(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】受発光装置及び劣化診断方法
(51)【国際特許分類】
G01J 1/00 20060101AFI20231023BHJP
G01R 35/00 20060101ALI20231023BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20231023BHJP
G01R 31/00 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
G01J1/00 C
G01R35/00 L
G01R31/26 F
G01R31/00
(21)【出願番号】P 2020045148
(22)【出願日】2020-03-16
【審査請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】P 2019056808
(32)【優先日】2019-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100181272
【氏名又は名称】神 紘一郎
(72)【発明者】
【氏名】高木 雄太
【審査官】嶋田 行志
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-043386(JP,A)
【文献】特開2007-027322(JP,A)
【文献】再公表特許第2015/166728(JP,A1)
【文献】特開平07-245440(JP,A)
【文献】特開2006-024836(JP,A)
【文献】特開2003-249717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00-G01J 1/60
G01J 11/00
G01R 35/00-G01R 35/06
G01R 31/00-G01R 31/27
G01R 11/00-G01R 11/66
H01S 3/00-H01S 3/30
H01S 5/00-H01S 5/50
JSTPlusJST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動電流に応じた発光量の光を出力する発光素子と、
前記発光素子からの光を受光し、受光量に応じた検出電流を出力する受光素子と、
前記発光素子へと前記駆動電流を供給し、前記受光素子から前記検出電流を取得する制御部と、
演算部と、
を備え、
前記制御部は、
前記発光素子へと第1の駆動電流を供給した場合に、前記受光素子から第1の検出電流を取得し、
前記発光素子へと第2の駆動電流を供給した場合に、前記受光素子から第2の検出電流を取得し、
前記演算部は、
所定の時刻において前記第1の検出電流を前記第2の検出電流で除した値である基準値と、
前記所定の時刻から所定時間経過後において前記第1の検出電流を前記第2の検出電流で除した値である経年値とが、劣化判定条件を満たす場合に、前記発光素子の劣化を示す信号を生成
し、
前記劣化判定条件は、
前記経年値を前記基準値で除した値が第1の閾値より大きい又は第2の閾値以下という条件である、
受発光装置。
【請求項2】
前記演算部は、
前記基準値を算出し、
前記所定の時刻から所定時間経過後において、前記経年値を算出する、請求項1に記載の受発光装置。
【請求項3】
前記基準値を記憶する記憶部を備える、請求項1または2に記載の受発光装置。
【請求項4】
校正を行う装置と通信する通信部を備え、
前記演算部は、前記発光素子の劣化を示す信号を前記通信部へ出力する、請求項1から3のいずれか一項に記載の受発光装置。
【請求項5】
前記演算部は、前記劣化判定条件を満たす場合、前記経年値を用いて、前記第1の検出電流と前記第2の検出電流の少なくとも一方の補正値を算出する、請求項1から4のいずれか一項に記載の受発光装置。
【請求項6】
前記演算部は、前記劣化判定条件を満たす場合、
前記第1の検出電流及び前記第2の検出電流の両方、もしくは少なくともいずれか一方に対してベースライン補正を実施する、請求項1から4のいずれか一項に記載の受発光装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記劣化判定条件を満たす場合、前記経年値を用いて、前記第1の駆動電流及び前記第2の駆動電流を調整する、請求項1から4のいずれか一項に記載の受発光装置。
【請求項8】
前記発光素子がLED又は半導体レーザーである、請求項1から7のいずれか一項に記載の受発光装置。
【請求項9】
前記発光素子が0.7μmより長い波長の光を発光する、請求項1から8のいずれか一項に記載の受発光装置。
【請求項10】
