(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-19
(45)【発行日】2023-10-27
(54)【発明の名称】オキセパン環を含有する医薬の調製のための方法
(51)【国際特許分類】
C07D 417/14 20060101AFI20231020BHJP
C07D 405/04 20060101ALI20231020BHJP
A61K 31/427 20060101ALN20231020BHJP
A61P 35/00 20060101ALN20231020BHJP
【FI】
C07D417/14
C07D405/04
A61K31/427
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2022515639
(86)(22)【出願日】2020-09-10
(86)【国際出願番号】 US2020050086
(87)【国際公開番号】W WO2021050654
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-05-06
(32)【優先日】2019-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ゴスラン, フランシス
(72)【発明者】
【氏名】マックローリー, アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】チョン, チーカン
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-529235(JP,A)
【文献】特表2017-507988(JP,A)
【文献】国際公開第2018/104295(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61P
A61K
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
N-(5-((5R,6S)-5-アミノ-6-フルオロオキセパン-2-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-(2,6-ジフルオロフェニル)チアゾール-4-カルボキサミド(1)
の調製のための方法であって、
(i
)1-メチル-4-ニトロ-5-(2,3,4,7-テトラヒドロオキセピン-2-イル)-1H-ピラゾール(5)を
、R
1
がp-ニトロフェニル又はo-ニトロフェニルであるN-クロロスルホンアミド(18)および
N-ブロモスクシンイミドで処理して、アジリジン19を得る工程、
(ii)19を
トリエチルアミントリヒドロフルオリドで処理して20を得る工程、
(iii)20を、
チオ酢酸及びカリウムtert-ブトキシドと接触させて8を得る工程、
(iv)
R
2
がtert-ブトキシカルボニルであるアミン保護基を導入して21を得る工程、
(v)21を還元して22を得る工程、
(vi)活性化剤の存在下で22を2-(2,6-ジフルオロフェニル)チアゾール-4-カルボン酸と縮合させて、23を得る工程、
(vii)23を
トリフルオロ酢酸で処理して1を得る工程
を含む、方法。
【請求項2】
ニトロ還元剤が水素および
炭素上の1%パラジウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R
1がp-ニトロフェニルである、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
(i)N-メチル 4-ニトロ-1H-ピラゾール(12)をリチウムヘキサメチルジシラザンで脱プロトン化し、得られた共役塩基をペント-4-エナール(13)と反応させて、14を得る工程、
(ii)ヒドロキシル部分を臭化アリルでアルキル化して、15を得る工程、
(iii)15をオレフィンメタセシス反応に供して5を得る工程
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
化合物8が、(Boc)
2
Oでアシル化され、結果物であるトリフルオロアセタミド混合物が、キラルHPLCにより分離されて化合物9a及び化合物9bを得、
化合物9aが
、請求項1の工程(v)、(vi)、及び(vii)に記載の処理により、1aにさらに変換
される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
デス・マーチン試薬で14を酸化して1-(1-メチル-4-ニトロ-1H-ピラゾール-5-イル)ペント-4-エン-1-オン(16)を得、クロロ[N-[(1R,2R)-1,2-ジフェニル-2-[[3-(η
6-フェニル)プロピル]アミノ-κN]エチル]-4-メチルベンゼンスルホンアミダト-κN]-ルテニウムでキラル接触水素化して
(S)-1-(1-メチル-4-ニトロ-1H-ピラゾール-5-イル)ペント-4-エン-1-オール(14a)を得ることによる、17のキラル合成をさらに含み、
