(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】加工溝検出装置及び切削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 49/10 20060101AFI20231020BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20231020BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20231020BHJP
B23Q 17/20 20060101ALI20231020BHJP
G01B 17/08 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
B24B49/10
H01L21/78 F
B24B27/06 M
B23Q17/20 Z
G01B17/08
(21)【出願番号】P 2019213605
(22)【出願日】2019-11-26
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井谷 博之
(72)【発明者】
【氏名】松本 淑乃
【審査官】マキロイ 寛済
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-228653(JP,A)
【文献】特開2007-283392(JP,A)
【文献】特開平09-113249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 49/10
H01L 21/301
B24B 27/06
B23Q 17/20
G01B 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面側にダイシングテープが貼着された被加工物に形成された加工溝を検出する加工溝検出装置であって、
該被加工物を保持する保持手段と、
該ダイシングテープを介して該保持手段に保持された被加工物の表面側から該被加工物に対して超音波を発信する超音波発生ユニット、および、該被加工物から反射してきた超音波(反射波)を受信する超音波受信ユニットを備えた超音波ユニットと、
該保持手段と該超音波ユニットとを被加工物の表面と平行な方向に相対的に移動させる移動手段と、
該被加工物と該超音波ユニットとの間に水層を形成する水層形成手段と、
該超音波受信ユニットによって受信した反射波の強度に応じて濃淡として画像化する画像化ユニットと、
を含み、
該移動手段が、分割予定ラインに沿って該加工溝が形成された該被加工物と該超音波ユニットとを相対的に移動させながら、
該超音波発生ユニットは、該被加工物に形成された加工溝の裏面側に超音波が収束するように超音波を発信し、
該被加工物の裏面側の超音波の反射波強度に基づいて、
該被加工物の該裏面側の該加工溝を含む画像を生成し、該加工溝の裏面側の
両縁の状態を検出することを特徴とする、加工溝検出装置。
【請求項2】
被加工物を保持するチャックテーブルと、
該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ブレードを備えた切削手段と、
該切削手段で形成した切削溝を検出する検出手段と、
を備えた切削装置であって、
該検出手段は、請求項1に記載の加工溝検出装置であることを特徴とする切削装置。
【請求項3】
該チャックテーブルは、請求項1に記載の保持手段であることを特徴とする、請求項2に記載の切削装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工溝検出装置及び切削装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエーハのような被加工物をストリートに沿って切断してチップを形成するために、被加工物を切削する切削ブレードを備えた切削装置(例えば、特許文献1参照)が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1等に示された切削装置において、切削ブレードに目詰まりや欠けが生じると、被加工物に形成された加工溝である切削溝の両側にも欠けが生じる場合がある。特に、特許文献1に示された切削装置は、被加工物の裏面側に生じる欠けは表面に生じる欠けよりも大きい場合が多く、デバイスの品質を著しく低下させるという問題がある。
【0005】
上述したような被加工物の裏面側の切削溝に生じる欠け(以下、裏面側の欠け)を確認するためには、被加工物に形成された切削溝を裏面側から撮像すればよいが、被加工物の裏面側にはダイシングテープが貼着されており、ダイシングテープはチャックテーブルからの離脱を容易にするために微小な凹凸を有しているため、ダイシングテープを介して被加工物の裏面側の欠けを撮像することは困難である。従って、ダイシングテープを剥離して観察する必要があり、手間のかかる作業となっていた。
