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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】光周波数計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01J 9/02 20060101AFI20231023BHJP
【FI】
G01J9/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022082071
(22)【出願日】2022-05-19
(62)【分割の表示】P 2018190682の分割
【原出願日】2018-10-09
(65)【公開番号】P2022103369
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】P 2018036202
(32)【優先日】2018-03-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [公開の事実] 1.ウェブサイト掲載日:2018年3月5日 2.ウェブサイトのアドレス:2018年第65回応用物理学会春季学術講演会ウェブサイト ・WEBプログラム https://confit.atlas.jp/guide/event/jsap2018s/top ・iTunes(App Store) https://goo.gl/sdAU4Q ・Google Play https://goo.gl/rsXFT9 3.公開者:原 一鳳、石澤 淳、日達 研一、西川 正、寒川 哲臣、後藤 秀樹
(73)【特許権者】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121669
【弁理士】
【氏名又は名称】本山 泰
(72)【発明者】
【氏名】石澤 淳
(72)【発明者】
【氏名】日達 研一
(72)【発明者】
【氏名】西川 正
(72)【発明者】
【氏名】原 一鳳
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-152645(JP,A)
【文献】特開2016-148522(JP,A)
【文献】特開2016-038298(JP,A)
【文献】特開2016-017892(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107045248(CN,A)
【文献】石澤淳,超高繰り返しフェムト秒光周波数コム光源,光学,日本,日本光学会,2016年03月10日,Vol.45 No.3,94 - 101
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 9/00 - G01J 9/04
H01S 3/00
G01B 9/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
種光源から出力された種光源レーザー光を、第1の信号発生器から出力された繰り返し周波数frepを示す基準信号に基づいて位相変調することにより、前記繰り返し周波数frepで光周波数コムを形成する第1の光パルス列を発生する光パルス列発生部と、
前記第1の光パルス列のパルス幅を分散補償手段で圧縮して短パルス化した第3の光パルス列を出力するパルス幅圧縮部と、
前記第3の光パルス列の光スペクトル帯域を非線形光学媒質により拡大することにより、SC光からなる第4の光パルス列を出力する帯域拡大部と、
前記第4の光パルス列を自己参照型干渉計に入射し、得られた干渉信号からキャリアエンベロープのオフセット周波数fceoを検出するオフセット周波数検出部と、
前記第1の信号発生器から出力された前記繰り返し周波数frep、または、前記オフセット周波数fceoに基づいて、前記種光源の光周波数を特定する第1の光周波数特定部と、
被計測レーザー光源から出力された被計測レーザー光の暫定光周波数を計測することにより、前記被計測レーザー光のモード次数を特定するとともに、前記被計測レーザー光と前記第1の光パルス列の分岐光との干渉光に関する干渉光周波数を計測し、前記種光源の光周波数、前記被計測レーザー光のモード次数、および干渉光周波数に基づいて前記被計測レーザー光の光周波数を特定する第2の光周波数特定部とを備える
ことを特徴とする光周波数計測装置。
【請求項2】
種光源から出力された種光源レーザー光を、第1の信号発生器から出力された繰り返し周波数frepを示す基準信号に基づいて位相変調することにより、前記繰り返し周波数frepで光周波数コムを形成する第1の光パルス列を発生する光パルス列発生部と、
前記第1の光パルス列のパルス幅を分散補償手段で圧縮して短パルス化した第3の光パルス列を出力するパルス幅圧縮部と、
前記第3の光パルス列の光スペクトル帯域を非線形光学媒質により拡大することにより、SC光からなる第4の光パルス列を出力する帯域拡大部と、
前記第4の光パルス列を自己参照型干渉計に入射し、得られた干渉信号からキャリアエンベロープのオフセット周波数fceoを検出するオフセット周波数検出部と、
前記第1の信号発生器から出力された前記繰り返し周波数frep、または、前記オフセット周波数fceoに基づいて、前記種光源の光周波数を特定する第1の光周波数特定部と、
