(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】被加工物の加工方法
(51)【国際特許分類】
B24D 3/14 20060101AFI20231023BHJP
B24D 3/00 20060101ALI20231023BHJP
B24B 7/04 20060101ALI20231023BHJP
B24D 5/06 20060101ALI20231023BHJP
B24D 5/00 20060101ALI20231023BHJP
B24D 7/06 20060101ALI20231023BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
B24D3/14
B24D3/00 340
B24D3/00 330Z
B24B7/04 B
B24D5/06
B24D5/00 P
B24D7/06
H01L21/304 631
(21)【出願番号】P 2019205567
(22)【出願日】2019-11-13
【審査請求日】2022-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【氏名又は名称】岡本 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100206553
【氏名又は名称】笠原 崇廣
(74)【代理人】
【識別番号】100189773
【氏名又は名称】岡本 英哲
(74)【代理人】
【識別番号】100184055
【氏名又は名称】岡野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】馬路 良吾
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】特公平07-016881(JP,B2)
【文献】特開2007-136559(JP,A)
【文献】特開昭48-021884(JP,A)
【文献】特開2017-112226(JP,A)
【文献】特開2007-030110(JP,A)
【文献】特開2016-196050(JP,A)
【文献】特開2018-062052(JP,A)
【文献】特開2015-013321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24D 3/14
B24D 3/00
B24B 7/04
B24D 5/06
B24D 5/00
B24D 7/06
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の基台の外周縁に配置された研削砥石で被加工物を加工する被加工物の加工方法であって、
該研削砥石は、砥粒と、低温焼成セラミックスでなり該砥粒を固定するボンドと、を含み、
チャックテーブルの保持面で該被加工物を保持する保持ステップと、
該保持面と平行な方向に沿って配置され該基台が装着されたスピンドルを回転させつつ、該スピンドルと該チャックテーブルとを該保持面と平行な方向に沿って相対的に移動させ、該研削砥石で該被加工物を研削する研削ステップと、を含むことを特徴とする被加工物の加工方法。
【請求項2】
環状の基台の下面側に、該基台の周方向に沿って配置された研削砥石で被加工物を加工する被加工物の加工方法であって、
該研削砥石は、砥粒と、低温焼成セラミックスでなり該砥粒を固定するボンドと、を含み、
チャックテーブルの保持面で該被加工物を保持する保持ステップと、
該保持面と垂直な方向に沿って配置され該基台が装着されたスピンドルを回転させつつ、該スピンドルと該チャックテーブルとを該保持面と平行な方向に沿って相対的に移動させ、該研削砥石で該被加工物を研削する研削ステップと、を含むことを特徴とする被加工物の加工方法。
【請求項3】
該被加工物は、延性材料でなることを特徴とする請求項1又は2に記載の被加工物の加工方法。
【請求項4】
該砥粒の平均粒径は、JIS R 6001-2に準拠する粒度がF400である微粉の平均粒径以上であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の被加工物の加工方法。
【請求項5】
該研削砥石は、多孔質の研削砥石であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の被加工物の加工方法。
【請求項6】
該研削砥石には、凹部が形成されていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の被加工物の加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物を研削するための研削砥石、該研削砥石の製造方法、及び該研削砥石を用いた被加工物の加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機械部品や電子部品の製造工程では、ガラス、セラミックス、樹脂、シリコン等の様々な材質でなる各種の被加工物が加工される。被加工物を所望の形状に加工する手法の一つとして、ダイヤモンド等の砥粒をボンド(結合材)で固定することによって形成された研削砥石で被加工物を研削する、研削加工が広く利用されている(例えば、特許文献1、2参照)。研削砥石が被加工物に接触すると、研削砥石のボンドから露出した砥粒によって被加工物が削り取られ、被加工物が加工される。
【0003】