【0006】
本発明は、上記事実に鑑みてなされたものであり、被加工物の裏面側の欠けを容易に把握可能な加工溝検出装置及び切削装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の加工溝検出装置は、裏面側にダイシングテープが貼着された被加工物に形成された加工溝を検出する加工溝検出装置であって、該被加工物を保持する保持手段と、該ダイシングテープを介して該保持手段に保持された被加工物の表面側から該被加工物に対して超音波を発信する超音波発生ユニット、および、該被加工物から反射してきた超音波(反射波)を受信する超音波受信ユニットを備えた超音波ユニットと、該保持手段と該超音波ユニットとを被加工物の表面と平行な方向に相対的に移動させる移動手段と、該被加工物と該超音波ユニットとの間に水層を形成する水層形成手段と、該超音波受信ユニットによって受信した反射波の強度に応じて濃淡として画像化する画像化ユニットと、を含み、該移動手段が、分割予定ラインに沿って該加工溝が形成された該被加工物と該超音波ユニットとを相対的に移動させながら、該超音波発生ユニットは、該被加工物に形成された加工溝の裏面側に超音波が収束するように超音波を発信し、該被加工物の裏面側の超音波の反射波強度に基づいて、該被加工物の該裏面側の該加工溝を含む画像を生成し、該加工溝の裏面側の両縁の状態を検出することを特徴とする。
【0008】
本発明の切削装置は、被加工物を保持するチャックテーブルと、該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ブレードを備えた切削手段と、該切削手段で形成した切削溝を検出する検出手段と、を備えた切削装置であって、該検出手段は、前記加工溝検出装置であることを特徴とする。
【0009】
前記切削装置において、該チャックテーブルは、前記保持手段であっても良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、被加工物の裏面側の欠けを容易に把握可能となるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る切削装置の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された切削装置の加工溝検出装置が加工溝を検出する状態を示す断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示された切削装置の加工溝検出装置の要部の構成を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、
図3に示された超音波ユニットの受信部が受信した超音波の反射波を模式的に示す図である。
【
図5】
図5は、
図1に示された切削装置の加工溝検出装置の制御ユニットが生成した被加工物の裏面の画像の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、実施形態2に係る加工溝検出装置の構成例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る加工溝検出装置及び切削装置を図面に基づいて説明する。まず、切削装置1の構成を説明する。
図1は、実施形態1に係る切削装置の構成例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示された切削装置の加工溝検出装置が加工溝を検出する状態を示す断面図である。
図3は、
図1に示された切削装置の加工溝検出装置の要部の構成を模式的に示す図である。
図4は、
図3に示された超音波ユニットの受信部が受信した超音波の反射波を模式的に示す図である。
図5は、
図1に示された切削装置の加工溝検出装置の制御ユニットが生成した被加工物の裏面の画像の一例を示す図である。
【0014】
(被加工物)
実施形態1に係る切削装置1の加工対象の被加工物200は、シリコン、ガリウムヒ素、SiC(炭化ケイ素)又はサファイア、などを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のウエーハである。被加工物200は、表面201に格子状に形成された複数の分割予定ライン202によって格子状に区画された領域にデバイス203が形成されている。
【0015】
また、本発明の被加工物200は、中央部が薄化され、外周部に厚肉部が形成された所謂TAIKO(登録商標)ウエーハでもよく、ウエーハの他に、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状のQFN(Quad Flat No leaded)パッケージ基板等の樹脂パッケージ基板、セラミックス基板、フェライト基板、又はニッケル及び鉄の少なくとも一方を含む基板、ガラス基板等でも良い。実施形態1において、被加工物200は、裏面204が外周縁に環状フレーム205が装着されたダイシングテープ206に貼着されて、環状フレーム205に支持されている。