被計測レーザー光源から出力された被計測レーザー光の暫定光周波数を計測することにより、前記被計測レーザー光のモード次数を特定するとともに、前記被計測レーザー光と前記第4の光パルス列の分岐光との干渉光に関する干渉光周波数を計測し、前記種光源の光周波数、前記被計測レーザー光のモード次数、および干渉光周波数に基づいて前記被計測レーザー光の光周波数を特定する第2の光周波数特定部とを備える
ことを特徴とする光周波数計測装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光周波数計測装置において、
前記第1の光パルス列のデューティー比を1/D(Dは2以上の整数)に低減することにより、繰り返し周波数frep/Dを有する第2の光パルス列を出力するデューティー比低減部をさらに備え、
前記パルス幅圧縮部は、前記第2の光パルス列のパルス幅を分散補償手段で圧縮して短パルス化した前記第3の光パルス列を出力する
ことを特徴とする光周波数計測装置。
【請求項4】
請求項1又はに記載の光周波数計測装置において、
第2の信号発生器から出力された設定信号と前記オフセット周波数fceoを示すオフセット信号とを位相比較し、得られた比較結果に基づく帰還制御により、前記繰り返し周波数frepの安定化を行うとともに、前記種光源の周波数安定化を行う帰還制御部をさらに備える
ことを特徴とする光周波数計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被計測レーザーの光周波数を計測するための光周波数計測技術に関する。
【背景技術】
【0002】
被計測レーザーの光周波数を精密に計測する方式として、2000年以前まで9GHzの周波数標準から被計測レーザーまで順次周波数を逓倍する周波数チェーンという方式が使われていた(例えば、非特許文献1など参照)。しかしこの方式では、基準となる大型レーザーを複数台使用するため、広い場所を必要とし、簡便に被計測レーザーの周波数を計測できなかった。一方、1999年には光コムが登場し、被計測レーザーをマイクロ波の周波数で計測可能となったが、光コム光源が必要であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】Y. Miki et al., "Frequency Chain to 3.39μm CH4-Stabilized He-Ne Laser Using Josephson Point Contact as Harmonic Mixer", Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 33 pp. 1655-1658, 1994
【文献】H. Inaba et al., "Frequency Measurement Capability of a Fiber-Based Frequency Comb at 633nm", IEEE TRANSACTIONS ON INSTRUMENTATION AND MEASUREMENT, Vol. 58(4) pp.1234-1239, 2009
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、いくつかの光周波数計測装置が市販されており、主な光周波数計測装置として、(1)光波長計や(2)光周波数コムがある。これらの光周波数計測法には何らかの参照光源を用いる必要がある。以下、(1)光波長計および(2)光周波数コムについて説明する。
【0005】
(1)光波長計
光波長計は、光通信用レーザーダイオードの波長調整、分光器や光スペクトル・アナライザの校正用波長標準として使用されている。高精度なものでは、±2MHzの精度が実現されている。基本的な光学構成は、図5に示す通りである。マイケルソン干渉計の光学系に、可動型キューブコーナを配置して構成を有している。この構成により、参照レーザー光路と被計測レーザー光LX路との光路長差変化による干渉縞変化を、基準となる参照レーザー光と被計測レーザー光LXとについて計測し、計測結果に基づいて光波長を求めるものである。
【0006】
(2)光周波数コムを用いる光周波数計測法
1990年代後半、光周波数コムの周波数を安定化する手法が実現した。そのレーザー光源として、光共振器装置を備えた受動モード同期レーザーが用いられている。受動モード同期レーザーはパルスレーザーを発振することができる。レーザーは、通常、光を増幅する利得媒質と、共振器長がLの共振器を有する。この共振器の縦モードの共振周波数はc/2L(cは光速)の整数倍である。そして、レーザーが発振するレーザー光のスペクトルの幅よりも共振器の共振周波数の間隔が狭いと、共振器において複数のモード(周波数)で共振する。このとき、各モードの位相を揃える(モード同期)ことにより、繰り返し周波数frep=c/(2L)でレーザー光が強められる。これにより、繰り返し周波数frepのパルスレーザー光が生成される。
【0007】
このモード同期レーザーにより発振されるパルスレーザー光は、時間軸上に等しい時間間隔Tで並ぶ。一方、周波数軸上では等しい周波数間隔frepで櫛状に並ぶ多数のモードの集合体となる。図6に示すように、このように周波数軸上に櫛状に並ぶレーザー光の集合体は「光周波数コム」と呼ばれる。光周波数コムのあるモードのスペクトル周波数fnはfn=N×frep+fceo(Nは0以上の整数)と表すことができる。ここでfceoはキャリアエンベロープのオフセット周波数と呼ばれている。
