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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】レンズ鏡筒
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/04 20210101AFI20231024BHJP
【FI】
G02B7/04 D
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019222851
(22)【出願日】2019-12-10
(65)【公開番号】P2021081693
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-07-01
(31)【優先権主張番号】P 2019206180
(32)【優先日】2019-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004112
【氏名又は名称】株式会社ニコン
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100142147
【弁理士】
【氏名又は名称】本木 久美子
(72)【発明者】
【氏名】玉木 翔
(72)【発明者】
【氏名】吹野 邦博
(72)【発明者】
【氏名】松川 英二
(72)【発明者】
【氏名】山口 悟史
(72)【発明者】
【氏名】蛯原 明光
【審査官】▲うし▼田 真悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-118344(JP,A)
【文献】特開2002-318337(JP,A)
【文献】特開平08-050224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 7/02-7/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直進溝を有する第1筒と、
前記直進溝と係合する係合部材を有し、前記第1筒に対して光軸方向に移動可能な第2筒と、を備え、
前記係合部材は、
前記第2筒に保持される第1部材と、
前記第1部材に対して移動可能な第2部材と、
前記第1部材と前記第2部材との間に配置される弾性部材と、
前記第1部材と前記第2部材の中心を貫通し、光軸を中心とする径方向に対して傾いている中心軸部を有する
レンズ鏡筒。
【請求項2】
前記第1部材は、前記直進溝の一方の側面と当接し、
前記第2部材は、前記直進溝の他方の側面と当接する
請求項1に記載のレンズ鏡筒。
【請求項3】
前記第1部材は、前記直進溝の前記一方の側面と線接触する
請求項2に記載のレンズ鏡筒。
【請求項4】
前記第2部材は、前記直進溝の前記他方の側面と線接触する
請求項2又は請求項3に記載のレンズ鏡筒。
【請求項5】
前記弾性部材による付勢方向は、光軸を中心とする径方向に対して傾いている
請求項1から請求項4の何れか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項6】
前記弾性部材による、付勢方向と、前記係合部材の中心軸部の軸方向とは、略平行である
請求項1から請求項5の何れか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
前記係合部材は、光軸方向に沿って複数設けられる
請求項1から請求項6の何れか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項8】
前記第1筒は、3つの前記直進溝を有し、
3つの前記直進溝のうち2つの前記直進溝は、それぞれ少なくとも2つの前記係合部材
と係合する
請求項1から請求項7の何れか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項9】
前記第2筒を光軸方向に移動させる駆動部を備える
請求項1から請求項8の何れか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項10】
前記弾性部材は、前記第1部材と前記第2部材とが離れる方向に付勢力を生じさせる
請求項1から請求項9の何れか1項に記載のレンズ鏡筒。
【請求項11】
直進溝を有する第1筒と、
カム溝を有し、光軸を中心に回転可能な第2筒と、
前記直進溝と係合する第1係合部材と、前記カム溝と係合する第2係合部材と、を有し、
前記第1筒に対して光軸方向に移動可能な第3筒と、を備え、
前記第1係合部材は、前記第3筒に保持される第1部材と、前記第1部材に対して移動可能な第2部材と、前記第1部材と前記第2部材との間に配置される第1弾性部材と、を
