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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】アレーアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/08 20060101AFI20231023BHJP
   H01Q 13/08 20060101ALI20231023BHJP
   H01Q 1/52 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
H01Q21/08
H01Q13/08
H01Q1/52
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020056677
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021158516
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】室伏 規雄
(72)【発明者】
【氏名】西野 宏佑
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第10476149(US,B1)
【文献】特開2019-186966(JP,A)
【文献】特開2018-029249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 21/08
H01Q 13/08
H01Q 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁部と、
前記絶縁部に対して一の面側に設けられるアンテナ部と、
前記絶縁部において、前記アンテナ部に対して離隔して設けられる導体部と、を備え、
前記アンテナ部は、所定の方向から信号発生部に接続される第1素子が、前記所定の方向と交差する交差方向に複数並んだ素子列と、各々の前記第1素子を前記交差方向から挟み込むように配置される第2素子と、を有し、
複数の前記第2素子のうち少なくとも1つが、前記導体部に電気的に接続されていることを特徴とするアレーアンテナ。
【請求項2】
複数の前記第2素子のうち前記交差方向において一方および他方の端部から2番目に位置する前記第2素子が、前記導体部に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1に記載のアレーアンテナ。
【請求項3】
複数の前記第2素子のうち前記交差方向において一方および他方の端部から3番目に位置する前記第2素子が、前記導体部に電気的に接続されていることを特徴とする請求項2に記載のアレーアンテナ。
【請求項4】
前記絶縁部は、基板本体と、前記基板本体に形成されたスルーホールと、前記スルーホールの内周面に設けられた導電性ビアと、を有し、
前記第2素子は、前記導電性ビアを介して前記導体部に電気的に接続されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のアレーアンテナ。
【請求項5】
前記第2素子と前記導電性ビアとが接触する位置が、前記複数の第1素子における励振中心同士を結ぶ線上に配置されていることを特徴とする請求項4に記載のアレーアンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレーアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1の方向に並ぶ複数の給電素子と、給電素子を第1の方向に挟むように配置された無給電素子と、を備えたアレーアンテナが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載されたアレーアンテナでは、無給電素子を設けることによって複共振を生じさせ、広帯域化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-186966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたように給電素子及び無給電素子を備えたアレーアンテナでは、給電素子及び無給電素子の数が多くなると、アンテナ利得の周波数依存性が高くなる(即ち、周波数を横軸とし、アンテナ利得を縦軸としてグラフ化した際に、アンテナ利得の平坦度が低下する)場合があった。従って、アンテナ利得の平坦度をさらに向上させることが望まれていた。
