(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】光酸発生剤、化学増幅ネガ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20231024BHJP
G03F 7/038 20060101ALI20231024BHJP
C07C 381/12 20060101ALI20231024BHJP
C07C 25/02 20060101ALI20231024BHJP
C07C 211/63 20060101ALI20231024BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20231024BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20231024BHJP
C07D 333/76 20060101ALI20231024BHJP
C07D 307/00 20060101ALI20231024BHJP
C07C 309/07 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
G03F7/004 503A
G03F7/038 601
C07C381/12
C07C25/02
C07C211/63
C09K3/00 K
G03F7/20 521
C07D333/76
C07D307/00
C07C309/07
(21)【出願番号】P 2020097345
(22)【出願日】2020-06-04
【審査請求日】2022-04-22
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福島 将大
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 聡
(72)【発明者】
【氏名】谷口 良輔
(72)【発明者】
【氏名】井上 直也
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/088648(WO,A1)
【文献】特開2006-162735(JP,A)
【文献】特開2011-121937(JP,A)
【文献】特開2018-158892(JP,A)
【文献】特開2019-204048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
G03F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(A1)で表されるアニオン及び下記式(A1-a)~(A1-c)のいずれかで表されるカチオンを含むオニウム塩
からなる光酸発生剤。
【化1】
(式中、R
a1及びR
a2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~10のヒドロカルビル基であ
る。ただし、R
a1とR
a2が同時に水素原子になることはない。また、R
a1及びR
a2が、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に脂環を形成してもよい。
kは、0
又は1である。m
1は、1~4の整数である。m
2は、それぞれ独立に、0~4の整数である。nは、それぞれ独立に、0~10の整数である。pは、0~3の整数である。qは、0~2の整数である。rは、0~4の整数である。
R
a3は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。nが2以上のとき、各R
a3は互いに同一であっても異なっていてもよく、2以上のR
a3が、互いに結合してこれらが結合するW
2上の原子と共に環を形成してもよい。
W
1は、単環又は多環構造を有する炭素数3~20の(n+2)価の基であり、W
2は、それぞれ独立に、単環又は多環構造を有する炭素数3~20の(m
2+n+1)価の基であり、これらを構成する-CH
2-が、-O-、-S-又は-C(=O)-で置換されていてもよい。
Q
1及びQ
2は、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1~6のフッ素化飽和ヒドロカルビル基である。
Q
3及びQ
4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~6のフッ素化飽和ヒドロカルビル基である。
L
a1
は、単結合、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合又はカーバメート結合である。
L
a2
は、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合又はカーバメート結合である。
X
Lは、単結合、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビレン基である。
R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。また、2つのR
1及びW
2のうちのいずれか2つが、互いに結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。また、3つのR
3及びW
2のうちのいずれか2つが、互いに結合して式中の窒素原子と共に環を形成してもよい。)
【請求項2】
式(A1)で表されるアニオンが、下記式(A2)で表されるものである請求項
1記載の
光酸発生剤。
【化2】
(式中、Q
1~Q
4、L
a1、L
a2、X
L、R
a1~R
a3、k、m
1及びnは、前記と同じ。sは、0~2の整数である。)
【請求項3】
式(A2)で表されるアニオンが、下記式(A3)で表されるものである請求項
2記載の
光酸発生剤。
【化3】
(式中、Q
1~Q
4、L
a1、X
L、R
a1~R
a3、k、m
1、n及びsは、前記と同じ。)
【請求項4】
式(A3)で表されるアニオンが、下記式(A4)で表されるものである請求項
3記載の
光酸発生剤。
【化4】
(式中、Q
1~Q
3、L
a1、X
L、R
a1~R
a3、m
1、n及びsは、前記と同じ。)
【請求項5】
請求項
1~4のいずれか1項記載の光酸発生剤を含む化学増幅ネガ型レジスト組成物。
【請求項6】
更に、下記式(B1)で表される繰り返し単位及び下記式(B2)で表される繰り返し単位を含むベースポリマーを含む請求項
5記載の化学増幅ネガ型レジスト組成物。
【化5】
(式中、R
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
R
11及びR
12は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基である。
A
1及びA
2は、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基を構成する-CH
2-が-O-で置換されていてもよい。
W
11は、水素原子、炭素数1~10の脂肪族ヒドロカルビル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、該脂肪族ヒドロカルビル基を構成する-CH
2-が、-O-、-C(=O)-、-O-C(=O)-又は-C(=O)-O-で置換されていてもよい。
R
x及びR
yは、それぞれ独立に、水素原子、若しくはヒドロキシ基若しくは飽和ヒドロカルビルオキシ基で置換されていてもよい炭素数1~15の飽和ヒドロカルビル基、又は置換基を有してもよいアリール基である。ただし、R
x及びR
yは、同時に水素原子になることはない。また、R
x及びR
yは、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
t
1及びt
2は、それぞれ独立に、0又は1である。x
1及びx
2は、それぞれ独立に、0~2の整数である。aは、0≦a≦5+2x
1-bを満たす整数である。cは、0≦c≦5+2x
2-dを満たす整数である。b及びdは、それぞれ独立に、1~3の整数である。)
【請求項7】
式(B1)で表される繰り返し単位が下記式(B1-1)で表されるものであり、式(B2)で表される繰り返し単位が下記式(B2-1)で表されるものである請求項
6記載の化学増幅ネガ型レジスト組成物。
【化6】
(式中、R
A、R
11、R
12、R
x、R
y、W
11、b及びdは、前記と同じ。)
【請求項8】
前記ベースポリマーが、更に、下記式(B3)で表される繰り返し単位、下記式(B4)で表される繰り返し単位及び下記式(B5)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含むものである請求項
6記載の化学増幅ネガ型レジスト組成物。
【化7】
(式中、R
13及びR
14は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8の飽和ヒドロカルビルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基である。ただし、R
13及びR
14は、酸不安定基ではない。
R
15は、ハロゲン原子、アセトキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8の飽和ヒドロカルビルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基である。ただし、R
15は、酸不安定基ではない。
e、f及びgは、それぞれ独立に、0~4の整数である。)
【請求項9】
更に、有機溶剤を含む請求項
5~
8のいずれか1項記載の化学増幅ネガ型レジスト組成物。
【請求項10】
更に、クエンチャーを含む請求項
5~
9のいずれか1項記載の化学増幅ネガ型レジスト組成物。
【請求項11】
更に、架橋剤を含む請求項
5~1
0のいずれか1項記載の化学増幅ネガ型レジスト組成物。
【請求項12】
請求項
5~1
1のいずれか1項記載の化学増幅ネガ型レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜にパターンを照射する工程、及びアルカリ現像液を用いて前記レジスト膜を現像する工程を含むレジストパターン形成方法。
【請求項13】
前記高エネルギー線が、電子線又は波長3~15nmの極端紫外線である請求項1
2記載のレジストパターン形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光酸発生剤、化学増幅ネガ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LSIの高集積化と高速度化に伴い、パターンルールの微細化が急速に進んでいる。特に、フラッシュメモリー市場の拡大と記憶容量の増大化が微細化を牽引している。最先端の微細化技術として、ArFリソグラフィーによる65nmノードのデバイスの量産が行われており、次世代のArF液浸リソグラフィーによる45nmノードの量産準備が進行中である。次世代の32nmノードとしては、水よりも高屈折率の液体と高屈折率レンズ、高屈折率レジスト組成物を組み合わせた超高NAレンズによる液浸リソグラフィーがある。近年、より微細なパターンを得るために電子線(EB)や極端紫外線(EUV)といった短波長光用のレジスト組成物の検討が進められている。
