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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】不揮発性記憶素子
(51)【国際特許分類】
   H10B 41/30 20230101AFI20231024BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20231024BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20231024BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20231024BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20231024BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20231024BHJP
   H01L 29/788 20060101ALI20231024BHJP
   H01L 29/792 20060101ALI20231024BHJP
   H10B 41/42 20230101ALI20231024BHJP
【FI】
H10B41/30
H01L27/04 F
H01L27/088 H
H01L29/78 371
H10B41/42
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019078870
(22)【出願日】2019-04-17
(65)【公開番号】P2019208017
(43)【公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2018100718
(32)【優先日】2018-05-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】303046277
【氏名又は名称】旭化成エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】郡司 智博
(72)【発明者】
【氏名】対馬 悠晃
【審査官】加藤 俊哉
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-055670(JP,A)
【文献】特開2018-029136(JP,A)
【文献】特開平10-032268(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10B 41/30
H01L 21/336
H10B 41/42
H01L 21/822
H01L 21/8234
H01L 29/788
H01L 29/792
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の上方に設けられたフローティングゲートと、
前記フローティングゲートの一部を含んで構成された駆動用素子と、
を備え、
前記フローティングゲートは、30μm以上の面積を有し、
前記フローティングゲートの前記駆動用素子が備えるゲート絶縁膜上の領域である特定領域は、17.5μm以上の面積を有し、
前記特定領域のゲート幅をWとし、前記特定領域のゲート長をLとすると、
【数1】
の関係を満たし、
前記半導体基板内に設けられ一部が前記フローティングゲートの下方に配置された第一領域と、
前記フローティングゲートと前記第一領域との間に少なくとも一部が配置され、前記フローティングゲートに対する面積比が0.002以上1以下であるトンネル絶縁膜と、
をさらに備える不揮発性記憶素子。
【請求項2】
前記特定領域は、30μm以上の面積を有する請求項に記載の不揮発性記憶素子。
【請求項3】
前記トンネル絶縁膜の面積は、0.06μm以上54μm以下である請求項1または2に記載の不揮発性記憶素子。
【請求項4】
前記トンネル絶縁膜の厚さは、7nm以上12nm以下である請求項1から3までのいずれか一項に記載の不揮発性記憶素子。
【請求項5】
前記トンネル絶縁膜は、フッ素を含む請求項1から4までのいずれか一項に記載の不揮発性記憶素子。
【請求項6】
前記第一領域は、書き込み用の電圧印加領域および前記駆動用素子である駆動用MOSFETのドレイン領域として機能する請求項1から5までのいずれか一項に記載の不揮発性記憶素子。
【請求項7】
前記フローティングゲートと前記半導体基板との間に配置され、前記トンネル絶縁膜よりも厚い膜厚を有するゲート絶縁膜を備える請求項1から6までのいずれか一項に記載の不揮発性記憶素子。
【請求項8】
前記半導体基板内に設けられ前記第一領域と電気的に分離して形成された第二領域をさらに備える請求項1から7までのいずれか一項に記載の不揮発性記憶素子。
【請求項9】
前記第一領域は、書き込み用の電圧印加領域として機能し、
前記第二領域は、前記駆動用素子である駆動用MOSFETのドレイン領域として機能する請求項に記載の不揮発性記憶素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不揮発性記憶素子に関する。
【背景技術】
【0002】
アナログ回路を構成する金属-酸化膜-半導体 電界効果トランジスタ(MOSFET)に、閾値電圧Vthの調整が可能な不揮発性記憶素子を使用することで電気特性のバラツキや温度依存性を制御できる場合がある。例えば、特許文献1には、基準電圧生成回路を構成するエンハンスメント型MOSFETとディプレッション型MOSFETに不揮発性記憶素子を使用することで基準電圧生成回路の製造バラツキを無くす方法が提案されている。
【0003】
このような回路を実現する不揮発性記憶素子は、トンネル絶縁膜、フローティングゲート及びコントロールゲートを備えた構造を有している。この不揮発性記憶素子は、トンネル絶縁膜を介したFN(Fowler-Nordheim)トンネリングにより電荷を注入したり電荷を引き抜いたりするFLOTOX(Floating Gate Tunneling Oxide)型と呼ばれる構造を有している。
【0004】
図32は、従来のメモリセルアレイ用途におけるFLOTOX型の不揮発性記憶素子FMの構造の一例を模式的に示す図である。図32(a)は、不揮発性記憶素子FMの平面図であり、図32(b)は、図32(a)中に示すZ-Z線で切断した不揮発性記憶素子FMの断面図である。
【0005】
図32に示すように、不揮発性記憶素子FMは、半導体基板SBと、半導体基板SB上に形成されたゲート酸化膜GIと、ゲート酸化膜GI上に形成されたフローティングゲートFGとを備えている。また、不揮発性記憶素子FMは、フローティングゲートFG上に形成された絶縁膜IFと、絶縁膜IF上に形成されたコントロールゲートCGとを備えている。また、不揮発性記憶素子FMは、半導体基板SB内に形成されたソース拡散層SD及びドレイン拡散層DDを備えている。ドレイン拡散層DDの一部は、フローティングゲートFGの下方に配置されている。フローティングゲートFGとドレイン拡散層DDとの間には、トンネル酸化膜TOが形成されている。
【0006】
コントロールゲートCGやドレイン拡散層DDに電圧を印加し、トンネル酸化膜TOを介してFNトンネリングによりフローティングゲートFG中に電荷を注入したりフローティングゲートFG中から引き抜いたりする。これにより、不揮発性記憶素子FMは、コントロールゲートCGに電圧を印加した時に半導体基板SBに反転層が形成される閾値電圧Vthを制御することができる。メモリセルにおいては、コントロールゲートCGに所定の読出し電圧を印加し、閾値電圧Vthがこの読出し電圧を上回る場合(MOSFETがオフ状態からオン状態に変化しない場合)を“0”とする。一方、メモリセルにおいては、コントロールゲートCGに所定の読出し電圧を印加し、閾値電圧Vthがこの読出し電圧を下回る場合(MOSFETがオフ状態からオン状態に変化する場合)を“1”とする。これにより、メモリセルに情報を記憶することができる。このようなメモリセルを複数備えるメモリセルアレイは、高い集積度が求められるため、製造プロセスにおける最小に近いデザインルールでレイアウトされる。最小寸法0.5μmルールであれば、一例としてはトンネル酸化膜TOの寸法は0.5μm×0.5μmであり、フローティングゲートFGの寸法は2.6μm×2.4μmであり、フローティングゲートFGに対するトンネル酸化膜TOの面積比は0.04である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-011454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、FLOTOX型の不揮発性記憶素子をアナログ回路内のMOSFETとして使用する場合には、通常のメモリセルとして使用する場合に比べ、閾値電圧Vthの変動が直接的に回路特性に影響する。このため、不揮発性記憶素子は、メモリセルと比べてアナログ回路内に使用する場合には、フローティングゲートからの電荷漏れよる閾値電圧Vthの変動(リテンション劣化)に対する許容量が非常に小さくなる。
【0009】
そのうえ、FLOTOX型の不揮発性記憶素子は、駆動時に所望の電流を得るためにフローティングゲートの面積をメモリセルアレイの場合よりも大きく、例えば30μm以上とらなければならない場合がある。この場合、フローティングゲートに注入する電荷量が多くなるため、書き込み時にトンネル酸化膜の受けるダメージが大きくなる。これにより、FLOTOX型の不揮発性記憶素子は、トンネル酸化膜中に生成した欠陥を介したフローティングゲートからの電荷漏れによる閾値電圧Vth変動(以下、「第1モードのリテンション劣化」と称する場合がある)が起きやすいという問題がある。
【0010】
この問題を解決する方法として、トンネル酸化膜の面積を大きくして、トンネル酸化膜の単位面積当たりに通過する電荷の量(通過電荷量)を低減させ、トンネル酸化膜のダメージを低減することが考えられる。しかしながら、FLOTOX型の不揮発性記憶素子は、トンネル酸化膜の面積を大きくすると、熱エネルギーにより励起されたフローティングゲート中の電荷がトンネル酸化膜のエネルギー障壁を飛び越えて漏れ出すことによる閾値電圧Vthの変動(以下、「第2モードのリテンション劣化」と称する場合がある)の発生確率が高くなるという問題がある。
【0011】
本発明の目的は、リテンション劣化を抑制することができる不揮発性記憶素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様による不揮発性記憶素子は、半導体基板と、前記半導体基板の上方に設けられたフローティングゲートと、前記フローティングゲートの上方に前記フローティングゲートと絶縁して配置されたコントロールゲートと、前記半導体基板内に設けられ一部が前記フローティングゲートの下方に配置された第一領域と、前記フローティングゲートと前記第一領域との間に少なくとも一部が配置され、前記フローティングゲートに対する面積比が0.002以上1以下であるトンネル絶縁膜とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、リテンション劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態による不揮発性記憶素子M1の概略構成を示す要部平面図である。
図2】本発明の第1実施形態による不揮発性記憶素子M1の概略構成を示す図であって、図2(a)は図1中に示すA-A線で切断した不揮発性記憶素子M1の断面図であり、図2(b)は図1中に示すB1-B1線(B2-B2線)で切断した不揮発性記憶素子M1の断面図であり、図2(c)は図1中に示すC-C線で切断した不揮発性記憶素子M1の断面図である。
図3】本発明の第1実施形態による不揮発性記憶素子の第1モードのリテンション劣化について説明する図であって、図3(a)は閾値電圧の変動が100mV未満となるサンプルの割合が99.87%以上となる場合のフローティングゲートに対するトンネル絶縁膜の面積比を示すグラフであり、図3(b)は閾値電圧の変動が100mV未満となるサンプルの割合が99.997%以上となる場合のフローティングゲートに対するトンネル絶縁膜の面積比を示すグラフである。
図4】本発明の第1実施形態による不揮発性記憶素子M1の第2モードのリテンション劣化について説明する図であって、図4(a)は閾値電圧の変動が100mV未満となるサンプルの割合が99.87%以上となる場合のトンネル絶縁膜の面積を示すグラフ、図4(b)は閾値電圧の変動が100mV未満となるサンプルの割合が99.997%以上となる場合のトンネル絶縁膜の面積を示すグラフである。
図5】本発明の第1実施形態による不揮発性記憶素子M1のフローティングゲート及びトンネル絶縁膜の面積構成の適応領域について説明する図であって、図5(a)は不揮発性記憶素子M1の99.87%が10年以上の寿命を確保できることが予想される面積構成の適応領域を示す図であり、図5(b)は不揮発性記憶素子M1の99.997%が10年以上の寿命を確保できることが予想される面積構成の適応領域を示す図である。
図6】本発明の第1実施形態による不揮発性記憶素子M1に設けられた駆動用素子Mv1の特定領域PAについて説明する図であって、ドレイン電流の温度特性の一例を示す図である。
図7】本発明の第1実施形態による不揮発性記憶素子M1に設けられた駆動用素子Mv1の特定領域PAについて説明する図であって、駆動用素子Mv1のゲート幅及び温度非依存性電流の関係の一例を示す図である。
図8】本発明の第1実施形態による不揮発性記憶素子M1に設けられた駆動用素子Mv1の特定領域PAについて説明する図であって、駆動用素子Mv1のゲート長及び温度非依存性電流の関係の一例を示す図である。
図9】本発明の第1実施形態による不揮発性記憶素子M1の製造工程断面図(その1)である。
図10】本発明の第1実施形態による不揮発性記憶素子M1の製造工程断面図(その2)である。
図11】本発明の第1実施形態による不揮発性記憶素子M1の製造工程断面図(その3)である。
図12】本発明の第1実施形態による不揮発性記憶素子M1の製造工程断面図(その4)である。
図13】本発明の第1実施形態による不揮発性記憶素子M1の製造工程断面図(その5)である。
図14】本発明の第1実施形態による不揮発性記憶素子M1の製造工程断面図(その6)である。
図15】本発明の第1実施形態による不揮発性記憶素子M1の製造工程断面図(その7)である。
図16】本発明の第1実施形態による不揮発性記憶素子M1の製造工程断面図(その8)である。
図17】本発明の第1実施形態による不揮発性記憶素子M1の製造工程断面図(その9)である。
図18】本発明の第1実施形態による不揮発性記憶素子M1の製造工程断面図(その10)である。
図19】本発明の第1実施形態による不揮発性記憶素子を備える基準電圧生成回路RC3の回路構成図である。
図20】本発明の第1実施形態による不揮発性記憶素子を備える基準電圧生成回路RC3を説明するための図であって、基準電圧生成回路RC3の上段側の不揮発性記憶素子M31をディプレッション状態に調整する状態を説明するための図である。
図21】本発明の第1実施形態による不揮発性記憶素子を備える基準電圧生成回路RC3を説明するための図であって、基準電圧生成回路RC3の下段側の不揮発性記憶素子M33をエンハンスメント状態に調整する状態を説明するための図である。
図22】ディプレッション型トランジスタMdおよびエンハンスメント型トランジスタMeの電流/電圧特性の一例を示す図である。
図23】本発明の第2実施形態による不揮発性記憶素子M2の概略構成を示す図であって、図23(a)は不揮発性記憶素子M2の要部平面図であり、図23(b)は、図23(a)中に示すD-D線で切断した不揮発性記憶素子M2の断面図であり、図23(c)は、図23(a)中に示すE-E線で切断した不揮発性記憶素子M2の断面図である。
図24】本発明の第2実施形態による不揮発性記憶素子を備える基準電圧生成回路RC2を説明するための回路構成図である。
図25】本発明の第2実施形態による不揮発性記憶素子を備える基準電圧生成回路RC2を説明するための回路構成図であって、基準電圧生成回路RC2の上段側の不揮発性記憶素子M21をディプレッション状態に調整する状態を説明するための図である。
図26】本発明の第2実施形態による不揮発性記憶素子を備える基準電圧生成回路RC2を説明するための回路構成図であって、基準電圧生成回路RC2の下段側の不揮発性記憶素子M22をエンハンスメント状態に調整する状態を説明するための図である。
図27】本発明の第3実施形態による不揮発性記憶素子M7の概略構成を示す図であって、図27(a)は不揮発性記憶素子M7の要部平面図であり、図27(b)は図27(a)中に示すF-F線で切断した不揮発性記憶素子M7の断面図である。
図28】本発明の第3実施形態による不揮発性記憶素子を備える基準電圧生成回路RC6を説明するための回路構成図である。
図29】本発明の第3実施形態による不揮発性記憶素子を備える基準電圧生成回路RC7を説明するための回路構成図である。
図30】本発明の第3実施形態による不揮発性記憶素子を備える基準電圧生成回路RC7を説明するための回路構成図であって、基準電圧生成回路RC7の上段側の不揮発性記憶素子M71をディプレッション状態に調整する状態を説明するための図である。
図31】本発明の第1実施形態による不揮発性記憶素子を備える基準電圧生成回路2を説明するための回路構成図であって、基準電圧生成回路RC7の下段側の不揮発性記憶素子M72をエンハンスメント状態に調整する状態を説明するための図である。
図32】従来の不揮発性記憶素子FMの概略構成を示す図であって、図32(a)は、不揮発性記憶素子FMの平面を模式的に示す図であり、図32(b)は図32(a)中に示すZ-Z線で切断した不揮発性記憶素子FMの断面を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態による不揮発性記憶素子について図面を参照しながら説明する。以下、本実施形態による不揮発性記憶素子の一例として、N型MOSFETのFLOTOX型の不揮発性記憶素子を例にとって説明するが、不揮発性記憶素子は、電荷保持領域を持つ能動素子(トランジスタ)であれば、この構造に限られず、N型に限られない。
【0016】
<第1実施形態>
本発明の第1実施形態による不揮発性記憶素子について図1から図22を用いて説明する。まず、本実施形態による不揮発性記憶素子M1の概略構成について図1及び図2を用いて説明する。不揮発性記憶素子M1に備えられた駆動用素子Mv1及びダミー素子Mm1(いずれも詳細は後述)は、同じ構造を有している。このため、図2(b)では、ダミー素子Mm1の構成要素を示す参照符号には丸かっこを付し、駆動用素子Mv1の構成要素を示す参照符号には丸かっこを付さずに、両参照符号を併記する。また、駆動用素子Mv1及びダミー素子Mm1のそれぞれの構成要素に対して同じ参照符号を用いる場合には、当該構成要素には丸かっこを付さない参照符号のみを付す。
【0017】
図1に示すように、本実施形態による不揮発性記憶素子M1は、書込用素子Mw1と、書込用素子Mw1の隣に配置された駆動用素子(駆動用MOSFETの一例)Mv1と、駆動用素子Mv1の隣に配置されたダミー素子Mm1とを備えている。不揮発性記憶素子M1は、書込用素子Mw1、駆動用素子Mv1及びダミー素子Mm1で共有化されたフローティングゲートFG1及びコントロールゲートCG1を備えている。詳細は後述するが、不揮発性記憶素子M1は、フローティングゲートFG1の下方に配置された第一不純物拡散領域IAa及びコントロールゲートCG1に所定電圧を印加することによって、書込用素子Mw1に設けられた電荷注入口14を介してフローティングゲートFG1に電荷を注入したりフローティングゲートFG1から電荷を放出したりできるようになっている。これにより、不揮発性記憶素子M1は、閾値電圧を変更するとともに変更後の閾値電圧を保持して電気特性のバラツキや温度依存性を制御できる。
【0018】
不揮発性記憶素子M1は、例えばP型の半導体基板9A(図2参照)に形成された素子分離領域41(図2参照)によって、同一の半導体基板9Aに形成された他の不揮発性記憶素子(不図示)と素子分離されている。
【0019】
図2(a)に示すように、不揮発性記憶素子M1に備えられた書込用素子Mw1は、半導体基板9Aと、半導体基板9A上に設けられたゲート絶縁膜16wとを備えている。半導体基板9Aには、P型ウェル(以下、「Pウェル」と略記する)領域10Aが形成されている。ゲート絶縁膜16wは、二酸化シリコン(SiO)で形成され、Pウェル領域10A上に配置されている。ゲート絶縁膜16wは、二酸化シリコンに限られず、窒化シリコン(SiN)で形成されていてもよい。
【0020】
書込用素子Mw1は、半導体基板9Aの上方に設けられたフローティングゲートFG1を備えている。フローティングゲートFG1の一部は、ゲート絶縁膜16w上に配置されている。フローティングゲートFG1は、ポリシリコンで形成されている。
【0021】
書込用素子Mw1は、フローティングゲートFG1の上方にフローティングゲートFG1と絶縁して配置されたコントロールゲートCG1を備えている。コントロールゲートCG1は、例えばポリシリコンで形成されている。
【0022】
書込用素子Mw1は、半導体基板9A内に設けられ一部がフローティングゲートFG1の下方に配置された第一不純物拡散領域(第一領域の一例)IAaと、半導体基板9A内に設けられた第二不純物拡散領域IAbとを備えている。第一不純物拡散領域IAa及び第二不純物拡散領域IAbは、Pウェル領域10Aに設けられている。
【0023】
図1に示すように、第二不純物拡散領域IAbは、不揮発性記憶素子M1の平面視で、フローティングゲートFG1の側方(両側の一方)の一部に設けられている。ここで、平面視とは、フローティングゲートFG1やコントロールゲートCG1などが形成された半導体基板9Aの平面(素子形成面)を直交する方向に見た状態をいう。図1及び図2(a)に示すように、第二不純物拡散領域IAbは、N型の低濃度不純物ドレイン(Lightly Doped Drain、以下、「LDD」と略記する)層12bと、LDD層12bよりも不純物濃度が高濃度のコンタクト層13bとを有している。コンタクト層13bは、LDD層12bに設けられている。コンタクト層13bは、第二不純物拡散領域IAbとプラグ51b(図2(a)参照、詳細は後述)とのオーミック接触を取るために設けられている。
【0024】
図1及び図2(a)に示すように、第一不純物拡散領域IAaは、フローティングゲートFG1の下方の一部に配置された拡散層11aと、拡散層11aに隣接して配置されたN型のLDD層12aと、LDD層12aよりも不純物濃度が高濃度のコンタクト層13aとを有している。
【0025】
図1及び図2(a)に示すように、コンタクト層13aは、LDD層12aに設けられている。コンタクト層13aは、第一不純物拡散領域IAaとプラグ51a(詳細は後述、図2(a)参照)とのオーミック接触を取るために設けられている。図1に示すように、第一不純物拡散領域IAaは、不揮発性記憶素子M1の平面視で、フローティングゲートFG1の下方の一部及び側方(両側の他方)の一部に亘って設けられている。拡散層11aは、フローティングゲートFG1の下方の一部に設けられ、LDD層12a及びコンタクト層13aは、フローティングゲートFG1の側方の一部に設けられている。LDD層12a及びLDD層12bは、不揮発性記憶素子M1の平面視で、フローティングゲートFG1を挟んで設けられている。