【0005】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、アンテナ利得の平坦度を向上させることができるアレーアンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るアレーアンテナは、絶縁部と、前記絶縁部に対して一の面側に設けられるアンテナ部と、前記絶縁部において、前記アンテナ部に対して離隔して設けられる導体部と、を備え、前記アンテナ部は、所定の方向から信号発生部に接続される第1素子が、前記所定の方向と交差する交差方向に複数並んだ素子列と、各々の前記第1素子を前記交差方向から挟み込むように配置される第2素子と、を有し、複数の前記第2素子のうち少なくとも1つが、前記導体部に電気的に接続されていることを特徴とする。
【0007】
本発明の一態様に係るアレーアンテナにおいて、複数の前記第2素子のうち前記交差方向において一方および他方の端部から2番目に位置する前記第2素子が、前記導体部に電気的に接続されている。
【0008】
本発明の一態様に係るアレーアンテナにおいて、複数の前記第2素子のうち前記交差方向において一方および他方の端部から3番目に位置する前記第2素子が、前記導体部に電気的に接続されている。
【0009】
本発明の一態様に係るアレーアンテナにおいて、前記絶縁部は、基板本体と、前記基板本体に形成されたスルーホールと、前記スルーホールの内周面に設けられた導電性ビアと、を有し、前記第2素子は、前記導電性ビアを介して前記導体部に電気的に接続されている。
【0010】
本発明の一態様に係るアレーアンテナにおいて、前記第2素子と前記導電性ビアとが接触する位置が、前記複数の第1素子における励振中心同士を結ぶ線上に配置されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るアレーアンテナによれば、アンテナ利得の平坦度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施の形態に係るアレーアンテナの正面図である。
図2】本発明の実施の形態に係るアレーアンテナの平面図である。
図3】本発明の実施の形態に係るアレーアンテナ及び比較例1の電界分布のグラフである。
図4】本発明の実施例のシミュレーション条件を説明するための平面図及び正面図である。
図5】本発明の実施例1及び比較例2のアレーアンテナのアンテナ利得周波数特性のグラフである。
図6】本発明の実施例1及び実施例2のアレーアンテナのアンテナ利得周波数特性のグラフである。
図7】本発明の実施例2及び比較例2のアレーアンテナのアンテナパターンのグラフである。
図8】本発明の実施例1、3、4、5のアレーアンテナのアンテナ利得周波数特性のグラフである。
図9】本発明の実施例6~10及び比較例3のアレーアンテナのアンテナ利得周波数特性のグラフである。
図10】本発明の実施例1~15のアレーアンテナのアンテナ利得周波数特性のグラフである。
図11】本発明の実施例のアレーアンテナにおいてスルーホール位置を変化させた際の利得比のグラフである。
図12】本発明の実施例16A~16Cのアレーアンテナのアンテナ利得周波数特性のグラフである。
図13】本発明の実施例17A~17Cのアレーアンテナのアンテナ利得周波数特性のグラフである。
図14】本発明の実施例18及び比較例3のアレーアンテナにおいて第2素子の位置を変化させた際の利得比のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0014】
図1は、本発明の実施の形態に係るアレーアンテナ1の正面図であり、図2は、本発明の実施の形態に係るアレーアンテナ1の平面図であり、図3は、本発明の実施の形態に係るアレーアンテナ1及び比較例1の電界分布のグラフである。
【0015】
図1、2に示すように、本発明の実施の形態に係るアレーアンテナ1は、絶縁部2と、絶縁部2に対して一の面(以下では「一方の面」と表現する場合がある)2B側に設けられるアンテナ部4と、絶縁部2において、アンテナ部4に対して離隔して設けられる導体部3と、を備える。アンテナ部4は、所定の方向(Y方向)から信号発生部に接続される第1素子5が、所定の方向と交差する交差方向(X方向)に複数並んだ素子列41と、各々の第1素子5を交差方向から挟み込むように配置される第2素子6と、を有する。複数の第2素子6のうち少なくとも1つが、導体部3に電気的に接続されている。以下、アレーアンテナ1について具体的に説明する。
