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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-20
(45)【発行日】2023-10-30
(54)【発明の名称】ベーパーチャンバ
(51)【国際特許分類】
   F28D 15/02 20060101AFI20231023BHJP
   F28D 15/04 20060101ALI20231023BHJP
【FI】
F28D15/02 102H
F28D15/02 L
F28D15/02 101H
F28D15/04 C
F28D15/04 G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021065213
(22)【出願日】2021-04-07
(65)【公開番号】P2022160791
(43)【公開日】2022-10-20
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100143959
【弁理士】
【氏名又は名称】住吉 秀一
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 義勝
(72)【発明者】
【氏名】川畑 賢也
(72)【発明者】
【氏名】岡田 博
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-267571(JP,A)
【文献】特開2004-198096(JP,A)
【文献】特開2002-206882(JP,A)
【文献】特開2000-035294(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0091259(US,A1)
【文献】特開平09-273880(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/02
F28D 15/04
H01L 23/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空洞部が内部に形成された、第1の面と前記第1の面に対向した第2の面を有するコンテナと、前記空洞部に設けられたウィック構造体と、前記空洞部に封入された作動流体と、気相の前記作動流体が流通する、前記空洞部に設けられた蒸気流路と、を備え、
前記第1の面が、平面部位と前記平面部位から外方向へ突出した凸部位を有することで、前記コンテナが、平面部と前記平面部から外方向へ突出した凸部を有し、
前記コンテナの前記凸部の内部空間が、前記平面部の内部空間と連通していることで、前記空洞部が形成され、
前記凸部位に対向した前記第2の面の部位から前記凸部位へ向かって前記ウィック構造体が立設され、前記ウィック構造体が、前記第2の面及び前記凸部位と接し
前記第1の面が、引張強度が200N/mm 以下の金属材であるベーパーチャンバ。
【請求項2】
前記コンテナが、複数の前記凸部を有する請求項1に記載のベーパーチャンバ。
【請求項3】
前記ウィック構造体が、立設方向の応力に応じて立設方向の寸法が低下する部材である請求項1または2に記載のベーパーチャンバ。
【請求項4】
前記ウィック構造体が、金属粉を含む粉体の焼結体、金属細線からなるメッシュ、金属編組体、金属線材及び不織布からなる群から選択された少なくとも1種である請求項1乃至3のいずれか1項に記載のベーパーチャンバ。
【請求項5】
前記ウィック構造体が、前記コンテナの内部空間を維持する支持部である請求項1乃至のいずれか1項に記載のベーパーチャンバ。
【請求項6】
前記コンテナが、一方の板状体と前記一方の板状体と対向する他方の板状体とにより形成され、前記一方の板状体が、外方向へ突出した前記凸部を有する請求項1乃至のいずれか1項に記載のベーパーチャンバ。
【請求項7】
前記凸部と前記平面部が、冷却対象が熱的に接続される受熱部を有する請求項1乃至のいずれか1項に記載のベーパーチャンバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部環境からの圧力に対する耐性と冷却対象との熱的接続性に優れることで優れた熱輸送特性を発揮するベーパーチャンバに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気・電子機器に搭載されている半導体素子等の電子部品は、高機能化に伴う高密度搭載等により、発熱量が増大し、近年、その冷却がより重要となっている。また、電子部品等の発熱体は、電子機器の小型化から、狭小空間に配置されることがある。狭小空間に配置された電子部品等の発熱体の冷却方法として、扁平型のコンテナを備えたベーパーチャンバ(平面型ヒートパイプ)が使用されることがある。
【0003】
また、ベーパーチャンバの小型化と軽量化の観点から、ベーパーチャンバのコンテナの肉厚は薄肉化することが要求されている。コンテナの内部は減圧処理されているので、コンテナの肉厚が薄肉化されていくと、大気圧や荷重の作用によってコンテナが変形してしまう恐れがある。コンテナが変形してしまうと、作動流体の流通特性が低下して、ベーパーチャンバの放熱特性が低下してしまうことがある。そこで、ベーパーチャンバのコンテナ内部には、コンテナの内部空間を維持するために、支持部が設けられることがある。
【0004】