【0008】
モード同期レーザー発振器のスペクトルを例えば、フォトニック結晶ファイバーなどで生じる自己位相変調効果を用いて帯域1オクターブ以上の白色光を発生させる。そして、その長波長成分(N×frep+fceo)の第2高調波を発生させると、その周波数は、2×(N×frep+fceo)となる。また、白色光の短波長成分は、2×N×frep+fceoと表せる。これら長波長成分の第2高調波と短波長成分の2つの光を干渉させ、例えばフォトダイオードでそのうなり信号を検出することにより2つの光の周波数差の値を計測することができる。その計測値を外部からのマイクロ波基準周波数と比較し、それからのずれの大きさを元に電子回路で共振器内の非線形分散の大きさにフィードバックを行うことで、キャリアエンベロープのオフセット周波数fceoを安定化することができる。
【0009】
一方、レーザーの繰り返し周波数は、フォトダイオードからの繰り返し周波数信号を元に、レーザーの共振器長にフィードバックすることにより、ある有限の範囲内に固定することが可能である。このようにして、オフセット周波数とモード周波数間隔を一定にした光周波数コム安定化光源が、共振器装置を備えたモード同期レーザーをベースに開発されている。
【0010】
未知の光周波数fxを計測する場合、上記光周波数コムとの干渉信号を計測する。その干渉信号の周波数fbeatはfbeat=fx-(N×frep+fceo)となる。光周波数コムのモード次数Nを求めるには、参照光源を別途用意して算出する。この光周波数コムを用いる光周波数計測の精度は光周波数コムを安定化するために用いる外部基準信号に依存する。例えば、GPS同期の外部基準信号源を用いた場合、精度は12桁程度であるため、光周波数の確度は200Hz程度となり、光波長計の確度±2MHzよりも3桁以上高確度である(例えば、非特許文献2など参照)。
【0011】
しかしながら、このような従来技術によれば、いずれの方式も高精度な参照光源が別途必要となるという問題があった。例えば、(1)波長計の場合には、波長安定化ヘリウムネオンレーザーなどの参照光源が必要なる。また、(2)光周波数コムの場合には、モード同期レーザーなどの参照光源が必要となる。このため、光周波数計測に必要な設備規模が大きくなり、簡便に被計測レーザーの周波数を計測することができない。また、CW半導体レーザーからのレーザー光については、ゆらぎ(周波数変動)が大きいため、モード同期レーザーで発生させた光周波数コムでは、正確に測定できない。
【0012】
本発明はこのような課題を解決するためのものであり、高精度な参照光源を必要とすることなく、被計測レーザーの光周波数を高確度で計測できる光周波数計測技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このような目的を達成するために、本発明にかかる光周波数計測装置は、種光源から出力された種光源レーザー光を、第1の信号発生器から出力された繰り返し周波数frepを示す基準信号に基づいて位相変調することにより、前記繰り返し周波数frepで光周波数コムを形成する第1の光パルス列を発生する光パルス列発生部と、前記第1の光パルス列のパルス幅を分散補償手段で圧縮して短パルス化した第3の光パルス列を出力するパルス幅圧縮部と、前記第3の光パルス列の光スペクトル帯域を非線形光学媒質により拡大することにより、SC光からなる第4の光パルス列を出力する帯域拡大部と、前記第4の光パルス列を自己参照型干渉計に入射し、得られた干渉信号からキャリアエンベロープのオフセット周波数fceoを検出するオフセット周波数検出部と、前記第1の信号発生器から出力された前記繰り返し周波数frep、または、前記オフセット周波数fceoに基づいて、前記種光源の光周波数を特定する第1の光周波数特定部と、被計測レーザー光源から出力された被計測レーザー光の暫定光周波数を計測することにより、前記被計測レーザー光のモード次数を特定するとともに、前記被計測レーザー光と前記第1の光パルス列の分岐光との干渉光に関する干渉光周波数を計測し、前記種光源の光周波数、前記被計測レーザー光のモード次数、および干渉光周波数に基づいて前記被計測レーザー光の光周波数を特定する第2の光周波数特定部とを備える。
【0015】
また、本発明にかかる他の光周波数計測装置は、種光源から出力された種光源レーザー光を、第1の信号発生器から出力された繰り返し周波数frepを示す基準信号に基づいて位相変調することにより、前記繰り返し周波数frepで光周波数コムを形成する第1の光パルス列を発生する光パルス列発生部と、前記第1の光パルス列のパルス幅を分散補償手段で圧縮して短パルス化した第3の光パルス列を出力するパルス幅圧縮部と、前記第3の光パルス列の光スペクトル帯域を非線形光学媒質により拡大することにより、SC光からなる第4の光パルス列を出力する帯域拡大部と、前記第4の光パルス列を自己参照型干渉計に入射し、得られた干渉信号からキャリアエンベロープのオフセット周波数fceoを検出するオフセット周波数検出部と、前記第1の信号発生器から出力された前記繰り返し周波数frep、または、前記オフセット周波数fceoに基づいて、前記種光源の光周波数を特定する第1の光周波数特定部と、被計測レーザー光源から出力された被計測レーザー光の暫定光周波数を計測することにより、前記被計測レーザー光のモード次数を特定するとともに、前記被計測レーザー光と前記第4の光パルス列の分岐光との干渉光に関する干渉光周波数を計測し、前記種光源の光周波数、前記被計測レーザー光のモード次数、および干渉光周波数に基づいて前記被計測レーザー光の光周波数を特定する第2の光周波数特定部とを備える。
