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特許7371813積層基板、積層体、積層体の製造方法、電子デバイス用部材付き積層体、電子デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】積層基板、積層体、積層体の製造方法、電子デバイス用部材付き積層体、電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 17/10 20060101AFI20231024BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
B32B17/10
B32B27/00 101
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023515462
(86)(22)【出願日】2022-04-18
(86)【国際出願番号】 JP2022018045
(87)【国際公開番号】W WO2022224933
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2021072745
(32)【優先日】2021-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100168985
【弁理士】
【氏名又は名称】蜂谷 浩久
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】山田 和夫
(72)【発明者】
【氏名】川崎 周馬
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/142750(WO,A1)
【文献】特開2021-002622(JP,A)
【文献】特開2021-169202(JP,A)
【文献】特開2016-113506(JP,A)
【文献】国際公開第2018/198720(WO,A1)
【文献】特開2019-155592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00 - 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と前記第1の面に対向する第2の面を有するガラス基材と、
前記ガラス基材の前記第2の面上に配置されたシリコーン樹脂層と、を有する積層基板であって、
前記シリコーン樹脂層の前記ガラス基材とは反対側の表面の表面粗さRaのばらつきが1.00nm以下であり、
前記シリコーン樹脂層の膜厚のばらつきが1.5μm以下である、積層基板。
【請求項2】
前記シリコーン樹脂層の膜厚の平均値が、50.0μm以下である、請求項1に記載の積層基板。
【請求項3】
前記シリコーン樹脂層上に、剥離可能な保護フィルムが配置されている、請求項1または2に記載の積層基板。
【請求項4】
請求項1または2に記載の積層基板と、前記積層基板の前記シリコーン樹脂層上に配置されるポリイミド膜とを有する、積層体。
【請求項5】
請求項1または2に記載の積層基板の前記シリコーン樹脂層上に、ポリイミドまたはその前駆体および溶媒を含むポリイミドワニスを塗布して、前記シリコーン樹脂層上にポリイミド膜を形成して、前記ガラス基材と、前記シリコーン樹脂層と、前記ポリイミド膜とを有する積層体を形成する、積層体の製造方法。
【請求項6】
請求項4に記載の積層体と、
前記積層体中の前記ポリイミド膜上に配置される電子デバイス用部材と、を有する電子デバイス用部材付き積層体。
【請求項7】
請求項4に記載の積層体の前記ポリイミド膜上に電子デバイス用部材を形成し、電子デバイス用部材付き積層体を得る部材形成工程と、
前記電子デバイス用部材付き積層体から、前記ポリイミド膜および前記電子デバイス用部材を有する電子デバイスを得る分離工程と、を備える電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層基板、積層体、積層体の製造方法、電子デバイス用部材付き積層体、および、電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池(PV);液晶パネル(LCD);有機ELパネル(OLED);電磁波、X線、紫外線、可視光線、赤外線などを感知する受信センサーパネル;などの電子デバイスの薄型化、軽量化が進行している。それに伴い、電子デバイスに用いるポリイミド樹脂基板などの基板の薄板化も進行している。薄板化により基板の強度が不足すると、基板のハンドリング性が低下し、基板上に電子デバイス用部材を形成する工程(部材形成工程)などにおいて問題が生じる場合がある。
【0003】
そこで、最近では、基板のハンドリング性を良好にするため、支持基材上にポリイミド樹脂基板を配置した積層体を用いる技術が提案されている(特許文献1)。より具体的には、特許文献1では、熱硬化性樹脂組成物硬化体層上にポリイミドワニスを塗布して、樹脂ワニス硬化フィルム(ポリイミド膜に該当)を形成して、樹脂ワニス硬化フィルム上に精密素子を配置できることが開示されている。特許文献1の技術では、熱硬化性樹脂組成物硬化体層から樹脂ワニス硬化フィルムを容易に剥離し、ポリイミド樹脂基板として使用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特開2018-193544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らが特許文献1に記載される技術でポリイミド膜を作製したところ、ポリイミド膜を吸着して保持するシリコーン樹脂層として機能する熱硬化性樹脂組成物硬化体層から剥離したポリイミド膜に光学的なムラが確認された。ポリイミド膜は、ポリイミド樹脂基板として透明な電子デバイスへ適用される場合があるため、光学的なムラの改善が求められる。
【0006】
本発明は、シリコーン樹脂層の表面上にポリイミドワニスを塗布し、その後、剥離してポリイミド膜を製造する際に、光学的なムラが少ないポリイミド膜を製造できる、積層基板を提供することを課題とする。
また、本発明は、上記積層基板を有する積層体、積層体の製造方法、電子デバイス用部材付き積層体、および、電子デバイスの製造方法を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、以下の構成により上述の課題を解決できることを見出した。
【0008】
[1] 第1の面と上記第1の面に対向する第2の面を有するガラス基材と、
上記ガラス基材の上記第2の面上に配置されたシリコーン樹脂層と、を有する積層基板であって、
上記シリコーン樹脂層の前記ガラス基材とは反対側の表面の表面粗さRaのばらつきが1.00nm以下であり、
上記シリコーン樹脂層の膜厚のばらつきが1.5μm以下である、積層基板。
[2] 上記シリコーン樹脂層の膜厚の平均値が、50.0μm以下である、[1]に記載の積層基板。
[3] 上記シリコーン樹脂層上に、剥離可能な保護フィルムが配置されている、[1]または[2]に記載の積層基板。
[4] [1]~[3]のいずれかに記載の積層基板と、上記積層基板の上記シリコーン樹脂層上に配置されるポリイミド膜とを有する、積層体。
[5] [1]~[3]のいずれかに記載の積層基板の上記シリコーン樹脂層上に、ポリイミドまたはその前駆体および溶媒を含むポリイミドワニスを塗布して、上記シリコーン樹脂層上にポリイミド膜を形成して、上記ガラス基材と、上記シリコーン樹脂層と、上記ポリイミド膜とを有する積層体を形成する、積層体の製造方法。
[6] [4]に記載の積層体と、
上記積層体中の上記ポリイミド膜上に配置される電子デバイス用部材と、を有する電子デバイス用部材付き積層体。
[7] [4]に記載の積層体の上記ポリイミド膜上に電子デバイス用部材を形成し、
電子デバイス用部材付き積層体を得る部材形成工程と、
上記電子デバイス用部材付き積層体から、上記ポリイミド膜および上記電子デバイス用部材を有する電子デバイスを得る分離工程と、を備える電子デバイスの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、シリコーン樹脂層の表面上にポリイミドワニスを塗布し、その後、シリコーン樹脂層から剥離してポリイミド膜を製造する際に、光学的なムラが少ないポリイミド膜を製造できる、積層基板を提供できる。
本発明によれば、上記積層基板を有する積層体、積層体の製造方法、電子デバイス用部材付き積層体、および、電子デバイスの製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の積層基板の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図2】本発明の積層体の一実施形態を模式的に示す断面図である。
図3】部材形成工程を説明するための図である。
図4】分離工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。ただし、以下の実施形態は本発明を説明するための例示的なものであり、本発明は以下に示す実施形態に制限されることはない。なお、本発明の範囲を逸脱することなく、以下の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0012】
本発明における用語の意味は以下の通りである。
表面粗さRaのばらつきは、対象となる表面の任意の10か所(測定領域:縦940μm×横700μm)における表面粗さRaを測定し、10個の測定値のうちの最大値と最小値との差である。
【0013】
表面粗さRaの平均値は、上記の手順で測定した10個の測定値の算術平均値である。
表面粗さRaは、例えば、菱化システム社製の非接触表面・層断面形状計測システム「Vertscan R3300-lite」を用いて測定する。
【0014】
膜厚のばらつきは、対象物の任意の10か所の膜厚を測定し、10個の測定値のうち最大値と最小値との差である。
【0015】
膜厚の平均値は、上記の膜厚のばらつきを測定した10個の測定値の算術平均値である。
但し、シリコーン樹脂層の膜厚の場合、測定範囲としては、シリコーン樹脂層の周縁端部から中央部に向かって3mmの周縁領域は除く。
膜厚は、例えば、接触式膜厚測定装置で測定する。
【0016】
「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0017】
<積層基板>
図1は本発明の積層基板の一実施形態を模式的に示す断面図である。
積層基板10は、第1の面12aと第1の面12aに対向する第2の面12bを有するガラス基材12と、ガラス基材12の第2の面12b上に配置されたシリコーン樹脂層14とを有する。
【0018】
詳細は後述するが、積層基板10のシリコーン樹脂層14上にポリイミドワニスが塗布され、その後、ポリイミド膜が形成される。このポリイミド膜上に電子デバイス用部材を形成し、その後、電子デバイス用部材が形成されたポリイミド膜(すなわち、電子デバイス)を分離する。こうして、電子デバイスを製造する。
【0019】
図1に示す積層基板10は、以下に定義するシリコーン樹脂層14のガラス基材12とは反対側の表面14aの表面粗さRaのばらつきが1.00nm以下である。
【0020】
シリコーン樹脂層14のガラス基材12とは反対側の表面14aの表面粗さRaのばらつきが1.00nm以下であれば、積層基板10のシリコーン樹脂層14上に形成し、その後剥離することにより、光学的なムラが少ないポリイミド膜が製造できる。
【0021】
シリコーン樹脂層14のガラス基材12とは反対側の表面14aの表面粗さRaのばらつきは、0.70nm以下が好ましく、0.40nm以下がより好ましい。シリコーン樹脂層14のガラス基材12とは反対側の表面14aの表面粗さRaのばらつきの下限は、0.00nmである。
【0022】
図1に示す積層基板10は、シリコーン樹脂層14の膜厚のばらつきが1.5μm以下である。