コンテナの内部空間を維持するために、コンテナ内部に支持部が設けられたベーパーチャンバとして、上板、下板、および複数の側壁によって密閉された空間内に配置され、前記上板および前記下板に接し、直線部を有する複数の第1ウィック部を有するウィック体と、前記空間内に配置され、前記上板および前記下板に接するピラーと、を備え、ピラーは、複数の前記第1ウィック部のうち、隣り合う2つの前記第1ウィック部における前記直線部同士の間に、前記直線部に対して間隔を空けて配置されているベーパーチャンバが提案されている(特許文献1)。特許文献1では、上板および下板に接するウィック体と上板および下板に接するピラーとを備えることで、コンテナの厚みを小さくしても、蒸気流路を確保したベーパーチャンバである。
【0005】
一方で、ベーパーチャンバが狭小空間に配置された電子部品等の発熱体を冷却するにあたり、1つのベーパーチャンバにて複数の発熱体を冷却することがある。複数の発熱体は、いずれも同じ形状、寸法とは限らず、例えば、1つのベーパーチャンバにて、高さの異なる複数の発熱体を冷却することが要求されることがある。
【0006】
図5は、従来のベーパーチャンバの使用方法例を説明する側面図である。図5に示すように、特許文献1等の従来のベーパーチャンバ200に、基板110上に搭載された高さの異なる複数の発熱体100(図5では、説明の便宜上、高さの異なる4つの発熱体100-1、100-2、100-3、100-4)を熱的に接続しようとすると、4つの発熱体100-1、100-2、100-3、100-4のうち、最も高い発熱体100-1に対しては優れた熱的接続性を得ることができる。しかし、ベーパーチャンバ200では、発熱体100-1よりも高さの低い3つの発熱体100-2、100-3、100-4に対しては、ベーパーチャンバ200と発熱体100-2、100-3、100-4との間に隙間が生じ、優れた熱的接続性を得ることができないことから、発熱体100-2、100-3、100-4に対して放熱特性を発揮できない。
【0007】
そこで、ベーパーチャンバ200と発熱体100-2、100-3、100-4との間に生じた隙間に、熱伝導性樹脂や熱伝導性グリースを挿入することでベーパーチャンバ200と発熱体100-2、100-3、100-4との熱的接続性を確保することがある。また、ベーパーチャンバ200と発熱体100-2、100-3、100-4との間に生じた隙間に、金属ブロックを配置することでベーパーチャンバ200と発熱体100-2、100-3、100-4との熱的接続性を確保することがある。しかしながら、熱伝導性樹脂、熱伝導性グリース、金属ブロック等の別部材を用いてベーパーチャンバ200と発熱体100との間の隙間を埋めても、ベーパーチャンバ200と発熱体100との間の熱的接続性を十分に確保することはできないという問題があった。
【0008】
また、ベーパーチャンバの他の使用方法として、基板の表面に熱的に接続された冷却対象である発熱体に対して基板の裏面にベーパーチャンバを熱的に接続して発熱体を冷却する使用方法が挙げられる。
【0009】
図6は、従来のベーパーチャンバの他の使用方法例を説明する側面図である。図6に示すように、基板110に厚さ方向の貫通孔111を形成し、貫通孔111に銅コイン等の金属コイン120を嵌挿させることで、基板110の表面112と裏面113間で熱伝導可能な状態とする。基板110の表面112に熱的に接続された発熱体100の熱は、金属コイン120を介して基板110の表面112から裏面113へ伝達される。基板110の裏面113へ伝達された熱は、基板110の裏面113に熱的に接続された従来のベーパーチャンバ200の熱輸送特性によりベーパーチャンバ200全体にわたって拡散され、ベーパーチャンバ200に熱的に接続された放熱フィン210の熱交換作用によって外部環境へ放出される。
【0010】
しかし、金属コイン120が傾いた状態で貫通孔111に挿入されることがある。貫通孔111内で金属コイン120が傾いてしまうと、金属コイン120の傾いた一部のみが裏面113から突出してベーパーチャンバ200と接触することとなってしまう。上記から、金属コイン120の傾いた一部のみがベーパーチャンバ200と接触することを防止するために、予め、金属コイン120が基板110の裏面113よりも窪んだ状態となるように、金属コイン120の厚さが基板110の厚さよりも薄くなるように設計されることがある。
【0011】
しかし、図6に示すように、金属コイン120が基板110の裏面113よりも窪んだ状態では、金属コイン120とベーパーチャンバ200の間に隙間121が生じてしまうこととなり、ベーパーチャンバ200と金属コイン120間に優れた熱的接続性を得ることができない。
【0012】
そこで、金属コイン120とベーパーチャンバ200の隙間121に熱伝導性グリースや熱伝導性樹脂を挿入することでベーパーチャンバ200と金属コイン120との熱的接続性を確保することがある。しかしながら、熱伝導性グリース等の別部材を用いてベーパーチャンバ200と金属コイン120との間の隙間121を埋めても、ベーパーチャンバ200と金属コイン120との間の熱的接続性を十分に確保することはできないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】国際公開第2017/104819号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上記事情に鑑み、本発明は、外部環境からの圧力に対する耐性を有しつつ、冷却対象との熱的接続性に優れることで優れた熱輸送特性を発揮するベーパーチャンバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の構成の要旨は、以下の通りである。
[1]空洞部が内部に形成された、第1の面と前記第1の面に対向した第2の面を有するコンテナと、前記空洞部に設けられたウィック構造体と、前記空洞部に封入された作動流体と、気相の前記作動流体が流通する、前記空洞部に設けられた蒸気流路と、を備え、
