(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】ループ型ヒートパイプ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F28D 15/04 20060101AFI20231024BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
F28D15/04 E
F28D15/02 101L
F28D15/02 102A
F28D15/02 106Z
(21)【出願番号】P 2020046252
(22)【出願日】2020-03-17
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】町田 洋弘
【審査官】古川 峻弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-026931(JP,A)
【文献】特開2020-008249(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108278916(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28D 15/00-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の最外金属層と、前記一対の最外金属層の間に設けられた中間金属層からなり、
作動流体を気化させる蒸発器と、
前記作動流体を液化する凝縮器と、
前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する液管と、
前記蒸発器と前記凝縮器とを接続し、前記液管と共にループ状の流路を形成する蒸気管と、
を有し、
前記中間金属層は、
前記蒸発器、前記凝縮器、前記液管及び前記蒸気管の管壁の一部を構成する一対の壁部と、
前記一対の壁部の間に設けられた多孔質体と、
前記多孔質体を貫通し、前記一対の最外金属層同士を接合する支柱と、
を有し、
前記多孔質体は、
前記一対の壁部の一方と前記支柱との間に位置し、前記支柱の前記一対の壁部の一方側の面に直接接触する第1領域と、
前記一対の壁部の他方と前記支柱との間に位置し、前記支柱の前記一対の壁部の他方側の面に直接接触する第2領域と、
を有し、
前記支柱は、前記多孔質体と一体に形成されており、
前記中間金属層は、1又は2以上の金属層からなり、
前記金属層の各々は、
前記壁部の少なくとも一部を構成する第1部分と、
前記第1部分に連結され、前記多孔質体の少なくとも一部を構成する第2部分と、
前記第2部分に連結され、前記支柱の少なくとも一部を構成する第3部分と、
を有することを特徴とするループ型ヒートパイプ。
【請求項2】
前記支柱はソリッドであることを特徴とする請求項
1に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項3】
前記中間金属層は2以上の金属層からなり、
前記第3部分はベタ状の部分であり、
2以上の前記金属層の間で前記第3部分同士が接合されて前記支柱が構成されていることを特徴とする請求項1
又は2に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項4】
前記第3部分の各々は、平面視で他の前記第3部分と重なる領域を含むことを特徴とする請求項1乃至
3のいずれか1項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項5】
2以上の前記金属層の間で、平面視での前記第3部分の位置が一致していることを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項6】
前記中間金属層は、前記一対の壁部の間の複数箇所に前記支柱を有することを特徴とする請求項1乃至
5のいずれか1項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項7】
前記多孔質体が前記液管内に対をなして設けられ、
前記支柱の一部が前記一対の多孔質体の一方を貫通し、
前記支柱の他の一部が前記一対の多孔質体の他方を貫通し、
前記一対の多孔質体の一方は、前記一対の壁部の一方と一体に形成され、
前記一対の多孔質体の他方は、前記一対の壁部の他方と一体に形成され、
前記一対の多孔質体の間に、前記作動流体が流れる空間を有することを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか1項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項8】
前記多孔質体が前記液管内に前記一対の壁部から離間して設けられ、
前記一対の壁部の一方と前記多孔質体との間と、前記一対の壁部の他方と前記多孔質体との間とに、前記作動流体が流れる空間を有することを特徴とする請求項1乃至
6のいずれか1項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項9】
前記支柱は、前記液管に沿って延びることを特徴とする請求項
7又は
8に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項10】
前記多孔質体が前記蒸発器内に設けられ、
前記多孔質体は、平面視において、連結部と、一端が前記連結部と連結する複数の突起部と、を有する櫛歯状に形成され、
前記支柱の一部が前記連結部を貫通し、
前記支柱の他の一部が前記突起部を貫通することを特徴とする請求項1乃至
9のいずれか1項に記載のループ型ヒートパイプ。
【請求項11】
一対の最外金属層と、前記一対の最外金属層の間に設けられた中間金属層からなり、作動流体を気化させる蒸発器と、前記作動流体を液化する凝縮器と、前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する液管と、前記蒸発器と前記凝縮器とを接続し、前記液管と共にループ状の流路を形成する蒸気管と、を有するループ型ヒートパイプの製造方法であって、
