(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】油分離装置および油分離方法
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20231024BHJP
F16K 3/00 20060101ALI20231024BHJP
F25B 39/02 20060101ALI20231024BHJP
F25B 43/02 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
F25B1/00 387D
F16K3/00 A
F25B39/02 P
F25B43/02 D
(21)【出願番号】P 2019232604
(22)【出願日】2019-12-24
【審査請求日】2022-11-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】白戸 匠
(72)【発明者】
【氏名】大須賀 延王
(72)【発明者】
【氏名】大平 浩康
(72)【発明者】
【氏名】北原 敬士
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特許第6385002(JP,B2)
【文献】実開昭63-125261(JP,U)
【文献】特開平6-241615(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0061628(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F25B 31/00
F25B 39/02
F25B 43/02
F16K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒回路と、圧縮機と、蒸発器と、を有する冷凍装置において、前記冷媒回路を循環する冷媒より比重が大きく前記蒸発器に滞留した不溶性冷凍機油を前記冷媒から分離する油分離装置であって、
前記冷媒回路の冷媒吸入路および前記蒸発器に接続された油戻し路と、
前記油戻し路に設けられ、内部に前記不溶性冷凍機油を貯留可能であるとともに、前記不溶性冷凍機油の貯留量を検出可能なフロートセンサと、
前記蒸発器および前記フロートセンサの間の前記油戻し路に設けられる第1の開閉弁と、
前記フロートセンサよりも下流側の前記油戻し路に設けられる第2の開閉弁と、
前記冷媒回路の冷媒吐出路および前記第1の開閉弁に接続された高圧冷媒導入路と、
前記高圧冷媒導入路に設けられた第3の開閉弁と、
前記フロートセンサで検出した前記不溶性冷凍機油の貯留量が上限閾値を超えたとき、前記第2の開閉弁および前記第3の開閉弁を開放することによって前記第1の開閉弁を閉鎖し、前記フロートセンサで検出した前記不溶性冷凍機油の貯留量が下限閾値を下回ったとき、前記第2の開閉弁および前記第3の開閉弁を閉鎖することによって前記第1の開閉弁を開放する制御部と、を有し、
前記第1の開閉弁は、
ケーシングと、
前記ケーシングの内部に設けられ、高圧の前記冷媒が流入することによって前記ケーシングの延在方向に沿ってスライド移動可能に構成される弁体と、
前記弁体を付勢するように前記ケーシングの内部に設けられる付勢部材と、を有し、
前記弁体は、前記第1の開閉弁が閉鎖した状態において高圧の前記冷媒が前記フロートセンサに流入可能に構成されるとともに、前記第1の開閉弁が開放した状態において高圧の前記冷媒が前記フロートセンサに流入不可に構成される移動孔を有する、油分離装置。
【請求項2】
前記弁体は、前記弁体の空間部および前記付勢部材の間を連通する連通孔を有する、請求項1に記載の油分離装置。
【請求項3】
前記冷媒はNH
3冷媒であって、
前記不溶性冷凍機油は、前記NH
3冷媒に対して不溶性を有する、請求項1または2に記載の油分離装置。
【請求項4】
冷媒回路と、圧縮機と、蒸発器と、を有する冷凍装置において、前記冷媒回路を循環する冷媒より比重が大きく前記蒸発器に滞留した不溶性冷凍機油を前記冷媒から分離する油分離方法であって、
前記圧縮機の冷媒吸入路および前記蒸発器に接続された油戻し路と、
