IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー・ケム・リミテッドの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】高吸水性樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/24 20060101AFI20231024BHJP
   C08F 220/00 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
C08J3/24 Z CER
C08J3/24 CEZ
C08F220/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021553353
(86)(22)【出願日】2020-09-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-06
(86)【国際出願番号】 KR2020012102
(87)【国際公開番号】W WO2021066340
(87)【国際公開日】2021-04-08
【審査請求日】2021-09-08
(31)【優先権主張番号】10-2019-0121050
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0113937
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ジュンウェ・イ
(72)【発明者】
【氏名】テ・ヨン・ウォン
(72)【発明者】
【氏名】ジュンミン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ヘミン・イ
(72)【発明者】
【氏名】クァンイン・シン
(72)【発明者】
【氏名】ミンス・キム
(72)【発明者】
【氏名】チャン・フン・ハン
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-124879(JP,A)
【文献】特表2001-523287(JP,A)
【文献】特表2003-529647(JP,A)
【文献】特開2006-297373(JP,A)
【文献】国際公開第2015/053372(WO,A1)
【文献】特開2005-344103(JP,A)
【文献】国際公開第2014/021388(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0071966(US,A1)
【文献】米国特許第06323252(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第101781383(CN,A)
【文献】日本化学会,化学便覧,第6版,日本,丸善株式会社,1956年08月20日,第602頁-第615頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J
C08K
C08L
B01J
A61F
A61L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部架橋剤の存在下、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して、第1架橋重合体を含む含水ゲル重合体を形成する段階(段階1);
前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級してベース樹脂粉末を形成する段階(段階2);
表面架橋液の存在下、前記ベース樹脂粉末を熱処理して表面架橋して高吸水性樹脂粒子を形成する段階(段階3);および
前記高吸水性樹脂粒子に塩水を添加する段階(段階4)を含み、
前記塩水は、Na CO 、NaCl、またはMg(CH COO) の水溶液であり、
前記塩水の伝導度は、常温(25℃)で15~55mS/cmである、
高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、下記の化学式1で表される化合物である、
請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法:
[化1]
-COOM
前記化学式1において、
は、不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキル基であり、
は、水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【請求項3】
前記内部架橋剤は、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリアリールアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコール、グリセリン、およびエチレンカーボネートからなる群より選択される1種以上を含む、
請求項1または2に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項4】
前記段階3は、180~250℃で行われる、
請求項1から3のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記塩水の伝導度は、常温(25℃)で20~55mS/cmである、
請求項1から4のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記塩水の処理量は、前記高吸水性樹脂粒子対比0.1~10重量%である、