【0003】
パターンの微細化とともに、ラインパターンのエッジラフネス(LWR)及びホールパターンやドットパターンの寸法均一性(CDU)が問題視されている。ベースポリマーや酸発生剤の偏在及び凝集の影響や、酸拡散の影響が指摘されている。さらに、レジスト膜の薄膜化にしたがってLWRやCDUが大きくなる傾向があり、微細化の進行に伴う薄膜化によるLWR及びCDUの劣化は深刻な問題になっている。
【0004】
EUVレジスト組成物は、高感度化、高解像度化及び低LWR化を同時に達成することが要求される。酸拡散距離を短くするとLWRやCDUは小さくなるが、低感度化する。例えば、ポストエクスポージャーベーク(PEB)温度を低くすることによってLWRやCDUは小さくなるが、低感度化する。クエンチャーの添加量を増やしてもLWRやCDUが小さくなるが、低感度化する。感度とLWRやCDUとのトレードオフの関係を打ち破ることが必要である(特許文献1)。
【0005】
ところで、フォトリソグラフィーに用いるレジスト組成物としては、露光部を溶解させてパターンを形成するポジ型及び露光部を残してパターンを形成するネガ型があり、それらは必要とするレジストパターンの形態に応じて使いやすい方が選択される。ドットパターンを形成させる際、アルカリ現像を用いたポジ型レジスト組成物の場合、ブライトマスクを使う必要があるが、その場合、高エネルギーのEBやEUVが照射される面積が大きく、マスクが劣化してしまうという欠点がある。そのため、露光面積が小さくて済むダークマスクを用いるが、その場合は露光部がアルカリ現像液に不溶化するネガ型レジスト組成物が不可欠である(特許文献2)。
【0006】
一方で、アルカリ現像液を使うネガ型レジスト組成物では、露光部に酸が発生し、その酸の作用によりベースポリマーが不溶化するが、露光部で発生した酸がアルカリ現像液と親和性が高く、現像時に露光部が溶解してしまうため、パターンのトップロスや、それに伴うLWRやCDUの劣化が問題となっている。また、酸拡散の制御も十分とはいえず、露光部から未露光部への酸の拡散によりベースポリマーの不溶化が不十分となり、結果としてアルカリ現像による耐性が足りずに同様にトップロス形状を招くとともに、本来は溶解すべき未露光部のアルカリ溶解性が下がりスカムになってしまう問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2018-197853号公報
【文献】特開2013-164588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、酸を触媒とする化学増幅レジスト組成物であって、高感度、かつラインアンドスペース(LS)パターンのLWRやドットパターンのCDUを低減させ、かつトップロスの少ない良好な形状を形成させることが可能なネガ型レジスト組成物の開発が望まれている。
【0009】
本発明は、前記事情に鑑みなされたもので、高感度かつ溶解コントラストに優れ、LWR及びCDUが小さく、形状が良好なパターンを与える化学増幅ネガ型レジスト組成物、これに用いられる酸発生剤として好適なオニウム塩、及び前記化学増幅ネガ型レジスト組成物を用いるレジストパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、所定の部分構造を有するオニウム塩からなる酸発生剤及び所定のベースポリマーを含む化学増幅ネガ型レジスト組成物が、高感度かつ溶解コントラストに優れ、LWR及びCDUが小さく、形状が良好なパターンを与えることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
すなわち、本発明は、下記オニウム塩、化学増幅ネガ型レジスト組成物及びレジストパターン形成方法を提供する。
1.下記式(A)で表される部分構造を有するオニウム塩。
【化1】
(式中、R
a1及びR
a2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、該ヒドロカルビル基の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されていてもよく、該ヒドロカルビル基を構成する-CH
2-が、-O-又は-C(=O)-で置換されていてもよい。ただし、R
a1とR
a2が同時に水素原子になることはない。また、R
a1及びR
a2が、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に脂環を形成してもよい。破線は、結合手である。)
2.下記式(A1)で表されるアニオン及び下記式(A1-a)~(A1-c)のいずれかで表されるカチオンを含む1のオニウム塩。
【化2】
(式中、R
a1及びR
a2は、前記と同じ。
kは、0~4の整数である。m
1は、1~4の整数である。m
2は、それぞれ独立に、0~4の整数である。nは、それぞれ独立に、0~10の整数である。pは、0~3の整数である。qは、0~2の整数である。rは、0~4の整数である。
R
a3は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。nが2以上のとき、各R
a3は互いに同一であっても異なっていてもよく、2以上のR
a3が、互いに結合してこれらが結合するW
2上の原子と共に環を形成してもよい。
W
1は、単環又は多環構造を有する炭素数3~20の(n+2)価の基であり、W
2は、それぞれ独立に、単環又は多環構造を有する炭素数3~20の(m
2+n+1)価の基であり、これらを構成する-CH
2-が、-O-、-S-又は-C(=O)-で置換されていてもよい。
Q
1及びQ
2は、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1~6のフッ素化飽和ヒドロカルビル基である。
Q
3及びQ
4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~6のフッ素化飽和ヒドロカルビル基である。
L
a1及びL
a2は、それぞれ独立に、単結合、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合又はカーバメート結合である。
X
Lは、単結合、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビレン基である。
R
1、R
2及びR
3は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。また、2つのR
1及びW
2のうちのいずれか2つが、互いに結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。また、3つのR
3及びW
2のうちのいずれか2つが、互いに結合して式中の窒素原子と共に環を形成してもよい。)
3.式(A1)で表されるアニオンが、下記式(A2)で表されるものである2のオニウム塩。
【化3】
(式中、Q
1~Q
4、L
a1、L
a2、X
L、R
a1~R
a3、k、m
1及びnは、前記と同じ。sは、0~2の整数である。)
4.式(A2)で表されるアニオンが、下記式(A3)で表されるものである3のオニウム塩。
【化4】
(式中、Q
1~Q
4、L
a1、X
L、R
a1~R
a3、k、m
1、n及びsは、前記と同じ。)
5.式(A3)で表されるアニオンが、下記式(A4)で表されるものである4のオニウム塩。
【化5】
(式中、Q
1~Q
3、L
a1、X
L、R
a1~R
a3、m
1、n及びsは、前記と同じ。)
6.1~5のいずれかのオニウム塩からなる光酸発生剤。
7.6の光酸発生剤を含む化学増幅ネガ型レジスト組成物。
8.更に、下記式(B1)で表される繰り返し単位及び下記式(B2)で表される繰り返し単位を含むベースポリマーを含む7の化学増幅ネガ型レジスト組成物。
【化6】
(式中、R
Aは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
R
11及びR
12は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基である。
A
1及びA
2は、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基を構成する-CH
2-が-O-で置換されていてもよい。
W
11は、水素原子、炭素数1~10の脂肪族ヒドロカルビル基、又は置換基を有してもよいアリール基であり、該脂肪族ヒドロカルビル基を構成する-CH
2-が、-O-、-C(=O)-、-O-C(=O)-又は-C(=O)-O-で置換されていてもよい。
R
x及びR
yは、それぞれ独立に、水素原子、若しくはヒドロキシ基若しくは飽和ヒドロカルビルオキシ基で置換されていてもよい炭素数1~15の飽和ヒドロカルビル基、又は置換基を有してもよいアリール基である。ただし、R
x及びR
yは、同時に水素原子になることはない。また、R
x及びR
yは、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。
t
1及びt
2は、それぞれ独立に、0又は1である。x
1及びx
2は、それぞれ独立に、0~2の整数である。aは、0≦a≦5+2x
1-bを満たす整数である。cは、0≦c≦5+2x
2-dを満たす整数である。b及びdは、それぞれ独立に、1~3の整数である。)
9.式(B1)で表される繰り返し単位が下記式(B1-1)で表されるものであり、式(B2)で表される繰り返し単位が下記式(B
2-
1)で表されるものである8の化学増幅ネガ型レジスト組成物。
【化7】
(式中、R
A、R
11、R
12、R
x、R
y、W
11、b及びdは、前記と同じ。)
10.前記ベースポリマーが、更に、下記式(B3)で表される繰り返し単位、下記式(B4)で表される繰り返し単位及び下記式(B5)で表される繰り返し単位から選ばれる少なくとも1種を含むものである7又は8の化学増幅ネガ型レジスト組成物。
【化8】
(式中、R
13及びR
14は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8の飽和ヒドロカルビルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基である。ただし、R
13及びR
14は、酸不安定基ではない。
R
15は、ハロゲン原子、アセトキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8の飽和ヒドロカルビルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基である。ただし、R
15は、酸不安定基ではない。
e、f及びgは、それぞれ独立に、0~4の整数である。)
11.更に、有機溶剤を含む7~10のいずれかの化学増幅ネガ型レジスト組成物。
12.更に、クエンチャーを含む7~11のいずれかの化学増幅ネガ型レジスト組成物。
13.更に、架橋剤を含む7~12のいずれかの化学増幅ネガ型レジスト組成物。