有し、
前記第2係合部材は、前記第3筒に保持される第3部材と、前記第3部材に対して移動
可能な第4部材と、前記第3部材と前記第4部材との間に配置される第3弾性部材と、を
有する
レンズ鏡筒。
【請求項12】
前記第1部材及び前記第2部材は、前記直進溝と線接触し、
前記第3部材及び前記第4部材は、前記カム溝と点接触する、
請求項11に記載のレンズ鏡筒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ鏡筒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
レンズ鏡筒は、ガタを防止する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-120651号公報
【発明の概要】
【0004】
第1の態様のレンズ鏡筒は、直進溝を有する第1筒と、前記直進溝と係合する係合部材を有し、前記第1筒に対して光軸方向に移動可能な第2筒と、を備え、前記係合部材は、前記第2筒に保持される第1部材と、前記第1部材に対して移動可能な第2部材と、前記第1部材と前記第2部材との間に配置される弾性部材と、前記第1部材と前記第2部材の中心を貫通し、光軸を中心とする径方向に対して傾いている中心軸部を有する構成とした。
【0005】
第2の態様のレンズ鏡筒は、直進溝を有する第1筒と、カム溝を有し、光軸を中心に回転可能な第2筒と、前記直進溝と係合する第1係合部材と、前記カム溝と係合する第2係合部材と、を有し、前記第1筒に対して光軸方向に移動可能な第3筒と、を備え、前記第1係合部材は、前記第3筒に保持される第1部材と、前記第1部材に対して移動可能な第2部材と、前記第1部材と前記第2部材との間に配置される第1弾性部材と、を有し、前記第2係合部材は、前記第3筒に保持される第3部材と、前記第3部材に対して移動可能な第4部材と、前記第3部材と前記第4部材との間に配置される第3弾性部材と、を有する構成とした。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態のレンズ鏡筒1の部分断面図である。
図2】レンズ鏡筒1の光軸OAと直交する方向の部分断面図である。
図3】レンズ室4と係合部材5との部分斜視図である。
図4】レンズ室4と固定筒3と係合部材5との部分断面図である。
図5】第2実施形態のレンズ鏡筒101の部分断面図である。
図6】レンズ室104と係合部材5と第2係合部材105との部分斜視図である。
図7】カム筒106の外周側から見た第2係合部材105とカム溝106aとの係合状態を示す図である。
図8】レンズ室4とカム筒106と第2係合部材105との部分断面図である。
図9】第3実施形態における直進溝と係合する第1係合部材の断面図である。
図10】第3実施形態におけるカム溝と係合する第2係合部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第1実施形態)
以下、図面等を参照して、第1実施形態について説明する。図1は第1実施形態のレンズ鏡筒1の部分断面図である。図中、要部以外は点線で輪郭のみ示す。図2は、レンズ鏡筒1の光軸OAと直交する方向の部分断面図(光軸OA方向から見た部分断面図)である。図3は、レンズ室4と後述の係合部材5との部分斜視図である。図4は、レンズ室4と後述の固定筒3と係合部材5との部分断面図である。
【0008】
レンズ鏡筒1は、カメラボディ2に対して着脱可能である。なお、本実施形態では、カメラボディ2に対して着脱可能なレンズ鏡筒1について説明するが、これに限定されず、レンズ鏡筒1とカメラボディ2とが一体となったカメラに適用することもできる。
【0009】
レンズ鏡筒1は、直進溝31が設けられた固定筒3(第1筒)と、固定筒3の内周側に配置されたレンズ室4(第2筒)とを備える。レンズ室4は、例えば、固定筒3に設けられたモータ7で直進駆動され、固定筒3に対して光軸OA方向に移動可能である。なお、実施形態で説明する固定筒3は、光軸OA方向に移動可能な移動筒であってもよい。
【0010】
(レンズ室4)
レンズ室4は、内周側にレンズLを保持するレンズ枠41と、レンズ枠41の外周を覆う円筒状の筒部42とを備える。筒部42の外周面には、図2に示すように円周方向の均等な三箇所に取付凹部43が設けられている。三箇所のうちの二箇所P2,P3には、図3に示すように、光軸OA方向に沿って並んだ2つの取付凹部43が設けられている。三箇所のうちの一箇所P1には、取付凹部43が1つ設けられている。
【0011】
(取付凹部43)
