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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】補助加圧ポンプ装置及び制御盤
(51)【国際特許分類】
   A62C 37/08 20060101AFI20231023BHJP
   A62C 35/60 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
A62C37/08
A62C35/60
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2019135973
(22)【出願日】2019-07-24
(65)【公開番号】P2021016748
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】230112025
【弁護士】
【氏名又は名称】小林 英了
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100106840
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 耕司
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】100167933
【弁理士】
【氏名又は名称】松野 知紘
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【弁理士】
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100184181
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 裕史
(72)【発明者】
【氏名】西 達哉
(72)【発明者】
【氏名】八木 薫
(72)【発明者】
【氏名】浜田 博和
(72)【発明者】
【氏名】小林 和貴
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-261671(JP,A)
【文献】特開2016-179058(JP,A)
【文献】特開2012-024504(JP,A)
【文献】国際公開第2014/068728(WO,A1)
【文献】特開2011-024792(JP,A)
【文献】特開2019-062961(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火ポンプによる所定の流水現象を検知して信号又は警報がオフ状態からオン状態になる流水検知装置が備えられた消火管内の圧力を保持するため、当該消火管内に流体を圧送する補助加圧ポンプ装置であって、
ポンプと、
前記ポンプの吐出量が増減される流水調整手段と、
を備え、
前記流水調整手段は、前記ポンプの吐出量を、前記流水検知装置の発する信号又は警報がオフ状態のまま維持される水量になるよう調整し、
前記ポンプを駆動する電動機を備え、
前記流水調整手段は、前記電動機の可変速手段であるインバータであり、
前記インバータを制御して前記電動機の回転速度を変更することで、前記ポンプの吐出量を前記流水検知装置の発する信号又は警報がオフ状態のまま維持される水量になるよう調整する制御部を備え、
前記流水検知装置は、当該流水検知装置の発する信号又は警報がオフ状態のまま維持される本体内の最大の流水量として定められた第1水量より多い水量の水が本体内を所定の遅延時間以上通過し続けると前記流水現象を検知したと判断し、
前記制御部は、
前記遅延時間未満の所定の第1時間を保持し、
前記ポンプの回転速度が連続で、前記第1水量以下となる前記電動機の回転速度である第1回転速度以上となる時間を計時し、当該計時が前記第1時間以上となったら前記電動機の回転速度を前記第1回転速度以下に変更し、
前記流水検知装置の前記遅延時間を受け付ける入力インタフェースを備え、
前記制御部は、前記入力インタフェースが受け付けた遅延時間に応じて、前記第1時間を決定する
補助加圧ポンプ装置。
【請求項2】
前記インバータが前記電動機の回転速度を変更することで、前記ポンプの吐出量が、前記流水検知装置の発する信号又は警報がオフ状態のまま維持される水量になるよう調整される、
請求項1に記載の補助加圧ポンプ装置。
【請求項3】
前記第1回転速度記憶するメモリを備え、
前記制御部は、前記メモリを参照して、前記電動機が当該第1回転速度に応じた回転速度にて運転されるよう前記インバータを制御する、
請求項2に記載の補助加圧ポンプ装置。
【請求項4】
前記流水検知装置の前記第1水量を受け付ける入力インタフェースを備え、
前記制御部は、前記入力インタフェースが受け付けた当該第1水量に応じて、前記第1回転速度を決定する
請求項3に記載の補助加圧ポンプ装置。
【請求項5】
前記電動機の回転速度が前記第1回転速度以下である、
請求項3または4に記載の補助加圧ポンプ装置。
【請求項6】
前記第1水量と前記電動機の回転速度との関係または揚程曲線と前記電動機の回転速度との関係が記憶されているメモリを更に備え、
前記制御部は、前記メモリを参照して、前記消火管に備えられた流水検知装置の前記第1水量に対応する前記第1回転速度を決定する
請求項3から5のいずれか一項に記載の補助加圧ポンプ装置。
【請求項7】
所定の補助加圧ポンプ始動圧以下の所定の全揚程における吐出量を第2水量とし、前記制御部は、前記メモリに記憶された複数の前記電動機の回転速度のうち、前記第2水量が前記第1水量以下という条件下で最大の回転速度を前記第1回転速度に決定する、
請求項6に記載の補助加圧ポンプ装置。
【請求項8】
前記メモリに記憶された複数の前記電動機の回転速度のうち、締切揚程が所定の補助加圧ポンプ停止圧よりも高いという条件下で最小の回転速度を前記第1回転速度に決定する、
請求項6に記載の補助加圧ポンプ装置。
【請求項9】
前記流水検知装置の種類と当該補助加圧ポンプ装置の全揚程がゼロの点で吐出量が前記第1水量以下である前記電動機の回転速度の関係、または当該第1水量と当該補助加圧ポンプ装置の全揚程がゼロの点で吐出量が前記第1水量以下である前記電動機の回転速度の関係が記憶されているメモリを更に備え、
前記制御部は、前記メモリを参照して、前記記憶された回転速度の中から、前記消火管に備えられた流水検知装置の種類もしくは前記第1水量に対応する前記電動機の回転速度を取得し、当該取得した回転速度を前記第1回転速度に決定する
請求項3から8のいずれか一項に記載の補助加圧ポンプ装置。
【請求項10】
消火ポンプによる所定の流水現象を検知して信号又は警報がオフ状態からオン状態になる流水検知装置が備えられた消火管内の圧力を保持するため、当該消火管内に流体を圧送する補助加圧ポンプ装置であって、
ポンプと、
前記ポンプの吐出量が増減される流水調整手段と、
を備え、
前記流水調整手段は、前記ポンプの吐出量を、前記流水検知装置の発する信号又は警報がオフ状態のまま維持される水量になるよう調整し、
前記ポンプを駆動する電動機を備え、
前記流水調整手段は、前記電動機の可変速手段であるインバータであり、
前記ポンプの吐出し側の圧力が補助加圧ポンプ始動圧力以下になると前記ポンプを始動し、前記ポンプの吐出し側の圧力が補助加圧ポンプ始動圧力よりも高い補助加圧ポンプ停止圧力以上になると前記ポンプを停止し、前記電動機の回転速度を第1回転速度以下に設定して始動した後、徐々に回転速度を上昇させるよう前記インバータを制御する制御部を備える
請求項3から9のいずれか一項に記載の補助加圧ポンプ装置。
【請求項11】
前記徐々に回転速度を上昇させるよう前記インバータを制御するとは、前記ポンプの運転時間をカウントし、当該運転時間のカウントに比例して前記インバータのパラメータである加速時間を短縮することである
請求項10に記載の補助加圧ポンプ装置。
【請求項12】
前記ポンプの運転中に前記制御部は、前記ポンプの吐出し側の圧力が所定の目標圧力に一致するように前記回転速度を制御し、
前記徐々に回転速度を上昇させるよう前記インバータを制御するとは、前記目標圧力とその時点における吐出し側圧力との偏差に比例して前記インバータのパラメータである加速時間を短縮することである
請求項10に記載の補助加圧ポンプ装置。
【請求項13】
前記ポンプの運転中に前記制御部は、前記ポンプの吐出し側の圧力が所定の目標圧力に一致するように前記回転速度を制御し、前記徐々に回転速度を上昇させるよう前記インバータを制御するとは、前記目標圧力を、前記補助加圧ポンプ始動圧力から前記補助加圧ポンプ停止圧力まで所定の時間で徐々に上昇させる、ことである
請求項10から12のいずれか一項に記載の補助加圧ポンプ装置。
【請求項14】
前記ポンプの運転中に前記制御部は、前記ポンプの吐出し側の圧力が所定の目標圧力に一致するように前記回転速度を制御し、
前記徐々に回転速度を上昇させるよう前記インバータを制御するとは、前記目標圧力を、前記ポンプの吐出し側の圧力が一つの目標圧力に到達したら次にそれよりも高い別の目標圧力を設定することを繰り返して前記補助加圧ポンプ始動圧力から前記補助加圧ポンプ停止圧力まで上昇させることである
請求項10から12のいずれか一項に記載の補助加圧ポンプ装置。
【請求項15】
前記ポンプの吐出量が、前記流水検知装置の発する信号又は警報がオフ状態のまま維持される水量になるよう調整された後に、前記流水調整手段が調整されることで当該水量よりも前記ポンプの吐出量を増加できる、
請求項1から14のいずれか一項に記載の補助加圧ポンプ装置。
【請求項16】
前記ポンプの吐出量が、前記流水検知装置の発する信号又は警報がオフ状態のまま維持される水量になるよう運転される自動運転モードと、
操作者によって当該水量よりも前記ポンプの吐出量を増加できる手動運転モードを有する、
請求項1から15のいずれか一項に記載の補助加圧ポンプ装置。
【請求項17】
消火ポンプによる所定の流水現象を検知して信号又は警報がオフ状態からオン状態になり且つ当該流水検知装置の発する信号又は警報がオフ状態のまま維持される本体内の最大の流水量として定められた第1水量より多い水量の水が本体内を所定の遅延時間以上通過し続けると前記流水現象を検知したと判断する流水検知装置が備えられた消火管内の圧力を保持するため、当該消火管内に流体を圧送するポンプを備える補助加圧ポンプ装置に用いられる制御盤であって、
前記ポンプを駆動する電動機の可変速手段であるインバータを制御して前記電動機の回転速度を変更することで、前記ポンプの吐出量を前記流水検知装置の発する信号又は警報がオフ状態のまま維持される水量になるよう調整する制御部を備え、
前記制御部は、
前記遅延時間未満の所定の第1時間を保持し、
前記ポンプの回転速度が連続で、前記第1水量以下となる前記電動機の回転速度である第1回転速度以上となる時間を計時し、当該計時が前記第1時間以上となったら前記電動機の回転速度を前記第1回転速度以下に変更し、
前記第1回転速度は、前記第1水量以下となる前記電動機の回転速度であり、
前記流水検知装置の前記遅延時間を受け付ける入力インタフェースを備え、
前記制御部は、前記入力インタフェースが受け付けた遅延時間に応じて、前記第1時間を決定する制御盤。
【請求項18】
