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特許7370887レーダ装置、レーダシステム、信号処理方法および信号処理プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】レーダ装置、レーダシステム、信号処理方法および信号処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/931 20200101AFI20231023BHJP
   G01S 13/87 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
G01S13/931
G01S13/87
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020018321
(22)【出願日】2020-02-05
(65)【公開番号】P2021124399
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2022-06-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】391045897
【氏名又は名称】古河AS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114292
【弁理士】
【氏名又は名称】来間 清志
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】竹嶋 大貴
(72)【発明者】
【氏名】堤 寛
【審査官】藤脇 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-181315(JP,A)
【文献】特開2020-016572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
13/00 - 13/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、前記車両外に所定の信号を送信および受信して前記車両に対する物標の位置情報を検出するレーダ装置において、
上位装置から送信されてきた制御情報を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記制御情報の種別を判定する判定部と、
前記物標の位置情報を検出する検出領域の範囲を示す検出領域範囲情報を複数記憶する記憶部と、
前記判定部により判定された制御情報の種別に対応する検出領域範囲情報を前記記憶部の中から選択する選択部と、
受信した前記所定の信号に基づいて、前記選択部で選択された検出領域範囲情報に含まれる前記物標の前記位置情報を検出する検出部とを備え
前記取得部は、前記車両に対する設置位置情報を前記上位装置から取得し、
前記記憶部は、前記設置位置情報と、前記設置位置情報および前記制御情報の種別に対応して異なる検出領域範囲情報とを記憶し、
前記選択部は、前記設置位置情報を参照して、前記検出領域範囲情報を選択するレーダ装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記車両のハンドルの操舵角度情報、方向指示器の指示情報および速度情報の少なくとも一つを含む制御情報の種別を判定する請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記検出領域範囲情報は、前記レーダ装置の方位角度についての検出領域の範囲を示す方位角度範囲に対応する情報を含む、請求項1に記載のレーダ装置。
【請求項4】
前記検出領域範囲情報は、前記レーダ装置の方位角度についての検出領域の範囲を示す方位角度範囲に対応する情報を含む、請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項5】
前記判定部は、少なくとも、前記操舵角度情報を含む制御情報の種別を判定し、
前記選択部は、前記操舵角度情報に応じて、前記車両の移動方向に前記方位角度範囲を拡大するように前記検出領域範囲情報を選択する請求項に記載のレーダ装置。
【請求項6】
前記選択部は、前記判定部により判定された複数の制御情報の種別に対応して前記検出領域範囲情報を選択する請求項1からのいずれか一項に記載のレーダ装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載のレーダ装置を複数有するとともに、前記車両に対して異なる位置に設置されているセンサシステム。
【請求項8】
車両に搭載され、前記車両外に所定の信号を送信および受信して前記車両に対する物標の位置情報を検出するレーダ装置の信号処理方法において、
上位装置から送信されてきた制御情報を取得する取得工程と、
前記取得工程が取得した前記制御情報の種別を判定する判定工程と、
前記判定工程により判定された制御情報の種別に対応する検出領域範囲情報を、前記物標の位置情報を検出する検出領域の範囲を示す検出領域範囲情報を複数記憶する記憶部の中から選択する選択工程と、
受信した前記所定の信号に基づいて、前記選択工程で選択された検出領域範囲情報に含まれる前記物標の前記位置情報を検出する検出工程とを備え
前記取得工程では、前記車両に対する設置位置情報を前記上位装置から取得し、
前記記憶部は、前記設置位置情報と、前記設置位置情報および前記制御情報の種別に対応して異なる検出領域範囲情報とを記憶し、
前記選択工程では、前記設置位置情報を参照して、前記検出領域範囲情報を選択する信号処理方法。
【請求項9】
車両に搭載され、前記車両外に所定の信号を送信および受信して前記車両に対する物標の位置情報を検出する信号処理プログラムにおいて、
コンピュータに、
上位装置から送信されてきた制御情報を取得する取得工程と、
前記取得工程が取得した前記制御情報の種別を判定する判定工程と、
前記判定工程により判定された制御情報の種別に対応する検出領域範囲情報を、前記物標の位置情報を検出する検出領域の範囲を示す検出領域範囲情報を複数記憶する記憶部の中から選択する選択工程と、
受信した前記所定の信号に基づいて、前記選択工程で選択された検出領域範囲情報に含まれる前記物標の前記位置情報を検出する検出工程と、を実行させるための信号処理プログラムであり、
前記取得工程では、前記車両に対する設置位置情報を前記上位装置から取得し、
前記記憶部は、前記設置位置情報と、前記設置位置情報および前記制御情報の種別に対応して異なる検出領域範囲情報とを記憶し、
