(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】光導波路素子
(51)【国際特許分類】
G02B 6/12 20060101AFI20231024BHJP
G02B 6/122 20060101ALI20231024BHJP
G02B 6/30 20060101ALI20231024BHJP
G02B 6/26 20060101ALI20231024BHJP
G02F 1/035 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
G02B6/12 363
G02B6/122 311
G02B6/30
G02B6/26
G02F1/035
(21)【出願番号】P 2020061811
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【氏名又は名称】田村 爾
(74)【代理人】
【識別番号】100098383
【氏名又は名称】杉村 純子
(74)【代理人】
【識別番号】100155860
【氏名又は名称】藤松 正雄
(72)【発明者】
【氏名】高野 真悟
(72)【発明者】
【氏名】片岡 優
(72)【発明者】
【氏名】平田 章太郎
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-064668(JP,A)
【文献】特開2019-179193(JP,A)
【文献】特開2014-199355(JP,A)
【文献】特開2016-024439(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0177995(US,A1)
【文献】特開2018-097012(JP,A)
【文献】特開2017-187522(JP,A)
【文献】特開2004-133446(JP,A)
【文献】特開2015-191110(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0074259(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108885361(CN,A)
【文献】特開2019-203916(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-1/335
G02B 6/12-6/14
G02B 6/26-6/27
G02B 6/30-6/34
G02B 6/42-6/43
JST7580/JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学効果を有する材料で形成されるリブ型光導波路と、該リブ型光導波路を支持する補強基板とを備えた光導波路素子において、
該リブ型光導波路の一端は、テーパー部分を構成し、
該テーパー部分を挟むように、該テーパー部分から離間して配置されると共に、該補強基板上に配置される構造体を備え、
該テーパー部分と該構造体の上側に配置される上部基板と、
該構造体で挟まれた空間に接着層を配置し
、
該接着層をコア部とし、該構造体、該補強基板及び該上部基板をクラッド部とするスポットサイズ変換部を構成したことを特徴とする光導波路素子。
【請求項2】
請求項1に記載の光導波路素子において、該接着層の屈折率は、該補強基板及び該上部基板の各屈折率よりも大きいことを特徴とする光導波路素子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光導波路素子において、該リブ型光導波路の延長線上で、該補強基板及び該上部基板の端面に光ファイバー又は光学ブロックが接続されていることを特徴とする光導波路素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路素子に関し、特に、リブ型光導波路と、該リブ型光導波路を支持する補強基板とを備えた光導波路素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光計測技術分野や光通信技術分野において、電気光学効果を有する基板を用いた光変調器などの光導波路素子が多用されている。特に、近年の情報通信量の増大に伴い、長距離の都市間やデータセンター間に用いられる光通信の高速化や大容量化が望まれている。しかも、基地局のスペースの制限もあり、光変調器の高速化と小型化が必要となっている。
【0003】