請求項1からのいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2019年9月30日付の韓国特許出願第10-2019-0121050号および2020年9月7日付の韓国特許出願第10-2020-0113937号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、微細粒子の分散問題および高吸水性樹脂の物性阻害問題を解決できる、高吸水性樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)とは、自重の5百から1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であって、開発企業ごとにSAM(Super Absorbency Material)、AGM(Absorbent Gel Material)などそれぞれ異なる名前で名付けている。このような高吸水性樹脂は生理用品として実用化され始め、現在は、幼児用紙おむつなどの衛生用品のほか、園芸用土壌保水材、土木、建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野での鮮度保持剤、およびシップ用などの材料に幅広く使用されている。
【0004】
最も多い場合に、このような高吸水性樹脂はおむつや生理用ナプキンなど衛生材分野で幅広く使用されている。このような衛生材中において、前記高吸水性樹脂はパルプ内に拡散した状態で含まれるのが一般的である。しかし、最近では、より薄い厚さのおむつなどの衛生材を提供するための努力が続いており、その一環としてパルプの含有量が減少したり、一歩進んでパルプが全く使用されない、いわゆるパルプレス(pulpless)おむつなどの開発が積極的に進められている。
【0005】
一方、製造される高吸水性樹脂は、一般に粒径が150~850μmの粒子で製造され、前記の粒径範囲で最適な高吸水性樹脂の物性が発現する。このような粒径を有する高吸水性樹脂を製造するためには、高吸水性樹脂の製造過程で粉砕および分級の段階が必然的に含まれる。
【0006】
しかし、このような粉砕および分級工程にもかかわらず、粉体の特性上、粒径150μm未満の粒子が製造される高吸水性樹脂にある程度含まれており、これによって製造工程でこのような粒子の分散問題が発生し、これは、工程環境の問題およびこの過程でこれを除去するための空気ろ過装置など工程上の様々な問題が発生する。また、このような粒子は高吸水性樹脂の製品にも含まれて、高吸水性樹脂が水分などを吸収する時に前記粒子がかたまる現象が発生し、これによって高吸水性樹脂本来の物性が阻害される現象が発生する。
【0007】
このために、従来は、製造される高吸水性樹脂の水分を噴射して微細粒子を除去する方法が使用されていた。しかし、水分を分散して微細粒子を除去する場合、微細粒子の除去にはやや効果があるが、その過程で微細粒子が互いにかたまって高吸水性樹脂にそのまま残留する問題があり、これは、高吸水性樹脂の各種物性を低下させる一因となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような背景下、本発明は、微細粒子の分散問題および高吸水性樹脂の物性阻害問題を解決するために、製造される高吸水性樹脂に存在する微細粒子を塩水を用いて除去する方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、下記の段階を含む高吸水性樹脂を提供する:
内部架橋剤の存在下、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して、第1架橋重合体を含む含水ゲル重合体を形成する段階(段階1);
前記含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級してベース樹脂粉末を形成する段階(段階2);
表面架橋液の存在下、前記ベース樹脂粉末を熱処理して表面架橋して高吸水性樹脂粒子を形成する段階(段階3);および
前記高吸水性樹脂粒子に塩水を添加する段階(段階4)を含み、
前記塩水の伝導度は、15~55mS/cmである、
高吸水性樹脂の製造方法。
【0010】
以下、本発明を段階別に詳しく説明する。
【0011】
(段階1)
前記段階1は、内部架橋剤の存在下、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体を架橋重合して、第1架橋重合体を含む含水ゲル重合体を形成する段階である。
【0012】
前記第1架橋重合体を構成する水溶性エチレン系不飽和単量体は、高吸水性樹脂の製造に通常使用される任意の単量体であってもよい。非制限的な例として、前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、下記の化学式1で表される化合物であってもよい:
【0013】
[化1]
-COOM
【0014】
前記化学式1において、
は、不飽和結合を含む炭素数2~5のアルキル基であり、
は、水素原子、1価または2価金属、アンモニウム基または有機アミン塩である。
【0015】
好ましくは、前記単量体は、アクリル酸、メタクリル酸、およびこれら酸の1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩および有機アミン塩からなる群より選択された1種以上であってもよい。このように水溶性エチレン系不飽和単量体としてアクリル酸またはその塩を用いる場合、吸水性が向上した高吸水性樹脂を得ることができて有利である。この他にも、前記単量体としては、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタアクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸または2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、(N,N)-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(N,N)-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが使用できる。
【0016】
ここで、前記水溶性エチレン系不飽和単量体は、酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和されたものであってもよい。好ましくは、前記単量体を水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウムなどのアルカリ物質で部分的に中和させたものが使用できる。
【0017】