前記選択工程では、前記設置位置情報を参照して、前記検出領域範囲情報を選択する信号処理プログラム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーダ装置、レーダシステム、信号処理方法および信号処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
引用文献1に開示されているように、複数のアンテナ素子を並べてアレイアンテナ部を構成し、これらのアンテナ素子で受信した各受信信号の位相差から、物標の方位を検出する検出方法(例えば、ビームフォーミングなど)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-170371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ビームフォーミングは、デジタル信号処理により位相を制御することにより各アンテナ素子の指向性パターンを制御するため、アンテナ素子ごとに移相器やスイッチング素子が必要になり、回路規模が大型化する問題がある。
【0005】
本願発明では、回路規模の大型化を避けつつ、任意の角度から到来する信号を選択的に処理することができるレーダ装置、レーダシステム、信号処理方法および信号処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るレーダ装置は、車両に搭載され、前記車両外に所定の信号を送信および受信して前記車両に対する物標の位置情報を検出するレーダ装置において、上位装置から送信されてきた制御情報を取得する取得部と、前記取得部が取得した前記制御情報の種別を判定する判定部と、前記物標の位置情報を検出する検出領域の範囲を示す検出領域範囲情報を複数記憶する記憶部と、前記判定部により判定された制御情報の種別に対応する検出領域範囲情報を前記記憶部の中から選択する選択部と、受信した前記所定の信号に基づいて、前記選択部で選択された検出領域範囲情報に含まれる前記物標の前記位置情報を検出する検出部とを備える。
【0007】
本開示に係るレーダ装置は、上記開示において、前記判定部は、前記車両のハンドルの操舵角度情報、方向指示器の指示情報および速度情報の少なくとも一つを含む制御情報の種別を判定する構成である。
【0008】
本開示に係るレーダ装置は、上記開示において、前記検出領域範囲情報は、前記レーダ装置の方位角度についての検出領域の範囲を示す方位角度範囲に対応する情報を含む構成である。
【0009】
本開示に係るレーダ装置は、上記開示において、前記判定部は、少なくとも、前記操舵角度情報を含む制御情報の種別を判定し、前記選択部は、前記操舵角度情報に応じて、前記車両の移動方向に前記方位角度範囲を拡大するように前記検出領域範囲情報を選択する構成である。
【0010】
本開示に係るレーダ装置は、上記開示において、前記取得部は、前記車両に対する設置位置情報を前記上位装置から取得し、前記記憶部は、前記設置位置情報と、前記設置位置情報および前記制御情報の種別に対応して異なる検出領域範囲情報とを記憶し、前記選択部は、前記設置位置情報を参照して、前記検出領域範囲情報を選択する構成である。
【0011】
本開示に係るレーダ装置は、上記開示において、前記選択部は、前記判定部により判定された複数の制御情報の種別に対応して前記検出領域範囲情報を選択する構成である。
【0012】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係るセンサシステムは、上記開示のレーダ装置を複数有するとともに、前記車両に対して異なる位置に設置されている構成である。
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る信号処理方法は、車両に搭載され、前記車両外に所定の信号を送信および受信して前記車両に対する物標の位置情報を検出するレーダ装置の信号処理方法において、上位装置から送信されてきた制御情報を取得する取得工程と、前記取得工程が取得した前記制御情報の種別を判定する判定工程と、前記判定工程により判定された制御情報の種別に対応する検出領域範囲情報を、前記物標の位置情報を検出する検出領域の範囲を示す検出領域範囲情報を複数記憶する記憶部の中から選択する選択工程と、受信した前記所定の信号に基づいて、前記選択工程で選択された検出領域範囲情報に含まれる前記物標の前記位置情報を検出する検出工程とを備える。
【0014】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る信号処理プログラムは、車両に搭載され、前記車両外に所定の信号を送信および受信して前記車両に対する物標の位置情報を検出する信号処理プログラムにおいて、コンピュータに、上位装置から送信されてきた制御情報を取得する取得工程と、前記取得工程が取得した前記制御情報の種別を判定する判定工程と、前記判定工程により判定された制御情報の種別に対応する検出領域範囲情報を、前記物標の位置情報を検出する検出領域の範囲を示す検出領域範囲情報を複数記憶する記憶部の中から選択する選択工程と、受信した前記所定の信号に基づいて、前記選択工程で選択された検出領域範囲情報に含まれる前記物標の前記位置情報を検出する検出工程と、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、回路規模の大型化を避けつつ低消費電力を実現しながら、任意の角度から到来する信号を選択的に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、センサシステムの構成を示す図である。
図2図1は、レーダ装置の構成を示す図である。
図3図3は、第1処理部の構成を示すブロック図である。
図4図4は、送信アンテナおよび受信アンテナの配置例を示す図である。
図5図5は、レーダ装置の動作の説明に供する図である。
図6図6は、第2処理部の構成を示す図である。
図7図7は、第1テーブルの一例を模式的に示す図である。
図8図8は、第2テーブルの一例を模式的に示す図である。
図9図9は、実角度に対する角度インデックスを模式的に示す図である。
図10図10は、右方向に操舵されたときの検出領域範囲情報の選択処理についての説明に供する図である。
図11図11は、右方向に操舵されたときの検出部による検出範囲の一例を模式的に示す図である。
図12図12は、左方向に操舵されたときの検出領域範囲情報の選択処理についての説明に供する図である。
図13図13は、左方向に操舵されたときの検出部による検出範囲の一例を模式的に示す図である。
図14図14は、第3テーブルの一例を模式的に示す図である。
図15図15は、検出部による検出範囲の一例を模式的に示す図である。