シリコーン樹脂層14の膜厚のばらつきが1.5μm以下であれば、積層基板10のシリコーン樹脂層14上にポリイミド膜を形成し、その後剥離することにより、光学的なムラが少ないポリイミド膜が製造できる。
シリコーン樹脂層14の膜厚のばらつきは、1.2μm以下が好ましく、1.0μm以下がより好ましい。シリコーン樹脂層14の膜厚のばらつきの下限は、0.0μmである。
【0023】
以下では、積層基板10を構成する各層(ガラス基材12、シリコーン樹脂層14)について詳述し、その後、積層基板10の製造方法について詳述する。
【0024】
(ガラス基材)
ガラス基材12は、ポリイミド膜を支持して補強する部材である。
ガラスの種類としては、無アルカリホウケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス、高シリカガラス、その他の酸化ケイ素を主な成分とする酸化物系ガラスが好ましい。酸化物系ガラスとしては、酸化物換算による酸化ケイ素の含有量が40~90質量%のガラスが好ましい。
【0025】
ガラス基材として、より具体的には、無アルカリホウケイ酸ガラスからなるガラス基材(AGC株式会社製商品名「AN100」)が挙げられる。
【0026】
ガラス基材の製造方法は、通常、ガラス原料を溶融し、溶融ガラスを板状に成形して得られる。このような成形方法は、一般的なものであってよく、例えば、フロート法、フュージョン法、スロットダウンドロー法が挙げられる。
【0027】
ガラス基材12の形状(主面の形状)は特に制限されないが、矩形状が好ましい。
【0028】
ガラス基材12は、フレキシブルでないことが好ましい。そのため、ガラス基材12の厚みは、0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましい。
一方、ガラス基材12の厚みは、1.0mm以下が好ましい。
【0029】
(シリコーン樹脂層)
シリコーン樹脂層14は、シリコーン樹脂層14の上に配置されるポリイミド膜の剥離を防止するための膜である。
シリコーン樹脂層14は、ガラス基材12上に配置されている。
【0030】
シリコーン樹脂とは、所定のオルガノシロキシ単位を含む樹脂であり、通常、硬化性シリコーンを硬化させて得られる。硬化性シリコーンは、その硬化機構により付加反応型シリコーン、縮合反応型シリコーン、紫外線硬化型シリコーンおよび電子線硬化型シリコーンに分類されるが、いずれも使用できる。シリコーン樹脂として、なかでも、縮合反応型シリコーンが好ましい。
【0031】
縮合反応型シリコーンとしては、モノマーである加水分解性オルガノシラン化合物若しくはその混合物(モノマー混合物)、または、モノマーまたはモノマー混合物を部分加水分解縮合反応させて得られる部分加水分解縮合物(オルガノポリシロキサン)を好適に用いることができる。
この縮合反応型シリコーンを用いて、加水分解・縮合反応(ゾルゲル反応)を進行させることにより、シリコーン樹脂を形成することができる。
【0032】
シリコーン樹脂層14は、硬化性シリコーンを含む硬化性組成物を用いて形成されることが好ましい。
【0033】
硬化性組成物は、硬化性シリコーンのほかに、溶媒、白金触媒(硬化性シリコーンとして付加反応型シリコーンを用いる場合)、レベリング剤、金属化合物などを含んでいてもよい。金属化合物に含まれる金属元素としては、例えば、3d遷移金属、4d遷移金属、ランタノイド系金属、ビスマス(Bi)、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)が挙げられる。金属化合物の含有量は、特に制限されず、適宜調整される。
【0034】
シリコーン樹脂層14は、ヒドロキシ基を有することが好ましい。ヒドロキシ基は、シリコーン樹脂層14のシリコーン樹脂を構成するSi-O-Si結合の一部が切れることにより現れ得る。また、縮合反応型シリコーンを用いる場合には、そのヒドロキシ基が、シリコーン樹脂層14のヒドロキシ基になり得る。
【0035】
シリコーン樹脂層14は、膜厚の平均値が、50.0μm以下が好ましく、30.0μm以下がより好ましく、12.0μm以下がさらに好ましい。一方、シリコーン樹脂層14の膜厚の平均値は、1μm超が好ましく、異物埋め込み性がより優れる点で、6.0μm以上がより好ましい。
【0036】
なお、異物埋め込み性に優れるとは、ガラス基材12とシリコーン樹脂層14との間に異物があっても、シリコーン樹脂層14によって異物が埋め込まれることを意味する。
【0037】
異物の埋め込み性が優れると、シリコーン樹脂層において異物による凸部が生じにくく、ポリイミド膜上に電子デバイス用部材を形成した際に、凸部による電子デバイス用部材中での断線などのリスクが抑制される。なお、上記凸部の発生の際に形成される空隙が気泡として観察されるため、気泡の発生の有無により異物埋め込み性を評価できる。
【0038】
シリコーン樹脂層14の表面14aの表面粗さRaの平均値は、50.00nm以下が好ましく、30.00nm以下がより好ましく、15.00nm以下がさらに好ましく、5.00nm以下が特に好ましい。表面14aの表面粗さRaの平均値が上記範囲であれば、積層基板10のシリコーン樹脂層14上に形成し、その後剥離することにより製造されるポリイミド膜の表面粗さが低減される。
【0039】
また、シリコーン樹脂層14の表面14aの表面粗さRaの平均値は、シリコーン樹脂層14上に形成されるポリイミド膜と密着した状態を維持できるため、0.10nm以上が好ましく、0.30nm以上がより好ましい。
【0040】
ガラス基材12上にポリイミド膜を形成し、高温熱処理を行うと、ポリイミド膜が黄変するため、透明な電子デバイスへの適用が難しくなる。ところが、メカニズムは不明だが、ガラス基材12上にシリコーン樹脂層14を形成し、シリコーン樹脂層14上にポリイミド膜を形成することで、高温熱処理によるポリイミド膜の黄変を抑制することができる。
【0041】
(保護フィルム)
積層基板10は、シリコーン樹脂層14上に剥離可能な保護フィルムが配置されていてもよい。
保護フィルムは後述するポリイミドワニスがシリコーン樹脂層14上に塗布されるまで、シリコーン樹脂層14の表面を保護するフィルムである。
【0042】
保護フィルムを構成する材料としては、例えば、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリオレフィン樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリウレタン樹脂が挙げられる。保護フィルムを構成する材料としては、なかでも、ポリエステル樹脂が好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0043】
保護フィルムの膜厚の平均値は、外部から受けた力の影響を低減するため、20μm以上が好ましく、30μm以上がより好ましく、50μm以上がさらに好ましい。保護フィルムの膜厚の平均値は、500μm以下が好ましく、300μm以下がより好ましく、100μm以下がさらに好ましい。
【0044】
保護フィルムは、シリコーン樹脂層14側の表面に、さらに密着層を有していてもよい。
【0045】
密着層としては、公知の粘着層を用いることができる。粘着層を構成する粘着剤としては、例えば、(メタ)アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤が挙げられる。
【0046】
また、密着層は樹脂で構成されていてもよく、樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリスチレンエラストマーが挙げられる。
【0047】
保護フィルムの表面粗さRaの平均値は、保護フィルムを剥離した際の剥離力が低減するため、50nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましく、15nm以下がさらに好ましい。また、保護フィルムの表面粗さRaの平均値は、保護フィルムとシリコーン樹脂層が密着した状態を維持できるため、0.1nm以上が好ましく、0.5nm以上がより好ましい。
【0048】
<積層基板の製造方法>
積層基板の製造方法は、特に制限されず、公知の方法が挙げられる。
なかでも、生産性がより優れる点で、仮支持体と仮支持体上に配置された加熱処理後にシリコーン樹脂層となる前駆体膜とを有する転写フィルムを用意して、転写フィルム中の前駆体膜をガラス基材上の所定の位置に貼り合わせて、得られたガラス基材、前駆体膜、および、仮支持体を有する積層体に対して加熱処理を施す方法が挙げられる。加熱処理を施すことによりシリコーン樹脂層が形成される。
【0049】
上記の転写フィルムをガラス基材に貼り合わせた後に、得られた積層体をアルカリ洗剤で洗浄してもよい。また、アルカリ洗剤で洗浄した後、必要に応じて、純水でリンスしてもよい。さらに、積層体を純水でリンスした後、必要に応じて、エアナイフで水切りしてもよい。エアナイフ後、積層体は加熱乾燥してもよい。また、洗浄では積層体にブラシを当てて洗浄してもよい。洗浄に使用するアルカリ洗剤の温度、および、リンスに使用する純水の温度は、洗浄力の点から、20℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましい。
【0050】
シリコーン樹脂層を形成するための加熱処理(アニール工程)の際には、圧力をかけながら実施することが好ましい。具体的には、オートクレーブを用いて加熱処理および加圧処理を実施することが好ましい。
【0051】
加熱処理の際の加熱温度としては、50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましく、60℃以上がさらに好ましい。加熱処理の際の加熱温度としては、350℃以下が好ましく、300℃以下がより好ましく、250℃以下がさらに好ましい。加熱時間としては、10分以上が好ましく、20分以上がより好ましい。加熱時間としては、60分以下が好ましく、40分以下がより好ましい。
【0052】
加圧処理の際の圧力としては、0.5~1.5MPaが好ましく、0.8~1.0MPaがより好ましい。
【0053】
また、加熱処理は、複数回行ってもよい。加熱処理を複数回実施する場合、それぞれの加熱条件は変更してもよい。
例えば、複数回の加熱処理を実施する場合、加熱温度を変えてもよい。例えば、2回の加熱処理を実施する場合、1回目の加熱処理を200℃未満の温度条件で実施して、2回目の加熱処理を200℃以上の温度条件で実施してもよい。
【0054】
また、複数回の加熱処理を実施する場合、加圧処理の有無を変えてもよい。例えば、2回の加熱処理を実施する場合、1回目の加熱処理では加圧処理を合わせて実施し、2回目の加熱処理では加圧処理を実施しない形であってもよい。
【0055】
なお、転写フィルムを用いて積層基板を製造する際、仮支持体を剥離した後、上記加熱処理を実施してもよいし、仮支持体がシリコーン樹脂層上に配置された状態のまま加熱処理を実施してもよい。また、複数回の加熱処理を実施する場合、各加熱処理の間で仮支持体を剥離してもよい。例えば、1回目の加熱処理を実施した後、仮支持体を剥離して、2回目の加熱処理を実施してもよい。
【0056】
仮支持体を剥離する際には、剥離を容易にするため、仮支持体に切り欠き部分を形成してもよい。また、仮支持体の端部の一部を前駆体膜またはシリコーン樹脂層から剥がして折り返し部を形成し、剥離の始点としてもよい。また、仮支持体にプルテープを取り付けてもよい。また、仮支持体の剥離を容易にするために、前駆体膜またはシリコーン樹脂層よりも仮支持体を大きくして仮支持体をはみ出させて、仮支持体のはみ出し部を把持して仮支持体を剥離してもよい。
【0057】
仮支持体を剥離する際、前駆体膜またはシリコーン樹脂層に傷が付いて不良になるおそれが少ないため、180度剥離が好ましい。