消火ポンプによる所定の流水現象を検知して信号又は警報がオフ状態からオン状態になる流水検知装置が備えられた消火管内の圧力を保持するため、当該消火管内に流体を圧送するポンプを備える補助加圧ポンプ装置に用いられる制御盤であって、
前記ポンプを駆動する電動機の可変速手段であるインバータを制御して前記電動機の回転速度を変更することで、前記ポンプの吐出量を前記流水検知装置の発する信号又は警報がオフ状態のまま維持される水量になるよう調整する制御部を備え、
前記制御部は、前記ポンプの吐出し側の圧力が補助加圧ポンプ始動圧力以下になると前記ポンプを始動し、前記ポンプの吐出し側の圧力が補助加圧ポンプ始動圧力よりも高い補助加圧ポンプ停止圧力以上になると前記ポンプを停止し、前記電動機の回転速度を第1回転速度以下に設定して始動した後、徐々に回転速度を上昇させるよう前記インバータを制御し、前記第1回転速度は、当該流水検知装置の発する信号又は警報がオフ状態のまま維持される本体内の最大の流水量として定められた第1水量以下となる前記電動機の回転速度である制御盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助加圧ポンプ装置及び制御盤に関する。
【背景技術】
【0002】
スプリンクラー消火設備では、消火ポンプ装置からスプリンクラーヘッドまで配管される消火管は、通常スプリンクラーを使用しない間は水が所定の圧力で満たされており、当該消火管内の圧力を維持する為に圧力保持器である圧力タンクが設けられている。ところが、消火管内の水や圧力タンクの空気の自然減少、配管等の金属腐食等による漏水、熱膨張や空気だまりの影響などによる配管の漏れ、または配管施工不良による漏れなどにより、火災発生以外の原因で、消火管内の圧力が減少することがある。
【0003】
スプリンクラーを使用しない間の、上記火災発生以外の原因による消火管内の圧力低下分を補い、圧力維持をする目的で、特許文献1に示すように、消火ポンプよりも小出力の電動機で駆動可能な補助加圧ポンプ装置が、消火ポンプと別に設置されている。補助加圧ポンプ装置は、スプリンクラー用の消火管内の圧力を保つために、消火ポンプが起動する前に起動し、消火管を加圧するポンプである。
【0004】
一方、スプリンクラー設備等の消火設備などで使用される流水検知装置は、本体内の流水現象を自動的に検知して、信号又は警報を発する装置である。流水検知装置は、最低使用圧力における不作動水量(信号又は警報を発しない本体内の最大の流水量として定められたものをいう。以下同じ。)で流水開始しても信号又は警報を発しないように設計されており、例えば、当該不作動水量以上の水等が本体内を所定の遅延時間以上通過し続けると、作動して火災警報の発報を行うことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実用新案登録第3003174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
補助加圧ポンプが起動した際に、補助加圧ポンプによって吐き出された水によって、流水検知装置が意図せずに動作してしまうおそれがあり、当該流水検知装置の動作によって火災警報が誤発報され、例えば、事務所ビル等で火災発生の全館放送が入ってしまうといった問題がある。その一方で、一時的に補助加圧ポンプを、流水検知装置の不作動水量に関わらず大水量で運転したい場合もある。一例として、設置時やメンテナンス時に水が抜けた消火管や圧力タンクは再度水で満たし、更に所定の圧力まで加圧される(充水)必要があり、当該充水に補助加圧ポンプが用いられる場合がある。このような設置時やメンテナンス時で火災警報が誤発報されても問題ない場合、不作動水量に関わらず可能な限り大水量で運転し、当該充水時間を短縮したいという要望がある。また、流水検知装置の不作動水量や遅延時間は製品仕様によって様々あり、メンテナンス等で流水検知装置を交換した際に、交換した流水検知装置の仕様に合せて補助加圧ポンプの吐出量を増減したいといった要望もある。
【0007】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、流水検知装置が意図せずに動作するのを抑制可能としつつ、吐出量を増減可能とする補助加圧ポンプ装置及び制御盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様に係る補助加圧ポンプ装置は、消火ポンプによる所定の流水現象を検知して、信号又は警報がオフ状態からオン状態になる流水検知装置が備えられた消火管内の圧力を保持するため、当該消火管内に流体を圧送する補助加圧ポンプ装置であって、ポンプと、前記ポンプの吐出量が増減される流水調整手段を備え、前記流水調整手段は、前記ポンプの吐出量を、前記流水検知装置の発する信号又は警報がオフ状態のまま維持される水量になるよう調整する。
【0009】
この構成によれば、補助加圧ポンプの起動による流水検知装置の意図しない動作を抑制し、火災警報の誤発報を防ぐことができる。また、流水調整手段が調整されることで、補助加圧ポンプの吐出量が増減されるため、必要に応じて可能な限り大水量での運転もできる。また、補助加圧ポンプ装置の2次側の消火設備に定水量弁などを設けるのに比べて配管設備の簡略化もできる。
【0010】
本発明の第2の態様に係る補助加圧ポンプ装置は、第1の態様に係る補助加圧ポンプ装置であって、前記ポンプを駆動する電動機を備え、前記流水調整手段は、前記電動機の可変速手段であるインバータであり、前記インバータが前記電動機の回転速度を変更することで、前記ポンプの吐出量が、前記流水検知装置の発する信号又は警報がオフ状態のまま維持される水量になるよう調整される。
【0011】
この構成によれば、流水調整手段であるインバータによって、前記電動機の回転速度を通常動作回転速度から前記消火管に設けられた流水検知装置の不作動水量以下になる回転速度まで下げることができるため、補助加圧ポンプの起動による流水検知装置の意図しない動作を抑制し、火災警報の誤発報を防ぐことができる。また、インバータで補助加圧ポンプの電動機の回転速度を変更することで補助加圧ポンプの吐出量を増減することができる。また、インバータで補助加圧ポンプの電動機の回転速度を下げることで、電力消費を減少させ省エネルギーでの加圧運転を実現できると共に従来製品からの騒音、振動の低減の効果がある。
【0012】
本発明の第3の態様に係る補助加圧ポンプ装置は、第2の態様に係る補助加圧ポンプ装置であって、前記インバータを制御して前記電動機の回転速度を変更することで、前記ポンプの吐出量を、前記流水検知装置の発する信号又は警報がオフ状態のまま維持される水量になるよう調整する制御部を備え、前記流水検知装置の発する信号又は警報がオフ状態のまま維持される本体内の最大の流水量として定められた第1水量以下となる前記電動機の回転速度を第1回転速度として記憶するメモリを備え、前記制御部は、前記電動機が当該第1回転速度に応じた回転速度にて運転されるよう前記インバータを制御する。
【0013】
本発明の第4の態様に係る補助加圧ポンプ装置は、第3の態様に係る補助加圧ポンプ装置であって、前記流水検知装置の前記第1水量を受け付ける入力インタフェースを備え、前記制御部は、前記入力インタフェースが受け付けた当該第1水量に応じて、前記第1回転速度を決定する。
【0014】
本発明の第5の態様に係る補助加圧ポンプ装置は、第3または4のいずれかの態様に係る補助加圧ポンプ装置であって、前記電動機の回転速度が前記第1回転速度以下である。
【0015】
本発明の第6の態様に係る補助加圧ポンプ装置は、第3または4の態様に係る補助加圧ポンプ装置であって、前記流水検知装置は、前記第1水量より多い水量の水が本体内を所定の遅延時間以上通過し続けると前記流水現象を検知したと判断し、前記制御部は、前記遅延時間未満の所定の第1時間を有し、前記ポンプの回転速度が連続で前記第1回転速度以上となる時間を計時し、当該計時が前記第1時間以上となったら前記電動機の回転速度を前記第1回転速度以下に変更する。
【0016】
本発明の第7の態様に係る補助加圧ポンプ装置は、第6の態様に係る補助加圧ポンプ装置であって、前記流水検知装置の前記遅延時間を受け付ける入力インタフェースを備え、
前記制御部は、前記入力インタフェースが受け付けた遅延時間に応じて、前記第1時間を決定する。
【0017】
本発明の第8の態様に係る補助加圧ポンプ装置は、第3から7のいずれかの態様に係る補助加圧ポンプ装置であって、前記第1水量と前記電動機の回転速度との関係または揚程曲線と前記電動機の回転速度との関係が記憶されているメモリを更に備え、前記制御部は、前記メモリを参照して、前記消火管に備えられた流水検知装置の前記第1水量に対応する前記第1回転速度を決定する。
【0018】
本発明の第9の態様に係る補助加圧ポンプ装置は、第8の態様に係る補助加圧ポンプ装置であって、所定の補助加圧ポンプ始動圧以下の所定の全揚程における吐出量を第2水量とし、前記制御部は、前記メモリに記憶された複数の前記電動機の回転速度のうち、前記第2水量が前記第1水量以下という条件下で最大の回転速度を前記第1回転速度に決定する。
【0019】
本発明の第10の態様に係る補助加圧ポンプ装置は、第8の態様に係る補助加圧ポンプ装置であって、前記メモリに記憶された複数の前記電動機の回転速度のうち、締切揚程が所定の補助加圧ポンプ停止圧よりも高いという条件下で最小の回転速度を前記第1回転速度に決定する。
【0020】
本発明の第11の態様に係る補助加圧ポンプ装置は、第3から10のいずれかの態様に係る補助加圧ポンプ装置であって、前記流水検知装置の種類と当該補助加圧ポンプ装置の全揚程がゼロの点で吐出量が前記第1水量以下である前記電動機の回転速度の関係、または当該第1水量と当該補助加圧ポンプ装置の全揚程がゼロの点で吐出量が前記第1水量以下である前記電動機の回転速度の関係が記憶されているメモリを更に備え、前記制御部は、前記メモリを参照して、前記記憶された回転速度の中から、前記消火管に備えられた流水検知装置の種類もしくは前記第1水量に対応する前記電動機の回転速度を取得し、当該取得した回転速度を前記第1回転速度に決定する。
【0021】
本発明の第12の態様に係る補助加圧ポンプ装置は、第3から11のいずれかの態様に係る補助加圧ポンプ装置であって、前記制御部は、前記ポンプの吐出し側の圧力が補助加圧ポンプ始動圧力以下になると前記ポンプを始動し、前記ポンプの吐出し側の圧力が補助加圧ポンプ始動圧力よりも高い補助加圧ポンプ停止圧力以上になると前記ポンプを停止し、前記電動機の回転速度を前記第1回転速度以下に設定して始動した後、徐々に回転速度を上昇させるよう前記インバータを制御する。
【0022】
本発明の第13の態様に係る補助加圧ポンプ装置は、第12の態様に係る補助加圧ポンプ装置であって、前記徐々に回転速度を上昇させるよう前記インバータを制御するとは、前記ポンプの運転時間をカウントし、当該運転時間のカウントに比例して前記インバータのパラメータである加速時間を短縮することである。
【0023】