図16図16は、複数のレーダ装置が配置される場合における設置位置の初期設定についての手順を示すフローチャートである。
図17図17は、車両が高速道路を走行しているときの検出部による検出範囲の一例を模式的に示す図である。
図18図18は、車両が左折するときの検出部による検出範囲の一例を模式的に示す図である。
図19図19は、車両が左折するときの検出部による検出範囲の他の一例を模式的に示す図である。
図20図20は、車両が駐車場を走行しているときの検出部による検出範囲の一例を模式的に示す図である。
図21図21は、車両が駐車場を出発するときの検出部による検出範囲の一例を模式的に示す図である。
図22図22は、物標の位置情報を検出する信号処理方法の手順を示すフローチャートである。
図23図23は、コンピュータの構成を示す図である。
図24図24は、コンピュータの他の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
(センサシステムの構成について)
図1は、本発明に係るセンサシステムの構成を示す図である。この図に示すように、本発明に係るセンサシステム1は、レーダ装置10-1,10-2、ECU(Electric Control Unit)80、クリアランスソナー装置40、画像処理装置50、および、撮像装置61,62を有している。なお、センサシステム1は、図5を参照して後述するように、例えば、車両のフロントバンパ内に、左右に1つずつ搭載され、車両の前方に存在する物標(例えば、車両、歩行者、二輪車、および、障害物等)を検出し、運転者に通知するとともに、必要に応じて、車両のステアリングおよびブレーキ等を制御する。
【0019】
レーダ装置10-1,10-2は、物標に向けて電波を送信し、散乱波を受信して物標の位置を検出し、ECU80に通知する。
【0020】
ECU80は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および、I/F(Interface)等によって構成され、ROMおよびRAMに格納されているプログラムに基づいてCPUが各部を制御する。
【0021】
(レーダ装置の構成について)
図2は、レーダ装置10-1,10-2の詳細な構成を示す図である。なお、レーダ装置10-1,10-2は同様の構成とされているので、以下では、これらをレーダ装置10として説明する。
【0022】
レーダ装置10は、局部発振部11、送信部12、第1処理部15、受信部16、および、A/D(Analog to Digital)変換部21、第2処理部30を主要な構成要素としている。
【0023】
ここで、局部発振部11は、所定の周波数のCW(Continuous Wave)信号を生成して、送信部12と受信部16に供給する。
【0024】
送信部12は、変調部13、および、送信アンテナ14を有し、局部発振部11から供給されるCW信号を、変調部13によってパルス変調し、送信アンテナ14を介して物標に向けて送信する。なお、本実施例では、送信アンテナの数を1個として説明するが、送信アンテナの数は1個に限定されない。
【0025】
送信部12の変調部13は、第1処理部15によって制御され、局部発振部11から供給されるCW信号をパルス変調して出力する。送信アンテナ14は、変調部13から供給されるパルス信号を、物標に向けて送信する。
【0026】
第1処理部15は、局部発振部11、変調部13、アンテナ切換部18、および、利得可変増幅部19を制御するとともに、A/D変換部21から供給される受信データに対して演算処理を実行することで、物標を検出する。第1処理部15は、検出した物標の位置情報を、接続線70を介してECU80に送信する。
【0027】
図3は、図2に示す第1処理部15の詳細な構成を示すブロック図である。図2に示すように、第1処理部15は、制御部15a、処理部15b、検出部15c、および、通信部15dを有している。ここで、制御部15aは、例えば、CPU、ROM、および、RAM等によって構成され、ROMおよびRAMに記憶されている実行可能なプログラムに基づいて装置の各部を制御する。処理部15bは、例えば、DSP(Digital Signal Processor)等によって構成され、A/D変換部21から供給されるデジタル信号に対する処理を実行する。検出部15cは、例えば、DSP等によって構成され、物標を検出する処理を実行する。通信部15dは、例えば、CAN(Controller Area Network)プロトコルに基づいて、検出部15cによる検出結果の位置情報を、図1に示す、接続線70を介してECU80等の外部の装置に対して送信する。
【0028】
図2に戻る。受信部16は、第1受信アンテナ17-1~第8受信アンテナ17-8、アンテナ切換部18、利得可変増幅部19、および、復調部20を有し、送信アンテナ14から送信され、物標によって散乱された散乱波を受信して復調処理を施した後、A/D変換部21に出力する。なお、本実施例では、受信アンテナの数を8個として説明するが、受信アンテナの数は8個に限定されない。
【0029】
受信部16の第1受信アンテナ17-1~第8受信アンテナ17-8は、8個のアンテナ素子によって構成され、送信アンテナ14から送信され、物標によって散乱された散乱波を受信し、アンテナ切換部18に供給する。
【0030】
図4は、送信アンテナ14および第1受信アンテナ17-1~第8受信アンテナ17-8の配置例を示している。図4の例では、送信アンテナ14および第1受信アンテナ17-1~第8受信アンテナ17-8は、プリント基板22上に並べて配置されている。より詳細には、X方向の幅がWtであり、Z方向の長さがLtの送信アンテナ14は、プリント基板22の右端に配置されている。また、X方向の幅がWであり、Z方向の長さがLの第1受信アンテナ17-1~第8受信アンテナ17-8は、プリント基板22の左端から間隔Dを隔ててX方向に並置されている。送信アンテナ14は、図4のY軸方向の紙面の奥から手前方向に電波を送信し、送信アンテナ14および第1受信アンテナ17-1~第8受信アンテナ17-8は、物標によって散乱され、Y軸方向の紙面の手前から奥方向に伝搬する散乱波を受信する。第1受信アンテナ17-1~第8受信アンテナ17-8は、物標によって散乱される散乱波の位相差により、物標のX-Y平面におけるY軸との角度を検出する。
【0031】
図2に戻る。アンテナ切換部18は、第1処理部15の制御部15aによって制御され、第1受信アンテナ17-1~第8受信アンテナ17-8のいずれか1つを選択して、受信信号を利得可変増幅部19に供給する。利得可変増幅部19は、第1処理部15の制御部15aによって利得が制御され、アンテナ切換部18から供給される受信信号を所定の利得で増幅して復調部20に出力する。復調部20は、利得可変増幅部19から供給される受信信号を、局部発振部11から供給されるCW信号を用いて復調して出力する。