14aが、請求項4に記載の方法により臭化アリルでアルキル化されて14bを得、14bが環状化されて17を得、さらに17が請求項1に記載の方法によりN-(5-((2S,5R,6S)-5-アミノ-6-フルオロオキセパン-2-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-(2,6-ジフルオロフェニル)チアゾール-4-カルボキサミド(1a)に変換される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
(3S,4R)-3-フルオロ-7-(1-メチル-4-ニトロ-1H-ピラゾール-5-イル)オキセパン-4-アミン(8)
の調製のための方法であって、
(i)1-メチル-4-ニトロ-5-(2,3,4,7-テトラヒドロオキセピン-2-イル)-1H-ピラゾール(5)を
p-ニトロフェニル-N-クロロスルホンアミド(18)および
N-ブロモスクシンイミドで処理して、アジリジン19を得る工程、
続いて(ii)19をフッ化物源で処理して20を得る工程、
(iii)20を
カリウムtert-ブトキシド及びチオ酢酸と接触させて8を得る工程
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2019年11月12日に出願された米国特許仮出願第62/934,382号、および2019年9月11日に出願された米国特許仮出願第62/898,861号の優先権の利益を主張するものであり、これらの出願の内容は、その全体が参照により組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、式1のPIMキナーゼ阻害剤の新規な調製のための方法に関する。本発明の1つの目的は、商業規模で効率的かつ安全に実施し得る改良された方法である。
【背景技術】
【0003】
Pimキナーゼは、遺伝子Pim-1、Pim-2、およびPim-3によってコードされる3種の高度に関連するセリンおよびスレオニンプロテインキナーゼのファミリーである。遺伝子名は、挿入がPimキナーゼの過剰発現と、デノボT細胞リンパ腫またはトランスジェニックMyc駆動リンパ腫モデルにおける腫瘍形成の劇的な加速のいずれかを導く、マウスモロニーウィルスの頻繁な組込み部位のProviral Insertion Moloney(プロウィルス挿入モロニー)なる語句に由来する(Cuypersら(1984)Cell,vol.37(1)pp.141-50;Seltenら(1985)EMBO J.vol.4(7)pp.1793-8;van der Lugtら(1995)EMBOJ.vol.14(11)pp.2536-44;Mikkersら(2002)Nature Genetics,vol.32(1)pp.153-9;van Lohuizenら(1991)Cell,vol.65(5)pp.737-52)。これらの実験は、癌遺伝子c-Mycとの相乗効果を明らかにし、Pimキナーゼの阻害が治療上の利益を有し得ることを示唆する。
【0004】
N-(5-((5R,6S)-5-アミノ-6-フルオロオキセパン-2-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-(2,6-ジフルオロフェニル)チアゾール-4-カルボキサミド(I)は、Pim-1、Pim-2およびPim-3の高度に選択的な阻害剤である。国際公開第2015/140189号には、1を含むPIM阻害剤および関連する環状エーテルピラゾリル化合物が開示されている。
【0005】
他のPIM阻害剤が報告されている。(W.Blackabyら,WO2014/048939;X.Wangら、J.Med.Chem.2019 62:2140-2153;L.S.Chenら、Blood2011118(3):693;Dakin,L.A.らBioorg.Med.Chem.Lett.201222(14):4599-4604およびBurger,M.T.ら,J.Med Chem.201558(21):8373-8386。
【発明の概要】
【0006】
本方法は、式5の2,3,4,7-テトラヒドロオキセピンをナトリウムクロロ((4-ニトロフェニル)スルホニル)アミドおよびN-ブロモスクシンイミドで処理してアジリジン6を得る工程を含む置換オキセパン誘導体の調製のための改良された方法であり、アジリジン6をHF媒介性の環開環に供して7が得られ、これを開裂させてフルオロアミノオキセパン8が得られる。
【0007】
初期の第1級アミンの保護、ニトロ基の還元、1-1’-カルボニルジイミダゾール(CDI)による2-(2,6-ジフルオロフェニル)チアゾール-4-カルボン酸との縮合、およびその後のアミンの脱保護により、1が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の定義は、本明細書において本発明を説明するために使用される種々の用語の意味および範囲を例示し、定義するために記載されている。
【0009】
本明細書で使用される「1つの(a)」または「1つの(an)」実体という語句は、その実体の1つ以上の実態を指す。例えば、化合物は、1つ以上の化合物または少なくとも1つの化合物を指す。そのために、用語「a」(または「an」)、「1つ以上の」、または「少なくとも1つの」は、本明細書では相互互換的に用い得る。
【0010】