1又は2以上の金属層から、前記蒸発器、前記凝縮器、前記液管及び前記蒸気管の管壁の一部を構成する一対の壁部と、前記一対の壁部の間に設けられた多孔質体と、前記多孔質体を貫通し、前記一対の最外金属層同士を接合する支柱と、を有する前記中間金属層を形成する工程を有し、
前記中間金属層を形成する工程は、
前記1又は2以上の金属層をエッチングすることにより、前記金属層の各々に、前記壁部の少なくとも一部を構成する第1部分と、前記第1部分に連結され、前記多孔質体の少なくとも一部を構成する第2部分と、前記第2部分に連結され、前記支柱の少なくとも一部を構成する第3部分と、を形成する工程を有
し、
前記多孔質体は、
前記一対の壁部の一方と前記支柱との間に位置し、前記支柱の前記一対の壁部の一方側の面に直接接触する第1領域と、
前記一対の壁部の他方と前記支柱との間に位置し、前記支柱の前記一対の壁部の他方側の面に直接接触する第2領域と、
を有し、
前記支柱は、前記多孔質体と一体に形成されることを特徴とするループ型ヒートパイプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ループ型ヒートパイプ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に搭載されるCPU(Central Processing Unit)等の発熱部品を冷却するデバイスとして、ヒートパイプが知られている。ヒートパイプは、作動流体の相変化を利用して熱を輸送するデバイスである。
【0003】
ヒートパイプの一例として、発熱部品の熱により作動流体を気化させる蒸発器と、気化した作動流体を冷却して液化する凝縮器とを備え、蒸発器と凝縮器とがループ状の流路を形成する液管と蒸気管で接続されたループ型ヒートパイプが挙げられる。ループ型ヒートパイプでは、作動流体はループ状の流路を一方向に流れる。
【0004】
又、ループ型ヒートパイプの蒸発器や液管内には、多孔質体が設けられており、多孔質体に生じる毛細管力で液管内の作動流体を蒸発器に誘導し、蒸発器から液管に蒸気が逆流することを抑制している。多孔質体には多数の細孔が形成されている。各細孔は、金属層の一方の面側に形成された有底孔と他方の面側に形成された有底孔とが部分的に連通して形成されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6291000号公報
【文献】特許第6400240号公報
【文献】特開平11-183067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のループ型ヒートパイプでは、温度変化に起因する作動流体の体積変化によって変形が生じるおそれがある。
【0007】
本開示は、作動流体の体積変化による変形を抑制できるループ型ヒートパイプ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一形態によれば、一対の最外金属層と、前記一対の最外金属層の間に設けられた中間金属層からなり、作動流体を気化させる蒸発器と、前記作動流体を液化する凝縮器と、前記蒸発器と前記凝縮器とを接続する液管と、前記蒸発器と前記凝縮器とを接続し、前記液管と共にループ状の流路を形成する蒸気管と、を有し、前記中間金属層は、前記蒸発器、前記凝縮器、前記液管及び前記蒸気管の管壁の一部を構成する一対の壁部と、前記一対の壁部の間に設けられた多孔質体と、前記多孔質体を貫通し、前記一対の最外金属層同士を接合する支柱と、を有し、前記多孔質体は、前記一対の壁部の一方と前記支柱との間に位置し、前記支柱の前記一対の壁部の一方側の面に直接接触する第1領域と、前記一対の壁部の他方と前記支柱との間に位置し、前記支柱の前記一対の壁部の他方側の面に直接接触する第2領域と、を有し、前記支柱は、前記多孔質体と一体に形成されており、前記中間金属層は、1又は2以上の金属層からなり、前記金属層の各々は、前記壁部の少なくとも一部を構成する第1部分と、前記第1部分に連結され、前記多孔質体の少なくとも一部を構成する第2部分と、前記第2部分に連結され、前記支柱の少なくとも一部を構成する第3部分と、を有するループ型ヒートパイプが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、作動流体の体積変化による変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプを例示する平面模式図である。
【
図2】第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの蒸発器及びその周囲の断面図である。
【
図3】第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの液管を例示する平面図である。
【
図4】第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの液管を例示する断面図(その1)である。
【
図6】第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの液管を例示する断面図(その2)である。
【
図8】第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの蒸発器を例示する平面図である。
【
図9】第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの蒸発器を例示する断面図(その1)である。
【
図10】第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの蒸発器を例示する断面図(その2)である。
【
図11】第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの製造工程を例示する図(その1)である。
【
図12】第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの製造工程を例示する図(その2)である。
【
図13】第1の実施の形態の変形例1に係るループ型ヒートパイプの液管を例示する平面図である。