【0032】
A/D変換部21は、復調部20から供給される受信信号を所定の周期でサンプリングし、デジタル信号に変換して第1処理部15に供給する。
【0033】
図1に戻る。クリアランスソナー装置40は、例えば、超音波を送信し、物標によって散乱された散乱波を受信し、送信から受信までの時間によって物標を検出する。クリアランスソナー装置40による検出結果としての物標の位置情報は、接続線70を介してECU80に通知される。
【0034】
撮像装置61,62は、レンズ等の光学系およびイメージセンサ等によって構成される。撮像装置61,62は、水平方向に離間して配置され、それぞれが撮像した画像を画像処理装置50に供給する。
【0035】
画像処理装置50は、撮像装置61,62によって撮像されたステレオ画像に基づいて、三角法によって物標を検出し、接続線70を介して、検出結果としての物標の位置情報をECU80に供給する。
【0036】
なお、ECU80、レーダ装置10-1,10-2、クリアランスソナー装置40、および、画像処理装置50は、CANインターフェースをそれぞれ有し、接続線70によって相互に接続され、CANプロトコルに基づいて相互に情報を送受信する。
【0037】
図5に示すように、レーダ装置10-1,10-2は、車両Cのフロントバンパ内に配置されている。より詳細には、レーダ装置10-1はフロントバンパ内の左側に配置され、レーダ装置10-2はフロントバンパ内の右側に配置されている。図5では、レーダ装置10-1,10-2は、車両Cの前方に存在する物標Tを検出する。なお、図5では、ECU80、クリアランスソナー装置40、画像処理装置50、撮像装置61,62は、図面を簡略化するために不図示としている。なお、撮像装置61,62は、車両CのフロントガラスにX方向に所定の距離を隔てて配置され、車両Cの前方に存在する物標Tをステレオ視によって撮像する。
【0038】
レーダ装置10-1は、図4に示すX,Y,Z方向が、図5に示すXL,YL,ZL方向と一致するように配置される。すなわち、図4に示す送信アンテナ14および第1受信アンテナ17-1~第8受信アンテナ17-8は、図5にXL方向に並ぶように配置される。この結果、レーダ装置10-1は、第1受信アンテナ17-1~第8受信アンテナ17-8に入射される散乱波の位相差から、物標Tが存在する角度(YL軸との角度)を検出することができる。
【0039】
同様に、レーダ装置10-2は、図4に示すX,Y,Z方向が、図5に示すXR,YR,ZR方向と一致するように配置される。すなわち、図4に示す送信アンテナ14および第1受信アンテナ17-1~第8受信アンテナ17-8は、図5に示すXR方向に並ぶように配置される。この結果、レーダ装置10-1は、第1受信アンテナ17-1~第8受信アンテナ17-8に入射される散乱波の位相差から、物標Tが存在する角度(YR軸との角度)を検出することができる。
【0040】
図5において、間隔の長い破線で示す扇形は、レーダ装置10-1の検出領域ALを示している。レーダ装置10-1は検出領域ALにおける物標Tの位置を検出する。なお、検出領域ALは、レーダ装置10-1による最大の検出領域を示している。
【0041】
また、間隔の短い破線で示す扇形は、レーダ装置10-2の検出領域ARを示している。レーダ装置10-2は検出領域ARにおける物標Tの位置を検出する。なお、検出領域ARは、レーダ装置10-2による最大の検出領域を示している。
【0042】
ここで、レーダ装置10-1,10-2は、車両に搭載され、車両外に所定の信号を送信および受信して車両に対する物標の位置情報を検出する機能を備えている。また、レーダ装置10-1,10-2は、検出した物標の位置情報を処理する第2処理部30を備えている。以下に、第2処理部30の構成と動作について説明する。図6は、第2処理部30の構成を示す図である。
【0043】
第2処理部30は、制御情報を取得する取得部31と、制御情報の種別を判定する判定部32と、検出領域範囲情報を記憶する記憶部33と、検出領域範囲情報を記憶部33の中から選択する選択部34と、物標の位置情報を検出する検出部35とを備える。
【0044】
取得部31は、上位装置から送信されてきた制御情報を取得する。上位装置とは、ECU80である。取得部31とECU80とは、接続線70を介して接続されている。制御情報とは、例えば、車両のハンドルの操舵角度情報、方向指示器の指示情報および速度情報などである。
【0045】
判定部32は、取得部31が取得した制御情報の種別を判定する。具体的には、判定部32は、車両のハンドルの操舵角度情報、方向指示器の指示情報および速度情報の少なくとも一つを含む制御情報の種別を判定する。
【0046】
図7は、制御情報の種別を判定するときに参照される第1テーブルを模式的に示す図である。なお、図7に示す第1テーブルT1は、一例であり、この内容に限定されない。判定部32は、記憶部33に記憶されている第1テーブルT1を参照し、取得部31がECU80から取得した制御情報に基づいて、種別(例えば、フラグ)を判定する。例えば、第1制御情報(方向指示器_第1指示情報(左ウィンカーが操作された))を取得した場合、判定部32は、第1テーブルT1を参照して、フラグ1と判定する。
【0047】
なお、判定部32による判定処理をECU80で行う構成でもよい。このような構成の場合には、取得部31は、ECU80から制御情報の種別であるフラグを取得する。よって、判定部32による判定処理は行われない。
【0048】
記憶部33は、物標の位置情報を検出する検出領域の範囲を示す検出領域範囲情報を複数記憶する。検出領域範囲情報は、レーダ装置10の方位角度についての検出領域の範囲を示す方位角度範囲に対応する情報を含む構成でもよい。方位角度範囲に対応する情報とは、レーダ装置10が物標の位置を検出する方位角度の範囲に対応する情報である。
【0049】
図8は、記憶部33に記憶される検出領域範囲情報が含まれる第2テーブルT2を模式的に示す図である。なお、図8に示す第2テーブルT2は、一例であり、この内容に限定されない。図8に示す例では、車両には、4つのレーダ装置が搭載されている場合を想定し、レーダ装置ごとにフラグに応じて窓が設定されている。窓とは、各レーダ装置により受信した散乱波のうち、実際に検出部35で物標の位置情報を検出する処理を行う範囲(実角度に対する角度インデックス)を示している。
【0050】
また、例えば、レーダ装置Aは、フロントバンパ内の左側に配置されるレーダ装置10-1を示し、レーダ装置Bは、フロントバンパ内の右側に配置されるレーダ装置10-2を示している。また、レーダ装置Cは、リアバンパ内の左側に配置されるレーダ装置を示し、レーダ装置Dは、リアバンパ内の右側に配置されるレーダ装置を示している。