前記油戻し路に設けられ、内部に前記不溶性冷凍機油を貯留可能であるとともに、前記不溶性冷凍機油の貯留量を検出可能なフロートセンサと、
前記蒸発器および前記フロートセンサの間の前記油戻し路に設けられる第1の開閉弁と、
前記フロートセンサよりも下流側の前記油戻し路に設けられる第2の開閉弁と、
前記圧縮機の冷媒吐出路および前記第1の開閉弁に接続された高圧冷媒導入路と、
前記高圧冷媒導入路に設けられた第3の開閉弁と、を有し、
前記第1の開閉弁は、
ケーシングと、
前記ケーシングの内部に設けられ、高圧の前記冷媒が流入することによって前記ケーシングの延在方向に沿ってスライド移動可能に構成される弁体と、
前記弁体を付勢するように前記ケーシングの内部に設けられる付勢部材と、を有し、
前記弁体は、前記第1の開閉弁が閉鎖した状態において高圧の前記冷媒が前記フロートセンサに移動可能に構成されるとともに、前記第1の開閉弁が開放した状態において高圧の前記冷媒が通過不能に構成される移動孔を有する油分離装置において、
前記フロートセンサで検出した前記不溶性冷凍機油の貯留量が上限閾値を超えたとき、前記第2の開閉弁および前記第3の開閉弁を開放することによって前記第1の開閉弁を閉鎖し、前記フロートセンサで検出した前記不溶性冷凍機油の貯留量が下限閾値を下回ったとき、前記第2の開閉弁および前記第3の開閉弁を閉鎖することによって前記第1の開閉弁を開放する油分離方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸発器に滞留した不溶性冷凍機油を冷媒から分離する油分離装置および油分離方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オゾン層破壊防止や温暖化防止等の観点から、室内の空調や食品などの冷凍に用いる冷凍装置の冷媒として、冷却性能は高いが毒性があるNH3を一次冷媒とし、無毒及び無臭のCO2を二次冷媒とした、冷凍装置が広く用いられている。
【0003】
NH3冷媒は、他の冷媒と比べてCOP(成績係数)が高く、またアルキルベンゼンなどの不溶性冷凍機油が溶解しないため、NH3冷媒は、冷媒として長期にわたって安定する利点がある。
【0004】
一方、NH3冷媒に不溶性冷凍機油を用いた場合、不溶性冷凍機油はNH3冷媒から分離して機器類の底部に溜まりやすい。特に、低温の蒸発器では、冷凍機油の粘度が高くなるために、蒸発器に浸入した冷凍機油は徐々に蓄積し、蒸発器の性能を劣化させるおそれがある。このため、蒸発器に滞留した冷凍機油を回収する必要がある。
【0005】
これに関連して、例えば下記の特許文献1には、フロートセンサの位置センサでフロートの上下方向位置を検出し、位置センサによる検出値が上限閾値を超えたら、第1の開閉弁、第2の開閉弁、および第3の開閉弁を制御して、圧縮機の冷媒吐出路から高圧の冷媒ガスを油戻し路に供給して、フロートセンサの滞留空間に溜まって冷凍機油を油戻し路に流出させ、冷媒流入路に戻す油分離装置が開示されている。
【0006】
この油分離装置によれば、滞留空間に溜まった冷凍機油を分離して、圧縮機入口の冷媒流入路に戻すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した油分離装置では、第1の開閉弁として、モータバルブが用いられているため、バルブを駆動するためのモーター、およびモーターを駆動するためのアクチュエータ等が必要となるため、装置が大きくなる。さらに、第2の開閉弁および第3の開閉弁に加えて、第1の開閉弁の制御も必要となり制御が煩雑である。
