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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】グリオーマの処置剤および医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4725 20060101AFI20231020BHJP
   A61K 31/416 20060101ALI20231020BHJP
   A61K 31/4439 20060101ALI20231020BHJP
   A61K 31/4418 20060101ALI20231020BHJP
   A61K 31/4704 20060101ALI20231020BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231020BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
A61K31/4725
A61K31/416
A61K31/4439
A61K31/4418
A61K31/4704
A61P35/00
A61P43/00 111
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020523175
(86)(22)【出願日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 JP2019022538
(87)【国際公開番号】W WO2019235570
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-06-01
(31)【優先権主張番号】P 2018108728
(32)【優先日】2018-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】石井 由紀子
(72)【発明者】
【氏名】近藤 亨
【審査官】榎本 佳予子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/069510(WO,A1)
【文献】特表2010-520268(JP,A)
【文献】特表2002-540103(JP,A)
【文献】国際公開第2009/021696(WO,A1)
【文献】特開2001-302667(JP,A)
【文献】特表2010-504298(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-33/44
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)で表される化合物またはその塩を含むテモゾロミド耐性グリオーマの処置剤。
【化1】
式中、
は、CHまたは窒素原子であり;
は、シクロプロピル基であり;
がCHである場合、Rは、一般式(2-1)または(2-2)
【化2】
(式中、
は、CHであり;
は、窒素原子であり;
は、CHであり;
は、フェニルで置換されたC1-C6アルキル基、またはフェニル基である。)
で表される基であり、
が窒素原子である場合、Rは、一般式(3-1)または(3-2)
【化3】
(式中、
1aは、CRであり;
2aは、CHであり;
3aは、CHであり;
は、CHまたは窒素原子であり;
4aは、「シクロヘキシル基、又はフッ素置換フェニル基」で置換されていてもよいC1-6アルキル基、または
ハロゲンで置換されてもよいフェニル基であり、
は、
水素原子;
3-8シクロアルケニル基;
3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-4イル基;または
ハロゲン、CF、OCF、又はシアノ基で置換されてもよいフェニル基である。)
で表される基であるか、あるいは、
【化4】
または
【化5】
である。
【請求項2】
請求項1に記載の処置剤を含む、テモゾロミド耐性グリオーマを処置するための医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリオーマの予防または治療などの処置剤および医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
グリオーマ(神経膠腫)は悪性腫瘍の一種であり、神経系腫瘍の最も高頻度のタイプの1つである。兆候及び症候は、いくつかの要因(大きさ、成長の速度、腫瘍の局在性)により決まり、また主に頭痛、発作、神経障害、及び精神状態における変化により表される。
【0003】
グリオーマの治療としては、手術により可能な限り腫瘍を摘出し、放射線療法及びDNAアルキル化剤テモゾロミド(TMZ、グリオーマ標準治療薬)による化学療法を行うことが標準的である。しかし、グリオーマは放射線照射、さらにはTMZなどの薬剤に対して高い抵抗性を示すために、標準的治療法によっても予後生存期間はほとんど改善されていないのが現状である。この難治性の原因の1つは、自己複製能・腫瘍形成能・化学放射線療法抵抗性を有するグリオーマ幹細胞(GIC)の存在であると考えられ、GICを標的とした画期的な治療法の創出が待ち望まれている。本発明者らは、腫瘍形成能を保持した複数のヒトGIC株からTMZ耐性GIC株(GICR)を樹立し、低分子化合物ライブラリーを用いたスクリーニングにより、GIC/GICRに強い細胞傷害活性を有する化合物骨格を同定した。
【0004】
一方、特許文献1には、優れたケラチノサイトの増殖抑制作用を有し、ケラチノサイトの過剰増殖が関与する疾患の予防または治療などの処置に有用な化合物について開示されているが、グリオーマの予防または治療に関する検討はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014/069510
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のとおり、グリオーマの治療方法として種々の方法が知られているが、その効果は満足できるものではなく、より有効なグリオーマの予防または治療のための処置剤および医薬組成物が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような状況下において、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、一般式(1)で表される化合物またはその塩が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、下記を提供する。
[1] 一般式(1)で表される化合物またはその塩を含むグリオーマの処置剤。
【化1】
(式中、
は、CHまたは窒素原子であり;
は、ハロゲン原子、置換されてもよいC1-6アルキル基または置換されてもよいC3-8シクロアルキル基であり;