研削砥石による被加工物の研削を継続すると、研削砥石のボンドが摩耗し、ボンドから突出した砥粒が脱落するとともに、新たな砥粒がボンドから露出する。この作用は自生発刃と呼ばれており、自生発刃によって研削砥石の研削能力が維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-192460号公報
【文献】特開2017-112226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
研削砥石のボンドには、加工の目的、被加工物の材質等に応じて様々な材料が用いられる。例えばビトリファイドボンドは、硬度が高く自生発刃が生じやすいという特性を有しており、硬い材質でなる被加工物や難削材の加工等に適している。
【0006】
しかしながら、従来のビトリファイドボンドで砥粒を固定した研削砥石で被加工物を研削すると、研削砥石と被加工物との摩擦によって高熱が発生した際に、ボンドが容易に摩耗するという問題がある。ボンドの摩耗量が大きいと、研削砥石の被加工物と接触する面(研削面)の位置が被加工物の研削中に変動しやすくなり、加工後の被加工物に厚さのばらつきが生じやすい。
【0007】
本発明はかかる問題に鑑みてなされたものであり、摩耗が生じにくい研削砥石、該研削砥石の製造方法、及び、該研削砥石を用いた被加工物の加工方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、環状の基台の外周縁に配置された研削砥石で被加工物を加工する被加工物の加工方法であって、該研削砥石は、砥粒と、低温焼成セラミックスでなり該砥粒を固定するボンドと、を含み、チャックテーブルの保持面で該被加工物を保持する保持ステップと、該保持面と平行な方向に沿って配置され該基台が装着されたスピンドルを回転させつつ、該スピンドルと該チャックテーブルとを該保持面と平行な方向に沿って相対的に移動させ、該研削砥石で該被加工物を研削する研削ステップと、を含む被加工物の加工方法が提供される。
【0009】
また、本発明の他の一態様によれば、環状の基台の下面側に、該基台の周方向に沿って配置された研削砥石で被加工物を加工する被加工物の加工方法であって、該研削砥石は、砥粒と、低温焼成セラミックスでなり該砥粒を固定するボンドと、を含み、チャックテーブルの保持面で該被加工物を保持する保持ステップと、該保持面と垂直な方向に沿って配置され該基台が装着されたスピンドルを回転させつつ、該スピンドルと該チャックテーブルとを該保持面と平行な方向に沿って相対的に移動させ、該研削砥石で該被加工物を研削する研削ステップと、を含む被加工物の加工方法が提供される。
【0010】
なお、好ましくは、該被加工物は、延性材料でなる。また、好ましくは、該砥粒の平均粒径は、JIS R 6001-2に準拠する粒度がF400である微粉の平均粒径以上である。
【0011】
また、好ましくは、該研削砥石は、多孔質の研削砥石である。また、好ましくは、該研削砥石には、凹部が形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様に係る研削砥石は、低温焼成セラミックスでなるボンドで砥粒を固定することによって形成される。低温焼成セラミックスでなるボンドは高い耐熱性を有するため、研削加工時に研削砥石と被加工物との摩擦によって熱が発生しても、ボンドの強度が維持される。これにより、研削砥石の摩耗が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】研削砥石を備える加工工具(ブレード)を示す正面図である。
【
図2】
図2(A)は成形ステップの様子を示す断面図であり、
図2(B)は焼成ステップの様子を示す断面図である。
【
図3】
図3(A)は直方体状の研削砥石を示す平面図であり、
図3(B)は直方体状の研削砥石を示す断面図であり、
図3(C)は円柱状の研削砥石を示す平面図であり、
図3(D)は円柱状の研削砥石を示す断面図である。
【
図4】
図4(A)は凹部が形成された研削砥石を示す平面図であり、
図4(B)は凹部が形成された研削砥石を示す断面図であり、
図4(C)は貫通孔が形成された研削砥石を示す平面図であり、
図4(D)は貫通孔が形成された研削砥石を示す断面図である。
【
図5】流路を有する基台に貫通孔を有する研削砥石が固定された加工工具(ブレード)を示す正面図である。
【
図6】
図6(A)は環状の研削砥石を備える加工工具(ブレード)を示す正面図であり、
図6(B)は溝が形成された環状の研削砥石を備える加工工具(ブレード)を示す正面図である。
【
図8】
図8(A)は被加工物を加工する加工装置を示す一部断面正面図であり、
図8(B)は被加工物の表面側が加工される様子を示す平面図である。
【
図9】
図9(A)は研削砥石を備える加工工具(研削ホイール)を示す正面図であり、
図9(B)は研削砥石を備える加工工具(研削ホイール)を示す底面図である。
【
図10】
図10(A)は直方体状の研削砥石を示す斜視図であり、
図10(B)は円柱状の研削砥石を示す斜視図であり、
図10(C)は開口を有する研削砥石を示す斜視図である。
【
図11】
図11(A)は被加工物にインフィード研削を施す加工装置を示す一部断面正面図であり、
図11(B)は被加工物にクリープフィード研削を施す加工装置を示す一部断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。本実施形態に係る研削砥石は、砥粒と、砥粒を固定するボンド(結合材)とを含んで構成され、被加工物の研削に用いられる。まず、本実施形態に係る研削砥石を備える加工工具の構成例について説明する。
