(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】液晶材料、液晶フィルム、センサー及び光学素子
(51)【国際特許分類】
C09K 19/38 20060101AFI20231020BHJP
C08B 11/193 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
C09K19/38
C08B11/193
(21)【出願番号】P 2019177851
(22)【出願日】2019-09-27
【審査請求日】2022-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(73)【特許権者】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】大石 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】古海 誓一
(72)【発明者】
【氏名】早田 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 聖奈
(72)【発明者】
【氏名】下川 響
【審査官】牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-253970(JP,A)
【文献】国際公開第02/093213(WO,A1)
【文献】特開2015-48365(JP,A)
【文献】特開2018-48289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K19/
G02B1/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1):
【化1】
[一般式(1)中、X
11、X
12及びX
13は、それぞれ独立に、単結合、アルキレン基、-(R
14-O)
h-、又は-C(=O)-R
15-を表し、R
11、R
12及びR
13は、それぞれ独立に、水素原子、不飽和二重結合を有する基、
炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~20のアシル基、炭素数6~24のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基、-COOR
1A
(ここで、R
1A
は、炭素数1~12の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、又は炭素数6~18のアリール基を表す。)で表される基、又はハロゲン原子を表し、R
14及びR
15は、それぞれ独立に、アルキレン基を表し、hは、1以上10以下の整数を表し、n11は、2以上800以下の整数を表す。但し、R
11、R
12及びR
13の少なくとも1つは、下記一般式(3):
【化2】
(一般式(3)中、R
3aは、炭素数7~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R
3bは、炭素数3~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R
3cは、水素原子又はメチル基を表し、**は、上記一般式(1)中、X
11、X
12若しくはX
13と結合する部分、又はセルロース骨格の2位、3位若しくは6位にある酸素原子と結合する部分を表す。)で表される不飽和二重結合を有する基を表す。]で表される分子構造を有するセルロース誘導体を含むことを特徴とする、液晶材料。
【請求項2】
上記一般式(1)で表される分子構造が、下記一般式(1-1):
【化3】
[一般式(1-1)中、R
1は、-CH
2-CH
2-、又は-CH
2-CH(CH
3)-を表し、R
11、R
12及びR
13は、それぞれ独立に、水素原子、不飽和二重結合を有する基、
炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~20のアシル基、炭素数6~24のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基、-COOR
1A
(ここで、R
1A
は、炭素数1~12の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、又は炭素数6~18のアリール基を表す。)で表される基、又はハロゲン原子を表し、m1、t1及びr1は、それぞれ独立に、0以上10以下の整数を表し、n11は、2以上800以下の整数を表す。但し、R
11、R
12及びR
13の少なくとも1つは、下記一般式(3):
【化4】
(一般式(3)中、R
3aは、炭素数7~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R
3bは、炭素数3~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R
3cは、水素原子又はメチル基を表し、**は、上記一般式(1-1)中、-(R
1-O)
m1-、-(R
1-O)
t1-若しくは-(R
1-O)
r1-と結合する部分、又はセルロース骨格の2位、3位若しくは6位にある酸素原子と結合する部分を表す。)で表される不飽和二重結合を有する基を表す。]で表される分子構造である、請求項1に記載の液晶材料。
【請求項3】
25℃において、引張速度10mm/minで、引張試験により測定した、重合後の破断時の伸びが、50%以上である、請求項1又は2に記載の液晶材料。
【請求項4】
更に、置換若しくは未置換のアルキル(メタ)アクリレート化合物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の液晶材料。
【請求項5】
前記置換若しくは未置換のアルキル(メタ)アクリレート化合物が、置換若しくは未置換のブチル(メタ)アクリレートである、請求項4に記載の液晶材料。
【請求項6】
前記置換若しくは未置換のブチル(メタ)アクリレートが、4-ヒドロキシブチルアクリレートである、請求項5に記載の液晶材料。
【請求項7】
三次元構造を有し、
下記一般式(2):
【化5】
[一般式(2)中、X
21、X
22及びX
23は、それぞれ独立に、単結合、アルキレン基、-(R
24-O)
j-、又は-C(=O)-R
25-を表し、R
21、R
22及びR
23は、それぞれ独立に、水素原子、モノマー単位同士を連結する基を有する基、
炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~20のアシル基、炭素数6~24のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基、-COOR
1A
(ここで、R
1A
は、炭素数1~12の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、又は炭素数6~18のアリール基を表す。)で表される基、又はハロゲン原子を表し、R
24及びR
25は、それぞれ独立に、アルキレン基を表し、jは、1以上10以下の整数を表し、n21は、2以上800以下の整数を表す。但し、R
21、R
22及びR
23の少なくとも1つは、下記一般式(4):
【化6】
(一般式(4)中、R
4aは、炭素数7~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R
4bは、炭素数3~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R
4cは、水素原子又はメチル基を表し、*は、モノマー単位同士が連結されたときの結合位置を表し、**は、上記一般式(2)中、X
21、X
22若しくはX
23と結合する部分、又はセルロース骨格の2位、3位若しくは6位にある酸素原子と結合する部分を表す。)で表されるモノマー単位同士を連結する基を有する基を表す。]で表される分子構造を有するセルロース誘導体を含むことを特徴とする、液晶フィルム。
【請求項8】
上記一般式(2)で表される分子構造が、下記一般式(2-1):
【化7】
[一般式(2-1)中、R
2は、-CH
2-CH
2-、又は-CH
2-CH(CH
3)-を表し、R
21、R
22及びR
23は、それぞれ独立に、水素原子、モノマー単位同士を連結する基を有する基、
炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~20のアシル基、炭素数6~24のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基、-COOR
1A
(ここで、R
1A
は、炭素数1~12の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、又は炭素数6~18のアリール基を表す。)で表される基、又はハロゲン原子を表し、m2、t2及びr2は、それぞれ独立に、0以上10以下の整数を表し、n21は、2以上800以下の整数を表す。但し、R
21、R
22及びR
23の少なくとも1つは、下記一般式(4):
【化8】
(一般式(4)中、R
4aは、炭素数7~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R
4bは、炭素数3~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R
4cは、水素原子又はメチル基を表し、*は、モノマー単位同士が連結されたときの結合位置を表し、**は、上記一般式(2-1)中、-(R
2-O)
m2-、-(R
2-O)
t2-若しくは-(R
2-O)
r2-と結合する部分、又はセルロース骨格の2位、3位若しくは6位にある酸素原子と結合する部分を表す。)で表されるモノマー単位同士を連結する基を有する基を表す。]で表される分子構造である、請求項7に記載の液晶フィルム。
【請求項9】
請求項7又は8に記載の液晶フィルムを具えることを特徴とする、センサー。
【請求項10】
請求項7又は8に記載の液晶フィルムを具えることを特徴とする、光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶材料、液晶フィルム、センサー及び光学素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶材料は、液晶ディスプレイの表示材料のみならず、近年ではその光学特性を利用して、フォトニックデバイスへの適応が進められている。かかる液晶材料の1つとして、セルロース誘導体が知られている。
例えば、下記特許文献1には、ヒドロキシプロピルセルロースが有する水酸基の水素原子をアクリロイル基、ブチリル基等で置換して合成したヒドロキシプロピルセルロース誘導体を含む液晶材料が開示されており、該液晶材料は、サーモトロピックコレステリック液晶性を示し、また、弾性を有し、該液晶材料を用いることで、ブラッグ反射の波長で配向が固定化された液晶フィルムを製造できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記液晶材料を用いることで、該液晶材料に由来する光学特性を、様々な物品に付与することができるが、各物品には、その用途に応じて、様々な力学特性が求められる。
これに対して、本発明者らが検討したところ、上記特許文献1に記載の液晶材料は、優れた光学特性を有するものの、力学特性に改善の余地があり、特には、延伸特性に改善の余地があることが分かった。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決し、優れた延伸特性を有する液晶材料を提供することを課題とする。