は、置換されてもよい二環式縮合炭化水素環基または置換されてもよい二環式複素環基である。
ただし、
(1)Rが置換されてもよい二環式縮合炭化水素環基の場合、Gは窒素原子であり;
(2)GがCHであり、Rが塩素原子または置換されてもよいC3-8シクロアルキル基の場合、Rは一般式(2-1)または(2-2)
【化2】
(式中、
、X、Xは、同一または異なって、CRまたは窒素原子であり;
は、水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよいC1-6アルキル基であり、
は、置換されてもよいC3-6アルキル基、置換されてもよいC3-8シクロアルキル基、置換されてもよいC3-8シクロアルキルC1-6アルキル基、置換されてもよいアリール基、置換されてもよいアルC1-6アルキル基、置換されてもよいアシル基、置換されてもよい複素環基または置換されてもよい複素環C1-6アルキル基である。)で表される基である。)
【0009】
[2] Rが、塩素原子または置換されてもよいC3-8シクロアルキル基である、[1]に記載の化合物またはその塩を含む、グリオーマの処置剤。
[3] Rが、一般式(3-1)または(3-2)
【化3】
(式中、
1a、X2a、X3aは、同一または異なって、CRまたは窒素原子であり;
は、CHまたは窒素原子であり;
4aは、置換されてもよいC1-6アルキル基または置換されてもよいアリール基であり;
は、水素原子、置換されてもよいC3-8シクロアルケニル基または置換されてもよいアリール基である。)
で表される基であるか、
あるいは、GがCHであり、Rが塩素原子または置換されてもよいC3-8シクロアルキル基の場合、Rは一般式(4)
【化4】
(式中、
1bは、CHまたは窒素原子であり;
4bは、置換されてもよいアリール基である)
で表される基である、[1]または[2]に記載の化合物またはその塩を含むグリオーマの処置剤。
【0010】
[4] Gが、窒素原子であり、Rが、一般式(5)
【化5】
(式中、
4cは、置換されてもよいC1-6アルキル基であり;
5cは、置換されてもよいアリール基または置換されてもよいC3-8シクロアルケニル基である。)で表される基である、[1]から[3]のいずれか一つに記載の化合物またはその塩を含むグリオーマの処置剤。
【0011】
[5] [1]~[4]のいずれか一つに記載の処置剤を含む医薬組成物。
[6] [1]~[4]のいずれか一つに記載の処置剤を対象に投与する工程を含む、グリオーマの処置方法。
[7] グリオーマの処置において使用するための、[1]~[4]のいずれか一つに記載の処置剤。
[8] グリオーマの処置において使用するための、上記一般式(1)で表される化合物またはその塩。
[9] グリオーマの処置剤の製造のための、上記一般式(1)で表される化合物またはその塩の使用。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、グリオーマの予防または治療などの処置に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、化合物存在下における分化、未分化マーカーの免疫染色の定量結果を示す。
図2図2は、化合物の腫瘍抑制効果を示す。
図3図3は、UDP-GlcNAc添加によるSOX2発現低下の解除を示す。GlcNAcは、N-アセチル-D-グルコサミンを示す。
図4図4は、UDP-GlcNAc添加によるGIC傷害活性の中和を示す。
図5図5は、SOX2変異体によるGIC傷害活性の中和を示す。
図6図6は、OSMI-1によるGICの増殖抑制、SOX2発現抑制を示す。
図7図7は、化合物添加によるGIC中の代謝産物の変動を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳述する。
【0015】
本発明において、特に断らない限り、各用語は以下の意味を有する。
ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子を意味する。
3-6アルキル基とは、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチルおよびヘキシル基などの直鎖状または分枝鎖状のC3-6アルキル基を意味する。
1-6アルキル基とは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、sec-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソペンチルおよびヘキシル基などの直鎖状または分岐鎖錠のC1-6アルキル基を意味する。
2-6アルケニル基、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、ブテニル、イソブテニル、1,3-ブタジエニル、ペンテニルおよびヘキセニル基などの直鎖状または分枝鎖状のC2-6アルケニル基を意味する。
3-8シクロアルキル基とは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシル基などのC3-8シクロアルキル基を意味する。
3-8シクロアルケニル基とは、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニルおよびシクロヘキサンジエニル基などのC3-8シクロアルケニル基を意味する。
3-8シクロアルキルC1-6アルキル基とは、シクロプロピルメチル、2-(シクロプロピル)エチル、シクロブチルメチル、2-(シクロブチル)エチル、シクロペンチルメチルおよびシクロヘキシルメチル基などのC3-8シクロアルキルC1-6アルキル基を意味する。
【0016】
アリール基とは、フェニル基、二環式縮合炭化水素環基または三環式縮合炭化水素環基を意味する。
アルC1-6アルキル基とは、メトキシ、エトキシ、プロポキシまたはイソプロポキシ基を意味する。
アシル基とは、ホルミル基、スクシニル基、グルタリル基、マレオイル基、フタロイル基、C2-12アルカノイル基、アロイル基、複素環カルボニル基または(α-置換)アミノアセチル基を意味する。
【0017】
2-12アルカノイル基とは、アセチル、プロピオニル、バレリル、イソバレリルおよびピバロイル基などの直鎖状または分枝鎖状のC2-12アルカノイル基を意味する。
アロイル基とは、ベンゾイルまたはナフトイル基を意味する。
複素環カルボニル基とは、ニコチノイル、テノイル、ピロリジノカルボニルまたはフロイル基を意味する。
(α-置換)アミノアセチル基とは、アミノ酸(グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、ヒドロキシリジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、プロリンおよびヒドロキシプロリンなどのアミノ酸が挙げられる。)から誘導されるN末端が保護されてもよい(α-置換)アミノアセチル基を意味する。
