(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】重合性化合物、光架橋性重合体、絶縁膜、及び有機トランジスタデバイス
(51)【国際特許分類】
C08F 220/30 20060101AFI20231024BHJP
C08F 224/00 20060101ALI20231024BHJP
C08F 222/20 20060101ALI20231024BHJP
H01L 21/312 20060101ALI20231024BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
C08F220/30
C08F224/00
C08F222/20
H01L21/312 D
H01L29/78 617T
(21)【出願番号】P 2019044889
(22)【出願日】2019-03-12
【審査請求日】2022-02-14
(31)【優先権主張番号】P 2018092191
(32)【優先日】2018-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山川 浩
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0073028(US,A1)
【文献】特表2003-511514(JP,A)
【文献】KWANG-DUK Ahn et al.,New Antireflective Coating Materials Containing a Novel Chromophore for KrF Laser Lithography,Journal of Photopolymer Science and Technology,日本,THE SOCIETY OF PHOTOPOLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGY,2001年,Volume 14 Issue 3,p. 475-480,<DOI:org/10.2494/photopolymer.14.475>, 特に p. 477 Fig. 1., 2.4.-2.5.
【文献】THIRUPATHI Gogula et al.,Synthesis of Diverse Oxa‐Carbocycle‐Annulated Flavones Using the Combined Claisen Rearrangement and Ring‐Closing Metathesis,Helvetica Chimica Acta,2016年,vol. 99,p. 547-557,<DOI:10.1002/hlca.201600028>, 特に Scheme 1 の2a, 2b, Scheme 6 の20a, 20b
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/00-222/40
C08F 224/00
C07D 311/00-311/96
H01L 21/00- 29/96
CAplus/Registry(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(1)または式(2)の少なくともいずれかを反復単位として含み、かつ、式(3)で表される反復単位を含む重合体。
【化1】
(式(1)中、R
1は水素またはC1~C6のアルキル基のいずれかを、Lは
--C(O)O-の2価の連結基を、nは0または1を、A、R
2及びR
3はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、C1~C18のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオエーテル基、アルキルアミノ基、アルキルケトン基、アルキルエステル基、アルキルアミド基、カルボキシアルキル基、フルオロアルキル基、フルオロアルキルエーテル基、フルオロアルキルカルボニル基、フルオロアルキルエステル基、フルオロアルコキシ基、フルオロチオエーテル基、シクロアルキル基、シクロヘテロアルキル基からなる群の1種を、XはOを、mは0を表す。)
【化2】
(式(2)中、Q
1及びQ
2はそれぞれ独立して
-C(O)O-の2価の連結基を、p及びqはそれぞれ独立して0または1を、G
1、G
2、R
4~R
7はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、C1~C18のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオエーテル基、アルキルアミノ基、アルキルケトン基、アルキルエステル基、アルキルアミド基、カルボキシアルキル基、フルオロアルキル基、フルオロアルキルエーテル基、フルオロアルキルカルボニル基、フルオロアルキルエステル基、フルオロアルコキシ基、フルオロチオエーテル基、シクロアルキル基、シクロヘテロアルキル基からなる群の1種を、X
1~X
4はOを、r及びsは0を表す。)
【化3】
(式(3)中、R
8は水素またはC1~C6のアルキル基のいずれかを、Mは炭素数1~14の2価の連結基を、kは0または1を、Yは水素、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、C1~C18のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオエーテル基、アルキルアミノ基、アルキルケトン基、アルキルエステル基、アルキルアミド基、アリール基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、カルボキシアルキル基、フルオロアルキル基、フルオロアルキルエーテル基、フルオロアルキルカルボニル基、フルオロアルキルエステル基、フルオロアルコキシ基、フルオロアリール基、フルオロチオエーテル基、シクロアルキル基、シクロヘテロアルキル基からなる群の1種を、jは0~5の整数を表す。)
【請求項2】
前記式(1)及び前記式(3)を反復単位として含む重合体、前記式(2)及び前記式(3)を反復単位として含む重合体、前記式(1)、前記式(2)及び前記式(3)を反復単位として含む重合体からなる群の1種である重合体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の重合体に架橋処理を行った重合体。
【請求項4】
請求項1乃至3の少なくとも一項に記載の重合体を含有する絶縁膜。
【請求項5】
請求項4に記載の絶縁膜を含む有機トランジスタデバイス。
【請求項6】
以下の式(4)で表される重合性化合物。
【化4】
(式(4)中、Q
1及びQ
2はそれぞれ独立して
-C(O)O-の2価の連結基を、p及びqはそれぞれ独立して0または1を、G
1、G
2、R
4~R
7はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、C1~C18のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオエーテル基、アルキルアミノ基、アルキルケトン基、アルキルエステル基、アルキルアミド基、カルボキシアルキル基、フルオロアルキル基、フルオロアルキルエーテル基、フルオロアルキルカルボニル基、フルオロアルキルエステル基、フルオロアルコキシ基、フルオロチオエーテル基、シクロアルキル基、シクロヘテロアルキル基からなる群の1種を、X
1~X
4はOを、r及びsは0を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機トランジスタデバイスに含まれる絶縁層を形成するための重合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機トランジスタデバイスは基本的には、3つの電極(ソース電極、ドレイン電極、ゲート電極)、絶縁層、及び有機半導体層からなる。現在、ポリエチレンナフタレートフィルム等のプラスチック上に印刷によって有機トランジスタを製造する技術(全印刷法)の開発が進められている。全印刷法により有機トランジスタを製造する際、該有機トランジスタの形態により電極、絶縁層、及び有機半導体層を形成する順序は異なるが、例えば、金属ナノ粒子を含有する水系または非水系インクの印刷により電極を、架橋可能な重合体溶液の印刷により絶縁層を、有機半導体溶液の印刷により有機半導体層を形成することが出来る。該重合体溶液、及び該有機半導体溶液の調製には有機溶剤が用いられる。
【0003】
これまでに、絶縁層としてポリパラキシリレン(PPX)、ベンゾシクロブテン(BCB)重合体、ポリビニルフェノール(PVP)組成物、及びフッ素系環状エーテル(FCE)重合体の利用が提案されている。PPXは絶縁性には優れているが、汎用溶剤に溶解せず、上記の印刷プロセスには適用できない。BCB重合体、及びPVP組成物は架橋温度がそれぞれ150℃、及び250℃と高く、架橋時間も長い。このため、ロールTOロール方式での連続製造プロセスへの適用が難しい。特に、プラスチックを基材とした有機トランジスタデバイスの製造においては、架橋時の加熱によって基材のプラスチックが変形を起こすため、耐熱性に優れたポリイミド等のエンプラフィルム以外の使用は困難である。一方、FCE重合体はパーフルオロトリブチルアミン(PFTBA)等特定のフッ素系溶剤に溶解するが汎用の有機溶剤には溶解しない。FCE重合体は表面張力が小さく、該重合体膜上に有機半導体層溶液を印刷する際、溶液が濡れ広がらず均一な印刷も難しい。更に、該重合体、及び該溶剤は何れも高価であり経済性にも劣っていた。
【0004】
上記の背景から、常温、かつ短時間で架橋が可能な光架橋性重合体が注目されている。例えば、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)等の水酸基を有するポリマーに光架橋性を有するシンナモイル基を導入した重合体(例えば、特許文献1参照)、及びフェノール基を側鎖に有するポリマーに光架橋性を有するクマリンを導入した重合体(例えば、特許文献2参照)が提案されている。しかしながら、これらの重合体には未反応の水酸基が残存しており、この水酸基が絶縁破壊強度を低下させ絶縁層としての性能に劣るという問題があった。特許文献1では、未反応の水酸基を無水トリフルオロ酢酸と反応させて残存水酸基量を低減させる技術も開示しているが、この手法によって水酸基を完全に消失させることは極めて難しかった。
【0005】
また、光架橋性のシンナモイル基を有するビニル単量体、及び含フッ素ビニル単量体との共重合体も提案されている(例えば、特許文献3参照)。本技術に従いシンナモイル基を側鎖に有する上記の単量体をラジカル重合すると、シンナモイル基の二重結合がラジカルと反応して重合体が架橋し、ゲルを生成することから製膜性に劣るという問題があった。
【0006】
また、ポリスチレン等の芳香族ビニル重合体に光架橋性を有するシンナモイル基をフリーデル・クラフツ・アシル化反応により導入した光架橋性重合体に関する技術も開示されている(例えば、特許文献4、特許文献5参照)。しかし、本技術ではシンナモイル基の導入量に係わらず、該反応中にゲルが生成し、シンナモイル基が一定量を超えると反応溶液自体がゲル化するという致命的な問題があった。
【0007】
ここで一般に、絶縁層に異物があると絶縁破壊強度が低下し、該層の平坦性も低下するために有機トランジスタの性能が劣る等の問題が発生するものである。従って、絶縁層の形成に先立ち、重合体溶液は精密濾過する必要がある。しかし、特許文献3~5で提案されている重合体はゲルを含有しているため、精密濾過を経済的かつ高い生産性で行うことが難しかった。
【0008】
このような背景から、汎用溶剤へ溶解し、ゲルを含まず、低温かつ短時間で架橋する絶縁性に優れた重合体及び該重合体を含む絶縁膜が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第5148624号
