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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】切削装置及び切削方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 27/06 20060101AFI20231020BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20231020BHJP
   B24B 55/06 20060101ALI20231020BHJP
   B24B 49/12 20060101ALI20231020BHJP
   B24B 49/08 20060101ALI20231020BHJP
   B24B 55/02 20060101ALI20231020BHJP
【FI】
B24B27/06 M
H01L21/78 F
B24B55/06
B24B49/12
B24B49/08
B24B55/02 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020011765
(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公開番号】P2021115681
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】名嘉眞 惇
(72)【発明者】
【氏名】花島 聡
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-087141(JP,A)
【文献】特開2005-051094(JP,A)
【文献】特開平05-291400(JP,A)
【文献】特開2016-198874(JP,A)
【文献】特開2015-054359(JP,A)
【文献】特開2019-063885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 27/06
H01L 21/301
B24B 55/06
B24B 49/12
B24B 49/08
B24B 55/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削装置であって、
少なくとも保持面の一部に透明部材からなる透明部を有し被加工物を保持する保持テーブルと、
該保持テーブルで保持された被加工物を切削する切削ブレードと、該切削ブレードによる被加工物の切削中に切削水を供給する切削水ノズルと、を有した切削ユニットと、
該透明部を介して被加工物を撮像する撮像カメラと、
該透明部に付着した液体を除去する除去ユニットと、を備えた切削装置。
【請求項2】
該除去ユニットは、該透明部に当接する当接位置と退避位置とに位置付けられる当接部材と、
該透明部に当接した該当接部材を該透明部上で相対移動させる移動機構と、を有した請求項1に記載の切削装置。
【請求項3】
該除去ユニットは、該透明部に向かってエアーを噴射する噴射部と、
該噴射部を該透明部上で移動させる移動機構と、を有した請求項1に記載の切削装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の切削装置で被加工物を加工する切削方法であって、
該除去ユニットで該透明部上の液体を除去する除去ステップと、
該除去ステップを実施した後、該保持テーブルで被加工物を保持する保持ステップと、
該保持ステップを実施した後、該透明部を介して該撮像カメラで被加工物を撮像する撮像ステップと、
該保持テーブルで保持された被加工物を該切削ブレードで切削する切削ステップと、を備えた切削方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削装置及び切削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
切削装置等の被加工物を加工する加工装置は、切削ブレードなどの加工手段と被加工物とのアライメント遂行するためや加工痕である切削溝を確認することがある。加工装置は、被加工物を下方から撮像することを可能とするために、被加工物を保持する保持テーブルが透明な部材で構成された透明部を備えるものが用いられる場合がある(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-87141号公報
