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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】被加工物の固定用治具
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/08 20060101AFI20231020BHJP
   B23Q 3/02 20060101ALI20231020BHJP
   B24B 41/06 20120101ALI20231020BHJP
【FI】
B23Q3/08 Z
B23Q3/02 A
B24B41/06 L
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019222273
(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公開番号】P2021091023
(43)【公開日】2021-06-17
【審査請求日】2022-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 洋介
(72)【発明者】
【氏名】片岡 俊晴
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-203403(JP,A)
【文献】実開昭61-075936(JP,U)
【文献】特開平11-300562(JP,A)
【文献】特開2005-014121(JP,A)
【文献】特開昭63-278734(JP,A)
【文献】実開平07-037543(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/02,3/08;
B24B 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の被加工物を固定する被加工物の固定用治具であって、
上面に複数の突起が形成され該被加工物を支持するベース部と、
該突起に嵌合する凹部を有し、該ベース部に着脱可能に固定される少なくとも一対のガイド部と、を含み、
該凹部が該突起に嵌合して該被加工物を挟持する間隔をあけて該ベース部に固定された一対の該ガイド部の側壁が該被加工物を挟持し、
一対の該ガイド部は、挟持する該被加工物の幅によって固定する該突起を選択可能であることを特徴とする被加工物の固定用治具。
【請求項2】
該凹部の外周縁の四角形における2つの対角線の交点である中心は、該ベース部と対面する該ガイド部の底面の該ガイド部の全ての側壁の外面で構成される四角形における2つの対角線の交点である中心に対してずれて配置され、
該ベース部に固定する該ガイド部の位置を変えることで、
該突起同士の間隔より小さな単位で該被加工物を挟持する幅を調整することを特徴とする、
請求項1に記載の被加工物の固定用治具。
【請求項3】
該被加工物は該ガイド部に挟持され、該ベース部に支持された状態で、
加工装置の保持テーブルに保持され、
該ガイド部及び該ベース部とともに加工されることを特徴とする、
請求項1または2に記載の被加工物の固定用治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の固定用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
被加工物を切削する際に、被加工物を治具の支持基板に固定する場合がある。この場合、例えば貼着テープや樹脂を介して、被加工物を支持基板に固定する(例えば、特許文献1参照)。ここで、被加工物の形状が円筒状の場合、貼着テープによる固定では、被加工物と支持基板とが線接触となり固定強度が不十分であるため、ワックスを介して被加工物を支持基板に固定する等の方法が考えられる。
【0003】