【0018】
二環式縮合炭化水素環基とは、ペンタレニル、インダニル、インデニルおよびナフチル基などの一部分が水素化されてもよい2環の縮合炭化水素環を意味する。
三環式縮合炭化水素環基とは、ビフェニレニル、アセナフテニル、アセナフチレニル、フルオレニル、フェナレニル、フェナントレニルおよびアントラセニル基などの一部分が水素化されてもよい3環の縮合炭化水素環を意味する。
【0019】
複素環基とは、単環の複素環基、二環式複素環基または三環式複素環基を意味する。
単環の複素環基とは、単環の含窒素複素環基、単環の含酸素複素環基、単環の含硫黄複素環基、単環の含窒素・酸素複素環基または単環の含窒素・硫黄複素環基を意味する。
単環の含酸素複素環基とは、テトラヒドロフラニル、フラニル、テトラヒドロピラニル、ジヒドロピラニルまたはピラニル基を意味する。
単環の含硫黄複素環基とは、チエニル基を意味する。
単環の含窒素・酸素複素環基とは、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリルおよびモルホリニル基などの該環を形成する異項原子として窒素原子および酸素原子のみを含む単環の含窒素・酸素複素環基を意味する。
単環の含窒素・硫黄複素環基とは、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、チオモルホリニル、1-オキシドチオモルホリニルおよび1,1-ジオキシドチオモルホリニル基などの該環を形成する異項原子として窒素原子および硫黄原子のみを含む単環の含窒素・硫黄複素環基を意味する。
【0020】
二環式複素環基とは、二環式の含窒素複素環基、二環式の含酸素複素環基、二環式の含硫黄複素環基、二環式の含窒素・酸素複素環基または二環式の含窒素・硫黄複素環基を意味する。
【0021】
二環式含窒素複素環基とは、インドリニル、インドリル、イソインドリニル、イソインドリル、ピロロピリジニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾトリアゾリル、テトラヒドロキノリニル、ジヒドロキノリニル、キノリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、イソキノリニル、ジヒドロキナゾリニル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、ジヒドロキノキサリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、プリニル、プテリジニルおよびキヌクリジニル基などの該環を形成する異項原子として窒素原子のみを含む二環式の含窒素複素環基を意味する。
二環式含酸素複素環基とは、2,3-ジヒドロベンゾフラニル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、クロマニル、クロメニル、イソクロマニル、1,3-ベンゾジオキソリル、1,3-ベンゾジオキサニルおよび1,4-ベンゾジオキサニル基などの該環を形成する異項原子として酸素原子のみを含む二環式の含酸素複素環基を意味する。
二環式含硫黄複素環基とは、2,3-ジヒドロベンゾチエニルおよびベンゾチエニル基などの該環を形成する異項原子として硫黄原子のみを含む二環式の含硫黄複素環基を意味する。
二環式含窒素・酸素複素環基とは、ジヒドロベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾモルホリニル、ジヒドロピラノピリジル、ジヒドロジオキシノピリジルおよびジヒドロピリドオキサジニル基などの該環を形成する異項原子として窒素原子および酸素原子のみを含む二環式の含窒素・酸素複素環基を意味する。
二環式含窒素・硫黄複素環基とは、ジヒドロベンゾチアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリルおよびベンゾチアジアゾリル基などの該環を形成する異項原子として窒素原子および硫黄原子を含む二環式の含窒素・硫黄複素環基を意味する。
【0022】
複素環C1-6アルキル基とは、アゼチジニルメチル、アゼチジニルエチル、ピロリジニルメチル、ピロリジニルエチル、ピペリジルメチル、ピペリジルエチル、ピリジルメチル、ピリジルエチル、イミダゾリルメチル、イミダゾリルエチル、ピペラジニルメチルおよびピペラジニルエチル基などの単環の含窒素複素環C1-6アルキル基;テトラヒドロフラニルメチル、テトラヒドロピラニルメチルなどの単環の含酸素複素環C1-6アルキル基;チエニルメチル基などの単環の含硫黄複素環C1-6アルキル基;オキサゾリルメチル、オキサゾリルエチル、イソオキサゾリルメチル、イソオキサゾリルエチル、モルホリニルメチルおよびモルホリニルエチル基などの単環の含窒素・酸素複素環C1-6アルキル基;チアゾリルメチル、チアゾリルエチル、イソチアゾリルメチルおよびイソチアゾリルエチル基などの単環の含窒素・硫黄複素環C1-6アルキル基;インドリルメチル、インドリルエチル、ベンズイミダゾリルメチル、ベンズイミダゾリルエチル、キノリルメチルおよびキノリルエチル基などの二環式含窒素複素環C1-6アルキル基;ベンゾフラニルメチル、イソベンゾフラニルメチルおよびクロマニルメチル基などの二環式の含酸素複素環C1-6アルキル基;ベンゾチエニルメチル基などの二環式含硫黄複素環C1-6アルキル基;ベンゾオキサゾリルメチルおよびベンゾイソオキサゾリルメチル基などの二環式の含窒素・酸素複素環C1-6アルキル基;ベンゾチアゾリルメチルおよびベンゾイソチアゾリルメチル基などの二環式含窒素・硫黄複素環C1-6アルキル基;カルバゾリルメチル基などの三環式含窒素複素環C1-6アルキル基;キサンテニルメチル基などの三環式含酸素複素環C1-6アルキル基ならびにチアントレニルメチル基などの三環式含硫黄複素環C1-6アルキル基を意味する。
【0023】
一般式(1)の化合物の塩としては、通常知られているアミノ基などの塩基性基またはフェノール性ヒドロキシル基もしくはカルボキシル基などの酸性基における塩を挙げることができる。
【0024】
塩基性基における塩としては、たとえば、塩酸、臭化水素酸、硝酸および硫酸などの鉱酸との塩;ギ酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、アスパラギン酸、トリクロロ酢酸およびトリフルオロ酢酸などの有機カルボン酸との塩;ならびにメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メシチレンスルホン酸およびナフタレンスルホン酸などのスルホン酸との塩が挙げられる。
【0025】