この時、前記単量体の中和度は、40~95モル%、または40~80モル%、または45~75モル%であってもよい。前記中和度の範囲は最終物性に応じて異なるが、中和度が高すぎると、中和された単量体が析出して重合が円滑に行われにくいことがあり、逆に、中和度が低すぎると、高分子の吸水力が大きく低下するだけでなく、取り扱いにくい弾性ゴムのような性質を示すことがある。
【0018】
また、前記単量体組成物中、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の濃度は重合時間および反応条件などを考慮して適切に調節可能であり、好ましくは、20~90重量%、または40~65重量%であってもよい。このような濃度範囲は、高濃度水溶液の重合反応で現れるゲル効果現象を利用して、重合後に未反応単量体を除去する必要がないようにしながらも、後述する重合体の粉砕時の粉砕効率を調節するために有利である。ただし、前記単量体の濃度が過度に低くなると、高吸水性樹脂の収率が低くなりうる。逆に、前記単量体の濃度が過度に高くなると、単量体の一部が析出したり、重合された含水ゲル重合体の粉砕時の粉砕効率が低下するなど工程上の問題が生じ、高吸水性樹脂の物性が低下しうる。
【0019】
また、前記単量体組成物は、必要に応じて、発泡剤を含むことができる。前記発泡剤は、重合時に発泡が起きて含水ゲル重合体内に気孔を形成して表面積を増加させる役割を果たす。前記発泡剤は、無機発泡剤、または有機発泡剤を使用することができる。無機発泡剤の例としては、重炭酸ナトリウム(sodium bicarbonate)、炭酸ナトリウム(sodium carbonate)、重炭酸カリウム(potassium bicarbonate)、炭酸カリウム(potassium carbonate)、重炭酸カルシウム(calcium bicarbonate)、炭酸カルシウム(calcium bicarbonate)、重炭酸マグネシウム(magnesium bicarbonate)または炭酸マグネシウム(magnesium carbonate)が挙げられる。また、有機発泡剤の例としては、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロライド(2,2’-Azobis(2-methylpropionamidine)dihydrochloride、AAPH)、アゾジカーボンアミド(azodicarbonamide、ADCA)、ジニトロソペンタメチレンテトラミン(dinitroso pentamethylene tetramine、DPT)、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド(p,p’-oxybisbenzenesulfonylhydrazide、OBSH)、およびp-トルエンスルホニルヒドラジド(p-toluenesulfonyl hydrazide、TSH)が挙げられる。
【0020】
さらに、前記発泡剤は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の重量に対して1.0重量%以下で使用することが好ましい。前記発泡剤の使用量が1.0重量%を超える場合には、気孔が過度に多くなって高吸水性樹脂のゲル強度が低下し、密度が小さくなって流通と保管に問題を生じることがある。なお、前記発泡剤は、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の重量に対して0.01重量%以上で使用することが好ましい。
【0021】
また、前記内部架橋剤としては、前記水溶性エチレン系不飽和単量体の重合時に架橋結合の導入を可能にするものであればいかなる化合物も使用可能である。非制限的な例として、前記内部架橋剤は、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリアリールアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、またはエチレンカーボネートなどの多官能性架橋剤が単独使用または2以上併用可能であり、これらに限定されるものではない。好ましくは、分子量が互いに異なるポリエチレングリコールジアクリレート2種を使用する。
【0022】
このような内部架橋剤は、前記単量体組成物に対して約0.001~1重量%の濃度で添加される。つまり、前記内部架橋剤の濃度が低すぎる場合、樹脂の吸水速度が低くなり、ゲル強度が弱くなりうるので、好ましくない。逆に、前記内部架橋剤の濃度が高すぎる場合、樹脂の吸水力が低くなって、吸水体としては好ましくない。
【0023】
また、前記段階1において、高吸水性樹脂の製造に一般に使用される熱重合開始剤、光重合開始剤、または酸化-還元(redox)開始剤が含まれる。
【0024】
前記熱重合開始剤としては、過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素、およびアスコルビン酸からなる群より選択された1つ以上の化合物が使用できる。具体的には、過硫酸塩系開始剤としては、過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH)などを例に挙げることができる。また、アゾ(Azo)系開始剤としては、2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane)dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチルアミジンジヒドロクロライド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitril)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane]dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノバレリアン酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))などを例に挙げることができる。より多様な熱重合開始剤については、Odian著の『Principle of Polymerization(Wiley,1981年)』の第203頁に開示されており、これを参照することができる。