光変調器の小型化には、光導波路の幅を狭くする微細化を施すことで、光の閉じ込め効果を大きくすることができ、結果として、光導波路の曲げ半径を小さくし、小型化が可能となる。例えば、電気光学効果を有するニオブ酸リチウム(LN)は、電気信号を光信号に変換する際に、歪みが少なく、光損失が少ないことから、長距離向け光変調器として用いられる。LN光変調器の従来の光導波路では、モードフィールド径(MFD)は10μmφ程度であり、光導波路の曲げ半径は数十mmと大きいため、小型化が困難であった。
【0004】
近年、基板の研磨技術や基板の貼り合わせ技術が向上し、LN基板の薄板化が可能となり、光導波路のMFDも1μmφ程度が研究開発されている。MFDが小さくなるに従い、光の閉じ込め効果も大きくなるため、光導波路の曲げ半径もより小さくすることができる。
【0005】
一方、光ファイバーのMFDである10μmφよりも小さいMFDを有する微細光導波路を使用する場合には、光導波路素子に設けられた光導波路の端部(素子端面)と、光ファイバーとを直接接合すると、大きな挿入損失が発生する。
【0006】
このような不具合を解消するには、光導波路の端部にスポットサイズ変換部材(スポットサイズコンバーター,SSC)を配置することが考えらえる。一般的なSSCは、二次元又は三次元に光導波路を拡大する、テーパー形状の光導波路部分を設けることである。参考までに、特許文献1又は2には、テーパー型導波路の例が示されている。
【0007】
光導波路のコア部の拡大に伴いスポットサイズが拡大するテーパー型導波路は、スポットサイズに適したコア部とクラッド部の屈折率調整の難易度が高く、マルチモードを誘起し易いため、光導波路素子のSSCとしては、使用可能なデザインに制限がある。さらに、必要なスポットサイズに変換するためには比較的長くテーパー部分を形成する必要が有り、光導波路素子の小型化が難しい課題があった。
【0008】
さらに、特許文献1の
図5乃至7に示すように、基板表面に突出する部分を有するテーパー型導波路を使用する場合には、作製プロセスの高度化を招くと共に、基板の表面にも補強板を貼り付ける際に、テーパー型導波路の突出部分の存在が、該補強板を基板表面に対して平行に貼り合わせることを難しくする。このような補強板は、基板端面に光ファイバーを直接接合する場合や、偏光子や光学ミラー、レンズなどの光学ブロックを直接接合する場合には、接着面積を増やし接合強度を高めたり、接着剤が光導波路基板側に流れ込むことを抑制するなど、極めて重要な役割を担っている。
【0009】
以上のことから、光導波路素子のSSCとしては、基板の端面に向かって光導波路の幅(厚みを含む)を拡大するテーパー型導波路を採用することは、避けられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2006-284961号公報
【文献】特開2007-264487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、上述したような問題を解決し、光導波路を伝搬する光波のスポットサイズを適切に変換可能であり、光学ブロック等の光学部品を基板端面に適切に接合可能な光導波路素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の光導波路素子は、以下の技術的特徴を有する。
(1) 電気光学効果を有する材料で形成されるリブ型光導波路と、該リブ型光導波路を支持する補強基板とを備えた光導波路素子において、該リブ型光導波路の一端は、テーパー部分を構成し、該テーパー部分を挟むように、該テーパー部分から離間して配置されると共に、該補強基板上に配置される構造体を備え、該テーパー部分と該構造体の上側に配置される上部基板と、該構造体で挟まれた空間に接着層を配置し、該接着層をコア部とし、該構造体、該補強基板及び該上部基板をクラッド部とするスポットサイズ変換部を構成したことを特徴とする。
【0013】
(2) 上記(1)に記載の光導波路素子において、該接着層の屈折率は、該補強基板及び該上部基板の各屈折率よりも大きいことを特徴とする。
【0014】
(3) 上記(1)又は(2)に記載の光導波路素子において、該リブ型光導波路の延長線上で、該補強基板及び該上部基板の端面に光ファイバー又は光学ブロックが接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、電気光学効果を有する材料で形成されるリブ型光導波路と、該リブ型光導波路を支持する補強基板とを備えた光導波路素子において、該リブ型光導波路の一端は、テーパー部分を構成し、該テーパー部分を挟むように、該テーパー部分から離間して配置されると共に、該補強基板上に配置される構造体を備え、該テーパー部分と該構造体の上側に配置される上部基板と、該構造体で挟まれた空間に接着層を配置し、該接着層をコア部とし、該構造体、該補強基板及び該上部基板をクラッド部とするスポットサイズ変換部を構成したことから、テーパー部分から漏れ出る光波を、接着層で形成される光導波路へと円滑に光波のMFDを変化させることが可能となる。