【0051】
図9は、実角度に対する角度インデックスを模式的に示す図である。図9に示す例では、実角度の最大範囲は、「-90~+90」としているが、この範囲に限定されない。実角度が「-90~+60」の範囲は、例えば、図8に示す窓1に対応し、実角度が「-60~+90」の範囲は、例えば、図8に示す窓2に対応し、実角度が「-75~+75」の範囲は、例えば、図8に示す窓3に対応する。
【0052】
選択部34は、判定部32により判定された制御情報の種別に対応する検出領域範囲情報(図9に示す例では、方位角度範囲に対応する情報)を記憶部33の中から選択する。例えば、選択部34は、判定部32により「フラグ1」と判定された場合、テーブルT2を参照し、検出領域範囲情報として窓1(実角度が「-90~+60」の範囲)を選択する。
【0053】
検出部35は、受信した所定の信号に基づいて、選択部34で選択された検出領域範囲情報に含まれる物標の位置情報を検出する。例えば、検出部35は、選択部34で選択された検出領域範囲情報が窓1(実角度が「-90~+60」の範囲)の場合、A/D変換部21から供給される信号(受信部16で受信された信号)のうち、実角度が「-90~+60」の範囲のみの信号から物標の位置情報を検出する。検出部35は、検出した物標の位置情報をECU80に送信する。ECU80は、検出部35から送信されてきた物標の位置情報に基づいて、所定の処理(例えば、物標に対する衝突回避のための処理など)を行う。
【0054】
このように構成されることによって、レーダ装置10は、取得部31により取得された制御情報の種別を判定部32に判定し、判定部32により判定された制御情報の種別に対応する検出領域範囲情報を記憶部33の中から選択部34により選択し、受信した所定の信号に基づいて、選択部34で選択された検出領域範囲情報に含まれる物標の位置情報を検出部35により検出することにより、任意の角度から到来する信号を選択的に処理することができる。つまり、レーダ装置10は、受信部16で受信した信号をすべて処理するのではなく、選択部34で選択された検出領域範囲情報に係る範囲に絞って、物標の位置情報を検出するので、処理の負担を軽減し、任意の角度から到来する信号を効率的に処理することができる。
【0055】
つぎに、一例として、ハンドルが操舵されたときの角度(操舵角度)に応じて検出領域範囲情報を選択する場合の処理について説明する。
【0056】
判定部32は、少なくとも、操舵角度情報を含む制御情報の種別を判定する。選択部34は、操舵角度情報に応じて、車両Cの移動方向に方位角度範囲を拡大するように検出領域範囲情報を選択する。
【0057】
ここで、ハンドルが車両Cの進行方向に対して右方向に操舵されたときに選択される検出領域範囲情報について説明する。図10は、ハンドルが右方向に操舵されたときの検出領域範囲情報の選択処理についての説明に供する図である。図11は、ハンドルが車両Cの進行方向に対して右方向に操舵されたときの検出部35による検出範囲の一例を模式的に示す図である。
【0058】
レーダ装置10-1では、ハンドルが右方向に操舵されたときには、選択部34で所定の窓が選択されて、図10に示すように、最右端AL1の領域が移動方向A1に拡大する。図11では、検出部35による検出範囲R11が移動方向A1側にシフトした状態を模式的に示している。
【0059】
また、レーダ装置10-2では、ハンドルが右方向に操舵されたときには、選択部34で所定の窓が選択されて、図10に示すように、最右端AR1の領域が移動方向A2に拡大する。図11では、検出部35による検出範囲R12が移動方向A2側にシフトした状態を模式的に示している。
【0060】
このようにして、レーダ装置10は、受信部16で受信した信号の中から、ハンドルが右方向に操舵されたときに必要となる検出領域の範囲に絞って、物標の位置情報を検出することができる。よって、レーダシステム1は、運転者に対して、例えば、右側の物標を巻き込まないように注意を促すことができる。
【0061】
つぎに、ハンドルが車両Cの進行方向に対して左方向に操舵されたときに選択される検出領域範囲情報について説明する。図12は、ハンドルが左方向に操舵されたときの検出領域範囲情報の選択処理についての説明に供する図である。図13は、ハンドルが車両Cの進行方向に対して左方向に操舵されたときの検出部35による検出範囲の一例を模式的に示す図である。
【0062】
レーダ装置10-1では、ハンドルが左方向に操舵されたときには、選択部34で所定の窓が選択されて、図12に示すように、最左端AL2の領域が移動方向B1に拡大する。図13では、検出部35による検出範囲R21が移動方向B1側にシフトした状態を模式的に示している。
【0063】
また、レーダ装置10-2では、ハンドルが左方向に操舵されたときには、選択部34で所定の窓が選択されて、図12に示すように、最左端AR2の領域が移動方向B2に拡大する。図13では、検出部35による検出範囲R22が移動方向B2側にシフトした状態を模式的に示している。
【0064】
このようにして、レーダ装置10は、受信部16で受信した信号の中から、ハンドルが左方向に操舵されたときに必要となる検出領域の範囲に絞って、物標の位置情報を検出することができる。よって、レーダシステム1は、運転者に対して、例えば、左側の物標を巻き込まないように注意を促すことができる。
【0065】
上述では、ECU80から単一の制御情報を取得した場合の構成について説明したが、この構成に限定されない。以下では、ECU80から複数の制御情報を取得した場合の構成について説明する。
【0066】
上述では、レーダ装置10-1,10-2の双方の窓が車両Cの移動方向に方位角度範囲を拡大する構成を示したが、これに限定されない。車両Cに搭載される少なくとも1つのレーダ装置が車両Cの移動方向に方位角度範囲を拡大するようにしてもよい。また、一方の方向について方位角度範囲を拡大した場合に、他方の方向について方位角度範囲を縮小する様にしてもよい。このように構成することで、物票を検出した際に、角度インデックスに対し一意に物標の実角度を特定することができる。
【0067】
取得部31は、ECU80から送信されてきた複数の制御情報を取得する。判定部32は、取得部31が取得した複数の制御情報の種別を判定する。例えば、第1制御情報(方向指示器_第1指示情報(左ウィンカーが操作された))と第2制御情報(ハンドルの操舵角度_第1情報(左に10度回転した))を取得した場合、判定部32は、第1テーブルT1を参照して、フラグ1およびフラグ3と判定する。