前記受光素子が量子型センサ又は量子型赤外線センサである、請求項1から9のいずれか一項に記載の受発光装置。
【請求項11】
前記発光素子と前記受光素子とが同一基板上に形成される、請求項1から10のいずれか一項に記載の受発光装置。
【請求項12】
前記制御部は、
前記第1の検出電流を取得する時刻と前記第2の検出電流を取得する時刻との間隔が10秒以下となるように、前記第1の検出電流及び前記第2の検出電流を取得する、請求項1から11のいずれか一項に記載の受発光装置。
【請求項13】
駆動電流に応じた発光量の光を出力する発光素子と、前記発光素子からの光を受光し、受光量に応じた検出電流を出力する受光素子と、を備える受発光装置で実行される、前記発光素子の劣化診断方法であって、
前記発光素子へと前記駆動電流を供給し、前記受光素子から前記検出電流を取得するステップと、
前記発光素子へと第1の駆動電流を供給した場合に、前記受光素子から第1の検出電流を取得するステップと、
前記発光素子へと第2の駆動電流を供給した場合に、前記受光素子から第2の検出電流を取得するステップと、
所定の時刻において前記第1の検出電流を前記第2の検出電流で除した値である基準値と、
前記所定の時刻から所定時間経過後において前記第1の検出電流を前記第2の検出電流で除した値である経年値とが、劣化判定条件を満たす場合に、前記発光素子の劣化を示す信号を生成するステップと、
を含
み、
前記劣化判定条件は、
前記経年値を前記基準値で除した値が第1の閾値より大きい又は第2の閾値以下という条件である、
劣化診断方法。
【請求項14】
前記劣化判定条件を満たした場合に、前記経年値を用いて、前記第1の検出電流と前記第2の検出電流の少なくとも一方の補正値を算出するステップを更に含む、請求項
13に記載の劣化診断方法。
【請求項15】
前記劣化判定条件を満たした場合に、
前記第1の検出電流及び前記第2の検出電流の両方、もしくは少なくともいずれか一方に対してベースライン補正を実施するステップを更に含む、請求項
13に記載の劣化診断方法。
【請求項16】
前記劣化判定条件を満たした場合に、前記経年値を用いて、前記第1の駆動電流及び前記第2の駆動電流を調整するステップを更に含む、請求項
13に記載の劣化診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は受発光装置及び劣化診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、赤外線を発光する発光素子と、検出対象の気体(例えば、CO2ガス)を透過した赤外線を受光する受光素子と、を備え、気体における赤外線の吸収特性を利用して、気体の濃度を検出する気体検出装置が知られている。気体検出装置では、例えば、発光素子の経年劣化などが考慮され、予め設定された所定期間(例えば、1週間、1年間)ごとに、校正が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、受光ユニットに投射される光量が、初期校正での設定値に保たれるように、発光素子の駆動電流を日常校正で定期的に補正する光学式記録媒体検出システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の受発光装置では、発光素子の劣化を簡易且つ高精度に診断することが困難であった。このため、発光素子の劣化を、光以外の特性、例えば、光源の電流駆動時の順方向電圧、逆方向電圧印加時の逆方向電流、などの特性から判断しなければならなかったが、これらの特性は、温度依存性を持つため、簡易且つ高精度な診断には向かなかった。
【0006】
一方、駆動時間から劣化を予測して校正を行う手法、例えば、1年に1度の定期校正などの校正方法も考えられるが、デバイスのばらつきや使用環境によって劣化の具合も異なるため、校正が必要な際に校正が行われない可能性がある。そのため、受発光装置の検出精度が低下するといった問題があった。
【0007】
本開示は、受発光装置の検出精度を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の受発光装置は、駆動電流に応じた発光量の光を出力する発光素子と、前記発光素子からの光を受光し、受光量に応じた検出電流を出力する受光素子と、前記発光素子へと前記駆動電流を供給し、前記受光素子から前記検出電流を取得する制御部と、演算部と、
を備え、前記制御部は、前記発光素子へと第1の駆動電流を供給した場合に、前記受光素子から第1の検出電流を取得し、前記発光素子へと第2の駆動電流を供給した場合に、前記受光素子から第2の検出電流を取得し、前記演算部は、基準値と、前記第1の検出電流と前記第2の検出電流との比である経年値とが、劣化判定条件を満たす場合に、前記発光素子の劣化を示す信号を生成する。
【0009】