取付凹部43の内部形状は、図4に示すように光軸OAと直交する方向の断面が三角形である。すなわち、取付凹部43は光軸OAと直交する断面において、光軸OAから径方向に延びる直線Bに対して約45°傾いた2つの側面を有する。一方の側面である第1側面43fと他方の側面である第2側面43gとの間の角度は約90°である。
【0012】
(固定筒3)
レンズ室4の外周側に配置される固定筒3には、円周方向の均等な三箇所に、光軸OA方向に沿って延びる直進溝31が設けられている。直進溝31は一定の幅を有し、光軸OA方向に沿って延び且つ互いに対向する2つの側面を有する。一方の側面である第1側面31fと、他方の側面である第2側面31gとは、互いに略平行である。また、第1側面31f及び第2側面31gは、直進溝31の幅の中心と光軸OAとを結ぶ直線Cと略平行である。
【0013】
(係合部材5)
レンズ室4には、固定筒3の直進溝31に挿入される係合部材5が取り付けられている。係合部材5は、レンズ室4の外周面に設けられた取付凹部43の内部に固定されている。すなわち、円周方向の均等な三箇所P1、P2、P3のうちの二箇所P2,P3には、取付凹部43が2つであるので、図3に示すように、2つの係合部材5が光軸OA方向に沿って並んで取り付けられている。三箇所のうちの一箇所P1には、取付凹部43が1つであるので1つの係合部材5が取り付けられている。
【0014】
このように、三箇所のうちの一箇所P1の係合部材5を1つにすることにより、レンズ室4の固定筒3に対する過剰拘束を防止することができる。1つの係合部材5が取り付けられる一箇所P1は、レンズ鏡筒1をカメラボディ2に取り付けた状態で正位置に構えたときに、レンズ室4が固定筒3に対して偏りがなくバランスのいい位置が好ましい。正位置とは、略長方形の撮像素子の長辺が、地面と水平となる位置である。実施形態では、図2に示す、一箇所P1が上になる状態が正位置であり、係合部材5は、上側の一箇所P1と、左側の一箇所P2と、右側の一箇所P3とに配置されている。この場合、偏りがなくバランスのいい一箇所として真上側の一箇所P1に1つの係合部材5が取り付けられ、下方左側の一箇所P2と、下方右側の一箇所P3とにそれぞれ2つの係合部材5が取り付けられている。
【0015】
ただし、これに限らず、例えば、正位置において、1つの係合部材5が取り付けられるP1が真下に配置され、2つの係合部材5が取り付けられるP2及びP3がそれぞれ上方左側と上方右側に配置されてもよい。
また、係合部材5を、レンズ室4の外周面における、周方向に均等な間隔の三箇所の全てに、それぞれ2つ取り付けてもよい。この場合、衝撃を受けた場合の強度を高めることができる。さらに、それぞれ2つでなくとも、3つなどの2以上の複数あってもよい。
【0016】
係合部材5は、外周側に配置される外周側係合部51(第2部材)と、内周側に配置される内周側係合部52(第1部材)と、外周側係合部51と内周側係合部52との中心を延びる中心軸部53と、外周側係合部51と内周側係合部52との間に配置され、外周側係合部51を内周側係合部52から離れる方向に付勢する弾性部材54とを備える。
【0017】
(外周側係合部51)
外周側係合部51は、軸線Aを中心とする回転体で、円錐台部51aと、円錐台部51aの下底面と同径であって下底面から連続する円板部51bとを有し、中央に貫通孔51cが設けられている。また、円板部51bの底面から円錐台部51aに向かって、軸線A方向に延びる円環溝51eが設けられている。
【0018】
図4に示すように外周側係合部51の円錐台部51aを軸線Aを通る平面で切断したときに、円錐台部51aの側面の輪郭によってできる二つの側辺51f及び側辺51gは、互いに略直交する方向に延びており、延長した交点は軸線A上にある。すなわち、二つの側辺51f及び側辺51gと円錐台部51aの下辺とで形成される二等辺三角形の頂角θ1は約90度であり、二つの側辺51f及び側辺51gの傾きは、それぞれ軸線Aに対して約45°である。
【0019】
(内周側係合部52)
内周側係合部52は、軸線Aを中心とする回転体で、円錐台部52aと、円錐台部52aの下底面と同径であって下底面から連続する円板部52bとを有し、中央に貫通孔52cが設けられている。
なお、外周側係合部51と内周側係合部52とは、外周側係合部51に円環溝51eが設けられている以外、同形であって、外周側係合部51と内周側係合部52とは、互いの円板部51b、52bとが対向するように配置されている。また、内周側係合部52に円環溝を設けて、全く同形としてもよい。
【0020】
内周側係合部52の円錐台部52aを軸線Aを通る平面で切断したときに、円錐台部52aの側面の輪郭によってできる二つの側辺52f及び側辺52gは、互いに略直交する方向に延びており、延長した交点は軸線A上にある。すなわち、二つの側辺52f及び側辺52gと円錐台部52aの下辺とで形成される二等辺三角形の頂角θ2は約90度であり、二つの側辺52f及び側辺52gの傾きは、軸線Aに対して約45°である。