【0017】
また、本発明にかかる上記光周波数計測装置の一構成例は、前記第1の光パルス列のデューティー比を1/D(Dは2以上の整数)に低減することにより、繰り返し周波数frep/Dを有する第2の光パルス列を出力するデューティー比低減部をさらに備え、前記パルス幅圧縮部は、前記第2の光パルス列のパルス幅を分散補償手段で圧縮して短パルス化した前記第3の光パルス列を出力するようにしたものである。
【0018】
また、本発明にかかる上記光周波数計測装置の一構成例は、第2の信号発生器から出力された設定信号と前記オフセット周波数fceoを示すオフセット信号とを位相比較し、得られた比較結果に基づく帰還制御により、前記繰り返し周波数frepの安定化を行うとともに、前記種光源の周波数安定化を行う帰還制御部をさらに備えている。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、参照光源を必要とすることなく、被計測レーザーの光周波数を高確度で計測することが可能であるという優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1の実施の形態にかかる光周波数計測装置の構成を示すブロック図である。
図2】第2の実施の形態にかかる光周波数計測装置の構成を示すブロック図である。
図3】第3の実施の形態にかかる光周波数計測装置の構成を示すブロック図である。
図4】第4の実施の形態にかかる光周波数計測装置の構成を示すブロック図である。
図5】一般的な光波長計についての説明図である。
図6】光周波数コムを参照光源として用いた光周波数計測を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の第1の実施の形態にかかる光周波数計測装置1について説明する。図1は、第1の実施の形態にかかる光周波数計測装置の構成を示すブロック図である。
【0022】
この光周波数計測装置1は、高精度な参照光源を必要とすることなく、例えばCWレーザー光源などの任意の被計測レーザー光源Xから出力された被計測レーザー光LXに関する光周波数fxを計測する装置である。
図1に示すように、光周波数計測装置1は、主な構成として、光パルス列発生部10、デューティー比低減部20、パルス幅圧縮部30、帯域拡大部40、オフセット周波数検出部50、帰還制御部60、および光周波数特定部70を備えている。
【0023】
光パルス列発生部10は、被計測レーザー光源XからのLXを、繰り返し周波数frepで位相変調してスペクトル帯域を拡張した後、波長分散を付与することにより、繰り返し周波数frepで光周波数コムを形成する光パルス列(第1の光パルス列)PXを発生する機能を有している。光パルス列発生部10は、主な構成として、信号発生器11(第1の信号発生器)、位相変調器12、位相シフタ13、強度変調器14、および波長分散付与手段15を備えている。
【0024】
デューティー比低減部20は、分周数D(Dは2以上の整数)に基づいて、光パルス列発生部10から出力された光パルス列PXのデューティー比を1/Dに低減することにより、繰り返し周波数frepをfrep/Dまで低減した光パルス列PN(第2の光パルス列)を出力する機能を有している。N(Nは0以上の整数)は光周波数コムモードの次数に相当し、0以上の整数をとる。デューティー比低減部20は、主な構成として、分周器21および光ゲート22を備えている。なお、このデューティー比の低減を行わないでも、以下でオフセット周波数の検出が可能である場合は、デューティー比低減部20は不要となり、以下のDの値は1となる。
【0025】
パルス幅圧縮部30は、デューティー比低減部20から出力された、繰り返し周波数frep/Dを有する光パルス列PNを増幅した後、スペクトル帯域幅を拡大することにより、PNのパルス幅を圧縮して短パルス化した、繰り返し周波数frep/Dを有する光パルス列PS(第3の光パルス列)を出力する機能を有している。パルス幅圧縮部30は、主な構成として、光増幅器31および分散補償手段32を備えている。
【0026】
帯域拡大部40は、パルス幅圧縮部30から出力された光パルス列PSを高非線形媒質へ入力することにより、光スペクトル帯域が拡大されたSC光からなる、繰り返し周波数frep/Dを有する光パルス列PSC(第4の光パルス列)を発生する機能を有している。帯域拡大部40は、主な構成として、高非線形媒質41を備えている。
【0027】
オフセット周波数検出部50は、帯域拡大部40から出力された光パルス列PSCを、自己参照干渉法により干渉させ、得られた干渉信号からキャリアエンベロープのオフセット周波数fceoを示す電気信号であるオフセット信号Sceoを検出する機能を有している。オフセット周波数検出部50は、主な構成として、自己参照型干渉計51および光検出器52を備えている。
【0028】