【0025】
前記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびアルファ-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群より選択された1つ以上の化合物が使用できる。そのうち、アシルホスフィンの具体例として、商用lucirin TPO、つまり、2,4,6-トリメチル-ベンゾイル-トリメチルホスフィンオキシド(2,4,6-trimethyl-benzoyl-trimethyl phosphine oxide)が使用できる。より多様な光重合開始剤については、Reinhold Schwalm著の『UV Coatings:Basics,Recent Developments and New Application(Elsevier2007年)』の第115頁に開示されており、これを参照することができる。
【0026】
また、上述した重合開始剤の分解を促進する還元剤を併用することができ、両者を組み合わせることにより、酸化-還元(redox)開始剤とすることもできる。還元剤としては、亜硫酸ナトリウムまたは亜硫酸水素ナトリウムなどの亜硫酸塩や、第1鉄塩などの還元性金属、L-アスコルビン酸、アミン類を単独使用するか、2種以上併用することができ、これらに限定されるものではない。
【0027】
このような重合開始剤は、前記単量体組成物に対して約0.001~1重量%の濃度で添加される。つまり、前記重合開始剤の濃度が低すぎる場合、重合速度が遅くなり、最終製品に残存モノマーが多量抽出されうるので、好ましくない。逆に、前記重合開始剤の濃度が前記範囲より高い場合、ネットワークをなす高分子チェーンが短くなって水可溶成分の含有量が高くなり、加圧吸水能が低くなるなど樹脂の物性が低下しうるので、好ましくない。
【0028】
この他にも、前記単量体組成物には、必要に応じて、増粘剤、可塑剤、保存安定剤、酸化防止剤などの添加剤がさらに含まれてもよい。
【0029】
そして、このような単量体組成物は、前述した単量体などの原料物質が溶媒に溶解した溶液の形態で用意される。この時使用可能な溶媒としては、前述した原料物質を溶解させられるものであれば、その構成の限定なく使用可能である。例えば、前記溶媒としては、水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテート、N,N-ジメチルアセトアミド、またはこれらの混合物などが使用できる。
【0030】
ここで、前記単量体組成物の熱重合またはUV重合は、その条件は特に限定されず、通常の方法を用いることができる。具体的には、熱重合は、30~100℃の温度で2分~30分間重合するレドックス重合方法と、2分~30分間重合する熱重合に分けられる。また、UV重合(光重合)は、30~90℃の温度で10秒~5分間光を照射することによって行われる。さらに、UV照射時の紫外線の光量は、0.1~30mW/cmであってもよい。UV照射時に用いる光源および波長範囲も、当業界にてよく知られた公知のものを使用することができる。
【0031】
一例として、撹拌軸が備えられたニーダーなどの反応器に前記単量体組成物を投入し、これに熱風を供給したり反応器を加熱して熱重合することによって含水ゲル状重合体を得ることができる。この時、反応器に備えられた撹拌軸の形態に応じて、反応器の排出口に排出される含水ゲル状重合体は、数ミリメートル~数センチメートルの粒子として得られる。具体的には、得られる含水ゲル状重合体は、注入される単量体組成物の濃度および注入速度などに応じて多様な形態で得られるが、通常、(重量平均)粒径が2~50mmの含水ゲル状重合体が得られる。そして、他の例として、含水ゲル重合体の形成を通常のUV開始による方法で行うことができる。この場合、UV照射装置とトレイ(tray)付きのチャンバ内に単量体組成物を投入し、UVを照射することによって反応が行われる。具体的には、得られる含水ゲル重合体は、注入される単量体組成物の濃度および注入速度などに応じて多様な形態で得られるが、通常、(重量平均)粒径が2~50mmの含水ゲル重合体が得られる。
【0032】
一方、このような方法で得られた含水ゲル重合体の通常の含水率は、40~80重量%であってもよい。一方、本明細書全体において、「含水率」は、全体含水ゲル重合体の重量に対して占める水分の含有量で、含水ゲル重合体の重量から、乾燥状態の重合体の重量を引いた値を意味する。具体的には、赤外線加熱により重合体の温度を上げて乾燥する過程で、重合体中の水分蒸発による重量減少分を測定して計算された値で定義する。この時、乾燥条件は、常温から約180℃まで温度を上昇させた後、180℃で維持する方式で、総乾燥時間は、温度上昇段階の5分を含む20分に設定して、含水率を測定する。
【0033】
(段階2)
前記段階2は、前記段階1で製造した含水ゲル重合体を乾燥、粉砕および分級してベース樹脂粉末を形成する段階であって、ベース樹脂粉末およびこれから得られる高吸水性樹脂は、150~850μmの粒径を有するように製造および提供されることが適切である。より具体的には、前記ベース樹脂粉末およびこれから得られる高吸水性樹脂の少なくとも95重量%以上が150~850μmの粒径を有し、150μm未満の粒径を有する微粉が3重量%未満になる。このように前記ベース樹脂粉末および高吸水性樹脂の粒径分布が好ましい範囲に調節されることによって、最終的に製造された高吸水性樹脂がすでに上述した物性をより良く発現することができる。
【0034】
一方、前記乾燥、粉砕および分級の進行方法についてより具体的に説明すれば、次の通りである。
【0035】
まず、含水ゲル重合体を乾燥するにあたっては、必要に応じて、前記乾燥段階の効率を高めるために、乾燥前に粗粉砕する段階をさらに経ることができる。この時、使用される粉砕機は構成の限定はないが、具体的には、垂直型切断機(Vertical pulverizer)、ターボカッター(Turbo cutter)、ターボグラインダー(Turbo grinder)、回転切断式粉砕機(Rotary cutter mill)、切断式粉砕機(Cutter mill)、円板粉砕機(Disc mill)、シュレッド破砕機(Shred crusher)、破砕機(Crusher)、チョッパ(chopper)および円板式切断機(Disc cutter)からなる粉砕機器の群より選択されるいずれか1つを含むことができるが、上述した例に限定されない。