14.7~13のいずれかの化学増幅ネガ型レジスト組成物を用いて基板上にレジスト膜を形成する工程、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜にパターンを照射する工程、及びアルカリ現像液を用いて前記レジスト膜を現像する工程を含むレジストパターン形成方法。
15.前記高エネルギー線が、EB又は波長3~15nmのEUVである14のレジストパターン形成方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のオニウム塩は、光酸発生剤として機能するとともに、カチオン及び/又はアニオンの構造中に3級又は2級のヒドロキシ基を有することを特徴とする。未露光部はヒドロキシ基を有する構造であるため親水性が高いが、露光によって酸が発生するとカチオン及び/又はアニオンの3級又は2級のヒドロキシ基の脱水反応が進行し、露光部は疎水性構造に変化する。このため、露光部と未露光部の溶解コントラストが向上する。また、前記ベースポリマーは、溶解コントラストが高く、露光部の不溶化能に優れる。これらによって、高感度であり、LWR及びCDUが改善した化学増幅ネガ型レジスト組成物を構築することが可能となる。さらに、ベースポリマーのみならず光酸発生剤にも極性変化を起こさせることでアルカリ現像液に対する溶解性を低下させるため、本発明の化学増幅ネガ型レジスト組成物を用いて形成したネガ型パターンは、従来のネガ型レジスト組成物を用いて形成したネガ型パターンに比べ、露光部のアルカリ現像液に対する溶解性が抑制され、トップロスが少なく、良好な形状のパターンを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施例1-1で得られたPAG-1の
1H-NMRスペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[オニウム塩]
本発明のオニウム塩は、下記式(A)で表される部分構造を有するものである。
【化9】
【0015】
式(A)中、Ra1及びRa2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1~10のヒドロカルビル基であり、前記ヒドロカルビル基の水素原子の一部又は全部が、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子で置換されていてもよく、前記ヒドロカルビル基を構成する-CH2-が、-O-又は-C(=O)-で置換されていてもよい。ただし、Ra1とRa2が同時に水素原子になることはない。また、Ra1及びRa2が、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に脂環を形成してもよい。破線は、結合手である。
【0016】
前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の環式飽和ヒドロカルビル基;ビニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基等が挙げられる。また、置換されたヒドロカルビル基としては、オキサノルボルニル基、フルオロフェニル基等が挙げられる。Ra1及びRa2は、同じ基であることが好ましく、ともにメチル基であることがより好ましい。
【0017】
Ra1とRa2が互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に形成し得る脂環としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
式(A)で表される部分構造を有するオニウム塩としては、下記式(A1)で表されるアニオン及び下記式(A1-a)~(A1-c)のいずれかで表されるカチオンを含むものが好ましい。
【化10】
【0019】
式(A1)及び(A1-a)~(A1-c)中、Ra1及びRa2は、前記と同じ。kは、0~4の整数である。m1は、1~4の整数である。m2は、それぞれ独立に、0~4の整数である。nは、それぞれ独立に、0~10の整数である。pは、0~3の整数である。qは、0~2の整数である。rは、0~4の整数である。
【0020】
式(A1)及び(A1-a)~(A1-c)中、Ra3は、それぞれ独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基等の環式飽和ヒドロカルビル基、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等のアリール基等が挙げられる。また、前記ヒドロカルビル基の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、これらの基の炭素-炭素結合間に酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子含有基が介在していてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、カーバメート結合、アミド結合、イミド結合、ラクトン環、スルトン環、チオラクトン環、ラクタム環、スルタム環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
【0021】
nが2以上のとき、各Ra3は互いに同一であっても異なっていてもよく、2以上のRa3が、互いに結合してこれらが結合するW2上の原子と共に環を形成してもよい。このとき形成される環としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、ノルボルナン環、アダマンタン環等が挙げられる。なお、2つのRa3が同一の炭素原子に結合し、Ra3が互いに結合してW
1
又はW2と共にスピロ環構造を形成してもよい。
【0022】
式(A1)及び(A1-a)~(A1-c)中、W
1は、単環又は多環構造を有する炭素数3~20の(n+2)価の基であり、W
2は、それぞれ独立に、単環又は多環構造を有する炭素数3~20の(m
2+n+1)価の基であり、これらを構成する-CH
2-が、-O-、-S-又は-C(=O)-で置換されていてもよい。前記単環又は多環構造を有する基としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、破線は、結合手である。
【化11】
【0023】
これらのうち、原料調達の容易性の観点から芳香環を有する基が好ましく、ベンゼン環又はナフタレン環を有する基がより好ましい。
【0024】
式(A1)及び(A1-a)~(A1-c)中、Q1及びQ2は、それぞれ独立に、フッ素原子又は炭素数1~6のフッ素化飽和ヒドロカルビル基である。Q3及びQ4は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又は炭素数1~6のフッ素化飽和ヒドロカルビル基である。前記フッ素化飽和ヒドロカルビル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0025】
式(A1)中、La1及びLa2は、それぞれ独立に、単結合、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合又はカーバメート結合である。これらのうち、エーテル結合又はエステル結合であることが好ましく、エステル結合であることがより好ましい。
【0026】
式(A1)中、X
Lは、単結合、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビレン基である。前記ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビレン基としては、具体的には以下に示す基が挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、*はL
a1及びL
a2との結合を表す。
【化12】
【0027】
【0028】
【0029】
これらのうち、XL-0~XL-22及びXL-47~XL-49が好ましく、XL-0~XL-17がより好ましい。
【0030】
式(A1)で表されるアニオンとしては、下記式(A2)で表されるものが好ましい。
【化15】
(式中、Q
1~Q
4、L
a1、L
a2、X
L、R
a1~R
a3、k、m
1及びnは、前記と同じ。sは、0~2の整数である。)
【0031】
式(A2)で表されるアニオンとしては、下記式(A3)で表されるものが好ましい。
【化16】
(式中、Q
1~Q
4、L
a1、X
L、R
a1~R
a3、k、m
1、n及びsは、前記と同じ。)
【0032】
式(A3)で表されるアニオンとしては、下記式(A4)で表されるものが好ましい。
【化17】
(式中、Q
1~Q
3、L
a1、X
L、R
a1~R
a3、m
1、n及びsは、前記と同じ。)
【0033】
式(A1)~(A4)中、Q1及びQ2は、ともにフッ素原子であることが好ましい。また、Q3は、水素原子、フッ素原子又はトリフルオロメチル基であることが好ましいが、発生酸の酸強度及び溶剤溶解性の観点から、トリフルオロメチル基であることが特に好ましい。
【0034】
式(A1)で表されるアニオンの具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、Q
3は、前記と同じである。
【化18】
【0035】
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
式(A1-a)で表されるカチオンは、スルホニウムカチオンである。式(A1-a)中、R1は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロプロピルメチル基、4-メチルシクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等の環式飽和ヒドロカルビル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;シクロヘキセニル基等の環式不飽和脂肪族ヒドロカルビル基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;チエニル基等のヘテロアリール基;ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基等のアラルキル基等が挙げられる。これらのうち、好ましくはアリール基である。また、前記ヒドロカルビル基の水素原子の一部又は全部が、酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、これらの基の炭素-炭素結合間に酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子含有基が介在していてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。
【0065】
また、2つのR
1及びW
2のうちのいずれか2つが、互いに結合して式中の硫黄原子と共に環を形成してもよい。このとき、前記環構造としては、以下に示すもの等が挙げられる。
【化48】
(式中、破線は、結合手である。)
【0066】
式(A1-a)で表されるスルホニウムカチオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化49】
