(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】チャバザイト型ゼオライト及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 39/48 20060101AFI20231024BHJP
B01J 29/76 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
C01B39/48
B01J29/76 A ZAB
(21)【出願番号】P 2022074463
(22)【出願日】2022-04-28
(62)【分割の表示】P 2018025672の分割
【原出願日】2018-02-16
【審査請求日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】P 2017030725
(32)【優先日】2017-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中尾 圭太
(72)【発明者】
【氏名】有賀 耕
(72)【発明者】
【氏名】青山 英和
(72)【発明者】
【氏名】中村 総
【審査官】佐藤 慶明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-135261(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0367336(US,A1)
【文献】特表2014-530163(JP,A)
【文献】特開2010-168269(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106145138(CN,A)
【文献】特開2016-026979(JP,A)
【文献】特表2019-530634(JP,A)
【文献】特開2012-211066(JP,A)
【文献】特開2015-143177(JP,A)
【文献】特開2015-155365(JP,A)
【文献】特開2017-036204(JP,A)
【文献】特表2016-529195(JP,A)
【文献】特表2010-522688(JP,A)
【文献】DI IORIO, J. R. et al.,Chemistry of Materials,2016年03月03日,Vol.28,pp.2236-2247,<DOI:10.1021/acs.chemmater.6b00181>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/20 - 39/54
B01J 21/00 - 38/74
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナに対するシリカのモル比が15以上50未満であり、シラノール量が1.5×10
20個/g以下であり、ケイ素に対するシラノール基のモル比が0.7×10
-2以上1.6×10
-2以下であり、なおかつ、10%体積径に対する50%体積径が2.8以下であることを特徴とするチャバザイト型ゼオライト。
【請求項2】
50%体積径が5.0μm以下である請求項1に記載のチャバザイト型ゼオライト。
【請求項3】
平均結晶径が1.5μm以下である請求項1又は2に記載のチャバザイト型ゼオライト。
【請求項4】
そのXRDパターンにおいて、少なくとも下表に示すXRDピークを有する請求項1又は2に記載のチャバザイト型ゼオライト。
【表1】
【請求項5】
IRスペクトルにおいて、少なくとも1800cm
-1以上1930cm
-1以下の範囲における吸収ピーク、3550cm
-1以上3700cm
-1以下の範囲における吸収ピーク及び3720cm
-1以上3740cm
-1以下の範囲における吸収ピークを有する請求項1又は2に記載のチャバザイト型ゼオライト。
【請求項6】
アルミナに対するシリカのモル比が32.5以下である請求項1又は2に記載のチャバザイト型ゼオライト。
【請求項7】
銅又は鉄の少なくともいずれかを含有する請求項1又は2に記載のチャバザイト型ゼオライト。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のチャバザイト型ゼオライトを含むことを特徴とする触媒。
【請求項9】
請求項1又は2に記載のチャバザイト型ゼオライトを使用することを特徴とする窒素酸化物の還元方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチャバザイト型ゼオライトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
チャバザイト型ゼオライトは、3.8×3.8Åの細孔を形成した酸素8員環を含み、三次元細孔構造を有するゼオライトである。チャバザイト型ゼオライトは天然にも存在するが、アルミナに対するシリカのモル比(以下、「SiO2/Al2O3比」ともいう。)が高いチャバザイト型ゼオライトは人工的に合成されたものしかない(例えば、特許文献1乃至3、非特許文献1及び2)。
【0003】
特許文献1及び2には、SiO2/Al2O3比が5以上のチャバザイト型ゼオライトとしてSSZ-13が開示されている。さらに、非特許文献1及び非特許文献2には、結晶粒子同士が化学的に結合した凝集粒子状のSSZ-13が開示されている。また、特許文献3には、SSZ-13と同じ結晶構造を有し、なおかつ、SiO2/Al2O3比が10を超え、結晶径が0.5μm以下のチャバザイト型ゼオライトがSSZ-62として開示されている。
【0004】
これらのチャバザイト型ゼオライトはクラッキング触媒や窒素酸化物還元触媒をはじめとする各種の触媒として使用されており、触媒用途の中でも選択的接触還元による窒素酸化物還触媒として広く使用されている(特許文献4乃至6)。一方で、SSZ-13やSSZ-62は、高温高湿雰囲気に晒された場合に骨格構造が崩壊しやすい。そのため、これまで、選択的接触還元による窒素酸化物還触媒の使用に耐えうるチャバザイト型ゼオライトが検討されている。
【0005】
高温高湿雰囲気に晒された場合であっても骨格構造が崩壊しにくいこと、いわゆる耐熱性の高いことを特徴とするチャバザイト型ゼオライトとして、例えば、平均結晶径を1.5μm以上とし、なおかつ、SiO2/Al2O3比が15以上であることを兼備したチャバザイト型ゼオライトが検討されている(特許文献7)。また、構造指向剤を含まない原料を結晶化することにより、0.5μmを超える結晶径を有し、なおかつ、SiO2/Al2O3比を5以上15以下としたチャバザイト型ゼオライトが開示されている。当該チャバザイト型ゼオライトは、広い結晶粒子径分布を有し、結晶径が0.5μmを超え3μm程度の結晶粒子を含むものであり、これらが凝集した状態の走査型電子顕微鏡写真が具体的に開示されている(特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許4,544,538号
【文献】米国特許4,665,110号
【文献】米国特許公開2003/0069449号
【文献】米国特許公開2011/0182790号
【文献】米国特許公開2008/0202107号
【文献】米国特許公開2010/0092362号
【文献】米国特許公報2011/0251048号
【文献】米国特許公報2012/0269719号
【非特許文献】
【0007】
【文献】J.Phys.Chem.C,114(2010)1633-1640
【文献】ZEOLITES,Vol.8(1988)166-174
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献7及び8で開示されたように、従来、チャバザイト型ゼオライトの耐熱性を向上させるためには、結晶径を大きくすることが必要であった。しかしながら、結晶径が大きくなりすぎるとフィルター等へのコートが困難になるなど、触媒としての使用が困難になる。そのため、結晶径を大きくすることによる耐熱性の向上には限界があった。
【0009】
これらの課題に鑑み、本発明は、大きな結晶径を有することなく、高い耐熱性を有するチャバザイト型ゼオライトを提供することを目的とする。さらに、本発明はこの様なチャバザイト型ゼオライトを含み、高温高湿下への曝露後であっても、高い窒素酸化物還元特性、特に200℃未満の低温域において高い窒素酸化物還元特性を示す触媒を提供することを別の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、窒素酸化物の選択的接触還元の触媒及びその基材に適したチャバザイト型ゼオライトについて検討した。その結果、本発明者らはチャバザイト型ゼオライトの結晶状態に着目することで、結晶径を大きくすることを必須とすることなく、チャバザイト型ゼオライトの耐熱性が向上することを見出した。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] アルミナに対するシリカのモル比が15以上であり、ケイ素に対するシラノール基のモル比が1.6×10-2以下であり、平均結晶径が0.5μm以上1.5μm未満であり、なおかつ、10%体積径に対する50%体積径が3.2以下であることを特徴とするチャバザイト型ゼオライト。
[2] 平均結晶径が0.5μm以上1.3μm以下である上記[1]に記載のチャバザイト型ゼオライト。
[3] 50%体積径が5.0μm以下である上記[1]又は[2]に記載のチャバザイト型ゼオライト。
[4] 結晶粒子が立方体、菱面体又は略球状の群から選ばれる少なくともいずれかの形状を有する粒子である上記[1]乃至[3]のいずれか1つに記載のチャバザイト型ゼオライト。
[5] そのXRDパターンにおいて、少なくとも下表に示すXRDピークを有する上記[1]乃至[4]のいずれか1つに記載のチャバザイト型ゼオライト。
【0012】
【0013】
[6] IRスペクトルにおいて、少なくとも1800cm-1以上1930cm-1以下の範囲における吸収ピーク、3550cm-1以上3700cm-1以下の範囲における吸収ピーク及び3710cm-1以上3745cm-1以下の範囲における吸収ピークを有する上記[1]乃至[5]のいずれか1つに記載のチャバザイト型ゼオライト。
