(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】樹脂被覆金属粉末およびその製造方法ならびにこれを用いた水性塗料組成物
(51)【国際特許分類】
B22F 1/102 20220101AFI20231024BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20231024BHJP
C09C 1/62 20060101ALI20231024BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20231024BHJP
C09D 5/08 20060101ALI20231024BHJP
C09D 7/62 20180101ALI20231024BHJP
C09D 163/00 20060101ALI20231024BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20231024BHJP
C23F 13/10 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
B22F1/102
B22F1/00 R
C09C1/62
C09D5/02
C09D5/08
C09D7/62
C09D163/00
C23C26/00 A
C23F13/10 A
(21)【出願番号】P 2020172461
(22)【出願日】2020-10-13
【審査請求日】2022-11-22
(31)【優先権主張番号】P 2019190949
(32)【優先日】2019-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020148736
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】清森 歩
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-194490(JP,A)
【文献】特開昭62-275113(JP,A)
【文献】特開2014-37558(JP,A)
【文献】特表2017-508016(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/102
C09C 1/62
C09C 3/10
C09D 5/02
C09D 5/10
C09D 163/00
C23C 26/00
C23F 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末の表面の少なくとも一部が加水分解性樹脂で被覆された樹脂被覆金属粉末であって、
前記加水分解性樹脂が、下記一般式(1)で示される平均組成を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の数平均分子量500~100,000の樹脂であることを特徴とする樹脂被覆金属粉末。
【化1】
(式中、R
1は、炭素数1~10の直鎖状または分岐鎖状の1価炭化水素基を表し、炭化水素基の水素原子の一部または全部が、アルコキシアルキル基、アルコキシシリル基、ヒドロキシアルキル基、ポリオキシアルキレン基または末端アルキルポリオキシアルキレン基で置換されていてもよく、
R
3、R
4およびR
5は、それぞれ独立して炭素数1~10の直鎖状または分岐鎖状の1価炭化水素基を表し、
R
2およびR
6は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状の1価炭化水素基を表し、
aおよびbは、0≦a<1、0<b≦1、a+b=1を満たす数を表す。)
【請求項2】
前記R
3、R
4およびR
5が、それぞれ独立して炭素数1~4の直鎖状または分岐鎖状の1価炭化水素基である請求項1記載の樹脂被覆金属粉末。
【請求項3】
前記金属粉末が、亜鉛粉末である請求項1または2記載の樹脂被覆金属粉末。
【請求項4】
金属粉末と、前記一般式(1)で示される加水分解性樹脂を含む溶液とを混合し、前記金属粉末の表面の少なくとも一部を前記加水分解性樹脂で被覆する請求項1~3のいずれか1項記載の樹脂被覆金属粉末の製造方法。
【請求項5】
金属粉末と、下記一般式(2)
【化2】
(式中、R
7は、炭素数1~10の直鎖状または分岐鎖状の2価炭化水素基を表し、R
8およびR
9は、炭素数1~10の直鎖状または分岐鎖状の1価炭化水素基を表し、nは、0~2の整数を表し、R
10は、水素原子、または炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状の1価炭化水素基を表す。)
で示される重合性基を有するシランカップリング剤とを予め混合して、シランカップリング剤により処理された金属粉末を得た後、この処理された金属粉末、下記一般式(3)
【化3】
(式中、R
11、R
12およびR
13は、それぞれ独立して炭素数1~10の直鎖状または分岐鎖状の1価炭化水素基を表し、R
14は、水素原子、または炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状の1価炭化水素基を表す。)
で示される重合性モノマー、前記一般式(2)で示される重合性基を有するシランカップリング剤および/または下記一般式(4)
【化4】
(式中、R
15は、炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状の1価炭化水素基を表し、R
16は、水素原子、または炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状の1価炭化水素基を表す。)
で示される重合性モノマーをラジカル重合により反応させて、前記処理された金属表面の少なくとも一部を前記加水分解性樹脂で被覆する請求項1~3のいずれか1項記載の樹脂被覆金属粉末の製造方法。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項記載の樹脂被覆金属粉末およびエポキシ樹脂エマルションを含む水性塗料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂被覆金属粉末およびその製造方法ならびにこれを用いた水性塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属粉末を含む塗料は、被覆物に金属光沢や耐食性を付与できることから、広く用いられている。
例えば、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛等のイオン化傾向の大きい金属は、自身が犠牲アノードとして働くことによって、よりイオン化傾向の小さい金属に対する防食効果を示すことが知られている。
この防食効果を利用したものの一つに、亜鉛粉末、マグネシウム粉末、アルミニウム粉末等の金属粉末を高濃度で含有する塗料があり、橋梁、プラント、タンク等の陸上鋼構造物や海洋鋼構造物の防食塗料として広く使用されている。
【0003】
従来使用されている防食塗料は、ビヒクルとして使用される基体樹脂の種類により、有機系防食塗料と無機系防食塗料に大別される。