【文献】特開2010-82644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した切削装置は、切削中に供給された切削水が被加工物の搬出時に被加工物から滴下する等して保持テーブル上に付着するおそれがある。透明部に液体が付着していると、透明部を介して撮像した撮像画像に水滴が写り込み、アライメントやカーフチェック時に撮像画像から被加工物のパターンや切削溝等を正確に検出できないため、改善が切望されている。このように、前述した切削装置は、透明部越しに撮像した被加工物の検出状態が悪化する恐れがあった。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、透明部越しに撮像した被加工物の検出状態の悪化を抑制することができる切削装置及び切削方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の切削装置は、少なくとも保持面の一部に透明部材からなる透明部を有し被加工物を保持する保持テーブルと、該保持テーブルで保持された被加工物を切削する切削ブレードと、該切削ブレードによる被加工物の切削中に切削水を供給する切削水ノズルと、を有した切削ユニットと、該透明部を介して被加工物を撮像する撮像カメラと、該透明部に付着した液体を除去する除去ユニットと、を備えたことを特徴とする。
【0007】
前記切削装置において、該除去ユニットは、該透明部に当接する当接位置と退避位置とに位置付けられる当接部材と、該透明部に当接した該当接部材を該透明部上で相対移動させる移動機構と、を有しても良い。
【0008】
前記切削装置において、該除去ユニットは、該透明部に向かってエアーを噴射する噴射部と、該噴射部を該透明部上で移動させる移動機構と、を有しても良い。
【0009】
本発明の切削方法は、前記切削装置で被加工物を加工する切削方法であって、該除去ユニットで該透明部上の液体を除去する除去ステップと、該除去ステップを実施した後、該保持テーブルで被加工物を保持する保持ステップと、該保持ステップを実施した後、該透明部を介して該撮像カメラで被加工物を撮像する撮像ステップと、該保持テーブルで保持された被加工物を該切削ブレードで切削する切削ステップと、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、透明部越しに撮像した被加工物の検出状態の悪化を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態1に係る切削装置の構成例を示す斜視図である。
図2図2は、図1に示された切削装置の保持ユニットと撮像カメラを示す斜視図である。
図3図3は、図1に示された切削装置の除去ユニットの斜視図である。
図4図4は、図3に示された除去ユニットの当接部材等を示す斜視図である。
図5図5は、図4に示された除去ユニットの当接部材等を示す側面図である。
図6図6は、実施形態1に係る切削方法の流れを示すフローチャートである。
図7図7は、図6に示された切削方法の除去ステップにおいて、当接部材を保持テーブルの保持面のX軸方向の一端部に当接させた状態を示す側面図である。
図8図8は、図6に示された切削方法の除去ステップにおいて、当接部材を保持テーブルの保持面のX軸方向の中央部に当接させた状態を示す側面図である。
図9図9は、図6に示された切削方法の除去ステップにおいて、当接部材を保持テーブルの保持面のX軸方向の他端部に当接させた状態を示す側面図である。
図10図10は、図6に示された切削方法の保持ステップを一部断面で示す側面図である。
図11図11は、図10中のXI部を拡大して一部断面で示す側面図である。
図12図12は、図6に示された切削方法の撮像ステップを一部断面で示す側面図である。
図13図13は、図6に示された切削方法の切削ステップを一部断面で示す側面図である。
図14図14は、実施形態2に係る切削装置の除去ユニットの当接部材等を示す斜視図である。
図15図15は、実施形態3に係る切削装置の除去ユニットの噴射部を示す斜視図である。
図16図16は、図15に示された噴射部を下方からみた斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る切削装置を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態1に係る切削装置の構成例を示す斜視図である。図2は、図1に示された切削装置の保持ユニットと撮像カメラを示す斜視図である。図3は、図1に示された切削装置の除去ユニットの斜視図である。図4は、図3に示された除去ユニットの当接部材等を示す斜視図である。図5は、図4に示された除去ユニットの当接部材等を示す側面図である。
【0014】
実施形態1に係る切削装置1は、被加工物200を切削(加工に相当する)する加工装置である。図1に示された切削装置1の加工対象の被加工物200は、シリコン、サファイヤ、ガリウムヒ素、又はSiC(炭化ケイ素)等などを基板201とする円板状の半導体ウェーハや光デバイスウェーハ等のウェーハである。被加工物200は、基板201の表面202に複数のストリート203によって格子状に区画された領域にデバイス204が形成されている。
【0015】