【文献】特許第5960202号
【文献】特許第5938192号
【文献】米国特許2566302号
【文献】米国特許2708665号
【非特許文献】
【0010】
【文献】ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス、A-1、9巻、2109頁(1971年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
有機トランジスタデバイスの絶縁層として利用できる汎用溶剤へ溶解し、常温かつ短時間で架橋する絶縁性に優れた重合体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の重合体が汎用溶剤へ溶解し、ゲルを含まず、常温かつ短時間で架橋し、絶縁性にも優れていることを見出し本発明を完成するに至った。また、上記特定の重合体を得るために好適に用いることができる重合性化合物を見出したものである。
【0013】
即ち、本発明は式(1)または式(2)の少なくともいずれかを反復単位として含み、かつ、式(3)で表される反復単位を含む重合体、該重合体を用いた絶縁膜、及び該絶縁膜を用いてなる有機トランジスタデバイスに関するものである。
【0014】
【0015】
(式(1)中、R1は水素またはC1~C6のアルキル基のいずれかを、Lは炭素数1~14の2価の連結基を、nは0または1を、A、R2及びR3はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、C1~C18のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオエーテル基、アルキルアミノ基、アルキルケトン基、アルキルエステル基、アルキルアミド基、アリール基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、カルボキシアルキル基、フルオロアルキル基、フルオロアルキルエーテル基、フルオロアルキルカルボニル基、フルオロアルキルエステル基、フルオロアルコキシ基、フルオロアリール基、フルオロチオエーテル基、シクロアルキル基、シクロヘテロアルキル基からなる群の1種を、XはOまたはSを、mは0~3の整数を表す。)
【0016】
【0017】
(式(2)中、Q1及びQ2はそれぞれ独立して炭素数1~14の2価の連結基を、p及びqはそれぞれ独立して0または1を、G1、G2、R4~R7はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、C1~C18のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオエーテル基、アルキルアミノ基、アルキルケトン基、アルキルエステル基、アルキルアミド基、アリール基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、カルボキシアルキル基、フルオロアルキル基、フルオロアルキルエーテル基、フルオロアルキルカルボニル基、フルオロアルキルエステル基、フルオロアルコキシ基、フルオロアリール基、フルオロチオエーテル基、シクロアルキル基、シクロヘテロアルキル基からなる群の1種を、X1~X4はそれぞれ独立してOまたはSを、r及びsはそれぞれ独立して0~3の整数を表す。)
【0018】
【0019】
(式(3)中、R8は水素またはC1~C6のアルキル基を、Mは炭素数1~14の2価の連結基を、kは0または1を、Yはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、C1~C18のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオエーテル基、アルキルアミノ基、アルキルケトン基、アルキルエステル基、アルキルアミド基、アリール基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、カルボキシアルキル基、フルオロアルキル基、フルオロアルキルエーテル基、フルオロアルキルカルボニル基、フルオロアルキルエステル基、フルオロアルコキシ基、フルオロアリール基、フルオロチオエーテル基、シクロアルキル基、シクロヘテロアルキル基からなる群の1種を、jは0~5の整数を表す。)。
【0020】
また、本発明の別の態様は、以下の式(4)で表される重合性化合物である。
【0021】
【0022】
(式(1)中、Q1及びQ2はそれぞれ独立して炭素数1~14の2価の連結基を、p及びqはそれぞれ独立して0または1を、G1、G2、R4~R7はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、C1~C18のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオエーテル基、アルキルアミノ基、アルキルケトン基、アルキルエステル基、アルキルアミド基、アリール基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、カルボキシアルキル基、フルオロアルキル基、フルオロアルキルエーテル基、フルオロアルキルカルボニル基、フルオロアルキルエステル基、フルオロアルコキシ基、フルオロアリール基、フルオロチオエーテル基、シクロアルキル基、シクロヘテロアルキル基を、X1~X4はそれぞれ独立してOまたはSを、r及びsはそれぞれ独立して0~3の整数を表す。)。
【0023】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0024】
本発明は、上記式(1)または式(2)の少なくともいずれかを反復単位として含み、かつ、式(3)で表される反復単位を含む重合体である。
【0025】
本発明の重合体は、上記式(1)または式(2)の少なくともいずれかを反復単位として含む。
【0026】
本発明の重合体は、少なくとも上記式(1)の反復単位を含むことが好ましい。
【0027】
本発明の重合体は、上記式(3)の反復単位を含む。
【0028】
本発明の重合体は、上記式(1)及び上記式(3)を反復単位として含む重合体、上記式(2)及び上記式(3)を反復単位として含む重合体、上記式(1)、上記式(2)及び上記(3)を反復単位として含む重合体からなる群の1種であることが好ましく、更に好ましくは上記式(1)及び上記式(3)を反復単位として含む重合体である。これにより短い放射線の照射で架橋させることが可能となり、得られる架橋体の絶縁性能が向上する。
【0029】
上記式(1)~(3)の反復単位の比率は特に制限されず、有機溶剤への溶解性及び紫外線による架橋性のバランスにより適宜決定することができる。例えば、汎用の有機溶剤への溶解性の観点から、式(1)、(2)、(3)の反復単位の合計を100モル%とした場合に、式(3)で表される反復単位の比率が40モル%以上であることが好ましい。
【0030】
本発明の重合体の構造は、一般的な1H-NMRを用いた方法により同定することができる。
【0031】
本発明の重合体における、式(1)で表される反復体について説明する。
【0032】
式(1)中、R1は水素またはC1~C6のアルキル基を表す。
【0033】
式(1)中のR1におけるC1~C6のアルキル基としては特に制限がなく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基等が挙げられる。
【0034】
式(1)中、Lは炭素数1~14の2価の連結基を表す。
【0035】
該炭素数1~14の2価の連結基としては、放射線で容易に構造変化を起こさない2価の有機基であれば特に制限がなく、例えば、-CH2-、-OCH2-、-C(O)-、-C(O)O-、-C(O)N<、-O-、―N<、>NC(O)N<、パラフェニレン基からなる群の1種が挙げられる。
【0036】
式(1)中、nは0または1を表す。
【0037】
式(1)中、A、R2及びR3はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、C1~C18のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオエーテル基、アルキルアミノ基、アルキルケトン基、アルキルエステル基、アルキルアミド基、アリール基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、カルボキシアルキル基、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、フルオロアルキルエーテル基、フルオロアルキルカルボニル基、フルオロアルキルエステル基、フルオロアリール基、フルオロチオエーテル基、シクロアルキル基、シクロヘテロアルキル基からなる群の1種を表す。
【0038】
式(1)中、A、R2及びR3におけるハロゲンとしては特に制限がなく、例えば、塩素、フッ素等が挙げられる。
【0039】
式(1)中、A、R2及びR3におけるC1~C18のアルキル基としては特に制限がなく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基等が挙げられる。
【0040】
式(1)中、A、R2及びR3におけるアルコキシ基としては特に制限がなく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基等が挙げられる。
【0041】
式(1)中、A、R2及びR3におけるアルキルチオエーテル基としては特に制限がなく、例えば、メチルスルファニル基、エチルスルファニル基、イソプロピルスルファニル基、n-プロピルスルファニル基、n-ブチルスルファニル基、イソブチルスルファニル基、sec-ブチルスルファニル基等が挙げられる。
【0042】
式(1)中、A、R2及びR3におけるアルキルアミノ基としては特に制限がなく、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ(n-プロピル)アミノ基、メチルエチルアミノ基、メチル-n-プロピルアミノ基等が挙げられる。
【0043】
式(1)中、A、R2及びR3におけるアルキルケトン基としては特に制限がなく、例えば、メチルケトン基、エチルケトン基、イソプロピルケトン基、n-プロピルケトン基、n-ブチルケトン基、イソブチルケトン基、sec-ブチルケトン基等が挙げられる。
【0044】
式(1)中、A、R2及びR3におけるアルキルエステル基としては特に制限がなく、例えば、メチルエステル基、エチルエステル基、イソプロピルエステル基、n-プロピルエステル基、n-ブチルエステル基、イソブチルエステル基、sec-ブチルエステル基等が挙げられる。
【0045】
式(1)中、A、R2及びR3におけるアルキルアミド基としては特に制限がなく、例えば、メチルアミド基、エチルアミド基、イソプロピルアミド基、n-プロピルアミド基、n-ブチルアミド基、イソブチルアミド基、sec-ブチルアミド基等が挙げられる。
【0046】
式(1)中、A、R2及びR3におけるアリール基としては特に制限がなく、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。
【0047】
式(1)中、A、R2及びR3におけるアリールエーテル基としては特に制限がなく、例えば、フェニルエーテル基、ナフチルエーテル基、アントリルエーテル基、ビフェニルエーテル基等が挙げられる。
【0048】
式(1)中、A、R2及びR3におけるアリールチオエーテル基としては特に制限がなく、例えば、フェニルスルファニル基、ナフチルスルファニル基、アントリルスルファニル基、ビフェニルスルファニル基等が挙げられる。
【0049】
式(1)中、A、R2及びR3におけるカルボキシアルキル基としては特に制限がなく、例えば、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシ-n-プロピル基、カルボキシ-n-ブチル基等が挙げられる。