前記第1の面が、平面部位と前記平面部位から外方向へ突出した凸部位を有することで、前記コンテナが、平面部と前記平面部から外方向へ突出した凸部を有し、
前記コンテナの前記凸部の内部空間が、前記平面部の内部空間と連通していることで、前記空洞部が形成され、
前記凸部位に対向した前記第2の面の部位から前記凸部位へ向かって前記ウィック構造体が立設され、前記ウィック構造体が、前記第2の面及び前記凸部位と接しているベーパーチャンバ。
[2]前記コンテナが、複数の前記凸部を有する[1]に記載のベーパーチャンバ。
[3]前記ウィック構造体が、立設方向の応力に応じて立設方向の寸法が低下する部材である[1]または[2]に記載のベーパーチャンバ。
[4]前記ウィック構造体が、金属粉を含む粉体の焼結体、金属細線からなるメッシュ、金属編組体、金属線材及び不織布からなる群から選択された少なくとも1種である[1]乃至[3]のいずれか1つに記載のベーパーチャンバ。
[5]前記第1の面が、引張強度が200N/mm以下の金属材である[1]乃至[4]のいずれか1つに記載のベーパーチャンバ。
[6]前記ウィック構造体が、前記コンテナの内部空間を維持する支持部である[1]乃至[5]のいずれか1つに記載のベーパーチャンバ。
[7]前記コンテナが、一方の板状体と前記一方の板状体と対向する他方の板状体とにより形成され、前記一方の板状体が、外方向へ突出した前記凸部を有する[1]乃至[6]のいずれか1つに記載のベーパーチャンバ。
[8]前記凸部と前記平面部が、冷却対象が熱的に接続される受熱部を有する[1]乃至[7]のいずれか1つに記載のベーパーチャンバ。
【発明の効果】
【0016】
本発明のベーパーチャンバの態様によれば、第1の面が平面部位と前記平面部位から外方向へ突出した凸部位を有することで、コンテナが平面部と前記平面部から外方向へ突出した凸部を有し、前記凸部位に対向した第2の面の部位から前記凸部位へ向かってウィック構造体が立設され、前記ウィック構造体が前記第2の面及び前記凸部位と接していることにより、凸部に位置するウィック構造体がコンテナの内部空間を維持しつつ、高さの低い発熱体等の冷却対象に対して凸部にて熱的に接続できる。
【0017】
従って、本発明のベーパーチャンバでは、外部環境からの圧力に対する耐性をコンテナに付与しつつ、冷却対象との熱的接続性に優れることで優れた熱輸送特性を発揮できる。
【0018】
本発明のベーパーチャンバの態様によれば、前記コンテナが複数の前記凸部を有することにより、高さの異なる2つ以上の冷却対象に対しても優れた熱的接続性を得ることができるので、高さの異なる2つ以上の冷却対象に対してであっても優れた熱輸送特性を発揮できる。
【0019】
本発明のベーパーチャンバの態様によれば、前記ウィック構造体が、金属粉を含む粉体の焼結体、金属線からなるメッシュ、金属編組体、金属線材及び不織布からなる群から選択された少なくとも1種であることにより、コンテナの厚さ方向の応力によるウィック構造体の高さ調整が容易化される。従って、本発明のベーパーチャンバでは、コンテナの内部空間を維持しつつ、凸部の外方向への突出量の精度が向上するので冷却対象との熱的接続性が確実に向上する。
【0020】
本発明のベーパーチャンバの態様によれば、前記第1の面が引張強度200N/mm以下の金属材であることにより、コンテナの凸部が塑性変形しやすくなり、結果、コンテナの厚さ方向における凸部の塑性変形量に追従したウィック構造体の高さ調整も容易化される。従って、本発明のベーパーチャンバでは、凸部の外方向への突出量の精度が向上するので、冷却対象との熱的接続性が確実に向上する。
【0021】
本発明のベーパーチャンバの態様によれば、前記ウィック構造体が前記コンテナの内部空間を維持する支持部であることにより、別途、コンテナの内部空間を維持するための支柱部材を設ける必要がないので、蒸気流路を十分に確保でき、気相の作動流体の流通特性がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態例に係るベーパーチャンバの内部構造の概要を説明する側面断面図である。
図2】本発明の第2実施形態例に係るベーパーチャンバの内部構造の概要を説明する側面断面図である。
図3】本発明の第3実施形態例に係るベーパーチャンバの内部構造の概要を説明する側面断面図である。
図4】本発明のベーパーチャンバの他の使用方法例を説明する側面断面図である。
図5】従来のベーパーチャンバの使用方法例を説明する側面図である。
図6】従来のベーパーチャンバの他の使用方法例を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明の第1実施形態例に係るベーパーチャンバについて、図面を用いながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態例に係るベーパーチャンバの内部構造の概要を説明する側面断面図である。
【0024】
図1に示すように、本発明の第1実施形態例に係るベーパーチャンバ1は、対向する2枚の板状体、すなわち、一方の板状体11と一方の板状体11と対向する他方の板状体12とを重ねることにより空洞部13が内部に形成されたコンテナ10と、空洞部13に封入された作動流体(図示せず)と、気相の作動流体が流通する、空洞部13に設けられた蒸気流路15と、を備えている。
【0025】
コンテナ10は、薄型の板状コンテナ、すなわち、平面型コンテナであり、一方の板状体11が第1の主表面である第1の面21を有し、他方の板状体12が第2の主表面である第2の面22を有している。従って、コンテナ10は、第1の主表面である第1の面21と、第1の面21に対向した、第2の主表面である第2の面22と、を有している。
