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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】検査治具、及び検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/073 20060101AFI20231024BHJP
【FI】
G01R1/073 E
G01R1/073 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020530021
(86)(22)【出願日】2019-05-27
(86)【国際出願番号】 JP2019020940
(87)【国際公開番号】W WO2020012799
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2018133737
(32)【優先日】2018-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】392019709
【氏名又は名称】ニデックアドバンステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】加藤 穣
【審査官】島▲崎▼ 純一
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第00866337(EP,A2)
【文献】実開昭55-141970(JP,U)
【文献】実開昭63-146762(JP,U)
【文献】特開2008-196905(JP,A)
【文献】特開2009-276097(JP,A)
【文献】特開2009-300391(JP,A)
【文献】特表2018-513389(JP,A)
【文献】特表2018-504164(JP,A)
【文献】特開2018-059797(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0231249(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 1/073
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の検査点に導通接続される一端部と、当該一端部に連なる胴体部と、当該胴体部に連なる他端部とを有する略棒状のプローブと、
当該プローブを支持する支持部材とを備え、
前記プローブは、前記支持部材に設けられた当接部に係脱可能に係止される係止部を有し、
前記支持部材は、前記プローブが挿通されて支持される支持孔が形成された第一支持板と第二支持板とを有し、
前記第一支持板は、前記プローブの一端部を支持し、
前記第二支持板は、前記プローブの他端部を支持し、
前記プローブは、前記第一支持板の対向面及び前記第二支持板の背面の垂直方向に延びる垂線に対して所定角度で傾斜した傾斜線に沿って設置され、
当該係止部は、前記支持孔の周壁からなる前記当接部に当接することにより係止され、かつ前記支持孔内に没入することにより、前記当接部との係合が解除さるように構成され、前記プローブを使用した検査時に、当該プローブの軸方向に一定値以上の圧縮荷重が作用した際に、前記当接部から離脱するように構成されている検査治具。
【請求項2】
前記支持部材は、前記支持孔が形成されて前記プローブの胴体部を支持する第三支持板とを有し、
前記当接部は、前記第三支持板に形成された第三支持孔の周壁からなっている請求項記載の検査治具。
【請求項3】
前記係止部は、前記プローブの一部を当該プローブの径方向に突出させてなる突部により構成されている請求項1又は2記載の検査治具。
【請求項4】
前記突部は、前記プローブの径方向に延びる係止面と、当該係止面の先端から前記プローブの一端部側に向けて延びる先窄まりの傾斜面とを有する三角形状に形成され、
前記係止面が前記当接部に当接することにより係脱可能に係止されている請求項記載の検査治具。
【請求項5】
前記プローブは、径方向寸法が大きい大径部と、径方向寸法が小さい小径部とを有し、
前記係止部は、前記大径部と小径部との間に形成された段部からなっている請求項1又は2記載の検査治具。
【請求項6】
前記大径部は、前記胴体部の一部に形成された膨出部からなっている請求項記載の検査治具。
【請求項7】
前記大径部は、前記胴体部の軸方向中間部から前記一端部にかけて連続して形成され、
前記小径部は、前記胴体部の軸方向中間部から前記他端部にかけて連続して形成されている請求項記載の検査治具。
【請求項8】
前記プローブは、その軸方向の一部を径方向に凹入させた凹入部を有し、
前記係止部は、前記凹入部と前記プローブの周面との間に形成された段部からなっている請求項1又は2記載の検査治具。
【請求項9】
前記プローブは、その軸方向の一部を径方向に屈曲させた屈曲部を有し、
前記係止部は、前記屈曲部からなっている請求項1又は2記載の検査治具。
【請求項10】
請求項1~のいずれか1項に記載の検査治具を備え、当該検査治具に支持された前記プローブを、検査対象物に接触させることによって、当該検査対象物を検査する検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の検査に用いられる検査治具、及び検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回路や配線等が形成された半導体チップや基板等の検査対象物の検査点に、複数の針状のプローブを当接させて、そのプローブ間に電気信号を付与したり、プローブ間の電圧を測定したりすることによって、検査対象物を検査することが行われている。このように複数のプローブを検査点に当接させた際に、プローブが撓んで隣接するプローブに接触するおそれがある。
【0003】
そこで、針先部と、該針先部に続く針中間部と、該針中間部に続く針後部とを含み、針先部、針中間部及び針後部はそれぞれ板状領域を有し、針先部及び針後部の板状領域の幅方向が針先端側又は針後端側から見て針中間部の板状領域の幅方向に対しほぼ90度の角度に設定されたプローブを有する検査治具(プローブユニット)が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
