(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】ゴム組成物及びゴム組成物を製造する方法
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20231023BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20231023BHJP
C08L 101/02 20060101ALI20231023BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
C08L9/00
C08L15/00
C08L101/02
B60C1/00 Z
(21)【出願番号】P 2019062525
(22)【出願日】2019-03-28
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】317015928
【氏名又は名称】ZSエラストマー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】杉野 由隆
(72)【発明者】
【氏名】▲はま▼ 久勝
(72)【発明者】
【氏名】金坂 将
【審査官】久保田 葵
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-021149(JP,A)
【文献】特開2007-277411(JP,A)
【文献】特開2018-184497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
B60C1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分、添加剤及び充填剤を含むゴム組成物であり、
前記ゴム成分が、変性ジエン系ゴムを含有し、
前記添加剤が、下記式(I)で表される単量体の重合物を含有し、
前記添加剤の含有量が、前記ゴム成分100質量部に対して0.001~5質量部である、ゴム組成物。
【化1】
(式中、R
1は水素原子又はメチル基を示し、R
2及びR
3はそれぞれ独立にアルキル基を示し、L
1はアミド結合又はエステル結合を示し、L
2は置換基を有してよいアルカンジイル基を示す。)
【請求項2】
請求項
1に記載のゴム組成物を製造する方法であって、前記ゴム成分と、前記添加剤とを混合する工程を備える、方法。
【請求項3】
請求項
1に記載のゴム組成物を製造する方法であって、
重合反応器中で、溶液重合法にてジエン系ゴムを含む重合液を得る工程と、
前記重合液を含む重合反応器に、前記式(I)で表される単量体を添加して、前記単量体を重合して前記添加剤を調製する工程と、を有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物及び該ゴム組成物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心の高まりから、自動車に対して省燃費化の要求が強くなっており、自動車用タイヤに用いるゴム組成物に対しても、省燃費性に優れることが求められている。自動車タイヤ用のゴム組成物としては、共役ジエン系重合体と、シリカ等の充填剤とを含有するゴム組成物を用いられている。
【0003】
一方、シリカ等の充填剤を配合したゴム組成物は、加工性に劣る傾向にある。そこで、ゴム成分に対して、特定の微粒径シリカ、特定のモノアルカノールアミドを配合することにより、タイヤ用ゴム組成物の加工性を向上することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動車タイヤ用のゴム組成物には、加工性と省燃費性とを両立することが求められるが、これらの特性を両立することは難しい。かかる状況のもと、本発明は、優れた加工性を有し、省燃費性能が良好であるゴム組成物、及び該ゴム組成物を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係るゴム組成物は、ゴム成分、添加剤及び充填剤を含み、添加剤は、ケイ素原子、窒素原子及び酸素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子と、炭素原子とを含む化合物を含有し、化合物を構成するケイ素原子、窒素原子及び酸素原子の総数が、炭素原子数に対して0.27以上0.80以下であり、化合物のハンセン溶解度パラメータが下記式(2)で表される関係を満足し、化合物の分子量が200以上15000以下である。
6≦{4(δD1-δD2)2+(δP1-δP2)2+(δH1-δH2)2}0.5 (2)
(式中、δDは分散項、δPは極性項、δHは水素結合項を表す。)
【0007】
また、本発明の一態様に係るゴム組成物は、ゴム成分、添加剤及び充填剤を含み、添加剤が、下記式(I)で表される単量体の重合物を含有する。
【0008】
【化1】
式中、R
1は水素原子又はメチル基を示し、R
2及びR
3はそれぞれ独立にアルキル基を示し、L
1はアミド結合又はエステル結合を示し、L
2は置換基を有してよいアルカンジイル基を示す。
【0009】
さらに、本発明の一態様に係るゴム組成物を製造する方法は、上記ゴム成分と、上記添加剤とを混合する工程を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れた加工性を有し、省燃費性能が良好であるゴム組成物、及び該ゴム組成物を製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
[ゴム組成物]
本実施形態のゴム組成物は、ゴム成分、添加剤及び充填剤を含む。以下、ゴム組成物に含まれる各成分について説明する。
【0013】
(添加剤)
本実施形態の第1の態様に係るゴム組成物は、添加剤として、ケイ素原子、窒素原子及び酸素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子と、炭素原子とを含む化合物を含有する。化合物を構成するケイ素原子、窒素原子及び酸素原子の総数は、炭素原子数に対して0.27以上0.80以下であり、化合物のハンセン溶解度パラメータは、下記式(2)で表される関係を満足し、化合物の分子量は200以上15000以下である。式中、δDは分散項、δPは極性項、δHは水素結合項を表す。
6≦{4(δD1-δD2)2+(δP1-δP2)2+(δH1-δH2)2}0.5 (2)
【0014】