【0026】
図1及び図2(a)に示すように、書込用素子Mw1は、フローティングゲートFG1と第一不純物拡散領域IAaとの間に少なくとも一部が配置されてフローティングゲートFG1に対する面積比が0.002以上1以下であるトンネル絶縁膜15を備えている。本実施形態では、トンネル絶縁膜15の全体がフローティングゲートFG1と拡散層11aとの間に配置されている。図1に示すように、トンネル絶縁膜15は、不揮発性記憶素子M1の平面視において、フローティングゲートFG1の全体よりも小さく形成される。フローティングゲートFG1の全体は、不揮発性記憶素子M1の平面視において、30μm以上の面積を有している。トンネル絶縁膜15の面積は、不揮発性記憶素子M1の平面視において、0.06μm以上54μm以下である。フローティングゲートFG1の全体の面積が最小値の30μmであり、フローティングゲートFG1に対するトンネル絶縁膜15の面積比が最小値の0.002である場合に、トンネル絶縁膜15の面積が最小値の0.06μmとなる。ここで、「フローティングゲートFG1の全体」は、1つの不揮発性記憶素子M1に設けられたフローティングゲートを意味し、書込用素子Mw1が設けられた箇所、駆動用素子Mv1が設けられた箇所及びダミー素子Mm1が設けられた箇所などの所定箇所のフローティングゲートを意味しない。したがって、「フローティングゲートFG1の全体」は、駆動用素子Mv1が設けられた箇所の「フローティングゲートFG11の特定領域PA」(詳細は後述)とは区別される。以下、「フローティングゲートFG1の特定領域PA」のように限定しない限り、「フローティングゲートFG1」は、「フローティングゲートFG1の全体」を意味する。本実施形態におけるトンネル絶縁膜15の面積は、例えば25μmである。したがって、本実施形態では、フローティングゲートFG1の面積に対するトンネル絶縁膜15の面積の比率(面積比)、すなわちトンネル絶縁膜15の面積をフローティングゲートFG1の面積で除して求められる値は、0.017である。詳細は後述するが、フローティングゲートFG1に対するトンネル絶縁膜15の面積比が0.002以上であると、第1モードのリテンション劣化を改善することができる。
【0027】
FNトンネリングによってフローティングゲートFG1に電荷を注入したりフローティングゲートFG1から電荷を引き抜いたりする書き込みを行うため、トンネル絶縁膜15の厚さは7nm以上12nm以下であるとよい。本実施形態では、トンネル絶縁膜15の膜厚は、例えば9.8nmである。トンネル絶縁膜15の膜厚が7~12nmであると、7nm未満の場合と比較して、電荷の直接トンネリングが起こりにくくなり、フローティングゲートFG1内に電荷を保持し易くなる。一方、トンネル絶縁膜15の膜厚が7~12nmであると、12nmより膜厚が厚い場合と比較して、フローティングゲートFG1への電荷の注入及びフローティングゲートFG1からの電荷の引き抜きを高速化することができる。トンネル絶縁膜15は、ゲート絶縁膜16wよりも膜厚が薄く形成されていてもよい。トンネル絶縁膜15に対応するフローティングゲートFG1の領域が、フローティングゲートFG1に電荷を注入したりフローティングゲートFG1から電荷を放出したりする電荷注入口14となる。つまり、フローティングゲートFG1は、電荷を注入したり電荷を放出したりするための電荷注入口14を有し、電荷保持領域として機能する。
【0028】
図2(b)に示すように、不揮発性記憶素子M1に備えられた駆動用素子Mv1は、半導体基板9Aと、半導体基板9A上に設けられたゲート絶縁膜16vを備えている。ゲート絶縁膜16vは、Pウェル領域10A上に配置されている。詳細は後述するが、ゲート絶縁膜16vは、書込用素子Mw1に設けられたゲート絶縁膜16wと同じ材料で形成される。
【0029】
駆動用素子Mv1におけるゲート絶縁膜16vは、駆動用素子Mv1が設けられた箇所(すなわち、特定領域PA)におけるフローティングゲートFG1と半導体基板9Aとの間に配置され、トンネル絶縁膜15よりも厚い膜厚を有している。駆動用素子Mv1におけるゲート絶縁膜16vは、ほぼ一定の膜厚を有している。駆動用素子Mv1におけるゲート絶縁膜16vが形成された領域には、トンネル絶縁膜が設けられていない。このため、駆動用素子Mv1におけるゲート絶縁膜16vがフローティングゲートFG1に接触する面は、平坦な形状を有している。
【0030】
ところで、本実施形態におけるトンネル絶縁膜15は、ゲート絶縁膜16wを形成するための絶縁膜が開口された開口部に形成される。このため、書込用素子Mw1におけるゲート絶縁膜16wは、トンネル絶縁膜15が設けられた領域の開口部によって段差を有する。したがって、駆動用素子Mv1におけるゲート絶縁膜16vは、書込用素子Mw1におけるゲート絶縁膜16wよりもフローティングゲートFG1との接触面が平坦になる。
【0031】
駆動用素子Mv1は、半導体基板9Aの上方に設けられたフローティングゲートFG1を備えている。駆動用素子Mv1が設けられた箇所(特定領域PA)におけるフローティングゲートFG1は、書込用素子Mw1が設けられた箇所におけるフローティングゲートFG1と一続きに形成されている。フローティングゲートFG1の一部は、ゲート絶縁膜16v上に配置されている。ゲート絶縁膜16v上の領域がフローティングゲートFG1の特定領域PAに相当する。
【0032】
駆動用素子Mv1は、フローティングゲートFG1の上方にフローティングゲートFG1と絶縁して配置されたコントロールゲートCG1を備えている。駆動用素子Mv1に設けられたコントロールゲートCG1は、書込用素子Mw1に設けられたコントロールゲートCG1と一続きに形成されている。
【0033】
駆動用素子Mv1は、半導体基板9A内に設けられ第一不純物拡散領域IAaと電気的に分離して形成されたドレイン領域(第二領域の一例)Dv1を備えている。ドレイン領域Dv1の一部は、フローティングゲートFG1の下方の一部に配置されている。駆動用素子Mv1は、半導体基板9A内に設けられたソース領域Sv1を備えている。ドレイン領域Dv1及びソース領域Sv1は、Pウェル領域10Aに設けられている。ドレイン領域Dv1とソース領域Sv1は電流の流れる方向によって定義される。このため、図1及び図2(b)に示す不揮発性記憶素子M1において想定されている電流に対して電流を流す方向を逆にした場合は、図1及び図2(b)中に示すドレイン領域Dv1がソース領域Sv1となり、ソース領域Sv1がドレイン領域Dv1となる。
【0034】
図1に示すように、ソース領域Sv1は、不揮発性記憶素子M1の平面視で、フローティングゲートFG1の側方(両側の一方)の一部に設けられている。図1及び図2(b)に示すように、ソース領域Sv1は、LDD層12vsと、LDD層12vsよりも不純物濃度が高濃度のソース層13vsとを有している。ソース層13vsは、LDD層12vsに設けられている。ソース層13vsは、ソース領域Sv1とプラグ51vs(図2(b)参照、詳細は後述)とのオーミック接触を取るために設けられている。
【0035】
図1及び図2(b)に示すように、ドレイン領域Dv1は、フローティングゲートFG1の下方の一部に配置された第1ドレイン層11vと、第1ドレイン層11vに隣接して配置されたN型のLDD層12vdと、LDD層12vdよりも不純物濃度が高濃度の第2ドレイン層13vdとを有している。第2ドレイン層13vdは、LDD層12vdに設けられている。第2ドレイン層13vdは、ドレイン領域Dv1とプラグ51vd(詳細は後述、図2(b)参照)とのオーミック接触を取るために設けられている。
【0036】
図1に示すように、ドレイン領域Dvは、不揮発性記憶素子M1の平面視で、フローティングゲートFG1の下方の一部及び側方(両側の他方)の一部に亘って設けられている。第1ドレイン層11vは、フローティングゲートFG1の下方の一部に設けられ、LDD層12vd及び第2ドレイン層13vdは、フローティングゲートFG1の側方の一部に設けられている。LDD層12vd及びLDD層12vsは、不揮発性記憶素子M1の平面視で、フローティングゲートFG1を挟んで設けられている。駆動用素子Mv1に設けられた第1ドレイン層11vは、書込用素子Mw1に設けられた拡散層11aよりも短い幅(フローティングゲートFG1の両側の一方から他方までの間の長さ)を有している。
【0037】
図2(b)に示すように、不揮発性記憶素子M1に備えられたダミー素子Mm1は、半導体基板9Aと、半導体基板9A上に設けられたゲート絶縁膜16mを備えている。ゲート絶縁膜16mは、Pウェル領域10A上に配置されている。詳細は後述するが、ゲート絶縁膜16mは、書込用素子Mw1に設けられたゲート絶縁膜16w及び駆動用素子Mv1に設けられたゲート絶縁膜16vと同じ材料で形成される。
【0038】
ダミー素子Mm1におけるゲート絶縁膜16mは、ダミー素子Mm1が設けられた箇所におけるフローティングゲートFG1と半導体基板9Aとの間に配置され、トンネル絶縁膜15よりも厚い膜厚を有している。ダミー素子Mm1におけるゲート絶縁膜16mは、ほぼ一定の膜厚を有している。ダミー素子Mm1におけるゲート絶縁膜16mが形成された領域には、トンネル絶縁膜が設けられていない。このため、ダミー素子Mm1におけるゲート絶縁膜16mがフローティングゲートFG1に接触する面は、平坦な形状を有している。ダミー素子Mm1におけるゲート絶縁膜16mは、トンネル絶縁膜を形成するための段差を有さないので、書込用素子Mw1におけるゲート絶縁膜16wよりもフローティングゲートFG1との接触面が平坦になる。
【0039】
ダミー素子Mm1は、半導体基板9Aの上方に設けられたフローティングゲートFG1を備えている。ダミー素子Mm1が設けられた箇所におけるフローティングゲートFG1は、書込用素子Mw1が設けられた箇所におけるフローティングゲートFG1及び駆動用素子Mv1が設けられた箇所(特定領域PA)におけるフローティングゲートFG1と一続きに形成されている。フローティングゲートFG1の一部は、ゲート絶縁膜16m上に配置されている。
【0040】
ダミー素子Mm1は、フローティングゲートFG1の上方にフローティングゲートFG1と絶縁して配置されたコントロールゲートCG1を備えている。ダミー素子Mm1に設けられたコントロールゲートCG1は、書込用素子Mw1に設けられたコントロールゲートCG1及び駆動用素子Mv1に設けられたコントロールゲートCG1と一続きに形成されている。
【0041】
ダミー素子Mm1は、半導体基板9A内に設けられ第一不純物拡散領域IAaと電気的に分離して形成されたドレイン領域Dm1を備えている。ドレイン領域Dm1の一部は、フローティングゲートFG1の下方の一部に配置されている。ダミー素子Mm1は、半導体基板9A内に設けられたソース領域Sm1を備えている。ドレイン領域Dm1及びソース領域Sm1は、Pウェル領域10Aに設けられている。ドレイン領域Dm1とソース領域Sm1は電流の流れる方向によって定義される。このため、図1及び図2(b)に示す不揮発性記憶素子M1において想定されている電流に対して電流を流す方向を逆にした場合は、図1及び図2(b)中に示すドレイン領域Dm1がソース領域Sm1となり、ソース領域Sm1がドレイン領域Dm1となる。
【0042】
図1に示すように、ソース領域Sm1は、不揮発性記憶素子M1の平面視で、フローティングゲートFG1の側方(両側の一方)に設けられている。図1及び図2(b)に示すように、ソース領域Sm1は、LDD層12msと、LDD層12msよりも不純物濃度が高濃度のソース層13msとを有している。ソース層13msは、LDD層12msに設けられている。ソース層13msは、ソース領域Sm1とプラグ51ms(図2(b)参照、詳細は後述)とのオーミック接触を取るために設けられている。
【0043】
図1及び図2(b)に示すように、ドレイン領域Dm1は、フローティングゲートFG1の下方の一部に配置された第1ドレイン層11mと、第1ドレイン層11mに隣接して配置されたN型のLDD層12mdと、LDD層12mdよりも不純物濃度が高濃度の第2ドレイン層13mdとを有している。第2ドレイン層13mdは、LDD層12mdに設けられている。第2ドレイン層13mdは、ドレイン領域Dm1とプラグ51md(詳細は後述、図2(b)参照)とのオーミック接触を取るために設けられている。
【0044】
図1に示すように、ドレイン領域Dm1は、不揮発性記憶素子M1の平面視で、フローティングゲートFG1の下方の一部及び側方(両側の他方)の一部に亘って設けられている。第1ドレイン層11mは、フローティングゲートFG1の下方の一部に設けられ、LDD層12md及び第2ドレイン層13mdは、フローティングゲートFG1の側方の一部に設けられている。LDD層12md及びLDD層12msは、不揮発性記憶素子M1の平面視で、フローティングゲートFG1を挟んで設けられている。ダミー素子Mm1に設けられた第1ドレイン層11mは、書込用素子Mw1に設けられた拡散層11aよりも短い幅(フローティングゲートFG1の両側の一方から他方までの間の長さ)を有している。ダミー素子Mm1に設けられた第1ドレイン層11mは、駆動用素子Mv1に設けられた第1ドレイン層11vと同じ幅(フローティングゲートFG1の両側の一方から他方までの間の長さ)を有している。
【0045】
書込用素子Mw1が設けられた箇所のフローティングゲートFG1、駆動用素子Mv1が設けられた箇所(特定領域PA)のフローティングゲートFG1及びダミー素子Mm1が設けられた箇所のフローティングゲートFG1は、共有化されている。フローティングゲートFG1は、不揮発性記憶素子M1の平面視において、30μm以上27000μm以下の面積を有している。フローティングゲートFG1の面積の下限値(本実施形態では30μm)は、デジタルデータを記憶するメモリとして不揮発性記憶素子が使用される場合との差別化のために規定されている。本実施形態におけるフローティングゲートFG1の面積は、不揮発性記憶素子M1の平面視において、例えば1422μmである。本実施形態におけるフローティングゲートFG1は、不揮発性記憶素子M1の平面視において、書込用素子Mw1、駆動用素子Mv1及びダミー素子Mm1が並ぶ方向に長辺が延在する長方形状を有している。フローティングゲートFG1は、長方形状に限らず他の形状を有していてもよい。
【0046】
書込用素子Mw1が設けられた箇所のコントロールゲートCG1、駆動用素子Mv1が設けられた箇所のコントロールゲートCG1及びダミー素子Mm1が設けられた箇所のコントロールゲートCG1は、共有化されている。コントロールゲートCG1は、不揮発性記憶素子M1の平面視において、書込用素子Mw1、駆動用素子Mv1及びダミー素子Mm1が並ぶ方向に長辺が延在する長方形状を有している。コントロールゲートCG1は、不揮発性記憶素子M1の平面視において、フローティングゲートFG1よりも長い長辺を有し、フローティングゲートFG1よりも短い短辺を有している。このため、コントロールゲートCG1は、両短辺側にフローティングゲートFG1と重ならない領域を有している。コントロールゲートCG1は、少なくとも一部がフローティングゲートFG1上に配置されていれば長方形状に限らず他の形状を有していてもよい。
【0047】
図2に示すように、不揮発性記憶素子M1は、フローティングゲートFG1上に配置された絶縁膜17と、絶縁膜17の周りに形成されたサイドウォール18とを備えている。コントロールゲートCG1は、絶縁膜17上に形成されている。フローティングゲートFG1及びコントロールゲートCG1は、絶縁膜17によって絶縁されている。絶縁膜17は、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とを組み合わせて構成され、酸化物/窒化物/酸化物(ONO)構造を有している。絶縁膜17は、フローティングゲートFG1の上面及び側面と、ゲート絶縁膜16w,16v,16mの側面とを覆って設けられている。絶縁膜17は、書込用素子Mw1、駆動用素子Mv1及びダミー素子Mm1に亘ってフローティングゲートFG1を覆って配置されている。サイドウォール18は、書込用素子Mw1、駆動用素子Mv1及びダミー素子Mm1に亘って絶縁膜17の側壁の段差部に絶縁膜17を囲んで配置されている。このため、書込用素子Mw1、駆動用素子Mv1及びダミー素子Mm1はそれぞれ、絶縁膜17及びサイドウォール18を有している。
【0048】
不揮発性記憶素子M1は、トンネル絶縁膜15、ゲート絶縁膜16w,16v,16m及び絶縁膜17の少なくとも一部に分布するハロゲン(例えばフッ素)を有している。本実施形態では、トンネル絶縁膜15、ゲート絶縁膜16w,16v,16m及び絶縁膜17のいずれにもハロゲンが含まれている。トンネル絶縁膜15がハロゲン(例えばフッ素)を含むことにより、トンネル絶縁膜15の欠陥密度が低減する。
【0049】
図2(a)及び図2(b)に示すように、不揮発性記憶素子M1は、コントロールゲートCG1の周りに形成されたサイドウォール19を備えている。サイドウォール19は、書込用素子Mw1、駆動用素子Mv1及びダミー素子Mm1に亘ってコントロールゲートCG1の側壁を囲んで配置されている。このため、書込用素子Mw1、駆動用素子Mv1及びダミー素子Mm1はそれぞれ、サイドウォール19を有している。
【0050】
不揮発性記憶素子M1は、コントロールゲートCG1、半導体基板9Aの素子形成面上に形成された層間絶縁膜61を備えている。層間絶縁膜61は、絶縁膜17、サイドウォール18,19、第一不純物拡散領域IAa、第二不純物拡散領域IAb、ドレイン領域Dv1,Dm1、ソース領域Sv1,Sm1及び素子分離領域41が設けられた領域に少なくとも形成されている。層間絶縁膜61は、コントロールゲートCG1、第一不純物拡散領域IAa、第二不純物拡散領域IAb、ドレイン領域Dv1,Dm1及びソース領域Sv1,Sm1などを保護する保護膜としての機能を発揮する。
【0051】
図1及び図2(c)に示すように、不揮発性記憶素子M1は、コントロールゲートCG1の一部を底面に露出し層間絶縁膜61に形成された開口部に埋め込まれたプラグ51gと、プラグ51gに電気的に接続され層間絶縁膜61上に形成されたメタル配線52g(図1では不図示)とを備えている。プラグ51gは、コントロールゲートCG1がフローティングゲートFG1と重なっていない領域に設けられている。プラグ51gを介してメタル配線52gとコントロールゲートCG1とが電気的に接続される。これにより、コントロールゲートCG1には、メタル配線52gからプラグ51gを介して所定レベルの電圧を印加することが可能になる。
【0052】
図2(b)に示すように、駆動用素子Mv1は、第2ドレイン層13vdの一部を底面に露出し層間絶縁膜61に形成された開口部に埋め込まれたプラグ51vdと、プラグ51vdに電気的に接続され層間絶縁膜61上に形成されたメタル配線52vdとを備えている。プラグ51vdを介してメタル配線52vdとドレイン領域Dv1とが電気的に接続される。これにより、ドレイン領域Dv1には、メタル配線52vdからプラグ51vdを介して所定レベルの電圧を印加することが可能になる。
【0053】
駆動用素子Mv1は、ソース層13vsの一部を底面に露出し層間絶縁膜61に形成された開口部に埋め込まれたプラグ51vsと、プラグ51vsに電気的に接続され層間絶縁膜61上に形成されたメタル配線52vsとを備えている。プラグ51vsを介してメタル配線52vsとソース領域Sv1とが電気的に接続される。これにより、ソース領域Sv1には、メタル配線52vsからプラグ51vsを介して所定レベルの電圧を印加することが可能になる。
【0054】
図2(b)に示すように、ダミー素子Mm1は、第2ドレイン層13mdの一部を底面に露出し層間絶縁膜61に形成された開口部に埋め込まれたプラグ51mdと、プラグ51mdに電気的に接続され層間絶縁膜61上に形成されたメタル配線52mdとを備えている。プラグ51mdを介してメタル配線52mdとドレイン領域Dm1とが電気的に接続される。これにより、ドレイン領域Dm1には、メタル配線52mdからプラグ51mdを介して所定レベルの電圧を印加することが可能になる。
【0055】
ダミー素子Mm1は、ソース層13msの一部を底面に露出し層間絶縁膜61に形成された開口部に埋め込まれたプラグ51msと、プラグ51msに電気的に接続され層間絶縁膜61上に形成されたメタル配線52msとを備えている。プラグ51msを介してメタル配線52msとソース領域Sm1とが電気的に接続される。これにより、ソース領域Sm1には、メタル配線52msからプラグ51msを介して所定レベルの電圧を印加することが可能になる。
【0056】
図2(a)に示すように、書込用素子Mw1は、コンタクト層13aの一部を底面に露出し層間絶縁膜61に形成された開口部に埋め込まれたプラグ51aと、プラグ51aに電気的に接続され層間絶縁膜61上に形成されたメタル配線52aとを備えている。プラグ51aを介してメタル配線52aと第一不純物拡散領域IAaとが電気的に接続される。これにより、第一不純物拡散領域IAaには、メタル配線52aからプラグ51aを介して所定レベルの電圧を印加することが可能になる。
【0057】
書込用素子Mw1は、コンタクト層13bの一部を底面に露出し層間絶縁膜61に形成された開口部に埋め込まれたプラグ51bと、プラグ51bに電気的に接続され層間絶縁膜61上に形成されたメタル配線52bとを備えている。プラグ51bを介してメタル配線52bと第二不純物拡散領域IAbとが電気的に接続される。これにより、第二不純物拡散領域IAbには、メタル配線52bからプラグ51bを介して所定レベルの電圧を印加することが可能になる。
【0058】
図2(b)に示すように、駆動用素子Mv1は、MOSFETを構成している。不揮発性記憶素子M1は、駆動用素子Mv1をMOSFETとして機能させて他の回路と動作するようになっている。つまり、不揮発性記憶素子M1が他の回路と動作する際に、駆動用素子Mv1のドレイン領域Dv1及びソース領域Sv1に電流経路が形成される。
【0059】
一方、図2(a)に示すように、書込用素子Mw1は、第一不純物拡散領域IAaに電気的に接続されたプラグ51a及びメタル配線52aを有し、第二不純物拡散領域IAbに電気的に接続されたプラグ51b及びメタル配線52bを有している。メタル配線52aには所定の電圧が印加されるのに対し、メタル配線52bはオープン状態とされる。このため、第二不純物拡散領域IAbがフローティング状態となっており、書込用素子Mw1は、MOSFETを構成していない。書込用素子Mw1は、第一不純物拡散領域IAaを用いてフローティングゲートFG2に電荷を注入したりフローティングゲートFG2から電荷を放出したりする書き込み時の電圧印加素子として機能するようになっている。つまり、第一不純物拡散領域IAaは、書き込み用の電圧印加領域として機能し、ドレイン領域Dv1は、駆動用MOSFETのドレイン領域として機能するようになっている。