【0015】
図1は、研削砥石14を備える加工工具(ブレード)10を示す正面図である。加工工具10は、アルミニウム合金等の金属でなる環状の基台12を備える。例えば基台12は、所定の幅の外周縁(外周面、側面)12aを備える円盤状に形成され、基台12の中央部には基台12を厚さ方向に貫通する円形の開口12bが形成されている。
【0016】
基台12の外周縁12aには、複数の研削砥石14が配置されている。複数の研削砥石14は、基台12の周方向に沿って概ね等間隔に配列されている。研削砥石14は、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素(cBN:cubic Boron Nitride)等でなる砥粒と、砥粒を固定するボンドとを含んでおり、例えば接着剤を介して基台12の外周縁12aに固定されている。
【0017】
研削砥石14のボンドは、1000℃以下の低温で焼結可能なセラミックス(低温焼成セラミックス)によって形成されている。具体的には、研削砥石14は、砥粒と、ボンドの主成分となるセラミックス原料と、焼結を促進させる焼結助剤とが混合された混合物を、1000℃以下の温度で焼成することによって形成される。以下では一例として、砥粒としてダイヤモンド砥粒、セラミックス原料として粉状の酸化アルミニウム(アルミナ)、焼結助剤として粉状のガラス(SiO2等)を用いる場合について説明する。ただし、砥粒、セラミックス原料及び焼結助剤の材料は適宜変更できる。
【0018】
研削砥石14は、上記の混合物を所定の形状に形成する成形ステップと、成形された混合物を1000℃以下の温度で焼成する焼成ステップとを経て形成される。
図2(A)は、成形ステップの様子を示す断面図である。例えば成形ステップは、加圧成形装置20を用いて実施される。
【0019】
加圧成形装置20は、混合物16を収容する金型22と、金型22に収容された混合物16を押圧する押圧具(押圧部材)24とを備える。金型22は、例えば直方体状に形成され、金型22の上面側には研削砥石14の形状に対応する凹部22aが設けられている。例えば、直方体状の研削砥石14を形成する場合には、その研削砥石14の寸法に合わせて直方体状に形成された凹部22aを備える金型22が用いられる。
【0020】
押圧具24は、金型22の凹部22aに挿入される板状の押圧部24aと、押圧部24aの上面側に接続された柱状の軸部24bとを備える。軸部24bを下降させると、押圧部24aが金型22の凹部22aの底に向かって押し込まれる。
【0021】
成形ステップでは、まず、金型22の凹部22aに混合物16を投入する。混合物16は前述の通り、砥粒、セラミックス原料、焼結助剤を混合することによって作成される。また、金型22の凹部22aに投入される混合物16の量は、凹部22aの寸法(深さ)に応じて調整される。そして、凹部22aに収容された混合物16を加熱するとともに、押圧具24を下降させて押圧部24aの下面で混合物16を凹部22aの底に押し付ける。これにより、混合物16が圧縮成形される。
【0022】
なお、混合物16には、さらに気孔形成材を混合してもよい。気孔形成材は、研削砥石14の内部に気孔を形成するために添加される材料であり、後の焼成ステップにおいて燃焼して消失する物質でなる。例えば気孔形成材として、有機物でなる微細な粒子を用いることができる。気孔形成材の材料の具体例としては、スチロール樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0023】
次に、成形された混合物16を焼成する焼成ステップが実施される。
図2(B)は、焼成ステップの様子を示す断面図である。例えば焼成ステップは、焼成炉30を用いて実施される。
【0024】
焼成ステップでは、まず、成形された混合物16を容器32に収容する。容器32は、耐熱性を有する金属又はセラミックスでなり、本体部34及び蓋部36を有する。本体部34は、例えば直方体状に形成され、本体部34の上面側には成形された混合物16を収容可能な凹部34aが設けられている。本体部34の凹部34aに混合物16を投入し、凹部34aの上部を蓋部36で塞ぐと、凹部34aが混合物16を収容した状態で密閉される。
【0025】
その後、混合物16を収容した容器32を焼成炉30に封入して加熱し、混合物16を1000℃以下の低温で焼成する。この焼成によって混合物16が焼結され、低温焼成セラミックスでなるボンドによって砥粒が固定された研削砥石14が形成される。なお、混合物16の焼成は、混合物16の成形後に、金型22及び押圧具24の押圧部24a(
図2(A)参照)を焼成炉30に投入して加熱することによって実施してもよい。
【0026】
低温焼成セラミックスによって構成されるボンドは、ビトリファイドボンドと比較して耐熱性が高い。そのため、被加工物の加工に低温焼成セラミックスでなるボンドを含む研削砥石14を用いると、研削砥石14と被加工物との摩擦によって高熱が発生しても、ボンドの強度が維持される。これにより、被加工物の加工中における研削砥石14の摩耗が抑制される。
【0027】
なお、ボンドに気孔が適度に含まれていると、該気孔は後述の通り、研削砥石14で被加工物を研削した際に生じる屑(研削屑)を収容する空間(チップポケット)として機能する。そして、ボンドにチップポケットが形成されていると、ボンドから露出した砥粒間に研削屑が付着する現象(目詰まり)が生じにくくなり、研削砥石14の研削能力が維持される。そのため、低温焼成セラミックスでなるボンドには、適度な気孔が意図的に形成されてもよい。
【0028】