ゴム成分及び充填剤と共に、添加剤として特定の化合物を用いることにより、ゴム組成物中で化合物が充填剤とゴム成分の境界に存在し、その相互作用を高めることにより、ゴム組成物の加工性を低下させることなく、省燃費性能を高めることができると、本発明者らは考えている。
【0015】
化合物を構成する炭素原子数に対するケイ素原子、窒素原子及び酸素原子の総数を、パラメータAとする。パラメータAは、式(1)のように定義される。
A=(Si+N+O)/C (1)
【0016】
式(1)中、Siはケイ素原子数、Nは窒素原子数、Oは酸素原子数、Cは炭素原子数を表す。例えば、化合物がケイ素を含まない場合、Siは0となる。本実施形態に係る化合物は、ケイ素、窒素、酸素及び炭素以外の原子を含んでもよいが、パラメータAでは、その原子数は考慮しない。
【0017】
ゴム組成物に含まれる化合物が充填剤とゴム成分との境界に存在し、相互作用を高める観点から、化合物は、ケイ素原子、窒素原子及び酸素原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子と、炭素原子と、水素原子とからなることが好ましく、酸素原子、窒素原子、炭素原子及び水素原子からなることがより好ましい。
【0018】
式(1)中のSi、N、O及びCには、X線光電子分光法(XPS)、元素分析装置、炭素硫黄分析装置、酸素窒素水素分析装置、蛍光X線装置等を用いた元素分析法、イオンクロマトグラフィー法を用いて元素の含有量を測定して算出することができる。また、Si、N、O及びCは、化合物の構造から算出することもできる。これらの方法は、単独で又は複数組み合わせて使用してもよい。炭素硫黄分析装置、酸素窒素水素分析装置を用いた方法、イオンクロマトグラフィー法を用いて元素の含有量を測定して算出する方法、化合物の構造から算出する方法が好ましく、化合物の構造から特定する方法がより好ましい。
【0019】
化合物の構造の特定には、核磁気共鳴分光法(NMR)、液体クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー、紫外可視分光法、赤外分光法といった一般的な方法を用いることができる。
【0020】
本実施形態に係る化合物は、充填剤とゴム成分の境界に存在し、充填剤とゴム成分の相互作用を強めることにより省燃費性能を向上させる成分である。パラメータAは、ゴム成分に対する化合物の相溶性と、化合物と充填剤との相互作用の強さを反映する。パラメータAが0.27以上の化合物は、充填剤との親和性が高まることから充填剤の近傍に存在し易くなり、充填剤とゴム成分の相互作用を強くすることができる。パラメータAが0.27未満の化合物は、ゴム成分の領域に偏在し、多すぎると充填剤の領域に偏在することからゴム成分と充填剤の相互作用を効果的に高めることができ難くなる。
【0021】
パラメータAが0.27以上0.80以下であると、組成物中に含まれる化合物は、充填剤とゴム成分との境界に存在し、その相互作用を高めて省燃費性能を向上させることができる。パラメータAは、0.27以上0.70以下が好ましく、0.27以上0.60以下がより好ましく、0.27以上0.40以下が更に好ましい。
【0022】
化合物のハンセン溶解度パラメータから算出されるパラメータBは、式(2)のように定義される。
B={4(δD1-δD2)2+(δP1-δP2)2+(δH1-δH2)2}0.5 (2)
【0023】
δD1、δP1及びδH1では、ハンセン溶解度パラメータの計算に下記式(H)で表されるモデル化合物を用いる。δD2、δP2及びδH2では、ハンセン溶解度パラメータの計算にゴム組成物に含まれる化合物を用いる。
【0024】
【0025】
本実施形態に係るδD,δP,δHは、一般的に利用可能な市販ソフトであり、チャールズハンセンらによって開発された(Hansen Solubility Parameter in Practice(HSPiP))を用いて計算する。
【0026】
パラメータBは、HANSEN SOLUBILYTY PARAMETERS A User’s Handbook(Charles M.Hansen、CRC Press)に記載の知見を利用して調節してもよいし、以下のように調節してもよい。例えば、モデル化合物のハンセン溶解度パラメータの各成分は(δD1,δP1,δH1)=(16.92、0.27、4.03)である。各原子団単独のハンセン溶解度パラメータの各成分は、HSPiPを用いて計算することができる。各原子団を用いて計算されたハンセン溶解度パラメータの各成分及びモデル化合物を用いて計算されたハンセン溶解度パラメータを式(2)に代入し、パラメータBを計算すると例えばCH3の場合、パラメータBは9.0となる。CH2の場合3.5となり、CH2を多く含む化合物から得られるパラメータBは、CH3を多く含む化合物に比べ、小さくなることが予想される。CH,SH(Sは硫黄原子),CF3(Fはフッ素原子)の場合、それぞれ9.5、11.3、13.2となりCH3から得られるパラメータBより微増する。OH、NH2,NHCO,NCOの場合、36.6、16.5、16.3、27.9、28.3となりCH3から得られるパラメータBより増加する。これらの値や上記Handbookに記載のハンセン溶解度パラメータの各成分を目安に原子団を適宜組み合わせることにより、パラメータBを好ましい値に調節することができる。
【0027】
パラメータBは、ゴム成分との相溶性を反映する。パラメータBが小さいと化合物はゴム成分周辺に偏在する。パラメータBが6以上であると、化合物は充填剤の近傍に存在できるためゴム成分との相互作用を高め、省燃費性能を向上させることができる。パラメータBは7以上が好ましい。パラメータBが大きいと化合物は充填剤周辺に偏在する。化合物を充填剤周辺に偏在させずに、ゴム成分と充填剤との相互作用を高める観点からパラメータBは22以下が好ましく、17以下がより好ましく、12以下が更に好ましい。
【0028】
化合物の分子量は、化合物の構造式から算出する方法、質量分析装置を用いる方法、又はゲルパーミッションクロマトグラフィー法を用いて算出することができる。分子量の算出方法としては、化合物の構造式から算出する方法、又は質量分析装置を用いる方法が好ましく、化合物の構造式から算出する方法がより好ましい。
【0029】
化合物の分子量が高いと充填剤、ゴム成分の相互作用を安定化し、省燃費性能を向上することができることから、分子量が200以上の化合物を添加剤として用いると安定効果が得られ易くなる。化合物の分子量は、300以上が好ましく、340以上がより好ましい。
【0030】
化合物の分子量、パラメータA、及びパラメータBは、ゴム組成物からの抽出物を試料として用いて測定することができる。化合物の抽出方法としては、ソックスレー抽出法、溶解再沈法等の一般的な方法を用いることができる。
