(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-18
(45)【発行日】2023-10-26
(54)【発明の名称】微粒子回収システム及び微粒子回収方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/62 20210101AFI20231019BHJP
G01N 1/02 20060101ALI20231019BHJP
【FI】
G01N27/62 F
G01N1/02 A
(21)【出願番号】P 2022529245
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(86)【国際出願番号】 JP2020022078
(87)【国際公開番号】W WO2021245870
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 安章
(72)【発明者】
【氏名】熊野 峻
(72)【発明者】
【氏名】師子鹿 司
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 信二
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-264341(JP,A)
【文献】国際公開第2009/139744(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/097990(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/62
G01N 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射ノズルにより被検査物に向けて圧縮空気を噴射することで発生する第1の気流により前記被検査物に付着する微粒子を剥離する剥離部と、
前記剥離部により前記被検査物から剥離された前記微粒子を回収する回収部と、
前記被検査物の表面の静電気を除電する除電部と、
を備え、
前記除電部の後段に前記剥離部及び前記回収部を有する
ことを特徴とする微粒子回収システム。
【請求項2】
前記被検査物の表面の帯電量を測定する帯電量測定部と、
前記除電部による除電の実行を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記帯電量測定部によって測定された前記被検査物の表面の帯電量の値に基づいて、前記除電部による除電を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の微粒子回収システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記剥離部から噴射される前記圧縮空気の圧力、及び、前記回収部における吸気量を制御し、
前記回収部は、吸気を行うことで前記微粒子の回収を行い、
前記制御部は、
前記帯電量測定部によって測定された前記被検査物の表面の帯電量が大きくなれば、剥離対象箇所における前記第1の気流の風圧も大きくなるよう前記圧縮空気の圧力を制御し、前記帯電量測定部によって測定された前記被検査物の表面の帯電量が小さくなれば、前記剥離対象箇所における前記第1の気流の風圧も小さくなるよう前記圧縮空気の圧力を制御し、
前記帯電量測定部によって測定された前記被検査物の表面の帯電量が大きくなれば、前記回収部における前記吸気量も大きくなるよう前記回収部における前記吸気量を制御し、前記帯電量測定部によって測定された前記被検査物の表面の帯電量が小さくなれば、前記回収部における前記吸気量も小さくなるよう前記回収部における前記吸気量を制御する
ことを特徴とする請求項2に記載の微粒子回収システム。
【請求項4】
前記除電部と、前記剥離部とが一体となっている
ことを特徴とする請求項1に記載の微粒子回収システム。
【請求項5】
前記噴射ノズルの近傍に、大気を電離させる電離気体生成部
を備え、
前記噴射ノズルは、前記電離気体生成部によって電離された前記大気が前記第1の気流より弱い気流である第2の気流を前記被検査物に向けて噴射する
ことを特徴とする請求項4に記載の微粒子回収システム。
【請求項6】
噴射ノズルにより被検査物に向けて圧縮空気を噴射することで発生する第1の気流により前記被検査物に付着する微粒子を剥離する剥離部と、
前記剥離部により前記被検査物から剥離された前記微粒子を回収する回収部と、
前記被検査物の表面の帯電量を測定する帯電量測定部と、
前記剥離部から噴射される前記圧縮空気の圧力、及び、前記回収部における吸気量を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記帯電量測定部によって測定された前記被検査物の表面の帯電量が大きくなれば、剥離対象箇所における前記第1の気流の風圧も大きくなるよう前記圧縮空気の圧力を制御し、前記帯電量測定部によって測定された前記被検査物の表面の帯電量が小さくなれば、前記剥離対象箇所における前記第1の気流の風圧も小さくなるよう前記圧縮空気の圧力を制御し、
前記帯電量測定部によって測定された前記被検査物の表面の帯電量が大きくなれば、前記回収部における前記吸気量も大きくなるよう前記回収部における前記吸気量を制御し、前記帯電量測定部によって測定された前記被検査物の表面の帯電量が小さくなれば、前記回収部における前記吸気量も小さくなるよう前記回収部における前記吸気量を制御する
ことを特徴とする微粒子回収システム。
【請求項7】
前記回収部により回収された前記微粒子を分析する分析部を備える
ことを特徴とする請求項1又は請求項6に記載の微粒子回収システム。
【請求項8】
形状及び密度を含む情報を基に検査対象物質の有無に関する検査をするバルク検査を前記被検査物に対して行うバルク検査部を備える
ことを特徴とする請求項1又は請求項6に記載の微粒子回収システム。
【請求項9】