【0021】
したがって、内周側係合部52の側辺52fと、中心軸部53を挟んで反対側にある外周側係合部51の側辺51gとは、互いに略平行になる。また、内周側係合部52の側辺52gと、中心軸部53を挟んで反対側にある外周側係合部51の側辺51fとは、互いに平行になる。
【0022】
(中心軸部53)
中心軸部53は、外周側係合部51の貫通孔51cを貫通する外周側軸部55と、内周側係合部52の貫通孔52cを貫通する内周側軸部56と、外周側軸部55の外周側端部に取り付けられる抜け止め部57と、を備える。
【0023】
(内周側軸部56)
内周側軸部56は、内周側の先端にネジ部56aと、ネジ部56aの外周側に設けられ、ネジ部56aより径が広い鍔部56bと、鍔部56bから外周側に延びる挿通部56cと、を備える。挿通部56cの中心には、ネジ孔56dが設けられている。
【0024】
(外周側軸部55)
外周側軸部55は、内周側の先端部にネジ部55aと、ネジ部55aの外周側に設けられ、ネジ部55aより径が広い鍔部55bと、鍔部55bから外周側に延びる挿通部55cと、を備える。挿通部55cの中心には、ネジ孔55dが設けられている。
また、外周側軸部55は、鍔部55bの外周側の面の外周縁に、軸線Aを中心とした円輪状に厚みが薄くなるように段が設けられており、その段より外側はバネ受け台55eとなっている。バネ受け台55eの大きさは、外周側係合部51に設けられた円環溝51eの大きさと略等しい。
【0025】
(抜け止め部57)
抜け止め部57は、ネジ部57aと、蓋部57bとを備える。ネジ部57aは、外周側軸部55のネジ孔55dに螺合され、蓋部57bは外周側軸部55の挿通部55cの上端と当接し、挿通部55cよりも軸線Aを中心とした周方向に突出している。この突出した部分が外周側係合部51の中心軸部53からの抜けを防止する。
【0026】
(弾性部材54)
弾性部材54はコイルばねで、外周側軸部55のバネ受け台55eに載置され、外周側係合部51の円環溝51e内に挿入される。
【0027】
内周側軸部56の挿通部56cに、内周側係合部52が、円錐台部52a側が下になるようにして挿入されている。そして、内周側軸部56のネジ孔56dに外周側軸部55のネジ部55aが螺合され、鍔部55bの下面が内周側軸部56の挿通部56cの上面と当接している。外周側軸部55のバネ受け台55eに弾性部材54が配置されている。
外周側軸部55の挿通部55cに、外周側係合部51が、円板部51b側が下になるようにして挿入され、円環溝51eに弾性部材54が挿入されている。抜け止め部57のネジ部57aが、外周側軸部55のネジ孔55dに螺合される。
【0028】
外周側係合部51の軸線A方向の長さは、外周側係合部51の貫通孔51cの内部を貫通している中心軸部53の挿通部55cより短い。したがって、外周側係合部51は、挿通部55cの長さの範囲内で軸線A方向に上下動可能である。
そして、弾性部材54は、外周側係合部51の下底面よりバネ受け台55e側に飛び出してバネ受け台55eと当接している。これにより、外周側係合部51は、弾性部材54によって中心軸部53に対して、少なくとも軸線A方向に移動可能な状態で、内周側係合部52から離れる方向に付勢されて弾性的に保持される。なお、外周側係合部51は、中心軸部53に対して回転することが好ましいが、必ずしも回転しなくてもよい。その場合、直進溝31の第2側面31gと円錐台部51aの側面との間の摩擦係数が小さいことが好ましい。
【0029】
一方、内周側係合部52は、中心軸部53に対して軸線A方向に移動しない。なお、内周側係合部52も中心軸部53に対して回転することが好ましいが、必ずしも回転しなくてもよい。その場合、直進溝31の第1側面31fと円錐台部52aの側面との間の摩擦係数が小さいことが好ましい。
【0030】
係合部材5は、以下のようにレンズ室4に取り付けられている。
レンズ室4の取付凹部43の内部に設けられている2つの側面43f、43gのうちの第1側面43fに対して、その第1側面43fと略直交するように、中心軸部53のネジ部56aが挿入されている。このとき、中心軸部53は、図4に示すように光軸OAに対して直交する方向の断面において、光軸OAを中心とする径方向に延びる直線Cに対して約45°傾いている。
【0031】
外周側係合部51の円錐台部51aの側辺51gの傾きは、上述のように中心軸部53(軸線A)に対して約45°である。内周側係合部52の円錐台部52aの側辺52fの傾きは、上述のように中心軸部53(軸線A)に対して約45°である。