[7] 銅又は鉄の少なくともいずれかを含有する上記[1]乃至[6]のいずれか1つに記載のチャバザイト型ゼオライト。
[8] アルミナに対する銅又は鉄の少なくともいずれかの割合が0.1以上1.0以下である上記[7]に記載のチャバザイト型ゼオライト。
[9] シリカ源、アルミニウム源、アルカリ源、構造指向剤及び水を含む組成物を結晶化する結晶化工程を有し、前記組成物は、シリカに対するナトリウムのモル比が0を超え、ナトリウムに対するカリウムのモル比が1.0未満であり、シリカに対する構造指向剤のモル比が0.1未満であり、シリカに対する水のモル比が20未満であり、なおかつ、アルミナに対するシリカのモル比が27.5以上50.0未満であることを特徴とする上記[1]乃至[8]のいずれか1つに記載のチャバザイト型ゼオライトの製造方法。
[10] 前記構造指向剤が、N,N,N-トリアルキルアダマンタンアンモニウムカチオン、N,N,N-トリメチルベンジルアンモニウムカチオン、N-アルキル-3-キヌクリジノールカチオン又はN,N,N-トリアルキルエキソアミノノルボルナンカチオンの群から選ばれる少なくとも1種である上記[9]に記載の製造方法。
[11] シリカに対する構造指向剤のモル比が0.06以上0.1未満である上記[9]又は[10]に記載の製造方法。
[12] ナトリウムに対するカリウムのモル比が0以上0.6以下である上記[9]乃至[11]のいずれか1つに記載の製造方法。
[13] 前記組成物がフッ素を含まない上記[9]乃至[12]のいずれか1つに記載の製造方法。
[14] 上記[1]乃至[8]のいずれか1つに記載のチャバザイト型ゼオライトを含むことを特徴とする触媒。
[15] 上記[1]乃至[8]のいずれか1つに記載のチャバザイト型ゼオライトを使用することを特徴とする窒素酸化物の還元方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、大きな結晶径を有することなく、高い耐熱性を有するチャバザイト型ゼオライトを提供することができる。さらに、本発明はこの様なチャバザイト型ゼオライトを含む触媒を提供することができる。当該触媒は、窒素酸化物還元触媒、特に選択的接触還元による窒素酸化物還元触媒に適している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトについて説明する。
【0016】
本発明の実施態様におけるはチャバザイト型ゼオライト、更には合成されたチャバザイト型ゼオライトに係る。チャバザイト型ゼオライトは、CHA構造を有する結晶性アルミノシリケートである。CHA構造は、国際ゼオライト学会(International Zeolite Association;IZA)で定義されるIUPAC構造コード(以下、単に「構造コード」ともいう。)で規定される結晶構造である。ゼオライトの結晶構造は、Collection of simulated XRD powder patterns for zeolites,Fifth revised edition(2007)に記載の粉末X線回折(以下、「XRD」ともいう。)パターン、及び、IZAの構造委員会のホームページhttp://www.iza-structure.org/databases/のZeolite Framework Typesに記載のXRDパターンのいずれかと比較することで、同定することができる。
【0017】
本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトは、アルミナに対するシリカのモル比(以下、「SiO2/Al2O3比」ともいう。)が15以上である。SiO2/Al2O3モル比が15未満では高温高湿下に曝露される様な用途での使用における耐久性が低くなりすぎる。SiO2/Al2O3比が高いほど耐熱性が高くなる傾向はあるが、本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトは、SiO2/Al2O3比が15以上50未満であればよく、20以上35以下であることが好ましく、25以上35以下であることがより好ましく、26以上31未満であることが更に好ましい。
【0018】
好ましくは、本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトは結晶性アルミノシリケートである。結晶性アルミノシリケートはアルミニウム(Al)とケイ素(Si)を骨格金属(以下、「T原子」ともいう。)とし、T原子が酸素(O)を介して結合した三次元のネットワーク構造からなる骨格構造を有する。さらに、概念的な結晶性アルミノシリケートはネットワーク構造のみから構成される。これに対し、現実的に存在する結晶性アルミノシリケートは、Si-O-Si結合の切断、T原子の欠損又はシロキシ欠陥など骨格構造に不規則な部分を含む。このような部分は、ネットワーク構造の末端やネットワーク構造中の端部(以下、これらをまとめて「骨格端部」ともいう。)となり、骨格端部はシラノール基(Si-OH)となる。従って、現実的な結晶性アルミノシリケートの骨格にはシラノール基を含まれる。
【0019】
結晶性アルミノシリケートであるゼオライトは、これに含まれるケイ素が多くなるほど、当該ゼオライトの骨格に含まれるシラノール基の量(以下、「シラノール量」とする。)が多くなる傾向がある。そのため、SiO2/Al2O3比が5未満であるゼオライト(以下、「ローシリカゼオライト」ともいう。)は、SiO2/Al2O3比が5を超えるゼオライト(以下、「ハイシリカゼオライト」ともいう。)よりもシラノール量が少なくなる傾向にある。しかしながら、ローシリカゼオライトはSiO2/Al2O3比が低すぎるために、ハイシリカゼオライトよりも耐熱性が低く、高温高湿雰囲気下に曝露される用途に適していない。本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトは、ハイシリカゼオライトでありながらシラノール量が少ない。これにより骨格構造の崩壊が生じにくくなるため、本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトは高温下、更には高温高湿雰囲気下に曝露された後であっても、高い結晶性を有する。
【0020】
本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトは、ケイ素に対するシラノール基のモル比(以下、「SiOH/Si比」ともいう。)は1.6×10-2以下であり、1.5×10-2以下、更には1.3×10-2以下であることが好ましい。本発明のチャバザイト型ゼオライトのSiOH/Si比は0を超えるものであり、0.5×10-2以上、更には0.7×10-2以上、また更には1.1×10-2以上であることが挙げられる。好ましくは、本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトのSiOH/Si比は1.05×10-2以上1.60×10-2以下であり、1.10×10-2以上1.50×10-2以下である。
【0021】
本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトは、このようなSiO2/Al2O3比及びSiOH/Si比を兼備することにより、結晶粒径が大きくなくとも高い耐熱性を示し、高温高湿下に曝露された場合であっても、骨格構造の崩壊が進行しにくい。
【0022】
SiOH/Si比は、チャバザイト型ゼオライトのケイ素の含有量に対する1H MAS NMRスペクトルから求まるシラノール量、から求めることができる。
【0023】
チャバザイト型ゼオライトのケイ素の含有量は蛍光X線分析その他の組成分析により求めることができる。蛍光X線分析によるケイ素の含有量の測定方法として、検量線法による測定方法を挙げることができる。検量線法で使用する検量線は、8~15点の、ケイ素含有量が既知であるケイ素含有化合物について、ケイ素(Si)に相当する蛍光X線ピークの強度を測定し、当該強度-ケイ素含有量とで検量線を引くことで作成すること、が挙げられる。測定試料であるチャバザイト型ゼオライトの蛍光X線パターンのケイ素(Si)に相当する蛍光X線ピークの強度を測定し、当該強度と検量線とを対比すること、でチャバザイト型ゼオライトのケイ素の含有量を測定することができる。
【0024】
シラノール量は1H MAS NMRスペクトルから求めることができる。シラノール量の求め方として、脱水処理をしたチャバザイト型ゼオライトを1H MAS NMR測定し、得られた1H MAS NMRスペクトルから検量線法により、シラノール量を算出することが例示できる。
【0025】
より具体的なシラノール量の測定方法として、チャバザイト型ゼオライトを真空排気下にて350~400℃で5±2時間保持して脱水処理し、脱水処理後のチャバザイト型ゼオライトを窒素雰囲気下で採取し秤量し、1H MAS NMR測定をすることが挙げられる。当該測定により得られる1H MAS NMRスペクトルのシラノール基に帰属されるピーク(2.0±0.5ppmのピーク)の面積強度から、検量線法によりチャバザイト型ゼオライト中のシラノール量を求めることが挙げられる。
【0026】
本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトは上記のSiO2/Al2O3比及びSiOH/Si比を兼備していれば、シラノール量は限定されない。本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトのシラノール量は、1.5×1020個/g以下(2.49×104mol/g以下)、更には1.4×1020個/g以下(2.32×104mol/g以下)、また更には1.3×1020個/g以下(2.16×104mol/g以下)を挙げることができる。本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトのシラノール量は0個/gを超える。
