収集することができる。オーバーレイ計測サブシステム102は、サンプル104上のオーバーレイ目標に関連付けられたオーバーレイの判定に適したオーバーレイ信号の生成に適した任意の種類のオーバーレイ計測ツール又は当分野で公知の装置であってよい。オーバーレイ計測サブシステム102は、撮像モード又は非撮像モードで動作することができる。例えば、撮像モードにおいて、個々のオーバーレイ目標要素はサンプル上の照射スポット内で(例:明視野画像、暗視野画像、位相コントラスト画像等の一部として)解像可能であってよい。別の例として、オーバーレイ計測サブシステム102は、サンプルからの放射が瞳孔平面で分析されてサンプル104からの放射の(例:サンプル104による放射の散乱及び/又は回折に関連付けられた)角度分布を特徴付ける散乱計測方式のオーバーレイ計測ツールとして動作することができる。
【0026】
更に、オーバーレイサブシステム102は、オーバーレイ目標のオーバーレイの判定に適したオーバーレイ信号を取得するための測定パラメータを定義する任意の数のレシピに基づいてオーバーレイ信号を生成すべく設定可能であってよい。例えば、オーバーレイ計測ツールのレシピは、照射波長、サンプルから発せられた放射の検出波長、サンプルへの照射のスポットサイズ、入射角、入射偏光、オーバーレイ目標上の入射光の位置、オーバーレイ計測サブシステム102の焦点体積内でのオーバーレイ目標の位置等を含んでいてよいが、これらに限定されない。
【0027】
別の実施形態において、オーバーレイ計測システム100は、オーバーレイ計測サブシステム102と通信可能に結合されたコントローラ106を含んでいる。コントローラ106は、1個以上の選択されたレシピに基づいてオーバーレイ信号を生成するようオーバーレイ計測サブシステム102に指示すべく構成されていてよい。コントローラ106は更に、オーバーレイ計測サブシステム102から、オーバーレイ信号を含むがこれに限定されないデータを受信すべく構成されていてよい。また、コントローラ106は、オーバーレイ目標に関連付けられたオーバーレイを取得したオーバーレイ信号に基づいて判定すべく構成されていてよい。コントローラ106は例えば、ワークステーション、端末、パーソナルコンピュータ、ラップトップ、タブレット、モバイル機器等であってよい。
【0028】
別の実施形態において、コントローラ106は1個以上のプロセッサ108を含んでいる。1個以上のプロセッサ108は、メモリ装置110又はメモリに保持されたプログラム命令の組を実行すべく構成されていてよい。コントローラ106の1個以上のプロセッサ108は、当分野で公知の任意の処理要素を含んでいてよい。この意味において、1個以上のプロセッサ108は、アルゴリズム及び/又は命令(例:中央演算処理装置[CPU]及び/又はグラフィックス処理装置[GPU])を実行すべく構成された任意のマイクロプロセッサ型の装置を含んでいてよい。更に、メモリ装置110は、関連付けられた1個以上のプロセッサ108により実行可能なプログラム命令の保存に適した当分野で公知の任意の記憶媒体を含んでいてよい。例えば、メモリ装置110は非一時的メモリ媒体を含んでいてよい。追加的な例として、メモリ装置110は、読出し専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、磁気又は光記憶装置、ハードディスクドライブ(HDD)、磁気テープ、フラッシュメモリ、固体ドライブ(SSD)等を含んでいてよいが、これらに限定されない。メモリ装置110が1個以上のプロセッサ108と共に共通のコントローラ筐体に収納できることに更に注意されたい。
【0029】
図1Bは、本開示の1個以上の実施形態による、オーバーレイ計測サブシステム102を示す概念図である。一実施形態において、オーバーレイ計測サブシステム102は、照射ビーム114を生成すべく構成された照射光源112を含んでいる。照射ビーム114は、紫外(UV)放射、可視放射、又は赤外(IR)放射を含むがこれらに限定されない1個以上の選択された光の波長を含んでいてよい。
【0030】