【
図14】第1の実施の形態の変形例2に係るループ型ヒートパイプの液管を例示する断面図である。
【
図15】第1の実施の形態の変形例3に係るループ型ヒートパイプの蒸発器を例示する図である。
【
図16】第2の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの液管を例示する平面図である。
【
図17】第2の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの液管を例示する断面図(その1)である。
【
図18】第2の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの液管を例示する断面図(その2)である。
【
図19】第2の実施の形態の変形例に係るループ型ヒートパイプの液管を例示する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0012】
〈第1の実施の形態〉
[第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの構造]
まず、第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの構造について説明する。
図1は、第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプを例示する平面模式図である。
【0013】
図1を参照するに、ループ型ヒートパイプ1は、蒸発器10と、凝縮器20と、蒸気管30と、液管40とを有する。ループ型ヒートパイプ1は、例えば、スマートフォンやタブレット端末等のモバイル型の電子機器2に収容することができる。
【0014】
ループ型ヒートパイプ1において、蒸発器10は、作動流体Cを気化させて蒸気Cvを生成する機能を有する。凝縮器20は、作動流体Cの蒸気Cvを液化させる機能を有する。蒸発器10と凝縮器20は、蒸気管30及び液管40により接続されており、蒸気管30及び液管40によって作動流体C又は蒸気Cvが流れるループである流路50が形成されている。
【0015】
図2は、第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの蒸発器及びその周囲の断面図である。
図1及び
図2に示すように、蒸発器10には、例えば4つの貫通孔10xが形成されている。蒸発器10に形成された各貫通孔10xと回路基板100に形成された各貫通孔100xにボルト150を挿入し、回路基板100の下面側からナット160で止めることにより、蒸発器10と回路基板100とが固定される。蒸発器10、凝縮器20、蒸気管30及び液管40は、上面1aと、上面1aとは反対側の下面1bとを有する。本開示において平面視とは、上面1aに垂直な方向から視ることをいう。
【0016】
回路基板100には、例えば、CPU等の発熱部品120がバンプ110により実装され、発熱部品120の上面が蒸発器10の下面1bと密着する。蒸発器10内の作動流体Cは、発熱部品120で発生した熱により気化し、蒸気Cvが生成される。
【0017】
図1に示すように、蒸発器10に生成された蒸気Cvは、蒸気管30を通って凝縮器20に導かれ、凝縮器20において液化する。これにより、発熱部品120で発生した熱が凝縮器20に移動し、発熱部品120の温度上昇が抑制される。凝縮器20で液化した作動流体Cは、液管40を通って蒸発器10に導かれる。蒸気管30の幅W
1は、例えば、8mm程度とすることができる。又、液管40の幅W
2は、例えば、6mm程度とすることができる。
【0018】
作動流体Cの種類は特に限定されないが、蒸発潜熱によって発熱部品120を効率的に冷却するために、蒸気圧が高く、かつ蒸発潜熱が大きい流体を使用することが好ましい。そのような流体としては、例えば、アンモニア、水、フロン、アルコール、及びアセトンを挙げることができる。
【0019】
蒸発器10、凝縮器20、蒸気管30、及び液管40は、例えば、金属層が複数積層された構造とすることができる。後述のように、蒸発器10、凝縮器20、蒸気管30、及び液管40は、金属層61~66の6層が積層された構造を有する(
図4~
図7参照)。蒸発器10、凝縮器20、蒸気管30、及び液管40において、金属層61及び66が最外金属層であり、金属層62~65が中間金属層である。但し、蒸発器10、凝縮器20、蒸気管30、及び液管40は、最外層となる一対の最外金属層と、最外金属層の間の1又は2以上の金属層が積層されてなる中間金属層とを備えていればよい。
【0020】
金属層61~66は、例えば、熱伝導性に優れた銅層であって、固相接合等により互いに直接接合されている。金属層61~66の各々の厚さは、例えば、50μm~200μm程度とすることができる。なお、金属層61~66は銅層には限定されず、ステンレス層やアルミニウム層、マグネシウム合金層等から形成してもよい。金属層の積層数は限定されず、5層以下や7層以上の金属層を積層してもよい。
【0021】
蒸発器10、凝縮器20、蒸気管30、及び液管40は、それぞれ、作動流体C又はその蒸気Cvが流れる方向及び金属層61~66の積層方向の両方向に垂直な方向の両端部に、金属層61~66のすべてが積層されて構成された管壁90を有する。
【0022】
ここで、液管40の構造について説明する。
図3~
図7は、第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの液管を例示する図である。
図3は、
図1中のA部の平面図である。
図4は、
図3中のIV-IV線に沿う断面図であり、
図5は、
図4の分解図である。
図6は、
図3中のVI-VI線に沿う断面図であり、
図7は、
図6の分解図である。
図3では、液管40内の多孔質体及び支柱の平面形状を示すため、一方の最外層となる金属層(
図4~
図7に示す金属層61)の図示が省略されている。
図3~
図7において、金属層61~66の積層方向をZ方向、Z方向に垂直な平面内の任意の方向をX方向、この平面内においてX方向と直交する方向をY方向としている(他の図も同様)。又、本開示における平面視とは、Z方向からの平面視を意味する。