【0050】
式(1)中、A、R2及びR3におけるフルオロアルキル基としては特に制限がなく、例えば、ペルフルオロメチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロブチル基、1H,1H-ペンタフルオロプロピル基、1H,1H,2H,2H-ペンタフルオロブチル基、1H,1H-ヘプタフルオロブチル基、4,4,4-トリフルオロブチル基等が挙げられる。
【0051】
式(1)中、A、R2及びR3におけるフルオロアルコキシ基としては特に制限がなく、例えば、ペルフルオロメトキシ基、ペルフルオロプロポキシ基、ペルフルオロブトキシ基、1H,1H-ペンタフルオロプロポキシ基、1H,1H,2H,2H-ペンタフルオロブトキシ基、1H,1H-ヘプタフルオロブトキシ基、4,4,4-トリフルオロブトキシ基等が挙げられる。
【0052】
式(1)中、A、R2及びR3におけるフルオロアルキルエーテル基としては特に制限
がなく、例えば、ペルフルオロメトキシ基、ペルフルオロプロポキシ基、ペルフルオロブ
トキシ基、1H,1H-ペンタフルオロプロポキシ基、1H,1H,2H,2H-ペンタ
フルオロブトキシ基、1H,1H-ヘプタフルオロブトキシ基、4,4,4-トリフルオ
ロブトキシ基等が挙げられる。
【0053】
式(1)中、A、R2及びR3におけるフルオロアルキルカルボニル基としては特に制限がなく、例えば、ペルフルオロメチルカルボニル基、ペルフルオロプロピルカルボニル基、ペルフルオロブチルカルボニル基、1H,1H-ペンタフルオロプロピルカルボニル基、1H,1H,2H,2H-ペンタフルオロブチルカルボニル基、1H,1H-ヘプタフルオロブチルカルボニル基、4,4,4-トリフルオロブチルカルボニル基等が挙げられる。
【0054】
式(1)中、A、R2及びR3におけるフルオロアルキルエステル基としては特に制限がなく、例えば、ペルフルオロメチルエステル基、ペルフルオロプロピルエステル基、ペルフルオロブチルエステル基、1H,1H-ペンタフルオロプロピルエステル基、1H,1H,2H,2H-ペンタフルオロブチルエステル基、1H,1H-ヘプタフルオロブチルエステル基、4,4,4-トリフルオロブチルエステル基等が挙げられる。
【0055】
式(1)中、A、R2及びR3におけるフルオロアリール基としては特に制限がなく、例えば、4-フルオロフェニル基、2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル基、1-フルオロナフチル基、オクタフルオロナフチル基、1-フルオロアントリル基、2-フルオロアントリル基、9-フルオロアントリル基、2-フルオロビフェニル基、4-フルオロビフェニル基、等が挙げられる。
【0056】
式(1)中、A、R2及びR3におけるフルオロチオエーテル基としては特に制限がなく、例えば、ペルフルオロメチルスルファニル基、ペルフルオロプロピルスルファニル基、ペルフルオロブチルスルファニル基、1H,1H-ペンタフルオロプロピルスルファニル基、1H,1H,2H,2H-ペンタフルオロブチルスルファニル基、1H,1H-ヘプタフルオロブチルスルファニル基、4,4,4-トリフルオロブチルスルファニル基等が挙げられる。
【0057】
式(1)中、A、R2及びR3におけるシクロアルキル基としては特に制限がなく、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0058】
式(1)中、A、R2及びR3におけるシクロヘテロアルキル基としては特に制限がなく、例えば、2-フリル基、3-フリル基、テトラヒドロチオフェン-3-イル、テトラヒドロチオフェン-2-イル、1-チアシクロヘキサン-4-イル、テトラヒドロチオフェン-2-イル、テトラヒドロチオフェン-3-イル、テトラヒドロチオフェン-4-イル、テトラヒドロピラン-4-イル、テトラヒドロピラン-3-イル、テトラヒドロピラン-2-イル等が挙げられる。
【0059】
式(1)中、XはOまたはSを表す。
【0060】
式(1)中、mは0~3の整数を表す。
【0061】
本発明の重合体における、式(2)で表される反復体について説明する。
【0062】
式(2)中、Q1、Q2は炭素数1~14の2価の連結基を表す。
【0063】
該炭素数1~14の2価の連結基としては、放射線で容易に構造変化を起こさない2価の有機基であれば特に制限がなく、例えば、-CH2-、-OCH2-、-C(O)-、-C(O)O-、-C(O)N<、-O-、―N<、>NC(O)N<、アリール基からなる群の1種が挙げられる。
【0064】
式(2)中、p、qはそれぞれ独立して0または1を表す。
【0065】
式(2)中、G1、G2、R4~R7はそれぞれ独立して水素、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、C1~C18のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオエーテル基、アルキルアミノ基、アルキルケトン基、アルキルエステル基、アルキルアミド基、アリール基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、カルボキシアルキル基、フルオロアルキル基、フルオロアルコキシ基、フルオロアルキルエーテル基、フルオロアルキルカルボニル基、フルオロアルキルエステル基、フルオロアリール基、フルオロチオエーテル基、シクロアルキル基、シクロヘテロアルキル基からなる群の1種を表す。
【0066】
式(2)中、G1、G2、R4~R7におけるハロゲンとしては特に制限がなく、例えば、塩素、フッ素等が挙げられる。
【0067】
式(2)中、G1、G2、R4~R7におけるC1~C18のアルキル基としては特に制限がなく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基等が挙げられる。
【0068】
式(2)中、G1、G2、R4~R7におけるアルコキシ基としては特に制限がなく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基等が挙げられる。
【0069】
式(2)中、G1、G2、R4~R7におけるアルキルチオエーテル基としては特に制限がなく、例えば、メチルスルファニル基、エチルスルファニル基、イソプロピルスルファニル基、n-プロピルスルファニル基、n-ブチルスルファニル基、イソブチルスルファニル基、sec-ブチルスルファニル基等が挙げられる。
【0070】
式(2)中、G1、G2、R4~R7におけるアルキルアミノ基としては特に制限がなく、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ(n-プロピル)アミノ基、メチルエチルアミノ基、メチル-n-プロピルアミノ基等が挙げられる。
【0071】
式(2)中、G1、G2、R4~R7におけるアルキルケトン基としては特に制限がなく、例えば、メチルケトン基、エチルケトン基、イソプロピルケトン基、n-プロピルケトン基、n-ブチルケトン基、イソブチルケトン基、sec-ブチルケトン基等が挙げられる。
【0072】
式(2)中、G1、G2、R4~R7におけるアルキルエステル基としては特に制限がなく、例えば、メチルエステル基、エチルエステル基、イソプロピルエステル基、n-プロピルエステル基、n-ブチルエステル基、イソブチルエステル基、sec-ブチルエステル基等が挙げられる。
【0073】
式(2)中、G1、G2、R4~R7におけるアルキルアミド基としては特に制限がなく、例えば、メチルアミド基、エチルアミド基、イソプロピルアミド基、n-プロピルアミド基、n-ブチルアミド基、イソブチルアミド基、sec-ブチルアミド基等が挙げられる。
【0074】
式(2)中、G1、G2、R4~R7におけるアリール基としては特に制限がなく、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。
【0075】
式(2)中、G1、G2、R4~R7におけるアリールエーテル基としては特に制限がなく、例えば、フェニルエーテル基、ナフチルエーテル基、アントリルエーテル基、ビフェニルエーテル基等が挙げられる。
【0076】
式(2)中、G1、G2、R4~R7におけるアリールチオエーテル基としては特に制限がなく、例えば、フェニルスルファニル基、ナフチルスルファニル基、アントリルスルファニル基、ビフェニルスルファニル基等が挙げられる。
【0077】
式(2)中、G1、G2、R4~R7におけるカルボキシアルキル基としては特に制限がなく、例えば、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシ-n-プロピル基、カルボキシ-n-ブチル基等が挙げられる。
【0078】
式(2)中、G1、G2、R4~R7におけるフルオロアルキル基としては特に制限がなく、例えば、ペルフルオロメチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロブチル基、1H,1H-ペンタフルオロプロピル基、1H,1H,2H,2H-ペンタフルオロブチル基、1H,1H-ヘプタフルオロブチル基、4,4,4-トリフルオロブチル基等が挙げられる。
【0079】
式(2)中、G1、G2、R4~R7におけるフルオロアルコキシ基としては特に制限がなく、例えば、ペルフルオロメトキシ基、ペルフルオロプロポキシ基、ペルフルオロブトキシ基、1H,1H-ペンタフルオロプロポキシ基、1H,1H,2H,2H-ペンタフルオロブトキシ基、1H,1H-ヘプタフルオロブトキシ基、4,4,4-トリフルオロブトキシ基等が挙げられる。
【0080】
式(2)中、G1、G2、R4~R7におけるフルオロアルキルエーテル基としては特に制限がなく、例えば、ペルフルオロメトキシ基、ペルフルオロプロポキシ基、ペルフルオロブトキシ基、1H,1H-ペンタフルオロプロポキシ基、1H,1H,2H,2H-ペンタフルオロブトキシ基、1H,1H-ヘプタフルオロブトキシ基、4,4,4-トリフルオロブトキシ基等が挙げられる。
【0081】
式(2)中、G1、G2、R4~R7におけるフルオロアルキルカルボニル基としては特に制限がなく、例えば、ペルフルオロメチルカルボニル基、ペルフルオロプロピルカルボニル基、ペルフルオロブチルカルボニル基、1H,1H-ペンタフルオロプロピルカルボニル基、1H,1H,2H,2H-ペンタフルオロブチルカルボニル基、1H,1H-ヘプタフルオロブチルカルボニル基、4,4,4-トリフルオロブチルカルボニル基等が挙げられる。
【0082】
式(2)中、G1、G2、R4~R7におけるフルオロアルキルエステル基としては特に制限がなく、例えば、ペルフルオロメチルエステル基、ペルフルオロプロピルエステル基、ペルフルオロブチルエステル基、1H,1H-ペンタフルオロプロピルエステル基、1H,1H,2H,2H-ペンタフルオロブチルエステル基、1H,1H-ヘプタフルオロブチルエステル基、4,4,4-トリフルオロブチルエステル基等が挙げられる。
【0083】
式(2)中、G1、G2、R4~R7におけるフルオロアリール基としては特に制限がなく、例えば、4-フルオロフェニル基、2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル基、1-フルオロナフチル基、オクタフルオロナフチル基、1-フルオロアントリル基、2-フルオロアントリル基、9-フルオロアントリル基、2-フルオロビフェニル基、4-フルオロビフェニル基、等が挙げられる。
【0084】
式(2)中、G1、G2、R4~R7におけるフルオロチオ基としては特に制限がなく、例えば、ペルフルオロメチルスルファニル基、ペルフルオロプロピルスルファニル基、ペルフルオロブチルスルファニル基、1H,1H-ペンタフルオロプロピルスルファニル基、1H,1H,2H,2H-ペンタフルオロブチルスルファニル基、1H,1H-ヘプタフルオロブチルスルファニル基、4,4,4-トリフルオロブチルスルファニル基等が挙げられる。