特許文献1には、針先部及び針後部の板状領域をスリットに差し込むことによって各プローブの向きを規定し、針中間部の板状領域によってプローブの撓み方向を制御すること、オーバードライブの発生時に隣り合うプローブを同じ向きに弾性変形させることによって、プローブを狭ピッチで配置可能とすること、板状領域を弾性変形させることによって、針先を電極表面に沿って滑らせ、検査対象物の電極表面に形成された酸化膜を除去可能とすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-74779号公報
【発明の概要】
【0006】
しかしながら、上述の特許文献1に記載された検査治具のように、プローブの針先を電極表面に沿って滑らせたとしても、検査対象物の電極表面に対するプローブの圧接力が不十分であると電極表面の酸化膜を適正に除去することは困難である。このため、電極に対するプローブの圧接力を十分に確保する必要がある。しかしながら、この圧接力が過度に高くなると、検査対象物に悪影響が与えられる可能性があった。
【0007】
本発明の目的は、検査対象物の電極に対するプローブの圧接力が過度に高くなるのを抑制しつつ、電極表面の酸化膜を適正に除去することが可能な検査治具、及び検査装置を提供することである。
【0008】
本発明に係る検査治具は、検査対象物の検査点に導通接続される一端部と、当該一端部に連なる胴体部と、当該胴体部に連なる他端部とを有する略棒状のプローブと、当該プローブを支持する支持部材とを備え、前記プローブは、前記支持部材に設けられた当接部に係脱可能に係止される係止部を有し、当該係止部は、前記プローブを使用した検査時に、当該プローブの軸方向に一定値以上の圧縮荷重が作用した際に、前記当接部から離脱するように構成されている。
【0009】
また、本発明に係る検査装置は、上述の検査治具を備え、当該検査治具に支持された前記プローブを、検査対象物に接触させることによって、当該検査対象物を検査する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第一実施形態に係る検査治具を備えた半導体検査装置の構成を概略的に示す概念図である。
図2】検査治具に設けられたプローブの一例を示す側面図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4】検査装置に設けられた検査部の構成を示す断面図である。
図5】検査部に設けられた検査治具の構成を示す断面図である。
図6】プローブを使用した検査の初期段階を示す断面図である。
図7】プローブを使用した検査の後期段階を示す断面図である。
図8】プローブの圧縮変形量と圧縮応力の関係を示すグラフである。
図9】本発明の第二実施形態に係る検査治具の構成を示す断面図である。
図10】本発明の第二実施形態に係る検査治具の変形例を示す断面図ある。
図11】本発明の第三実施形態に係る検査治具の構成を示す断面図である。
図12】第三実施形態における検査の後期段階を示す断面図である。
図13】本発明の第四実施形態に係る検査治具の構成を示す断面図である。
図14】検査治具の第四実施形態における検査の後期段階を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
(第一実施形態)
【0012】
図1は、本発明の第一実施形態に係る検査治具3を備えた半導体検査装置1の構成を概略的に示す概念図である。図1に示す半導体検査装置1は本発明に係る検査装置の一例に相当し、検査対象物の一例である半導体ウェハ100に形成された回路を検査するものである。
【0013】
半導体ウェハ100には、例えばシリコンなどの半導体基板に、複数の半導体チップに対応する回路が形成されている。なお、検査対象物は、半導体チップ、CSP(Chip size package)、半導体素子(IC:Integrated Circuit)等の電子部品であってもよく、その他電気的な検査を行う対象となるものであればよい。
【0014】
また、検査装置は半導体検査装置1に限られず、例えば基板を検査する基板検査装置であってもよい。検査対象物となる基板は、例えばプリント配線基板、ガラスエポキシ基板、フレキシブル基板、セラミック多層配線基板、半導体パッケージ用のパッケージ基板、インターポーザ基板、フィルムキャリア等の基板であってもよく、液晶ディスプレイ、EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ、タッチパネルディスプレイ等のディスプレイ用の電極板や、タッチパネル用等の電極板であってもよく、種々の基板であってよい。
【0015】
図1に示す半導体検査装置1は、検査部4と、試料台6と、検査処理部8とを備えている。試料台6の上面には、半導体ウェハ100が所定の位置に載置されて固定される載置部6aが設けられている。
【0016】
載置部6aは、例えば昇降可能に支持され、試料台6内に収容された半導体ウェハ100を検査位置に上昇させ、検査済の半導体ウェハ100を試料台6内に格納し得るように構成されている。また、載置部6aは、例えば半導体ウェハ100を回転させて、オリエンテーション・フラットを所定の方向に向けることが可能な回転機構を有している。また、半導体検査装置1は、半導体ウェハ100を載置部6aに載置したり、検査済の半導体ウェハ100を載置部6aから搬出したりすることが可能な図略のロボットアーム等からなる搬送機構を備えている。
【0017】
検査部4は、検査治具3、第一ピッチ変換ブロック35、第二ピッチ変換ブロック36、及び接続プレート37を備えている。検査治具3は、半導体ウェハ100に複数のプローブPrを接触させて検査するための治具であり、例えば、いわゆるプローブカードとして構成されている。
【0018】
半導体ウェハ100には、複数のチップが形成されている。各チップには、例えば電極、配線パターン、半田バンプ、接続端子等の検査点が設けられている。検査治具3は、半導体ウェハ100に形成された複数のチップのうち一部の領域(例えば図1にハッチングで示す検査領域)に設けられた各検査点に対応するように配設された複数のプローブPrを保持している。
【0019】
検査領域内の各検査点にプローブPrを接触させて当該検査領域内の検査が終了すると、載置部6aとともに半導体ウェハ100を下降させ、試料台6を平行移動させて検査領域を移動させる。そして、載置部6aが半導体ウェハ100を上昇させて新たな検査領域にプローブPrを接触させて検査を行う。このように、検査領域を順次移動させつつ検査を行うことにより、半導体ウェハ100全体の検査が実行される。
【0020】