【0016】
アレーアンテナ1は、例えば多層誘電体基板によって構成された平面アンテナである。以下では、全体として平板状に形成されたアレーアンテナ1が延在する平面をXY平面とし、XY平面に対して直交する方向(板厚方向)をZ方向とする。Z方向において、導体部3と絶縁部2とアンテナ部4とがこの順に積層されており、導体部3側を下側と呼ぶことがあり、アンテナ部4側を上側と呼ぶことがある。
【0017】
絶縁部2は、XY平面に沿った絶縁性基板(誘電体基板)である基板本体21と、基板本体21に形成されたスルーホール22と、スルーホール22の内周面に導体が設けられることで形成された導電性ビア23と、を有する。絶縁部2の基板本体21におけるZ方向下側の面を他方の面2Aとし、Z方向上側の面を一方の面2Bとする。導電性ビア23を挟むように他方の面2Aに設けられた部品と、一方の面2Bに設けられた部品と、が電気的に接続されるようになっている。
【0018】
導体部3は、絶縁部2の他方の面2Aに対して積層された金属層である。導体部3の電位は、アレーアンテナの基準電位とすることができる。導体部3は、基準電位となる金属層として機能できる程度の体積を有していればよく、面2A全体を覆うように形成されていてもよいし、面2Aの一部のみを覆うように設けられていてもよい。この他、絶縁部2が導体部3を内包する構成や、絶縁部2が導体部3および他の1または複数の金属層を有する構成等により、絶縁部2において、アレーアンテナ1に対して離隔するように導体部3を設けることができる。尚、導体部3を接地する様にしてもよい。
【0019】
アンテナ部4は、1列の素子列41と、複数の第2素子6と、を有する。複数の第1素子5が、XY平面におけるX方向に沿って並ぶことにより、素子列41が形成される。第1素子5は、Y方向(XY平面においてX方向と直交する方向)に沿って延びる給電線7を介して信号発生部に接続される給電素子である。即ち、発振器や変調器等を有する信号発生部によって送信信号が生成され、この送信信号が電気信号として第1素子5に供給されることにより、第1素子5が電磁波を放射するようになっている。この様に構成された素子列41は、Y方向を主な偏波方向とする電波を放射することができる。
【0020】
第1素子5は、例えば金属薄膜によって構成され、当該金属薄膜は、Y方向に沿った一対の辺511、512と、一対の辺511、512のY方向一方側(図2における上側)の端同士を接続するとともにX方向に沿って延びる辺513と、辺513よりもY方向他方側(図2における下側)において一対の辺511、512の間に位置する接続部514と、を有する。接続部514のX方向中央部には、薄膜状の給電線7が接続され、接続部514のX方向の両端部には、Y方向一方側に向かって突出する凸部52、53が形成されている。即ち、凸部52、53と給電線7とのそれぞれの間には、凹部54、55が形成されている。第1素子5と給電線7とが一体に形成される。第1素子5は、Y方向を主な偏波方向とし、凸部52、53を含む第1素子5のY方向寸法によって共振周波数が決まる。
【0021】
第2素子6は、無給電素子(いわゆる寄生素子)であって、信号発生部には接続されない。第2素子6は、各々の第1素子5をX方向から挟み込むように配置される。即ち、X方向において1つの第1素子5と1つの第2素子6とが交互に配置され、第1素子5よりも第2素子6の方が1個だけ多い。第2素子6のY方向寸法は、凸部52、53を含む第1素子5のY方向寸法よりも若干大きいか又は若干小さい。このようにして、第2素子6の共振周波数は、第1素子5の共振周波数と若干異なるものとなっている。隣り合う第1素子5と第2素子6の中央部同士の間隔は、共振周波数に対応した波長の半分に設定されている。
【0022】
図1、2に示す例では、4つの第1素子5A~5Dと、5つの第2素子6A~6Eと、が設けられている。以下では、各々の第1素子5A~5D又は第2素子6A~6Eを指し示す際、図1、2における左側から順番を数えるものとし、例えば最も左側に位置する第1素子5Aを1番目の第1素子とし、最も右側に位置する第1素子5Dを4番目の第1素子とし、最も左側に位置する第2素子6Aを1番目の第2素子とし、最も右側に位置する第2素子6Eを5番目の第2素子とする。
【0023】