【0009】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、装置の複雑化を抑制しつつ、制御部による第1の開閉弁の制御を行うことなく、蒸発器に溜まった不溶性冷凍機油を冷媒から分離することのできる油分離装置および油分離方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成する本発明に係る油分離装置は、冷媒回路と、圧縮機と、蒸発器と、を有する冷凍装置において、前記冷媒回路を循環する冷媒より比重が大きく前記蒸発器に滞留した不溶性冷凍機油を前記冷媒から分離する油分離装置である。油分離装置は、前記圧縮機の冷媒吸入路および前記蒸発器に接続された油戻し路と、前記油戻し路に設けられ、内部に前記不溶性冷凍機油を貯留可能であるとともに、前記不溶性冷凍機油の貯留量を検出可能なフロートセンサと、前記蒸発器および前記フロートセンサの間の前記油戻し路に設けられる第1の開閉弁と、前記フロートセンサよりも下流側の前記油戻し路に設けられる第2の開閉弁と、前記圧縮機の冷媒吐出路および前記第1の開閉弁に接続された高圧冷媒導入路と、前記高圧冷媒導入路に設けられた第3の開閉弁と、前記フロートセンサで検出した前記不溶性冷凍機油の貯留量が上限閾値を超えたとき、前記第2の開閉弁および前記第3の開閉弁を開放することによって前記第1の開閉弁を閉鎖し、前記フロートセンサで検出した前記不溶性冷凍機油の貯留量が下限閾値を下回ったとき、前記第2の開閉弁および前記第3の開閉弁を閉鎖することによって前記第1の開閉弁を開放する制御部と、を有する。前記第1の開閉弁は、ケーシングと、前記ケーシングの内部に設けられ、高圧の前記冷媒が流入することによって前記ケーシングの延在方向に沿ってスライド移動可能に構成される弁体と、前記弁体を付勢するように前記ケーシングの内部に設けられる付勢部材と、を有する。前記弁体は、前記第1の開閉弁が閉鎖した状態において高圧の前記冷媒が前記フロートセンサに移動可能に構成されるとともに、前記第1の開閉弁が開放した状態において高圧の前記冷媒が通過不能に構成される移動孔を有する。
【0011】
また、上記目的を達成する本発明に係る油分離方法は、冷媒回路と、圧縮機と、蒸発器と、を有する冷凍装置において、前記冷媒回路を循環する冷媒より比重が大きく前記蒸発器に滞留した不溶性冷凍機油を前記冷媒から分離する油分離方法である。油分離装置は、前記圧縮機の冷媒吸入路および前記蒸発器に接続された油戻し路と、前記油戻し路に設けられ、内部に前記不溶性冷凍機油を貯留可能であるとともに、前記不溶性冷凍機油の貯留量を検出可能なフロートセンサと、前記蒸発器および前記フロートセンサの間の前記油戻し路に設けられる第1の開閉弁と、前記フロートセンサよりも下流側の前記油戻し路に設けられる第2の開閉弁と、前記圧縮機の冷媒吐出路および前記第1の開閉弁に接続された高圧冷媒導入路と、前記高圧冷媒導入路に設けられた第3の開閉弁と、を有する。また、前記第1の開閉弁は、ケーシングと、前記ケーシングの内部に設けられ、高圧の前記冷媒が流入することによって前記ケーシングの延在方向に沿ってスライド移動可能に構成される弁体と、前記弁体を付勢するように前記ケーシングの内部に設けられる付勢部材と、を有する。前記弁体は、前記第1の開閉弁が閉鎖した状態において高圧の前記冷媒が前記フロートセンサに移動可能に構成されるとともに、前記第1の開閉弁が開放した状態において高圧の前記冷媒が通過不能に構成される移動孔を有する。前記フロートセンサで検出した前記不溶性冷凍機油の貯留量が上限閾値を超えたとき、前記第2の開閉弁および前記第3の開閉弁を開放することによって前記第1の開閉弁を閉鎖し、前記フロートセンサで検出した前記不溶性冷凍機油の貯留量が下限閾値を下回ったとき、前記第2の開閉弁および前記第3の開閉弁を閉鎖することによって前記第1の開閉弁を開放する。
【0012】
上述の油分離装置および油分離方法によれば、第1の開閉弁がケーシング、弁体、および付勢部材からなるため、先行技術文献に開示された第1の開閉弁がモータバルブである構成よりも装置の複雑化を抑制することができる。また、制御部が第2の開閉弁および第3の開閉弁を開くことによって、自動的に第1の開閉弁が閉じるとともに、制御部が第2の開閉弁および第3の開閉弁を閉じることによって、自動的に第1の開閉弁が開く。このため、制御部による第1の開閉弁の制御を行う必要がない。以上から、装置の複雑化を抑制しつつ、制御部による第1の開閉弁の制御を行うことなく、蒸発器に溜まった不溶性冷凍機油を冷媒から分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態に係る油分離装置を備える冷凍装置の系統図である。
【