デバイス204は、例えば、IC(Integrated Circuit)、又はLSI(Large Scale Integration)等の集積回路、CCD(Charge Coupled Device)、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサである。実施形態1では、被加工物200は、基板201の表面202の裏側の裏面205に金属膜206が形成されている。被加工物200は、裏面205に金属膜206が形成されているので、裏面205側から赤外線カメラで撮像しても、ストリート203を検出することができないものである。
【0016】
実施形態1において、被加工物200は、外周縁に環状フレーム210が装着されたテープ211に表面202が貼着されて、環状フレーム210に支持されて、裏面205側の金属膜206を上方に向けている。なお、実施形態1では、被加工物200は、基板201の裏面205に金属膜206が形成されているが、本発明では、金属膜206が形成されていなくても良く、テープ211に裏面205が貼着されて、表面202側を上方に向けていても良い。
【0017】
図1に示された切削装置1は、被加工物200を保持ユニット10の保持テーブル12で保持しストリート203に沿って切削ブレード21で切削して、個々のデバイス204に分割する加工装置である。切削装置1は、図1に示すように、保持ユニット10と、切削ユニット20と、移動ユニット30と、上方カメラ40と、制御ユニット100とを備える。
【0018】
保持ユニット10は、図2に示すように、移動ユニット30のX軸移動ユニット31により水平方向と平行なX軸方向に移動される筐体11と、筐体11上に鉛直方向に沿うZ軸方向と平行な軸心回りに回転可能に設けられた保持テーブル12と、保持テーブル12の保持面124の周囲に複数設けられたフレーム固定部13とを備える。
【0019】
実施形態1では、筐体11は、X軸移動ユニット31によりX軸方向に移動されかつ水平方向と平行な下板111と、下板111の外縁から立設した側板112と、外縁が側板112の上端に連なりかつ下板111と平行な上板113とを備える。
【0020】
保持テーブル12は、被加工物200を保持面124上に保持するとともに上板113に軸心回りに回転自在に支持されている。保持テーブル12は、上板113にZ軸方向と平行な軸心回りに回転自在に支持された円環状の支持部材121と、支持部材121上に設けられた円環状の枠体122と、枠体122の内側に嵌め込まれた円板状の透明部123とを有する。保持テーブル12は、支持部材121と、枠体122と、透明部123とが互いに同軸となる位置に配置されている。
【0021】
透明部123は、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、サファイア、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、フッ化マグネシウム等の透明な透明部材からなり、上面が被加工物200を保持する保持面124である。保持面124は、吸引溝125が複数形成され、実施形態1では、複数の吸引溝125は、保持面124の外縁部に同心円上に配置された互い直径が異なる円形に形成されている。保持テーブル12は、保持面124上にテープ211を介して被加工物200の表面202側が載置される。実施形態1では、保持テーブル12は、保持面124の全体に透明部材からなる透明部123を有するが、本発明では、少なくとも保持面124の一部に透明部材からなる透明部123を有しても良い。
【0022】
フレーム固定部13は、支持部材121の外縁部に配置され、上面に環状フレーム210が載置されるフレーム支持部131と、フレーム支持部131の上面に載置された環状フレーム210を吸引保持するバキュームパッド132とを備える。
【0023】
保持テーブル12は、吸引溝125及びバキュームパッド132が図示しない真空吸引源と接続され、真空吸引源により吸引されることで、保持面124に載置された被加工物200を保持面124に吸引保持するとともにフレーム支持部131の上面に載置された環状フレーム210をフレーム固定部13に吸引保持する。実施形態1では、保持テーブル12は、テープ211を介して被加工物200の表面202側を保持面124に吸引保持するとともに、テープ211を介して環状フレーム210をフレーム固定部13に吸引保持する。また、実施形態1では、保持ユニット10は、筐体11の上板113に円形の貫通穴114を設けている。貫通穴114は、保持テーブル12の支持部材121と枠体122と透明部123と互いに同軸となる位置に配置されている。
【0024】
移動ユニット30は、図2に示す加工送りユニットであるX軸移動ユニット31と、図1に示す割り出し送りユニットであるY軸移動ユニット32と、図1に示す切り込み送りユニットであるZ軸移動ユニット33と、図2に示す保持テーブル12をZ軸方向と平行な軸心回りに回転する回転移動ユニット34とを備える。