2番目の第2素子6B及び4番目の第2素子6Dは、導電性ビア23によって導体部3に電気的に接続される。換言すれば、絶縁部2の基板本体21には、2番目の第2素子6B及び4番目の第2素子6Dが設けられる位置のそれぞれに、スルーホール22が形成されている。他の第2素子6A、6C、6Eは、導体部3には接続されない。2番目の第2素子6B及び4番目の第2素子6Dは、いずれも、X方向において端部から2番目に位置する第2素子である。尚、「第2素子が導体部に電気的に接続される」とは、特に説明がない限り、抵抗等を介さずに短絡されていることを意味する。
【0024】
また、スルーホール22及び導電性ビア23のY方向位置は、凸部52、53を含む第1素子5のY方向中央部に対応する。凸部52、53を含む第1素子5のY方向中央部が、第1素子5の励振中心となる。即ち、複数の第1素子5の励振中心同士を結ぶ直線をX0(図2に一点鎖線で示す)とすると、スルーホール22及び導電性ビア23が線X0上に配置される。第2素子6は、接続部としての導電性ビア23を介して導体部3に電気的に接続される。導電性ビア23が形成されるスルーホール22の周面が、複数の第1素子5における励振中心同士を結ぶ線X0と交差する様に配置されている。即ち、第2素子6と導電性ビア23とが接触する位置が、複数の第1素子5における励振中心同士を結ぶ線X0上に配置されている。このとき、スルーホール22の中心が、線X0上に配置されるようにしてもよい。
【0025】
また、第2素子6のY方向中央部に導電性ビア23が設けられている。従って、凸部52、53を含む第1素子5のY方向中央部と、第2素子6のY方向中央部と、が対応する(これらがX方向において並ぶ)ようになっている。
【0026】
ここで、第2素子6を導体部3に対して電気的に接続することによるアレーアンテナ1の電界分布の変化について、図3のシミュレーション結果を参照しつつ説明する。本シミュレーションは、6個の第1素子5と7個の第2素子6とが設けられ、全ての第2素子6が導体部3に電気的に接続される条件で行った。各部の寸法等、他のシミュレーション条件は、後述する実施例と同様である。また、比較例1として、全ての第2素子6を導体部3に電気的に接続しない条件におけるシミュレーション結果も示す。実施形態と比較例1との条件の差は、第2素子6を導体部3に接続しているか否かのみである。
【0027】
図3の横軸は、上記の線X0上の変位であり、6個の第1素子5からなるアレーアンテナの中央部(7個の第2素子6のうち中央の第2素子6の位置)を原点(0mm)としたものである。図3の縦軸は、線X0上の各変位における電界強度に対応している。尚、本シミュレーションでは、発振周波数を80GHzとしている。いずれのシミュレーション結果においても、各々の第1素子5のX方向中央部及び第2素子6のX方向中央部において、電界の強さが極小値となり、各々の第1素子5のX方向両端部において、電界の強さが極大値となる。以下では、電界の極大値について強さを比較する。破線で示す比較例1の電界分布では、アンテナ部全体のX方向両端部及び中央部において電界が強くなり、端部と中央部との間では電界が弱くなる。これに対し、実施形態の電界分布では、アンテナ部全体の両端部の電界がさらに強くなるとともに、端部と中央部との間の電界も強くなる。従って、実施形態においては、X方向において電界の極大値の変化が小さくなり、電界分布の偏りが小さくなる。
【0028】
以上のような本発明の実施形態に係るアレーアンテナ1によれば、第1素子をX方向(励振方向であるY方向との交差方向)から挟み込む第2素子6が、導体部3に電気的に接続されていることで、電界分布の偏りを抑制し、アンテナ利得の平坦度を向上させることができる。
【0029】
また、複数の第2素子6のうちX方向において端部から2番目に位置する第2素子6B、6Dが導体部3に電気的に接続されていることで、アンテナ利得の平坦度をさらに向上させることができる。
【0030】
また、第2素子6が導電性ビア23を介して導体部3に電気的に接続されることで、絶縁部2の外側を通過する電線等によってこれらを接続する構成と比較して、接続構造の複雑化を抑制することができる。
【0031】
尚、本発明は上記の実施の形態に限定されず、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、上記の本発明の実施形態では、5個の第2素子6のうち、2番目の第2素子6B及び4番目の第2素子6Dが導体部3に電気的に接続されるものとしたが、少なくとも1つの第2素子が導体部に電気的に接続されればよく、どの位置の第2素子を導体部に電気的に接続するかは、第2素子の数等に応じて適宜に設定されればよい。