【0031】
化合物の分子量が低いと分子運動性が高くなるため混合時に化合物が移動し易いため、分子量が15000以下の化合物は運動性が高く、混合時に充填剤とゴム成分との境界に容易に移動することができる。化合物の分子量は、10000以下が好ましく、5000以下がより好ましく、2000以下が更に好ましい。
【0032】
化合物が、アミノ基、シロキシ基、イミノ基、エーテル結合、エステル結合及びアミド結合をからなる群より選択される少なくとも1種に基づく構造を有すると、充填剤とゴム成分との相互作用をより強めることができる。化合物は、アミド結合又はアミノ基に基づく構造を有することがより好ましく、アミノ基に基づく構造を有することが更に好ましい。アミノ基は、3級アミノ基であることが特に好ましい。本実施形態に係る化合物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0033】
本実施形態の第2の態様に係るゴム組成物は、添加剤として下記式(I)で表される単量体の重合物を含有する。
【0034】
【0035】
式(I)中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2及びR3はそれぞれ独立にアルキル基を示し、L1はアミド結合又はエステル結合を示し、L2は置換基を有してよいアルカンジイル基を示す。
【0036】
ゴム成分及び充填剤と共に、添加剤として特定の単量体を重合して得られるオリゴマーを用いることで、ゴム組成物中でオリゴマーが充填剤とゴム成分の境界に存在し、その相互作用を高めることにより、ゴム組成物の加工性を低下させることなく、省燃費性能を高めることができると、本発明者らは考えている。
【0037】
充填剤とゴム成分との相互作用をより強める観点から、本実施形態に係る重合物は、式(I)で表される単量体の重合度が2以上のオリゴマーであることが好ましい。オリゴマーの重合度は、2以上100以下であることがより好ましく、2以上20以下であることが更に好ましく、2以上10以下であることが特に好ましい。
【0038】
式(I)で表される単量体としては、例えば、N-(2-ジメチルアミノエチル)アクリルアミド、N-(2-ジエチルアミノエチル)アクリルアミド、N-(3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、N-(3-ジエチルアミノプロピル)アクリルアミド、N-(4-ジメチルアミノブチル)アクリルアミド、N-(4-ジエチルアミノブチル)アクリルアミド、N-メチル-N-(2-ジメチルアミノエチル)アクリルアミド、N-メチル-N-(2-ジエチルアミノエチル)アクリルアミド、N-メチル-N-(3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド、N-メチル-N-(3-ジエチルアミノプロピル)アクリルアミド、N-メチル-N-(4-ジメチルアミノブチル)アクリルアミド、N-メチル-N-(4-ジエチルアミノブチル)アクリルアミド等のアクリルアミド化合物;N-(2-ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド、N-(2-ジエチルアミノエチル)メタクリルアミド、N-(3-ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N-(3-ジエチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N-(4-ジメチルアミノブチル)メタクリルアミド、N-(4-ジエチルアミノブチル)メタクリルアミド、N-メチル-N-(2-ジメチルアミノエチル)メタクリルアミド、N-メチル-N-(2-ジエチルアミノエチル)メタクリルアミド、N-メチル-N-(3-ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N-メチル-N-(3-ジエチルアミノプロピル)メタクリルアミド、N-メチル-N-(4-ジメチルアミノブチル)メタクリルアミド、N-メチル-N-(4-ジエチルアミノブチル)メタクリルアミド等のメタクリルアミ化合物;2-ジエチルアミノエチルアクリレート、3-ジメチルアミノプロピルアクリレート、3-ジエチルアミノプロピルアクリレート、4-ジメチルアミノブチルアクリレート、4-ジエチルアミノブチルアクリレート等のメタクリレート化合物;2-ジメチルアミノエチルメタクリレート、2-ジエチルアミノエチルメタクリレート、3-ジメチルアミノプロピルメタクリレート、3-ジエチルアミノプロピルメタクリレート、4-ジメチルアミノブチルメタクリレート、4-ジエチルアミノブチルメタクリレート2-ジメチルアミノエチルメタクリレート等のアクリレート化合物が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0039】
ゴム組成物における添加剤の含有量は、加工性と省燃費性とを両立する観点から、ゴム成分100質量部に対して0.001~30質量部、0.01~15質量部、又は0.1~5質量部であってよい。
【0040】
(ゴム成分)
本実施形態に係るゴム成分としては特に限定されない。ゴム成分は、ジエン系ゴムを含んでよい。ジエン系ゴムとは、共役2重結合を持つジエンモノマーを原料としたゴムを意味する。ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、クロロプレンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、エチレン-プロピレン-ジエンゴム、及びニトリルゴムが挙げられる。ゴム成分は、2種類以上を併用してもよい。
【0041】
ジエン系ゴムは、各種変性剤に基づく単位を分子鎖又は末端に有する変性ジエン系ゴムであってもよい。変性ジエン系ゴムは、共役ジエン化合物を含む単量体を溶液重合する際に、変性剤を反応させることで作製してもよい。
【0042】
変性剤としては、溶液重合により変性ジエン系ゴムを作製する際に用いることができる化合物であれば、特に限定されない。ヘテロ原子を有する化合物で変性されているジエン系ゴムを用いることで、ゴム組成物中に充填剤を分散し易くなる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及びケイ素原子が挙げられる。ヘテロ原子を有する化合物として、例えば、アミン化合物、アクリルアミド化合物、ビニルシラン化合物、アルコキシシラン化合物、ポリシロキサン化合物、シランスルフィド化合物、スルファニルシラン化合物、シアネート化合物及びポリイミン化合物が挙げられる。ジエン系ゴムは、2級アミン化合物、アミノ基を有するアクリルアミド化合物、又はアミノ基を有するビニルシラン化合物で変性されていてもよい。