ボンドの気孔は、混合物16に前述の気孔形成材を混合することによって形成できる。混合物16に気孔形成材が混合されていると、焼成ステップにおいて気孔形成材が燃焼して気化し、混合物16の外部に放出される。その結果、ボンドの内部に所定の大きさの気孔が形成され、多孔質の研削砥石14が得られる。
【0029】
なお、ボンドに形成される気孔の密度や大きさは、混合物16に添加される気孔形成材の量や大きさによって制御できる。よって、気孔形成材の量や大きさは、ボンドの強度が所定の強度以上となり、且つ、ボンドにチップポケットとして機能する気孔が形成されるように、適宜調整される。例えば気孔形成材として、平均粒径が100μm以上250μm以下の粒子を用いることができる。
【0030】
また、低温焼成セラミックスによって構成されるボンドは、メタルボンドやレジンボンドと比較して砥粒を保持する力が強い。そのため、該ボンドを用いると、砥粒の粒径が大きい場合にも、砥粒がボンドから突出した状態を維持しやすくなる。例えば、低温焼成セラミックスでなるボンドは、日本産業規格JIS R 6001-2(対応国際規格:ISO 8486-2)に準拠する粒度がF400である微粉(研削材)よりも平均粒径が大きい砥粒を確実に保持できる。具体的には、研削砥石14には平均粒径が20μm以上の砥粒を用いることができる。
【0031】
さらに、上記の研削砥石14は、混合物16を1000℃以下の低温で焼成することによって形成されため、焼成工程において砥粒の炭化が生じにくい。特に、焼成温度は700℃以上800℃以下であることが好ましい。これにより、研削砥石14の研削能力の低下が抑制され、高品質の研削砥石14が製造される。なお、混合物16に含まれる砥粒の平均粒径が、JIS R 6001-2に準拠する粒度がF400である微粉の平均粒径よりも大きいと、砥粒の炭化が特に生じにくい。
【0032】
また、砥粒としてダイヤモンド砥粒を用いた場合、ダイヤモンド砥粒は熱伝導率が高いため、焼成の際に優先的に加熱される。その結果、ダイヤモンド砥粒が焼結を促進させる助剤として機能し、混合物16が焼結されやすくなる。
【0033】
上記の工程を経て形成された研削砥石14が、
図1に示す基台12の外周縁12aに固定され、加工工具10が形成される。この加工工具10は、後述の通り加工装置60(
図7参照)に装着され、被加工物を研削する。
【0034】
なお、基台12に固定される研削砥石14の形状に制限はない。例えば研削砥石14として、直方体状や円柱状の研削砥石を用いることができる。
図3(A)は直方体状の研削砥石40を示す平面図であり、
図3(B)は直方体状の研削砥石40を示す断面図である。また、
図3(C)は円柱状の研削砥石42を示す平面図であり、
図3(D)は円柱状の研削砥石42を示す断面図である。
【0035】
また、研削砥石には凹部が形成されていてもよい。
図4(A)は凹部44cが形成された研削砥石44を示す平面図であり、
図4(B)は凹部44cが形成された研削砥石44を示す断面図である。例えば、研削砥石44は第1面(上面)44a及び第2面(下面)44bを備える円柱状に形成され、第1面44a側には円柱状の凹部44cが形成されている。
【0036】
研削砥石44は、第2面44b側が基台12の外周縁12a(
図1参照)に固定される。また、研削砥石44の第1面44aは、研削加工時に被加工物に接触する研削面に相当する。第1面44a側に形成された凹部44cは、研削砥石44で被加工物を研削した際に発生する研削屑を収容する空間(チップポケット)として機能する。これにより、研削砥石44において目詰まりが生じにくくなる。
【0037】
さらに、研削砥石には研削液が供給される貫通孔が設けられていてもよい。
図4(C)は貫通孔46dが形成された研削砥石46を示す平面図であり、
図4(D)は貫通孔46dが形成された研削砥石46を示す断面図である。例えば、研削砥石46は第1面(上面)46a及び第2面(下面)46bを備える円柱状に形成され、第1面46a側には円柱状の凹部46cが形成されている。また、凹部46cの底には、凹部46cの底面の一部から第2面46bに貫通する円柱状の貫通孔46dが形成されている。
【0038】
加工工具10(
図1参照)で被加工物を研削する際には、研削砥石に純水等の液体(研削液)が供給される。この研削液により、被加工物及び研削砥石が冷却されるとともに、研削屑が洗い流される。そして、研削砥石46が備える貫通孔46dは、この研削液が流れる流路として機能する。
【0039】
具体的には、基台12に研削砥石46が固定される場合、基台12の内部には、貫通孔46dに接続される流路が形成される。
図5は、流路12cを有する基台12に貫通孔46dを有する研削砥石46が固定された加工工具10を示す正面図である。
【0040】
基台12の外周縁12a側には、複数の流路12cが形成されている。複数の流路12cそれぞれ、基台12の半径方向に沿って形成され、基台12の外周縁12aと裏面とで開口している(
図7参照)。なお、流路12cは、基台12に固定される研削砥石46と同数設けられ、基台12の周方向に沿って概ね等間隔に配列されている。
【0041】
複数の研削砥石46はそれぞれ、貫通孔46dと流路12cとが接続されるように、第2面46b側が基台12の外周縁12aに固定される。そして、基台12の裏面側に設けられたノズル78(
図7参照)から流路12cに研削液が供給されると、研削液は流路12c及び貫通孔46dを介して研削砥石46の凹部46cに供給される。
【0042】