【0027】
図1(a)に示すように、本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトの結晶粒子は、個々の一次粒子が独立して成長した結晶粒子であり、一次粒子と結晶粒子とが同様な形状、すなわち、立方体、菱面体又は略球状の群から選ばれる少なくともいずれかの形状を有する粒子である。そのため、本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトは、そのほとんどが一次粒子とみなすことができる結晶粒子である。これに対し、
図1(b)に示すように、チャバザイト型ゼオライトは、一次粒子同士が化学的に結合及び凝集しながら結晶粒子が形成される場合がある。このような一次粒子同士が化学結合しながら形成された凝集粒子(アグリゲート:aggregate)からなる結晶粒子は、多面体又は不定形な形状を有する粒子であり、仮に立方体又は菱面体状の稜を有していても、一次粒子としてみなすことはできない。
【0028】
本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトは、平均結晶径が0.5μm以上1.5μm未満であり、0.5μm以上1.3μm以下であることが好ましく、0.5μmを超え1.3μm以下であることがより好ましい。平均結晶径が0.5μm未満の結晶粒子では吸着剤あるいは触媒担体に用いた場合、耐久性が低くなる。一方、平均結晶径が1.5μm以上であることで、チャバザイト型ゼオライトが粗大な粒子を含みやすくなり、ハニカム担体にコートした場合に目詰まりや剥離などのコート不良が発生しやすくなり、一方、成形にした場合には圧縮強度の高い成形体とすることが困難になる。
【0029】
本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトの平均結晶径は、SEM観察に基づく一次粒子の平均粒子径を意味する。SEM観察に基づく平均結晶径とは、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察像から計測された一次粒子の粒子径(一次粒子径)の平均値である。より具体的には、150個以上の一次粒子からなる結晶粒子が観察できる任意倍率で観察されたSEM観察像において、当該観察像の視野に存在するチャバザイト型ゼオライトの結晶粒子径の平均値をいう。
【0030】
SEM観察に基づく平均結晶径は、例えば、5,000倍の倍率で撮影した1つまたは複数の観察視野において任意に選択した150個以上の一次粒子からなる結晶粒子を任意の一定方向に測った粒子径を相加平均することによって測定することができる。SEM観察の条件は、一次粒子からなる結晶粒子の形状及び個数が明瞭に観察できるものであれば特に限定されないが、例えば、倍率3000~15000倍によるSEM観察を挙げることができる。
【0031】
本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトの結晶粒子の特徴のひとつとして、一次粒子同士が物理的に凝集した凝集粒子(アグロメレート:agglomerate)、いわゆる二次粒子が少ないことが挙げられる。一次粒子の凝集状態は、体積分布による粒子径測定により測定することができる。
【0032】
本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトは、50%体積径が5.8μm以下であり、更には5.0μm以下であり、また更には4.5μm以下であることが挙げられる。このように、本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトは、結晶粒子が比較的小さいにもかかわらず、従来報告されている同程度の結晶粒子径を有する小粒径のチャバザイト型ゼオライトよりも凝集粒子を形成しにくい。
【0033】
本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトは凝集粒子が少ないため、その特徴のひとつとして、10%体積径に対する50%体積径(以下、「体積粒径比」ともいう。)が3.2以下であり、3.0以下であることが好ましく、2.8以下であることがより好ましい。製造時の操作性(ハンドリング)がしやすくなるため、体積粒径比は1.0以上であることが好ましく、1.3以上であることがより好ましく、2.0以上であることがさらに好ましい。体積粒径比の範囲として1.0以上3.2以下、更には1.3以上2.8以下が挙げられる。
【0034】
10%体積径及び50%体積径は、それぞれ、体積分布による粒子径測定において、体積分率が10%及び50%になる粒子径である。体積分布による粒子径測定の条件として、以下の条件を挙げることができる。
測定方法 : レーザー回折散乱法
屈折率 : 測定粉末 1.66、分散媒 1.33
測定試料 : 測定粉末 1重量%、分散媒 99重量%からなるスラリー
分散媒 : 純水
前処理条件 : 測定試料(スラリー)を超音波ホモジナイザーで2分間処理
【0035】
本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトは上記のSiO2/Al2O3比及びSiOH/Si比を兼備するため、平均結晶径が大きくなくとも高温高湿下に曝露された場合の劣化、すなわち骨格構造の崩壊、が進行しにくい。このように本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトは結晶性の低下が少ないため、高い耐熱性を示す。
【0036】
耐熱性を評価する場合、水熱耐久処理をもって、ゼオライトを高温高湿下に曝露させることができる。水熱耐久処理の条件として以下の条件を例示することができる。
処理雰囲気 :水蒸気10容量%含有空気流通下
空間速度 :6,000hr-1
処理温度 :900±5℃
処理時間 :1時間以上24時間以下
【0037】
なお、ゼオライトの骨格構造の崩壊は、水熱耐久処理の処理時間よりも処理温度の影響を大きく受け、処理温度の上昇に伴い、ゼオライトの骨格構造の崩壊は著しく進行する。例えば、処理温度700℃及び処理時間24時間の水熱耐久処理と比べ、処理温度900℃及び処理時間1時間の水熱耐久処理の方が、ゼオライトの骨格構造の崩壊が進行する。
【0038】
耐熱性の評価は、ゼオライトを高温高湿下に曝露した前後の結晶化度の変化を比較することにより確認することができる。チャバザイト型ゼオライトにおいては、XRDパターンの2θ=21±1°のピークの強度を結晶化度の指標とし、水熱耐久処理を施したゼオライト試料同士の結晶化度を比較することにより、ゼオライト同士の結晶化度の大小を比較することができ、水熱耐久処理後の当該強度が大きいほど、耐熱性が高いことを示す。
【0039】
好ましくは、本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトは、そのXRDパターンにおいて、少なくとも下表に示すXRDピークを有する。
【0040】
【0041】
本発明の実施態様におけるXRD測定条件として以下のものを挙げることができる。
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定モード : ステップスキャン
スキャン条件 : 0.04°/秒
計測時間 : 3秒
測定範囲 : 2θ=4°から44°
【0042】
本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトは、IRスペクトルにおいて、少なくとも1800cm-1以上1930cm-1以下の範囲における吸収ピーク(以下、「ピーク1」ともいう。)、3550cm-1以上3700cm-1以下の範囲における吸収ピーク(以下、「ピーク2」ともいう。)及び3710cm-1以上3745cm-1以下の範囲における吸収ピーク(以下、「ピーク3」ともいう。)を有することが好ましい。
【0043】
本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトは、3450cm-1以上3545cm-1以下の範囲における吸収ピーク(以下、「ピーク4」ともいう。)を有していてもよい。
【0044】
ピーク1は1850cm-1以上1890cm-1以下の範囲における吸収ピークであることが好ましく、ピーク2は3665cm-1以上3695cm-1以下の範囲における吸収ピークであることが好ましく、ピーク3は3720cm-1以上3740cm-1以下の範囲における吸収ピークであることが好ましい。
【0045】
本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトは、ピーク1の最大強度に対するピーク2の最大強度の比(以下、「IR比P2/P1」ともいう。)が0.1以上1.5以下であることが好ましく、0.5以上1.0以下であることがより好ましい。
【0046】
本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトは、ピーク1の最大強度に対するピーク3の最大強度の比(以下、「IR比P3/P1」ともいう。)が1.5以上2.5以下であることが好ましく、1.6以上2.0以下であることがより好ましい。
【0047】
本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトは、ピーク1の最大強度に対するピーク4の最大強度の比(以下、「IR比P4/P1」ともいう。)が0以上1.0以下であることが好ましく、0以上0.1以下であることがより好ましい。
【0048】
本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトは、ピーク2が3665cm-1以上3695cm-1以下の範囲における吸収ピークであり、なおかつ、IR比P2/P1が0.1以上1.5以下及びIR比P3/P1が1.5以上2.5以下を満たすことがより好ましい。
【0049】