また、本発明は、優れた延伸特性を有する液晶フィルム、センサー及び光学素子を提供することを更なる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の要旨構成は、以下の通りである。
【0007】
本発明の液晶材料は、下記一般式(1):
【化1】
[一般式(1)中、X
11、X
12及びX
13は、それぞれ独立に、単結合、アルキレン基、-(R
14-O)
h-、又は-C(=O)-R
15-を表し、R
11、R
12及びR
13は、それぞれ独立に、水素原子、不飽和二重結合を有する基、又は疎水性基を表し、R
14及びR
15は、それぞれ独立に、アルキレン基を表し、hは、1以上10以下の整数を表し、n11は、2以上800以下の整数を表す。但し、R
11、R
12及びR
13の少なくとも1つは、下記一般式(3):
【化2】
(一般式(3)中、R
3aは、炭素数7~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R
3bは、炭素数3~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R
3cは、水素原子又はメチル基を表し、**は、上記一般式(1)中、X
11、X
12若しくはX
13と結合する部分、又はセルロース骨格の2位、3位若しくは6位にある酸素原子と結合する部分を表す。)で表される不飽和二重結合を有する基を表す。]で表される分子構造を有するセルロース誘導体を含むことを特徴とする。
かかる本発明の液晶材料は、優れた延伸特性を有する。
【0008】
本発明の液晶材料の好適例においては、上記一般式(1)で表される分子構造が、下記一般式(1-1):
【化3】
[一般式(1-1)中、R
1は、-CH
2-CH
2-、又は-CH
2-CH(CH
3)-を表し、R
11、R
12及びR
13は、それぞれ独立に、水素原子、不飽和二重結合を有する基、又は疎水性基を表し、m1、t1及びr1は、それぞれ独立に、0以上10以下の整数を表し、n11は、2以上800以下の整数を表す。但し、R
11、R
12及びR
13の少なくとも1つは、下記一般式(3):
【化4】
(一般式(3)中、R
3aは、炭素数7~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R
3bは、炭素数3~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R
3cは、水素原子又はメチル基を表し、**は、上記一般式(1-1)中、-(R
1-O)
m1-、-(R
1-O)
t1-若しくは-(R
1-O)
r1-と結合する部分、又はセルロース骨格の2位、3位若しくは6位にある酸素原子と結合する部分を表す。)で表される不飽和二重結合を有する基を表す。]で表される分子構造である。この場合、液晶材料の延伸特性が更に向上する。
【0009】
本発明の液晶材料は、破断時の伸びが、50%以上であることが好ましい。かかる液晶材料は、高い延伸特性を要求される用途に利用できる。
【0010】
本発明の液晶材料は、更に、置換若しくは未置換のアルキル(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。この場合、液晶材料の引張強さが向上する。
【0011】
ここで、前記置換若しくは未置換のアルキル(メタ)アクリレート化合物が、置換若しくは未置換のブチル(メタ)アクリレートであることが好ましい。この場合、液晶材料の破断歪みが更に向上する。
【0012】
また、前記置換若しくは未置換のブチル(メタ)アクリレートが、4-ヒドロキシブチルアクリレートであることが好ましい。この場合、液晶材料の復元力がより一層向上する。
【0013】
また、本発明の液晶フィルムは、
三次元構造を有し、
下記一般式(2):
【化5】
[一般式(2)中、X
21、X
22及びX
23は、それぞれ独立に、単結合、アルキレン基、-(R
24-O)
j-、又は-C(=O)-R
25-を表し、R
21、R
22及びR
23は、それぞれ独立に、水素原子、モノマー単位同士を連結する基を有する基、又は疎水性基を表し、R
24及びR
25は、それぞれ独立に、アルキレン基を表し、jは、1以上10以下の整数を表し、n21は、2以上800以下の整数を表す。但し、R
21、R
22及びR
23の少なくとも1つは、下記一般式(4):
【化6】
(一般式(4)中、R
4aは、炭素数7~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R
4bは、炭素数3~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R
4cは、水素原子又はメチル基を表し、*は、モノマー単位同士が連結されたときの結合位置を表し、**は、上記一般式(2)中、X
21、X
22若しくはX
23と結合する部分、又はセルロース骨格の2位、3位若しくは6位にある酸素原子と結合する部分を表す。)で表されるモノマー単位同士を連結する基を有する基を表す。]で表される分子構造を有するセルロース誘導体を含むことを特徴とする。
かかる本発明の液晶フィルムは、優れた延伸特性を有する。
【0014】
本発明の液晶フィルムの好適例においては、上記一般式(2)で表される分子構造が、下記一般式(2-1):
【化7】
[一般式(2-1)中、R
2は、-CH
2-CH
2-、又は-CH
2-CH(CH
3)-を表し、R
21、R
22及びR
23は、それぞれ独立に、水素原子、モノマー単位同士を連結する基を有する基、又は疎水性基を表し、m2、t2及びr2は、それぞれ独立に、0以上10以下の整数を表し、n21は、2以上800以下の整数を表す。但し、R
21、R
22及びR
23の少なくとも1つは、下記一般式(4):
【化8】
(一般式(4)中、R
4aは、炭素数7~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R
4bは、炭素数3~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R
4cは、水素原子又はメチル基を表し、*は、モノマー単位同士が連結されたときの結合位置を表し、**は、上記一般式(2-1)中、-(R
2-O)
m2-、-(R
2-O)
t2-若しくは-(R
2-O)
r2-と結合する部分、又はセルロース骨格の2位、3位若しくは6位にある酸素原子と結合する部分を表す。)で表されるモノマー単位同士を連結する基を有する基を表す。]で表される分子構造である。この場合、液晶フィルムの延伸特性が更に向上する。
【0015】
また、本発明のセンサーは、上記の液晶フィルムを具えることを特徴とする。かかる本発明のセンサーは、優れた延伸特性を有する。
【0016】
また、本発明の光学素子は、上記の液晶フィルムを具えることを特徴とする。かかる本発明の光学素子は、優れた延伸特性を有する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、優れた延伸特性を有する液晶材料を提供することができる。
また、本発明によれば、優れた延伸特性を有する液晶フィルム、センサー及び光学素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、実施例1及び比較例1の液晶フィルムの延伸過程における応力-歪み曲線を示す。
【
図2】
図2は、実施例1及び実施例2の液晶フィルムの延伸過程における応力-歪み曲線を示す。
【
図3】
図3は、実施例2及び比較例2の液晶フィルムの延伸過程における応力-歪み曲線を示す。
【
図4】
図4(a)は、実施例2の液晶フィルムの圧縮-解放過程における透過スペクトルの変化を示し、
図4(b)は、実施例2の液晶フィルムの圧縮-解放時の液晶フィルムの様子を示す。
【
図5】
図5(a)は、実施例2の液晶フィルムの延伸-解放過程における反射スペクトルの変化を示し、
図5(b)は、実施例2の液晶フィルムの延伸-解放時の液晶フィルムの様子を示す。
【
図6】
図6(a)は、実施例2の液晶フィルムの各サイクル(1、2、100、1000サイクル目)の応力-歪み曲線を示し、
図6(b)は、実施例2の液晶フィルムの各サイクル(1、2、3、100サイクル目)における延伸時と解放時における反射スペクトルのピーク波長を示し、
図6(c)は、実施例2の液晶フィルムの各サイクルにおける様子を示す。
【
図7】
図7は、実施例3及び実施例4の液晶フィルムの延伸過程における応力-歪み曲線を示す。
【
図8】
図8(a)は、実施例4の液晶フィルムの、延伸時における反射波長の変化を示し、
図8(b)は、実施例4の液晶フィルムを500円硬貨、100円硬貨、1円硬貨のそれぞれに押し付けた際の、反射波長の変化を示す。
【
図9】
図9は、実施例5及び実施例6の液晶フィルムの延伸過程における応力-歪み曲線を示す。
【
図10】
図10は、実施例7~9の液晶フィルムの延伸過程における応力-歪み曲線を示す。
【
図11】
図11(a)に、右円偏光(R-CPL)の白色光を入射した際の延伸-解放過程における透過スペクトル変化を示し、
図11(b)に、左円偏光(L-CPL)の白色光を入射した際の延伸-解放過程における透過スペクトル変化を示す。
【
図12】
図12は、実施例10~12の液晶フィルムの延伸過程における応力-歪み曲線を示す。
【
図13】
図13は、実施例13で使用した二軸延伸の測定装置を示す。
【
図14】
図14(a)は、二軸延伸過程における透過スペクトル変化を示し、
図14(b)は、二軸延伸状態から一軸延伸状態に変化させた時の透過スペクトル変化を示す。
【
図15】
図15は、二軸延伸過程における透過スペクトル変化を示し、
図15(a)は、右円偏光(R-CPL)の白色光を入射した際の透過スペクトル変化を示し、
図15(b)は、左円偏光(L-CPL)の白色光を入射した際の透過スペクトル変化を示す。
【
図16】
図16は、実施例13の液晶フィルムの二軸延伸過程における変色の様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の液晶材料、液晶フィルム、センサー及び光学素子を、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
【0020】
<液晶材料>
本実施形態の液晶材料は、下記一般式(1):
【化9】
[一般式(1)中、X
11、X
12及びX
13は、それぞれ独立に、単結合、アルキレン基、-(R
14-O)
h-、又は-C(=O)-R
15-を表し、R
11、R
12及びR
13は、それぞれ独立に、水素原子、不飽和二重結合を有する基、又は疎水性基を表し、R
14及びR
15は、それぞれ独立に、アルキレン基を表し、hは、1以上10以下の整数を表し、n11は、2以上800以下の整数を表す。但し、R
11、R
12及びR
13の少なくとも1つは、下記一般式(3):
【化10】
(一般式(3)中、R
3aは、炭素数7~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R
3bは、炭素数3~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R
3cは、水素原子又はメチル基を表し、**は、上記一般式(1A)中、X
11、X
12若しくはX
13と結合する部分、又はセルロース骨格の2位、3位若しくは6位にある酸素原子と結合する部分を表す。)で表される不飽和二重結合を有する基を表す。]で表される分子構造を有するセルロース誘導体を含むことを特徴とする。
【0021】