噴射ノズルにより被検査物に向けて圧縮空気を噴射することで発生する第1の気流により前記被検査物に付着する微粒子を剥離する剥離部と、
前記剥離部により前記被検査物から剥離された前記微粒子を回収する回収部と、
前記被検査物の表面の静電気を除電する除電部と、
を備える微粒回収システムが、
前記除電部が、前記被検査物の表面の静電気を除電する除電ステップと、
前記噴射ノズルが前記被検査物に向けて前記圧縮空気を噴射する噴射ステップと、
前記回収部が、前記圧縮空気によって前記被検査物から剥離された前記微粒子を回収する回収ステップと、
を実行することを特徴とする微粒子回収方法。
【請求項10】
前記被検査物の表面の帯電量を測定する帯電量測定部と、
前記除電部による除電の実行を制御する制御部と、
を備え、
前記除電ステップの前に、前記帯電量測定部によって前記被検査物の表面の帯電量を測定する帯電量測定ステップを実行し、
前記帯電量測定部によって測定された前記被検査物の表面の帯電量が所定の値より大きい場合、前記制御部が前記除電ステップを実行する
ことを特徴とする請求項9に記載の微粒子回収方法。
【請求項11】
前記制御部は、前記剥離部から噴射される前記圧縮空気の圧力、及び、前記回収部における吸気量を制御し、
前記回収部は、吸気を行うことで前記微粒子の回収を行い、
前記制御部は、
前記帯電量測定部によって測定された前記被検査物の表面の帯電量が大きくなれば、剥離対象箇所における前記第1の気流も風圧大きくなるよう前記圧縮空気の圧力を制御し、前記帯電量測定部によって測定された前記被検査物の表面の帯電量が小さくなれば、前記剥離対象箇所における前記第1の気流の風圧も小さくなるよう前記圧縮空気の圧力を制御し、
前記帯電量測定部によって測定された前記被検査物の表面の帯電量が大きくなれば、前記回収部における前記吸気量も大きくなるよう前記回収部における前記吸気量を制御し、前記帯電量測定部によって測定された前記被検査物の表面の帯電量が小さくなれば、前記回収部における前記吸気量も小さくなるよう前記回収部における前記吸気量を制御する
剥離回収制御ステップ
を実行することを特徴とする請求項10に記載の微粒子回収方法。
【請求項12】
噴射ノズルにより被検査物に向けて圧縮空気を噴射することで発生する第1の気流により前記被検査物に付着する微粒子を剥離する剥離部と、
前記剥離部により前記被検査物から剥離された前記微粒子を回収する回収部と、
前記被検査物の表面の帯電量を測定する帯電量測定部と、
前記剥離部から噴射される前記圧縮空気の圧力、及び、前記回収部における吸気量を制御する制御部と、
を備え、
前記帯電量測定部によって前記被検査物の表面の帯電量を測定する帯電量測定ステップと、
前記噴射ノズルが前記被検査物に向けて前記圧縮空気を噴射する噴射ステップと、
前記回収部が、前記圧縮空気によって前記被検査物から剥離された前記微粒子を回収する回収ステップと、
を実行し、
前記制御部は、
前記帯電量測定部によって測定された前記被検査物の表面の帯電量が大きくなれば、剥離対象箇所における前記第1の気流の風圧も大きくなるよう前記圧縮空気の圧力を制御し、前記帯電量測定部によって測定された前記被検査物の表面の帯電量が小さくなれば、前記剥離対象箇所における前記第1の気流の風圧も小さくなるよう前記圧縮空気の圧力を制御し、
前記帯電量測定部によって測定された前記被検査物の表面の帯電量が大きくなれば、前記回収部における前記吸気量も大きくなるよう前記回収部における前記吸気量を制御し、前記帯電量測定部によって測定された前記被検査物の表面の帯電量が小さくなれば、前記回収部における前記吸気量も小さくなるよう前記回収部における前記吸気量を制御する
剥離回収制御ステップ
を実行することを特徴とする微粒子回収方法。
【請求項13】
分析部が、前記回収部により回収された前記微粒子を分析する分析ステップ
を実行することを特徴とする請求項9又は請求項12に記載の微粒子回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微粒子回収システム及び微粒子回収方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的にテロの脅威が増している。特に爆発物は、日用品を原料とした強力な爆薬の製造方法がインターネットを介して拡散したことから、近年のテロにおいて使用されるケースが増えている。爆発物テロを防止する有効な手段の一つは、爆発物検査装置により隠蔽されている爆発物を発見することである。爆発物の検査方法は2つあり、爆発物の塊を見つけるバルク検査と、微量の爆薬の痕跡を見つけるトレース検査が知られている。バルク検査とトレース検査とでは得られる情報が異なり、相補的に運用できる。そのため、その両方の検査方法を併用することによりセキュリティを向上できることが知られている。
【0003】
特許文献1には、「上記従来技術の問題を解決するためには、ニトロ化合物に代表される危険物を負のコロナ放電を用いて効率的にイオン化し、生成した負イオンを質量分析計を用いて高感度に検出する」試料ガス採取装置及び危険物探知装置が開示されている(要約参照)。
【0004】
特許文献2には、「付着物検査装置(1)は、試料物質が付着した検査対象物(25)に圧縮ガスを吹き付けて、剥離した前記試料物質を補集フィルタ(52)により捕集する捕集部(5)と、この捕集フィルタ(52)に捕集された前記試料物質を分析する検査部(2)と、を備えるとともに、さらに手荷物を検査部(2)に配送する手荷物配送部(3)と、補集フィルタ(52)を捕集部(5)から検査部(2)へ搬送する搬送部(4)とから構成されることを特徴とする」付着物検査装置及び付着物検査方法が開示されている(要約参照)。
【0005】
特許文献3には、「除電ブース(20)は、第一区域(11)と第二区域(12)との境界に設けられる。除電ブースは、第一区域とブース内空間とを仕切る第一パーティション(26)、第二区域とブース内空間とを仕切る第二パーティション(27)、および第一パーティションと第二パーティションとの間のブース内空間に設けられた加湿ノズル(21)を備える。加湿ノズルは、水または水蒸気を噴霧して、ブース内空間の湿度を高める」除電ブース、除電システムおよび除電方法が開示されている(要約参照)。