【0085】
式(2)中、G1、G2、R4~R7におけるシクロアルキル基としては特に制限がなく、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0086】
式(2)中、G1、G2、R4~R7におけるシクロヘテロアルキル基としては特に制限がなく、例えば、2-フリル基、3-フリル基、テトラヒドロチオフェン-3-イル、テトラヒドロチオフェン-2-イル、1-チアシクロヘキサン-4-イル、テトラヒドロチオフェン-2-イル、テトラヒドロチオフェン-3-イル、テトラヒドロチオフェン-4-イル、テトラヒドロピラン-4-イル、テトラヒドロピラン-3-イル、テトラヒドロピラン-2-イル等が挙げられる。
【0087】
式(2)中、X1~X4はそれぞれ独立してOまたはSを表す。
【0088】
式(2)中、r、sはそれぞれ独立して0~3の整数を表す。
【0089】
式(3)中、R4~R7、Q1、Q2、G1、G2、X1~X4、p、q、r、及びsは式(1)で定義したものと同様である。
【0090】
本発明の重合体における、式(3)で表される反復体について説明する。
【0091】
式(3)中、R8は水素またはC1~C6のアルキル基を表す。
【0092】
式(3)中のR8におけるC1~C6のアルキル基としては特に制限がなく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基等が挙げられる。
【0093】
式(3)中、Mは炭素数1~14の2価の連結基としては特に制限がなく、例えば、-C(O)O-、-OC(O)-、-C(O)OCH2-、-CH2-、-C(O)-、-O-、-OCH2CH2O-等が挙げられる。
【0094】
式(3)中、kは0または1を表す。
【0095】
式(3)中、Yはそれぞれ独立して水素、ハロゲン、シアノ基、ニトロ基、C1~C18のアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アルキルアミノ基、アルキルケトン基、アルキルエステル基、アルキルアミド基、アリール基、アリールエーテル基、アリールチオ基、カルボキシアルキル基、フルオロアルキル基、フルオロアルキルエーテル基、フルオロアルコキシ基、フルオロアルキルカルボニル基、フルオロアルキルエステル基、フルオロアリール基、フルオロチオ基、シクロアルキル基、シクロヘテロアルキル基からなる群の1種を表す。
【0096】
式(3)中、Yにおけるハロゲンとしては特に制限がなく、例えば、塩素、フッ素等が挙げられる。
【0097】
式(3)中、YにおけるC1~C18のアルキル基としては特に制限がなく、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基等が挙げられる。
【0098】
式(3)中、Yにおけるアルコキシ基としては特に制限がなく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、イソブトキシ基等が挙げられる。
【0099】
式(3)中、Yにおけるアルキルチオエーテル基としては特に制限がなく、例えば、メチルスルファニル基、エチルスルファニル基、イソプロピルスルファニル基、n-プロピルスルファニル基、n-ブチルスルファニル基、イソブチルスルファニル基、sec-ブチルスルファニル基等が挙げられる。
【0100】
式(3)中、Yにおけるアルキルアミノ基としては特に制限がなく、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ(n-プロピル)アミノ基、メチルエチルアミノ基、
メチル-n-プロピルアミノ基等が挙げられる。
【0101】
式(3)中、Yにおけるアルキルケトン基としては特に制限がなく、例えば、メチルケトン基、エチルケトン基、イソプロピルケトン基、n-プロピルケトン基、n-ブチルケトン基、イソブチルケトン基、sec-ブチルケトン基等が挙げられる。
【0102】
式(3)中、Yにおけるアルキルエステル基としては特に制限がなく、例えば、メチルエステル基、エチルエステル基、イソプロピルエステル基、n-プロピルエステル基、n-ブチルエステル基、イソブチルエステル基、sec-ブチルエステル基等が挙げられる。
【0103】
式(3)中、Yにおけるアルキルアミド基としては特に制限がなく、例えば、メチルアミド基、エチルアミド基、イソプロピルアミド基、n-プロピルアミド基、n-ブチルアミド基、イソブチルアミド基、sec-ブチルアミド基等が挙げられる。
【0104】
式(3)中、Yにおけるアリール基としては特に制限がなく、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基等が挙げられる。
【0105】
式(3)中、Yにおけるアリールエーテル基としては特に制限がなく、例えば、フェニルエーテル基、ナフチルエーテル基、アントリルエーテル基、ビフェニルエーテル基等が挙げられる。
【0106】
式(3)中、Yにおけるアリールチオエーテル基としては特に制限がなく、例えば、フェニルスルファニル基、ナフチルスルファニル基、アントリルスルファニル基、ビフェニルスルファニル基等が挙げられる。
【0107】
式(3)中、Yにおけるカルボキシアルキル基としては特に制限がなく、例えば、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシ-n-プロピル基、カルボキシ-n-ブチル基等が挙げられる。
【0108】
式(3)中、Yにおけるフルオロアルキル基としては特に制限がなく、例えば、ペルフルオロメチル基、ペルフルオロプロピル基、ペルフルオロブチル基、1H,1H-ペンタフルオロプロピル基、1H,1H,2H,2H-ペンタフルオロブチル基、1H,1H-ヘプタフルオロブチル基、4,4,4-トリフルオロブチル基等が挙げられる。
【0109】
式(3)中、Yにおけるフルオロアルコキシ基としては特に制限がなく、例えば、ペルフルオロメトキシ基、ペルフルオロプロポキシ基、ペルフルオロブトキシ基、1H,1H-ペンタフルオロプロポキシ基、1H,1H,2H,2H-ペンタフルオロブトキシ基、1H,1H-ヘプタフルオロブトキシ基、4,4,4-トリフルオロブトキシ基等が挙げられる。
【0110】
式(3)中、Yにおけるフルオロアルキルエーテル基としては特に制限がなく、例えば、ペルフルオロメトキシ基、ペルフルオロプロポキシ基、ペルフルオロブトキシ基、1H,1H-ペンタフルオロプロポキシ基、1H,1H,2H,2H-ペンタフルオロブトキシ基、1H,1H-ヘプタフルオロブトキシ基、4,4,4-トリフルオロブトキシ基等が挙げられる。
【0111】
式(3)中、Yにおけるフルオロアルキルカルボニル基としては特に制限がなく、例えば、ペルフルオロメチルカルボニル基、ペルフルオロプロピルカルボニル基、ペルフルオロブチルカルボニル基、1H,1H-ペンタフルオロプロピルカルボニル基、1H,1H,2H,2H-ペンタフルオロブチルカルボニル基、1H,1H-ヘプタフルオロブチルカルボニル基、4,4,4-トリフルオロブチルカルボニル基等が挙げられる。
【0112】
式(3)中、Yにおけるフルオロアルキルエステル基としては特に制限がなく、例えば、ペルフルオロメチルエステル基、ペルフルオロプロピルエステル基、ペルフルオロブチルエステル基、1H,1H-ペンタフルオロプロピルエステル基、1H,1H,2H,2H-ペンタフルオロブチルエステル基、1H,1H-ヘプタフルオロブチルエステル基、4,4,4-トリフルオロブチルエステル基等が挙げられる。
【0113】
式(3)中、Yにおけるフルオロアリール基としては特に制限がなく、例えば、4-フルオロフェニル基、2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル基、1-フルオロナフチル基、オクタフルオロナフチル基、1-フルオロアントリル基、2-フルオロアントリル基、9-フルオロアントリル基、2-フルオロビフェニル基、4-フルオロビフェニル基、等が挙げられる。
【0114】
式(3)中、Yにおけるフルオロチオエーテル基としては特に制限がなく、例えば、ペルフルオロメチルスルファニル基、ペルフルオロプロピルスルファニル基、ペルフルオロブチルスルファニル基、1H,1H-ペンタフルオロプロピルスルファニル基、1H,1H,2H,2H-ペンタフルオロブチルスルファニル基、1H,1H-ヘプタフルオロブチルスルファニル基、4,4,4-トリフルオロブチルスルファニル基等が挙げられる。
【0115】
式(3)中、Yにおけるシクロアルキル基としては特に制限がなく、例えば、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等が挙げられる。
【0116】
式(3)中、Yにおけるシクロヘテロアルキル基としては特に制限がなく、例えば、2-フリル基、3-フリル基、テトラヒドロチオフェン-3-イル、テトラヒドロチオフェン-2-イル、1-チアシクロヘキサン-4-イル、テトラヒドロチオフェン-2-イル、テトラヒドロチオフェン-3-イル、テトラヒドロチオフェン-4-イル、テトラヒドロピラン-4-イル、テトラヒドロピラン-3-イル、テトラヒドロピラン-2-イル等が挙げられる。
【0117】
式(3)中、jは0~5の整数を表す。
【0118】
本発明における、式(4)で表される重合性化合物について説明する。
【0119】
式(4)中、R4~R7、Q1、Q2、G1、G2、X1~X4、p、q、r、及びsは式(1)で定義したものと同様である。
【0120】
本発明の式(4)で表される重合性化合物は、光架橋性の官能基であるベンゾピラン基を有している。従って、本重合性化合物を他の重合性化合物と共重合することによって得られる共重合体(重合体)は光架橋性を有している。
【0121】
本発明の重合体の分子量には何ら制限はなく、例えば、5000~1,000,000(g/モル)等が挙げられる。重合体の溶液粘度、及び力学強度の観点から、好ましくは10,000~500,000(g/モル)である。
【0122】
本発明の重合体の別の態様として、上記式(1)または式(2)の少なくともいずれかを反復単位として含み、かつ、式(3)で表される反復単位を含む重合体に架橋処理を行った重合体を示すことができる。
【0123】
架橋処理には放射線が好適に用いられる。放射線としては、例えば、波長245~350nmの紫外線が挙げられる。放射線の照射量は重合体の組成により適宜変更されるが、例えば、100~300mJ/cm2が挙げられ、架橋度の低下を防止し、かつ、プロセスの短時間化による経済性向上のため、好ましくは50~200mJ/cm2である。紫外線を照射する際の環境は特に制限されず、大気中、不活性ガス中、または一定量の不活性ガス気流下で行うことが出来る。
【0124】
共重合体が架橋していることは共重合体膜を良溶剤に浸漬した際の溶解性により判断可能であり、その架橋度は後述の残膜率を測定することにより定量的に評価できる。具体的には、ガラス板上に形成した共重合体の薄膜を架橋させていない状態で良溶剤に浸漬させると共重合体膜は全て溶解してしまう。一方、十分に架橋した共重合体膜は良溶剤に溶解せず、固体状態を維持し、膜の厚みに変化はない。また、架橋が不十分な場合には、重合体膜は固体状態を維持しているが、一部の共重合体が溶解するため、その膜厚は小さくなる。従い、溶剤浸漬前後の膜厚を測定することで共重合体がどの程度架橋したかを定量的に判断出来る。
【0125】
架橋処理後の重合体の構造は、熱重量・質量分析装置(TG-MS)、赤外線吸収スペクトル(IR)を用いた方法により同定することができる。
【0126】
本発明の重合体は、以下の式(5)または式(6)の少なくともいずれかを単量体と、式(7)で表される単量体をラジカル重合法により重合させることで得ることができる。
【0127】
【0128】
(式(5)中、R1~R3、A、L、X、m及びnは式(1)で定義したものと同様である。)