酸性基における塩としては、たとえば、ナトリウムおよびカリウムなどのアルカリ金属との塩;カルシウムおよびマグネシウムなどのアルカリ土類金属との塩;アンモニウム塩;ならびにトリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルピペリジン、N-メチルモルホリン、ジエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N-ベンジル-β-フェネチルアミン、1-エフェナミンおよびN,N’-ジベンジルエチレンジアミンなどの含窒素有機塩基との塩などが挙げられる。
【0026】
グリオーマは、脳に発生する悪性腫瘍であり、世界保健機関(WHO)の基準に従って4つのグレード(グレードI~IV)に分類される。グレードIII及びIVのグリオーマは高悪性度グリオーマと呼ばれ、高い増殖能、浸潤能を有する。高悪性度グリオーマのうち、最も悪性度が高いのは、グレードIVに分類されるグリオブラストーマである。なお、本明細書では、「グリオーマ」との語は、全てのグレードのグリオーマ、高悪性度グリオーマ及びグリオブラストーマを包含するものとする。
【0027】
本発明の「処置」とは、予防または治療を含む。予防は、発症の阻害、発症リスクの低減、発症の遅延を含む。治療は、対象となる疾患または状態の改善または進行の抑制(維持または遅延)を含む。処置の対象は、その処置の必要のあるヒトまたは非ヒト動物を含む。
【0028】
本発明の「剤」は、有効成分である化合物またはその塩以外に、製剤化に使用される賦形剤、担体および希釈剤などの製剤補助剤を適宜混合した組成物とすることができる。「剤」は、他の有効成分を含んでいてもよく、また他の有効成分を含む医薬と共に用いることができる。
【0029】
本発明の化合物において、以下の化合物が好ましい。
【0030】
は、CHまたは窒素原子である。
【0031】
は、ハロゲン原子、置換されてもよいC1-6アルキル基または置換されてもよいC3-8シクロアルキル基であり、塩素原子または置換されてもよいC3-8シクロアルキル基であることが好ましく、塩素原子または置換されてもよいシクロプロピル基であることがより好ましく、塩素原子またはシクロプロピル基であることがさらに好ましい。
のC1-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基の置換基としては、置換基群αから選択される少なくとも1種の基が挙げられる。
【0032】
は、置換されてもよい二環式縮合炭化水素環基または置換されてもよい二環式複素環基である。Rの二環式縮合炭化水素環基および二環式複素環基の置換基としては、置換基群αから選択される少なくとも1種の基が挙げられる。
ただし、Rが置換されてもよい二環式縮合炭化水素環基の場合、Gは窒素原子であり;
がCHであり、Rが塩素原子または置換されてもよいC3-8シクロアルキル基の場合、Rは一般式(2-1)または(2-2)で表される基である。
【0033】
【化6】
【0034】
式中、X、X、Xは、同一または異なって、CRまたは窒素原子であり;Rは、水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよいC1-6アルキル基であり、Rは、置換されてもよいC3-6アルキル基、置換されてもよいC3-8シクロアルキル基、置換されてもよいC3-8シクロアルキルC1-6アルキル基、置換されてもよいアリール基、置換されてもよいアルC1-6アルキル基、置換されてもよいアシル基、置換されてもよい複素環基または置換されてもよい複素環C1-6アルキル基である。
のC1-6アルキル基の置換基としては、置換基群αから選択される少なくとも1種の基が挙げられる。
のC3-6アルキル基、C3-8シクロアルキル基、C3-8シクロアルキルC1-6アルキル基、アリール基、アルC1-6アルキル基、アシル基、複素環基および複素環C1-6アルキル基の置換基としては、置換基群αから選択される少なくとも1種の基が挙げられる。
【0035】
は、一般式(3-1)または(3-2)で表される基であることが好ましい。
【0036】
【化7】
【0037】
式中、X1a、X2a、X3aは、同一または異なって、CRまたは窒素原子であり;Xは、CHまたは窒素原子であり;R4aは、置換されてもよいC1-6アルキル基または置換されてもよいアリール基であり;Rは、水素原子、置換されてもよいC3-8シクロアルケニル基または置換されてもよいアリール基である。
あるいは、GがCHであり、Rが塩素原子または置換されてもよいC3-8シクロアルキル基の場合、Rは一般式(4)で表される基であることが好ましい。
【0038】
【化8】
【0039】
式中、X1bは、CHまたは窒素原子であり;R4bは、置換されてもよいアリール基である。
【0040】
4aのC1-6アルキル基としては、C1-4アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
4aのアリール基としては、フェニル基が好ましい。
4aのC1-6アルキル基およびアリール基の置換基としては、置換基群αから選択される少なくとも1種の基が挙げられる。
【0041】
のC3-8シクロアルケニル基としては、C3-6シクロアルケニル基であることが好ましく、シクロへキセニル基であることがより好ましい。
のアリール基としては、フェニル基が好ましい。
のC3-8シクロアルケニル基、アリール基および複素環式基の置換基としては、置換基群αから選択される少なくとも1種の基が挙げられる。
【0042】
4bのアリール基としては、フェニル基が好ましい。
4bのアリール基の置換基としては、置換基群αから選択される少なくとも1種の基が挙げられる。
【0043】
は、一般式(5)で表される基であることがより好ましい。ただし、このときGは窒素原子であることが好ましい。
【0044】
【化9】
【0045】
式中、R4cは、置換されてもよいC1-6アルキル基であり;R5cは、置換されてもよいアリール基または置換されてもよいC3-8シクロアルケニル基である。
【0046】
4cのC1-6アルキル基としては、C1-4アルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
4cのC1-6アルキル基の置換基としては、置換基群αから選択される少なくとも1種の基が挙げられる。
【0047】
5cのアリール基としては、フェニル基であることが好ましい。
5cのC3-8シクロアルケニル基としては、C3-6シクロアルケニル基であることが好ましく、シクロへキセニル基であることがより好ましい。
5cのアリール基およびC3-8シクロアルケニル基の置換基としては、置換基群αから選択される少なくとも1種の基が挙げられる。
【0048】