また、剥離帯電によるゴミ付着を防止するため、イオナイザーを使用すること、または、剥離環境を加湿することが好ましい。
【0058】
加熱処理には循環炉、赤外線炉などの加熱炉が使用できる。加熱処理時にシリコーン樹脂層から発生するガスを除外するため加熱炉は排気することが好ましい。加熱炉内のクリーン度はクラス10000以下が好ましい。
【0059】
積層基板のシリコーン樹脂層の表面には、表面処理を施してもよい。
表面処理としては、例えば、コロナ処理、大気圧プラズマ処理、UVオゾン処理、エキシマーUV処理が挙げられ、コロナ処理、大気圧プラズマ処理が好ましい。
【0060】
表面処理後のシリコーン樹脂層14の表面14aの水接触角は10度以下が好ましく、5度以下がより好ましい。
【0061】
上述した積層基板10を用いて、ガラス基材12と、シリコーン樹脂層14と、被支持材をこの順に有する構造体を製造できる。被支持材としては、ポリイミド膜18以外の材料も積層できる。
【0062】
被支持材としては、例えば、ポリイミド樹脂フィルム、エポキシ樹脂フィルム、感光性レジスト、ポリエステル樹脂フィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリオレフィン樹脂フィルム(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリウレタン樹脂フィルム、金属箔(例えば、銅箔、アルミ箔)、スパッタ膜(例えば、銅、チタン、アルミニウム、タングステン、窒化シリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコン)、TGV基板、薄板ガラス基板、犠牲層付き薄板ガラス基板、ABF、サファイア基板、シリコン基板、TSV基板、LEDチップ、ディスプレイパネル(例えば、LCD、OLED、μ-LED)、人工ダイヤ、合紙などが挙げられる。
【0063】
<積層体およびその製造方法>
上述した積層基板10を用いて、図2に示す、ガラス基材12と、シリコーン樹脂層14と、ポリイミド膜18とを有する積層体16を製造することができる。積層体16は、積層基板10のシリコーン樹脂層14上に配置されるポリイミド膜18とを有する。
【0064】
具体的には、積層体16の製造方法としては、積層基板10のシリコーン樹脂層14上に、ポリイミドおよび溶媒を含むポリイミドワニスを塗布して、シリコーン樹脂層14上にポリイミド膜18を形成して、ガラス基材12と、シリコーン樹脂層14と、ポリイミド膜18とをこの順に有する積層体を形成する方法が挙げられる。
以下では、上記製造方法について詳述し、その後、ポリイミド膜18の構成について詳述する。
【0065】
(ポリイミドワニス)
ポリイミドワニスは、ポリイミドまたはその前駆体および溶媒を含む。
【0066】
ポリイミドは、通常、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとを重縮合し、イミド化することにより得られる。ポリイミドとしては、溶剤可溶性を有することが好ましい。
【0067】
用いるテトラカルボン酸二無水物としては、芳香族テトラカルボン酸二無水物、脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。用いるジアミンとしては、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミンが挙げられる。
【0068】
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、無水ピロメリット酸(1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物)、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、メチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1-エチリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、2,2-プロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-トリメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,4-テトラメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,5-ペンタメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、チオ-4,4’-ジフタル酸二無水物、スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、1,4-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、2,2-ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン二無水物、4,4’-ビフェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、1,3-ビス[(3,4-ジカルボキシ)ベンゾイル]ベンゼン二無水物、1,4-ビス[(3,4-ジカルボキシ)ベンゾイル]ベンゼン二無水物、2,2-ビス{4-[4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}プロパン二無水物、2,2-ビス{4-[3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}プロパン二無水物、ビス{4-[4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-[3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、4,4’-ビス[4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]ビフェニル二無水物、4,4’-ビス[3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]ビフェニル二無水物、ビス{4-[4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-[3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}ケトン二無水物、ビス{4-[4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルホン二無水物、ビス{4-[3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルホン二無水物、ビス{4-[4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルフィド二無水物、ビス{4-[3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}スルフィド二無水物、2,2-ビス{4-[4-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物、2,2-ビス{4-[3-(1,2-ジカルボキシ)フェノキシ]フェニル}-1,1,1,3,3,3-プロパン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-シクロヘキセン-1,2ジカルボン酸無水物、ピロメリット酸二無水物が挙げられる。
【0069】
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、環式または非環式の脂肪族テトラカルボン酸二無水物があり、環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,1’-ビシクロヘキサン-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸-3,4,3’,4’-二無水物、カルボニル-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,1-エチリデン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、2,2-プロピリデン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、オキシ-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、チオ-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、スルホニル-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、rel-[1S,5R,6R]-3-オキサビシクロ[3,2,1]オクタン-2,4-ジオン-6-スピロ-3’-(テトラヒドロフラン-2’,5’-ジオン)、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、エチレングリコール-ビス-(3,4-ジカルボン酸無水物フェニル)エーテルなどが挙げられ、非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ペンタンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
【0070】
芳香族ジアミンとしては、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジクロロ-4,4’-ジアミノ-5,5’-ジメトキシビフェニル、2,2’,5,5’-テトラクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,7-ジアミノ-ジメチルジベンゾチオフェン-5,5-ジオキシド、4,4’-ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、1,3-ビス[2-(4-アミノフェノキシエトキシ)]エタン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)フルオレン、5(6)-アミノ-1-(4-アミノメチル)-1,3,3-トリメチルインダン、2,5-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシフェニル)]プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’-メチレン-ビス(2-クロロアニリン)、9,10-ビス(4-アミノフェニル)アントラセン、o-トリジンスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,4’-ジアミノベンゾフェノン、3,3’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ジ(3-アミノフェニル)プロパン、2,2-ジ(4-アミノフェニル)プロパン、2-(3-アミノフェニル)-2-(4-アミノフェニル)プロパン、1,1-ジ(3-アミノフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ジ(4-アミノフェニル)-1-フェニルエタン、1-(3-アミノフェニル)-1-(4-アミノフェニル)-1-フェニルエタン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(3-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)ベンゼン、2,6-