(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】切削ブレードの状態検知方法
(51)【国際特許分類】
B24B 49/12 20060101AFI20231020BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20231020BHJP
B24B 27/06 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
B24B49/12
H01L21/78 F
B24B27/06 M
(21)【出願番号】P 2020001052
(22)【出願日】2020-01-07
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠井 剛史
(72)【発明者】
【氏名】小池 彩子
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-287111(JP,A)
【文献】特開2002-370140(JP,A)
【文献】特開2018-158413(JP,A)
【文献】特開2001-298001(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101402227(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 49/12
H01L 21/301
B24B 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持するチャックテーブルと、外周に切り刃を備える切削ブレードがスピンドルに装着され該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ユニットと、該切削ブレードの該切り刃が侵入する侵入部と該侵入部を挟んで発光部と受光部とを備える刃先検査ユニットと、該刃先検査ユニットと該切削ユニットとを該切削ブレードの径方向に相対的に移動させる移動ユニットと、を備える切削装置において該切削ブレードの刃先状態を検知する切削ブレードの状態検知方法であって、
該刃先検査ユニットは、該受光部が受光したパルス光の光量を電圧に変換する光電変換部と、該光電変換部で変換された該電圧をパルス毎に記録する電圧記録部と、を更に備え、
該切削ブレードを回転させながら該移動ユニットを駆動させ、該受光部が受光するパルス光を該切り刃が遮蔽しない位置から該切り刃を該侵入部へ所定量侵入する位置へと移動する間の、該電圧の変化を記録する電圧記録ステップと、
該電圧記録ステップで記録した該電圧の変化から、該切り刃の状態を判定する判定ステップと、を備え、
該判定ステップでは、
所定以上の該電圧の増加が無い場合は、該切り刃に欠け無しと判定し、
該切り刃による該パルス光の遮蔽が開始された直後から定期的且つ一時的な該電圧の増加が発生していた場合、該切り刃の先端に欠けが発生していると判定し、
該切り刃による該パルス光の遮蔽が開始された直後から定期的且つ一時的な該電圧の増加の発生が無い状態が続いた後、定期的且つ一時的な該電圧の増加が発生していた場合、該切り刃の外周縁より径方向内側に貫通穴が発生していると判定する切削ブレードの状態検知方法。
【請求項2】
該移動ユニットは、該切削ユニットを移動させる切り込み送りユニットまたは、該発光部及び該受光部を一体的に移動させる受発光部移動ユニットである請求項1に記載の切削ブレードの状態検知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削装置に装着された切削ブレードの状態を検出する切削ブレードの状態検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
切削装置で用いられる切削ブレードは、加工中の負荷や飛散したチップの衝突などにより、刃先または刃先より径方向内側に欠けや貫通穴が発生する事がある。このような刃先の状態で被加工物を加工すると、想定以上のチッピングやクラックが発生してしまうため、ブレード破損検出器が開発され、常時切削ブレードが監視されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に示されたブレード破損検出器は、通常、切り刃の刃先の欠けを検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
切削ブレードは、チップの衝突により切り刃の刃先よりも径方向内側に貫通穴が形成される場合がある。発生した貫通穴は、やはりチッピングやクラックの原因となる。しかしながら、特許文献1に示されたブレード破損検出器は、切り刃の刃先の欠けのみを検査しているため、貫通穴を見逃す恐れがあった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、欠けに加え、切り刃に形成された貫通穴を検出することができる切削ブレードの状態検知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の切削ブレードの状態検知方法は、被加工物を保持するチャックテーブルと、外周に切り刃を備える切削ブレードがスピンドルに装着され該チャックテーブルに保持された被加工物を切削する切削ユニットと、該切削ブレードの該切り刃が侵入する侵入部と該侵入部を挟んで発光部と受光部とを備える刃先検査ユニットと、該刃先検査ユニットと該切削ユニットとを該切削ブレードの径方向に相対的に移動させる移動ユニットと、を備える切削装置において該切削ブレードの刃先状態を検知する切削ブレードの状態検知方法であって、該刃先検査ユニットは、該受光部が受光したパルス光の光量を電圧に変換する光電変換部と、該光電変換部で変換された該電圧をパルス毎に記録する電圧記録部と、を更に備え、該切削ブレードを回転させながら該移動ユニットを駆動させ、該受光部が受光するパルス光を該切り刃が遮蔽しない位置から該切り刃を該侵入部へ所定量侵入する位置へと移動する間の、該電圧の変化を記録する電圧記録ステップと、該電圧記録ステップで記録した該電圧の変化から、該切り刃の状態を判定する判定ステップと、を備え、該判定ステップでは、所定以上の該電圧の増加が無い場合は、該切り刃に欠け無しと判定し、該切り刃による該パルス光の遮蔽が開始された直後から定期的且つ一時的な該電圧の増加が発生していた場合、該切り刃の先端に欠けが発生していると判定し、該切り刃による該パルス光の遮蔽が開始された直後から定期的且つ一時的な該電圧の増加の発生が無い状態が続いた後、定期的且つ一時的な該電圧の増加が発生していた場合、該切り刃の外周縁より径方向内側に貫通穴が発生していると判定することを特徴とする。