【0032】
7個以上の第2素子が設けられる(6個以上の第1素子が設けられる)場合、X方向の両端部からそれぞれ2番目及び3番目に位置する合計4個の第2素子を、導体部に電気的に接続してもよい。即ち、導体部に接続されない第2素子を、導体部に接続される第2素子によってX方向から挟み込むようにしてもよい。また、アンテナ部全体においてX方向の両端部から1番目に位置する第2素子や、中央部に位置する第2素子を導体部に電気的に接続してもよい。
【0033】
また、上記の本発明の実施形態では、第2素子6が導電性ビア23を介して導体部3に電気的に接続されるものとしたが、他の接続部を介して導体部に電気的に接続されてもよい。例えば、スルーホールに挿通される棒状の金属を接続部としてもよいし、スルーホールに挿通されず絶縁部の外側を通過する電線を接続部としてもよい。
【0034】
また、上記の本発明の実施形態では、第2素子6と導電性ビア23とが接触する位置が、複数の第1素子5における励振中心同士を結ぶ線X0上に配置されているものとしたが、例えば絶縁部に他の部品等が設けられ、スペースの制約がある場合には、第2素子6と導電性ビア23との接触位置を、励振中心同士を結ぶ線X0に対してずらしてもよい。この様な場合、線X0に対するずれ量に応じた抵抗値を有する抵抗を介して、第2素子6を導体部3に電気的に接続してもよい。
【0035】
また、上記の本発明の実施形態では、アンテナ部4が、複数の第1素子5が並んだ1列の素子列41のみを有するものとしたが、アンテナ部は、複数の素子列を有していてもよい。例えば、複数の素子列がY方向に並んでいてもよい。
【0036】
また、上記の本発明の実施形態では、複数の第1素子5が、励振方向に対して直交する方向に直線状に並んで素子列を構成するものとしたが、複数の素子列が並ぶ方向は、励振方向との直交方向に対して傾きを有していてもよいし、曲線状であってもよい。
【0037】
また、上記の本発明の実施形態では、第2素子6が導電性ビア23によって導体部3に電気的に直接的に接続されるものとしたが、第2素子6と導体部3とは直接的に接続されていなくてもよく、これらの間に、抵抗(直流抵抗成分を有するもの)等が設けられていてもよい。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記本発明の実施形態に係るアレーアンテナに限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における、各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【実施例
【0039】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0040】
[シミュレーション条件]
各実施例のアンテナ利得について説明するが、アンテナ利得は全てシミュレーションにより算出したものであり、まずはシミュレーションの条件について図4を参照しつつ説明する。シミュレーション(電磁界計算)には、Ansys HFSSを用いた。第1素子5のX方向寸法L1を1.03mmとし、第1素子5のY方向寸法L2を1.03mmとし、第2素子6のX方向寸法L3を0.22mmとし、第2素子6のY方向寸法L4を0.94mmとし、X方向における第1素子5と第2素子6との間隔L5を0.31mmとし、凹部54、55の深さL6を0.35mmとし、給電線7のX方向寸法L7を0.3mmとし、凹部54、55のX方向寸法L8A、L8Bをそれぞれ0.1mmとし、アンテナ部4のZ方向寸法(第1素子5、第2素子6、給電線7のそれぞれの厚さ)L9を0.018mmとし、絶縁部2のZ方向寸法L10を0.3mmとし、スルーホール22の直径L11を0.2mmとした。これにより、第1素子5のX方向中央部同士の間隔(アレイ間隔)は、1.87mmとなる。絶縁部2の材質はMegtron6とし、この材質の誘電率εは12GHzにおいて3.6であり、誘電正接tanδは12GHzにおいて0.004である。また、以降においてアンテナ利得の平坦度を評価する際、77~81GHzの範囲におけるアンテナ利得の最大値と最小値との比(以下、「利得比」とする)を用いる。
【0041】
[第2素子の接続の有無による比較]