置換基群α:ハロゲン原子、保護されてもよいヒドロキシル基、保護されてもよいカルボキシル基、保護されてもよいアミノ基、ニトロ基、シアノ基、置換基群βより選択される少なくとも1種の基で置換されてもよいカルバモイル基、置換基群βより選択される少なくとも1種の基で置換されてもよいC1-6アルキル基、置換基群βより選択される少なくとも1種の基で置換されてもよいC2-6アルケニル基、置換基群βより選択される少なくとも1種の基で置換されてもよいC3-8シクロアルキル基、置換基群βより選択される少なくとも1種の基で置換されてもよいC1-6アルコキシ基、置換基群βより選択される少なくとも1種の基で置換されてもよいアシル基、置換基群βより選択される少なくとも1種の基で置換されてもよいアルコキシカルボニル基、置換基群βより選択される少なくとも1種の基で置換されてもよいC1-6アルキルアミノ基、置換基群βより選択される少なくとも1種の基で置換されてもよいジ(C1-6アルキル)アミノ基、置換基群βより選択される少なくとも1種の基で置換されてもよいC1-6アルキルチオ基、置換基群βより選択される少なくとも1種の基で置換されてもよいC1-6アルキルスルホニル基、置換基群βより選択される少なくとも1種の基で置換されてもよいアリール基、置換基群βより選択される少なくとも1種の基で置換されてもよい複素環基、オキソ基。
【0049】
置換基群β:ハロゲン原子、保護されてもよい水酸基、保護されてもよいカルボキシル基、保護されてもよいアミノ基、カルバモイル基、ハロゲン原子で置換されてもよいC1-6アルキル基、ハロゲン原子で置換されてもよいC1-6アルコキシ基、C1-6アルキルアミノ基、ジ(C1-6アルキル)アミノ基、複素環基、オキソ基。
【0050】
本発明中の好ましい化合物としては、以下の化合物を挙げることができる。
2-((1-ベンジル-1H-インダゾール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルベンゾアート、2-((1-(シクロヘキシルメチル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-フェニル-1H-インドール-4-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((7-(2-フルオロフェニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-メチル-7-(4-トリフルオロメチル)フェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、2-((7-(3-クロロフェニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-メチル-7-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-フェニル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((5-フェニルナフタレン-1-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((5-フェニルナフタレン-2-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-メチル-7-フェニル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-(3-フルオロフェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、2-((1-ベンジル-6-フルオロ-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、2-((1-ベンジル-4,6-ジフルオロ-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((7-(3,6-ジヒドロ-2H-ピラン-4-イル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-フェニルイソキノリン-6-イル)アミノ)ニコチン酸、2-((7-(4-シアノフェニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、2-((7-(4-クロロフェニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((2-オキソ-1-フェニル-1,2-ジヒドロキノリン-5-イル)アミノ)安息香酸、2-((7-シクロヘキス-1-エン-1-イル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-(3-フルオロベンジル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸。
【0051】
本発明の化合物としては、5-シクロプロピル-2-((7-(2-フルオロフェニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-メチル-7-(4-トリフルオロメチル)フェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、2-((7-(3-クロロフェニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-メチル-7-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((5-フェニルナフタレン-1-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((5-フェニルナフタレン-2-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-メチル-7-フェニル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-フェニルイソキノリン-6-イル)アミノ)ニコチン酸、2-((7-(4-シアノフェニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、2-((7-(4-クロロフェニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((2-オキソ-1-フェニル-1,2-ジヒドロキノリン-5-イル)アミノ)安息香酸及び2-((7-シクロヘキス-1-エン-1-イル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸から選択される少なくとも1種の化合物またはその塩であることがより好ましい。
【0052】