【0043】
本実施形態に係る変性剤として、特開2012-214711号公報、特開2008-239966号公報、特開2010-77413号公報、特開2014-189720号公報、特開2015-120785号公報、特開2017-106029号公報、特開2017-110230号公報、国際公開第2014/133096号、国際公開第2014/014052号、国際公開第2015/199226号、国際公開第2016/133154号、米国特許第9718911号、米国特許第9249276等に、具体的に開示されている化合物を用いてもよい。
【0044】
ゴム成分を作製する際には、単量体の重合開始から重合停止までに、重合溶液にカップリング剤を添加してもよい。
【0045】
カップリング剤としては、例えば、四塩化ケイ素、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、四塩化錫、メチルトリクロロスズ、ジメチルジクロロスズ、トリメチルクロロスズ、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジエトキシジメチルシラン、テトラエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン及びジエトキシジエチルシランが挙げられる。
【0046】
ゴム成分と充填剤との相溶性及び相互作用を最適化して、ゴム組成物の加工性及び省燃費性能をより一層向上させる観点から、ゴム成分は、ジエン系ゴムを含有することが好ましく、変性ジエン系ゴムを含有することがより好ましい。変性基をポリマー中に精度よく導入し、省燃費性能をより一層向上させる観点から、変性ジエン系ゴムは、溶液重合法で合成されるジエン系ゴムであることが好ましく、変性スチレン-ブタジエンゴムであることがより好ましい。添加剤との相溶性をより向上する観点から、ゴム成分として、上述した式(I)で表される単量体で変性したジエン系ゴムを用いてもよい。
【0047】
(充填剤)
本実施形態に係る充填剤としては、例えば、シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、アルミナ、クレー、水酸化アルミニウム、及びマイカが挙げられる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0048】
シリカとしては、例えば、乾式シリカ(無水ケイ酸)、湿式シリカ(含水ケイ酸)、コロイダルシリカ、沈降シリカ、ケイ酸カルシウム及びケイ酸アルミニウムが挙げられる。これらは単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0049】
シリカのBET比表面積は、通常、50~250m2/gである。BET比表面積は、ASTM D1993-03に従って測定することができる。シリカの市販品としては、EVONIK社製の商品名「Ultrasil VN3」、東ソー・シリカ社製の商品名「NIPSIL VN3」、「NIPSIL AQ」、「NIPSIL ER」、「NIPSIL RS-150」、Rhodia社製の商品名「Zeosil 1115MP」、「Zeosil 1165MP」等を用いることができる。
【0050】
カーボンブラックとしては、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、及びグラファイトが挙げられる。チャンネルブラックとしては、例えば、EPC、MPC及びCCが挙げられる。ファーネスカーボンブラックとしては、例えば、SAF、ISAF、HAF、MAF、FEF、SRF、GPF、APF、FF、CF、SCF及びECFが挙げられる。サーマルブラックとしては、例えば、FT及びMTが挙げられる。カーボンブラックは、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0051】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(N2SA)は、通常、5~200m2/gであり、カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸収量は、通常、5~300mL/100gである。窒素吸着比表面積は、ASTM D4820-93に従って測定することができ、DBP吸収量は、ASTM D2414-93に従って測定することができる。カーボンブラックの市販品としては、三菱化学社製の商品名「ダイヤブラックN339」、東海カーボン社製の商品名「シースト6」、「シースト7HM」、「シーストKH」、EVONIK社製の商品名「CK 3」、「Special Black 4A」等を用いることができる。
【0052】
ゴム組成物における充填剤の含有量は、耐摩耗性及び強度を高める観点から、ゴム成分100質量部に対して10~150質量部、20~120質量部、又は30~100質量部であってよい。
【0053】
(その他の成分)
本実施形態のゴム組成物は、加硫剤、加硫促進剤、加硫活性化剤、有機過酸化物、シランカップリング剤、伸展油、加工助剤、老化防止剤、滑剤等の成分を更に含んでよい。
【0054】
加硫剤としては、硫黄を用いることができる。硫黄としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄が挙げられる。硫黄の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1~15質量部であり、より好ましくは0.3~10質量部であり、更に好ましくは0.5~5質量部である。
【0055】
加硫促進剤としては、例えば、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジサルファイド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド等のチアゾール系加硫促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等のチウラム系加硫促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシメチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド等のスルフェンアミド系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、ジオルトトリルグアニジン、オルトトリルビグアニジン等のグアニジン系加硫促進剤が挙げられる。加硫促進剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.1~5質量部であり、より好ましくは0.2~3質量部である。