本明細書で使用される場合、「含む」および「含んでいる」という用語は、移行句であろうと特許請求の範囲の本文であろうと、制限のない意味を有すると解釈すべきである。すなわち、これらの用語は、「少なくとも有する」または「少なくとも含有する」という語句と同義に解釈すべきである。プロセスの文脈で使用される場合、「含んでいる」という用語は、方法が少なくとも列挙された工程を含むが、追加の工程を含み得ることを意味する。化合物または組成物の文脈で使用される場合、「含んでいる」という用語は、化合物または組成物が少なくとも列挙された特徴または構成要素を含むが、追加の特徴または構成要素も含み得ることを意味する。
【0011】
本明細書で使用される場合、「任意の」または「場合により」という用語は、続いて記載される事象または状況が起こり得るが、必ずしも起こる必要はないこと、また、その説明が、その事象または状況が起こる場合と起こらない場合とを含むことを意味する。例えば、「場合により置換された」 は、場合により置換された部分が、水素または置換基を組み込みんでもよいことを意味する。
【0012】
「約」という用語は、本明細書では、「おおよそ」、「の範囲」、「だいたい」、または「その前後」を意味するために使用される。「約」という用語が数値範囲と組み合わせて使用される場合、記載された数値の上限および下限を拡大することによってその範囲を修飾する。一般に、「約」という用語は、本明細書では、記載された数値を20%の変動で上下に修飾するために使用される。
【0013】
本明細書で使用される場合、「処理すること」、「接触すること」、または「反応すること」とは、化学反応に言及する場合、2つ以上の試薬を適切な条件下において添加または混合して、示されたおよび/または所望の生成物を生成することを意味する。示されたおよび/または所望の生成物を生成する反応は、最初に添加された2つの試薬の組合せから必ずしも直接的に生じるわけではなく、すなわち、示されたおよび/または所望の生成物の形成を最終的にもたらす混合物中で生成される1つ以上の中間体が存在し得ることを理解されたい。
【0014】
保護基(PG)という用語は、官能基の反応性を妨げるために従来使用されている任意の置換基を指す。本明細書で使用される場合、(a)分子中の反応性基と効率的に結合し;(b)反応性基が望ましくない化学反応に関与するのを防止し;(c)反応性基の保護がもはや必要とされなくなった後に容易に除去し得る化学基を指す。保護基は、別の反応を妨げるために、官能基の特徴的な化学を一時的にマスクするために合成に使用される。保護基を導入および除去するための試薬およびプロトコルは周知であり、多数のテキストで概説されている(例えば、T.W.GreeneおよびP.G.M.Wuts,Protective Groups inOrganicSynthesis,3rdedition,John WileyおよびSons,New York,1999,ならびにHarrisonおよびHarrisonら,Compendium of Synthetic Organic Methods,Vols.1-8 John Wiley and Sons,1971-1996)。化学の分野の当業者は、プロトコルが特定の分子に対して最適化されなければならない場合があり、そのような最適化がこれらの分野の当業者の能力によって十分であることを理解するであろう。
【0015】
R1に適したアミノ保護基は、フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、カルボベンジルオキシ(Cbz)、メトキシベンジルカルボニル(Moz)、tert-ブトキシカルボニル(Boc)、トリクロロエトキシカルボニル(Troc)、2-(トリメチルシリル)エトキシカルボニル(Teoc)またはビニルオキシカルボニル(Voc)である。R1について定義される好ましいアミノ保護基はBocである。
【0016】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を指す。
【0017】
臭素源の存在下でのクロラミンTまたは他のN-クロロアリールスルホンアミドによるオレフィンのアジリジンへの変換(他の臭素源を使用し得る。例えば、ZnBr2、HgBr2、FepBr2、CuBr2、NBSおよびフェニルトリメチルアンモニウムトリブロミドが報告されている(Jeong,J.U.ら.J.Am.Chem.Soc.1998 120:6844;Ando,T.ら、Tetrahedron Lett.1998 39:309;Ando,T.ら、Tetrahedron1998 54:13485;Chang,M.-Y.らTetrahedron Lett.2014 55:4767))。当業者は、アジリジンの導入において、他のナトリウムクロロ(アリールスルホニル)アミドを用いて達成し得ることを理解するであろう。オルト-ニトロフェニルおよびパラ-ニトロフェニルN-クロロアリールスルホンアミドは、チオールおよびカリウムtert-ブトキシドで加水分解し得るので、有利に使用し得る。N-クロロtert-ブチルスルホンアミドは、トリフルオロメチルスルホン酸で切断し得るt-ブチルスルホンアミド部分を有する置換アジリジンを与えるベータ-フルオロアミンを与える求核性フッ化物によるアジリジンの開環も報告されている。(Hu,E.Eric,Tetrahedron2004 60:2701-2743;Champagne,P.R.ら、Chemical Rev.2015 113:9073-9174.)