【0129】
【0130】
(式(6)中、Q1、Q2、p、q、G1、G2、R4~R7、X1~X3、r、sは式(2)で定義したものと同様である。)
【0131】
【0132】
(式(7)中、R8、M、Y、k及びjは式(3)で定義したものと同様である。)。
【0133】
本発明において、具体的な式(5)で表される単量体としては、式(8)で表される7-メタクリロイルオキシ-4-オキソベンゾピランの他、例えば、以下のものが挙げられる。
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
【0148】
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
【0153】
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
本発明の式(5)で表される重合性化合物は公知の方法を利用して製造することが出来る。例えば、6-ビニル-4-オキソ-ベンゾピラン化合物、或いは7-ビニル-4-オキソ-ベンゾピラン化合物は、6-メチル-4-オキソ-ベンゾピラン化合物、或いは7-メチル-4-オキソ-ベンゾピラン化合物を出発原料、四塩化炭素を溶媒とし、N-ブロモスクシンイミド、及びパーオキサイド化合物、或いはアゾイソブチロニトリル等のラジカル発生剤を用いてメチル基をブロモメチル化する工程、ブロモメチル基を、ジメチルスルホキシドを溶媒かつ触媒として用いて、炭酸水素ナトリウムによりホルミル化する工程、ホルミル基を、メチルトリフェニルホスホニウムブロミドを触媒に用いて、カリウム-t-ブトキサイドによりビニル化する4つの工程により製造出来る。
【0162】
本発明において、具体的な式(6)で表される単量体としては、例えば下記のような化合物が例示される。
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
【0168】
【0169】
本発明の式(6)で表される重合性化合物はヒドロキシ基を有するベンゾピラン化合物と酸クロリドを溶剤中で反応させる公知の方法で製造できる。該酸クロリドとしてはフマル酸ジクロリド、マレイン酸ジクロリド等の酸クロリドが例示される。該酸クロリドの該ベンゾピラン化合物に対するモル比は、未反応の酸クロリド量を低減させるため、0.35~0.45が好ましい。本反応で用いることが出来る溶剤は上記のベンゾピラン化合物、及び酸クロリドを溶解し、これらの化合物と反応せず、十分に脱水されている限り何ら制限されず、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶剤を用いることが出来る。本反応においては反応速度を上げ、収量を増大させるため、反応で発生する塩化水素の受酸剤、及びエステル化触媒を、また反応中に重合性化合物が重合するのを防止するため重合禁止剤を添加することが好ましい。該受酸剤としては脱水されたトリエチルアミン、ピリジン等が、該触媒としてはN,N-ジメチル-4-アミノピリジン等の強塩基が、該重合禁止剤としてはヒドロキノン、ジブチルヒドロキシトルエン等が例示される。反応温度は特に制限されないが、重合反応を防止するため0~70℃が好ましい。反応時間は特に制限されないが、経済性に優れるため、2~6時間が好ましい。
【0170】
本発明において、具体的な式(7)で表される単量体としては、例えば、スチレン、α―メチルスチレン、2-クロロスチレン、2-ブロモスチレン、2-フルオロスチレン、3-クロロスチレン、3-ブロモスチレン、3-フルオロスチレン、4-クロロスチレン、4-ブロモスチレン、4-フルオロスチレン、4-クロロメチルスチレン、3,5-トリフルオロメチルスチレン、4-トリフルオロスチレン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレンが挙げられる。
【0171】
式(5)及び/或いは式(6)、及び式(7)で表される単量体をラジカル共重合するとき、該ラジカル共重合には溶液重合、乳化重合、懸濁重合、及び塊状重合等の公知の方法を用いることが出来る。
【0172】
溶液重合において用いる溶剤は上記の単量体、及び本発明の重合体が溶解する限り、何ら制限されず、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶剤;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等の環状エーテル等が挙げられ、これらの溶剤を混合して用いることも出来る。
【0173】
重合温度は用いる開始剤に依存して選択されるが、特に制限されない。開始剤は特に制限されず、アゾイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、ジ(t-ブチル)パーオキサイド等の過酸化物系開始剤が例示される。反応時間は何ら制限されず用いる開始剤の半減期に従い設定されるが、経済性の観点から4~8時間が好ましい。
【0174】
本発明の重合体は、有機溶剤に溶解させた溶液として種々の基材上に印刷出来る。該有機溶剤としては、該重合体を溶解し、同時に有機トランジスタの製造に用いる有機半導体を溶解しない溶剤であれば何ら制限なく用いることができ、例えば、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、N-ヘキシルベンゼン、テトラリン、デカリン、イソプロピルベンゼン、クロロベンゼン、などの芳香族炭化水素溶剤;塩化メチレン、1,1,2-トリクロロエチレン等の塩素化脂肪族炭化水素化合物;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジオキサン等の脂肪族環状エーテル化合物;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン化合物;エチルアセテート、ジメチルフタレート、サリチル酸メチル、アミルアセテート等のエステル化合物;n-ブタノール、エタノール、iso-ブタノール等のアルコール類;1-ニトロプロパン、2硫化炭素、リモネン等が例示され、これらの溶剤は必要に応じて混合して使用することが出来る。
【0175】
塗工又は印刷方法には何ら制限はなく、例えば、スピンコーティング、ドロップキャスト、ディップコーティング、ドクターブレードコーティング、パッド印刷、スキージコート、ロールコーティング、ロッドバーコーティング、エアナイフコーティング、ワイヤーバーコーティング、フローコーティング、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、凸版反転印刷等を用いて印刷することが出来る。
【0176】
式(7)で表され、2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン等の特定の構造を有する含フッ素単量体を用いた場合、本発明の重合体は汎用溶剤に溶解するが、同時にフッ素系の溶剤にも溶解する。このため、本発明の重合体をヘキサフルオロベンゼン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロトルエン等のフッ素系溶剤に溶解させて有機トランジスタ素子の最上層に保護膜として印刷して使用することもできる。また、トップゲート型トランジスタ素子において有機半導体層の上に印刷可能な絶縁膜としても利用できる。
【0177】
本発明に係る重合体は光架橋(光環化)基を有し、該光架橋には放射線が好適に用いられ、放射線としては、例えば、波長245~350nmの紫外線が挙げられる。放射線の照射量は重合体の組成により適宜変更されるが、例えば、100~300mJ/cm2が挙げられ、架橋度の低下を防止し、かつ、プロセスの短時間化による経済性向上のため、好ましくは50~200mJ/cm2である。紫外線を照射する際の環境は特に制限されず、大気中、不活性ガス中、または一定量の不活性ガス気流下で行うことが出来る。必要に応じて重合体溶液に光増感剤を添加して光架橋反応を促進させることも出来る。用いる光増感剤には何ら制限はなく、例えば、ベンゾフェノン化合物、アントラキノン化合物、チオキサントン化合物、ニトロフェニル化合物等が挙げられるが、本発明で用いられる重合体との相溶性が高いベンゾフェノン化合物が好ましい。また、該増感剤は必要に応じて2種以上を組み合わせて使用できる。
【0178】
本発明の重合体は紫外線により光架橋出来るが、必要に応じて加熱しても良い。紫外線照射に加えて加熱する場合、該加熱温度は特に制限されないが、用いる重合体の熱変形を避けるため120℃以下の温度が好ましい。
【0179】
更に、本発明の重合体には架橋密度を上げる、または架橋時間を短縮するために架橋剤としてエチレン、プロピレン等のオレフィンを1分子内に複数個含有する化合物;アセチレン、ブチン等を1分子内に複数個含有する化合物;シクロペンテン等の環状オレフィンを1分子内に複数個含有する化合物等が配合されていてもよい。これらの化合物は1種類、または2種類以上を配合してもよい。
【0180】
また、本発明の重合体は、短時間で効率良く光架橋出来るが、より短時間で効率良く光架橋するため、光照射時間を2分以内とすることが好ましい。なお、架橋時間の制御に好適であることから、光照射時間を1分以内とすることがさらに好ましい。
【0181】
本発明の重合体は、本発明の重合体及び/又は本発明の重合体の架橋物を含有する絶縁膜(層)として好適に用いることができる。また、本発明の重合体は、該絶縁膜を含む有機トランジスタデバイスとして好適に用いることができる。
【0182】
本発明の重合体が有機トランジスタデバイス(以下、「有機トランジスタ」という)に用いられるとき、本発明の有機トランジスタは
図1に示すボトムゲート-トップコンタクト型(A)、ボトムゲート-ボトムコンタクト型(B)、トップゲート-トップコンタクト型(C)、トップゲート-ボトムコンタクト型(D)のいずれの素子構造でもよい。本発明の重合体は特に(C)及び(D)の形態の素子への適用性が高い。ここで、1は有機半導体層、2は基板、3はゲート電極、4はゲート絶縁層、5はソース電極、6はドレイン電極を示す。
【0183】
該有機トランジスタにおいて、用いることが出来る基材(基板)は素子を作製できる十分な平坦性を確保できれば特に制限されず、例えば、ガラス、石英、酸化アルミニウム、ハイドープシリコン、酸化シリコン、二酸化タンタル、五酸化タンタル、インジウム錫酸化物等の無機材料基板;プラスチック;金、銅、クロム、チタン、アルミニウム等の金属;セラミックス;コート紙;表面コート不織布等が挙げられ、これらの材料からなる複合材料又はこれらの材料を多層化した材料であっても良い。また、表面張力を調整するため、これらの材料表面をコーティングすることも出来る。
【0184】
基材として用いるプラスチックとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリメチルペンテン-1、ポリプロピレン、環状ポリオレフィン、フッ素化環状ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ポリ(ジイソプロピルフマレート)、ポリ(ジエチルフマレート)、ポリ(ジイソプロピルマレエート)、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタンエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリアミドエラストマー、スチレンブロック共重合体等が例示される。また、上記のプラスチックを2種以上用いて積層して基材として用いることができる。
【0185】
本発明で用いることが出来るゲート電極、ソース電極、又はドレイン電極としては、金、銀、アルミニウム、銅、チタン、白金、クロム、ポリシリコン、シリサイド、インジウム・錫・オキサイド(ITO)、酸化錫等の導電性材料が例示される。また、これらの導電性材料を複数、積層して用いることもできる。