【0036】
この時、粗粉砕段階は、含水ゲル重合体の粒径が約2mm~約10mmとなるように粉砕することができる。粒径が2mm未満に粉砕することは、含水ゲル重合体の高い含水率によって技術的に容易でなく、また、粉砕された粒子間で互いに凝集する現象が現れることもある。一方、粒径が10mm超過に粉砕される場合、後に行われる乾燥段階の効率増大効果がわずかになる。
【0037】
前記のように粗粉砕されたり、あるいは粗粉砕段階を経ていない重合直後の含水ゲル重合体に対して乾燥を行う。この時、前記乾燥段階の乾燥温度は50~250℃であってもよい。乾燥温度が50℃未満の場合、乾燥時間が過度に長くなり、最終的に形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがあり、乾燥温度が250℃を超える場合、過度に重合体の表面のみ乾燥して、後に行われる粉砕工程で微粉が発生することもあり、最終的に形成される高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがある。より好ましくは、前記乾燥は、150~200℃の温度で、さらに好ましくは、160~190℃の温度で行われる。一方、乾燥時間の場合には、工程効率などを考慮して、20分~15時間行われるが、これに限定されない。
【0038】
前記乾燥工程で通常使用されるものであれば、その構成の限定なく選択されて使用可能である。具体的には、熱風供給、赤外線照射、極超短波照射、または紫外線照射などの方法で乾燥段階を進行させることができる。このような乾燥段階を行った後の重合体の含水率は、0.05~10重量%であってもよい。
【0039】
次に、このような乾燥段階を経て得られた乾燥した重合体を粉砕する段階を行う。粉砕段階の後に得られる重合体粉末は、粒径が150~850μmであってもよい。このような粒径に粉砕するために用いられる粉砕機は、具体的には、ボールミル(ball mill)、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョグミル(jog mill)などを用いることができるが、上述した例に限定されるものではない。
【0040】
そして、このような粉砕段階の後、最終的に製品化される高吸水性樹脂粉末の物性を管理するために、粉砕後に得られる重合体粉末を粒径に応じて分級する別途の過程を経ることができる。好ましくは、粒径が150~850μmの重合体を分級して、このような粒径を有する重合体粉末に対してのみ後述する表面架橋反応段階を経て製品化することができる。
【0041】
(段階3)
前記段階3は、前記段階2で製造したベース樹脂の表面を架橋する段階であって、表面架橋剤を含む表面架橋液の存在下、前記ベース樹脂粉末を熱処理して表面架橋して高吸水性樹脂粒子を形成する段階である。
【0042】
ここで、前記表面架橋液に含まれる表面架橋剤の種類は特に限定されない。非制限的な例として、前記表面架橋剤は、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロパンジオール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、ブタンジオール、ヘプタンジオール、ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、カルシウム水酸化物、マグネシウム水酸化物、アルミニウム水酸化物、鉄水酸化物、カルシウム塩化物、マグネシウム塩化物、アルミニウム塩化物、および鉄塩化物からなる群より選択された1種以上の化合物であってもよい。
【0043】
この時、前記表面架橋剤の含有量は、前記ベース樹脂100重量部に対して0.01~5重量部使用することが好ましい。前記表面架橋剤の含有量が5重量部を超えると、過度な表面架橋が進行して、高吸水性樹脂が水を吸収する場合、表面に水分が多く存在して乾燥度が低くなる問題がある。
【0044】
また、前記表面架橋液は、水、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4-ブタンジオール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、トルエン、キシレン、ブチロラクトン、カルビトール、メチルセロソルブアセテートおよびN,N-ジメチルアセトアミドからなる群より選択された1種以上の溶媒をさらに含むことができる。好ましくは、水を含む。前記溶媒は、前記ベース樹脂粉末100重量部に対して0.5~10重量部使用することができる。
【0045】
また、前記表面架橋液は、無機充填剤を含むことができる。前記無機充填剤としては、シリカ、アルミニウムオキシド、またはシリケートを含むことができる。前記無機充填剤は、前記ベース樹脂粉末の100重量部を基準として、0.01~0.5重量部含まれる。
【0046】
さらに、前記表面架橋液は、増粘剤を追加的に含むことができる。このように増粘剤の存在下でベース樹脂粉末の表面を追加的に架橋すれば、粉砕後にも物性の低下を最小化できる。具体的には、前記増粘剤としては、多糖類およびヒドロキシ含有高分子の中から選択された1種以上が使用できる。前記多糖類としては、ガム系増粘剤とセルロース系増粘剤などが使用できる。前記ガム系増粘剤の具体例としては、キサンタンガム(xanthan gum)、アラビアガム(arabic gum)、カラヤガム(karaya gum)、トラガカントガム(tragacanth gum)、ガッティガム(ghatti gum)、グアーガム(guar gum)、ローカストビーンガム(locust bean gum)およびプシリウムシードガム(psyllium seed gum)などが挙げられ、前記セルロース系増粘剤の具体例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ヒドロキシエチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースおよびメチルヒドロキシプロピルセルロースなどが挙げられる。一方、前記ヒドロキシ含有高分子の具体例としては、ポリエチレングリコールおよびポリビニルアルコールなどが挙げられる。