その結果、SSCに伴うマルチモードの発生や、光学ブロック等の接続不良も抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】
図1の一部の断面を上方から見た平面図である。
【
図3】
図2のA~Cの各部位における断面図である。
【
図4】本発明の光導波路素子に係る他の実施例での、
図3に相当する各部位の断面図である。
【
図5】本発明の光導波路素子に係るシミュレーション結果(側面図)である。
【
図6】本発明の光導波路素子に係るシミュレーション結果(平面図)である。
【
図7】本発明の光導波路素子に係るシミュレーション結果(入射側(a)及び出射側(b)の断面図)である。
【
図8】本発明に係る比較例のシミュレーション結果(側面図)である。
【
図9】本発明に係る比較例のシミュレーション結果(平面図)である。
【
図10】本発明に係る比較例のシミュレーション結果(入射側(a)及び出射側(b)の断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の光導波路素子について、好適例を用いて詳細に説明する。
本発明の光導波路素子は、
図1~
図3に示すように、電気光学効果を有する材料で形成されるリブ型光導波路2と、該リブ型光導波路を支持する補強基板1とを備えた光導波路素子において、該リブ型光導波路2の一端は、先端に向かって幅が細くなるテーパー部分20を構成し、該テーパー部分を挟むように、該テーパー部分から離間して配置されると共に、該補強基板1上に配置される構造体4を備え、該テーパー部分と該構造体の上側に配置される上部基板3と、該構造体で挟まれた空間に接着層5を配置したことを特徴とする。
【0018】
本発明の光導波路素子に使用される電気光学効果を有する材料は、ニオブ酸リチウム(LN)やタンタル酸リチウム(LT)、PLZT(ジルコン酸チタン酸鉛ランタン)などの基板や、これらの材料による気相成長膜などが利用可能である。
また、半導体材料や有機材料など種々の材料も光導波路として利用可能である。
【0019】
光導波路の形成方法としては、光導波路以外の基板をエッチングしたり、光導波路の両側に溝を形成するなど、基板に光導波路に対応する部分を凸状としたリブ型光導波路を利用することが可能である。さらに、リブ型光導波路に合わせて、Tiなどを熱拡散法やプロトン交換法などで基板表面に拡散させることにより、屈折率をより高くすることも可能である。
【0020】
光導波路を形成した基板の厚さは、変調信号のマイクロ波と光波との速度整合を図るため、10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下に設定される。また、リブ型光導波路の高さは、4μm以下、より好ましくは2μm以下、さらに好ましくは0.4μm以下に設定される。また、補強基板1の上に気相成長膜を形成し、当該膜を光導波路の形状に加工することも可能である。
【0021】
光導波路を形成した基板は、機械的強度を高めるため、直接接合又は樹脂等の接着層を介して、補強基板1に接着固定される。直接接合する補強基板1としては、光導波路や光導波路を形成した基板よりも屈折率が低く、光導波路などと熱膨張率が近い材料、例えば水晶やガラス等の酸化物層を含む基板が好適に利用される。SOI、LNOIと略されるシリコン基板上に酸化ケイ素層やLN基板上に酸化ケイ素層を形成した複合基板も利用可能である。
【0022】
図1乃至3は、本発明の光導波路素子の一例を説明する図であり、
図1は側面図、
図2は、
図1の構造体4と接着層5との間で水平方向に切断した際の平面図である。
図3(a)は
図2の点線A-A’における断面図であり、
図3(b)は
図2の点線B-B’における断面図であり、
図3(c)は
図2の点線C-C’における断面図である。
【0023】
本発明の光導波路素子の特徴は、