【0007】
前記切削ブレードの状態検知方法では、該移動ユニットは、該切削ユニットを移動させる切り込み送りユニットまたは、該発光部及び該受光部を一体的に移動させる受発光部移動ユニットでも良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、欠けに加え、切り刃に形成された貫通穴を検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る切削ブレードの状態検知方法を実施する切削装置の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示された切削装置の切削ユニットの要部と刃先検査ユニットのユニット本体を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1に示された切削装置の刃先検査ユニットの構成を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、
図1に示された切削装置の刃先検査ユニットの発光部が発光したパルス光と切削ブレードとを模式的に示す側面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示された切削装置の刃先検査ユニットのパルス光の光量を光電変換部が変換した電圧の電圧値を示す図である。
【
図6】
図6は、
図1に示された切削装置の刃先検査ユニットの切削ブレードの切り刃の刃先状態を検知する位置を説明する図である。
【
図7】
図7は、
図1に示された切削装置の第2刃先検査ユニットの構成を模式的に示す図である。
【
図8】
図8は、実施形態1に係る切削ブレードの状態検知方法の流れを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、
図8に示された切削ブレードの状態検知方法の判定ステップにおいて、切り刃に欠けが発生していると判定する際の電圧値の変化の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、
図8に示された切削ブレードの状態検知方法の判定ステップにおいて、切り刃に貫通穴が発生していると判定する際の電圧値の変化の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、実施形態2に係る切削ブレードの状態検知方法を実施する切削装置の第2刃先検査ユニットの構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0011】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る切削ブレードの状態検知方法を図面に基づいて説明する。実施形態1に係る切削ブレードの状態検知方法は、
図1に示された切削装置1において実施される。まず、切削装置1の構成を説明する。
図1は、実施形態1に係る切削ブレードの状態検知方法を実施する切削装置の構成例を示す斜視図である。
図2は、
図1に示された切削装置の切削ユニットの要部と刃先検査ユニットのユニット本体を示す斜視図である。
【0012】
(被加工物)
実施形態1では、
図1に示す切削装置1の加工対象の被加工物200は、シリコン、ガリウムヒ素、SiC(炭化ケイ素)又はサファイア、などを母材とする円板状の半導体ウエーハや光デバイスウエーハ等のウエーハである。被加工物200は、表面201に格子状に形成された複数の分割予定ライン202によって格子状に区画された領域にデバイス203が形成されている。
【0013】
また、本発明の被加工物200は、中央部が薄化され、外周部に厚肉部が形成された所謂TAIKO(登録商標)ウエーハでもよく、ウエーハの他に、樹脂により封止されたデバイスを複数有した矩形状のQFN(Quad Flat No leaded)パッケージ基板等の樹脂パッケージ基板、セラミックス基板、フェライト基板、又はニッケル及び鉄の少なくとも一方を含む基板、ガラス基板等でも良い。実施形態1において、被加工物200は、裏面204が外周縁に環状フレーム205が装着された粘着テープ206に貼着されて、環状フレーム205に支持されている。
【0014】
(切削装置)
図1に示された切削装置1は、被加工物200をチャックテーブル10で保持し分割予定ライン202に沿って切削ブレード21で切削加工する加工装置である。切削装置1は、
図1に示すように、被加工物200を保持面11で吸引保持するチャックテーブル10と、切削ブレード21でチャックテーブル10に保持された被加工物200を切削する切削ユニット20と、チャックテーブル10に保持された被加工物200を撮影する撮像ユニット30と、刃先検査ユニット40とを備える。
【0015】
また、切削装置1は、
図1に示すように、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対移動させる移動ユニット50を備える。移動ユニット50は、チャックテーブル10を水平方向と平行なX軸方向に加工送りする加工送りユニットであるX軸移動ユニット51と、切削ユニット20を水平方向と平行でかつX軸方向に直交するY軸方向に割り出し送りする割り出し送りユニットであるY軸移動ユニット52と、切削ユニット20をX軸方向とY軸方向との双方と直交する鉛直方向に平行なZ軸方向に切り込み送りする切り込み送りユニットであるZ軸移動ユニット53と、チャックテーブル10をZ軸方向と平行な軸心回りに回転する回転移動ユニット54とを少なくとも備える。
【0016】
X軸移動ユニット51は、チャックテーブル10及び回転移動ユニット54を支持した移動プレート12を加工送り方向であるX軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的にX軸方向に沿って加工送りするものである。Y軸移動ユニット52は、切削ユニット20を割り出し送り方向であるY軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的にY軸方向に沿って割り出し送りするものである。Z軸移動ユニット53は、切削ユニット20を切り込み送り方向であるZ軸方向に移動させることで、チャックテーブル10と切削ユニット20とを相対的にZ軸方向に沿って切り込み送りするものである。回転移動ユニット54は、移動プレート12上に配設されている。なお、Z軸方向は、切削ブレード21の径方向に相当する。