【0056】
加硫活性化剤としては、例えば、ステアリン酸、酸化亜鉛等が挙げられる。有機過酸化物としては、例えば、ジクミルパーオキシド、ジターシャリブチルパーオキシド等が挙げられる。
【0057】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、γ-トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、γ-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィド、3-オクタノイルチオ-1-プロピルトリエトキシシラン及びメルカプト-チオカルボキシレートオリゴマーが挙げられる。
【0058】
シランカップリング剤の配合量は、補強材100質量部に対して、好ましくは1~20質量部であり、より好ましくは2~15質量部であり、更に好ましくは5~10質量部である。
【0059】
伸展油としては、例えば、アロマチック系鉱物油(粘度比重恒数(V.G.C.値)0.900~1.049)、ナフテン系鉱物油(V.G.C.値0.850~0.899)及びパラフィン系鉱物油(V.G.C.値0.790~0.849)が挙げられる。伸展油の多環芳香族含有量は、好ましくは3質量%未満であり、より好ましくは1質量%未満である。該多環芳香族含有量は、英国石油学会346/92法に従って測定される。また、伸展油の芳香族化合物含有量(CA)は、好ましくは20質量%以上である。
【0060】
[ゴム組成物の製造方法]
本実施形態のゴム組成物を製造する方法は、上記ゴム成分と、上記添加剤とを混合する工程を備える。ゴム成分と添加剤とを混合する方法は、特に限定されず、例えば、下記方法(A)又は方法(B)であってもよい。
【0061】
方法(A)は、ゴム成分と、添加剤とを別々に調製した後、混合する方法である。方法(A)では、溶液重合法にて製造されたジエン系ゴムの溶液に、別途調製した添加剤を混合して、ゴム成分及び添加剤を含む組成物を得ることができる。
【0062】
方法(B)は、in situでゴム成分及び添加剤を含む組成物を得る方法である。方法(B)では、溶液重合法にてジエン系ゴムを含む重合液を得る工程と、重合液を含む重合反応器に、上記式(I)で表される単量体を添加して、該単量体を重合して添加剤を調製する工程とにより、ゴム成分及び添加剤を含む組成物を得ることができる。
【0063】
本実施形態のゴム組成物は、ゴム成分及び添加剤を含む組成物に、充填剤と、必要に応じて他の成分とを混合して調製することができる。ゴム組成物の調製する際には、例えば、各成分をロール及びバンバリー等の公知の混合機で混練する方法を用いることができる。
【0064】
混練条件としては、加硫剤及び加硫促進剤以外の成分を配合する場合、混練温度は、通常50~200℃であり、好ましくは80~190℃であり、混練時間は、通常30秒~30分であり、好ましくは1分~30分である。加硫剤、加硫促進剤を配合する場合、混練温度は、通常100℃以下であり、好ましくは室温~80℃である。また、加硫剤、加硫促進剤を配合した組成物は、通常、プレス加硫等の加硫処理を行って用いられる。加硫温度としては、通常120~200℃、好ましくは140~180℃である。
【0065】
本実施形態のゴム体組成物は、優れた加工性を有し、省燃費性能が良好であることから、タイヤに好適に用いられる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
【0067】
物性評価は次の方法で行った。
1.パラメータA、分子量及び重合度
添加剤のパラメータA、分子量及び重合度は、添加剤の構造をNMR法により決定し、得られた化学構造式を用いて算出した。
【0068】
2.パラメータB
添加剤のパラメータBの計算には、チャールズハンセンらによって開発されたソフトウェア(Hansen Solubility Parameter in Practice(HSPiP))を用いた。計算にはNMR法により決定した構造を用いた。
【0069】
3.ムーニー粘度(ML1+4又はMS1+4)
JIS K6300(1994)に従って、100℃にてゴム組成物のムーニー粘度を測定した。ムーニー粘度の数値が小さいほど加工性に優れる。
【0070】
4.tanδ(60℃)及びtanδ(0℃)
加硫シートから幅1mm及び長さ40mmの短冊状の試験片を打ち抜き、試験に供した。測定は、粘弾性測定装置(上島製作所社製)によって、歪み1%及び周波数10Hzの条件下で、温度60℃での試験片の損失正接(tanδ(60℃))及び温度0℃での試験片の損失正接(tanδ(0℃))を測定した。tanδ(60℃)が小さいほど、省燃費性に優れ、tanδ(0℃)が大きいほど、グリップ性に優れる。
【0071】
<添加剤溶液Aの作製>
窒素雰囲気下、N-(3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド55.23mmol、シクロヘキサン184.1mL、及びn-ブチルリチウム(n-BuLi)を55.23mmol含有するn-ヘキサン溶液を反応器に投入し、撹拌しながら、反応器内の温度を65℃に昇温し、同温度で混合物を15分間撹拌した。次いで、反応器内にメタノール3.36mLを添加し、反応器内の温度を常温に冷却し、N-(3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミドのオリゴマーを含む添加剤溶液A173.1gを得た。
1H-NMRスペクトル分析の結果から、下記式(A)で表される化合物が含まれていることを確認した。N-(3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミドのオリゴマーの平均重合度は2.4であり、重合度から計算される添加剤の平均分子量は433.0であった。
【化4】
【0072】
[ゴム組成物及び加硫シートの作製]
(実施例1)