【0186】
電極の形成(回路パターンの形成)の際に、前記の絶縁層をUV架橋後、遮光マスクを用い、絶縁層表面に真空紫外(VUV)光を照射することで、絶縁層の表面張力を上げて有機溶剤に対する濡れ性を増大させることができる。VUV光の照射時間は用いる絶縁層に用いる重合体の構造、及び光源と絶縁層表面間の距離により異なるが、経済性の観点から、1分~8分が好ましく、更に好ましくは1分~5分である。
【0187】
また、BGTC型素子では前記の基材上または有機半導体層の上に電極を形成する。この場合、電極の形成方法としては特に制限はなく、蒸着、高周波スパッタリング、電子ビームスパッタリング等が挙げられ、前記導電性材料のナノ粒子を水又は有機溶剤に溶解させたインクを用いて、溶液スピンコート、ドロップキャスト、ディップコート、ドクターブレード、ダイコート、パッド印刷、ロールコーティング、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、凸版反転印刷等の方法を採用することも出来る。また、必要に応じて電極上にフルオロアルキルチオール、フルオロアリルチオール等を吸着させる処理を行っても良い。
【0188】
本発明で用いることが出来る有機半導体には何ら制限はなく、N型及びP型の有機半導体の何れも使用することができ、N型とP型を組み合わせたバイポーラトランジスタとしても使用でき、例えば式(F-1)~(F-11)の化合物が例示される。
【0189】
【0190】
【0191】
【0192】
【0193】
【0194】
【0195】
【0196】
【0197】
【0198】
【0199】
【0200】
本発明において、有機半導体層を形成する方法としては、有機半導体を有機溶剤に溶解させて塗布、印刷する方法が好適に用いられるが、有機半導体層の薄膜を形成出来る限り何らの制限もない。有機半導体層を有機溶剤に溶解させた溶液を印刷する際の溶液濃度は有機半導体の構造及び用いる溶剤により異なるが、より均一な半導体層の形成及び層の厚みの低減の観点から、0.5~5重量%であることが好ましい。この際の有機溶剤としては有機半導体が製膜可能な一定の濃度で溶解する限り何ら制限はなく、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン、デカリン、インダン、1-メチルナフタレン、2-エチルナフタレン、1,4-ジメチルナフタレン、ジメチルナフタレン異性体混合物、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、メシチレン、イソプロピルベンゼン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、テトラリン、オクチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1,2-ジメトキシベンゼン、1,3-ジメトキシベンゼン、γ-ブチロラクトン、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、ベンジルアルコール、グリセリン、シクロヘキサノールアセテート、3-メトキシブチルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、アニソール、シクロヘキサノン、メシチレン、3-メトキシブチルアセテート、シクロヘキサノールアセテート、ジプロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,4-ブタンジオールジアセテート、エチルアセテート、フェニルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル-N-プロピルエーテル、テトラデカヒドロフェナントレン、1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロフェナントレン、デカヒドロ-2-ナフトール、1,2,3,4-テトラヒドロ-1-ナフトール、α-テルピネオール、イソホロントリアセチンデカヒドロ-2-ナフトール、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、2,6-ジメチルアニソール、1,2-ジメチルアニソール、2,3-ジメチルアニソール、3,4-ジメチルアニソール、1-ベンゾチオフェン、3-メチルベンゾチオフェン、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン、クロロホルム、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、ジオキサン、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセトフェノン、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、リモネン等が例示されるが、好ましい性状の結晶膜を得るためには有機半導体の溶解力が高く、沸点が100℃以上の溶剤が適しており、キシレン、イソプロピルベンゼン、アニソール、シクロヘキサノン、メシチレン、1,2-ジクロロベンゼン、3,4-ジメチルアニソール、ペンチルベンゼン、テトラリン、シクロヘキシルベンゼン、デカヒドロ-2-ナフトールが好ましい。また、前述の溶剤2種以上を適切な割合で混合した混合溶剤も用いることが出来る。
【0201】
有機半導体層には必要に応じて各種有機・無機の高分子若しくはオリゴマー、又は有機・無機ナノ粒子を固体若しくは、ナノ粒子を水若しくは有機溶剤に分散させた分散液として添加でき、上記高分子誘電体層上に高分子溶液を塗布して保護膜を形成出来る。更に、必要に応じて本保護膜上に各種防湿コーティング、耐光性コーティング等を行うことが出来る。
【0202】
本発明で用いることが出来るゲート電極、ソース電極、又はドレイン電極としては、アルミニウム、金、銀、銅、ハイドープシリコン、ポリシリコン、シリサイド、スズ酸化物、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物、クロム、白金、チタン、タンタル、グラフェン、カーボンナノチューブ等の無機電極、又はドープされた導電性高分子(例えば、PEDOT-PSS)等の有機電極等の導電性材料が例示され、これらの導電性材料を複数、積層して用いることもできる。また、キャリアの注入効率を上げるために、これらの電極に表面処理剤を用いて表面処理を実施することもできる。このような表面処理剤としては、例えば、ベンゼンチオール、ペンタフルオロベンゼンチオール等を挙げることができる。
【0203】
また、前記の基材、絶縁層または有機半導体層の上に電極を形成する方法に特に制限はなく、蒸着、高周波スパッタリング、電子ビームスパッタリング等が挙げられ、前記導電性材料のナノ粒子を水又は有機溶剤に溶解させたインクを用いて、溶液スピンコート、ドロップキャスト、ディップコート、ドクターブレード、ダイコート、パッド印刷、ロールコーティング、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷、凸版反転印刷等の方法を採用することも出来る。
【0204】
本発明の有機トランジスタは、有機トランジスタ素子の実用性の観点から、移動度が0.20cm2/Vs以上であることが好ましい。
【0205】
本発明の有機トランジスタは、有機トランジスタ素子の実用性の観点から、閾値電圧が-10.0V以上で0Vより小さいことが好ましい。
【0206】
本発明の有機トランジスタは、有機トランジスタ素子の実用性の観点から、漏洩電流密度が10-9A/cm2以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0207】
本発明により汎用溶剤に溶解し、常温かつ短時間で架橋し、絶縁性に優れた重合体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0208】
【
図1】;有機トランジスタの断面形状を示す図である。
【
図2】;実施例1で製造した重合性化合物の
1H-NMRチャートを示す図である。
【
図3】;実施例2で製造した重合体1の
1H-NMRチャートを示す図である。
【
図4】;実施例3で製造した重合体2の
1H-NMRチャートを示す図である。
【
図5】;実施例4で製造した重合体3の
1H-NMRチャートを示す図である。
【実施例】
【0209】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例において用いた有機半導体(ジ-n-ヘキシルジチエノベンゾジチオフェン)は、特開2015-224238号公報の製造方法に従って合成した。7-ヒドロキシ-4-オキソ-ベンゾピランはジャーナル・オブ・ヘテロサイクリック・ケミストリー誌、2015年、52巻、562頁記載の方法により合成した。
【0210】
7-メチル-4-オキソ-ベンゾピランはジャーナル・オブ・ヘテロサイクリック・ケミストリー誌、52巻、2号、562頁、2015年記載の方法により、7-ブロモメチル-4-オキソ-ベンゾピランはジャーナル・オブ・メディカル・ケミストリー誌、44巻、672頁、2001年記載の方法により、7-ホルミル-4-オキソ-ベンゾピランはジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー誌、58巻、26号、7598頁、1993年記載の方法により、7-ビニル-4-オキソ-ベンゾピランはジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサエティー誌、126巻、12号、3856頁、2004年記載に方法により製造した。
【0211】
ヘキサン、酢酸エチル、エタノール、四塩化炭素、ジメチルスルホキシド、炭酸水素ナトリウム、N-メチルピロリドン、メタノール、、イソプロパノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、脱水ピリジン、テトラヒドロフラン(THF)、脱水テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、スチレン、及びアゾイソブチロニトリル(AIBN)は和光純薬製の試薬を、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、4-ジメチルアミノピリジン(4DAP)、2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン(PFS)、及び塩化メタクリロイル、ペンタフルオロベンゼンチオール、N-ブロモスクシンイミド、トリメチルトリフェニルホスホニウムブロミド、カリウム-t-ブトキサイドは東京化成製の試薬を用いた。シリカゲルカラムクロマトグラフィーにはメルク製のKiesel-Gel-60を用いた。
【0212】
実施例において、NMR、重合体の溶解性、濾過性、スピンコート、膜厚測定、UV照射、真空蒸着、残膜率、有機トランジスタ素子の評価については、以下に示す条件・装置で実施した。
<NMR>
JNM-ECZ400S FT-NMR(日本電子(株)製)を用いて重合体の重水素化クロロホルム溶剤を用いて測定した。なお、ベンゾピラン基の含有量Xは1H-NMRを用いて下記の式により算出した
X=(3I2-aI1)/{(5-a)I1+2I2}
(ここで、I1はδ0.8~2.5ppmおけるピーク強度を、I2はδ6.0~8.5ppmおけるピーク強度を、aは式(2)においてフェニル基に結合している水素の数を表す。)
<重合体の溶解性>
テスト溶剤をトルエン、キシレン、メシチレン、及びテトラリンとし、これらの有機溶剤の何れかに溶解した場合に「溶解」、何れの溶剤にも溶解しない場合には「不溶」と評価した。
<濾過性>