【0060】
図2(b)に示すように、ダミー素子Mm1は、MOSFETを構成している。ダミー素子Mm1は、MOSFETとして機能し、駆動用素子Mv1とともに他の回路と動作する素子として用いられもよい。また、ダミー素子Mm1は、破損した駆動用素子Mv1の代替素子として用いられてもよい。つまり、不揮発性記憶素子M1が他の回路と動作する際に必要に応じて、ダミー素子Mm1のドレイン領域Dm1及びソース領域Sm1に電流経路が形成される。したがって、ドレイン領域Dm1は、駆動用MOSFETのドレイン領域として機能する場合がある。
【0061】
次に、不揮発性記憶素子M1の閾値電圧Vthの調整方法について説明する。
例えば、コントロールゲートCG1に19V、第一不純物拡散領域IAaに0Vを印加すると、トンネル絶縁膜15を介してフローティングゲートFG1内に電子が注入され、フローティングゲートFG1が負に帯電した状態となる。この状態では、フローティングゲートFG1は、コントロールゲートCG1に正のバイアスを掛けた場合に、ゲート絶縁膜16v,16mに掛かる電界を抑制する方向に働く。このため、不揮発性記憶素子M1の駆動用素子Mv1及びダミー素子Mm1は、閾値電圧Vthが上昇し、エンハンスメント型MOSFETとして機能する。
【0062】
一方、例えば、コントロールゲートCG1に0V、ドレイン領域D1に19Vを印加すると、トンネル絶縁膜15を介してフローティングゲートFG1から電子が引き抜かれ、フローティングゲートFG1が正に帯電した状態となる。この状態では、フローティングゲートFG1は、コントロールゲートCG1に正のバイアスを掛けた場合に、ゲート絶縁膜16v,16mに掛かる電界を強くする方向に働く。このため、不揮発性記憶素子M1の駆動用素子Mv1及びダミー素子Mm1は、閾値電圧Vthが低下し、ディプレッション型MOSFETとして機能する。このように、フローティングゲートFG1への電荷の注入又はフローティングゲートFG1からの電荷の引き抜きを制御することにより、不揮発性記憶素子M1の閾値電圧Vthを所望の値に調整することができる。
【0063】
次に、フローティングゲートからの電荷漏れによる閾値電圧Vth変動(リテンション劣化)について説明する。以下、リテンション劣化について、主にフローティングゲートの内部の電子がフローティングゲートの外部に漏れだす現象を例にとって説明する。なお、フローティングゲートの外部からフローティングゲートの内部に電子が注入される現象(実質的に、フローティングゲートの内部の正孔がフローティングゲートの外部に漏れだす現象)の場合も同様にリテンション劣化が生じる。
【0064】
リテンション劣化には、第1モードのリテンション劣化及び第2モードのリテンション劣化の2つのモードが存在する。第1モードのリテンション劣化は、トンネル絶縁膜中に生成した欠陥を介してフローティングゲートから電荷が漏れることによって生じる閾値電圧Vth変動である。トンネル絶縁膜中の欠陥は、フローティングゲートに電荷を注入する時(書き込み時)に通過する電荷によりトンネル絶縁膜がダメージを受けることによって発生する。第2のリテンション劣化は、熱エネルギーにより励起されたフローティングゲート中の電子がトンネル絶縁膜のエネルギー障壁を飛び越えて漏れ出すことによって生じる閾値電圧Vthの変動である。
【0065】
まず、第1モードのリテンション劣化について説明する。第1モードのリテンション劣化は、トンネル絶縁膜中の欠陥を介してフローティングゲートから電荷が漏れる現象である。このため、第1モードのリテンション劣化の程度はトンネル絶縁膜中の欠陥密度に依存する。また、トンネル絶縁膜中の欠陥は、フローティングゲートへの電荷注入時(書き込み時)に発生する。さらに、第1モードのリテンション劣化は、温度依存性が小さいという特徴を持つ。以上のメカニズムより、第1モードのリテンション劣化を抑制するには、書き込み時にトンネル絶縁膜を通過する電荷量を低減させればよい。不揮発性記憶素子の閾値電圧Vthをある特定の値に調整するとき、フローティングゲートに注入する総電荷量は、フローティングゲートの面積に依存し、この面積が大きいほど多くなる。一方、電荷は、トンネル絶縁膜が形成された領域を介して移動する。このため、トンネル絶縁膜の面積が大きいほどトンネル絶縁膜の単位面積当たりに通過する電荷量は少なくなる。したがって、トンネル絶縁膜の欠陥生成は、フローティングゲートの面積に対するトンネル絶縁膜の面積の比率が大きいほど抑制されることになる。
【0066】
図3は、室温におけるフローティングゲートに対するトンネル絶縁膜の面積比と第1モードのリテンション劣化による閾値電圧Vthの変動寿命との実験結果を示すグラフである。本実験は、フローティングゲートに対するトンネル絶縁膜の面積比の異なる不揮発性記憶素子を所定の閾値電圧Vthに調整し、所定時間放置後の閾値電圧Vthの変動量を測定する加速試験である。本実験には、図1及び図2に示す不揮発性記憶素子M1と同じ構造を有する不揮発性記憶素子の測定サンプルが用いられた。測定サンプルとして、フローティングゲートに対するトンネル絶縁膜の面積比が0.000176である不揮発性記憶素子A、当該面積比が0.001582である不揮発性記憶素子B及び当該面積比が0.017721である不揮発性記憶素子Cの3種類の不揮発性記憶素子を用いた。不揮発性記憶素子Aは4000個用意し、27℃の雰囲気下で放置した。放置から168時間経過時、500時間経過時及び1000時間経過時に4000個の不揮発性記憶素子Aのそれぞれの閾値電圧Vthを測定し、各放置時間における閾値電圧Vthの変動量を算出した。不揮発性記憶素子B,Cについても同様に、それぞれ4000個の測定サンプルを用いて上記の3つの放置時間毎に閾値電圧Vthを測定し、放置前後での閾値電圧Vthの変動量を算出した。
【0067】
図3(a)及び図3(b)に示すグラフの横軸の「トンネル面積/フローティングゲート面積」は、フローティングゲートに対するトンネル絶縁膜の面積比を示している。本実験では、フローティングゲートに対するトンネル絶縁膜の面積比は、フローティングゲートの面積を固定し、トンネル絶縁膜の面積を変えることによって調整されている。図3(a)及び図3(b)に示すグラフの縦軸の「動作時間[年]」は、各不揮発性記憶素子における閾値電圧Vthの時間依存性(各放置時間(168時間、500時間及び1000時間)への依存性)に基づく不揮発性記憶素子の動作時間の換算値を示している。図3(a)に示すグラフ中の◇印は、実験に使用した全ての測定サンプルのうち閾値電圧Vthの変動が100mV未満の測定サンプルの割合が99.87%(片側3σ相当)となる動作時間を、不揮発性記憶素子A、B及びC毎に示している。左側の◇印が不揮発性記憶素子Aの閾値電圧Vthの時間依存性を示し、中央の◇印が不揮発性記憶素子Bの閾値電圧Vthの時間依存性を示し、右側の◇印が不揮発性記憶素子Cの閾値電圧Vthの時間依存性を示している。図3(a)に示すグラフ中の◇印を結ぶ直線は、この動作時間に基づく近似直線である。図3(b)に示すグラフ中の◇印は、実験に使用した全ての測定サンプルのうち閾値電圧Vthの変動が100mV未満の測定サンプルの割合が99.997%(片側4σ相当)となる動作時間を、不揮発性記憶素子A、B及びC毎に示している。左側の◇印が不揮発性記憶素子Aの閾値電圧Vthの時間依存性を示し、中央の◇印が不揮発性記憶素子Bの閾値電圧Vthの時間依存性を示し、右側の◇印が不揮発性記憶素子Cの閾値電圧Vthの時間依存性を示している。図3(b)に示すグラフ中の◇印を結ぶ直線は、この動作時間に基づく近似直線である。
【0068】
ここで、不揮発性記憶素子の閾値電圧Vthが100mV変動する動作時間を寿命と定義する。図3(a)中に破線の直線で示すように、全ての測定サンプルのうち99.87%(片側3σ相当)が10年以上の寿命を確保するためには、フローティングゲートに対するトンネル絶縁膜の面積比が0.002以上であることが必要なことがわかる。また、図3(b)中に破線の直線で示すように、全ての測定サンプルのうち99.997%(片側4σ相当)が10年以上の寿命を確保するためには、フローティングゲートに対するトンネル絶縁膜の面積比が0.011以上であることが必要なことがわかる。このように、不揮発性記憶素子は、フローティングゲートに対するトンネル絶縁膜の面積比が0.002以上となるフローティングゲート及びトンネル絶縁膜を備えているとよい。また、フローティングゲートに対するトンネル絶縁膜の面積比が0.011以上1以下であると、第1モードのリテンション劣化(低温リテンション)がさらに改善される。このため、不揮発性記憶素子が用いられるアナログ回路が高精度な電圧を必要とする場合には、不揮発性記憶素子は、フローティングゲートに対するトンネル絶縁膜の面積比が0.011以上となるフローティングゲート及びトンネル絶縁膜を備えているとよい。
【0069】
次に、第2モードのリテンション劣化について説明する。第2モードのリテンション劣化は、熱エネルギーにより励起されたフローティングゲート中の電荷がトンネル絶縁膜のエネルギー障壁を飛び越えて漏れ出す(以下、「電荷漏れ」と称する場合がある)ことが原因である。電荷漏れは、同じエネルギー障壁を持つトンネル絶縁膜領域のどこでも起こり得る。つまり、電荷漏れの発生確率は、トンネル絶縁膜の面積に依存し、この面積を小さくするほど低減することができる。また、電荷漏れの現象は、電子の熱励起が関係するので、温度が高いほど加速される。
【0070】
図4は、70℃におけるトンネル絶縁膜の面積と第2モードのリテンション劣化による不揮発性記憶素子の閾値電圧Vthの変動寿命との実験結果を示すグラフである。本実験は、所定の閾値電圧Vthに調整し、ある条件下で放置した不揮発性記憶素子の放置後の閾値電圧Vthを測定する加速試験である。本実験には、図1に示す不揮発性記憶素子M1と同じ構造を有する不揮発性記憶素子の測定サンプルが用いられた。本実験では、所定の閾値電圧Vthに調整した不揮発性記憶素子を、200℃雰囲気下で24時間、250℃雰囲気下で10時間、250℃雰囲気下で24時間の3つの条件で各4000個放置した。各条件下で放置した後の不揮発性記憶素子の閾値電圧Vthを測定し、放置前後での閾値電圧Vthの変動量を算出した。
【0071】
図4(a)及び図4(b)に示すグラフの横軸の「トンネル面積[μm]」は、不揮発性記憶素子に設けられたトンネル絶縁膜の面積(不揮発性記憶素子の平面視における面積)を示している。図4(a)及び図4(b)に示すグラフの縦軸の「動作時間[年]」は、各不揮発性素子における閾値電圧Vthの時間依存性及び温度依存性(アレニウスの式)に基づく不揮発性記憶素子の動作時間の換算値を示している。図4(a)に示すグラフ中の◇印は、実験に使用した全ての測定サンプルのうち閾値電圧Vthの変動が100mV未満の測定サンプルの割合が99.87%(片側3σ相当)となる動作時間を示している。図4(a)に示すグラフ中の◇印を結ぶ直線は、この動作時間に基づく近似直線である。図4(b)に示すグラフ中の◇印は、実験に使用した全ての測定サンプルのうち閾値電圧Vthの変動が100mV未満の測定サンプルの割合が99.997%(片側4σ相当)となる動作時間を示している。図4(b)に示すグラフ中の◇印を結ぶ直線は、この動作時間に基づく近似直線である。
【0072】
ここで、不揮発性記憶素子の閾値電圧Vthが100mV変動する動作時間を寿命と定義する。図4(a)中に破線の直線で示すように、全ての測定サンプルのうち99.87%(片側3σ相当)が10年以上の寿命を確保するためには、トンネル絶縁膜の面積(トンネル面積)が54μm以下であることが必要なことがわかる。図4(b)中に破線の直線で示すように、全ての測定サンプルのうち99.997%(片側4σ相当)が10年以上の寿命を確保するためには、トンネル絶縁膜の面積(トンネル面積)が40μm以下であることが必要なことがわかる。このように、不揮発性記憶素子は、面積が54μm以下のトンネル絶縁膜を備えているとよい。また、トンネル絶縁膜の面積が40μm以下であると、第2モードのリテンション劣化(通常リテンション)がさらに改善される。このため、不揮発性記憶素子が用いられるアナログ回路が高精度な電圧を必要とする場合には、不揮発性記憶素子は、面積が40μm以下のトンネル絶縁膜を備えているとよい。
【0073】
図5は、本実施形態による不揮発性記憶素子に設けられたフローティングゲート及びトンネル絶縁膜の面積構成の適応領域を示すグラフである。図5(a)は、図3(a)及び図4(a)に示すグラフから得られる数値に基づいて作成されたグラフである。つまり、図5(a)は、不揮発性記憶素子が99.87%の確率で10年以上の寿命を確保できることが予想される当該面積構成の適応領域を示している。図5(b)は、図3(b)及び図4(b)に示すグラフから得られる数値に基づいて作成されたグラフである。つまり、図5(b)は、不揮発性記憶素子が99.997%の確率で10年以上の寿命を確保できることが予想される当該面積構成の適応領域を示している。以下、市場に流通した不揮発性記憶素子の99.87%(片側3σ)が10年以上の寿命を確保できることが予想される、フローティングゲート及びトンネル絶縁膜の面積構成の適応領域を「標準適応領域」と称する。また、以下、市場に流通した不揮発性記憶素子の99.997%(片側4σ)が10年以上の寿命を確保できることが予想される、フローティングゲート及びトンネル絶縁膜の面積構成の適応領域を「高精度適応領域」と称する。
【0074】
図5(a)及び図5(b)に示すグラフの横軸の「フローティングゲート面積[μm]」は、不揮発性記憶素子に設けられたフローティングゲートの面積(不揮発性記憶素子の平面視における面積)を示している。図5(a)及び図5(b)に示すグラフの縦軸の「トンネル面積[μm]」は、不揮発性記憶素子に設けられたトンネル絶縁膜の面積(不揮発性記憶素子の平面視における面積)を示している。図5(a)及び図5(b)に示すグラフ中の破線の直線F1は、フローティングゲート面積の下限値を示している。図5(a)に示すグラフ中の破線の直線T1は、標準適応領域におけるトンネル面積の上限値を示している。図5(a)に示すグラフ中の破線の直線TF1は、フローティングゲートに対するトンネル絶縁膜の面積比が0.002の場合の特性を示している。図5(a)及び図5(b)に示すグラフ中の破線の直線TF2は、フローティングゲートに対するトンネル絶縁膜の面積比が1の場合の特性を示している。図5(b)に示すグラフ中の破線の直線T2は、高精度適応領域におけるトンネル面積の上限値を示している。図5(b)に示すグラフ中の破線の直線TF3は、フローティングゲートに対するトンネル絶縁膜の面積比が0.011の場合の特性を示している。図5(a)及び図5(b)に示すグラフ中の○印は、本実施形態による不揮発性記憶素子M1のフローティングゲート面積及びトンネル面積を示し、△印は、デジタルデータ(0又は1)を記憶するメモリセルのフローティングゲート面積及びトンネル面積の一例を示している。
【0075】
直線TF1,TF2,TF3は、図3を用いて説明した第1モードのリテンション劣化が抑制されるフローティングゲートに対するトンネル絶縁膜の面積比に基づいて決定される直線である。また、直線T1,T2は、図4を用いて説明した第2モードのリテンション劣化が抑制されるトンネル絶縁膜の面積に基づいて決定される直線である。さらに、直線F1は、本実施形態による不揮発性記憶素子Mと同一構造の不揮発性記憶素子をデジタルデータを記憶するメモリとして使用する場合と差別化するためのフローティングゲートの面積の下限値に基づいて決定される直線である。
【0076】
このため、図5(a)に示すように、直線T1、直線F1、直線TF1及び直線TF2で囲まれる領域が、フローティングゲート及びトンネル絶縁膜の標準適応領域である。直線T1、直線F1、直線TF1及び直線TF2のそれぞれの線上は、標準適応領域に含まれる。標準適応領域に含まれる面積のフローティングゲート及びトンネル絶縁膜を有する不揮発性記憶素子は、動作時間が合計10年に到達しても第1モードのリテンション劣化及び第2モードのリテンション劣化が生じない確率が99.87%と予想される素子となる。
【0077】
また、図5(b)に示すように、直線T2、直線F1、直線TF3及び直線TF2で囲まれる領域が、フローティングゲート及びトンネル絶縁膜の高精度適応領域である。直線T2、直線F1、直線TF2及び直線TF3のそれぞれの線上は、高精度適応領域に含まれる。高精度適応領域に含まれる面積のフローティングゲート及びトンネル絶縁膜を有する不揮発性記憶素子は、動作時間が合計10年に到達しても第1モードのリテンション劣化及び第2モードのリテンション劣化が生じない確率が99.997%と予想される素子となる。
【0078】
本実施形態による不揮発性記憶素子M1のフローティングゲートFG1の面積は、1422μmであり、トンネル絶縁膜15の面積は、25.2μmである。一方、デジタルデータ用のメモリセルのフローティングゲートの面積は、6.24μmであり、トンネル絶縁膜の面積は、0.25μmである。このため、図5(a)及び図5(b)に示すように、不揮発性記憶素子M1は、標準適応領域及び高精度適応領域のいずれにも含まれ、デジタルデータ用のメモリセルは、標準適応領域及び高精度適応領域のいずれにも含まれない。
【0079】
以上より、FLOTOX型不揮発性記憶素子をフローティングゲート面積が30μm以上のアナログ回路内のMOSFETとして使用する場合にトンネル絶縁膜の面積を54μm以下にすることで、熱エネルギーにより励起されたフローティングゲート中の電荷がトンネル絶縁膜のエネルギー障壁を飛び越えて漏れ出す確率が抑制され、第2モードのリテンション劣化を抑制することができる。また、フローティングゲートの面積が30μm以上のMOSFETとして不揮発性記憶素子を使用する場合に、フローティングゲートに対するトンネル絶縁膜の面積比を0.002以上とすることで、単位面積当たりのトンネル絶縁膜を通過する電荷量が低減し、第1モードのリテンション劣化も抑制することができる。これにより、不揮発性記憶素子は、第1モードのリテンション劣化及び第2モードのリテンション劣化によるアナログ回路特性への影響を微小化することが可能になる。
【0080】
したがって、フローティングゲート及びトンネル絶縁膜の面積構成の適応領域は、第1モードのリテンション劣化を抑制するために必要な、フローティングゲートに対するトンネル絶縁膜の面積比の下限値及び上限値に基づく2つの直線と、第2モードのリテンション劣化を抑制するために必要なトンネル面積の上限値に基づく直線と、フローティングゲート面積の下限値に基づく直線とで画定される領域である。さらに、フローティングゲート及びトンネル絶縁膜の面積構成の適応領域の頂点は、当該面積比の下限値及び上限値に基づく2つの直線とトンネル面積の上限値に基づく直線との交点と、この2つの直線とフローティングゲート面積の下限値に基づく直線との交点となる。
【0081】
なお、トンネル絶縁膜の面積の上限値は、不揮発性記憶素子の寿命をどの程度に設定するのかによって変動する値である。さらに、フローティングゲートの面積の下限値は、不揮発性記憶素子の用途で変動する値である。このため、フローティングゲートの面積の下限値は、不揮発性記憶素子を備えるアナログ回路に必要な駆動能力によっては、図5に示す下限値よりも小さくてよい場合もある。したがって、図5に示すフローティングゲート及びトンネル絶縁膜の面積構成の適応領域を画定するトンネル面積の上限値及びフローティング面積の下限値は、一例であって他の値であってもよい。
【0082】
このようなフローティングゲート及びトンネル絶縁膜の面積構成の適応領域に含まれるように作製された、本実施形態による不揮発性記憶素子は、第1モードのリテンション劣化及び第2モードのリテンション劣化によるアナログ回路特性への影響を微小化することが可能になる。
【0083】
ここで、駆動用素子Mv1が設けられた箇所におけるフローティングゲートFG1の領域である特定領域PAについて図1及び図2を参照しつつ図6から図8を用いて説明する。図6中に示すグラフの横軸は、駆動用素子Mv1と同じ構造を有する不揮発性記憶素子に設けられたコントロールゲートとソース領域との間のゲートソース間電圧Vgs[V]を示している。図6中に示すグラフの縦軸は、当該不揮発性記憶素子のドレイン電流Ids[A]を示している。図6中の左側には、当該不揮発性記憶素子の閾値電圧Vthの値が0Vに調整された場合の特性が示されている。また、図6中の右側には、当該不揮発性記憶素子の閾値電圧Vthの値が3.5Vに調整された場合の特性が示されている。図6中に示す「T:-40」は、周囲温度が-40℃の場合の当該不揮発性記憶素子のゲートソース間電圧Vgsに対するドレイン電流Idsの特性を示している。また、図6中に示す「T:30」は、周囲温度が30℃の場合の当該不揮発性記憶素子のゲートソース間電圧Vgsに対するドレイン電流Idsの特性を示している。また、図6中に示す「T:90」は、周囲温度が90℃の場合の当該不揮発性記憶素子のゲートソース間電圧Vgsに対するドレイン電流Idsの特性を示している。
【0084】
図6に示すように、駆動用素子Mv1と同じ構造を有する不揮発性記憶素子は、ゲートソース間電圧Vgsの所定値を境に、周囲温度に対するドレイン電流Idsの電流値が逆転する特性を有している。より具体的に、当該不揮発性記憶素子のドレイン電流Idsは、ゲートソース間電圧Vgsが所定値よりも低い範囲では周囲温度が高温の方が低温よりも電流値が大きくなり、当該所定値では周囲温度によらず電流値が同一となり、ゲートソース間電圧Vgsが所定値よりも高い範囲では周囲温度が高温の方が低温よりも電流値が小さくなる特性を有している。以下、複数の不揮発性記憶素子において、閾値電圧が同じ値に調整され、かつ周囲温度が異なっていても電流値が互いに同一となるドレイン電流を「温度非依存性電流」と称する。
【0085】
不揮発性記憶素子M1の実際の動作時には、駆動用素子Mv1が主に動作する。このため、温度非依存性電流Itidで動作するように駆動用素子Mv1が構成されることにより、不揮発性記憶素子M1の温度特性の向上を図ることができる。
【0086】
さらに、不揮発性記憶素子M1は、低消費電力向けの技術である。このため、図6に示すように、不揮発性記憶素子M1の温度非依存性電流Itid(すなわち駆動用素子Mvの温度非依存性電流Itid)が低消費電流領域(例えば数nA以下)にあると、低消費電力で温度特性にも優れる不揮発性記憶素子M1を実現できる。
【0087】
駆動用素子Mv1の温度非依存性電流Itidと、駆動用素子Mv1のチャネル幅及びチャネル長、すなわちフローティングゲートFG1の特定領域PAにおけるゲート幅W及びゲート長Lとの間には、以下の式(1)に示す関係が成り立つ。
【0088】
【数1】
【0089】
式(1)において、「A」は定数を示している。次に、式(1)における定数A、ゲート幅Wの指数α及びゲート長Lの指数βについて説明する。定数A、指数α及び指数βは、駆動用素子Mv1と同じ構造を有し、ゲート幅W及びゲート長Lの一方を変更したNMOSの複数のサンプルを作製し、それぞれのサンプルの温度非依存性電流の測定値を用いて求められる。
【0090】