本開示の劣化診断方法は、駆動電流に応じた発光量の光を出力する発光素子と、前記発光素子からの光を受光し、受光量に応じた検出電流を出力する受光素子と、を備える受発光装置で実行される、前記発光素子の劣化診断方法であって、前記発光素子へと前記駆動電流を供給し、前記受光素子から前記検出電流を取得するステップと、前記発光素子へと第1の駆動電流を供給した場合に、前記受光素子から第1の検出電流を取得するステップと、前記発光素子へと第2の駆動電流を供給した場合に、前記受光素子から第2の検出電流を取得するステップと、基準値と、前記第1の検出電流と前記第2の検出電流との比である経年値とが、劣化判定条件を満たす場合に、前記発光素子の劣化を示す信号を生成するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、受発光装置の検出精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る受発光装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る劣化診断方法の一例を示すフローチャートである。
【
図3】変形例1に係る劣化診断方法の一例を示すフローチャートである。
【
図4】変形例2に係る劣化診断方法の一例を示すフローチャートである。
【
図5】変形例3に係る劣化診断方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
<受発光装置の構成>
図1を参照して、本実施形態に係る受発光装置100について説明する。
図1は、本実施形態に係る受発光装置100の構成の一例を示す図である。
【0014】
図1に示すように、受発光装置100は、発光素子10と、受光素子20と、制御部30と、演算部40と、を備える。
【0015】
発光素子10は、制御部30から供給される駆動電流に応じて所定の光を発光する。発光素子10は、例えば、0.7μmより長い波長の光を発光する。受発光装置100が、例えば、気体検出装置である場合、所定の光は、検出対象の気体(例えば、CO2ガス)に吸収される波長を含む波長領域(例えば、4.3μm付近の波長領域)の光であることが好ましい。
【0016】
発光素子10は、例えば、発光ダイオード(Light Emitting Diode)、半導体レーザー、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ヒーター、などである。発光素子10は、発光ダイオードであることが特に好ましい。
【0017】
ここで、発光素子10の劣化率が、発光素子10に供給される駆動電流に依存する理由について、簡単に説明する。発光素子10の劣化は、結晶欠陥による内部量子効率の低下に起因すると考えられている。内部量子効率η
IRQは、次式(1)に比例する。
【数1】
Aは、SRH(Shockley-Read-Hall)再結合係数である。Bは、発光再結合係数である。Cは、オージェ再結合係数である。nは、キャリア濃度である。
【0018】
Aが、結晶欠陥の影響を最も受けるため、式(1)から、内部量子効率は、発光素子10に供給される駆動電流に依存することがわかる。即ち、発光素子10の劣化率が、発光素子10に供給される駆動電流に依存することがわかる。
【0019】
受光素子20は、発光素子10が発光する所定の光の少なくとも一部を受光し、受光量に応じて検出電流を制御部30へと出力する。受光素子20は、例えば、0.7μmより長い波長を含む波長領域の光の少なくとも一部を受光し、受光量に応じて検出電流を制御部30へと出力する。受発光装置100が、例えば、気体検出装置である場合、受光素子20は、検出対象の気体(例えば、CO2ガス)に吸収される波長を含む波長領域(例えば、4.3μm付近の波長領域)の光を受光できる構成であればよい。
【0020】
受光素子20は、例えば、量子型センサ、量子型赤外線センサ、熱型赤外線センサ、などである。量子型赤外線センサとしては、例えば、光電管、フォトダイオード、フォトトランジスタ、などが挙げられる。熱型赤外線センサとしては、例えば、焦電センサ(Pyroelectric sensor)、サーモパイル(Thermopile)、ボロメータ(Bolometer)、などが挙げられる。
【0021】
受光素子20は、発光素子10と同一基板上に形成されていてもよい。受光素子20と発光素子10とが、同一基板上に形成されることで、別々に基板を用意せずに済むため、製造コストを下げることができる。
【0022】
受光素子20は、一部の波長の光を透過させる機能を有する光学フィルタを更に備えていてもよい。光学フィルタとしては、例えば、4.3μm付近の波長領域の光を透過させるバンドパスフィルタ、などが挙げられる。
【0023】