【0068】
選択部34は、判定部32により判定された複数の制御情報の種別に対応して検出領域範囲情報を選択する。図14は、記憶部33に記憶される検出領域範囲情報が含まれる第3テーブルT3を模式的に示す図である。なお、図14に示す第3テーブルT3は、一例であり、この内容に限定されない。例えば、選択部34は、判定部32により「フラグ1+フラグ3」と判定された場合、第3テーブルT3を参照し、検出領域範囲情報として窓11を選択する。なお、組み合わされるフラグの数は、2つに限られず、3つ以上でもよい。
【0069】
検出部35は、受信部16で受信した所定の信号に基づいて、選択部34で選択された検出領域範囲情報である窓11に含まれる物標の位置情報を検出する。
【0070】
図15は、複数のフラグに基づいた検出領域範囲情報が選択されたときの検出部35による検出範囲の一例を模式的に示す図である。レーダ装置10-1側では、受信部16で受信した所定の信号に基づいて、窓11(図15に示す検出範囲R31)に含まれる物標の位置情報を検出する。レーダ装置10-2側では、受信部16で受信した所定の信号に基づいて、窓AA(図15に示す検出範囲R32)に含まれる物標の位置情報を検出する。
【0071】
このようにして、レーダ装置10は、受信部16で受信した信号の中から、複数のフラグに基づいた検出領域範囲情報で示される検出範囲に絞って、物標の位置情報を検出することができる。
【0072】
つぎに、車両に複数のレーダ装置が配置される場合における初期設定について説明する。レーダ装置は、車両のどの部分に取り付けられたかによって、参照するテーブル(図8に示す第2テーブルT2、図14に示す第3テーブルT3など)の項目が異なる。よって、各レーダ装置には、予め配置されている場所、つまり自身が参照するテーブルの項目を設定しておく必要がある。
【0073】
図16は、複数のレーダ装置が配置される場合における設置位置の初期設定についての手順を示すフローチャートである。以下では、レーダ装置10-1がフロントバンパ内の左側に配置され、レーダ装置10-2がフロントバンパ内の右側に配置される場合における設定の手順について説明するが、3つ以上のレーダ装置が配置される場合においても以下の手順を適用するこができる。また、以下の設定は、工場出荷時に行われるものとして説明するが、工場出荷時に限定されない。
【0074】
ステップST1において、レーダ装置10の取り付け位置を読み込み、取り付け位置フラグが渡される。ECU80は、フロントバンパ内の左側に延伸するケーブルに所定の情報(フロントバンパ内の左側を示す情報)を送信し、フロントバンパ内の右側に延伸するケーブルに所定の情報(フロントバンパ内の右側を示す情報)を送信する。車両のフロントバンパ内の左側から延伸しているケーブルに接続されたレーダ装置10(レーダ装置10-1)は、ECU80から所定の信号を受信する。具体的には、レーダ装置10-1は、取り付けられた位置を読み込み、取り付けられた位置に対応するフラグを受信する。また、車両のフロントバンパ内の右側から延伸しているケーブルに接続されたレーダ装置10(レーダ装置10-2)は、ECU80から所定の信号を受信する。具体的には、レーダ装置10-2は、取り付けられた位置を読み込み、取り付けられた位置に対応するフラグを受信する。
【0075】
ステップST2において、取り付け位置はフロント右側であるかどうか判断する。取り付け位置はフロント右側である場合(Yes)には、ステップST3に進み、取り付け位置はフロント右側でない場合(No)には、ステップST4に進む。具体的には、レーダ装置10-2は、受信したフラグ(取り付けられた位置はフロント右側)から取り付け位置はフロント右側であると判断し、車両に対する設置位置情報として取り付け位置を記憶する。レーダ装置10-1は、受信したフラグ(取り付けられた位置はフロント左側)から取り付け位置はフロント右側でないと判断する。
【0076】
ステップST3において、フロント右側の各フラグに各々対応する窓の設定の読み込みを行う。具体的には、レーダ装置10-2は、第2テーブルT2における、各フラグに対応して第2項目(窓A~D)や、第3テーブルT3における、各フラグに対応して第2項目(窓AA~AD)を読み込む。
【0077】
ステップST4において、取り付け位置はフロント左側であるかどうか判断する。取り付け位置はフロント左側である場合(Yes)には、ステップST5に進み、取り付け位置はフロント左側でない場合(No)には、処理を終了する。具体的には、レーダ装置10-2は、受信したフラグ(取り付けられた位置はフロント右側)から取り付け位置はフロント左側でないと判断する。レーダ装置10-1は、受信したフラグ(取り付けられた位置はフロント左側)から取り付け位置はフロント左側であると判断し、車両に対する設置位置情報として取り付け位置を記憶する。
【0078】
ステップST5において、フロント左側の各フラグに各々対応する窓の設定の読み込みを行う。具体的には、レーダ装置10-1は、第2テーブルT2における、各フラグに対応して第1項目(窓1~4)や、第3テーブルT3における、各フラグに対応して第1項目(窓11~14)を読み込む。
【0079】
このようにして、レーダ装置10-1,10-2は、車両に接続されてときに、上述した処理によって、配置されている場所に応じた初期設定を行うことができる。なお、上述した処理手順は、レーダ装置に限られず、他の装置を初期設定する際にも適用することができる。特に、車両に配置する装置の数が多い場合において、装置ごとに初期設定する手間を省くことができ、各装置に対して効率的に初期設定を行うことができる。
【0080】
取得部31は、上述の初期設定の手順にしたがって、車両に対する設置位置情報を上位装置であるECU80から取得する。記憶部33は、設置位置情報と、設置位置情報および制御情報の種別に対応して異なる検出領域範囲情報とを記憶する。
【0081】
上述のように初期設定が完了している状態において、選択部34は、設置位置情報を参照して、検出領域範囲情報を選択する。つまり、レーダ装置10-1の選択部34は、第2テーブルT2における第1項目(レーダ装置A)や、第3テーブルT3における第1項目(レーダ装置A)を参照して、フラグに対応した検出領域範囲情報を選択することができる。また、レーダ装置10-2の選択部34は、第2テーブルT2における第2項目(レーダ装置B)や、第3テーブルT3における第2項目(レーダ装置B)を参照して、フラグに対応した検出領域範囲情報を選択することができる。
【0082】