前者の有機系防食塗料では、主にエポキシ樹脂とアミン硬化剤がビヒクルとして使用され、後者の無機系防食塗料では、アルキルシリケート樹脂がビヒクルとして使用され、いずれも溶媒として有機溶剤が必須成分とされている。
【0004】
その一方で、近年の大気汚染や海洋汚染等の環境問題に鑑み、有機溶剤等のVOCを削減した水性塗料が開発されている(特許文献1,2参照)。
例えば、特許文献2で開示されている水性防食塗料は、エポキシ樹脂エマルションを含む主剤、亜鉛等の金属粉末を含む顔料およびアミン硬化剤の組み合わせからなる2液1粉型の塗料であり、施工の直前にこれら3つを混合して使用する。
この塗料は、非危険物であるため、火災に対する安全性が高く、また、臭気が少ないため、作業者や近隣環境への負荷が小さいという特徴も有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-130545号公報
【文献】特開2008-272666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、水性防食塗料では、塗膜から水分が抜け切る前に、亜鉛等の金属粉末と塗料中の水分が反応して水素ガスが発生する場合がある。この様な現象が起きた場合、塗膜に気泡が生じる結果、塗膜表面の平滑性が不十分となって外観が悪化してしまう。このため、亜鉛粉末等の金属粉末と水分との反応を一時的に防ぎ、一定時間経過後に金属粉末を活性化させる方法が求められている。
また、塗料調製時および塗布時の作業性を向上させる等の理由から、水溶液中での金属粉末の分散性向上も望まれている。
【0007】
本発明は、上記事情を鑑みなされたものであり、水溶液中で十分な分散性を有し、水性塗料中で水分と共存した状態であっても比較的長時間安定な樹脂被覆金属粉末およびその製造方法ならびにこれを用いた水性塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、所定の加水分解性樹脂で表面を被覆した金属粉末が、水分と共存する環境下でも金属と水分との反応を一時的に防ぐことができるうえ、被覆を構成する加水分解性樹脂が一定時間経過後に水分と反応し、少なくともその一部が分解して金属粉末を活性化できることから、水性塗料組成物の添加剤として有用であることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
1. 金属粉末の表面の少なくとも一部が加水分解性樹脂で被覆された樹脂被覆金属粉末であって、前記加水分解性樹脂が、下記一般式(1)で示される平均組成を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の数平均分子量500~100,000の樹脂であることを特徴とする樹脂被覆金属粉末、
【化1】
(式中、R
1は、炭素数1~10の直鎖状または分岐鎖状の1価炭化水素基を表し、炭化水素基の水素原子の一部または全部が、アルコキシアルキル基、アルコキシシリル基、ヒドロキシアルキル基、ポリオキシアルキレン基または末端アルキルポリオキシアルキレン基で置換されていてもよく、
R
3、R
4およびR
5は、それぞれ独立して炭素数1~10の直鎖状または分岐鎖状の1価炭化水素基を表し、
R
2およびR
6は、それぞれ独立して水素原子または炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状の1価炭化水素基を表し、
aおよびbは、0≦a<1、0<b≦1、a+b=1を満たす数を表す。)
2. 前記R
3、R
4およびR
5が、それぞれ独立して炭素数1~4の直鎖状または分岐鎖状の1価炭化水素基である1の樹脂被覆金属粉末、
3. 前記金属粉末が、亜鉛粉末である1または2の樹脂被覆金属粉末、
4. 金属粉末と、前記一般式(1)で示される加水分解性樹脂を含む溶液とを混合し、前記金属粉末の表面の少なくとも一部を前記加水分解性樹脂で被覆する1~3のいずれかの樹脂被覆金属粉末の製造方法、
5. 金属粉末と、下記一般式(2)
【化2】
(式中、R
7は、炭素数1~10の直鎖状または分岐鎖状の2価炭化水素基を表し、R
8およびR
9は、炭素数1~10の直鎖状または分岐鎖状の1価炭化水素基を表し、nは、0~2の整数を表し、R
10は、水素原子、または炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状の1価炭化水素基を表す。)
で示される重合性基を有するシランカップリング剤とを予め混合して、シランカップリング剤により処理された金属粉末を得た後、この処理された金属粉末、下記一般式(3)
【化3】
(式中、R
11、R
12およびR
13は、それぞれ独立して炭素数1~10の直鎖状または分岐鎖状の1価炭化水素基を表し、R
14は、水素原子、または炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状の1価炭化水素基を表す。)
で示される重合性モノマー、前記一般式(2)で示される重合性基を有するシランカップリング剤および/または下記一般式(4)
【化4】
(式中、R
15は、炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状の1価炭化水素基を表し、R
16は、水素原子、または炭素数1~10の直鎖状もしくは分岐鎖状の1価炭化水素基を表す。)
で示される重合性モノマーをラジカル重合により反応させて、前記処理された金属表面の少なくとも一部を前記加水分解性樹脂で被覆する請求項1~3のいずれか1項記載の樹脂被覆金属粉末の製造方法、
6. 1~3のいずれかの樹脂被覆金属粉末およびエポキシ樹脂エマルションを含む水性塗料組成物
を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の樹脂被覆金属粉末は、水分と反応して徐々に分解する所定の加水分解性樹脂によって表面の一部または全部が被覆されているため、水分に対する一時的な安定性を示す。すなわち、加水分解性樹脂被覆によって、水素ガスを発生させる金属粉末と水性塗料中の水分との反応を、塗膜が乾燥するまでの一定時間抑制することができるため平滑な塗装面が得られ、さらに、一定時間が経過すると、加水分解性樹脂の加水分解によって被覆されていた金属表面が露出してくるため、金属粉末が活性化される。
また、金属粉末表面が、トリアルキルシリル基等の嵩高い置換基を有する樹脂で修飾されているため、金属粉末同士の立体反発が大きくなり、水性塗料組成物中での分散性が向上する。
以上のような特性を有する樹脂被覆金属粉末は、塗料やインク、ペースト等に広く使用することができる。特に、ジンクリッチペイントや加飾塗料、磁性塗料、遮熱塗料、導電性インクおよびペースト等に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について具体的に説明する。
[1]樹脂被覆金属粉末
本発明に係る樹脂被覆金属粉末は、金属粉末の表面の少なくとも一部が下記一般式(1)で示される平均組成を有し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算の数平均分子量500~100,000の加水分解性樹脂で被覆されていることを特徴とする。