帰還制御部60は、オフセット周波数検出部50で検出された、オフセット周波数fceoを示すオフセット信号Sceoを、基準となる設定周波数f0を有する設定信号SSと位相比較し、得られた比較結果により変化する電圧制御信号SVに基づいて光パルス列発生部10を帰還制御することにより、光パルス列発生部10の位相雑音を抑圧して、繰り返し周波数frepの高確度安定化するとともに、位相雑音を極めて小さく低減する機能を有している。帰還制御部60は、主な構成として、フィルタ61、信号発生器(第2の信号発生器)62、および帰還回路63を備えている。
【0029】
光周波数特定部70は、光パルス列発生部10から出力された繰り返し周波数frepをダウンコンバートした後、その周波数を計測することにより光周波数コムのモード次数Nを特定し、得られたNに基づいて被計測レーザー光LXの光周波数fxを算出する機能を有している。光周波数特定部70は、主な構成として、外部基準信号発生器71、周波数混合器72、周波数カウンタ73、および計算部74を備えている。
【0030】
[第1の実施の形態にかかる動作]
次に、図1を参照して、本実施の形態にかかる光周波数計測装置1の動作について説明する。
【0031】
[光パルス列発生部]
光周波数計測装置1で計測する被計測レーザー光LXはCWレーザー光であるものとする。光パルス列発生部10では、この被計測レーザー光LXを位相変調器12において、光変調器駆動用の信号発生器11から出力される基準信号SRの繰り返し周波数frepで位相変調してスペクトル帯域を拡張し、位相変調器12の後段(もしくは前段)に強度変調器14を縦列配置し、位相変調器12によってダウンチャーピングもしくはアップチャーピングした片方を選択して光透過させる。これにより、時間領域で残留するDCフロア成分が除去される。
【0032】
位相変調器12と強度変調器14で変調する時間調整のため、繰り返し周波数frepを位相シフトさせて強度変調器14へ出力する位相シフタ13を用いる。
この後、波長分散付与手段15により、強度変調器14からの出力光に適切な分散を与えることで、繰り返し周波数frepを有する光パルス列PXを発生させる。このとき、波長フィルタを使用すれば、光パルス列PXに残留するウィング成分を抑圧でき、クリーンパルス発生を可能にする。
【0033】
なお、光パルス列発生部10は、ファブリペロー共振器内に電気光学変調器を設置することで深い周波数変調をCW光にかけ、FM側帯波を発生させる方法であってもよい。これらの位相変調器を用いてパルス列を発生させる手法では、共振器長の制約を受けないために、数十GHzの繰り返し周波数を有する光パルス列を発生させることが可能となる。
【0034】
[デューティー比低減部]
光パルス列PXの繰り返し周波数frepが高いため、光増幅後における広スペクトル帯域光からなる光パルス列PSCの発生に、十分なパルスエネルギーを得られない場合、光パルス列発生部10の波長分散付与手段15と、パルス幅圧縮部30の光増幅器31との間に、デューティー比低減部20を設ける。
【0035】
デューティー比低減部20では、光パルス列発生部10の波長分散付与手段15とパルス幅圧縮部30の光増幅器31との間に光ゲート22を設けて、光パルス列発生部10から出力された光パルス列PXの繰り返し周波数frep(デュ-ティー比)をfrep/Dまで低減した光パルス列PNを出力する。これにより、光増幅後におけるピークパワーの増大が可能となり、オフセット周波数検出部50の自己参照型干渉計51に必要な広スペクトル帯域の光パルス列PSCを発生させることが可能となる。
【0036】
この場合、デューティー比低減部20では、信号発生器11から出力される基準信号SRの繰り返し周波数frepを分周器21によって1/Dに分周し、得られた周波数frep/Dの電気信号と同期させて光ゲート22を駆動することにより、光パルス列PXのデューティー比を低減し、繰り返し周波数frep/Dを有する光パルス列PNを出力する。
【0037】
このようにして、光ゲート22を用いた光周波数コム安定化光源を用いることにより、光ゲート22前において繰り返し周波数frep(例えば、数GHz~数10GHz)でデューティー比がパルス幅×frepであったの光波形(光パルス列PX)が、光ゲート22後において繰り返し周波数frep/D(例えば、数MHz~数100MHz)でデューティー比がパルス幅×frep/Dの光波形(光パルス列PN)となる。
【0038】
光パルス列PXのピークパワーが後段の広スペクトル帯域光発生に不十分な場合は、光パルス列発生部10の波長分散付与手段15と光ゲート22の間に、光パルス列PXのピークパワー増大のために、もう一段、光増幅器および光バンドバスフィルタを追加してもよい。また、広スペクトル帯域光は、入射する光パルス幅が狭いほど発生しやすいため、波長分散付与手段15と光ゲート22との間に、光パルス幅を低減するための非線形媒質を追加してもよい。
【0039】
[パルス幅圧縮部]
パルス幅圧縮部30では、デューティー比低減部20の光ゲート22から出力された、繰り返し周波数frep/Dの光パルス列PNを、光増幅器31によって光増幅する。このとき、光増幅器31内の進行型自己位相変調効果等の非線形効果を用いて段階的に光増幅する手法により、光分裂を起こさないでスペクトル帯域幅を拡大する方法を用いてもよい。分散補償手段32でパルス幅を圧縮して短パルス化し、繰り返し周波数frep/Dを有する光パルス列PSを出力する。
【0040】
[帯域拡大部]