【0047】
一方、前記表面架橋を行うためには、前記表面架橋液と前記ベース樹脂を反応槽に入れて混合する方法、前記ベース樹脂に表面架橋溶液を噴射する方法、連続的に運転されるミキサに前記ベース樹脂と表面架橋液を連続的に供給して混合する方法などが利用可能である。
【0048】
そして、前記表面改質段階は、100~250℃の温度、好ましくは180~250℃の温度下で行われる。また、前記表面改質は、1分~120分、好ましくは1分~100分、より好ましくは10分~60分間進行させることができる。つまり、最小限度の表面架橋反応を誘導しながらも、過度な反応時に重合体粒子が損傷して物性が低下するのを防止するために、前記表面改質段階は前述した条件で行われる。
【0049】
(段階4)
前記段階4は、先に製造した高吸水性樹脂粒子に塩水を添加する段階である。
【0050】
前記段階3により製造された高吸水性樹脂は、粉体の特性上、150μm以下の粒径を有する微細粒子が必然的に存在し、これは、製造過程でまたは前記高吸水性樹脂を製品として消費者が使用する場合、微細粒子が空中に分散して工程上の問題または健康上の問題が発生する。また、前記高吸水性樹脂が水分などを吸収する過程で微細粒子同士でかたまる現象が発生するが、これは、高吸水性樹脂本来の物性を阻害する一因となる。
【0051】
そこで、本発明では、前記製造した高吸水性樹脂粒子に塩水を用いた加水工程を追加することで、高吸水性樹脂に存在する微細粒子を除去する段階を追加的に含む。これにより、高吸水性樹脂に含まれている微細粒子を約50%以上除去して、微細粒子の分散問題および高吸水性樹脂の物性が阻害する現象を抑制することができる。
【0052】
前記塩水の伝導度は、15~55mS/cmである。前記塩水の伝導度が15mS/cm未満の場合には、微細粒子のほか、相対的に直径の大きい高吸水性樹脂がかたまって発生する粒子(coarse粒子)が生成および除去されて、高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがあり、特にCRC物性が低下する問題がある。また、前記塩水の伝導度が55mS/cm超過の場合には、塩水の伝導度が高すぎて高吸水性樹脂の架橋度の損傷をもたらして高吸水性樹脂の物性が低下する恐れがあり、特にCRC物性が低下する問題がある。
【0053】
好ましくは、前記塩水の伝導度は、20mS/cm以上、25mS/cm以上、30mS/cm以上、35mS/cm以上、または40mS/cm以上であり;54mS/cm以下、53mS/cm以下、52mS/cm以下、または51mS/cm以下である。好ましくは、前記塩水の伝導度は、20~55mS/cmであり、より好ましくは40~55mS/cmである。
【0054】
一方、前記塩水の伝導度は、常温(25℃)および常圧(1atm)で測定したものを意味する。
【0055】
好ましくは、前記塩水は、NaCO、NaCl、またはMg(CHCOO)の水溶液であり、前記物質の添加量は先に説明した伝導度に応じて決定される。
【0056】
一方、前記塩水の処理は、先に製造した高吸水性樹脂粒子の表面に前記塩水を噴射する方式で行うことができる。前記塩水の処理量は、前記高吸水性樹脂粒子対比0.1~10重量%で処理することができ、好ましくは、0.5~5重量%、または0.5~1.5重量%で処理する。
【0057】
一方、前記段階4は、10~30℃で行うことが好ましく、常温(23℃)がより好ましい。また、前記段階3で製造した高吸水性樹脂の表面に塩水を噴射するもので、この時、前記高吸水性樹脂の表面の温度は約70~100℃である。したがって、自然に高吸水性樹脂の冷却が進行し、塩水を噴射した時点から15分~30分間おくことが好ましい。
【0058】
(高吸水性樹脂)
上述した製造方法により製造された高吸水性樹脂は、微細粒子が除去されることによって、水分などの吸収時にかたまりが抑制され、また、水分吸収過程で高吸水性樹脂本来の物性が阻害されずに維持されることが可能である。
【0059】
具体的には、本発明による高吸水性樹脂は、少なくとも一部が中和された酸性基を有する水溶性エチレン系不飽和単量体が内部架橋剤の存在下で重合された架橋重合体を含み;前記架橋重合体は、表面架橋剤によって改質された表面架橋層を含み;Coarse粒子の生成比率が2重量%以下である。
【0060】
好ましくは、本発明による高吸水性樹脂は、CRC(Centrifugal Retention Capacity)が27.5g/g以上であり、より好ましくは、27.6g/g以上、27.7g/g以上、27.8g/g以上、27.9g/g以上、28.0g/g以上である。また、前記CRC値は、その値が高いほど優れているので、その上限は理論的に制限はないが、一例として、30.0g/g以下であってもよい。一方、前記CRCの具体的な測定方法は以下の実施例に詳述した。
【0061】
好ましくは、本発明による高吸水性樹脂は、AAP(Absorption Against Pressure;0.7psi条件)が24.0g/g以上であり、より好ましくは、24.1g/g以上、24.2g/g以上、24.3g/g以上、24.4g/g以上、24.5g/g以上である。また、前記AAP値は、その値が高いほど優れているので、その上限は理論的に制限がないが、一例として、28.0g/g以下であってもよい。一方、前記AAPの具体的な測定方法は以下の実施例に詳述した。
【0062】
好ましくは、本発明による高吸水性樹脂は、通液性(Permeability)が30mL以上であり、より好ましくは、31mL以上、32mL以上、33mL以上、34mL以上、または35mL以上であり;50mL以下、49mL以下、48mL以下、47mL以下、46mL以下、または45mL以下である。一方、前記通液性の具体的な測定方法は以下の実施例に詳述した。
【0063】