【0017】
X軸移動ユニット51、Y軸移動ユニット52及びZ軸移動ユニット53は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のモータ及びチャックテーブル10又は切削ユニット20をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。また、Z軸移動ユニット53は、切削ユニット20をZ軸方向に移動させるものであって、刃先検査ユニット40の発光部45及び受光部46と切削ユニット20とをZ軸方向に相対的に移動させる特許請求の範囲に記載された移動ユニットである。
【0018】
チャックテーブル10は、円盤形状であり、被加工物200を保持する保持面11がポーラスセラミック等から形成されている。また、チャックテーブル10は、X軸移動ユニット51により移動プレート12が切削ユニット20の下方の加工領域と、切削ユニット20の下方から離間して被加工物200が搬入出される搬入出領域とに亘って移動自在に設けられることで、X軸方向に移動自在に設けられている。チャックテーブル10は、回転移動ユニット54によりZ軸方向と平行な軸心回りに回転自在に設けられている。チャックテーブル10は、図示しない真空吸引源と接続され、真空吸引源より吸引されることで、保持面11に載置された被加工物200を吸引、保持する。実施形態1では、チャックテーブル10は、粘着テープ206を介して被加工物200の裏面204側を吸引、保持する。また、チャックテーブル10の周囲には、
図1に示すように、環状フレーム205をクランプするクランプ部13が複数設けられている。
【0019】
切削ユニット20は、切削ブレード21がスピンドル23に装着され、チャックテーブル10に保持された被加工物200を切削する切削手段である。切削装置1は、
図1に示すように、切削ユニット20を2つ備えた、即ち、2スピンドルのダイサ、いわゆるフェイシングデュアルタイプの切削装置である。
【0020】
切削ユニット20は、それぞれ、チャックテーブル10に保持された被加工物200に対して、Y軸移動ユニット52によりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、Z軸移動ユニット53によりZ軸方向に移動自在に設けられている。切削ユニット20は、それぞれ、
図1に示すように、Y軸移動ユニット52及びZ軸移動ユニット53などを介して、装置本体2から立設した支持フレーム3に設けられている。切削ユニット20は、Y軸移動ユニット52及びZ軸移動ユニット53により、チャックテーブル10の保持面11の任意の位置に切削ブレード21を位置付け可能となっている。
【0021】
切削ユニット20は、
図2に示すように、切削ブレード21と、Y軸移動ユニット52及びZ軸移動ユニット53によりY軸方向及びZ軸方向に移動自在に設けられたスピンドルハウジング22と、スピンドルハウジング22に軸心回りに回転可能に設けられかつ図示しないモータにより回転されるとともに先端に切削ブレード21が装着されるスピンドル23と、スピンドルハウジング22の先端面に固定されたブレードカバー24とを備える。
【0022】
切削ブレード21は、略リング形状を有する極薄の切削砥石である。実施形態1において、切削ブレード21は、
図2に示すように、円環状の円形基台211と、円形基台211の外周縁に配設されて被加工物200を切削する円環状の切り刃212とを備える所謂ハブブレードである。切り刃212は、ダイヤモンドやCBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒と、金属や樹脂等のボンド材(結合材)とからなり所定厚みに形成されている。切削ブレード21の切り刃212は、被加工物200を切削すると摩耗する。なお、本発明では、切削ブレード21は、切り刃212のみで構成された所謂ワッシャーブレードでもよい。
【0023】
スピンドル23は、モータにより軸心回りに回転することで、切削ブレード21を回転させる。ブレードカバー24は、切削ブレード21の少なくとも上方を覆うものである。ブレードカバー24は、スピンドルハウジング22の先端面に固定されている。また、ブレードカバー24は、シャワーノズル25と、一対のブレードノズル26とを備える。シャワーノズル25は、切削ブレード21の切り刃212の刃先とX軸方向に対面し、切削中に切削ブレード21の切り刃212の刃先に切削水を供給する。ブレードノズル36は、X軸方向と平行に延在し、互いにY軸方向に間隔をあけて配置されている。ブレードノズル26は、互いの間に切削ブレード21の切り刃212の下端を位置づけており、切削中に切削ブレード21の切り刃212の下端に切削水を供給する。
【0024】
なお、切削ユニット20の切削ブレード21及びスピンドル23の軸心は、Y軸方向と平行に設定されている。
【0025】
撮像ユニット30は、一方の切削ユニット20と一体的に移動するように、一方の切削ユニット20に固定されている。撮像ユニット30は、チャックテーブル10に保持された切削前の被加工物200の分割すべき領域を撮影する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。撮像ユニット30は、チャックテーブル10に保持された被加工物200を撮影して、被加工物200と切削ブレード21との位置合わせを行なうアライメントを遂行するため等の画像を得、得た画像を刃先検査ユニット40の制御ユニット100に出力する。
【0026】
また、切削装置1は、チャックテーブル10のX軸方向の位置を検出するため図示しないX軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のY軸方向の位置を検出するための図示しないY軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出するためのZ軸方向位置検出ユニットとを備える。X軸方向位置検出ユニット及びY軸方向位置検出ユニットは、X軸方向、又はY軸方向と平行なリニアスケールと、読み取りヘッドとにより構成することができる。Z軸方向位置検出ユニットは、モータのパルスで切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出する。X軸方向位置検出ユニット、Y軸方向位置検出ユニット及びZ軸方向位置検出ユニットは、チャックテーブル10のX軸方向、切削ユニット20の切削ユニット20の切り刃212の下端のY軸方向又はZ軸方向の位置を制御ユニット100に出力する。