表1は、駆動用素子Mv1と同じ構造のNMOSのゲート幅に対する温度非依存性電流の測定結果を示している。表1中の上段に示す「W[μm]」は、当該NMOSのゲート幅を示し、当該上段に示す「Itid[A]」は、温度非依存性電流を示し、当該上段に示す「A」は、式(1)中の定数Aを示している。定数Aの算出方法については、後述する。なお、各サンプルのゲート長Lは、いずれも10μmである。また、NMOSのソースドレイン間には、0.1Vの電圧が印加された状態で、温度非依存性電流が測定された。
【0091】
【表1】
【0092】
表1に示すように、NMOSのゲート幅Wが0.24μmから10.0μmの範囲で6種類のサンプルについて温度非依存性電流が測定された。表1に示す温度非依存性電流の測定結果を用いて作成されたゲート幅Wと温度非依存性電流Itidとの関係を図7に示す。図7中に示すグラフの横軸は、測定サンプルとして用いられたNMOSのゲート幅W[μm](すなわち、表1中に示すW[μm])を示している。図7中に示すグラフの縦軸は、当該NMOSの温度非依存性電流Itid[A](すなわち、表1中に示すItid[A])を示している。なお、図7に示すグラフは両対数グラフである。また、図7中に示す点線は、各測定点を結ぶ累乗近似曲線である。図7中に示す数式は、当該累乗近似曲線を表す式である。当該数式の「x」はゲート幅Wであり、当該数式の「y」は温度非依存性電流Itidである。
【0093】
図7に示すように、NMOSの温度非依存性電流Itidは、NMOSのゲート長を固定した場合、NMOSのゲート幅Wに依存して変化する。NMOSの温度非依存性電流Itidは、NMOSのゲート幅Wが長くなるに従って増加し、「7×10-82.036」で表される特性を有する。NMOSの温度非依存性電流ItidがNMOSのゲート幅Wに依存する係数(指数)が式(1)における指数αである。したがって、αの値は2.036となる。
【0094】
表2は、駆動用素子Mv1と同じ構造のNMOSのゲート長に対する温度非依存性電流の測定結果を示している。表2中の最上段に示す「1/L[/μm]」は、当該NMOSのゲート長の逆数を示し、当該最上段に示す「Itid[A]」は、温度非依存性電流を示し、当該最上段に示す「A」は、式(1)中の定数Aを示している。表2中の最下段に示す「Ave.」は、定数Aの平均値を示している。定数A及び定数Aの平均値の算出方法については、後述する。なお、各サンプルのゲート幅Wは、いずれも10μmである。また、NMOSのソースドレイン間には、0.1Vの電圧が印加された状態で、温度非依存性電流が測定された。
【0095】
【表2】
【0096】
表2に示すように、NMOSのゲート長Lの逆数が1.67μmから0.10μmの範囲で10種類のサンプルについて温度非依存性電流が測定された。表2に示す温度非依存性電流の測定結果を用いて作成されたゲート長Lの逆数と温度非依存性電流Itidとの関係を図8に示す。図8中に示すグラフの横軸は、測定サンプルとして用いられたNMOSのゲート長Lの逆数1/L[/μm](すなわち、表2中に示す1/L[/μm])を示している。図8中に示すグラフの縦軸は、当該NMOSの温度非依存性電流Itid[A](すなわち、表2中に示すItid[A])を示している。なお、図8に示すグラフは両対数グラフである。また、図8中に示す点線は、各測定点を結ぶ累乗近似曲線である。図8中に示す数式は、当該累乗近似曲線を表す式である。当該数式の「x」はゲート長Lの逆数1/Lであり、当該数式の「y」は温度非依存性電流Itidである。
【0097】
図8に示すように、NMOSの温度非依存性電流Itidは、NMOSのゲート幅を固定した場合、NMOSのゲート長Lに依存して変化する。NMOSの温度非依存性電流Itidは、ゲート長Lの逆数1/Lが大きくなる(すなわち、NMOSのゲート長Lが短くなる)に従って増加し、「1.1×10-8(1/L)2.215」で表される特性を有する。NMOSの温度非依存性電流ItidがNMOSのゲート長Lの逆数1/Lに依存する係数(指数)が式(1)における指数βである。したがって、βの値は2.215となる。
【0098】
上述の測定によって得られた指数α及び指数βのそれぞれの値を式(1)に代入すると、以下の式(2)が得られる。
【0099】
【数2】
【0100】
また、式(2)を変形すると、以下の式(3)が得られる。
【0101】
【数3】
【0102】
表1に示す定数Aの値は、表1に示すゲート幅W、ゲート長L及び温度非依存性電流Itidを式(2)に代入して算出される。例えば、表1中の2段目に示すW=0.24μm、Itid=3.7×10A、L=10μmを式(2)に代入することにより、表1中の2段目に示すA=1.1×10-5が算出される。同様に、表2に示す定数Aの値は、表2に示すゲート長Lの逆数1/L、ゲート幅W及び温度非依存性電流Itidを式(2)に代入して算出される。例えば、表2中の2段目に示す1/L=1.67(/μm)、Itid=3.5×10-3A、W=10μmを式(2)に代入することにより、表2中の2段目に示すA=1.0×10-5が算出される。また、表2に示す定数Aの平均値(「Ave.」の右隣りに記載された数値)は、表1に示す6個の定数Aの値及び表2に示す10個の定数Aの値の平均値である。本実施形態では、当該平均値を定数Aの値とする。
【0103】
本実施形態では、駆動用素子Mv1の動作電流は1nA以下と想定されている。このため、温度非依存性電流Itidが動作電流以下となる条件は、式(3)のItidに動作電流の想定された最大値である1nAと、表2に示す定数Aの平均値「1.1×10-5」を代入することにより、以下の式(4)が得られる。
【0104】
【数4】
【0105】
したがって、フローティングゲートFG1の特定領域PAのゲート長をLとすると(図1参照)、フローティングゲートFG1の特定領域PAのゲート幅W及びゲート長Lは、上述の式(4)の関係を満たしていてもよい。駆動用素子Mv1のフローティングゲートFG1の特定領域PAのゲート幅W及びゲート長Lが上述の式(4)の関係を満たすことにより、不揮発性記憶素子M1は、駆動用素子Mv1のドレイン電流Idsが周囲温度に依存し難くなり、かつ1nA以下の値となるので、温度安定性の向上及び低消費電力化を図ることができる。
【0106】
また、式(2)をゲート長Lについて解くと、以下の式(5)が得られる。
【0107】
【数5】
【0108】
ここで、フローティングゲートFG1の特定領域PAの面積Sは、ゲート幅Wとゲート長Lの積(W×L)で表される。ゲート幅Wが最小値の0.5μmであり、かつ温度非依存性電流Itidが動作電流(1nA)以下となる特定領域PAの面積Sの条件は、S=W×L及び式(5)を用いると、17.5μm以上となる。つまり、駆動用素子Mv1におけるフローティングゲートFG1の領域、すなわち特定領域PAは、17.5μm以上の面積を有し、式(4)の関係を満たしていてもよい。これにより、不揮発性記憶素子M1は、次世代の製造プロセスである0.5μm世代の製造プロセスの最小値(0.5μm)において、駆動用素子Mv1のドレイン電流Idsが周囲温度に依存し難くなり、かつ1nA以下の値となるので、温度安定性の向上及び低消費電力化を図ることができる。
【0109】
また、式(2)の温度非依存性電流Itidは、特定領域PAの面積Sを用いると、以下の式(6)のように表すことができる。
【0110】
【数6】
【0111】
デジタルデータを記憶するメモリとして不揮発性記憶素子が使用される場合との差別化のために規定されるフローティングゲートFG1の面積30μm以上27000μm以下において、フローティングゲートFG1の全体が30μmよりも大きい面積を有しているとする。この場合、フローティングゲートFG1の特定領域PAの面積が30μm以上でありゲート幅Wが最小値の0.5μmであるとすると、温度非依存性電流Itidは、3.0×10-10A以下となり、本実施形態で想定される最小値よりも小さくなる。このように、フローティングゲートFG1の全体が30μmよりも大きい面積を有している場合に、フローティングゲートFG1の特定領域PAの面積が30μm以上であってもよい。これにより、不揮発性記憶素子M1は、より一層の低消費電力化を図ることができる。
【0112】
(不揮発性記憶素子の製造方法)
次に、本実施形態による不揮発性記憶素子M1の製造方法について図1を参照しつつ図2及び図9から図18を用いて説明する。図9から図18には、1つの半導体基板上に同時に形成される複数の不揮発性記憶素子のうちの1つの不揮発性記憶素子の製造工程が図示されている。図9中から図18中の列(a)は、図1中のA-A線で切断した不揮発性記憶素子M1の製造工程断面(すなわち、書込用素子Mw1の製造工程断面)を示している。図9中から図18中の列(b)は、図1中のB1-B1線(及びB2-B2線)で切断した不揮発性記憶素子M1の製造工程断面(すなわち、駆動用素子Mv1(及びダミー素子Mm1)の製造工程断面)を示している。図9中から図18中の列(c)は、図1中のC-C線で切断した不揮発性記憶素子M1の製造工程断面(すなわち、プラグ51gが設けられた部分の製造工程断面)を示している。図9から図17のうちの図12を除く各図中の行(1)及び行(2)はこの順に不揮発性記憶素子Mの製造工程が時系列で示されている。図9から図18の説明において、列(a)から列(c)と行(1)及び行(2)(図12及び図18を除く)とを組み合わせて製造工程断面図を参照する。例えば、図9中の左上に示す製造工程断面図を参照する場合には、「図9(a1)」と表記して参照する。
【0113】
まず、P型の半導体基板9Aを熱酸化し、図9(a1)、図9(b1)及び図9(c1)に示すように、半導体基板9Aの表面に膜厚が300Åの二酸化シリコンの酸化膜10zを形成する。次に、半導体基板9Aの上部にボロンを注入して不純物層を形成する。次に、1200℃のファーネスアニールによってこの不純物層を熱拡散させ、図9(a1)、図9(b1)及び図9(c1)に示すように、半導体基板9Aの上部にPウェル領域10Aを形成する。
【0114】
次に、酸化膜10zを除去した後、半導体基板9A上にパッド酸化膜を形成し、次いでこのパッド酸化膜上に窒化シリコンを堆積して窒化膜を形成する。次に、この窒化膜上にフォトレジストを塗布し、このフォトレジストを露光及び現像し、最終的に不揮発性記憶素子が形成される領域を覆うレジストマスクを形成する。
【0115】
次に、このレジストマスクをマスクにして窒化膜をドライエッチングし、レジストマスクの下方以外の領域の窒化膜を除去する。次いで、レジストマスクをドライアッシングにより除去する。次に、LOCOS法により、窒化膜によって覆われていない領域のパッド酸化膜の膜厚が7000Åになるまで熱酸化する。
【0116】
次に、熱リン酸によって窒化膜をウェットエッチングする。次に、窒化膜が形成されていた領域のPウェル領域10Aが露出するまでフッ酸によってパッド酸化膜を除去する。これにより、図9(a2)、図9(b2)及び図9(c2)に示すように、半導体基板9A上の所定領域に素子分離領域41が形成される。
【0117】
次に、半導体基板9Aを熱酸化し、Pウェル領域10Aが露出した領域に480Åの厚さに二酸化シリコンを堆積し、図10(a1)及び図10(b1)に示すように、一部がゲート絶縁膜16w,16v,16mとなる酸化膜16zを半導体基板9Aの全面に形成する。図10(a1)、図10(b1)及び図10(c1)に示すように、酸化膜16zは、Pウェル領域10Aが露出する領域に形成され、素子分離領域41を構成する酸化膜上にはほとんど形成されない。次に、酸化膜16zを含み半導体基板9Aの全面にフォトレジストを塗布し、このフォトレジストを露光及び現像する。これにより、図10(a1)、図10(b1)及び図10(c1)に示すように、将来的に拡散層11a、第1ドレイン層11v及び第1ドレイン層11m(図1及び図2参照)が形成される領域の酸化膜16zが少なくとも露出するレジストマスクRM11が形成される。レジストマスクRM11は、将来的に拡散層11a、第1ドレイン層11v及び第1ドレイン層11mが形成される領域に亘って一続きに形成された開口領域を有している。この開口領域の一部には、酸化膜16zが露出され、この開口領域の残部には、素子分離領域41が露出される。
【0118】
次に、レジストマスクRM11をマスクとしてヒ素イオンを注入する。ヒ素イオンは、酸化膜16zを通過してPウェル領域10Aまで到達することができるが、素子分離領域41を通過してPウェル領域10Aまで到達することができない程度のエネルギーで注入される。これにより、図10(a2)に示すように、レジストマスクRM11によって開口され、かつ酸化膜16zの下方のPウェル領域10Aに拡散層11aが形成される。図10(b2)に示すように、レジストマスクRM11によって開口され、かつ酸化膜16zの下方のPウェル領域10Aに第1ドレイン層11vが形成される。さらに、図10(c2)に示すように、レジストマスクRM11によって開口され、かつ酸化膜16zの下方のPウェル領域10Aに第1ドレイン層11mが形成される。拡散層11a、第1ドレイン層11v及び第1ドレイン層11mは、互いに分離された状態で同時に形成される。その後、ドライエッチングによりレジストマスクRM11を除去する。
【0119】
次に、半導体基板9Aの全面にフォトレジストを塗布し、このフォトレジストを露光及び現像する。これにより、図11(a1)、図11(b1)及び図11(c1)に示すように、将来的にトンネル絶縁膜15(図2参照)が形成される領域の酸化膜16zを露出するレジストマスクRM15が形成される。
【0120】
次に、レジストマスクRM15をマスクとして酸化膜16zをウェットエッチングする。これにより、図11(a2)、図11(b2)及び図11(c2)に示すように、将来的にトンネル絶縁膜15が形成される領域の酸化膜16zが除去された開口部15zが形成される。その後、ドライエッチングによりレジストマスクRM15を除去する。
【0121】
次に、半導体基板9Aを熱酸化し、Pウェル領域10Aが露出した開口部15zに膜厚が98Åになるまで二酸化シリコンを形成し、図12(a)に示すように、将来的に書込用素子Mw1(図2参照)が形成される領域のPウェル領域10A上の一部にトンネル絶縁膜15を形成する。一方、図12(b)に示すように、将来的に駆動用素子Mv1及びダミー素子Mm1(図2参照)が形成される領域のPウェル領域10A上には、トンネル絶縁膜が形成されず、膜厚がほぼ一定の酸化膜16zが残存する。また、図12(c)に示すように、将来的にプラグ51gが形成される領域には、酸化膜16zが存在しないため、素子分離領域41が露出した状態となる。
【0122】
次に、トンネル絶縁膜15上を含み半導体基板9A上に2000Åの厚さにポリシリコンを堆積し、図13(a1)、図13(b1)及び図13(c1)に示すように、将来的に一部がフローティングゲートFG1(図1及び図2参照)になるポリシリコン膜FGzを形成する。次に、半導体基板9Aの全面にフォトレジストを塗布し、このフォトレジストを露光及び現像する。これにより、図13(a1)、図13(b1)及び図13(c1)に示すように、将来的にフローティングゲートFG1が形成される領域のポリシリコン膜FGzを露出するレジストマスクRMfが形成される。
【0123】
次に、図13(a2)、図13(b2)及び図13(c2)に示すように、レジストマスクRMfをマスクとしてフッ素イオンをポリシリコン膜FGzに注入する。これにより、レジストマスクRMfによって覆われていないポリシリコン膜FGzの領域に、フッ素が相対的に多く存在するフッ素存在領域FAが形成される。その後、ドライアッシングによりレジストマスクRMfを除去する。
【0124】
次に、半導体基板9Aの全面にフォトレジストを塗布し、このフォトレジストを露光及び現像する。これにより、図14(a1)、図14(b1)及び図14(c1)に示すように、将来的にフローティングゲートFG1及びゲート絶縁膜16w,16v,16mが形成される領域のポリシリコン膜FGzを覆うレジストマスクRMfgが形成される。
【0125】
次に、図14(a2)、図14(b2)及び図14(c2)に示すように、レジストマスクRMfgをマスクとしてドライエッチングにより、レジストマスクRMfgの下方以外のポリシリコン膜FGz及び酸化膜16zを順次除去する。これにより、フローティングゲートFG1及びゲート絶縁膜16w,16v,16mが形成される。また、フローティングゲートFG1が形成されることにより、トンネル絶縁膜15の対応する位置に、電荷注入口14が形成される。その後、ドライアッシングによりレジストマスクRMfgを除去する。
【0126】
次に、図15(a1)、図15(b1)及び図15(c1)に示すように、フローティングゲートFG1及びゲート絶縁膜16w,16v,16mを覆い、将来的に一部が絶縁膜17(図2参照)となる酸化物/窒化物/酸化物(ONO)膜17zを形成する。ONO膜17zは、半導体基板9Aを熱酸化、窒化膜の堆積及び熱酸化を順次行うことにより形成される。ONO膜17zの形成時の熱により、フローティングゲートFG1中のフッ素が急速にONO膜17z、ゲート絶縁膜16w,16v,16m及びトンネル絶縁膜15に取り込まれて偏析させることができる。すなわち、図15(a1)中及び図15(b1)中に、フッ素存在領域FAから外側に向かう曲線矢印で示すように、ONO膜17zの形成時の熱によってフローティングゲートFG1を取り囲む全方位にフッ素存在領域FAからフッ素を高濃度で分布させることができる。
【0127】
図15(a2)、図15(b2)及び図15(c2)に示すように、ONO膜17zを形成した後に、ONO膜17zの全面にポリシリコンを形成し、将来的に一部がコントロールゲートCG1(図1及び図2参照)となるポリシリコン膜CGzを形成する。
【0128】
次に、図16(a1)、図16(b1)及び図16(c1)に示すように、ポリシリコン膜CGzの全面に二酸化シリコンを堆積し、酸化膜CGyを形成する。次に、酸化膜CGyの全面にフォトレジストを塗布し、このフォトレジストを露光及び現像する。これにより、図16(a1)、図16(b1)及び図16(c1)に示すように、将来的にコントロールゲートCG1が形成される領域の酸化膜CGyを覆うレジストマスクRMcが形成される。
【0129】
次に、図16(a2)、図16(b2)及び図16(c2)に示すように、レジストマスクRMcをマスクとしてドライエッチングにより、レジストマスクRMcの下方以外の酸化膜CGyを除去する。これにより、コントロールゲートCG1を形成するためのマスクが酸化膜CGyによって形成される。その後、ドライエッチングによりレジストマスクRMcを除去する。
【0130】
次に、図17(a1)、図17(b1)及び図17(c1)に示すように、酸化膜CGyをマスクとしてドライエッチングにより、酸化膜CGyの下方以外のポリシリコン膜CGzを除去する。これにより、コントロールゲートCG1が形成される。
【0131】
次に、フローティングゲートFG1をマスクとして、Pウェル領域10Aにヒ素イオンを注入する。これにより、図17(a2)に示すように、将来的に書込用素子Mw1が形成される領域におけるフローティングゲートFG1の両側の一方のPウェル領域10Aの一部にLDD層12bが形成され、当該領域におけるフローティングゲートFG1の両側の他方のPウェル領域10Aの一部にLDD層12aが形成される。また、LDD層12a,12bの形成と同時に、図17(b2)に示すように、将来的に駆動用素子Mv1が形成される領域におけるフローティングゲートFG1の両側の一方のPウェル領域10Aの一部にLDD層12vsが形成され、当該領域におけるフローティングゲートFG1の両側の他方のPウェル領域10Aの一部にLDD層12vdが形成される。さらに、LDD層12a,12bの形成と同時に、図17(b2)に示すように、将来的にダミー素子Mm1が形成される領域におけるフローティングゲートFG1の両側の一方のPウェル領域10Aの一部にLDD層12msが形成され、当該領域におけるフローティングゲートFG1の両側の他方のPウェル領域10Aの一部にLDD層12mdが形成される。一方、図17(c2)に示すように、最終的にプラグ51gが形成される領域は、コントロールゲートCG1で覆われているため、当該領域におけるPウェル領域10Aには、LDD層が形成されない。その後、ドライアッシングにより酸化膜CGyを除去する。
【0132】
次に、コントロールゲートCG1及びONO膜17zを含み半導体基板9A上の全面に二酸化シリコンの酸化膜を形成する。次に、コントロールゲートCG1及びONO膜17zのそれぞれの周囲を残し、この酸化膜及びONO膜17zの一部をドライエッチングする。これにより、図18(a1)及び図18(b1)に示すように、フローティングゲートFG1を覆う絶縁膜17が形成され、絶縁膜17の周囲にサイドウォール18が形成され、コントロールゲートCG1の周囲にサイドウォール19が形成される。また、図18(c1)に示すように、将来的にプラグ51gが形成される領域には、フローティングゲートFG1を覆う絶縁膜17と一続きの絶縁膜17が形成される。
【0133】
次に、コントロールゲートCG1、絶縁膜17及びサイドウォール18,19をマスクとして、LDD層12a,12b,12vs,12vd,12ms,12mdにヒ素イオンを注入する。これにより、図2(a)に示すように、LDD層12bの一部の領域にコンタクト層13bが形成され、将来的に書込用素子Mw1が形成される領域のフローティングゲートFG1の両側の一方のPウェル領域10Aに第二不純物拡散領域IAbが形成される。また、LDD層12aの一部の領域にコンタクト層13aが形成され、将来的に書込用素子Mw1が形成される領域のフローティングゲートFG1の下方及び両側の他方のPウェル領域10Aの一部に第一不純物拡散領域IAaが形成される。
【0134】
また、図2(b)に示すように、LDD層12vsの一部の領域にソース層13vsが形成され、将来的に駆動用素子Mv1が形成される領域のフローティングゲートFG1の両側の一方のPウェル領域10Aにソース領域Sv1が形成される。また、LDD層12vdの一部の領域に第2ドレイン層13vdが形成され、将来的に駆動用素子Mv1が形成される領域のフローティングゲートFG1の下方及び両側の他方のPウェル領域10Aの一部にドレイン領域Dv1が形成される。
【0135】
また、図2(b)に示すように、LDD層12msの一部の領域にソース層13msが形成され、将来的にダミー素子Mm1が形成される領域のフローティングゲートFG1の両側の一方のPウェル領域10Aにソース領域Sm1が形成される。また、LDD層12mdの一部の領域に第2ドレイン層13mdが形成され、将来的にダミー素子Mm1が形成される領域のフローティングゲートFG1の下方及び両側の他方のPウェル領域10Aの一部にドレイン領域Dm1が形成される。
【0136】
次に、図2に示すように、コントロールゲートCG1、フローティングゲートFG1、第一不純物拡散領域IAa、第二不純物拡散領域IAb、ソース領域Sv1,Sm1及びドレイン領域Dv1,Dm1などを含み半導体基板9Aの全面に絶縁性の層間絶縁膜61を形成する。
【0137】