本発明の実施態様におけるIRスペクトルの測定条件として、以下の条件が挙げられる。
測定方法 :拡散反射法
測定波長範囲 :400~4000cm-1
分解能 :4cm-1
積算回数 :128回
【0050】
上記のチャバザイト型ゼオライトのIRスペクトル及びXRDパターンは、有機構造指向剤を含有しない状態のものである。
【0051】
本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトは遷移金属を含んでいることが好ましく、鉄(Fe)又は銅(Cu)の少なくともいずれかを含んでいることがより好ましく、銅を含んでいることが更に好ましい。これにより、高い耐熱性を有するだけでなく、高い窒素酸化物還元特性を示すチャバザイト型ゼオライトとなる。そのため、遷移金属を含む本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライト(以下、「本金属含有チャバザイト型ゼオライト」ともいう。)は触媒、更には窒素酸化物還元触媒、また更には高い窒素酸化物還元特性を示す窒素酸化物還元触媒として供することができる。
【0052】
本金属含有チャバザイト型ゼオライトおいて、金属は、細孔や表面など、T原子以外として含まれることが好ましい。
【0053】
本金属含有チャバザイト型ゼオライトが銅を含有する場合、アルミナに対する銅のモル比(以下、「Cu/Al2O3比」又は「Cu/Al2比」ともいう。)は0.1以上1.0以下、更には0.4以上0.8以下であることが好ましい。
【0054】
本金属含有チャバザイト型ゼオライトは、高温高湿下に曝露された後、200℃未満の温度域において特に高い窒素酸化物還元特性を示す。その理由のひとつとして、本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトが高い耐熱性を有することが挙げられる。
【0055】
本金属含有チャバザイト型ゼオライトは、骨格構造が崩壊しにくいため、高温高湿下に曝露された後であっても、従来の金属含有チャバザイト型ゼオライトと比べて高い窒素酸化物還元特性を示し、特に200℃未満の低温域における高い窒素酸化物還元特性を示す。本金属含有チャバザイト型ゼオライトの窒素酸化物還元特性は、100℃以上250℃以下の温度域、好ましくは100℃以上200℃以下の温度域、より好ましくは150℃以上200℃以下の温度域において、特に高い。
【0056】
次に、本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトの製造方法について説明する。
【0057】
本発明に係るチャバザイト型ゼオライトは、シリカ源、アルミニウム源、アルカリ源、構造指向剤及び水を含む組成物(以下、「原料組成物」ともいう。)を結晶化する結晶化工程を有し、前記組成物は、シリカに対するナトリウムのモル比が0を超え、ナトリウムに対するカリウムのモル比が1.0未満であり、シリカに対する構造指向剤のモル比が0.1未満であり、シリカに対する水のモル比が20未満であり、なおかつ、アルミナに対するシリカのモル比が27.5以上50.0未満であることを特徴とする製造方法、により製造することができる。
【0058】
本発明の実施態様における製造方法は構造指向剤(以下、「SDA」ともいう。)を含む原料組成物を結晶化するチャバザイト型ゼオライトの製造方法に係る。SDAを含まない組成物を結晶化する場合、たとえ結晶径が0.5μmを超えるチャバザイト型ゼオライトの粒子が得られたとしても、当該粒子は、一次粒子同士が化学的な結合によって強固に結合した粒子である。このような粒子は規則性なく配向しながら結晶成長した一次粒子の集合体からなる凝集粒子(アグリゲート:aggregate)である。凝集粒子は、結晶化後の処理で凝集をほぐすことが難しいために嵩高くなるだけでなく、粉砕等の物理的な力を加えることにより結晶自体が崩壊する。そのため、凝集粒子(アグリゲート)からなるチャバザイト型ゼオライトは触媒や触媒担体としての使用には適していない。
【0059】
さらに、本発明の実施態様における製造方法は、シリカに対するナトリウムのモル比が0を超える原料組成物を結晶化するものであり、少なくともナトリウムを含有する原料組成物を結晶化するチャバザイト型ゼオライトの製造方法に係る。SDAとナトリウムとを含有することで、一次粒子同士の化学結合による結晶成長が抑制され、個々の一次粒子の結晶成長が他の一次粒子の影響を受けずに進行しやすくなる。その結果、個々の一次粒子が独立して成長した結晶粒子が得られる。これにより、個々の結晶粒子は一次粒子の形状を反映した形状を有した粒子形状又は略球状の粒子形状の少なくともいずれかとなる。さらにこの様な結晶粒子は物理的な凝集により形成される凝集粒子(アグロメレート:agglomerate)を形成し難く、一次粒子が分散した状態の結晶粒子からなるチャバザイト型ゼオライトが得られる。すなわち、本発明の製造方法により、物理的な凝集粒子(アグロメレート)及び化学的な凝集粒子(アグリゲート)のいずれもが生じにくく、分散性の高い一次粒子からなる結晶粒子、が得られる。すなわち、本発明の実施態様における製造方法によって、結晶粒径が大きすぎず、なおかつ、体積粒径比が小さい粒子のチャバザイト型ゼオライトが得られる。
【0060】
シリカ源は、ケイ素(Si)を含む化合物であり、コロイダルシリカ、沈降法シリカ、無定型シリカ、珪酸ナトリウム、テトラエチルオルトシリケート又は非晶質アルミノシリケートの群から選ばれる少なくとも1種、更には非晶質アルミノシリケートを挙げることができる。
【0061】
アルミナ源は、アルミニウム(Al)を含む化合物であり、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム又は非晶質アルミノシリケートの群から選ばれる少なくとも1種、更には非晶質アルミノシリケートを挙げることができる。
【0062】
シリカ源及びアルミナ源は、他の原料と十分均一に混合できる形態のものが好ましく、非晶質アルミノシリケートであることが好ましい。
【0063】
アルカリ源は、アルカリ金属を含む化合物である。本発明の実施態様における製造方法におけるアルカリ源は少なくともナトリウムを含む化合物であり、カリウム、ルビジウム又はセシウムの群から選ばれる少なくとも1種を含む化合物とナトリウムを含む化合物であることが好ましい。アルカリ金属を含む化合物は、アルカリ金属の水酸化物、フッ化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、硝酸塩又は炭酸塩の群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0064】
シリカ源やアルミナ源等、原料組成物に含まれる他の原料がナトリウム、カリウム、ルビジウム又はセシウムの群から選ばれる少なくとも1種を含む場合、これら他の原料もアルカリ源とすることができる。
【0065】
原料組成物に含まれる水は純水であってもよいが、原料組成物に含まれる他の原料が、水溶液等の水を含むものである場合、これら他の原料の水分も原料組成物中の水とすることができる。
【0066】
本発明の実施態様においてSDAは有機構造指向剤であることが好ましく、N,N,N-トリアルキルアダマンタンアンモニウムカチオン、N,N,N-トリメチルベンジルアンモニウムカチオン、N-アルキル-3-キヌクリジノールカチオン又はN,N,N-トリアルキルエキソアミノノルボルナンカチオンの群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、N,N,N-トリアルキルアダマンタンアンモニウムカチオン又はN,N,N-トリメチルベンジルアンモニウムカチオンの少なくともいずれかであることが更に好ましく、N,N,N-トリアルキルアダマンタンアンモニウムカチオン(以下、「TAAD+」ともいう。)であることが更により好ましい。好ましいTAAD+として、N,N,N-トリメチルアダマンタンアンモニウム(以下、「TMAD+」ともいう。)を挙げることができる。
【0067】
SDAは塩の形態で原料組成物に含まれていてもよく、上記いずれかのカチオンを含む水酸化物、臭化物、ヨウ化物、炭酸塩、メチルカーボネート塩又は硫酸塩の群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、水酸化物、臭化物又はヨウ化物の群から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましく、水酸化物であることが更により好ましい。
【0068】
例えば、SDAがTMAD+である場合、TMAD+の塩として、N,N,N-トリメチルアダマンタンアンモニウム水酸化物、N,N,N-トリメチルアダマンタンアンモニウムフッ化物、N,N,N-トリメチルアダマンタンアンモニウム臭化物、N,N,N-トリメチルアダマンタンアンモニウムヨウ化物、N,N,N-トリメチルアダマンタンアンモニウム炭酸塩、N,N,N-トリメチルアダマンタンアンモニウムメチルカーボネート塩又はN,N,N-トリメチルアダマンタンアンモニウム硫酸塩の群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができ、N,N,N-トリメチルアダマンタンアンモニウム水酸化物又はN,N,N-トリメチルアダマンタンアンモニウムハロゲン化物の少なくともいずれかであることが好ましく、N,N,N-トリメチルアダマンタンアンモニウム水酸化物(以下、「TMADOH」ともいう。)であることがより好ましい。本発明の実施態様において、原料組成物に含まれる有機構造指向剤がTMAD+のみであることが好ましい。
【0069】
原料組成物に塩素やフッ素が含まれる場合、これらの腐食性により、耐腐食性の製造装置を使用する必要があり、これにより製造コストが高くなりやすい。そのため、原料組成物は、フッ素を含まないことが好ましく、塩素又はフッ素の少なくともいずれかを含まないことがより好ましく、塩素やフッ素を含まないことが好ましい。測定誤差等を考慮すると、原料組成物の塩素含有量及びフッ素含有量は、それぞれ、6000ppm以下、更には1000ppm以下であることが好ましい。