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゾニトリル、2,6-ビス(3-アミノフェノキシ)ピリジン、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、4,4’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’-ビス[4-(4-アミノ-α,α-ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、4,4’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェノキシ]ジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4,4’-ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-フェノキシベンゾフェノン、3,3’-ジアミノ-4-ビフェノキシベンゾフェノン、6,6’-ビス(3-アミノフェノキシ)-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン、6,6’-ビス(4-アミノフェノキシ)-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン、1,4-ジアミノ-2-フルオロヘンゼン、1,4-ジアミノ-2,3-ジフルオロベンゼン、1,4-ジアミノ-2,5-ジフルオロベンゼン、1,4-ジアミノ-2,6-ジフルオロベンゼン、1,4-ジアミノ-2,3,5-トリフルオロベンゼン、1,4-ジアミノ-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼン、1,4-ジアミノ-2-(トリフルオロメチル)ヘンゼン、1,4-ジアミノ-2,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4-ジアミノ-2,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4-ジアミノ-2,6-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4-ジアミノ-2,3,5-トリス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4-ジアミノ、2,3,5,6-テトラキス(トリフルオロメチル)ベンゼン、2,2’-ジメチルベンジジン、2-フルオロベンジジン、3-フルオロベンジジン、2,3-ジフルオロベンジジン、2,5-ジフルオロベンジジン、2,6-ジフルオロベンジジン、2,3,5-トリフルオロベンジジン、2,3,6-トリフルオロベンジジン、2,3,5,6-テトラフルオロベンジジン、2,2’-ジフルオロベンジジン、3,3’-ジフルオロベンジジン、2,3’-ジフルオロベンジジン、2,2’,3-トリフルオロベンジジン、2,3,3’-トリフルオロベンジジン、2,2’,5-トリフルオロベンジジン、2,2’,6-トリフルオロベンジジン、2,3’,5-トリフルオロベンジジン、2,3’,6,-トリフルオロベンジジン、2,2’,3,3’-テトラフルオロベンジジン、2,2’,5,5’-テトラフルオロベンジジン、2,2’,6,6’-テトラフルオロベンジジン、2,2’,3,3’,6,6’-ヘキサフルオロベンジジン、2,2’,3,3’,5,5’,6,6’-オクタフルオロベンジジン、2-(トリフルオロメチル)ベンジジン、3-(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,5-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,6-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,5-トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,6-トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,5,6-テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3,3’-トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,5-トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,6-トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3’,5-トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,3’,6,-トリス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,3,3’-テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,5,5’-テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2’,6,6’-テトラキス(トリフルオロメチル)ベンジジン、1,4-ジアミノベンゼン、1,3-ジアミノベンゼンが挙げられる。
【0071】
脂肪族ジアミンとしては、例えば、ヘキサメチレンジアミン、ポリエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、ポリプロピレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、ビス(アミノメチル)エーテル、ビス(2-アミノエチル)エーテル、ビス(3-アミノプロピル)エーテル、ビス[(2-アミノメトキシ)エチル]エーテル、ビス[2-(2-アミノエトキシ)エチル]エーテル、ビス[2-(3-アミノプロトキシ)エチル]エーテル、1,2-ビス(アミノメトキシ)エタン、1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン、1,2-ビス[2-(アミノメトキシ)エトキシ]エタン、1,2-ビス[2-(2-アミノエトキシ)エトキシ]エタン、エチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、1,6-ジアミノヘキサン、1,7-ジアミノヘプタン、1,8-ジアミノオクタン、1,9-ジアミノノナン、1,10-ジアミノデカン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、trans-1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,2-ジ(2-アミノエチル)シクロヘキサン、1,3-ジ(2-アミノエチル)シクロヘキサン、1,4-ジ(2-アミノエチル)シクロヘキサン、ビス(4-アミノシクロへキシル)メタン、2,6-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2,5-ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタンなどの非環式脂肪族ジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’-ジメチルシクロヘキシルメタン、4,4’-ジアミノ-3,3’,5,5’-テトラメチルシクロヘキシルメタン、1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、2,2-ビス(4,4’-ジアミノシクロヘキシル)プロパン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4-ビスアミノメチルシクロヘキサン、2,3-ジアミノビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,5-ジアミノビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,6-ジアミノビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,7-ジアミノビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,5-ビス(アミノメチル)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,6-ビス(アミノメチル)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,3-ビス(アミノメチル)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)-トリシクロ〔5.2.1.02,6〕デカン、2,5-ビス(アミノメチル)-ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、1,3-ビス(3-アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン、1,3-ビス(4-アミノブチル)テトラメチルジシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノプロピル)ポリジメチルシロキサン、α,ω-ビス(3-アミノブチル)ポリジメチルシロキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジアミンなどの環式脂肪族ジアミンほか、上記芳香族ジアミンの水素添加体が挙げられる。
【0072】
また、ポリイミドの具体例としては、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位Aとジアミンに由来する構成単位Bとを含むものであって、構成単位Aが下記式(a-1)で表される化合物に由来する構成単位(A-1)と下記式(a-2)で表される化合物に由来する構成単位(A-2)とを含み、構成単位Bが下記式(b-1)で表される化合物に由来する構成単位(B-1)と下記式(b-2)で表される化合物に由来する構成単位(B-2)とを含むものが挙げられる。
【0073】
【化1】
【0074】
式(a-2)中、Lは単結合または二価の連結基であり、式(b-2)中、Rはそれぞれ独立して、水素原子、フッ素原子またはメチル基である。
【0075】
<構成単位A>
構成単位Aは、テトラカルボン酸二無水物に由来する構成単位であり、式(a-1)で表される化合物に由来する構成単位(A-1)および式(a-2)で表される化合物に由来する構成単位(A-2)を含む。
【0076】
式(a-1)で表される化合物は、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2"-ノルボルナン-5,5",6,6"-テトラカルボン酸二無水物である。
【0077】
式(a-2)中において、Lは単結合または二価の連結基である。二価の連結基は、好ましくは置換または無置換のアルキレン基であり、より好ましくは-CR-(ここで、RおよびRは、それぞれ独立して、水素原子または置換若しくは無置換アルキル基であるか、あるいは、RおよびRは互いに結合して環を形成する。)である。
【0078】
Lは、単結合、下記式(L-1)で表される基および下記式(L-2)で表される基からなる群より選ばれることが好ましい。
【0079】
【化2】
【0080】
式(L-1)および式(L-2)中、*は結合手である。
【0081】