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
式(A1-b)で表されるカチオンは、ヨードニウムカチオンである。式(A1-b)中、R2は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、R1の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。
【0083】
式(A1-b)で表されるヨードニウムカチオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化65】
【0084】
式(A1-c)で表されるカチオンは、アンモニウムカチオンである。式(A1-c)中、R3は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、R1の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。
【0085】
式(A1-c)で表されるアンモニウムカチオンとしては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化66】
【0086】
【0087】
【0088】
本発明のオニウム塩は、例えば、下記スキームに従って製造することができる。なお、以下に例として、下記式(A1-1)で表されるオニウム塩の合成に関して述べるが、合成方法はこれに限定されない。
【化69】
(式中、Q
1~Q
4、W
1、W
2、R
a1~R
a3、R
1、k、m
1、m
2、n及びpは、前記と同じ。R
00は、炭素数1~3のヒドロカルビル基である。X
Halは、フッ素原子以外のハロゲン原子である。M
+は、対カチオンである。Z
-は、対アニオンである。)
【0089】
第1工程は、市販品として入手可能な、又は公知の有機合成方法で合成可能な中間体In-AとGrignard試薬又は有機リチウム試薬とを反応させ、中間体In-Bを得る工程である。反応は、公知の有機合成方法で行うことができる。具体的には、Grignard試薬又は有機リチウム試薬をテトラヒドロフラン(THF)、ジエチルエーテル等の溶剤に希釈し、これに中間体In-AをTHF、ジエチルエーテル等の溶剤に溶解した溶液を滴下して反応を行う。Grignard試薬又は有機リチウム試薬の使用量は、中間体In-A中のエステル結合の数及びヒドロキシ基による失活分を考慮して2m1+2当量であることが好ましい。反応温度は、室温から用いる溶剤の沸点程度の範囲が好ましい。反応時間は、ガスクロマトグラフィー(GC)やシリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)で反応を追跡して反応を完結させることが収率の点で望ましいが、通常30分~2時間程度である。反応混合物に対して通常の水系処理(aqueous work-up)を行うことで、中間体In-Bを得ることができる。得られた中間体In-Bは、必要があれば、クロマトグラフィー、再結晶等の常法に従って精製することができる。
【0090】
第2工程は、中間体In-Bとハロ酢酸エステル化合物との反応により、中間体In-Cを得る工程である。反応は、公知の有機合成方法で行うことができる。具体的には、中間体In-B及び塩基をN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の極性の非プロトン性溶剤に溶解し、ハロ酢酸エステル化合物を滴下して反応を行う。反応に用いる塩基としては、炭酸カリウムや炭酸セシウム等の無機塩基、及びトリエチルアミンやN,N-ジイソプロピルエチルアミン等の有機塩基が挙げられる。ハロ酢酸エステル化合物のハロゲン原子が塩素原子又は臭素原子の場合、ヨウ化ナトリウムやヨウ化カリウムを触媒量添加すると反応速度を向上させることができる。反応温度は、室温~100℃の範囲が好ましい。反応時間は、GCやTLCで反応を追跡して反応を完結させることが収率の点で望ましいが、通常2時間~12時間程度である。反応混合物に対して通常の水系処理(aqueous work-up)を行うことで、中間体In-Cを得ることができる。得られた中間体In-Cは、必要があれば、クロマトグラフィー、再結晶等の常法に従って精製することができる。
【0091】
第3工程は、中間体In-Cの加水分解により中間体In-Dを得る工程である。反応は、公知の有機合成方法で行うことができる。具体的には、中間体In-Cを1,4-ジオキサン等に溶解し、塩基を滴下して反応を行う。反応に用いる塩基としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等の無機塩基の水溶液が挙げられる。反応温度は、室温~600℃の範囲が好ましい。反応時間は、TLCで反応を追跡して反応を完結させることが収率の点で望ましいが、通常2時間~12時間程度である。反応終了後、酸を添加して反応を停止するが、用いる酸としては塩酸、硝酸等の水溶液が挙げられる。反応混合物に対して通常の水系処理(aqueous work-up)を行うことで、中間体In-Dを得ることができる。得られた中間体In-Dは、必要があれば、クロマトグラフィー、再結晶等の常法に従って精製することができる。
【0092】
第4工程は、中間体In-Dと中間体In-Eとの反応により、中間体In-Fを得る工程である。中間体In-Dのカルボキシ基と中間体In-Eのヒドロキシ基とから直接エステル結合を形成する際、種々の縮合剤を用いることができる。用いる縮合剤としては、N,N'-ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N'-ジイソプロピルカルボジイミド、1-[3-(ジメチルアミノ)プロピル]-3-エチルカルボジイミド、塩酸1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド等が挙げられるが、反応後に副生成物として生成する尿素化合物の除去のしやすさの観点から、塩酸1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドを使用することが好ましい。反応は、中間体In-D及び中間体In-Eを塩化メチレン等のハロゲン系溶剤に溶解し、縮合剤を添加して行う。触媒として、N,N-ジメチル-4-ジメチルアミノピリジンを添加すると、反応速度を向上させることができる。反応時間は、TLCで反応を追跡して反応を完結させることが収率の点で望ましいが、通常12~24時間程度である。反応終了後、必要に応じて副生する尿素化合物を濾過又は水洗で除去した後、反応液に対して通常の水系処理(aqueous work-up)を行うことで、中間体In-Fを得ることができる。得られた中間体In-Fは、必要があれば、クロマトグラフィー、再結晶等の常法に従って精製することができる。
【0093】
第5工程は、得られた中間体In-Fを中間体In-Gとイオン交換させ、オニウム塩(A1-1)を得る工程である。なお、中間体In-GのZ-としては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン又はメチル硫酸アニオンが、交換反応が定量的に進行しやすいことから好ましい。反応の進行は、TLCにて確認することが収率の点で望ましい。反応混合物に対して通常の水系処理(aqueous work-up)を行うことで、オニウム塩(A1-1)を得ることができる。必要があれば、クロマトグラフィー、再結晶等の常法に従って精製することができる。第5工程のイオン交換は、公知の方法で容易に行うことができ、例えば特開2007-145797号公報を参考にすることができる。
【0094】
なお、前記スキームによる製造方法はあくまでも一例であり、本発明のオニウム塩の製造方法は、これに限定されない。また、前記スキームは、エステル結合を有する化合物についての合成例であったが、当業者であれば常識の範囲内にある有機化学的方法を用いることにより、エーテル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合又はカーバメート結合を有するオニウム塩を合成することもできる。
【0095】
[化学増幅ネガ型レジスト組成物]
本発明の化学増幅ネガ型レジスト組成物は、前記オニウム塩からなる光酸発生剤を必須成分として含むものである。また、前記オニウム塩に加えて、所定の構造のベースポリマーを含むことが好ましい。
【0096】
本発明の化学増幅ネガ型レジスト組成物中、前記オニウム塩からなる光酸発生剤の含有量は、後述するベースポリマー100質量部に対し、感度と酸拡散抑制効果の点から0.01~100質量部が好ましく、0.05~50質量部がより好ましい。
【0097】
[ベースポリマー]
本発明の化学増幅ネガ型レジスト組成物に含まれるベースポリマーは、下記式(B1)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B1ともいう。)及び下記式(B2)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B2ともいう。)を含むポリマーである。
【化70】
【0098】
繰り返し単位B1は、エッチング耐性を与えるとともに基板に対する密着性とアルカリ現像液に対する溶解性とを与える繰り返し単位である。繰り返し単位B2は、高エネルギー線の照射を受けた際、酸発生剤より発生する酸の作用により酸不安定基が脱離反応を起こし、アルカリ不溶化及びポリマー間の架橋反応を誘発する繰り返し単位である。繰り返し単位B2の作用により、ネガ化反応をより効率的に進めることができるため、解像性能を向上させることができる。
【0099】
式(B1)及び(B2)中、RAは、水素原子、フッ素原子、メチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0100】
式(B1)及び(B2)中、R11及びR12は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基である。前記飽和ヒドロカルビル基、並びに飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基及び飽和ヒドロカルビルオキシ基の飽和ヒドロカルビル部は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。炭素数が上限以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性が良好である。
【0101】