【0006】
特許文献4には、「加硫性ゴム組成物を用いて医薬品及び医療品用ゴム栓を製造するに際し、成形工程、洗浄・乾燥工程を経て製造された上記ゴム栓を除電処理することを特徴とする医薬品及び医療品用ゴム栓の製造方法及び成形工程、洗浄・乾燥工程を経て製造された上記ゴム栓を除電処理してから画像処理による最終外観検査をおこなう」医薬品及び医療品用ゴム栓の製造方法、該ゴム栓の検査方法及び検査装置が開示されている(要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2006-58318号公報
【文献】国際公開2006/097990号
【文献】特開2019-15447号公報
【文献】特開2000-302144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
荷物に付着している爆薬微粒子等の微粒子を気流により剥離及び回収し、その微粒子を分析することで爆薬の痕跡の有無を明らかにするトレース検査装置がある。このようなトレース検査装置では、気流の噴射圧力や流量が等しい場合、微粒子の剥離効率が表面の素材の影響を受けることが分かった。
【0009】
このような背景に鑑みて本発明がなされたのであり、本発明は、被検査物に付着している微粒子の回収効率を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明は、噴射ノズルにより被検査物に向けて圧縮空気を噴射することで発生する第1の気流により前記被検査物に付着する微粒子を剥離する剥離部と、前記剥離部により前記被検査物から剥離された前記微粒子を回収する回収部と、前記被検査物の表面の静電気を除電する除電部と、を備え、前記除電部の後段に前記剥離部及び前記回収部を有することを特徴とする。
その他の解決手段は実施形態中において、適宜記載する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、被検査物に付着している微粒子の回収効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態に係る微粒子検査装置の外観図である。
【
図2】微粒子検査装置の構成を上から見た内部透視模式図である。
【
図4】制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図7】第1実施形態における微粒子検査装置が行う処理の手順を示すフローチャートである。
【
図9】静電気センサ部の位置を具体的に示す図である。
【
図10】制御装置の構成を示す機能ブロック図である。
【
図11】第2実施形態における微粒子検査装置が行う処理の手順を示すフローチャートである。
【
図12】第3実施形態に係る剥離部の構成を示す図である。
【
図13】第4実施形態におけるトレース検査部の構成を示す図である。
【
図14】微粒子検査装置が行う処理の手順を示すフローチャートである。
【
図15A】爆薬微粒子を気流により剥離・回収し、検出するトレース検査装置において、一定量の爆薬微粒子を様々な種類の被検査物の表面に付着させて検出された信号強度を比較したグラフ(除電前)である。
【
図15B】爆薬微粒子を気流により剥離・回収し、検出するトレース検査装置において、一定量の爆薬微粒子を様々な種類の被検査物の表面に付着させて検出された信号強度を比較したグラフ(除電後)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明を実施するための形態(「実施形態」という)について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面において、同様の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0014】
実施形態を説明する前に、被検査物に付着している微粒子の回収効率に関しての考察を説明する。金属表面よりも、荷物の素材として用いられやすい絶縁材の方が、微粒子が剥離しにくい傾向があった。発明者らによる実験では素材よる表面の粗さの違いでは説明ができなかったため、絶縁材から微粒子が剥離しにくい原因は静電気によるものと発明者らは推定した。
【0015】
図15A及び
図15Bは、爆薬微粒子を気流により剥離・回収し、検出するトレース検査装置において、一定量の爆薬微粒子を様々な種類の被検査物の表面に付着させて検出された信号強度を比較したグラフである。
図15A及び
図15Bでは、ステンレスに微粒子を付着させて試験した場合の信号強度を「1」として正規化した上で示している。
図15Aは被検査物を除電しない状態で被検査物の表面に付着した爆薬微粒子を剥離・回収した際における信号強度を示している。また、
図15Bは被検査物を除電した状態で被検査物の表面に付着した爆薬微粒子を剥離・回収した際における信号強度を示している。
【0016】
図15Aに示すように、除電を行わない場合、絶縁材の被検査物(石英ガラス、合成皮革、ゴム、コルク)から検出される信号強度はステンレスに比べて半分程度であった。そこで、絶縁材の被検査物について、その表面を除電してからトレース検査装置で試験すると、
図15Bに示すように、絶縁材からでもステンレスと同程度の信号強度が得られることが分かった。このように、被検査物の表面の除電を行うと、絶縁材でも金属と同程度の剥離効率が得られることが分かった。
以下、この考察・知見に基づく実施形態を説明する。
【0017】
[第1実施形態]
まず、
図1~
図7を参照して、本発明の第1実施形態を示す。第1実施形態では、被検査物の表面を除電した後、微粒子を被検査物から剥離・回収する例を示す。
【0018】
(微粒子検査装置D)