【0012】
【0013】
一般式(1)において、R1は、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~4の直鎖状または分岐鎖状の1価炭化水素基を表す。
R1の1価炭化水素基の具体例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-へプチル、n-オクチル、デシル基等の直鎖状アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ネオペンチル、テキシル、2-エチルヘキシル基等の分岐鎖状アルキル基が挙げられる。
【0014】
また、上記1価炭化水素基は、その水素原子の一部または全部が、アルコキシアルキル基、アルコキシシリル基、ヒドロキシアルキル基、ポリオキシアルキレン(ポリアルキレンオキシ)基または末端アルキルポリオキシアルキレン(ポリアルキレンオキシ)基で置換されていてもよい。
上記アルコキシアルキル基の総炭素数は特に限定されるものではないが、2~10が好ましく、2~6がより好ましく、2~4がより一層好ましい。
アルコキシアルキル基の具体例としては、メトキシメチル、エトキシメチル、2-メトキシエチル、2-エトキシエチル、3-メトキシプロピル基等の直鎖状アルコキシアルキル基;1-メトキシエチル、1-エトキシエチル、1-メトキシプロピル、2-メトキシプロピル基等の分岐鎖状アルコキシアルキル基等が挙げられる。
【0015】
アルコキシシリル基の総炭素数は特に限定されるものではないが、3~10が好ましく、3~8がより好ましく、3~6がより一層好ましい。
アルコキシシリル基の具体例としては、トリメトキシシリル、メチルジメトキシリル、ジメチルメトキシシリル、トリエトキシシリル、メチルジエトキシシリル、ジメチルエトキシシリル基等が挙げられる。
なお、アルコキシシリル基は、金属表面と化学的に結合することができる。具体的には、R1の水素原子の一部または全部がアルコキシシリル基で置換された場合、エステルシラン部位の一部または全てが、金属粉末表面と化学的に結合していてもよい。
【0016】
ヒドロキシアルキル基の炭素数は特に限定されるものではないが、1~10が好ましく、1~6がより好ましく、1~4がより一層好ましい。
ヒドロキシアルキル基の具体例としては、ヒドロキシメチル、2-ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシプロピル、4-ヒドロキシブチル基等の直鎖状ヒドロキシアルキル基;1-ヒドロキシエチル、1-ヒドロキシ-1-メチルエチル、1-ヒドロキシプロピル、2-ヒドロキシプロピル基等の分岐鎖状ヒドロキシアルキル基等が挙げられる。
【0017】
ポリオキシアルキレン基の総炭素数は特に限定されるものではないが、1~40が好ましく、1~30がより好ましく、1~20がより一層好ましい。
ポリオキシアルキレン基の具体例としては、ヒドロキシメトキシ、2-ヒドロキシエトキシ、(ヒドロキシメトキシ)メトキシ、2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ、((ヒドロキシメトキシ)メトキシ)メトキシ、2-(2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ)エトキシ基等が挙げられる。
【0018】
末端アルキルポリオキシアルキレン(ポリアルキレンオキシ)基の総炭素数は特に限定されるものではないが、2~40が好ましく、2~30がより好ましく、2~20がより一層好ましい。
末端アルキルポリオキシアルキレン基の具体例としては、メトキシメトキシ、2-エトキシエトキシ、(メトキシメトキシ)メトキシ、2-(2-エトキシエトキシ)エトキシ基等が挙げられる。
【0019】
これらの中でも、R1としては、原料調達性の観点から、メチル基、エチル基、トリメトキシシリルプロピル基およびトリメトキシシリルオクチル基が好ましい。
【0020】
R3、R4およびR5は、それぞれ独立して炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~4の直鎖状または分岐鎖状の1価炭化水素基を表す。
この1価炭化水素基の具体例は、上記R1で例示した基と同様のものが挙げられるが、ケイ素原子上の置換基であるR3、R4およびR5は、樹脂の加水分解性に寄与するため、適度な反応性を担保する観点から、メチル基、エチル基、イソプロピル基が好ましく、樹脂被覆金属粉末の水中や塗料組成物中での分散性をより高めることを考慮すると、イソプロピル基がより好ましい。
【0021】
R2およびR6は、水素原子、または炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状の1価炭化水素基を表す。
この1価炭化水素基の具体例としては、上記R1で例示した基と同様のものが挙げられるが、金属粉末に対する加水分解性樹脂の密着性の観点から、R2およびR6は、水素原子またはメチル基が好ましい。
【0022】
一般式(1)において、aおよびbは、0≦a<1、0<b≦1、a+b=1を満たす数を表すが、0.02<a<0.98、0.02<b<0.98、a+b=1を満たす数が好ましく、0.02≦a<0.50、0.50<b≦0.98、a+b=1を満たす数がより好ましく、0.02≦a<0.40、0.60<b≦0.98、a+b=1を満たす数がより一層好ましく、0.02≦a<0.30、0.70<b≦0.98、a+b=1を満たす数が特に好ましい。
加水分解性樹脂中に含まれるシリルエステルの割合は、その樹脂の加水分解性に寄与する。適度な反応性を担保する観点から、R3、R4およびR5が、直鎖状の1価炭化水素基である場合、aおよびbは、0.10<a<0.98、0.02<b<0.90、a+b=1を満たす数がより好ましく、0.10≦a<0.50、0.50<b≦0.90、a+b=1を満たす数がより好ましく、0.10≦a<0.40、0.60<b≦0.90、a+b=1を満たす数がより一層好ましく、0.10≦a<0.30、0.70<b≦0.90、a+b=1を満たす数が特に好ましい。
一方、R3、R4およびR5が、分岐鎖状の1価炭化水素基である場合、aおよびbは、0.05<a<0.98、0.02<b<0.95、a+b=1を満たす数がより好ましく、0.05≦a<0.50、0.50<b≦0.95、a+b=1を満たす数がより好ましく、0.05≦a<0.40、0.60<b≦0.95、a+b=1を満たす数がより一層好ましく、0.05≦a<0.30、0.70<b≦0.95、a+b=1を満たす数が特に好ましい。
【0023】
上記のとおり、一般式(1)で示される平均組成を有する加水分解性樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、「GPC」ともいう。)によるポリスチレン換算の数平均分子量は500~100,000であるが、好ましくは1,000~100,000、より好ましくは2,000~50,000、より一層好ましくは2,500~20,000である。GPC条件は、実施例記載のとおりである。
【0024】