なお、研削砥石46のボンドの内部に、複数の気孔が第1面46aから第2面46bに渡って互いに連結するように形成されていると、この気孔が研削液を流すための流路となる。この場合には、研削砥石46に貫通孔46dが形成されていなくても、流路12cから供給された研削液が、気孔を介して研削砥石46の第1面46a側に供給される。
【0043】
また、
図1では基台12に複数の研削砥石14が固定された加工工具10を示したが、基台12には環状の研削砥石が形成されてもよい。
図6(A)は、環状の研削砥石48を備える加工工具10を示す正面図である。
【0044】
図6(A)に示す加工工具10は、基台12の外周縁12aに沿って配置された環状の研削砥石48を備える。この加工工具10は、例えば、所定の厚さで環状に形成された研削砥石48を、基台12の外周縁12aに貼り付けることによって形成される。基台12と研削砥石48とは、例えば接着剤を介して互いに接合される。基台12に固定された研削砥石48の外周面(側面)48aが、被加工物を研削する研削面に相当する。
【0045】
なお、研削砥石48には、研削屑が収容される溝が形成されていてもよい。
図6(B)は、溝48bが形成された環状の研削砥石48を備える加工工具10を示す正面図である。例えば研削砥石48の外周面48a側には、所定の幅の溝48bが、研削砥石48の周方向に沿って概ね等間隔に形成される。この溝48bは、研削砥石44の凹部44c(
図4(A)、
図4(B)参照)及び研削砥石46の凹部46c(
図4(C)、
図4(D)参照)と同様に、研削屑を収容するチップポケットとして機能する。
【0046】
溝48bの形成方法に制限はない。例えば、研削砥石48の製造工程において、溝48bが形成されるように混合物16(
図2(A)参照)を成形した後、混合物16を焼成する。また、環状の研削砥石48が製造された後、この研削砥石48が基台12に固定される前又は後に、研削砥石48にレーザービームを照射することによって溝48bを形成してもよい。さらに、溝48bの形成にはウォータージェットを用いることもできる。
【0047】
上記の加工工具10は、加工装置に装着され、被加工物を研削する。
図7は、加工工具10が装着された加工装置60を示す一部断面正面図である。なお、
図7には、加工工具10の研削砥石14として、
図4(C)及び
図4(D)に示す研削砥石46を用いた例を示している。
【0048】
加工装置60は、加工装置60によって加工される被加工物を保持するチャックテーブル(保持テーブル)62を備える。チャックテーブル62の上面は、被加工物を保持する保持面62aを構成する。保持面62aは、チャックテーブル62の内部に形成された吸引路(不図示)を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。
【0049】
チャックテーブル62は、モータ等の回転駆動源(不図示)と接続されており、この回転駆動源はチャックテーブル62を鉛直方向(上下方向)に概ね平行な回転軸の周りで回転させる。また、チャックテーブル62の下側には移動機構(不図示)が設けられており、この移動機構はチャックテーブル62を加工送り方向(第1水平方向、
図7の前後方向)に沿って移動させる。
【0050】
チャックテーブル62の上方には、加工ユニット(研削ユニット)64が配置されている。加工ユニット64は円筒状のハウジング66を備えており、ハウジング66には円筒状のスピンドル(回転軸)68が収容されている。スピンドル68は、チャックテーブル62の保持面62aと平行で、且つ、加工送り方向と垂直な方向に沿って配置されている。
【0051】
スピンドル68の先端部(一端側)はハウジング66の外部に露出しており、スピンドル68の先端部にはマウント70が固定されている。また、スピンドル68の基端部(他端側)には、スピンドル68を回転させるモータの回転駆動源(不図示)が連結されている。
【0052】
マウント70は、円盤状のフランジ部72と、フランジ部72の中央部から突出する円筒状の支持軸74とを備える。加工工具10が備える基台12の開口12bに支持軸74を挿入すると、加工工具10がマウント70に装着される。
【0053】
支持軸74の先端部の外周面にはねじ部74aが形成されており、このねじ部74aには環状の固定ナット76が締結される。固定ナット76の中央部には、固定ナット76を厚さ方向に貫通し、支持軸74に対応する径を有する円形の開口76aが形成されている。また、開口76aには、支持軸74のねじ部74aに対応するねじ溝が設けられている。
【0054】
支持軸74が基台12の開口12bに挿入された状態で、支持軸74のねじ部74aに固定ナット76を締結すると、加工工具10がマウント70のフランジ部72と固定ナット76とによって挟持される。これにより、加工工具10がスピンドル68の先端部に固定される。
【0055】
加工ユニット64に加工工具10が装着された状態で、回転駆動源によってスピンドル68を回転させると、加工工具10がスピンドル68の軸心を中心に回転する。また、加工ユニット64には移動機構(不図示)が接続されており、この移動機構は、加工ユニット64を加工送り方向と垂直な割り出し送り方向(第2水平方向、
図7の左右方向)及び鉛直方向に沿って移動させる。
【0056】
なお、複数の研削砥石46はそれぞれ、貫通孔46d(
図4(C)及び
図4(D)参照)が基台12の流路12cに接続されるように固定されている。また、流路12cはそれぞれ、基台12の裏面(マウント70側の面)側で露出するように形成されている。
【0057】