図1は、第1実施形態に係る微粒子検査装置Dの外観図である。
被検査物である荷物5(
図3参照)が、ベルトコンベアに代表される搬送部3の上に載置されると、搬送部3によって荷物5が微粒子検査装置Dの内部へと搬送される。筐体4において、荷物5が微粒子検査装置Dに入る入口E1の部分にはすだれやシャッタ、スライド式ドア等の遮蔽部41が設けられるのが好ましい。これは、微粒子検査装置Dの内部に、X線源、放射線源、紫外線源等が設けられる場合があるので、微粒子検査装置Dの外にいる人への被爆や、誤って人やペットが微粒子検査装置Dの内部に入り込むことを防ぐためである。
【0019】
図2は、微粒子検査装置Dの構成を上から見た内部透視模式図である。
微粒子検査装置Dの内部にはトレース検査部1が設けられている。トレース検査部1は、荷物5の表面に付着した微粒子を回収し、その成分を分析する。トレース検査部1については後記する。また、
図2に示すように、搬送部3に載せられた荷物5が搬送される方向(太矢印)に沿って、トレース検査部1と直列にバルク検査を行うバルク検査部2が設けられてもよい。バルク検査とはX線検査装置のように形状や、密度等を基に爆発物の有無に関する検査を行うことである。このようにすることで一度の検査で荷物5に付着したトレース検査部1による微粒子の分析と、X線検査等のバルク検査による荷物5の内部の確認とを同時に行うことができる。なお、微粒子分析とバルク検査の順番は、どちらが先に実施されてもよい。また、バルク検査部2は省略されてもよい。
【0020】
バルク検査部2を通過した荷物5は、搬送部3によって微粒子検査装置Dの出口E2から排出される。
【0021】
(トレース検査部1)
図3は、トレース検査部1の構成を示す図である(上から見た内部透視模式図)。
荷物5が搬送部3に載置されると、搬送部3によって荷物5が微粒子検査装置D内に搬送される。微粒子検査装置D内に搬送された荷物5は、除電部11の近くに搬送される。除電部11は、荷物5の表面から静電気を除去する除電を行う。除電部11により表面が除電された荷物5は、荷物5の表面に付着した微粒子をサンプリングするため剥離回収部100に搬送される。具体的には、剥離部120と、回収部130との間に荷物5が搬送される。
【0022】
剥離回収部100は、圧縮空気供給部110、剥離部120、回収部130、濃縮部140及び分析部150によって構成されている。剥離部120は、配管P1を介して、コンプレッサ等の圧縮空気供給部110に接続されている。圧縮空気供給部110が、剥離部120に圧縮空気を送り、剥離部120から圧縮空気が噴射することにより荷物5の表面に付着している微粒子が剥離される。剥離された微粒子は、回収部130から回収され、配管P2を介して濃縮部140に送られる。濃縮部140で濃縮された微粒子は配管P3を介して分析部150に送られる。そして、分析部150は、送られた微粒子を分析し、その成分を検出する。
【0023】
制御装置7は、剥離部120の噴射ノズル121(
図6参照)を制御することで、圧縮空気の噴射制御を行う。
【0024】
(制御装置7)
図4は、制御装置7の構成を示す機能ブロック図である。
制御装置7は、メモリ701、CPU(Central Processing Unit)702、HD(Hard Disk)等の記憶装置703を有する。さらに、制御装置7は静電気センサ部12等から信号を受信し、噴射ノズル121等に信号を送信する通信装置を有する。
記憶装置703に格納されているプログラムがメモリ701に展開され、CPU702によって実行される。これにより、処理部710、及び、処理部710を構成するノズル制御部711が具現化する。
ノズル制御部711は噴射ノズル121による圧縮空気の噴射のON・OFFを制御する。
【0025】
(除電部11の位置)
図5は、除電部11の位置を具体的に示す図である。
図5は、
図3のA-A断面図を示している。
スーツケースのような大きな荷物5を運ぶ場合、下にキャスタ52が設けられるとともに、運びやすいよう、上部に取っ手51が設けれている場合が多い。取っ手51の付近は運搬や荷物5の出し入れ等の際に手で触る機会が多く、手を介して爆薬微粒子が転写される可能性が高い。このため、トレース検査部1において微粒子を回収する場所は取っ手51付近が好ましい。
【0026】
このように荷物5の取っ手51の付近に付着する微粒子を検出することが好適であるため、荷物5の表面に付着している静電気を除去するための除電部11も、取っ手51の近くの天井付近に設置されることが好ましい。このようにして、除電部11は微粒子を回収する箇所付近の表面の静電気を除去する。
なお、除電部11は、取っ手51(すなわち、除電対象箇所)の付近となるよう設置されなくてもよい。
【0027】
除電部11によって、荷物5(本体)や荷物5の取っ手51の表面の静電気が除去(除電)される。ここで、除電の方法には大きく分けて電離気体を利用する手法と、湿度を使用する手法の2つがある。電離気体を利用する場合、除電部11は、放電、紫外線、X線、放射線等の手段により大気を電離する。電離された大気の気体(電離気体)はプラスとマイナスの電荷を持っているため、取っ手51(除電対象箇所)付近の静電気は電離気体に含まれる逆極性の電荷により中和され除電される。
【0028】
また、湿度を利用する場合、除電部11は、水蒸気又は霧吹きによる水滴を荷物5(被検査物)付着させる。このようにして、トレース検査部1の内部の相対湿度が80%程度又はそれ以上に保たれる。この場合、このようにすることで、荷物5(被検査物)の全体表面に水による導通が生じ、静電気を搬送部3に逃がすことができる。その際、搬送部3の素材は導電性を有していることが望ましく、これにより静電気を逃がしやすくなる。なお、湿度による除電を行う場合、除電後の剥離部120による微粒子の剥離を容易にするため、図示しない乾燥部が設けられるとよい。
【0029】
(剥離回収部100の具体的な構成)