上記加水分解性樹脂は、それぞれの構成単位を与えるアクリレートモノマーを用い、公知のラジカル重合により製造することができる。
上記aの単位を与えるアクリレートモノマーの具体例としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート等のアルキル基を有するアクリレートモノマー;メトキシメチルアクリレート、エトキシメチルアクリレート、メトキシメチルメタクリレート、エトキシメチルメタクリレート等のアルコキシアルキル基を有するアクリレートモノマー;3-トリメトキシシリルプロピルアクリレート、3-メチルジメトキシシリルプロピルアクリレート、3-ジメチルメトキシシリルプロピルアクリレート、3-トリエトキシシリルプロピルアクリレート、3-メチルジエトキシシリルプロピルアクリレート、3-ジメチルエトキシシリルプロピルアクリレート、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、3-メチルジメトキシシリルプロピルメタクリレート、3-ジメチルメトキシシリルプロピルメタクリレート、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレート、3-メチルジエトキシシリルプロピルメタクリレート、3-ジメチルエトキシシリルプロピルメタクリレート、3-トリメトキシシリルオクチルアクリレート、3-メチルジメトキシシリルオクチルアクリレート、3-ジメチルメトキシシリルオクチルアクリレート、3-トリエトキシシリルオクチルアクリレート、3-メチルジエトキシシリルオクチルアクリレート、3-ジメチルエトキシシリルオクチルアクリレート、3-トリメトキシシリルオクチルメタクリレート、3-メチルジメトキシシリルオクチルメタクリレート、3-ジメチルメトキシシリルオクチルメタクリレート、3-トリエトキシシリルオクチルメタクリレート、3-メチルジエトキシシリルオクチルメタクリレート、3-ジメチルエトキシシリルオクチルメタクリレート等のアルコキシシリル基を有するアクリレートモノマー;ヒドロキシメチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート等のヒドロキシアルキル基を有するアクリレートモノマー;ヒドロキシメトキシアクリレート、ヒドロキシメトキシメタクリレート等のポリオキシアルキレン基を有するアクリレートモノマー;メトキシメトキシアクリレート、メトキシメトキシメタクリレート等の末端アルキルポリオキシアルキレン基を有するアクリレートモノマー等が挙げられる。
【0025】
一方、上記bの単位を与えるアクリレートモノマーの具体例としては、トリメチルシリルアクリレート、トリメチルシリルメタクリレート、トリエチルシリルアクリレート、トリエチルシリルメタクリレート、トリイソプロピルシリルアクリレート、トリイソプロピルシリルメタクリレート、tert-ブチルジメチルシリルアクリレート、tert-ブチルジメチルシリルメタクリレート等のトリアルキルシリル基を有するアクリレートモノマー等が挙げられる。
【0026】
上記加水分解性樹脂で被覆される金属粉末は特に限定されるものではなく、例えば、マグネシウム粉末、アルミニウム粉末、亜鉛粉末、鉄粉末、ニッケル粉末、スズ粉末、鉛粉末、銅粉末等が挙げられる。これらの中でも、金属毒性の観点から、亜鉛粉末、マグネシウム粉末、アルミニウム粉末、鉄粉末が好ましく、亜鉛粉末がより好ましい。
金属粉末のレーザー回析・散乱法による平均粒子径は、特に限定されるものではないが、金属粉末の耐沈降性向上の観点から、1~12μmが好ましく、2~10μmがより好ましい。
【0027】
また、加水分解性樹脂で被覆された後の樹脂被覆金属粉末のレーザー回析・散乱法による平均粒子径は、1~20μmが好ましく、1~15μmがより好ましい。
なお、本発明における平均粒子径は、体積基準の平均粒子径であり、金属粉末または樹脂被覆金属粉末の分散液中での粒度分布に基づき、金属粉末または樹脂被覆金属粉末の全体積を100%として累積を求めたとき、その累積体積が50%となる点の粒径を意味する。
【0028】
[2]樹脂被覆金属粉末の製造方法
本発明の樹脂被覆金属粉末は、例えば、上記一般式(1)で示される加水分解性樹脂、金属粉末および必要に応じて用いられる溶剤を任意の順序で混合して製造することができる。
この場合、マグネチックスターラー、メカニカルスターラー、スプレードライヤー、自転公転ミキサー等の撹拌装置を使用することによって、効率良く材料を混合することができる。
【0029】
金属粉末に対する加水分解性樹脂の添加量は、特に限定されるものではないが、加水分解性樹脂によって被覆された樹脂被覆金属粉末の水に対する安定性を担保する観点から、0.5~10.0質量%が好ましく、1.0~5.0質量%がより好ましい。
【0030】
必要に応じて用いられる溶剤の具体例としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脂肪族または芳香族炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶剤;ジクロロメタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素系溶剤等が挙げられる。これらの溶剤は1種を単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。
これらの中でも、加水分解性樹脂の溶解性の観点から、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤が好ましい。
溶剤を用いる場合、その使用量に特に制限はないが、加水分解性樹脂の濃度が0.01~50質量%となる量が好ましく、0.1~30質量%となる量がより好ましい。
【0031】
各成分の混合後、溶剤を除去する等の目的で必要に応じて乾燥してもよい。
乾燥条件は任意であり、大気圧下または減圧下で、室温から加熱下で行うことができる。溶剤を用いる場合は、残存溶媒低減の観点から、減圧下で加熱乾燥させることが好ましい。
【0032】
さらに、各成分の混合後、必要に応じて乾燥を行った後、上述した平均粒子径に調製する等の目的で粉砕を行ってもよい。
粉砕は、従来公知の手法によって行うことができ、例えば、ハンマーミル、ピンミル、回転ミル、振動ミル、遊星ミル、ローラーミル、ジェットミル等の粉砕機を用いて行うことができる。
【0033】
また、本発明の樹脂被覆金属粉末は、金属粉末と、下記一般式(2)で示される重合性基を有するシランカップリング剤とを予め混合して、シランカップリング剤により処理された金属粉末を得た後、この処理された金属粉末、下記一般式(3)で示される重合性モノマー、下記一般式(2)で示される重合性基を有するシランカップリング剤および/または下記一般式(4)で示される重合性モノマーをラジカル重合により反応させて製造することによってもできる。
【0034】
【0035】
上記一般式(2)において、R7は、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~9、より好ましくは炭素数1~8の直鎖状または分岐鎖状の2価炭化水素基を表す。