【0023】
図3~
図7に示すように、液管40の中間金属層(金属層62~65)には、管壁90の一部を構成する一対の壁部91と、一対の壁部91の間の多孔質体60とが設けられている。又、液管40の中間金属層(金属層62~65)には、多孔質体60を貫通し、金属層61と金属層66とを接合するソリッドな支柱81が設けられている。
【0024】
多孔質体60は、1層目の金属層61(一方の最外金属層)の下面及び6層目の金属層66(他方の最外金属層)の上面と接している。金属層61及び金属層66には、孔や溝は形成されていない。これに対して、
図4~
図7に示すように、多孔質体60を構成する2層目の金属層62には、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔62xと、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔62yとが、それぞれ複数個形成されている。
【0025】
有底孔62xと有底孔62yとは、平面視でX方向に交互に配置されている。又、有底孔62xと有底孔62yとは、平面視でY方向に交互に配置されている。X方向に交互に配置された有底孔62xと有底孔62yとは、平面視で部分的に重複しており、重複する部分は連通して細孔62zを形成している。Y方向に交互に配置された有底孔62xと有底孔62yとは、所定間隔を有して形成されており、平面視で重複していない。そのため、Y方向に交互に配置された有底孔62xと有底孔62yとは、細孔を形成していない。
【0026】
有底孔62x及び62yは、例えば、直径が100μm~300μm程度の円形とすることができるが、楕円形や多角形等の任意の形状として構わない。有底孔62x及び62yの深さは、例えば、金属層62の厚さの半分程度とすることができる。隣接する有底孔62xの間隔は、例えば、100μm~400μm程度とすることができる。隣接する有底孔62yの間隔は、例えば、100μm~400μm程度とすることができる。
【0027】
有底孔62x及び62yの内壁は、底面側から開口側に向かって拡幅するテーパ形状とすることができる。しかし、これに限らず、有底孔62x及び62yの内壁は、底面に対して垂直であっても構わない。有底孔62x及び62yの内壁面の形状は、テーパ形状や垂直に限らない。例えば、有底孔62x及び62yの内壁面が湾曲面からなる凹形状とすることができる。湾曲面からなる凹形状としては、例えば、断面形状が略半円形や略半楕円形となる凹形状が挙げられる。細孔62zの短手方向の幅は、例えば、10μm~50μm程度とすることができる。又、細孔62zの長手方向の幅は、例えば、50μm~150μm程度とすることができる。
【0028】
図4~
図7に示すように、多孔質体60を構成する3層目の金属層63には、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔63xと、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔63yとが、それぞれ複数個形成されている。
【0029】
金属層63では、有底孔63xのみがX方向に配置された列と、有底孔63yのみがX方向に配置された列とが、Y方向に交互に配置されている。Y方向に交互に配置された列において、隣接する列の有底孔63xと有底孔63yとは、平面視で部分的に重複しており、重複する部分は連通して細孔63zを形成している。
【0030】
但し、細孔63zを形成する隣接する有底孔63xと有底孔63yとは、中心位置がX方向にずれている。言い換えれば、細孔63zを形成する有底孔63xと有底孔63yとは、X方向及びY方向に対して斜め方向に交互に配置されている。有底孔63x及び63y、細孔63zの形状等は、例えば、有底孔62x及び62y、細孔62zの形状等と同様とすることができる。
【0031】
金属層62の有底孔62yと、金属層63の有底孔63xとは、平面視で重複する位置に形成されている。そのため、金属層62と金属層63との界面には、細孔は形成されない。有底孔62yと有底孔63xとが平面視でずれて配置され、金属層62と金属層63との界面に細孔が形成されていてもよい。
【0032】
図4~
図7に示すように、多孔質体60を構成する4層目の金属層64には、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔64xと、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔64yとが、それぞれ複数個形成されている。
【0033】
有底孔64xと有底孔64yとは、平面視でX方向に交互に配置されている。又、有底孔64xと有底孔64yとは、平面視でY方向に交互に配置されている。X方向に交互に配置された有底孔64xと有底孔64yとは、平面視で部分的に重複しており、重複する部分は連通して細孔64zを形成している。Y方向に交互に配置された有底孔64xと有底孔64yとは、所定間隔を有して形成されており、平面視で重複していない。そのため、Y方向に交互に配置された有底孔64xと有底孔64yとは、細孔を形成していない。有底孔64x及び64y、細孔64zの形状等は、例えば、有底孔62x及び62y、細孔62zの形状等と同様とすることができる。
【0034】
金属層63の有底孔63yと、金属層64の有底孔64xとは、平面視で重複する位置に形成されている。そのため、金属層63と金属層64との界面には、細孔は形成されない。有底孔63yと有底孔64xとが平面視でずれて配置され、金属層63と金属層64との界面に細孔が形成されていてもよい。
【0035】
図4~
図7に示すように、多孔質体60を構成する5層目の金属層65には、上面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔65xと、下面側から厚さ方向の略中央部にかけて窪む有底孔65yとが、それぞれ複数個形成されている。
【0036】