次に、図2(a)に示すように、コンタクト層13a,13bの一部を底面に開口する開口部を層間絶縁膜61に形成する。また、当該開口部の形成と同時に、図2(b)に示すように、ソース層13vs,13msの一部を底面に開口する開口部と、第2ドレイン層13vd,13mdの一部を底面に開口する開口部とを層間絶縁膜61に形成する。さらに、これらの開口部の形成と同時に、図2(c)に示すように、フローティングゲートFG1と重ならない領域におけるコントロールゲートCG1の一部を底面に開口する開口部を層間絶縁膜61に形成する。
【0138】
次に、図2(a)に示すように、コンタクト層13a,13b上の開口部に金属材料で形成されたプラグ51a,51bを埋め込む。図2(b)に示すように、プラグ51a,51bの埋め込みと同時に、第2ドレイン層13vd,13md上の開口部に金属材料で形成されたプラグ51vd,51mdを埋め込み、ソース層13vs,13ms上の開口部に金属材料で形成されたプラグ51vs,51msを埋め込む。図2(c)に示すように、プラグ51a,51bの埋め込みと同時に、コントロールゲートCG1上の開口部に金属材料で形成されたプラグ51gを埋め込む。
【0139】
次に、図2(a)に示すように、層間絶縁膜61上に露出するプラグ51a上にメタル配線52aを形成し、層間絶縁膜61上に露出するプラグ51b上にメタル配線52bを形成する。これにより、書込用素子Mw1が完成する。また、メタル配線52a,52bの形成と同時に、図2(b)に示すように、層間絶縁膜61上に露出するプラグ51vs上にメタル配線52vsを形成し、層間絶縁膜61上に露出するプラグ51vd上にメタル配線52vdを形成する。これにより、駆動用素子Mv1が完成する。また、メタル配線52a,52bの形成と同時に、図2(b)に示すように、層間絶縁膜61上に露出するプラグ51ms上にメタル配線52msを形成し、層間絶縁膜61上に露出するプラグ51md上にメタル配線52mdを形成する。これにより、ダミー素子Mm1が完成する。さらに、メタル配線52a,52bの形成と同時に、図2(c)に示すように、層間絶縁膜61上に露出するプラグ51g上にメタル配線52gを形成する。こうして、書込用素子Mw1、駆動用素子Mv1及びダミー素子Mm1を備える不揮発性記憶素子M1が完成する。
【0140】
(不揮発性記憶素子を備える基準電圧生成回路)
次に、本実施形態による不揮発性記憶素子M1を備えるアナログ回路の一例として、基準電圧生成回路について図19から図22を用いて説明する。不揮発性記憶素子M1が適用されるアナログ回路は、不揮発性記憶素子M1をアナログ的に使用する回路であれば、基準電圧生成回路に限られない。例えば、オペアンプ回路やコンパレータ回路等、MOSFETの閾値電圧に精度が必要なアナログ回路にも有効である。
【0141】
次に、基準電圧生成回路RC3の回路構成について図19を用いて説明する。
図19に示すように、本実施形態における基準電圧生成回路RC3は、直列に接続された不揮発性記憶素子M31及び不揮発性記憶素子M33を備えている。不揮発性記憶素子M31および不揮発性記憶素子M33はそれぞれ、図1及び図2に示す本実施形態による不揮発性記憶素子M1と同一の構成を有している。不揮発性記憶素子M31は、書込用素子Mw31、駆動用素子Mv31及びダミー素子Mm31を備えている。不揮発性記憶素子M33は、書込用素子Mw33、駆動用素子Mv33及びダミー素子Mm33を備えている。書込用素子Mw31及び書込用素子Mw33は、図1及び図2(a)に示す書込用素子Mw1と同一の構成を有している。駆動用素子Mv31及び駆動用素子Mv33は、図1及び図2(b)に示す駆動用素子Mv1と同一の構成を有している。ダミー素子Mm31及びダミー素子Mm33は、図1及び図2(c)に示すダミー素子Mm1と同一の構成を有している。
【0142】
駆動用素子Mv31のコントロールゲートCG1、ダミー素子Mm31のコントロールゲートCG1及び書込用素子Mw31のコントロールゲートCG1は、一続きに形成されて共有化されている。また、駆動用素子Mv31のフローティングゲートFG1、ダミー素子Mm31のフローティングゲートFG1及び書込用素子Mw31のフローティングゲートFG1は、一続きに形成されて共有化されている。書込用素子Mw31に設けられた電荷注入口14は、駆動用素子Mv31に形成される電流経路に接していない領域に形成されている。また、書込用素子Mw31に設けられた電荷注入口14は、ダミー素子Mm31に形成される電流経路に接していない領域に形成されている。書込用素子Mw31に設けられた電荷注入口14は、駆動用素子Mv31のドレイン領域Dv1及びソース領域Sv1を含む電流パス(電流経路)とは接していない領域に形成されている。また、書込用素子Mw31に設けられた電荷注入口14は、ダミー素子Mm31のドレイン領域Dm1及びソース領域Sm1を含む電流パス(電流経路)とは接していない領域に形成されている。
【0143】
駆動用素子Mv33のコントロールゲートCG1、ダミー素子Mm33のコントロールゲートCG1及び書込用素子Mw33のコントロールゲートCG1は、一続きに形成されて共有化されている。また、駆動用素子Mv33のフローティングゲートFG1、ダミー素子Mm33のコントロールゲートCG1及び書込用素子Mw33のフローティングゲートFG1は、一続きに形成されて共有化されている。書込用素子Mw33に設けられた電荷注入口14は、駆動用素子Mv33に形成される電流経路に接していない領域に形成されている。また、書込用素子Mw33に設けられた電荷注入口14は、ダミー素子Mm33に形成される電流経路に接していない領域に形成されている。書込用素子Mw33に設けられた電荷注入口14は、駆動用素子Mv33のドレイン領域Dv1及びソース領域Sv1を含む電流パス(電流経路)とは接していない領域に形成されている。また、書込用素子Mw33に設けられた電荷注入口14は、ダミー素子Mm33のドレイン領域Dm1及びソース領域Sm1を含む電流パス(電流経路)とは接していない領域に形成されている。
【0144】
基準電圧生成回路RC3が他の回路と動作する場合、駆動用素子Mv31と駆動用素子Mv33とは、駆動用電源端子Vdd1と低電圧供給端子Vssとの間で直列に接続される。より具体的には、駆動用素子Mv31のドレイン領域Dv1は駆動用電源端子Vdd1に接続される。駆動用素子Mv33のソース領域Sv1は低電圧供給端子Vssに接続されている。駆動用素子Mv31のソース領域Sv1と駆動用素子Mv33のドレイン領域Dv1とは接続されている。
【0145】
基準電圧生成回路RC3においてダミー素子Mm31は、使用されずフローティング状態となっている。このため、基準電圧生成回路RC3が他の回路と動作する場合に、ダミー素子Mm31のソース領域Sm1及びドレイン領域Dm1のいずれも、駆動用電源端子Vdd1及び低電圧供給端子Vssのいずれにも接続されていない。
【0146】
基準電圧生成回路RC3においてダミー素子Mm33は、使用されずフローティング状態となっている。このため、基準電圧生成回路RC3が他の回路と動作する場合に、ダミー素子Mm33のソース領域Sm1及びドレイン領域Dm1のいずれも、駆動用電源端子Vdd1及び低電圧供給端子Vssのいずれにも接続されていない。
【0147】
書込用素子Mw31は、フローティングゲートFG1の下方に一部が配置された第一不純物拡散領域IAaを備えている。基準電圧生成回路RC3は、書込用素子Mw31の第一不純物拡散領域IAaに一端子が接続されたスイッチSW31を備えている。スイッチSW31の他端子の1つは低電圧供給端子Vssに接続され、スイッチSW31の他端子の他の1つはパルス電圧Vppの印加端子に接続されている。基準電圧生成回路RC3は、スイッチSW31を適宜切り替えることにより、低電圧Vssおよびパルス電圧Vppのいずれか一方を書込用素子Mw31の第一不純物拡散領域IAaに印加できるようになっている。書込用素子Mw11の第二不純物拡散領域IAbは、所定のスイッチが接続されずにフローティング状態となっている。
【0148】
書込用素子Mw33は、フローティングゲートFG1の下方に一部が配置された第一不純物拡散領域IAaを備えている。基準電圧生成回路RC3は、書込用素子Mw33の第一不純物拡散領域IAaに一端子が接続されたスイッチSW32を備えている。スイッチSW32の他端子の1つは低電圧供給端子Vssに接続され、スイッチSW32の他端子の他の1つはパルス電圧Vppの印加端子に接続されている。基準電圧生成回路RC3は、スイッチSW32を適宜切り替えることにより、低電圧Vssおよびパルス電圧Vppのいずれか一方を書込用素子Mw33の第一不純物拡散領域IAaに印加できるようになっている。書込用素子Mw33の第二不純物拡散領域IAbは、所定のスイッチが接続されずにフローティング状態となっている。
【0149】
基準電圧生成回路RC3は、書込用素子Mw31のコントロールゲートCG1と書込用素子Mw33のコントロールゲートCG1との間に直列接続されたスイッチSW35及びスイッチSW37を備えている。スイッチSW35及びスイッチSW37のそれぞれの他端子は互いに接続されている。スイッチSW35及びスイッチSW37のそれぞれの他端子は、駆動用素子Mv31のソース領域Sv1及び駆動用素子Mv33のドレイン領域Dv1が互いに接続された接続部に接続されている。基準電圧生成回路RC3は、当該接続部に絶属されて基準電圧VREFが出力される電圧出力端子OUTを備えている。
【0150】
基準電圧生成回路RC3は、書込用素子Mw31のコントロールゲートCG1に接続された一端子を有するスイッチSW33と、スイッチSW33の他端子に一端子が接続されたスイッチSW39とを備えている。スイッチSW39の他端子の1つはパルス電圧Vppの印加端子に接続され、スイッチSW39の他端子の他の1つは低電圧供給端子Vssに接続されている。基準電圧生成回路RC3は、スイッチSW33が接続状態(ショート状態)のときにスイッチSW39を適宜切り替えることにより、パルス電圧Vpp及び低電圧Vssのいずれか一方を書込用素子Mw31のコントロールゲートCG1に印加できるようになっている。
【0151】
基準電圧生成回路RC3は、書込用素子Mw33のコントロールゲートCG1に接続された一端子を有するスイッチSW34と、スイッチSW34の他端子に一端子が接続されたスイッチSW30とを備えている。スイッチSW30の他端子の1つはパルス電圧Vppの印加端子に接続され、スイッチSW30の他端子の他の1つは低電圧供給端子Vssに接続されている。基準電圧生成回路RC3は、スイッチSW34が接続状態(ショート状態)のときにスイッチSW30を適宜切り替えることにより、パルス電圧Vpp及び低電圧Vssのいずれか一方を書込用素子Mw33のコントロールゲートCG1に印加できるようになっている。
【0152】
書込用素子Mw31は、駆動用素子Mv31及びダミー素子Mm31のフローティングゲートFG1への電荷注入のために存在する領域であり、トランジスタとして電流を流さない。同様に、書込用素子Mw33は、駆動用素子Mv33及びダミー素子Mm33のフローティングゲートFG2への電荷注入のために存在する領域であり、トランジスタとして電流を流さない。そのため、書込用素子Mw31及び書込用素子Mw33は、ソース領域やドレイン領域を有している必要はなく、電荷注入口をもった構造であればその形態は問わない。
【0153】
次に、基準電圧生成回路RC3の閾値電圧の調整方法について図19を参照しつつ図20及び図21を用いて説明する。
図20及び図21に示すように、基準電圧生成回路RC3は、フローティングゲートFG1に電荷を注入したりフローティングゲートFG1から電荷を放出したりする場合には、駆動用電源端子Vdd1に代えて高電圧供給端子Vddに接続される。基準電圧生成回路RC3では、電荷注入時には、書込用素子Mw31,Mw33を通ってフローティングゲートFG1に電荷が注入される。図19に示すように、基準電圧生成回路RC3を動作させる時には駆動用素子Mv31、Mv33を通って電流が流れる。基準電圧生成回路RC3では、不揮発性記憶素子M31側(すなわち書込用素子Mw31、駆動用素子Mv31及びダミー素子Mm31)がディプレッション状態、不揮発性記憶素子M33側(すなわち書込用素子Mw33、駆動用素子Mv33及びダミー素子Mm33)がエンハンスメント状態である。
【0154】
図19に示すように、基準電圧生成回路RC3は、基準電圧VREFを生成するときには、スイッチSW30~SW35,SW37,SW39を次のような状態に切り替える。
スイッチSW30:任意(図19では低電圧供給端子Vss側)
スイッチSW31:低電圧供給端子Vss側
スイッチSW32:低電圧供給端子Vss側
スイッチSW33:接続状態(ショート状態)
スイッチSW34,SW35:開放状態(オープン状態)
スイッチSW37:接続状態(ショート状態)
スイッチSW39:低電圧供給端子Vss側
【0155】
図20に示すように、基準電圧生成回路RC3は、不揮発性記憶素子M31側(すなわち書込用素子Mw31、駆動用素子Mv31及びダミー素子Mm31)をディプレッション状態にするための書き換え時には、スイッチSW30~SW35,SW37,SW39を次のような状態に切り替える。ここでは、不揮発性記憶素子M31側の調整前の閾値電圧が調整後の閾値電圧よりも高い場合を例に取っている。
スイッチSW30:任意(図20では低電圧供給端子Vss側)
スイッチSW31:パルス電圧Vpp側
スイッチSW32:低電圧供給端子Vss側
スイッチSW33:接続状態(ショート状態)
スイッチSW34:開放状態(オープン状態)
スイッチSW35,SW37:開放状態(オープン状態)
スイッチSW39:低電圧供給端子Vss側
【0156】
このため、書込用素子Mw31の第一不純物拡散領域IAaにパルス電圧Vppが印加され、コントロールゲートCG1に低電圧Vssが印加されるので、トンネル絶縁膜が形成された領域に構成される電荷注入口14を介してフローティングゲートFG1から第一不純物拡散領域IAaに電子が放出される。これにより、書込用素子Mw31の閾値電圧が低くなる。逆に、書込用素子Mw31の第一不純物拡散領域IAaに低電圧Vssが印加され、コントロールゲートCG1にパルス電圧Vppが印加された場合は、電荷注入口14を介して第一不純物拡散領域IAaからフローティングゲートFG1に電子が注入される。これにより、書込用素子Mw31の閾値電圧が高くなる。コントロールゲートCG1及びフローティングゲートFG1は、書込用素子Mw31、駆動用素子Mv31及びダミー素子Mm31で共有されている。このため、駆動用素子Mv31及びダミー素子Mm31のそれぞれは、書込用素子Mw31と同じ閾値電圧となる。
【0157】
図21に示すように、基準電圧生成回路RC3は、不揮発性記憶素子M33側(すなわち書込用素子Mw33、駆動用素子Mv33及びダミー素子Mm33)をエンハンスメント状態にするための書き換え時には、スイッチSW30~SW35,SW37,SW39を次のような状態に切り替える。ここでは、不揮発性記憶素子M33側の調整前の閾値電圧が調整後の閾値電圧よりも低い場合を例に取っている。
スイッチSW30: パルス電圧Vpp側
スイッチSW31:低電圧供給端子Vss側
スイッチSW32:低電圧供給端子Vss側
スイッチSW33:開放状態(オープン状態)
スイッチSW34:接続状態(ショート状態)
スイッチSW35,SW37:開放状態(オープン状態)
スイッチSW39:任意(図21では低電圧供給端子Vss側)
【0158】
このため、書込用素子Mw33の第一不純物拡散領域IAaに低電圧Vssが印加され、コントロールゲートCG1にパルス電圧Vppが印加されるので、トンネル絶縁膜が形成された領域に構成される電荷注入口14を介して第一不純物拡散領域IAaからフローティングゲートFG1に電子が注入される。これにより、書込用素子Mw33の閾値電圧が高くなる。逆に、書込用素子Mw33の第一不純物拡散領域IAaにパルス電圧Vppが印加され、コントロールゲートCG1に低電圧Vssが印加された場合は、電荷注入口14を介してフローティングゲートFG1から第一不純物拡散領域IAaに電子が放出される。これにより、書込用素子Mw33の閾値電圧が低くなる。コントロールゲートCG1及びフローティングゲートFG1は、書込用素子Mw33、駆動用素子Mv33及びダミー素子Mm33で共有されている。このため、駆動用素子Mv33及びダミー素子Mm33のそれぞれは、書込用素子Mw33と同じ閾値電圧となる。
【0159】
当然であるが、本実施形態では、基準電圧生成回路RC3を構成するMOSFET、すなわちトランジスタとして、同一種類の不揮発性記憶素子を用いている。このため、基準電圧生成回路RC3において、2つのトランジスタでコンダクタンスや温度特性を同一にすることができ、理想的な平行移動した2つのトランジスタの特性を得ることができる。
【0160】
図22は、ディプレッション型トランジスタおよびエンハンスメント型トランジスタの電流/電圧特性の一例である。横軸は、コントロールゲートとソース領域との間のゲートソース間電圧Vgsを示し、縦軸は、ドレイン電流Idsを示している。「Md」は、ディプレッション型トランジスタの電流/電圧特性を示し、「Me」は、エンハンスメント型トランジスタの電流/電圧特性を示している。ディプレッション型トランジスタMdは、ゲートソース間電圧Vgsが0Vで固定されているため、ドレイン領域とソース領域との間のドレインソース間電圧が飽和領域である限り、定電流Iconstのドレイン電流を流す。ディプレッション型トランジスタMdに直列に接続されたエンハンスメント型トランジスタMeにも定電流Iconstのドレイン電流が流れる。したがって、Ids=Iconstとなるエンハンスメント型トランジスタMeのゲートソース間電圧Vgsが基準電圧Vref(すなわち、基準電圧VREF)として電圧出力端子OUTから取り出せる。
【0161】
ディプレッション型トランジスタMdの閾値電圧をVth_d、エンハンスメント型トランジスタMeの閾値電圧をVth_eと表すと、基準電圧Vrefは、閾値電圧Vth_dの絶対値および閾値電圧Vth_eの絶対値の和、すなわち「Vref=|Vth_d|+|Vth_e|」と表すことができる。
【0162】
図22に示す平行移動した2つのトランジスタの電流/電圧特性は、ディプレッション型トランジスタおよびエンハンスメント型トランジスタに別の種類のトランジスタを使用して構成されている場合には、コンダクタンスや温度特性がトランジスタごとに異なるため、厳密に実現できない。すなわち、従来の基準電圧生成回路では、電圧出力端子から取り出される基準電圧にも温度特性が発生してしまう。これに対し、同一種類の不揮発性記憶素子を用いた本実施形態における基準電圧生成回路では、製造バラツキも温度特性もない基準電圧Vrefを得ることができる。また、エンハンスメント型トランジスタの閾値電圧Vth_eを調整することによって、取り出す基準電圧Vrefを任意の値に設定できることは利点の1つとなる。さらに、ディプレッション型トランジスタの閾値電圧Vth_dを調整することによって、基準電圧生成回路に流す電流量を任意の値に設定できることも利点の1つとなる。
【0163】
また、ディプレッション型トランジスタMdの閾値電圧Vth_d及びエンハンスメント型トランジスタMeの閾値電圧Vth_eの少なくとも一方を適宜調整することにより、基準電圧Vrefを調整することができる。例えば、エンハンスメント型トランジスタMeの閾値電圧Vth_eを固定した状態で、ディプレッション型トランジスタMdの閾値電圧Vth_dを高くすると、定電流Iconstの電流値が大きくなるので、基準電圧Vrefも高くなる。また例えば、エンハンスメント型トランジスタMeの閾値電圧Vth_eを固定した状態で、ディプレッション型トランジスタMdの閾値電圧Vth_dを高くすると、定電流Iconstの電流値が小さくなるので、基準電圧Vrefも低くなる。また例えば、ディプレッション型トランジスタMdの閾値電圧Vth_dを固定した状態で、エンハンスメント型トランジスタMeの閾値電圧Vth_eを低くすると、定電流Iconstの電流値に変化はないものの、基準電圧Vrefは低くなる。さらに例えば、ディプレッション型トランジスタMdの閾値電圧Vth_dを固定した状態で、エンハンスメント型トランジスタMeの閾値電圧Vth_eを高くすると、定電流Iconstの電流値に変化はないものの、基準電圧Vrefは高くなる。
【0164】
以上説明したように、本実施形態によれば、素子のレイアウトにフレキシブル性を持たせながら、高い電荷保持特性を有する不揮発性記憶素子を実現できる。このため、電気特性の劣化が効果的に抑制され、かつ製造バラツキの影響が極めて小さい高精度なアナログ回路を実現できる。また、本実施形態によれば、電気特性のバラツキを低減できる。優れた電荷保持特性を有する不揮発性記憶素子およびそれを備えるアナログ回路を実現できる。
【0165】
また、本実施形態における基準電圧生成回路RC3は、図1及び図2に示す構成の不揮発性記憶素子M1を備えることにより、電荷注入時および電荷放出時の電流経路と、基準電圧生成回路RC3の動作時(他の回路を駆動する駆動時)の電流経路とを分離できる。これにより、基準電圧生成回路RC3は、不揮発性記憶素子の予期せぬ書き換えを防止し、信頼性の向上を図ることができる。
【0166】
本実施形態による不揮発性記憶素子M1は、半導体基板9Aと、半導体基板9Aの上方に設けられたフローティングゲートFG1と、フローティングゲートFG1の上方にフローティングゲートFG1と絶縁して配置されたコントロールゲートCG2とを有する書込用素子Mw1及び駆動用素子Mv1を備えている。書込用素子Mw1は、半導体基板9A内に設けられ一部がフローティングゲートFG1の下方に配置された第一不純物拡散領域IAaと、フローティングゲートFG1と第一不純物拡散領域IAaとの間に少なくとも一部が配置されフローティングゲートFG1に対する面積比が0.002以上1以下であるトンネル絶縁膜25とを有している。また、駆動用素子Mv1は、半導体基板9A内に設けられ第一不純物拡散領域IAaと電気的に分離して形成されたドレイン領域D1と、半導体基板9A内に設けられたソース領域S1とを有している。
【0167】
このような構成を備えた不揮発性記憶素子M1によれば、第1モードのリテンション劣化及び第2モードのリテンション劣化を抑制することができる。
【0168】
また、本実施形態による不揮発性記憶素子M1は、30μm以上の面積を有するフローティングゲートFG1を備えている。これにより、本実施形態による不揮発性記憶素子M1は、基準電圧発生回路などのアナログ回路に好適なMOSFETとして使用することができる。本実施形態による不揮発性記憶素子M1を備えるアナログ回路は、リテンション劣化による特性変動が抑制され、製造バラツキや温度特性の影響を低減することができる。さらに、不揮発性記憶素子M1は、当該アナログ回路の動作時にフローティングゲートFG1への電荷注入やフローティングゲートFG1からの電荷放出が起こらない。これにより、不揮発性記憶素子M1は、当該アナログ回路のリテンション劣化による特性変動をより抑制し易くなる。
【0169】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態による不揮発性記憶素子について図23から図26を用いて説明する。まず、本実施形態による不揮発性記憶素子M2の概略構成について図23を用いて説明する。