しかし、ワックスの材質は樹脂の場合が多いため、ワックスが切削ブレードに目詰まりしやすいという問題があった。そこで、カーボン製の支持基板に溝を形成し、溝にワックスを充填して、その溝に被加工物を嵌めた状態で、被加工物をワックスを介して支持基板に固定する方法が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-3356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、円筒状の被加工物の直径が変わる度にカーボン製の支持基板の溝を新たに形成しなければならず、また被加工物の直径が溝形成用ブレードの幅より大きい場合は何度も繰り返し切削して溝を形成する必要がある。このように、従来は、円筒状の被加工物の直径が変わった場合に、被加工物を治具に固定することが困難であるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、円筒状の被加工物の径が変わっても容易に固定可能な、被加工物の固定用治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、円筒状の被加工物を固定する被加工物の固定用治具であって、上面に複数の突起が形成され該被加工物を支持するベース部と、該突起に嵌合する凹部を有し、該ベース部に着脱可能に固定される少なくとも一対のガイド部と、を含み、該凹部が該突起に嵌合して該被加工物を挟持する間隔をあけて該ベース部に固定された一対の該ガイド部の側壁が該被加工物を挟持し、一対の該ガイド部は、挟持する該被加工物の幅によって固定する該突起を選択可能である。
【0008】
前述した被加工物の固定用治具において、該凹部の外周縁の四角形における2つの対角線の交点である中心は、該ベース部と対面する該ガイド部の底面の該ガイド部の全ての側壁の外面で構成される四角形における2つの対角線の交点である中心に対してずれて配置され、該ベース部に固定する該ガイド部の位置を変えることで、該突起同士の間隔より小さな単位で該被加工物を挟持する幅を調整可能であってもよい。
【0009】
前述した被加工物の固定用治具において、該被加工物は該ガイド部に挟持され、該ベース部に支持された状態で、加工装置の保持テーブルに保持され、該ガイド部及び該ベース部とともに加工されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本願発明によれば、円筒状の被加工物の径が変わっても容易に固定可能な、被加工物の固定用治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係る加工装置の模式的な断面図である。
図2図2は、実施形態に係る固定用治具及び被加工物を示す模式的な斜視図である。
図3図3は、図2のIII-III線による断面図である。
図4図4は、実施形態に係るガイド部を示す模式的な斜視図である。
図5図5は、図4の上面図である。
図6図6は、図5のVI-VI線による断面図である。
図7図7は、図5のVII-VII線による断面図である。
図8図8は、実施形態に係る他のガイド部を示す模式的な上面図である。
図9図9は、ガイド部と被加工物との相対的な位置を示す模式的な上面図である。
図10図10は、第1変形例による固定用治具の模式的な断面図である。
図11図11は、第2変形例によるベース部を示す模式的な斜視図である。
図12図12は、第2変形例によるガイド部を示す模式的な斜視図である。
図13図13は、図12のXIII-XIII線による模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
[実施形態]
まず、実施形態について説明する。図1は、実施形態に係る加工装置の模式的な断面図である。図2は、実施形態に係る固定用治具及び被加工物を示す模式的な斜視図である。図3は、図2のIII-III線による断面図である。なお、図面において、長方形状のベース部2の長手方向を第1方向600とし、短手方向を第2方向610とする。
【0014】
加工装置1は、保持テーブル5と、接着部材6と、固定用治具10と、切削ユニット200と、を備える。保持テーブル5は、床面上に載置される。保持テーブル5は、床面に固定されていてもよい。保持テーブル5の上面51には、接着部材6のテープ62を介して固定用治具10が接着される。接着部材6は、環状のフレーム61と、フレーム61の下面に固定された面状のテープ62と、を有する。換言すると、環状のフレーム61の開口を面状のテープ62で覆っている。環状のフレーム61の開口は、保持テーブル5の上面51よりも大きい。従って、保持テーブル5の上面51には、接着部材6のうちテープ62のみが載置可能である。
【0015】