R7の2価炭化水素基の具体例としては、メチレン、エチレン、トリメチレン、ブチレン、ペンチレン、へキシレン、オクチレン基等の直鎖状アルキレン基;プロピレン、イソブチレン、イソペンチレン基等の分岐状アルキレン基等が挙げられるが、原料調達性の観点から、直鎖状アルキレン基が好ましく、トリメチレン基、オクチレン基がより好ましい。
【0036】
上記一般式(2)において、R8およびR9は、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~5、より好ましくは炭素数1~3の直鎖状もしくは分岐鎖状の1価炭化水素基を表す。
この1価炭化水素基の具体例としては、上記R1で例示した置換基と同様のものが挙げられるが、金属表面とシランカップリング剤の反応性を担保する観点から、メチル基、エチル基が好ましい。
【0037】
上記一般式(2)において、R10は、水素原子、または炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状の1価炭化水素基を表す。
この1価炭化水素基の具体例としては、上記R1で例示した置換基と同様のものが挙げられるが、重合性モノマーの反応性を担保する観点から、R10は、水素原子またはメチル基が好ましい。
【0038】
上記一般式(2)の重合性基を有するシランカップリング剤の具体例としては、3-トリメトキシシリルプロピルアクリレート、3-メチルジメトキシシリルプロピルアクリレート、3-ジメチルメトキシシリルプロピルアクリレート、3-トリエトキシシリルプロピルアクリレート、3-メチルジエトキシシリルプロピルアクリレート、3-ジメチルエトキシシリルプロピルアクリレート、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、3-メチルジメトキシシリルプロピルメタクリレート、3-ジメチルメトキシシリルプロピルメタクリレート、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレート、3-メチルジエトキシシリルプロピルメタクリレート、3-ジメチルエトキシシリルプロピルメタクリレート、3-トリメトキシシリルオクチルアクリレート、3-メチルジメトキシシリルオクチルアクリレート、3-ジメチルメトキシシリルオクチルアクリレート、3-トリエトキシシリルオクチルアクリレート、3-メチルジエトキシシリルオクチルアクリレート、3-ジメチルエトキシシリルオクチルアクリレート、3-トリメトキシシリルオクチルメタクリレート、3-メチルジメトキシシリルオクチルメタクリレート、3-ジメチルメトキシシリルオクチルメタクリレート、3-トリエトキシシリルオクチルメタクリレート、3-メチルジエトキシシリルオクチルメタクリレート、3-ジメチルエトキシシリルオクチルメタクリレート等が挙げられる。
【0039】
重合性基を有するシランカップリング剤の添加量は、特に限定されるものではないが、金属粉末表面を十分に処理するという観点から、金属粉末に対し、0.1~5.0質量%が好ましく、0.5~2.0質量%がより好ましい。
【0040】
上記一般式(3)において、R11、R12およびR13は、それぞれ独立して炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~4の直鎖状または分岐鎖状の1価炭化水素基を表す。
R11、R12およびR13の1価炭化水素基の具体例は、上記R1で例示した置換基と同様のものが挙げられるが、ケイ素原子上の置換基であるR11、R12およびR13は、樹脂の加水分解性に寄与するため、適度な反応性を担保する観点から、メチル基、エチル基、イソプロピル基が好ましく、樹脂被覆金属粉末の水中や塗料組成物中での分散性をより高めることを考慮すると、イソプロピル基がより好ましい。
【0041】
上記一般式(3)において、R14は、水素原子、または炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状の1価炭化水素基を表す。
R14の1価炭化水素基の具体例としては、上記R1で例示した基と同様のものが挙げられるが、重合性モノマーの反応性を担保する観点から、R14は、水素原子またはメチル基が好ましい。
【0042】
上記一般式(3)の重合性モノマーの具体例としては、トリメチルシリルアクリレート、トリメチルシリルメタクリレート、トリエチルシリルアクリレート、トリエチルシリルメタクリレート、トリイソプロピルシリルアクリレート、トリイソプロピルシリルメタクリレート、tert-ブチルジメチルシリルアクリレート、tert-ブチルジメチルシリルメタクリレート等のトリアルキルシリル基を有するアクリレートモノマー等が挙げられる。
【0043】
上記一般式(4)において、R15は、炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~4の直鎖状または分岐鎖状の1価炭化水素基を表す。
R15の1価炭化水素基の具体例としては、上記R1で例示した置換基と同様のものが挙げられるが、原料調達性の観点から、メチル基、エチル基、ブチル基、オクチル基が好ましい。
【0044】
上記一般式(4)において、R16は、水素原子または炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6、より好ましくは炭素数1~4の直鎖状もしくは分岐鎖状の1価炭化水素基を表す。
R15の1価炭化水素基の具体例としては、上記R1で例示した置換基と同様のものが挙げられるが、重合性モノマーの反応性を担保する観点から、水素原子またはメチル基が好ましい。
【0045】
上記一般式(4)の重合性モノマーの具体例としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルアクリレート、n-ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート等が挙げられる。
【0046】
金属粉末と、上記一般式(2)で示される重合性基を有するシランカップリング剤とを混合する手法は任意であり、公知の各種手法から適宜選択できる。
混合に際し、マグネチックスターラー、メカニカルスターラー、スプレードライヤー、自転公転ミキサー等の撹拌装置を使用することによって、効率良く材料を混合することができる。
シランカップリング剤による処理は、室温で行っても加熱下で行ってもよいが、室温で混合後、最終的に加熱することが好ましい。
加熱温度は、例えば、50~120℃程度が好ましい。
【0047】
シランカップリング剤により処理された金属粉末と各種重合性モノマーとのラジカル重合法も任意であり、ラジカル重合開始剤を用いた公知の手法を採用できる。
この場合、式(2)および/または式(4)のモノマーと、式(3)のモノマーとの使用比率は、上記式(1)のa,bを満たす範囲である。
ラジカル重合開始剤も公知のものから適宜選択することができるが、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-ジ(2-ヒドロキシエチル)アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物が好ましい。