図2に示すように、光導波路の一端を、先端に向かって幅が細くなるテーパー部分20を形成することである。さらに、該テーパー部分20を挟むように、テーパー部分20から離間して配置される構造体4を備える。この構造体4は、補強基板1と同じ程度の屈折率を有する紫外線(UV)硬化樹脂が利用可能であり、構造体4は接着層5よりも低屈折率である。構造体4の高さは、光導波路2と同じかそれよりも高く、構造体4の間隔も光導波路2の幅の倍以上に設定される。構造体4は、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂等の樹脂であり、一例として、ポリアミド系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、アミノ系樹脂、エポキシ系樹脂等を含み、低屈折率材として、ラバー材や酸化ケイ素化合物を含むことも可能である。また、構造体4は、例えば永久レジストであり、熱硬化型の樹脂を材料とするフォトレジストである。光導波路素子の製造工程において、スピンコートにより構造体4を塗布し、通常の一般的なフォトリソグラフィプロセスによってパターニングを行った後に熱硬化させることにより、構造体4を配設することができる。フォトリソグラフィプロセスによるパターニングは、従来のスパッタ成膜と比較して微細なパターン形状を高精度で形成することが可能であり、本発明の実施の形態において好適である。
【0024】
光導波路のテーパー部分20や構造体4の上側には、上部基板3が配置される。上部基板には、補強基板1と同じ程度の屈折率や線膨張係数を有する材料が利用される。線膨張係数が一致していると、上部基板が熱応力で外れるなど不具合を低減することが可能となり、耐熱性に優れた導波路素子が得られる。上部基板3と補強基板1との間には、テーパー部分20を取り囲むようにUV硬化樹脂を充填し、硬化することにより接着層5が得られる。接着層5には一般的に使用されるアクリル系やエポキシ系等の接着剤が使用可能である。
【0025】
接着層5の屈折率は、構造体4や補強基板1や上部基板3と比較して、0.001以上高い屈折率となっている。これにより、構造体4に挟まれた接着層5をコア部とし、補強基板1、構造体4及び上部基板3をクラッド部とする光導波路を形成することができる。
【0026】
図3(a)に示すように、光導波路2を伝搬する光波は、リブ型光導波路2に沿ってシングルモードで伝搬する。点線Lは伝搬する光波の広がりをイメージしたものである。
【0027】
図3(b)に示すように、光導波路2の幅がテーパー部分20に入って狭くなると、光導波路2から漏れる光波Lが多くなり、光導波路2の幅以上に光波のMFDが広がっている。
【0028】
図3(c)に示すように、リブ型光導波路2が無くなる領域では、接着層5をコアとする光導波路が形成され、当該コア部を伝搬する光波のMFDもコア部の幅程度に広がった形状を示している。
【0029】
図3(c)に示すように、光波のMFDの広がりに対応して、コア部(接着層5)とクラッド部(構造体4、補強基板1、上部基板3)の屈折率差を適切に調整することができる。更に、上記屈折率差調整と併せ、適切な構造体4の間隔と接着層5の厚さを設定することによりシングルモードで伝搬することが可能となる。所望のMFDを得るための各設計値については、使用する材料等において適時設計可能だが、例えば、コア部(接着層5)の屈折率を1.54~1.56、クラッド部(構造体4、補強基板1、上部基板3)の屈折率を1.45~1.53、構造体4の間隔と接着層5の厚さを3~4μm程度とすると、光波のMFDは3μm程度でシングルモード伝搬が可能である。
【0030】
図3(a)~(c)に示すように、光導波路をテーパ状に細くすることにより光波LのMFDが順次、円滑に広がるため、途中でマルチモードが発生することが抑制される。
図3(c)のようにMFDが広くなった光波は、
図1及び
図2に示すように、光ファイバー6に入射される。本発明の光導波路素子では、素子内のリブ型光導波路2のMFDは、光ファイバーのMFDと比較して、大幅に小さくなる。しかしながら、光導波路のテーパー部分20以降では、MFDがより大きくなるように変換されるため、最終的に光ファイバーに入射するMFDを光ファイバーのMFDに近づけることができ、光波の挿入損失を低減することができる。また、SSCは拡大前のMFDに対し、約3倍の拡大後のMFDにとどめることで、その変換損失を小さくできることが報告されている。必要に応じSSCを2段に直列接続することや光学レンズを有している光学ブロックを貼り付けることでも低い接続損失で光ファイバーと光結合することが可能である。
【0031】
しかも、光ファイバー6や光学ブロックに直接接する光導波路素子の端面は、接着層5をコア部とする光導波路であり、接着層5の屈折率は光ファイバーのクラッド部や光学ブロックと同等の屈折率を有し、結晶と結晶とを接続する際の光波の反射を抑制するために行われる、スネルの法則を満足する入射角に設定する必要も無い。該入射角は光波のMFD径と反比例関係にあり、リブ型導波路を使用する本構成ではより小さいMFDとなるため、通常よりも大きい入射角が必要であった。このため、補強基板1の長手方向に対して光導波路素子の端面を垂直に切断でき、当該長手方向の延長線上に光ファイバーや光学ブロックを配置することが可能となるため、省スペース化やプロセス工程数を削減することが可能となる。また、本発明において、光導波路素子の端面の切断は