【0070】
原料組成物は、アルミナに対するシリカのモル比(SiO2/Al2O3比)が27.5以上50.0未満であり、27.8以上50.0未満であることが好ましい。結晶化工程において、得られるチャバザイト型ゼオライトのSiO2/Al2O3比は、原料組成物のSiO2/Al2O3比よりも低くなる傾向がある。SiO2/Al2O3比が27.5未満では、本発明のSiO2/Al2O3比を有するチャバザイト型ゼオライトが結晶化しにくくなることや、得られるチャバザイト型ゼオライトの物理的な凝集が強くなる傾向がある。SiO2/Al2O3比が高くなりすぎるとチャバザイト型ゼオライト以外のゼオライトが生成し、単一相のチャバザイト型ゼオライトが得られにくくなる。そのためSiO2/Al2O3比は50.0未満であり、40.0以下であることが好ましい。特に好ましいSiO2/Al2O3比の範囲として27.5以上40.0以下、更には30.0以上35.0以下を挙げることができる。
【0071】
原料組成物は、シリカに対するSDAのモル比(以下、「SDA/SiO2比」ともいう。)が0.1未満であり、0.095以下、更には0.085以下であることが好ましい。原料組成物が後述するシリカに対する水のモル比(以下、「H2O/SiO2比」ともいう。)を有し、なおかつ、SDA/SiO2比が0.1以上である場合は得られるチャバザイト型ゼオライトが微細になりすぎる。SDAは高価であるため、SDA/SiO2比が0.1以上では製造コストが高くなる。
【0072】
原料組成物はSDAを含むためSDA/SiO2比は0を超えるが、SDA/SiO2比が0.05以上、更には0.06以上であることにより、チャバザイト型ゼオライトの結晶化が促進される。これにより、チャバザイト型ゼオライト以外のゼオライトの結晶化や、チャバザイト型ゼオライト以外のゼオライトとチャバザイト型ゼオライトとの混合物の結晶化などが生じにくくなり、単一相のチャバザイト型ゼオライトが得られやすくなる傾向がある。工業的な製造に適した結晶化時間とする観点から、SDA/SiO2比は0.06以上0.1未満、更には0.07以上0.09以下であることが好ましい。
【0073】
原料組成物は、シリカに対する水(H2O)のモル比(H2O/SiO2比)が20未満であり、19以下であることが好ましい。上述のSDA/SiO2比を有し、なおかつ、H2O/SiO2比が20未満であることで、得られるチャバザイト型ゼオライトが微細になりにくくなる。これに加え、H2O/SiO2比が20以上であると、後述するOH/SiO2比の範囲において、本発明のチャバザイト型ゼオライトの結晶化が進行しなくなる。一方、原料組成物は水を含むためH2O/SiO2比は0を超えるが、H2O/SiO2比を5以上、更には9以上であることで、原料組成物に適度な流動性を付与することができ、原料組成物の組成が均一になり易い。より好ましいH2O/SiO2比として10以上20未満、更には11以上19以下を挙げることができる。特に好ましいH2O/SiO2比として、11以上18以下、更には11以上16以下を挙げることができる。
【0074】
原料組成物は、シリカに対するナトリウムのモル比(以下、「Na/SiO2比」ともいう。)が0を超えるものであり、少なくともナトリウムを含む。Na/SiO2比は0.02以上、更には0.04以上であることが好ましい。Na/SiO2比は0.1以下、更には0.08以下であることが好ましい。Na/SiO2比がこの範囲であることで、本発明のSiO2/Al2O3比、SDA/SiO2比及びH2O/SiO2比を有する原料組成物においてシリカ源の溶解が促進され、効率的にチャバザイト型ゼオライトの結晶化が生じやすい。
【0075】
原料組成物は、ナトリウムに対するカリウムのモル比(以下、「K/Na比」ともいう。)は1.0未満であり、0.6以下であることが好ましい。原料組成物はカリウムを含まなくてもよいが、カリウムを含んでいてもよい(すなわち、K/Na比が0以上であればよい)。しかしながら、原料組成物がナトリウムに加えてカリウムを含むことでチャバザイト型ゼオライト以外のゼオライトの生成がより抑制される。一方、カリウムがナトリウムよりも多くなると結晶粒子が大きくなり過ぎる、或いは、結晶粒子同士が物理的に凝集し凝集粒子(アグロメレート)が生成やすくなる傾向がある。したがって、原料組成物がカリウムを含む場合、好ましいK/Na比として0以上1.0未満、更には0.1以上1.0未満、また更には0以上0.6以下、また更には0以上0.3以下、また更には0.2以上0.6以下を挙げることができる。
【0076】
原料組成物は、シリカに対する水酸化物イオンのモル比(以下、「OH/SiO2比」ともいう。)が0.1以上0.9未満であることが好ましく、0.15以上0.5以下であることがより好ましい。OH/SiO2比が0.1以上であることでチャバザイト型ゼオライトの結晶化が進行しやすくなる。0.9以上の場合はシリカ源の溶解が促進されるため、CHA構造の単一相であり、なおかつ、本発明の実施態様におけるSiO2/Al2O3比とSiOH/Si比を兼備するチャバザイト型ゼオライトが得られにくくなる傾向がある。
【0077】
結晶化工程において、原料組成物は水熱処理により結晶化する。結晶化は80℃以上で進行する。
【0078】
原料組成物を密閉式圧力容器中で、100~200℃の任意の温度で、十分な時間をかけて結晶化させることにより製造することができる。好ましい結晶化温度として155℃以上185℃以下が挙げられる。結晶化は、原料組成物を静置した状態で行ってもよいが、原料組成物を攪拌混合した状態で行うことが好ましい。結晶化時間は1時間以上100時間以下、更には10時間以上80時間以下を挙げることができる。
【0079】
本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトの製造方法は、結晶化工程の後、洗浄工程、乾燥工程、SDA除去工程、又は、アンモニウム処理工程の1つ以上を含んでいてもよい。
【0080】
洗浄工程は、結晶化後のチャバザイト型ゼオライトと液相とを固液分離する。洗浄工程
は、公知の方法で固液分離をし、固相として得られるチャバザイト型ゼオライトを純水で
洗浄すればよい。
【0081】
乾燥工程は、チャバザイト型ゼオライトから水分を除去する。乾燥工程の条件は任意であるが、大気中、50℃以上、150℃以下、更には100℃以上、150℃以下で2時間以上、静置又はスプレードライヤーによる乾燥が例示できる。
【0082】
SDA除去工程は、チャバザイト型ゼオライトに含まれるSDAを除去するために行う。通常、結晶化工程を経たチャバザイト型ゼオライトは、その細孔内にSDAを含有している。そのため、必要に応じてこれを除去することができる。
【0083】
SDA除去工程は、SDAが除去されれば任意の方法で行うことができる。これらの除去法として、酸性水溶液を用いた液相処理、レジンなどを用いた交換処理、熱分解処理又は焼成処理の群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。製造効率の観点から、SDA除去工程は熱分解処理、又は焼成処理のいずれかであることが好ましい。SDA除去工程として、チャバザイト型ゼオライトを大気中、400℃以上700℃以下で処理する工程が挙げられる。
【0084】
アンモニウム処理工程は、チャバザイト型ゼオライトに含有されるアルカリ金属を除去するために行う。アンモニウム処理工程は一般的な方法で行うことができる。例えば、アンモニウムイオンを含有する水溶液をチャバザイト型ゼオライトと接触させることで行う。
【0085】
本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトを金属含有チャバザイト型ゼオライトする場合、本発明の実施態様における製造方法は、チャバザイト型ゼオライトと、銅又は鉄の少なくともいずれかを含有する化合物(以下、「金属含有化合物」ともいう。)とを接触させる金属含有工程、を有していてもよい。
【0086】
金属含有工程では、チャバザイト型ゼオライトと金属含有化合物とを接触させる。これにより、チャバザイト型ゼオライトの細孔内に銅又は鉄の少なくともいずれかを含ませることができる。チャバザイト型ゼオライトに銅又は鉄の少なくともいずれかが含有されれば、チャバザイト型ゼオライトと金属含有化合物との接触させる方法(以下、「金属含有方法」ともいう。)は、任意の方法であればよい。金属含有方法として、イオン交換法、含浸担持法、蒸発乾固法、沈殿担持法又は物理混合法の群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。チャバザイト型ゼオライトに含有させる銅又は鉄の少なくともいずれかの量の制御が容易であるため、金属含有方法は含浸担持法であることが好ましい。
【0087】
金属含有工程で使用する金属含有化合物は任意であり、銅又は鉄の少なくともいずれかを含む硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、錯塩、酸化物又は複合酸化物の群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。チャバザイト型ゼオライトに均一に銅又は鉄の少なくともいずれかが含有されやすくなるため、金属含有化合物は銅又は鉄の少なくともいずれかを含む水溶性化合物であることが好ましく、銅又は鉄の少なくともいずれかを含む硝酸塩、硫酸塩又は酢酸塩の群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0088】
本発明の実施態様における製造方法では、金属含有工程により得られた金属含有チャバザイト型ゼオライトを焼成する焼成工程、を有していることが好ましい。金属含有方法によっては、金属化合物のカウンターイオン等の不純物が残存する場合がある、焼成工程ではこの様な不純物を除去する。焼成工程は、金属含有チャバザイト型ゼオライトを任意の条件で焼成処理すればよい。焼成条件として、例えば、大気中、焼成温度500℃以上700℃以下、焼成時間0.5時間以上5時間以下を挙げることができる。