本実施形態の液晶材料は、側鎖に、一般式(3)で表され、R3aが炭素数7~20の長鎖アルキレン基である、不飽和二重結合を有する基を有するセルロース誘導体を含むため、ゴム弾性を示し、優れた延伸特性を有する。
また、本実施形態の液晶材料は、側鎖に、一般式(3)で表される不飽和二重結合を有する基を有するセルロース誘導体を含むため、機械的圧力に対する反射光の波長シフトが大きい。
【0022】
一般式(1)中、X11、X12及びX13で表されるアルキレン基は、特に制限はない。アルキレン基としては、直鎖又は分岐の炭素数1~18(好ましくは1~12)のアルキレン基、環状の炭素数3~18(好ましくは3~12)のシクロアルキレン基が挙げられる。直鎖又は分岐のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、n-ペンチレン基、イソペンチレン基等が挙げられる。また、環状のアルキレン基としては、例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられる。
【0023】
一般式(1)中、-(R14-O)h-で表される基におけるアルキレン基(-R14-)としては、上記X11、X12及びX13と同様のアルキレン基が挙げられる。
-(R14-O)h-としては、例えば、エチレンオキシ基、ポリエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基、ポリプロピレンオキシ基等が挙げられる。
-(R14-O)h-は、より具体的には、-[(CH2)n-O]h-で表すことができる。ここで、nは、1以上5以下の整数である。
hは、1以上10以下の整数を表し、架橋によって適度なゴム弾性を有する液晶フィルムを得る観点から、好ましくは1以上6以下、より好ましくは1以上4以下、より一層好ましくは1以上3以下である。
【0024】
一般式(1)中、-C(=O)-R15-で表される基におけるアルキレン基(-R15-)としては、上記X11、X12及びX13と同様のアルキレン基が挙げられる。
-C(=O)-R15-としては、例えば、-C(=O)-CH2-、-C(=O)-C2H4-、-C(=O)-C3H6-等が挙げられる。
【0025】
なお、上述のアルキレン基、-(R14-O)h-、及び-C(=O)-R15-は、置換基を有していてもよい。
置換基としては、例えば、直鎖又は分岐の炭素数1~6のアルキル基、炭素数3~6のシクロアルキル基、炭素数6~12のアリール基、ハロゲン原子が挙げられる。置換基が2以上ある場合には、それぞれの置換基は、同一でも異なってもよい。
【0026】
一般式(1)中、R11、R12及びR13で表される不飽和二重結合を有する基としては、例えば、後述する一般式(3)で表される基、ビニル基、アリル基、ビニルオキシ基、イソプロペニル基、1-プロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、2-ペンテニル基、ゲラニル基、オレイル基、シクロアルケニル基(例えば、2-シクロペンテン-1-イル基、2-シクロヘキセン-1-イル基)、ビニルベンジル基、シンナミル基等が挙げられる。
【0027】
一般式(1)中、R11、R12及びR13で表される疎水性基としては、特に制限されず、例えば、炭素数1~18のアルキル基、炭素数2~20のアシル基、炭素数6~24のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基、カルボン酸エステル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0028】
炭素数1~18のアルキル基は、直鎖、分岐鎖又は環状のアルキル基であってもよく、無置換であっても、置換されていてもよい。置換基としては、上述のアルキレン基、-(R14-O)h-、及び-C(=O)-R15-における置換基と同様のものが挙げられる。
炭素数1~18の無置換のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基等が挙げられる。
炭素数3~18の無置換の環状のアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、メチルシクロペンチル基、メチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘプチル基等が挙げられる。
【0029】
炭素数2~20のアシル基は、直鎖又は分岐鎖のアシル基であってもよく、無置換であっても、置換されていてもよい。置換基としては、上述のアルキレン基、-(R14-O)h-、及び-C(=O)-R15-における置換基と同様のものが挙げられる。
また、前記アシル基は、炭素数2~4であることが好ましく、炭素数2~4のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基(プロパノイル基)、ブチリル基等が挙げられる。
【0030】
炭素数6~24のアリール基は、無置換であっても、置換されていてもよい。置換基としては、上述のアルキレン基、-(R14-O)h-、及び-C(=O)-R15-における置換基と同様のものが挙げられる。
炭素数6~24の無置換のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0031】
炭素数7~20のアラルキル基は、無置換であっても、置換されていてもよい。置換基としては、上述のアルキレン基、-(R14-O)h-、及び-C(=O)-R15-における置換基と同様のものが挙げられる。
炭素数7~20の無置換のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルエテニル基等が挙げられる。
【0032】
炭素数1~18のアルコキシ基は、直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基であってもよく、無置換であっても、置換されていてもよい。置換基としては、上述のアルキレン基、-(R14-O)h-、及び-C(=O)-R15-における置換基と同様のものが挙げられる。
炭素数1~18のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0033】
カルボン酸エステル基は、無置換であっても、置換されていてもよい。置換基としては、上述のアルキレン基、-(R14-O)h-、及び-C(=O)-R15-における置換基と同様のものが挙げられる。
カルボン酸エステル基としては、-COOR1Aで表されるカルボン酸エステル基が挙げられる。ここで、R1Aとしては、炭素数1~12の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数6~18のアリール基が挙げられる。
無置換のカルボン酸エステル基としては、直鎖若しくは分岐鎖の炭素数2~12のアルキルエステル基(メチルエステル基、エチルエステル基等)、炭素数4~12のシクロアルキルエステル基(シクロプロピルエステル基、シクロブチルエステル基等)、炭素数7~12のアリールエステル基(フェニルエステル基)等が挙げられる。
【0034】
ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0035】
液晶性を発現する観点から、疎水性基としては、炭素数1~18の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数3~18のシクロアルキル基、炭素数6~18のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基、炭素数2~20の直鎖若しくは分岐のアシル基、炭素数1~18の直鎖若しくは分岐のアルコキシ基、-COOR1A(ここで、R1Aは、炭素数1~12の直鎖若しくは分岐のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、又は炭素数6~18のアリール基を表す。)で表されるカルボン酸エステル基、又はハロゲン原子であることが好ましい。
また、セルロース誘導体の合成のし易さの観点からは、疎水性基としては、炭素数5~20の直鎖若しくは分岐のアシル基、及び炭素数2~4の直鎖若しくは分岐のアシル基(直鎖及び分岐鎖のいずれも可。以下同様。)の少なくとも一方が好ましい。
【0036】
一般式(1)中、n11は、2以上800以下の整数を表し、架橋によって適度なゴム弾性を有する液晶フィルムを得る観点から、好ましくは2以上400以下、より好ましくは2以上300以下である。
【0037】
上記一般式(1)で表される分子構造は、下記一般式(1-1):
【化11】
で表される分子構造であることが好ましい。本実施形態の液晶材料が一般式(1-1)で表される分子構造を有するセルロース誘導体を含む場合、延伸特性が更に向上する。
【0038】
一般式(1-1)中、R
1は、-CH
2-CH
2-、又は-CH
2-CH(CH
3)-を表し、R
11、R
12及びR
13は、それぞれ独立に、水素原子、不飽和二重結合を有する基、又は疎水性基を表し、m1、t1及びr1は、それぞれ独立に、0以上10以下の整数を表し、n11は、2以上800以下の整数を表す。但し、R
11、R
12及びR
13の少なくとも1つは、下記一般式(3):
【化12】
で表される不飽和二重結合を有する基を表す。
ここで、一般式(3)中、R
3aは、炭素数7~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R
3bは、炭素数3~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R
3cは、水素原子又はメチル基を表し、**は、上記一般式(1-1)中、-(R
1-O)
m1-、-(R
1-O)
t1-若しくは-(R
1-O)
r1-と結合する部分、又はセルロース骨格の2位、3位若しくは6位にある酸素原子と結合する部分を表す。
【0039】
一般式(1-1)中、R11、R12及びR13は、上記一般式(1)におけるR11、R12及びR13と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0040】
一般式(1-1)中、m1、t1及びr1は、それぞれ独立に、0以上10以下の整数を表し、m1、t1及びr1としては、セルロース誘導体の合成のし易さの観点から、それぞれ独立に、好ましくは0以上8以下、より好ましくは0以上5以下、より一層好ましくは0以上3以下である。
【0041】
一般式(1-1)中、n11は、上記一般式(1)におけるn11と同義であり、好ましい範囲も同様である。n11は、2以上800以下の整数を表し、架橋によって適度なゴム弾性を有する液晶フィルムを得る観点から、好ましくは2以上400以下、より好ましくは2以上300以下である。
【0042】
一般式(1-1)において、R
1が-CH
2-CH(CH
3)-で表される場合、分子構造は、下記一般式(1a):
【化13】
で表される。
【0043】
一般式(1a)中、R11、R12、R13、及びn11は、一般式(1)におけるR11、R12、R13、及びn11と同義である。また、一般式(1a)中、m11、t11、及びr11は、一般式(1-1)におけるm1、t1、及びr1と同義である。
【0044】
一般式(1-1)において、R
1が、-CH
2-CH
2-で表される場合、分子構造は、下記一般式(1b):
【化14】
で表される。
【0045】
一般式(1b)中、R11、R12、R13、及びn11は、一般式(1)におけるR11、R12、R13、及びn11と同義である。また、一般式(1b)中、m12、t12、r12は、一般式(1-1)におけるm1、t1、r1と同義である。
【0046】