本発明の第14の態様に係る補助加圧ポンプ装置は、第12の態様に係る補助加圧ポンプ装置であって、前記ポンプの運転中に前記制御部は、前記ポンプの吐出し側の圧力が所定の目標圧力に一致するように前記回転速度を制御し、前記徐々に回転速度を上昇させるよう前記インバータを制御するとは、前記目標圧力とその時点における吐出し側圧力との偏差に比例して前記インバータのパラメータである加速時間を短縮することである。
【0024】
本発明の第15の態様に係る補助加圧ポンプ装置は、第12から14のいずれかの態様に係る補助加圧ポンプ装置であって、前記ポンプの運転中に前記制御部は、前記ポンプの吐出し側の圧力が所定の目標圧力に一致するように前記回転速度を制御し、前記徐々に回転速度を上昇させるよう前記インバータを制御するとは、前記目標圧力を、前記補助加圧ポンプ始動圧力から前記補助加圧ポンプ停止圧力まで所定の時間で徐々に上昇させる、ことである。
【0025】
本発明の第16の態様に係る補助加圧ポンプ装置は、第12から14のいずれかの態様に係る補助加圧ポンプ装置であって、前記ポンプの運転中に前記制御部は、前記ポンプの吐出し側の圧力が所定の目標圧力に一致するように前記回転速度を制御し、前記徐々に回転速度を上昇させるよう前記インバータを制御するとは、前記目標圧力を、前記ポンプの吐出し側の圧力が一つの目標圧力に到達したら次にそれよりも高い別の目標圧力を設定することを繰り返して前記補助加圧ポンプ始動圧力から前記補助加圧ポンプ停止圧力まで上昇させることである。
【0026】
本発明の第17の態様に係る補助加圧ポンプ装置は、第2から16のいずれかの態様に係る補助加圧ポンプ装置であって、前記ポンプの吐出量が、前記流水検知装置の発する信号又は警報がオフ状態のまま維持される水量になるよう調整された後に、前記流水調整手段が調整されることで当該水量よりも前記ポンプの吐出量を増加できる。
【0027】
本発明の第18の態様に係る補助加圧ポンプ装置は、第2から17のいずれかの態様に係る補助加圧ポンプ装置であって、前記ポンプの吐出量が、前記流水検知装置の発する信号又は警報がオフ状態のまま維持される水量になるよう運転される自動運転モードと、操作者によって当該水量よりも前記ポンプの吐出量を増加できる手動運転モードを有する。
【0028】
本発明の第19の態様に係る補助加圧ポンプ装置は、第1から18のいずれかの態様に係る補助加圧ポンプ装置であって、前記消火管内の圧力を検知する圧力検出装置を更に備え、前記流水調整手段は、前記ポンプの吐出し側に設けられた圧損素子であって、前記圧損素子は、前記圧力検出装置の一次側に着脱可能に設けられる。
【0029】
本発明の第20の態様に係る補助加圧ポンプ装置は、第1から19のいずれかの態様に係る補助加圧ポンプ装置であって、前記消火管内の圧力を検知する圧力検出装置を更に備え、前記流水調整手段は、前記ポンプの吐出し側に設けられたバルブであって、前記バルブは前記圧力検出装置の一次側に設けられる。
【0030】
本発明の第21の態様に係る補助加圧ポンプ装置は、第20の態様に係る補助加圧ポンプ装置であって、前記バルブは、前記制御部によって開度調整される。
【0031】
本発明の第22の態様に係る制御盤は、消火ポンプによる所定の流水現象を検知して信号又は警報がオフ状態からオン状態になる流水検知装置が備えられた消火管内の圧力を保持するため、当該消火管内に流体を圧送するポンプを備える補助加圧ポンプ装置において用いられる制御盤であって、前記ポンプを駆動する電動機の可変速手段であるインバータを制御して前記電動機の回転速度を変更することで、前記ポンプの吐出量を前記流水検知装置の発する信号又は警報がオフ状態のまま維持される水量になるよう調整する制御部を備える。
【0032】
この構成によれば、制御部が前記電動機の回転速度を通常動作回転速度から前記消火管に設けられた流水検知装置の不作動水量以下になる回転速度まで下げることができるので、補助加圧ポンプの起動による流水検知装置の意図しない動作を抑制し、火災警報の誤発報を防ぐことができる。また、流水調整手段によってポンプの吐出量が調整可能であるので、補助加圧ポンプの吐出量を増減可能とすることができる。
【0033】
また、補助加圧ポンプ装置の2次側の消火設備に定水量弁などを設けるのに比べて配管設備の簡略化もできる。また、補助加圧ポンプの回転速度を下げることによって、電力消費を減少させることができるので、省エネルギーでの加圧運転を実現できる。消火設備の流水検知装置の不作動水量以下になる回転速度まで下げて電動機を運転することで、従来製品からの騒音、振動の低減の効果がある。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、補助加圧ポンプの起動による流水検知装置の意図しない動作を抑制し、火災警報の誤発報を防ぐことができる。また、補助加圧ポンプ装置の2次側の消火設備に定水量弁などを設けて流量を絞るのに比べて、配管設備や配管作業の簡略化もできる。
【0035】
また、本発明の一態様によれば、インバータによって前記電動機の回転速度を通常動作回転速度から前記消火管に設けられた流水検知装置の不作動水量以下になる回転速度まで下げることによって、電力消費を減少させることができるので、省エネルギーでの加圧運転を実現できる。消火設備の流水検知装置の仕様によって異なる不作動水量に適した回転速度で電動機を運転することで、従来製品からの騒音、振動の低減、運転時間の短縮の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】第1の実施形態に係る消火ポンプシステムの概略構成図である。
図2】消火ポンプ始動圧力、補助加圧ポンプ始動圧力並びに停止圧力を説明するための模式図である。
図3】補助加圧ポンプ装置の全揚程と吐出量との関係を示すグラフの一例である。
図4】補助加圧ポンプ装置に記憶されているデータテーブルの一例である。
図5】例1及び例2の場合における補助加圧ポンプの吐出し側の圧力の時間変化の一例を示す模式図である。
図6】例3の場合における補助加圧ポンプの目標圧力の時間変化の一例を示す模式図である。
図7】補助加圧ポンプ装置の自動運転を示すフローチャートである。
図8】補助加圧ポンプ装置の自動運転モードと手動運転モードの状態還移図である。
図9】手動運転のフローチャートである。
図10】第2の実施形態に係る消火ポンプシステムの概略構成図である。
図11】第3の実施形態に係る消火ポンプシステムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、各実施形態について、図面を参照しながら説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0038】
各実施形態では、ポンプの吐出量を増減可能な流量調整手段を備える。例えば、補助加圧ポンプの起動による流水検知装置の意図しない動作を抑制するために、各実施形態で補助加圧ポンプ装置は、流水調整手段によってポンプの吐出量が、前記流水検知装置の発する信号又は警報がオフ状態で維持できる水量に制限されることもできるし、また、水量が制限された後でも必要に応じて可能な限り大水量とすべくポンプの吐出量を増加することもできる。また、流水検知装置の種類によって動作する条件は様々であるため、補助加圧ポンプ装置の吐出量が少なすぎると、所定の停止圧まで加圧するのに運転時間が長時間となったり発停頻度が増したりする、といった問題もある。そこで、以下に示す各実施形態の補助加圧ポンプ装置は、その吐出量を、使用する流水検知装置やタイミング等で、適した水量に調整可能な流水調整手段を備える。
【0039】
図1は、第1の実施形態に係る消火ポンプシステムの概略構成図である。図1に示すように、消火ポンプシステムは、消火設備の一種であって、消火ポンプ装置10と、放水器の一種であるスプリンクラー62、63と、消火ポンプ14からスプリンクラー62、63まで配管される消火管53と、当該消火管53の流水現象を自動的に検知して信号又は警報を発するための流水検知装置61と、補助加圧ポンプ装置1と、を備える。
【0040】
消火ポンプ装置10は、消火管53の圧力を保持するための圧力保持器である圧力タンク(圧力空気槽ともいう)12、火災発生時に消火用水を搬送するための消火ポンプ14、消火ポンプ14への逆流を防止する逆止弁20、仕切弁25、および、消火ポンプ14が始動する圧力を検出可能な圧力スイッチ46を備える。仕切弁25の2次側の消火ポンプ装置10の吐出し口には、複数のスプリンクラー62、63に給水するための消火管53が接続されている。また、消火管53には流水検知装置61が備えられている。
【0041】
スプリンクラー62、63は、消火ポンプの吐出し側に配管される消火管53に設けられ、火災の際に不図示のスプリンクラーヘッドが解放されて、消火対象へ放水する機器である。スプリンクラーヘッドが解放されると、消火ポンプ14が起動する。起動した消火ポンプ14は少なくとも所定の運転時間を経過するまでは運転を継続する。
【0042】
流水検知装置61は、例えば、湿式流水検知装置であって、所定の最低使用圧力における不作動水量(第1水量)で流水開始しても信号又は警報を発しないように設計されている。不作動水量は、信号又は警報を発しない本体内の最大の流水量として定められた水量であって、例えば、流水検知装置61は、当該不作動水量より多い水量の水等が本体内を所定の遅延時間以上通過し続けると、作動して信号又は警報の発報を行う。流水検知装置61の不作動水量並びに遅延時間は、流水検知装置61の製品仕様によって決められている。本明細書では、流水検知装置61が信号又は警報を発していない状態をオフ状態とし、流水検知装置61が信号又は警報を発した状態をオン状態という。つまり、流水検知装置61は、信号又は警報がオフ状態のまま維持される本体内の最大の流水量として定められた第1水量を有し、当該第1水量より多い水量の水等が本体内を所定の遅延時間以上通過し続けるといった所定の流水現象を検知すると、信号又は警報がオフ状態からオン状態になる。
【0043】
消火管53の圧力を保持するために消火管53内に流体を圧送する補助加圧ポンプ装置1は、ポンプ(補助加圧ポンプともいう)34、ポンプ34の駆動機である電動機33、電動機33の可変速手段であるインバータ32、操作者によって各種情報が入力される入力インタフェース31を備える運転パネル30、ポンプ34の呼び水並びに搬送液が貯水される呼水槽29、ポンプ34の吐出した水がポンプ34に逆流するのを防止する逆止弁48、補助加圧ポンプ装置1とその2次側を遮断できる仕切弁49、補助加圧ポンプ装置1の各機器を制御する制御部42、制御部42が収容され且つ運転パネル30が前面(手前側)に取り付けられる制御盤43、および、圧力検出器50を備える。図1に示すように、本実施形態の補助加圧ポンプ装置1は、ポンプ34、電動機33、インバータ32、逆止弁48、仕切弁49、および、圧力検出器50が呼水槽29の下に設置され、コンパクトに設置できる。なお、インバータ32は、制御盤43内に設置されてもよい。消火ポンプ装置10と補助加圧ポンプ装置1は、一例として同一のベース11上に配置されている。
【0044】
本実施形態では、ポンプ34の吐出し側の圧力を検知する圧力検出器50は、圧力センサ51および/または圧力スイッチ52を有する。圧力検出器50は、ポンプ34の吐出し口と連通する配管37から分岐された分岐配管38に設けられ、配管37内の圧力を検出して、検出した圧力を示す信号を制御部42へ出力する。この分岐配管38は、逆止弁48と仕切弁49の間の流路にある。