【0170】
図23に示すように、本実施形態による不揮発性記憶素子M2は、上記第1実施形態による不揮発性記憶素子M1と同様にFLOTOX型の構造を有している。本実施形態による不揮発性記憶素子M2は、FLOTOX型に限られず、電荷保持領域を持つ能動素子(トランジスタ)であれば、他の構造を有していてもよい。不揮発性記憶素子M2は、例えばP型の半導体基板9Bに形成された素子分離領域42によって、同一の半導体基板9Bに形成された他の不揮発性記憶素子(不図示)と素子分離されている。不揮発性記憶素子M2は、同一の半導体基板9Bに形成された書込用素子Mw2及び駆動用素子(駆動用MOSFETの一例)Mv2を備えている。図23(a)に示すように、書込用素子Mw2と駆動用素子Mv2は、隣り合って配置されている。
【0171】
図23(b)に示すように、不揮発性記憶素子M2に備えられた書込用素子Mw2は、半導体基板9Bと、半導体基板9B上に設けられたゲート絶縁膜26wとを備えている。半導体基板9Bには、Pウェル領域10Bが形成されている。ゲート絶縁膜26wは、二酸化シリコン(SiO)で形成され、Pウェル領域10B上に配置されている。ゲート絶縁膜26wは、二酸化シリコンに限られず、窒化シリコン(SiN)で形成されていてもよい。
【0172】
書込用素子Mw2は、半導体基板9Bの上方に設けられたフローティングゲートFG2を備えている。フローティングゲートFG2の一部は、ゲート絶縁膜26w上に配置されている。フローティングゲートFG2は、ポリシリコンで形成されている。図23(a)に示す不揮発性記憶素子M2の平面視において、フローティングゲートFG2の全体は、30μm以上27000μm以下の面積を有している。ここで、「フローティングゲートFG2の全体」は、1つの不揮発性記憶素子M2に設けられたフローティングゲートを意味し、書込用素子Mw2が設けられた箇所及び駆動用素子Mv2が設けられた箇所などの所定箇所のフローティングゲートを意味しない。したがって、「フローティングゲートFG2の全体」は、駆動用素子Mv2が設けられた箇所の「フローティングゲートFG12の特定領域PA」(詳細は後述)とは区別される。以下、「フローティングゲートFG2の特定領域PA」のように限定しない限り、「フローティングゲートFG2」は、「フローティングゲートFG2の全体」を意味する。フローティングゲートFG2の面積の下限値は、デジタルデータを記憶するメモリとして不揮発性記憶素子が使用される場合との差別化のために規定されている。本実施形態におけるフローティングゲートFG2の面積は、不揮発性記憶素子M2の平面視において、例えば590μmである。ここで、平面視とは、ゲート絶縁膜26wやフローティングゲートFG2などが形成された半導体基板9Bの平面(素子形成面)を直交する方向に見た状態をいう。本実施形態におけるフローティングゲートFG2は、不揮発性記憶素子M2の平面視においてL字形状を有しているが、L字形状に限らず他の形状を有していてもよい。
【0173】
書込用素子Mw2は、フローティングゲートFG2の上方にフローティングゲートFG2と絶縁して配置されたコントロールゲートCG2を備えている。コントロールゲートCG2は、例えばポリシリコンで形成されている。コントロールゲートCG2は、不揮発性記憶素子M2の平面視において、フローティングゲートFG2よりも小さい面積を有している。コントロールゲートCG2は、不揮発性記憶素子M2の平面視において、フローティングゲートFG2と同じ形状であって寸法が一回り小さい形状を有しているが、フローティングゲートFG2上に少なくとも一部が配置されていれば他の形状を有していてもよい。例えば、コントロールゲートCG2は、不揮発性記憶素子M2の平面視において、フローティングゲートFG2から外側にはみ出した形状であっても良い。このとき、コントロールゲートCG2に電圧を印加するためのコンタクト用のプラグ(詳細は後述)を、フローティングゲートFG2から外側にはみ出したコントロールゲートCG2の一部領域に形成しても良い。
【0174】
書込用素子Mw2は、半導体基板9B内に設けられ一部がフローティングゲートFG2の下方の一部に配置された不純物拡散領域(第一領域の一例)IAを備えている。不純物拡散領域IAは、Pウェル領域10Bに設けられている。
【0175】
不純物拡散領域IAは、拡散層21aと、N型のLDD層22aと、LDD層22aよりも不純物濃度が高濃度のコンタクト層23aとを有している。コンタクト層23aは、LDD層22aに設けられている。コンタクト層23aは、不純物拡散領域IAとプラグ53a(詳細は後述)とのオーミック接触を取るために設けられている。不純物拡散領域IAは、不揮発性記憶素子M2の平面視で、フローティングゲートFG2の下方の一部及び側方(両側の一方)の一部に跨って設けられている(図23(a)参照)。拡散層21aは、フローティングゲートFG2の下方の一部に設けられ、LDD層22a及びコンタクト層23aは、フローティングゲートFG2の側方の一部に設けられている。
【0176】
書込用素子Mw2は、フローティングゲートFG2と不純物拡散領域IAとの間に少なくとも一部が配置されてフローティングゲートFG2に対する面積比が0.002以上1以下であるトンネル絶縁膜25を備えている。本実施形態では、トンネル絶縁膜25の全体がフローティングゲートFG2と拡散層21aとの間に配置されている。トンネル絶縁膜25は、不揮発性記憶素子M2の平面視において、フローティングゲートFG2よりも小さく形成される。トンネル絶縁膜25の面積は、不揮発性記憶素子M2の平面視において、0.06μm以上54μm以下である。本実施形態におけるトンネル絶縁膜25の面積は、例えば25.2μmである。したがって、本実施形態では、フローティングゲートFG2の面積に対するトンネル絶縁膜25の面積の比率(面積比)、すなわちトンネル絶縁膜25の面積をフローティングゲートFG2の面積で除して求められる値は、0.043である。不揮発性記憶素子M2は、フローティングゲートFG2の面積(例えば590μm)に対するトンネル絶縁膜25の面積比が0.043であって0.002よりも大きいので、上記第1実施形態において説明したように、第1モードのリテンション劣化を改善することができる。
【0177】
FNトンネリングによってフローティングゲートFG2に電荷を注入したりフローティングゲートFG2から電荷を引き抜いたりする書き込みを行うため、トンネル絶縁膜25は7~12nmの厚さに形成されている。本実施形態では、トンネル絶縁膜25の膜厚は、例えば9.8nmである。トンネル絶縁膜25の膜厚が7~12nmであると、7nm未満の場合と比較して、電荷の直接トンネリングが起こりにくくなり、フローティングゲートFG2内に電荷を保持し易くなる。一方、トンネル絶縁膜25の膜厚が7~12nmであると、12nmより膜厚が厚い場合と比較して、フローティングゲートFG2への電荷の注入及びフローティングゲートFG2からの電荷の引き抜きを高速化することができる。トンネル絶縁膜25は、ゲート絶縁膜26wよりも膜厚が薄く形成されている。トンネル絶縁膜25に対応するフローティングゲートFG2の領域が、フローティングゲートFG2に電荷を注入したりフローティングゲートFG2から電荷を放出したりする電荷注入口24となる。つまり、フローティングゲートFG2は、電荷を注入したり電荷を放出したりするための電荷注入口24を有し、電荷保持領域として機能する。
【0178】
図23(c)に示すように、不揮発性記憶素子M2に備えられた駆動用素子Mv2は、半導体基板9Bと、半導体基板9B上に設けられたゲート絶縁膜26vとを備えている。本実施形態では、駆動用素子Mv2のゲート絶縁膜26vは、書込用素子Mw2のゲート絶縁膜26wと素子分離領域42で分離されて形成されている。なお、駆動用素子Mv2のゲート絶縁膜26v及び書込用素子Mw2のゲート絶縁膜26wは一続きに形成されて共有されていてもよい。ゲート絶縁膜26v及びゲート絶縁膜26wは、駆動用素子Mv2及び書込用素子Mw2の形成領域に同一の製造工程において同時に同材料で形成される。
【0179】
駆動用素子Mv2は、ゲート絶縁膜26v上に配置されたフローティングゲートFG2を備えている。ゲート絶縁膜26vと同様に、フローティングゲートFG2は、駆動用素子Mv2及び書込用素子Mw2で一続きに形成されて共有されている。しかしながら、フローティングゲートFG2は、駆動用素子Mv2及び書込用素子Mw2で分離されていてもよい。フローティングゲートが分離されている場合には、駆動用素子Mv2のフローティングゲート及び書込用素子Mw2のフローティングゲートは、同一の電圧が印加されるために、例えばプラグ及びメタル配線で電気的に接続されている必要がある。フローティングゲートFG2は、駆動用素子Mv2及び書込用素子Mw2の形成領域に同一の製造工程において同時に同材料で形成される。
【0180】
駆動用素子Mv2におけるゲート絶縁膜26vは、駆動用素子Mv2が設けられた箇所(すなわち、特定領域PA)におけるフローティングゲートFG2と半導体基板9Bとの間に配置され、トンネル絶縁膜25よりも厚い膜厚を有している。駆動用素子Mv2におけるゲート絶縁膜26vは、ほぼ一定の膜厚を有している。駆動用素子Mv2におけるゲート絶縁膜26vが形成された領域には、トンネル絶縁膜が設けられていない。このため、駆動用素子Mv2におけるゲート絶縁膜26vがフローティングゲートFG2に接触する面は、平坦な形状を有している。
【0181】
ところで、本実施形態におけるトンネル絶縁膜25は、上記第1実施形態におけるトンネル絶縁膜25と同様に、ゲート絶縁膜26wを形成するための絶縁膜が開口された開口部に形成される。このため、書込用素子Mw2におけるゲート絶縁膜26wは、トンネル絶縁膜25が設けられた領域の開口部によって段差を有する。したがって、駆動用素子Mv2におけるゲート絶縁膜26vは、書込用素子Mw2におけるゲート絶縁膜26wよりもフローティングゲートFG2との接触面が平坦になる。
【0182】
駆動用素子Mv2は、半導体基板9B内に設けられたソース領域S2と、半導体基板9B内に設けられ不純物拡散領域IAと電気的に分離して形成されたドレイン領域(第二領域の一例)D2とを備えている。ソース領域S2及びドレイン領域D2は、Pウェル領域10Bに設けられている。ドレイン領域D2とソース領域S2は電流の流れる方向によって定義される。このため、図23に示す駆動用素子Mv2において想定されている電流に対して電流を流す方向を逆にした場合は、図23中に示すドレイン領域D2がソース領域S2となり、ソース領域S2がドレイン領域D2となる。
【0183】
ソース領域S2は、不揮発性記憶素子M2の平面視で、フローティングゲートFG2の側方(両側の一方)の一部に設けられている(図23(a)参照)。ソース領域S2は、N型のLDD層22sと、LDD層22sよりも不純物濃度が高濃度のソース層23sとを有している。ソース層23sは、LDD層22sに設けられている。ソース層23sは、ソース領域S2とプラグ53s(詳細は後述)とのオーミック接触を取るために設けられている。
【0184】
ドレイン領域D2は、N型のLDD層22dと、LDD層22dよりも不純物濃度が高濃度のドレイン層23dとを有している。ドレイン層23dは、LDD層22dに設けられている。ドレイン層23dは、ドレイン領域D2とプラグ53d(詳細は後述)とのオーミック接触を取るために設けられている。ドレイン領域D2は、不揮発性記憶素子M2の平面視で、フローティングゲートFG2の側方(両側の他方)の一部に設けられている(図23(a)参照)。ソース領域S2及びドレイン領域D2は、不揮発性記憶素子M2の平面視で、フローティングゲートFG2を挟んで設けられている。
【0185】
図23(b)及び図23(c)に示すように、不揮発性記憶素子M2は、フローティングゲートFG2上に配置された絶縁膜27と、絶縁膜27の周りに形成されたサイドウォール28とを備えている。コントロールゲートCG2は、絶縁膜27上に形成されている。フローティングゲートFG2及びコントロールゲートCG2は、絶縁膜27によって絶縁されている。絶縁膜27は、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とを組み合わせて構成され、酸化物/窒化物/酸化物(ONO)構造を有している。絶縁膜27は、フローティングゲートFG2の上面及び側面と、ゲート絶縁膜26w,26vの側面とを覆って設けられている。絶縁膜27及びサイドウォール28は、駆動用素子Mv2及び書込用素子Mw2で一続きに形成されて共有されている。しかしながら、絶縁膜27及びサイドウォール28の少なくとも一方は、駆動用素子Mv2及び書込用素子Mw2で分離されていてもよい。絶縁膜27及びサイドウォール28はそれぞれ、駆動用素子Mv2及び書込用素子Mw2の形成領域に同一の製造工程において同時に同材料で形成される。
【0186】
絶縁膜27は、書込用素子Mw2及び駆動用素子Mv2に亘ってフローティングゲートFG2を覆って配置されている。サイドウォール28は、書込用素子Mw2及び駆動用素子Mv2に亘って絶縁膜27の側壁の段差部に絶縁膜27を囲んで配置されている。このため、書込用素子Mw2及び駆動用素子Mv2はそれぞれ、絶縁膜27及びサイドウォール28を有している。
【0187】
不揮発性記憶素子M2は、ゲート絶縁膜26w,26v、トンネル絶縁膜25及び絶縁膜27の少なくとも一部に分布するハロゲン(例えばフッ素)を有している。本実施形態では、ゲート絶縁膜26w,26v、トンネル絶縁膜25及び絶縁膜27のいずれにもハロゲンが含まれている。トンネル絶縁膜25がハロゲン(例えばフッ素)を含むことにより、トンネル絶縁膜25の欠陥密度が低減する。
【0188】
不揮発性記憶素子M2は、絶縁膜27上に配置されたコントロールゲートCG2と、コントロールゲートCG2の周りに形成されたサイドウォール29とを備えている。コントロールゲートCG2及びサイドウォール29は、駆動用素子Mv2及び書込用素子Mw2で一続きに形成されて共有されている。しかしながら、コントロールゲートCG2及びサイドウォール29の少なくとも一方は、駆動用素子Mv2及び書込用素子Mw2で分離されていてもよい。コントロールゲートが分離されている場合には、駆動用素子Mv2のコントロールゲート及び書込用素子Mw2のコントロールゲートは、同一の電圧が印加されるために、例えばプラグ及びメタル配線で電気的に接続されている必要がある。コントロールゲートCG2及びサイドウォール29はそれぞれ、駆動用素子Mv2及び書込用素子Mw2の形成領域に同一の製造工程において同時に同材料で形成される。
【0189】
不揮発性記憶素子M2は、コントロールゲートCG2、半導体基板9Bの素子形成面上に形成された層間絶縁膜62を備えている。層間絶縁膜62は、絶縁膜27、サイドウォール28,29、ソース領域S2、ドレイン領域D2及び素子分離領域42が設けられた領域に少なくとも形成されている。層間絶縁膜62は、駆動用素子Mv2及び書込用素子Mw2で一続きに形成されて共有されている。層間絶縁膜62は、コントロールゲートCG2、不純物拡散領域IA、ドレイン領域D2及びソース領域S2などを保護する保護膜としての機能を発揮する。
【0190】
不揮発性記憶素子M2は、コントロールゲートCG2の一部を底面に露出し層間絶縁膜62に形成された開口部に埋め込まれたプラグ53gと、プラグ53gに電気的に接続され層間絶縁膜62上に形成されたメタル配線54gとを備えている。プラグ53gを介してメタル配線54gとコントロールゲートCG2とが電気的に接続される。これにより、コントロールゲートCG2には、メタル配線54gからプラグ53gを介して所定レベルの電圧を印加することが可能になる。
【0191】
駆動用素子Mv2は、ソース層23sの一部を底面に露出し層間絶縁膜62に形成された開口部に埋め込まれたプラグ53sと、プラグ53sに電気的に接続され層間絶縁膜62上に形成されたメタル配線54sとを備えている。プラグ53sを介してメタル配線54sとソース領域S2とが電気的に接続される。これにより、ソース領域S2には、メタル配線54sからプラグ53sを介して所定レベルの電圧を印加することが可能になる。
【0192】
駆動用素子Mv2は、第2ドレイン層73dの一部を底面に露出し層間絶縁膜62に形成された開口部に埋め込まれたプラグ53dと、プラグ53dに電気的に接続され層間絶縁膜62上に形成されたメタル配線54dとを備えている。プラグ53dを介してメタル配線54dとドレイン領域D2とが電気的に接続される。これにより、ドレイン領域D2には、メタル配線54dからプラグ53dを介して所定レベルの電圧を印加することが可能になる。
【0193】
書込用素子Mw2は、コンタクト層23aの一部を底面に露出し層間絶縁膜62に形成された開口部に埋め込まれたプラグ53aと、プラグ53aに電気的に接続され層間絶縁膜62上に形成されたメタル配線54aとを備えている。プラグ53aを介してメタル配線54aと不純物拡散領域IAとが電気的に接続される。これにより、不純物拡散領域IAには、メタル配線54aからプラグ53aを介して所定レベルの電圧を印加することが可能になる。
【0194】
図23(c)に示すように、駆動用素子Mv2は、MOSFETを構成している。不揮発性記憶素子M2は、駆動用素子Mv2をMOSFETとして機能させて他の回路と動作するようになっている。つまり、不揮発性記憶素子M2が他の回路と動作する際に、駆動用素子Mv2のドレイン領域D2及びソース領域S2に電流経路が形成される。一方、図23(b)に示すように、不純物拡散領域IAはフローティング状態となっており、書込用素子Mw2は、MOSFETを構成していない。書込用素子Mw2は、フローティングゲートFG2に電荷を注入したりフローティングゲートFG2から電荷を放出したりする書き込み時の電圧印加素子として機能するようになっている。つまり、不純物拡散領域IAは、書き込み用の電圧印加領域として機能し、ドレイン領域D2は、駆動用MOSFETのドレイン領域として機能するようになっている。
【0195】
本実施形態によるFLOTOX型の不揮発性記憶素子M2は、上記第1実施形態による不揮発性記憶素子M1と同様に、フローティングゲートFG2の面積が30μm以上のアナログ回路内のMOSFETとして使用される。この場合、トンネル絶縁膜25の面積を50μm以下にすることで、熱エネルギーにより励起されたフローティングゲートFG2中の電荷がトンネル絶縁膜25のエネルギー障壁を飛び越えて漏れ出す確率が抑制され、不揮発性記憶素子M2は、第2モードのリテンション劣化を抑制できる。また、フローティングゲートFG2に対するトンネル絶縁膜25の面積比を0.002以上とすることで単位面積当たりのトンネル絶縁膜25を通過する電荷量が抑制され、不揮発性記憶素子M2は、第1モードのリテンション劣化も抑制することができる。これにより、不揮発性記憶素子M2は、第1モードのリテンション劣化及び第2モードのリテンション劣化によるアナログ回路特性への影響を微小化することが可能である。
【0196】
さらに、本実施形態による不揮発性記憶素子M2は、トンネル絶縁膜25の下方に配置された拡散層21aを有する書込用素子Mw2と、書込用素子Mw2と共有するフローティングゲートFG2とドレイン領域D2との間にトンネル絶縁膜を有さないMOSFETを構成する駆動用素子Mv2とを備えている。拡散層21aを有する不純物拡散領域IAとドレイン領域D2とは電気的に分離している。これにより、駆動用素子Mv2を駆動しているときに、不純物拡散領域IAを介してトンネル絶縁膜25に余計な電圧や電流が生じない。このため、不揮発性記憶素子M2が他の回路を駆動している動作時の電界によるトンネル絶縁膜25を介したフローティングゲートFG2への電荷注入や、電流により発生したホットキャリアのフローティングゲートFG2への注入が起こらない。その結果、不揮発性記憶素子M2は、より信頼性の高い、アナログ回路内のMOSFETとしての使用に好適である。
【0197】
駆動用素子Mv2が設けられた箇所におけるフローティングゲートFG2の領域である特定領域PAは、例えば17.5μm以上の面積を有していてもよい。また、フローティングゲートFG2の特定領域PAのゲート幅をWとし、フローティングゲートFG2の特定領域PAのゲート長をLとすると(図23(a)参照)、フローティングゲートFG2の特定領域PAのゲート幅W及びゲート長Lは、上述の式(4)の関係を満たしていてもよい。さらに、フローティングゲートFG2が30μmよりも大きい面積を有している場合、フローティングゲートFG2の特定領域PAは、30μm以上の面積を有していてもよい。これにより、本実施形態による不揮発性記憶素子M2は、上記第1実施形態による不揮発性記憶素子M1と同様の効果が得られる。
【0198】
次に、不揮発性記憶素子M2の閾値電圧Vthの調整方法について説明する。
例えば、コントロールゲートCG2に19V、不純物拡散領域IAに0Vを印加すると、トンネル絶縁膜25を介してフローティングゲートFG2内に電子が注入され、フローティングゲートFG2が負に帯電した状態となる。この状態では、フローティングゲートFG2は、コントロールゲートCG2に正のバイアスを掛けた場合に、ゲート絶縁膜26vに掛かる電界を抑制する方向に働く。このため、不揮発性記憶素子M2の駆動用素子Mv2は、閾値電圧Vthが上昇し、エンハンスメント型MOSFETとして機能する。
【0199】
一方、例えば、コントロールゲートCG2に0V、ドレイン領域D2に19Vを印加すると、トンネル絶縁膜25を介してフローティングゲートFG2から電子が引き抜かれ、フローティングゲートFG2が正に帯電した状態となる。この状態では、フローティングゲートFG2は、コントロールゲートCG2に正のバイアスを掛けた場合に、ゲート絶縁膜26vに掛かる電界を強くする方向に働く。このため、不揮発性記憶素子M2の駆動用素子Mv2は、閾値電圧Vthが低下し、ディプレッション型MOSFETとして機能する。このように、フローティングゲートFG2への電荷の注入又はフローティングゲートFG2からの電荷の引き抜きを制御することにより、不揮発性記憶素子M2の閾値電圧Vthを所望の値に調整することができる。
【0200】
本実施形態による不揮発性記憶素子M2の製造方法は、不純物拡散領域IA、ゲート絶縁膜26w及びトンネル絶縁膜25などを形成するためのレジストマスクの形状が異なるものの、各膜の形成材料や形成順序は、上記第1実施形態による不揮発性記憶素子M1と同様であるため説明は省略する。
【0201】
(不揮発性記憶素子を備える基準電圧生成回路)
次に、本実施形態による不揮発性記憶素子M2を備えるアナログ回路の一例として、基準電圧生成回路について図24から図26を用いて説明する。不揮発性記憶素子M2が適用されるアナログ回路は、不揮発性記憶素子M2をアナログ的に使用する回路であれば、基準電圧生成回路に限られない。例えば、オペアンプ回路やコンパレータ回路等、MOSFETの閾値電圧に精度が必要なアナログ回路にも有効である。
【0202】