図2】本実施形態に係る油分離装置の一部を示す概略図であって、第1の開閉弁が開放した状態を示す概略図である。
【
図3】本実施形態に係る油分離装置の一部を示す概略図であって、第1の開閉弁が閉鎖した状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態を、
図1~
図3を参照しつつ説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係る油分離装置70を備える冷凍装置1の系統図である。
図2は、本実施形態に係る油分離装置70の一部を示す概略図であって、第1の開閉弁73が開放した状態を示す概略図である。
図3は、本実施形態に係る油分離装置70の一部を示す概略図であって、第1の開閉弁73が閉鎖した状態を示す概略図である。
【0016】
まず、本発明の実施形態に係る油分離装置70が用いられる冷凍装置1の構成について説明する。冷凍装置1は、
図1に示すように、NH
3冷媒が循環する一次冷媒回路10と、CO
2冷媒が循環する二次冷媒回路20と、一次冷媒回路10上に設けられる圧縮機30と、一次冷媒回路10上に設けられる凝縮器40と、一次冷媒回路10上に設けられる蒸発器50と、二次冷媒回路20上に設けられるCO
2受液器60と、蒸発器50に溜まった不溶性冷凍機油RをNH
3冷媒と分離する油分離装置70と、を有する。
【0017】
蒸発器50において、ガス状のCO2冷媒の熱により蒸発したNH3冷媒ガスは圧縮機30によって圧縮され、高温高圧のNH3冷媒ガスは凝縮器40において冷却されて凝縮し、液化したNH3冷媒液は膨張弁45に送られて膨張され、低圧NH3冷媒液は蒸発器50に送られてガス状のCO2冷媒の冷却に用いられる。
【0018】
不溶性冷凍機油Rとしては、NH3冷媒に対して潤滑性能が良好なものであって、NH3冷媒および後述するフロート72Aよりも比重が大きいものが用いられる。このような不溶性冷凍機油Rとしては、例えば、アルキルベンゼン等を挙げることができる。不溶性冷凍機油Rは、NH3冷媒との分離性が良好で、かつ高い潤滑性能を保持できる。
【0019】
一次冷媒回路10は、圧縮機30から吐出された冷媒が流れる冷媒吐出路11と、蒸発器50から流出された冷媒が圧縮機30に向けて流れる冷媒吸入路12と、を有する。
【0020】
二次冷媒回路20は、CO2冷媒液を冷却負荷に送るCO2送り路21と、冷却負荷からCO2冷媒液ガスが戻るCO2戻り路22と、を有する。
【0021】
一次冷媒回路10および二次冷媒回路20は、
図1に示すように、蒸発器50において接続されている。
【0022】
圧縮機30は、本実施形態において、半密閉型の単機2段往復動式圧縮機であり、互いに接続された低段圧縮部および高段圧縮部で構成されている。なお、圧縮機30は、単機2段往復動式圧縮機に限定されない。圧縮機30は、NH3冷媒より比重が重い不溶性冷凍機油Rを用いる。
【0023】
圧縮機30は、駆動装置としてハーチメックモーター(不図示)を有しており、ハーチメックモーターには、冷却水路(不図示)が接続されている。
【0024】
圧縮機30から吐出されたNH3冷媒ガスは、冷媒吐出路11を介して、凝縮器40に送られ、凝縮される。
【0025】
凝縮器40は、本実施形態において、シェルアンドチューブ型熱交換器で構成される。
【0026】
凝縮器40には、冷却回路41が導設されている。冷却回路41を循環する液体としては、冷凍装置1の停止中に冷却回路41に滞留した液体の凍結事故を防ぐ観点から、不凍液を用いることが好ましい。冷却回路41を循環する不凍液は、凝縮器40でNH3冷媒によって加熱される。なお、冷却回路41を循環する液体としては、不凍液に限定されず、冷却水であってもよい。
【0027】
冷却回路41は、冷却塔42に接続される。不凍液は、冷却水ポンプ43によって、冷却回路41を循環する。凝縮器40でNH3冷媒の排熱を吸収した不凍液は、冷却塔42で外気および散布水と接触し、散布水の蒸発潜熱によって冷却される。
【0028】
蒸発器50は、シェルアンドチューブ型満液式で構成され、シェル側にNH3冷媒が導入され、チューブ(伝熱管)側にCO2冷媒が導入される。蒸発器50の内部には、多数の伝熱管が配置されている。蒸発器50は、二次冷媒回路20のCO2送り路21およびCO2戻り路22が接続されている。