反応温度は、通常、60~120℃程度、好ましくは70~100℃程度である。
反応時間は、通常、30分~10時間程度、好ましくは1~5時間程度である。
【0048】
上記重合反応は、無溶媒でも進行するが、溶媒を用いることもできる。
使用できる溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、トルエン、キシレン、メシチレン等の炭化水素系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等の非プロトン性極性溶媒、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒等が挙げられ、これらの溶媒は1種を単独で使用しても、2種以上を混合して使用してもよい。上記溶媒の中でも、特にトルエン、キシレン、メシチレン、テトラヒドロフランが好ましい。
【0049】
反応終了後は、室温まで冷却後、濾過、洗浄、乾燥等の公知の後処理を施して樹脂被覆金属粉末を得ることができる。
【0050】
[3]水性塗料組成物
本発明の水性塗料組成物は、上述した樹脂被覆金属粉末およびエポキシ樹脂エマルションを含む。
エポキシ樹脂エマルションは、エポキシ樹脂、乳化剤および親水性媒体を含み、混合後における可使時間の長期化、塗膜の防錆性向上の観点から、乳化剤および親水性媒体を用いて、エポキシ樹脂を乳化分散したものが好ましい。
【0051】
エポキシ樹脂は、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有する従来公知の樹脂から適宜選択して用いることができ、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;脂環式エポキシ樹脂;ポリグリコール型エポキシ樹脂等を用いることができる。これらの中でも、形成塗膜の防錆性、付着性等の観点から、ビスフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。
【0052】
このエポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されるものではないが、混合後における可使時間の長期化、塗膜の防錆性向上の観点から、固形分当りの換算で、50~5,000g/eqが好ましく、75~2,500g/eqがより好ましい。
また、エポキシ樹脂のGPCによるポリスチレン換算の数平均分子量は、同様の観点から、200~20,000が好ましく、300~10,000がより好ましい。
【0053】
乳化剤は、アニオン性またはノニオン性のいずれの乳化剤であってもよいが、混合後における可使時間の長期化、塗膜の防錆性向上の観点から、ノニオン性が好ましい。
乳化剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸アンモニウム等のアニオン性ポリオキシアルキレン化合物;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のノニオン性ポリオキシアルキレン化合物等が挙げられる。
【0054】
親水性媒体の具体例としては、水、炭素数1~5のアルコール、または水と炭素数1~5のアルコールとの混合物等が挙げられるが、環境負荷の観点から、水が好ましい。
【0055】
エポキシ樹脂エマルションにおける当該エポキシ樹脂、乳化剤および親水性媒体の総量100質量%中において、混合後における可使時間の長期化、塗膜の防錆性向上等を考慮すると、エポキシ樹脂の含有量は、20~80質量%が好ましく、30~60質量%がより好ましく、乳化剤の含有量は、1~50質量%が好ましく、1~30質量%がより好ましく、親水性媒体の含有量は、20~80質量%が好ましく、30~60質量%がより好ましい。
【0056】
なお、エポキシ樹脂エマルションは、市販品として入手することができ、そのような市販品としては、アデカレジンEM101-50((株)ADEKA製)、jER(登録商標)シリーズW2821R70(三菱ケミカル(株))等が挙げられる。
【0057】
本発明の水性塗料組成物は、樹脂被覆金属粉末とエポキシ樹脂エマルションとを任意の手法で混合して調製することができる。
水性塗料組成物中におけるエポキシ樹脂の含有量は、混合後における可使時間の長期化、塗膜の防錆性向上の観点から、樹脂被覆金属粉末100質量部に対し、5~40質量部が好ましく、10~25質量部がより好ましい。
水性塗料組成物中における樹脂被覆金属粉末の含有量(エポキシ樹脂エマルションと樹脂被覆金属粉末の合計固形分質量に対する樹脂被覆金属粉末の固形分質量)は、塗膜の防錆性および強度の向上の観点から、70~95質量%が好ましく、75~90質量%がより好ましい。
【0058】
なお、本発明の水性塗料組成物は、顔料、硬化剤、レべリング剤、揺変剤、分散剤等のその他の添加剤を含んでいてもよい。
顔料の具体例としては、シリカ、炭酸カルシウム、ホワイトカーボン等が挙げられる。
硬化剤の具体例としては、エチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、フジキュアーFXI-919((株)T&K TOKA製)等が挙げられる。
レべリング剤の具体例としては、KP-323、KP-341、KP-104(以上、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
揺変剤の具体例としては、チクゾールK-130B、チクゾールK-502(以上、共栄社化学(株)製)等が挙げられる。
分散剤の具体例としては、フローレンAF-1000、フローレンD-90(以上、共栄社化学(株)製)等が挙げられる。
これらは、それぞれ単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【実施例】
【0059】
以下、合成例および実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0060】
(1)加水分解性樹脂の合成
[合成例1]トリイソプロピルシリルアクリレート/メチルメタクリレート=60/40(質量比)共重合樹脂の合成
撹拌機、還流器、滴下ロートおよび温度計を備えた四つ口フラスコに、その内部を窒素で置換し、還流冷却器上部の開放端に窒素ガスを通気させて外気が混入しないようにしながら、キシレン78gを仕込み、90℃にて撹拌した。そこに、トリイソプロピルシリルアクリレート46.8g(0.20mol)、メチルメタクリレート31.2g(0.31mol)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(V-59、富士フイルム和光純薬(株)製、以下同様)0.8g(4.16mmol)の混合物を滴下し、90℃にて1時間撹拌した。
その後、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.8g(4.16mmol)を追加し、さらに90℃にて1時間撹拌して50質量%キシレン溶液の反応物157.6gを得た(以下、「樹脂1」ともいう)。下記条件によりGPC分析を行ったところ、樹脂1の数平均分子量(Mn)は7,606であった。