前記セルロース誘導体の特に好ましい態様は、一般式(1a)で表される分子構造を有するセルロース誘導体、又は一般式(1b)で表される分子構造を有するセルロース誘導体である。
具体的には、一般式(1a)において、疎水性基(R11、R12、又はR13)が、炭素数2~4のアシル基又は炭素数5~20のアシル基であって、不飽和二重結合を有する基(R11、R12、又はR13)が、一般式(3)で表される基であって、m11、t11、及びr11が、それぞれ独立に、0以上3以下の整数であって、n11が、2以上300以下である態様;一般式(1b)において、疎水性基(R11、R12、又はR13)が、炭素数2~4のアシル基又は炭素数5~20のアシル基であって、不飽和二重結合を有する基(R11、R12、又はR13)が、一般式(3)で表される基であって、m12、t12、及びr12が、それぞれ独立に、0以上3以下の整数であって、n11が、2以上300以下である態様である。
【0047】
一般式(1)及び一般式(1-1)中、R
11、R
12及びR
13で表される不飽和二重結合を有する基としては、架橋によって優れたゴム弾性を有する液晶フィルムを得る観点から、R
11、R
12及びR
13の少なくとも1つは、下記一般式(3):
【化15】
で表される不飽和二重結合を有する基である。
【0048】
一般式(3)中、R3aは、炭素数7~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R3bは、炭素数3~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R3cは、水素原子又はメチル基を表し、**は、上記一般式(1)中のX11、X12若しくはX13と結合する部分、一般式(1-1)中の-(R1-O)m1-、-(R1-O)t1-若しくは-(R1-O)r1-と結合する部分、又はセルロース骨格の2位、3位若しくは6位にある酸素原子と結合する部分を表す。一般式(3)中のR3aが、炭素数7~20の長鎖アルキレン基であることで、セルロース誘導体のゴム弾性が向上し、該セルロース誘導体を含む液晶材料の延伸特性が向上する。
【0049】
R3aにおける、炭素数7~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基としては、ゴム弾性により優れる液晶フィルムが得られる観点から、炭素数7~20の直鎖のアルキレン基が好ましく、力学特性の観点から、炭素数10~18の直鎖のアルキレン基が更に好ましく、炭素数12の直鎖のアルキレン基が特に好ましい。炭素数7~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基としては、例えば、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、テトラデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、オクタデカメチレン基等が挙げられる。
なお、R3aが炭素数12の直鎖のアルキレン基であるセルロース誘導体を含む液晶材料においては、液晶性の元となる分子螺旋が反転する現象(掌性反転)が確認された。
【0050】
R3bにおける、炭素数3~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基としては、ゴム弾性により優れる液晶フィルムが得られる観点から、炭素数3~20の直鎖のアルキレン基が好ましく、炭素数5~15の直鎖のアルキレン基が更に好ましく、炭素数5~10の直鎖のアルキレン基がより一層好ましい。炭素数3~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基としては、例えば、n-プロピレン基、イソプロピレン基、n-ブチレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基、tert-ブチレン基、n-ペンチレン基、イソペンチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、テトラデカメチレン基、ヘキサデカメチレン基、オクタデカメチレン基等が挙げられる。
【0051】
一般式(1)及び一般式(1-1)において、液晶性及び優れたゴム弾性を有し、且つ、反射波長の波長シフトが大きくなる観点から、R11、R12及びR13は、疎水性基及び不飽和二重結合を有する基の両方を有することが好ましく、炭素数2~4の直鎖若しくは分岐のアシル基及び一般式(3)の不飽和二重結合を有する基の両方を有することが更に好ましい。
【0052】
前記セルロース誘導体は、不飽和二重結合を有する基のモノマー単位当たりの置換度(以下、「不飽和二重結合を有する基の置換度」とも称する)が0.01以上2.0以下であることが好ましい。
ここで、置換度とは、セルロースのモノマー単位(D-グルコピラノース(β-グルコース))が有する3つの水酸基のうち、少なくとも一部の水酸基又は水酸基の一部が、置換基により置換されている程度を示す指標であり、具体的には、上記置換基で置換された平均個数(≦3)を意味する。
前記「不飽和二重結合を有する基の置換度」とは、前記セルロース誘導体が一般式(1)で表される場合では、一般式(1)中、R11、R12及びR13の位置に導入された「不飽和二重結合を有する基」の平均個数とする。
同様に、疎水性基のモノマー単位当たりの置換度(以下、「疎水性基の置換度」とも称する。)とは、前記セルロース誘導体が一般式(1)で表される場合では、一般式(1)中、R11、R12及びR13の位置に導入された「疎水性基」の平均個数とする。
なお、本実施形態において、不飽和二重結合を有する基であり、且つ疎水性基にも該当する基の場合、かかる基は「不飽和二重結合を有する基」とみなす。
【0053】
前記セルロース誘導体は、サーモトロピックコレステリック液晶性の発現を向上することができ、架橋後におけるセルロース誘導体に優れたゴム弾性を付与する観点から、不飽和二重結合を有する基の置換度は、0.01以上2.0以下が好ましく、0.1以上1.5以下が更に好ましく、0.2以上1.0未満がより一層好ましい。
また、前記セルロース誘導体は、架橋によって適度なゴム弾性を有する液晶フィルムを得る観点から、不飽和二重結合を有する基の置換度と、疎水性基の置換度と、の比(不飽和二重結合を有する基の置換度/疎水性基の置換度)は、好ましくは3.0×10-3以上2.0以下、より好ましくは3.0×10-2以上1.0以下、より一層好ましくは7.0×10-2以上0.5以下である。
【0054】
前記セルロース誘導体は、架橋によって適度なゴム弾性を有する液晶フィルムを得る観点から、一般式(3)で表される不飽和二重結合を有する基の置換度は、0.01以上1.0以下が好ましく、0.01以上0.5以下が更に好ましく、0.01以上0.1以下がより一層好ましい。
また、前記セルロース誘導体は、架橋によって適度なゴム弾性を有する液晶フィルムを得る観点から、一般式(3)で表される不飽和二重結合を有する基の置換度と、疎水性基の置換度と、の比(一般式(3)の不飽和二重結合を有する基の置換度/疎水性基の置換度)は、好ましくは3.0×10-3以上0.5以下、より好ましくは5.0×10-3以上0.1以下、より一層好ましくは7.0×10-3以上0.05以下である。
【0055】
不飽和二重結合を有する基の置換度及び疎水性基の置換度は、1H-NMRにより、各置換基が有する特徴的なプロトンピークの積分値から算出される。
具体的には、後述する実施例に示すように、下記の測定条件で、重クロロホルムに溶解させた前記セルロース誘導体溶液の1H-NMRスペクトルを測定し、測定された1H-NMRスペクトルに基づき、不飽和二重結合を有する基に由来するプロトンピーク;疎水性基に由来するプロトンピーク;セルロース骨格由来のプロトンピーク(例えばβ-グルコースモノマー単位にあるプロトンピーク等);セルロース骨格がヒドロキシプロピルセルロース(HPC)の場合、HPC由来のプロトンピーク鎖中のヒドロキシプロピル基が有するメチン基のプロトンピーク;等の積分値に基づき算出される。
-測定条件-
装置:BRUKER製、ULTRASHIELD400PLUS(型番)
周波数:400MHz
【0056】
前記セルロース誘導体の重量平均分子量は、架橋によって優れたゴム弾性を有する液晶フィルムを得る観点から、好ましくは2万以上20万以下、より好ましくは5万以上20万以下、より一層好ましくは10万以上20万以下である。
前記セルロース誘導体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)(ポリスチレン標準)により算出することができ、以下の測定条件で得られる測定結果からポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出することができる。
-測定条件-
装置:東ソー社製、HLC-8220GPC(型番)
溶剤:テトラヒドロフラン
カラム:0021815 TSKgel SuperMultiporeHZ-N(粒子径3μm、内径4.6mm×長さ15cm、東ソー社製)
流速:0.15mL/分
試料濃度:2.0質量%
注入量:10μL
検出器:示差屈折検出器
温度:40℃
【0057】
前記セルロース誘導体の合成方法は、特に限定されず、任意の方法で合成することができる。以下、セルロース誘導体の合成方法の一例として、一般式(1)で表される分子構造を有するヒドロキシプロピルセルロース誘導体を合成する方法について説明する。
【0058】
出発物質としてヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を準備し、このHPCを溶媒に溶解してHPC溶液を調製する。
HPC溶液と、不飽和二重結合を有する基を持つ化合物(以下、「重合性化合物」とも称する。)及び疎水性基を有する化合物(以下、「疎水性化合物」とも称する。)の少なくとも1つを混合する。
次に、この混合溶液中で、HPCと、重合性化合物及び疎水性化合物を反応させ、HPCのモノマー単位にある3つの水酸基の水素原子を、不飽和二重結合を有する基又は疎水性基で置換する(HPCの側鎖(末端)に不飽和二重結合を有する基又は疎水性基を導入する)。なお、HPC溶液と、重合性化合物及び疎水性化合物の一方を混合して、HPCの側鎖に一方を導入した後、他方を混合してHPCの側鎖に他方を導入することが好ましい。これにより、一般式(1a)(一般式(1)の一例)で表される分子構造を有するHPC誘導体が得られる。
なお、上記合成において、例えば出発物質としてヒドロキシエチルセルロースを用いれば、一般式(1b)(一般式(1)の一例)で表される分子構造を有するセルロース誘導体が得られる。
【0059】
また、上記方法に準じる方法により、一般式(1)で表される分子構造を有するセルロース誘導体を、例えば以下の方法で得ることができる。
まず、セルロース骨格の2位、3位、6位に結合する酸素原子と水素原子との間に、公知の方法により、アルキレン基、-(R14-O)h-(R14;アルキレン基、h;1以上10以下の整数)、又は、-C(=O)-R15-(R15;アルキレン基)を有する連結基を導入したセルロース誘導体を準備し、これを出発物質とする。
次に、このセルロース誘導体(出発物質)の末端にある水素原子を、上記方法に準じる方法により不飽和二重結合を有する基又は疎水性基で置換する。これにより、一般式(1)で表される分子構造を有するセルロース誘導体が得られる。
【0060】
出発物質(例えばHPC)としては、合成したものを用いても、市販のものを用いてもよい。
溶媒としては、出発物質を溶解できるものであれば特に制限されない。溶媒としては、例えば、アセトン等のケトン類;メトキシプロパノール、エトキシエタノール、プロパノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン;等を挙げることができる