制御部30は、駆動電流を発光素子10へと供給し、受光素子20から検出電流を取得する。また、制御部30は、受光素子20から取得した検出電流を、演算部40が処理可能な信号へと変換する。制御部30は、例えば、AFE(Analog Front End)である。AFEは、単数のAFE回路で構成されていてもよいし、複数のAFE回路が組み合わされて構成されていてもよい。
【0024】
制御部30は、例えば、値の異なる2種類の駆動電流(後述する第1の駆動電流及び第2の駆動電流)を、発光素子10へと供給する。上述のように、発光素子10の劣化率は、発光素子10に供給される駆動電流に依存する。従って、制御部30が、値の異なる2種類の駆動電流を発光素子10へと供給することで、演算部40は、発光素子10の劣化率の比に基づいて、発光素子10の劣化状態を判定することが可能となる。また、演算部40は、後述する劣化判定条件に基づいて、劣化を示す信号を生成することができる。なお、制御部30は、値の異なる2種類の駆動電流のみならず、値の異なる複数種類の駆動電流を、発光素子10へと供給することも可能である。
【0025】
制御部30は、例えば、所定の時刻において、第1の駆動電流を発光素子10へと供給した場合に、第1の検出電流を受光素子20から取得する。制御部30は、例えば、所定の時刻において、第2の駆動電流を発光素子10へと供給した場合に、第2の検出電流を受光素子20から取得する。所定の時刻とは、演算部40が、後述する経年値に対する基準値を算出する際の時刻である。
【0026】
所定の時刻における第1の検出電流I
p1は、次式(2)のように、表すことができる。
【数2】
【0027】
所定の時刻における第2の検出電流I
p2は、次式(3)のように、表すことができる。
【数3】
【0028】
I1は、発光素子10へと供給される第1の駆動電流である。I2は、発光素子10へと供給される第2の駆動電流である。Φp1は、第1の駆動電流I1に対する発光素子10の発光量である。Φp2は、第2の駆動電流I2に対する発光素子10の発光量である。Rλは、センサの感度である。Txは、導光機構(例えば、ライトガイド)を含む場合を想定した導光効率である。Tabsは、ガスによる光減衰率である。
【0029】
制御部30は、第1の検出電流Ip1及び第2の検出電流Ip2を略同時に取得する。例えば、制御部30は、第1の検出電流Ip1を取得する時刻と第2の検出電流Ip2を取得する時刻との間隔が10秒以下となるように、第1の検出電流Ip1及び第2の検出電流Ip2を取得する。これにより、制御部30は、例えば、発光素子10の温度が大きく変化しない間に、第1の検出電流Ip1及び第2の検出電流Ip2を取得することができるため、演算部40は、校正のタイミングを決定するために必要となる値(後述する基準値と経年値との比)を高精度に算出することが可能になる。
【0030】
また、制御部30が、第1の検出電流Ip1及び第2の検出電流Ip2を略同時に取得することで、演算部40が、これらの比(後述する基準値)を算出する際、例えば、導光効率、ガスによる光減衰率、ガスセルの反射率の減衰、などの値を考慮せずに済む。従って、演算部40は、校正のタイミングを決定するために必要となる値を簡易且つ高精度に算出することが可能になる。なお、制御部30は、微小な時間で発光素子10の温度が急激に上昇してしまうような測定環境下においては、まず、第1の検出電流Ip1を取得し、測定環境が安定した後に、第2の検出電流Ip2を取得してもよい。
【0031】
制御部30は、例えば、所定の時刻から所定時間経過後において、第1の駆動電流を発光素子10へと供給した場合に、第1の検出電流を受光素子20から取得する。制御部30は、例えば、所定の時刻から所定時間経過後において、第2の駆動電流を発光素子10へと供給した場合に、第2の検出電流を受光素子20から取得する。
【0032】
所定の時刻から所定時間経過後における第1の検出電流I’
p1は、次式(4)のように、表すことができる。
【数4】
【0033】
所定の時刻から所定時間経過後における第2の検出電流I’
p2は、次式(5)のように、表すことができる。
【数5】
【0034】
I1は、発光素子10へと供給される第1の駆動電流である。I2は、発光素子10へと供給される第2の駆動電流である。α1は、発光素子10へと第1の駆動電流が供給された場合の所定の時刻からの劣化率である。α2は、発光素子10へと第2の駆動電流が供給された場合の所定の時刻からの劣化率である。α1*Φp1は、第1の駆動電流I1に対する発光素子10の発光量であり、α2*Φp2は、第2の駆動電流I2に対する発光素子10の発光量である。Rλは、センサの感度である。T’xは、導光機構(例えば、ライトガイド)を含む場合を想定した導光効率である。T’absは、ガスによる光減衰率である。