【0025】
X軸移動ユニット31は、保持ユニット10の筐体11の下板111をX軸方向に移動させることで、保持テーブル12と切削ユニット20とをX軸方向に相対的に移動させるものである。X軸移動ユニット31は、保持テーブル12に被加工物200が搬入出される搬入出領域4と、被加工物200に保持された被加工物200が切削加工される加工領域5とに亘って保持テーブル12をX軸方向に移動させる。Y軸移動ユニット32は、切削ユニット20を水平方向と平行でかつX軸方向に直交するY軸方向に移動させることで、保持テーブル12と切削ユニット20とをY軸方向に相対的に移動させるものである。Z軸移動ユニット33は、切削ユニット20をZ軸方向に移動させることで、保持テーブル12と切削ユニット20とをZ軸方向に相対的に移動させるものである。
【0026】
X軸移動ユニット31、Y軸移動ユニット32及びZ軸移動ユニット33は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のモータ及び保持テーブル12又は切削ユニット20をX軸方向、Y軸方向又はZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールを備える。
【0027】
回転移動ユニット34は、保持テーブル12をZ軸方向と平行な軸心回りに回転するものである。回転移動ユニット34は、保持テーブル12を軸心回りに180度を超え、360度未満の範囲で回転する。回転移動ユニット34は、筐体11の側板112に固定されたモータ341と、モータ341の出力軸に連結されたプーリ342と、保持テーブル12の支持部材121の外周に巻回されかつプーリ342により軸心回りに回転されるベルト343とを備えている。回転移動ユニット34は、モータ341を回転すると、プーリ342及びベルト343を介して保持テーブル12を軸心回りに回転する。また、実施形態1では、回転移動ユニット34は、軸心回りの一方向と、一方向の逆方向の他方向との双方において、保持テーブル12を220度回転させることが可能である。
【0028】
切削ユニット20は、保持テーブル12に保持された被加工物200を切削ブレード21で切削する加工ユニットである。切削ユニット20は、保持テーブル12に保持された被加工物200に対して、Y軸移動ユニット32によりY軸方向に移動自在に設けられ、かつ、Z軸移動ユニット33によりZ軸方向に移動自在に設けられている。切削ユニット20は、Y軸移動ユニット32及びZ軸移動ユニット33などを介して、装置本体2から立設した支持フレーム3に設けられている。
【0029】
切削ユニット20は、Y軸移動ユニット32及びZ軸移動ユニット33により、保持テーブル12の保持面124の任意の位置に切削ブレード21を位置付け可能となっている。切削ユニット20は、切削ブレード21と、Y軸移動ユニット32及びZ軸移動ユニット33によりY軸方向及びZ軸方向に移動自在に設けられたスピンドルハウジング22と、スピンドルハウジング22に軸心回りに回転自在に設けられかつモータにより回転されるとともに先端に切削ブレード21が装着されるスピンドル23と、切削水ノズル24とを備える。
【0030】
切削ブレード21は、保持テーブル12で保持された被加工物200を切削するものであって、略リング形状を有する極薄の切削砥石である。実施形態1において、切削ブレード21は、円環状の円形基台と、円形基台の外周縁に配設されて被加工物200を切削する円環状の切り刃とを備える所謂ハブブレードである。切り刃は、ダイヤモンドやCBN(Cubic Boron Nitride)等の砥粒と、金属や樹脂等のボンド材(結合材)とからなり所定厚みに形成されている。なお、本発明では、切削ブレード21は、切り刃のみで構成された所謂ワッシャーブレードでもよい。
【0031】
スピンドル23は、モータにより軸心回りに回転することで、切削ブレード21を軸心回りに回転させる。なお、切削ユニット20の切削ブレード21及びスピンドル23の軸心は、Y軸方向と平行である。切削水ノズル24は、スピンドルハウジング22の先端に設けられ、切削ブレード21による被加工物200の切削中に被加工物200及び切削ブレード21に切削水を供給するものである。
【0032】
上方カメラ40は、切削ユニット20と一体的に移動するように、切削ユニット20に固定されている。上方カメラ40は、保持テーブル12に保持された被加工物200を上方から撮像する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。上方カメラ40は、保持テーブル12に保持された被加工物200を撮像して、得た画像を制御ユニット100に出力する。
【0033】