【0016】
(切削装置)
図1に示された切削装置1は、被加工物200をチャックテーブル10の保持面11で保持し分割予定ライン202に沿って切削ブレード21で切削加工(加工に相当)して、分割予定ライン202に沿って被加工物200を個々のデバイス203に分割する加工溝である切削溝207(
図2に示す)を形成する加工装置である。切削装置1は、
図1に示すように、切削ユニット20で形成した切削溝207を検出する検出手段である加工溝検出装置2と、被加工物200を切削する切削ブレード21を備えた切削ユニット20と、被加工物200を撮影する図示しない撮像ユニットと、を備える。
【0017】
加工溝検出装置2は、裏面204側にダイシングテープ206が貼着された被加工物200に切削ユニット20で形成した切削溝207を検出するものである。また、加工溝検出装置2は、被加工物200の切削溝207の裏面204側の両端の状態を検出するものである。加工溝検出装置2は、
図1に示すように、被加工物200を保持面11で吸引保持する保持手段であるチャックテーブル10と、超音波トランスデューサ30と、移動ユニット40と、水層形成手段である水層形成ユニット50と、画像化ユニットである制御ユニット100とを含む。
【0018】
チャックテーブル10は、円盤形状であり、被加工物200を保持する保持面11がポーラスセラミック等から形成されている。また、チャックテーブル10は、移動ユニット40のX軸移動ユニット41により切削ユニット20の下方の加工領域と、切削ユニット20の下方から離間して被加工物200が搬入出される搬入出領域とに亘って移動自在に設けられることで、水平方向と平行なX軸方向に移動自在に設けられている。
【0019】
チャックテーブル10は、移動ユニット40の回転移動ユニット44によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転自在に設けられている。チャックテーブル10は、保持面11が図示しない真空吸引源と接続され、保持面11が真空吸引源により吸引されることで、保持面11に載置された被加工物200を吸引、保持する。実施形態1では、チャックテーブル10は、ダイシングテープ206を介して被加工物200の裏面204側を吸引、保持する。また、チャックテーブル10の周囲には、
図1に示すように、環状フレーム205をクランプするクランプ部12が複数設けられている。
【0020】
切削ユニット20は、スピンドル23の先端にチャックテーブル10に保持された被加工物200を切削する切削ブレード21が回転可能に装着される切削手段である。切削ユニット20は、チャックテーブル10に保持された被加工物200に対して、移動ユニット40のY軸移動ユニット42によりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、移動ユニット40のZ軸移動ユニット43によりZ軸方向に移動自在に設けられている。
【0021】
切削ユニット20は、
図1に示すように、Y軸移動ユニット42及びZ軸移動ユニット43などを介して、装置本体3から立設した支持フレーム4に設けられている。切削ユニット20は、Y軸移動ユニット42及びZ軸移動ユニット43により、チャックテーブル10の保持面11の任意の位置に切削ブレード21を位置付け可能となっている。
【0022】
切削ユニット20は、切削ブレード21と、Y軸移動ユニット42及びZ軸移動ユニット43によりY軸方向及びZ軸方向に移動自在に設けられたスピンドルハウジング22と、スピンドルハウジング22に軸心回りに回転可能に設けられかつ図示しないモータにより回転されるとともに先端に切削ブレード21が装着されるスピンドル23とを備える。
【0023】
切削ブレード21は、略リング形状を有する極薄の切削砥石である。実施形態1において、切削ブレード21は、円環状の円形基台と、円形基台の外周縁に配設されて被加工物200を切削する円環状の切り刃とを備える所謂ハブブレードである。切り刃は、ダイヤモンドやCBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒と、金属や樹脂等のボンド材(結合材)とからなり所定厚みに形成されている。なお、本発明では、切削ブレード21は、切り刃のみで構成された所謂ワッシャーブレードでもよい。スピンドル23は、モータにより軸心回りに回転することで、切削ブレード21を回転させる。なお、切削ユニット20の切削ブレード21及びスピンドル23の軸心は、Y軸方向と平行に設定されている。切削ユニット20は、被加工物200の表面201側からダイシングテープ206に到達するまで分割予定ライン202に切削ブレード21を切り込ませて、被加工物200を個々のデバイス203に分割する。
【0024】