切削ユニット200は、切削ブレード210と、スピンドル220と、スピンドルハウジング230と、を備える。切削ブレード210は、スピンドル220の先端に固定されて、回転軸となるスピンドル220により回転されることで、被加工物100及び固定用治具10を切削する。切削ブレード210は、実施形態では所謂ハブブレードである。
【0016】
図2に示すように、固定用治具10は、ベース部2と、一対のガイド部3,4と、を有する。ベース部2は、プレート部20と、突起22とを有する。ベース部2は、材質として例えばカーボンを含む。カーボンは、加工しやすく安価である。ベース部2の材質としては、切削ブレード210の目立て用に使用される砥粒を含んだドレス材を使用してもよい。ドレス材を利用する事で円筒を切削しながら切削ブレード210の目立てができるという効果を奏する。プレート部20は矩形状の平板であり、上面21には複数の突起22が固定される。突起22は、プレート部20と別に成形したのち、接着剤等でプレート部20に固定してもよく、また、プレート部20を切削して突起22を形成するなどして、プレート部20と突起22とを一体に成形してもよい。本実施形態では、突起22は、平面視が正方形の正四角柱であるが、正四角柱以外の角柱(三角柱や五角柱など)でもよいし、後述する第2変形例の円柱でもよい。即ち、突起の形状は限定されない。また、突起22は欠けを防ぐため、角が面取りされていてもよい。複数の突起22は、第1方向600及び第2方向610に沿って等間隔に配置されている。本実施形態において、第1方向600に隣接する2つの突起22同士の間隔510と、第2方向610に隣接する2つの突起22同士の間隔500と、は同一である。ただし、間隔510と間隔500とは同一でなくてもよい。
【0017】
図2及び図3に示すように、ガイド部3,4は、凹部30,40を有する。凹部30,40に突起22が嵌合することにより、ガイド部3,4がベース部2に固定される。なお、ガイド部3,4は、材質として例えばカーボンを含む。また、ガイド部3,4の材質として切削ブレード210の目立て用に使用される砥粒を含んだドレス材を使用してもよい。ドレス材を利用する事で円筒を切削しながら切削ブレード210の目立てができるという効果を奏する。
【0018】
そして、図2,3に示すように、被加工物100は、本実施形態では、円筒状の部材であり、ガイド部3の第1側壁31とガイド部4の第1側壁41とで第2方向610に挟んで保持される。また、図3に示すように、被加工物100は、突起22の上に載置されることによって下側から支持される。この際、被加工物100の下面と、ガイド部3の第1側壁31と、ガイド部4の第1側壁41と、プレート部20の上面21とで囲まれた部位に、ワックス300が充填される。ワックス300は、ボンド剤の一例である。ワックス300は、熱可塑性樹脂によって構成され、例えば、日化精工株式会社が提供する固形状のシフトワックスを粉末状に砕いたものである。シフトワックスからなるワックス300は、所定の温度(例えば100℃~120℃)で軟化し、常温で硬化する特性を有する。
【0019】
図4は、実施形態に係るガイド部を示す模式的な斜視図である。図5は、図4の上面図である。図6は、図5のVI-VI線による断面図である。図7は、図5のVII-VII線による断面図である。図8は、実施形態に係る他のガイド部を示す模式的な上面図である。
【0020】
図4から図7に示すように、ガイド部3は、下側が開口した凹部30を有する。ガイド部3は、外形が直方体の形状を有する。具体的には、ガイド部3は、第1側壁31と、第2側壁32と、第3側壁33と、第4側壁34と、上壁35と、底面36と、を有する。第1側壁31と第2側壁32とは、第2方向610に間隔をおいて対向している。第3側壁33と第4側壁34とは、第1方向600に間隔をおいて対向している。第1側壁31の厚さは、第1厚さ540であり、第2側壁32の厚さは、第2厚さ550である。第3側壁33の厚さは、第3厚さ560であり、第4側壁34の厚さは、第4厚さ570である。第1厚さ540と第3厚さ560とは同一の厚さであり、第2厚さ550と第4厚さ570とは同一の厚さである。第2厚さ550及び第4厚さ570は、第1厚さ540及び第3厚さ560よりも厚い。ただし、それぞれの側壁の厚さは、限定されず、適宜変更可能である。例えば、第3側壁33と第4側壁34とを同一の厚さに設定してもよい。
【0021】