図24に示すように、本実施形態における基準電圧生成回路RC2は、直列に接続された不揮発性記憶素子M21および不揮発性記憶素子M22を備えている。不揮発性記憶素子M21および不揮発性記憶素子M22はそれぞれ、図23に示す本実施形態による不揮発性記憶素子M2と同一の構成を有している。不揮発性記憶素子M21は、書込用素子Mw21及び駆動用素子Mv21を備え、不揮発性記憶素子M22は、書込用素子Mw22及び駆動用素子Mv22を備えている。書込用素子Mw21及び書込用素子Mw22は、図23(b)に示す書込用素子Mw2と同一の構成を有している。駆動用素子Mv21及び駆動用素子Mv22は、図23(c)に示す駆動用素子Mv2と同一の構成を有している。
【0203】
駆動用素子Mv21のコントロールゲートCG2と、書込用素子Mw21のコントロールゲートCG2とは共有化されている。また、駆動用素子Mv21のフローティングゲートFG2と、書込用素子Mw21のフローティングゲートFG2とは共有化されている。書込用素子Mw21に設けられた電荷注入口24(図23(a)及び図23(b)参照)は、駆動用素子Mv21に形成される電流経路に接していない領域に形成されている。書込用素子Mw21に設けられた電荷注入口24は、駆動用素子Mv21のドレイン領域D2及びソース領域S2を含む電流パス(電流経路)とは接していない領域に形成されている。
【0204】
駆動用素子Mv22のコントロールゲートCG2と、書込用素子Mw22のコントロールゲートCG2とは共有化されている。また、駆動用素子Mv22のフローティングゲートFG2と、書込用素子Mw22のフローティングゲートFG2とは共有化されている。書込用素子Mw22に設けられた電荷注入口24(図23(a)及び図23(b)参照)は、駆動用素子Mv22に形成される電流経路に接していない領域に形成されている。書込用素子Mw22に設けられた電荷注入口24は、駆動用素子Mv22のドレイン領域D2及びソース領域S2を含む電流パス(電流経路)とは接していない領域に形成されている。
【0205】
駆動用素子Mv21と駆動用素子Mv22とは、高電圧供給端子Vddと低電圧供給端子Vssとの間で直列に接続されている。以下、符号「Vdd」は、高電圧供給端子Vddから出力される高電圧の符号としても使用する。より具体的には、駆動用素子Mv21のドレイン領域D2は高電圧供給端子Vddに接続されている。駆動用素子Mv22のソース領域S2は低電圧供給端子Vssに接続されている。駆動用素子Mv21のソース領域S2と駆動用素子Mv22のドレイン領域D2とは接続されている。
【0206】
書込用素子Mw21は、フローティングゲートFG2の下方に一部が配置された不純物拡散領域IAを備えている。基準電圧生成回路RC2は、書込用素子Mw21の不純物拡散領域IAに一端子が接続されたスイッチSW21を備えている。スイッチSW21の他端子の1つは低電圧供給端子Vssに接続され、スイッチSW21の他端子の他の1つはパルス電圧Vppの印加端子に接続されている。基準電圧生成回路RC2は、スイッチSW21を適宜切り替えることにより、低電圧Vssおよびパルス電圧Vppのいずれか一方を書込用素子Mw21の不純物拡散領域IAに印加できるようになっている。
【0207】
書込用素子Mw22は、フローティングゲートFG2の下方に一部が配置された不純物拡散領域IAを備えている。基準電圧生成回路RC2は、書込用素子Mw22の不純物拡散領域IAに一端子が接続されたスイッチSW22を備えている。スイッチSW22の他端子の1つは低電圧供給端子Vssに接続され、スイッチSW22の他端子の他の1つはパルス電圧Vppの印加端子に接続されている。基準電圧生成回路RC2は、スイッチSW22を適宜切り替えることにより、低電圧Vssおよびパルス電圧Vppのいずれか一方を書込用素子Mw22の不純物拡散領域IAに印加できるようになっている。
【0208】
基準電圧生成回路RC2は、書込用素子Mw21のコントロールゲートCG2と書込用素子Mw22のコントロールゲートCG2との間に直列接続されたスイッチSW25及びスイッチSW27を備えている。スイッチSW25及びスイッチSW27のそれぞれの他端子は互いに接続されている。スイッチSW25及びスイッチSW27のそれぞれの他端子は、駆動用素子Mv21のソース領域S2及び駆動用素子Mv22のドレイン領域D2が互いに接続された接続部に接続されている。基準電圧生成回路RC2は、この接続部に接続され基準電圧Vrefが出力される電圧出力端子OUTを備えている。
【0209】
基準電圧生成回路RC2は、書込用素子Mw21のコントロールゲートCG2に接続された一端子を有するスイッチSW23と、スイッチSW23の他端子に一端子が接続されたスイッチSW29とを備えている。スイッチSW29の他端子の1つはパルス電圧Vppの印加端子に接続され、スイッチSW29の他端子の他の1つは低電圧供給端子Vssに接続されている。基準電圧生成回路RC2は、スイッチSW23が接続状態(ショート状態)のときにスイッチSW29を適宜切り替えることにより、パルス電圧Vppおよび低電圧Vssのいずれか一方を書込用素子Mw21のコントロールゲートCG2に印加できるようになっている。
【0210】
基準電圧生成回路RC2は、書込用素子Mw22のコントロールゲートCG2に接続された一端子を有するスイッチSW24と、スイッチSW24の他端子に一端子が接続されたスイッチSW20とを備えている。スイッチSW20の他端子の1つはパルス電圧Vppの印加端子に接続され、スイッチSW20の他端子の他の1つは低電圧供給端子Vssに接続されている。基準電圧生成回路RC2は、スイッチSW24が接続状態(ショート状態)のときにスイッチSW20を適宜切り替えることにより、パルス電圧Vppおよび低電圧Vssのいずれか一方を書込用素子Mw22のコントロールゲートCG2に印加できるようになっている。
【0211】
書込用素子Mw21は、駆動用素子Mv21のフローティングゲートFG2への電荷注入のために存在する領域であり、トランジスタとして電流を流さない。同様に、書込用素子Mw22は、駆動用素子Mv22のフローティングゲートFG2への電荷注入のために存在する領域であり、トランジスタとして電流を流さない。そのため、書込用素子Mw21及び書込用素子Mw22は、ソース領域やドレイン領域を有している必要はなく、電荷注入口をもった構造であればその形態は問わない。
【0212】
図24に示すように、基準電圧生成回路RC2では、電荷注入時には、書込用素子Mw21,Mw22を通ってフローティングゲートFG2に電荷が注入される。基準電圧生成回路RC2を動作させる時には駆動用素子Mv21、Mv22を通って電流が流れる。基準電圧生成回路RC2では、不揮発性記憶素子M21側(すなわち書込用素子Mw21及び駆動用素子Mv21)がディプレッション状態、不揮発性記憶素子M22側(すなわち書込用素子Mw22及び駆動用素子Mv22)がエンハンスメント状態である。
【0213】
図24に示すように、基準電圧生成回路RC2は、基準電圧Vrefを生成するとき(すなわち基準電圧生成回路RC2が動作するとき)には、スイッチSW20~SW25,SW27,SW29を次のような状態に切り替える。
スイッチSW20:任意(図24では低電圧供給端子Vss側)
スイッチSW21:低電圧供給端子Vss側
スイッチSW22:低電圧供給端子Vss側
スイッチSW23,SW24:開放状態(オープン状態)
スイッチSW25,SW27:接続状態(ショート状態)
スイッチSW29:任意(図24では低電圧供給端子Vss側)
【0214】
図25に示すように、基準電圧生成回路RC2は、不揮発性記憶素子M21側(すなわち書込用素子Mw21及び駆動用素子Mv21)をディプレッション状態にするための書き換え時には、スイッチSW20~SW25,SW27,SW29を次のような状態に切り替える。ここでは、不揮発性記憶素子M21側の調整前の閾値電圧が調整後の閾値電圧よりも高い場合を例に取っている。
スイッチSW20:任意(図25では低電圧供給端子Vss側)
スイッチSW21:パルス電圧Vpp側
スイッチSW22:低電圧供給端子Vss側
スイッチSW23:接続状態(ショート状態)
スイッチSW24:開放状態(オープン状態)
スイッチSW25,SW27:開放状態(オープン状態)
スイッチSW29:低電圧供給端子Vss側
【0215】
このため、書込用素子Mw21の不純物拡散領域IAにパルス電圧Vppが印加され、コントロールゲートCG2に低電圧Vssが印加されるので、トンネル絶縁膜が形成された領域に構成される電荷注入口24を介してフローティングゲートFG2からドレイン領域D2に電子が放出される。これにより、書込用素子Mw21の閾値電圧が低くなる。逆に、書込用素子Mw21のドレイン領域D2に低電圧Vssが印加され、コントロールゲートCG2にパルス電圧Vppが印加された場合は、電荷注入口24を介してドレイン領域D2からフローティングゲートFG2に電子が注入される。これにより、書込用素子Mw21の閾値電圧が高くなる。コントロールゲートCG2及びフローティングゲートFG2は、書込用素子Mw21及び駆動用素子Mv21で共有されている。このため、駆動用素子Mv21は、書込用素子Mw21と同じ閾値電圧となる。
【0216】
図26に示すように、基準電圧生成回路RC2は、不揮発性記憶素子M22側(すなわち書込用素子Mw22及び駆動用素子Mv22)をエンハンスメント状態にするための書き換え時には、スイッチSW20~SW25,SW27,SW29を次のような状態に切り替える。ここでは、不揮発性記憶素子M22側の調整前の閾値電圧が調整後の閾値電圧よりも低い場合を例に取っている。
スイッチSW20: パルス電圧Vpp側
スイッチSW21:低電圧供給端子Vss側
スイッチSW22:低電圧供給端子Vss側
スイッチSW23:開放状態(オープン状態)
スイッチSW24:接続状態(ショート状態)
スイッチSW25,SW27:開放状態(オープン状態)
スイッチSW29:任意(図26では低電圧供給端子Vss側)
【0217】
このため、書込用素子Mw22の不純物拡散領域IAに低電圧Vssが印加され、コントロールゲートCG2にパルス電圧Vppが印加されるので、トンネル絶縁膜が形成された領域に構成される電荷注入口24を介して不純物拡散領域IAからフローティングゲートFG2に電子が注入される。これにより、書込用素子Mw22の閾値電圧が高くなる。逆に、書込用素子Mw22の不純物拡散領域IAにパルス電圧Vppが印加され、コントロールゲートCG2に低電圧Vssが印加された場合は、電荷注入口24を介してフローティングゲートFG2から不純物拡散領域IAに電子が放出される。これにより、書込用素子Mw22の閾値電圧が低くなる。コントロールゲートCG2及びフローティングゲートFG2は、書込用素子Mw22及び駆動用素子Mv22で共有されている。このため、駆動用素子Mv22は、書込用素子Mw22と同じ閾値電圧となる。
【0218】
以上説明したように、本実施形態によれば、素子のレイアウトにフレキシブル性を持たせながら、高い電荷保持特性を有する不揮発性記憶素子を実現できる。このため、電気特性の劣化が効果的に抑制され、かつ製造バラツキの影響が極めて小さい高精度なアナログ回路を実現できる。また、本実施形態によれば、電気特性のバラツキを低減できる。優れた電荷保持特性を有する不揮発性記憶素子およびそれを備えるアナログ回路を実現できる。
【0219】
また、本実施形態による不揮発性記憶素子及びそれを備えるアナログ回路は、不揮発性記憶素子M21,M22のフローティングゲートFG2の電荷量を調整して閾値電圧を調整できるので、上記第1実施形態による不揮発性記憶素子及びそれを備えるアナログ回路と同様の効果が得られる。
【0220】
また、本実施形態における基準電圧生成回路RC2は、図23に示す構成の不揮発性記憶素子M2を備えることにより、電荷注入時および電荷放出時の電流経路と、基準電圧生成回路RC2の動作時(他の回路を駆動する駆動時)の電流経路とを分離できる。これにより、基準電圧生成回路RC2は、不揮発性記憶素子の予期せぬ書き換えを防止し、信頼性の向上を図ることができる。
【0221】
本実施形態による不揮発性記憶素子M2は、半導体基板9Bと、半導体基板9Bの上方に設けられたフローティングゲートFG2と、フローティングゲートFG2と絶縁して配置されたコントロールゲートCG2とを有する書込用素子Mw2及び駆動用素子Mv2を備えている。書込用素子Mw2は、半導体基板9B内に設けられ一部がフローティングゲートFG2の下方に配置された不純物拡散領域IAと、フローティングゲートFG2と不純物拡散領域IAとの間に少なくとも一部が配置されフローティングゲートFG2に対する面積比が0.002以上1以下であるトンネル絶縁膜25とを有している。また、駆動用素子Mv2は、半導体基板9B内に設けられ不純物拡散領域IAと電気的に分離して形成されたドレイン領域D2と、半導体基板9B内に設けられたソース領域S2とを有している。
【0222】
このような構成を備えた不揮発性記憶素子M2によれば、第1モードのリテンション劣化及び第2モードのリテンション劣化を抑制することができる。
【0223】
また、本実施形態による不揮発性記憶素子M2は、30μm以上の面積を有するフローティングゲートFG2を備えている。これにより、本実施形態による不揮発性記憶素子M2は、基準電圧発生回路などのアナログ回路に好適なMOSFETとして使用することができる。本実施形態による不揮発性記憶素子M2を備えるアナログ回路は、リテンション劣化による特性変動が抑制され、製造バラツキや温度特性の影響を低減することができる。さらに、不揮発性記憶素子M2は、当該アナログ回路の動作時にフローティングゲートFG2への電荷注入やフローティングゲートFG2からの電荷放出が起こらない。これにより、不揮発性記憶素子M2は、当該アナログ回路のリテンション劣化による特性変動をより抑制し易くなる。
【0224】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態による不揮発性記憶素子について図27から図31を用いて説明する。まず、本実施形態による不揮発性記憶素子の概略構成について図27を用いて説明する。
【0225】
図27(a)に示すように、本実施形態による不揮発性記憶素子M7は、上記第1及び第2実施形態による不揮発性記憶素子M1,M2と異なり、書込用素子と駆動用素子とに分離されておらず、1つの素子で書込み動作と駆動動作を実行するようになっている。図27(b)に示すように、本実施形態による不揮発性記憶素子M7は、上記第1実施形態による不揮発性記憶素子M1と同様にFLOTOX型の構造を有している。本実施形態による不揮発性記憶素子M7は、FLOTOX型に限られず、電荷保持領域を持つ能動素子(トランジスタ)であれば、他の構造を有していてもよい。
【0226】
本実施形態による不揮発性記憶素子M7は、例えばP型の半導体基板9Cに形成された素子分離領域43によって、同一の半導体基板9Cに形成された他の不揮発性記憶素子(不図示)と素子分離されている。
【0227】
図27(b)に示すように、本実施形態による不揮発性記憶素子M7は、半導体基板9Cと、半導体基板9C上に設けられたゲート絶縁膜76とを備えている。半導体基板9Cには、Pウェル領域10Cが形成されている。ゲート絶縁膜76は、二酸化シリコン(SiO)で形成され、Pウェル領域10C上に配置されている。ゲート絶縁膜76は、二酸化シリコンに限られず、窒化シリコン(SiN)で形成されていてもよい。
【0228】
不揮発性記憶素子M7は、半導体基板9Cの上方に設けられたフローティングゲートFG7を備えている。フローティングゲートFG7の一部は、ゲート絶縁膜76上に配置されている。フローティングゲートFG7は、ポリシリコンで形成されている。図27(a)に示す不揮発性記憶素子M7の平面視において、フローティングゲートFG7の全体は、30μm以上27000μm以下の面積を有している。ここで、「フローティングゲートFG7の全体」は、1つの不揮発性記憶素子M7に設けられたフローティングゲートを意味している。書込用素子及び駆動用素子として機能する箇所のフローティングゲートの領域(すなわち、フローティングゲートの特定領域)は、フローティングゲートFG7の全体よりも小さく形成されている。したがって、「フローティングゲートFG7の全体」は、書込用素子及び駆動用素子として機能する箇所の「フローティングゲートFG17の特定領域PA」とは区別される。以下、「フローティングゲートFG7の特定領域PA」のように限定しない限り、「フローティングゲートFG7」は、「フローティングゲートFG7の全体」を意味する。フローティングゲートFG7の面積の下限値は、デジタルデータを記憶するメモリとして不揮発性記憶素子が使用される場合との差別化のために規定されている。本実施形態におけるフローティングゲートFG7の面積は、不揮発性記憶素子M7の平面視において、例えば1422μmである。ここで、平面視とは、ゲート絶縁膜76やフローティングゲートFG7などが形成された半導体基板9Cの平面(素子形成面)を直交する方向に見た状態をいう。本実施形態におけるフローティングゲートFG7は、不揮発性記憶素子M7の平面視において長方形状を有しているが、長方形状に限らず他の形状を有していてもよい。
【0229】
不揮発性記憶素子M7は、フローティングゲートFG7上に配置された絶縁膜77と、絶縁膜77の周りに形成されたサイドウォール78とを備えている。絶縁膜77は、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とを組み合わせて構成され、酸化物/窒化物/酸化物(ONO)構造を有している。絶縁膜77は、フローティングゲートFG7の上面及び側面と、ゲート絶縁膜76の側面とを覆って設けられている。
【0230】
不揮発性記憶素子M7は、フローティングゲートFG7の上方にフローティングゲートFG7と絶縁して配置されたコントロールゲートCG7と、コントロールゲートCG7の周りに形成されたサイドウォール79とを備えている。コントロールゲートCG7は、例えばポリシリコンで形成されている。コントロールゲートCG7は、不揮発性記憶素子M7の平面視において、フローティングゲートFG7よりも小さい面積を有している(図27(a)参照)。コントロールゲートCG7は、不揮発性記憶素子M7の平面視において長方形状を有しているが、フローティングゲートFG7上に配置されていれば長方形状に限らず他の形状を有していてもよい。コントロールゲートCG7は、絶縁膜77上に配置されている。コントロールゲートCG7は、絶縁膜77によってフローティングゲートFG7と絶縁されている。
【0231】
不揮発性記憶素子M7は、半導体基板9C内に設けられたソース領域S7と、半導体基板9C内に設けられ一部がフローティングゲートFG7の下方の一部に配置されたドレイン領域(第一領域の一例)D7とを備えている。ソース領域S7及びドレイン領域D7は、Pウェル領域10Cに設けられている。ドレイン領域D7とソース領域S7は電流の流れる方向によって定義される。このため、図27に示す不揮発性記憶素子M7において想定されている電流に対して電流を流す方向を逆にした場合は、図27中に示すドレイン領域D7がソース領域S7となり、ソース領域S7がドレイン領域D7となる。
【0232】
ソース領域S7は、不揮発性記憶素子M7の平面視で、フローティングゲートFG7の側方(両側の一方)の一部に設けられている(図27(a)参照)。ソース領域S7は、N型のLDD層72sと、LDD層72sよりも不純物濃度が高濃度のソース層73sとを有している。ソース層73sは、LDD層72sに設けられている。ソース層73sは、ソース領域S7とプラグ55s(詳細は後述)とのオーミック接触を取るために設けられている。
【0233】
ドレイン領域D7は、第1ドレイン層71dと、N型のLDD層72dと、LDD層72dよりも不純物濃度が高濃度の第2ドレイン層73dとを有している。第2ドレイン層73dは、LDD層72dに設けられている。第2ドレイン層73dは、ドレイン領域D7とプラグ55d(詳細は後述)とのオーミック接触を取るために設けられている。ドレイン領域D7は、不揮発性記憶素子M7の平面視で、フローティングゲートFG7の下方及び側方(両側の他方)に跨って設けられている(図27(a)参照)。第1ドレイン層71dは、フローティングゲートFG7の下方に設けられ、LDD層72d及び第2ドレイン層73dは、フローティングゲートFG7の側方に設けられている。LDD層72d及びLDD層72sは、不揮発性記憶素子M7の平面視で、フローティングゲートFG7を挟んで設けられている。
【0234】
不揮発性記憶素子M7は、フローティングゲートFG7とドレイン領域D7との間に少なくとも一部が配置されてフローティングゲートFG7に対する面積比が0.002以上1以下であるトンネル絶縁膜75を備えている。本実施形態では、トンネル絶縁膜75の全体がフローティングゲートFG7と第1ドレイン層71dとの間に配置されている。トンネル絶縁膜75は、不揮発性記憶素子M7の平面視において、フローティングゲートFG7よりも小さく形成される。トンネル絶縁膜75の面積は、不揮発性記憶素子M7の平面視において、0.06μm以上54μm以下である。フローティングゲートFG7の面積が最小値の30μmであり、フローティングゲートFG7に対するトンネル絶縁膜75の面積比が最小値の0.002である場合に、トンネル絶縁膜75の面積が最小値の0.06μmとなる。本実施形態におけるトンネル絶縁膜75の面積は、例えば25μmである。したがって、本実施形態では、フローティングゲートFG7の面積に対するトンネル絶縁膜75の面積の比率(面積比)、すなわちトンネル絶縁膜75の面積をフローティングゲートFG7の面積で除して求められる値は、0.017である。不揮発性記憶素子M7は、フローティングゲートFG7の面積に対するトンネル絶縁膜75の面積比が0.017であって0.002よりも大きいので、上記第1実施形態において説明したように、第1モードのリテンション劣化を改善することができる。
【0235】
FNトンネリングによってフローティングゲートFG7に電荷を注入したりフローティングゲートFG7から電荷を引き抜いたりする書き込みを行うため、トンネル絶縁膜75の厚さは7nm以上12nm以下であるとよい。本実施形態では、トンネル絶縁膜75の膜厚は、例えば9.8nmである。トンネル絶縁膜75の膜厚が7~12nmであると、7nm未満の場合と比較して、電荷の直接トンネリングが起こりにくくなり、フローティングゲートFG7内に電荷を保持し易くなる。一方、トンネル絶縁膜75の膜厚が7~12nmであると、12nmより膜厚が厚い場合と比較して、フローティングゲートFG7への電荷の注入及びフローティングゲートFG7からの電荷の引き抜きを高速化することができる。トンネル絶縁膜75は、ゲート絶縁膜76よりも膜厚が薄く形成されていてもよい。トンネル絶縁膜75に対応するフローティングゲートFG7の領域が、フローティングゲートFG7に電荷を注入したりフローティングゲートFG7から電荷を放出したりする電荷注入口74となる。つまり、フローティングゲートFG7は、電荷を注入したり電荷を放出したりするための電荷注入口74を有し、電荷保持領域として機能する。
【0236】
不揮発性記憶素子M7は、トンネル絶縁膜75、ゲート絶縁膜76及び絶縁膜77の少なくとも一部に分布するハロゲン(例えばフッ素)を有している。本実施形態では、トンネル絶縁膜75、ゲート絶縁膜76及び絶縁膜77のいずれにもハロゲンが含まれている。トンネル絶縁膜75がハロゲン(例えばフッ素)を含むことにより、トンネル絶縁膜75の欠陥密度が低減する。