図6は、剥離回収部100の具体的な構成を示す図である。
前記したように搬送部3により荷物5が剥離部120と回収部130との間に搬送されてくると、剥離部120を構成する噴射ノズル121は、配管P1を介して圧縮空気供給部110(
図3参照)から供給される圧縮空気を噴射する。噴射された圧縮空気により、荷物5又は取っ手51に付着していた微粒子Pが剥離される。剥離された微粒子Pは圧縮空気の気流F1により回収部130の方向に剥離される。剥離部120と回収部130の間の気流F1が乱れないようドーム状の覆い(ドーム161と称する)が設けられるのが好適である。この場合、噴射ノズル121はノズル支持部162によりドーム161に固定されるのが好ましい。なお、ドーム161は、筐体4の内側に筐体4とは別に設置されているものである。
【0030】
剥離された微粒子Pは、回収部130を構成する吸気口131に吸い込まれ、配管P2を介して濃縮部140に導入される。濃縮部140はサイクロン濃縮部141によって構成されている。サイクロン濃縮部141により微粒子Pと、気体とが分離され、分離された微粒子Pは分析部150へ導入される。回収部130による微粒子Pの吸気は、サイクロン濃縮部141に設けられている排気ファン142の排気量や、質量分析計154による吸気量によって制御される。
【0031】
分析部150は、フィルタ151、加熱器152、ヒータ153、質量分析計15によって構成されている。
サイクロン濃縮部141によって分離され微粒子Pはフィルタ151に集積される。また、サイクロン濃縮部141によって微粒子Pと分離された気体は、サイクロン濃縮部141に設けられている排気ファン142により排気される(
図6の太矢印)。フィルタ151は加熱器152により180℃~200℃程度に加熱されている。フィルタ151に集められた微粒子Pは加熱器152による熱により気化する。質量分析計154は吸気を行っている。質量分析計154による吸気によって、気化した微粒子Pに由来する化学物質はヒータ153により180℃程度に加熱されている配管P3を介して質量分析計154に導入される。質量分析計154は、導入された微粒子Pに由来する化学物質の分析を行う。質量分析計154による分析の結果、爆薬成分が検出された場合、図示しない警告部がアラームを発報する等の処理が行われる。
【0032】
なお、
図6に示す構成は、そのすべてが
図1に示す筐体4の内部に収納されているものとするが、例えば、分析部150が筐体4の外部に備えられていてもよい。
【0033】
(フローチャート)
図7は、第1実施形態における微粒子検査装置Dが行う処理の手順を示すフローチャートである。
除電部11は、搬送部3によって搬送された荷物5の表面を除電する(S101)。前記したように、除電部11は電離気体G又は湿度により荷物5の表面(取っ手51を含む)の除電を行う。この際、荷物5は、除電部11において数秒間停止していることや搬送速度が低下していることが望ましい(例えば制御装置7が搬送部3を制御)。
続いて、制御装置7のノズル制御部711が剥離部120(噴射ノズル121)から圧縮空気が噴射される(S102)ことによる微粒子の剥離が行われるとともに、回収部130(吸気口131)から微粒子が回収される(S103)。
回収された微粒子は、濃縮部140(サイクロン濃縮部141)によって濃縮された後、フィルタ151において気化される(S104)。
気化された微粒子は質量分析計154において分析される(S105)。
【0034】
第1実施形態によれば、被検査物(荷物5)の表面を除電する除電部11を有することで、被検査物(荷物5)に付着している微粒子の回収効率を向上させることができる。
また、本実施形態の微粒子検査装置Dは、分析部150を有することで、微粒子の回収効率の向上に伴う分析精度の向上を実現することができる。
さらに、バルク検査部2を有することで、トレース検査とバルク検査とを微粒子検査装置Dで実行することができるため、検査効率を向上させることができる。
【0035】
[第2実施形態]
次に、
図8~
図11を参照して、本発明の第2実施形態について示す。第2実施形態では、第1実施形態の除電部11に加えて、静電気センサ部12を有している。
第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して、適宜説明を省略する。また、第2実施形態に係る微粒子検査装置Daの外観図は
図1と同様であるため、ここでの図示及び説明を省略する。
【0036】
(トレース検査部1a)
図8は、トレース検査部1aの構成を示す図である。
図8に示すように、トレース検査部1aでは、除電部11の前段、すなわち、トレース検査部1aの入り口付近に、荷物5の帯電の状況を測定する静電気センサ部12が設けられている。荷物5が静電気センサ部12の近傍を通過する際に、静電気センサ部12によって荷物5の表面の電圧が測定される。これによって、静電気センサ部12は、荷物5の表面の帯電量を測定する。静電気センサ部12による測定結果は、制御装置7aへ送信される。後記するように、制御装置7aは静電気センサ部12による測定結果を基に圧縮空気供給部110、剥離部120、回収部130、分析部150を制御する。また、制御装置7aは、除電部11のON・OFFを制御する。制御装置7aが行う処理については後記する。
【0037】
静電気センサ部12によって荷物5の表面の電圧が測定された荷物5は、除電部11の近くに搬送される。そして、除電部11によって、荷物5の表面の静電気を除去する除電が行われる。除電部11により表面が除電された荷物5は、荷物5の表面に付着した微粒子をサンプリングするため剥離回収部100に搬送される。除電部11の処理は第1実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。また、剥離回収部100の構成は、第1実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0038】