また、図5に示すように、平面視において、凹部30の中心C2は、ベース部2と対面する底面36(図6及び図7も参照)の中心C1に対してずれた位置に配置される。凹部30の中心C2は、凹部30の外周縁の四角形における2つの対角線の交点である。底面36(図6及び図7を参照)の中心C1は、図5に示す第1側壁31、第2側壁32、第3側壁33及び第4側壁34の外面で構成される四角形における2つの対角線の交点である。
【0022】
さらに、図8に示すように、他のガイド部4は、平面視において、ガイド部3を反転させた形状を有する。以下に詳述する。ガイド部4は、下側が開口した凹部40を有する。ガイド部4は、外形が直方体の形状を有する。具体的には、ガイド部4は、第1側壁41と、第2側壁42と、第3側壁43と、第4側壁44と、を有する。第1側壁41と第2側壁42とは、第2方向610に間隔をおいて対向している。第3側壁43と第4側壁44とは、第1方向600に間隔をおいて対向している。第1側壁41の厚さは、第1厚さ540であり、第2側壁42の厚さは、第2厚さ550である。第3側壁43の厚さは、第3厚さ560であり、第4側壁44の厚さは、第4厚さ570である。第1厚さ540と第3厚さ560とは同一の厚さであり、第2厚さ550と第4厚さ570とは同一の厚さである。第2厚さ550及び第4厚さ570は、第1厚さ540及び第3厚さ560よりも厚い。ただし、それぞれの側壁の厚さは、限定されず、適宜変更可能である。例えば、第3側壁43と第4側壁44とを同一の厚さに設定してもよい。
【0023】
以上の構成を有する加工装置1を用いて被加工物100を加工する手順を説明する。まず、図1に示すように、保持テーブル5の上面51に、接着部材6のテープ62を載置する。次に、テープ62の上にベース部2を載置することにより、ベース部2の下面23がテープ62を介して保持テーブル5の上面51に固定される。その後、図2に示すように、一対のガイド部3,4を第2方向610に離隔させた状態で、ガイド部3,4の凹部30,40を突起22に嵌合させることにより、ガイド部3,4をベース部2の上面21に固定する。なお、ガイド部3,4の離隔する間隔(距離)は、被加工物100の幅(即ち、実施形態では径の大きさ)に併せる。次に、ガイド部3の第1側壁31と、ガイド部4の第1側壁41と、プレート部20の上面21とで囲まれた部位に、図3に示すワックス300を充填する。そして、ガイド部3の第1側壁31と、ガイド部4の第1側壁41と、の間に被加工物100を配置し、被加工物100を、ガイド部3の第1側壁31とガイド部4の第1側壁41とで挟み込んで保持する。この状態で、図1に示すように、切削ユニット200によって、被加工物100、ガイド部3,4及びベース部2を切削する。
【0024】
次いで、図9を参照して、一対のガイド部3,4を第2方向610に離隔する際に、間隔(距離)を調整する方法を説明する。図9は、ガイド部と被加工物との相対的な位置を示す模式的な上面図である。
【0025】
本実施形態では、図9に示す3つの態様を説明する。即ち、最も上側に配置される第1位置P1と、図9の上下方向の中央に配置される第2位置P2と、最も下側に配置される第3位置P3と、について説明する。
【0026】
第1位置P1においては、ガイド部3を、第1側壁31及び第2側壁32を第1方向600に沿って配置することにより、長手方向を第1方向600にする。ガイド部4は、ガイド部3と対称に配置する。即ち、ガイド部3の第2側壁32と、ガイド部4の第2側壁42と、を対向させて配置する。第2側壁32と第2側壁42との間隔は、被加工物100Aの径(幅)と同一である。従って、第2側壁32と第2側壁42とによって、被加工物100Aが挟持される。
【0027】
第2位置P2では、第1位置P1に対して、ガイド部3とガイド部4との位置を逆にする。即ち、ガイド部3を図9の左側に配置し、ガイド部4を図9の右側に配置する。また、ガイド部3の第1側壁31と、ガイド部4の第1側壁41と、を対向させて配置する。第1側壁31と第1側壁41との間隔は、被加工物100Bの径(幅)と同一である。従って、第1側壁31と第1側壁41とによって、被加工物100Bが挟持される。
【0028】
第3位置P3では、ガイド部3を長手方向が第2方向610に沿うように配置する。つまり、ガイド部3の長手方向が第2方向610に沿った状態で、4つのガイド部3を第1方向600に敷き詰める。また、ガイド部4を長手方向が第2方向610に沿うように配置する。ガイド部4の長手方向が第2方向610に沿った状態で、4つのガイド部4を第1方向600に敷き詰める。