【0029】
蒸発器50の上部には、一次冷媒回路10の冷媒吸入路12が接続されている。
【0030】
膨張弁45を経て、蒸発器50に流入したNH3冷媒液は、CO2戻り路22から戻ったCO2冷媒から蒸発潜熱を吸収して気化するとともに、CO2冷媒を液化する。気化したNH3冷媒は、冷媒吸入路12を経て、圧縮機30に吸入される。液化したCO2冷媒液は、CO2送り路21を通って、CO2受液器60に送られる。
【0031】
CO2受液器60は、CO2冷媒を貯留する。CO2受液器60には、二次冷媒回路20のCO2送り路21およびCO2戻り路22が接続されている。
【0032】
油分離装置70は、蒸発器50に貯留したNH
3冷媒から不溶性冷凍機油Rを分離する。油分離装置70は、
図1に示すように、冷媒吸入路12および蒸発器50に接続された油戻し路71と、油戻し路71に設けられるフロートセンサ72と、蒸発器50およびフロートセンサ72の間の油戻し路71に設けられる第1の開閉弁73と、フロートセンサ72よりも下流側の油戻し路71に設けられる第2の開閉弁74と、冷媒吐出路11および第1の開閉弁73に接続された高圧冷媒導入路75と、高圧冷媒導入路75に設けられた第3の開閉弁76と、第1の開閉弁73、第2の開閉弁74、および第3の開閉弁76の開閉を制御する制御部(不図示)と、を有する。
【0033】
油戻し路71は、
図1に示すように、蒸発器50の下部および一次冷媒回路10の冷媒吸入路12に接続される。油戻し路71には、上流側から順に、第1の開閉弁73、フロートセンサ72、および第2の開閉弁74が配置されている。
【0034】
フロートセンサ72は、
図1に示すように、油戻し路71において、第1の開閉弁73および第2の開閉弁74の間に設けられる。フロートセンサ72は、
図2に示すように、内部に不溶性冷凍機油Rの貯留空間Sを有し、貯留空間Sに貯留した不溶性冷凍機油Rの貯留量を検出可能である。
【0035】
フロートセンサ72は、
図2、
図3に示すように、NH
3冷媒および不溶性冷凍機油Rの中間の比重を有するフロート72Aと、貯留空間Sを備え貯留空間Sにフロート72Aが上下移動可能に収容される収容部72Bと、貯留空間Sに流入した不溶性冷凍機油Rによって浮上するフロート72Aの上下の位置を検出し、この検出値を制御部に送る位置センサ72Cと、フロート72Aに接続され上下方向に往復移動可能なロッド72Dと、ケーシング72Eと、不溶性冷凍機油RおよびNH
3冷媒が流入する入口開口部72Fと、不溶性冷凍機油Rが流出する出口開口部72Gと、を有する。
【0036】
フロート72Aの上端にケーシング72Eの軸方向に沿って配置されたロッド72Dが装着されている。
【0037】
位置センサ72Cは、ロッド72Dの上下方向の所定の位置を検出することによって、フロート72Aの上下方向の位置を検出する。
【0038】
位置センサ72Cは、ロッド72Dの上下方向位置を検出することで、フロート72Aの上下方向位置を検出し、この検出信号を制御部に送る。
【0039】
ロッド72Dは、上下移動可能に設けられ、ロッド72Dの上端は、位置センサ72Cの高さまで達している。
【0040】
ケーシング72Eは、
図2、
図3に示すように、内部に貯留空間Sが設けられる。
【0041】
入口開口部72Fは、ケーシング72Eの側壁に設けられる。出口開口部72Gはケーシング72Eの底壁に設けられる。
【0042】
第1の開閉弁73は、
図1に示すように、蒸発器50およびフロートセンサ72の間の油戻し路71に設けられる。第1の開閉弁73は、高圧冷媒導入路75が接続される。
【0043】
第1の開閉弁73は、
図2、
図3に示すように、ケーシング73Aと、ケーシング73Aの内部に設けられ、高圧のNH
3冷媒が流入することによってケーシング73Aの延在方向(上下方向)に沿ってスライド移動可能に構成される弁体73Bと、弁体73Bを付勢するようにケーシング73Aの内部に設けられる付勢部材73Cと、を有する。
【0044】