【0026】
第1の面21は、平坦な平面部位32と平面部位32から外方向へ突出した凸部位31を有している。ベーパーチャンバ1では、凸部位31は、第1の面21に複数設けられている。図1のベーパーチャンバ1では、説明の便宜上、3つの凸部位31-1、31-2、31-3が設けられている。また、凸部位31の側面は、平面部位32から鉛直方向へ突出している。一方で、第2の面22は、凸部位を有しておらず、第2の面22全体が、平坦な平面部位となっている。第1の面21が平面部位32と平面部位32から外方向へ突出した凸部位31を有していることで、コンテナ10が、平面部17と平面部17から外方向へ突出した凸部16を有している。上記から、一方の板状体11が、外方向へ突出した凸部16を有している。従って、コンテナ10は、第1の面21に複数の凸部16(図1のベーパーチャンバ1では、説明の便宜上、3つの凸部16-1、16-2、16-3)が設けられており、第2の面22には凸部は設けられていない。上記から、コンテナ10の平面部17と凸部16は、一体成型されている。また、凸部16の側面は、平面部17から鉛直方向へ突出している。
【0027】
また、他方の板状体12には、第2の面22の周縁に沿って側壁25が立設されている。第1の面21の内面23の周縁に他方の板状体12の側壁25の先端を対向配置させて当接させることにより、コンテナ10の内部空間である空洞部13が形成される。従って、側壁25にて、コンテナ10の側面が形成されている。空洞部13は、密閉空間であり、脱気処理により減圧されている。コンテナ10の凸部16の内部空間は、平面部17の内部空間と連通しており、凸部16の内部空間と平面部17の内部空間とから、コンテナ10の空洞部13が形成されている。従って、作動流体は、凸部16の内部空間と平面部17の内部空間との間で流通可能となっている。
【0028】
コンテナ10の形状は、特に限定されないが、ベーパーチャンバ1では、例えば、平面視(コンテナ10の平面部17に対して鉛直方向から視認した状態)にて、四角形状等の多角形状、円形状、楕円形状、直線部と湾曲部を有する形状等が挙げられる。
【0029】
図1に示すように、ベーパーチャンバ1では、空洞部13にはウィック構造体40が設けられている。ウィック構造体40は、毛細管力を有する部材であり、コンテナ10の主表面に沿って、コンテナ10の一端から他端まで延在している。また、ウィック構造体40は、コンテナ10の厚さ方向に沿って伸延した側面視柱状の部材である。上記から、ウィック構造体40は、第2の面22の内面24から第1の面21の内面23に向かって伸延した側面視柱状の部材である。ウィック構造体40の一端は、第1の面21の内面23に接しており、ウィック構造体40の他端は、第2の面22の内面24に接している。
【0030】
ウィック構造体40は、複数の側面視柱状の部材からなっている。ウィック構造体40は、複数の側面視柱状の部材が、コンテナ10の主表面に沿って所定間隔にて並列配置されている構造となっている。具体的には、ウィック構造体40は、側面視柱状の部材である第1のウィック部41と側面視柱状の部材である第2のウィック部42を有している。第1のウィック部41は、コンテナ10の凸部16に立設されており、第2のウィック部42は、コンテナ10の平面部17に立設されている。
【0031】
ウィック構造体40の第1のウィック部41は、凸部位31に対向した第2の面22の部位から凸部位31へ向かって立設されている。第1のウィック部41は、所定間隔にて複数立設されている。また、ウィック構造体40の第1のウィック部41は、第2の面22及び凸部位31と接している。従って、第1のウィック部41の一端は、第1の面21の内面23のうちの凸部位31に接しており、第1のウィック部41の他端は、第2の面22の内面24のうち、凸部位31に対向した部位に接している。第1のウィック部41の一端から他端までの寸法が、第1のウィック部41の高さとなっている。また、第1のウィック部41は、一端から他端まで同一材料となっている。
【0032】
コンテナ10が厚さ方向の応力Fを受けて厚さ方向に塑性変形することに伴って、ウィック構造体40の第1のウィック部41は高さ方向の圧縮を受けて、その高さが低下する。すなわち、ウィック構造体40の第1のウィック部41は、高さ方向の応力Fを受けて圧縮する。上記から、ウィック構造体40の第1のウィック部41は、立設方向の応力Fに応じて立設方向の寸法が低下する部材で形成されている。
【0033】
第1のウィック部41の部材としては、例えば、金属粉を含む粉体の焼結体等の多孔質部材、金属細線からなるメッシュ、金属編組体、不織布等、金属線材等が挙げられる。これらの材料は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。金属粉を含む粉体の焼結体は、例えば、原料である金属粉の平均粒子径を大きくすることで第1のウィック部41として適した多孔質部材とすることができる。金属粉を含む粉体の焼結体としては、例えば、銅粉、ステンレス粉等の金属粉の焼結体、銅粉等の金属粉とカーボン粉との混合粉の焼結体等を挙げることができる。また、金属細線からなるメッシュと不織布は、例えば、所定量を撚り合わせた形態、所定量を折りたたんだ形態とすることで、第1のウィック部41として適した部材とすることができる。
【0034】
ベーパーチャンバ1では、第1のウィック部41として、金属粉を含む粉体の焼結体からなる多孔質部材が用いられている。
【0035】