不飽和二重結合を有する基を持つ化合物(重合性化合物)としては、前述の不飽和二重結合を有する基を有し、その不飽和二重結合を有する基を上記一般式(1)におけるR11、R12若しくはR13に導入できるものであれば特に制限されない。
疎水性基を有する化合物(疎水性化合物)としては、前述の疎水性基を有し、その疎水性基を上記一般式(1)におけるR11、R12若しくはR13に導入できるものであれば特に制限されない。かかる疎水性化合物としては、ハロゲン化アシル(例えば、塩化アシル(塩化アセチル、塩化プロピオニル、塩化ブチリル、塩化ペンタノイル、塩化デカノイル等)、臭化アシル(臭化アセチル、臭化プロピオニル、臭化ブチリル、臭化ペンタノイル、臭化デカノイル等);が好ましく、塩化アシルが更に好ましく、塩化アセチル、塩化プロピオニル、塩化ブチリルが特に好ましい。
【0061】
本実施形態の液晶材料では、液晶材料の全体に占める前記セルロース誘導体の比率が80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、99質量%以上であることがより一層好ましい。液晶材料の全体に占める前記セルロース誘導体の比率が80質量%以上であれば、セルロース誘導体に起因する優れたゴム弾性がより発現され、液晶材料の延伸特性が更に向上する。
【0062】
本実施形態の液晶材料は、更に、置換若しくは未置換のアルキル(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。液晶材料が置換若しくは未置換のアルキル(メタ)アクリレート化合物を含む場合、引張強さが向上する。
ここで、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを指す(以下、同じ)。
また、置換されたアルキル(メタ)アクリレート化合物において、置換基としては、ヒドロキシル基、ハロゲン原子等が挙げられ、これらの中でも、ヒドロキシル基が好ましい。
【0063】
前記置換若しくは未置換のアルキル(メタ)アクリレート化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、n-オクタデシル(メタ)アクリレート、ヒドロキメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0064】
ここで、前記置換若しくは未置換のアルキル(メタ)アクリレート化合物は、置換若しくは未置換のブチル(メタ)アクリレートであることが好ましい。液晶材料が置換若しくは未置換のブチル(メタ)アクリレートを含む場合、液晶材料の破断歪みが更に向上する。
また、前記置換若しくは未置換のブチル(メタ)アクリレートの中でも、4-ヒドロキシブチルアクリレートが特に好ましい。液晶材料が4-ヒドロキシブチルアクリレートを含む場合、液晶材料の復元力がより一層向上する。
【0065】
本実施形態の液晶材料では、液晶材料の全体に占める前記置換若しくは未置換のアルキル(メタ)アクリレート化合物の比率が0~20質量%であることが好ましく、1~15質量%であることがより好ましく、5~15質量%であることがより一層好ましい。液晶材料の全体に占める前記置換若しくは未置換のアルキル(メタ)アクリレート化合物の比率が1質量%以上の場合、液晶材料の引張強さを向上させる効果が大きくなる。
【0066】
本実施形態の液晶材料は、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、重合開始剤、充填剤、架橋剤、難燃剤、相溶化剤、酸化防止剤、離型剤(剥離剤)、耐光剤、耐候剤、改質剤、帯電防止剤、加水分解防止剤等が挙げられ、これらの中でも、重合開始剤、充填剤、架橋剤が好ましい。
【0067】
前記重合開始剤としては、例えば、熱重合開始剤、光重合開始剤等の公知の重合開始剤を用いることができ、これらの中でも、光重合開始剤が好ましい。光重合開始剤としては、例えば、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(HMPP)、アセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン、2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェニン、2-ベンジル-2-(ジメチルミノ)-4’-モルホリノブチロフェニン、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1-ヒドロピロール-1-イル)フェニル)チタノセン等が挙げられる。本実施形態の液晶材料では、液晶材料の全体に占める重合開始剤の比率が0~10質量%であることが好ましく、0.01~5質量%であることがより好ましく、0.1~3質量%であることがより一層好ましい。
前記充填剤としては、カーボンブラック、シリカ等が挙げられる。本実施形態の液晶材料では、液晶材料の全体に占める充填剤の比率が0~20質量%であることが好ましく、0.1~10質量%であることがより好ましい。
前記架橋剤としては、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等のポリイソシアネート等が挙げられる。本実施形態の液晶材料では、液晶材料の全体に占める架橋剤の比率が0~5質量%であることが好ましく、0.01~1質量%であることがより好ましい。
【0068】
本実施形態の液晶材料は、破断時の伸びが、50%以上であることが好ましく、55%以上であることが更に好ましく、60%以上であることがより一層好ましい。破断時の伸びが50%以上である液晶材料は、高い延伸特性を要求される用途に利用できる。
また、破断時の伸びの上限に特に制限はないが、本実施形態の液晶材料は、破断時の伸びが、通常は200%以下であり、一実施形態においては、100%以下である。
なお、本実施形態において、破断時の伸びは、実施例に記載の方法で測定した値である。
【0069】
本実施形態の液晶材料は、タイヤ、ホース、コンベヤベルト、免震ゴム、橋梁免震ゴム、自転車用チューブ、テント、スキー、リハビリ用品、家電製品のケーブル等のゴム弾性を要する物品に利用できる。本実施形態の液晶材料を用いることで、これらの物品が可逆的に色変化することを可能にできる。
また、本発明の液晶材料は、後述する液晶フィルムの材料としても、利用できる。
【0070】
<液晶フィルム>
本実施形態の液晶フィルムは、
三次元構造を有し、
下記一般式(2):
【化16】
[一般式(2)中、X
21、X
22及びX
23は、それぞれ独立に、単結合、アルキレン基、-(R
24-O)
j-、又は-C(=O)-R
25-を表し、R
21、R
22及びR
23は、それぞれ独立に、水素原子、モノマー単位同士を連結する基を有する基、又は疎水性基を表し、R
24及びR
25は、それぞれ独立に、アルキレン基を表し、jは、1以上10以下の整数を表し、n21は、2以上800以下の整数を表す。但し、R
21、R
22及びR
23の少なくとも1つは、下記一般式(4):
【化17】
(一般式(4)中、R
4aは、炭素数7~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R
4bは、炭素数3~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R
4cは、水素原子又はメチル基を表し、*は、モノマー単位同士が連結されたときの結合位置を表し、**は、上記一般式(2)中、X
21、X
22若しくはX
23と結合する部分、又はセルロース骨格の2位、3位若しくは6位にある酸素原子と結合する部分を表す。)で表されるモノマー単位同士を連結する基を有する基を表す。]で表される分子構造を有するセルロース誘導体を含むことを特徴とする。かかる本発明の液晶フィルムは、優れた延伸特性を有する。
【0071】
本実施形態の液晶フィルムは、三次元構造を有し、一般式(2)で表される分子構造を有するセルロース誘導体を含み、該セルロース誘導体が、モノマー単位同士を連結する基を有する基を含む。
三次元構造(即ち、架橋構造)を有するセルロース誘導体は、上記一般式(1)で表される分子構造を有するセルロース誘導体に由来するモノマー単位同士を架橋することにより得られる。
従って、本実施形態における三次元構造を有するセルロース誘導体は、不飽和二重結合が開裂することで生じた連結基によって、モノマー単位同士が適度に連結(架橋)されて得られたもの、即ち、セルロース誘導体のポリマーが架橋されて得られたものである。
本実施形態では、前記三次元構造が、液晶フィルムのゴム弾性の発現に寄与していると考えられる。三次元構造を有するセルロース誘導体は、精製性が向上する。この精製性の向上は、液晶フィルムのコレステリック液晶性の発現、及び、ゴム弾性の発現に寄与すると考えられる。
従って、本実施形態の液晶フィルムは、ゴム弾性を有し、さらにブラッグ反射の波長で配向が固定化される。さらに、機械的応力の印加によって、その応力に対応する波長の反射光が得られる。
【0072】
ここで、三次元構造の形成(架橋構造)の有無は、架橋前後の液晶フィルムを溶媒に溶解することで確認することができる。
具体的には、架橋後の液晶フィルムは三次元構造が形成されているため、溶媒(例えば、アセトン)に溶解しないが、三次元構造が形成されていない架橋前の液晶フィルム(即ち、液晶材料)は溶媒に溶解する。このように溶媒に対する溶解性の有無を比較することにより、三次元構造の形成を確認することができる。
また、本実施形態の液晶フィルムは、架橋剤を用いなくても三次元構造が形成されるため、比較的簡易な方法で製造することができる。なお、架橋剤を用いてモノマー単位同士を架橋させてもよい。
また、本実施形態の液晶フィルムは、モノマー単位同士が架橋されている構造(三次元構造)を有するが、これはモノマー単位内での架橋を排除するものではない。
【0073】
一般式(2)において、X21、X22及びX23で表されるアルキレン基としては、上記一般式(1)におけるX11、X12及びX13で表されるアルキレン基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0074】
一般式(2)において、X21、X22及びX23で表される-(R24-O)j-、又は-C(=O)-R25-としては、上記一般式(1)における-(R14-O)h-、又は-C(=O)-R15-と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0075】
一般式(2)において、R21、R22及びR23で表される疎水性基としては、上記一般式(1)におけるR11、R12及びR13で表される疎水性基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0076】
一般式(2)において、R
21、R
22及びR
23で表されるモノマー単位同士を連結する基を有する基は、上述の不飽和二重結合を有する基が、開裂することで生じる連結基である。但し、R
21、R
22及びR
23の少なくとも1つは、下記一般式(4):
【化18】
で表されるモノマー単位同士を連結する基を有する基である。
【0077】
一般式(4)中、R4aは、炭素数7~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R4bは、炭素数3~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、R4cは、水素原子又はメチル基を表し、*は、モノマー単位同士が連結されたときの結合位置を表し、**は、上記一般式(2)中、X21、X22若しくはX23と結合する部分、又はセルロース骨格の2位、3位若しくは6位にある酸素原子と結合する部分を表す。