【0061】
GPC条件
装置:HLC-8420GPC
カラム:Shodex GPC KF-402 HQ ×2
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:0.35mL/min
検出器:RI
カラム恒温槽温度:40℃
標準物質:ポリスチレン
【0062】
[合成例2]トリイソプロピルシリルアクリレート/メチルメタクリレート=40/60(質量比)共重合樹脂の合成
トリイソプロピルシリルアクリレートの使用量を31.2g(0.14mol)に、メチルメタクリレートの使用量を46.8g(0.47mol)に変更した以外は、合成例1と同様に反応を行い、50質量%キシレン溶液の反応物157.6gを得た(以下、「樹脂2」ともいう)。
上記条件によりGPC分析を行ったところ、樹脂2の数平均分子量(Mn)は6,105であった。
【0063】
[合成例3]トリイソプロピルシリルアクリレート/メチルメタクリレート=20/80(質量比)共重合樹脂の合成
トリイソプロピルシリルアクリレートの使用量を15.6g(0.07mol)に、メチルメタクリレートの使用量を62.4g(0.62mol)に変更した以外は、合成例1と同様に反応を行い、50質量%キシレン溶液の反応物157.6gを得た(以下、「樹脂3」ともいう)。
上記条件によりGPC分析を行ったところ、樹脂3の数平均分子量(Mn)は8,819であった。
【0064】
[合成例4]トリイソプロピルシリルメタクリレート/メチルメタクリレート=60/40(質量比)共重合樹脂の合成
撹拌機、還流器、滴下ロートおよび温度計を備えた四つ口フラスコに、その内部を窒素で置換し、還流冷却器上部の開放端に窒素ガスを通気させて外気が混入しないようにしながら、キシレン78gを仕込み、90℃にて撹拌した。そこに、トリイソプロピルシリルメタクリレート46.8g(0.19mol)、メチルメタクリレート31.2g(0.31mol)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.8g(4.16mmol)の混合物を滴下し、90℃にて1時間撹拌した。
その後、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.8g(4.16mmol)を追加し、さらに90℃にて1時間撹拌して50質量%キシレン溶液の反応物157.6gを得た(以下、「樹脂4」ともいう)。
上記条件によりGPC分析を行ったところ、樹脂4の数平均分子量(Mn)は4,762であった。
【0065】
[合成例5]トリイソプロピルシリルメタクリレート/メチルメタクリレート=40/60(質量比)共重合樹脂の合成
トリイソプロピルシリルメタクリレートの使用量を31.2g(0.13mol)に、メチルメタクリレートの使用量を46.8g(0.47mol)に変更した以外は、合成例4と同様に反応を行い、50質量%キシレン溶液の反応物157.6gを得た(以下、「樹脂5」ともいう)。
上記条件によりGPC分析を行ったところ、樹脂5の数平均分子量(Mn)は5,431であった。
【0066】
[合成例6]トリイソプロピルシリルアクリレート/メチルアクリレート=40/60(質量比)共重合樹脂の合成
メチルメタクリレートをメチルアクリレートに変更した以外は、合成例2と同様に反応を行い、50質量%キシレン溶液の反応物157.6gを得た(以下、「樹脂6」ともいう)。
上記条件によりGPC分析を行ったところ、樹脂6の数平均分子量(Mn)は3,489であった。
【0067】
[合成例7]トリイソプロピルシリルメタクリレート/メチルアクリレート=60/40(質量比)共重合樹脂の合成
メチルメタクリレートをメチルアクリレートに変更した以外は、合成例4と同様に反応を行い、50質量%キシレン溶液の反応物157.6gを得た(以下、「樹脂7」ともいう)。
上記条件によりGPC分析を行ったところ、樹脂7の数平均分子量(Mn)は4,985であった。
【0068】
[合成例8]トリイソプロピルシリルメタクリレート/メチルアクリレート=40/60(質量比)共重合樹脂の合成
メチルメタクリレートをメチルアクリレートに変更した以外は、合成例5と同様に反応を行い、50質量%キシレン溶液の反応物157.6gを得た(以下、「樹脂8」ともいう)。
上記条件によりGPC分析を行ったところ、樹脂8の数平均分子量(Mn)は5,035であった。
【0069】
(2)樹脂被覆亜鉛粉末の製造および評価
[実施例1-1]
20mLスクリュー管に、合成例1で得られた(樹脂1)120mgとジンクリッチペイント用亜鉛粉末(平均粒子径5.0μm)6gを加えた。自転公転ミキサー(あわとり練太郎、ARE-310、(株)シンキー製)を用いて60分間撹拌した後、得られた混合物を20Pa、90℃の条件にて2時間加熱乾燥させ、亜鉛と加水分解性樹脂の混合物からキシレンを留去した。
塊状の加水分解性樹脂によって被覆された亜鉛を強力小型粉砕機(Force Mill、大阪ケミカル(株)製)で粉砕し、平均粒子径5μmの樹脂被覆亜鉛粉末1を得た。なお、平均粒子径はレーザー回析・散乱法により測定した。
【0070】
[実施例1-2]
樹脂1の使用量を600mgとした以外は、実施例1-1と同様にして平均粒子径10μmの樹脂被覆亜鉛粉末2を得た。
【0071】
[実施例1-3]
樹脂1を樹脂2に変更した以外は、実施例1-1と同様にして平均粒子径5μmの樹脂被覆亜鉛粉末3を得た。
【0072】
[実施例1-4]
樹脂2の使用量を600mgとした以外は、実施例1-3と同様にして平均粒子径10μmの樹脂被覆亜鉛粉末4を得た。
【0073】
[実施例1-5]
樹脂1を樹脂3に変更した以外は、実施例1-1と同様にして平均粒子径5μmの樹脂被覆亜鉛粉末5を得た。
【0074】
[実施例1-6]
樹脂1を樹脂4に変更した以外は、実施例1-1と同様にして平均粒子径5μmの樹脂被覆亜鉛粉末6を得た。
【0075】
[実施例1-7]
樹脂4の使用量を600mgとした以外は、実施例1-6と同様にして平均粒子径10μmの樹脂被覆亜鉛粉末7を得た。
【0076】
[実施例1-8]
樹脂1を樹脂5に変更した以外は実施例1-1と同様にして平均粒子径5μmの樹脂被覆亜鉛粉末8を得た。
【0077】
[実施例1-9]
樹脂5の使用量を600mgとした以外は、実施例1-8と同様にして平均粒子径10μmの樹脂被覆亜鉛粉末9を得た。
【0078】
[実施例1-10]
樹脂1を樹脂6に変更した以外は、実施例1-1と同様にして平均粒子径5μmの樹脂被覆亜鉛粉末10を得た。
【0079】
[実施例1-11]
樹脂6の使用量を600mgとした以外は、実施例1-10と同様にして平均粒子径10μmの樹脂被覆亜鉛粉末11を得た。
【0080】
[実施例1-12]
樹脂1を樹脂7に変更した以外は、実施例1-1と同様にして平均粒子径5μmの樹脂被覆亜鉛粉末12を得た。
【0081】
[実施例1-13]
樹脂7の使用量を600mgとした以外は、実施例1-12と同様にして平均粒子径10μmの樹脂被覆亜鉛粉末13を得た。
【0082】
[実施例1-14]
樹脂1を樹脂8に変更した以外は、実施例1-1と同様にして平均粒子径5μmの樹脂被覆亜鉛粉末14を得た。