【0035】
制御部30は、第1の検出電流Ip1及び第2の検出電流Ip2を取得した場合と同様に、第1の検出電流I’p1及び第2の検出電流I’p2を略同時に取得する。例えば、制御部30は、第1の検出電流I’p1を取得する時刻と第2の検出電流I’p2を取得する時刻との間隔が10秒以下となるように、第1の検出電流I’p1及び第2の検出電流I’p2を略同時に取得する。これにより、制御部30は、発光素子10の温度が大きく変化しない間に、第1の検出電流I’p1及び第2の検出電流I’p2を取得することができるため、演算部40は、校正のタイミングを決定するために必要となる値を高精度に算出することが可能になる。
【0036】
また、制御部30が、第1の検出電流I’p1及び第2の検出電流I’p2を略同時に取得することで、演算部40が、これらの比(後述する経年値)を算出する際、例えば、導光効率、ガスによる光減衰率、ガスセルの反射率の減衰、などの値を考慮せずに済む。従って、演算部40は、校正のタイミングを決定するために必要となる値を簡易且つ高精度に算出することが可能になる。
【0037】
演算部40は、例えば、CPU、メモリなどを含み、受発光装置100が備える各部の動作を制御する。演算部40は、メモリに展開された所定のプログラムなどを実行することによって各種の処理を実施する。
【0038】
演算部40は、所定の時刻において制御部30が取得した第1の検出電流Ip1と所定の時刻において制御部30が取得した第2の検出電流Ip2との比である基準値Sを算出する。
【0039】
基準値Sは、式(2)及び式(3)に基づいて、次式(6)のように、表すことができる。
【数6】
【0040】
演算部40は、所定の時刻から所定時間経過後において制御部30が取得した第1の検出電流I’p1と所定の時刻から所定時間経過後において制御部30が取得した第2の検出電流I’p2との比である経年値Pを算出する。
【0041】
経年値Pは、式(4)及び式(5)に基づいて、次式(7)のように、表すことができる。
【数7】
【0042】
演算部40は、式(6)及び式(7)に基づいて、基準値Sと経年値Pとの比を算出する。基準値Sと経年値Pとの比(例えば、経年値P/基準値S)は、式(6)及び式(7)に基づいて、次式(8)のように、表すことができる。
【数8】
【0043】
上述のように、基準値Sとは、所定の時刻(例えば、時刻tN)における第1の検出電流Ip1と第2の検出電流Ip2との比である。また、経年値Pとは、所定の時刻から所定時間経過後(例えば、時刻tN+1)におけるにおける第1の検出電流I’p1と第2の検出電流I’p2との比である。なお、基準値Sは、必ずしも演算部40により算出される値である必要はなく、制御部30により予め設定された値であってもよい。
【0044】
演算部40は、基準値Sと経年値Pとの比が、閾値(第1の閾値)T1より大きいか否かを判定する。閾値T1は、例えば、発光素子10へと第1の駆動電流が供給された場合の所定の時刻からの劣化率α1を、発光素子10へと第2の駆動電流が供給された場合の所定の時刻からの劣化率α2で除した値(=α1/α2)として設定された値である。演算部40は、基準値Sと経年値Pとの比を、閾値T1と比較し、劣化判定条件J1を満たすか否かを判定する。ここで、劣化判定条件J1とは、基準値Sと経年値Pとの比が閾値T1より大きいという条件である。
【0045】
演算部40は、劣化判定条件J1を満たす場合、劣化を示す信号を生成する。一方、演算部40は、劣化判定条件J1を満たさない場合、劣化を示す信号を生成しない。発光素子10の劣化が進むことで、基準値Sと経年値Pとの比は変化するため、劣化判定条件J1を満たすタイミングで、演算部40が劣化を示す信号を生成することで、受発光装置100は、適切なタイミングで校正を要求することができる。
【0046】
或いは、演算部40は、基準値Sと経年値Pとの比が、閾値(第2の閾値)T2以下であるか否かを判定する。閾値T2は、例えば、発光素子10へと第2の駆動電流が供給された場合の所定の時刻からの劣化率α2を、発光素子10へと第1の駆動電流が供給された場合の所定の時刻からの劣化率α1で除した値(=α2/α1)として設定された値である。演算部40は、基準値Sと経年値Pとの比を、閾値T2と比較し、劣化判定条件J2を満たすか否かを判定する。ここで、劣化判定条件J2とは、基準値Sと経年値Pとの比が閾値T2以下であるという条件である。
【0047】
演算部40は、劣化判定条件J2を満たす場合、劣化を示す信号を生成する。一方、演算部40は、劣化判定条件J2を満たさない場合、劣化を示す信号を生成しない。発光素子10の劣化が進むことで、基準値Sと経年値Pとの比は変化するため、劣化判定条件J2を満たすタイミングで、演算部40が劣化を示す信号を生成することで、受発光装置100は、適切なタイミングで校正を要求することができる。