【0018】
ニトロ基のアミンへの還元は、反応不活性溶媒、例えばMeOH、EtOH、EtOAc、ベンゼン、トルエン、キシレン、o-ジクロロベンゼン、DCM、DCE、THF、ジオキサンまたはそれらの混合物中、Fe、SnまたはZnなどの金属還元剤を用いて達成し得る。所望であれば、還元試薬がFe、SnまたはZnである場合、反応は水の存在下、酸性条件下で実施される。還元は、金属触媒、例えばラネーニッケルなどのニッケル触媒、Pd/Cなどのパラジウム触媒、PtO2などの白金触媒、またはRuCl2(Ph3P)3などのルテニウム触媒の存在下、H2雰囲気下、またはヒドラジンもしくはギ酸などの水素源の存在下で水素化によって実施し得る。所望であれば、反応は、酸性条件下、例えばHClまたはHOAcの存在下で実施される。
【0019】
カルボン酸は、0℃~60℃の温度で、ジメチルホルムアミド(DMF)またはジクロロメタンなどの不活性溶媒中、EDC、DCC、ベンゾトリアゾール-1-イルオキシ-トリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)、ブロモ-トリス-ピロリジノホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBrOP)または2-フルオロ-1-メチルピリジニウムp-トルエンスルホネート(NMM、TEAまたはDIPEAなどの塩基を含むかまたは含まないMukaiyama試薬)などの試薬で活性化し得る。アミンのアシル化が概説されている(J.March,上述pp.417-425;H.G.Benz,Synthesis of Amides and Related Compounds inComprehensive Organic Synthesis,E.Winterfeldt,ed.,vol.6,Pergamon Press,Oxford1991pp.381-411;R.C.Larock,Comprehensive Organic Transformations-A Guide to Functional Group Preparations,1989,VCH Publishers Inc.,New York;pp.972-976を参照のこと)。
【0020】
本発明の一実施形態では、1を調製のための方法であって、(i)1-メチル-4-ニトロ-5-(2,3,4,7-テトラヒドロオキセピン-2-イル)-1H-ピラゾール(5,Blackaby,W.ら、国際公開第WO2014/048939号)をN-クロロスルホンアミド(18;R
1はニトロフェニル、またはtert-Bu)および臭素素源で処理してアジリジン19を得る工程;(ii)19を求核性フッ化物で処理して20aを得る工程;(iii)アミノ保護基(R
1)を除去して8を得る工程;
(iv)第2のアミン保護基を導入して21を得る工程;(v)21のニトロ基を還元して22を得る工程;
(vi)カルボン酸活性化剤中で、22を2-(2,6-ジフルオロフェニル)チアゾール-4-カルボン酸と縮合させる工程;(vii)23を、第2の切断試薬で処理して1を得る工程
を含む、調製方法が提供される。
【0021】
本発明の別の実施形態では、1の調製のための方法であって、(i)1-メチル-4-ニトロ-5-(2,3,4,7-テトラヒドロオキセピン-2-イル)-1H-ピラゾール(5)をナトリウムクロロ((4-ニトロフェニル)スルホニル)アミドおよびN-ブロモスクシンイミドで処理してアジリジン6を得る工程;
(ii)6をトリエチルアミントリヒドロフルオリドで処理して7を得る工程;(iii)7をカリウムtert-ブトキシドおよびチオ酢酸で処理して8を得る工程;
(iv)8をジ-tert-ブチルピロカルボネートで処理して9を得る工程;(v)9をエタノール中で、水素およびNoblyst P8078で還元して10を得る工程;
(vi)カルボニルジイミダゾールの存在下で、10および2-(2,6-ジフルオロフェニル)チアゾール-4-カルボン酸を縮合させて11を得る工程;および
(vii)10からBoc保護基を除去して1を得る工程を含む、方法が提供される。
【0022】
本発明の別の実施形態では、1-メチル-4-ニトロ-5-(2,3,4,7-テトラヒドロオキセピン-2-イル)-1H-ピラゾール(5にアジリジンを導入することにより、(1R,7R)-4-(1-メチル-4-ニトロ-1H-ピラゾール-5-イル)-8-((4-ニトロフェニル)スルホニル)-3-オキサ-8-アザビシクロ[5.1.0]オクタン(6)を得る、8の調製のための方法が提供される。6をフッ化水素-Et