(静電気センサ部12の位置)
図9は、微粒子検査装置Daにおける静電気センサ部12の位置を具体的に示す図である。
図9は、
図8のB-B断面図を示している。
前記したように、スーツケースのような大きな荷物5を運ぶ場合、取っ手51付近は運搬や荷物5の出し入れ等の時に手で触る機会が多く、手を介して爆薬微粒子が転写される可能性が高い。このため、トレース検査部1aにおいて微粒子を回収する場所は取っ手51付近が好ましい。静電気センサ部12は、
図9に示すように、取っ手51の近くの天井付近に設置し、微粒子を回収する付近の表面の静電気の量(帯電量)を測定することが好ましい。なお、静電気センサ部12は、取っ手51付近となるよう設置されなくてもよい。
なお、除電部11の設置位置は第1実施形態と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0039】
前記したように、荷物5や取っ手51が静電気で帯電していると、付着している微粒子が剥離しにくくなる。帯電した表面から微粒子を剥離させるには、噴射ノズル121から噴射する圧縮空気の噴射圧力を高めるか、噴射ノズル121を荷物5や取っ手51に近づけて、より強い気流を当てるとよい。しかしながら、噴射ノズル121から強い噴射圧力で圧縮空気(強い風圧)を噴射すると、回収部130で吸引される気体の流量よりも、瞬間的に噴射される流量の方が多くなるから、吹き飛ばされた微粒子のうち回収部130で回収される割合は限られる。つまり、帯電量が小さいときに、大きな風圧で微粒子を剥離しても、かえって回収率が低下する。同様に、帯電率が大きいときに小さい風圧で微粒子を剥離しても、回収率が低下する。
【0040】
従って、闇雲に圧縮空気の圧力を上げたり、噴射ノズル121と荷物5や取っ手51との距離を短くしたりしても、微粒子を高感度に検出することは難しい。そこで、静電気センサ部12により荷物5や取っ手51の表面の静電気の量を測定する。また、あらかじめ静電気の量と、最適な圧縮空気の噴射圧力や、噴射ノズル121と荷物5や取っ手51との間の距離、適切な回収部130による吸気量等を測定しておく。このように、静電気センサ部12により表面の静電気の量を測定し、その静電気の量に応じて圧縮空気の噴射圧力や、噴射ノズル121と荷物5との距離、回収部130による吸気量等を最適に制御することにより、荷物5の表面が帯電していた場合でも微粒子の回収効率を向上させることができる。
【0041】
(制御装置7a)
図10は、制御装置7aの構成を示す機能ブロック図である。
図10において、
図4と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
記憶装置703に格納されているプログラムがメモリ701に展開され、CPU702によって実行される。これにより、処理部710a、及び、処理部710aを構成するノズル制御部711、判定部712、除電制御部713、剥離回収制御部714が具現化する。
【0042】
ノズル制御部711は
図4と同様であるので、ここでの説明を省略する。
判定部712は、種々の判定を行う。
除電制御部713は、除電部のON・OFFを制御する。
剥離回収制御部714は、剥離対象箇所(本実施形態では、取っ手51)に吹き付けられる圧縮空気の風圧を制御する。剥離回収制御部714は、圧縮空気の噴射圧力を上げたり、噴射ノズル121と荷物5や取っ手51との距離を短くしたりすることで剥離対象箇所(本実施形態では、取っ手51)における圧縮空気の風圧が大きくなるよう制御する。風圧を小さく制御する場合では、この逆の制御が行われる。また、剥離回収制御部714は、サイクロン濃縮部141に設けられている排気ファン142(
図6参照)の排気量や、質量分析計154(
図6参照)による吸気量を制御することで、回収部130による吸気量を制御する。一般的に、剥離回収制御部714は、剥離対象箇所での風圧が大きくなればなるほど(大きくなれば)、回収部130の吸気量が大きくなるよう制御する。逆に、剥離回収制御部714は、剥離対象箇所での風圧が小さくなればなるほど(小さくなれば)、回収部130の吸気量が小さくなるよう制御する。
【0043】
(フローチャート)
図11は、第2実施形態における微粒子検査装置Dが行う処理の手順を示すフローチャートである。
図10を適宜参照する。
まず、静電気センサ部12によって、荷物5の表面の帯電量Qが測定される(S201)。
次に、制御装置7aの判定部712は、ステップS201によって測定された帯電量Qが所定の値Q1より大きいか否かを判定する(Q>Q1;S202)。所定の値Q1は、これより帯電量Qが大きいと、微粒子の剥離が困難となる値である。
帯電量Qが所定の値Q1より大きい場合(S202→Yes)、制御装置7aの除電制御部713が除電部11をONにする(S211)。つまり、帯電量の値に基づいて除電部11による除電を実行する。
そして、除電部11は、搬送部3によって搬送された荷物5の表面を除電する(S212)。前記したように、除電部11は電離気体G又は湿度により荷物5の表面の除電を行う。この際、荷物5は、除電部11において数秒間停止していることが望ましい。その後、処理部710aはステップS231へ処理を進める。
【0044】
帯電量Qが所定の値Q1以下である場合(S202→Yes)、制御装置7aの剥離回収制御部714は、測定された帯電量Qに応じて剥離対象箇所(本実施形態では取っ手51)における圧縮空気の風圧が最適となるよう圧縮空気供給部110や、剥離部120、回収部130を制御する(剥離回収制御:S221)。ステップS221において、剥離回収制御部714は帯電量Qが大きければ大きいほど、剥離対象箇所における圧縮空気の風圧が強くなるよう制御する。また、剥離回収制御部714は帯電量Qが小さければ小さいほど、剥離対象箇所における圧縮空気の風圧が弱くなるよう制御する。加えて、剥離回収制御部714は帯電量Qが大きければ大きいほど、回収部130による吸気量が大きくなるよう制御する。また、剥離回収制御部714は帯電量Qが小さければ小さいほど、剥離対象箇所における回収部130による吸気量が小さくなるよう制御する。