【0048】
なお、閾値は、上述の閾値T1、閾値T2に限定されるものではなく、ユーザが任意に設定することが可能である。また、閾値は、その個数が特に限定されるものではなく、単数であっても複数であってもよい。閾値が、例えば、2個(第1の閾値、第2の閾値)である場合、劣化判定条件を、基準値Sと経年値Pとの比が、第1の閾値以上且つ第2の閾値以下という条件とすることも可能である。
【0049】
受発光装置100は、記憶部50を更に備えていてもよい。記憶部50は、各種の情報を記憶する機能を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、DRAM、HDD、などであってよい。記憶部50は、例えば、所定の時刻において制御部30が取得した第1の検出電流Ip1、所定の時刻において制御部30が取得した第2の検出電流Ip2、所定の時刻において制御部30が取得した第1の検出電流Ip1と所定の時刻において制御部30が取得した第2の検出電流Ip2との比である基準値S、所定の時刻から所定時間経過後において制御部30が取得した第1の検出電流I’p1、所定の時刻から所定時間経過後において制御部30が取得した第2の検出電流I’p2、所定の時刻から所定時間経過後において制御部30が取得した第1の検出電流I’p1と所定の時刻から所定時間経過後において制御部30が取得した第2の検出電流I’p2との比である経年値P、演算部40が各種処理を実行するために必要な各種プログラムや各種の情報、などを記憶する。なお、記憶部50は、演算部40の内部に設けられていてもよい。
【0050】
記憶部50は、第1の検出電流Ip1、第2の検出電流Ip2、基準値S、第1の検出電流I’p1、第2の検出電流I’p2、経年値Pなどのそれぞれの値を、1つずつ記憶するのみならず、これらのそれぞれの値を、複数ずつ記憶してもよい。
【0051】
また、受発光装置100は、通信部60を更に備えていてもよい。例えば、通信部60は、外部装置と有線或いは無線で通信可能であり、演算部40から入力される指示信号に基づいて、例えば、受発光装置100の校正要求信号を、外部装置へと送信する。これにより、外部装置を操作するユーザは、受発光装置100に校正が必要であることを認識できる。或いは、通信部60は、受発光装置100の校正要求信号を、自装置へと送信し自己校正を行うこととしてもよい。何れの場合であっても、受発光装置100は、適切なタイミングで校正が行われることになる。
【0052】
また、通信部60は、校正要求信号のみならず、例えば、演算部40から入力される各種データや、記憶部50に格納された情報を外部装置へと送信することが可能である。外部装置は、各種データに基づいて、例えば、測定結果、校正を行った時刻、などの所定の情報を表示部に表示させることも可能である。
【0053】
通信部60は、例えば、汎用非同期送受信器(UART:Universal Asynchronous Receiver Transmitter)インタフェースを使用してよい。通信部60は、例えば、外部メモリインタフェース、汎用非同期送受信器(UART:Universal Asynchronous Receiver Transmitter)インタフェース、拡張シリアル・ペリフェラル・インタフェース(eSPI:)、汎用入出力(GPIO:General-purpose input/output)インタフェース、パルス符号変調(PCM:Pulse Code Modulation)及び/もしくはIC間サウンド(I2S:Inter-IC Sound)インタフェース、集積回路間(I2C:Inter-Integrated Circuit)バスインタフェース、ユニバーサルシリアルバス(USB:Universal Serial Bus)インタフェース、ブルートゥース(登録商標)インタフェース、ジグビーインタフェース、IrDA(Infrared Data Association)インタフェース、又は、無線USB(W-USB:Wireless―Universal Serial Bus)インタフェースのうち、1つ又は複数を介して実現されてよい。通信部60は、これらの実現手段に限定されるものではない。
【0054】
本実施形態に係る受発光装置100によれば、値の異なる2種類の駆動電流を発光素子10へと供給し、基準値Sと経年値Pとの比の変化を利用して、校正のタイミングを決定する。これにより、どんな環境下であっても、適切なタイミングで校正が行われるため、受発光装置100の検出精度を高めることができる。
【0055】
<劣化診断方法>
次に、
図2を参照して、本実施形態に係る劣化診断方法について説明する。