スピンドル68の先端部の近傍には、純水等の液体(研削液)を供給するノズル78が設けられている。ノズル78は、基台12の流路12cと対向するように配置されており、研削加工中に流路12cに研削液を供給する。そして、研削液は流路12cを介して研削砥石46の内部に供給される。この研削液により、被加工物11及び複数の研削砥石46が冷却されるとともに、被加工物11の研削によって生じた屑(研削屑)が洗い流される。
【0058】
図8(A)は、被加工物11を加工する加工装置60を示す一部断面正面図である。加工装置60で被加工物11を加工する際は、まず、チャックテーブル62で被加工物11を保持する(保持ステップ)。
【0059】
例えば被加工物11は、セラミックス、樹脂、金属等でなり、表面(第1面)11a及び裏面(第2面)11bを備える板状の部材である。ただし、被加工物11の材質、形状、構造、大きさ等に制限はない。例えば被加工物11は、半導体(Si、GaAs、InP、GaN、SiC等)、ガラス、サファイア等でなるウェーハであってもよい。また、被加工物11は、アルミニウム、銅、ステンレス鋼、チタン等の金属に代表される延性材料でなる部材であってもよい。さらに、被加工物11は、基板上に実装された複数のデバイスチップが樹脂層(モールド樹脂)によって封止されたパッケージ基板であってもよい。
【0060】
例えば、被加工物11の表面11a側を研削する際は、表面11a側が上方に露出し、裏面11b側が保持面62aと対向するように、被加工物11をチャックテーブル62上に配置する。この状態で、保持面62aに吸引源の負圧を作用させると、被加工物11がチャックテーブル62によって吸引保持される。
【0061】
次に、加工工具10の下端(研削砥石14の先端)が被加工物11の表面11aより下方に配置されるように、スピンドル68(
図7参照)の高さを調整する。そして、加工工具10を回転させながら、チャックテーブル62を加工送り方向(例えば矢印Aで示す方向)に沿って移動させ、スピンドル68とチャックテーブル62とを保持面62aと平行な方向に沿って相対的に移動させる。これにより、複数の研削砥石14が被加工物11の表面11a側に接触し、被加工物11の表面11a側が削り取られる(研削ステップ)。
【0062】
次に、加工工具10を割り出し送り方向(
図8(A)の前後方向)に沿って所定の距離移動させた後、同様に被加工物11の表面11aを研削する。この手順を繰り返すことにより、被加工物11の表面11a側の全体が研削され、被加工物11が所定の厚さに薄化される。
【0063】
図8(B)は、被加工物11の表面11a側が加工される様子を示す平面図である。
図8(B)に示すように、被加工物11の加工は、加工送りの往路と復路とで連続して実施できる。具体的には、まず、チャックテーブル62を第1の加工送り方向に沿って移動させることにより、被加工物11を研削する(往路)。そして、加工工具10の割り出し送りを行った後、チャックテーブル62の向き(回転角度)を変えずに、チャックテーブル62を第1の加工送り方向とは逆方向の第2の加工送り方向に沿って移動させることにより、被加工物11を研削する(復路)。
【0064】
上記のチャックテーブル62の往復を繰り返すことにより、被加工物11の表面11a側の全体が研削される。このように、チャックテーブル62の加工送りの往路と復路とで被加工物11を研削することにより、被加工物11の加工時間を短縮できる。
【0065】
ここで、前述の通り、加工工具10の研削砥石14は低温焼成セラミックスでなるボンドで砥粒を固定することによって形成されている。そのため、研削砥石14で被加工物11を研削しても、研削砥石14のボンドの摩耗が生じにくく、被加工物11の加工中における研削砥石14の研削面の高さ位置の変動が抑制される。これにより、加工後の被加工物11の厚さのばらつきが低減される。
【0066】
また、低温焼成セラミックスでなるボンドは砥粒の保持力が高いため、研削砥石14においては砥粒がボンドから大きく突出した状態が維持されやすい。そして、ボンド材から大きく突出した砥粒は、バイトの刃先のような機能を果たす。そのため、研削砥石14を用いると被加工物11の研削量が増大し、加工効率が向上する。また、被加工物11が延性材料でなる場合にも、研削砥石14で目詰まりが生じにくく、被加工物11が適切に研削されやすい。
【0067】
さらに、混合物16(
図2(A)及び
図2(B)参照)に気孔形成材を混合して形成された多孔質の研削砥石14を用いると、ボンドの表面で露出した気孔がチップポケットとして機能する。これにより、研削砥石14の目詰まりが防止され、研削砥石14の研削能力が維持されやすくなる。
【0068】
なお、上記では複数の研削砥石14が基台12の外周縁12aに沿って形成された加工工具10を用いて被加工物11を研削する場合について説明したが、本実施形態に係る研削砥石の使用方法はこれに限定されない。
図9(A)及び
図9(B)に、本実施形態に係る研削砥石の他の使用例を示す。
図9(A)は研削砥石94を備える加工工具90を示す正面図であり、
図9(B)は研削砥石94を備える加工工具90を示す底面図である。
【0069】
加工工具(研削ホイール)90は、ステンレス、アルミニウム等の金属でなる環状の基台92を備える。基台92は、上面(第1面)92a及び下面(第2面)92bを備え、基台92の中央部には基台92を上面92aから下面92bに貫通する円形の開口92cが形成されている。
【0070】
基台92の下面92b側には、複数の研削砥石94が配置されている。研削砥石94は、加工工具10の研削砥石14(