【0027】
なお、実施形態1では、切削装置1のチャックテーブル10及び切削ユニット20のX軸方向の位置、Y軸方向及びZ軸方向の位置は、予め定められた図示しない基準位置に基づいて定められる。また、実施形態1では、切削ユニット20のZ軸方向の基準位置は、チャックテーブル10の保持面11と切削ブレード21の切り刃212の下端が同一平面上に位置する位置である。
【0028】
(刃先検査ユニット)
次に、刃先検査ユニットを説明する。
図3は、
図1に示された切削装置の刃先検査ユニットの構成を模式的に示す図である。
図4は、
図1に示された切削装置の刃先検査ユニットの発光部が発光したパルス光と切削ブレードとを模式的に示す側面図である。
図5は、
図1に示された切削装置の刃先検査ユニットのパルス光の光量を光電変換部が変換した電圧の電圧値を示す図である。
図6は、
図1に示された切削装置の刃先検査ユニットの切削ブレードの切り刃の刃先状態を検知する位置を説明する図である。
【0029】
刃先検査ユニット40は、被加工物200を切削するための切削ブレード21の切り刃212の刃先の状態を検知するユニットである。刃先検査ユニット40は、刃先の状態として、切り刃212の外縁から一部分が欠損する欠けの有無と、切り刃212の外縁よりも径方向内側を貫通した貫通穴213(
図4等に示す)の有無とを検知する。欠け及び貫通穴213は、切削ブレード21の製造時、又は切削加工中に発生することがある。貫通穴213は、切削加工中に切削加工された被加工物200の一部分が衝突ことにより発生し、例えば、内径が40μm程度である。刃先検査ユニット40は、
図2及び
図3に示すユニット本体41を備える。
【0030】
実施形態1では、ユニット本体41は、チャックテーブル10の周囲に設けられて、切削ユニット20が被加工物200を切削することにより生じる切削屑を含む切削水を受け止めて排出する図示しない排水口を有するウォーターケース60の内面に取り付けられている。
【0031】
ユニット本体41は、Z軸方向に立設した一対の脚部42と、連結部43とを備える。一対の脚部42は、Y軸方向に互いに間隔をあけて配置されている。一対の脚部42間の間隔は、切削ブレード21の切り刃212の厚みよりも広い。このために、一対の脚部42は、互いに間に切削ブレード21の切り刃212が侵入する侵入部44を設けている。即ち、刃先検査ユニット40は、侵入部44を備える。一対の脚部42は、互いに間に切削ブレード21の切り刃212が挿入されると、切削ブレード21の切り刃212を互いの間に挟むように配設されている。連結部43は、一対の脚部42の下端部同士を連結し、Y軸方向と平行に水平方向に延在している。
【0032】
また、ユニット本体41は、侵入部44をY軸方向に挟んで発光部45と受光部46とを備える。発光部45は、一対の脚部42のうち一方の脚部42に設けられている。発光部45は、光源47に接続して光源47からのパルス状の光(
図4に示し、以下、パルス光300と記す)を伝搬して、他方の脚部42即ち受光部46に向けて発光する光ファイバ48を備えている。実施形態1では、発光部45の光ファイバ48の外径は、例えば、0.3mm以上でかつ5mmであり、パルス光300のスポット径は、例えば、0.3mm以上でかつ5mmである。また、発光部45は、パルス光300を所定の周波数で発光する。
【0033】
受光部46は、他方の脚部42に設けられ、発光部45から発光されたパルス光300を受光し、受光したパルス光300を制御ユニット100に出力する。
【0034】
また、刃先検査ユニット40は、
図1及び
図3に示すように、前述したユニット本体41に加え、演算部である制御ユニット100とを備える。制御ユニット100は、光電変換部101と、電圧記録部102と、判定部103と、制御部104とを備える。
【0035】
光電変換部101は、受光部46が受光したパルス光300の光量を電圧に変換するものである。光電変換部101は、受光部46から入力したパルス光300の光量に応じた電圧の電圧値に変換する。なお、実施形態1では、受光部46が受光するパルス光300の光量と、光電変換部101が変換する電圧の電圧値とは、比例している。
【0036】
なお、切削ブレード21がZ軸方向に沿って降下して侵入部44の奥に侵入するに従って、切削ブレード21が発光部45から発光されて受光部46に受光されるパルス光300の遮る量301(
図4に点線で示す)が、増加する。すると、光電変換部101が変換した電圧の電圧値が、
図5に示すように、徐々に減少する。
【0037】
なお、
図5は、横軸が切削ブレード21が降下を開始してからの経過時間を示し、縦軸が、光電変換部101が変換した電圧の電圧値を示している。また、実施形態1において、
図5は、光電変換部101がパルス光300を100%受光した時(パルス光300の受光率が100%である時)の電圧値を100%と示し、光電変換部101がパルス光300を0%受光した時(パルス光300の受光率が0%である時)の電圧値を0%と示している。
【0038】
電圧記録部102は、光電変換部101で変換された電圧をパルス毎に記憶するものである。実施形態1において、電圧記録部102は、光電変換部101にパルス光300が入力した時刻と1対1で対応付けて、光電変換部101が変換した電圧の電圧値を記録する。
【0039】
判定部103は、電圧記録部102が記録した電圧の電圧値の変化から侵入部44に挿入された切削ブレード21の切り刃212の刃先の状態、即ち欠け及び貫通穴213の発生の有無を判定するものである。
【0040】
制御部104は、切削ユニット20及び刃先検査ユニット40の各構成要素をそれぞれ制御して、切削ブレード21の切り刃212の刃先の状態の検知動作を刃先検査ユニット40に実施させるものである。制御部104は、刃先の状態の検知動作では、刃先検査ユニット40のユニット本体41に対する切削ブレード21の相対的な位置を、受光部46が受光するパルス光300の受光率即ち光電変換部101が変換した電圧値が100%となる位置に位置付け、100%から所定値である10%ずつ低下する90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、0%となる各位置に順に位置付ける。
【0041】