また、センサシステム1は、上述したレーダ装置10を複数有するとともに、車両Cに対して異なる位置に設置されているので、レーダ装置10の受信部16で受信した信号をすべて処理するのではなく、選択部34で選択された検出領域範囲情報に係る範囲に絞って、物標の位置情報を検出するので、処理の負担を軽減し、任意の角度から到来する信号を効率的に処理することができる。
【0083】
ここで、一例として、車両が高速道路を走行している場合について説明する。図17は、車両が高速道路を走行しているときの検出部35による検出範囲の一例を模式的に示す図である。
【0084】
レーダ装置10は、ECU80から送信されてきた制御情報の種別を判定し、受信部16により受信した所定の信号に基づいて、判定結果に対応した検出領域範囲情報に含まれる物標の位置情報を検出する。車両が高速道路を走行していることは、車両の速度情報や、他の情報(例えば、電子料金収受システム(ETC、Electronic Toll Collection System)による処理情報など)から把握することができる。具体的に、レーダ装置10-1では、高速道路を走行している場合には、図17に示すように、検出部35による検出範囲R41が前方周辺に集中する。レーダ装置10-2では、高速道路を走行している場合には、図17に示すように、検出部35による検出範囲R42が前方周辺に集中する。なお、図17に示す検出範囲R41,R42は一例であって、この検出範囲に限定されない。
【0085】
よって、レーダシステム1は、高速道路を走行しているときには、例えば、前方周辺の物標の位置をいち早く検知することができる。
【0086】
つぎに、一例として、車両がT字路で左折する場合について説明する。図18は、車両が左折するときの検出部35による検出範囲の一例を模式的に示す図である。
【0087】
レーダ装置10は、ECU80から送信されてきた制御情報の種別を判定し、受信部16により受信した所定の信号に基づいて、判定結果に対応した検出領域範囲情報に含まれる物標の位置情報を検出する。車両が左折することは、ハンドルの操舵角度情報や方向指示器の指示情報から把握することができる。具体的には、レーダ装置10-1では、左折する場合には、図18に示すように、検出部35による検出範囲R51が左側周辺に集中する。レーダ装置10-2では、左折する場合には、図18に示すように、検出部35による検出範囲R52が前方周辺に集中する。よって、レーダシステム1は、左折する場合において、例えば、巻き込む可能性のある左側の物標をいち早く検出することができる。
【0088】
また、図18に示す検出範囲R51,R52は一例であって、この検出範囲に限定されない。図19は、車両が左折するときの検出部35による検出範囲の他の一例を模式的に示す図である。レーダ装置10-1では、左折する場合には、上述と同様に、図19に示すように、検出部35による検出範囲R61が左側周辺に集中する。レーダ装置10-2では、左折する場合には、図19に示すように、検出部35による検出範囲R62が右側周辺に集中する。よって、レーダシステム1は、左折する場合において、例えば、巻き込む可能性のある左側の物標をいち早く検出し、かつ、右側から接近する物標をいち早く検出することができる。
【0089】
つぎに、一例として、車両が駐車場を走行している場合について説明する。図20は、車両が駐車場を走行しているときの検出部35による検出範囲の一例を模式的に示す図である。
【0090】
レーダ装置10は、ECU80から送信されてきた制御情報の種別を判定し、受信部16により受信した所定の信号に基づいて、判定結果に対応した検出領域範囲情報に含まれる物標の位置情報を検出する。車両が駐車場を走行(徐行)していることは、車両の速度情報から把握することができる。具体的には、レーダ装置10-1では、徐行している場合には、図20に示すように、検出部35による検出範囲R71が前方周辺に集中する。レーダ装置10-2では、徐行している場合には、図20に示すように、検出部35による検出範囲R72が前方周辺に集中する。よって、レーダシステム1は、駐車場を徐行している場合において、例えば、周辺からの飛び出しなどをいち早く検出することができる。
【0091】
つぎに、一例として、車両が駐車場から出発する場合について説明する。図21は、車両が駐車場を出発するときの検出部35による検出範囲の一例を模式的に示す図である。
【0092】
レーダ装置10は、ECU80から送信されてきた制御情報の種別を判定し、受信部16により受信した所定の信号に基づいて、判定結果に対応した検出領域範囲情報に含まれる物標の位置情報を検出する。車両が駐車場を出発することは、車両の速度情報や、方向指示器の情報などから把握することができる。なお、本例においては、車両Cは、フロントバンパ内の左側にレーダ装置10-1が配置され、フロントバンパ内の右側にレーダ装置10-2が配置され、リアバンパ内の左側にレーダ装置10-3が配置され、リアバンパ内の右側にレーダ装置10-4が配置されているものとする。
【0093】
具体的には、レーダ装置10-1では、駐車場から出発する場合には、図20に示すように、検出部35による検出範囲R81が前方周辺に集中する。レーダ装置10-2では、駐車場から出発する場合には、図20に示すように、検出部35による検出範囲R82が前方周辺に集中する。レーダ装置10-3では、駐車場から出発する場合には、図20に示すように、検出部35による検出範囲R83が後方周辺に集中する。レーダ装置10-4では、駐車場から出発する場合には、図20に示すように、検出部35による検出範囲R84が後方周辺に集中する。よって、レーダシステム1は、駐車場から低速度で出発する場合において、例えば、周辺からの飛び出しなどをいち早く検出することができる。
【0094】
上述したように、本実施の形態に係るレーダシステム1およびレーダ装置10は、時々刻々と変化する環境の変化に伴う車両の動作状態に応じて、受信部16で受信した信号の中から、任意の角度から到来する信号を選択的に処理して、物標の位置情報を検出することができ、かつ、信号の処理負担を軽減することができる。
【0095】
(信号処理方法について)
つぎに、車両に搭載され、車両外に所定の信号を送信および受信して車両に対する物標の位置情報を検出するレーダ装置10の信号処理方法について説明する。図22は、物標の位置情報を検出する信号処理方法の手順を示すフローチャートである。
【0096】
ステップST11において、取得部31は、上位装置であるECU80から送信されてきた制御情報を取得する(取得工程)。
【0097】
ステップST12において、判定部32は、ステップST11の工程で取得した制御情報の種別を判定する(判定工程)。
【0098】