また、切削装置1は、図2に示すように、透明部123を介して被加工物200を撮像する撮像カメラ50を備える。撮像カメラ50は、保持テーブル12に保持された被加工物200を透明部123越しに被加工物200の下方から撮像するものである。
【0034】
実施形態1では、撮像カメラ50は、保持ユニット10のY軸方向の隣りに配置されている。また、撮像カメラ50は、装置本体2に設けられた第2Y軸移動ユニット35によりY軸方向に移動自在に配置され、第2Y軸移動ユニット35によりY軸方向に移動される移動プレート36から立設した立設柱37に設けられた第2Z軸移動ユニット38によりZ軸方向に移動自在に配置されている。実施形態1では、撮像カメラ50は、第2Z軸移動ユニット38によりZ軸方向に移動自在な昇降部材に一端が取り付けられた水平延在部材39の他端に取り付けられている。
【0035】
第2Y軸移動ユニット35及び第2Z軸移動ユニット38は、軸心回りに回転自在に設けられた周知のボールねじ、ボールねじを軸心回りに回転させる周知のモータ、移動プレート又は撮像カメラ50をY軸方向又はZ軸方向に移動自在に支持する周知のガイドレールとを備える。
【0036】
撮像カメラ50は、保持テーブル12に保持された被加工物200を透明部123越しに下方から撮像する撮像素子を備えている。撮像素子は、例えば、CCD(Charge-Coupled Device)撮像素子又はCMOS(Complementary MOS)撮像素子である。撮像カメラ50は、保持テーブル12に保持された被加工物200を撮像して、得た画像を制御ユニット100に出力する。
【0037】
また、切削装置1は、保持テーブル12のX軸方向の位置を検出するためX軸方向位置検出ユニット51(図2に示す)と、切削ユニット20のY軸方向の位置を検出するための図示しないY軸方向位置検出ユニットと、切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出するためのZ軸方向位置検出ユニットとを備える。X軸方向位置検出ユニット51及びY軸方向位置検出ユニットは、X軸方向、又はY軸方向と平行なリニアスケールと、読み取りヘッドとにより構成することができる。Z軸方向位置検出ユニットは、モータのパルスで切削ユニット20のZ軸方向の位置を検出する。X軸方向位置検出ユニット51、Y軸方向位置検出ユニット及びZ軸方向位置検出ユニットは、保持テーブル12のX軸方向、切削ユニット20のY軸方向又はZ軸方向の位置を制御ユニット100に出力する。
【0038】
また、切削装置1は、撮像カメラ50のY軸方向の位置を検出する第2Y軸方向位置検出ユニット55(図2に示す)を備える。第2Y軸方向位置検出ユニット55は、Y軸方向と平行なリニアスケールと、読み取りヘッドとにより構成することができる。第2Y軸方向位置検出ユニット55は、撮像カメラ50のX軸方向、切削ユニット20のY軸方向又はZ軸方向の位置を制御ユニット100に出力する。なお、各位置検出ユニット51,55が検出した各軸方向の保持テーブル12、切削ユニット20及び撮像カメラの位置は、切削装置1の予め定められた基準位置を基準として定められる。
【0039】
また、切削装置1は、切削前後の被加工物200を複数枚収容するカセット90が載置されかつカセット90をZ軸方向に移動させるカセットエレベータ91と、切削後の被加工物200を洗浄する洗浄ユニット92と、カセット90に被加工物200を出し入れするとともに被加工物200を搬送する図示しない搬送ユニットとを備える。
【0040】
制御ユニット100は、切削装置1の上述した各構成要素をそれぞれ制御して、被加工物200に対する加工動作を切削装置1に実施させるものである。なお、制御ユニット100は、CPU(central processing unit)のようなマイクロプロセッサを有する演算処理装置と、ROM(read only memory)又はRAM(random access memory)のようなメモリを有する記憶装置と、入出力インターフェース装置とを有するコンピュータである。制御ユニット100の演算処理装置は、記憶装置に記憶されているコンピュータプログラムに従って演算処理装置が演算処理を実施して、切削装置1を制御するための制御信号を入出力インターフェース装置を介して切削装置1の上述した構成要素に出力する。
【0041】
また、切削装置1は、制御ユニット100に接続されかつ加工動作の状態や画像などを表示する液晶表示装置などにより構成される図示しない表示ユニットと、制御ユニット100に接続されかつオペレータが加工内容情報などを登録する際に用いる入力ユニットとに接続されている。実施形態1において、入力ユニットは、表示ユニットに設けられたタッチパネルと、キーボード等の外部入力装置とのうち少なくとも一つにより構成される。
【0042】