撮像ユニットは、チャックテーブル10に保持された切削前の被加工物200の分割すべき領域を撮影する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。撮像ユニットは、チャックテーブル10に保持された被加工物200を撮影して、被加工物200と切削ブレード21との位置合わせを行なうアライメントを遂行するため等の画像を得、得た画像を制御ユニット100に出力する。
【0025】
超音波トランスデューサ30は、切削ユニット20と一体的に移動するように、切削ユニット20に固定されている。超音波トランスデューサ30は、
図3に示す先端面31がチャックテーブル10の保持面11と対向する、超音波トランスデューサ30は、パルス状の電圧が印加されることにより、20kHz以上かつ数GHz以下の周波数の超音波300を先端面31から発信させるための圧電振動子を備えている。
【0026】
超音波トランスデューサ30は、先端面31から発信する超音波300を収束させるために先端面31が球面状に形成されているが、本発明では、先端面31から発信する超音波300を収束する音響レンズを備えてもよい。また、実施形態では、超音波トランスデューサ30が収束する超音波300のスポットの直径は、10μm程度である。また、超音波トランスデューサ30は、超音波300の反射波301を受信する。
【0027】
水層形成ユニット50は、チャックテーブル10に保持された被加工物200の表面201と超音波トランスデューサ30の先端面31との間に純水で構成される水層51(
図2に示す)を形成するものである。実施形態1では、水層形成ユニット50は、超音波トランスデューサ30とともに切削ユニット20に固定され、先端の開口が超音波トランスデューサ30の先端面31とX軸方向に並べられかつ図示しない純水供給源から純水が供給される純水供給管52を備える。純水供給管52の先端の開口は、超音波トランスデューサ30の先端面31のX軸方向の隣に配置されている。水層形成ユニット50は、超音波トランスデューサ30が先端面31から超音波300を照射する際にチャックテーブル10の保持面11に保持された被加工物200の表面201と超音波トランスデューサ30の先端面31との間に純水を供給して、これらの間に水層51を形成する。
【0028】
移動ユニット40は、チャックテーブル10と切削ユニット20及び超音波トランスデューサ30とを保持面11に保持された被加工物200の表面201と平行な方向であるX軸方向及びY軸方向に相対的に移動させる移動手段である。移動ユニット40は、チャックテーブル10をX軸方向に加工送りする加工送りユニットであるX軸移動ユニット41と、切削ユニット20及び超音波トランスデューサ30をX軸方向に直交するY軸方向に割り出し送りする割り出し送りユニットであるY軸移動ユニット42と、切削ユニット20及び超音波トランスデューサ30をX軸方向とY軸方向との双方と直交する鉛直方向に平行なZ軸方向に切り込み送りする切り込み送りユニットであるZ軸移動ユニット43と、チャックテーブル10をZ軸方向と平行な軸心回りに回転する回転移動ユニット44とを少なくとも備える。
【0029】
X軸移動ユニット41は、チャックテーブル10及び回転移動ユニット44を加工送り方向であるX軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20及び超音波トランスデューサ30とをX軸方向に相対的に移動させる。Y軸移動ユニット42は、切削ユニット20及び超音波トランスデューサ30を割り出し送り方向であるY軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20及び超音波トランスデューサ30とをY軸方向に相対的に移動させる。
【0030】
Z軸移動ユニット43は、切削ユニット20及び超音波トランスデューサ30を切り込み送り方向であるZ軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20及び超音波トランスデューサ30とをZ軸方向に相対的に移動させる。回転移動ユニット44は、チャックテーブル10を支持して軸心回りに回転するとともに、X軸移動ユニット41によりチャックテーブル10とともにX軸方向に移動する。
【0031】
X軸移動ユニット41、Y軸移動ユニット42及びZ軸移動ユニット43は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のモータ及びチャックテーブル10又は切削ユニット20及び超音波トランスデューサ30をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。
【0032】