【0045】
圧力センサ51は、感圧素子で計測した圧力をアナログ信号に変換し制御部42へ出力する。圧力スイッチ52は、ポンプ34の吐出し側の圧力が、所定の圧力以上になればオン信号を制御部42へ出力し、所定の圧力未満になればオフ信号を制御部42へ出力する。なお、圧力検出器50は、圧力センサ51のみ、もしくは圧力スイッチ52のみの場合もある。また、圧力スイッチ52は、ポンプ34の停止圧力と始動圧力をそれぞれ検出する等で複数設けられてもよい。
【0046】
制御部42は、CPU(Central Processing Unit)を中心とした回路基板、又はリレーシーケンス等にて構成される回路などを採用することができる。図1に示すように、制御部42は、メモリ44と、不図示の演算部と、不図示のI/O部と、を備える。制御部42の演算部は、メモリ44に記憶されているプログラム及び各種データ、並びにI/O部から入力される信号に基づいて、ポンプ34を運転するための各種データの設定、計時、及び演算等を行う。
【0047】
メモリ44は、ROM、HDD、EEPROM、FeRAM、及び、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ、RAM等の揮発性メモリが使用される。メモリ44には、制御プログラム、各種データ、例えば演算部における演算結果のデータ(運転時間、積算値等)、圧力値(吐出し圧力)、自動運転制御(ポンプ34の自動運転)にて用いられるデータ(停止圧力、始動圧力(始動圧))、入力インタフェース31を通じて入力されたデータ、及びI/O部を通じて入力される、またはI/O部を通じて出力されるデータ等が記憶される。
【0048】
I/O部は、ポートや通信等で使用される。I/O部は、インバータ32、圧力検出器50の信号を取得する回路を有し、取得した信号情報を演算部に送る。また、I/O部とインバータ32は、RS422,RS232C,RS485等の不図示のシリアル通信接続線を通じて互いに接続される。I/O部からインバータ32へ、各種設定値、モータ33の回転速度に関する制御指令としての周波数指令値、発停信号(運転・停止信号)などの制御信号が送られ、インバータ32からI/O部へ、実際の周波数値や電流値等の運転状況(運転状態)が逐次送られる。なお、I/O部とインバータ32との間で送受信される制御信号は、アナログ信号および/またはデジタル信号を用いることができる。例えば、回転周波数等にはアナログ信号を用い、運転停止指令等にはデジタル信号を用いることができる。また、I/O部と入力インタフェース31は、RS422,RS232C,RS485等の不図示のシリアル通信接続線を通じて互いに接続される。入力インタフェース31からI/O部へ、各種設定値、各種指令値などが送られ、I/O部から入力インタフェース31へは、インバータ32から受信した周波数値や電流値等の運転状況(運転状態)や吐出し圧力が逐次送られる。なお、I/O部と通信にて送受信される制御信号は、アナログ信号および/またはデジタル信号を用いることができる。
【0049】
運転パネル30は、CPU(Central Processing Unit)を中心としたマイクロプロセッサを構成する回路基板、又は専用のリレーシーケンス回路などを採用することができる。運転パネル30は、不図示の記憶部と、不図示の演算部と、不図示のI/O部と、不図示の表示部と、入力インタフェース31と、を備えている。運転パネル30の演算部としては、例えばCPUが使用される。演算部は、記憶部に格納されているプログラム及び各種データに基づいて、補助加圧ポンプ装置1の状態表示や操作のための処理などを実行する。入力インタフェース31は、例えば、タッチパネル、入力ボタン、スイッチなどで構成され、操作者からの入力を受け付け、当該入力は運転パネル30の演算部、I/O部を介して制御部42へ送られる。また、入力インタフェース31は外部機器(例えばパソコン等の汎用的な情報端末や専用端末)とネットワークや通信等を介して接続され、当該外部機器による入力を受け付けてもよい。
【0050】
図2は、消火ポンプ始動圧力、補助加圧ポンプ始動圧力並びに停止圧力を説明するための模式図である。図2は、横軸が吐出量、縦軸が全揚程を示している。図2の直線L1、L2に示すように、補助加圧ポンプ停止圧力H2は、消火ポンプ14の締切全揚程H1より低い圧力に設定されている。具体的には、補助加圧ポンプ装置1のポンプ34の停止圧力である補助加圧ポンプ停止圧力H2は、消火ポンプ14の始動時にポンプ34を停止させる目的及び配管53等の耐圧を考慮し、消火ポンプ14の締切全揚程H1より所定の圧力差分だけ低く設定される。また、図2の直線L3、L4に示すように、補助加圧ポンプ始動圧力H3は、消火ポンプ始動圧力H4より高い圧力に設定されている。具体的には、補助加圧ポンプ装置1のポンプ34の始動圧力である補助加圧ポンプ始動圧力H3は、消火ポンプ14の始動圧力H4より所定の圧力差分だけ高く設定される。これにより、消火管53の圧力が低下した場合に、消火ポンプ14が始動する前に、ポンプ34を始動させることができ、更に、配管53等の耐圧の範囲内でポンプ34が運転し、配管53内の圧力が上昇したらポンプ34を停止させることができる。
【0051】
また、曲線W11は消火ポンプ装置10の吐出量と全揚程の関係を示す揚程曲線であり、曲線W12は補助加圧ポンプ装置1の吐出量と全揚程の関係を示す揚程曲線であり、同じ圧力値で比較した場合、消火ポンプ装置10に比べて、補助加圧ポンプ装置1の吐出量が少ない。消火ポンプ14に比べて小出力の電動機で駆動可能なポンプ34を備えた補助加圧ポンプ装置1を設置することで、合理的に消火管53内の圧力を保持することができる。また、ポンプ34は、例えば、非容積型のポンプに比べて小出力の電動機で駆動可能な容積型のプランジャーポンプである。
【0052】
火災が発生しスプリンクラー62、63の止栓が溶けて開放されると、先ずは圧力タンク12にて加圧されている水がスプリンクラー62、63に供給され、当該スプリンクラー62、63から水が噴出される。この水の噴出により消火管53及び圧力タンク12内の圧力が予め設定された消火ポンプ始動圧力H4以下に低下すると、圧力低下を検出した圧力スイッチ46が動作(ON)し、不図示の消火ポンプ用制御盤は、消火ポンプ14を始動し、当該消火ポンプ14は消火水槽(図示せず)の水を加圧して消火管53内へ連続的に供給する。
【0053】
消火管53及び圧力タンク12の内は通常時、つまりスプリンクラー62、63での放水がない間、所定の圧力にて加圧された水で満たされており、当該所定圧力を維持する為に圧力タンク12内には、空気が封入されている。ところで、火災発生以外の原因でも、消火管53や圧力タンク12内の水や空気が自然と抜けて、消火管53内の圧力が徐々に減少する。補助加圧ポンプ装置1の自動運転では、消火管53内の圧力が徐々に減少して、消火管53ならびに圧力タンク12内の圧力が補助加圧ポンプ始動圧力H3以下に低下すると、圧力センサ51からの補助加圧ポンプ始動圧力H3以下の圧力検出もしくは圧力スイッチ52の補助加圧ポンプ始動圧力H3以下の検知信号を取得した制御部42は、補助加圧ポンプ装置1のポンプ34を始動すべくインバータ32に運転信号を送信し、当該ポンプ34の運転によって吐出し口から吐き出された水は、配管37と連通する消火管53内に送られる。それとともに、消火管53と連通する圧力タンク配管27を通して、圧力タンク12に送られ、消火ポンプ14が始動することなく消火管53内及び圧力タンク12の圧力を補助加圧ポンプ停止圧力H2まで回復させるようになっている。
【0054】
即ち、補助加圧ポンプ装置1は、以下の(1)~(3)のステップにてポンプ34の自動運転を行う。
(1)制御部42は、消火管53内及び圧力タンク12内の圧力が補助加圧ポンプ始動圧力H3以下に低下すると、始動条件を満たしたと判断してポンプ34を始動する。
(2)始動したポンプ34は、流水検知装置61がオフ状態のまま維持されるよう運転される。
(3)制御部42は、消火管53内及び圧力タンク12の圧力が補助加圧ポンプ停止圧力H2以上に上昇すると、停止条件を満たしたと判断してポンプ34を停止する。
【0055】
このように、補助加圧ポンプ装置1は、スプリンクラー62、63が作動していない通常時に、消火管53内の圧力を補助加圧ポンプ始動圧力H3以上且つ消火ポンプ14の締切全揚程H1未満(もしくは補助加圧ポンプ停止圧力H2以下)に保持するため、ポンプ34の自動運転にて消火管53内に流体を圧送する。
【0056】
図3は、補助加圧ポンプ装置の全揚程と吐出量との関係を示すグラフの一例である。図3の揚程曲線W1は、電動機33の回転速度が所定の回転速度F1(例えば、最高回転速度)のときの補助加圧ポンプ装置1の全揚程と吐出量との関係を示す揚程曲線の一例である。同様に、揚程曲線W1、W2、W3、W4、W5、W6は、電動機33の回転速度が所定の回転速度F1、F2、F3、F4、F5、F6(F1>F2>F3>F4>F5>F6)のときの補助加圧ポンプ装置1の全揚程Hと吐出量Qとの関係を示す揚程曲線の一例である。上述したように、補助加圧ポンプ始動圧力H3と補助加圧ポンプ停止圧力H2は、消火ポンプ14の始動圧H4と消火ポンプ締切全揚程H1によって決定される。図3の補助加圧ポンプ始動圧力H3から補助加圧ポンプ停止圧力H2の範囲で、回転速度F1で補助加圧ポンプ装置のポンプ34を運転した場合、揚程曲線の吐出量はQn2(例えば、Qn2=20[L/min])を超える。このため流水検知装置61の不作動水量がQn2の場合には、電動機33の回転速度が回転速度F1でポンプ34を運転すると、流水検知装置61が動作してオン状態となってしまうおそれがある。
【0057】
そこで、インバータ32にて電動機33の回転速度をF1からF2に下げて、補助加圧ポンプ装置1の全揚程と吐出し流量との関係を曲線W2のようにすれば、曲線W2は全揚程がゼロでも流量がQn2以下であるため、補助加圧ポンプ装置の2次側の配管の破損等で大量の漏水がある場合であっても、揚程曲線W2上の吐出量は不作動水量であるQn2以下に抑えることができる。
【0058】
同様に、例えば流水検知装置61の不作動水量がQn3、Qn4、Qn5の場合(Qn2>Qn3>Qn4>Qn5)には、電動機33の回転速度(もしくは周波数)を更にF3、F4、F5と下げて、補助加圧ポンプ装置1の全揚程と吐出量との関係をそれぞれ揚程曲線W3、W4、W5のようにすれば、ポンプの吐出量をそれぞれQn3、Qn4、Qn5[L/min]以下に抑えることができる。
【0059】
なお、流水検知装置61の不作動水量がQn1の場合に、ポンプ34を揚程曲線W5の回転速度F5にて運転しても回転速度F1で運転するのと同様に流水検知装置61はオフ状態のまま維持される。しかしながら、通常、スプリンクラー62、63は閉止されており補助加圧ポンプ装置1のポンプ34は2次側がほぼ締め切られた状態で運転されるため、回転速度F5での運転は、回転速度F1での運転と比べて、補助加圧ポンプ停止圧力H2まで到達するのに時間を要したり、加圧が十分になされずに発停を繰り返したりするおそれがある。よって、電動機33は流水検知装置61がオフ状態のまま維持されるという条件下で最大の回転速度にて運転されるのがよい。仮に電動機の回転速度がF1~F6まで離散的に設定できるとした場合、電動機の回転速度F1~F6のうち、流水検知装置61がオフ状態のまま維持されるという条件下で最大の回転速度を第1回転速度に決定するとよい。