制御部104は、刃先検査ユニット40のユニット本体41に対する切削ブレード21の相対的な位置が、受光部46が受光するパルス光300の受光率即ち光電変換部が変換した電圧値が90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、0%となる各位置において、刃先の状態の検知動作を刃先検査ユニット40に実施させる。刃先の状態の検知動作において、制御部104は、スピンドル23により所定の回転数で回転させた状態で、発光部45から所定の周波数でパルス光300を発光して受光部46により受光し、光電変換部101により電圧に変換し、電圧記録部102に記録する。
【0042】
なお、光電変換部101が変換した電圧値が100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、0%となる各位置とは、切削ブレード21の切り刃212の下端が
図6中の横線で示す各位置に位置することをいう。特に、実施形態1において、光電変換部101が変換した電圧値が100%となる位置は、受光部46が受光するパルス光300を切り刃212が全く遮蔽しない位置であり、切削ブレード21の状態検知方法の刃先の状態の検知を開始する開始位置である。
【0043】
実施形態1において、光電変換部101が変換した電圧値が0%となる位置は、例えば、切削ブレード21の切り刃212の下端がパルス光300の下端と同一平面上以下になる位置である。光電変換部101が変換した電圧値が0%となる位置は、受光部46が受光するパルス光300を切り刃212が完全に遮蔽する位置であり、切削ブレード21の状態検知方法の刃先の状態の検知を終了する終了位置である。また、実施形態1では、光電変換部101が変換した電圧値が100%よりも所定値ずつ低下する90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、10%、0%となる各位置は、切削ブレード21の状態検知方法の刃先の状態を検知する検知位置である。なお、本発明では、所定値は、10%に限定されない。また、実施形態1では、光電変換部101が変換した電圧値が90%となる位置は、切り刃212によるパルス光300の遮蔽が開始された直後の位置である。
【0044】
なお、制御部104は、パルス光300の発光の周波数と、切削ブレード21の回転数との組み合わせをパルス光300が常に切削ブレード21の同じ角度に照射されないよう、即ち、パルス光300が切削ブレード21の切り刃212の同じ位置に照射されないように設定する。パルス光300が切削ブレード21の切り刃212の同じ位置に照射されないとは、切削ブレード21の切り刃212にパルス光300が照射される位置が周方向にずれて、切削ブレード21の切り刃212にパルス光300が照射される位置の全体が重ならないことをいい、切削ブレード21の切り刃212にパルス光300が照射される位置の一部分同士が重なっても良いことをいう。
【0045】
例えば、実施形態1では、切削ブレード21の切り刃212の外径が55.6mmであり、切り刃212の外周の長さが174.6725515mmであり、切削ブレード21の回転数が60000rpmである場合、パルス光300の発光の周波数を250kHzとし、受光部46のパルス光300のサンプリング周期を0.004msとして、切削ブレード21の切り刃212の外縁にパルス光300が照射される位置の中心間の間隔を、0.698690206mmとしても良い。
【0046】
また、制御ユニット100の制御部104は、切削装置1の各構成要素をそれぞれ制御して、被加工物200に対する加工動作を切削装置1に実施させるものでもある。なお、制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理を実施して、切削装置1及び刃先検査ユニット40を制御するための制御信号を、入出力インターフェース装置を介して切削装置1及び刃先検査ユニット40の各構成要素に出力する。
【0047】
制御ユニット100は、加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される表示ユニット110と、オペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる図示しない入力ユニットと、オペレータに報知する報知ユニット120とに接続されている。入力ユニットは、表示ユニット110に設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。報知ユニット120は、音と光のうち少なくとも一方を発して、オペレータに報知する。
【0048】
また、刃先検査ユニット40は、切削ユニット20のZ軸方向の基準位置を求めるためにも用いられる。制御ユニット100が予め切削ユニット20がZ軸方向の基準位置に位置するときに光電変換部101が変換した電圧の電圧値を基準電圧400(
図5に示す)として記憶しておく。刃先検査ユニット40は、切削ブレード21を徐々に下降して侵入部44の奥に向かって徐々に挿入し、受光部46が発光部45からのパルス光300を受光し、光電変換部101が変換した電圧の電圧値が基準電圧400となった時のZ軸方向位置検出ユニットの検出結果を切削ユニット20のZ軸方向の基準位置と検出し、記憶する。制御ユニット100の制御部104は、刃先検査ユニット40が検出した切削ユニット20のZ軸方向の基準位置を利用して、切削加工を実施する。
【0049】
なお、切削装置1が刃先検査ユニット40を用いて切削ユニット20のZ軸方向の基準位置を検出するタイミングは、例えば、一枚の被加工物200を切削する毎、又は所定数の被加工物200を切削する毎であり、加工内容情報の一部として制御ユニット100の記憶装置に記憶される。
【0050】
また、前述した切削装置1は、
図7に示す第2刃先検査ユニット70を備える。
図7は、
図1に示された切削装置の第2刃先検査ユニットの構成を模式的に示す図である。第2刃先検査ユニット70は、切削加工中に切削ブレード21の切り刃212の刃先の状態を検知するユニットである。第2刃先検査ユニット70は、刃先の状態として、切り刃212の外縁から一部分が欠損する欠けの有無を検知する。
【0051】
第2刃先検査ユニット70は、
図7に示すように、ユニット本体71を備え、刃先検査ユニット40の光電変換部101と電圧記録部102と判定部103とを備える。実施形態1では、ユニット本体71は、ブレードカバー24に設けられている。ユニット本体71は、Z軸方向に立設してY軸方向に互いに間隔をあけて互いに間に切削ブレード21の切り刃212を位置付ける一対の脚部72と、一対の脚部72の上端部同士を連結した連結部73とを備える。一対の脚部72間は、切削ブレード21の切り刃212が侵入する侵入部74である。第2刃先検査ユニット70は、侵入部74を備える。