また、切削装置1は、チャックテーブル10のX軸方向の位置を検出するため図示しないX軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20及び超音波トランスデューサ30のY軸方向の位置を検出するための図示しないY軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20及び超音波トランスデューサ30のZ軸方向の位置を検出するためのZ軸方向位置検出ユニットとを備える。X軸方向位置検出ユニット及びY軸方向位置検出ユニットは、X軸方向、又はY軸方向と平行なリニアスケールと、読み取りヘッドとにより構成することができる。Z軸方向位置検出ユニットは、モータのパルスで切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出する。X軸方向位置検出ユニット、Y軸方向位置検出ユニット及びZ軸方向位置検出ユニットは、チャックテーブル10のX軸方向、切削ユニット20及び超音波トランスデューサ30のY軸方向又はZ軸方向の位置を制御ユニット100に出力する。なお、実施形態1では、切削装置1のチャックテーブル10、切削ユニット20及び超音波トランスデューサ30のX軸方向、Y軸方向及びZ軸方向の位置は、予め定められた図示しない基準位置に基づいて定められる。
【0033】
制御ユニット100は、
図1及び
図3に示すように、パルス発生部101と、受信部102と、画像化部103とを備える。パルス発生部101は、前述した周波数のパルス状の電圧を発生し、発生したパルス状の電圧を超音波トランスデューサ30の圧電振動子に印加することで、保持面11に保持された被加工物200の表面201と対向する超音波トランスデューサ30の先端面31から超音波300を発信する。先端面31から発信された超音波300は、水層形成ユニット50が形成した水層51内を透過する。こうして、超音波トランスデューサ30とパルス発生部101とは、
図3に示すように、ダイシングテープ206を介してチャックテーブル10に保持された被加工物200の表面201側から被加工物200に対して超音波300を発信する超音波発生ユニット32を構成している。
【0034】
受信部102は、超音波発生ユニット32の超音波トランスデューサ30の先端面31から発信されかつ超音波トランスデューサ30から受信した超音波300の反射波301(
図2及び
図4に示す)に応じた電圧信号を超音波トランスデューサ30から受信し、受信した電圧信号を増幅して画像化部103に出力する。なお、先端面31から発信されて水層51内を透過する超音波300は、音響インピーダンスが変化する界面で反射されるとともに、音響インピーダンスの差が大きな界面ほど反射波301の強度が強くなる。
【0035】
実施形態1では、超音波300は、水層51と被加工物200との界面である被加工物200の表面201及び被加工物200とダイシングテープ206との界面である被加工物200の裏面204から反射される。超音波トランスデューサ30は、
図4に示すように、超音波300の表面201からの反射波301(以下、符号301-1で示す)と、超音波300の裏面204からの反射波301(以下、符号301-2で示す)とを受信する。なお、
図4の横軸は、超音波トランスデューサ30から超音波300を発信してから経過した時間を示し、図中右側に向かうにしたがって時間が経過することを示している。また、
図4の縦軸は、超音波トランスデューサ30が受信した反射波301の強度を示し、図中上側に向かうにしたがって強度が強くなることを示している。
【0036】
受信部102は、被加工物200の表面201からの超音波300の反射波301-1に応じた電圧信号と、被加工物200の裏面204からの超音波300の反射波301-2に応じた電圧信号とを超音波トランスデューサ30から受信する。こうして、超音波トランスデューサ30と受信部102とは、
図3に示すように、ダイシングテープ206を介してチャックテーブル10に保持された被加工物200から反射してきた超音波300の反射波301を受信する超音波受信ユニット33を構成している。また、超音波発生ユニット32と超音波受信ユニット33は、
図3に示すように、超音波ユニット34を構成している。このため、実施形態1に係る加工溝検出装置2は、超音波ユニット34を備えている。
【0037】
画像化部103は、超音波受信ユニット33によって受信された被加工物200の裏面204側からの超音波300の反射波301を強度に応じて濃淡として画像化する。即ち、画像化部103を備える制御ユニット100は、超音波受信ユニット33によって受信された被加工物200の裏面204側からの超音波300の反射波301を強度に応じて濃淡として画像化する画像化ユニットである。画像化部103は、反射波301を強度に応じて濃淡として画像化し、
図5に示す画像400を形成する。画像化部103は、受信部102から電圧信号を受信する。なお、受信部102から画像化部103が受信する電圧信号は、電圧値の大きさが複数の段階(例えば256段階)の階調で規定されている。受信部102から画像化部103が受信する電圧信号は、反射波301の強度に応じた段階で電圧値が規定され、反射波301の強度が強いほど電圧値が高くかつ反射波301の強度が弱いほど電圧値が低く規定されている。画像化部103は、受信部102から受信する電圧信号と、各位置検出ユニットの検出結果とに基づいて、被加工物200のX軸方向及びY軸方向の各位置の電圧信号の電圧値の強弱を濃淡として示す画像400、即ち、濃淡を有する画像400を形成する。実施形態1では、画像400は、電圧値が高くなる位置を弱い位置よりも薄く表示する。