図1等参照)と同様の工程によって形成される。すなわち、研削砥石94は、低温焼成セラミックスでなるボンドと、ボンドに固定された砥粒とを含む。複数の研削砥石94は、基台92の周方向に沿って概ね等間隔に配列されるように、基台92の下面92b側に固定される。
【0071】
なお、基台92に固定される研削砥石94の形状に制限はない。例えば研削砥石94として、直方体状や円柱状の研削砥石を用いることができる。
図10(A)は直方体状の研削砥石96を示す斜視図であり、
図10(B)は円柱状の研削砥石98を示す斜視図である。
【0072】
また、研削砥石には、チップポケットとして機能する開口が設けられていてもよい。
図10(C)は、開口100cを有する研削砥石100を示す斜視図である。例えば開口100cは、研削砥石100の中央部に、研削砥石100の第1面(上面)100aから第2面(下面)100b側に向かって形成される。なお、開口100cは、研削砥石100を第1面100aから第2面100bまで貫通する貫通孔であってもよいし、研削砥石100の第1面100a側で開口する凹部であってもよい。
【0073】
加工工具90は、加工装置に装着され、被加工物11を研削する。
図11(A)は、被加工物11に研削加工を施す加工装置110を示す一部断面正面図である。なお、
図11(A)には、加工工具10を下降させて研削砥石94を被加工物11に接触させる研削加工(インフィード研削)の様子を示している。
【0074】
加工装置110は、加工装置110の加工対象となる被加工物11を保持するチャックテーブル(保持テーブル)112を備える。チャックテーブル112の上面は、被加工物11を保持する保持面112aを構成する。保持面112aは、チャックテーブル112の内部に形成された吸引路(不図示)を介して、エジェクタ等の吸引源(不図示)に接続されている。
【0075】
チャックテーブル112は、モータ等の回転駆動源(不図示)と接続されており、この回転駆動源はチャックテーブル112を鉛直方向に概ね平行な回転軸の周りで回転させる。また、チャックテーブル112の下側には移動機構(不図示)が設けられており、この移動機構はチャックテーブル112を水平方向に沿って移動させる。
【0076】
チャックテーブル112の上方には、加工ユニット(研削ユニット)114が配置されている。加工ユニット114は、昇降機構(不図示)によって支持された円筒状のハウジング(不図示)を備えており、このハウジングには、円筒状のスピンドル(回転軸)116が収容されている。スピンドル116は、保持面112aと垂直な方向に沿って配置されており、スピンドル116の先端部(下端部)はハウジングから露出している。
【0077】
スピンドル116の先端部には、円盤状のマウント118が固定されている。このマウント118の下面側に、加工工具90が装着される。加工工具90は、例えばボルト等を用いて、基台92の上面92a側がマウント118の下面側に接するように装着される。
【0078】
スピンドル116の基端側(上端側)には、スピンドル116を回転させるモータの回転駆動源(不図示)が連結されている。マウント118に装着された加工工具90は、この回転駆動源からスピンドル116及びマウント118を介して伝達される力によって、スピンドル116の軸心を中心に回転する。
【0079】
チャックテーブル112及び加工ユニット114の近傍には、チャックテーブル112によって保持された被加工物11と複数の研削砥石94とに純水等の液体(研削液)を供給するノズル120が設けられている。被加工物11が複数の研削砥石94によって研削される際、ノズル120から被加工物11及び複数の研削砥石94に研削液が供給される。
【0080】
加工装置110で被加工物11を加工する際には、まず、被加工物11をチャックテーブル112によって保持する(保持ステップ)。例えば、被加工物11の表面11a側を研削する際は、表面11a側が上方に露出し、裏面11b側が保持面112aと対向するように、被加工物11をチャックテーブル112上に配置する。この状態で、保持面112aに吸引源の負圧を作用させると、被加工物11がチャックテーブル112によって吸引保持される。
【0081】
次に、被加工物11を保持したチャックテーブル112を加工ユニット114の下方に移動させる。そして、チャックテーブル112とスピンドル116とをそれぞれ所定の方向に所定の回転数で回転させながら、スピンドル116をチャックテーブル112に向かって下降させる。このときのスピンドル116の下降速度は、複数の研削砥石94が適切な力で被加工物11の表面11a側に押し当てられるように調整される。
【0082】
スピンドル116を下降させると、回転する複数の研削砥石94の下面(研削面)が被加工物11の表面11a側に接触し、被加工物11の表面11a側が削り取られる(研削ステップ)。これにより、被加工物11に研削加工が施され、被加工物11が薄化される。そして、被加工物11の厚さが所定の目標値になると、被加工物11の研削が停止される。
【0083】
また、被加工物11が複数の研削砥石94によって研削される際、ノズル120から被加工物11及び複数の研削砥石94に研削液が供給される。この研削液によって、被加工物11及び複数の研削砥石94が冷却されるとともに、被加工物11の研削によって生じた屑(研削屑)が洗い流される。
【0084】
なお、基台92には、
図5及び
図7に示す加工工具10の基台12と同様に、研削液が流れる流路が形成されていてもよい。具体的には、基台92には、下面92bで開口する複数の流路が形成される。また、研削砥石94として、貫通孔が形成された研削砥石(