3Nと接触させると、開環が起こり、N-((3S,4R)-3-フルオロ-7-(1-メチル-4-ニトロ-1H-ピラゾール-5-イル)オキセパン-4-イル)-4-ニトロベンゼンスルホンアミド(7)が得られる。7をカリウムtert-ブトキシドおよびチオ酢酸と反応させると、Nos部分が開裂し、(3S,4R)-3-フルオロフルオロ-7-(1-メチル-4-ニトロ-1H-ピラゾール-5-イル)オキセパン-4-アミン(8)が得られる。(T.Fukuyamaら、Tetrahedron Lett.1995 36:6373-6374;Maligres,P.M.ら、Tetrahedron Lett199738(30):5253-5256;Cardullo,F.ら、Synlett2005 19:2996-2998)。
【0023】
別の実施形態では、(3S,4R)-3-フルオロ-7-(1-メチル-4-ニトロ-1H-ピラゾール-5-イル)オキセパン-4-アミン(8)
は、以下の工程:(i)1-メチル-4-ニトロ-5-(2,3,4,7-テトラヒドロオキセピン-2-イル)-1H-ピラゾール(5)をN-クロロスルホンアミド(18)および臭素源で処理してアジリジン19を得る工程;
(ii)19を求核性フッ素源で処理して20を得る工程;
(iii)20を、R
1がニトロフェニルである場合はチオールおよび強塩基から選択される試薬で、R
1がtert-ブチルである場合はトリフルオロメチルスルホン酸で処理して8を得る工程
により調製される。
【0024】
別の実施形態では、N-クロロスルホンアミドはナトリウムクロロ((4-ニトロフェニル)スルホニル)アミドであり、臭素源はNBSであり、フッ化物源はトリエチルアミントリヒドロフルオリドであり、スルホンアミドはカリウム-tert-ブトキシドおよびチオ酢酸で切断される。
【0025】
本発明の別の実施形態では、8のアミノ基をBocで保護し、次いで、ニトロを接触水素化によって還元して、tert-ブチル((3S,4R)-7-(4-アミノ-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-フルオロオキセパン-4-イル)カルバメート(10)を得る。10を2-(2,6-ジフルオロフェニル)チアゾール-4-カルボン酸(17)および1,1’-カルボニルジイミダゾールでアシル化して11を得る。
【0026】
本発明の別の実施形態では、9を、CHIRALPAK AD-HでのキラルHPLCによって分割して、9aおよび9bを得る。次いで、エナンチオマー9aを同様に変換して1aを得る。
【0027】
本発明のさらに別の態様では、強塩基を用いてN-メチル4-ニトロ-1H-ピラゾール(12)を脱プロトン化して(S)-1-メチル-4-ニトロ-5-(2,3,4,7-テトラヒドロオキセピン-2-イル)-1H-ピラゾール(5a)を調製して(1-メチル-4-ニトロ-1H-ピラゾール-5-イル)リチウムを得、これをペント-4-エナール(13)と縮合させて14を得る。14の酸化により対応するケトン15が得られ、これをクロロ{N-[(1S,2S)-2-[(R)-[2-[[1,2,3,4,5,6-η)-4-メチルフェニル]メトキシ]エチル]アミノ]-1,2-ジフェニルエチルメタンスルホンアミダト}ルテニウム(II)を用いた不斉水素化に供して、収率98%および94% eeで14aを得る。キラルアルコールを臭化アリルでアルキル化して、(S)-1-(1-メチル-4-ニトロ-1H-ピラゾール-5-イル)ペント-4-エン-1-オール(16)を得、これをオレフィンメタセシス(オレフィンメタセシス反応の総説については、例えば、K.C.Nicolaouら、Angew.Chem.Int.Ed.2005 44:4490;A.MichrowskaおよびK.Grela,Pure Appl.Chem.200880(1):31を参照のこと)によって(S)1-メチル-4-ニトロ-5-(2,3,4,7-テトラヒドロオキセピン-2-イル)-1H-ピラゾール(5a)に変換する。
【0028】
実施例1
(1R,7R)-4-(1-メチル-4-ニトロ-1H-ピラゾール-5-イル)-8-((4-ニトロフェニル)スルホニル)-3-オキサ-8-アザビシクロ[5.1.0]オクタン(6)