ステップST13において、選択部34は、ステップST12工程により判定された制御情報の種別に対応する検出領域範囲情報を、物標の位置情報を検出する検出領域の範囲を示す検出領域範囲情報を複数記憶する記憶部33の中から選択する(選択工程)。
【0099】
ステップST14において、検出部35は、受信部16で受信した所定の信号に基づいて、ステップST13の工程で選択された検出領域範囲情報に含まれる物標の位置情報を検出する(検出工程)。
【0100】
このような構成によれば、信号処理方法は、時々刻々と変化する環境の変化に伴う車両の動作状態に応じて、受信部16で受信した信号の中から、任意の角度から到来する信号を選択的に処理して、物標の位置情報を検出することができ、かつ、信号の処理負担を軽減することができる。
【0101】
(信号処理プログラムについて)
車両に搭載され、車両外に所定の信号を送信および受信して車両に対する物標の位置情報を検出する信号処理プログラムは、主に以下の工程で構成されており、コンピュータ500(ハードウェア)によって実行される。
【0102】
工程1(取得工程):上位装置であるECU80から送信されてきた制御情報を取得する工程
工程2(判定工程):工程1で取得した制御情報の種別を判定する工程
工程3(選択工程):工程2により判定された制御情報の種別に対応する検出領域範囲情報を、物標の位置情報を検出する検出領域の範囲を示す検出領域範囲情報を複数記憶する記憶部33の中から選択する工程
工程4(検出工程):受信部16で受信した所定の信号に基づいて、工程3で選択された検出領域範囲情報に含まれる物標の位置情報を検出する工程
【0103】
ここで、コンピュータ500の構成と動作について図を用いて説明する。図23は、コンピュータ500の構成を示す図である。コンピュータ500は、図23に示すように、プロセッサ501と、メモリ502と、ストレージ503と、入出力I/F504と、通信I/F505とがバスA上に接続されて構成されており、これらの各構成要素の協働により、本開示に記載される機能、および/または、方法を実現する。
【0104】
入出力I/F504には、上位装置であるECU80が接続される。
【0105】
メモリ502は、RAM(Random Access Memory)で構成される。RAMは、揮発メモリまたは不揮発性メモリで構成されている。
【0106】
ストレージ503は、ROM(Read Only Memory)で構成される。ROMは、不揮発性メモリで構成されており、例えば、HDD(Hard Disc Drive)またはSSD(Solid State Drive)により実現される。ストレージ503は、上述した記憶部33に相当する。ストレージ503には、上述した工程1~工程4で実現される信号処理プログラムなどの各種のプログラムが格納されている。
【0107】
例えば、プロセッサ501は、コンピュータ500全体の動作を制御する。プロセッサ501は、ストレージ503からオペレーティングシステムや多様な機能を実現する様々なプログラムをメモリ502にロードし、ロードしたプログラムに含まれる命令を実行する演算装置である。
【0108】
具体的には、プロセッサ501は、ユーザの操作を受け付けた場合、ストレージ503に格納されているプログラム(例えば、信号処理プログラム)を読み出し、読み出したプログラムをメモリ502に展開し、プログラムを実行する。また、プロセッサ501が処理プログラムを実行することにより、判定部32、選択部34および検出部35の各機能が実現される。
【0109】
ここで、プロセッサ501の構成について説明する。プロセッサ501は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、これら以外の各種演算装置、またはこれらの組み合わせにより実現される。
【0110】
また、本開示に記載される機能、および/または、方法を実現するために、プロセッサ501、メモリ502およびストレージ503などの機能の一部または全部は、専用のハードウェアである処理回路601で構成されてもよい。図24は、コンピュータ600の処理回路601の構成を示す図である。処理回路601は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化されたプロセッサ、並列プログラム化されたプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はこれらを組み合わせたものである。
【0111】
また、プロセッサ501は、単一の構成要素として説明したが、これに限られず、複数の物理的に別体のプロセッサの集合により構成されてもよい。本明細書において、プロセッサ501によって実行されるとして説明されるプログラムまたは当該プログラムに含まれる命令は、単一のプロセッサ501で実行されてもよいし、複数のプロセッサにより分散して実行されてもよい。また、プロセッサ501によって実行されるプログラムまたは当該プログラムに含まれる命令は、複数の仮想プロセッサにより実行されてもよい。
【0112】
通信I/F505は、所定の通信規格(例えば、CAN)に準拠したインターフェースであり、有線または無線により外部装置(例えば、ECU80)と通信を行う。プロセッサ501が信号処理プログラムに基づいて通信I/F505を制御することにより、取得部31の機能が実現される。
【0113】
このようにして、信号処理プログラムは、コンピュータ500,600で実行されることにより、時々刻々と変化する環境の変化に伴う車両の動作状態に応じて、受信部16で受信した信号の中から、任意の角度から到来する信号を選択的に処理して、物標の位置情報を検出することができ、かつ、信号の処理負担を軽減することができる。
【0114】
以上、本願の実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、本発明の開示の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。
【符号の説明】
【0115】
1 レーダシステム
10 レーダ装置
10-1 レーダ装置
10-2 レーダ装置
11 局部発振部
12 送信部
13 変調部
14 送信アンテナ
15 第1処理部
16 受信部
17-1~17-8 第1受信アンテナ~第8受信アンテナ
18 アンテナ切換部
19 利得可変増幅部
20 復調部
21 A/D変換部
22 プリント基板
30 第2処理部
31 取得部
32 判定部
33 記憶部
34 選択部
35 検出部
40 クリアランスソナー装置
50 画像処理装置
61 撮像装置
62 撮像装置
70 接続線
80 ECU
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24