重合体を濃度5wt%となるようにテスト溶剤に溶解させて得られた溶液2MLをポアサイズ0.22μmのテフロン(登録商標)フィルターで濾過した際、濾過圧力の上昇、及び目詰まりがない場合に「良好」、それ以外の場合を「不良」と評価した。
<スピンコート>
ミカサ株式会社製MS―A100を用いた。
<膜厚測定>
ブルカー社製Dektak XT スタイラスプロファイラーを用いて測定した。
<UV照射>
(株)ジーエス・ユアサ コーポレーション製UV-System、CSN-40A-2を用い、UV強度4.0kW/cm2の条件で、搬送速度を変えてUV照射時間を調整した。
<真空蒸着>
アルバック機工社製 小型真空蒸着装置VTR-350M/ERHを用いた。
<残膜率>
洗浄、乾燥した30×30mm2のガラス(コーニング社製Eagle XG)上に、スピンコータ―を用いて重合体の溶液を乾燥後の膜厚が500nmとなるようにスピンコート製膜し、十分に乾燥させた。この絶縁膜に300mJ/cm2の紫外線を照射して絶縁膜を光架橋した。この膜の厚みをブルカー社製Dektak XT スタイラスプロファイラーにより測定し、T0とした。次に、この光架橋した絶縁膜がコーティングされたガラス板をトルエンに1分浸漬後、取り出して常温でトルエンを揮発させ、その膜厚を測定しT1とした。これらの膜厚測定値を用いて、残膜率を下記の式により算出した
残膜率=T1/T0×100(%)
残膜率が低い程、光架橋が不十分で耐溶剤性に劣ることを示し、残膜率が0%の場合には膜が完全溶解したことを示す。
<有機トランジスタ素子の評価>
有機電界効果トランジスタの一形態であるボトムゲート・ボトムコンタクト(BGBC)型素子を作製し、ケースレイ社製半導体パラメータアナライザーSCS4200を用い、ソース・ドレイン間電圧をマイナス60ボルトとして、ゲート電圧を変化させることにより、移動度、閾値電圧、漏洩電流を評価した。
【0213】
以下に実施例を示すが、ポリマーの合成反応、精製、乾燥は全てイエローライト下、又は遮光下で行った。なお、実施例において、イエローライト下又は遮光下で行ったのは、前述の単量体、及び該単量体が導入された重合体の光架橋反応を防ぐためである。
【0214】
(参考例1) 7-メタクリロイルオキシ-4-オキソ-ベンゾピラン(7MOB)の合成
窒素導入管を備えた100MLの2口フラスコに撹拌子を入れ、7-ヒドロキシ-4-オキソ-ベンゾピラン5g、脱水ピリジン4.9g、4DAP0.8gを仕込んだ。次に、脱水THF50MLを仕込んで、室温で撹拌し、均一溶液を得た。得られた溶液を氷冷した後、注射器を用いて塩化メタクリロイル6.0MLをゆっくり添加した。添加後、氷冷下で1時間、室温で2時間反応させた。反応後、溶剤、ピリジン、及び塩化メタクリロイルを減圧留去し、塩化メチレン50ML及び水50MLを加えた。この液を分液ロートに移し、塩化メチレン層を分離した。この塩化メチレン層を濃塩酸5MLを加えた水100MLで3回洗浄し、更に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100MLで3回洗浄した。更に、飽和食塩水100MLで3回洗浄した。洗浄した塩化メチレン層を濃縮・乾固させて固体4.9gを得た。得られた固体をエタノールにより再結晶して目的とする7-メタクリロイルオキシ-4-オキソ-ベンゾピラン(7MOB)3.8gを得た
1H-NMR(400MHz、CDCl3):δ8.23(d,-O-CH=CH-,1H),δ7.86(d,芳香族,1H),δ7.31(d,芳香族,1H),δ7.19(dd,芳香族,1H),δ6.39(d,-O-CH=CH,1H),δ6.33(s,t,CH2=C<,1H),δ5.98(t,CH2=C<,1H),δ2.07(s,-CH3,1H)
13C-NMR(400MHz、CDCl3):δ(ppm)176.61(-C(O)-CH=CH-O-),164.70(-OC(O)-C(CH3)=),156.74(芳香族),155.33(芳香族),154.65(芳香族),135.02(CH2=CH<),128.21(芳香族),126.93(CH2=C<),122.38(芳香族),119.38(芳香族),112.86(芳香族),110.95(芳香族),18.08(CH2=C(CH3)-)。
【0215】
(参考例2)7-ビニル-4-オキソ-ベンゾピラン(7VOB)の合成
<7-メチル-4-オキソ-ベンゾピラン(7MeOB)の合成>
撹拌子を入れた1Lのビーカーに2’-ヒドロキシ-4’-メチルアセトフェノン(東京化成、試薬)25g、トリエチルオルトフォルメート(東京化成、試薬)142.5gを入れ、均一に混合した後、27.9gの過塩素酸(東京化成、試薬)を分割して添加し、撹拌下で2時間20分反応させた。その後、反応溶液に撹拌下で無水ジエチルエーテル(東京化成、試薬)500MLを注ぎ入れ、反応物を沈殿させた。沈殿物を濾過し、ジエチルエーテルで3回洗浄後、得られた緑色固体を1000mLのビーカーに移し、水500MLを添加して95℃で2時間半反応させた。得られた赤紫色の反応溶液を冷却し、室温で一昼夜静置した。反応溶液に200MLのジクロロメタンを加えて、十分に撹拌した後、分液ロートに移し、ジクロロメタン層を分離した。水層にジクロロメタンを加えて抽出操作を2回行い、上述のジクロロメタン層に加えた上で、エバポレーターにより濃縮、乾固させて濃赤茶色の固体を得た。この固体を、ヘキサンを用いて2回再結晶精製し、13gの7MeOBを得た
1H-NMR(CDCl3,400MHz)δ8.08(d,1H,-CH=CH-),δ7.81(d,1H,芳香族),δ7.24(s,1H,芳香族),δ7.21(d,1H,芳香族),δ6.30(d,1H,-CH=CH-), δ2.48(s,3H,-CH3)。
【0216】
<7-ブロモメチル-4-オキソ-4H-1-ベンゾピラン(7BMOB)の合成>
窒素ボックス中で、500MLのシュレンク管に7MeOB11.8g、N-ブロモスクシンイミド22.8g、アゾビスイソブチルニトリル(AIBN)0.15g、脱水した四塩化炭素350MLを仕込んだ。窒素気流下で攪拌し、内容物を溶解させた上で加熱し、還流下で4時間反応させた。反応後、氷冷して濾過し、濾液を濃縮し、真空ポンプで残存溶剤を取り除き乾固させた。得られた固体をヘキサンで再結晶し、4.3gの7BMOBを得た
1H-NMR(CDCl3,400MHz)δ8.18(d,1H,-CH=CH-),δ7.49(d,1H,芳香族),δ7.86(d,1H,芳香族),δ7.42(d,1H,芳香族),δ6.34(d,1H,-CH=CH-),δ4.54(s,2H,-CH3Br)。
【0217】
<7-ホルミル-4-オキソ-ベンゾピラン(7FOB)の合成>
300MLの反応器に炭酸水素ナトリウム29g、ジメチルスルホキシド230MLを仕込み、攪拌下、100℃に加熱した。この中に、7BMOB4.5gを分割添加し、添加後、1時間反応後、反応液を氷1kgを入れたビーカーに注いで生成物を沈殿させた。このスラリーに塩化メチレンを加え、分液ロートで有機層を分離した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、エバポレータで濃縮、乾固させた。得られた固体を酢酸エチルを移動相としたシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより分離し、1.7gの7FOBを得た。
【0218】
1H-NMR(CDCl3,400MHz)δ10.15(s,1H,-CHO),δ8.38(d,1H,-CH=CH-),δ7.98(d,1H,芳香族),δ7.95(d,1H,芳香族),δ7.95(d,1H,芳香族),δ7.91(dd,1H,芳香族),δ6.43(d,1H,-CH=CH-)。
【0219】
<7-ビニル-4-オキソ-ベンゾピラン(7VOB)の合成>
50MLのシュレンク管に0.92gのメチルトリフェニルホスフィニウムブロミド、10gのTHFを仕込んだ後、カリウム-t-ブトキサイド0.29gを14gのTHFに溶解させた溶液を仕込んだ。窒素シールした状態で攪拌下、室温で4時間反応させた後、7FOB0.3gを10gのTHFに部分溶解させたスラリーを5分間かけて、ゆっくりと添加した。添加終了後、室温で19時間反応させた。反応溶液を希塩酸水溶液に注ぎ、更にクロロホルム100MLを添加し、十分に攪拌した後、分液ロートに移してクロロホルム層を分離した。残った水層をクロロホルムで3回抽出し、全てのクロロホルム溶液を合わせてエバポレータにより濃縮し、赤褐色のオイル状物を得た。酢酸エチルを移動相としたシリカゲルカラムクロマトグラフィにより上記オイル状物を分離して、黄色結晶として0・06gの7-ビニル-4-オキソ-ベンゾピラン(7VOB)を得た。
【0220】
1H-NMR(CDCl3,400MHz)δ8.16(d,1H,-CH=CH-),δ7.84(d,1H,芳香族),δ7.48(d,1H,芳香族),δ7.42(s,1H,芳香族),δ6.79(q,1H,-CH=),δ6.33(d,1H,-CH=CH-),δ5.95(d,1H,=CH2),δ5.49(d,1H,=CH2)。
【0221】
(実施例1) ビス(7-(4-オキソ-ベンゾピラニル))フマレート(BOBF)の合成
窒素下で、100MLのシュレンク管に7-ヒドロキシ-4-オキソ-ベンゾピラン5.0g、4-ジメチルアミノピリジン0.15g、N-メチルピロリドン50gを仕込み、攪拌下で固形物を溶解させた後、氷冷した。次に、フマリルクロリド1.9gをゆっくりと滴下し、滴下完了後、氷冷下で30分反応させた。更に室温で1.5時間反応させた後、反応物を水300mLに注ぎ、沈殿物を濾過し黒茶色の固体を得た。本固体をエタノール中に添加し攪拌下で30分間洗浄し、濾過した。得られた茶色の固体をエタノールとN-メチルピロリドンの混合溶剤を用いて再結晶し、薄茶色の針状結晶としてビス(7-(4-オキソ-ベンゾピラニル))フマレート0.8gを得た。得られたBOBFの
1H-NMRチャートを
図2に示す。
【0222】
1H-NMR(400MHz、DMSO-d6):δ8.31(d,-O-CH=CH-C(O)-,2H),δ8.11(d,芳香族,2H),δ7.68(d,芳香族,2H),δ7.41(dd,芳香族,2H),δ7.25(s,-C(O)-CH=CH-C(O)-,2H),δ6.37(d,-O-CH=CH-C(O)-,1H)。
【0223】
(実施例2)
スチレン2g、7MOB0.78g、DMF14g、及びAIBN39mgを20MLシュレンク管に仕込み、十分に脱気した後、窒素シール下、65℃で6時間重合した。得られた重合体溶液を撹拌下で300mLのメタノールに注いで重合体を沈殿させ、濾過により単離した後、減圧乾燥して0.4gの重合体1を得た。得られた重合体1は28モル%の4-オキソ-ベンゾピラン単位(式(1))及び72モル%のスチレン単量体単位(式(3))を含有していた。得られた重合体1の
1H-NMRチャートを
図3に示す。
【0224】
【0225】
1H-NMR(400MHz、CDCl3):δ7.98(brd,-C(O)-CH=CH-O-,δ7.80(br,芳香族),δ7.03~6.08(brm,芳香族),δ6.46(brs,-C(O)-CH=CH-O-), δ2.63~0.24(brm,-CH<,-CH2-)。
【0226】
<有機トランジスタ素子の作製及び評価>
洗浄、乾燥した30×30mm2のガラス(基材)(コーニング社製Eagle XG)にアルミニウムを真空蒸着し、厚み50nmのゲート電極を形成した。電極が形成された基材の上に、得られた重合体1のトルエン溶液(5wt%)を500rpm×5秒、1000rpm×20秒の条件でスピンコートし、100℃で10分間乾燥した後(絶縁膜の形成)、紫外線強度4kW/cm2の光源を用い、室温で紫外線を5.4秒照射して紫外線照射量300mJ/cm2の条件で架橋し、膜厚500nmの高分子誘電体層を形成した。ゲート電極及び高分子誘電体層が形成された基材上に金を真空蒸着して厚み50nm、チャンネル長100μm、電極幅500μmのソース電極、及びドレイン電極を形成した。その後、直ちにペンタフルオロベンゼンチオール30mmolのイソプロパノール溶液に浸漬し、5分間経過した時点で取り出し、イソプロパノールで洗浄後、ブロー乾燥した。その後、有機半導体(ジ-n-ヘキシルジチエノベンゾジチオフェン)の0.8wt%トルエン溶液60nLをディスペンサにより印刷した。溶剤を揮発させ50℃で1時間乾燥した後、ボトムゲート・ボトムコンタクト(BGBC)型の有機トランジスタデバイスを作製した。作製した有機電界効果トランジスタデバイスの構成、評価結果等を表1に示す。