金属層65では、有底孔65xのみがX方向に配置された列と、有底孔65yのみがX方向に配置された列とが、Y方向に交互に配置されている。Y方向に交互に配置された列において、隣接する列の有底孔65xと有底孔65yとは、平面視で部分的に重複しており、重複する部分は連通して細孔65zを形成している。
【0037】
但し、細孔65zを形成する隣接する有底孔65xと有底孔65yとは、中心位置がX方向にずれている。言い換えれば、細孔65zを形成する有底孔65xと有底孔65yとは、X方向及びY方向に対して斜め方向に交互に配置されている。有底孔65x及び65y、細孔65zの形状等は、例えば、有底孔62x及び62y、細孔62zの形状等と同様とすることができる。
【0038】
金属層64の有底孔64yと、金属層65の有底孔65xとは、平面視で重複する位置に形成されている。そのため、金属層64と金属層65との界面には、細孔は形成されない。有底孔64yと有底孔65xとが平面視でずれて配置され、金属層64と金属層65との界面に細孔が形成されていてもよい。
【0039】
各金属層に形成された細孔同士は互いに連通しており、互いに連通する細孔は多孔質体60内に三次元的に広がっている。そのため、作動流体Cは、毛細管力により、互いに連通する細孔内を三次元的に広がる。
【0040】
多孔質体60を構成する有底孔の少なくとも一部は、凝縮器20内の流路50と連通している。これにより、作動流体Cが多孔質体60内に浸透することができる。
【0041】
このように、液管40には多孔質体60が設けられており、多孔質体60は液管40に沿って蒸発器10の近傍まで延びている。これにより、多孔質体60に生じる毛細管力によって、液管40内の液相の作動流体Cが蒸発器10まで誘導される。
【0042】
その結果、蒸発器10からのヒートリーク等によって液管40内を蒸気Cvが逆流しようとしても、多孔質体60から液相の作動流体Cに作用する毛細管力で蒸気Cvを押し戻すことができ、蒸気Cvの逆流を防止することが可能となる。
【0043】
なお、液管40には作動流体Cを注入するための注入口(図示せず)が形成されているが、注入口は封止部材により塞がれており、ループ型ヒートパイプ1内は気密に保たれる。
【0044】
支柱81は、例えば、液管40内の複数箇所に、多孔質体60を貫通するようにして配置されている。支柱81は、例えば、液管40に沿って延びており、平面視で作動流体Cが流れる方向(Y方向)に延びる長方形状の平面形状を備える。例えば、支柱81は、平面視で格子状に配置されている。すなわち、Y方向に複数の支柱81が並んで配置され、X方向にも複数の支柱81が並んで配置されている。
【0045】
図4~
図7に示すように、2層目の金属層62には、壁部91の一部を構成する第1部分621と、多孔質体60の一部を構成する第2部分622と、支柱81の一部を構成する第3部分623とが設けられている。第2部分622は第1部分621に連結され、第3部分623は第2部分622に連結されている。第1部分621及び第3部分623には、孔や溝は形成されていない。第2部分622には、有底孔62xと、有底孔62yと、細孔62zとが形成されている。後述のように、第1部分621、第2部分622及び第3部分623は、1枚の金属層をエッチングすることにより形成されている。すなわち、第1部分621、第2部分622及び第3部分623は一体的に形成されている。
【0046】
図4~
図7に示すように、3層目の金属層63には、壁部91の一部を構成する第1部分631と、多孔質体60の一部を構成する第2部分632と、支柱81の一部を構成する第3部分633とが設けられている。第2部分632は第1部分631に連結され、第3部分633は第2部分632に連結されている。第1部分631及び第3部分633には、孔や溝は形成されていない。第2部分632には、有底孔63xと、有底孔63yと、細孔63zとが形成されている。後述のように、第1部分631、第2部分632及び第3部分633は、1枚の金属層をエッチングすることにより形成されている。すなわち、第1部分631、第2部分632及び第3部分633は一体的に形成されている。
【0047】
図4~
図7に示すように、4層目の金属層64には、壁部91の一部を構成する第1部分641と、多孔質体60の一部を構成する第2部分642と、支柱81の一部を構成する第3部分643とが設けられている。第2部分642は第1部分641に連結され、第3部分643は第2部分642に連結されている。第1部分641及び第3部分643には、孔や溝は形成されていない。第2部分642には、有底孔64xと、有底孔64yと、細孔64zとが形成されている。後述のように、第1部分641、第2部分642及び第3部分643は、1枚の金属層をエッチングすることにより形成されている。すなわち、第1部分641、第2部分642及び第3部分643は一体的に形成されている。
【0048】
図4~
図7に示すように、5層目の金属層65には、壁部91の一部を構成する第1部分651と、多孔質体60の一部を構成する第2部分652と、支柱81の一部を構成する第3部分653とが設けられている。第2部分652は第1部分651に連結され、第3部分653は第2部分652に連結されている。第1部分651及び第3部分653には、孔や溝は形成されていない。第2部分652には、有底孔65xと、有底孔65yと、細孔65zとが形成されている。後述のように、第1部分651、第2部分652及び第3部分653は、1枚の金属層をエッチングすることにより形成されている。すなわち、第1部分651、第2部分652及び第3部分653は一体的に形成されている。
【0049】
第1部分621、631、641及び651はベタ状の部分である。第3部分623、633、643及び653もベタ状の部分である。平面視で、第1部分621、631、641及び651が互いに重なり合い、第2部分622、632、642及び652が互いに重なり合い、第3部分623、633、643及び653が互いに重なり合っている。又、上述のように、金属層61~66は、固相接合等により互いに直接接合されている。第1部分621、631、641及び651が互いに接合されて壁部91が構成されている。金属層61の一部と、壁部91と、金属層66の一部とから管壁90が構成されている。第2部分622、632、642及び652が互いに接合されて多孔質体60が構成されている。第3部分623、633、643及び653が互いに接合されてソリッドな支柱81が構成されている。支柱81は金属層61及び金属層66に接合されている。