照射光源112は、照射ビーム114の提供に適した任意の種類の照射光源を含んでいてよい。一実施形態において、照射光源112はレーザー光源である。例えば、照射光源112は、1個以上の狭帯域レーザー光源、広帯域レーザー光源、超広帯域レーザー光源、白色光レーザー光源等を含んでいてよいが、これらに限定されない。この点に関して、照射光源112は、高いコヒーレンス(例:高い空間コヒーレンス及び/又は時間コヒーレンス)を有する照射ビーム114を出力することができる。別の実施形態において、照射光源112はレーザー維持プラズマ(LSP)光源を含んでいる。例えば、照射光源112は、レーザー光源によりプラズマ状態に励起されたならば広帯域照射を発し得る1個以上の要素の収納に適したLSPランプ、LSPバルブ、又はLSPチャンバを含んでいてよいが、これらに限定されない。別の実施形態において、照射光源112はランプ光源を含んでいてよい。例えば、照射光源112は、アークランプ、放電ランプ、無電極ランプ等を含んでいてよいが、これらに限定されない。この点に関して、照射光源112は、低いコヒーレンス(例:低い空間コヒーレンス及び/又は時間コヒーレンス)を有する照射ビーム114を提供することができる。別の実施形態において、照射光源112はシンクロトロン光源を含んでいてよい。
【0031】
別の実施形態において、オーバーレイ計測システム100は、サンプル104を照射すべく照射ビーム114のスペクトルを制御する波長選択装置116を含んでいる。例えば、波長選択装置116は、照射ビーム114に選択されたスペクトル(例:中心波長、帯域幅、スペクトルプロファイル等)を与えるのに適した調整可能なフィルタを含んでいてよい。別の例として、波長選択装置116は、調整可能な照射光源112の1個以上の制御設定を調整して照射ビーム114のスペクトルを直接制御することができる。更に、コントローラ106は、照射ビーム114のスペクトルの1個以上の態様を調整すべく照射光源112及び/又は波長選択装置116と通信可能に結合されていてよい。
【0032】
別の実施形態において、オーバーレイ計測サブシステム102は、照射光路118を介して照射ビーム114をサンプル104に誘導する。照射光路118は、照射ビーム114を変更及び/又は調整すると共に照射ビーム114をサンプル104に誘導するのに適した1個以上の光学部品を含んでいてよい。例えば、照射光路118は、(例:照射ビーム114を視準する、瞳孔及び/又は視野面を中継する等)1個以上のレンズ120、照射ビーム114の偏光を調整する1個以上の偏光子122、1個以上のフィルタ、1個以上のビームスプリッタ、1個以上の拡散器、1個以上のホモジナイザ、1個以上のアポダイザ、1個以上のビーム整形器、又は1個以上のミラー(例:静止ミラー、並進可能ミラー、走査ミラー等)を含んでいても、含んでいなくてもよい。別の実施形態において、オーバーレイ計測サブシステム102は、照射ビーム114をサンプル104(例:サンプル104の2個以上の層にオーバーレイ目標要素が配置されたオーバーレイ目標)に集光させる対物レンズ124を含んでいる。別の実施形態において、サンプル104は、サンプル104を固定するのに適していて、更に照射ビーム114に対してサンプル104の位置を合わせるべく構成されたサンプル台126に載置されている。
【0033】
別の実施形態において、オーバーレイ計測サブシステム102は、収集光路132を介してサンプル104(例:サンプル104上のオーバーレイ目標)から発せられた放射(例:サンプル放射130)を捕捉して、サンプル104の2個以上の層のオーバーレイを示す1個以上のオーバーレイ信号を生成すべく構成された1個以上の検知器128を含んでいる。収集光路132は、対物レンズ124により収集された照射を誘導及び/又は変更する1個以上のレンズ134、1個以上のフィルタ、1個以上の偏光子、1個以上のビームブロック、又は1個以上のビームスプリッタを含むがこれらに限定されない複数の光学素子を含んでいてよい。例えば、検知器128は、収集光路132内の要素(例:対物レンズ124、1個以上のレンズ134等)により提供されるサンプル104の画像を受信することができる。別の例として、検知器128は、サンプル104から反射又は散乱された放射を(例:鏡面反射、拡散反射等を介して)受光することができる。別の例として、検知器128は、サンプルにより生成された放射(例:照射ビーム114の吸収に関連付けられたルミネセンス)を受光することができる。別の例として、検知器128は、サンプル104から1個以上のオ回析次数(例:0次回折、±1次回折、±2次回折等)の放射を受光することができる。
【0034】