なお、図1は、半導体検査装置1の構成の一例を、発明の理解を容易にする観点から簡略的及び概念的に示した説明図であり、プローブPrの本数、密度、配置や、検査部4及び試料台6の各部の形状、大きさの比率、等についても、簡略化、概念化して記載している。例えば、プローブPrの配置の理解を容易にする観点で、一般的な半導体検査装置よりも検査領域を大きく強調して記載しており、検査領域はもっと小さくてもよく、あるいはもっと大きくてもよい。
【0021】
接続プレート37には、第二ピッチ変換ブロック36と接続される図略の複数の電極が設けられている。接続プレート37の各電極は、例えば図略のケーブルや接続端子等によって、検査処理部8と電気的に接続されている。第一ピッチ変換ブロック35及び第二ピッチ変換ブロック36は、プローブPr相互間の間隔を、接続プレート37の電極ピッチに変換するためのピッチ変換部材である。
【0022】
検査治具3には、後述するように検査対象物の検査点に導通接続される一端部Pa、他端部Pb、及び胴体部Pcを有する複数のプローブPrと、各プローブPrの一端部Paを半導体ウェハ100に向けた状態で各プローブPrを保持する支持部材31とが設けられている。なお、検査治具3は、検査対象物の半導体ウェハ100に応じて取り替え可能に構成されている。
【0023】
第一ピッチ変換ブロック35は、各プローブPrの他端部Pbと接触して導通する後述の電極352を有している。検査部4は、接続プレート37、第二ピッチ変換ブロック36、及び第一ピッチ変換ブロック35を介して、検査治具3の各プローブPrを、検査処理部8と電気的に接続したり、その接続を切り替えたりする図略の接続回路を備えている。
【0024】
支持部材31は、半導体ウェハ100に対向するように配置された第一支持板32と、第一ピッチ変換ブロック35に対向するように配置された第二支持板33と、第一支持板32及び第二支持板33の間に配設された第三支持板34とを備えている。第一支持板32、第二支持板33、及び第三支持板34は、所定距離隔てて互いに平行に配設された状態で、連結部材38により連結されている。
【0025】
第一支持板32、第二支持板33、及び第三支持板34には、後述するように、プローブPrを支持する複数の挿通孔からなる支持孔が形成されている。第一支持板32の支持孔は、検査対象物となる半導体ウェハ100の配線パターン上に設定された検査点と対応した位置に配置されている。これにより、プローブPrの一端部Paが半導体ウェハ100の検査点に接触可能とされている。
【0026】
図2は、検査治具に設けられたプローブPrの一例を示す側面図、図3は、図2のIII-III線断面図である。プローブPrは、先端が先窄まりの円錐状に形成された一端部Paと、この一端部Paに連なる胴体部Pcと、この胴体部Pcに連なる他端部Pbとを有し、導電性を有する金属材料により、その全体形状が略棒状に形成されている。
【0027】
プローブPrの胴体部Pcには、その軸方向の中間部を側方から鍛圧する等によりプローブPrの径方向に突出させてなる突部Pdが形成されている。この突部Pdは、胴体部Pcの径方向に延びる係止面Pd1と、係止面Pd1の先端部からプローブPrの一端部Pa側に位置する胴体部Pcの周面に向けて延びる先窄まりの傾斜面Pd2とを有する三角形に形成されている。
【0028】
プローブPrの他端部Pbには、後述するようにプローブPrの抜け落ちを防止するための左右一対の膨出部、又は円板状のフランジ部等からなる抜け止め部Pjが設けられている。なお、プローブPrの断面形状は円形に限られず、角形又は楕円形であってもよい。また、一端部Paの先端は、先窄まりの円錐状に限られず、球面状、あるいは複数の突起が設けられたいわゆるクラウン状であってもよく、種々の形状とすることができる。図例では、他端部Pbの先端が、平坦面に形成されているが、これに限られず、円錐状、球面状、あるいはクラウン状であってもよい。
【0029】
プローブPrの長さは、例えば3.0~8.0mmであり、プローブPrの直径dは、例えば30~100μmであり、あるいは50~65μmである。プローブPrの一端部Pa及び他端部Pbの長さは、例えば0.8~1.6mmであり、あるいは0.3~0.6mmである。
【0030】
胴体部Pcに形成された突部Pdの突出量sの好ましい値は、プローブPrの直径dの0.3倍から0.5倍である。また、突部Pdの幅寸法tの好ましい値は、プローブPrの直径dの0.3倍から0.5倍である。
【0031】
図4は、半導体検査装置1に設けられた検査部4の構成を示す断面図、図5は、検査部4に設けられた検査治具3の構成の一例を示す断面図である。なお、図4では、検査治具3と第一ピッチ変換ブロック35とを分離した状態で示している。
【0032】
図4及び図5の下方に位置する第一支持板32は、半導体ウェハ100と対向して配置される対向面F1を有している。また、図4及び図5の上方に位置する第二支持板33は、第一ピッチ変換ブロック35の下面と密着される背面F2を有している。
【0033】
第一支持板32の上方に配設される第一ピッチ変換ブロック35の下面には、支持部材31に支持された各プローブPrの他端部Pbに対応する位置に、複数の電極352が設けられている。一方、第一ピッチ変換ブロック35の上面には、下面の電極352に比べて設置間隔が拡げられた複数の電極が設けている。そして、第一ピッチ変換ブロック35の下面側の電極352と、上面側の電極とは、配線351で接続されている。
【0034】
第一ピッチ変換ブロック35の上方に配設される第二ピッチ変換ブロック36の下面には、第一ピッチ変換ブロック35の上面に配置された電極に対応する位置に、複数の電極が設けられている。一方、第二ピッチ変換ブロック36の上面には、上述の接続プレート37に配置された電極に対応する位置に、複数の電極362が設けられている。第二ピッチ変換ブロック36の下面の電極と上面の電極362とは、配線361で接続されている。
【0035】
上述の検査治具3、第一ピッチ変換ブロック35、及び第二ピッチ変換ブロック36が組み立てられるとともに、第二ピッチ変換ブロック36が接続プレート37の下面に取り付けられることにより、検査処理部8と各プローブPrとの間で信号を入出力する検査部4が構成される。
【0036】
第一ピッチ変換ブロック35及び第二ピッチ変換ブロック36は、例えば、MLO(Multi-Layer Organic)又はMLC(Multi-Layer Ceramic)等の多層配線基板を用いて構成することができる。
【0037】