【0083】
[実施例1-15]
樹脂8の使用量を679mgとした以外は、実施例1-14と同様にして平均粒子径10μmの樹脂被覆亜鉛粉末15を得た。
【0084】
上記樹脂被覆亜鉛粉末について、水に対する安定性および分散性を下記手法によって評価した。なお、対照として、未処理のジンクリッチペイント用亜鉛粉末についても同様の評価を行った。結果を表1に併せて示す。
[1]安定性評価
樹脂被覆亜鉛粉末1~15または未処理のジンクリッチペイント用亜鉛粉末3g、純水3g、アミン硬化剤としてトリエチレンテトラミン300mgを試験管に加え、均一になるまで室温で撹拌した。均一になった後に撹拌を止めて、試験管を50℃のオイルバスに浸け、気体が発生するまでの時間を計測した。
[2]分散性評価
樹脂被覆亜鉛粉末1~15または未処理のジンクリッチペイント用亜鉛粉末3g、純水3g、アミン硬化剤としてトリエチレンテトラミン300mgを試験管に加え、均一になるまで室温で撹拌した。続いて、試験管を50℃のオイルバスに浸け、1時間撹拌した後の亜鉛粉末の分散性を評価した。この分散性評価において、「良好」とは、亜鉛粉末が凝集していない様子を表し、「不良」とは、亜鉛粉末が凝集している様子を表す。
【0085】
【0086】
[実施例1-16]
30mLスクリュー管に、ジンクリッチペイント用亜鉛粉末(平均粒子径4.0μm)30g、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレート300mgを加えた。自転公転ミキサー(あわとり練太郎、ARE-310、(株)シンキー製)を用いて60分間撹拌した後、25℃で1時間静置し、100℃で1時間加熱することによって、シランカップリング剤により処理された亜鉛粉末を得た。
続いて、撹拌機、還流器、滴下ロートおよび温度計を備えた四つ口フラスコに、その内部を窒素で置換し、還流冷却器上部の開放端に窒素ガスを通気させて外気が混入しないようにしながら、上記処理済の亜鉛粉末30g、キシレン27gを仕込み、90℃にて撹拌した。そこに、トリイソプロピルシリルアクリレート2.4g(10.5mmol)、メチルメタクリレート0.6g(6.0mmol)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(V-59、富士フイルム和光純薬(株)製、以下同様)30mg(0.2mmol)の混合物を滴下し、90℃にて1時間撹拌した。
その後、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)30mg(0.2mmol)を追加し、さらに90℃にて1時間撹拌した。反応液を室温まで冷却し、濾過、キシレン洗浄(30mL×2)、乾燥を順次行うことにより、平均粒子径4.0μmの樹脂被覆亜鉛粉末16を得た。
【0087】
[実施例1-17]
トリイソプロピルシリルアクリレートの使用量を0.6g(2.6mmol)、メチルメタクリレートの使用量を2.4g(24.0mmol)とした以外は、実施例1-16と同様にして平均粒子径4.0μmの樹脂被覆亜鉛粉末17を得た。
【0088】
[実施例1-18]
3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートを8-トリメトキシシリルオクチルメタクリレートとした以外は、実施例1-16と同様にして平均粒子径4.0μmの樹脂被覆亜鉛粉末18を得た。
【0089】
[実施例1-19]
3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートの使用量を600mgとした以外は、実施例1-16と同様にして平均粒子径4.0μmの樹脂被覆亜鉛粉末19を得た。
【0090】
[実施例1-20]
トリイソプロピルシリルアクリレートの使用量を3.0g(13.1mmol)とし、メチルメタクリレートを用いなかった以外は、実施例1-16と同様にして平均粒子径4.0μmの樹脂被覆亜鉛粉末20を得た。
【0091】
上記樹脂被覆亜鉛粉末16~20について、水に対する安定性および分散性を下記手法によって評価した。なお、対照として、未処理のジンクリッチペイント用亜鉛粉末についても同様の評価を行い、アミン硬化剤は用いなかった。結果を表2に併せて示す。
[3]安定性評価
樹脂被覆亜鉛粉末16~20または未処理のジンクリッチペイント用亜鉛粉末25g、純水50gをナスフラスコに加え、均一になるまで室温で撹拌した。均一になった後に撹拌を止め、ナスフラスコを40℃の水浴に浸けた。水上置換法にて48時間で発生する水素量を測定した。
[4]分散性評価
樹脂被覆亜鉛粉末16~20または未処理のジンクリッチペイント用亜鉛粉末25g、純水50gをナスフラスコに加え、均一になるまで室温で撹拌した。均一になった後に撹拌を止め、ナスフラスコを40℃の水浴に浸けて、48時間後の亜鉛粉末の分散性を評価した。この分散性評価において、「良好」とは、亜鉛粉末が凝集していない様子を表し、「不良」とは、亜鉛粉末が凝集している様子を表す。
【0092】
【0093】
表1および表2に示されるように、加水分解性樹脂で被覆された樹脂被覆亜鉛粉末は、水に対する安定性、水溶液中での分散性が、未処理のジンクリッチペイント用亜鉛粉末に比べて、有意に高いことがわかる。また、一定時間が経過すると、加水分解性樹脂が亜鉛粉末表面から剥がれ、亜鉛粉末が活性化していることもわかった。
【0094】
(3)水性塗料組成物の製造および評価
[実施例2-1]
エポキシ樹脂エマルション(アデカレジンEM101-50、(株)ADEKA製)24.4質量部、実施例1-2で得られた樹脂被覆亜鉛粉末2 100質量部を混合し、均一になるまで撹拌して、水性塗料組成物を得た。
基材として表面を磨いて脱脂したSPCC-SBの鋼板(寸法:100mm×50mm×0.3mm)に、上記で調製した水性塗料組成物を塗工量400g/m2で刷毛にて塗装した後、室温で硬化乾燥させた。塗膜の乾燥中に気泡は生じなかった。得られた塗膜は優れた平滑性を有していた。
上記塗膜を試験体として用い、JIS K5600-7-1の耐中性塩水噴霧性に準じて、上記試験体にスクラッチカット部を付けた上で塩水噴霧中に500時間静置させた後、試験体に生じたさび、および膨れの発生程度を評価したところ、試験体に赤錆、膨れ等の異常が無いことが確認された。
【0095】
[実施例2-2]
エポキシ樹脂エマルション(アデカレジンEM101-50、(株)ADEKA製)24.4質量部、実施例1-16で得られた樹脂被覆亜鉛粉末16 100質量部を混合し、均一になるまで撹拌して、水性塗料組成物を得た。
基材として表面を磨いて脱脂したSPCC-SBの鋼板(寸法:100mm×50mm×0.3mm)に、上記で調製した水性塗料組成物を塗工量400g/m2で刷毛にて塗装した後、室温で硬化乾燥させた。塗膜の乾燥中に気泡は生じなかった。得られた塗膜は優れた平滑性を有していた。
上記塗膜を試験体として用い、JIS K5600-7-1の耐中性塩水噴霧性に準じて、上記試験体にスクラッチカット部を付けた上で塩水噴霧中に500時間静置させた後、試験体に生じたさび、および膨れの発生程度を評価したところ、試験体に赤錆、膨れ等の異常が無いことが確認された。