ウィック構造体40の第2のウィック部42は、第1の面21の平面部位32に対向した第2の面22の部位から平面部位32へ向かって立設されている。第2のウィック部42は、所定間隔にて複数立設されている。また、ウィック構造体40の第2のウィック部42は、第2の面22及び第1の面21の平面部位32と接している。従って、第2のウィック部42の一端は、第1の面21の内面23のうちの平面部位32に接しており、第2のウィック部42の他端は、第2の面22の内面24のうち、平面部位32に対向した部位に接している。第2のウィック部42の一端から他端までの寸法が、第2のウィック部42の高さとなっている。また、第2のウィック部42は、一端から他端まで同一材料となっている。
【0036】
第2のウィック部42の部材としては、例えば、金属粉を含む粉体の焼結体、金属細線からなるメッシュ、金属編組体、不織布等、金属線材等が挙げられる。第2のウィック部42の部材は、第1のウィック部41の部材と同じでもよく、異なっていてもよい。これらの材料は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。金属粉を含む粉体の焼結体は、例えば、第1のウィック部41と同じく、原料である金属粉の平均粒子径を大きくすることで多孔質部材としてもよい。また、金属粉を含む粉体の焼結体は、例えば、原料である金属粉の平均粒子径を第1のウィック部41よりも小さくすることで、第2のウィック部42の高さ方向の圧縮を受けても第2のウィック部42の高さが低下することを防止できる、機械的強度を向上させた部材としてもよい。金属粉を含む粉体の焼結体としては、例えば、銅粉、ステンレス粉等の金属粉の焼結体、銅粉等の金属粉とカーボン粉との混合粉の焼結体等を挙げることができる。また、金属細線からなるメッシュと不織布は、例えば、所定量を撚り合わせた形態、所定量を折りたたんだ形態とすることで、側面視柱状の部材とすることができる。
【0037】
ベーパーチャンバ1では、第2のウィック部42として、第1のウィック部41と同じ部材である、金属粉を含む粉体の焼結体からなる多孔質部材が用いられている。
【0038】
また、ウィック構造体40は、コンテナ10の内部空間を維持する支持部としても機能する。支持部でもあるウィック構造体40は、減圧されているコンテナ10の内部空間、すなわち、空洞部13を維持する機能を有する。ウィック構造体40の第1のウィック部41は、コンテナ10の凸部16にて、コンテナ10の内部空間を維持する支持部として機能し、ウィック構造体40の第2のウィック部42は、コンテナ10の平面部17にて、コンテナ10の内部空間を維持する支持部として機能する。ベーパーチャンバ1では、支持部(ウィック構造体40)と支持部(ウィック構造体40)の間の空間部が、気相の作動流体が流通する蒸気流路15となる。
【0039】
コンテナ10の材料としては、少なくとも一方の板状体11の第1の面21は、引張強度が200N/mm以下の金属材であることが好ましい。第1の面21が引張強度200N/mm以下の金属材であることにより、コンテナ10の凸部16が厚さ方向の応力Fを受けると、コンテナ10の厚さ方向に塑性変形しやすくなる。すなわち、コンテナ10の凸部16が、厚さ方向の応力Fにより潰れやすくなる。結果として、後述するように、コンテナ10の厚さ方向における凸部16の塑性変形量に追従したウィック構造体40の高さ調整も容易化される。コンテナ10の第1の面21を有する一方の板状体11の材料の引張強度は、凸部16のコンテナ10の厚さ方向への塑性変形がより容易化する点から、185N/mm以下がより好ましく、155N/mm以下が特に好ましい。一方で、コンテナ10の材料の引張強度の下限値は、コンテナ10の機械的強度の点から、一方の板状体11では50N/mmが好ましく、他方の板状体12では185N/mmが好ましい。なお、コンテナ10の材料の引張強度は、JIS Z 2241にて測定した強度を意味する。
【0040】
コンテナ10の材料種としては、例えば、銅、銅合金、アルミニウム、アルミニウム合金等が挙げられる。
【0041】
ベーパーチャンバ1の厚さとしては、例えば、0.3mm以上1.0mm以下を挙げることができる。一方の板状体11の厚さと他方の板状体12の厚さは、同じでも、異なっていてもよく、ベーパーチャンバ1では、一方の板状体11の厚さと他方の板状体12の厚さは、略同じとなっている。ベーパーチャンバ1では、一方の板状体11の厚さは、一方の板状体11の全体にわたって略均一となっている。また、他方の板状体12の厚さは、他方の板状体12の全体にわたって略均一となっている。一方の板状体11と他方の板状体12の厚さは、例えば、それぞれ、0.1mmを挙げることができる。
【0042】
また、一方の板状体11の周縁部と他方の板状体12の周縁部を接触させた状態で全周にわたって接合することで、密閉容器であるコンテナ10が形成され、空洞部13が封止される。周縁部の接合方法としては、特に限定されず、例えば、拡散接合、ろう付け、ファイバレーザ等によるレーザ溶接、超音波溶接、摩擦接合、圧接接合等を挙げることができる。
【0043】
空洞部13に封入される作動流体としては、コンテナ10の材料との適合性に応じて、適宜選択可能であり、例えば、水を挙げることができ、その他に、代替フロン、フルオロカーボン類、シクロペンタン、エチレングリコール、これらと水との混合物等を挙げることができる。
【0044】
次に、図1を用いて、本発明の第1実施形態例に係るベーパーチャンバ1の使用方法例を説明する。図1では、ベーパーチャンバ1は、基板110に搭載された複数の発熱体100を冷却対象としている。図1では、説明の便宜上、基板110に4つの発熱体100-1、100-2、100-3、100-4が搭載され、発熱体100の高さは、発熱体100-1、発熱体100-2、100-3、発熱体100-4の順に高くなっている。なお、発熱体100としては、例えば、中央演算処理装置等の半導体部品が挙げられる。