500Lの反応器にアセトニトリル(200kg)を投入した。次いで、反応器に1-メチル-4-ニトロ-5-(2,3,4,7-テトラヒドロオキセピン-2-イル)-1H-ピラゾール(25kg、112mol)およびN-ブロモスクシンイミド(4kg、22.5mol)を投入し、得られた懸濁液を溶液が均一になるまで撹拌した反応器をN2でパージし、反応混合物を20~30℃に維持した。この溶液に、ナトリウムクロロ((4-ニトロフェニル)スルホニル)アミド(43.4kg、168mol)を4バッチで添加し、N2正圧を維持して不活性雰囲気を維持した。反応物を13時間撹拌し、次いで、H2O(1000L)を投入した。得られた混合物を1時間撹拌し、得られたスラリーをろ過によって回収した。固体をEtOH(250kg)でスラリー化し、フィルタにかけ、遠心分離して、(1R,7R)-4-(1-メチル-4-ニトロ-1H-ピラゾール-5-イル)-8-((4-ニトロフェニル)スルホニル)-3-オキサ-8-アザビシクロ[5.1.0]オクタン(6)を白色固体として得た。固体を減圧下で乾燥させて、42kg、88.6%の単離収率で白色粉末として得た。
【0029】
実施例2
N-((3S,4R)-3-フルオロ-7-(1-メチル-4-ニトロ-1H-ピラゾール-5-イル)オキセパン-4-イル)-4-ニトロベンゼンスルホンアミド(7)
1000Lの反応器にMeCN(168kg)およびTHF(168kg)を投入し、撹拌しながら(1R,7R)-4-(1-メチル-4-ニトロ-1H-ピラゾール-5-イル)-8-((4-ニトロフェニル)スルホニル)-3-オキサ-8-アザビシクロ[5.1.0]オクタン(6;42kg,99.3mol)およびEt3N.(HF)3(31.9kg、267.9mol)を添加した。反応器を20~30℃に維持し、DBU(45.2kg、297.9mol)を滴下した。反応器をN2でパージし、反応物を正のN2圧力下で65~70℃で20時間加熱した。反応混合物を20~30℃に冷却し、1M HCl(47.0kg)で反応物の反応を停止した。溶媒を減圧蒸留(内部温度<50℃)によって除去し、得られた固体をフィルタにかけ、H2O(室温)、DCM(室温)および3回のMeCN(80℃)でスラリー化した。固体をフィルタにかけ、45℃で減圧乾燥させて、7(17kg、38.6%単離)を灰色がかった白色の固体として得た。
【0030】
実施例3
(3S,4R)-3-フルオロ-7-(1-メチル-4-ニトロ-1H-ピラゾール-5-イル)オキセパン-4-アミン(8)
500Lの反応器にMeOH(250kg)を投入し、N2雰囲気下で維持した。カリウムtert-ブトキシド(24.3kg、36.1mol)を20~30℃で少しずつ添加した。得られた溶液を20~30℃に維持しながら、HSCH2CO2H(12.5kg、135.9mol)を溶液に滴下した。得られた溶液を室温で1時間撹拌し、次いで、7(16kg、36.1mol)を添加した。反応混合物を45~60℃で約4時間加熱した。H2O(320kg)で反応混合物の反応を停止し、MeOHを減圧蒸留した(内部温度<50℃)。水相をDCM(2×200kg)で抽出し、合わせたDCM抽出物を0.1MNaOH(2×100kg)およびH2O(100kg)で順次洗浄し、次いで乾燥させ(Na2SO4)、フィルタにかけ、DCMを石油エーテル(10L)で置換した。得られた沈殿物をフィルタにかけ、風乾して、8(8.4kg,90%)を白色の結晶性固体として得た。
【0031】
実施例4
tert-ブチル((3S,4R)-7-(4-アミノ-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-フルオロオキセパン-4-イル)カルバメート(9)
20Lの反応器に、8(800g、3.10mol)、2-Me-THF(5L)および1M K3PO4(9.3L、9.3mol)を投入した。20~30℃で、この溶液に、(Boc)2O(706g、3.25mol)および2-Me-THF(1L)の溶液を滴下した。得られた混合物を室温で2時間撹拌した。反応が完了した後、有機相を分離し、水相をDCM(3L)で抽出した。有機相を乾燥させ(Na2SO4)、フィルタにかけ、濃縮した。8つの同一のバッチを合わせ、約10Lに濃縮し、石油エーテル(10L)を添加し、得られた混合物を20分間撹拌した。得られた沈殿物を回収し、風乾することにより、8kgの9を白色固体として得た。