【0045】
具体的には、あらかじめ測定しておいた静電気の量と、風圧及び吸気量とに基づいて、剥離対象箇所における最適な風圧や、回収部130による最適な吸気量等を制御する。剥離対象箇所における風圧は、圧縮空気の噴射圧力や、噴射ノズル121と荷物5や取っ手51との間の距離等を基に制御される。また、回収部130による吸気量の制御は、前記したように、サイクロン濃縮部141に設けられている排気ファン142(
図6参照)の排気量や、質量分析計154(
図6参照)による吸気量を制御することで行われる。
【0046】
ステップS221の処理が完了すると、ノズル制御部711の制御によって剥離部120(噴射ノズル121)から圧縮空気が噴射される(S231)。また、噴射された圧縮空気による微粒子の剥離とともに、回収部130(吸気口131)から微粒子が回収される(S232)。
回収された微粒子は、濃縮部140(サイクロン濃縮部141)によって濃縮された後、フィルタ141において気化される(S233)。
気化された微粒子は質量分析計154において分析される(S234)。
【0047】
第2実施形態では、除電部11に加え、静電気センサ部12を有し、静電気センサ部12によって被検査物(荷物5)の表面の帯電量Qが所定の値Q1より大きい場合、除電部11による除電が実行される。これにより、帯電量Qが所定の値Q1より小さい、すなわち、除電しなくても微粒子の剥離が可能であれば、除電の処理を行わない。これによりスループットの向上が可能となる。
【0048】
また、第2実施形態では、静電気センサ部12によって測定された帯電量Qが大きければ大きいほど、剥離対象箇所(本実施形態では取っ手51)における圧縮空気の風圧が大きくなるよう調整される。また、帯電量Qが小さければ小さいほど、剥離対象箇所(本実施形態では取っ手51)における圧縮空気の風圧が小さくなるよう調整される。加えて、帯電量Qが大きければ大きいほど、回収部130による吸気量が大きくなるよう制御される。また、帯電量Qが小さければ小さいほど、剥離対象箇所における回収部130による吸気量が小さくなるよう制御される。これにより、帯電量Qに応じた適切な風圧が実現し、微粒子の回収効率を向上させることができる。
【0049】
[第3実施形態]
図12を参照して、本発明の第3実施形態を示す。第3実施形態は第1実施形態及び第2実施形態における剥離部120と、除電部11とが一体となっているものである。
(剥離部120bの構成)
図12は、第3実施形態に係る剥離部120bの構成を示す図である。
図12において、
図6と同様の構成については同一の符号を付して、説明を省略する。
図12に示すように、剥離部120bでは、噴射ノズル121と荷物5との間に、あるいは、噴射ノズル121の近傍に、電離気体Gを生成するための放電電極122が設けられている。放電電極122は、除電部11の機能を有するものである。放電電極122は放電電極支持部123により噴射ノズル121と位置関係が変わらないように固定されている。放電電極122には配線W1を介して電源125から高電圧が印加されている。放電電極122は、第1実施形態及び第2実施形態における除電部11である。このように、
図12に示す例では、剥離部120bは、除電部11を含む構成となっている。
【0050】
圧縮空気を供給する配管P1には途中にバルブ124が設けられており、このバルブ124は配線W2を介して制御装置7bに接続されている。荷物5の取っ手51付近が噴射ノズル121の近傍に搬送されてきた際、制御装置7bの剥離回収制御部714(
図10参照)から送信される信号によりバルブ124の一部が開放される。このとき、噴射ノズル121からは弱い気流F2が噴出されるよう、バルブ124の開度が調整される。ここで、弱い気流F2と、
図6に示す気流F1との関係は、F2<F1である。
【0051】
放電電極122の近傍に生成された電離気体Gは、噴射ノズル121から送られてくる弱い気流F2により取っ手51付近に吹き付けられる。このように弱い気流F2により取っ手51の付近に電離気体Gが吹き付けられることにより、電離気体Gが取っ手51の付近に留まり、取っ手51の付近の表面の除電が行われる。つまり、弱い気流F2は気流が取っ手51の付近に留まる程度の強さである。数秒間除電が行われた後に、制御装置7bからの信号により、噴射ノズル121から高い噴射圧力で圧縮空気噴出されるよう、バルブ124が開放される。これにより噴射ノズル121から高い噴射圧力で圧縮空気が噴射され、取っ手51付近に付着していた微粒子が気流F1(
図6参照)により剥離される。剥離された微粒子は回収部130から回収され、分析部150によって、その成分が分析される。なお、弱い気流F2は常時噴射されていてもよいし、荷物5が搬送されたときのみ噴射されてもよい。
【0052】
このように、第3実施形態では、剥離部120bに除電部11を設けている。すなわち、剥離部120bと、除電部11とが一体の構成となっている。このように、剥離部120bと、除電部11とが一体の構成となることで、微粒子検査装置Dの全体がコンパクトになる。なお、電離気体Gの生成には、放電電極122による放電に限らず、X線、放射線等によって電離気体Gが生成されてもよい。
【0053】
[第4実施形態]
次に、
図13~
図14を参照して、本発明の第4実施形態を示す。第4実施形態は、第1実施形態における除電部11の代わりに静電気センサ部12が設けられているものである。
(トレース検査部1c)
図13は、第4実施形態におけるトレース検査部1cの構成を示す図である。
図13において、
図8と同様の構成については同一の符号を付して、説明を省略する。
図13に示すトレース検査部1cは、
図8のトレース検査部1aの除電部11が省略されている子構成となっている。その他の構成は
図8と同様である。