検査治具3の第一支持板32には、図5に示すように、プローブPrの一端部Paが挿通されて支持される複数の挿通孔からなる第一支持孔321が形成されている。この各第一支持孔321は、プローブPrの一端部Paを支持した状態で、半導体ウェハ100に設けられた各検査点101に対向する位置に配置されている。
【0038】
プローブPrの一端部Paは、その先端が第一支持板32の対向面F1から所定距離だけ突出した状態で設置されている。そして、後述の検査時に、一端部Paの先端と、半導体ウェハ100等からなる検査対象物の検査点101とが当接して、互いに導通接続されるように構成されている。
【0039】
第二支持板33は、図5の上方に位置する面が、第一ピッチ変換ブロック35に対向する背面F2とされている。第二支持板33には、プローブPrの他端部Pbが挿通されて支持される複数の挿通孔からなる第二支持孔331が形成されている。この第二支持孔331にプローブPrの他端部Pbが挿入された状態で支持されるようになっている。
【0040】
また、プローブPrの抜け止め部Pjは、第二支持板33の背面F2の上方側に配設されている。これにより、プローブPrの他端部Pbが第二支持板33の第二支持孔331内に没入する抜け落ちの発生が防止されるとともに、他端部Pbの頂点が、第二支持板33の背面F2から突出した状態で支持されている。そして、他端部Pbの頂点が、第一ピッチ変換ブロック35の電極352に圧接されて、互いに導通接続されるように構成されている。
【0041】
また、第一支持板32と第二支持板33との間に配設された第三支持板34には、プローブPrの胴体部Pcが挿通されて支持される複数の挿通孔からなる第三支持孔341が形成されている。この第三支持孔341の口径Dは、プローブPrの直径dと、突部Pdの突出量sとを加算した値d+s(図3参照)よりも僅かに大きな値に設定されている。
【0042】
プローブPrは、その突部Pdが第三支持孔341の下方に配設された状態で、支持部材31に支持されている。そして、後述の検査の初期段階では、突部Pdの係止面Pd1が、第三支持孔341の下部に位置する周壁からなる当接部342に当接することにより、突部Pdの上方移動が規制される。また、プローブPrの軸方向に一定値以上の圧縮荷重が作用した時点で、突部Pdが、当接部342から離脱して第三支持孔341内に没入可能に構成されている。
【0043】
第一支持板32、第二支持板33、及び第三支持板34は、対応する第一支持孔321、第二支持孔331、及び第三支持孔341が、図5の左右方向、つまり各プローブPrの軸方向と直交する方向に少しずつ位置ずれするように配置されている。これにより、第一支持板32の対向面F1及び第二支持板33の背面F2の垂直方向に延びる垂線Vに対して所定角度θで傾斜した傾斜線Kに沿って、プローブPrが設置されるようになっている。
【0044】
なお、上述の垂線V上に、対応する第一支持孔321、第二支持孔331、及び第三支持孔341を位置させた状態で、これらにプローブPrを挿通させるようにしてもよい。そして、第一支持板32、第二支持板33、及び第三支持板34を、図5の左右方向に相対変位させて、各第一支持孔321、第二支持孔331、及び第三支持孔341を互いに位置ずれさせることにより、プローブPrを傾斜線Kに沿って設置させるようにしてもよい。
【0045】
図5に示す実施形態では、第一支持板32に支持された各プローブPrの一端部Paが、半導体ウェハ100の検査点101に接触した状態で支持された例を示している。この構成に代え、各プローブPrの一端部Paと、半導体ウェハ100の検査点101とを所定距離を置いて離間させた状態で、各プローブPrを支持部材31に支持させように構成してもよい。
【0046】
図6は、プローブPrを使用した検査の初期段階を示す断面図であり、図7は、プローブPrを使用した検査の後期段階を示す断面図、図8は、プローブPrの圧縮変形量λと圧縮応力σとの関係を示すグラフである。
【0047】
図6に示す検査の初期段階では、上述の試料台に載置された半導体ウェハ100が上昇駆動されて、検査点101がプローブPrの一端部Paに所定の押圧力Aで圧接される。この押圧力Aに応じ、プローブPrの一端部Paを軸方向に圧縮する圧縮荷重A1と、プローブPrの一端部Paを斜めに押し上げる押上荷重A2とが作用する。
【0048】
プローブPrの一端部Paは、圧縮荷重A1に応じて軸方向に圧縮されることにより弾性変形する。また、押上荷重A2に応じ、一端部Paの周面Pa2が第一支持孔321の下部周壁からなる当接部322に圧接されるとともに、この当接部322を支点にプローブPrの一端部Paが円弧状に湾曲するように弾性変形する。
【0049】
そして、プローブPrの一端部Paから突部Pdの設置部に伝達された圧縮荷重Bに応じ、突部Pdの上面からなる係止面Pd1が、第三支持孔341の当接部342に圧接されることにより、突部Pdの上方移動が規制される。この結果、プローブPrの一端部Paと、突部Pdよりも下方側に位置する胴体部PcとからなるプローブPrの一端部側部分が、圧縮荷重Bに応じて軸方向に圧縮されることにより弾性変形し、このプローブPrの一端部側部分に圧縮応力σが生じる。
【0050】
また、プローブPrの上下方向中間部には、圧縮荷重Bに対向する反力、つまり突部Pdを下方に押圧してその上方移動を規制する反力B1と、突部Pdの側方移動を規制して、図6の左方向に突部Pdを押圧する反力B2とが作用する。この反力B2に応じて、プローブPrの上下方向中間部が側方に押圧されることにより、その傾斜角度が、当初の傾斜線Kよりも小さくなるように弾性変形する。
【0051】
検査の進行に応じて、半導体ウェハ100の検査点101が徐々に上方へ駆動されることにより、図8に示すように、プローブPrの一端部側部分における圧縮変形量λが次第に増大する。圧縮変形量λの増大に比例してプローブPrの一端部側部分に生じる圧縮応力σが上昇する。
【0052】
検査の初期段階では、プローブPrの一端部側部分に圧縮荷重Bが集中して作用するため、プローブPrに生じる圧縮応力σは、急角度の応力線σ1に沿って変化し、圧縮変形量λがわずかに大きくなるだけで、プローブPrの一端部側部分に生じる圧縮応力σが急激に上昇する。したがって、プローブPrの一端部Paと半導体ウェハ100の検査点101との圧接力が十分に確保され、この検査点101に位置する電極表面の酸化膜を除去することが可能となる。
【0053】