構成単位(A-2)は、好ましくは下記式(a-2-1)で表される化合物に由来する構成単位(A-2-1)、下記式(a-2-2)で表される化合物に由来する構成単位(A-2-2)および下記式(a-2-3)で表される化合物に由来する構成単位(A-2-3)からなる群より選ばれる少なくとも一つであり、より好ましくは構成単位(A-2-1)および構成単位(A-2-2)からなる群より選ばれる少なくとも一つである。
【0082】
【化3】
【0083】
式(a-2-1)で表される化合物は、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であり、その具体例としては、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0084】
式(a-2-2)で表される化合物は、9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物である。
【0085】
式(a-2-3)で表される化合物は、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物である。
【0086】
構成単位A中における構成単位(A-1)の含有量は、50モル%以上が好ましく、55モル%以上がより好ましく、60モル%以上がさらに好ましく、75モル%以上が特に好ましい。構成単位A中における構成単位(A-1)の含有量は、95モル%以下が好ましい。
【0087】
構成単位A中における構成単位(A-2)の含有量は、50モル%以下が好ましく、45モル%以下がより好ましく、40モル%以下がさらに好ましく、25モル%以下が特に好ましい。構成単位A中における構成単位(A-2)の含有量の下限は、5モル%以上が好ましい。
【0088】
構成単位A中における構成単位(A-1)と構成単位(A-2)との合計含有量は、55モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、65モル%以上がさらに好ましく、80モル%以上が特に好ましい。構成単位(A-1)と構成単位(A-2)との合計含有量の上限値は特に限定されず、即ち、100モル%以下である。構成単位Aは構成単位(A-1)と構成単位(A-2)とのみからなっていてもよい。
【0089】
構成単位Aは、構成単位(A-1)および(A-2)以外の構成単位を含んでもよい。
そのような構成単位を形成するテトラカルボン酸二無水物としては、特に限定されないが、ピロメリット酸二無水物などの芳香族テトラカルボン酸二無水物(ただし、式(a-2)で表される化合物を除く);1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物および1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物などの脂環式テトラカルボン酸二無水物(ただし、式(a-1)で表される化合物を除く);ならびに1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
【0090】
なお、芳香族テトラカルボン酸二無水物とは芳香環を1つ以上含むテトラカルボン酸二無水物を意味し、脂環式テトラカルボン酸二無水物とは脂環を1つ以上含み、かつ芳香環を含まないテトラカルボン酸二無水物を意味し、脂肪族テトラカルボン酸二無水物とは芳香環も脂環も含まないテトラカルボン酸二無水物を意味する。
【0091】
構成単位Aに任意に含まれる構成単位(即ち、構成単位(A-1)および(A-2)以外の構成単位)は、1種でもよいし、2種以上であってもよい。
【0092】
<構成単位B>
構成単位Bは、ジアミンに由来する構成単位であって、式(b-1)で表される化合物に由来する構成単位(B-1)および式(b-2)で表される化合物に由来する構成単位(B-2)を含む。構成単位(B-1)によって、機械的特性および寸法安定性が向上し、構成単位(B-2)によって、耐熱性が向上する。
【0093】
式(b-1)で表される化合物は、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンである。
式(b-2)中において、Rは、それぞれ独立して、水素原子、フッ素原子、およびメチル基からなる群より選択され、水素原子であることが好ましい。式(b-2)で表される化合物としては、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(3-フルオロ-4-アミノフェニル)フルオレン、および9,9-ビス(3-メチル-4-アミノフェニル)フルオレンなどが挙げられ、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレンが好ましい。
【0094】
構成単位B中における構成単位(B-1)の含有量は、20モル%以上が好ましく、45モル%以上がより好ましく、50モル%以上がさらに好ましい。構成単位B中における構成単位(B-1)の含有量は、90モル%以下が好ましく、85モル%以下がより好ましく、80モル%以下がさらに好ましい。
【0095】
構成単位B中における構成単位(B-2)の含有量は、10モル%以上が好ましく、15モル%以上がより好ましく、20モル%以上がさらに好ましい。構成単位B中における構成単位(B-2)の含有量は、80モル%以下が好ましく、55モル%以下がより好ましく、50モル%以下がさらに好ましい。
【0096】
構成単位B中における構成単位(B-1)と構成単位(B-2)との合計含有量は、30モル%以上が好ましく、60モル%以上がより好ましく、70%以上がさらに好ましい。構成単位(B-1)と構成単位(B-2)との合計含有量の上限値は特に限定されず、すなわち、100モル%以下である。構成単位Bは構成単位(B-1)と構成単位(B-2)とのみからなっていてもよい。
【0097】
構成単位Bは構成単位(B-1)および(B-2)以外の構成単位を含んでもよい。そのような構成単位を形成するジアミンとしては、特に限定されないが、上記した芳香族ジアミン(ただし、式(b-1)で表される化合物および式(b-2)で表される化合物を除く)、上記した脂環式ジアミン、および上記した脂肪族ジアミンが挙げられる。
【0098】
構成単位Bに任意に含まれる構成単位、すなわち、構成単位(B-1)および(B-2)以外の構成単位は、1種でもよいし、2種以上であってもよい。
【0099】
また、9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノフェノキシフェニル)フルオレンは、フルオレン骨格が負の固有複屈折を有するため、ポリイミド膜のレタデーションを調整する目的で、ポリイミドはこれらに由来する構成単位を有してもよい。
【0100】
また、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス[3(3-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス[4(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパンはフッ素原子の嵩高い立体障害の導入によりポリイミド分子間の電荷移動錯体の形成を抑制できる。そのため、ポリイミド膜のイエローインデックス(YI)を下げるために、ポリイミドはこれらに由来する繰り返し単位を有してもよい。
【0101】
ポリイミドの前駆体とは、イミド化する前の状態であるポリアミド酸(いわゆる、ポリアミック酸および/またはポリアミック酸エステル)を意味する。
【0102】
ポリイミドの前駆体の具体的としては、下記式(1A)で表される構成単位を、全構成単位に対して、50モル%以上含むポリイミド前駆体、下記式(1A)で表される構成単位および下記式(2A)で表される構成単位を、全構成単位に対して、50モル%以上含むポリイミド前駆体が挙げられる。
【0103】
【化4】
【0104】
式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数3~9のアルキルシリル基である。
【0105】
【化5】
【0106】
式中、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数3~9のアルキルシリル基である。
【0107】
ポリイミドの前駆体の具体的としては、下記式(3A)で表される構成単位を、全構成単位に対して、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上含むポリイミドの前駆体、下記式(3A)で表される構成単位および下記式(4A)で表される構成単位を、全構成単位に対して、好ましくは90モル%以上、より好ましくは95モル%以上含むポリイミドの前駆体が挙げられる。
【0108】
【化6】
【0109】
式中、Aは、芳香族環を有する2価の基であり、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数3~9のアルキルシリル基である。
【0110】
【化7】
【0111】
式中、Aは、芳香族環を有する2価の基であり、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数3~9のアルキルシリル基である。
【0112】
式(1A)で表される構成単位は、Aが下記式(D-1)で表される基である式(3A)で表される構成単位である。
式(2A)で表される構成単位は、Aが下記式(D-1)で表される基である式(4A)で表される構成単位である。
【0113】
【化8】
【0114】
式(D-1)で表される基以外の、式(3A)中のAおよび式(4A)中のAとしては、炭素数が6~40の芳香族環を有する2価の基が好ましく、下記式(A-1)で表される基がより好ましい。
【0115】
【化9】
【0116】
式中、mは0~3を、nは0~3をそれぞれ独立に示す。Y、Y、Yは、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、および、トリフルオロメチル基よりなる群から選択される1種を示し、Q、Rは、それぞれ独立に、直接結合、または、式:-NHCO-、-CONH-、-COO-、および、-OCO-で表される基よりなる群から選択される1種を示す。
【0117】
式(1A)で表される構成単位および上記式(3A)で表される構成単位を与えるテトラカルボン酸成分としては、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸類などがある。テトラカルボン酸類としては、テトラカルボン酸、および、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸シリルエステル、テトラカルボン酸エステル、テトラカルボン酸クロライドなどのテトラカルボン酸誘導体が挙げられる。
【0118】
式(2A)で表される構成単位を与えるテトラカルボン酸成分としては、trans-endo-endo-ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2"-ノルボルナン-5,5",6,6"-テトラカルボン酸類、cis-endo-endo-ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2"-ノルボルナン-5,5",6,6"-テトラカルボン酸類などのノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2"-ノルボルナン-5,5",6,6"-テトラカルボン酸類が挙げられる。
【0119】
式(1A)で表される構成単位および式(2A)で表される構成単位を与えるジアミン成分としては、例えば、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-トリジン)がある。
【0120】