式(B1)及び(B2)中、A1及びA2は、それぞれ独立に、単結合又は炭素数1~10の飽和ヒドロカルビレン基であり、該飽和ヒドロカルビレン基を構成する-CH2-が-O-で置換されていてもよい。前記飽和ヒドロカルビレン基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチレン基、エタン-1,1-ジイル基、エタン-1,2-ジイル基、プロパン-1,2-ジイル基、プロパン-1,3-ジイル基、ブタン-1,4-ジイル基、ペンタン-1,5-ジイル基、ヘキサン-1,6-ジイル基等のアルカンジイル基;シクロプロパンジイル基、シクロブタンジイル基、シクロペンタンジイル基、シクロヘキサンジイル基等の環式飽和ヒドロカルビレン基;これらを組み合わせて得られる基等が挙げられる。前記飽和ヒドロカルビレン基がエーテル結合を含む場合は、式(B1)中のt1が1のときはエステル酸素に対してα位の炭素とβ位の炭素の間を除くいずれの箇所に入ってもよい。また、t1が0である場合には主鎖と結合する原子がエーテル性酸素原子となり、該エーテル性酸素原子に対してα位の炭素とβ位の炭素の間を除くいずれの箇所に第2のエーテル結合が入ってもよい。なお、前記飽和ヒドロカルビレン基の炭素数が10以下であれば、アルカリ現像液に対する溶解性を十分に得ることができるため好ましい。
【0102】
式(B2)中、W11は、水素原子、炭素数1~10の脂肪族ヒドロカルビル基、又は置換基を有してもよいアリール基である。前記脂肪族ヒドロカルビル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基等の環式脂肪族ヒドロカルビル基等が挙げられる。前記アリール基としては、フェニル基等が挙げられる。また、前記脂肪族ヒドロカルビル基を構成する-CH2-が、-O-、-C(=O)-、-O-C(=O)-又は-C(=O)-O-で置換されていてもよい。なお、前記ヒドロカルビル基中の-CH2-は、式(B2)中の酸素原子に結合するものであってもよい。このような置換された基としては、メチルカルボニル基等が挙げられる。
【0103】
式(B2)中、Rx及びRyは、それぞれ独立に、水素原子、若しくはヒドロキシ基若しくは飽和ヒドロカルビルオキシ基で置換されていてもよい炭素数1~15の飽和ヒドロカルビル基、又は置換基を有してもよいアリール基である。ただし、Rx及びRyは、同時に水素原子になることはない。また、Rx及びRyは、互いに結合してこれらが結合する炭素原子と共に環を形成してもよい。前記飽和ヒドロカルビル基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよく、その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基及びこれらの構造異性体等のアルキル基、これらの水素原子の一部がヒドロキシ基又は飽和ヒドロカルビルオキシ基で置換されたものが挙げられる。
【0104】
式(B1)及び(B2)中、t1及びt2は、それぞれ独立に、0又は1である。x1及びx2は、それぞれ独立に、0~2の整数であり、0の場合はベンゼン骨格を、1の場合はナフタレン骨格を、2の場合はアントラセン骨格をそれぞれ表す。aは、0≦a≦5+2x1-bを満たす整数である。cは、0≦c≦5+2x2-dを満たす整数である。b及びdは、それぞれ独立に、1~3の整数である。x1が0の場合、好ましくは、aは0~3の整数であり、bは1~3の整数であり、x1が1又は2の場合、好ましくは、aは0~4の整数であり、bは1~3の整数である。x2が0の場合、好ましくは、cは0~3の整数であり、dは1~3の整数であり、x2が1又は2の場合、好ましくは、cは0~4の整数であり、dは1~3の整数である。
【0105】
t
1が0かつA
1が単結合である場合、つまり芳香環がポリマーの主鎖に直接結合した(すなわち、リンカー(-CO-O-A
1-)を有しない)場合、繰り返し単位B1としては、下記式(B1-1)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B1-1ともいう。)が好ましい。
【化71】
(式中、R
A、R
11及びbは、前記と同じ。)
【0106】
繰り返し単位B1の好ましい例としては、3-ヒドロキシスチレン、4-ヒドロキシスチレン、5-ヒドロキシ-2-ビニルナフタレン、6-ヒドロキシ-2-ビニルナフタレン等に由来する単位が挙げられる。特に、下記式で表されるものが好ましい。
【化72】
(式中、R
Aは、前記と同じ。)
【0107】
また、t
1が1である(すなわち、リンカーとしてエステル結合を有する)場合、繰り返し単位B1の好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化73】
(式中、R
Aは、前記と同じ。)
【0108】
繰り返し単位B2としては、下記式(B2-1)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B2-1ともいう。)が好ましい。
【化74】
(式中、R
A、R
12、R
x、R
y、W
11及びdは、前記と同じ。)
【0109】
繰り返し単位B2の好ましい例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。なお、下記式中、Meはメチル基であり、Acはアセチル基である。
【化75】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
繰り返し単位B1の含有量は、高解像性を得る目的で高エネルギー線照射によってネガ化される部分と照射されない部分(ネガ化されない部分)に高コントラストを引き出すため、前記ベースポリマーを構成する全繰り返し単位中、その下限は30モル%が好ましく、40モル%がより好ましく、50モル%が更に好ましい。その上限は、95モル%が好ましく、90モル%がより好ましく、80モル%が更に好ましい。
【0114】
繰り返し単位B2の含有量は、前記ベースポリマーを構成する全繰り返し単位中、その下限は、5モル%が好ましく、10モル%がより好ましく、20モル%が更に好ましい。その上限は、70モル%が好ましく、60モル%がより好ましく、50モル%が更に好ましい。
【0115】
特に、前記ベースポリマーが、繰り返し単位B1-1と繰り返し単位B2-1を含む場合には、繰り返し単位B1-1の作用により、より一層エッチング耐性が向上するとともに基板に対する密着性とアルカリ現像液に対する溶解性とが向上し、繰り返し単位B2-1の作用により、ネガ化反応をより一層効率的に進めることができるため、解像性能を更に向上させることができる。
【0116】
前記ベースポリマーは、エッチング耐性を向上させる目的で、更に下記式(B3)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B3ともいう。)と、下記式(B4)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B4ともいう。)と、下記式(B5)で表される繰り返し単位(以下、繰り返し単位B5ともいう。)とから選ばれる少なくとも1種の繰り返し単位を含んでもよい。
【化79】
【0117】
式(B3)及び(B4)中、R13及びR14は、それぞれ独立に、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アセトキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8の飽和ヒドロカルビルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基である。ただし、R13及びR14は、酸不安定基ではない。
【0118】
式(B5)中、R15は、ハロゲン原子、アセトキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8のアルキル基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~8の飽和ヒドロカルビルオキシ基、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニル基又はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2~8の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基である。ただし、R15は、酸不安定基ではない。
【0119】
式(B3)~(B5)中、e、f及びgは、それぞれ独立に、0~4の整数である。
【0120】
繰り返し単位B3~B5のうち少なくとも1つを構成単位として含む場合、芳香環が持つエッチング耐性に加えて主鎖に環構造が加わることによるエッチング耐性やパターン検査の際のEB照射耐性の向上という効果が得られる。
【0121】
繰り返し単位B3~B5は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。エッチング耐性を向上させるという効果を得るためには、繰り返し単位B3~B5の含有量は、前記ベースポリマーを構成する全繰り返し単位中、その下限は、2モル%が好ましく、5モル%がより好ましく、その上限は、30モル%が好ましく、20モル%がより好ましい。
【0122】
[その他の成分]
本発明の化学増幅ネガ型レジスト組成物は、更に有機溶剤、クエンチャー、架橋剤、界面活性剤等を、必要に応じて適宜組み合わせて含むことができる。このように化学増幅ネガ型レジスト組成物を構成することによって、従来のネガ型レジスト組成物を用いて形成させたネガ型パターンに比べ、アルカリ現像液に対する溶解性が抑制され、トップロスが少なく良好なパターン形状を形成することができる。そして、レジスト膜の溶解コントラスト及び解像性が高く、露光余裕度があり、プロセス適応性に優れ、露光後のパターン形状が良好でありながら、特に酸拡散を抑制できることから粗密寸法差が小さく、これらのことから実用性が高く、超LSI用レジスト組成物として非常に有効なものとすることができる。
【0123】
[有機溶剤]
前記有機溶剤としては、前述した各成分や後述する各成分を溶解可能なものであれば、特に限定されない。このような有機溶剤としては、例えば、特開2008-111103号公報の段落[0144]~[0145]に記載の、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチル-2-n-ペンチルケトン、2-ヘプタノン等のケトン類;3-メトキシブタノール、3-メチル-3-メトキシブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、乳酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸ブチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸tert-ブチル、プロピレングリコールモノtert-ブチルエーテルアセテート等のエステル類;γ-ブチロラクトン等のラクトン類、及びこれらの混合溶剤が挙げられる。
【0124】
これらの有機溶剤の中でも、前記オニウム塩の溶解性が特に優れている、1-エトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、及びこれらの混合溶剤が好ましい。
【0125】
有機溶剤の使用量は、前記ベースポリマー100質量部に対し、200~12,000質量部が好ましく、400~10,000質量部がより好ましい。
【0126】
[クエンチャー]