【0032】
7.5kgのラセミ体を、0.46cm ID×15cm CHIRALPAK AD-HカラムによるキラルHPLCで分割して、3.4kgのtert-ブチル((3S,4R,7S)-3-フルオロ-7-(1-メチル-4-ニトロ-1H-ピラゾール-5-イル)オキセパン-4-イル)カルバメート(9a)、および3.6kgのtert-ブチル((3R,4S,7R)-3-フルオロ-7-(1-メチル-4-ニトロ-1H-ピラゾール-5-イル)オキセパン-4-イル)カルバメート(9b)を得た。
【0033】
実施例5
tert-ブチル((3S,4R)-7-(4-アミノ-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-フルオロオキセパン-4-イル)カルバメート(10)
機械的撹拌機および温度計を備えた10Lのオートクレーブに、EtOH(7L)、tert-ブチル((3S,4R,7S)-3-フルオロ-7-(1-メチル-4-ニトロ-1H-ピラゾール-5-イル)オキセパン-4-イル)カルバメート(9a、750g、2.09モル)およびNoblyst P8078触媒(37.5g)を投入した。オートクレーブを閉じ、N2で3回パージし、H2で3回パージした。混合物を2MPaのH2圧力下、50℃で撹拌した。混合物をCELITE(登録商標)でフィルタにかけ、MeOH(4L)で洗浄した。濾液を約1Lまで減圧濃縮した。750gのバッチを4つ合わせ、50℃で1時間脱イオンH2O(9L)を加え、次いで、室温に冷却した。混合物をフィルタにかけ、ケーキを脱イオン水で洗浄した。得られた固体を石油エーテルでスラリー化した。得られた固体をフィルタにかけ、50℃で減圧下で乾燥させて、10(93%)を白色固体として得た。
【0034】
実施例6
tert-ブチル((3S,4R)-7-(4-(2-(2,6-ジフルオロフェニル)チアゾール-4-カルボキサミド)-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-フルオロオキセパン-4-イル)カルバメート

100Lの反応器に、2-(2,6-ジフルオロフェニル)チアゾール-4-カルボン酸(17,2.921kg,1.19当量)およびTHF(11.05kg、4.41体積当量)を投入した。20Lの反応器に、1,1’-カルボニルジイミダゾール(CDI、1.490kg、1.20当量)およびTHF(13.40kg、5.34体積当量)を投入した。20Lの反応器の内容物を100L反応器に15分以上かけて移した。20Lの反応器を追加のTHF(3.25kg、1.30体積当量)ですすぎ、100Lの反応器に移した。混合物を約30分間熟成させた。次いで、20Lの反応器に、tert-ブチル((3S,4R)-7-(4-アミノ-1-メチル-1H-ピラゾール-5-イル)-3-フルオロオキセパン-4-イル)カルバメート(2.508kg,1.00当量)およびTHF(13.35kg、5.32体積当量)を投入した。20Lの反応器をTHF(3.30kg)ですすぎ、溶液を100Lの反応器に移し、約30分間熟成した。残存量が約20Lになるまでバッチ温度を55℃以下に維持しながら、内容物を蒸留した。50Lの反応器に、精製水(40kg)およびNaOH(50重量%、水溶液、0.824kg、1.35当量)を投入した。50Lの反応器の内容物を100Lの反応器に約5分間にわたって移した。内容物を50℃に加熱し、その温度で少なくとも30分間維持し、次いで、少なくとも2時間にわたって20℃まで冷却した。混合物を60分以上保持した。混合物をフィルタードライヤーによりフィルタにかけた。50Lの反応器に精製水(9.85kg、3.93体積当量)およびNaOH(50重量%、水溶液、0.211kg、0.35当量)を投入し、内容物を100Lの反応器に移し、次いでフィルタードライヤーによりフィルタにかけた。濾液のpHが7以下になるまで、ケーキを精製水(32.95kg、13.14体積当量、続いて15.35kg、6.12体積当量)で洗浄した。もはや濾液をフィルタから回収することができなくなった後、ケーキをフィルタードライヤー中、60℃(ジャケット温度)で、窒素パージしながらハウス真空下で乾燥させた。乾燥を約3時間継続して、3.797kgの11(収率90%;HPLCによる>99.9面積%)を、灰色がかった白色の固体として得た。
【0035】
実施例7