一般式(4)において、R4aで表される炭素数7~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基としては、上記一般式(3)におけるR3aで表される炭素数7~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
一般式(4)において、R4bで表される炭素数3~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基を表し、としては、上記一般式(3)におけるR3bで表される炭素数3~20の直鎖若しくは分岐のアルキレン基と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0078】
一般式(2)において、n21は、2以上800以下の整数を表し、適度なゴム弾性を有する観点から、好ましくは2以上400以下、より好ましくは2以上300以下である。
【0079】
上記一般式(2)で表される分子構造は、下記一般式(2-1):
【化19】
で表される分子構造であることが好ましい。本実施形態の液晶フィルムが一般式(2-1)で表される分子構造を有するセルロース誘導体を含む場合、延伸特性が更に向上する。
【0080】
一般式(2-1)中、R2は、-CH2-CH2-、又は-CH2-CH(CH3)-を表し、R21、R22及びR23は、それぞれ独立に、水素原子、モノマー単位同士を連結する基を有する基、又は疎水性基を表し、m2、t2及びr2は、それぞれ独立に、0以上10以下の整数を表し、n21は、2以上800以下の整数を表す。但し、R21、R22及びR23の少なくとも1つは、上記一般式(4)で表されるモノマー単位同士を連結する基を有する基を表す。
【0081】
一般式(2-1)中、R21、R22及びR23は、上記一般式(2)におけるR21、R22及びR23と同義であり、好ましい範囲も同様である。
【0082】
一般式(2-1)中、m2、t2及びr2は、それぞれ独立に、0以上10以下の整数を表し、m2、t2及びr2としては、セルロース誘導体の合成のし易さの観点から、それぞれ独立に、好ましくは0以上8以下、より好ましくは0以上5以下、より一層好ましくは0以上3以下である。
【0083】
一般式(2-1)中、n21は、上記一般式(2)におけるn21と同義であり、好ましい範囲も同様である。n21は、2以上800以下の整数を表し、架橋によって適度なゴム弾性を有する液晶フィルムを得る観点から、好ましくは2以上400以下、より好ましくは2以上300以下である。
【0084】
本実施形態の液晶フィルムは、例えば、基板上に、上記実施形態の液晶材料を付与し、基板上に付与された液晶材料に、熱を加える又は紫外線を照射することで製造できる。
かかる製法により、ゴム弾性を有し、ブラッグ反射が特定の波長で固定化された液晶フィルムを得ることができる。さらに、機械的応力の印加によって、その応力に対応する波長の反射光が得られる液晶フィルムを製造することができる。
【0085】
基板としては特に制限されず、目的に応じて通常用いられるものから適宜選択することができる。基板としては、例えば、ガラス基板、プラスチック基板(例えば、ポリエチレンナフタレート(PEN)基板、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板、ポリカーボネート(PC)基板、ポリイミド(PI)基板等)、アルミニウム基板やステンレス基板等の金属基板、シリコン基板等の半導体基板等を用いることができる。
基板の厚さ、形状は特に限定されず、目的に応じて適宜選択することが好ましい。
基板上への液晶材料の付与方法としては、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法等の塗布法;インクジェット法;スクリーン印刷法;減圧注入法等の注入法;等が挙げられる。
【0086】
液晶材料の形態は、固形状(例えば粉末)であっても液状であってもよい。
液晶材料が固形状である場合は、使用する際に溶媒と混合して液状にすればよく、液晶材料が基板上に付与できる程度の液状を有する場合は、そのまま用いてもよいし、溶媒と混合して使用しやすい粘度に調整したものを用いてもよい。
【0087】
基板に付与される前記液晶材料は、その他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、既述のその他の成分(例えば重合開始剤、剥離剤)と同様のものが挙げられる。
溶媒としては特に制限されず、例えば、既述のセルロース誘導体の合成方法の項で例示した溶媒を用いることができる。
【0088】
基板上に付与された液晶材料に、熱を加える場合、熱を加えることで、架橋前のセルロース誘導体が有していた不飽和二重結合が開裂してモノマー単位同士が連結基を介して連結(架橋)され、その結果、ゴム弾性が発現される。また、ブラッグ反射の波長で配向が固定化される。
熱の付与方法としては特に制限されず、例えば、公知の加熱装置(オーブン、赤外線ヒーター、ホットプレート等)を用いて熱を加える方法が挙げられる。
液晶材料に熱を付与する際の温度は、適度なゴム弾性を有する観点、及び、ブラッグ反射の波長で配向を固定化する観点から、好ましくは25℃以上130℃以下、より好ましくは25℃以上120℃以下、より一層好ましくは25℃以上110℃以下である。なお、液晶材料に熱を付与する際の温度は、液晶材料が上記範囲になるように制御される。
なお、熱付与条件(温度、加熱時間等)を制御することにより、ブラッグ反射の波長で配向が固定化され易くなる。
【0089】
基板上に付与された液晶材料に、紫外線を照射する場合、紫外線を照射することで、架橋前のセルロース誘導体が有していた不飽和二重結合が開裂してモノマー単位同士が連結基を介して連結(架橋)され、その結果、ゴム弾性が発現される。また、ブラッグ反射の波長で配向が固定化される。
液晶材料に紫外線を照射する際の温度(以下、「UV照射温度」とも称する。)は、好ましくは25℃以上130℃以下、より好ましくは25℃以上120℃以下、より一層好ましくは25℃以上110℃以下である。なお、液晶材料に紫外線を照射する際の温度は、液晶材料が上記範囲になるように制御される。
また、紫外線の照射強度(UV照度)(以下、「UV照射強度」とも称する。)は、好ましくは1mW/cm2以上20mW/cm2以下、より好ましくは5mW/cm2以上20mW/cm2以下、より一層好ましくは10mW/cm2以上20mW/cm2以下である。
紫外線照射においては、UV照射温度とUV照射強度とを組み合わせて制御することによって、異なるブラッグ反射で配向が固定化された液晶フィルムが得られる。
より詳細には、UV照射温度を上記範囲に制御することによって、セルロース誘導体のサーモトロピックコレステリック液晶性が発現され、目的とする色に調整し易くなり、所望の色が得られ易くなる。そして、UV照射温度を上記範囲に制御した上で、更にUV照射強度を上記範囲に制御することによって、UV照射温度によって得られた色が固定化される。
従って、上記紫外線照射では、UV照射温度及びUV照射強度(好ましくはUV照射時間)を共に制御することによって、目的とする箇所に目的とする色を呈する多色からなる液晶フィルムが得られる。
なお、このような多色からなる液晶フィルム(即ち、異なるブラッグ反射での配向が固定化されたフィルム)は、例えば、フォトマスクを用いることで容易に得ることができる。詳細は後述する。
【0090】
本実施形態の液晶フィルムは、破断時の伸びが、50%以上であることが好ましく、55%以上であることが更に好ましく、60%以上であることがより一層好ましい。破断時の伸びが50%以上である液晶フィルムは、高い延伸特性を要求される用途に利用できる。
また、破断時の伸びの上限に特に制限はないが、本実施形態の液晶フィルムは、破断時の伸びが、通常は200%以下であり、一実施形態においては、100%以下である。
【0091】
本実施形態の液晶フィルムは、例えば、偏光フィルム、位相差フィルム、バックライト、反射防止フィルム、光拡散フィルム、輝度向上フィルム、防眩フィルム等の光学フィルム;物体の歪み、伸縮、振動、衝撃等に起因する変形を、反射の波長(好ましくは反射色)によって検出するセンサー(圧力センサー、歪みセンサー、伸縮センサー、振動センサー、衝撃センサー等);脈波、呼吸、心弾動等の生体情報を、反射の波長(好ましくは反射色)によって検出するウェアラブルセンサー;上記光学フィルムを利用した光学素子;前記以外の光学素子;液晶表示素子;等に搭載して利用することができる。
本実施形態の液晶フィルムは、ゴム弾性を有し、機械的応力の印加によって、印加応力に対応する波長の反射光を得ることができるので、反射の波長(好ましくは反射色)によって機械的応力を検出できるセンサー、又は、機械的応力の印加によって反射光が得られる光学素子に搭載して利用することが好ましい。
【0092】
<センサー>
本実施形態のセンサーは、上記の液晶フィルムを具えることを特徴とする。かかる本実施形態のセンサーは、優れた延伸特性を有する。
センサーとしては、例えば、歪みセンサー、ウェアラブルセンサー等が好ましい。
【0093】
本実施形態のセンサーは、物体の歪みを検出する歪みセンサーであることが好ましい。
本実施形態の歪みセンサーは、上記の液晶フィルムを具えるため、物体の歪みに起因する変形を、反射の波長(好ましくは反射色)によって検出することができる。
例えば、本実施形態の歪みセンサーを、歪みが生じ易い物体(例えば、橋梁や建物等の構造物)の箇所に予め設置しておくことによって、物体の歪みの程度を検出することができる。また、その歪み(変形)に起因する機械的応力を可視的に、すなわち反射の波長(好ましくは反射色)によって検出することができる。
【0094】
本実施形態のセンサーは、生体情報を検出するウェアラブルセンサーであることが好ましい。ウェアラブルセンサーとは、身につけて使用できる比較的小型のセンサーのことである。
本実施形態のウェアラブルセンサーは、上記の液晶フィルムを具えるため、生体情報を、反射の波長(好ましくは反射色)によって検出することができる。
例えば、本実施形態の歪みセンサーを、生体情報を取得したい箇所に直接(例えば、肌に)貼り付ける若しくは装着する、又は、衣類、下着、靴下、手袋、ネクタイ、ハンカチ、マフラー、時計、メガネ、靴、スリッパ、帽子等に貼り付ける若しくは装着することによって、生体情報(脈波、呼吸、心弾動、体動(筋肉の動き等)等)を可視的に、即ち、反射の波長(好ましくは反射色)によって取得することができる。
【0095】
<光学素子>
本実施形態の光学素子は、上記の液晶フィルムを具えることを特徴とする。かかる本実施形態の光学素子は、優れた延伸特性を有する。
本実施形態の光学素子を、例えば人為的に機械的応力を印加する、又は、自然に機械的応力がかかる箇所に予め設置することにより、その応力に対応する異なる反射光が得られる。このような光学素子の用途としては、玩具、非常用光源、インテリア(置物、棚等)、建築部材(床、壁、階段等)、食器、容器等が挙げられる。
【実施例】
【0096】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0097】
<セルロース誘導体1の合成>