図5は、画像400の濃淡を省略している。
【0038】
加工溝検出装置2は、切削溝207が形成された被加工物200の表面201と先端面31との間に水層51を形成した状態で、被加工物200と超音波トランスデューサ30とを分割予定ライン202に沿って相対的に移動させながら超音波トランスデューサ30の先端面31から超音波300を照射し、超音波300の反射波を受信することで、画像化部103が被加工物200の裏面204側の各切削溝207を含む画像400を生成し、切削溝207の裏面204側の両縁の状態を検出する。
【0039】
また、制御ユニット100は、切削装置1及び加工溝検出装置2の各構成要素をそれぞれ制御して、被加工物200に対する加工動作を切削装置1に実施させるものであるとともに、切削溝207の裏面204側の両縁の状態の検出動作を加工溝検出装置2に実施させるものである。なお、制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、切削装置1及び加工溝検出装置2を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して切削装置1及び加工溝検出装置2の各構成要素に出力する。
【0040】
なお、パルス発生部101、受信部102及び画像化部103の機能は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムを演算処理装置が実行することで実現される。また、本発明では、パルス発生部101、受信部102及び画像化部103は、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサー、又は並列プログラム化したプロセッサー等の専用の処理回路(ハードウェア)で構成されても良い。特に、パルス発生部101と受信部102とは、単一のプログラム化したプロセッサー等の専用の処理回路(ハードウェア)で構成されても良い。
【0041】
制御ユニット100は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される表示ユニット110と、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる入力ユニット111とオペレータに報知する報知ユニット112とに接続されている。入力ユニット111は、表示ユニット110に設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。報知ユニット112は、音と光のうち少なくとも一方を発して、オペレータに報知する。
【0042】
また、実施形態1に係る切削装置1は、切削後の被加工物200を洗浄する洗浄ユニット60と、チャックテーブル10と洗浄ユニット60との間で搬送する図示しない搬送ユニットとを備える。洗浄ユニット60は、被加工物200をダイシングテープ206を介して吸引保持する保持手段であるスピンナテーブル61と、軸心回りに回転するスピンナテーブル61に吸引保持した被加工物200の表面201側に洗浄液を供給して洗浄する洗浄液供給ノズル62とを備える。
【0043】
(切削装置の加工動作)
切削装置1の加工動作を開始する際には、オペレータが、加工内容情報を制御ユニット100に登録し、切削加工前の被加工物200をチャックテーブル10の保持面11に載置する。その後、切削装置1は、オペレータから加工動作の開始指示があった場合に加工動作を開始する。切削装置1は、加工動作を開始すると、ダイシングテープ206を介して裏面204側をチャックテーブル10の保持面11に吸引保持するとともに、クランプ部12で環状フレーム205をクランプする。
【0044】
加工動作では、切削装置1は、X軸移動ユニット41がチャックテーブル10を加工領域に向かって移動して、撮像ユニットが被加工物200を撮影して、撮像ユニットが撮影して得た画像に基づいて、アライメントを遂行する。切削装置1は、分割予定ライン202に沿って被加工物200と切削ユニット20とを相対的に移動させながら、切削ブレード21を各分割予定ライン202にダイシングテープ206に到達するまで切り込ませて、分割予定ライン202に沿って被加工物200に切削溝207を形成して、被加工物200を個々のデバイス203に分割する。なお、切削溝207を形成する際に、切削装置1は、
図5に示すように、被加工物200の表面201、裏面204それぞれに切削溝207の両縁に欠け(チッピングともいう)208及びクラック209が形成されることがある。なお、