オーバーレイ計測サブシステム102の照射光路118及び収集光路132は、サンプル104を照射ビーム114で照射するのに適した、且つ入射光ビーム114に応答してサンプル104から発せられた放射を収集するのに適した広範な向きに設定することができる。例えば、
図1Bに示すように、オーバーレイ計測サブシステム102は、対物レンズ124がサンプル104に照射ビーム114を誘導すること、及びサンプル104から発せられた放射を収集することを同時に行えるように向けられたビームスプリッタ136を含んでいてよい。別の例として、照射光路118及び収集光路132は、重複しない光路を含んでいてよい。
【0035】
図1Cは、本開示の1個以上の実施形態による、オーバーレイ計測サブシステム102を示す概念図である。一実施形態において、照射光路118及び収集光路132は別々の要素を含んでいる。例えば、照射光路118は第1の集光要素138を用いて照射ビーム114をサンプル104に集光させることができ、収集光路132は第2の集光要素140を用いてサンプル104からの放射を収集することができる。この点に関して、第1の集光要素138及び第2の集光要素140の開口数は異なっていてよい。別の実施形態において、1個以上の光学部品が、サンプル104への照射ビーム114の入射角が回転アームの位置により制御できるように、サンプル104の回りをピボット回転する回転可能なアーム(図示せず)に搭載されていてよい。
【0036】
上述のように、オーバーレイ計測サブシステム102は、任意の数のオーバーレイレシピ(例:測定パラメータの組)を用いてサンプル104上のオーバーレイ目標に関連付けられたオーバーレイ信号を生成すべく構成されていてよい。更に、オーバーレイ計測サブシステム102は、異なるレシピに基づいて複数のオーバーレイ信号が高速に取得できるように測定パラメータ素早く調整することができる。例えば、オーバーレイ計測システム100のコントローラ106は、オーバーレイレシピに従い調節可能な部品を設定すべくオーバーレイ計測サブシステム102の1個以上の調節可能な構成要素と通信可能に結合されていてよい。
【0037】
オーバーレイレシピは、サンプルに入射する照射ビーム114の波長(例:中心波長)、帯域幅、及びスペクトルプロファイル等、但しこれらに限定されないスペクトルの1個以上の態様を測定パラメータとして含んでいてよい。例えば、コントローラ106は、オーバーレイレシピに従い照射ビーム114のスペクトルを調整すべく照射光源112及び/又は波長選択装置116と通信可能に結合されていてよい。
【0038】
一実施形態において、波長選択装置116は、フィルタ上の照射ビーム114の位置を変更することにより入射照射ビーム114のスペクトル特徴(例:中心波長、帯域幅、スペクトル透過率値等)を素早く調整できる1個以上の位置調整可能スペクトルフィルタを含んでいる。更に、位置調整可能スペクトルフィルタは、低域通過フィルタ、高域通過フィルタ、帯域通過フィルタ、又は帯域遮断フィルタ等の、但しこれらに限定されない任意の種類のスペクトルフィルタを含んでいてよい。
【0039】
例えば、位置調整可能スペクトルフィルタは、位置調整可能なカットオフ波長を有するエッジフィルタとして動作する1個以上の薄膜を含んでいてよい。この点に関して、カットオフ波長は、フィルタ上の照射ビーム114の位置を変更することにより調整されてよい。例えば、低域通過エッジフィルタは、カットオフ波長未満の波長を(例:透過又は反射を介して)通過させることができるのに対し、高域通過エッジフィルタはカットオフ波長を超える波長を通過させることができる。更に、帯域通過フィルタは、低域通過エッジフィルタを高域通過エッジフィルタと組み合わせて形成されていてよい。
【0040】
ここで
図2~5を参照しながら、オーバーレイレシピを自動的に最適化すべく用いられる機械学習アルゴリズム(例:自動レシピ最適化[ARO])についてより詳細に記述する。特に、測定の正確度及び反復可能性を最大化するのに最適な測定波長を選択することができる。
【0041】
図2は、MLに基づくAROの簡略フロー図である。入力データ(例:初期データ101及び新規データ103)は、オーバーレイ計測サブシステム102により生成された品質尺度を含んでいてよい。コントローラ106は、オーバーレイ計測サブシステム102と通信可能に結合されるべく構成されていてよい。コントローラ106のメモリ110は、特徴摘出アルゴリズム105、MLアルゴリズム107、及び予測モデル109を含むMLに基づくAROを含むプログラム命令を保存することができる。コントローラ108の1個以上のプロセッサ110は、1個以上のプロセッサに、MLに基づくAROを実行してオーバーレイ計測システム102のレシピを相応に調整させるプログラム命令を実行することができる。