本発明の化合物としては、5-シクロプロピル-2-((1-メチル-7-(4-トリフルオロメチル)フェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、5-シクロプロピル-2-((1-メチル-7-(4-(トリフルオロメトキシ)フェニル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、2-((7-(4-クロロフェニル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸及び2-((7-シクロヘキス-1-エン-1-イル)-1-メチル-1H-インドール-5-イル)アミノ)-5-シクロプロピルニコチン酸から選択される少なくとも1種の化合物またはその塩であることがさらに好ましい。
本発明の化合物としては、5-シクロプロピル-2-((1-フェニル-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸、および5-シクロプロピル-2-((1-(3-フルオロベンジル)-1H-インドール-5-イル)アミノ)ニコチン酸も好ましい。
【0053】
本発明の好ましい塩としては、薬理学的に許容される塩を挙げることができる。
一般式(1)で表わされる化合物において、異性体(たとえば、光学異性体、幾何異性体および互変異性体など)が存在する場合、本発明は、それらの異性体を包含し、また、溶媒和物、水和物および種々の形状の結晶を包含するものである。
【0054】
次に本発明化合物の製造方法について説明する。
本発明化合物は、国際公開第2014/069510に記載の製造方法にしたがって製造することができるが、これに限定されない。
【0055】
医薬組成物とは、有効成分である本発明の化合物またはその塩以外に、製剤化に使用される賦形剤、担体および希釈剤などの製剤補助剤を適宜混合した組成物を意味する。
【0056】
本発明を医薬組成物として用いる場合、通常、製剤化に使用される賦形剤、担体および希釈剤などの製剤補助剤を適宜混合してもよい。
添加剤としては、たとえば、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、矯味剤、着色剤、着香剤、界面活性剤、コーティング剤および可塑剤などが挙げられる。
賦形剤としては、たとえば、エリスリトール、マンニトール、キシリトールおよびソルビトールなどの糖アルコール類;白糖、粉糖、乳糖およびブドウ糖などの糖類;α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリンおよびスルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンナトリウムなどのシクロデキストリン類;結晶セルロースおよび微結晶セルロースなどのセルロース類;ならびにトウモロコシデンプン、バレイショデンプンおよびアルファー化デンプンなどのでんぷん類が挙げられる。
崩壊剤としては、たとえば、カルメロース、カルメロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスポピドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロースおよび部分α化デンプンなどが挙げられる。
結合剤としては、たとえば、ヒドロキシプロピルセルロース、カルメロースナトリウムおよびメチルセルロースなどが挙げられる。
滑沢剤としては、たとえば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、タルク、含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸およびショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。
矯味剤としては、たとえば、アスパルテーム、サッカリン、ステビア、ソーマチンおよびアセスルファムカリウムなどが挙げられる。
着色剤としては、たとえば、二酸化チタン、三二酸化鉄、黄色三二酸化鉄、黒酸化鉄、食用赤色102号、食用黄色4号および食用黄色5号などが挙げられる。
着香剤としては、たとえば、オレンジ油、レモン油、ハッカ油およびパインオイルなどの精油;オレンジエッセンスおよびペパーミントエッセンスなどのエッセンス;チェリーフレーバー、バニラフレーバーおよびフルーツフレーバーなどのフレーバー;アップルミクロン、バナナミクロン、ピーチミクロン、ストロベリーミクロンおよびオレンジミクロンなどの粉末香料;バニリン;ならびにエチルバニリンが挙げられる。
界面活性剤としては、たとえば、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ポリソルベートおよびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油などが挙げられる。
コーティング剤としては、たとえば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アミノアルキルメタクリレートコポリマーE、アミノアルキルメタクリレートコポリマーRS、エチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メタクリル酸コポリマーL、メタクリル酸コポリマーLDおよびメタクリル酸コポリマーSなどが挙げられる。
可塑剤としては、たとえば、クエン酸トリエチル、マクロゴール、トリアセチンおよびプロピレングリコールなどが挙げられる。
これらの添加物は、いずれか一種または二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
配合量は、特に限定されず、それぞれの目的に応じ、その効果が充分に発現されるよう適宜配合すればよい。
これらは、常法にしたがって、錠剤、カプセル剤、散剤、シロップ剤、課粒剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、液剤、紛体製剤、坐剤、点眼剤、点鼻剤、点耳剤、貼付剤、軟膏剤または注射剤などの形態で、経口または非経口で投与することができる。また、投与方法、投与量および投与回数は、患者の年齢、体重および症状に応じて適宜選択することができる。
通常、成人に対しては、経口または非経口投与により、1日、0.01~1000mg/kgを1回から数回に分割して投与すればよい。
【実施例
【0058】
本発明を、実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
[化合物番号1~20の製造]
国際公開第2014/069510に記載の製造方法にしたがって、表1~表3に記載される化合物を製造した。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
【表3】
【0063】
[細胞増殖試験]
略語は以下示す。
DMEM:ダルベッコ改変イーグル培地
bFGF:塩基性線維芽細胞成長因子
EGF:上皮成長因子
FCS:ウシ胎児血清
MTT:3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