プローブPrの一端部側部分に作用する圧縮荷重Bがさらに上昇すると、これに対応して、プローブPrの突部Pdを側方へ押圧する反力B2が次第に増大するため、プローブPrの軸方向中間部における傾斜角度が徐々に小さくなるように変形する。例えば、図7に示すように、プローブPrの軸方向中間部が略鉛直状態となるように変形した時点で、プローブPrの突部Pdが、第三支持板34の当接部342から離脱して、第三支持孔341内に没入する。その結果、第三支持板34の当接部342とプローブPrの突部Pdとの係合が解除される。
【0054】
上述のようにして第三支持板34の当接部342による突部Pdの係止状態が解放されると、第三支持板34の上方側に位置するプローブPrの他端側部分、つまり突部Pdの上方側に位置する胴体部Pc、及びプローブPrの他端部Pbにも、プローブPrの一端側部分と同等の圧縮荷重Cが伝達される。これにより、プローブPrの全長に亘って圧縮荷重が分散され、プローブPrの全体に略均等な圧縮応力σが発生する。
【0055】
この結果、図8に示すように、第三支持板34の当接部342とプローブPrの突部Pdとの係合が解除された時点T1で、プローブPrに生じる圧縮応力σの変化率を示す応力線σ2の傾斜角度が、検査の初期段階に比べて小さくなる。したがって、検査の後期段階では、半導体ウェハ100の検査点101に対するプローブPrの圧接力が急上昇することはなく、この圧接力が過度に高くなることに起因した弊害の発生が抑制される。
【0056】
なお、図7に示すように、プローブPrの他端部側部分に伝達された圧縮荷重Cに応じ、プローブPrの他端部Pbが第一ピッチ変換ブロック35の下面に圧接されることにより、プローブPrの他端部Pbの上方移動を規制する押圧力Eが他端部Pbの頂点に付与される。この押圧力Eに応じ、プローブPrの他端部側部分、つまり突部Pdの上方側に位置する胴体部Pc及びプローブPrの他端部Pbが、プローブPrの一端部側部分とは点対称の形状に弾性変形して円弧状に湾曲するため、プローブPrの一端部側部分及び他端部側部分からなるプローブPrの全体が略S字状に変形する。
【0057】
上述のように検査対象物の検査点101に導通接続される一端部Paと、この一端部Paに連なる胴体部Pcと、この胴体部Pcに連なる他端部Pbとを有する略棒状のプローブPrと、このプローブPrを支持する支持部材31とを備えた検査治具3、及びこの検査治具3を備えた検査装置において、支持部材31の当接部342に係脱可能に係止される突部Pdからなる係止部をプローブPrに設けた構成としたため、検査点101に設けられた電極に対するプローブPrの圧接力が過度に高くなるのを抑制しつつ、電極表面に対するプローブPrの圧接力を十分に確保して電極表面の酸化膜を除去することが可能である。
【0058】
すなわち、上述の第一実施形態では、プローブPrの一端部Paを支持する第一支持板32と、プローブPrの他端部Pbを支持する第二支持板33との間に配設された第三支持板34に、プローブPrの胴体部Pcが挿通されて支持される第三支持孔341を形成している。そして、胴体部Pcの一部をプローブPrの径方向に突出させた突部Pdを第三支持孔341の下方に位置させるとともに、第三支持孔341の口径Dを、プローブPrの直径dと突部Pdの突出量sとを加算した値(d+s)よりも僅かに大きな値に設定している。
【0059】
上述の構成によれば、プローブPrの一端部側部分に作用する圧縮荷重Bが小さい検査の初期段階では、第三支持孔341の下部周壁からなる当接部342に、プローブPrの突部Pdからなる係止部が当接して係止される。そして、プローブPrの圧縮荷重Bが所定値以上となった検査の後期段階では、プローブPrの胴体部Pcを弾性変形させて突部Pdを第三支持孔341内に没入させることにより、この突部Pdと当接部342との係合を解除することができる。
【0060】
このため、検査の初期段階では、プローブPrの一端部Paと、胴体部Pcの突部Pdよりも下方側に位置する部位とからなるプローブPrの一端部側部分に圧縮荷重Bが集中的に作用し、主にプローブPrの一端部側部分だけが弾性変形して圧縮変形量λが生じることになる。したがって、図8に示す応力線σ1のように、プローブPrの一端部側部分に生じる圧縮応力σを圧縮変形量λに比例して急上昇させることができ、検査対象物の検査点101に設けられた電極表面に対するプローブPrの圧接力を十分に確保して電極表面の酸化膜を効果的に除去することができる。
【0061】
また、検査の後期段階において、プローブPrの突部Pdと第三支持板34の当接部342との係合が解除された時点T1で、プローブPrに作用する圧縮荷重をプローブPrの全長に亘って均等に分散させることができる。したがって、応力線σ2のように、プローブPrの圧縮変形量λが増大するのに対応して上昇する圧縮応力σの変化率が顕著に低減され、検査対象物の検査点101に対するプローブPrの圧接力が過度に高くなるのを効果的に抑制できるという利点がある。
【0062】
上述のようにプローブPrの支持部材31に設けられた当接部、具体的には、第三支持板34に形成された第三支持孔341の下部周壁からなる当接部342にプローブPrの係止部(突部Pd)を係脱可能に係止するように構成した上述の第一実施形態に代え、プローブPrの係止部を係脱可能に係止する別体の係止プレートを支持部材31に設けた構成としてもよい。
【0063】
しかし、第一実施形態に示すように、プローブPrの胴体部Pcを支持する第三支持板34に形成された第三支持孔341の下部周壁により、プローブPrの突部Pdを係脱可能に係止する当接部342を構成した場合には、支持部材31を構成する第三支持板34に、プローブPrの胴体部Pcを支持する機能と、プローブPrの突部Pdを係脱可能に係止する機能とを兼ね備えさせることができる。したがって、簡単な構成で、プローブPrを安定して支持しつつ、検査点101に設けられた電極表面の酸化膜を適正に除去することができるとともに、電極に対するプローブPrの圧接力が過度に高くなるのを抑制できるという利点がある。
【0064】
なお、例えば第三支持板34を省略し、第一支持板32に形成された第一支持孔321の下部周壁からなる当接部に、プローブPrの一端部Paに設けられた突部からなる係止部を係脱可能に係止するように構成してもよい。しかし、この構成では、検査の初期段階に、プローブPrの圧縮応力σが急激に上昇して検査対象物の電極表面に対するプローブPrの圧接力が過度に高くなる可能性がある。
【0065】
また、第二支持板33に形成された第二支持孔331の下部周壁からなる当接部342に、プローブPrの他端部Pbの近傍に設けられた突部からなる係止部を係脱可能に係止することも可能である。しかし、この構成では、検査の初期段階に、プローブPrの圧縮応力σが緩やかに上昇するため、検査対象物の電極表面に対するプローブPrの圧接力を十分に確保することができず、電極表面の酸化膜を適正に除去することが困難である。