帯域拡大部40では、パルス幅圧縮部30で発生させた光パルス列PSを高非線形媒質(非線形光学媒質)41へ入力し、広スペクトル帯域光(SC光)からなる繰り返し周波数frep/Dの光パルス列PSCを発生させる。この高非線形媒質41において、非線形感受率の大きい材料を使用すれば、高効率に所望の広スペクトル帯域光を発生でき、被計測レーザー光LXからの供給エネルギーの最低閾値を低く抑制することが可能である。
【0041】
広スペクトル帯域光のモード次数k(k=0,±1,±2,±3,…)の光周波数コムは、次の式(1)で表せる。式(1)において、Eoは光電場振幅を示し、ψ0(t)、ψ1(t)はそれぞれ被計測レーザー光LXと位相変調器駆動用の信号発生器11とが持つ位相雑音を示している。
【数1】
【0042】
[オフセット周波数検出部]
オフセット周波数検出部50では、帯域拡大部40で得られた光パルス列PSCを自己参照型干渉計51に入射し、光検出器52を用いてキャリアエンベロープを検出し、オフセット周波数fceoを示す電気信号であるオフセット信号Sceoを出力する。自己参照型干渉計51は、光パルス列PSCの帯域幅により、その種類を選択できる。
【0043】
例えば、SC光帯域幅が1オクターブ以上あれば、基本波の高周波成分と基本波の低周波成分の第2高調波の干渉信号からオフセット周波数を検出する、f-2f自己参照型干渉計を用いればよい。また、SC光の帯域幅が2/3オクターブ帯域であれば、基本波の高周波成分の第2高調波と基本波の低周波成分の第3高調波の干渉信号からオフセット周波数fceoを検出する、2f-3f自己参照型干渉計を用いればよい。
【0044】
[帰還制御部]
帰還制御部60では、オフセット周波数検出部50で検出された、オフセット周波数fceoを示すオフセット信号Sceoを、基準となる設定周波数f0を有する設定信号SSと位相比較し、得られた比較結果により変化する電圧制御信号SVに基づいて光パルス列発生部10を帰還制御することにより、光パルス列発生部10の位相雑音を抑圧して、繰り返し周波数frepの高確度安定化する。
【0045】
本実施の形態は、後述するように、帰還制御部60で、この設定周波数f0を、2つの異なるシフト周波数f0a,f0bに変更し、これに応じた繰り返し周波数frepの変動に伴う、繰り返し周波数frepの変動量を計測することにより、光周波数コムモードの次数Nを特定し、得られたNから被計測レーザー光LXの光周波数fxを計算している。
【0046】
[光周波数特定部]
被計測レーザー光LXの光周波数fxは、fx=N×frep/D+f0と表すことができる。f0は、帰還制御部60の信号発生器62から出力される設定信号SSの設定周波数である。繰り返し周波数frepは、帰還制御部60によって安定化したときの信号発生器11の周波数である。信号発生器62の設定周波数f0を異なる2つのシフト周波数f0a,f0bに変更し、これにより変動する繰り返し周波数frepの変動量を計測し、得られた計測結果に基づいて光周波数コムモードの次数Nを特定できる。
【0047】
Nの桁数は、光パルス列PNの繰り返し周波数frep/Dの値により変わる。したがって、Nの桁数によって、光周波数特定部70における外部基準信号発生器71の外部基準周波数fexや周波数カウンタ73に要求される計測精度が変わる。100KHz以上の大きい周波数差を観測する実験系では、以下の手法を用いずに繰り返し周波数frepを、外部基準信号発生器71と周波数混合器72を省いた構成で、そのまま計測できる。
一方、周波数差が小さい場合、外部基準信号発生器71と周波数混合器72を用いて、周波数ダウンコンバートする。これにより、繰り返し周波数frepと外部基準周波数fexとの差分、すなわち差分周波数Δf=frep-fexだけを周波数カウンタ73で計測することになるため、計測精度を最大限に活用できる。
【0048】
さらに、精度を向上するために、信号発生器62のシフト周波数f0a,f0bの周波数の差を大きくする。実証実験では、f0aを+130MHzに設定するとともにf0bを-120MHzに設定し、電圧制御信号SVにより、信号発生器11の繰り返し周波数frepを安定化制御した。また、光ゲート22後の繰り返し周波数frepが25GHz近傍であるので、外部基準周波数fexを24.99998GHzに設定した。周波数カウンタ73はfrepとfexとの差分周波数Δfを計測する。
【0049】
ここで、設定周波数f0をf0aからf0bに変更すると、信号発生器11の繰り返し周波数frepが変動して、繰り返し周波数frepは、frepa=fex+Δfaからfrepb=fex+Δfbに変化する。したがって、これらf0a,f0bを用いた場合における被計測レーザー光LXの光周波数fxは、次の式(2)で表されるため、frepa,frepb、あるいは、Δfa,Δfbを周波数カウンタ73で計測すれば、CPUやPCなどからなる計算部74により、モード次数Nさらにはfxを特定できる。
【数2】
【0050】
実証実験では、例えばD=20の場合、f0aを+130MHzに設定したとき、差分周波数Δfaは19.40059938236kHzとなり、f0bを-120MHzに設定したとき、差分周波数Δfbは51.5596872566kHzとなった。したがって、モード次数Nは式(2)の3行目の式から、N=155477と求められ、被計測レーザー光LXの光周波数fxは、式(2)の1行目の式から先に求めたNの値を用いて、fx=194.346375340(1)THzと同定できた。なお、繰り返し周波数frepの測定は、分周器21後の分周信号を用いて行ってもよい。