【0089】
本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライト及び金属含有チャバザイト型ゼオライト(以下、「本チャバザイト型ゼオライト等」ともいう。)は触媒として使用することができる。本チャバザイト型ゼオライト等を含む触媒(以下、「本触媒」ともいう。
)は、粉末又は成形体のいずれの形状で使用することができる。本触媒を粉末状で使用する場合、これをハニカム等の基材に塗布又はウォシュコートした触媒部材としてもよい。本触媒を成形体として使用する場合、球状、略球状、楕円状、円板状、円柱状、多面体状、不定形状又は花弁状の群から選ばれる少なくとも1種の形状、その他用途に適した形状とすればよい。
【0090】
また、本触媒を成形体とする場合、本触媒に加え、シリカ、アルミナ、カオリン、アタパルガイト、モンモリロナイト、ベントナイト、アロフェン又はセピオライトからなる群の少なくとも1種から選ばれる粘土を含んでいてもよい。
【0091】
特に本触媒は、窒素酸化物還元触媒として、更には内燃機関の排気ガス中の窒素酸化物還元触媒として使用することが好ましい。
【0092】
窒素酸化物還元は、本触媒と、窒素酸化物含有気体とを接触させればよい。窒素酸化物含有気体と、本触媒とを接触させる場合の空間速度は任意であり、体積基準で500~50万時間-1、更は2000~30万hr-1であることが挙げられる。
【0093】
本触媒が還元する窒素酸化物として、例えば、一酸化窒素、二酸化窒素、三酸化二窒素、四酸化二窒素又は一酸化二窒素の群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができ、一酸化窒素、二酸化窒素又は一酸化二窒素の群から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0094】
窒素酸化物含有気体は窒素酸化物以外の成分を含んでいてもよく、窒素酸化物含有気体として炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、窒素、酸素、硫黄酸化物又は水の群から選ばれる少なくとも1種と窒素酸化物とを含む気体を挙げることができる。具体的、窒素酸化物含有気体として、内燃機関の排ガス、更にはディーゼル自動車、ガソリン自動車、ボイラー、ガスタービン等の排ガスを挙げることができる。
【0095】
本触媒を使用した窒素酸化物の還元方法は、特に、還元剤の存在下で窒素酸化物を還元する方法であることが好ましい。還元剤としては、アンモニア、尿素、有機アミン、炭化水素、アルコール、ケトン、一酸化炭素又は水素の群から選ばれる少なくとも1つが挙げられる。窒素酸化物還元効率をより高めるため、還元剤はアンモニア、尿素又は有機アミンの群から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。また、窒素酸化物含有気体が炭化水素、一酸化炭素又は水素の群から選ばれる少なくとも1種などの還元性物質を含む場合、これも還元剤とみなすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【
図1】結晶粒子の形状を示す模式図((a)一次結晶粒子、(b)アグリゲート)
【
図2】比較例6のチャバザイト型ゼオライトのSEM観察図(上図:倍率15000倍、下図:倍率1000倍)
【実施例】
【0097】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。しかしながら、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0098】
(結晶構造、及び、結晶化度)
一般的なX線回折装置(商品名:MXP-3、マックサイエンス社製)を使用し、以下の条件で試料の粉末X線回折(以下、「XRD」とする。)測定をした。
線源 : CuKα線(λ=1.5405Å)
測定モード : ステップスキャン
スキャン条件 : 0.04°/秒
計測時間 : 3秒
測定範囲 : 2θ=4°から44°
得られたXRDパターンとIZAの構造委員会のホームページに記載のXRDパターンとを比較し、試料の結晶構造を同定した。また、XRDパターンの格子面間隔(d)=4.25に相当するXRDピーク(2θ=21±1°)の高さを結晶化度とした。
(SiO2/Al2O3比)
試料の組成は蛍光X線法により測定した。Alに対するSiのX線強度比から、検量線を用いてSiO2/Al2O3比を算出した。
【0099】
(シラノール基の含有量)
1H MAS NMRにより、チャバザイト型ゼオライトのシラノール基の含有量を測定した。試料として、空気流通下600℃で2時間処理し、20%塩化アンモニウム水溶液でイオン交換した後、大気中、110℃で一晩乾燥したチャバザイト型ゼオライトを使用した。
測定に先立ち、試料を真空排気下にて400℃で5時間保持し脱水することで前処理とした。前処理後、室温まで冷却した試料を窒素雰囲気下で採取し秤量した。測定装置は一般的なNMR測定装置(装置名:VXR-300S、Varian製)を使用した。測定条件は以下のとおりとした。
共鳴周波数 :300.0MHz
パルス幅 :π/2
測定待ち時間 :10秒
積算回数 :32回
回転周波数 :4kHz
シフト基準 :TMS
得られた1H MAS NMRスペクトルから2.0±0.5ppmのピークをシラノール基に帰属されるピークとした。当該ピークを波形分離し、その面積強度を求めた。得られた面積強度から検量線法により試料中のシラノール量を求めた。
【0100】
(SiOH/Si比)
蛍光X線分析により得られたチャバザイト型ゼオライトのケイ素含有量(mol/g)に対する、1H MAS NMRにより測定されたチャバザイト型ゼオライトのシラノール基の含有量(mol/g)を求め、これをSiOH/Si比とした。
(Cu/Al2O3比)
銅含有量はICP法により測定した。試料をフッ酸と硝酸の混合溶液に溶解し測定溶液とした。一般的なICP装置(装置名:Optima 5300DV、Perkin Elmer製)を用い、当該測定溶液のAl濃度、Cu濃度、Na濃度及びK濃度を測定した。得られた濃度からCu/Al2O3比、Na/Al2O3比及びK/Al2O3比を求めた。
【0101】
(銅含有量)
SiO2/Al2O3比の測定結果、及び、Cu/Al2O3比、Na/Al2O3比及びK/Al2O3比の測定結果を用い、以下の式から銅含有量を求めた。
銅含有量(重量%)=(d×MCu×100)
/(MAl2O3+a・MSiO2+b/2・MNa2O+c/2・MK2O+d・MCuO)
上記の式において、aはSiO2/Al2O3比(mol/mol)、bはNa/Al2O3比(mol/mol)、cはK/Al2O3比(mol/mol)、dはCu/Al2O3比(mol/mol)、MCuは銅の原子量(63.5g/mol)、MAl2O3はAl2O3の分子量(102.0g/mol)、MSiO2はSiO2の分子量(60.1g/mol)、MNa2OはNa2Oの分子量(62.0g/mol)、MK2OはK2Oの分子量(94.2g/mol)、及び、MCuOはCuOの分子量(79.5g/mol)である。
【0102】
(平均結晶径の測定方法)
一般的な走査型電子顕微鏡(装置名:JSM-6390LV型、日本電子社製)を用い、試料を走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」とする。)観察した。SEM観察の倍率は10,000倍とした。SEM観察により得られた試料のSEM像から、150個の一次粒子を無作為に選択し、その水平フェレ径を測定した。得られた測定値の平均値を求め、試料の平均結晶径とした。
(10%体積径及び50%体積径の測定)
粉末試料1gと純水99gとを混合しスラリーを得、これを測定試料とした。得られたスラリーを超音波ホモジナイザーで2分間処理することで、スラリー中の粉末試料を分散させた。処理後のスラリーをレーザー回折散乱法により体積径を測定することで、10%体積径及び50%体積径を測定した。得られた10%体積径及び50%体積径から体積径比を算出した。
【0103】
(窒素酸化物還元率(%)の測定方法)
試料を成形及び破砕して、凝集径12~20メッシュの凝集粒子とした。凝集粒子状の試料1.5mLを常圧固定床流通式反応管に充填し、これに所定の温度で窒素酸化物含有ガスを流通させ、常圧固定床流通式反応管の入口及び出口の窒素酸化物濃度を測定した。窒素酸化物含有ガスの流通条件は以下のとおりである。
窒素酸化物含有ガスの組成 : NO 200ppm
NH3 200ppm
O2 10容量%
H2O 3容量%
N2 残部
窒素酸化物含有ガスの流量 : 1.5L/min
空間速度 : 60,000hr-1
得られた窒素酸化物濃度から以下の式により窒素酸化物還元率を求めた。
窒素酸化物還元率(%)
={([NOx]in-[NOx]out)/[NOx]in}×100
[NOx]inは常圧固定床流通式反応管の入口の窒素酸化物含有ガスの窒素酸化物濃度であり、[NOx]outは常圧固定床流通式反応管の出口の窒素酸化物含有ガスの窒素酸化物濃度である。
【0104】
実施例1
N,N,N-トリメチルアダマンタンアンモニウム水酸化物25%水溶液(以下、「TMADAOH25%水溶液」ともいう。)、純水、水酸化ナトリウム48%水溶液及び非晶質アルミノシリケートを加えよく混合し、以下の組成を有する原料組成物を得た。
SiO2/Al2O3比 = 27.5
TMADA/SiO2比 = 0.081
Na/SiO2比 = 0.094
K/SiO2比 = 0
K/Na比 = 0
H2O/SiO2比 = 12
OH/SiO2比 = 0.175
【0105】
原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、55rpmで回転させながら170℃で70時間加熱した。加熱後の生成物を固液分離し、得られた固相を十分量の純水で洗浄し、110℃で乾燥した。