【0042】
サンプル(例:サンプル104)上の各サンプリング部位に関連付けられた品質尺度を生成するのではなく、サンプル平均及びサンプル3シグマを最初に計算してもよい。この計算により、サンプリング部位の数は無関係になり、将来的に少数のサンプリング部位を用いることが可能になる。特徴摘出アルゴリズム105は主成分分析(PCA)アルゴリズムであってよい。PCAを用いて、残差に直接影響し得る有用な情報をフィルタリングすることができる。PCAは、相関し得る全ての品質尺度を主成分と呼ばれる線形無相関変数の値の組に変換する。一実施形態において、167個の品質尺度がある。他の実施形態において、167個よりも多くの、又は少ない品質尺度がある。(対応する固有値により与えられる)各成分の分散がシステムにおける当該成分の重要度に関する粗い推定値を与える。計算コストを最小化すべく、教師付き機械学習アルゴリズム107に(例:閾値分散を超える)最大分散を有する成分だけを入力してもよい。
【0043】
教師付き機械学習アルゴリズム107の入力変数(すなわちPCA後の品質尺度)は入力マトリクスXtrainを形成していてよい。Xtrainの各列が1個の入力インデクス(例:ある種の品質尺度)に対応し、Xtrainの各行が1個のレシピ(例:ハードウェア構成、例えば波長)に対応していてよい。出力ベクトルYtrainは各レシピの残差(例:W3F3残差)を形成していてよい。精度及び装置要因誤差(TIS)等、他の正確度の指標も含まれていてよい。教師付き機械学習アルゴリズム107で異なるアルゴリズムを用いて、入力から出力への写像関数を(Ytrain=f[Xtrain])を学習するようコンピュータに教えることができる。教師付き機械学習アルゴリズム107は、線形回帰アルゴリズム107a、決定木(DT)アルゴリズム107b、サポートベクトル機械回帰(SVM-R)アルゴリズム107c、ガウス過程(GP)アルゴリズム107d、及び/又はニューラルネットワーク(NN)アルゴリズム107eを含んでいてよい。予測モデル109を訓練することにより、重み付け及びバイアスの固定された組が写像関数f(Xtrain)を定義することができる。新たな測定結果(例:新規入力データ103)が得られたならば、モデル109を訓練したのと同一のデータ抽出手順に従い残差を計算することができる。残差値が最も低い(例:最小残差値)レシピを識別することができ、次いで計測システム102を相応に調整(例:最も正確なオーバーレイ測定値を与える特定の波長に同調)することができる。サンプリング部位の数及びモデルの組み合わせに関連するML-AROスキームの二つの重要な利点について以下により詳細に述べる。
【0044】
予測モデル109を訓練する際に、各品質尺度及び残差(例:W3F3残差)のウェーハ平均及びウェーハ3シグマが多数のサンプリング部位(200部位又は300部位)に基づいて計算される。この多くの数により、より正確な残差値が得られ、従って訓練された写像関数が入力(例:初期入力データ101)と出力(例:予測モデル109)の真の関係を反映できることを保証する。しかし、新規データの内容が評価対象層の条件を予測するのに充分であるため、新規データ(例:新規入力データ103)の収集に少数のサンプリング部位(例:5~10個の部位)を用いてもよい。このようにサンプリングサイズが大幅に減少することにより、計測システム102をAROに使用するのに要する時間が(例:従来のAROスキームと比較して10~20分の1)に短縮される。従って、この時間節約は機械学習に基づくAROの大きな利点である。
【0045】
訓練データの所与の各組に対して、複数の予測模型109を、
図2に関して記述するアルゴリズム107a~eを用いて同時に訓練することができる。各予測モデル109の結果の平均を線形的又は非線形的に求めて、最終予測結果(すなわちW3F3残差)を得ることができる。アルゴリズム107a~eは各々、特定の利点及び短所を有している。例えば、決定木アルゴリズム107bは、解釈及び実装は容易であるが、高度に複雑なシステムをモデル化することは不可能であり、従って過少適合に陥る恐れがある。一方、ニューラルネットワークアルゴリズム107eは、高々2個の隠れ層を有するあらゆる複雑なシステムを管理できるが、往々にして過剰適合に陥る。過少適合及び過剰適合は共に、予測モデル109の一般化に悪影響を及ぼし、従って予測モデル109の性能を低下させる。各種の学習アルゴリズム(例:アルゴリズム107a~e)の組み合わせは、分散の寄与を二乗誤差に減らすことによりこれらの問題を有利に解決することができる。