【0051】
今回の外部基準信号の精度は12桁であるため、光周波数は1kHzまで正確に求められていることになる。光周波数計測の精度はオフセット周波数fceoを安定化するために用いる外部基準信号に依存する。例えば、GPS同期の外部基準信号源を用いた場合、精度は12桁程度であるため、光周波数の確度は200Hz程度となる。(1)光波長計の確度±2MHzよりも3桁以上高確度である。(2)モード同期レーザーを用いる光周波数コムの光周波数計測精度と同程度である。
【0052】
[第2の実施の形態]
次に、図2を参照して、本発明の第2の実施の形態にかかる光周波数計測装置1について説明する。図2は、第2の実施の形態にかかる光周波数計測装置の構成を示すブロック図である。
第1の実施の形態では、信号発生器11の繰り返し周波数frepに基づき光周波コムのモード次数Nを特定する場合を例として説明した。本実施の形態の特徴は、帰還制御部60から出力されたオフセット信号Sceoのオフセット周波数fceoに基づきモード次数Nを特定する点にある。本実施の形態において、帰還制御部60からは電圧制御信号SVに代えて、オフセット周波数検出部50で検出されたオフセット周波数fceoを示すオフセット信号Sceoが光周波数特定部70に出力されている。本実施の形態にかかるその他の構成について第1の実施の形態と同様である。
【0053】
[光周波数特定部]
本実施の形態では、信号発生器11の繰り返し周波数frepを異なる2周波数frepa,frepbに変更し、その時得られるオフセット周波数fceoa,fceob、あるいは、これらに加えて外部基準信号発生器71の外部基準周波数fexとの差分周波数Δfceoa(=fceoa-fex),Δfceob(=fceob-fex)を計測することによりモード次数Nを算出する。
【0054】
この際、これらfrepa,frepbを用いた場合における被計測レーザー光LXの光周波数fxは、次の式(3)で表されるため、fceoa,fceob、あるいは、Δfceoa,Δfceobを周波数カウンタ73で計測すれば、CPUやPCなどからなる計算部74により、次の式(3)に基づいてモード次数Nさらにはfxを特定できる。
【数3】
【0055】
この場合も第1の実施の形態と同様に、光周波数特定部70の外部基準信号発生器71と周波数混合器72を用いて、オフセット周波数fceoa,fceobを周波数ダウンコンバートすることで、周波数カウンタ73の精度を最大限に活用できる。さらに、2周波数frepa,frepbの差を大きくすることで、計測精度を向上できる。
【0056】
[第3の実施の形態]
次に、図3を参照して、本発明の第3の実施の形態にかかる光周波数計測装置1について説明する。図3は、第3の実施の形態にかかる光周波数計測装置の構成を示すブロック図である。
本実施の形態では、広いモード間隔を持つ光周波数コムを参照光源として、被計測レーザー光LXの周波数を計測する場合について説明する。本実施の形態の特徴は、被計測レーザー光源Xに代えて半導体レーザーなどの、波長が高安定な種光源Yを用い、種光源Yからの種光源レーザー光LYにより発生させた光パルス列発生部10からの光パルス列PXの分岐光に基づいて、被計測レーザー光源Xからの被計測レーザー光LXの光周波数fxを光周波数特定部80で計測する点にある。
【0057】
また、本実施の形態では、光周波数特定部(第1の光周波数特定部)70により、光周波数コム、すなわち種光源レーザー光LYのモード次数Nさらには種光源光周波数fyを特定する。本実施の形態では、第1の実施の形態で説明した構成に基づいてfyを特定する場合を例として説明するが、これに限定されるものではなく、第2の実施の形態で説明した構成に基づいてfyを特定してもよい。本実施の形態にかかるその他の構成について第1乃至第2の実施の形態と同様である。
【0058】
図3に示すように、本実施の形態では、光パルス列発生部10において、信号発生器11の設定周波数を用いてモード間隔光コム発生させる。この際、種光源レーザー光LYのモード次数Nを特定した後、帰還制御部60において、フィルタ61でオフセット周波数fceoだけを抽出し、信号発生器62の設定周波数f0との位相比較の結果から得られた電圧制御信号SYを用いて、種光源Y内の電流値や温度等を制御することにより、種光源レーザー光LYを周波数安定化してもよい。
これにより、一般的なモード同期レーザーのモード間隔(100MHz)では実現できないような広いモード間隔(10GHz以上)の周波数安定化光コムを実現できる。
【0059】
25GHzモード間隔光コムの場合を考える。光スペクトラムアナライザを用いて、被計測レーザー光LXの暫定光周波数fxを25GHz精度でおおよそに計測する。モード間隔が広いほどfxの計測精度は低くても良い。fx/(25GHz)を計算することにより、fxのモード次数M(Mは整数)を特定できる。また、fxがfrep以上に大きく変動する場合には、光スペクトラムアナライザより測定精度の高い波長計などによりfxを計測すれば、精度よくモード次数Mを特定できる。
【0060】