図2は、劣化診断方法の一例を示すフローチャートである。
【0056】
ステップS201において、制御部30は、発光素子10を第1の駆動電流で駆動し、受光素子20から第1の検出電流を取得する。
【0057】
ステップS202において、制御部30は、発光素子10を第2の駆動電流で駆動し、受光素子20から第2の検出電流を取得する。
【0058】
ステップS203において、演算部40は、ステップS201で取得した第1の検出電流と、ステップS202で取得した第2の検出電流と、の比である経年値を算出する。
【0059】
ステップS204において、演算部40は、基準値とステップS203で算出した経年値との比を算出し、閾値Tと比較する。閾値Tは、ユーザにより設定された所定の値である。
【0060】
ステップS205において、演算部40は、基準値と経年値との比が、閾値Tより大きいか否か、すなわち、劣化判定条件を満たすか否かを判定する。演算部40は、基準値と経年値との比が、閾値Tより大きいと判定する場合、すなわち、劣化判定条件を満たすと判定する場合、ステップS206の処理へと進む。演算部40は、基準値と経年値との比が、閾値T以下であると判定する場合、すなわち、劣化判定条件を満たさないと判定する場合、処理を終了する。
【0061】
ステップS206において、演算部40は、劣化を示す信号を生成し、通信部60へと指示信号を出力する。
【0062】
上述の劣化診断方法によれば、発光素子の劣化を簡易且つ高精度に診断することができる。また、発光素子の劣化の有無がわかれば、受発光装置の劣化の原因の推定にも使える。例えば、受発光装置が、発光素子と、受光素子と、を備える構成であれば、発光素子の劣化であるのか、或いは、受光素子の劣化であるのか、を見分けることが可能になる。例えば、受発光装置が、発光素子と、ライトガイドと、受光素子と、を備える構成であれば、発光素子が劣化の原因であるのか、或いは、ライトガイド又は受光素子が劣化の原因であるのか、を見分けることが可能になる。即ち、ユーザは、メンテナンス時に、部品のどの部分を交換すべきかを判断する際の指標を得ることができるため、無駄な部品交換を減らすことができる。
【0063】
<変形例1>
次に、
図3を参照して、変形例1に係る劣化診断方法について説明する。
図3は、劣化診断方法の一例を示すフローチャートである。
【0064】
ステップS201において、制御部30は、発光素子10を第1の駆動電流で駆動し、受光素子20から第1の検出電流を取得する。
【0065】
ステップS202において、制御部30は、発光素子10を第2の駆動電流で駆動し、受光素子20から第2の検出電流を取得する。
【0066】
ステップS203において、演算部40は、ステップS201で取得した第1の検出電流と、ステップS202で取得した第2の検出電流と、の比である経年値を算出する。
【0067】
ステップS204において、演算部40は、基準値とステップS203で算出した経年値との比を算出し、閾値Tと比較する。閾値Tは、ユーザにより設定された所定の値である。
【0068】
ステップS205において、演算部40は、基準値と経年値との比が、閾値Tより大きいか否か、すなわち、劣化判定条件を満たすか否かを判定する。演算部40は、基準値と経年値との比が、閾値Tより大きいと判定する場合、すなわち、劣化判定条件を満たすと判定する場合、ステップS206の処理へと進む。演算部40は、基準値と経年値との比が、閾値T以下であると判定する場合、すなわち、劣化判定条件を満たさないと判定する場合、処理を終了する。
【0069】
ステップS206において、演算部40は、劣化を示す信号を生成し、通信部60へと指示信号を出力する。
【0070】
ステップS207において、演算部40は、ステップS203で算出した経年値を用いて、第1の検出電流と第2の検出電流の少なくとも一方の補正値を算出する。具体的には、演算部40は、あらかじめ数式化された経年値に対する劣化補正値モデルを参照することにより、第1の検出電流と第2の検出電流の少なくとも一方の補正値を算出する。また、ここで、補正値の算出は、あらかじめ定量化された経年値に対する劣化補正値を参照する方法であってもよい。
【0071】
変形例1に係る劣化診断方法によれば、発光素子の劣化を簡易且つ高精度に診断することができる。
【0072】
<変形例2>
次に、
図4を参照して、変形例2に係る劣化診断方法について説明する。
図4は、劣化診断方法の一例を示すフローチャートである。
【0073】
ステップS201において、制御部30は、発光素子10を第1の駆動電流で駆動し、受光素子20から第1の検出電流を取得する。
【0074】
ステップS202において、制御部30は、発光素子10を第2の駆動電流で駆動し、受光素子20から第2の検出電流を取得する。