【0237】
不揮発性記憶素子M7は、コントロールゲートCG7、半導体基板9Cの素子形成面上に形成された層間絶縁膜63を備えている。絶縁膜77、サイドウォール78,79、ドレイン領域D7、ソース領域S7及び素子分離領域43が設けられた領域に少なくとも形成されている。層間絶縁膜63は、コントロールゲートCG7、ドレイン領域D7及びソース領域S7などを保護する保護膜としての機能を発揮する。
【0238】
不揮発性記憶素子M7は、コントロールゲートCG7の一部を底面に露出し層間絶縁膜63に形成された開口部に埋め込まれたプラグ55gと、プラグ55gに電気的に接続され層間絶縁膜63上に形成されたメタル配線56gとを備えている。プラグ55gを介してメタル配線56gとコントロールゲートCG7とが電気的に接続される。これにより、コントロールゲートCG7には、メタル配線56gからプラグ55gを介して所定レベルの電圧を印加することが可能になる。
【0239】
不揮発性記憶素子M7は、第2ドレイン層73dの一部を底面に露出し層間絶縁膜63に形成された開口部に埋め込まれたプラグ55dと、プラグ55dに電気的に接続され層間絶縁膜63上に形成されたメタル配線56dとを備えている。プラグ55dを介してメタル配線56dとドレイン領域D7とが電気的に接続される。これにより、ドレイン領域D7には、メタル配線56dからプラグ55dを介して所定レベルの電圧を印加することが可能になる。
【0240】
不揮発性記憶素子M1は、ソース層73sの一部を底面に露出し層間絶縁膜63に形成された開口部に埋め込まれたプラグ55sと、プラグ55sに電気的に接続され層間絶縁膜63上に形成されたメタル配線56sとを備えている。プラグ55sを介してメタル配線56sとソース領域S7とが電気的に接続される。これにより、ソース領域S7には、メタル配線56sからプラグ55sを介して所定レベルの電圧を印加することが可能になる。
【0241】
フローティングゲートFG7の特定領域PAは、例えば17.5μm以上の面積を有していてもよい。また、フローティングゲートFG7の特定領域PAのゲート幅をWとし、フローティングゲートFG7の特定領域PAのゲート長をLとすると(図27(a)参照)、フローティングゲートFG7の特定領域PAのゲート幅W及びゲート長Lは、上述の式(4)の関係を満たしていてもよい。さらに、フローティングゲートFG7が30μmよりも大きい面積を有している場合、フローティングゲートFG7の特定領域PAは、30μm以上の面積を有していてもよい。これにより、本実施形態による不揮発性記憶素子M7は、上記第1実施形態による不揮発性記憶素子M1と同様の効果が得られる。
【0242】
次に、不揮発性記憶素子M7の閾値電圧Vthの調整方法について説明する。
例えば、コントロールゲートCG7に19V、ドレイン領域D7に0Vを印加すると、トンネル絶縁膜75を介してフローティングゲートFG7内に電子が注入され、フローティングゲートFG7が負に帯電した状態となる。この状態では、フローティングゲートFG7は、コントロールゲートCG7に正のバイアスを掛けた場合に、ゲート絶縁膜76に掛かる電界を抑制する方向に働く。このため、不揮発性記憶素子M7は、閾値電圧Vthが上昇し、エンハンスメント型MOSFETとして機能する。
【0243】
一方、例えば、コントロールゲートCG7に0V、ドレイン領域D7に19Vを印加すると、トンネル絶縁膜75を介してフローティングゲートFG7から電子が引き抜かれ、フローティングゲートFG7が正に帯電した状態となる。この状態では、フローティングゲートFG7は、コントロールゲートCG7に正のバイアスを掛けた場合に、ゲート絶縁膜76に掛かる電界を強くする方向に働く。このため、不揮発性記憶素子M7は、閾値電圧Vthが低下し、ディプレッション型MOSFETとして機能する。このように、フローティングゲートFG7への電荷の注入又はフローティングゲートFG7からの電荷の引き抜きを制御することにより、不揮発性記憶素子M7の閾値電圧Vthを所望の値に調整することができる。
【0244】
(不揮発性記憶素子を備える基準電圧生成回路)
次に、本実施形態による不揮発性記憶素子M7を備えるアナログ回路の一例として、基準電圧生成回路について図28から図31を用いて説明する。不揮発性記憶素子M7が適用されるアナログ回路は、不揮発性記憶素子M7をアナログ的に使用する回路であれば、基準電圧生成回路に限られない。例えば、オペアンプ回路やコンパレータ回路等、MOSFETの閾値電圧に精度が必要なアナログ回路にも有効である。
【0245】
図28に示すように、本実施形態における基準電圧生成回路RC6は、複数(本例では2つ)の不揮発性記憶素子M71,M72を備えている。複数の不揮発性記憶素子M71,M72の少なくとも一部(本例では全部)は、直列に接続され、直列に接続された複数の不揮発性記憶素子M71,M72の接続部には、基準電圧Vrefが出力される電圧出力端子OUTが接続されている。不揮発性記憶素子M71および不揮発性記憶素子M72はいずれも、N型MOSFETのFLOTOX型の構成を有し、図27に示す不揮発性記憶素子M7と同一の構成を有している。
【0246】
不揮発性記憶素子M71および不揮発性記憶素子M72は、高電圧が供給される高電圧供給端子Vddと低電圧が供給される低電圧供給端子Vssとの間で直列接続されている。不揮発性記憶素子M71のドレイン領域D7は高電圧供給端子Vddに接続され、不揮発性記憶素子M72のソース領域S7は低電圧供給端子Vssに接続されている。不揮発性記憶素子M71のソース領域S7およびコントロールゲートCG7は互いに接続され、また、不揮発性記憶素子M72のドレイン領域D7及びコントロールゲートCG7は互いに接続されている。さらに、不揮発性記憶素子M71のソース領域S7及びコントロールゲートCG7と、不揮発性記憶素子M72のドレイン領域D7及びコントロールゲートCG7とは、互いに接続されている。不揮発性記憶素子M71のソース領域S7と不揮発性記憶素子M72のドレイン領域D7との接続部に電圧出力端子OUTが接続されている。
【0247】
基準電圧生成回路RC6では、下段側(低電圧供給端子Vss側)の不揮発性記憶素子M72がエンハンスメント状態になるように調整され、上段側(高電圧供給端子Vdd側)の不揮発性記憶素子M71がディプレッション状態になるように調整される。不揮発性記憶素子M71,M72はいずれも、コントロールゲートCG7及びフローティングゲートFG7を有し、フローティングゲートFG7の周囲のトンネル絶縁膜75、ゲート絶縁膜76及び絶縁膜77(図27(b)参照)にハロゲンとしてフッ素が分布している。これにより、不揮発性記憶素子M71,M72は、書き込み消去ができ、書き込み状態を長期間にわたって保持できる。ディプレッション型トランジスタの閾値電圧は負となり、エンハンスメント型トランジスタの閾値電圧は正となる。このため、本実施形態によるアナログ回路としての基準電圧生成回路RC6に設けられた複数の不揮発性記憶素子は、少なくとも負の閾値電圧を有する不揮発性記憶素子M71と正の閾値電圧を有する不揮発性記憶素子M72を含んでいる。なお、不揮発性記憶素子M71,M72は、アレイ構造を有していない。
【0248】
図29に示すように、本実施形態によるアナログ回路であって不揮発性記憶素子M71,M72への書き込みが可能な基準電圧生成回路RC7は、不揮発性記憶素子M71のドレイン領域D7に一端子が接続されたスイッチSW71を備えている。スイッチSW71の他端子の1つは高電圧供給端子Vddに接続され、スイッチSW71の他端子の他の1つは低電圧供給端子Vssに接続され、スイッチSW71の他端子のさらに他の1つはパルス電圧Vppの印加端子に接続されている。基準電圧生成回路RC7は、スイッチSW71を適宜切り替えることにより、高電圧Vdd、低電圧Vss及びパルス電圧Vppのいずれか1つを不揮発性記憶素子M71のドレイン領域D7に印加できるようになっている。
【0249】
基準電圧生成回路RC7は、不揮発性記憶素子M72のソース領域S7に一端子が接続されたスイッチSW72を備えている。スイッチSW72の他端子の1つは低電圧供給端子Vssに接続され、スイッチSW72の他端子の他の1つはパルス電圧Vppの印加端子に接続されている。基準電圧生成回路RC7は、スイッチSW72を適宜切り替えることにより、低電圧Vssおよびパルス電圧Vppのいずれか一方を不揮発性記憶素子M72のソース領域S7に印加できるようになっている。
【0250】
基準電圧生成回路RC7は、不揮発性記憶素子M71のソース領域S7と不揮発性記憶素子M72のドレイン領域D7との間に直列接続されたスイッチSW76及びスイッチSW78を備えている。不揮発性記憶素子M71のソース領域S7はスイッチSW76の一端子に接続され、不揮発性記憶素子M72のドレイン領域D7はスイッチSW78の一端子に接続されている。スイッチSW76の他端子及びスイッチSW78の他端子は接続されている。
【0251】
基準電圧生成回路RC7は、不揮発性記憶素子M71のコントロールゲートCG7と不揮発性記憶素子M72のコントロールゲートCG7との間に直列接続されたスイッチSW75およびスイッチSW77を備えている。不揮発性記憶素子M71のコントロールゲートCG7はスイッチSW75の一端子に接続され、不揮発性記憶素子M72のコントロールゲートCG7はスイッチSW77の一端子に接続されている。スイッチSW75の他端子およびスイッチSW77の他端子は接続されている。
【0252】
スイッチSW75、スイッチSW76、スイッチSW77およびスイッチSW78のそれぞれの他端子は互いに接続されている。基準電圧生成回路RC7は、スイッチSW75、スイッチSW76、スイッチSW77およびスイッチSW78のそれぞれの他端子が互いに接続された接続部に接続された電圧出力端子OUTを備えている。
【0253】
基準電圧生成回路RC7は、不揮発性記憶素子M71のコントロールゲートCG7に接続された一端子を有するスイッチSW73と、スイッチSW73の他端子に一端子が接続されたスイッチSW79とを備えている。スイッチSW79の他端子の1つはパルス電圧Vppの印加端子に接続され、スイッチSW79の他端子の他の1つは低電圧供給端子Vssに接続されている。基準電圧生成回路RC7は、スイッチSW73が接続状態(ショート状態)のときにスイッチSW79を適宜切り替えることにより、パルス電圧Vppおよび低電圧Vssのいずれか一方を不揮発性記憶素子M71のコントロールゲートCG7に印加できるようになっている。
【0254】
基準電圧生成回路RC7は、不揮発性記憶素子M72のコントロールゲートCG7に接続された一端子を有するスイッチSW74と、スイッチSW74の他端子に一端子が接続されたスイッチSW70とを備えている。スイッチSW70の他端子の1つはパルス電圧Vppの印加端子に接続され、スイッチSW70の他端子の他の1つは低電圧供給端子Vssに接続されている。基準電圧生成回路RC7は、スイッチSW74が接続状態(ショート状態)のときにスイッチSW70を適宜切り替えることにより、パルス電圧Vppおよび低電圧Vssのいずれか一方を不揮発性記憶素子M72のコントロールゲートCG7に印加できるようになっている。
【0255】
図29に示すように、基準電圧生成回路RC7は、電圧出力端子OUTから基準電圧Vrefを出力する場合には、スイッチSW70~SW79を次のような状態に切り替える。
スイッチSW70:任意(図29では低電圧Vss側)
スイッチSW71:高電圧供給端子Vdd側
スイッチSW72:低電圧供給端子Vss側
スイッチSW73,SW74:開放状態(オープン状態)
スイッチSW75,SW76,SW77,SW78:接続状態(ショート状態)
スイッチSW79:任意(図29では低電圧Vss側)
【0256】
基準電圧生成回路RC7は、不揮発性記憶素子M71がディプレッション状態であり、不揮発性記憶素子M72がエンハンスメント状態のときにスイッチSW70~SW79を図29に示す切り替え状態とすると、基準電圧Vrefが生成される。つまり、基準電圧生成回路RC7は、不揮発性記憶素子M71,M72の各端子を所望の電位に設定するスイッチSW70~SW79を含むスイッチ部を備えている。
【0257】
図30に示すように、基準電圧生成回路RCは、不揮発性記憶素子M71をディプレッション状態にするための書き換え時には、スイッチSW70~SW79を次のような状態に切り替える。ここでは、不揮発性記憶素子M71の調整前の閾値電圧が調整後の閾値電圧よりも高い場合を例に取っている。
【0258】
スイッチSW70:任意(図30では低電圧供給端子Vss側)
スイッチSW71:パルス電圧Vpp側
スイッチSW72:低電圧供給端子Vss側
スイッチSW73:接続状態(ショート状態)
スイッチSW74:開放状態(オープン状態)
スイッチSW75,SW76,SW77,SW78:開放状態(オープン状態)
スイッチSW79:低電圧供給端子Vss側
【0259】
このため、不揮発性記憶素子M71のドレイン領域D7にパルス電圧Vppが印加され、コントロールゲートCG7に低電圧Vssが印加されるので、電荷注入口74を介してフローティングゲートFG7からドレイン領域D7に電子が放出される。これにより、不揮発性記憶素子M71の閾値電圧が低くなる。逆に、不揮発性記憶素子M71のドレイン領域D7に低電圧Vssが印加され、コントロールゲートCG7にパルス電圧Vppが印加された場合は、電荷注入口74を介してドレイン領域D7からフローティングゲートFG7に電子が注入される。これにより、不揮発性記憶素子M71の閾値電圧が高くなる。
【0260】
図31に示すように、基準電圧生成回路RC7は、不揮発性記憶素子M72をエンハンスメント状態にするための書き換え時には、スイッチSW70~SW79を次のような状態に切り替える。ここでは、不揮発性記憶素子M72の調整前の閾値電圧が調整後の閾値電圧よりも低い場合を例に取っている。
スイッチSW70:パルス電圧Vpp側
スイッチSW71:高電圧供給端子Vdd側
スイッチSW72:低電圧供給端子Vss側
スイッチSW73:開放状態(オープン状態)
スイッチSW74:接続状態(ショート状態)
スイッチSW75,SW76,SW77,SW78:開放状態(オープン状態)
スイッチSW79:任意(図31では低電圧供給端子Vss側)
【0261】
このため、不揮発性記憶素子M72のソース領域S7に低電圧Vssが印加され、コントロールゲートCG7にパルス電圧Vppが印加されるので、電荷注入口74を介してソース領域S7からフローティングゲートFG7に電子が注入される。これにより、不揮発性記憶素子M72の閾値電圧が高くなる。逆に、不揮発性記憶素子M72のソース領域S7にパルス電圧Vppが印加され、コントロールゲートCG7に低電圧Vssが印加された場合は、電荷注入口74を介してフローティングゲートFG7からソース領域S7に電子が放出される。これにより、不揮発性記憶素子M72の閾値電圧が低くなる。
【0262】
図29から図31に示すように、基準電圧生成回路RC7は、スイッチSW70~SW79を適切に切り替えることにより、特定の不揮発性記憶素子M71,M72の閾値電圧Vthを所望の値に書き換え、最終的に図29に示す状態で所望の基準電圧Vrefを発生させることができる。
【0263】
このように、不揮発性記憶素子M71,M72のドレイン領域D7は、閾値電圧を変更する場合に電圧が印加され、基準電圧生成回路RC7の基準電圧Vrefの発生時の電流経路となる。つまり、不揮発性記憶素子M71,M72では、ドレイン領域D7は、書き込み用の電圧印加領域及び駆動用MOSFETのドレイン領域として機能する。
【0264】
上記第1実施形態における基準電圧生成回路と同様に、本実施形態では基準電圧生成回路RC6,RC7を構成するMOSFET、すなわちトランジスタとして、同一種類の不揮発性記憶素子を用いているため、2つのトランジスタでコンダクタンスや温度特性を同一にすることができ、理想的な平行移動した2つのトランジスタの特性を得ることができる。
【0265】
以上説明したように、本実施形態による不揮発性記憶素子M7は、半導体基板9Cと、半導体基板9C上に設けられたフローティングゲートFG7と、フローティングゲートFG7の上方にフローティングゲートFG7と絶縁して配置されたコントロールゲートCG7と、半導体基板9C内に設けられ一部がフローティングゲートFG7の下方に配置されたドレイン領域D7と、フローティングゲートFG7とドレイン領域D7との間に少なくとも一部が配置されフローティングゲートFG7に対する面積比が0.002以上1以下であるトンネル絶縁膜75とを備えている。
【0266】
このような構成を備えた不揮発性記憶素子M7によれば、第1モードのリテンション劣化及び第2モードのリテンション劣化を抑制することができる。
【0267】
また、本実施形態による不揮発性記憶素子M7は、30μm以上の面積を有するフローティングゲートFG7を備えている。これにより、本実施形態による不揮発性記憶素子M7は、基準電圧発生回路などのアナログ回路に好適なMOSFETとして使用することができる。本実施形態による不揮発性記憶素子を備えるアナログ回路は、リテンション劣化による特性変動が抑制され、製造バラツキや温度特性の影響を低減することができる。
【0268】
本発明は、上記実施形態に限らず、種々の変形が可能である。
トンネル絶縁膜は、ゲート絶縁膜の膜厚の一部を薄くして形成してもよい。この場合も、フローティングゲートが30μm以上の面積に形成され、トンネル絶縁膜がフローティングゲートに対して0.002以上1以下の面積比に形成されることにより、第1モードのリテンション劣化及び第2モードのリテンション劣化を抑制することができる。
【0269】
また、不揮発性記憶素子が書込用素子及び駆動用素子を備え、トンネル絶縁膜がゲート絶縁膜の一部を薄くして形成される場合、書込用素子におけるゲート絶縁膜には、フローティングゲート側に凹部(段差構造)が形成される。このため、駆動用素子におけるゲート絶縁膜は、書込用素子におけるゲート絶縁膜よりもフローティングゲートFGとの接触面が平坦になる。
【0270】
上記第1及び第2実施形態における書込用素子は、ゲート絶縁膜と当該ゲート絶縁膜よりも厚さの薄いトンネル絶縁膜とを有しているが、本発明はこれに限られない。例えば、上記第1及び第2実施形態における書込用素子は、フローティングゲートの直下にトンネル絶縁膜として機能する膜厚で形成された平坦な絶縁膜を有していてもよい。この場合、当該絶縁膜は、トンネル絶縁膜として機能するとともに、ゲート絶縁膜としても機能するので、当該絶縁膜を有する書込用素子は、上記第1及び第2実施形態における書込用素子と同様の効果が得られる。また、当該絶縁膜の面積とフローティングゲートの面積が同じ場合に、フローティングゲートに対するトンネル絶縁膜の面積比が1になる。
【0271】
また、上記第3実施形態による不揮発性記憶素子は、ゲート絶縁膜と当該ゲート絶縁膜よりも厚さの薄いトンネル絶縁膜とを有しているが、本発明はこれに限られない。例えば、上記第3実施形態による不揮発性記憶素子は、フローティングゲートの直下にトンネル絶縁膜として機能する膜厚で形成された平坦な絶縁膜を有していてもよい。この場合、当該絶縁膜は、トンネル絶縁膜として機能するとともに、ゲート絶縁膜としても機能するので、当該絶縁膜を有する不揮発性記憶素子は、上記第3実施形態による不揮発性記憶素子と同様の効果が得られる。また、当該絶縁膜の面積とフローティングゲートの面積が同じ場合に、フローティングゲートに対するトンネル絶縁膜の面積比が1になる。
【0272】
上記第1実施形態におけるフローティングゲートFG1は、書込用素子Mw1、駆動用素子Mv1及びダミー素子Mm1で分離されていてもよい。フローティングゲートが分離されている場合には、書込用素子Mw1のフローティングゲート、駆動用素子Mv1のフローティングゲート及びダミー素子Mm1のフローティングゲートは、同一の電圧が印加されるために、例えばプラグ及びメタル配線で電気的に接続されている必要がある。
【0273】
上記第1実施形態におけるコントロールゲートCG1は、書込用素子Mw1、駆動用素子Mv1及びダミー素子Mm1で分離されていてもよい。コントロールゲートが分離されている場合には、書込用素子Mw1のコントロールゲート、駆動用素子Mv1のコントロールゲート及びダミー素子Mm1のコントロールゲートは、同一の電圧が印加されるために、例えばプラグ及びメタル配線で電気的に接続されている必要がある。
【符号の説明】
【0274】
9A,9B,9c 半導体基板
10A,10B,10c Pウェル領域
10z,16z 酸化膜
11a,21a 拡散層
11m,11v,71d 第1ドレイン層
12a,12b,12md,12ms,12vd,12vm,12vs,22a,22d,22s,72d,72 LDD層
13a,13b,23a コンタクト層
13md,13vd,73d 第2ドレイン層
13ms,13vs,23s,73s ソース層
14,24,74 電荷注入口
15,25,75 トンネル絶縁膜
15z 開口部
16m,16v,16w,26v,26w,76 ゲート絶縁膜
17,27,77 絶縁膜
17z ONO膜
18,19,28,29,78,79 サイドウォール
23d ドレイン層
41,42,43 素子分離領域
51a,51b,51g,51md,51ms,51vd,51vs,53a,53d,53g,53s,55d,55g,55s プラグ
52a,52b,52g,52md,52ms,52vd,52vs,54a,54d,54g,54s,56d,56g,56s メタル配線
61,62,63 層間絶縁膜
81 主回路部
82 多段インバータ回路
83 切替回路
811 ロジック回路部
812 アナログ回路部
821 初段インバータ回路
821a PMOSFET
822 最終段インバータ回路
CG1,CG2,CG7 コントロールゲート
CGy 酸化膜
CGz,FGz ポリシリコン膜
D1,D2,D7,Dm1,Dv1 ドレイン領域
EC 電子回路
FA フッ素存在領域
FG1,FG2,FG7 フローティングゲート
IA 不純物拡散領域
IAa 第一不純物拡散領域
IAb 第二不純物拡散領域
M1,M2,M7,M11,M13,M21,M22,M31,M33,M51,M53,M71,M73 不揮発性記憶素子
Mm1,Mm11,Mm13,Mm31,Mm33,Mm51,Mm53 ダミー素子
Mv1,Mv2,Mv11,Mv13,Mv21,Mv22,Mv31,Mv33,Mv51,Mv53 駆動用素子
Mw1,Mw2,Mw11,Mw13,Mw21,Mw22,Mw31,Mw33,Mw51,Mw53 書込用素子
PA 特定領域
RC2,RC3,RC6,RC7 基準電圧生成回路
RM11,RM15,RMc,RMf,RMfg レジストマスク
S1,S2,S7,Sm1,Sv1 ソース領域
SW10~SW15、S17,SW19,SW20~SW25、S27,SW29,SW30~SW35、S37,SW39,SW50~SW55、S57,SW59,SW70~79 スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32