図5は、切削溝207の裏面204側の両縁に形成された欠け208及びクラック209を示している。
【0045】
切削装置1は、全ての分割予定ライン202に切削溝207を形成し、被加工物200を個々のデバイス203に分割すると、加工溝検出装置2が被加工物200の切削溝207の裏面204側の両縁の状態を検出する。切削装置1は、加工溝検出装置2がX軸移動ユニット41とY軸移動ユニット42とによりチャックテーブル10に保持された被加工物200の表面201に形成された切削溝207の上方に超音波トランスデューサ30を位置づけ、Z軸移動ユニット43により超音波トランスデューサ30を先端面31から発信する超音波300が裏面204に収束するZ軸方向の位置に位置付ける。切削装置1は、加工溝検出装置2が水層形成ユニット50の純水供給管52の先端の開口からチャックテーブル10に保持された被加工物200の表面201と超音波トランスデューサ30の先端面31との間に純水を供給して、水層51を形成する。
【0046】
切削装置1は、加工溝検出装置2がX軸移動ユニット41及びY軸移動ユニット42とにより分割予定ライン202に沿って被加工物200と超音波トランスデューサ30とを相対的に移動させながら先端面31から超音波300を発信して、超音波トランスデューサ30で反射波301を受信して、各分割予定ライン202の裏面204側の状態を検出する。実施形態1では、切削装置1は、一つの分割予定ライン202の裏面204側の状態を検出する際には、超音波300を発信し反射波301を受信しながら各分割予定ライン202に沿って各分割予定ライン202に対して超音波トランスデューサ30をX軸方向の全長に亘って移動させることと、超音波トランスデューサ30をY軸方向に所定距離移動させることを複数回繰り返して、被加工物200の裏面204からの反射波301を受信する。
【0047】
実施形態1では、加工溝検出装置2の画像化部103は、各位置検出ユニットの検出結果と、受信部102が受信し増幅した反射波301の電圧信号に基づいて、
図5に一例を示す画像400を生成する。実施形態1では、画像化部103は、反射波301の電圧信号が高くなるにしたがって明るくし、電圧信号が低くなるにしたがって暗くなる濃淡を有する画像400を形成する。即ち、画像400は、被加工物200の裏面204側の超音波300の反射波301の強度に応じて濃淡が変化する画像となっている。また、超音波300は、音響インピーダンスが変化する界面で反射されるとともに、音響インピーダンスの差が大きな界面ほど反射波301の強度が強くなるため、切削溝207の両縁に形成された欠け208及びクラック209からの反射波301が強くなる。このため、画像化部103が形成した画像400は、欠け208及びクラック209を他の部分よりも明るく表示する。
【0048】
加工溝検出装置2は、被加工物200の全ての分割予定ライン202の切削溝207の裏面204側の両縁を含む画像400を形成すると、形成した画像400を記憶装置に記憶して、被加工物200の切削溝207の裏面204側の両縁の状態の検出を終了する。なお、実施形態1では、加工溝検出装置2は、形成した画像400を被加工物200に対応付けて記憶装置に記憶する。こうして、加工溝検出装置2は、超音波発生ユニット32の超音波トランスデューサ30が、被加工物200に形成された切削溝207の裏面204側に超音波300が収束するように超音波300を発信し、画像化部103が、被加工物200の裏面204側の超音波300の反射波301の強度に基づいて濃淡が変化する画像400を形成して切削溝207の裏面204側の両縁の状態を検出する。
【0049】
実施形態1に係る加工溝検出装置2の制御ユニット100は、形成した画像400を表示ユニット110に表示し、入力ユニット111からのオペレータの操作を受け付けて、表示ユニット110に表示する被加工物200の位置を変化させても良い。また、実施形態1に係る加工溝検出装置2の制御ユニット100は、形成した画像400から欠け208及びクラック209を抽出し、これらの大きさ等に基づいて各被加工物200の良、不良を判定しても良い。さらに、被加工物200を不良と判定した場合、報知ユニット112を作動させてオペレータに報知しても良い。
【0050】
切削装置1は、被加工物200の切削溝207の裏面204側の両縁の状態の検出を終了すると、個々のデバイス203に分割された被加工物200を搬入出領域に向かって移動して、搬入出領域において保持面11の吸引保持及びクランプ部12のクランプを解除する。切削装置1は、搬送ユニットにより被加工物200を洗浄ユニット60に搬送した後、加工動作を終了する。
【0051】