【0066】
このため、上述の第一実施形態に示すように、第三支持孔341の下部周壁からなる当接部342に、係脱可能に係止される突部PdをプローブPrの胴体部Pcに設けた構成することが望ましい。これにより、検査の初期段階において、検査対象物の電極表面に対するプローブPrの圧接力を十分に確保することができるとともに、検査の後期段階において、プローブPrの係止部と支持部材31の当接部342との係合を適正時期に解除することにより、検査対象物に対するプローブPrの圧接力が過度に高くなるのを効果的に抑制することができる。
【0067】
また、プローブPrの一部を、その径方向に突出させてなる突部Pdにより、上述の当接部に係脱可能に係止される係止部を構成した場合には、プローブPrの一端部側部分に作用する圧縮荷重Bが小さい検査の初期段階では、プローブPrの突部Pdを当接部に係止させて、プローブPrの一端部側部分に圧縮荷重を集中的に作用させることにより、電極表面の酸化膜を効果的に除去することができる。また、プローブPrの圧縮荷重Bが所定値以上となった検査の後期段階では、プローブPrを弾性変形させて突部Pdと当接部との係合を容易に解除することにより、検査対象物に対するプローブの圧接力が過度に高くなるのを、簡単な構成で効果的に抑制できるという利点がある。
【0068】
なお、プローブPrに形成された突部Pdは、必ずしも上述の三角形状とする必要はなく、半円形、台形、又は長方形等の種々の形状に変更することができる。
【0069】
しかし、上述の第一実施形態に示すように、プローブPrに形成された突部Pdを、胴体部Pcの径方向に延びる係止面Pd1と、この係止面Pd1の先端からプローブPrの一端部側に向けて延びる先窄まりの傾斜面Pd2とを有する三角形状に形成した場合には、支持部材31にプローブPrを支持させる際に、第三支持孔341等の壁面に沿って傾斜面Pd2を摺動させることにより、突部Pdを第三支持板34の下方に移動させる作業等を容易に行うことができる。
【0070】
また、検査の初期段階では、図6に示すように、第三支持孔341の下部周壁からなる当接部342に、突部Pdの係止面Pd1を当接させて係止することにより、プローブPrの一端部側部分に圧縮荷重を集中的に作用させることができる。しかも、検査の終了後に、半導体ウェハ100を図7に示す上昇位置から下降させて、プローブPrの一端部Paを上方に押圧する押圧力Aを解除すれば、プローブPrの復元力に応じ、第三支持孔341の壁面に沿って傾斜面Pd2を摺動させることにより、突部Pdを第三支持板34の下方にスムーズに移動させることができるという利点がある。
(第二実施形態)
【0071】
図9は、本発明の第二実施形態に係る検査治具3aの構成を示す断面図、図10は、検査治具の変形例3bを示す断面図である。
【0072】
図9に示す検査治具3aに設けられたプローブPraは、径方向寸法が大きい大径部Peと、その上方側に位置する径方向寸法が小さい小径部Pfとを有している。プローブPraの大径部Peは、例えばプローブPraの軸方向中間部に、アクリル系樹脂やテフロン(登録商標)をコーティングし、あるいはNi電鋳によりリング形状の部材を電着させる等により容易に形成される。
【0073】
大径部Peの外径daは、第三支持孔341の口径Dよりもやや小さい値に設定され、第三支持孔341の下方に位置した状態で支持されている。これにより、大径部Peと、小径部Pfとの間に形成された段部Pe1が、例えば第三支持孔341の下部周壁からなる当接部342に当接して、係脱可能に係止されるようになっている。
【0074】
すなわち、プローブPraを使用した検査の初期段階では、第三支持孔341の下部周壁(当接部342)に段部Pe1が当接して、その上方移動が規制される。そして、プローブPraの軸方向に作用する圧縮荷重Bが一定値以上となった時点で、プローブPraの段部Pe1に作用する反力B2に応じてプローブPraを弾性変形させて、段部Pe1からなる係止部を第三支持孔341内に没入させる。その結果、プローブPraの係止部(段部Pe1)と支持部材31の当接部342との係合を解除することができる。
【0075】
したがって、プローブPraを使用した検査の初期段階において、検査点101に対するプローブPraの圧接力を十分に確保することにより、検査点101に位置する電極表面の酸化膜を適正に除去することが可能である。しかも、プローブPraを使用した検査の後期段階では、半導体ウェハ100等からなる検査対象物の検査点101に対するプローブPraの圧接力が過度に高くなるのを抑制することができる。
【0076】
一方、図10に示す検査治具の変形例3bには、胴体部Pcの軸方向中間部から一端部Paにかけて連続して形成された大径部Pfaと、胴体部Pcの軸方向中間部から他端部Pbにかけて連続して形成された小径部Pfbを有するプローブPrbが配設されている。例えば、所定の外径を有する棒状体を切削加工し、又は大径部Pfaを構成する筒状体内に、小径部Pfbを構成する棒状体を挿入する等により、適度の剛性を備えた大径部Pfaと小径部Pfbとを有するプローブPrbを容易に形成することができる。
【0077】
そして、大径部Pfaの外径dbが第三支持孔341の口径Dよりもやや小さい値に設定されることにより、プローブPrbを使用した検査の初期段階では、大径部Pfaと小径部Pfbとの間に形成された段部Pe2が、第三支持孔341の下部周壁(当接部342)に当接して、段部Pe2の上方移動が規制される。また、プローブPrbの軸方向に作用する圧縮荷重Bが一定値以上となった時点で、プローブPrbの段部Pe2に作用する反力B2に応じてプローブPrcを弾性変形させることにより、段部Pe2を第三支持孔341内に没入させる。その結果、プローブPrcの係止部(段部Pe2)と、支持部材31の当接部342との係合を解除することができる。
【0078】
したがって、プローブPrbを使用した検査の初期段階において、検査点101に対するプローブPrbの圧接力を十分に確保することにより、検査点101に位置する電極表面の酸化膜を適正に除去することが可能である。しかも、プローブPrbを使用した検査の後期段階において、半導体ウェハ100等からなる検査対象物の検査点101に対するプローブPrbの圧接力が過度に高くなるのを効果的に抑制することができる。
(第三実施形態)