が式(A-1)で表される基である式(3A)の構成単位、および、Aが式(A-1)で表される基である式(4A)の構成単位を与えるジアミン成分は、芳香環を有し、芳香環を複数有する場合は芳香環同士をそれぞれ独立に、直接結合、アミド結合、またはエステル結合で連結したものである。芳香環同士の連結位置は特に限定されないが、アミノ基または芳香環同士の連結基に対して4位で結合することで直線的な構造となり、得られるポリイミドが低線熱膨張になることがある。また、芳香環にメチル基やトリフルオロメチル基が置換されていてもよい。なお、置換位置は特に限定されない。
【0121】
が式(A-1)で表される基である式(3A)の構成単位、および、Aが式(A-1)で表される基である式(4A)の構成単位を与えるジアミン成分としては、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、o-フェニレンジアミン、ベンジジン、3,3’-ジアミノ-ビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,4’-ジアミノベンズアニリド、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’-p-フェニレンビス(p-アミノベンズアミド)、4-アミノフェノキシ-4-ジアミノベンゾエート、ビス(4-アミノフェニル)テレフタレート、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸ビス(4-アミノフェニル)エステル、p-フェニレンビス(p-アミノベンゾエート)、ビス(4-アミノフェニル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジカルボキシレート、[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイルビス(4-アミノベンゾエート)などが挙げられる。
【0122】
式(3A)または式(4A)の構成単位を与えるジアミン成分としては、AまたはAが式(D-1)または式(A-1)の構造のものを与えるジアミン成分以外の、他の芳香族ジアミン類を使用できる。
【0123】
他のジアミン成分としては、例えば、4,4’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、3,3’-オキシジアニリン、p-メチレンビス(フェニレンジアミン)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-アミノフェニル)スルホン、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’-ビス((アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2’-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)ジフェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)ジフェニル)スルホン、オクタフルオロベンジジン、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジフルオロ-4,4’-ジアミノビフェニル、6,6’-ビス(3-アミノフェノキシ)-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン、6,6’-ビス(4-アミノフェノキシ)-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダンなどやこれらの誘導体が挙げられ、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸類などを含むテトラカルボン酸成分、または、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸類などと、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2"-ノルボルナン-5,5",6,6"-テトラカルボン酸類などを含むテトラカルボン酸成分と、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル(m-トリジン)を含むジアミン成分から得られるポリイミド前駆体が挙げられる。
【0124】
溶媒は、ポリイミドまたはその前駆体を溶解する溶媒であればよく、例えば、フェノール系溶媒(例えば、m-クレゾール)、アミド系溶媒(例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド)、ラクトン系溶媒(例えば、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、γ-クロトノラクトン、γ-ヘキサノラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、δ-ヘキサノラクトン)、スルホキシド系溶媒(例えば、N,N-ジメチルスルホキシド)、ケトン系溶媒(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エステル系溶媒(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、炭酸ジメチル)が挙げられる。
【0125】
ポリイミドワニスは、ポリイミド樹脂またはその前駆体を5~40質量%含むことが好ましく、10~30質量%含むことがより好ましい。ポリイミドワニスの粘度は1~200Pa・sが好ましく、5~150Pa・sがより好ましい。
【0126】
(手順)
積層基板10のシリコーン樹脂層14側にポリイミドワニスを塗布する方法は特に制限されず、公知の方法が挙げられる。例えば、スリットコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ダイコート法、スピンコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、スクリーン印刷法、グラビアコート法が挙げられる。
【0127】
塗布後、必要に応じて、加熱処理(キュア工程)を実施してもよい。
加熱処理の条件として、温度条件は、50~500℃が好ましく、50~450℃がより好ましい。加熱時間は、10~300分間が好ましく、20~200分間がより好ましい。
また、加熱処理は、複数回行ってもよい。加熱処理を複数回実施する場合、それぞれの加熱条件は変更してもよい。
【0128】
また、パーティクルや凸部を平坦化するために、形成後のポリイミド膜の表面を研磨してもよい。
【0129】
ポリイミドワニスを塗布する前に積層基板をアルカリ洗剤で洗浄してもよい。また、アルカリ洗剤で洗浄した後、必要に応じて、純水でリンスしてもよい。さらに、純水でリンスした後、必要に応じて、エアナイフで水切りしてもよい。エアナイフ後、加熱乾燥してもよい。ブラシとの接触によりシリコーン樹脂層表面に傷が付くおそれがあるため、洗浄ではブラシを当てずに洗浄することが好ましい。
【0130】
ポリイミドワニスを塗布する前の積層基板は、ガラス基材と同様に表面品質を検査してもよい。
【0131】
(積層体)
積層体16は、図2に示すように、ガラス基材12と、シリコーン樹脂層14と、ポリイミド膜18とを有する。
ガラス基材12およびシリコーン樹脂層14の構成は上述した通りである。
【0132】
ポリイミド膜18は、シリコーン樹脂層14上に配置される。
【0133】
ポリイミド膜18の膜厚の平均値は、1μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましい。柔軟性の点から、1mm以下が好ましく、0.2mm以下がより好ましい。
【0134】
ポリイミド膜18の膜厚のばらつきは、0.5μm以下が好ましく、0.2μm以下がより好ましい。下限としては、0μmが挙げられる。
【0135】
ポリイミド膜18は、単膜でも、2層以上の複層膜であってもよい。
【0136】
ポリイミド膜18上に電子デバイスの高精細な配線などを形成するために、ポリイミド膜18の表面は平滑であることが好ましい。具体的には、ポリイミド膜18の表面粗さRaの平均値は、50nm以下が好ましく、30nm以下がより好ましく、10nm以下がさらに好ましい。下限としては、0nmが挙げられる。
【0137】
ポリイミド膜18の熱膨張係数は、ガラス基材12との熱膨張係数差が小さい方が加熱後または冷却後の積層体16の反りを抑制できるため好ましい。具体的には、ポリイミド膜18とガラス基材12との熱膨張係数の差は、0~90×10-6/℃が好ましく、0~30×10-6/℃がより好ましい。
【0138】
ポリイミド膜18の面積は、特に制限されないが、電子デバイスの生産性の点から、300cm以上が好ましい。
【0139】
ポリイミド膜18のイエローインデックス(YI)は、小さいことが好ましい。ポリイミド膜18のYIは、10.0以下が好ましく、5.0以下がより好ましく、3.5以下がさらに好ましく、1.5以下が特に好ましい。下限としては、0が挙げられる。
YIは、JIS K7361-1に準拠して測定する。
【0140】
ポリイミド膜18の可視光領域の光透過率は、80%以上が好ましい。上限としては、100%未満が挙げられる。
【0141】
積層体は、ポリイミド膜18上にガスバリア膜を有していてもよい。ポリイミド膜18が積層膜の場合、2つ以上の層の間にガスバリア膜を有していてもよい。
【0142】
ガスバリア膜としては、例えば、シリコン酸化膜、シリコン窒化膜などの無機材料膜である。また、ガスバリア膜は、熱可塑性樹脂や有機ケイ素化合物などの有機材料層と、シリコン酸化物やシリコン窒化物などの無機材料層とが積層された多層膜であってもよい。成膜方法は、特に制限されず、公知の方法が挙げられる。例えば、プラズマCVD、スパッタなどの方法が挙げられる。
【0143】
積層体16は、種々の用途に使用でき、例えば、後述する表示装置用パネル、PV、薄膜2次電池、表面に回路が形成された半導体ウエハ、受信センサーパネルなどの電子部品を製造する用途が挙げられる。これらの用途では、積層体が大気雰囲気下にて、高温条件(例えば、450℃以上)で曝される(例えば、20分以上)場合もある。
【0144】
表示装置用パネルは、LCD、OLED、電子ペーパー、プラズマディスプレイパネル、フィールドエミッションパネル、量子ドットLEDパネル、マイクロLEDディスプレイパネル、MEMSシャッターパネルなどを含む。
【0145】
受信センサーパネルは、電磁波受信センサーパネル、X線受光センサーパネル、紫外線受光センサーパネル、可視光線受光センサーパネル、赤外線受光センサーパネルなどを含む。受信センサーパネルに用いる基板は、樹脂などの補強シートなどによって補強されていてもよい。
【0146】
<電子デバイスの製造方法>
積層体を用いて、ポリイミド膜および後述する電子デバイス用部材を含む電子デバイスが製造される。
【0147】
電子デバイスの製造方法は、例えば、図3および4に示すように、積層体16のポリイミド膜18のシリコーン樹脂層14側とは反対側の表面上に電子デバイス用部材20を形成し、電子デバイス用部材付き積層体22を得る部材形成工程と、電子デバイス用部材付き積層体22から、ポリイミド膜18および電子デバイス用部材20を有する電子デバイス24を得る分離工程と、を備える方法である。
【0148】
以下、電子デバイス用部材20を形成する工程を「部材形成工程」、電子デバイス24とシリコーン樹脂層付きガラス基材26とに分離する工程を「分離工程」という。
以下に、各工程で使用される材料および手順について詳述する。
【0149】
(部材形成工程)
部材形成工程は、積層体16のポリイミド膜18上に電子デバイス用部材を形成する工程である。より具体的には、図3に示すように、ポリイミド膜18のシリコーン樹脂層14側とは反対側の表面上に電子デバイス用部材20を形成し、電子デバイス用部材付き積層体22を得る。電子デバイス用部材付き積層体22とは、積層体16と積層体16中のポリイミド膜18上に配置される電子デバイス用部材20と、を有する。