図2の点線C-C’の領域であるが、必要とされる光波のスポットサイズによっては、
図2の点線B-B’の領域や、
図2の点線B-B’と
図2の点線C-C’の間の領域での切断も可能である。さらには、光導波路素子の端面と光ファイバー6や光学ブロックとの接続には、接着層5と同一屈折率の接着剤を使用することができる。それにより、光導波路素子の切断面にある程度の粗さがあっても同一屈折率の接着剤を利用することで切断面の凹凸に起因する光散乱の影響を大幅に低減することが可能となる。よって、切断面を整えるために通常行う光学研磨を省略または、時間短縮に繋がり、光導波路素子の製造工程数を削減することができる。
【0032】
さらに、上部基板3は接着層5を介して接続され、上部基板3の下面では、光導波路2は離間して配置されるため、特許文献1のように、光導波路2と上部基板3とが接触し、上部基板3が浮き上がる心配もない。このため、光導波路素子のチップ基板の端面接続される光学部品、例えば、光ファイバーや偏光子、レンズ等の光学ブロックなどを、基板端面に適切に接合することが可能となる。
【0033】
図4は、本発明の光導波路素子の他の実施例を示すものであり、
図3の変形例を説明する図である。
図4(a)に示すように、光導波路22は、LN等の基板を薄くした薄板に、リブ構造で形成されている。
図4(b)の光導波路のテーパー部では、光導波路22自体の幅を狭くすると共に、光導波路の周囲の基板21の一部も切除して溝23を設けることも可能である。この際には、切除する幅は、構造体4で作られる接着剤充填部の幅よりも十分に広くする(少なくとも光波Lの中心から周囲の基板21までの距離Sを5μm以上離す)ことで、スラブ部分に伝搬モードが存在しないようにすることが必要である。
【0034】
図4(b)に示すように、光導波路を挟む構造体4を補強基板1や基板21上に設け、上部基板3や構造体4で挟まれた空間に接着層5を配置する。さらに、
図4(c)では、光導波路22自体を除去し、接着層5をコア部とする光導波路に変換させている。
【0035】
本発明において、光導波路の幅方向に変化するテーパ部を例示したが、コア部とクラッド部の屈折率差が光波をシングルモード伝搬させる上で担保可能な範囲において、厚さ方向に変化するテーパ部、幅方向と厚さ方向に同時に断面積が変化するテーパ部を使用することも可能である。さらに、本発明においてコア部とクラッド部の屈折率調整は異種材料を配置しているが、イオン注入や熱拡散するなどフッ素やアルカリ金属などの各種ドープ剤を使用して屈折率調整することも可能である。
【0036】
本発明の光導波路素子の効果を確認するため、
図5乃至10に示すように、光導波路素子に係るシミュレーションを行った。
図5乃至7は、本発明の光導波路素子がモデルであり、1μmの幅の光導波路にテーパー部分を付加すると共に、構造体4の間隔を3μmに設定したものである。他方、
図8乃至10は、接着層5(屈折率1.56)に代わって、光導波路22の屈折率とほぼ同等の屈折率(屈折率2.12)の構造体を配置したものである。この場合も構造体4の間隔は3μmに設定している。
【0037】
図5は、光導波路を伝搬する光波を、
図1の方向から見たものである。
図6は、同じく光導波路を伝搬する光波を、
図2の方向から見たものである。
図7(a)は
図5の光導波路の左端から見た光波の断面であり、
図7(b)は
図5の光導波路の右端から見た光波の断面である。
図8は
図5、
図9は
図6、並びに
図10は
図7に各々対応する比較例の図である。
図8乃至10は
図5乃至7に対して光導波路のコア部を広げることにより光波のMFDを広げる構成を簡易的にシミュレーションしたものである。
【0038】
これらのシミュレーションの結果からも明らかなように、
図8乃至10の比較例においては、マルチモードが発生しているが、本発明の光導波路素子では、このようなマルチモードが効果的に抑制され、より短いテーパ長で光波のMFDが拡大されていることが容易に理解される。
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上説明したように、本発明によれば、光導波路を伝搬する光波のスポットサイズを適切に変換可能であり、光学ブロック等の光学部品を基板端面に適切に接合可能な光導波路素子を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0040】
1 補強基板
2 光導波路
3 上部基板
4 構造体
5 接着層
6 光ファイバー(光学部品)