また、切削装置1は、装置本体2の上方即ち保持ユニット10、切削ユニット20、洗浄ユニット92及び搬送ユニットを覆う図示しない外装カバーと、外装カバー内の空間を搬入出領域4と加工領域5とに仕切る仕切り壁6とを備える。仕切り壁6は、外装カバー内に設けられている。仕切り壁6は、保持テーブル12を内側に通して、保持テーブル12を搬入出領域4と加工領域5とに亘って移動自在するテーブル出入り口7を下端部に設けている。
【0043】
また、切削装置1は、除去ユニット60を備える。除去ユニット60は、保持テーブル12の透明部123に付着した液体を除去するものである。除去ユニット60は、図3図4及び図5に示すように、ユニット本体61を備える。ユニット本体61は、テーブル出入り口7の上端部を塞いだ状態で仕切り壁6に固定される平板状の平板部611と、平板部611に取り付けられ、かつ、下方が開口した箱状の箱状部612とを備える。また、実施形態1では、ユニット本体61は、箱状部612の下端部に切削水が浸入することを防止するゴムシート613が取り付けられている。
【0044】
また、除去ユニット60は、図4及び図5に示すように、昇降機構62と、当接部材63とを備える。当接部材63は、箱状部612内に収容されZ軸方向に移動自在に箱状部612内に設けられた支持板64の下側に支持されている。当接部材63は、内部に細かな孔が無数に空いた多孔質の合成樹脂、即ちスポンジで構成され、実施形態では、円柱状に形成されている。当接部材63は、Y軸方向と平行な軸心回りに回転自在に支持板64に支持され、全長が透明部123の外径よりも長い。
【0045】
昇降機構62は、当接部材63をZ軸方向に昇降させるものであり、実施形態1では、ユニット本体61に固定されたシリンダ621と、シリンダ621から伸縮自在に設けられかつ先端が支持板64に取り付けられた伸縮ロッド622とを備えた所謂エアシリンダである。昇降機構62は、伸縮ロッド622を伸張させると、図5に点線で示すように当接部材63がテーブル出入り口7内を通る保持テーブル12の透明部123の保持面124に当接する当接位置に位置付け、伸縮ロッド622を縮小させると、図5に実線で示すように当接部材63がテーブル出入り口7内を通る保持テーブル12の透明部123の保持面124よりも上方に位置して保持面124から退避する退避位置に位置付ける。こうして、実施形態1では、当接部材63は、当接位置と、退避位置とに位置付けられる。
【0046】
また、除去ユニット60は、移動ユニット30のX軸移動ユニット31を備える。X軸移動ユニット31は、保持テーブル12をX軸方向に移動させることで、当接位置に位置付けられて透明部123の保持面124に当接した当接部材63を透明部123上で相対移動させる移動機構である。
【0047】
次に、実施形態1に係る切削方法を図面に基づいて説明する。図6は、実施形態1に係る切削方法の流れを示すフローチャートである。実施形態1に係る切削方法は、前述した切削装置1で被加工物200を1枚切削する方法であり、切削装置1の加工動作でもある。まず、オペレータが、加工内容情報を制御ユニット100に登録し、切削加工前の被加工物200を複数収容したカセット90をカセットエレベータ91に設置する。その後、切削装置1は、オペレータからの加工動作の開始指示を制御ユニット100が受け付けると実施形態1に係る切削方法を開始する。実施形態1に係る切削方法は、図6に示すように、除去ステップST1と、保持ステップST2と、撮像ステップST3と、切削ステップST4とを備える。
【0048】
(除去ステップ)
図7は、図6に示された切削方法の除去ステップにおいて、当接部材を保持テーブルの保持面のX軸方向の一端部に当接させた状態を示す側面図である。図8は、図6に示された切削方法の除去ステップにおいて、当接部材を保持テーブルの保持面のX軸方向の中央部に当接させた状態を示す側面図である。図9は、図6に示された切削方法の除去ステップにおいて、当接部材を保持テーブルの保持面のX軸方向の他端部に当接させた状態を示す側面図である。
【0049】
除去ステップST1は、除去ユニット60で保持テーブル12の透明部123の保持面124上の液体を除去するステップである。実施形態1において、除去ステップST1では、切削装置1は、制御ユニット100がX軸移動ユニット31を制御して保持テーブル12を搬入出領域4に位置付けた後、昇降機構62を制御して当接部材63を下降させて当接位置に位置付ける。除去ステップST1では、切削装置1は、制御ユニット100がX軸移動ユニット31を制御して保持テーブル12を加工領域5に向けて移動する。すると、図7図8及び図9に示すように、当接部材63が保持テーブル12のX軸方向の一端部、中央部及び他端部に順に当接するとともに、当接部材63が保持テーブル12の移動とともに保持面124上を転動して、保持面124に付着した液体を除去する。
【0050】