次に、光パルス列発生部10の波長分散付与手段15とデューティー比低減部20の光ゲート22との間に光分波器SPを挿入する。光周波数特定部(第2の光周波数特定部)80では、光分波器SPの一分岐である光パルス列PXと被計測レーザー光源Xからの被計測レーザー光LXとを光合波器81で合波し、得られた干渉光の干渉光周波数feを光検出器82と周波数カウンタ83で計測する。
【0061】
ここで、fxのモード次数をMとし、LXとLYとの干渉信号の干渉光周波数をfeとし、fxは次の式(4)で表せる。これにより、計算部84でfxを高精度に特定できる。この際、feの極性は、frepまたはfceoを周波数可変した際における、feの増減に基づいて特定できる。
【数4】
【0062】
以上から、被計測レーザー光LXの光周波数を高精度に計測できる。第3の実施の形態は光周波数fxを計測精度が低い計測器で暫定的に計ってモード次数Mを特定しさえすれば、簡便に周波数を観測できる利点がある。
【0063】
[第4の実施の形態]
次に、図4を参照して、本発明の第4の実施の形態にかかる光周波数計測装置1について説明する。図4は、第4の実施の形態にかかる光周波数計測装置の構成を示すブロック図である。
本実施の形態では、広帯域な光周波数コムを参照光源として光周波数計測する場合について説明する。本実施の形態の特徴は、光パルス列発生部10に接続されていた種光源として、被計測レーザー光源Xに代えて半導体レーザーなどの、波長が高安定な種光源Yを用い、帯域拡大部40の分岐光に基づいて、被計測レーザー光源Xからの被計測レーザー光LXの光周波数fxを光周波数特定部80で計測する点にある。
【0064】
また、本実施の形態では、光周波数特定部(第1の光周波数特定部)70により、光周波数コム、すなわち種光源レーザー光LYのモード次数Nさらには種光源光周波数fyを特定する。本実施の形態では、第1の実施の形態で説明した構成に基づいてfyを特定する場合を例として説明するが、これに限定されるものではなく、第2の実施の形態で説明した構成に基づいてfyを特定してもよい。本実施の形態にかかるその他の構成について第1乃至第2の実施の形態と同様である。
【0065】
前述した第3の実施の形態は、位相変調器12、強度変調器14、および光増幅器31が動作する周波数帯に被計測レーザー光LXの周波数がある場合に使用できる。そのデバイス動作周波数帯域外に被計測レーザー光LXがある場合、本実施の形態を用いる。
【0066】
図4に示すように、本実施の形態において、帯域拡大部40の高非線形媒質41とオフセット周波数検出部50の自己参照型干渉計51との間に光分波器SPを挿入する。光周波数特定部(第2の光周波数特定部)80では、光分波器SPの一分岐である光パルス列PSCと被計測レーザー光源Xからの被計測レーザー光LXを光合波器81で合波し、得られた干渉光の干渉光周波数feを光検出器82と周波数カウンタ83で計測する。本実施の形態にかかる光周波数算出方法は第3の実施の形態と同様である。
【0067】
被計測レーザー光源Xからの被計測レーザー光LXと干渉している広帯域なfrep/Dモード間隔光コムのモード次数Mと被計測レーザー光源Xの光周波数fxを特定する。この際、第3の実施の形態と同様に、モード次数Mは、frep/Dの計測精度を持つ波長計で特定できる。また、干渉光周波数feは、光パルス列PSCと被計測レーザー光源Xからの被計測レーザー光LXとを光合波器81で合波し、得られた干渉信号の光周波数を光検出器82と周波数カウンタ83で計測すればよい。したがって、次の式(5)に基づき第3の実施の形態と同様にしてfxを特定できる。
【数5】
【0068】
以上、第1および第2の実施の形態で説明した本発明の光周波数計測装置によれば、従来法のような高精度な参照光源が不要であり、かつ、従来の光波長計を用いた場合よりも3桁以上も高確度に光周波数計測できることから、従来以上に光周波数計量の分野の発展に寄与するものであり、本発明が従来技術よりも優れていることが分かる。
【0069】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0070】
1…光周波数計測装置、10…光パルス列発生部、11…信号発生器、12…位相変調器、13…位相シフタ、14…強度変調器、15…波長分散付与手段、20…デューティー比低減部、21…分周器、22…光ゲート、30…パルス幅圧縮部、31…光増幅器、32…分散補償手段、40…帯域拡大部、41…高非線形媒質、50…オフセット周波数検出部、51…自己参照型干渉計、52…光検出器、60…帰還制御部、61…フィルタ、62…信号発生器、63…帰還回路、70…光周波数特定部、71…外部基準信号発生器、72…周波数混合器、73…周波数カウンタ、74…計算部、80…光周波数特定部、81…光合波器、82…光検出器、83…周波数カウンタ、84…計算部、X…被計測レーザー光源、Y…種光源、SP…光分波器、LX…被計測レーザー光、LY…種光源レーザー光、SR…基準信号、PX,PN,PS,PSC…光パルス列、Sceo…オフセット信号、SS…設定信号、SV,SY…電圧制御信号、frep,frepa,frepb…繰り返し周波数、fceo,fceoa,fceob…オフセット周波数、f0…設定周波数、f0a,f0b…シフト周波数、fex…外部基準周波数、Δf,Δfa,Δfb,Δfceoa,Δfceob…差分周波数、N,M…モード次数、D…分周数、fx…光周波数、fy…種光源光周波数、fe…干渉光周波数。
図1
図2
図3
図4
図5
図6