好ましくは、本発明による高吸水性樹脂は、vortex(吸水速度)が70秒以下であり、より好ましくは、65秒以下、64秒以下、63秒以下、62秒以下、61秒以下、または60秒以下である。また、前記vortex値は、その値が小さいほど優れており、その下限の例としては、40秒以上、45秒以上、または50秒以上であってもよい。一方、前記vortexの具体的な測定方法は以下の実施例に詳述した。
【発明の効果】
【0064】
本発明の高吸水性樹脂の製造方法によれば、製造される高吸水性樹脂に存在する微細粒子が除去されて、微細粒子の分散問題および高吸水性樹脂の物性阻害問題を解決することができる。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳述する。ただし、このような実施例は発明の例として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が定められるのではない。
【0066】
実施例1
高吸水性樹脂の製造装置としては、重合工程、含水ゲル粉砕工程、乾燥工程、粉砕工程、分級工程、表面架橋工程、冷却工程、分級工程、および各工程を連結する輸送工程で構成される連続製造装置を用いた。
【0067】
(段階1)
アクリル酸100重量部に、内部架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(重量平均分子量:~500g/mol)0.4重量部とヘキサンジオールジアクリレート0.1重量部、および光開始剤としてIRGACURE819 0.01重量部を混合して単量体溶液を製造した。次に、前記単量体溶液を定量ポンプで連続供給しながら、同時に24重量%水酸化ナトリウム水溶液160重量部を連続的にラインミキシングして単量体水溶液を製造した。この時、中和熱によって前記単量体水溶液の温度が約72℃以上に上昇したことを確認した後、温度が40℃に冷却されるのを待った。
【0068】
温度が40℃に冷却された時、前記単量体水溶液に発泡剤である固体状の重炭酸ナトリウム(sodium bicarbonate)6重量部と2重量%過硫酸ナトリウム水溶液6重量部を添加した。
【0069】
前記溶液を、光照射装置が上部に装着され、内部が80℃に予熱された正方形重合器内に設けられたバット(Vat)形態のトレイ(tray、横15cm×縦15cm)に注いで、光照射を行って光開始した。光照射後約25秒後に、表面からゲルが発生し、50秒程度の後に発泡と同時に重合反応が起こるのを確認し、3分間追加的に反応させてシート状の含水ゲル重合体を得た。
【0070】
(段階2)
前記段階1で製造した含水ゲル重合体を3cm×3cmの大きさに切断した後、円筒形粉砕機の内部に装着されたスクリュー型押出機を用いて、前記含水ゲルを複数のホールが形成された多孔板で押し出しながら粉砕(chopping)した。
【0071】
次に、前記粉砕された含水ゲル重合体を上下に風量転移が可能な乾燥機で乾燥させた。乾燥した粉の含水量が約2%以下となるように、180℃のホットエア(hot air)を15分間下方から上方に流れるようにし、再び15分間上方から下方に流れるようにして前記含水ゲル重合体を均一に乾燥させた。
【0072】
前記乾燥した重合体を粉砕機で粉砕した後に分級して、150~850μmの大きさのベース樹脂粉末を得た。
【0073】
(段階3)
前記段階2で製造したベース樹脂100重量部を、水3重量部、メタノール3重量部、エチレンカーボネート0.5重量部を混合した架橋剤溶液と混合した後、180℃で40分間表面架橋反応させた。
【0074】
(段階4)
前記段階3で得られた生成物を90℃に冷却させた後、スポイトを用いて、前記生成物100重量部に対して1重量部の塩水(NaCO 5%水溶液)を投入した。以後、撹拌状態を維持し、15~25分間さらに撹拌/冷却を進行させた後、粒径が150~850μmの表面架橋された高吸水性樹脂粒子を得た。最終的に回収した高吸水性樹脂粒子の温度は40℃であった。
【0075】
実施例2
前記実施例1の段階4において、NaCO 5%水溶液の代わりにNaCl%水溶液を用いることを除けば、前記実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0076】
実施例3
前記実施例1の段階4において、NaCO 5%水溶液の代わりにMg(CHCOO) 5%水溶液を用いることを除けば、前記実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0077】
比較例1
前記実施例1の段階4を省略することを除けば、前記実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0078】
比較例2
前記実施例1の段階4において、NaCO 5%水溶液の代わりに蒸留水を用いることを除けば、前記実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0079】
比較例3
前記実施例1の段階4において、NaCO 5%水溶液の代わりにNaCl0.5%水溶液を用いることを除けば、前記実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0080】
比較例4
前記実施例1の段階4において、NaCO 5%水溶液の代わりにNaCO 10%水溶液を用いることを除けば、前記実施例1と同様の方法で高吸水性樹脂を製造した。
【0081】
実験例
前記製造した高吸水性樹脂に対して、下記の方法により物性を測定した。
【0082】
(1)Dust view
実施例および比較例で製造された高吸水性樹脂それぞれ30gを用意し、高吸水性樹脂のdustの程度をレーザで測定できるDustview II(Palas GmbH製作)を用いて、dust値を測定、分析した。小さい粒子と特定の物質が太い粒より遅い速度で落ちるため、dust numberは下記の数式1により計算した。
【0083】
[数1]
Dust number=Max value+30sec.value
【0084】
(数式1中、Max valueは、最大dust値を表し、30sec.valueは、最大dust値に到達して30秒経過後の測定値である)