【0029】
さらに、ガイド部3の第4側壁34と、ガイド部4の第3側壁43と、を対向させて配置する。第4側壁34と第3側壁43との間隔は、被加工物100Cの径(幅)と同一である。従って、4つの第4側壁34と、4つの第3側壁43とによって、被加工物100Cが挟持される。なお、第1位置P1におけるガイド部3の第2側壁32と、第2位置P2におけるガイド部4の第1側壁41とは、第2方向610に第1幅580だけ相違する。第2位置P2におけるガイド部4の第1側壁41と、第3位置P3におけるガイド部3の第4側壁34とは、第2方向610に第2幅590だけ相違する。これらの第1幅580及び第2幅590は、2つの突起22同士の間隔500、510よりも小さい。このように、突起22同士の間隔500、510より小さな単位(第1幅580及び第2幅590)で被加工物100A,100B,100Cを挟持する幅を調整することができる。
【0030】
以上の構成を有する実施形態によれば、以下の作用効果を有する。固定用治具10は、上面21に複数の突起22が形成され被加工物100を支持するベース部2と、突起22に嵌合する凹部30,40を有し、ベース部2に着脱可能に固定される少なくとも一対のガイド部3,4と、を含む。一対のガイド部3,4は、被加工物100を挟持する間隔をあけてベース部2に固定され、ベース部2から立設する側壁が被加工物100を挟持し、挟持する被加工物100の幅によって固定する突起22を選択可能である。
【0031】
一対のガイド部3,4は、ベース部2に着脱可能に固定される。従って、図9を用いて説明したように、円筒状の被加工物100A、100B、100Cのように被加工物の径が変わった場合でも、ガイド部3,4を固定する突起22の位置を変えることによって容易に被加工物を固定すること可能となり、被加工物ごとの治具を準備する必要がない。
【0032】
また、凹部30,40の中心C2は、ベース部2と対面する底面36の中心C1に対してずれて配置されている。従って、図9を用いて説明したように、ベース部2に固定するガイド部3,4の位置を変えることで、突起22同士の間隔より小さな単位で被加工物100、100A、100B、100Cを挟持する幅を調整することができる。
【0033】
そして、被加工物100はガイド部3,4に挟持され、ベース部2に支持された状態で、加工装置1の保持テーブル5に保持され、ガイド部3,4及びベース部2とともに加工される。従って、被加工物100の加工が容易になり、また、被加工物100とともに切削されたとしても被加工物100を挟持できる部分が残っている場合、ガイド部3,4は再利用でき、また、突起が切削されていない部分のベース部2も再利用することができるため有用である。
【0034】
また、ガイド部3の第1側壁31と、ガイド部4の第1側壁41と、プレート部20の上面21とで囲まれた部位に、図3に示すワックス300を充填する。これにより、ガイド部3とガイド部4とで挟持するよりも、より確実に被加工物100を保持することができる。また、従来のようにワックスのみで被加工物100を保持する場合と比較すると、ガイド部3の第1側壁31とガイド部4の第1側壁41とでワックス300の外方への流出を防止することができるため、従来よりも少量のワックス300で済み、切削ブレード210の目詰まりが抑制される。なお、ワックス300は、超音波洗浄で容易に除去することができるためワックスを除去した後にガイド部4およびプレート部20を再利用することができる。また、ガイド部3,4で被加工物100を挟持するため円筒が湾曲していたとしても従来のワックス固定より被加工物100を直線状に矯正して保持するため、精度高く切削することができる。
【0035】
[第1変形例]
次に、第1変形例について説明する。図10は、第1変形例による固定用治具の模式的な断面図である。図10に示すように、第1変形例においては、固定用治具10及び被加工物100の上に樹脂シート310が覆われている。具体的には、プレート部20の上面21、突起22の上面、ガイド部3,4の上面、及び被加工物100の上面の全体を樹脂シート310で覆っている。樹脂シート310は、ポリオレフィン樹脂等の熱可塑性樹脂により構成された基材層のみで構成されており、粘着材層を有しない。樹脂シート310にローラまたは押圧部材等で面方向かつ放射状の張力を付与し、引き延ばしながら、プレート部20の上面21、突起22の上面、ガイド部3,4の上面、及び被加工物100の上面の全体に樹脂シート310を密着させる。