まず、本工程で使用される電子デバイス用部材20について詳述し、その後工程の手順について詳述する。
【0150】
(電子デバイス用部材)
電子デバイス用部材20は、積層体16のポリイミド膜18上に形成される電子デバイスの少なくとも一部を構成する部材である。
【0151】
より具体的には、電子デバイス用部材20としては、表示装置用パネル、太陽電池、薄膜2次電池、または、表面に回路が形成された半導体ウエハなどの電子部品、受信センサーパネルなどに用いられる部材(例えば、LTPSなどの表示装置用部材、太陽電池用部材、薄膜2次電池用部材、電子部品用回路、受信センサー用部材)が挙げられ、例えば、米国特許出願公開第2018/0178492号明細書の段落[0192]に記載された太陽電池用部材、同段落[0193]に記載された薄膜2次電池用部材、同段落[0194]に記載された電子部品用回路が挙げられる。
【0152】
(工程の手順)
上述した電子デバイス用部材付き積層体22の製造方法は特に制限されず、電子デバイス用部材の構成部材の種類に応じて従来公知の方法にて、積層体16のポリイミド膜18上に、電子デバイス用部材20を形成する。
【0153】
電子デバイス用部材20は、ポリイミド膜18に最終的に形成される部材の全部(以下、「全部材」という)ではなく、全部材の一部(以下、「部分部材」という)であってもよい。シリコーン樹脂層14から剥離された部分部材付き基板を、その後の工程で全部材付き基板(後述する電子デバイスに相当)とすることもできる。
【0154】
シリコーン樹脂層14から剥離された、全部材付き基板には、その剥離面に他の電子デバイス用部材が形成されてもよい。さらに、2枚の電子デバイス用部材付き積層体22の電子デバイス用部材20同士を対向させて、両者を貼り合わせて全部材付き積層体を組み立て、その後、全部材付き積層体から2枚のシリコーン樹脂層付きガラス基材を剥離して、電子デバイスを製造することもできる。
【0155】
例えば、OLEDを製造する場合を例にとると、積層体16のポリイミド膜18のシリコーン樹脂層14側とは反対側の表面上に有機EL構造体を形成するために、透明電極を形成する、さらに透明電極を形成した面上にホール注入層・ホール輸送層・発光層・電子輸送層などを蒸着する、裏面電極を形成する、封止板を用いて封止する、などの各種の層形成や処理が行なわれる。これらの層形成や処理として、具体的には、例えば、成膜処理、蒸着処理、封止板の接着処理などが挙げられる。
【0156】
(分離工程)
分離工程は、図4に示すように、上記部材形成工程で得られた電子デバイス用部材付き積層体22から、シリコーン樹脂層14とポリイミド膜18との界面を剥離面として、電子デバイス用部材20が積層したポリイミド膜18と、シリコーン樹脂層付きガラス基材26とに分離して、電子デバイス用部材20およびポリイミド膜18を含む電子デバイス24を得る工程である。
【0157】
剥離されたポリイミド膜18上の電子デバイス用部材20が必要な全構成部材の形成の一部である場合には、分離後、残りの構成部材をポリイミド膜18上に形成することもできる。
【0158】
ポリイミド膜18とシリコーン樹脂層14とを剥離する方法は、特に制限されない。例えば、ポリイミド膜18とガラス基材12との界面に鋭利な刃物状のものを差し込み、剥離のきっかけを与えた上で、水と圧縮空気との混合流体を吹き付けたりして剥離できる。また、レーザーリフトオフ法を用いてもよい。
【0159】
ポリイミド膜18とシリコーン樹脂層14とを剥離する方法として好ましくは、電子デバイス用部材付き積層体22を、ガラス基材12が上側、電子デバイス用部材20側が下側となるように定盤上に設置し、電子デバイス用部材20側を定盤上に真空吸着し、この状態でまず刃物状のものをポリイミド膜18とガラス基材12との界面に侵入させる。その後、ガラス基材12側を複数の真空吸着パッドで吸着し、刃物状のものを差し込んだ箇所付近から順に真空吸着パッドを上昇させる。そうすると、シリコーン樹脂層付きガラス基材26を容易に剥離できる。
【0160】
また、ポリイミド膜18とシリコーン樹脂層14とを剥離する際、電子デバイス用部材20が複数のセル毎に作製されている場合、ポリイミド膜18と電子デバイス用部材20を有する電子デバイス24をセル毎に切断した後、切断されたセル毎にポリイミド膜18とシリコーン樹脂層14との間を剥離してもよい。セル毎に切断する方法としては、レーザービームで切断する方法、ダイシングソーなどの切断加工機械で切断する方法が挙げられる。
【0161】
電子デバイス用部材付き積層体22から電子デバイス24を分離する際においては、イオナイザーによる吹き付けや湿度を制御することにより、シリコーン樹脂層14の欠片が電子デバイス24に静電吸着することをより抑制できる。
【0162】
上述した電子デバイスの製造方法は、例えば、米国特許出願公開第2018/0178492号明細書の段落[0210]に記載された表示装置の製造に好適であり、電子デバイス24としては、例えば、同段落[0211]に記載されたものが挙げられる。
【0163】
また、上記分離工程を実施する前に、積層体の電子デバイス用部材が配置されていない領域を切断して除去してもよい。
【0164】
分離された電子デバイス24の電子デバイス用部材20のポリイミド膜18側とは反対側の表面には、保護フィルムが貼合されてもよい。
【0165】
また、分離された電子デバイス24のポリイミド膜18の電子デバイス用部材20側とは反対側の表面には、保護フィルムが貼合されてもよい。なお、保護フィルムをポリイミド膜18に貼合する前には、必要に応じて、ポリイミド膜18の表面に、表面処理を施してもよい。表面処理としては、例えば、コロナ処理、大気圧プラズマ処理、UVオゾン処理、エキシマーUV処理が挙げられる。表面処理後のポリイミド膜18の表面の水接触角は10度以下が好ましく、5度以下がより好ましい。
【0166】
電子デバイス用部材付き積層体22から分離されたシリコーン樹脂層付きガラス基材26は、ガラス原料としてリサイクルしてもよい。
【0167】
また、分離されたシリコーン樹脂層付きガラス基材26のシリコーン樹脂層14の表面を洗浄し、さらに表面改質することで、再度、ポリイミド膜を形成するための積層基板として用いてもよい。
【0168】
また、分離されたシリコーン樹脂層付きガラス基材26のシリコーン樹脂層14を除去して、ガラス基材として再利用してもよい。シリコーン樹脂層の除去方法としては、シリコーン樹脂層を溶剤に溶解させる方法、シリコーン樹脂層を機械的に研削または研磨する方法が挙げられる。
【実施例
【0169】
以下に、実施例などにより本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって制限されるものではない。
以下では、ガラス基材として、無アルカリホウケイ酸ガラスからなるガラス基材(線膨張係数38×10-7/℃、AGC株式会社製 商品名「AN100」)を使用した。
以下、例1~例4、例9、例10は実施例であり、例5~例8、例11~例15は比較例である。
【0170】
(硬化性シリコーン1の調製)
1Lのフラスコに、トリエトキシメチルシラン(179g)、トルエン(300g)、酢酸(5g)を加えて、混合物を25℃で20分間撹拌後、さらに、60℃に加熱して12時間反応させた。得られた反応粗液を25℃に冷却後、水(300g)を用いて、反応粗液を3回洗浄した。洗浄された反応粗液にクロロトリメチルシラン(70g)を加えて、混合物を25℃で20分間撹拌後、さらに、50℃に加熱して12時間反応させた。得られた反応粗液を25℃に冷却後、水(300g)を用いて、反応粗液を3回洗浄した。
【0171】
洗浄された反応粗液からトルエンを減圧留去し、スラリー状態にした後、真空乾燥機で終夜乾燥することにより、白色のオルガノポリシロキサン化合物である硬化性シリコーン1を得た。硬化性シリコーン1は、T単位の個数:M単位の個数=87:13(モル比)であった。硬化性シリコーン1は、M単位、T単位のモル比が13:87、有機基は全てメチル基、平均OX基数が0.02であった。平均OX基数は、Si原子1個に平均で何個のOX基(Xは水素原子または炭化水素基)が結合しているかを表した数値である。なお、M単位は、(R)SiO1/2で表される1官能オルガノシロキシ単位を意味する。T単位は、RSiO3/2(Rは、水素原子または有機基を表す)で表される3官能オルガノシロキシ単位を意味する。
【0172】
(硬化性組成物1の調製)
硬化性シリコーン(20g)と、金属化合物としてオクチル酸ジルコニウム化合物(「オルガチックスZC-200」、マツモトファインケミカル株式会社製)(0.16g)と、2-エチルヘキサン酸セリウム(III)(Alfa Aesar社製、金属含有率12%)(0.17g)、溶媒としてIsoper G(東燃ゼネラル石油株式会社製)(19.7g)とを混合し、得られた混合液を、孔径0.45μmのフィルタを用いてろ過することにより、硬化性組成物1を得た。
【0173】
(硬化性シリコーン2の調製)
オルガノハイドロジェンシロキサンとアルケニル基含有シロキサンとを混合することにより、硬化性シリコーン2を得た。硬化性シリコーン2の組成は、M単位、D単位、T単位のモル比が9:59:32、有機基のメチル基とフェニル基とのモル比が44:56、全アルケニル基と全ケイ素原子に結合した水素原子とのモル比(水素原子/アルケニル基)が0.7、平均OX基数が0.1であった。
【0174】
(硬化性組成物2の調製)
硬化性シリコーン2に、Platinum(0)-1,3-divinyl-1,1,3,3-tetramethyldisiloxane(CAS No. 68478-92-2)を白金元素の含有量が120ppmとなるように加えて、混合物Aを得た。混合物A(200g)に溶媒としてジエチレングリコールジエチルエーテル(「ハイソルブEDE」、東邦化学工業社製)(84.7g)とを混合し、得られた混合液を、孔径0.45μmのフィルタを用いてろ過することにより、硬化性組成物2を得た。
【0175】
<例1>
(ガラス基材とシリコーン樹脂層とからなる積層基板の作製)
離形フィルム(仮支持体に該当)としてPETフィルム(東洋紡社製、コスモシャインA4160、厚み50μm)を準備した。このフィルムはフラット面と凹凸面を有するが、フラット面側上に調製した硬化性組成物1を塗布し、ホットプレートを用いて140℃で10分間加熱することにより、シリコーン樹脂層を形成した。
【0176】
続いて、水系ガラス洗浄剤(株式会社パーカーコーポレーション製「PK-LCG213」)で洗浄後、純水で洗浄した200mm×200mm、厚み0.5mmのガラス基材「AN100」(ガラス基材)と、シリコーン樹脂層が形成されたPETフィルム(サイズ:190mm×190mm)とを貼合して、ガラス基材、シリコーン樹脂層、およびPETフィルムがこの順で配置された積層体を作製した。
【0177】
次に、得られた積層体をオートクレーブ内に配置して、60℃、1MPaの条件にて30分間加熱した。その後、PETフィルムを剥離して、得られた積層体を250℃に予熱したオーブンに投入し、30分間アニール処理を施し、ガラス基材およびシリコーン樹脂層からなる積層基板を作製した(アニール工程)。
【0178】
アニール処理後のシリコーン樹脂層の任意の10か所の膜厚を膜厚測定システム(フィルメトリクス株式会社製「F20」)にて測定した。測定範囲としては、シリコーン樹脂層の周縁端部から中央部に向かって3mmの周縁領域を除いた。10個の測定値の膜厚の平均値は7.2μmであった。シリコーン樹脂層の膜厚の最大値は7.4μm、最小値は7.1μmであった。また、膜厚の最大値と最小値の差を膜厚ばらつきとした。膜厚ばらつきは0.3μmだった。
【0179】