アルミホイルで遮光し、窒素充填したフラスコ内に、ヘキサメチレンジイソシアナート(東京化成工業(株)製、製品番号:H0324)5.5mL(34mmol)及び4-ヒドロキシブチルアクリレート(東京化成工業(株)製、製品番号:A1390)2.2mL(15.9mmol)を加え、24時間撹拌した。生成物300mgをクロロホルム3.0mLに溶解させた後、HPLC((株)日本分析工業製、製品名:リサイクル分取HPLC装置)で、4-(((6-イソシアナートヘキシル)カルバモイル)オキシル)ブチルアクリレート(4H)を分離して、エバポレーションによってクロロホルムを留去した。
減圧下、室温(25℃)で24時間以上乾燥した低分子量ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)(和光純薬工業(株)製、製品名:ヒドロキシプロピルセルロース2.0~2.9、製品番号:082-07925、重量平均分子量:5.0×10
4)6.0g(13.4mmol)を窒素充填したフラスコ内で、超脱水アセトン110mLに溶解させた後、アルミホイルで遮光した状態で、加熱(45℃)条件下で、末端に不飽和二重結合と、分子鎖中に1つのカルバメート結合を有する4H 360mg(1.2mmol)を溶解させた超脱水アセトン10.0mLを加え20時間撹拌した。
次に、室温(25℃)条件下で、塩化プロピオニル(PrCl)15mL(172mmol)を加え24時間撹拌した後、反応溶液を超純水に滴下した。特級アセトンに再溶解させて、超純水への滴下による洗浄操作を3回繰り返した後、1日以上減圧乾燥することにより生成物であるセルロース誘導体1(HPC-4HC/PrE)を得た。
収量は、4.0gであった。以下に、反応スキームを示す。
【化20】
【0098】
(1H-NMRスペクトルの測定)
上記で合成した4H及びセルロース誘導体1(HPC-4HC/PrE)の1H-NMRスペクトルを測定した。
4Hに関しては、5.8ppm、6.1ppm、6.4ppm付近のピークが、それぞれ末端のアクリロイル基の二重結合につくプロトンのピークであり、4.8ppm付近のピークが、カルバメート結合におけるアミノ基のプロトンのピークである。4.2ppm及び3.2ppm付近のピークは、4-ヒドロキシブチルアクリレートに由来した4つのメチレン基のプロトンのピークであり、1.2ppmから1.8ppm付近のピークは、ヘキサメチレンジイソシアナートに由来した6つのメチレン基のプロトンのピークである。
セルロース誘導体1(HPC-4HC/PrE)に関しては、5.8ppm、6.1ppm、6.4ppm付近のピークが、それぞれ末端のアクリロイル基の二重結合につくプロトンのピークであり、5.0ppm付近のピークが、末端のヒドロキシプロピオニル基のメチン基のプロトンのピークである。1.0ppmから2.5ppm付近のピークは、HPC側鎖のヒドロキシプロピル基のメチル基、不飽和結合を有する基の有するメチレン基のうち酸素原子、窒素原子に隣接しないメチレン基、プロピオニル基のメチル基、メチレン基のプロトンである。2.7ppmから4.6ppm付近のピークはセルロース誘導体1が有するその他のプロトンのピークである。
帰属したピークをもとに、HPC側鎖(水酸基中の水素原子)において、不飽和二重結合を有する基(即ち、4HC基)への置換度及び疎水性基(即ち、プロピオニル基)への置換度を算出した。
その結果、セルロース誘導体1(HPC-4HC/PrE)は、4HC基(不飽和二重結合を有する基)への置換度が0.024であり、プロピオニル基(疎水性基)への置換度が2.75であった。
【0099】
<セルロース誘導体2の合成>
アルミホイルで遮光し、窒素充填したフラスコ内に、1,12-ドデカンジオール(東京化成工業(株)製、製品番号:D0969)5.0g(24.7mmol)と脱水THF(関東化学(株)製、製品番号:40993-05)を加え、35℃に加熱し10分間撹拌することで溶解させた。これに、塩化アクリロイル(東京化成工業(株)製、製品番号:A0147)1.7mL(21.0mmol)に脱水THF20mLを加えた希釈溶液を、約2時間かけて液滴した後、室温(25℃)で24時間反応させた。エバポレーションによってTHFを留去した後、少量のヘキサンを加えてろ過をし、さらにエバポレーションによってヘキサンを留去することで、12-ヒドロキシドデシルアクリレートを主生成物とする透明な液体Aを得た。
アルミホイルで遮光し、窒素充填したフラスコ内に、ヘキサメチレンジイソシアナート(東京化成工業(株)製、製品番号:H0324)4.7mL(29.3mmol)及び脱水クロロホルム8.0mL(関東化学(株)製、製品番号;08097-05)を加えた後、上記で合成した透明な液体A 1.9mLを滴下し、24時間撹拌した。生成物300mgをクロロホルム3.0mLに溶解させた後、HPLC((株)日本分析工業製、製品名:リサイクル分取HPLC装置、)で、12-(((6-イソシアナートヘキシル)カルバモイル)オキシル)ドデシルアクリレート(12H)を分離して、エバポレーションによってクロロホルムを留去した。
減圧下、室温(25℃)で24時間以上乾燥したヒドロキシプロピルセルロース(HPC)(和光純薬工業(株)製、製品名:ヒドロキシプロピルセルロース2.0~2.9、製品番号:082-07925、重量平均分子量:5.0×10
4)5.0g(15.2mmol)を窒素充填したフラスコ内で、脱水アセトン(関東化学(株)製、製品番号:01866-05)90mLに溶解させた後、アルミホイルで遮光した状態で、47℃に加熱し、上記で合成した12H 380mg(0.89mmol)を溶解させた脱水アセトン10.0mLを加え20時間撹拌した。
次に、室温(25℃)条件下で、塩化プロピオニル(PrCl)20mL(229mmol)を加え24時間撹拌した後、反応溶液を超純水に滴下した。特級アセトンに再溶解させて、超純水への滴下による洗浄操作を3回繰り返した後、1日以上減圧乾燥することにより生成物であるセルロース誘導体2(HPC-12HC/PrE)を得た。収量は、4.0gであった。以下に、反応スキームを示す。
【化21】
【0100】
(1H-NMRスペクトルの測定)
上記で合成した12H及びセルロース誘導体2(HPC-12HC/PrE)の1H-NMRスペクトルを測定した。
12Hに関しては、5.8ppm、6.1ppm、6.4ppm付近のピークが、それぞれ末端のアクリロイル基の二重結合につくプロトンのピークであり、4.8ppm付近のピークが、カルバメート結合におけるアミノ基のプロトンのピークである。4.2ppm及び3.2ppm付近のピークは、12-ヒドロキシドデシルアクリレートに由来した12個のメチレン基のプロトンのピークであり、1.2ppmから1.8ppm付近のピークは、ヘキサメチレンジイソシアナートに由来した6つのメチレン基のプロトンのピークである。
セルロース誘導体2(HPC-12HC/PrE)に関しては、5.8ppm、6.1ppm、6.4ppm付近のピークが、それぞれ末端のアクリロイル基の二重結合につくプロトンのピークであり、5.0ppm付近のピークが、末端のヒドロキシプロピオニル基のメチン基のプロトンのピークである。1.0ppmから2.5ppm付近のピークは、HPC側鎖のヒドロキシプロピル基のメチル基、不飽和結合を有する基の有するメチレン基のうち酸素原子、窒素原子に隣接しないメチレン基、プロピオニル基のメチル基、メチレン基のプロトンである。2.7ppmから4.6ppm付近のピークはセルロース誘導体2が有するその他のプロトンのピークである。
帰属したピークをもとに、HPC側鎖(水酸基中の水素原子)において、不飽和二重結合を有する基(即ち、12HC基)への置換度及び疎水性基(即ち、プロピオニル基)への置換度を算出した。
その結果、セルロース誘導体2(HPC-12HC/PrE)は、12HC基(不飽和二重結合を有する基)への置換度が0.024であり、プロピオニル基(疎水性基)への置換度が2.71であった。
【0101】
<セルロース誘導体3の合成>
「セルロース誘導体1の合成」において、添加する4Hの量を変化させることで、4HC基の置換度が異なるセルロース誘導体3(HPC-4HC/PrE)を合成した。得られたセルロース誘導体3(HPC-4HC/PrE)は、4HC基(不飽和二重結合を有する基)への置換度が0.023であり、プロピオニル基(疎水性基)への置換度が2.58であった。
【0102】
[実施例1~2及び比較例1~2]
<液晶材料の調製>
表1~表3に示す配合処方に従って、上記のようにして合成したセルロース誘導体1~3と、4-ヒドロキシブチルアクリレート(東京化成工業(株)製、製品名:アクリル酸4-ヒドロキシブチル、製品番号:A1390)(4HBA)と、光重合開始剤としての2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(東京化成工業(株)製、製品番号:H0991)(HMPP)と、を撹拌混合して、液晶材料(リオトロピック液晶)を調製した。
【0103】
<液晶フィルムの作製>
離形シートを貼り付けたガラスセルに、調製した液晶材料(リオトロピック液晶)を厚さ500μmのPTFEスペーサーと共に挟み込み、一晩静置して配向させた後、25℃の室温下で、紫外線(波長:365nm、強度:10mW/cm2)を1時間照射することで、液晶フィルムを作製した。
【0104】
(1)引張試験
得られた液晶フィルムから、JIS-7号ダンベル試験片を作製し、小型卓上試験機((株)島津製作所製、製品名:EZ-LX)を用いて、室温(25℃)において、引張速度10mm/minで、引張試験を行った。各液晶フィルムの弾性率、引張強さ(最大点応力)、破断時の伸びを表1~表3に示す。また、
図1に、実施例1及び比較例1の液晶フィルムの延伸過程における応力-歪み曲線を示し、
図2に、実施例1及び実施例2の液晶フィルムの延伸過程における応力-歪み曲線を示し、
図3に、実施例2及び比較例2の液晶フィルムの延伸過程における応力-歪み曲線を示す。
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
表1及び表3から、本発明に従う実施例1及び2の液晶材料は、比較例1及び2の液晶材料に比べて、破断時の伸びが大きく、延伸方向の柔軟性に優れることが分かる。
また、表2の、実施例1と、実施例2との比較から、液晶材料が置換若しくは未置換のアルキル(メタ)アクリレート化合物を含む場合、弾性率が大きくなることが分かる。
【0109】
(2)圧縮時における波長のシフト変化
実施例2の液晶フィルムに対して、ノギスを用いて膜厚を測定した後、圧縮チューニングセルを用いて、歪み(ε)0、0.06、0.13、0.17で、液晶フィルムの厚み方向へ圧縮した。小型ファイバマルチチャンネル分光器(Ocean Optics社製、型番:USB-4000)を用いて、各歪み(ε)での透過スペクトルを測定することで、圧縮時における波長のシフト変化を測定した。圧縮-解放過程における透過スペクトルの変化を
図4(a)に示し、圧縮-解放時の液晶フィルムの様子を
図4(b)に示す。
【0110】
(3)延伸時における波長のシフト変化
実施例2の液晶フィルムに対して、歪み(ε)0、0.04、0.08、0.12、0.15、0.23、0.30で、液晶フィルムの長さ方向へ延伸し、透過スペクトルの測定と同様にして、各歪み(ε)での反射スペクトルを測定することで、延伸時における波長のシフト変化を測定した。延伸-解放過程における反射スペクトルの変化を
図5(a)に示し、延伸-解放時の液晶フィルムの様子を
図5(b)に示す。
【0111】
図4(a)及び(b)に示す圧縮-解放過程における透過スペクトルの変化、並びに、
図5(a)及び(b)に示す延伸-解放過程における反射スペクトルの変化の結果から、圧縮-解放過程、延伸-解放過程のいずれにおいても、実施例2の液晶フィルムは、色の変化が可逆的であることが分かる。
【0112】
(4)伸縮耐久性
実施例2の液晶フィルムに対して、歪み(ε)0.15で、液晶フィルムの長さ方向へ延伸と解放を1000回繰り返し、各サイクルにおける応力-歪み曲線と、反射スペクトルを測定した。