【0060】
本実施形態では、流水検知装置61の不作動水量がQn1の場合に、電動機33は流水検知装置61がオフ状態のまま維持されるという条件下で最大の回転速度F1にて運転される。その一方で、設置状況等によっては、流水検知装置61の不作動水量がQn1の場合に、高速で顕著になる騒音を軽減するため、回転速度を可能な限り低速で電動機33を運転したい場合がある。図3に示す揚程曲線W1~W6に対応する回転速度をF1~F6とすると、仮に電動機の回転速度がF1~F6まで離散的に設定できるとした場合、電動機の回転速度F1~F6のうち、揚程曲線W1~W6における流量ゼロのポイントの全揚程である締切揚程が補助加圧ポンプ停止圧力H2よりも高いという条件下で最小の回転速度F5を第1回転速度に決定するとよい。これは、ポンプ34を揚程曲線W6に相当する回転速度F6にて運転すると、締切揚程が補助加圧ポンプ停止圧力H2まで到達しないので採用できないが、回転速度F6より一段高い回転速度F5(揚程曲線W5に相当する)にてポンプ34を運転すると、締切揚程が補助加圧ポンプ停止圧力H2を超えるので採用できるためである。
【0061】
図4は、補助加圧ポンプ装置に記憶されているデータテーブルの一例である。図4に示すように、流水検知装置の不作動水量と、当該不作動水量の場合の補助加圧ポンプ装置の吐出量の関係を示すデータテーブルT1の一例として、メモリ44に、消火ポンプシステムにて使用可能な流水検知装置の機種(種類)と、当該流水検知装置の不作動水量(不作動水量)と、電動機33の回転速度であって全揚程が0の時に当該不作動水量以下という条件下で最大の回転速度(回転速度)との組が少なくとも一つ記憶されている。また、図4に示すように、流水検知装置が発する信号又は警報がオン状態となる条件のひとつである遅延時間も記憶されるとよい。更に、他に該当する条件があれば当該データテーブルT1に追加されてもよい。
【0062】
なお、上記では、電動機33の回転速度であって全揚程が0の時に当該不作動水量以下という条件下で最大の回転速度が記憶されているとしたが、必ずしも当該条件下で最大の回転速度に限らず、ポンプ34の吐出し量が当該不作動水量以下となる回転速度であればよい。
【0063】
あるいは、補助加圧ポンプ始動圧力H3以下になる時間が上記遅延時間未満にするよう制御して流水検知装置61をオン状態にならないようにする場合には、全揚程が0の時に当該不作動水量以下となる回転速度に限らず、全揚程が補助加圧ポンプ始動圧力H3の時に当該不作動水量以下となる回転速度というように回転速度の条件を緩和してもよい。その場合には、メモリ44には、流水検知装置の種類(例えば機種)と、当該種類における不作動水量、上記遅延時間、更に、回転速度として全揚程が補助加圧ポンプ始動圧力H3の時に当該不作動水量以下となる回転速度の関係が記憶されていてもよい。
【0064】
なお、一般的にポンプの吐出量はポンプの回転速度に比例するから、メモリ44には、流水検知装置の不作動水量と補助加圧ポンプ装置1の回転速度の関係の一例として、当該回転速度と流水検知装置の不作動水量との関係式が記憶されていてもよい。また、メモリ44には、補助加圧ポンプ装置1の機種毎に実験等によって取得した流水検知装置の不作動水量と、ポンプ34の吐出量が第1水量以下となる補助加圧ポンプ装置1の回転速度の関係を記憶してもよい。
【0065】
次に、制御部42が実行するポンプ34の吐出し流量の増減制御に関して図3又は図4を用いて説明する。
【0066】
本実施形態では、ポンプ34の運転中は流水検知装置61が発する信号又は警報がオフ状態のまま維持されるよう、制御部42は、ポンプ34が第1水量以下となる電動機33の回転速度を第1回転速度として記憶し、ポンプ34の運転中に制御部42は、電動機33が当該第1回転速度以下の回転速度となるようインバータ32に指令周波数を送信する。
【0067】
あるいは一実施形態では、制御部42は、ポンプ34の運転中は流水検知装置61が発する信号又は警報がオフ状態のまま維持されるように、電動機33の回転速度が流水検知装置61の第1水量に対応した第1回転速度以上で上記遅延時間以上連続運転しないようにインバータ32に指令周波数を送信する。つまり、制御部42は、ポンプ34が第1回転速度以上で運転した時間をカウントし、当該カウントが該当する遅延時間以上となったら電動機33の回転速度を第1回転速度未満の所定の回転速度に下げるべく、インバータ32に指令周波数を送信する。これにより、第1回転速度以下の回転速度にて運転するのに比べてポンプ34の運転時間を短縮できる。
【0068】
本実施形態では、一例として入力インタフェース31が、流水検知装置61の不作動水量と上記遅延時間の設定入力を受け付ける。そして制御部42は、ポンプ34の吐出し側の水量が流水検知装置61の不作動水量以上で上記遅延時間を経過して流水検知装置61がON状態とならないよう、先述の第1回転速度に基づいて、電動機33の回転速度を制御する。
【0069】
この構成により、流水検知装置61として用いられる流水検知装置の種類によって不作動水量は様々であっても、対象の消火設備に設けられた流水検知装置61の不作動水量や上記遅延時間を入力することによって、ポンプ34は運転中に流水検知装置61が発する信号又は警報がオフ状態のまま維持される水量に調整される。また、本実施形態の補助加圧ポンプ装置1は、メンテナンス等で不作動水量や上記遅延時間等の仕様が異なる流水検知装置に交換された場合に、当該仕様に適したポンプ34の吐出量を調整できる。例えば、不作動水量が多い流水検知装置に交換された場合に、本実施形態の補助加圧ポンプ装置1は、不作動水量に合わせて交換前より大きい第1回転速度を決定し、当該第1回転速度に基づいてポンプ34を運転することで、流水検知装置が交換される前よりも吐出し水量が増え運転時間を短縮できる。
【0070】
流水検知装置61の仕様に合せて第1回転速度を決定する具体的な処理の一例について説明する。制御部42が図3に示す複数の電動機33の回転速度、ポンプ32の全揚程並びに吐出量及びその相互関係である揚程曲線(例えば、W1~W5)または、図3に示す複数の揚程曲線(例えば、W1~W5)を算出する計算式等が記憶されているメモリ44を備える。制御部42は、当該メモリ44を参照して、流水検知装置61の不作動水量に対応する回転速度を決定するとよい。また、本実施形態では一例として、補助加圧ポンプ始動圧力H3以下の全揚程ゼロにおけるポイントP01~P05(図3参照)の吐出量Qn1~Qn5(図3参照)を第2水量に設定し得る。この場合、制御部42は、メモリ44に記憶された複数の回転速度(F1~F5)のうち、全揚程ゼロにおける吐出量である第2水量が不作動水量以下という条件下で最大の回転速度を第1回転速度に決定する。具体的には例えば不作動水量(第1水量)が水量Qn4より大きく水量Qn3より小さい場合において、図4を参照してメモリ44に記憶された複数の回転速度(F1~F5)のうち第2水量が不作動水量以下という条件下で最大の回転速度は、水量Qn4に対応する回転速度F4であるので、制御部42は、回転速度F4を第1回転速度に決定してもよい。
【0071】
あるいは、一実施形態では、ポンプ34は2次側がほぼ締め切られた状態で運転されるため、補助加圧ポンプ始動圧力H3におけるポイントPs1~Ps5(図3参照)の吐出量Q1~Q5を第2水量に設定し得る。この場合、メモリ44には、揚程曲線W1~W5と、それに対応する電動機の回転速度F1~F5が関連付けられて記憶されていてもよい。そして、制御部42は、メモリ44に記憶された複数の回転速度(F1~F5)のうち、補助加圧ポンプ始動圧力H3における吐出量である第2水量が不作動水量以下という条件下で最大の回転速度を第1回転速度に決定する。具体的には例えば不作動水量(第1水量)が水量Qn4の場合において、図3を参照して、メモリ44に記憶された複数の回転速度(F1~F5)のうち補助加圧ポンプ始動圧力H3における吐出量が水量Qn4以下という条件下で最大の回転速度は、図3の揚程曲線W4に対応する回転速度F4であるので、制御部42は、回転速度F4を第1回転速度に決定してもよい。
【0072】
以上をまとめると、補助加圧ポンプ始動圧力H3以下の所定の全揚程における吐出量を第2水量とし、制御部42は、当該第2水量が不作動水量(第1水量)以下という条件下で、選択可能な最大の回転速度(例えば、メモリ44に記憶された揚程曲線W1~W5の中で第2水量が不作動水量以下の最大の回転速度)を第1回転速度に決定する。なお、メモリ44に記憶される揚程曲線(例えば、W1~W5)としては、補助加圧ポンプ装置の機種毎の実験結果等による代表性能が入力インタフェース31等を介して入力されてもよい。
【0073】
流水検知装置61の仕様に合せて電動機33の回転速度を決定する具体的な処理の別の一例について説明する。図4に示すように、本実施形態では一例として、メモリ44には、流水検知装置61として用いることができる流水検知装置の種類を示す機種(種類)、不作動水量Qn(不作動水量)、流水検知装置が発する信号又は警報がオン状態となる条件のひとつである遅延時間T(遅延時間)、および当該補助加圧ポンプ装置の全揚程がゼロの点で吐出量が第1水量以下である電動機33の回転速度R1(回転速度)の関係がデータテーブルT1として記憶されている。データテーブルT1は、流水検知装置61として用いることができる流水検知装置の情報を複数記憶し、入力インタフェース31を介して、当該記憶された流水検知装置の情報を追加、変更、削除される。また、入力インタフェース31は、消火管53に設けられている流水検知装置61の不作動水量もしくは種類を受け付け、制御部42は、メモリ44のデータテーブルT1を参照して、入力インタフェース31が受け付けた流水検知装置61の不作動水量もしくは種類に対応する回転速度を、ポンプ34の第1回転速度に決定する。本実施形態では、制御部42は、メモリ44を参照して、データテーブルT1に記憶された複数の回転速度の中から、消火管53に備えられた流水検知装置61の種類に対応する回転速度を取得し、当該取得した回転速度を第1回転速度に決定する。また、一実施形態として制御部42は、メモリ44を参照して、データテーブルT1に記憶された複数の回転速度R1の中から、消火管53に備えられた流水検知装置61の第1水量に対応する回転速度を取得し、当該取得した回転速度を第1回転速度に決定してもよい。
【0074】
この構成により、本実施形態の補助加圧ポンプ装置1は、電動機33の回転速度を第1回転速度以下の回転速度に変更して補助加圧ポンプ装置が吐き出す水量を制御する。また、一実施形態の補助加圧ポンプ装置1は、制御部42が上記遅延時間未満の第1時間Tを有し、電動機33の回転速度が連続で第1回転速度以上となる時間を計時し、当該計時が第1時間T以上となったら電動機33の回転速度を第1回転速度以下に変更して補助加圧ポンプ装置1が吐き出す水量を制御する。
【0075】