【0227】
【0228】
(実施例3)
25mLのシュレンク管に、実施例1で得られたBOBF0.3g、アゾイソブチロニトリル(AIBN)0.012g、スチレン0.7g、N-メチルピロリドン7.5gを仕込み、液体窒素による凍結脱気と溶解を4回繰り返した後、窒素加圧下、73℃で6時間重合した。重合完了後、反応溶液を100mLのメタノールに注いでポリマーを沈殿させ、濾過、メタノール洗浄を行った後、50℃で乾燥し、淡茶色の重合体2を0.5g得た。得られた重合体4は4モル%のBOBF由来の繰り返し単位(式(2))と、96モル%のスチレン単位(式(3))を有していた。得られた重合体2の
1H-NMRチャートを
図4に示す。
【0229】
1H-NMR(400MHz、CDCl3):δ8.12(brs,-O-CH=CH-C(O)-), δ8.05(brs,-O-CH=CH-C(O)-),δ7.79(brs,芳香族),δ6.33(brs,-O-CH=CH-C(O)-,H),δ3.14,δ2,72,δ2.29,δ2.24,δ1.83,δ1.60,δ1.42(brm,-CH<,-CH2-)
【0230】
【0231】
<有機トランジスタ素子の作製及び評価>
重合体1を重合体2に変えた以外は、実施例2と同様の手法で有機トランジスタ素子を作成し、評価した結果等を表1に合わせて示す。
【0232】
(実施例4)
7MOB0.35g、THF14g、及びAIBN17.5mgを20MLシュレンク管に仕込み、十分に脱気した後、窒素ボックス内でPFS1.65gを仕込んだ。再度、十分に窒素置換を行った後、窒素シール下、60℃で6時間重合した。得られた重合体溶液を撹拌下で300mLのメタノールに注いで重合体を沈殿させ、濾過により単離した後、減圧乾燥して0.4gの重合体3を得た。得られた重合体3は16モル%の4-オキソ-ベンゾピラン単位(式(1))及び84モル%の2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレンスチレン(PFS)単量体単位(式(3))を含有していた。得られた重合体3の
1H-NMRチャートを
図5に示す。
【0233】
【0234】
1H-NMR(400MHz、CDCl3):δ8.17(brd,-C(O)-CH=CH-O-,δ7.86(brs,芳香族),δ6.92(brs,芳香族),δ6.35(brs,-C(O)-CH=CH-O-), δ3.00~0.91(brm,-CH<,-CH2-)。
【0235】
<有機トランジスタ素子の作製及び評価>
重合体1を重合体3に変えた以外は、実施例2と同様の手法で有機トランジスタ素子を作製し、評価した結果等を表1に示す。
【0236】
(実施例5)
スチレン1.0g、7MOB0.78g、THF18g、及びAIBN39mgを20MLシュレンク管に仕込み、十分に脱気した後、窒素ボックス内でPFS1.86gを仕込んだ。再度、十分に窒素置換を行った後、窒素シール下、60℃で6時間重合した。得られた重合体溶液を撹拌下で300mLのメタノールに注いで重合体を沈殿させ、濾過により単離した。濾過した重合体を塩化メチレン10MLに溶解させ、撹拌下でメタノール300MLに注いで沈殿させ、沈殿物を濾過、減圧乾燥して0.5gの重合体4を得た。得られた重合体4は21モル%の4-オキソ-ベンゾピラン単位(式(1))、42モル
%の2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン単量体単位(式(3))、及び37モ
ル%のスチレン単量体単位(式(3))(式(2)は合わせて79モル%)を含有していた。
【0237】
【0238】
1H-NMR(400MHz、CDCl3):δ8.0(brd,-C(O)-CH=CH-O-,δ7.86~6.08(brm,芳香族),δ6.41(brs,-C(O)-CH=CH-O-), δ3.00~0.24(brm,-CH<,-CH2-)。
【0239】
<有機トランジスタ素子の作製及び評価>
重合体1を重合体4に変えた以外は、実施例2と同様の手法で有機トランジスタ素子を作製し、評価した結果を表1に示す。
【0240】
(実施例6)
20MLのシュレンク管に参考例2に示した方法により合成した7VOB0.232g、スチレン0.708g、AIBN14mg、ジメチルホルムアミド5gを仕込み、窒素置換を行った後、窒素加圧下で60℃で6時間重合した。得られた重合体溶液を撹拌下で300mLのメタノールに注いで重合体を沈殿させ、濾過により単離した。得られた重合体を塩化メチレン10MLに溶解させ、撹拌下でメタノール300MLに注いで再沈殿後、沈殿物を濾過、減圧乾燥して0.6gの重合体5を得た。得られた重合体5は、35モル%の4-オキソ-ベンゾピラン単位(式(1))及び37モル%のスチレン単量体単位(式(3))を含有していた。
【0241】
【0242】
1H-NMR(400MHz、CDCl3):δ7.76(brs,-C(O)-CH=CH-O-,δ6.99(brs,芳香族), δ6.34(brs,芳香族),δ6.29(brs,芳香族、-C(O)-CH=CH-O-), δ2.67~1.41(brm,-CH<,-CH2-)。
【0243】
<有機トランジスタ素子の作製及び評価>
重合体1を重合体5に変えた以外は、実施例2と同様の手法で有機トランジスタ素子を作製し、評価した結果を表1に示す。
【0244】
(比較例1)
重合体1をFCE重合体(サイトップ、AGC旭硝子(株)製)に変えた以外は実施例2と同様の手法により溶解性、UV架橋性、耐溶剤性を評価した。FCE重合体は何れのテスト溶剤にも溶解せず、汎用溶剤による製膜は出来なかった。また、フッ素系溶剤PFTBAに溶解させてUV照射をおこなったが架橋せず、本溶剤に対する残膜率は0であった。そこで、FCE重合体層へのUV照射を省略し、実施例2と同様の方法で有機トランジスタデバイスを作製した。ゲート電極、FCE重合体層、ソース及びドレインを形成した基板上に有機半導体(ジ-n-ヘキシルジチエノベンゾジチオフェン)の0.8wt%トルエン溶液60nLをディスペンサにより印刷したが、溶液がはじかれ均一な有機半導体の結晶膜が形成されず、有機トランジスタデバイスは動作しなかった。評価結果等を表1に合わせて示す。
【0245】
(比較例2)
重合体1をポリスチレン(PS)(アルドリッチ製試薬)に変えた以外は実施例2と同様の手法により溶解性、UV架橋性、耐溶剤性を評価した。PSはUV照射により架橋せず、テスト溶剤に対する残膜率は0であった。
【0246】
<有機トランジスタ素子の作製及び評価>
実施例2と同様の方法で、ゲート電極、FCE重合体層、ソース及びドレインを形成した基板上に有機半導体(ジ-n-ヘキシルジチエノベンゾジチオフェン)の0.8wt%トルエン溶液60nLをディスペンサにより印刷したが、本溶液によりPS膜は溶解し、良好な性状の有機半導体膜が形成されず、有機トランジスタデバイスとして動作しなかった。評価結果等を表1に合わせて示す。
【0247】
(比較例3)
重合体1をポリ(2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン)(PPFS)(アルドリッチ製試薬)に変えた以外は実施例2と同様の手法により溶解性、UV架橋性、耐溶剤性を評価した。PPFSはUV照射により架橋せず、テスト溶剤に対する残膜率は0であった。
【0248】
<有機トランジスタ素子の作製及び評価>
実施例2と同様の方法で、ゲート電極、FCE重合体層、ソース及びドレインを形成した基板上に有機半導体(ジ-n-ヘキシルジチエノベンゾジチオフェン)の0.8wt%トルエン溶液60nLをディスペンサにより印刷したが、本溶液によりPPFS膜は溶解し、良好な性状の有機半導体膜が形成されず、有機トランジスタデバイスとして動作しなかった。評価結果等を表1に合わせて示す。
【0249】
(比較例4)
<樹脂の合成>
窒素ボックス内で300mLのシュレンク管にポリスチレン(アルドリッチ製試薬)5.0g、脱水した塩化メチレン150mL、無水塩化アルミニウム3.9gを仕込み、室温、撹拌下で溶解させた。上部に3方コックを取り付け、下部を密閉した30mLの滴下ロートに桂皮酸クロリド4.0gの塩化メチレン溶液30mlを仕込んだ。上記のシュレンク管と滴下ロートを窒素ボックスから取り出し、窒素シールした状態でシュレンク管と滴下ロートを連結させた。シュレンク管への窒素フローを停止し、滴下ロート上部の3方コックを塩化カルシウム管に連結後、窒素フローを停止した。次に、シュレンク管を氷水で冷却し、滴下ロートから桂皮酸クロリドを10分かけて滴下した。滴下とともに重合体溶液の色は赤紫色に着色した。滴下終了後、氷水浴を除き、室温で28時間反応させた。反応溶液を再度、氷水で冷却した後、35%塩酸水溶液20mlを滴下した。この状態で5時間撹拌後、反応溶液を分液ロートに移し、塩化メチレン層を分離した。この塩化メチレン層を4回繰り返し水洗した。水層は塩化メチレンで3回抽出し、分液した。得られた塩化メチレン層を合わせて1.5Lのメタノールで再沈殿させ、重合体を濾過により単離する操作を2回行った後、50℃で減圧乾燥して5.9gの重合体6を得た。1H-NMRによる分析の結果、得られた重合体6は、スチレン単量体単位(式(3))を85モル%及び光架橋基(カルコン基)単位を15モル%有していることを確認した。
【0250】
【0251】
1H-NMR(400MHz,CDCl3):δ7.62(brs,-CH=CH-Ph),7.39~6.51(m,芳香族,-CH=CH-Ph),2.04(brs, -CH2―CH-),1.78~1.40(bm,-CH2-)。
【0252】
<有機トランジスタ素子の作製及び評価>
重合体6はテスト溶剤に溶解したが、ゲルを含んでおり0.22μmのフィルターで濾過出来なかった。そこで、濃度を1wt%とした重合体のトルエン溶液を10μm、5μm、3μm、1μm、0.5μm、0.22μmのフィルターで順に重合体溶液を濾過した後、エバポレータで濃縮して重合体濃度を5wt%とした上で、重合体1を重合体6に変えた以外は、実施例2と同様の手法で有機トランジスタ素子を作製し、評価した結果を表1に示す。重合体6は実施例2~6の重合体に比べ、濾過性、及びUV架橋性に劣っていた。
【0253】
(比較例5)
実施例2で得られた重合体1を用い、紫外線を照射しなかった以外は実施例2と同様の手法により溶解性、耐溶剤性を評価した。重合体1はテスト溶剤に溶解し、残膜率は0であった。
【0254】
<有機トランジスタ素子の作製及び評価>
実施例2と同様の方法で、ゲート電極、重合体層、ソース及びドレインを形成した基板上に有機半導体(ジ-n-ヘキシルジチエノベンゾジチオフェン)の0.8wt%トルエン溶液60nLをディスペンサにより印刷したが、本溶液により重合体膜が溶解し、良好な性状の有機半導体膜が形成されず、有機トランジスタデバイスとして動作しなかった。評価結果等を表1に合わせて示す。
【産業上の利用可能性】
【0255】
プリンテッドエレクトロニクス技術により製造出来る高品質の有機トランジスタデバイス用の絶縁層形成に好適な樹脂を提供できる。
【符号の説明】
【0256】
(A):ボトムゲート-トップコンタクト型有機トランジスタ
(B):ボトムゲート-ボトムコンタクト型有機トランジスタ
(C):トップゲート-トップコンタクト型有機トランジスタ
(D):トップゲート-ボトムコンタクト型有機トランジスタ
1:有機半導体層
2:基板
3:ゲート電極
4:ゲート絶縁層
5:ソース電極
6:ドレイン電極