【0052】
また、ユニット本体71は、一対の脚部72のうち一方の脚部72に設けられた発光部75と、他方の脚部72に設けられた受光部76とを備える。発光部75は、光源77に接続して光源77が発光したパルス状の光を伝搬して、他方の脚部72即ち受光部76に向けて発光する光ファイバ78を備えている。実施形態1では、発光部75の光ファイバ78の外径は、例えば、0.3mm以上でかつ5mmであり、受光部76は、発光部75から発光されたパルス状の光を受光し、受光したパルス状の光を制御ユニット100の光電変換部101に出力する。
【0053】
光電変換部101は、受光部76が受光したパルス状の光の光量を電圧に変換するものである。光電変換部101は、受光部76から入力したパルス光300の光量に応じた電圧値の電圧に変換する。なお、実施形態1では、受光部76が受光するパルス光300の光量と、光電変換部101が変換する電圧の電圧値とは、比例している。
【0054】
なお、切削加工中に切削ブレード21の切り刃212に欠けが発生すると、欠けが発生する前よりも発光部75から発光されて受光部76に受光されるパルス状の光の受光量が増加する。
【0055】
電圧記録部102は、光電変換部101で変換された電圧をパルス毎に記憶するものである。実施形態1において、電圧記録部102は、光電変換部101にパルス状の光が入力した時刻と1対1で対応付けて、光電変換部101が変換した電圧の電圧値を記録する。
【0056】
判定部103は、電圧記録部102が記録した電圧の電圧値の変化から切削ブレード21の切り刃212の刃先の状態、即ち、欠けの発生の有無を判定するものである。判定部103は、切削加工中に電圧記録部102が記録した電圧値が予め設定されたブレード消耗に伴う増加レートより大きく、且つ周期的に増加しているか否かを判定し、該増加レートより大きく且つ周期的に増加していると判定すると、切削ブレード21の切り刃212に欠けが発生したと判定する。
【0057】
制御部104は、第2刃先検査ユニット70の各構成要素をそれぞれ制御して、切削ブレード21の切り刃212の刃先の状態の検知動作を第2刃先検査ユニット70に実施させるものである。実施形態1において、制御部104は、判定部103が切削ブレード21の切り刃212に欠けが発生したと判定すると、切削加工を停止するとともに、報知ユニット120を動作させてオペレータに報知する。制御部104は、判定部103が電圧値が該増加レートより大きく且つ周期的に増加していないと判定すると、切削ブレード21の切り刃212に欠けが発生していないと判定して、切削加工を継続する。なお、前述した光電変換部101、判定部103及び制御部104の機能は、制御ユニット100の演算処理装置が、記憶装置に記憶されたコンピュータプログラムを実施することで実現される。電圧記録部102の機能は、制御ユニット100の記憶装置により実現される。
【0058】
前述した構成の切削装置1は、オペレータ等が加工内容情報を制御ユニット100に登録し、被加工物200が粘着テープ206を介して搬入出領域のチャックテーブル10の保持面11に載置され、オペレータ等からの加工動作の開始指示を制御ユニット100が受け付けると、加工動作を開始する。加工動作を開始すると、切削装置1は、粘着テープ206を介して被加工物200を保持面11に吸引保持し、クランプ部13で環状フレーム205をクランプし、スピンドル33を軸心回りに回転し、ノズル25,26から切削水を供給する。切削装置1は、移動ユニット50により搬入出領域から加工領域に向けてチャックテーブル10を撮像ユニット30の下方まで移動し、撮像ユニット30によりチャックテーブル10に吸引保持した被加工物200を撮像して、アライメントを遂行する。
【0059】
切削装置1は、加工内容情報に基づいて、移動ユニット50により、切削ブレード21と被加工物200とを分割予定ライン202に沿って相対的に移動させながら被加工物200の分割予定ライン202に切削ブレード21を粘着テープ206に到達するまで切り込ませて切削加工する。切削装置1は、被加工物200の全ての分割予定ライン202を切削すると、チャックテーブル10を加工領域から搬入出領域に向けて移動する。
【0060】
切削装置1は、搬入出領域においてチャックテーブル10の移動を停止し、チャックテーブル10の被加工物200の吸引保持を停止し、クランプ部13のクランプを解除して、加工動作を終了する。
【0061】
(切削ブレードの状態検知方法)
実施形態1に係る切削ブレードの状態検知方法は、前述した構成の切削装置1において、切削ブレード21の切り刃212の刃先の状態、即ち欠けの発生の有無及び貫通穴213の発生の有無を検知する方法である。
図8は、実施形態1に係る切削ブレードの状態検知方法の流れを示すフローチャートである。
図9は、
図8に示された切削ブレードの状態検知方法の判定ステップにおいて、切り刃に欠けが発生していると判定する際の電圧値の変化の一例を示す図である。
図10は、
図8に示された切削ブレードの状態検知方法の判定ステップにおいて、切り刃に貫通穴が発生していると判定する際の電圧値の変化の一例を示す図である。
【0062】
実施形態1に係る切削ブレードの状態検知方法(以下、状態検知方法と記す)は、例えば、一枚の被加工物200を切削する毎、又は所定数の被加工物200を切削する毎等のタイミングで実施される。状態検知方法が実施されるタイミングは、加工内容情報の一部として制御ユニット100の記憶装置に記憶される。実施形態1では、切削装置1は、状態検知方法を実施して、欠けの発生と貫通穴213の発生との双方が無いと判定した後、刃先検査ユニット40を用いて切削ユニット20のZ軸方向の基準位置を検出するが、本発明では、状態検知方法を実施するタイミング及び基準位置の検出タイミングは、実施形態1に記載されたタイミングに限定されない。
【0063】
状態検知方法は、
図8に示すように、開始位置設定ステップST1と、電圧記録ステップST2と、判定ステップST3と、を備える。
【0064】