実施形態1において、除去ステップST1では、切削装置1は、制御ユニット100が保持テーブル12を搬入出領域4から加工領域5に向けて移動した後、昇降機構62を制御して当接部材63を上昇させて退避位置に位置付け、X軸移動ユニット31を制御して保持テーブル12を搬入出領域4まで移動させた後、保持ステップST2に進む。なお、本発明において、除去ステップST1では、切削装置1は、制御ユニット100が当接部材63を当接位置に位置付けた状態でX軸移動ユニット31を制御して保持テーブル12を搬入出領域と加工領域との間を所定回数移動させた後、当接部材63を退避位置に位置付け、保持テーブル12を搬入出領域4まで移動させた後、保持ステップST2に進んでも良い。
【0051】
(保持ステップ)
図10は、図6に示された切削方法の保持ステップを一部断面で示す側面図である。図11は、図10中のXI部を拡大して一部断面で示す側面図である。
【0052】
保持ステップST2は、除去ステップST1を実施した後、保持テーブル12で被加工物200を保持するステップである。保持ステップST2では、切削装置1は、制御ユニット100が搬送ユニットを制御してカセット90から被加工物200を1枚取り出し、搬入出領域4に位置付けられた保持テーブル12の保持面124に載置する。保持ステップST2では、切削装置1は、制御ユニット100が真空吸引源を制御して、図10及び図11に示すように、保持面124にテープ211を介して被加工物200を吸引保持するとともに、フレーム支持部131上にテープ211を介して環状フレーム210を吸引保持して、撮像ステップST3に進む。
【0053】
(撮像ステップ)
図12は、図6に示された切削方法の撮像ステップを一部断面で示す側面図である。撮像ステップST3は、保持ステップST2を実施した後、透明部123を介して撮像カメラ50で被加工物200を撮像するステップである。
【0054】
実施形態1において、撮像ステップST3では、切削装置1は、制御ユニット100がX軸移動ユニット31及び第2Y軸移動ユニット35を制御して、図12に示すように、保持テーブル12の下方に撮像カメラ50を位置付ける。撮像ステップST3では、切削装置1は、制御ユニット100が撮像カメラ50で透明部123越しに下方から被加工物200の所定箇所を撮像し、被加工物200と切削ブレード21との位置合わせを行なうアライメントを遂行するため等の画像を取得する。撮像ステップST3では、切削装置1は、制御ユニット100が撮像カメラ50が取得した画像に基づいてアライメントを遂行し、切削ステップST4に進む。
【0055】
(切削ステップ)
図13は、図6に示された切削方法の切削ステップを一部断面で示す側面図である。切削ステップST4は、保持テーブル12で保持された被加工物200を切削ブレード21で切削するステップである。切削ステップST4では、切削装置1は、制御ユニット100がX軸移動ユニット31を制御して、保持テーブル12を加工領域5まで移動し、制御ユニット100が移動ユニット30及び切削ユニット20を制御して、保持テーブル12と切削ユニット20の切削ブレード21とをストリート203に沿って相対的に移動させながら切削水を切削水ノズル24から供給しながらストリート203に切削ブレード21をテープ211に到達するまで切り込ませて切削溝を形成する。
【0056】
切削ステップST4では、切削装置1は、切削ユニット20が保持テーブル12で保持された被加工物200の全てのストリート203を切削して切削溝を形成すると、制御ユニット100がX軸移動ユニット31をして保持テーブル12を搬入出領域4まで移動し、搬送ユニットを制御して被加工物200を洗浄ユニット92に搬送し、洗浄ユニット92で洗浄した後、カセット90に収容して、実施形態1に係る切削方法を終了する。切削装置1は、カセット90内の全ての被加工物200を切削するまで図6に示された切削方法を繰り返す。
【0057】
以上説明した実施形態1に係る切削装置1は、保持テーブル12の透明部123に付着した液体を除去する除去ユニット60を備えるので、被加工物200を保持する前に保持テーブル12から液体を除去することができる。その結果、切削装置1は、透明部123を介して被加工物200を撮像した画像に水滴が写り込むおそれを低減でき、透明部123越しに撮像した被加工物200の検出状態の悪化を抑制することができるという効果を奏する。
【0058】
また、切削装置1は、除去ユニット60が当接位置と退避位置とに位置付けられる当接部材63と、当接部材63を透明部123上で相対移動させる移動機構であるX軸移動ユニット31とを備えるので、当接位置で透明部123に当接した当接部材63をX軸移動ユニット31で透明部123上を移動させることができ、透明部123から液体を除去することができる。
【0059】