【0106】
当該生成物はチャバザイト型ゼオライトの単一相であり、SiO2/Al2O3比が26.2、SiOH/Si比が1.1×10-2、平均結晶径が0.6μm及び体積径比が2.29であった。
【0107】
実施例2
TMADAOH25%水溶液、純水、水酸化ナトリウム48%水溶液、水酸化カリウム48%水溶液、及び、非晶質アルミノシリケートを混合し、以下の組成を有する原料組成物を得たこと以外は実施例1と同様な方法で生成物を得、これを本実施例のチャバザイト型ゼオライトとした。
SiO2/Al2O3比 = 32.3
TMADA/SiO2比 = 0.081
Na/SiO2比 = 0.140
K/SiO2比 = 0.029
K/Na比 = 0.21
H2O/SiO2比 = 18
OH/SiO2比 = 0.250
【0108】
本実施例のチャバザイト型ゼオライトは、チャバザイト型ゼオライトの単一相であり、SiO2/Al2O3比が30.2、SiOH/Si比は1.2×10-2、平均結晶径が1.0μm及び体積径比が2.74であった。
【0109】
本実施例のチャバザイト型ゼオライトは、IRスペクトルにおいて、1861cm-1、3683cm-1及び3732cm-1に吸収ピークを有していた。これより、本実施例のチャバザイト型ゼオライトは、ピーク1、ピーク2及びピーク3を有するが、ピーク4を有していないことが確認できた。また、各吸収スペクトルの比は、IR比P2/P1が0.75、IR比P3/P1が1.67及びIR比P4/P1が0であった。
【0110】
実施例3
TMADAOH25%水溶液、純水、水酸化ナトリウム48%水溶液、水酸化カリウム48%水溶液及び非晶質アルミノシリケートを混合し、以下の組成を有する原料組成物を得たこと以外は実施例1と同様な方法で生成物を得、これを本実施例のチャバザイト型ゼオライトとした。
SiO2/Al2O3比 = 32.3
TMADA/SiO2比 = 0.081
Na/SiO2比 = 0.111
K/SiO2比 = 0.058
K/Na比 = 0.52
H2O/SiO2比 = 18
OH/SiO2比 = 0.250
【0111】
本実施例のチャバザイト型ゼオライトは、チャバザイト型ゼオライトの単相であり、SiO2/Al2O3比が30.7、SiOH/Si比が1.3×10-2、平均結晶径が0.5μm及び体積径比が2.63であった。
【0112】
実施例4
TMADAOH25%水溶液、純水、水酸化ナトリウム48%水溶液、水酸化カリウム48%水溶液及び非晶質アルミノシリケートを混合し、以下の組成を有する原料組成物を得たこと以外は実施例1と同様な方法で生成物を得、これを本実施例のチャバザイト型ゼオライトとした。
SiO2/Al2O3比 = 32.3
TMADA/SiO2比 = 0.081
Na/SiO2比 = 0.149
K/SiO2比 = 0.020
K/Na比 = 0.13
H2O/SiO2比 = 18
OH/SiO2比 = 0.250
【0113】
本実施例のチャバザイト型ゼオライトは、チャバザイト型ゼオライトの単一相であり、SiO2/Al2O3比が29.9、SiOH/Si比が1.3×10-2、平均結晶径が1.3μm及び体積径比が2.19であった。
【0114】
実施例5
TMADAOH25%水溶液13.0g、純水12.6g、水酸化ナトリウム48%水溶液0.4g、非晶質アルミノシリケート30.9gを混合し、以下の組成を有する原料組成物を得たこと以外は実施例1と同様な方法で生成物を得、これを本実施例のチャバザイト型ゼオライトとした。
SiO2/Al2O3比 = 32.3
TMADA/SiO2比 = 0.081
Na/SiO2比 = 0.094
K/SiO2比 = 0
K/Na比 = 0
H2O/SiO2比 = 12
OH/SiO2比 = 0.175
【0115】
本実施例のチャバザイト型ゼオライトは、チャバザイト型ゼオライトの単一相であり、SiO2/Al2O3比が32.5、SiOH/Si比が1.3×10-2、平均結晶径が1.0μm及び体積径比が2.06であった。
【0116】
比較例1
特開2010-168269号に準じた方法により、チャバザイト型ゼオライトを合成した。すなわち、TMADAOH25%水溶液、純水、水酸化ナトリウム48%水溶液、水酸化カリウム48%水溶液、非晶質ルミノシリケートを混合し、以下の組成を有する原料組成物を得た。
SiO2/Al2O3比 = 32.3
TMADA/SiO2比 = 0.081
Na/SiO2比 = 0.084
K/SiO2比 = 0.084
K/Na比 = 1.0
H2O/SiO2比 = 18
OH/SiO2比 = 0.249
【0117】
当該原料組成物を使用したこと、加熱温度を150℃としたこと以外は実施例1と同様な方法で生成物を得、これを本比較例のチャバザイト型ゼオライトとした。
【0118】
本比較例のチャバザイト型ゼオライトは、チャバザイト型ゼオライトの単一相であり、SiO2/Al2O3比が31.0、SiOH/Si比が1.7×10-2、平均結晶径が1.6μm及び体積径比が1.23であった。このように、本比較例のチャバザイト型ゼオライトは大きな平均粒子径を有していた。
【0119】
比較例2
TMADAOH25%水溶液、純水、水酸化ナトリウム48%水溶液、水酸化カリウム48%水溶液及び非晶質アルミノシリケートを混合し、以下の組成を有する原料組成物を得たこと以外は実施例1と同様な方法で生成物を得、これを本実施例のチャバザイト型ゼオライトとした。
SiO2/Al2O3比 = 27.0
TMADA/SiO2比 = 0.081
Na/SiO2比 = 0.140
K/SiO2比 = 0.029
K/Na比 = 0.21
H2O/SiO2比 = 18
OH/SiO2比 = 0.250
【0120】
本実施例のチャバザイト型ゼオライトは、チャバザイト型ゼオライトの単一相であり、SiO2/Al2O3比が24.1、SiOH/Si比が1.0×10-2、平均結晶径が0.5μm及び体積径比が3.47であった。このように、本比較例のチャバザイト型ゼオライトは平均粒子径が小さく、粒子同士の物理的な凝集が強いものであった。
【0121】
比較例3
TMADAOH25%水溶液、純水、水酸化ナトリウム48%水溶液、水酸化カリウム48%水溶液、非晶質アルミノシリケートを混合し、以下の組成を有する原料組成物を得たこと以外は実施例1と同様な方法で生成物を得、これを本比較例のチャバザイト型ゼオライトとした。
SiO2/Al2O3比 = 23.3
TMADA/SiO2比 = 0.081
Na/SiO2比 = 0.140
K/SiO2比 = 0.029
K/Na比 = 0.21
H2O/SiO2比 = 18
OH/SiO2比 = 0.250
【0122】
本比較例のチャバザイト型ゼオライトは、チャバザイト型ゼオライトの単一相であり、SiO2/Al2O3比が21.0、SiOH/Si比が1.0×10-2、平均結晶径が0.3μm及び体積径比が3.12であった。このように、本比較例のチャバザイト型ゼオライトは平均粒子径が非常に小さかった。
【0123】
比較例4
TMADAOH25%水溶液、純水、水酸化ナトリウム48%水溶液、水酸化カリウム48%水溶液及び非晶質アルミノシリケートを混合し、以下の組成を有する原料組成物を得たこと以外は実施例1と同様な方法で生成物を得、これを本比較例のチャバザイト型ゼオライトとした。
SiO2/Al2O3比 = 14.7
TMADA/SiO2比 = 0.081
Na/SiO2比 = 0.140
K/SiO2比 = 0.029
K/Na比 = 0.21
H2O/SiO2比 = 18
OH/SiO2比 = 0.250
【0124】
本比較例のチャバザイト型ゼオライトは、チャバザイト型ゼオライトの単一相であり、SiO2/Al2O3比が13.7、SiOH/Si比が0.6×10-2、平均結晶径が0.5μm及び体積径比が1.67であった。このように、本比較例のチャバザイト型ゼオライトはSiO2/Al2O3比が低いものであった。
【0125】
比較例5
TMADAOH25%水溶液、純水、水酸化カリウム48%水溶液及び非晶質アルミノシリケートを混合し、以下の組成を有する原料組成物を得たこと以外は実施例1と同様な方法で生成物を得、これを本比較例のチャバザイト型ゼオライトとした。
SiO2/Al2O3比 = 29.5
TMADA/SiO2比 = 0.081
Na/SiO2比 = 0
K/SiO2比 = 0.169
K/Na比 = ∞
H2O/SiO2比 = 18
OH/SiO2比 = 0.250
【0126】
本比較例のチャバザイト型ゼオライトは、チャバザイト型ゼオライトの単一相であり、SiO2/Al2O3比が26.9、平均結晶径が1.5μm及び体積径比が1.96であった。
【0127】
比較例6
米国特許4,665,110号のExample1及び5の方法に準じた方法により、SSZ-13の合成を行った。すなわち、1-アダマンタンアミン(Sigma-Aldrich)17.5gにdimethyl formamide(Kishida Chemical)105mlを加えて溶解した。溶解後、トリブチルアミン(Kishida Chemical)50.8gを添加し、これを氷冷下で撹拌しながら、methyl iodide(Wako Pure Chemical)49.7gをゆっくり滴下した。
【0128】
methyl iodideの滴下後、これを5日間撹拌することで反応させ、白色沈殿を得た。当該白色沈殿物をdiethyl ether(Kishida Chemical)100mLで5回洗浄し、減圧乾燥することとで白色粉末を得た。
【0129】
得られた白色粉末の元素分析、及び、NMR測定の結果、当該白色粉末はN,N,N-trimethyladamantammonium iodide(以下、「Template A」とする。)であることが同定できた。
【0130】
水に、Ludox AS-30 13.6g、Template A 5.3gを混合して溶液1を得た。また、水に、Al2(SO4)3・18H2O 1.1g、及び、solid potassium hydroxide 2.91gを混合して溶液2を得た。
