(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】羽根車、水力機械
(51)【国際特許分類】
F04D 29/36 20060101AFI20231023BHJP
F04D 29/70 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
F04D29/36 H
F04D29/70 G
(21)【出願番号】P 2020075932
(22)【出願日】2020-04-22
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】常田 友紀
(72)【発明者】
【氏名】能見 基彦
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開昭64-069799(JP,A)
【文献】実開昭62-041893(JP,U)
【文献】実開昭55-064495(JP,U)
【文献】特開昭56-012097(JP,A)
【文献】米国特許第05947679(US,A)
【文献】実開昭62-117295(JP,U)
【文献】特開昭59-115475(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/36
F04D 29/70
F03B 3/18
F03B 11/08
F01D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有する可動翼と、
前記可動翼が前記回転軸を介して接続される接続孔を有するハブと、
前記可動翼と前記ハブとの隙間を囲うと共に、前記回転軸と前記接続孔との隙間を囲う弾性カバーと、を備え
、
前記弾性カバーは、裾部が弾性変形した状態で前記ハブに接するスカート状に形成されており、
前記裾部は、前記ハブの中心軸方向における中央部において、部分的に長く形成されている、ことを特徴とする羽根車。
【請求項2】
前記回転軸の径が、前記可動翼の翼厚以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の羽根車。
【請求項3】
前記弾性カバーは、前記可動翼に固定されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の羽根車。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の羽根車を備える、ことを特徴とする水力機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、羽根車、水力機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、羽根と羽根ボスとの隙間を無くすように羽根側に弾性体の填隙片を取り付けた可動翼羽根車が開示されている。この可動翼羽根車によれば、羽根と羽根ボスとの隙間に異物が入り込むことがなく、しかも填隙片は弾性体であるために容易に変形することができ、羽根の回動操作に支障をきたすことがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記可動翼羽根車は、羽根と羽根ボスとの間に異物が噛み込まれることを防止できるものの、羽根の他の摺動部である回転軸における異物の噛み込みについて何ら考慮されていなかった。また、上記従来技術の填隙片は、羽根と羽根ボスとの隙間を充填するものであったため、羽根ボスとの接触面積が広く、羽根の摺動抵抗が高まり、回動操作が重くなる可能性があった。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、可動翼の摺動抵抗の増加を抑えつつ、可動翼の摺動部における異物の噛み込みを防止できる羽根車、水力機械の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る羽根車は、回転軸を有する可動翼と、前記可動翼が前記回転軸を介して接続される接続孔を有するハブと、前記可動翼と前記ハブとの隙間を囲うと共に、前記回転軸と前記接続孔との隙間を囲う弾性カバーと、を備える。
【0007】
上記羽根車においては、前記回転軸の径が、前記可動翼の翼厚以下であってもよい。
【0008】
上記羽根車においては、前記弾性カバーは、前記可動翼に固定されていてもよい。
【0009】
上記羽根車においては、前記弾性カバーは、裾部が弾性変形した状態で前記ハブに接するスカート状に形成されていてもよい。
【0010】
上記羽根車においては、前記裾部は、前記ハブの中心軸方向における中央部において、部分的に長く形成されていてもよい。