なお、メモリ44には、上記のデータテーブルT1に代えて、流水検知装置61として用いることができる少なくともひとつの流水検知装置の種類と、当該補助加圧ポンプ装置の全揚程がゼロの点で吐出量が第1水量以下である電動機33の回転速度R1(例えば第1回転速度)の関係、または当該第1水量と当該補助加圧ポンプ装置の全揚程がゼロの点で吐出量が第1水量以下である前記電動機の回転速度の関係が記憶されるデータテーブルを有してもよい。この場合、入力インタフェース31は、流水検知装置61の種類を受け付けてもよく、制御部42は、メモリ44のデータテーブルを参照して、入力インタフェース31が受け付けた流水検知装置61の種類に対応する回転速度を読み出し、この読み出した回転速度以下の回転速度を、電動機33の回転速度に決定してもよい。あるいは、入力インタフェース31は、流水検知装置61の第1水量を受け付けてもよく、制御部42は、メモリ44のデータテーブルを参照して、入力インタフェース31が受け付けた流水検知装置61の第1水量に対応する回転速度を読み出し、この読み出した回転速度以下の回転速度を、電動機33の回転速度に決定してもよい。
【0076】
この構成により、制御部42は、ポンプ34の運転中に補助加圧ポンプ装置1が吐き出す水量を、流水検知装置61の発する信号又は警報をオフ状態のまま維持される水量に調整できる。また、入力インタフェース31を介して、データテーブルに記憶された流水検知装置の情報を追加、変更、削除できるため、様々な流水検知装置が採用できる。
【0077】
あるいは、メモリ44には、流水検知装置61として用いることができる少なくともひとつの流水検知装置の種類と当該流水検知装置の不作動水量との関係、及び当該流水検知装置の不作動水量と当該補助加圧ポンプ装置の全揚程がゼロの点で吐出量が不作動水量以下である電動機33の回転速度R1(例えば第1回転速度)との関係がデータテーブルとして記憶されていてもよい。この場合、入力インタフェース31は、流水検知装置61の種類を受け付け、制御部42は、メモリ44のデータテーブルを参照して、入力インタフェース31が受け付けた流水検知装置61の種類に対応する当該流水検知装置の不作動水量を読み出し、更にメモリ44を参照して、この読み出した不作動水量に対応する回転速度を読み出し、この読み出した回転速度を、電動機33の回転速度に決定してもよい。このように、制御部42は、メモリ44のデータテーブルを参照して、入力インタフェース31が受け付けた流水検知装置の種類に対応する当該流水検知装置の仕様に適した回転速度を、電動機33の第1回転速度に決定してもよい。
【0078】
この構成により、制御部42は、補助加圧ポンプ装置1が吐き出す水量が流水検知装置61の不作動水量以下の水量になる回転速度を決定し、当該回転速度に基づいて電動機33の回転速度が制御されることで、流水検知装置61の信号又は警報がオフ状態のまま維持される。また、入力インタフェース31を介して、データテーブルに記憶された流水検知装置の情報を追加、変更、削除できるため、様々な流水検知装置が採用できる。
【0079】
<比較例の補助加圧ポンプ(固定速)の運転方法>
本実施形態に係る補助加圧ポンプの運転方法の理解を促進するために、まずは比較例の補助加圧ポンプ(固定速)の運転方法について説明する。
【0080】
比較例では、補助加圧ポンプの駆動機の可変速手段を有しておらず、吐出圧が所定の始動圧以下となったら、流水検知装置61の不作動水量に関わらずポンプを所定の固定速で起動し、吐出し圧が所定の停止圧以上になったら、ポンプを停止する。ポンプ起動時または起動直後は、吐出し配管内の圧力が最も低く、配管抵抗が最も小さいため流量が最も多くなる。このときに流水検知装置61が意図せずに動作してオフ状態からオン状態に変化する(誤作動するともいう)可能性が高い。そこで、比較例の補助加圧ポンプ装置が用いられた消火システムは、流水検知装置61が誤作動した場合、補助加圧ポンプ装置の2次側の消火設備に定水量弁などを設けて、流水検知装置61への流水が不作動水量未満となるように調整される。ここで、比較例の補助加圧ポンプ装置が用いられた消火システムでも、設置時やメンテナンス時に水が抜けた消火管53や圧力タンク12に送水して所定の圧力まで加圧する充水が補助加圧ポンプ装置にて行われる場合がある。流水検知装置61への流水が不作動水量未満となるように定水量弁によって調整された後に補助加圧ポンプで消火管や圧力タンクの充水を行う場合、流水検知装置61の誤動作が問題なくても、不作動水量未満に調整された水量にて長時間かけて行われることがある。これは、比較例の固定速の補助加圧ポンプでは、水量を増減するための定水量弁の配管や再調整等の作業が困難であることに起因する。
【0081】
<本実施形態にかかる補助加圧ポンプ(可変速)の運転方法>
続いて、本実施形態にかかる補助加圧ポンプ(可変速)の自動運転における運転方法の例について説明する。本実施形態では、電動機33の可変速手段であるインバータを備えているため、制御部42は、ポンプ34の運転中に電動機33の回転速度を変更することができる。ポンプ34の自動運転において、制御部42は、始動条件を満たした(ポンプ34の吐出し側の圧力が補助加圧ポンプ始動圧力H3以下になった)と判断した場合、電動機33の回転速度を第1回転速度以下の所定の回転速度に固定して運転してもよいし、以下に示すように、電動機33の回転速度を流水検知装置61の第1水量以下になる第1回転速度以下の所定の回転速度で起動した後、徐々に回転速度を上昇させるようインバータ32を制御してもよい。そして、制御部42は、停止条件を満たした(ポンプ34の吐出し側の圧力が補助加圧ポンプ補助加圧ポンプ停止圧力H2以上になった)と判断したら、ポンプ34を停止すべくインバータ32を制御する。
【0082】
流水検知装置61が誤作動する可能性が高いポンプ34の起動時にはモータ33の回転速度を制限し吐出量を抑え、その後、徐々に回転速度を上げて吐出量を増すことによって、第1回転速度以下の所定の回転速度のみで運転する場合に比べてポンプ34の吐出し側の圧力(もしくは消火管53の圧力)が補助加圧ポンプ停止圧力H2に到達するまでの時間を短縮することができる。つまり、ポンプ34の動作時間を短縮することができ、ポンプ34の動作に伴う騒音及び振動の時間を短縮することができる。従って、流水検知装置61が意図せずに動作するのを回避しつつ、ポンプ34の動作に伴う騒音及び振動の時間を短縮することができる。また、ポンプ34は、2次側の給水栓が大気解放されたことによる圧力低下にて始動する給水装置等と異なり、ポンプ34は2次側がほぼ締め切られた状態で運転される。このため、始動時にモータ33の回転速度を制限して吐出量を抑えても2次側の機器に影響しない。
【0083】
続いて、上述した徐々に回転速度を上昇させる具体例を以下に四つ説明する。図5は、例1及び例2の場合における補助加圧ポンプの吐出し側の圧力の時間変化の一例を示す模式図である。図5の縦軸が圧力で横軸が経過時間である。図5の曲線W21は比較例の固定速でのポンプ34の吐出し側の圧力の時間変化の一例であり、図5の曲線W22は、例1または例2のポンプ34の吐出し側の圧力の時間変化の一例である。
【0084】
<例1:インバータによる可変速制御1>
前記徐々に回転速度を上昇させるよう前記インバータを制御するとは、ポンプ34の始動後の運転時間をカウントし、当該運転時間のカウントに比例してインバータ32の加速時間を短縮することである。具体的には、インバータ32は、パラメータとして加速時間を有する。加速時間は周波数をゼロから所定の最高周波数まで加速する時間が設定され、インバータ32は周波数を増加するときには、当該加速時間の傾きに従って加速する。例えば、制御部42は、始動時にはインバータ32の加速時間を基準時間(例えば最長時間)に設定し、運転時間が長くなるにしたがって、徐々に加速時間を短縮する。この方法であれば、運転時間が長くなるに従って、制御部42の指令周波数に対するインバータ32の出力周波数の追従性が向上する。ポンプ34の吐出し側の圧力は始動圧と停止圧のみが検知されればよく、ポンプ34の吐出し側の圧力を検知するのは、圧力センサ51であっても圧力スイッチ52であってもよい。図5の曲線W22に示すように、固定速または/および加速時間が一定の場合(曲線W21)に比べて、運転時間が長くなるにしたがって、徐々に加速時間を短縮することによって、補助加圧ポンプ停止圧力H2に到達するまでの時間を短縮することができる。
【0085】
<例2:インバータによる可変速制御2>
徐々に回転速度を上昇させるようインバータ32を制御するとは、始動時にはインバータ32の加速時間を最長とし、目標圧力とその時点における圧力との偏差に比例して当該加速時間を短縮することである。
【0086】
具体的には、例えば、制御部42は、ポンプ34の吐出し側の圧力の目標圧力を補助加圧ポンプ停止圧力とした圧力一定制御を実行する。制御部42は、ポンプ34の吐出し側の圧力を目標圧力とすべくPI演算にてインバータ32への指令周波数を決定し、当該指令周波数によってインバータ32がモータ33の回転速度を制御する。そして、始動時にはインバータ32の加速時間を最長に設定変更し、目標圧力とその時点における圧力との圧力偏差が小さくなるにしたがって徐々に加速時間を短縮して設定変更する。この方法の場合、吐出し側の圧力を検知するため、圧力センサ51が必要である。図5の曲線W22に示すように、運転時間が長くなるにしたがって圧力偏差は小さくなるため、当該圧力偏差にしたがって、徐々に加速時間を短縮することによって、補助加圧ポンプ停止圧力に到達するまでの時間を短縮することができる。なお、目標圧力は可変とされてもよい。
【0087】
<例3:インバータによる可変速制御3>
徐々に回転速度を上昇させるようインバータ32を制御するとは、ポンプ34の吐出し側の圧力の目標圧力を、補助加圧ポンプ始動圧力から補助加圧ポンプ停止圧力まで所定の時間で徐々に上昇させ、ポンプ34の吐出し側の圧力が当該目標圧力となるように、電動機33の回転速度を制御することである。このとき、上述の例1、例2と同様に加速時間が変更されてもよい。
【0088】
具体的には、例えば、制御部42は、ポンプ34の吐出し側の圧力の目標圧力を、補助加圧ポンプ始動圧力H3から補助加圧ポンプ停止圧力H2まで所定の時間をかけて徐々に上昇させつつ、ポンプ34の吐出し側の圧力が当該目標圧力となるように電動機33の回転速度をPI制御する。この方法の場合、吐出し側の圧力を検知するため、圧力センサ51が必要である。
【0089】
図6は、例3の場合における補助加圧ポンプの目標圧力の時間変化の一例を示す模式図である。図6の縦軸が圧力で横軸が経過時間である。図6の直線L5は、目標圧力の時間変化を示す直線であり、図6の曲線W23が例3のポンプ34の吐出し側の圧力の時間変化の一例である。図6の曲線W23に示すように、ポンプ34の吐出し側の圧力の目標圧力を、補助加圧ポンプ始動圧力H3から補助加圧ポンプ停止圧力H2まで所定の時間で徐々に上昇させることによって、ポンプ34の吐出し側の圧力を、補助加圧ポンプ始動圧力H3から補助加圧ポンプ停止圧力H2に徐々に近づけることができ、ポンプ34起動時に一時的に大量の水が流れて流水検知装置61が誤作動するのを防止できる。
【0090】
<例4:インバータによる可変速制御4>