【0054】
また、静電気センサ部12は、
図9に示すように取っ手51近傍となるよう設置されるのが好ましいが、取っ手51近傍に設置されなくてもよい。
【0055】
なお、第4実施形態において、トレース検査部1cの具体的な構成は
図12と同様であるため図示及び説明を省略する。
【0056】
第2実施形態で前記したように闇雲に圧縮空気の噴射圧力を上げたり、噴射ノズル121と荷物5や取っ手51との距離を短くしたりしても、微粒子を高感度に検出することは難しい。
【0057】
そこで、静電気センサ部12により荷物5や取っ手51の表面の静電気の量(帯電量)が測定される。また、第2実施形態と同様、あらかじめ荷物5や取っ手51の表面の静電気の量(帯電量)と、最適な圧縮空気の噴射圧力や、噴射ノズル121と荷物5や取っ手51との間の距離、適切な回収部130の吸気量等が測定されている。そして、制御装置7aは、静電気センサ部12により測定された荷物5や取っ手51の表面の静電気の量(帯電量)を測定し、その帯電量に応じて圧縮空気の噴射圧力や噴射ノズル121と荷物5との距離、回収部130の吸気量等を最適に制御する。これにより、荷物5の表面が帯電していた場合でも高感度で微粒子を検出することができる。ちなみに、制御装置7aの構成は
図10に示す構成と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0058】
(フローチャート)
図14は、微粒子検査装置Dが行う処理の手順を示すフローチャートである。
前記したように、制御装置7aの構成は
図10に示す構成と同様であるので、図示及び説明を省略し、
図14において適宜
図10を参照する。
まず、静電気センサ部12によって、荷物5(取っ手51)の表面の帯電量Qが測定される(S301)。
次に、制御装置7aの剥離回収制御部714は、測定された帯電量Qに応じて剥離対象箇所(本実施形態では取っ手51)における圧縮空気の風圧が最適となるよう圧縮空気供給部110や、剥離部120、回収部130を制御する(剥離回収制御:S311)。ステップS311において、剥離回収制御部714は、
図11のステップS221と同様の処理を行う。
剥離部120(噴射ノズル121)から圧縮空気が噴射される(S312)ことによる微粒子の剥離が行われるとともに、回収部130(吸気口131)から微粒子が回収される(S313)。
回収された微粒子は、濃縮部140(サイクロン濃縮部141)によって濃縮された後、フィルタ141において気化される(S314)。
気化された微粒子は質量分析計154において分析される(S315)。
【0059】
第4実施形態では、静電気センサ部12によって測定された帯電量Qが大きければ大きいほど、剥離箇所圧力が大きくなるよう風圧が調整され、帯電量Qが小さければ小さいほど、剥離箇所圧力が小さくなるよう風圧が調整される。加えて、帯電量Qが大きければ大きいほど、回収部130による吸気量が大きくなるよう制御される。また、帯電量Qが小さければ小さいほど、剥離対象箇所における回収部130による吸気量が小さくなるよう制御される。これにより、帯電量Qに応じた適切な剥離箇所圧力が実現し、被検査物(荷物5)に付着している微粒子の回収効率を向上させることができる。
【0060】
なお、本発明は前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を有するものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0061】
また、噴射ノズル121はロボットアーム(不図示)に保持されることも可能である。このような構成とすることで、噴射ノズル121の位置を所望の位置に変えたり、荷物5の表面をなめるように気流を噴射したりすることが可能となる。また、噴射ノズル121の首が上下左右に振れるよう構成することも可能である。なお、噴射ノズル121がロボットアームに保持されたり、噴射ノズル121の首が上下左右に振れるよう構成されたりする場合、噴射ノズル121の動きに対応して、回収部130の向きや、位置が変えられる。
【0062】
また、前記した各構成、機能、処理部710,710a、記憶装置703等は、それらの一部又はすべてを、例えば集積回路で設計すること等によりハードウェアで実現してもよい。また、
図4及び
図10で示すように、前記した各構成、機能等は、CPU702等のプロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、HDに格納すること以外に、メモリや、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、IC(Integrated Circuit)カードや、SD(Secure Digital)カード、DVD(Digital Versatile Disc)等の記録媒体に格納することができる。
また、各実施形態において、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんどすべての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0063】
2 バルク検査部
5 荷物(非検査物)
51 取っ手(剥離対象箇所)
7,7a,7b 制御装置(制御部)
11 除電部
12 静電気センサ部(帯電量測定部)
120 剥離部
121 噴射ノズル
122 放電電極(電離気体生成部)
130 回収部
150 分析部
D 微粒子検査装置(微粒子回収システム)
F1 気流(第1の気流)
F2 弱い気流(第2の気流)
P 微粒子
Q1 所定の値
S101,S212 除電(除電ステップ)
S102,S231 圧縮空気噴射(噴射ステップ)
S103,S232 回収(回収ステップ)
S105,S234 分析(分析ステップ)
S201,S301 帯電量Q測定(帯電量測定ステップ)
S221,S311 剥離回収制御(剥離回収制御ステップ)