図10(C)参照)や、ボンドの内部に複数の気孔が互いに連結するように形成された研削砥石が用いられる。そして、複数の研削砥石94はそれぞれ、流路と接続される位置に固定される。
【0085】
基台92に形成された流路に研削液が供給されると、研削液は研削砥石94の内部(貫通孔又は連結された気孔)を流れ、研削砥石94と被加工物11との接触領域に供給される。この場合には、ノズル120を省略してもよい。
【0086】
また、
図11(A)ではインフィード研削の様子を示しているが、被加工物11の研削方法はこれに制限されない。例えば、チャックテーブル112を保持面112aと平行な方向に沿って研削砥石94の下側を通過させることによって被加工物11を研削する、クリープフィード研削を実施してもよい。
【0087】
図11(B)は、被加工物11に研削加工(クリープフィード研削)を施す加工装置110を示す一部断面正面図である。クリープフィード研削では、研削砥石94の下面(研削面)が被加工物11の表面11aよりも下方に位置付けられた状態で、スピンドル116を回転させつつ、チャックテーブル112を回転させずに保持面112aと平行な方向(例えば、矢印Bで示す方向)に沿って移動させる。これにより、チャックテーブル112とスピンドル116とが保持面112aと平行な方向に沿って相対的に移動し、複数の研削砥石94が被加工物11の表面11a側を、被加工物11の一端側から他端側に向かって研削する。
【0088】
図11(A)及び
図11(B)に示すように、加工装置110で被加工物11を研削する場合、研削砥石のボンドの消耗量が大きいと、研削砥石の研削面の高さ位置が研削加工中に変動し、被加工物11が所望の厚さに薄化されない恐れがある。そのため、研削加工中の被加工物11の厚さを随時検出し、その検出結果に応じてスピンドル116の高さ位置を修正する制御が行われる。しかしながら、この制御を行うと、被加工物11の厚さを検出するための検出器が必要となる上、加工装置110の制御が複雑になる。
【0089】
一方、研削砥石94は、低温焼成セラミックスでなるボンドで砥粒を固定することによって形成されている。そのため、研削砥石94で被加工物11を研削しても、研削砥石94のボンドが消耗しにくく、研削砥石94の下面(研削面)の高さ位置の変動が抑制される。これにより、被加工物11の厚さの検出及びスピンドル116の高さ位置の修正を省略することが可能となり、加工装置110の構造及び制御を簡易化できる。
【0090】
以上の通り、本実施形態に係る研削砥石は、低温焼成セラミックスでなるボンドで砥粒を固定することによって形成される。低温焼成セラミックスでなるボンドは高い耐熱性を有するため、研削加工時に研削砥石と被加工物との摩擦によって熱が発生しても、ボンドの強度が維持される。これにより、研削砥石の摩耗が抑制される。
【0091】
なお、上記の実施形態では、加工装置の保持テーブルによって保持された被加工物11(
図8(A)及び
図8(B)、
図11(A)及び
図11(B)参照)が研削砥石によって研削される場合について説明したが、本実施形態に係る研削砥石の研削対象に制限はない。例えば、本実施形態に係る研削砥石で、加工装置の保持テーブル(
図8(A)のチャックテーブル62、
図11(A)及び
図11(B)のチャックテーブル112等)の保持面側を研削し、保持面の形状を修正することもできる。
【0092】
例えばチャックテーブルは、金属でなる円盤状の枠体と、ポーラスセラミックス等でなり枠体の上面側に嵌め込まれた吸引部とを備えており、枠体の上面とポーラスセラミックの上面とによって保持面が構成される。そして、チャックテーブルの保持面側を加工工具10(
図1参照)や加工工具90(
図9(A)及び
図9(B)参照)で研削することにより、保持面が平坦に整形される。
【0093】
その他、上記実施形態に係る構造、方法等は、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0094】
11 被加工物
11a 表面(第1面)
11b 裏面(第2面)
10 加工工具(ブレード)
12 基台
12a 外周縁(外周面、側面)
12b 開口
12c 流路
14 研削砥石
16 混合物
20 加圧成形装置
22 金型
22a 凹部
24 押圧具(押圧部材)
24a 押圧部
24b 軸部
30 焼成炉
32 容器
34 本体部
34a 凹部
36 蓋部
40 研削砥石
42 研削砥石
44 研削砥石
44a 第1面(上面)
44b 第2面(下面)
44c 凹部
46 研削砥石
46a 第1面(上面)
46b 第2面(下面)
46c 凹部
46d 貫通孔
48 研削砥石
48a 外周面(側面)
48b 溝
60 加工装置
62 チャックテーブル(保持テーブル)
62a 保持面
64 加工ユニット(研削ユニット)
66 ハウジング
68 スピンドル(回転軸)
70 マウント
72 フランジ部
74 支持軸
74a ねじ部
76 固定ナット
76a 開口
78 ノズル
90 加工工具(研削ホイール)
92 基台
92a 上面(第1面)
92b 下面(第2面)
92c 開口
94 研削砥石
96 研削砥石
98 研削砥石
100 研削砥石
100a 第1面(上面)
100b 第2面(下面)
100c 開口
110 加工装置
112 チャックテーブル(保持テーブル)
112a 保持面
114 加工ユニット(研削ユニット)
116 スピンドル(回転軸)
118 マウント
120 ノズル