【0011】
本発明の一態様に係る水力機械は、先に記載の羽根車を備える。
【発明の効果】
【0012】
上記本発明の態様によれば、可動翼の摺動抵抗の増加を抑えつつ、可動翼の摺動部における異物の噛み込みを防止できる羽根車、水力機械を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】一実施形態に係る水力機械の断面構成図である。
【
図2】一実施形態に係る羽根車の断面構成図である。
【
図3】一実施形態に係る可動翼を径方向から見た平面図である。
【
図4】一実施形態に係る羽根車の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明では、水力機械としてポンプを例示する。
【0015】
図1は、一実施形態に係る水力機械100の断面構成図である。
図1に示す水力機械100は、非容積型ポンプの一つである横軸軸流ポンプであり、液体を軸方向に吐出する羽根車1を備えている。羽根車1は、複数の可動翼2と、複数の可動翼2が接続されたハブ3と、後述する弾性カバー10と、を備えている。なお、水力機械100は、立軸ポンプであっても、斜流ポンプであっても、遠心ポンプであっても構わない。
【0016】
水力機械100は、羽根車1が固定された主軸101と、主軸101と他の軸とを連結する軸継手102と、主軸101を支持する軸受103と、羽根車1及び主軸101の一部を収容するケーシング104と、を備えている。ケーシング104は、吐出し側ケーシング104aと、吐出し側ケーシング104aに接続された吸込み側ケーシング104bと、を備えている。
【0017】
吐出し側ケーシング104aは、水平方向に延びる筒状に形成され、羽根車1を取り囲んでいる。吸込み側ケーシング104bは、エルボ形状に形成され、吐出し側ケーシング104aの上流側に水平方向に接続されている。吸込み側ケーシング104bの吐出し側ケーシング104aと接続されていない側には、液体吸込み口105が形成されている。
【0018】
液体吸込み口105は、鉛直下方向を向いている。つまり、吸込み側ケーシング104bは、液体吸込み口105から上方に延びた後、水平方向に延び、吐出し側ケーシング104aと接続されている。吐出し側ケーシング104aは、吸込み側ケーシング104bと接続されていない側に、液体吐出し口106を備えている。
【0019】
主軸101は、吐出し側ケーシング104aに沿って水平方向に延び、吸込み側ケーシング104bを貫通している。軸継手102は、吸込み側ケーシング104bを貫通し、ケーシング104の外部に突出した主軸101を、図示しない駆動機と連結させさせている。吐出し側ケーシング104a内には、ガイドベーン107が設けられている。ガイドベーン107は、液体を効率的に加速するためにベーンの開放角度を変えることができる。
【0020】
主軸101は、上述した図示しない駆動機によって回転し、主軸101の回転によって羽根車1が回転する。羽根車1の回転により、取扱い液(液体、例えば水)は、液体吸込み口105から上方に流れ、エルボ状の吸込み側ケーシング104bにより水平方向に流れが曲げられて羽根車1へ至る。液体は、羽根車1の回転によりさらに水平方向に送られ、液体吐出し口106から吐出される。
【0021】
図2は、一実施形態に係る羽根車1の断面構成図である。
図3は、一実施形態に係る可動翼2を径方向から見た平面図である。
図2に示すように、可動翼2は、回転軸4を有している。可動翼2は、回転軸4を介してハブ3の周面に接続されている。可動翼2(翼本体)とハブ3の周面との間には、隙間Sが形成されている。
【0022】
ハブ3の周面には、回転軸4が挿入される接続孔3aが形成されている。これにより、可動翼2は、ハブ3の径方向に延びる回転軸4回りに回転可能とされている。回転軸4は、ハブ3の内側で、図示しない回動機構と接続されている。回転軸4と接続孔3aとの間にも、図示しない僅かな隙間が形成されている。
【0023】
羽根車1は、可動翼2とハブ3との隙間Sを囲うと共に、回転軸4と接続孔3aとの隙間を囲う弾性カバー10を備えている。弾性カバー10は、ゴムなどから形成されている。弾性カバー10は、可動翼2に固定される固定部11と、ハブ3に接する裾部12と、を有するスカート状に形成されている。
【0024】
固定部11は、可動翼2の根本付近に固定されている。可動翼2の根本付近には、全周に亘って環状溝5が形成されている。固定部11は、環状溝5よりも僅かに小さく形成され、弾性変形した状態で環状溝5に嵌っている。環状溝5には、嵌り込んだ固定部11を接着する接着剤が塗布されているとよい。なお、弾性カバー10は、接着剤のみにより可動翼2に固定されていても構わない。