【0131】
溶液1に溶液2を添加及び混合して均一な乳白色の溶液を得た。混合後の溶液を80mLのステンレス製の反応容器に充填及び密閉し、当該反応容器を30rpmで回転させながら、150℃で6日間加熱して生成物を得た。得られた生成物を水、メタノール、及び、アセトンの順で洗浄し、110℃で乾燥することで白色粉末を得た。
【0132】
得られた白色粉末はSSZ-13の単一相であることが確認できた。しかしながら、
図2に示したように、結晶形態は複数の結晶が不規則に化学的に凝集しながら成長した不定形状の凝集粒子(アグリゲート)であり、当該凝集粒子の一部に立方体又は菱面体状の稜が確認できた。しかしながら、本比較例のチャバザイト型ゼオライトでは独立した一次粒子が確認できず、その平均結晶径は評価できなかった。SiO
2/Al
2O
3比は28.3であった。また、体積径比が3.97であり、著しく凝集した粒子であることが確認できた。
【0133】
上記の実施例及び比較例のチャバザイト型ゼオライトの評価結果を下表に示す。
【0134】
【0135】
これらの実施例より、本実施例の製造方法は、SiO2/Al2O3比が15以上であり、SiOH/Si比が1.6×10-2以下であり、平均結晶径が0.5μm以上1.5μm未満であり、なおかつ、体積粒径比が3.2以下であるチャバザイト型ゼオライトを製造することができ、これにより、比較例とは異なる特徴を有するチャバザイト型ゼオライトが得られることが確認できた。また、原料組成物はフッ素及び塩素を含む化合物を含んでおらず、得られたチャバザイト型ゼオライトの塩素及びフッ素の含有量は検出限界以下であった。
【0136】
比較例1及び実施例5はいずれもTMAD+のみを有機構造指向剤として含む原料組成物から得られた合成チャバザイト型ゼオライトである。比較例1のチャバザイト型ゼオライトと比べ、実施例5のチャバザイト型ゼオライトはSiO2/Al2O3比が高いにもかかわらず、SiOH/Si比が低い。これより、本実施例のチャバザイト型ゼオライトは、従来のチャバザイト型ゼオライトと比べてSiOH/Si比が低くなることが確認できた。
【0137】
実施例3及び比較例2のチャバザイト型ゼオライトは同等の平均結晶粒径を有するにもかかわらず、比較例2の体積粒径比が3.2を超えていた。これより、本実施例のチャバザイト型ゼオライトは従来のチャバザイト型ゼオライトに比べて物理的な凝集が生じにくいことか確認できた。
【0138】
実施例2及び5の平均結晶径は等しく、なおかつ、実施例3よりも大きかった。しかしながら、実施例3の体積粒径比は実施例2及び5の中間の値であり、なおかつ、実施例2と実施例5とは50%体積径が異なっていた。これより、平均結晶径、体積粒径比及び50%体積径は直接的な相関がないことが確認できた。また、本発明の実施態様におけるチャバザイト型ゼオライトにおいては、その一次粒子の粒子径と、凝集粒子の形成し易さとの間にも直接的な関係がないことが確認できた。
【0139】
測定例1(耐熱性の評価)
実施例2及び比較例2のチャバザイト型ゼオライトを、それぞれ、空気流通下600℃で2時間処理した後に、20%塩化アンモニウム水溶液でイオン交換した。イオン交換後、大気中、110℃で一晩乾燥し、カチオンタイプがNH4型のチャバザイト型ゼオライトとした。
【0140】
実施例2のチャバザイト型ゼオライトの処理後の主なXRDピークを下表に示す。
【0141】
【0142】
(水熱耐久処理)
NH4型のチャバザイト型ゼオライトを成形及び粉砕し、凝集径12~20メッシュの凝集粒子とした。チャバザイト型ゼオライトの凝集粒子3mLを常圧固定床流通式反応管に充填した後、水分を10体積%含有する空気を流通させ、以下の条件で水熱耐久処理した。
空気の流通速度 : 300mL/min
処理温度 : 900℃
処理時間 : 2時間
【0143】
(結晶化度の測定)
水熱耐久処理後のチャバザイト型ゼオライトを、それぞれ、XRD測定して結晶化度を求めた。水熱耐久処理後の実施例2のチャバザイト型ゼオライトの結晶化度を100%とし、結晶化度の測定結果を下表に示した。
【0144】
【0145】
上表より、実施例2のチャバザイト型ゼオライトは、従来のチャバザイト型ゼオライトよりも水熱耐久処理後の結晶化度が高いことがわかる。これより、本発明のチャバザイト型ゼオライトは高い耐熱性を有することが確認できた。
【0146】
実施例6
実施例1のチャバザイト型ゼオライトを空気流通下600℃で2時間焼成した後に、20%塩化アンモニウム水溶液で処理した。処理後のチャバザイト型ゼオライトを大気中110℃で一晩乾燥することでカチオンタイプがアンモニウム型(NH4型)のチャバザイト型ゼオライトとした。NH4型のチャバザイト型ゼオライト10gに硝酸銅溶液を滴下及び乳鉢で混合し、チャバザイト型ゼオライトに銅を含浸担持させた。硝酸銅水溶液は硝酸銅三水和物1.1gを純水5.0gに溶解したものを使用した。
【0147】
含浸担持後、大気中、110℃で一晩乾燥させた後、大気中、550℃で2時間焼成し、本実施例の銅含有チャバザイト型ゼオライトとした。本実施例の銅含有チャバザイト型ゼオライトは、銅含有量が2.8重量%及びCu/Al2O3比が0.78であった。
【0148】
実施例7
実施例2のチャバザイト型ゼオライトを使用したこと、及び、硝酸銅水溶液として硝酸銅三水和物1.0gを純水5.0gに溶解したものを使用したこと以外は実施例6と同様な方法で本実施例の銅含有チャバザイト型ゼオライトを得た。本実施例の銅含有チャバザイト型ゼオライトは、銅含有量が2.6重量%及びCu/Al2O3比が0.78であった。
【0149】
実施例8
実施例5のチャバザイト型ゼオライトを使用したこと、及び、硝酸銅水溶液として硝酸銅三水和物0.9gを純水5.0gに溶解したものを使用したこと以外は実施例6と同様な方法で本実施例の銅含有チャバザイト型ゼオライトを得た。本実施例の銅含有チャバザイト型ゼオライトは、銅含有量が2.5重量%及びCu/Al2O3比が0.81であった。
【0150】
比較例7
比較例1のチャバザイト型ゼオライトを使用したこと、及び、硝酸銅水溶液として硝酸銅三水和物1.0gを純水5.0gに溶解したものを使用したこと以外は実施例6と同様な方法で本比較例の銅含有チャバザイト型ゼオライトを得た。本比較例の銅含有チャバザイト型ゼオライトは、銅含有量が2.5重量%及びCu/Al2O3比が0.78であった。
【0151】
比較例8
比較例2のチャバザイト型ゼオライトを使用したこと、及び、硝酸銅水溶液として硝酸銅三水和物1.2gを純水5.0gに溶解したものを使用したこと以外は実施例6と同様な方法で本比較例の銅含有チャバザイト型ゼオライトを得た。本比較例の銅含有チャバザイト型ゼオライトは、銅含有量が3.1重量%及びCu/Al2O3比が0.77であった。
【0152】
比較例9
比較例3のチャバザイト型ゼオライトを使用したこと、及び、硝酸銅水溶液として硝酸銅三水和物1.3gを純水4.3gに溶解したものを使用したこと以外は実施例6と同様な方法で本比較例の銅含有チャバザイト型ゼオライトを得た。本比較例の銅含有チャバザイト型ゼオライトは、銅含有量が3.3重量%及びCu/Al2O3比が0.73であった。
【0153】
比較例10
比較例4のチャバザイト型ゼオライトを使用したこと、及び、硝酸銅水溶液として硝酸銅三水和物1.2gを純水5.0gに溶解したものを使用したこと以外は実施例6と同様な方法で本比較例の銅含有チャバザイト型ゼオライトを得た。本比較例の銅含有チャバザイト型ゼオライトは、銅含有量が2.7重量%及びCu/Al2O3比が0.47であった。
【0154】
実施例6乃至8、及び、比較例7乃至10の銅含有チャバザイト型ゼオライトの評価結果を下表に示す。
【0155】
【0156】
測定例2(窒素酸化物還元率の測定)
実施例6、比較例7及び比較例10の銅含有チャバザイト型ゼオライトを、測定例1と同様な方法で水熱耐久処理を施した状態の試料(以下、「耐久処理試料(2)」ともいう。)とした。得られた耐久処理試料(2)について、150℃における窒素酸化物還元率の測定を行った。結果を下表に示す。
【0157】
【0158】
実施例6と比べ、比較例7の銅含有チャバザイト型ゼオライトはCu/Al2比が等しいが、SiO2/Al2O3比が高く及び平均結晶粒径が大きい。それにも関わらず、比較例7の窒素酸化物還元率は実施例6よりも低かった。これより、結晶粒径を大きくすることで耐熱性が改善された従来のチャバザイト型ゼオライトと比べた場合であっても、本実施例の銅含有チャバザイト型ゼオライトは結晶粒径を大きくすることなく、それ以上の耐熱性を有し、高温高湿下への暴露後の窒素酸化物還元率が高くなることが確認できた。
【0159】
さらに、実施例6乃至8、及び、比較例7乃至9の銅含有チャバザイト型ゼオライトを、処理時間を3時間としたこと以外は測定例1と同様な方法で水熱耐久処理を施した状態の試料(以下、「耐久処理試料(3)」ともいう。)とした。得られた耐久処理試料(3)について、150℃における窒素酸化物還元率の測定を行った。結果を下表に示す。
【0160】
【表8】
実施例6及び7の比較から、結晶粒径及びSiO
2/Al
2O
3比が大きくなることで、水熱耐久処理後の低温域における窒素酸化物還元率が高くなることが確認できる。これに対し、比較例7は、結晶粒径及びSiO
2/Al
2O
3比が実施例7よりも大きいにも関わらず、窒素酸化物還元率が実施例7の半分程度であった。これより、本実施例の銅含有チャバザイト型ゼオライトは従来の銅含有チャバザイト型ゼオライトに比べて、低温域における窒素酸化物還元率が顕著に高くなることが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明のチャバザイト型ゼオライトは、吸着剤や触媒として、特に高温下で使用される吸着剤や触媒として使用することができる。排気ガス処理システムに組み込まれる触媒として使用できる。特に本発明のチャバザイト型ゼオライトは、還元剤の存在下で自動車、特にディーゼル車の排ガス中の窒素酸化物を還元除去する、SCR触媒、更にはDPFと一体化されたSCR触媒として使用できる。