徐々に回転速度を上昇させるようインバータ32を制御するとは、ポンプ34の吐出し側の圧力の目標圧力を、一つの目標圧力に到達したら次にそれよりも高い別の目標圧力を設定することを繰り返して補助加圧ポンプ始動圧力H3から補助加圧ポンプ停止圧力H2まで上昇させつつ、ポンプ34の吐出し圧が当該目標圧力となるように電動機33の回転速度を制御することである。このとき、上述の例1、例2と同様に加速時間が変更されてもよい。
【0091】
具体的には例えば、制御部42は、ポンプ34の吐出し側の圧力の目標圧力を、補助加圧ポンプ始動圧力から補助加圧ポンプ停止圧力まで、段階ごとに徐々に上昇させ(一つの目標圧力に到達したら次にそれよりも高い別の目標圧力を設定する)つつ、ポンプ34の吐出し圧が当該目標圧力となるように電動機33の回転速度をPI制御する。この方法の場合、吐出し側の圧力を検知するため、圧力センサ51が必要である。この構成により、ポンプ34の吐出し側の圧力を、補助加圧ポンプ始動圧力H3から補助加圧ポンプ停止圧力H2に徐々に近づけることができ、ポンプ34起動時に一時的に大量の水が流れて流水検知装置61が誤作動するのを防止できる。
【0092】
以上、本実施形態に係る、消火ポンプが給水する消火管内に流体を圧送する補助加圧ポンプ装置1は、ポンプ34と、ポンプ34の軸を回転させる電動機33と、電動機33に供給する電圧の周波数を変更するインバータ32と、ポンプ34の吐出し側の圧力を検知する圧力検出装置50と、ポンプの吐出し側の圧力が補助加圧ポンプ始動圧力以下になった場合、電動機33の回転速度を通常動作回転速度から消火管53に設けられた流水検知装置61の第1水量以下になる回転速度に変更するようインバータ32を制御する制御部42と、を備える。
【0093】
この構成により、電動機33の回転速度を通常動作回転速度から前記消火管に設けられた流水検知装置61の第1水量以下になる回転速度まで下げることができるので、補助加圧ポンプの起動による流水検知装置61の意図しない動作を抑制し、火災警報の誤発報を防ぐことができる。
【0094】
また、消火設備に定水量弁などを設けるのに比べて、配管設備の簡略化や作業軽減もできる。また、電動機33の回転速度を下げることによって、電力消費を減少させることができるので、省エネルギーでの加圧運転を実現できる。消火設備の流水検知装置61の第1水量以下になる回転速度まで下げて電動機を運転することで、従来製品からの騒音、振動の低減の効果がある。
【0095】
なお、本実施形態では、補助加圧ポンプ装置1は、下記のステップにてポンプ34の自動運転を実行する。図7は、補助加圧ポンプ装置1の自動運転を示すフローチャートである。図7のフローチャートは、ポンプ34の自動運転時に実行される。
【0096】
(ステップS110)制御部42は、上述の始動条件が成立するか否かを判断する。始動条件が成立すると(ステップS110:Yes)ポンプ34の運転指令をインバータ32に送信する。始動条件が不成立であれば(ステップS110:No)ポンプ34は停止のままステップS110にて待機する。
【0097】
(ステップS120)運転指令を受信したインバータ32は電動機33を始動し、ポンプ34が始動する。
【0098】
(ステップS130)ポンプ34が運転中となる。ポンプ34の運転中に、制御部42はインバータ32に、第1回転速度に基づく指令周波数を送信する。指令周波数を受信したインバータ32は、電動機33を当該指令周波数にて可変速制御する。
【0099】
(ステップS140)制御部42は、停止条件が成立したと判断(ステップS140:Yes)したら、ポンプ34の停止指令をインバータ32に送信する。制御部42は、停止条件が不成立したと判断(ステップS140:No)したら、ステップ130に戻る。
【0100】
(ステップS150)停止指令を受信したインバータ32は電動機33を停止し、ポンプ34が停止する。
【0101】
つまり、制御部42は、メモリ44を参照して、ポンプ34の始動停止並びにモータ33が第1回転速度に基づいた回転速度にて運転されるようインバータ32を制御する。
【0102】
あるいは、一実施形態では、インバータ32は入力インタフェース32aを備え、操作者は、当該入力インタフェース32aに上述の第1回転速度に対応する所定の指令周波数を入力する。インバータ32は不図示のメモリを備え、当該入力された指令周波数を記憶する。そして、補助加圧ポンプ装置1は、図7に示すフローチャートにおいて上述のS130のステップに代えて以下のステップS130を実行する。
【0103】
(ステップS130)ポンプ34の運転中にインバータ32は、操作者より入力された指令周波数に基づいて電動機33を制御する。
【0104】
つまり、制御部42は、始動条件ならびに停止条件を監視し、インバータ32に対して運転指令や停止指令のみを送信する。そして、当該運転指令を取得したインバータ32は、自身のメモリを参照して、モータ33が第1回転速度に基づいた回転速度にて運転されるよう制御する。
<第1の実施形態の変形例1>
操作者は入力インタフェース31または/およびインバータ32の入力インタフェース32aへの入力によって、制御部42がポンプ34の吐出量を流水検知装置61が発する信号又は警報がオフ状態のまま維持される水量に制御すべく回転速度の制御を行う自動運転か、もしくは、所定の回転速度(例えば、最高回転速度)にて手動運転するか、を選択できると良い。図8は、補助加圧ポンプ装置1の自動運転モードと手動運転モードの状態還移図である。図8の状態遷移は、ポンプ34の停止時に実行されることが好ましい。
【0105】
制御部42は、前記ポンプの吐出量が、前記流水検知装置の発する信号又は警報がオフ状態のまま維持される水量になるよう運転される自動運転モードと、操作者によって当該水量よりも前記ポンプの吐出量を増加できる手動運転モードを有する。そして、図8に示すように、操作者の入力インタフェース31または/およびインバータ32の入力インタフェース32a等への操作入力によって、制御部42は、自動運転モードと手動運転モードとを切り替える。なお、ポンプ34の運転中は当該操作入力を禁止し、ポンプ34の停止中にのみ操作入力が受け付けられるとよい。インバータ32の入力インタフェース32aは、例えば、タッチパネル、入力ボタン、スイッチなどで構成され、操作者からの操作入力を受け付ける。操作入力された情報は、インバータ32の演算部によって処理され、当該処理された情報の少なくとも一部は、通信にて制御部42と共有される。
【0106】
自動運転モード時に制御部42は、図7に示す自動運転を実施する。手動運転モード時に制御部42は、操作者の操作入力に対応する回転速度にて電動機33を運転する。図9は、補助加圧ポンプ装置1の手動運転を示すフローチャートである。図9のフローチャートは、ポンプ34の手動運転時に実行される。
【0107】
(ステップS210)制御部42は、操作者による運転操作が入力されるかを判断する。運転操作が入力されると(ステップS210:Yes)ポンプ34の運転指令をインバータ32に送信する。運転操作の入力がないと(ステップS210:No)、ポンプ34は停止のまま待機される。
【0108】
(ステップS220)運転指令を受信したインバータ32は電動機33を始動し、ポンプ34が始動する。
【0109】
(ステップS230)ポンプ34が運転中となる。ポンプ34の運転中に、制御部42はインバータ32に、操作者から入力インタフェース31を介して入力された指令周波数を送信する。または、操作者はインバータ32の入力インタフェース32aを介して指令周波数を入力する。指令周波数を取得したインバータ32は、電動機33を当該指令周波数にて可変速制御する。
【0110】
(ステップS240)制御部42は、停止操作が入力されたと判断(ステップS240:Yes)したら、ポンプ34の停止指令をインバータ32に送信する。制御部42は、停止操作入力がないと判断(ステップS240:No)したら、ステップS230に戻る。
【0111】
(ステップS250)停止指令を受信したインバータ32は電動機33を停止し、ポンプ34が停止する。
【0112】
手動運転モードとき、操作者は、不作動水量に関わらず、ステップS230にて電動機33が第1回転速度以上となる指令周波数も入力できる。このように、本実施形態の補助加圧ポンプ装置は、手動運転モードを有し、当該手動運転モードでは操作者が必要に応じてポンプ34の吐出量を増減できる。つまり、本変形例の補助加圧ポンプ装置1は、ポンプ34の吐出量が、流水検知装置61が発する信号又は警報がオフ状態のまま維持される水量になるよう調整された後でも、入力インタフェース31または/および入力インタフェース32aに対する操作入力でポンプ34の吐出量が増減できる。
【0113】
手動運転モードでの操作入力の例として、操作者は、ポンプ34の運転指令(ステップS210)、停止指令(ステップS240)を入力でき、制御部42は当該入力された運転指令、停止指令にてポンプ34を始動(ステップS220)/停止(ステップS250)する。また、入力インタフェース31または/および入力インタフェース32aは、ステップS230にて電動機33の回転速度が第1回転速度以上となるインバータ32の指令周波数が入力可能となり、制御部42は、ユーザによって入力された当該指令周波数をインバータ32に指令するとよい。あるいは、入力インタフェース31または/および入力インタフェース32aは、電動機33の回転速度が前述の第1回転速度以上となる図4に示す種類、水量、上記遅延時間、回転速度の何れかの情報を入力可能であって、入力された情報に該当する指令周波数をステップS230にてインバータ32に指令するとよい。
【0114】
比較例にて先述したように、消火ポンプシステムでは、消火ポンプ装置10や補助加圧ポンプ装置1の設置時やメンテナンス時に水が抜けた消火管53や圧力タンク12は所定の圧力まで加圧される(充水)必要がある。このとき、補助加圧ポンプ装置1の吐出量を増加すれば充水時間を短縮できる。比較例の補助加圧ポンプ(固定速)の場合、定水量弁などで不作動水量以下の吐出量が調整された後に吐出量を増加するためには配管を変更するなどの作業が伴う。これに比べて、本実施形態で制御部42は自動運転モードと手動運転モードとを有し、操作者は、補助加圧ポンプ装置1への入力操作にて自動運転または手動運転を選択でき、更に、手動運転では操作入力にて吐出量を可能な限り増加減少でき、水量を変更するための配管を変更する等の作業を軽減できる。
【0115】
なお、上述のポンプ34は、例えば、非容積型のポンプに比べて小出力の電動機で駆動可能な容積型のプランジャーポンプである。しかしながら、上述の実施形態では、インバータ32によるソフトスタートでポンプ34の起動時の電力消費を抑えることができるため、ポンプ34は、非容積型のポンプ(例えば、小型の遠心ポンプ)を採用することができる。また、制御部42の演算部にて実行される上述の各機能はインバータ32の演算部にて実現されてもよい。また、補助加圧ポンプユニット1は、制御部42の演算部とインバータ32の演算部を兼ねたプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit)を用いる等して制御部42の演算部とインバータ32の演算部を同一の部品で構成してもよい。
【0116】
<第2の実施形態>