実施形態1に係る切削方法は、前述した切削装置1で被加工物200を切削する方法であって、透明部123上の液体を除去する除去ステップST1の後に、保持ステップST2及び撮像ステップST3を実施するので、透明部123を介して被加工物200を撮像した画像に水滴が写り込むおそれを低減でき、被加工物200の検出状態の悪化を抑制することができるという効果を奏する。
【0060】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2に係る切削装置を図面に基づいて説明する。図14は、実施形態2に係る切削装置の除去ユニットの当接部材等を示す斜視図である。図14は、実施形態1と同一部分に同一符号を付して説明を省略する。
【0061】
実施形態2に係る切削装置1は、除去ユニット60-2の当接部材63-2が図14に示すように、ゴム等の合成樹脂で構成された板状のスキージであり、支持板64-1が当接部材63-2の上端部を支持する事以外、実施形態1と同じである。実施形態2に係る当接部材63-2は、全長が透明部123の外径よりに長い矩形状に形成されている。当接部材63-2は、長手方向がY軸方向と平行に配置され、幅方向の一端部が支持板64-2に支持され、他端部が保持テーブル12の透明部123に当接して、透明部123から液体を除去する。
【0062】
実施形態2に係る切削装置1は、保持テーブル12の透明部123に付着した液体を除去する除去ユニット60-2を備えるので、被加工物200を保持する前に保持テーブル12から液体を除去することができる。その結果、切削装置1は、実施形態1と同様に、透明部123を介して被加工物200を撮像した画像に水滴が写り込むおそれを低減でき、透明部123越しに撮像した被加工物200の検出状態の悪化を抑制することができるという効果を奏する。
【0063】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3に係る切削装置を図面に基づいて説明する。図15は、実施形態3に係る切削装置の除去ユニットの噴射部を示す斜視図である。図16は、図15に示された噴射部を下方からみた斜視図である。
【0064】
実施形態3に係る切削装置1は、除去ユニット60-3が昇降機構62を備えずに当接部材63の代わりに図15及び図16に示す噴射部67を有し、X軸移動ユニット31が噴射部67を透明部123上で相対移動させる事以外、実施形態1と同じである。噴射部67は、透明部123に向かって加圧されたエアーを噴射するものである。
【0065】
実施形態3に係る除去ユニット60-3の噴射部67は、全長が透明部123の外径よりも長い外観が四角柱状に形成されている。噴射部67は、ユニット本体61の箱状部612内に収容され、Y軸方向と平行に配置されている。噴射部67は、図示しないエアー供給源から加圧されたエアーが供給され、保持テーブル12に対向する下面69に図16に示すように加圧されたエアーを噴射するエアー噴射口68を複数設けている。実施形態1では、エアー噴射口68は、噴射部67の長手方向に間隔をあけて配置されている。
【0066】
実施形態3に係る切削装置1は、保持テーブル12の透明部123に付着した液体を除去する除去ユニット60-3を備えるので、被加工物200を保持する前に保持テーブル12から液体を除去することができる。その結果、切削装置1は、実施形態1と同様に、透明部123を介して被加工物200を撮像した画像に水滴が写り込むおそれを低減でき、透明部123越しに撮像した被加工物200の検出状態の悪化を抑制することができるという効果を奏する。
【0067】
また、実施形態3に係る切削装置1は、除去ユニット60-3が透明部123に向かって加圧されたエアーを噴射する噴射部67を備えているので、除去ユニット60-3を保持テーブル12の透明部123に当接させることなく、透明部123に付着した液体を除去することができる。
【0068】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。なお、上記実施形態では、撮像ステップST3は、アライメントを遂行するために実施したが、本発明では、アライメントに限定されずに、例えば、被加工物200に形成した切削溝の所望の位置からのズレ及び切削溝の両縁に生じるチッピングの大きさ等が所定の範囲内であるか否かを判定するカーフチェックを遂行する際にも、撮像ステップST3を実施して撮像カメラ50で被加工物200を透明部123越しに下方から撮像しても良い。
【符号の説明】
【0069】
1 切削装置
12 保持テーブル
20 切削ユニット
21 切削ブレード
24 切削水ノズル
31 X軸移動ユニット(移動機構)
50 撮像カメラ
60,60-2,60-3 除去ユニット
63,63-2 当接部材
67 噴射部
123 透明部
124 保持面
200 被加工物
ST1 除去ステップ
ST2 保持ステップ
ST3 撮像ステップ
ST4 切削ステップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16