開始位置設定ステップST1は、切削ブレード21の切り刃212の下端を開始位置に位置付けるステップである。開始位置設定ステップST1では、制御ユニット100の制御部104が、切削ユニット20のモータを制御してスピンドル23を回転し、ノズル25,26から切削水を供給することなく、移動ユニット50を制御して、切削ユニット20の切削ブレード21の切り刃212の下端を刃先検査ユニット40の侵入部44の直上に位置付ける。開始位置設定ステップST1では、制御ユニット100の制御部104が、光源47からパルス光300を所定の周波数で発光して、発光部45から受光部46に向けてパルス光300を発光するとともに、Z軸移動ユニット53を制御して、切削ユニット20を下降させて、切削ブレード21の切り刃212を侵入部44に挿入する。
【0065】
開始位置設定ステップST1では、制御ユニット100の制御部104が、受光部46が受光しかつ光電変換部101が変換した電圧の電圧値に基づいて、Z軸移動ユニット53を制御して、切削ユニット20を開始位置に位置付けて、切削ユニット20のZ軸方向の移動を停止する。
【0066】
電圧記録ステップST2は、切削ブレード21を回転させながらZ軸移動ユニット53を駆動させ、受光部46が受光するパルス光300を切り刃212が遮蔽しない開始位置から切り刃212を侵入部へ所定量侵入する位置へと移動する間の電圧値の変化を記録するステップである。実施形態1において、電圧記録ステップST2では、制御ユニット100の制御部104が、Z軸移動ユニット53を制御し、切削ブレード21を回転させながら切削ユニット20を下降させて切削ブレード21を侵入部44の奥に向けて挿入する。実施形態1において、電圧記録ステップST2では、制御ユニット100の制御部104は、受光部46が受光しかつ光電変換部101が変換した電圧値に基づいて、Z軸移動ユニット53を制御して、開始位置よりも電圧値が所定値である10%低下する検知位置である電圧値が90%となる位置に位置付けて、切削ユニット20のZ軸方向の移動を停止する。電圧記録ステップST2では、制御ユニット100の電圧記録部102が受光部46が受光し、かつ光電変換部101が変換した電圧の電圧値を記録する。
【0067】
判定ステップST3は、電圧記録ステップST2で記録した電圧の電圧値の変化から、切り刃212の状態を判定するステップである。実施形態1おいて、判定ステップST3では、制御ユニット100の判定部103が、直前の電圧記録ステップST2において電圧記録部102が記録した電圧の変化において、所定500(
図9及び
図10に示す)以上の電圧の増加が無いか否かを判定する。判定ステップST3では、制御ユニット100の判定部103が、直前の電圧記録ステップST2において電圧記録部102が記録した電圧の変化において、所定500(
図9及び
図10に示す)以上の電圧の増加が無い場合は、切り刃212に欠け無しと判定し、切削ブレード21の切り刃212に異常が無いと判定する。
【0068】
また、判定ステップST3では、制御ユニット100の判定部103は、直前の電圧記録ステップST2において電圧記録部102が記録した電圧の変化において、
図9に示すように、定期的且つ一時的な所定500以上の電圧値の増加が発生していた場合、切り刃212の先端に欠けが発生していると判定し、切削ブレード21の切り刃212に異常が有ると判定する。こうして、判定ステップST3では、制御ユニット100の判定部103は、切り刃212によるパルス光300の遮蔽が開始された直後である90%となる位置から定期的且つ一時的な電圧値の増加が発生していた場合、切り刃212の先端に欠けが発生していると判定する。判定ステップST3では、制御ユニット100の制御部104は、記憶装置に判定部103の判定結果を記録する。
【0069】
制御ユニット100の制御部104は、判定ステップST3において異常が有ったか否かを判定する(ステップST4)。制御ユニット100の制御部104は、判定ステップST3において異常が有ったと判定すると(ステップST4:Yes)、報知ユニット120を動作させて、オペレータに報知して(ステップST5)、状態検知方法を終了する。
【0070】
制御ユニット100の制御部104は、判定ステップST3において異常が無かったと判定すると(ステップST4:No)、受光部46が受光し、光電変換部101が変換した電圧の電圧値に基づいて、切削ユニット20の切削ブレード21が終了位置(0%となる位置)に位置しているか否かを判定する(ステップST6)。
【0071】
制御ユニット100の制御部104は、切削ユニット20の切削ブレード21が終了位置(0%となる位置)に位置していると判定する(ステップST6:Yes)と、状態検知方法を終了し、切削ユニット20の切削ブレード21が終了位置(0%となる位置)に位置していないと判定する(ステップST6:No)と、電圧記録ステップST2に戻る。
【0072】
戻った電圧記録ステップST2では、制御ユニット100の制御部104は、Z軸移動ユニット53を制御し、切削ユニット20を下降させて、受光部46が受光しかつ光電変換部101が変換した電圧の電圧値に基づいて、電圧値が90%となる位置よりも電圧値が所定値である10%低下する検知位置である電圧値が80%となる位置に位置付けて、切削ユニット20のZ軸方向の移動を停止する。電圧記録ステップST2では、制御ユニット100の電圧記録部102が受光部46が受光し、かつ光電変換部101が変換した電圧の電圧値を記録して、判定ステップST3に進む。
【0073】
判定ステップST3では、制御ユニット100の判定部103が、直前の電圧記録ステップST2において電圧記録部102が記録した電圧の変化において、所定500(
図9及び
図10に示す)以上の電圧の増加が無い場合は、貫通穴213無しと判定し、切削ブレード21の切り刃212に異常が無いと判定する。
【0074】
また、判定ステップST3では、制御ユニット100の判定部103は、直前の電圧記録ステップST2において電圧記録部102が記録した電圧の変化において、
図10に示すように、定期的且つ一時的な所定500以上の電圧値の増加が発生していた場合、切り刃212の外周縁よりも径方向内側に貫通穴213が発生していると判定し、切削ブレード21の切り刃212に異常が有ると判定する。こうして、判定ステップST3では、制御ユニット100の判定部103は、切り刃212によるパルス光300の遮蔽が開始された直後である90%となる位置から定期的且つ一時的な電圧値の増加の発生が無い状態が続いた後、電圧値が90%未満となる各検知位置のいずれかにおいて、定期的且つ一時的な電圧値の増加が発生していた場合、切り刃212の外周縁より径方向内側に貫通穴213が発生していると判定し、切削ブレード21の切り刃212に異常が有ると判定する。判定ステップST3では、制御ユニット100の制御部104は、記憶装置に判定部103の判定結果を記録して、ステップST4に進む。