【0050】
次に、蒸発器10の構造について説明する。
図8~
図10は、第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの蒸発器を例示する図である。
図8は平面図である。
図9は、
図8中のIX-IX線に沿う断面図である。
図10は、
図8中のX-X線に沿う断面図である。
図8では、蒸発器10内の多孔質体及び支柱の平面形状を示すため、一方の最外層となる金属層(
図9~
図10に示す金属層61)の図示が省略されている。
【0051】
図8~
図10に示すように、蒸発器10の中間金属層(金属層62~65)には、管壁90の一部を構成する一対の壁部91と、一対の壁部91の間の多孔質体60とが設けられている。又、蒸発器10の中間金属層(金属層62~65)には、多孔質体60を貫通し、金属層61と金属層66とを接合するソリッドな支柱82及び83が設けられている。
【0052】
図8に示すように、蒸発器10内の多孔質体60は、連結部60v及び突起部60wを備えている。
【0053】
連結部60vは、平面視において、X方向の最も液管40側(蒸発器10に液管40が接続されている側)に設けられ、Y方向に延びている。連結部60vの液管40側の面の一部は、蒸発器10の管壁90に接し、残りの一部は、液管40内の多孔質体60とつながっている。連結部60vの蒸気管30側の面の一部は、突起部60wと連結しており、残りの一部は空間70に接している。
【0054】
突起部60wは、平面視において、連結部60vから蒸気管30側に複数突起している。
【0055】
各々の突起部60wは所定間隔でY方向に並置されており、各々の突起部60wの蒸気管30側の端部は、蒸発器10の管壁90から離間している。そして、各々の突起部60wの蒸気管30側の端部は互いに連結されていない。一方で、各々の突起部60wの液管40側の端部は、連結部60vを介して連結されている。言い換えれば、蒸発器10内の多孔質体60は、平面視において、連結部60vと複数の突起部60wとを有する櫛歯状に形成されている。
【0056】
蒸発器10内において、多孔質体60が設けられていない領域には空間70が形成されている。空間70は、蒸気管30の流路50とつながっている。
【0057】
液管40側から作動流体Cが蒸発器10に導かれ、多孔質体60に浸透する。蒸発器10内で多孔質体60に浸透した作動流体Cは発熱部品120で発生した熱により気化して蒸気Cvが生成され、蒸気Cvは蒸発器10内の空間70を通って蒸気管30へ流れる。なお、
図8において、突起部60w(櫛歯)の数を3つとしたのは一例であり、突起部60w(櫛歯)の数は適宜決定することができる。突起部60wと空間70との接触面積が増えれば作動流体Cが蒸発しやすくなり、圧力損失を低減できる。
【0058】
支柱82は、例えば、連結部60v内の複数箇所に、多孔質体60を貫通するようにして配置されている。支柱82は、例えば、X方向を短軸方向、Y軸方向を長軸方向とする楕円形状の平面形状を備える。例えば、Y方向に複数の支柱82が並んで配置されている。
【0059】
支柱83は、例えば、各突起部60w内に1つずつ、多孔質体60を貫通するようにして配置されている。支柱83は、例えば、X方向に延びる長方形状の平面形状を備える。
【0060】
蒸発器10内の多孔質体60は液管40内の多孔質体60と同様の構成を備える。支柱82及び83は、支柱81と同様の構成を備える。すなわち、金属層62~65の第1部分621、631、641及び651が互いに接合されて壁部91が構成されている。金属層61の一部と、壁部91と、金属層66の一部とから蒸発器10の管壁90が構成されている。金属層62~65の第2部分622、632、642及び652が互いに接合されて蒸発器10内の多孔質体60が構成されている。金属層62~65の第3部分623、633、643及び653が互いに接合されてソリッドな支柱82及び83が構成されている。支柱82及び83は金属層61及び金属層66に接合されている。
【0061】
このように、液管40には支柱81が設けられており、支柱81が金属層61と金属層66とを接合している。又、蒸発器10には支柱82及び83が設けられており、支柱82及び83が金属層61と金属層66とを接合している。このため、ループ型ヒートパイプ1が使用される環境温度等の温度の変化に起因して作動流体C又はその蒸気Cvの体積変化が生じたとしても、ループ型ヒートパイプ1の変形を抑制することができる。支柱81~83がソリッドな部材、つまり、孔や溝等が形成されていない中実な部材であるため、支柱81~83は金属層61と金属層66とを強固に接合することができる。
【0062】
支柱81、82及び83が設けられていない場合、多孔質体60に浸透した液体の作動流体Cの相変化に起因して作動流体Cの体積が変化し、多孔質体60と金属層61との間や、多孔質体60と金属層66との間で剥離が生じるおそれがある。このような剥離が生じると、剥離が生じた界面にも作動流体Cが浸透するようになり、体積変化が大きくなることがある。そして、大きな体積変化が生じると、ループ型ヒートパイプ1の周辺の部材等を圧迫したり、管壁90の近傍で金属層61、66に破断が生じたりするおそれがある。
【0063】
これに対し、本実施形態では、支柱81、82及び83が多孔質体60を貫通するようにして設けられているため、同程度の温度変化が生じたとしても、多孔質体60の周辺での金属層61と金属層66との間の距離の変化を抑制できる。つまり、ループ型ヒートパイプ1の膨張等の変形を抑制し、多孔質体60と金属層61との間や、多孔質体60と金属層66との間で剥離を抑制できる。
【0064】
[第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの製造方法]
次に、第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの製造方法について、多孔質体の製造工程を中心に説明する。