したがって、図4に示す断面において、内周側係合部52の側辺52fは、直進溝31の一方の第1側面31fと略平行になる。そして、外周側係合部51の側辺51gは、直進溝31の他方の第2側面31gと略平行になる。
【0032】
内周側係合部52は、図4に示すように、円錐台部52aの側辺52f側が取付凹部43よりも外周側に出ており、側辺52g側が取付凹部43の内部に位置している。外周側係合部51は、取付凹部43よりも外周側に出ている。
そして、係合部材5の外周側に突出している部分は、固定筒3に設けられた直進溝31に挿入されている。
このとき、内周側係合部52の側辺52fは、直進溝31の第1側面31fと当接(線接触)し、外周側係合部51の側辺51gは、直進溝31の第2側面31gと当接(線接触)する。
【0033】
弾性部材54による付勢方向は、中心軸部53の傾きと略平行であり、光軸OAを中心とする径方向に対して、約45°傾いている。この状態で、外周側係合部51が内周側係合部52に対して弾性部材54によって押圧されると、外周側係合部51が内周側係合部52から離れる方向に移動する。これにより、外周側係合部51の側面(側辺51g)が直進溝31の第2側面31gに押し付けられる。そうすると、直進溝31の第2側面31gが周方向に押され、内周側係合部52の側面(側辺52f)も直進溝31の第1側面31fに押し付けられる。このようにして、側辺52fは第1側面31fと当接(線接触)し、側辺51gは第2側面31gと当接(線接触)する。
【0034】
これによって、製造誤差等により直進溝31の溝幅が変化しても、係合部材5が直進溝31の第1側面31f及び第2側面31gと常に接触している状態となり、固定筒3とレンズ室4との間のガタを取り除くことができる。
なお、弾性部材54の付勢力が十分強ければ、レンズ室4に保持されているレンズLの固定筒3に対する姿勢差、すなわちレンズ鏡筒が、上下、横向き等、様々な向きにされた場合の、姿勢の違いによって生じる精度差を少なくすることができる。
【0035】
例えば、係合部材5の代わりにベアリングを用いた場合、ベアリングと直進溝31との間にギャップが生じ、固定筒3とレンズ室4との間にガタが生じてしまう。しかし、本実施形態では、弾性部材54によって内周側係合部52と外周側係合部51とが互いに離れる方向に付勢され、内周側係合部52が直進溝31の第1側面31fと当接し、外周側係合部51が直進溝31の第2側面31gと当接する。そのため、係合部材5と直進溝31との間にギャップは生じず、固定筒3とレンズ室4との間のガタを低減することができる。
【0036】
(第2実施形態)
次に、図面等を参照して、第2実施形態について説明する。図5は第2実施形態のレンズ鏡筒101の部分断面図である。第1実施形態と同様に、図中、要部以外は点線で輪郭のみ示す。以下、第1実施形態と同様の部分は同一の符号を付し、説明を省略する。また、係合部材5は第1実施形態と同様であるが、説明をわかりやすくするため、第2実施形態では第1係合部材5という。
図6は、レンズ室104と第1係合部材5と第2係合部材105との部分斜視図である。図7は、カム筒106の外周側から見た第2係合部材105とカム溝106aとの係合状態を示す図である。図8は、レンズ室104とカム筒106と第2係合部材105との部分断面図である。
【0037】
第2実施形態のレンズ鏡筒101が第1実施形態のレンズ鏡筒1と異なる点は以下である。
直進溝31を有する固定筒3(第1筒)の外周側にカム溝106aが設けられたカム筒106(第2筒)が配置されている点。レンズ室104(第3筒)の外周に、直進溝31と係合する第1係合部材5だけでなく、カム溝106aと係合する第2係合部材105が取り付けられている点。カム筒106がズームリングやモータの回転によって回転されたときに、レンズ室104が、直進溝31に沿って光軸OA方向に直進移動されつつ、カム溝106aに沿って光軸OA方向に駆動される点。
【0038】
(レンズ室104)
レンズ室104の筒部142の外周面の二箇所には、第1実施形態と同様に、2つの第1係合部材5が光軸方向に沿って取り付けられている。そのうちの一方における、2つの第1係合部材5の間に、外周側に突出した突部145が設けられている。突部145は、図8に示す光軸OAを通り光軸OA方向に延びる断面において、光軸OAに対して約45°傾いた側面145aを有している。第2係合部材105は、そのレンズ室104の側面145aに保持され、カム筒106に設けられたカム溝106aに挿入されている。
【0039】
(カム筒106)
カム筒106にはカム溝106aが設けられている。カム溝106aは一定の幅を有し、互いに対向する2つの側面106fと側面106gとは互いに略平行である。