【0075】
ステップS203において、演算部40は、ステップS201で取得した第1の検出電流と、ステップS202で取得した第2の検出電流と、の比である経年値を算出する。
【0076】
ステップS204において、演算部40は、基準値とステップS203で算出した経年値との比を算出し、閾値Tと比較する。閾値Tは、ユーザにより設定された所定の値である。
【0077】
ステップS205において、演算部40は、基準値と経年値との比が、閾値Tより大きいか否か、すなわち、劣化判定条件を満たすか否かを判定する。演算部40は、基準値と経年値との比が、閾値Tより大きいと判定する場合、すなわち、劣化判定条件を満たすと判定する場合、ステップS206の処理へと進む。演算部40は、基準値と経年値との比が、閾値T以下であると判定する場合、すなわち、劣化判定条件を満たさないと判定する場合、処理を終了する。
【0078】
ステップS206において、演算部40は、劣化を示す信号を生成し、通信部60へと指示信号を出力する。
【0079】
ステップS207Aにおいて、演算部40は、ベースライン補正を実施する。ベースライン補正とは、具体的には、あらかじめ数式化した閾値Tに対する劣化補正値モデルを参照し、得られた劣化補正値を用いて、以降全ての検出電流値を補正することである。
【0080】
変形例2に係る劣化診断方法によれば、発光素子の劣化を簡易且つ高精度に診断することができる。
【0081】
<変形例3>
次に、
図5を参照して、変形例3に係る劣化診断方法について説明する。
図5は、劣化診断方法の一例を示すフローチャートである。
【0082】
ステップS201において、制御部30は、発光素子10を第1の駆動電流で駆動し、受光素子20から第1の検出電流を取得する。
【0083】
ステップS202において、制御部30は、発光素子10を第2の駆動電流で駆動し、受光素子20から第2の検出電流を取得する。
【0084】
ステップS203において、演算部40は、ステップS201で取得した第1の検出電流と、ステップS202で取得した第2の検出電流と、の比である経年値を算出する。
【0085】
ステップS204において、演算部40は、基準値とステップS203で算出した経年値との比を算出し、閾値Tと比較する。閾値Tは、ユーザにより設定された所定の値である。
【0086】
ステップS205において、演算部40は、基準値と経年値との比が、閾値Tより大きいか否か、すなわち、劣化判定条件を満たすか否かを判定する。演算部40は、基準値と経年値との比が、閾値Tより大きいと判定する場合、すなわち、劣化判定条件を満たすと判定する場合、ステップS206の処理へと進む。演算部40は、基準値と経年値との比が、閾値T以下であると判定する場合、すなわち、劣化判定条件を満たさないと判定する場合、処理を終了する。
【0087】
ステップS206において、演算部40は、劣化を示す信号を生成し、通信部60へと指示信号を出力する。
【0088】
ステップS207Bにおいて、制御部30は、ステップS203で算出した経年値を用いて、第1の駆動電流および第2の駆動電流を調整する。
【0089】
変形例3に係る劣化診断方法によれば、発光素子の劣化を簡易且つ高精度に診断することができる。
【0090】
<実施形態の適用>
本実施形態に係る受発光装置は、種々の機器に適用することが可能である。例えば、建物や測定機器に含まれる特定のガス濃度を検出するためのガスセンサ、携帯電話やスマートフォンなどの携帯通信機器に搭載されるガスセンサ、自動車、電車、航空機などの移動手段に含まれるガス濃度を検出するためのガスセンサ、発光素子と受光素子との間の光路空間を流れる物質(例えば、水、体液)の成分検出装置、血液中のグルコース濃度測定装置、など種々の機器に適用することが可能である。
【0091】
<その他の変形例>
本実施形態では、制御部30と演算部40とが、別々に構成される場合を一例に挙げて説明したが、制御部30と演算部40とは、組み合わされて構成されていてもよい。
【0092】
上述の実施形態は代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換ができることは当業者に明らかである。したがって、本発明は、上述の実施形態によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。例えば、実施形態の構成図に記載の複数の構成ブロックを1つに組み合わせたり、あるいは1つの構成ブロックを分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0093】
10 発光素子
20 受光素子
30 制御部
40 演算部
50 記憶部
60 通信部
100 受発光装置