図11及び
図12は、第1の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの製造工程を例示する図である。
図11及び
図12は、
図4に対応する断面を示す。図示を省略するが、
図11及び
図12に示す工程では、
図6、
図9及び
図10に対応する断面においても、
図4に対応する断面と同様の処理が行われる。
【0065】
まず、
図11(a)に示す工程では、
図1の平面形状に形成された金属シート620を準備する。そして、金属シート620の上面にレジスト層310を形成し、金属シート620の下面にレジスト層320を形成する。金属シート620は、最終的に金属層62となる部材であり、例えば、銅、ステンレス、アルミニウム、マグネシウム合金等から形成することができる。金属シート620の厚さは、例えば、50μm~200μm程度とすることができる。レジスト層310及び320としては、例えば、感光性のドライフィルムレジスト等を用いることができる。
【0066】
次に、
図11(b)に示す工程では、金属シート620の多孔質体60を形成する領域において、レジスト層310を露光及び現像して、金属シート620の上面を選択的に露出する開口部310xを形成する。又、レジスト層320を露光及び現像して、金属シート620の下面を選択的に露出する開口部320xを形成する。開口部310x及び320xの形状及び配置は、
図4に示した有底孔62x及び62yの形状及び配置に対応するように形成する。
【0067】
次に、
図11(c)に示す工程では、開口部310x内に露出する金属シート620を金属シート620の上面側からハーフエッチングすると共に、開口部320x内に露出する金属シート620を金属シート620の下面側からハーフエッチングする。これにより、金属シート620の上面側に有底孔62xが形成され、下面側に有底孔62yが形成される。又、表裏でX方向に交互に配置された開口部310xと開口部320xとは、平面視で部分的に重複しているため、重複する部分が連通して細孔62zが形成される。金属シート620のハーフエッチングには、例えば、塩化第二鉄溶液を用いることができる。
【0068】
次に、
図11(d)に示す工程では、レジスト層310及び320を剥離液により剥離する。これにより、金属層62が完成する。金属層62は、第1部分621、第2部分622及び第3部分623を含む。このように、第1部分621、第2部分622及び第3部分623は、1枚の金属シート620をエッチングすることにより形成される。
図11(d)に示すように、第2部分622と第3部分623とは互いに連結されている。又、第1部分621と第2部分622とは、
図11(d)に示す断面に現れない部分を介して互いに連結されている。
【0069】
次に、
図12(a)に示す工程では、孔や溝が形成されていないベタ状の金属層61及び66を準備する。又、金属層62と同様の方法により、金属層63、64、及び65を形成する。金属層63、64、及び65に形成される有底孔及び細孔の位置は、例えば、
図4に示した通りである。
【0070】
次に、
図12(b)に示す工程では、
図12(a)に示す順番で各金属層を積層し、加圧及び加熱により固相接合を行う。この時、金属層62~65の第3部分623~653が、平面視で重なり合うように位置合わせを行う。これにより、隣接する金属層同士が直接接合され、蒸発器10、凝縮器20、蒸気管30、及び液管40を有するループ型ヒートパイプ1が完成し、液管40及び蒸発器10に多孔質体60が形成される。又、多孔質体60を貫通するようにして支柱81~83も形成される。その後、真空ポンプ等を用いて液管40内を排気した後、図示しない注入口から液管40内に作動流体Cを注入し、その後注入口を封止する。
【0071】
ここで、固相接合とは、接合対象物同士を溶融させることなく固相(固体)状態のまま加熱して軟化させ、更に加圧して塑性変形を与えて接合する方法である。なお、固相接合によって隣接する金属層同士を良好に接合できるように、金属層61~66の全ての材料を同一にすることが好ましい。
【0072】
このように、各金属層の両面側から形成した有底孔を部分的に連通させて各金属層内に細孔を設ける構造とすることで、一定の大きさの細孔を金属層内に形成できる。これにより、細孔の大きさがばらついて細孔により発現する毛細管力が低下することを防止可能となり、蒸発器10から液管40に蒸気Cvが逆流することを抑制する効果を安定的に得ることができる。
【0073】
又、金属層同士を積層する部分では、隣接する有底孔全体を重複させる構造とすることで、金属層同士が接する面積を大きくできるため、強固な接合が可能となる。例えば、金属層62~65の第3部分623~653が平面視で重なり合うため、金属層61と金属層66との間で第3部分623~653が強固に加圧され、支柱81~83は金属層61及び66に強固に接合される。
【0074】
なお、多孔質体60は、凝縮器20の一部にも設けられてよく、蒸気管30の一部にも設けられてよい。
【0075】
〈第1の実施の形態の変形例1〉
第1の実施の形態の変形例1では、支柱81の配置が第1の実施の形態と相違する。第1の実施の形態の変形例1において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
図13は、第1の実施の形態の変形例1に係るループ型ヒートパイプの液管を例示する平面図である。
図13は、
図1中のA部に相当する部分の平面図である。
図13では、液管40内の多孔質体及び支柱の平面形状を示すため、金属層61の図示が省略されている。
【0076】
第1の実施の形態の変形例1では、
図13に示すように、X方向で隣り合う支柱81の間でY方向の位置がずれている。他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0077】
変形例1によっても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