【0046】
撮像に基づくオーバーレイ計測サブシステム102にML-AROスキームを適用する一例において、充分に大きいサンプリングサイズを有する16個の異なるデモウェーハで測定データが収集された。次いで測定データを異なる機械学習モデル109の訓練及び検証に用いた。ここでは明示的に述べていないが、散乱計測に基づくARO及び多波長レシピ選択も同様の機械学習に基づく手順に従う場合がある。
【0047】
図3A、Bに、入力データ301a~bの特徴抽出105の後で各機械学習アルゴリズム107の性能を評価する交差検証方法を示すフロー図を示す。特徴抽出アルゴリズム105及び機械学習アルゴリズム107は、
図2に関して記述したものと同様に名付けられた構成要素と実質的に類似していてよい。本方法において、1個の層を順次テストデータの組として取り上げる(入力データ301aに対して層303a、及び入力データ301bに対して層303b)一方、他の層は機械学習アルゴリズム107を用いて予測モデルを訓練するための訓練データの組(入力データ301aに対して層302a、及び入力データ301bに対して層302b)として用いられる。試験データの組303a~bの品質尺度が機械学習アルゴリズム107に入力されて各レシピの予測残差が得られる。予測残差(例:W3F3残差)及び測定されたオーバーレイから計算された残差を折れ線グラフ309a~bにプロットすることにより、予測の正確度の質的理解が得られる。馬蹄形のサイクルは正確に予測されたレシピとして定義され、測定残差に基づいてレシピがランク付けされるBF-ARO、及び予測残差に基づいてレシピがランク付けされるML-AROの両方において、所与の層について最も正確な上位10個のレシピに現れるレシピである。
【0048】
馬蹄形のサイクル(すなわち正確に予測されたレシピ)の数は、デモウェーハ(入力データ301a~b)の層1~16及び各機械学習アルゴリズム107a~eについて
図4の表401に一覧表示されている。同じく
図4に、機械学習アルゴリズム107a~eのいくつかを互いに組み合わせた結果を示している。ブースティング木は勾配ブースティングとも呼ばれ、弱い決定木モデルの集団としての予測モデルを1個の強い学習者に変える機械学習技術である。平均化方法は、全ての機械学習アルゴリズム107a~e(例:学習者の一次結合)から得られた予測結果の平均を計算する。機械学習アルゴリズム107b(決定木)及び機械学習アルゴリズム107e(ニューラルネットワーク)の結果は互いに相補的(例:NNは層#1、#2、#6、#7、及び#11で性能が良く、DTは層#5、#9、#15で性能が良い)ため、DTアルゴリズム107b及びNNアルゴリズム107eはNNアルゴリズム107eと0.9、DTアルゴリズム107bと0.1の重み付けで組み合わされて厳密基準ケースで各々有利な機械性能を発揮することができる。アルゴリズム107a~eを組み合わせる他の方法も求めることができる。
【0049】
アルゴリズム107a~eの性能を定量的に評価してパラメータ微調整を系統的に実行すべく、二つの異なる重要業績評価指標(KPI)を定義することができる。KPIの一つは正確に予測されたレシピの割合であり、正確に予測されたレシピの総数を最も正確な上位10個のレシピの数である10で除算した値として定義することができる。このようなKPIは直截且つ容易に理解できるが、各アルゴリズム107a~eにおける値の変化が極めて小さい(0.32~0.40)ため、各種のアルゴリズム107a~eを区別することができない。この問題を解決すべく、第2のKPIすなわち層平均成功率を定義することができる。上位10個のレシピの各々は、近い残差性能に起因して必ずしも全部を正確に予測する必要はない。この場合、3個のレシピで充分(基準=3)であると仮定してよい。3個以上の正しいレシピが予測されたならば成功率は1.00である。2個の正しいレシピが予測されたならば成功率は0.66である。1個の正しいレシピが予測されたならば成功率は0.33である。正しいと予測されたレシピがゼロ個の場合、成功率はゼロである。16層全ての成功率の平均を求めることで基準=3の場合の層平均成功率が得られ、