続いて、第2の実施形態について説明する。補助加圧ポンプの流量を増減したい、といった課題に対して、補助加圧ポンプユニットの2次側の配管37に着脱可能なオリフィスまたは定水量弁などの圧損素子を接続し、流路を絞ることで流体の流れる量を調整することが考えられる。
【0117】
しかしながら、補助加圧ポンプユニット1の2次側の配管37にオリフィスまたは定水量弁などを接続し、流体の流れる量を制限すると、作業者は、オリフィスや定水量弁の圧損を配慮して、補助加圧ポンプユニットが停止する水圧である停止圧を調整しないといけない。そのため、補助加圧ポンプユニット1に備えられた圧力検出装置50では調整が困難であった。この停止圧が低すぎると、十分に加圧されないまま補助加圧ポンプが停止してしまい、運転と停止を頻繁に繰り返してしまう。逆にこの停止圧が高すぎると加圧しすぎるため、配管等の設備に悪影響がでるおそれがある。そのため、補助加圧ポンプユニット1の2次側の配管37に設けられたオリフィスまたは定水量弁の2次側に圧力検出装置50を追加または移動する、といった現場作業が発生する。
【0118】
そこで、第2の実施形態及び後述する第3の実施形態では、圧力検出装置の調整の困難性を回避しつつ、補助加圧ポンプの起動による流水検知装置の意図しない動作を抑制することを課題とする。
【0119】
図10は、第2の実施形態に係る消火ポンプシステムの概略構成図である。図1と同様の要素には同じ符号を付し、その説明を省略する。図10の補助加圧ポンプ装置1bは、図1の補助加圧ポンプ装置1と比べて、ポンプ34の吐出し口と逆止弁48との間の配管に、圧力損出を生み出す圧損素子71(流水調整手段)が設けられている点が相違する。圧損素子71は、例えば、圧力検出装置50の一次側に着脱可能に設けられるオリフィスもしく開度調整可能なバルブ等である。圧力スイッチ52もしくは圧力センサ51がこの圧損素子71による圧力損失後の圧力を検出できればよいので、この圧損素子71は、圧力スイッチ52もしくは圧力センサ51の1次側であればよく、逆止弁48の2次側であってもよい。
【0120】
このように、第2の実施形態では、圧力スイッチ52もしくは圧力センサ51の1次側に圧損素子71を設けて、流水検知装置61の不作動水量以下になるように、吐出量を絞る。その際、制御部42は、ポンプ34の吐出し圧力が停止圧まで上昇するよう電動機33の回転速度をインバータ32によって可変速制御する。これにより、吐出量を、流水検知装置の不作動水量以下に抑えつつ、圧力スイッチ52もしくは圧力センサ51が検出する圧力を、補助加圧ポンプ停止圧力H2まで確実に圧力を上昇させることができる。
【0121】
第2の実施形態では、ポンプ34の2次側に設けられた圧損素子71によって、吐出量が流水検知装置に適した水量になるよう調整される。比較例として、ポンプ34の1次側に設けられた圧損素子は、キャビテーションによって吐出量を絞ることができる。ただし、キャビテーションは吸込み側の水槽の水位や液温、運転状況などの設置環境等によっても影響され、キャビテーションを加味したポンプ性能を予測することは困難である。それに比べて、ポンプ34の2次側に設けられた圧損素子71にて吐出量を絞った場合、吐出し圧の水量の2乗に圧損素子によって決まる係数をかけた値が圧損となる等、圧損素子71の圧損を含めたポンプ34の性能を演算式や実験結果等に基づいて予測することができる。つまり、補助加圧ポンプ装置1bは、ポンプ34の吐出し配管に設けたフランジを介して圧損素子71(例えばオリフィス)を着脱可能とし、絞り量が異なる圧損素子71の圧力損失が含まれる複数の揚程曲線の中から流水検知装置61の仕様に適した揚程曲線が選択され、当該選択された揚程曲線に対応する圧損をもつ圧損素子71が用いられるとよい。また、制御部42は絞り量が異なる圧損素子71の圧損が含まれる複数の揚程曲線の中から流水検知装置61の仕様に適した揚程曲線を選択し、当該選択した揚程曲線に基いて上述の回転速度制御を行う。補助加圧ポンプ34の起動による流水検知装置61の意図しない動作を抑制することができる最小の絞り量の圧損素子71を用いてポンプ34を運転することで、ポンプ34の運転時間を抑制することができる。
【0122】
また、第2の実施形態では、圧力スイッチ52もしくは圧力センサ51の1次側に圧損素子を設けているので、圧力スイッチ52もしくは圧力センサ51が検知する圧力と消火管53内の圧力が同じになるので、消火ポンプ14の締切全揚程H1と始動圧H4によって決まる補助加圧ポンプ始動圧H3と補助加圧ポンプ停止圧H2の調整が不要になる。よって、第2の実施形態では、圧力スイッチ52の調整や圧力検知器50の移動または追加といった設置作業の困難性を回避しつつ、ポンプ34の起動による流水検知装置61の意図しない動作を抑制することができる。
【0123】
また、本実施形態の補助加圧ポンプ装置1bは、メンテナンス等で不作動水量や上記遅延時間等の仕様が異なる流水検知装置に交換された場合に、当該交換された流水検知装置の仕様に合せてポンプ34の吐出量を調整できる。例えば、流水検知装置61が、既設の物に比べ、不作動水量の異なる流水検知装置に交換された場合、本実施形態の補助加圧ポンプ装置1bは、圧損素子71が着脱可能であり、不作動水量に合わせて交換前より絞り量の異なる圧損素子71に交換できる。つまり、補助加圧ポンプ装置1bは、ポンプ34の吐出量が交換前の流水検知装置61が発する信号又は警報がオフ状態のまま維持される水量になるオリフィスを用いた後に、オリフィスの交換等の調整がなされることで当該水量よりもポンプ34の吐出量は増加または減少できる。これにより、ポンプ34の吐出量を増やし、交換前の流水検知装置61の仕様に合せた吐出量にてポンプ34を運転するのに比べて運転時間を短縮できる。
【0124】
なお、図10に示すように、圧損素子71は、ポンプ34の2次側直近の呼水槽29の下に配置されている。これにより補助加圧ポンプユニット1bはコンパクトになる。また、運転パネル30と同じく手前側に着脱可能に配置されることで、作業者は、流量調整(オリフィスの交換やバルブの開度調整)が容易となる。また、本実施形態では圧損素子71の絞り量にてポンプ34の吐出量の増減が可能なため、インバータ32はなくてもよい。
【0125】
<第3の実施形態>
図11は、第3の実施形態に係る消火ポンプシステムの概略構成図である。図1と同様の要素には同じ符号を付し、その説明を省略する。図11の補助加圧ポンプ装置1cは、図1の補助加圧ポンプ装置1と比べて、ポンプ34の吐出し口と逆止弁48との間の配管に、電動弁72(流水調整手段)が設けられている点が相違する。なお、電動弁72は電磁弁ということもある。圧力スイッチ52もしくは圧力センサ51がこの電動弁72による圧力損失後の圧力を検出できればよいので、この電動弁72は、圧力スイッチ52もしくは圧力センサ51の1次側であればよく、逆止弁48の2次側であってもよい。
【0126】
すなわち、圧力スイッチ52もしくは圧力センサ51の1次側に、制御部42の制御により開度調整可能なバルブ(ここでは一例として電動弁72)を設け、制御部42は、ポンプ34の自動運転において、先述の第1水量以下となる開度で固定するか、もしくは、運転状況や圧力センサ51の圧力に応じて開度を変更するよう制御する。
【0127】
例えば、電動弁72は、ポンプ34の停止中および圧力が低い時(つまり始動圧付近の時)は開度小とし、ポンプ34の運転に伴って徐々に開くように制御部42によって制御される。
【0128】
具体的には、以下のステップで制御部42によって制御されてもよい。
【0129】
(ステップ1)ポンプ停止中は電動弁72を全開する。
【0130】
(ステップ2)吐出し側の圧力が始動圧以下に低下したら、電動弁72を全閉または、吐出量が流水検知装置61の第1水量(不作動水量)以下になるよう開度(開度小)にする。
【0131】
(ステップ3)ポンプ34を始動する。
【0132】
(ステップ4)開度小の状態から全開となるまで徐々に、電動弁72を開く。
【0133】
(ステップ5)吐出し側の圧力が停止圧以上でポンプ34の停止。このときは、電動弁72が全開となる。
【0134】
なお、電動弁72の代わりに複数の電動弁または電磁弁を用い、開状態とする電動弁または電磁弁の個数にて流量を段階的に調整してもよい。
【0135】
第3の実施形態では、制御部42は、吐出量が流水検知装置61の不作動水量以下になるよう電動弁72の開度を制御する。これにより、吐出量が流水検知装置61の不作動水量以下になり且つ制御部42は、電動弁72の開度を開度小の状態から全開となるまで徐々に開いて補助加圧ポンプ1の吐出量を増加するので、ポンプ34の起動による流水検知装置61の意図しない動作を抑制しつつ、ポンプ34の運転時間を抑制することができる。また第3の実施形態では、圧力スイッチ52もしくは圧力センサ51の1次側に電動弁72を設けており、圧力スイッチ52もしくは圧力センサ51が検出する圧力と消火管53内の圧力が同じになるので、電動弁72での圧損を考慮した圧力スイッチ52や補助加圧ポンプ停止圧力H2等の調整が不要になる。よって、第3の実施形態では、圧力スイッチ52や補助加圧ポンプ停止圧力H2等の調整や圧力検知器50の移動または追加といった設置作業の困難性を回避しつつ、ポンプ34の起動による流水検知装置61の意図しない動作を抑制することができる。
【0136】
また、本実施形態の補助加圧ポンプ装置1は、メンテナンス等で不作動水量や上記遅延時間等の仕様が異なる流水検知装置に交換された場合に、当該仕様に合せてポンプ34の吐出量を調整できる。例えば、不作動水量が多い流水検知装置に交換された場合に、本実施形態の補助加圧ポンプ装置1は、不作動水量に合わせて交換前より電動弁72の運転開始時の開度を大きくし、全開までの時間を短縮することで、吐出量を増やし運転時間を短縮できる。また、本実施形態においても第1の実施形態の変形例1と同様に、自動運転モードと手動運転モードを有し、手動運転モードのステップS230において、インバータ32の指令周波数が操作入力されるのに代えて又は加えて、電動弁72の開度が操作入力されるとよい。
【0137】
なお、図11に示すように、電動弁72は、ポンプ34の2次側直近の呼水槽29の下に配置されている。これにより補助加圧ポンプユニット1はコンパクトになる。また、本実施形態では電動弁72の開度にてポンプ34の吐出量の増減が可能なため、インバータ32はなくてもよい。
【0138】
以上、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0139】
1、1b、1c 補助加圧ポンプ装置
10 消火ポンプ装置
11 ベース
12 圧力タンク
14 消火ポンプ
20 逆止弁
25 仕切弁
27 圧力タンク配管
29 呼水槽
30 運転パネル
31 入力インタフェース
32 インバータ
33 電動機
34 ポンプ
37 配管
38 分岐配管
46 圧力スイッチ
48 逆止弁
49 仕切弁
50 圧力検出装置
51 圧力センサ
52 圧力スイッチ
53 消火管
61 流水検知装置
62 スプリンクラー
71 圧損素子
72 電動弁(バルブ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11