ケーシング73Aは、内部に弁体73Bおよび付勢部材73Cが収容される。ケーシング73Aは、
図2、
図3に示すように、左側壁に開口部73Kが設けられる。開口部73Kは、第1の開閉弁73が開放した状態(不溶性冷凍機油RおよびNH
3冷媒が流通可能な状態であって、高圧のNH
3冷媒が流通不能の状態)において(
図2の状態)、蒸発器50からの不溶性冷凍機油RおよびNH
3冷媒がフロートセンサ72に向けて流通する。また、開口部73Kは、第1の開閉弁73が閉鎖した状態(不溶性冷凍機油RおよびNH
3冷媒が流通不能な状態であって、高圧のNH
3冷媒が流通可能の状態)において(
図3の状態)、高圧冷媒導入路75から高圧のNH
3冷媒がフロートセンサ72に向けて流通する。
【0045】
ケーシング73Aには、弁体73Bの底面が着座するように、第1座面73Eが形成されている。
【0046】
ケーシング73Aには、付勢部材73Cの底面が着座するように、第2座面73Qが形成されている。
【0047】
弁体73Bは、
図2、
図3に示すように、ケーシング73Aの内部であって、付勢部材73Cの上方に設けられる。弁体73Bは、高圧冷媒導入路75を流れてきた高圧のNH
3冷媒が流入する空間部73Sと、移動孔73Hと、連通孔73Gと、を有する。
【0048】
移動孔73Hは、
図3に示すように、第1の開閉弁73が閉鎖した状態において、高圧のNH
3冷媒が、移動孔73Hおよび開口部73Kを介して、フロートセンサ72に流入可能に構成されている。また、移動孔73Hは、
図2に示すように、第1の開閉弁73が開放した状態において、高圧のNH
3冷媒がフロートセンサ72に流入不可に構成される。
【0049】
連通孔73Gは、
図2、
図3に示すように、弁体73Bの空間部73Sおよび付勢部材73Cを連通する。
【0050】
弁体73Bの下部には、付勢部材73Cが着座する第3座面73Pが形成されている。
【0051】
付勢部材73Cは、
図2、
図3に示すように、ケーシング73Aの内部であって、弁体73Bの下方に設けられる。付勢部材73Cは、バネである。付勢部材73Cは、弁体73Bに対して付勢力を付与している。
【0052】
弁体73Bの空間部73Sに貯留される高圧のNH
3冷媒が所定の量未満の場合、弁体73Bの付勢力は、高圧のNH
3冷媒による弁体73Bを下に移動させる力よりも大きくなり、弁体73Bを上側に移動させた状態を維持し(
図2参照)、第1の開閉弁73が開放された状態になる。このとき、蒸発器50に貯留された不溶性冷凍機油Rは、油戻し路71を介して、第1の開閉弁73を流れて、フロートセンサ72の貯留空間Sに貯留される。
【0053】
一方、弁体73Bの空間部73Sに貯留される高圧のNH
3冷媒が所定の量以上の場合、弁体73Bの付勢力は、NH
3冷媒による弁体73Bを下に移動させる力よりも小さくなり、弁体73Bが下側に移動して(
図3参照)、第1の開閉弁73が閉鎖された状態になる。このとき、弁体73Bに設けられた移動孔73Hおよびケーシング73Aに設けられた開口部73Kが連通して、高圧のNH
3冷媒がフロートセンサ72に移動する。そして、フロートセンサ72に移動した高圧のNH
3冷媒によって、フロートセンサ72の貯留空間Sに貯留された不溶性冷凍機油Rが冷媒吸入路12に戻される。
【0054】
第2の開閉弁74は、
図1に示すように、フロートセンサ72よりも下流側の油戻し路71に設けられる。
【0055】
高圧冷媒導入路75は、
図1に示すように、第1の開閉弁73の弁体73Bおよび一次冷媒回路10の冷媒吐出路11に接続されている。高圧冷媒導入路75には、第3の開閉弁76が配置されている。
【0056】
第3の開閉弁76は、
図1に示すように、高圧冷媒導入路75に配置されている。
【0057】
上記のように構成された油分離装置70では、油戻し路71からNH3冷媒および不溶性冷凍機油Rの混合物が、入口開口部72Fを介して貯留空間Sに流入すると、混合物は比重差によって、NH3冷媒が不溶性冷凍機油Rの上方に位置し、不溶性冷凍機油Rがケーシング72Eの底部に溜まる。
【0058】