アニール処理後のシリコーン樹脂層の任意の10か所の表面粗さ(Ra)を非接触表面・層断面形状計測システム(菱化システム社製「Vertscan R3300-lite」)を用いて測定した。測定範囲としては、シリコーン樹脂層の周縁端部から中央部に向かって3mmの周縁領域を除いた。1か所の測定領域は縦940μm×横700μmとした。10個の測定値の表面粗さの平均値は0.81nmであった。表面粗さの最大値は0.87nm、最小値は0.72nmであった。また、表面粗さの最大値と最小値の差を表面粗さばらつきとした。表面粗さばらつきは0.15nmだった。
【0180】
シリコーン樹脂層の膜厚、および、表面粗さの測定において、シリコーン樹脂層の表面にリントやガラスカレットなどの異物が観察された場合は、測定データとして採用せず、再測定を行った。
【0181】
(積層体の作製)
上記で得られた積層基板のシリコーン樹脂層にコロナ処理を施した後、無色ポリイミドワニス(三菱ガス化学株式会社製「ネオプリムH230」)を塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で20分間加熱した。続いて、イナートガスオーブンを用いて窒素雰囲気下400℃で30分間加熱し、ガラス基材、シリコーン樹脂層、無色ポリイミド膜(厚み:7μm)をこの順に有する積層体を得た。
【0182】
(ガスバリア膜の形成、および、耐熱試験)
上記(積層体の作製)で得られた積層体の無色ポリイミド膜表面にプラズマCVD装置を用いて厚み50nmのシリコン窒化膜(SiN膜)を形成した。次に、イナートガスオーブンを用いて、ガラス基材、シリコーン樹脂層、無色ポリイミド膜、シリコン窒化膜をこの順に有する積層体を窒素雰囲気下にて400℃で1時間、加熱した(耐熱試験)。
【0183】
(無色ポリイミド膜の剥離)
耐熱試験後の積層体の無色ポリイミド膜の端部を指でつまみ、垂直に引き上げることで表面にSiN膜が形成されている無色ポリイミド膜を積層体から剥離した。
【0184】
<例2~例6、例9~例13>
表1に示した硬化性組成物、離形フィルム、アニール条件としたこと以外は、例1と同様に評価サンプルを作製した。
【0185】
<例7>
(ガラス基材とシリコーン樹脂層とからなる積層基板の作製)
水系ガラス洗浄剤(株式会社パーカーコーポレーション製「PK―LCG213」)で洗浄後、純水で洗浄した190mm×190mm、厚み0.5mmのガラス基材「AN100」(ガラス基材)の上に、スピンコーターを用いて、硬化性組成物1を塗布した。ホットプレートを用いて140℃で10分間加熱することにより、シリコーン樹脂層を形成した。ガラス基材およびシリコーン樹脂層からなる積層基板を250℃に予熱したオーブンに投入し、30分間アニール処理を施した(アニール工程)。
【0186】
アニール処理後のシリコーン樹脂層の任意の10か所の膜厚を膜厚測定システム(フィルメトリクス株式会社製「F20」)にて測定した(測定範囲としては、シリコーン樹脂層の端部から中央部に向かって3mmの周縁領域を除く)。10個の測定値の膜厚の平均値は7.0μmであった。膜厚の最大値は9.5μm、最小値は6.8μmであった。また、膜厚の最大値と最小値の差である膜厚ばらつきは、2.7μmとなった。
【0187】
アニール処理後のシリコーン樹脂層の任意の10か所の表面粗さ(Ra)を非接触表面・層断面形状計測システム(菱化システム社製「Vertscan R3300-lite」)を用いて測定した。測定範囲としては、シリコーン樹脂層の端部から中央部に向かって3mmの周縁領域を除いた。1か所の測定領域は940μm×700μmとした。10個の測定値の表面粗さの平均値は0.42nmであった。表面粗さの最大値は0.47nm、最小値は0.40nmであった。また、表面粗さの最大値と最小値の差である表面粗さばらつきは、0.07nmとなった。
【0188】
シリコーン樹脂層の膜厚、および、表面粗さの測定において、シリコーン樹脂層の表面にリントやガラスカレットなどの異物が観察された場合は、測定データとして採用せず、再測定を行った。
【0189】
(積層体の作製)
上記で得られた積層基板のシリコーン樹脂層にコロナ処理を施した後、無色ポリイミドワニス(三菱ガス化学株式会社製「ネオプリムH230」)を塗布した後、ホットプレートを用いて80℃で20分間加熱した。続いて、イナートガスオーブンを用いて窒素雰囲気下400℃で30分間加熱し(キュア工程)、ガラス基材、シリコーン樹脂層、無色ポリイミド膜(厚み:7μm)をこの順に有する積層体を得た。
【0190】
(ガスバリア膜の形成、および、耐熱試験)
ガスバリア膜として、上記(積層体の作製)にて得られた積層体の無色ポリイミド膜表面に、プラズマCVD装置を用いて厚み50nmのシリコン窒化膜(SiN膜)を形成した。
次に、耐熱試験として、イナートガスオーブンを用いて、ガラス基材、シリコーン樹脂層、無色ポリイミド膜、シリコン窒化膜をこの順に有する積層体を窒素雰囲気下400℃で1時間、加熱した。
【0191】
(無色ポリイミド膜の剥離)
耐熱試験後の積層体の無色ポリイミド膜の端部を指でつまみ、垂直に引き上げることで無色ポリイミド膜(表面にSiN膜付)を積層体から剥離した。
【0192】
<例8、例14、例15>
表1に示した硬化性組成物、シリコーン樹脂層の形成方法、アニール条件としたこと以外は、例7と同様に評価サンプルを作製した。
【0193】
<無色ポリイミド膜のムラ評価>
剥離した無色ポリイミド膜を目視で観察し、無色ポリイミド膜の光学的な不均一性(ムラ)を評価した。評価面積は184mm×184mmとし、以下の評価基準に従って評価した。
◎:全面にわたってムラが見られない
〇:評価面積の10%未満の領域にムラが見られる
×:評価面積の10%以上の領域にムラが見られる
【0194】
ムラ評価の結果を表2に示す。
表2中、「シリコーン樹脂層の膜厚[μm]」欄の「平均」欄はシリコーン樹脂層の10個の膜厚の測定値の算術平均値を表し、「最大」欄は10個の膜厚の測定値のうちの最大値を表し、「最小」欄は10個の膜厚の測定値のうちの最小値を表し、「ばらつき」欄は最大値と最小値との差を表す。
【0195】
表2中、「シリコーン樹脂層の表面粗さRa[nm]」欄の「平均」欄はシリコーン樹脂層の10個の表面粗さの測定値の算術平均値を表し、「最大」欄は10個の表面粗さの測定値のうちの最大値を表し、「最小」欄は10個の表面粗さの測定値のうちの最小値を表し、「ばらつき」欄は最大値と最小値との差を表す。
【0196】
【表1】
【0197】
【表2】
【0198】
例1~4、例9、例10と、例5、例6、例11~13との比較より、シリコーン樹脂層の表面粗さRaのばらつきが1.00nm以下であれば光学的な不均一性(ムラ)の少ない無色ポリイミド膜を得ることができることが分かった。
また、例1~4、例9、例10と、例7、例8、例14、例15との比較により、シリコーン樹脂層の膜厚のばらつきが1.5μm以下であれば光学的な不均一性(ムラ)の少ない無色ポリイミド膜を得ることができることが分かった。
また、例1~4と、例9、例10との比較より、表面粗さRaのばらつきが0.40nm以下の場合、より効果が優れることが確認された。
【0199】
<有機EL表示装置(電子デバイスに該当)の製造>
以下、例1~例4、例9、例10で得られた積層体を用いて、以下の手順に従って、有機EL表示装置を製造した。
【0200】
まず、積層基板のポリイミド膜のガラス基材側とは反対側の表面上に、プラズマCVD法により窒化シリコン、酸化シリコン、アモルファスシリコンの順に成膜した。次に、イオンドーピング装置により低濃度のホウ素をアモルファスシリコン層に注入し、加熱処理し脱水素処理を行った。次に、レーザアニール装置によりアモルファスシリコン層の結晶化処理を行った。次に、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングおよびイオンドーピング装置より、低濃度のリンをアモルファスシリコン層に注入し、N型およびP型のTFTエリアを形成した。
【0201】
次に、ポリイミド膜のガラス基材側とは反対側に、プラズマCVD法により酸化シリコン膜を成膜してゲート絶縁膜を形成した後に、スパッタリング法によりモリブデンを成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングによりゲート電極を形成した。次に、フォトリソグラフィ法とイオンドーピング装置により、高濃度のホウ素とリンをN型、P型それぞれの所望のエリアに注入し、ソースエリアおよびドレインエリアを形成した。
【0202】
次に、ポリイミド膜のガラス基材側とは反対側に、プラズマCVD法による酸化シリコンの成膜で層間絶縁膜を、スパッタリング法によりアルミニウムの成膜およびフォトリソグラフィ法を用いたエッチングによりTFT電極を形成した。次に、水素雰囲気下、加熱処理し水素化処理を行った後に、プラズマCVD法による窒化シリコンの成膜で、パッシベーション層を形成した。
【0203】
次に、ポリイミド膜のガラス基材側とは反対側に、紫外線硬化性樹脂を塗布し、フォトリソグラフィ法により平坦化層およびコンタクトホールを形成した。次に、スパッタリング法により酸化インジウム錫を成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより画素電極を形成した。続いて、蒸着法により、ポリイミド膜のガラス基材側とは反対側に、正孔注入層として4,4’,4”-トリス(3-メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン、正孔輸送層としてビス[(N-ナフチル)-N-フェニル]ベンジジン、発光層として8-キノリノールアルミニウム錯体(Alq)に2,6-ビス[4-[N-(4-メトキシフェニル)-N-フェニル]アミノスチリル]ナフタレン-1,5-ジカルボニトリル(BSN-BCN)を40体積%混合したもの、電子輸送層としてAlqをこの順に成膜した。次に、スパッタリング法によりアルミニウムを成膜し、フォトリソグラフィ法を用いたエッチングにより対向電極を形成した。
【0204】
次に、ポリイミド膜のガラス基材側とは反対側に、紫外線硬化型の接着層を介してもう一枚のガラス基材を貼り合わせて封止した。上記手順によって、ポリイミド膜上に有機EL構造体を形成した。ポリイミド膜上に有機EL構造体を有する構造物(以下、パネルAという。)が、電子デバイス用部材付き積層体である。
【0205】
続いて、パネルAの封止体側を定盤に真空吸着させたうえで、パネルAのコーナー部のポリイミド膜とガラス基材との界面に、厚み0.1mmのステンレス製刃物を差し込み、ポリイミド膜とガラス基材との界面に剥離のきっかけを与えた。そして、パネルAのガラス基材表面を真空吸着パッドで吸着した上で、吸着パッドを上昇させた。ここで刃物の差し込みは、イオナイザー(キーエンス社製)から除電性流体を当該界面に吹き付けながら行った。
【0206】
次に、形成した空隙へ向けてイオナイザーからは引き続き除電性流体を吹き付けながら、かつ、水を剥離前線に差しながら真空吸着パッドを引き上げた。その結果、定盤上に有機EL構造体が形成されたポリイミド膜のみを残し、シリコーン樹脂層付きガラス基材を剥離することができた。
【0207】
続いて、分離されたポリイミド膜をレーザーカッタまたはスクライブ-ブレイク法を用いて切断し、複数のセルに分断した後、有機EL構造体が形成されたポリイミド膜と対向基板とを組み立てて、モジュール形成工程を実施して有機EL表示装置を作製した。
【0208】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0209】
なお、本出願は、2021年4月22日出願の日本特許出願(特願2021-072745)に基づくものであり、その内容は本出願の中に参照として援用される。
【符号の説明】
【0210】
10 積層基板
12 ガラス基材
14 シリコーン樹脂層
16 積層体
18 ポリイミド膜
20 電子デバイス用部材
22 電子デバイス用部材付き積層体
24 電子デバイス
26 シリコーン樹脂層付きガラス基材
図1
図2
図3
図4