【0045】
ベーパーチャンバ1を発熱体100に熱的に接続する前は、複数の凸部16(図1では、3つの凸部16-1、16-2、16-3)の高さは、いずれも同じ高さとなっている。最も高さのある発熱体100-1は、コンテナ10の平面部17に熱的に接続され、最も高さの低い発熱体100-4は、コンテナ10の凸部16-3に熱的に接続され、発熱体100-1と発熱体100-4の中間の高さを有する発熱体100-2、100-3は、それぞれ、コンテナ10の凸部16-1、16-2に熱的に接続される。上記から、凸部16と平面部17が、冷却対象である発熱体100が熱的に接続される受熱部を有している。
【0046】
コンテナ10が4つの発熱体100-1、100-2、100-3、100-4に熱的に接続される際に、コンテナ10の凸部16-1、16-2、16-3が、それぞれ、発熱体100-2、100-3、100-4からコンテナ10の厚さ方向の応力Fを受けることで、凸部16-1、16-2、16-3がコンテナ10の厚さ方向に圧縮されて塑性変形する。その際に、発熱体100-2、100-3は発熱体100-4よりも高いことから、凸部16-1と凸部16-2は凸部16-3よりも応力Fが大きくなり、結果、凸部16-3よりも塑性変形量が大きくなる。コンテナ10の厚さ方向における凸部16-1、16-2、16-3の塑性変形量に追従して、ウィック構造体40の第1のウィック部41がコンテナ10の厚さ方向に所定量圧縮される。従って、凸部16-1と凸部16-2に位置する第1のウィック部41は、凸部16-3に位置する第1のウィック部41よりも圧縮量が大きくなる。ベーパーチャンバ1では、発熱体100の高さの違いに応じて、凸部16が所定量塑性変形し、また、第1のウィック部41が所定量圧縮されることで、空洞部13を維持しつつ、高さの異なる複数の発熱体100に対しても優れた熱的接続性を発揮できる。
【0047】
次に、本発明の第1実施形態例に係るベーパーチャンバ1の動作について説明する。コンテナ10のうち、第1の面21の外面に発熱体100が熱的に接続されて、第1の面21が受熱面として機能し、第1の面21の外面のうち、発熱体100と接触している部位が受熱部として機能する。ベーパーチャンバ1が受熱部にて発熱体100から受熱すると、空洞部13に封入された液相の作動流体が、受熱部にて液相から気相へ相変化し、相変化した気相の作動流体が、蒸気流路15を流通してベーパーチャンバ1の受熱部から空洞部13の全体にわたって拡散する。受熱部から空洞部13の全体にわたって拡散した気相の作動流体は、潜熱を放熱して、気相から液相へ相変化する。このとき、放出された潜熱は、コンテナ10全体からベーパーチャンバ1の外部環境へ放出される。気相から液相へ相変化した作動流体は、ウィック構造体40の毛細管力により、空洞部13の全体から受熱部へ還流される。
【0048】
ベーパーチャンバ1では、第1の面21が平面部位32と平面部位32から外方向へ突出した凸部位31を有することで、コンテナ10が平面部17と平面部17から外方向へ突出した凸部16を有し、凸部位31に対向した第2の面22の部位から凸部位31へ向かってウィック構造体40の第1のウィック部41が立設され、ウィック構造体40の第1のウィック部41が第2の面22及び凸部位31と接していることにより、凸部16に位置するウィック構造体40がコンテナ10の内部空間を維持しつつ、高さの低い発熱体100に対して凸部16にて熱的に接続できる。従って、ベーパーチャンバ1では、外部環境からの圧力に対する耐性をコンテナ10に付与しつつ、発熱体100との熱的接続性に優れることで優れた熱輸送特性を発揮できる。
【0049】
また、ベーパーチャンバ1では、特に、コンテナ10が複数の凸部16を有することにより、高さの異なる複数の発熱体100に対しても優れた熱的接続性を得ることができるので、高さの異なる複数の発熱体100に対してであっても優れた熱輸送特性を発揮できる。
【0050】
また、ベーパーチャンバ1では、特に、ウィック構造体40が、金属粉を含む粉体の焼結体、金属線からなるメッシュ、金属編組体、金属線材及び不織布からなる群から選択された少なくとも1種であることにより、コンテナ10の厚さ方向の応力Fによって、ウィック構造体40の圧縮による高さ調整が容易化されるので、空洞部13を維持しつつ、凸部16の外方向への突出量の精度が向上して発熱体100との熱的接続性が確実に向上する。
【0051】
また、ベーパーチャンバ1では、特に、コンテナ10の第1の面21が引張強度200N/mm以下の金属材で形成されていることにより、コンテナ10の厚さ方向の応力Fによってコンテナ10の凸部16が塑性変形しやすくなる。また、コンテナ10の厚さ方向における凸部16の塑性変形量に追従した第1のウィック部41の高さ調整が容易化される。従って、ベーパーチャンバ1では、凸部16の外方向への突出量の精度が向上し、発熱体100との熱的接続性が確実に向上する。
【0052】
また、ベーパーチャンバ1では、特に、ウィック構造体40がコンテナ10の内部空間を維持する支持部としても機能することにより、別途、コンテナ10の内部空間を維持するための支柱部材を設ける必要がないので、蒸気流路15を十分に確保でき、気相の作動流体の流通特性がさらに向上する。
【0053】