【0040】
(第2係合部材105)
第1係合部材5と第2係合部材105とは、外周側係合部及び内周側係合部の形状が異なる。また、第1係合部材5と第2係合部材105とで同様の構成は説明を省略する。
第2係合部材105は、外周側係合部151(第4部材)が半球部151aと円板部151bとを備え、内周側係合部152(第3部材)が半球部152aと円板部152bとを備えている点が異なる。
第2係合部材105の中心軸部53は、レンズ室4の突部145の側面145aと略直交するように取り付けられている。これにより、中心軸部53は、図8に示すように光軸OAに対して直交する方向の断面において、光軸OAを中心とする径方向に対して約45°傾いている。
【0041】
弾性部材154による付勢方向は、中心軸部53の傾き方向と略平行であり、光軸OAを中心とする径方向に対して、45°傾いている。したがって、外周側係合部151と内周側係合部152との間に配置された弾性部材154(第3弾性部材)の付勢力で外周側係合部151が内周側係合部152から離れる方向に押されて移動すると、外周側係合部151の側面がカム溝106aの第2側面106gに押し付けられる。そうすると、カム溝106aの第2側面106gが光軸OA方向に押され、カム溝106aの第1側面106fが内周側係合部152の側面と当接する。
このとき、外周側係合部151の半球部151aは半球形状のため、外周側係合部151とカム溝106aの第2側面106gとは点接触で当接する。
また、内周側係合部152の半球部152aも半球形状のため、内周側係合部152とカム溝106aの第1側面106fとは点接触で当接する。
【0042】
なお、第1実施形態と同様に、第1係合部材5は、レンズ室104に保持される内周側係合部52と、内周側係合部52に対して移動可能な外周側係合部51と、外周側係合部51と内周側係合部52との間に配置される弾性部材54(第1弾性部材)と、を有している。
そして第1実施形態と同様に、第1係合部材5の内周側係合部52の側面は、直進溝31の第1側面31fと線接触で当接し、外周側係合部51の側面は、直進溝31の第2側面31gと線接触で当接する。
【0043】
以上、第2実施形態によると、製造誤差等によりカム溝106aの溝幅が変化しても、第2係合部材105がカム溝106aの側面106f、106gと常に接触している状態となり、カム筒106とレンズ室104との間のガタを取り除くことができる。
なお、弾性部材54の付勢力が十分強ければ、レンズ室104に保持されているレンズLの固定筒3に対する姿勢差、すなわちレンズ鏡筒が、上下、横向き等、様々な向きにされた場合の、姿勢の違いによって生じる精度差も少なくすることができる。
【0044】
カム溝106aの場合は、直進溝31と違ってカム溝106aの傾き角度が一定ではない。しかし、第2係合部材105は半球部151a及び152aを有しているので、カム溝106aの傾き角度が変化しても、第2係合部材105はカム溝106aの側面106f、106gと接触が可能となる。
【0045】
なお、第1実施形態と同様に、直進溝31の溝幅が変化しても、係合部材5が直進溝31の側面と常に接触している状態となり、固定筒3とレンズ室4との間のガタを取り除くことができる。
【0046】
例えば、係合部材105の代わりにベアリングを用いた場合、ベアリングとカム溝106aとの間にギャップが生じ、カム筒106とレンズ室104との間にガタが生じてしまう。しかし、本実施形態では、弾性部材154によって内周側係合部152と外周側係合部151とが互いに離れる方向に付勢され、内周側係合部152がカム溝106aの第1側面106fと当接し、外周側係合部151がカム溝106aの第2側面106gと当接する。そのため、係合部材105とカム溝106aとの間にギャップは生じず、カム筒106とレンズ室104との間のガタを低減することができる。
【0047】
(第3実施形態)
次に、図面等を参照して第3実施形態について説明する。第3実施形態が第1実施形態及び第2実施形態と異なる点は、係合部材の構造である。なお、第1実施形態及び第2実施形態と同様な部分の説明は省略する。
【0048】
(第1係合部材205)
図9は直進溝31と係合する第3実施形態の第1係合部材205の断面図である。第1係合部材205の中心軸部253は、外周側軸部255と内周側軸部256とを備える。内周側軸部256は第1、第2実施形態と略同様であるので説明を省略する。