【0079】
図11は、本発明の第三実施形態に係る検査治具3cの構成を示す断面図、図12は、検査治具3cの第三実施形態における検査の後期段階を示す断面図である。
【0080】
検査治具3cに設けられたプローブPrcは、その軸方向の一部を径方向に凹入させた凹入部Pgを有している。第三支持板34に形成された第三支持孔341は、プローブPrcの直径dよりもやや大きい口径Dを有している。そして、図11に示すように、プローブPrcの凹入部Pg内に第三支持孔341の周壁部が嵌入された状態で、プローブPrcの軸方向中間部が、第三支持板34に支持されるように構成されている。
【0081】
上述の構成によれば、プローブPrcの軸方向に作用する圧縮荷重Bが小さい検査の初期段階では、凹入部PgとプローブPrcの周面との間に形成された段部Pg1、つまり図11の下方側に位置する凹入部Pgの側壁が、第三支持孔341の下部周壁からなる当接部342に当接して、凹入部Pgの上方移動が規制される。そして、プローブPrcの軸方向に作用する圧縮荷重Bが一定値以上となった時点で、プローブPrcの段部Pg1に作用する反力B2に応じてプローブPrcを弾性変形させることにより、プローブPrcの段部Pg1からなる係止部を当接部342から離間させる。その結果、プローブPrcの係止部(段部Pg1)と当接部342と係合を解除することができる。
【0082】
したがって、プローブPrcを使用した検査の初期段階に、検査点101に対するプローブPrcの圧接力を十分に確保することにより、検査点101に位置する電極表面の酸化膜を適正に除去することが可能である。また、プローブPrcを使用した検査の後期段階では、半導体ウェハ100等からなる検査対象物の検査点101に対するプローブPrcの圧接力が過度に高くなるのを効果的に抑制することができる。
(第四実施形態)
【0083】
図13は、本発明の第三実施形態に係る検査治具3dの構成を示す断面図、図14は、検査治具3dの第三実施形態における検査の後期段階を示す断面図である。
【0084】
検査治具3dに設けられたプローブPrdは、その軸方向の一部を、径方向に屈曲させた屈曲部Phを有している。第三支持板34に形成された第三支持孔341は、屈曲部Phの幅寸法Wよりもやや大きい口径Dを有している。そして、屈曲部Phからなる係止部の上面Ph1が、例えば第三支持孔341の下部周壁からなる当接部342に係脱可能に係止されるように構成されている。
【0085】
プローブPrdを使用した検査の初期段階では、図13に示すように、第三支持孔341の下部周壁(当接部342)に、屈曲部Phの上面Ph1が当接して、その上方移動が規制される。また、プローブPrdを使用した検査時に、プローブPrdの軸方向に一定値以上の圧縮荷重Bが作用した際には、図14に示すように、プローブPrdを弾性変形させることにより、屈曲部Phを第三支持孔341内に没入させることができる。これにより、屈曲部Phからなる係止部を当接部342から離間させて、プローブPrdの係止部と支持部材31の当接部342との係合を解除することができる。
【0086】
したがって、プローブPrdを使用した検査の初期段階において、検査点101に対するプローブPrcの圧接力を十分に確保することにより、検査点101に位置する電極表面の酸化膜を適正に除去することが可能である。また、プローブPrdを使用した検査の後期段階では、半導体ウェハ100等からなる検査対象物の検査点101に対するプローブPrdの圧接力が過度に高くなるのを効果的に抑制することができる。
【0087】
すなわち、本発明に係る検査治具は、検査対象物の検査点に導通接続される一端部と、当該一端部に連なる胴体部と、当該胴体部に連なる他端部とを有する略棒状のプローブと、当該プローブを支持する支持部材とを備え、前記プローブは、前記支持部材に設けられた当接部に係脱可能に係止される係止部を有し、当該係止部は、前記プローブを使用した検査時に、当該プローブの軸方向に一定値以上の圧縮荷重が作用した際に、前記当接部から離脱するように構成されている。
【0088】
この構成によれば、プローブの一端部側部分に作用する圧縮荷重が小さい検査の初期段階では、プローブの係止部が支持部材の当接部に係止されて、プローブの一端部側部分に圧縮荷重が集中的に作用する。このため、検査対象物の検査点に設けられた電極表面に対するプローブの圧接力が十分に確保されて、電極表面の酸化膜を適正に除去することができる。また、プローブの圧縮荷重が所定値以上となった検査の後期段階では、プローブを弾性変形させて前記係止部と支持部材の当接部との係合を解除することにより、プローブに作用する圧縮荷重をプローブの全長に亘って均等に分散させることができる。したがって、検査対象物に対するプローブの圧接力が過度に高くなるのを効果的に抑制できるという利点がある。
【0089】
また、前記支持部材は、前記プローブが挿通されて支持される支持孔が形成された支持板を有し、前記係止部は、前記支持孔の周壁からなる前記当接部に当接することにより係止され、かつ前記支持孔内に没入することにより、前記当接部との係合が解除されるように構成されていることが好ましい。
【0090】
この構成によれば、支持部材を構成する支持板に、プローブを支持する機能と、プローブの係止部を係脱可能に係止する機能とを兼ね備えさせることができる。したがって、簡単な構成で、プローブを安定して支持しつつ、検査点に設けられた電極表面の酸化膜を適正に除去することができるとともに、電極に対するプローブの圧接力が過度に高くなるのを抑制できるという利点がある。
【0091】
また、前記支持部材は、前記プローブの一端部を支持する第一支持板と、前記プローブの他端部を支持する第二支持板と、前記プローブの胴体部を支持する第三支持板とを有し、前記当接部は、前記第三支持板に形成された第三支持孔の周壁からなっていることが好ましい。
【0092】
この構成によれば、プローブを使用した検査の初期段階では、第三支持板に設けられた当接部にプローブの係止部を係脱可能に係止することにより、プローブの胴体部に適度の圧縮応力を生じさせて、検査対象物の電極表面に対するプローブの圧接力を十分に確保することができる。しかも、検査の後期段階では、プローブの係止部と支持部材の当接部との係合を適正時期に解除することにより、検査対象物に対するプローブの圧接力が過度に高くなるのを効果的に抑制できるという利点がある。
【0093】
また、前記係止部は、前記プローブの一部を当該プローブの径方向に突出させてなる突部により構成されていることが好ましい。