図6(a)に、各サイクル(1、2、100、1000サイクル目)の応力-歪み曲線を示す。また、
図6(b)に、各サイクル(1、2、3、100サイクル目)における延伸時と解放時における反射スペクトルのピーク波長の結果を示し、
図6(c)に、各サイクルにおける液晶フィルムの様子を示す。
【0113】
図6(a)から、実施例2の液晶フィルムの応力-歪み曲線は、1サイクル目と、1000サイクル目とで、変化が小さく、実施例2の液晶フィルムは、可逆的に伸縮できることが分かる。
また、
図6(b)及び(c)から、実施例2の液晶フィルムは、100サイクルの伸縮を繰り返しても、色の変化が可逆的であることが分かる。
【0114】
[実施例3及び4]
<セルロース誘導体4の合成>
「セルロース誘導体2の合成」において、添加する12Hの量を変化させることで、12HC基の置換度が異なるセルロース誘導体4(HPC-12HC/PrE)を合成した。得られたセルロース誘導体4(HPC-12HC/PrE)は、12HC基(不飽和二重結合を有する基)への置換度が0.010であり、プロピオニル基(疎水性基)への置換度が2.53であった。
【0115】
<液晶材料の調製>
上記のようにして合成したセルロース誘導体4と、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)と、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(HMPP)と、を用い、表4に示す配合処方に従って、液晶材料を調製し、実施例1と同様にして、液晶フィルムを作製した。
【0116】
(1)引張試験
得られた液晶フィルムに対して、実施例1と同様にして、引張試験を行った。
図7に、液晶フィルムの延伸過程における応力-歪み曲線を示す。また、各液晶フィルムの弾性率、引張強さ、破断時の伸びを表4に示す。
【0117】
【0118】
実施例3と、実施例4との比較から、液晶材料が置換若しくは未置換のアルキル(メタ)アクリレート化合物を含む場合、弾性率及び引張強さが大きくなることが分かる。
また、実施例3と実施例1の比較、並びに、実施例4と実施例2の比較から、一般式(3)で表される不飽和二重結合を有する基(架橋基)の導入量を低減することで、延伸方向の柔軟性が更に向上することが分かる。
【0119】
(2)延伸時における反射波長の変化と、センサーへの適用
実施例4の液晶フィルムから、JIS-7号ダンベル試験片を作製し、延伸時における反射波長の変化を測定した。結果を
図8(a)に示す。
また、実施例4の液晶フィルムを500円硬貨、100円硬貨、1円硬貨のそれぞれに押し付けた際の、反射波長の変化を測定した。結果を
図8(b)に示す。
【0120】
図8(a)から、実施例4の液晶フィルムは、延伸の度合いによって、反射波長が変化することが分かる。
また、
図8(b)から、延伸の度合いによって、反射波長が変化する特性を利用することで、実施例4の液晶フィルムは、硬貨表面の微小な凹凸のセンシングが可能であることが分かる。
【0121】
[実施例5~9]
<セルロース誘導体5及び6の合成>
「セルロース誘導体2の合成」において、添加する12Hの量を変化させることで、12HC基の置換度が異なるセルロース誘導体5及び6(HPC-12HC/PrE)を合成した。得られたセルロース誘導体5(HPC-12HC/PrE)は、12HC基(不飽和二重結合を有する基)への置換度が0.013であり、プロピオニル基(疎水性基)への置換度が2.80であり、また、セルロース誘導体6(HPC-12HC/PrE)は、12HC基(不飽和二重結合を有する基)への置換度が0.014であり、プロピオニル基(疎水性基)への置換度が2.74であった。
【0122】
<液晶材料の調製>
上記のようにして合成したセルロース誘導体5又は6、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(HMPP)、カーボンブラック(三菱ケミカル製、製品番号:#2650)(CB)、シリカ(日本触媒製、製品番号:KE-P10)(SiO2)、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート(東京化成工業(株)製、製品番号:H0324)(HDI)を用い、表5及び表6に示す配合処方に従って、液晶材料を調製し、実施例1と同様にして、液晶フィルムを作製した。
【0123】
(1)引張試験
得られた液晶フィルムに対して、実施例1と同様にして、引張試験を行った。各液晶フィルムの弾性率、引張強さ、破断時の伸びを表5及び表6に示す。また、
図9に、実施例5及び実施例6の液晶フィルムの延伸過程における応力-歪み曲線を示し、
図10に、実施例7~9の液晶フィルムの延伸過程における応力-歪み曲線を示す。
【0124】
【0125】
【0126】
表5及び表6から、本発明の液晶材料は、カーボンブラックやシリカ等の充填剤を含んでも、優れた延伸特性を維持できることが分かる。
また、表6の実施例9の結果から、本発明の液晶材料は、ポリイソシアネートを含むことで、弾性率が向上することが分かる。
【0127】
(2)掌性反転
実施例7の液晶フィルムに対して、右円偏光(R-CPL)と左円偏光(L-CPL)の白色光を入射し、延伸-解放過程における透過スペクトル変化を測定した。
図11(a)に、右円偏光(R-CPL)の白色光を入射した際の延伸-解放過程における透過スペクトル変化を示し、
図11(b)に、左円偏光(L-CPL)の白色光を入射した際の延伸-解放過程における透過スペクトル変化を示す。
【0128】
図11(a)に示すように、延伸に伴って、右円偏光(R-CPL)由来の反射ピークは、短波長シフトしながら、ピーク強度が小さくなった。一方、
図11(b)に示すように、左円偏光(L-CPL)を照射した場合は、延伸に伴って反射ピークが出現し、歪み(ε)=0.15におけるピーク強度は、右円偏光(R-CPL)よりも、左円偏光(L-CPL)の方が大きくなった。また、液晶フィルムを解放すると、反射波長は長波長側にシフトするだけでなく、左円偏光(L-CPL)由来の反射ピークも減衰し、初期状態において完全に消失した。一方、液晶フィルムの膜厚方向の圧縮-解放過程における透過スペクトル変化を測定したところ、掌性反転は起こらなかった。これらの結果から、本実施形態の液晶フィルムは、延伸でのみ掌性反転が起こる特異な性質を有することが確認できた。
【0129】
[実施例10~12]
<セルロース誘導体7の合成>
「セルロース誘導体2の合成」において、添加する12Hの量を変化させることで、12HC基の置換度が異なるセルロース誘導体7(HPC-12HC/PrE)を合成した。得られたセルロース誘導体7(HPC-12HC/PrE)は、12HC基(不飽和二重結合を有する基)への置換度が0.010であり、プロピオニル基(疎水性基)への置換度が2.74であった。
【0130】
<液晶材料の調製>
上記のようにして合成したセルロース誘導体7と、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4HBA)、ブチルアクリレート(BA)(東京化成工業(株)製、製品番号:A0142)又は2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)(東京化成工業(株)製、製品番号:M0085)と、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(HMPP)と、を用い、表7に示す配合処方に従って、液晶材料を調製し、実施例1と同様にして、液晶フィルムを作製した。
【0131】
(1)引張試験
得られた液晶フィルムに対して、実施例1と同様にして、引張試験を行った。各液晶フィルムの弾性率、引張強さ、破断時の伸びを表7に示す。また、
図12に、実施例10~12の液晶フィルムの延伸過程における応力-歪み曲線を示す。
【0132】
【0133】
表7から、液晶材料が置換若しくは未置換のブチル(メタ)アクリレートを含む場合、液晶材料の破断歪みが更に向上し、また、液晶材料が4-ヒドロキシブチルアクリレートを含む場合、液晶材料の復元力が向上することが分かる。
【0134】
[実施例13]
<セルロース誘導体8の合成>
「セルロース誘導体2の合成」において、添加する12Hの導入量を変化させることで、12HC基の置換度が異なるセルロース誘導体8(HPC-12HC/PrE)を合成した。得られたセルロース誘導体8(HPC-12HC/PrE)は、12HC基(不飽和二重結合を有する基)への置換度が0.017であり、プロピオニル基(疎水性基)への置換度が2.73であった。
【0135】
<液晶材料の調製>
上記のようにして合成したセルロース誘導体8、4-ヒドロキシブチルアクリレート(4BHA)、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン(HMPP)を用い、使用するセルロース誘導体が、セルロース誘導体4でない点を除き、表4に示す配合処方に従って、液晶材料を調製し、実施例1と同様にして、液晶フィルムを作製した。
【0136】
(1)二軸延伸試験
得られた液晶フィルムから、40mm×30mm×0.5mmの試験片を作製し、XYステージ(シグマ光機(株)製、製品番号:TSD-602)を組み合わせた、
図13に示す二軸延伸試験機を用いて、右円偏光(R-CPL)と左円偏光(L-CPL)の白色光を入射し、二軸延伸過程における透過スペクトル変化を測定した。その結果を
図14、
図15に示す。
【0137】
図14(a)から分かるように、段落[0127]のような一軸延伸の場合は、延伸に伴って、右円偏光(R-CPL)由来の反射ピークは短波長シフトしながら、ピーク強度が小さくなり、左円偏光(L-CPL)由来の反射ピークは短波長シフトしながら、ピーク強度が大きくなるような掌性反転が起きたのに対し、二軸延伸の場合は、前述のような掌性反転が起こらなかった。
図14(b)は、二軸延伸(biaxial)中の液晶フィルムの固定を一方向外し、一軸延伸(uniaxial)にしたときの透過スペクトルの変化である。液晶フィルムが一軸延伸の状態になることで、段落[0127]と同様に、掌性反転が起こった。
これらの結果から、本実施形態の液晶フィルムは、一軸延伸でのみ掌性反転が起こり、二軸延伸では掌性反転が起こらない性質を有していることが確認できた。
【0138】
図15(a)から分かるように、二軸延伸によって液晶フィルムを延伸すると、
図5のような一軸延伸による短波長シフトよりも、そのシフト幅が拡大した。
また、
図15(b)より、
図14と同様に二軸延伸では掌性反転が起こらないことが分かった。
これらの結果から、本実施形態の液晶フィルムを延伸することで、右円偏光(R-CPL)由来の赤色、緑色、青色の反射色を示すことが可能になった。
【0139】
図16は、二軸延伸過程における液晶フィルムの変色の様子である。延伸の力が加わっている場所の色が大幅に変化し、延伸の力があまり加わっていない場合には、中心付近と比較して、その変色の度合いが小さいことを確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明の液晶材料は、タイヤ、ホース、コンベヤベルト、免震ゴム、橋梁免震ゴム、自転車用チューブ、各種グリップ、テント、スキー等のスポーツ用品、マット、リハビリ用品、家電製品のケーブル等のゴム弾性を要する物品に利用できる。特には、本発明の液晶材料を、タイヤのサイドウォールに搭載することで、タイヤのデザイン性を向上させることができ、また、該液晶材料を、圧力センサーや、劣化インジケーターとしても利用できる。
また、本発明の液晶フィルムは、各種センサー及び光学素子に利用できる。