外周側軸部255は、円柱状の挿通部255cと、挿通部255cの両端に設けられたネジ部255a1、255a2と、挿通部255cの中央部に設けられた鍔部255bとを備える。挿通部255cの鍔部255bよりも外周側の部分には、間にベアリング251hを挟んで外周側係合部251が配置されている。挿通部255cの鍔部255bよりも内周側の部分には、間にベアリング252hを挟んで内周側係合部252が配置されている。また、鍔部255dと外周側係合部251との間に弾性部材254として、板バネが配置されている。弾性部材254は外周側係合部251を内周側係合部252に対して外周側に押圧する。
【0049】
(第2係合部材305)
図10はカム溝106aと係合する第3実施形態の第2係合部材305の断面図である。第2係合部材305の中心軸部353は、外周側軸部355と内周側軸部356とを備える。内周側軸部356は第1、第2実施形態と略同様であるので説明を省略する。
また、外周側軸部355は第1係合部材205と同様に、外周側軸部355は、円柱状の挿通部355cと、挿通部355cの両端に設けられたネジ部355a1、355a2と、挿通部355cの中央部に設けられた鍔部355bとを備える。挿通部355cの鍔部355bよりも外周側の部分には、間にベアリング351hを挟んで外周側係合部351が配置されている。挿通部355cの鍔部355bよりも内周側の部分には、間にベアリング352hを挟んで内周側係合部352が配置されている。また、鍔部355dと外周側係合部351との間に弾性部材354として、板バネが配置されている。弾性部材254は外周側係合部251を内周側係合部352に対して外周側に押圧する。
【0050】
第3実施形態の第1係合部材205と第2係合部材305とを用いたレンズ鏡筒も、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、固定筒3とレンズ室4との間のガタを取り除くことができ、カム筒106とレンズ室104との間のガタを取り除くことができる。
【0051】
さらに、第3実施形態によると、中心軸部253と、外周側係合部251及び内周側係合部252の間にベアリング251h、252hが配置されているので、中心軸部253に対して外周側係合部251及び内周側係合部252が滑らかに回転する。したがって、直進溝31内での第1係合部材205の移動がより滑らかに行われる。
【0052】
また、同様に中心軸部353と、外周側係合部351及び内周側係合部352の間にベアリング351h、352hが配置されているので、中心軸部353に対して外周側係合部351及び内周側係合部352が滑らかに回転する。したがって、カム溝106a内での第2係合部材305の移動がより滑らかに行われる。
【0053】
以上、好適な実施形態について説明したが、これに限らず、任意の組み合わせが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1:レンズ鏡筒、3:固定筒(第1筒)、31:直進溝、31f:第1側面、31g:第2側面、4:レンズ室(第2筒)、41:レンズ枠、42:筒部、43:取付凹部、43f:側面(第1側面)、43g:側面(第2側面)、5:係合部材,第1係合部材、51:外周側係合部(第2部材)、51:第2部材、51a:円錐台部、51b:円板部、51c:貫通孔、51e:円環溝、51f:側辺、51g:側辺、52:内周側係合部(第1部材)、52a:円錐台部、52b:円板部、52c:貫通孔、52f:側辺、52g:側辺、53:中心軸部、54:弾性部材、55:外周側軸部、55a:ネジ部、55b:鍔部、55c:挿通部、55d:ネジ孔、55e:バネ受け台、56:内周側軸部、56a:ネジ部、56b:鍔部、56c:挿通部、56d:ネジ孔、57:抜け止め部、57a:ネジ部、57b:蓋部、7:モータ、101:レンズ鏡筒、104:レンズ室、105:第2係合部材(第2筒)、106:カム筒、106a:カム溝、106f:側面(第1側面)、106g:側面(第2側面)、142:筒部、145:突部、145a:側面、151:外周側係合部、151a:半球部、151g:側辺、152:内周側係合部、152a:半球部、152f:側辺、154:弾性部材、205:第1係合部材、251:外周側係合部、251h:ベアリング、252:内周側係合部、252h:ベアリング、253:中心軸部、253d:鍔部、254:弾性部材、255:外周側軸部、255a1:ネジ部、255a2:ネジ部、255b:鍔部、255c:挿通部、256:内周側軸部、305:第2係合部材、351:外周側係合部、351h:ベアリング、352:内周側係合部、352h:ベアリング、353:中心軸部、353d:鍔部、354:弾性部材、355:外周側軸部、355a1:ネジ部、355a2:ネジ部、355b:鍔部、355c:挿通部、356:内周側軸部
図1
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図7
図8
図9
図10