【0025】
裾部12は、
図2に示すように、弾性変形した状態でハブ3の周面に接している。裾部12は、
図3に示すように、可動翼2の全周に延びている。また、
図3に示すように、回転軸4の径T4は、可動翼2の翼厚T2以下である。つまり、弾性カバー10が、可動翼2とハブ3との隙間Sの全周を囲うことで、可動翼2の内側に配置された回転軸4と接続孔3aとの隙間も囲うことができる。
【0026】
上記構成の弾性カバー10によれば、
図2に示すように、可動翼2とハブ3との隙間Sを囲うと共に、回転軸4と接続孔3aとの隙間を囲うため、これらの摺動部が外側の流水部に露出するのを防止できる。これにより、流水部に混入した異物Xの隙間Sへの侵入、及び、可動翼2とハブ3との隙間Sでの噛み込み、さらに、回転軸4と接続孔3aとの隙間での噛み込みを防止できる。また、弾性カバー10は、隙間Sの外側を囲うもので、可動翼2とハブ3との隙間Sに充填されるものではないため、ハブ3との接触面積を必要限に減らし、可動翼2の摺動抵抗の増加を抑制できる。
【0027】
このように、上述した本実施形態によれば、回転軸4を有する可動翼2と、可動翼2が回転軸4を介して接続される接続孔3aを有するハブ3と、可動翼2とハブ3との隙間Sを囲うと共に、回転軸4と接続孔3aとの隙間を囲う弾性カバー10と、を備える、という構成を採用することによって、可動翼2の摺動抵抗の増加を抑えつつ、可動翼2の摺動部における異物の噛み込みを防止できる羽根車1及びその羽根車1を備える水力機械100が得られる。
【0028】
また、本実施形態においては、
図3に示すように、回転軸4の径T4が、可動翼2の翼厚T2以下であるため、弾性カバー10を異形状としなくても回転軸4と接続孔3aとの隙間を囲い易くなる。
【0029】
また、本実施形態においては、
図2に示すように、弾性カバー10は、可動翼2に固定されている。これにより、可動翼2の可動域が大きい場合であっても、弾性カバー10が可動翼2に追従できる。なお、可動翼2の可動域が小さければ、弾性カバー10をハブ3側に固定しても構わない。
【0030】
また、本実施形態においては、弾性カバー10は、裾部12が弾性変形した状態でハブ3に接するスカート状に形成されている。この構成によれば、可動翼2の摺動抵抗の増加を抑えつつ、弾性カバー10の裾部12からの異物Xの侵入を阻止できる。また、可動翼2が回転した際にも、弾性変形した裾部12が吸収代となり、ハブ3との密着状態を維持できる。
【0031】
以上、本発明の好ましい実施形態を記載し説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、およびその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
【0032】
例えば、本発明は、
図4に示すような構成を採用し得る。なお、以下の説明において、上述の実施形態と同一又は同等の構成については同一の符号を付し、その説明を簡略若しくは省略する。
【0033】
図4は、一実施形態に係る羽根車1の変形例を示す側面図である。
図4に示す裾部12は、ハブ3の中心軸方向(
図4における紙面左右方向)における弾性カバー10の中央部10bにおいて、部分的に長く形成されている。
【0034】
具体的に、裾部12においては、弾性カバー10の前端部10a(主流方向上流側を前とする)における長さL1より、中央部10bの長さL2の方が長い。また、裾部12においては、弾性カバー10の後端部10c(主流方向下流側を後とする)における長さL3より、中央部10bの長さL2の方が長い。
【0035】
この構成によれば、裾部12において弾性カバー10の中央部10bにおけるハブ3との密着性を高め、裾部12の全周に亘って略均一の力でハブ3に密着できる。すなわち、ハブ3の周面は、円筒状であり、ハブ3の中心軸方向における弾性カバー10の中央部10bにおいては、前端部10a及び後端部10cに比べて周面に対して距離が有り、隙間ができやすいためである。
【0036】
また、他の変形例として、例えば、
図1に示すガイドベーン107(可動翼)に、上述した弾性カバー10を取り付けても構わない。
また、水力機械100としては、ポンプに限らず、水車であっても構わない。
【符号の説明】
【0037】
1 羽根車
2 可動翼
3 ハブ
3a 接続孔
4 回転軸
10 弾性カバー
10a 前端部
10b 中央部
10c 後端部
11 固定部
12 裾部
100 水力機械
S 隙間
T2 翼厚
T4 径
X 異物