また、フロート72Aは、NH3冷媒および不溶性冷凍機油Rの中間の比重を有するため、NH3冷媒には浮かず、不溶性冷凍機油Rのみに浮く。このため、不溶性冷凍機油Rのみを出口開口部72Gから油戻し路71に流出させることができる。
【0059】
出口開口部72Gの周囲の内壁には、周方向に突起79が部分的に形成されている。突起79によってフロート72Aが最下端位置にあるときでも、フロート72Aが出口開口部72Gを塞ぐことを防止できる。
【0060】
制御部は、フロートセンサ72で検出した不溶性冷凍機油Rの貯留量に応じて、第1の開閉弁73、第2の開閉弁74、および第3の開閉弁76の開閉を制御して油戻し路71を開閉し、フロートセンサ72に貯留された不溶性冷凍機油Rを一次冷媒回路10の冷媒吸入路12に戻す。
【0061】
以下、上述した実施形態に係る油分離装置70の油分離方法について説明する。
【0062】
制御部は、位置センサ72Cの検出値が上限閾値を超えたとき、第2の開閉弁74および第3の開閉弁76を開く。これによって、高圧冷媒導入路75を介して高圧のNH
3冷媒が第1の開閉弁73の弁体73Bに流入する。そして、弁体73Bに流入した高圧のNH
3冷媒によって、弁体73Bが付勢部材73Cの付勢力に勝って、
図2の下向きに移動する(
図3参照)。すなわち、第1の開閉弁73は、
図3に示すように、閉じられた状態になる。そして、弁体73Bに設けられた移動孔73Hおよびケーシング73Aに設けられた開口部73Kが連通して、高圧のNH
3冷媒がフロートセンサ72に移動する。そして、フロートセンサ72に移動した高圧のNH
3冷媒によって、フロートセンサ72の貯留空間Sに貯留された不溶性冷凍機油Rが冷媒吸入路12に戻される。
【0063】
一方、制御部は、位置センサ72Cの検出値が下限閾値を下回ったとき、第2の開閉弁74および第3の開閉弁76を閉じる。これによって、第1の開閉弁73の弁体73Bに供給されていた高圧のNH
3冷媒の供給が停止される。そして、弁体73Bの内部の高圧のNH
3冷媒は、移動孔73Hおよび連通孔73Gから弁体73Bの外部に漏れて、弁体73Bは、付勢部材73Cの付勢力に負けて、
図2の上向きに移動する(
図2参照)。すなわち、第1の開閉弁73は、
図2に示すように、開いた状態になる。そして、蒸発器50に貯留された不溶性冷凍機油Rは、油戻し路71を介して、第1の開閉弁73を流れて、フロートセンサ72の貯留空間Sに貯留される。
【0064】
以上説明したように、本実施形態に係る油分離装置70は、一次冷媒回路10と、圧縮機30と、蒸発器50と、を有する冷凍装置1において、一次冷媒回路10を循環するNH3冷媒より比重が大きく蒸発器50に滞留した不溶性冷凍機油RをNH3冷媒から分離する油分離装置70である。油分離装置70は、冷媒回路10の冷媒吸入路12および蒸発器50に接続された油戻し路71と、油戻し路71に設けられ、内部に不溶性冷凍機油Rを貯留可能であるとともに、不溶性冷凍機油Rの貯留量を検出可能なフロートセンサ72と、蒸発器50およびフロートセンサ72の間の油戻し路71に設けられる第1の開閉弁73と、フロートセンサ72よりも下流側の油戻し路71に設けられる第2の開閉弁74と、一次冷媒回路10の冷媒吐出路11および第1の開閉弁73に接続された高圧冷媒導入路75と、高圧冷媒導入路75に設けられた第3の開閉弁76と、フロートセンサ72で検出した不溶性冷凍機油Rの貯留量が上限閾値を超えたとき、第2の開閉弁74および第3の開閉弁76を開放することによって、第1の開閉弁73を閉鎖し、フロートセンサ72で検出した不溶性冷凍機油Rの貯留量が下限閾値を下回ったとき、第2の開閉弁74および第3の開閉弁76を閉鎖することによって第1の開閉弁73を開放する制御部と、を有する。第1の開閉弁73は、ケーシング73Aと、ケーシング73Aの内部に設けられ、高圧のNH3冷媒が流入することによってケーシング73Aの延在方向に沿ってスライド移動可能に構成される弁体73Bと、弁体73Bを付勢するようにケーシング73Aの内部に設けられる付勢部材73Cと、を有する。弁体73Bは、第1の開閉弁73が閉鎖した状態において高圧のNH3冷媒がフロートセンサ72に流入可能に構成されるとともに第1の開閉弁73が開放した状態において高圧のNH3冷媒がフロートセンサ72に流入不可に構成される移動孔73Hを有する。