前記クエンチャーとしては、従来型の塩基性化合物が挙げられる。従来型の塩基性化合物としては、第1級、第2級、第3級の脂肪族アミン類、混成アミン類、芳香族アミン類、複素環アミン類、カルボキシ基を有する含窒素化合物、スルホニル基を有する含窒素化合物、ヒドロキシ基を有する含窒素化合物、ヒドロキシフェニル基を有する含窒素化合物、アルコール性含窒素化合物、アミド類、イミド類、カーバメート類等が挙げられる。特に、特開2008-111103号公報の段落[0146]~[0164]に記載の第1級、第2級、第3級のアミン化合物、特にはヒドロキシ基、エーテル結合、エステル結合、ラクトン環、シアノ基、スルホン酸エステル結合を有するアミン化合物あるいは特許第3790649号公報に記載のカーバメート基を有する化合物等が好ましい。このような塩基性化合物を添加することによって、例えば、レジスト膜中での酸の拡散速度を更に抑制したり、形状を補正したりすることができる。
【0127】
また、前記クエンチャーとして、特開2008-158339号公報に記載されたα位がフッ素化されていないカルボン酸の、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、アンモニウム塩等のオニウム塩が挙げられる。α位がフッ素化されたスルホン酸、イミド酸又はメチド酸は、酸不安定基を脱保護させるのに必要であるが、α位がフッ素化されていないオニウム塩との塩交換によってα位がフッ素化されていないカルボン酸が放出される。α位がフッ素化されていないカルボン酸は脱保護反応を殆ど起こさないために、クエンチャーとして機能する。
【0128】
α位がフッ素化されていないカルボン酸のオニウム塩としては、例えば、下記式(C1)で表される化合物が挙げられる。
【化80】
【0129】
式(C1)中、R101は、水素原子又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~40のヒドロカルビル基であるが、カルボキシ基のα位の炭素原子に結合する水素原子が、フッ素原子又はフルオロアルキル基で置換されたものを除く。
【0130】
前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、2-エチルヘキシル基、n-ノニル基、n-デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロペンチルエチル基、シクロペンチルブチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、シクロヘキシルブチル基、ノルボルニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、アダマンチル基、アダマンチルメチル基等の環式飽和ヒドロカルビル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;シクロヘキセニル基等の環式不飽和脂肪族ヒドロカルビル基;フェニル基、ナフチル基、アルキルフェニル基(2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、4-エチルフェニル基、4-tert-ブチルフェニル基、4-n-ブチルフェニル基等)、ジアルキルフェニル基(2,4-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリイソプロピルフェニル基等)、アルキルナフチル基(メチルナフチル基、エチルナフチル基等)、ジアルキルナフチル基(ジメチルナフチル基、ジエチルナフチル基等)等のアリール基;ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0131】
また、これらの基の水素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、これらの基の炭素原子の一部が酸素原子、硫黄原子、窒素原子等のヘテロ原子含有基で置換されていてもよく、その結果、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、スルホン酸エステル結合、カーボネート結合、ラクトン環、スルトン環、カルボン酸無水物、ハロアルキル基等を含んでいてもよい。ヘテロ原子を含むヒドロカルビル基としては、チエニル基等のヘテロアリール基;4-ヒドロキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、2-メトキシフェニル基、4-エトキシフェニル基、4-tert-ブトキシフェニル基、3-tert-ブトキシフェニル基等のアルコキシフェニル基;メトキシナフチル基、エトキシナフチル基、n-プロポキシナフチル基、n-ブトキシナフチル基等のアルコキシナフチル基;ジメトキシナフチル基、ジエトキシナフチル基等のジアルコキシナフチル基;2-フェニル-2-オキソエチル基、2-(1-ナフチル)-2-オキソエチル基、2-(2-ナフチル)-2-オキソエチル基等の2-アリール-2-オキソエチル基等のアリールオキソアルキル基等が挙げられる。
【0132】
式(C1)中、Mq+は、オニウムカチオンである。前記オニウムカチオンとしては、スルホニウムカチオン、ヨードニウムカチオン又はアンモニウムカチオンが好ましく、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンがより好ましい。前記スルホニウムカチオンとしては、式(A1-a)で表されるスルホニウムカチオンとして例示したもののうち、pが0のものが挙げられる。前記ヨードニウムカチオンとしては、式(A1-b)で表されるヨードニウムカチオンとして例示したもののうち、qが0のものが挙げられる。また、前記アンモニウムカチオンとしては、式(A1-c)で表されるアンモニウムカチオンとして例示したもののうち、rが0のものが挙げられる。
【0133】
クエンチャーとして、下記式(C2)で表されるヨウ素化ベンゼン環含有カルボン酸のスルホニウム塩も好適に使用できる。
【化81】
【0134】
式(C2)中、R201は、ヒドロキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、若しくは水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換されていてもよい、炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基、炭素数1~6の飽和ヒドロカルビルオキシ基、炭素数2~6の飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基若しくは炭素数1~4の飽和ヒドロカルビルスルホニルオキシ基、又は-NR201A-C(=O)-R201B若しくは-NR201A-C(=O)-O-R201Bである。R201Aは、水素原子又は炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基である。R201Bは、炭素数1~6の飽和ヒドロカルビル基又は炭素数2~8の不飽和脂肪族ヒドロカルビル基である。
【0135】
式(C2)中、xは、1~5の整数である。yは、0~3の整数である。zは、1~3の整数である。L1は、単結合又は炭素数1~20の(z+1)価の連結基であり、エーテル結合、カルボニル基、エステル結合、アミド結合、スルトン環、ラクタム環、カーボネート基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基及びカルボキシ基から選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。前記飽和ヒドロカルビル基、飽和ヒドロカルビルオキシ基、飽和ヒドロカルビルカルボニルオキシ基及び飽和ヒドロカルビルスルホニルオキシ基は、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。y及び/又はzが2以上のとき、各R201は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0136】
式(C2)中、R202、R203及びR204は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、又はヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~20のヒドロカルビル基である。前記ヒドロカルビル基は、飽和でも不飽和でもよく、直鎖状、分岐状、環状のいずれでもよい。その具体例としては、炭素数1~20のアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基等が挙げられる。また、これらの基の水素原子の一部又は全部が、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ハロゲン原子、オキソ基、シアノ基、ニトロ基、スルトン基、スルホン基又はスルホニウム塩含有基で置換されていてもよく、これらの基の炭素原子の一部が、エーテル結合、エステル結合、カルボニル基、アミド結合、カーボネート基又はスルホン酸エステル結合で置換されていてもよい。また、R202及びR203が、互いに結合してこれらが結合する硫黄原子と共に環を形成してもよい。
【0137】
式(C2)で表される化合物の具体例としては、特開2017-219836号公報に記載されたものが挙げられる。これも高吸収で増感効果が高く、酸拡散制御効果も高い。
【0138】
また、前記クエンチャーとして、弱酸のベタイン型化合物を使用することもできる。その具体例としては、以下に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【化82】
【0139】
前記クエンチャーとしては、更に、特開2008-239918号公報に記載のポリマー型のクエンチャーが挙げられる。これは、レジスト組成物塗布後のレジスト膜表面に配向することによってパターン後のレジストの矩形性を高める。ポリマー型クエンチャーは、液浸露光用の保護膜を適用したときのパターンの膜減りやパターントップのラウンディングを防止する効果もある。
【0140】
本発明の化学増幅ネガ型レジスト組成物がクエンチャーを含む場合、その含有量は、ベースポリマー100質量部に対し、0~5質量部が好ましく、0~4質量部がより好ましい。
【0141】
[架橋剤]
本発明の化学増幅ネガ型レジスト組成物は、架橋剤を含んでもよい。前記架橋剤としては、メチロール基、アルコキシメチル基及びアシロキシメチル基から選ばれる少なくとも1つの基で置換された、エポキシ化合物、メラミン化合物、グアナミン化合物、グリコールウリル化合物又はウレア化合物、イソシアネート化合物、アジド化合物、アルケニルオキシ基等の二重結合を含む化合物等が挙げられる。これらは、添加剤として用いてもよいが、ポリマー側鎖にペンダント基として導入してもよい。また、ヒドロキシ基を含む化合物も架橋剤として用いることができる。
【0142】
前記エポキシ化合物としては、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリメチロールメタントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリエチロールエタントリグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0143】