次に、本発明の第2実施形態例に係るベーパーチャンバについて詳細を説明する。図2は、本発明の第2実施形態例に係るベーパーチャンバの内部構造の概要を説明する側面断面図である。なお、第2実施形態例に係るベーパーチャンバは、第1実施形態例に係るベーパーチャンバと主要な構成要素が共通しているので、第1実施形態例に係るベーパーチャンバと同じ構成要素については同じ符号を用いて説明する。
【0054】
第1実施形態例に係るベーパーチャンバ1では、複数の第1のウィック部41、41、41・・・は、いずれも一端から他端まで同一材料となっていたが、これに代えて、第2実施形態例に係るベーパーチャンバ2では、複数の第1のウィック部41、41、41・・・のうち、少なくとも一部の第1のウィック部41は、一端側と他端側で異なる材料となっている。ベーパーチャンバ2では、第1のウィック部41の一端側は第1の部材41-1で形成され、第1のウィック部41の他端側は第2の部材41-2で形成されている。
【0055】
第1の部材41-1としては、例えば、平均粒子径の大きい金属粉を含む粉体の焼結体、金属細線からなるメッシュ、金属編組体、不織布等で形成した多孔質部材が挙げられる。また、第2の部材41-2としては、平均粒子径の小さい金属粉を含む粉体の焼結体、金属細線からなるメッシュ、金属編組体、不織布等で形成した第1の部材41-1よりも多孔質ではない部材が挙げられる。第1の部材41-1が多孔質部材であることにより、凸部16の塑性変形量に追従して、第1の部材41-1がコンテナ10の厚さ方向に所定量圧縮され、ひいては、第1のウィック部41がコンテナ10の厚さ方向に所定量圧縮される。
【0056】
第1の部材41-1と第2の部材41-2の高さ割合は、特に限定されないが、例えば、第1の部材41-1の高さは凸部16と略同じ高さが挙げられ、第2の部材41-2の高さは第2のウィック部42と略同じ高さが挙げられる。
【0057】
ベーパーチャンバ2でも、凸部16に位置するウィック構造体40がコンテナ10の内部空間を維持しつつ、高さの低い発熱体100に対して凸部16にて熱的に接続できる。従って、ベーパーチャンバ2でも、外部環境からの圧力に対する耐性をコンテナ10に付与しつつ、発熱体100との熱的接続性に優れることで優れた熱輸送特性を発揮できる。
【0058】
次に、本発明の第3実施形態例に係るベーパーチャンバについて詳細を説明する。図3は、本発明の第3実施形態例に係るベーパーチャンバの内部構造の概要を説明する側面断面図である。なお、第3実施形態例に係るベーパーチャンバは、第1、第2実施形態例に係るベーパーチャンバと主要な構成要素が共通しているので、第1、第2実施形態例に係るベーパーチャンバと同じ構成要素については同じ符号を用いて説明する。
【0059】
第1実施形態例に係るベーパーチャンバ1では、複数の第1のウィック部41、41、41・・・及び複数の第2のウィック部42、42、42・・・は、いずれも一端から他端まで同一材料となっていた。これに代えて、第3実施形態例に係るベーパーチャンバ3では、複数の第1のウィック部41、41、41・・・のうち、少なくとも一部の第1のウィック部41は、一端側と他端側で異なる材料となっている。
【0060】
ベーパーチャンバ3では、第1のウィック部41の一方端が、弾性部材43となっている。ベーパーチャンバ3では、第1のウィック部41の第1の面21に接している一端が、弾性部材43となっている。第1のウィック部41の第2の面22に接している他端は、ベーパーチャンバ1、2と同じく、ウィックの部材となっている。弾性部材43としては、例えば、金属線材を螺旋状に形成した部材が挙げられる。弾性部材43は、例えば、金属粉を含む粉体の焼結体、金属線からなるメッシュ、金属編組体、金属線材及び不織布等のウィック構造体40の材料上に連設されている。
【0061】
ベーパーチャンバ3では、コンテナ10の凸部16が、発熱体100からコンテナ10の厚さ方向の応力を受けることで、凸部16がコンテナ10の厚さ方向に圧縮されて塑性変形する際に、凸部16の塑性変形量に追従して、弾性部材43が所定量圧縮される。弾性部材43が所定量圧縮されることで、ウィック構造体40の第1のウィック部41がコンテナ10の厚さ方向に所定量圧縮され、高さの異なる複数の発熱体100に対しても優れた熱的接続性を発揮できる。
【0062】
ベーパーチャンバ3でも、凸部16に位置するウィック構造体40がコンテナ10の内部空間を維持しつつ、高さの低い発熱体100に対して凸部16にて熱的に接続できる。従って、ベーパーチャンバ3でも、外部環境からの圧力に対する耐性をコンテナ10に付与しつつ、発熱体100との熱的接続性に優れることで優れた熱輸送特性を発揮できる。
【0063】
次に、本発明のベーパーチャンバの他の使用方法例を説明する。ここでは、第1実施形態例に係るベーパーチャンバ1を用いて他の使用方法例を説明する。図4は、本発明のベーパーチャンバの他の使用方法例を説明する側面断面図である。
【0064】
図4に示すように、ベーパーチャンバ1の他の使用方法例として、基板110の表面112に熱的に接続された冷却対象である発熱体100に対して基板110の裏面113にベーパーチャンバ1を熱的に接続して発熱体100を冷却する使用方法が挙げられる。なお、他の使用方法例における発熱体100としては、トランジスタ(例えば、メタルオキサイドセミコンダクターフィールドエフェクトトランジスタ)等のパワー半導体が挙げられる。
【0065】
他の使用方法例では、基板110は、厚さ方向の貫通孔111を有し、貫通孔111に熱伝導性部材である銅コイン等の金属コイン120が嵌挿されていることで、基板110の表面112と裏面113間で熱伝導可能となっている。金属コイン120は、複数設けられており、図4では、基板110は、基板110の裏面113に対して最も後退した金属コイン120-1、基板110の裏面113に対して略同一平面上にある金属コイン120-2、基板110の裏面113に対して少し後退した金属コイン120-3を有している。