N-(5-((5R,6S)-5-アミノ-6-フルオロオキセパン-2-イル)-1-メチル-1H-ピラゾール-4-イル)-2-(2,6-ジフルオロフェニル)チアゾール-4-カルボキサミド(I)
50Lの反応器に精製水(12.15 kg、3.24体積当量)を投入し、10℃に冷却した。温度を50℃未満に維持しながら硫酸(95~98重量%、水溶液、5.95kg、8.76当量)を添加した。100Lの反応器に、11(3.747kg、1.00当量)およびアニソール(18.15kg、4.84体積当量)を投入した。温度を55℃未満に維持しながら、50Lの反応器の内容物を100Lの反応器に移した。100Lの反応器の内容物を55℃に加熱し、次いでその温度で少なくとも60分間保持した。内容物を20℃に冷却し、層を別々のカーボイに排水した。水層を100Lno反応器に投入し、10℃まで冷却し、次いで、温度を40℃未満に維持しながらNaOH(50重量%、水溶液、10.10kg、18.6当量)を添加した。アニソール(17.95kg、4.79体積当量)を100Lの反応器に投入し、内容物を55℃に加熱した。この温度で下層の水層を排水した。精製水(14.90kg、3.98体積当量)を100Lの反応器に添加し、内容物を55℃に加熱し、次いで、下層の有機層を50Lの反応器に移した。
【0036】
アニソール(5.30kg、1.41体積当量)を50Lの反応器に投入し、バッチ温度を90℃未満に維持しながら、残存量が17Lになるまで内容物を蒸留した。次いで、内容物を55℃に冷却した。
【0037】
0内容物を85℃に加熱し、次いでインラインフィルタを通して新しい100Lの反応器に移した。50Lの反応器にアニソール(3.05kg、0.81体積当量)を投入し、次いで、これをインラインフィルタを通して新しい100Lの反応器に移した。ヘプタン(4.95kg、1.32体積当量)をインラインフィルタを通して新しい100Lの反応器に投入し、内容物を90℃に加熱した。内容物を少なくとも10分間(溶液が得られるまで)撹拌し、次いで75℃に冷却した。アニソール(0.1856kg、0.50体積当量)中の1シード(0.0218kg)のスラリーを反応器3に投入した。内容物を75℃で少なくとも60分間保持し、5時間以上かけて10℃まで冷却し、次いでその温度に3時間以上保持した。内容物をフィルタードライヤーによりフィルタにかけた。アニソール(3.20kg、0.85体積当量)およびヘプタン(1.07kg、0.29体積当量)をインラインフィルタを通して反応器3に投入し、次いで、フィルタードライヤーを通してフィルタにかけた。ケーキをヘプタン(5.70kg、1.52体積当量)で洗浄し、次いで、窒素パージしながらハウス真空下、70±5℃(ジャケット温度)でフィルタードライヤーで乾燥させた。乾燥を6時間続けた。この方法により、2.706kgの1(収率88%;HPLCによる99.9面積%)を、灰色がかった白色の固体として得た。
【0038】
前述の明細書、または以下の特許請求の範囲に、具体的な形態で、または開示した機能、若しくは開示した結果を得るための方法若しくはプロセスを適宜実施するための手段の観点から表現した特徴は、個別に、またはそのような特徴の任意の組み合わせで、様々な形態において、本発明を実現するために利用することができる。
【0039】
前述の発明は、明確化および理解のための例示および実施例により、ある程度詳細に記載されている。当業者には、添付の特許請求の範囲の範囲内において、変更および修正を実施することが可能であることが明らかであろう。それ故、上記明細書は例示的なものであり、制限を加えることを意図するものではないことが理解されなければならない。それ故、本発明の範囲は上記明細書を参照して決定されるべきではなく、代わりに、以下の添付の特許請求の範囲を参照して、その特許請求の範囲が権利を受ける等価物の全範囲と共に決定されるべきである。
【0040】
本明細書において言及した特許、公開出願、および科学文献は、当業者の知識を確立するものであり、それぞれが具体的かつ個々に参照により援用したのと同程度にその全体を参照により本明細書に組み込まれている。本明細書に引用された文献の記載と、本明細書における具体的な教示との間に矛盾がある場合、後者を支持して解釈するものとする。同様に、単語または語句について、当該分野で理解される定義と、本明細書において具体的に教示した単語または語句との間に矛盾がある場合、後者を支持して解釈するものとする。