内容積30Lのステンレス製重合反応器内を洗浄、乾燥し、乾燥窒素で置換し、工業用ヘキサン(密度680kg/m3)15.3kg、1,3-ブタジエン912g、スチレン288g、テトラヒドロフラン9.1mL、エチレングリコールジエチルエーテル6.54mLを重合反応器内に投入した。次に、スカベンジャーとして少量のn-BuLiのヘキサン溶液を重合反応器内に投入した後、ピペリジン18.41mmolと、n-BuLiを18.14mmol含有するn-ヘキサン溶液とを投入して、30℃で重合を開始した。
【0073】
撹拌速度を130rpm、重合反応器内温度を65℃とし、1,3-ブタジエンを547g/時間で2.5時間、スチレンを216g/時間で2時間かけて重合反応容器内に連続的に供給し、重合を合計3時間行った。1,3-ブタジエンの全供給量は1368g、スチレンの全供給量は432gであった。重合開始25分後に、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン2.75gを含むヘキサン溶液30mLを重合反応器内に投入した。
【0074】
次に、重合反応溶液を130rpmの撹拌速度で撹拌し、65℃でN-(3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド18.41mmolを添加し、15分間撹拌した後、重合反応溶液に、メタノール1.12mLを含むヘキサン溶液30mLを加えて、更に5分間撹拌した。
【0075】
次に、重合反応溶液に、上記添加剤溶液Aを173.1g加えた後、酸化防止剤として2-tert-ブチル-6-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルベンジル)-4-メチルフェニルアクリレート(住友化学社製、商品名:スミライザーGM)12.0g、及びペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)(住友化学社製、商品名:スミライザーTP-D)6.0gを加え、10分間撹拌して、重合体溶液を得た。
【0076】
重合体溶液を常温で24時間放置して溶媒を蒸発させ、更に55℃で12時間減圧乾燥し、スチレンと1,3-ブタジエンとの共重合体(スチレン-ブタジエンゴム)、及びN-(3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミドのオリゴマーを含む組成物a1を得た。
【0077】
組成物a180質量部、高シスBR(日本ゼオン製、商品名:BR1220)20質量部、シリカ(EVONIK社製、商品名:ウルトラシル7000GR)80質量部、シランカップリング剤(EVONIK社製、商品名:Si75)6.4質量部、カーボンブラック(三菱化学社製、商品名:ダイヤブラックN339)5質量部、伸展油(JXTG社製、商品名:TDAE Aromax)30質量部、老化防止剤(大内新興化学製、商品名:ノクラック6C)2質量部、ステアリン酸2質量部、亜鉛華3質量部、加硫促進剤(大内新興化学製、商品名:ノクセラーD)2質量部、加硫促進剤(大内新興化学製、商品名:ノクセラーCZ)1.5質量部、及び硫黄1.5質量部を、ラボプラストミルにて混練して、ゴム組成物を調製した。ゴム組成物を6インチロールでシートに成形し、該シートを160℃で55分加熱して加硫させ、加硫シートを作製した。
【0078】
(実施例2)
内容積30Lのステンレス製重合反応器内を洗浄、乾燥し、乾燥窒素で置換し、工業用ヘキサン(密度680kg/m3)15.3kg、1,3-ブタジエン912g、スチレン288g、テトラヒドロフラン9.1mL、エチレングリコールジエチルエーテル6.54mLを重合反応器内に投入した。次に、スカベンジャーとして少量のn-BuLiのヘキサン溶液を重合反応器内に投入した後、ピペリジンを18.41mmolと、n-BuLiを18.14mmol含有するn-ヘキサン溶液を投入して、30℃で重合を開始した。
【0079】
撹拌速度を130rpm、重合反応器内温度を65℃とし、1,3-ブタジエンを547g/時間で2.5時間、スチレンを216g/時間で2時間かけて重合反応容器内に連続的に供給し、重合を合計3時間行った。1,3-ブタジエンの全供給量は1368g、スチレンの全供給量は432gであった。重合開始25分後に、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン2.75gを含むヘキサン溶液30mLを重合反応器内に投入した。
【0080】
次に、重合反応溶液を130rpmの撹拌速度で撹拌し、65℃でN-(3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド18.41mmolを添加して15分間撹拌した後、n-BuLiを55.23mmol含有するn-ヘキサン溶液を投入した。n-BuLiのヘキサン溶液投入から10秒後に、N-(3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド55.23mmolを添加し、15分間撹拌した後、65℃でメタノール4.47mLを含むヘキサン溶液30mLを加えて、更に5分間撹拌した。
【0081】
次に、重合反応溶液に、「スミライザーGM」12.0g及び「スミライザーTP-D」6.0gを加え、10分間撹拌して重合体溶液を得た。
【0082】
重合体溶液を常温で24時間放置して溶媒を蒸発させ、更に55℃で12時間減圧乾燥し、スチレン-ブタジエンゴム、及びN-(3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミドのオリゴマーを含む組成物a2を得た。組成物a2の1H-NMRスペクトル分析の結果、式(A)で表される化合物を含んでいることが観測された。N-(3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミドのオリゴマーの平均重合度は3.2であり、重合度から計算される添加剤の平均分子量は557.9であった。
【0083】
組成物a2を用いた以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物を調製し、加硫シートを作製した。
【0084】
(比較例1)
上記添加剤溶液Aを添加しなかった以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物を調製し、加硫シートを作製した。
【0085】
(比較例2)
添加剤溶液Aの代わりにN-(3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド55.23mmol及びシクロヘキサン184.1mLを混合した添加剤溶液Bを用いた以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物を調製し、加硫シートを作製した。