実施例1のアレーアンテナは、4個の第1素子5と5個の第2素子6とを備えたものであり、2番目及び4番目(即ち端部から2番目)の第2素子6が導体部3に電気的に接続されている。比較例2のアレーアンテナは、4個の第1素子5と5個の第2素子6とを備えたものであり、全ての第2素子6は導体部3に接続されていない。これらのアンテナ利得と周波数との関係を図5に示す。実施例1では利得比が約0dBとなり、比較例2では利得比が約3dBとなり、実施例1において比較例2に対してアンテナ利得の平坦度の向上が見られた。
【0042】
実施例2のアレーアンテナは、4個の第1素子5と5個の第2素子6とを備えたものであり、2番目、3番目及び4番目の第2素子6が導体部3に電気的に接続されている。図6に示すように、実施例2では利得比が約1.5dBとなり、比較例2に対してアンテナ利得の平坦度の向上が見られた。また、図7に示すH面のアンテナパターンにおいて、比較例2では±30°付近においてアンテナ利得が急激に低下して極小値となっているのに対し、実施例2では、±30°付近においてこのような極小値は見られず、低ヌル化されている。このような効果は、例えばこの様な角度において物標の存在を検出する車載レーダに本アレーアンテナを適用する際に好適である。尚、図7では、0°の方向はZ方向と一致し、±90°の方向はY方向と一致する。
【0043】
[スルーホールのY方向位置による比較]
実施例1、3~5のアレーアンテナは、それぞれ、4個の第1素子5と5個の第2素子6とを備えたものであり、2番目及び4番目(即ち端部から2番目)の第2素子6が導体部3に電気的に接続されている。実施例1、3~5は、スルーホール22の位置(導電性ビア23の位置)が異なっている。凸部52、53を含む第1素子5のY方向における中央部(線X0)に対するY方向におけるスルーホール22のずれ量をLYとする。尚、ずれ量LYは、スルーホール22が線X0に対して給電線7とは反対側に位置する際に正の値となるものとする。
【0044】
実施例1では、2つのスルーホール22のずれ量LYが0mmとなっている。実施例3では、2つのスルーホール22のずれ量LYが0.1mmとなっている。実施例4では、2番目の第2素子6に対応するスルーホール22のずれ量LYが0mmであり、4番目の第2素子6に対応するスルーホール22のずれ量LYが-0.2mmとなっている。実施例5では、2番目の第2素子6に対応するスルーホール22のずれ量LYが0.2mmであり、4番目の第2素子6に対応するスルーホール22のずれ量LYが0mmとなっている。図8に示すように、実施例3~5のいずれにおいても、利得比が1dB以内となり、比較例2に対してアンテナ利得の平坦度の向上が見られた。
【0045】
[導電部に接続する第2素子による比較]
実施例6~15及び比較例3のアレーアンテナは、それぞれ、6個の第1素子5と7個の第2素子6とを備えたものである。実施例6では、2番目、4番目及び6番目の第2素子6が導電部3に電気的に接続されている。実施例7では、2番目及び6番目の第2素子6が導電部3に電気的に接続されている。実施例8では、3番目及び5番目の第2素子6が導電部3に電気的に接続されている。実施例9では、3番目、4番目及び5番目の第2素子6が導電部3に電気的に接続されている。実施例10では、1番目及び7番目の第2素子6が導電部3に電気的に接続されている。即ち、実施例6~10では、X方向の中央部に位置する4番目の第2素子6を基準として、対称な位置の第2素子6が導電部3に電気的に接続されている。
【0046】
実施例11では、2番目、3番目及び4番目の第2素子6が導電部3に電気的に接続されている。実施例12では、3番目及び4番目の第2素子6が導電部3に電気的に接続されている。実施例13では、2番目及び3番目の第2素子6が導電部3に電気的に接続されている。実施例14では、1番目、2番目及び3番目の第2素子6が導電部3に電気的に接続されている。実施例15では、1番目及び2番目の第2素子6が導電部3に電気的に接続されている。即ち、実施例11~15では、X方向の中央部に位置する4番目の第2素子6を基準として、非対称な位置の第2素子6が導電部3に電気的に接続されている。比較例3では、全ての第2素子6が導体部3に接続されていない。
【0047】
図9、10に示すように、比較例3では利得比が9dB以上となるのに対し、実施例6~15では利得比が全て7dB以内となり、アンテナ利得の平坦度の向上が見られた。特に、対称な位置の第2素子6が導電部3に接続された実施例6~10において、利得比は3dB以下であり、アンテナ利得の平坦度の向上が顕著であった。