【0085】
(2)Coarse粒子の生成比率
実施例および比較例で製造した高吸水性樹脂粒子を、710μmのメッシュ(製造会社:Retsch)を用いて、Amp.1.0mmの条件で10分間分級を進行させた後、メッシュ上端の残留物の比率(重量比)を計算した。
【0086】
(3)CRC(Centrifugal Retention Capacity)
各樹脂の無荷重下吸水倍率による保水能を、EDANA WSP241.3により測定した。
【0087】
具体的には、実施例および比較例によりそれぞれ得られた樹脂から、#30-50の篩で分級した樹脂を得た。このような樹脂W(g)(約0.2g)を不織布製の封筒に均一に入れて密封(seal)した後、常温で生理食塩水(0.9重量%)に浸水させた。30分経過後、遠心分離機を用いて、250Gの条件下、前記封筒から3分間水気を切って、封筒の質量W(g)を測定した。また、樹脂を用いずに同一の操作をした後に、その時の質量W(g)を測定した。得られた各質量を用いて、次の式によりCRC(g/g)を算出した。
【0088】
[数4]
CRC(g/g)={[W(g)-W(g)]/W(g)}-1
【0089】
(4)AAP(Absorption Against Pressure)
各樹脂の0.7psiの加圧吸水能を、EDANA法WSP242.3により測定した。また、加圧吸水能の測定時には、前記CRC測定時の樹脂分級粉を用いた。
【0090】
具体的には、内径25mmのプラスチックの円筒の底にステンレス製400meshの金網を装着させた。常温および湿度50%の条件下、金網上に吸水性樹脂W(g)(0.16g)を均一に散布し、その上に0.7psiの荷重を均一にさらに付与できるピストンは、外径25mmより若干小さく、円筒の内壁と隙がなく、上下の動きが妨げられないようにした。この時、前記装置の重量W(g)を測定した。直径150mmのペトリ皿の内側に直径90mmおよび厚さ5mmのガラスフィルタを置き、0.9重量%塩化ナトリウムからなる生理食塩水をガラスフィルタの上面と同一のレベルとなるようにした。その上に直径90mmのろ過紙1枚を載せた。ろ過紙上に前記測定装置を載せて、液を荷重下で1時間吸収させた。1時間後に測定装置を持ち上げて、その重量W(g)を測定した。得られた各質量を用いて、次の式により加圧吸水能(g/g)を算出した。
【0091】
[数2]
AAP(g/g)=[W(g)-W(g)]/W(g)
【0092】
(5)通液性(Perm;Permeability)
前記実施例および比較例により製造した高吸水性樹脂に対して、下記の数式3により通液性を測定した。
【0093】
[数3]
Perm=[20mL/T(秒)]×60秒
【0094】
前記数式3中、
Permは、高吸水性樹脂の通液性であり、
は、シリンダに高吸水性樹脂0.2gを入れて、前記高吸水性樹脂が完全に浸るように生理食塩水(0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液)を注いで、前記高吸水性樹脂を30分間膨潤させた後、0.3psiの圧力下、20mLの生理食塩水が膨潤した高吸水性樹脂を通過するのにかかる時間(秒)である。
【0095】
具体的には、シリンダとピストンを用意した。前記シリンダとしては、内径が20mmであり、下端にガラスフィルタ(glass filter)と栓(stopcock)が備えられたものが用いられた。前記ピストンとしては、外径が20mmより若干小さくて前記シリンダを上下に自由に動けるスクリーンが下端に配置され、重り(weight)が上端に配置され、スクリーンと重り(weight)が棒によって連結されたものが用いられた。前記ピストンには、ピストンの付加によって0.3psiの圧力が加えられる重り(weight)が設けられた。
【0096】
前記シリンダの栓(stopcock)を閉めた状態で高吸水性樹脂0.2gを入れて、前記高吸水性樹脂が完全に浸るように過剰の生理食塩水(0.9重量%の塩化ナトリウム水溶液)を注いだ。そして、前記高吸水性樹脂を30分間膨潤させた。以後、膨潤した高吸水性樹脂上に0.3psiの荷重が均一に与えられるようにピストンを付加した。
【0097】
次に、シリンダの栓(stopcock)を開けて、生理食塩水20mLが膨潤した高吸水性樹脂を通過するのにかかる時間を秒単位で測定した。この時、シリンダに生理食塩水が40mL満たされている場合のメニスカスをマーキングしておき、シリンダに生理食塩水が20mL満たされている場合のメニスカスをマーキングしておけば、40mLに相当するレベルから20mLに相当するレベルまで到達するのにかかる時間を測定して、前記計算式3のTを簡単に測定できる。
【0098】
(6)Vortex(ボルテックス法による吸水速度)
実施例および比較例の高吸水性樹脂に対して、国際特許第1987/003208号に記載された方法に準じて、秒単位で吸水速度を測定した。
【0099】
具体的には、吸水速度は、23℃~24℃の50mLの生理食塩水に2gの高吸水性樹脂を入れて、マグネチックバー(直径8mm、長さ31.8mm)を600rpmで撹拌して渦流(vortex)が無くなるまでの時間を秒単位で測定して算出された。
【0100】
前記測定結果を下記表1にまとめた。
【0101】
【表1】
【0102】
前記表1に示されているように、本発明による塩水の伝導度を有する塩水で処理した実施例1~3は、塩水処理をしなかった比較例1対比、dust viewが低くなりつつも、高吸水性樹脂本来の物性を維持することを確認でき、これは、前記塩水で処理することによって高吸水性樹脂本来の特性に影響を与えないながらも、微細粒子が除去されることに起因する。
【0103】
これに対し、比較例2および3のように塩水伝導度が小さい場合には、dust viewは改善されるが、coarse粒子の生成が多くなって、特にCRC物性が低下することを確認できた。
【0104】
また、比較例4のように塩水伝導度が高い場合には、coarse粒子の生成比率が本発明による実施例と類似しているにもかかわらず、CRC物性が低下することを確認でき、これは、高い伝導度を有する塩水が高吸水性樹脂の架橋度に損傷を与えて、結果的にCRC物性が低下することに起因する。