【0086】
添加剤のパラメータA、パラメータB及び分子量、ゴム組成物のムーニー粘度、並びに、加硫シートのtanδの評価結果を表1に示す。ここで、表1中のムーニー粘度及びtanδは比較例1を100とした相対値である。
【0087】
【0088】
(実施例3)
内容積30Lのステンレス製重合反応器内を洗浄、乾燥し、乾燥窒素で置換し、工業用ヘキサン(密度680kg/m3)15.3kg、1,3-ブタジエン968g、スチレン334g、テトラヒドロフラン12.0mL、エチレングリコールジエチルエーテル4.15mLを重合反応器内に投入した。次に、スカベンジャーとして少量のn-BuLiのヘキサン溶液を重合反応器内に投入した後、ピペリジンを13.89mmolと、n-BuLiを18.52mmol含有するn-ヘキサン溶液を投入して、30℃で重合を開始した。
【0089】
撹拌速度を130rpm、重合反応器内温度を65℃とし、1,3-ブタジエンを513g/時間で2.5時間、スチレンを208g/時間で2時間かけて重合反応容器内に連続的に供給し、重合を合計3時間行った。1,3-ブタジエンの全供給量は1282g、スチレンの全供給量は416gであった。重合開始25分後に、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン12.5gを含むヘキサン溶液30mLを重合反応器内に投入した。
【0090】
次に、重合反応溶液を130rpmの撹拌速度で撹拌し、65℃で四塩化錫1.95mmolを添加して15分間撹拌し、次いで、N-(3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド10.72mmolを添加して15分間撹拌した後、n-BuLiを31.35mmol含有するn-ヘキサン溶液を投入した。n-BuLiのヘキサン溶液投入から15分後に、N-(3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド15.68mmolを添加し、15分間撹拌した後、65℃でメタノール2.02mLを含むヘキサン溶液30mLを加えて、更に5分間撹拌した。
【0091】
次に、重合反応溶液に、酸化防止剤として4,6-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール(BASF社製、商品名:イルガノックス1520L)16.8gを加え、10分間撹拌して重合体溶液を得た。
【0092】
重合体溶液を常温で24時間放置して溶媒を蒸発させ、更に55℃で12時間減圧乾燥し、スチレン-ブタジエンゴム、及びN-(3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミドのオリゴマーを含む組成物b1を得た。
【0093】
組成物b1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物を調製し、加硫シートを作製した。
【0094】
(実施例4)
内容積20Lのステンレス製重合反応器内を洗浄、乾燥し、乾燥窒素で置換し、工業用ヘキサン(密度680kg/m3)10.2kg、1,3-ブタジエン504g、スチレン546g、テトラヒドロフラン6.07mL、エチレングリコールジエチルエーテル1.27mLを重合反応器内に投入した。次に、スカベンジャーとして少量のn-BuLiのヘキサン溶液を重合反応器内に投入した後、ピペリジンを3.16mmolと、n-BuLiを6.31mmol含有するn-ヘキサン溶液を投入して、30℃で重合を開始した。
【0095】
撹拌速度を130rpm、重合反応器内温度を65℃とし、1,3-ブタジエンを394g/時間で2時間、スチレンを101g/時間で2時間かけて重合反応容器内に連続的に供給した後、さらに1,3-ブタジエンを180g/時間で20分間かけて重合反応容器内に連続的に供給し、重合を合計170間行った。1,3-ブタジエンの全供給量は1352g、スチレンの全供給量は748gであった。重合開始20分後に、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン0.182gを含むヘキサン溶液30mLを重合反応器内に投入した。
【0096】
次に、重合反応溶液を130rpmの撹拌速度で撹拌し、65℃で四塩化ケイ素0.474mmolを添加して10分間撹拌し、次いで、N-(3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド4.42mmolを添加して10分間撹拌した後、n-BuLiを13.9mmol含有するn-ヘキサン溶液を投入した。n-BuLiのヘキサン溶液投入から5分後に、N-(3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド13.9mmolを添加し、15分間撹拌した後、65℃でメタノール1.23mLを含むヘキサン溶液20mLを加えて、更に15分間撹拌した。
【0097】
次に、重合反応溶液に、酸化防止剤として「イルガノックス1520L」8.40g、及び伸展油(JXTGエネルギー社製、商品名:プロセスNC-140)788gを加え、10分間撹拌して重合体溶液を得た。
【0098】
重合体溶液を常温で24時間放置して溶媒を蒸発させ、更に55℃で12時間減圧乾燥し、スチレン-ブタジエンゴム、及びN-(3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミドのオリゴマーを含む組成物b2を得た。
【0099】
組成物b2を用いた以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物を調製し、加硫シートを作製した。
【0100】
(比較例3)
内容積30Lのステンレス製重合反応器内を洗浄、乾燥し、乾燥窒素で置換し、工業用ヘキサン(密度680kg/m3)15.3kg、1,3-ブタジエン968g、スチレン334g、テトラヒドロフラン12.0mL、エチレングリコールジエチルエーテル4.15mLを重合反応器内に投入した。次に、スカベンジャーとして少量のn-BuLiのヘキサン溶液を重合反応器内に投入した後、ピペリジンを13.89mmolと、n-BuLiを18.52mmol含有するn-ヘキサン溶液を投入して、30℃で重合を開始した。
【0101】