前記メラミン化合物としては、ヘキサメチロールメラミン、ヘキサメトキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミン等の1~6個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、ヘキサメトキシエチルメラミン、ヘキサアシロキシメチルメラミン、ヘキサメチロールメラミン等の1~6個のメチロール基がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物等が挙げられる。
【0144】
前記グアナミン化合物としては、テトラメチロールグアナミン、テトラメトキシメチルグアナミン、テトラメチロールグアナミン等の1~4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメトキシエチルグアナミン、テトラアシロキシグアナミン、テトラメチロールグアナミン等の1~4個のメチロール基がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物が挙げられる。
【0145】
前記グリコールウリル化合物としては、テトラメチロールグリコールウリル、テトラメトキシグリコールウリル、テトラメトキシメチルグリコールウリル、テトラメチロールグリコールウリル等の1~4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメチロールグリコールウリル等の1~4個のメチロール基がアシロキシメチル化した化合物又はその混合物が挙げられる。
【0146】
前記ウレア化合物としては、テトラメチロールウレア、テトラメトキシメチルウレア、テトラメチロールウレア等の1~4個のメチロール基がメトキシメチル化した化合物又はその混合物、テトラメトキシエチルウレア等が挙げられる。
【0147】
前記イソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート等が挙げられる。
【0148】
前記アジド化合物としては、1,1'-ビフェニル-4,4'-ビスアジド、4,4'-メチリデンビスアジド、4,4'-オキシビスアジド等が挙げられる。
【0149】
前記アルケニルオキシ基を含む化合物としては、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2-プロパンジオールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等が挙げられる。
【0150】
架橋剤を含む場合、その含有量は、ベースポリマー100質量部に対し、2~50質量部が好ましく、5~30質量部がより好ましい。前記範囲であれば、パターン間がつながり、解像度が低下するおそれが少ない。架橋剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0151】
[界面活性剤]
本発明の化学増幅ネガ型レジスト組成物は、基板への塗布性を向上させるため、慣用されている界面活性剤を含んでもよい。前記界面活性剤を用いる場合、PF-636(OMNOVA SOLUTIONS社製)やFC-4430(3M社製)、特開2004-115630号公報にも多数の例が記載されているように多数のものが公知であり、それらを参考にして選択することができる。界面活性剤の含有量は、ベースポリマー100質量部に対し、0~5質量部が好ましい。
【0152】
[レジストパターン形成方法]
本発明のレジストパターン形成方法は、基板上に、前述した本発明の化学増幅ネガ型レジスト組成物を用いてレジスト膜を形成する工程、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜にパターンを照射する工程(高エネルギー線を用いて前記レジスト膜を露光する工程)、及びアルカリ現像液を用いて露光した前記レジスト膜を現像する工程を含む。
【0153】
基板としては、例えば、集積回路製造用の基板(Si、SiO2、SiN、SiON、TiN、WSi、BPSG、SOG、有機反射防止膜等)、あるいはマスク回路製造用の基板(Cr、CrO、CrON、MoSi2、SiO2等)を用いることができる。前記基板上に、スピンコーティング等の方法で膜厚が0.03~2μmとなるようにレジスト組成物を塗布し、これをホットプレート上で、好ましくは60~150℃、1~20分間、より好ましくは80~140℃、1~10分間プリベークし、レジスト膜を形成する。
【0154】
次いで、高エネルギー線を用いて前記レジスト膜を露光し、パターンを照射する。前記高エネルギー線としては、紫外線、遠紫外線、エキシマレーザー光(KrF、ArF等)、EUV、X線、γ線、シンクロトロン放射線、EB等が挙げられる。本発明においては、KrFエキシマレーザー光、EUV又はEBを用いて露光することが好ましい。
【0155】
前記高エネルギー線として紫外線、遠紫外線、エキシマレーザー光、EUV、X線、γ線又はシンクロトロン放射線を用いる場合は、目的のパターンを形成するためのマスクを用いて、露光量が好ましくは1~200mJ/cm2、より好ましくは10~100mJ/cm2となるように照射することで行うことができる。EBを用いる場合は、目的のパターンを形成するため直接、露光量が好ましくは1~300μC/cm2、より好ましくは10~200μC/cm2となるように照射する。
【0156】
次いで、ホットプレート上で、好ましくは60~150℃、1~20分間、より好ましくは80~140℃、1~10分間ポストエクスポージャベーク(PEB)する。
【0157】
その後、0.1~5質量%、好ましくは2~3質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)等のアルカリ水溶液の現像液を用い、好ましくは0.1~3分間、より好ましくは0.5~2分間、浸漬(dip)法、パドル(puddle)法、スプレー(spray)法等の常法により現像することで、基板上に目的のパターンが形成される。
【0158】
また、前記レジスト膜形成後に、純水リンス(ポストソーク)を行うことによって膜表面からの酸発生剤等の抽出やパーティクルの洗い流しを行ってもよいし、露光後に膜上に残った水を取り除くためのリンス(ポストソーク)を行ってもよい。
【実施例】
【0159】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。なお、使用した装置は、以下のとおりである。
・IR:サーモフィッシャーサイエンティフィック社製、NICOLET 6700
・1H-NMR:日本電子(株)製、ECA-500
・MALDI TOF-MS:日本電子(株)製、S3000
【0160】
[1]オニウム塩の合成
[実施例1-1]PAG-1の合成
(1)中間体In-1の合成
【化83】
【0161】
窒素雰囲気下、フラスコ内で、マグネシウム(145.9g、M-1に対して6当量)、THF(3,000g)及びクロロメタンから調製したGrignard試薬に対し、M-1(210g)及びTHF(500g)からなる溶液を、フラスコ内の温度(以下、内部温度という。)が40~55℃の範囲で滴下した。滴下後、内部温度50℃にて3時間熟成した。熟成後、反応系を冷却し、塩化アンモニウム(600g)及び3.0質量%塩酸水溶液(1,800g)との混合水溶液を滴下して反応を停止した。その後、酢酸エチル(2,000mL)で抽出し、通常の水系処理(aqueous work-up)を行い、溶剤を留去し、ヘキサンで再結晶することで、中間体In-1を白色結晶として得た(収量172.2g、収率82%)。
【0162】
【0163】
窒素雰囲気下、中間体In-1(105.1g)、炭酸カリウム(76.0g)、ヨウ化ナトリウム(7.5g)及びDMF(350g)をフラスコに仕込み、内部温度50℃で30分間攪拌した。そこへ、クロロ酢酸イソプロピル(82.0g)及びDMF(80g)からなる溶液を滴下した。滴下後、内部温度を50℃に維持しながら18時間熟成した。熟成後、反応系を冷却し、20質量%の塩酸(150.4g)及び水(500g)からなる溶液を滴下して反応を停止した。その後、酢酸エチル(500mL)及びトルエン(250mL)を加えて目的物を抽出し、通常の水系処理(aqueous work-up)を行い、溶剤を留去し、ヘキサンで再結晶することで、中間体In-2を白色結晶として得た(収量136.1g、収率88%)。
【0164】
【0165】
窒素雰囲気下、中間体In-2(136.1g)及び1,4-ジオキサン(550g)をフラスコに仕込み、氷浴にて冷却した。その後、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液(84.2g)を滴下した。滴下後、内部温度40℃まで昇温し、12時間熟成した。熟成後、反応液を氷冷し、20質量%塩酸(100.7g)を滴下して反応を停止した。酢酸エチル(1,000mL)で抽出した後、通常の水系処理(aqueous work-up)を行い、溶剤を留去し、ヘキサンで再結晶することで、中間体In-3を白色結晶として得た(収量85.5g、収率73%)。
【0166】
【0167】
窒素雰囲気下、中間体In-3(26.8g)、ベンジルトリメチルアンモニウム1,1,3,3,3-ペンタフルオロ-2-ヒドロキシプロパン-1-スルホネート(39.8g)、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン(DMAP)(1.2g)及び塩化メチレン(200g)をフラスコに仕込み、氷浴にて冷却した。内部温度20℃以下を維持しながら、塩酸1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(23.0g)を粉体のまま添加した。添加後、室温まで昇温し、12時間熟成した。熟成後、水を加えて反応を停止し、通常の水系処理(aqueous work-up)を行い、溶剤を留去し、メチルイソブチルケトン(100g)で共沸脱水することで、中間体In-4を油状物として得た(収量51.3g、収率81%)。
【0168】
【0169】
窒素雰囲気下、中間体In-4(12.3g)、5-フェニル-ジベンゾチオフェニウムメチルサルフェート(7.0g)、メチルイソブチルケトン(75g)、塩化メチレン(25g)及び水(60g)を加え、30分攪拌した後、有機層を分取し、水洗を行い、その後減圧濃縮した。得られた濃縮液にジイソプロピルエーテルを加えて再結晶することで、目的物であるPAG-1を白色結晶として得た(収量10.0g、収率83%)。
【0170】
PAG-1のIRスペクトルデータ及びTOF-MSの結果を以下に示す。また、核磁気共鳴スペクトル(
1H-NMR/DMSO-d
6)の結果を
図1に示す。
IR(D-ATR): ν= 3453, 3091, 2975, 2935, 1798, 1594, 1476, 1449, 1435, 1372, 1330, 1279, 1263, 1247, 1218, 1172, 1145, 1103, 1068, 998, 962, 936, 923, 859, 833, 782, 758, 733, 707, 680, 644, 613, 575, 552, 524, 500, 489, 422 cm
-1.