【0048】
図11に、対称な位置の第2素子6を導電部3に接続した際の利得比を示す。尚、横軸は各実施例を示しており、「TH」に続く数字は、何番目の第2素子6が導電部3に接続されているかを示す。例えば、「TH2356」は、2番目と3番目と5番目と6番目とに配置された第2素子6が導電部3に接続されていることを示す。また、図11に示す実施例のアレーアンテナは、実施例6~10と同様に、6個の第1素子5と7個の第2素子6とを備えたものである。
【0049】
2番目及び6番目の第2素子6が、X方向の端部から2番目に位置し、3番目及び5番目の第2素子6が、X方向の端部から3番目に位置する。少なくとも2番目及び6番目の第2素子6が導電部3に接続されている実施例においては、全て利得比が1dB以下となり、アンテナ利得の平坦度の向上が顕著であった。さらに、3番目及び5番目の第2素子6が導電部3に接続されている実施例においては、全て利得比が0.5dB以下となり、アンテナ利得の平坦度の向上が顕著であった。
【0050】
[抵抗成分を追加した場合のスルーホールのY方向位置による比較]
実施例16A~16C、17A~17Cのアレーアンテナは、それぞれ、6個の第1素子5と7個の第2素子6とを備えたものであり、2番目、4番目及び6番目の第2素子6が導電部3に電気的に接続されている。実施例16A~16Cでは、スルーホール22のずれ量LYが0.2mmとなっており、実施例17A~17Cでは、スルーホール22のずれ量LYが0.4mmとなっている。実施例16A、17Aでは、第2素子6が抵抗を介さずに導電部3に接続され、実施例16B、17Bでは、第2素子6が50Ωの抵抗を介して導電部3に接続され、実施例16C、17Cでは、第2素子6が300Ωの抵抗を介して導電部3に接続されている。
【0051】
図12に示すように、実施例16A~16Cでは、利得比が8dB以下となり、比較例3に対してアンテナ利得の平坦度の向上が見られた。また、抵抗を設けることにより、アンテナ利得の周波数特性の曲線の形状が変化し、特に、アンテナ利得が極小値となる周波数が高周波側にシフトした。また、50Ωの抵抗を設けた実施例16Bでは、抵抗を設けない実施例16Aに対してアンテナ利得の平坦度の向上が見られた。
【0052】
図13に示すように、実施例17A~17Cでは、利得比が6dB以下となり、比較例3に対してアンテナ利得の向上が見られた。また、抵抗を設けることにより、アンテナ利得の周波数特性の曲線の形状が変化し、特に、アンテナ利得が極小値となる周波数が高周波側にシフトした。また、抵抗を設けた実施例17B、17Cでは、抵抗を設けない実施例17Aに対してアンテナ利得の平坦度の向上が見られた。
【0053】
[第2素子のY方向位置による比較]
実施例18のアレーアンテナは、6個の第1素子5と7個の第2素子6とを備えたものであり、2番目、4番目及び6番目の第2素子6が導電部3に電気的に接続されている。ここで、複数の第1素子5の励振中心同士を結ぶ線X0に対する、第2素子6のY方向中央部のY方向のずれ量をLY2とする。尚、ずれ量LY2は、第2素子6のY方向中央部が線X0に対して給電線7とは反対側に位置する際に正の値となるものとする。実施例18のアレーアンテナにおいて、ずれ量LY2を-1~1mmの間で変化させた。同様に、比較例3のアレーアンテナにおいても、ずれ量LY2を-1~1mmの間で変化させた。このとき、スルーホール22は、Y方向において、第2素子6のY方向中央部に位置するものとした。
【0054】
図14に示すように、実施例18では、全てのずれ量LY2において利得比が3dB以下となった。一方、比較例3では、ずれ量LY2が-0.3~0.3mmの範囲において、利得比が3dBよりも大きくなった。周波数80GHzにおいて、対応する波長の1/8は0.47mmとなり、実施例18では、ずれ量LY2が1/8波長となる範囲において、アンテナ利得の平坦度の向上が見られた。
【符号の説明】
【0055】
1…アレーアンテナ、2…絶縁部、22…スルーホール、23…導電性ビア、3…導体部、4…アンテナ部、41…素子列、5…第1素子、6…第2素子
図1
図2
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図5
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図14