以上説明したように、実施形態1に係る加工溝検出装置2は、被加工物200を保持するチャックテーブル10と、被加工物に対して超音波300を発信し被加工物200から反射してきた超音波300の反射波301を受信する超音波ユニット34と、チャックテーブル10と超音波トランスデューサ30とをX軸方向及びY軸方向に相対的に移動させる移動ユニット40と、水層形成ユニット50とを備える。このため、加工溝検出装置2は、被加工物200と超音波トランスデューサ30の先端面31との間に水層51を形成して、チャックテーブル10と超音波トランスデューサ30とを分割予定ライン202に相対的に移動させながら超音波300を発信し、反射波301を受信することで、被加工物200の裏面204からの超音波300の反射波301の強度を取得することができる。
【0052】
また、加工溝検出装置2は、強度に応じた濃淡を有する画像400を形成して、超音波300の反射波301の強度を画像化する画像化部103を備えるので、切削溝207の裏面204側の両縁に生じた欠け208及びクラック209を把握することができる。その結果、加工溝検出装置2は、チャックテーブル10にダイシングテープ206を介して被加工物200を吸引保持した状態で、被加工物200の切削溝207の裏面204側の両縁に生じた欠け208及びクラック209を把握することができるので、裏面204側の観察に係る工数を抑制でき、被加工物200の裏面204側の欠け208及びクラック209を容易に把握可能となるという効果を奏する。
【0053】
また、実施形態1に係る切削装置1は、前述した加工溝検出装置2を備えるので、チャックテーブル10にダイシングテープ206を介して被加工物200を吸引保持した状態で、被加工物200の切削溝207の裏面204側の両縁に生じた欠け208及びクラック209を把握することができ、被加工物200の裏面204側の欠け208及びクラック209を容易に把握可能となるという効果を奏する。
【0054】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る加工溝検出装置を図面に基づいて説明する。
図6は、実施形態2に係る加工溝検出装置の構成例を示す斜視図である。なお、
図6は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
実施形態2に係る加工溝検出装置2-2は、
図6に示すように、切削装置1等の加工装置に備えられることなく、チャックテーブル10と、超音波ユニット34と、移動ユニット40と、水層形成ユニット50と、画像化部103とを備えている。実施形態2に係る加工溝検出装置2-2は、水層形成ユニット50が被加工物200と超音波トランスデューサ30の先端面31との間に水層51を形成して、移動ユニット40がチャックテーブル10と超音波トランスデューサ30とを分割予定ライン202に相対的に移動しながら超音波ユニット34が超音波300を発信し反射波301を受信することで、被加工物200の裏面204からの超音波300の反射波301の強度を取得する。
【0056】
実施形態2に係る加工溝検出装置2-2は、チャックテーブル10にダイシングテープ206を介して被加工物200を吸引保持した状態で、被加工物200の切削溝207の裏面204側の両縁に生じた欠け208及びクラック209を把握することができ、実施形態1と同様に、被加工物200の裏面204側の欠け208及びクラック209を容易に把握可能となるという効果を奏する。
【0057】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。なお、前述した実施形態1では、加工装置として切削装置1が加工溝検出装置2を備える例を示しているが、本発明では、加工溝検出装置2を備える加工装置は、切削装置1に限定されずに、例えば、被加工物200に吸収性を有する波長のレーザービームを照射して被加工物200をレーザー加工(アブレーション加工)するレーザー加工装置でも良い。即ち、本発明の加工溝検出装置2は、加工溝として切削溝207に限定されずに例えばレーザー加工溝を検出しても良い。また、本発明では、加工溝検出装置2が、チャックテーブル10に吸引保持された被加工物200の加工溝を検出するのに限定されずに、例えば、洗浄ユニット60のスピンナテーブル61に吸引保持された洗浄後の被加工物200の加工溝を検出しても良い。また、本発明では、超音波ユニット34は、超音波トランスデューサ30をY軸方向に複数並べて、各分割予定ライン202に対して複数の超音波トランスデューサ30をX軸方向に相対的に1回移動させて、切削溝207の裏面204側の両縁の欠け208及びクラック109を検出しても良い。
【符号の説明】
【0058】
1 切削装置(加工装置)
2,2-2 加工溝検出装置(検出手段)
10 チャックテーブル(保持手段)
20 切削ユニット(切削手段)
21 切削ブレード
32 超音波発生ユニット
33 超音波受信ユニット
34 超音波ユニット
40 移動ユニット(移動手段)
50 水層形成ユニット
51 水層
100 制御ユニット(画像化ユニット)
200 被加工物
201 表面
204 裏面
206 ダイシングテープ
207 切削溝(加工溝)
300 超音波
301,301-1,301-2 反射波
X,Y 表面と平行な方向