【0064】
GICR株:E6R(Stem Cells. 2016 Aug;34(8):2016-25.)を用いて、細胞増殖試験を行った。
細胞の培養液は DMEM/Ham’s F-12 medium(SIGMA、D8062)に様々な化合物、bFGF(Peprotech、100-18B),EGF(Peprotech、100-15)を加えたメディウムとDMEM medium(Nacalai tesque、08458-45)に10%となるようにFCS(Hyclone、SH30910.03)を加えたメディウムを混合し、使用した。
所定の濃度に調整した化合物を80 uL/wellで96wellプレート(Falcon、353072)に分注し、E6、E6R細胞を1000 cells/80 μL/wellで、96wellプレートに播種した。3日後にMTT試薬 (DOJINDO,341-01823)を10μL添加し、37℃で3時間インキュベーションし、培養液を除去、DMSO 100 μLを加え、570nmの吸光度をBio-Rad iMark(Bio-Rad、168-1130JA)を用いて測定した。吸光度を生細胞数の指標として、各試験化合物濃度における増殖阻害率を下式にて算出した。
【0065】
各化合物濃度における増殖阻害率を求め、XLfitを用いて50% 増殖阻害濃度[GI50(μmol/L)]を算出した。
増殖阻害率(%)=(試験化合物添加ウェル発光量)÷(DMSO添加ウェル発光量)×100
【0066】
結果を表4~表6に示す。
なお、表中の略語は、以下の意味を有する。
A:GI50値<1.0μmol/L
B:1.0μmol/L≦GI50値<10μmol/L
C:10μmol/L≦GI50値
【0067】
【表4】
【0068】
【表5】
【0069】
【表6】
【0070】
化合物番号1~20は、優れた細胞増殖抑制効果を示した。
【0071】
[化合物8はDHODH の機能阻害を介してSOX2 の発現低下、核外排除を促進し、SOX2 の核外排除はCRM1 依存的である]
GIC株(E6 cell:黒)、E16(白)を化合物8(10 μM)で処理し、神経幹細胞マーカー(SOX2, NESTIN)と分化マーカー( βIII tubulin 、Glial fibrillary Acidic Protein (GFAP) 、Galactocerebroside (GC))と分化マーカー(B:βIII tubulin(緑)、Glial fibrillary Acidic Protein (GFAP、赤)、Galactocerebroside (GC、緑)、核((DAPI 染色(青))を免疫染色し、陽性率を定量した。結果、SOX2、NESTIN の著減が観察され、分化マーカーの発現が上昇することが明確化した(*P<0.05, **P<0.01, ***P<0.001、統計処理はt-test)(図1)。DHODH遺伝子をノックダウンした結果、ノックダウンベクター導入細胞(GFP陽性、緑)においてSOX2 シグナルの減少・消失が確認された。
【0072】
化合物8依存SOX2 の核外排除は、核外輸送因子Exportin (別名CRM1)依存的である。化合物8(10 μM)とCRM1 特異的阻害剤leptomycin B (LMB、150 nM)存在下で1 日培養し、GICをSOX2 抗体にて免疫染色した。結果、SOX2/DAPI陽性率は、GIC(E6)細胞にて、Control :95+/-2%, 化合物8添加:7+/-3%, 化合物8+LMB添加:87+/-9%であり、GIC(E16)細胞にて、Control :72+/-11%, 化合物8添加:0.5+/-1%, 化合物8+LMB添加:81+/-10%であり、LMBの添加により、化合物8に依存したSOX2の核外排除を抑制した。
【0073】
[化合物8はゼノグラフトモデルにおいてGICの腫瘍増殖抑制効果を示し、SOX2 の発現低下、核外排除を促進する]
化合物8は、ゼノグラフトモデルにおいて抗腫瘍効果を示した。テモゾロミド耐性E6(1x106)をNOD/SCID マウス(n=6)の皮下に移植し、腫瘍の長径と短径が5-6 mm となった後に化合物8(1.0 mg/kg)を11 日間連日経口投与した結果、腫瘍増幅の軽減が確認できた(図2)。腫瘍の大きさは、(長径)x(短径)として算出した。化合物8の経口投与開始12 日目に化合物8処理マウスとコントロールマウスから腫瘍を摘出し、4%パラフォルムアルデヒドで固定後に凍結切片を作製した結果、化合物8処理により腫瘍細胞の集塊が消失した。また、化合物8処理によりマウス腫瘍組織中のSOX2 の消失や核外染色像が観察された。
【0074】
[SOX2 の核内保持は化合物8の細胞傷害活性を部分的に中和する]
GICに薬剤を添加後、UDP-GlcNAc を添加したところ、GICにおけるSOX2の発現低下と、GIC に対する化合物8の傷害活性が中和される(図3及び図4)。CRM1 とSOX2 の結合に関わるリジン75 をアラニンに置換したSOX2 K75A とO-GlcNAc 化標的セリン248 をアラニンに置換したSOX2 S248A を作製し、これら変異SOX2 と野生型SOX2 (SOX2 wt)を恒常的に発現するGIC を樹立した。化合物8処理後、抗FLAG 抗体を用いた免疫染色によりSOX2 の局在を検討し、これら変異株を発現しているGIC の生存率をMTT アッセイにより検討した(図5)。化合物8存在下でSOX2 K75A は核内に存在し、化合物8の細胞傷害活性を部分的に中和した。SOX2 S248A は、化合物8処理により核内に保持されず、細胞傷害活性に対する抑制効果は観られなかった。SOX2 wt の強制発現はSOX2 K75A とSOX2 S248A の中間値を示した。SOX2/DAPI陽性率は、GIC(E6):Control:0%, SOX2 wt:36+/-5%, SOX2 K75A:63+/-5%, SOX2 S248A: 18+/-2%、GIC(E16): Control:0%, SOX2 wt:22+/-4%, SOX2 K75A:58+/-6%, SOX2 S248A: 15+/-3%であった。 エラーバー:± SD。統計処理はt-test。*P<0.05, **P<0.01, ***P<0.001。GIC を化合物8単独(10 μmol/L)又はUDP-GlcNAc(1 mmol/L)と共に2 日間培養し、SOX2とNESTINに対する免疫染色を行なった。その結果、UDP-GlcNAc の添加は、化合物8に依存したSOX2 の核外排除を抑制した。
【0075】
[SOX2 のO-GlcNAc 化はSOX2 の核内保持に関与している]