このように構成された油分離装置70によれば、第1の開閉弁73がケーシング73A、弁体73B、および付勢部材73Cからなるため、先行技術文献に開示された第1の開閉弁がモータバルブである構成よりも装置の複雑化を抑制することができる。また、制御部が第2の開閉弁74および第3の開閉弁76を開くことによって、自動的に第1の開閉弁73が閉じるとともに、制御部が第2の開閉弁74および第3の開閉弁76を閉じることによって、自動的に第1の開閉弁が開く。このため、制御部による第1の開閉弁の制御を行う必要がない。以上から、装置の複雑化を抑制しつつ、制御部による第1の開閉弁73の制御を行うことなく、蒸発器50に溜まった不溶性冷凍機油RをNH3冷媒から分離することができる。
【0065】
また、弁体73Bは、弁体73Bの空間部73Sおよび付勢部材73Cの間を連通する連通孔73Gを有する。このように構成された油分離装置70によれば、連通孔73Gを介して、弁体73Bの空間部73Sに貯留された高圧のNH3冷媒を外部に放出することができるため、好適に、第1の開閉弁73を開放状態に切り替えることができる。
【0066】
また、冷媒はNH3冷媒であって、不溶性冷凍機油Rは、NH3冷媒に対して不溶性を有する。このように構成された油分離装置70によれば、NH3冷媒が循環する冷凍装置1に好適に用いることができる。
【0067】
また、以上説明したように、本実施形態に係る油分離装置70の油分離方法は、一次冷媒回路10と、圧縮機30と、蒸発器50と、を有する冷凍装置1において、一次冷媒回路10を循環するNH3冷媒より比重が大きく蒸発器50に滞留した不溶性冷凍機油RをNH3冷媒から分離する油分離方法である。油分離方法では、フロートセンサ72で検出した不溶性冷凍機油Rの貯留量が上限閾値を超えたとき、第2の開閉弁74および第3の開閉弁76を開放することによって第1の開閉弁73を閉鎖し、フロートセンサ72で検出した不溶性冷凍機油Rの貯留量が下限閾値を下回ったとき、第2の開閉弁74および第3の開閉弁76を閉鎖することによって、第1の開閉弁73を開放する。この油分離方法によれば、第1の開閉弁73がケーシング73A、弁体73B、および付勢部材73Cからなるため、先行技術文献に開示された第1の開閉弁がモータバルブである構成よりも装置の複雑化を抑制することができる。また、制御部が第2の開閉弁74および第3の開閉弁76を開くことによって、自動的に第1の開閉弁73が閉じるとともに、制御部が第2の開閉弁74および第3の開閉弁76を閉じることによって、自動的に第1の開閉弁が開く。このため、制御部による第1の開閉弁の制御を行う必要がない。以上から、装置の複雑化を抑制しつつ、制御部による第1の開閉弁73の制御を行うことなく、蒸発器50に溜まった不溶性冷凍機油RをNH3冷媒から分離することができる。
【0068】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々改変することができる。
【0069】
例えば、上述した実施形態では、一次冷媒回路10を循環する冷媒としてNH3冷媒を、二次冷媒回路20を循環する冷媒としてCO2冷媒をそれぞれ用いたが、これらに限定されない。
【0070】
また、上述した実施形態では、弁体73Bは、連通孔73Gを有していたが、弁体は、連通孔を有していなくてもよい。
【0071】
また、上述した実施形態では、二次冷媒回路20を循環する冷媒はCO2冷媒であったが、これに限定されず、不凍液(ブライン)または冷却水であってもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 冷凍装置、
10 一次冷媒回路、
20 二次冷媒回路、
30 圧縮機、
40 凝縮器、
50 蒸発器、
70 油分離装置、
71 油戻し路、
72 フロートセンサ、
73 第1の開閉弁、
73A ケーシング、
73B 弁体、
73C 付勢部材、
73G 連通孔、
73H 移動孔、
74 第2の開閉弁、
75 高圧冷媒導入路、
76 第3の開閉弁、
R 不溶性冷凍機油、
S 貯留空間。