図4の表401に示す。比較のため、より厳しい基準(上位10個のレシピから5個のレシピ)の結果を同じ表401に示す。デモウェーハから収集されたデータについて、決定木(DT)アルゴリズム107b及びニューラルネットワーク(NN)アルゴリズム107eが基準=3のケース及び基準=5のケースの両方において最も高い層平均成功率を与えることが明示されている。層平均成功率を向上させる目的で将来的にパラメータの微調整を実行してもよい。
【0050】
図5は、予測モデルを訓練して、予測モデルに基づいてオーバーレイ計測サブシステムを調整する方法を示すフロー
図500である。
【0051】
ステップ501において、オーバーレイ計測サブシステム(例:オーバーレイ計測サブシステム102)から1個以上のオーバーレイ測定値を受信することができる。サンプル(例:サンプル104)の2個以上の層を測定して、オーバーレイ測定値をコントローラ(例:コントローラ106)に送信することができる。
【0052】
ステップ502において、1個以上の測定値を用いて1個以上の品質尺度を生成することができる。1個以上の品質尺度は、例えばカーネル3シグマ(K3S)、周期比(PR)、及びコントラスト精度(CP)であってよい。
【0053】
ステップ503において、主成分分析(PCA)を用いて1個以上の品質尺度から主成分の組を抽出することができる。PCAを用いて、残差値に直接影響し得る有用な情報をフィルタリングすることができる。PCAは、相関する可能性がある全ての品質尺度を主成分と呼ばれる線形無相関変数の値の組に変換する。
【0054】
ステップ504において、入力データ(例:入力データ101、103)を生成することができる。入力データは、主成分の組のサブセットを含んでいてよい。(対応する固有値により与えられる)各成分の分散がシステムにおける当該成分の重要度に関する粗い推定値を与える。サブセット内の各主成分は閾値分散よりも大きい分散を有している。
【0055】
ステップ505において、予測モデル(例:出力ベクトルYtrain)を訓練すべく入力データを教師付き機械学習アルゴリズムの入力マトリクス(例:マトリクスXtrain)に入力する。Xtrainの各列が1個の入力インデクス(例:ある種の品質尺度)に対応し、Xtrainの各行が1個のレシピ(例:ハードウェア構成、例えば波長)に対応していてよい。出力ベクトルYtrainが各レシピ(例:W3F3残差)の残差を形成していてよい。精度及び装置要因誤差(TIS)等、他の正確度の指標も含まれていてよい。教師付き機械学習アルゴリズム107で異なるアルゴリズムを用いて、入力から出力への写像関数を(Ytrain=f[Xtrain])を学習するようコンピュータに教えることができる。教師付き機械学習アルゴリズム107は、線形回帰アルゴリズム107a、決定木(DT)アルゴリズム107b、サポートベクトル機械回帰(SVM-R)アルゴリズム107c、ガウス過程(GP)アルゴリズム107d、及び/又はニューラルネットワーク(NN)アルゴリズム107eを含んでいてよい。予測モデル109を訓練することにより、重み付け及びバイアスの固定された組が写像関数f(Xtrain)を定義することができる。新たな測定結果(例:新規入力データ103)が得られたならば、モデル109を訓練したのと同一のデータ抽出手順に従い残差を計算することができる。
【0056】
ステップ506において、予測モデルの出力ベクトル内で、最小残差値を有するレシピ又はハードウェア構成を識別する。
【0057】
ステップ507において、オーバーレイ計測システム(例:サブシステム102)を、(例:最も正確なオーバーレイ測定値を与える特定の波長に同調された)最小残差値を有するレシピ又はハードウェア構成に適合させる1個以上の制御命令を(例:コントローラ106により)提供することができる。
【0058】
上述の説明により本開示及びこれに伴う多くの利点が理解されるものと思われ、開示内容から逸脱することなく、又はその実質的利点の全てを犠牲にすることなく構成要素の形式、構造及び配置に各種の変更を加え得ることは明らかであろう。記述した形式は説明目的に過ぎず、以下の請求項はこのような変更を包含及び受容することを意図している。更に、本発明は添付の請求項により規定されることを理解されたい。