【0094】
この構成によれば、プローブの一端部側部分に作用する圧縮荷重が小さい検査の初期段階では、プローブの突部を当接部に係止させて、プローブの一端部側部分に圧縮荷重を集中的に作用させることにより、電極表面の酸化膜を適正に除去することが可能となる。また、プローブの圧縮荷重が所定値以上となった検査の後期段階では、プローブを弾性変形させて係止部と当接部との係合を容易に解除することにより、検査対象物に対するプローブの圧接力が過度に高くなるのを、簡単な構成で効果的に抑制することができる。
【0095】
また、前記突部は、前記プローブの径方向に延びる係止面と、当該係止面の先端から前記プローブの一端部側に向けて延びる先窄まりの傾斜面とを有する三角形状に形成され、前記係止面が前記当接部に当接することにより係脱可能に係止されていることが好ましい。
【0096】
この構成によれば、支持部材にプローブを支持させる際に、支持孔の壁面に沿って傾斜面を摺動させる等により、プローブの突部を支持板の下方に移動させる作業等を容易に行うことができる。さらに、検査の終了後には、プローブの復元力に応じ、支持孔の壁面に沿って傾斜面を摺動させる等により、プローブの突部を支持板の下方にスムーズに移動させることができる等の利点がある。
【0097】
また、前記プローブは、径方向寸法が大きい大径部と、径方向寸法が小さい小径部とを有し、前記係止部は、前記大径部と小径部との間に形成された段部からなる構成としてもよい。
【0098】
この構成によれば、プローブを使用した検査の初期段階では、支持部材の当接部に前記段部を当接させて、その上方移動等を規制することができる。そして、プローブの軸方向に作用する圧縮荷重が一定値以上となった時点で、プローブを弾性変形させて前記段部を支持孔内に没入させる等により、前記段部と支持部材の当接部との係合を解除することができる。
【0099】
また、前記大径部は、前記胴体部の一部に形成された膨出部からなっていることが好ましい。
【0100】
この構成によれば、例えばプローブの軸方向中間部に、アクリル系樹脂やテフロン(登録商標)をコーティングし、あるいはNi電鋳によりリング形状の部材を電着させる等により、前記大径部を有するプローブを容易に形成することができる。
【0101】
また、前記大径部は、前記胴体部の軸方向中間部から前記一端部にかけて連続して形成され、前記小径部は、前記胴体部の軸方向中間部から前記他端部にかけて連続して形成されたものであってもよい。
【0102】
この構成によれば、棒状体を切削加工し、又は大径部を構成する筒状体内に、小径部を構成する棒状体を挿入する等により、適度の剛性を備えた大径部と小径部とを有するプローブを容易に形成することができる。
【0103】
また、前記プローブは、その軸方向の一部を径方向に凹入させた凹入部を有し、前記係止部は、前記凹入部と前記プローブの周面との間に形成された段部からなる構成であってもよい。
【0104】
この構成によれば、プローブの軸方向に作用する圧縮荷重が小さい検査の初期段階では、凹入部とプローブの周面との間に形成された段部が、支持孔の下部周壁からなる当接部に当接する等により、前記段部からなる係止部の上方移動等が規制される。そして、プローブの軸方向に作用する圧縮荷重が一定値以上となった時点で、プローブを弾性変形させることにより、プローブの段部からなるプローブの係止部を前記当接部から離間させて、前記プローブの係止部と支持部材の当接部との係合を解除することができる。
【0105】
また、前記プローブは、その軸方向の一部を径方向に屈曲させた屈曲部を有し、前記係止部が、前記屈曲部により構成されたものであってもよい。
【0106】
この構成によれば、プローブを使用した検査の初期段階では、支持孔の下部周壁等からなる当接部に、前記屈曲部の上面等からなる係止部を当接させることにより、その上方移動等を規制することができる。また、プローブの軸方向に一定値以上の圧縮荷重が作用した際に、プローブを弾性変形させることにより、プローブの屈曲部を支持孔内に没入させる等により、この屈曲部を当接部から離間させて、プローブの屈曲部と支持部材の当接部との係合を解除することができる。
【0107】
また、本発明に係る検査装置は、上述の検査治具を備え、当該検査治具に支持された前記プローブを、検査対象物に接触させることによって、当該検査対象物を検査する。
【0108】
この構成によれば、検査装置による検査の初期段階では、検査対象物の検査点に設けられた電極表面に対するプローブの圧接力が十分に確保されることにより、電極表面の酸化膜を適正に除去することができる。また、プローブの圧縮荷重が所定値以上となった検査の後期段階では、プローブに作用する圧縮荷重をプローブの全長に亘って均等に分散させることにより、検査対象物に対するプローブの圧接力が過度に高くなるのを効果的に抑制できるという利点がある。
【0109】
このような構成の検査治具、及び検査装置は、検査対象物の電極に対するプローブの圧接力が過度に高くなるのを抑制しつつ、電極表面の酸化膜を除去することが可能である。
【0110】
この出願は、2018年7月31日に出願された日本国特許出願特願2018-133737を基礎とするものであり、その内容は、本願に含まれるものである。なお、発明を実施するための形態の項においてなされた具体的な実施態様又は実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、本発明は、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではない。
【符号の説明】
【0111】
1 半導体検査装置(検査装置)
3 検査治具
4 検査部
6 試料台
6a 載置部
8 検査処理部
31 支持部材
32 第一支持板
33 第二支持板
34 第三支持板
35 第一ピッチ変換ブロック
36 第二ピッチ変換ブロック
37 接続プレート
38 連結部材
100 半導体ウェハ(検査対象物)
101 検査点
321 第一支持孔
331 第二支持孔
341 第三支持孔
342 当接部
351 配線
352 電極
361 配線
362 電極
Pa 一端部
Pb 他端部
Pc 胴体部
Pd 突部(係止部)
Pd1 係止面
Pd2 傾斜面
Pe 大径部
Pe1 段部(係止部)
Pe2 段部(係止部)
Peb 大径部
Pf 小径部
Pfb 小径部
Pg 凹入部
Pg1 段部(係止部)
Ph 屈曲部(係止部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14