【0075】
こうして、状態検知方法は、切削ユニット20の切削ブレード21と刃先検査ユニット40とをZ軸方向に開始位置から終了位置に向かって移動させて、電圧値が所定量ずつ低下する検知位置に順に位置付けて、判定ステップST3において切り刃212に欠け又は貫通穴213が発生していると判定されるまで、電圧記録ステップST2、判定ステップST3、ステップST4及びステップST6を繰り返す。また、状態検知方法は、判定ステップST3において切り刃212に欠け又は貫通穴213が発生していると判定されない場合、切削ユニット20の切削ブレード21と刃先検査ユニット40とを開始位置から終了位置に向かって、電圧値が所定量ずつ低下する検知位置に順に位置付けて、刃先の状態を判定する。
【0076】
以上説明したように、実施形態1に係る状態検知方法は、判定ステップST3において、制御ユニット100の判定部103は、切り刃212によるパルス光300の遮蔽が開始された直後である90%となる位置から定期的且つ一時的な電圧値の増加が発生していた場合、切り刃212の先端に欠けが発生していると判定する。また、実施形態1に係る状態検知方法は、判定ステップST3において、制御ユニット100の判定部103は、切り刃212によるパルス光300の遮蔽が開始された直後である90%となる位置から定期的且つ一時的な電圧値の増加の発生が無い状態が続いた後、電圧値が90%未満となる各検知位置のうちいずれかにおいて、定期的且つ一時的な電圧値の増加が発生していた場合、切り刃212の外周縁より径方向内側に貫通穴213が発生していると判定する。その結果、実施形態1に係る状態検知方法は、欠けに加え、切り刃212に形成された貫通穴213を検出することができるという効果を奏する。
【0077】
また、実施形態1に係る状態検知方法は、切削ユニット20を移動させる切り込み送りユニットであるZ軸移動ユニット53が切削ユニット20を移動させて、切削ブレード21を侵入部44に挿入する。その結果、実施形態1に係る状態検知方法は、開始位置から各検知位置、終了位置の順に、欠けに加え、切り刃212に形成された貫通穴213を検出することができるという効果を奏する。
【0078】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る切削ブレードの状態検知方法を図面に基づいて説明する。
図11は、実施形態2に係る切削ブレードの状態検知方法を実施する切削装置の第2刃先検査ユニットの構成を模式的に示す図である。なお、
図11は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0079】
実施形態2に係る切削ブレードの状態検知方法は、第2刃先検査ユニット70のユニット本体71がブレードカバー24に対して受発光部移動ユニット80によりZ軸方向に移動自在に設けられ、受発光部移動ユニット80が第2刃先検査ユニット70のユニット本体71を開始位置か終了位置に向かって下降して、第2刃先検査ユニット70が発光部75からパルス光300を発光して前述した電圧値の変化を記録し、欠け及び貫通穴213の発生の有無を判定する以外、実施形態1と同じである。
【0080】
受発光部移動ユニット80は、第2刃先検査ユニット70のユニット本体71の発光部75及び受光部76を一体的にZ軸方向に移動して、第2刃先検査ユニット70の発光部75及び受光部76と切削ユニット20とをZ軸方向に相対的に移動させる特許請求の範囲に記載された移動ユニットである。受発光部移動ユニット80は、
図11に示すように、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ81、ボールねじ81を軸心回りに回転させてユニット本体71を昇降する周知のモータ82及びユニット本体71をZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレール83を備える。
【0081】
実施形態2に係る切削ブレードの状態検知方法は、判定ステップST3において、制御ユニット100の判定部103は、切り刃212によるパルス光300の遮蔽が開始された直後である90%となる位置から定期的且つ一時的な電圧値の増加が発生していた場合、切り刃212の先端に欠けが発生していると判定する。また、実施形態1に係る状態検知方法は、判定ステップST3において、制御ユニット100の判定部103は、切り刃212によるパルス光300の遮蔽が開始された直後である90%となる位置から定期的且つ一時的な電圧値の増加の発生が無い状態が続いた後、電圧値が90%未満となる各検知位置のうちいずれかにおいて、定期的且つ一時的な電圧値の増加が発生していた場合、切り刃212の外周縁より径方向内側に貫通穴213が発生していると判定する。その結果、実施形態2に係る切削ブレードの状態検知方法は、実施形態1と同様に、欠けに加え、切り刃212に形成された貫通穴213を検出することができるという効果を奏する。
【0082】
また、実施形態2に係る切削ブレードの状態検知方法は、受発光部移動ユニット80が第2刃先検査ユニット70のユニット本体71を移動させて、切削ブレード21を発光部45と受光部46との間に挿入する。その結果、実施形態2に係る切削ブレードの状態検知方法は、開始位置から各検知位置、終了位置の順に、欠けに加え、切り刃212に形成された貫通穴213を検出することができるという効果を奏する。
【0083】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。なお、上記実施形態において、電圧記録ステップST2では、前述した各%の高さで切削ブレード21の下降を停止させて受光量を測定し欠けや貫通穴を判定する例を示すが、切削ブレード21の下降の停止時間は、切削ブレード21の少なくとも1周分の測定が出来る程度の時間停止していればいいので、非常に短くなる。
【符号の説明】
【0084】
1 切削装置
10 チャックテーブル
20 切削ユニット
21 切削ブレード
23 スピンドル
40 刃先検査ユニット
44 侵入部
45 発光部
46 受光部
53 Z軸移動ユニット(移動ユニット、切り込み送りユニット)
70 第2刃先検査ユニット(刃先検査ユニット)
74 侵入部
75 発光部
76 受光部
80 受発光部移動ユニット
101 光電変換部
102 電圧記録部
200 被加工物
212 切り刃
Z 径方向
ST2 電圧記録ステップ
ST3 判定ステップ