O-GlcNAc 転移酵素(OGT)特異的阻害剤OSMI-1は、GIC の増殖抑制とSOX2 発現を抑制する。(A)GIC を様々な濃度のOSMI-1 存在下で3日間培養し、MTT アッセイを用いて細胞増殖を検討した(図6)。(B)20 μmol/LのOSMI-1 存在下で2 日間培養したGIC を用いたSOX2とNESTINに対する免疫染色を実施し、SOX2陽性率(SOX2/DAPI)を算出した結果を以下に示す。
GIC(E6):Control: 71+/-2%
OSMI-1添加:32+/-4%
GIC(E16):Control: 65+/-5%
OSMI-1添加:30+/-5%
【0076】
[化合物8と化合物21はDHODHを阻害する。化合物21はGIC増殖抑制効果を示す]
DHODH酵素アッセイは、「Benjamin Bader, Wolfgang Knecht, Markus Fries, and Monika Loffler. Expression, Purification, and Characterization of Histidine-Tagged Rat and Human Flavoenzyme Dihydroorotate Dehydrogenase. Protein Expression and Purification, 1998, 13, 414-422.」を参考にした。
【0077】
DHODH活性は、青色に発色する色素2,6-ジクロロフェノールインドフェノール(DCIP 、MP BIOMEDICALS、MP150118)が消光するアッセイとカップリングさせる酵素アッセイ系を用いて評価した。精製された組換えヒトDHODH (DHODH, 31-395aa, Human, His tag, E.coli, ATGP1615)をATGenから購入した。酵素アッセイは、100 mM Hepes(同仁化学研究所、342-01375)、400 mM NaCl(富士フイルム和光純薬、191-01665)、10% Glycerol(富士フイルム和光純薬、075-00616)、0.05% TritonX-100(Sigma-Aldrich、T8787-100ML)、0.2 mM、Ubiquinone-10(富士フイルム和光純薬、216-00761)、0.1 mM DHO(Sigma-Aldrich、D7128)、0.5% DMSO(富士フイルム和光純薬、047-29353)、0.175 μg/mL DHODH及び0.12 mM DCIPに5N 水酸化カリウム(富士フイルム和光純薬、168-21815)を加えてpH 8.0に調整した緩衝液を用いて、384ウェルプレート中で行った。BiomekNX(ベックマン・コールター社)を用いて所定濃度の試験化合物を添加し、基質の添加により酵素反応を開始した。酵素活性は、Envision plate-reading spectrophotometer(パーキンエルマー社)を用いて、DCIP吸光度(600 nm)の減少を50分間測定することで評価した。
【0078】
各試験化合物濃度における酵素反応阻害率を求め、XLfitを用いて50% 酵素反応阻害濃度[IC50(nmol/L)]を算出した。
酵素反応阻害率(%)=(試験化合物添加ウェル発光量)÷(DMSO添加ウェル発光量)×100
【0079】
表7のとおり、各試験化合物は、優れた酵素反応阻害作用を示した。
【0080】
【表7】
【0081】
[細胞増殖試験]
略語は以下示す。
DMEM:ダルベッコ改変イーグル培地
bFGF:塩基性線維芽細胞成長因子
EGF:上皮成長因子
FCS:ウシ胎児血清
MTT:3-[4,5-ジメチルチアゾール-2-イル]-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
【0082】
GICR株:E6、E6R、E16、E16R (Stem Cells. 2016 Aug;34(8):2016-25.)を用いて、細胞増殖試験を行った。
細胞の培養液はDMEM/Ham’s F-12 medium(SIGMA、D8062)に様々な化合物、bFGF(Peprotech、100-18B),EGF(Peprotech、100-15)を加えたメディウムとDMEM medium(Nacalai tesque、08458-45)に10%となるようにFCS(Hyclone、SH30910.03)を加えたメディウムを混合し、使用した。
所定の濃度に調整した化合物を80 uL/wellで96wellプレート(Falcon、353072)に分注し、E6、E6R細胞を1000 cells/80μL/wellで、96wellプレートに播種した。3日後にMTT試薬 (DOJINDO,341-01823)を10μL添加し、37℃で3時間インキュベーションし、培養液を除去、DMSO 100μLを加え、570nmの吸光度をBio-Rad iMark(Bio-Rad、168-1130JA)を用いて測定した。吸光度を生細胞数の指標として、各試験化合物濃度における増殖阻害率を下式にて算出した。
【0083】
各化合物濃度における増殖阻害率を求め、XLfitを用いて50%増殖阻害濃度[GI50(μmol/L)]を算出した。
増殖阻害率(%)=(試験化合物添加ウェル発光量)÷(DMSO添加ウェル発光量)×100
【0084】
結果を表8及び表9に示す。
なお、表中の略語は、以下の意味を有する。
A:GI50値<1.0μmol/L
B:1.0μmol/L≦GI50値<10μmol/L
C:10μmol/L≦GI50値
【0085】
【表8】
【0086】
【表9】
【0087】
[化合物8は、GICのDHODH酵素の働きを抑制し、ピリミジン代謝を阻害する]
GIC細胞(E6、E16)に化合物8を10 μM加え、24時間処置した。細胞を、5%マンニトール溶液で洗浄し、70%の氷で冷やしたメタノールを加え、代謝物を抽出した。LC-MS/MSを用いた代謝産物の定量結果を図7に示す。化合物8処理により、コントロールのDMSO処置群と比較して、DHOの量がE6細胞にて596倍、E16細胞にて125倍上昇した。また、オロト酸の量がE16細胞にて低下していた。化合物8添加により、ピリミジン代謝産物でオロト酸の下流の代謝物、UMP, UDP, UTP, CMP, CDP, CTP, dCTP, and dTTPの量が低下し、プリン代謝のATP, GTP, dATP, and dGTPの量は変化がなかった。DHODHを阻害することによるピリミジン代謝を阻害することが明らかとなった。
【0088】
<まとめ>
化合物8はDHODHを阻害し、ピリミジン代謝産物が低下し、UDP-GlcNac量が低下する。UDP-GlcNac量が低下することにより、SOX2のO-GlcNAc 化が低下、核外排出し、SOX2発現が低下することが明らかとなった。これにより未分化性が低下し、GICが分化する。
【産業上の利用可能性】
【0089】
本発明の化合物またはその塩は、優れた増殖抑制効果を有することから、グリオーマの予防または治療などの処置に有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7