MALDI TOF-MS: POSITIVE M
+261(C
18H
13S
+相当)
NEGATIVE M
-479(C
17H
20F
5O
8S
-相当)
【0171】
[実施例1-2~1-14、比較例1-1~1-4]PAG-2~PAG-14及びcPAG1~cPAG-4の合成
公知の有機合成方法により、以下に示すオニウム塩PAG-2~PAG-14及びcPAG1~cPAG-4を合成した。
【化88】
【0172】
【0173】
【0174】
[2]ベースポリマーの合成
[合成例1~24]ポリマーP-1~P-24の合成
窒素雰囲気下、各モノマーを組み合わせてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート及びγ-ブチロラクトンの混合溶剤中で共重合反応を行い、得られた重合溶液をジイソプロピルエーテルに滴下し、ポリマーを析出させた。デカンテーションにより溶剤を除去し、ポリマーをアセトンに溶解した。このアセトン溶液をジイソプロピルエーテルに滴下し、析出したポリマーを濾別した。濾別したポリマーを再度アセトンに溶解し、このアセトン溶液を水に滴下し、析出した共重合体を濾別した。その後、40℃で40時間乾燥し、白色固体であるポリマーを得た。得られたポリマーの組成は1H-NMR及び13C-NMRにより、Mw及び分散度(Mw/Mn)はGPC(溶剤:THF、標準:ポリスチレン)により確認した。
【0175】
ポリマーP-1~P-24を構成する繰り返し単位及びその導入率を、下記表1に示す。
【0176】
【0177】
【0178】
【0179】
【0180】
[3]ネガ型レジスト組成物の調製
[実施例2-1~2-36、比較例2-1~2-7]
下記表2~5に示す組成で、各成分を有機溶剤中に溶解して溶液を調製し、得られた各溶液を0.02μmサイズのUPEフィルター及び/又はナイロンフィルターで濾過して、ネガ型レジスト組成物を調製した。
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
表2~5中、有機溶剤、クエンチャーQ-1、Q-2、架橋剤及び界面活性剤は、以下のとおりである。
・有機溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
γ-ブチロラクトン(GBL)
ジアセトンアルコール(DAA)
【0186】
【0187】
・架橋剤:テトラメトキシメチルグリコールウリル(TMGU)
・界面活性剤:PolyFox PF-636(OMNOVA SOLUTIONS社製)
【0188】
[4]EBリソグラフィー評価
[実施例3-1~3-10、比較例3-1~3-2]
シリコン基板上に反射防止膜溶液(日産化学(株)製DUV-42)を塗布し、200℃で60秒間ベークして反射防止膜(膜厚61nm)を形成した。その反射防止膜上にレジスト組成物R-1~R-10、cR-1及びcR-2をそれぞれスピンコーティングし、ホットプレートを用いて100℃で60秒間ベークし、膜厚45nmのレジスト膜を作製した。これに対し、エリオニクス社製電子線描画装置(ELS-F125、加速電圧125kV)を用いて、ウェハー上寸法が26nm、ピッチ52nmのドットパターンを、露光量50μC/cm2からステップ1μC/cm2で変化させながら描画を行い、その後、表6に示す温度で60秒間ベーク(PEB)した。その後、2.38質量%のTMAH水溶液で30秒間パドル現像を行い、純水でリンスし、スピンドライを行って、ドットパターンであるネガ型レジストパターンを得た。得られたドットパターンを(株)日立ハイテクノロジーズ製測長SEM(S9380)で観察し、感度、露光余裕度(EL)及びCDUを下記方法に従って評価した。結果を表6に示す。
【0189】
[感度評価]
感度として、寸法26nm、ピッチ52nmのドットパターンが得られる最適露光量Eop(μC/cm2)を求めた。この値が小さいほど、感度が高い。
【0190】
[EL評価]
寸法26nm±10%(23~29nm)の範囲内でドットパターンを形成する露光量から、次式によりEL(単位:%)を求めた。この値が大きいほど、良好である。
EL(%)=(|E1-E2|/Eop)×100
E1 :寸法23nm、ピッチ52nmのドットパターンを与える最適露光量
E2 :寸法29nm、ピッチ52nmのドットパターンを与える最適露光量
Eop:寸法26nm、ピッチ52nmのドットパターンを与える最適露光量
【0191】
[CDU評価]
Eopで照射して得たドットパターンについて、同一露光量ショット内10箇所(1箇所につき9個のドットパターン)の寸法を測定し、その結果から標準偏差(σ)の3倍値(3σ)をCDUとして求めた。この値が小さいほど、ドットパターンのCDUが優れる。
【0192】
【0193】
[5]EUVリソグラフィー評価
[実施例4-1~4-20、比較例4-1~4-2]
レジスト組成物R-11~R-30、cR-3及びcR-4を、それぞれ信越化学工業(株)製ケイ素含有スピンオンハードマスクSHB-A940(ケイ素の含有量が43質量%)を膜厚20nmで形成したSi基板上にスピンコートし、ホットプレートを用いて105℃で60秒間プリベークして膜厚50nmのレジスト膜を作製した。これに対し、ASML社製EUVスキャナーNXE3,300(NA0.33、σ0.9/0.5、クアドルポール照明)を用いて露光を行い、ホットプレート上で表7記載の温度で60秒間PEBを行い、2.38質量%TMAH水溶液で30秒間現像を行った。その結果、未露光部分が現像液に溶解し、スペース幅23nm、ピッチ46nmのLSパターンであるネガ型レジストパターンを得た。得られたレジストパターンについて次の評価を行った。結果を表7に示す。
【0194】
[感度評価]
前記LSパターンを電子顕微鏡にて観察し、スペース幅23nm、ピッチ46nmのLSパターンが得られる最適露光量Eop(mJ/cm2)を求めた。
【0195】
[LWR評価]
最適露光量で照射して得たLSパターンを、(株)日立ハイテクノロジーズ製CD-SEM(CG-5000)でスペース幅の長手方向に10箇所の寸法を測定し、その結果から標準偏差(σ)の3倍値(3σ)をLWRとして求めた。この値が小さいほど、ラフネスが小さく均一なスペース幅のパターンが得られる。
【0196】
[パターン形状評価]
最適露光量におけるパターン形状を比較し、以下の基準により良否を判別した。
良好:パターン形状が矩形であり側壁の垂直性が高い。
不良:パターン側壁の傾斜が大きいテーパー形状、又はトップロスによる
トップラウンディング形状。
【0197】
【0198】
[6]露光部残膜評価
[実施例5-1~5-6、比較例5-1~5-3]
レジスト組成物R-31~R-36及びcR-5~cR-7を、それぞれ信越化学工業(株)製ケイ素含有スピンオンハードマスクSHB-A940(ケイ素の含有量が43質量%)を膜厚20nmで形成したSi基板上にスピンコートし、ホットプレートを用いて105℃で60秒間プリベークして膜厚50nmのレジスト膜を作製した。これに対し、(株)ニコン製KrFスキャナーS206D(NA0.82、Conventional照明)を用いて露光量を変化させながら露光し、ホットプレート上で表8記載の温度で60秒間PEBを行い、2.38質量%TMAH水溶液で30秒間現像を行った。(株)SCREENセミコンダクターソルーションズ製膜厚計RE-3100を用いて各露光量で露光した箇所の膜厚を測定し、レジスト組成物塗布後の膜厚に対する割合を下記式のように計算してそれを残膜率と定義した。横軸に露光量、縦軸に残膜率をプロットし、グラフ化したものを
図2に示す。本発明の化学増幅ネガ型レジスト組成物は、現像液としてアルカリ現像液を使用するので、
図2のように露光量が増加するほど、レジスト残膜率が増加する。残膜率はいずれ飽和するが、飽和した際の残膜率を飽和残膜率(
図2中Aの値)として表8に示す。この値が大きいほど、露光部のアルカリ現像液に対する溶解性が抑制されていて優れていることを示す。
残膜率(%)=各露光量における膜厚(nm)/塗布直後の膜厚(50nm)×100
【0199】
【0200】
表6及び7に示した結果より、本発明の化学増幅ネガ型レジスト組成物は、EBリソグラフィー及びEUVリソグラフィーにおいて、感度、LWR、CDU及びパターン形状に優れることが明らかとなった。また、表8に示した結果より、KrFリソグラフィーにおいて本発明の化学増幅ネガ型レジスト組成物が飽和残膜率に優れていること、つまり露光部のアルカリ現像液に対する溶解性が抑制されていることが明らかになった。