【0066】
基板110の裏面113に対して最も後退した金属コイン120-1は、コンテナ10の凸部16-1に熱的に接続され、基板110の裏面113に対して略同一平面上にある金属コイン120-2は、コンテナ10の凸部16-2に熱的に接続され、基板110の裏面113に対して少し後退した金属コイン120-3は、コンテナ10の凸部16-3に熱的に接続される。上記から、凸部16が、冷却対象である金属コイン120が熱的に接続される受熱部を有している。
【0067】
コンテナ10が3つの金属コイン120-1、120-2、120-3に熱的に接続される際に、コンテナ10の凸部16-1、16-2、16-3が、それぞれ、金属コイン120-1、120-2、120-3からコンテナ10の厚さ方向の応力Fを受けることで、凸部16-1、16-2、16-3がコンテナ10の厚さ方向に圧縮されて塑性変形する。その際に、金属コイン120-2は基板110の裏面113に対して略同一平面上にあることから、凸部16-2は、凸部16-1及び凸部16-3よりも応力Fが大きくなり、結果、凸部16-1及び凸部16-3よりも塑性変形量が大きくなる。また、金属コイン120-3は基板110の裏面113に対して少し後退していることから、凸部16-3は凸部16-1よりも応力Fが大きくなり、結果、凸部16-1よりも塑性変形量が大きくなる。コンテナ10の厚さ方向における凸部16-1、16-2、16-3の塑性変形量に追従して、ウィック構造体40の第1のウィック部41がコンテナ10の厚さ方向に所定量圧縮される。従って、凸部16-2に位置する第1のウィック部41は、凸部16-1と凸部16-3に位置する第1のウィック部41よりも圧縮量が大きくなる。また、凸部16-3に位置する第1のウィック部41は、凸部16-1に位置する第1のウィック部41よりも圧縮量が大きくなる。
【0068】
このように、ベーパーチャンバ1では、金属コイン120の基板110の裏面113からの後退量及び金属コイン120の基板110の裏面113からの突出量の違いに応じて、凸部16が所定量塑性変形し、また、第1のウィック部41が所定量圧縮されることで、基板110の裏面113からの位置が異なる複数の金属コイン120に対しても優れた熱的接続性を発揮できる。
【0069】
ベーパーチャンバ1の他の使用方法例では、基板110の表面112に熱的に接続された発熱体100の熱は、金属コイン120を介して基板110の表面112から裏面113へ伝達される。基板110の裏面113へ伝達された熱は、基板110の裏面113からベーパーチャンバ1の受熱部へ伝達され、ベーパーチャンバ1の熱輸送特性により、受熱部からベーパーチャンバ1全体にわたって拡散されて、ベーパーチャンバ1の外部環境へ放出される。
【0070】
ベーパーチャンバ1の他の使用方法例でも、凸部16に位置するウィック構造体40がコンテナ10の内部空間を維持しつつ、基板110の裏面113からの位置が異なる複数の金属コイン120に対して凸部16にて熱的に接続できる。従って、ベーパーチャンバ1の他の使用方法例でも、外部環境からの圧力に対する耐性をコンテナ10に付与しつつ、金属コイン120を介した発熱体100との熱的接続性に優れることで優れた熱輸送特性を発揮できる。
【0071】
次に、本発明のベーパーチャンバの他の実施形態例を説明する。上記各実施形態例では、第1の面の内面上に、第1の面の内面の延在方向に沿って、さらに、第2のウィック構造体を設けてもよい。第1の面の内面に第2のウィック構造体を設けることにより、空洞部の全体から受熱部への液相の作動流体の還流特性がさらに向上する。また、上記各実施形態例では、第2の面の内面上に、第2の面の内面の延在方向に沿って、さらに、第3のウィック構造体を設けてもよい。第2の面の内面に第3のウィック構造体を設けることにより、空洞部の全体から受熱部への液相の作動流体の還流特性がさらに向上する。第2のウィック構造体、第3のウィック構造体としては、例えば、金属粉を含む粉体の焼結体、金属細線からなるメッシュ、金属編組体、複数の細溝(グルーブ)、不織布等を挙げることができる。
【0072】
また、上記各実施形態例では、コンテナが複数の凸部を有していたが、冷却対象の個数に応じて凸部の個数は適宜選択可能であり、1つの凸部でもよい。また、上記各実施形態例では、コンテナの凸部と平面部が、冷却対象が熱的に接続される受熱部を有していたが、これに代えて、コンテナの凸部のみが、冷却対象が熱的に接続される受熱部を有していてもよい。
【0073】
また、第3実施形態例のベーパーチャンバでは、第1のウィック部の一方端が弾性部材となっていたが、これに代えて、第1のウィック部の一方端と第2のウィック部の一方端が弾性部材となっていてもよい。また、第3実施形態例のベーパーチャンバでは、第1のウィック部の第1の面に接している一端が、弾性部材となっていたが、これに代えて、第1のウィック部の第2の面に接している他端が、弾性部材となっていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明のベーパーチャンバは、外部環境からの圧力に対する耐性を有しつつ、冷却対象との熱的接続性に優れることで優れた熱輸送特性を発揮するので、例えば、狭小空間に複数設置された形状の異なる発熱体を冷却する分野で、利用価値が高い。
【符号の説明】
【0075】
1、2、3 ベーパーチャンバ
10 コンテナ
13 空洞部
15 蒸気流路
16 凸部
17 平面部
21 第1の面
22 第2の面
40 ウィック構造体
図1
図2
図3
図4
図5
図6