なお、支柱81はY方向に複数点在するようにして設けられている必要はなく、例えば液管40と同等の長さの支柱81が凝縮器20から蒸発器10まで延びるようにして、設けられていてもよい。
【0079】
〈第1の実施の形態の変形例2〉
第1の実施の形態の変形例2では、一部の支柱81の構成が第1の実施の形態と相違する。第1の実施の形態の変形例2において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
図14は、第1の実施の形態の変形例2に係るループ型ヒートパイプの液管を例示する断面図である。
図14は、
図3中のIV-IV線に沿う断面図に相当する。
【0080】
第1の実施の形態の変形例2では、
図14に示すように、一部の支柱81に含まれる第3部分623~653のX方向の位置がずれている。ただし、各支柱81内で、少なくとも、第3部分623の一部と、第3部分633の一部と、第3部分643の一部と、第3部分653の一部とが重なり合っている。すなわち、第3部分623、633、643及び653の各々は、平面視で他の第3部分と重なる領域を含む。他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0081】
変形例2によっても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。変形例2によれば、多孔質体60の種々のレイアウトに対応しやすい。
【0082】
〈第1の実施の形態の変形例3〉
第1の実施の形態の変形例3では、支柱83の配置が第1の実施の形態と相違する。第1の実施の形態の変形例3において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
図15は、第1の実施の形態の変形例3に係るループ型ヒートパイプの蒸発器を例示する図である。
図15では、蒸発器10内の多孔質体及び支柱の平面形状を示すため、金属層61の図示が省略されている。
【0083】
第1の実施の形態の変形例3では、
図15に示すように、支柱83が、各突起部60w内に3つずつ、X方向に並んで配置されている。他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0084】
変形例3によっても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0085】
〈第2の実施の形態〉
第2の実施の形態では、液管40の構成が第1の実施の形態と相違する。第2の実施の形態において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
図16~
図18は、第2の実施の形態に係るループ型ヒートパイプの液管を例示する図である。
図16は、
図1中のA部に相当する部分の平面図である。
図17は、
図16中のXVII-XVII線に沿う断面図である。
図17は、
図16中のXVIII-XVIII線に沿う断面図である。
図16では、液管40内の多孔質体及び支柱の平面形状を示すため、金属層61の図示が省略されている。
【0086】
第2の実施の形態では、
図16~
図18に示すように、液管40内で、多孔質体60が両側の管壁90に接するようにして2箇所に設けられている。すなわち、多孔質体60が対をなして液管40内に設けられている。一方の多孔質体60が一方の壁部91と一体に形成され、他方の多孔質体60が他方の壁部91と一体に形成されている。支柱81は一対の多孔質体60の各々を貫通するように配置されている。支柱81の一部が多孔質体60の一方を貫通し、支柱81の他の一部が多孔質体60の他方を貫通している。2つの多孔質体60の間に、作動流体Cが流れる空間51が形成されている。空間51は、2つの多孔質体60の互いに対向する面と、金属層61の下面と、金属層66の上面とにより囲まれている。空間51は流路50の一部である。多孔質体60を構成する有底孔の少なくとも一部は、空間51と連通している。他の構成は第1の実施の形態と同様である。
【0087】
第2の実施の形態によっても第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。又、作動流体Cが空間51内を流れることができる。
【0088】
〈第2の実施の形態の変形例〉
第2の実施の形態の変形例では、液管40の構成が第2の実施の形態と相違する。第2の実施の形態の変形例において、既に説明した実施の形態と同一構成部についての説明は省略する場合がある。
図19は、第2の実施の形態の変形例に係るループ型ヒートパイプの液管を例示する平面図である。
図19は、
図1中のA部に相当する部分の平面図である。
図19では、液管40内の多孔質体及び支柱の平面形状を示すため、金属層61の図示が省略されている。
【0089】
第2の実施の形態の変形例では、
図19に示すように、液管40内で、多孔質体60が両側の管壁90から離間して設けられている。多孔質体60と一方の管壁90との間と、多孔質体60と他方の管壁90との間とに、作動流体Cが流れる空間51が形成されている。空間51は、管壁90及び多孔質体60の互いに対向する面と、金属層61の下面と、金属層66の上面とにより囲まれている。空間51は流路50の一部である。多孔質体60を構成する有底孔の少なくとも一部は、空間51と連通している。他の構成は第2の実施の形態と同様である。
【0090】
第2の実施の形態の変形例によっても第2の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0091】
以上、好ましい実施の形態等について詳説したが、上述した実施の形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施の形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0092】
1 ループ型ヒートパイプ
10 蒸発器
20 凝縮器
30 蒸気管
40 液管
50 流路
60 多孔質体
61~66 金属層
81~83 支柱
90 管壁
91 壁部
621、631、641、651 第1部分
622、632、642、652 第2部分
623、633、643、653 第3部分