撹拌速度を130rpm、重合反応器内温度を65℃とし、1,3-ブタジエンを513g/時間で2.5時間、スチレンを208g/時間で2時間かけて重合反応容器内に連続的に供給し、重合を合計3時間行った。1,3-ブタジエンの全供給量は1282g、スチレンの全供給量は416gであった。重合開始25分後に、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン12.5gを含むヘキサン溶液30mLを重合反応器内に投入した。
【0102】
次に、重合反応溶液を130rpmの撹拌速度で撹拌し、65℃で四塩化錫1.95mmolを添加して15分間撹拌し、次いで、N-(3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド10.72mmolを添加して15分間撹拌した後、65℃でメタノール2.02mLを含むヘキサン溶液30mLを加えて、5分間撹拌した。
【0103】
重合反応溶液に、「イルガノックス1520L」16.8gを加え、10分間撹拌して重合体溶液を得た。重合体溶液を常温で24時間放置して溶媒を蒸発させ、更に55℃で12時間減圧乾燥し、スチレン-ブタジエンゴムを含む組成物b3を得た。
【0104】
組成物b3を用いた以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物を調製し、加硫シートを作製した。
【0105】
(比較例4)
内容積20Lのステンレス製重合反応器内を洗浄、乾燥し、乾燥窒素で置換し、工業用ヘキサン(密度680kg/m3)10.2kg、1,3-ブタジエン504g、スチレン546g、テトラヒドロフラン6.07mL、エチレングリコールジエチルエーテル1.27mLを重合反応器内に投入した。次に、スカベンジャーとして少量のn-BuLiのヘキサン溶液を重合反応器内に投入した後、ピペリジンを3.16mmolと、n-BuLiを6.31mmol含有するn-ヘキサン溶液を投入して、30℃で重合を開始した。
【0106】
撹拌速度を130rpm、重合反応器内温度を65℃とし、1,3-ブタジエンを394g/時間で2時間、スチレンを101g/時間で2時間かけて重合反応容器内に連続的に供給した後、さらに1,3-ブタジエンを180g/時間で20分間かけて重合反応容器内に連続的に供給し、重合を合計170間行った。1,3-ブタジエンの全供給量は1352g、スチレンの全供給量は748gであった。重合開始20分後に、ビス(ジエチルアミノ)メチルビニルシラン0.182gを含むヘキサン溶液30mLを重合反応器内に投入した。
【0107】
次に、重合反応溶液を130rpmの撹拌速度で撹拌し、65℃で四塩化ケイ素0.474mmolを添加して10分間撹拌し、次いで、N-(3-ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド4.42mmolを添加して15分間撹拌した後、65℃でメタノール1.23mLを含むヘキサン溶液20mLを加えて、更に15分間撹拌した。
【0108】
次に、重合反応溶液に、「イルガノックス1520L」8.40g、及び「プロセスNC-140」788gを加え、10分間撹拌して重合体溶液を得た。重合体溶液を常温で24時間放置して溶媒を蒸発させ、更に55℃で12時間減圧乾燥し、スチレン-ブタジエンゴムを含む組成物b4を得た。
【0109】
組成物b4を用いた以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物を調製し、加硫シートを作製した。
【0110】
添加剤のパラメータA、パラメータB及び分子量、ゴム組成物のムーニー粘度、並びに、加硫シートのtanδの評価結果を表2に示す。ここで、表2中のムーニー粘度及びtanδは比較例4を100とした相対値である。
【0111】
【0112】
<添加剤溶液Cの作製>
窒素雰囲気下、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド55.23mmol、テトラヒドロフラン184.1mLを反応器に投入し、撹拌しながら-78℃に冷却した。次にn-BuLiを27.62mmol含有するn-ヘキサン溶液を反応器に投入し、撹拌しながら、反応器内の温度を25℃に昇温し、同温度で混合物を1時間撹拌した。次いで、反応器内にメタノール1.12mLを添加し、反応器内の温度を常温に冷却し、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドのオリゴマーを含む添加剤溶液C179.1gを得た。
1H-NMRスペクトル分析の結果から、下記式(C)で表される化合物が含まれていることが確認された。1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドのオリゴマーの平均重合度は2.0、平均重合度から計算される平均分子量は362.41であった。
【化5】
【0113】
(実施例5)
ピペリジンを添加しないで重合反応溶液を作製し、重合反応溶液に添加剤溶液Aの代わりに、添加剤溶液Cを179.1g加えた以外は、実施例1と同様にして、組成物c1を得た。組成物c1を用いた以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物を調製し、加硫シートを作製した。
【0114】
<添加剤溶液Dの作製>
1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミドの代わりに(3-イソシアナトプロピル)トリメトキシシランを用いた以外は、添加剤溶液Cと同様にして、(3-イソシアナトプロピル)トリメトキシシランのオリゴマーを含む添加剤溶液Dを作製した。
1H-NMRスペクトル分析の結果から、下記式(D)で表される化合物が含まれることが確認された。(3-イソシアナトプロピル)トリメトキシシランのオリゴマーの平均重合度は2.2、平均の重合度から計算される平均分子量は501.55であった。
【化6】
【0115】
(実施例6)
ピペリジンを添加しないで重合反応溶液を作製し、重合反応溶液に添加剤溶液Aの代わりに、添加剤溶液Dを182.1g加えた以外は、実施例1と同様にして、組成物c2を得た。組成物c2を用いた以外は、実施例1と同様にして、ゴム組成物を調製し、加硫シートを作製した。
【0116】
(比較例5)
ピペリジンを添加しないで重合反応溶液を作製し、重合反応溶液に添加剤溶液Aを加えなかった以外は、実施例1と同様にして、組成物c3を得た。組成物c3を用いた以は、実施例1と同様にして、ゴム組成物を調製し、加硫シートを作製した。
【0117】
添加剤のパラメータA、パラメータB及び分子量、ゴム組成物のムーニー粘度、並びに、加硫シートのtanδの評価結果を表3に示す。ここで、表3中のムーニー粘度及びtanδは比較例5を100とした相対値である。
【0118】