【0036】
以上の構成を有する第1変形例によれば、固定用治具10及び被加工物100の上に樹脂シート310が覆われるため、被加工物100がより確実に保持され、ワックス300が不要になる。
【0037】
[第2変形例]
次に、第2変形例について説明する。図11は、第2変形例によるベース部を示す模式的な斜視図である。図12は、第2変形例によるガイド部を示す模式的な斜視図である。図13は、図12のXIII-XIII線による模式的な断面図である。
【0038】
第2変形例によるベース部2Aは、プレート部20Aと、突起22Aとを有する。プレート部20Aは、矩形状の平板であり、上面21Aには複数の突起22Aが固定される。突起22Aは、プレート部20Aと別に成形したのち、接着剤等でプレート部20Aに固定してもよく、また、プレート部20Aから突起22Aを切り出すように切削するなどしてプレート部20Aと突起22Aとを一体に成形してもよい。第2変形例では、突起22Aは、円柱である。複数の突起22Aは、第1方向600及び第2方向610に沿って等間隔に配置されている。本実施形態において、第1方向600に隣接する2つの突起22A同士の間隔510Aと、第2方向610に隣接する2つの突起22A同士の間隔500Aと、は同一である。ただし、間隔510Aと間隔500Aとは同一でなくてもよい。
【0039】
図12及び図13に示すように、ガイド部3Aは、下側が開口した凹部30Aを有する。凹部30Aは、円筒状であり、突起22Aに嵌合可能である。ガイド部3Aは、外形が直方体の形状を有する。具体的には、ガイド部3Aは、第1側壁31Aと、第2側壁32Aと、第3側壁33Aと、第4側壁34Aと、上壁35Aと、底面36Aと、を有する。第1側壁31Aと第2側壁32Aとは、第2方向610に間隔をおいて対向している。第3側壁33Aと第4側壁34Aとは、第1方向600に間隔をおいて対向している。第1側壁31Aの厚さは、第5厚さ540Aであり、第2側壁32Aの厚さは、第6厚さ550Aである。第6厚さ550Aは、第5厚さ540Aよりも厚い。
【0040】
以上の構成を有する第2変形例によれば、突起22Aを円柱とし、凹部30Aを、突起22Aに嵌合可能な円筒状としてもよい。このように、突起の形状は実施形態の角柱に限定されず、円柱等の種々の形状としてもよい。
【0041】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、実施形態では、被加工物100を切削する手段として、切削ブレード210を適用したが、例えばレーザーによる切削加工を適用することも可能である。レーザー加工では熱が発生するが、ワックスを使用せずにガイド部3,4のみで固定すれば、レーザー加工にも適用可能である。また、実施形態では、複数の突起22は、第1方向600及び第2方向610に沿って等間隔に配置されたが、第1方向600の間隔を等間隔にしなくてもよく、また、第2方向610の間隔を等間隔にしなくてもよい。さらに、実施形態では、中心軸が直線状に延びる円筒部材を被加工物100としたが、中心軸が曲線状に湾曲した円筒部材であっても適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 加工装置
2、2A ベース部
3、3A、4 ガイド部
5 保持テーブル
10 固定用治具
21、21A 上面
22、22A 突起
30、40、30A 凹部
31 第1側壁(側壁)
32 第2側壁(側壁)
33 第3側壁(側壁)
34 第4側壁(側壁)
31A 第1側壁(側壁)
32A 第2側壁(側壁)
33A 第3側壁(側壁)
34A 第4側壁(側壁)
41 第1側壁(側壁)
42 第2側壁(側壁)
43 第3側壁(側壁)
44 第4側壁(側壁)
100、100A、100B、100C 被加工物
図1
図2
図3
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図5
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図13