(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】表示システム、表示装置及び表示方法
(51)【国際特許分類】
F04B 51/00 20060101AFI20231024BHJP
G09G 5/36 20060101ALI20231024BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20231024BHJP
F04B 49/10 20060101ALI20231024BHJP
F04D 15/00 20060101ALI20231024BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
F04B51/00
G09G5/36 100
G09G5/00 510C
F04B49/10 311
F04D15/00 Z
G05B23/02 301Q
G05B23/02 301X
(21)【出願番号】P 2020082531
(22)【出願日】2020-05-08
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100097320
【氏名又は名称】宮川 貞二
(74)【代理人】
【識別番号】100215049
【氏名又は名称】石川 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100131820
【氏名又は名称】金井 俊幸
(74)【代理人】
【識別番号】100155192
【氏名又は名称】金子 美代子
(74)【代理人】
【識別番号】100100398
【氏名又は名称】柴田 茂夫
(74)【代理人】
【識別番号】100108257
【氏名又は名称】近藤 伊知良
(72)【発明者】
【氏名】川井 政人
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-242849(JP,A)
【文献】特開2014-105671(JP,A)
【文献】特表2015-516530(JP,A)
【文献】特開2016-081482(JP,A)
【文献】特開2019-169094(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168838(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/090420(WO,A1)
【文献】特開2020-201683(JP,A)
【文献】特表2010-506253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 51/00
G09G 5/36
G09G 5/00
F04B 49/10
F04D 15/00
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機及び前記回転機を回転させる駆動機を備える回転機装置と;
前記回転機装置の状態を表示可能な表示装置と;
前記回転機装置の状態を示す複数の状態量を取得する検知部と;
前記回転機装置の異常を検知するための前記複数の状態量のそれぞれに対応する閾値を、互いに関連付けた状態で設定可能な閾値設定部と;
前記検知部で取得した前記複数の状態量に基づき、前記表示装置にチャートを表示する表示制御部であって、前記チャートは、特定の時間における前記回転機装置の前記複数の状態量がプロットされ
且つ前記閾値設定部で設定された前記閾値が表示された、前記複数の状態量が各軸に対応する値として設定された多次元チャートで構成される、前記表示制御部と;を備える、
表示システム。
【請求項2】
前記複数の状態量は、前記回転機装置の温度と、前記回転機装置に生じる振動と、前記回転機装置により移送される流体の圧力と、前記流体の流量と、前記駆動機の回転速度と、前記駆動機の電流値とのうちの少なくとも2つを含む、
請求項1に記載の表示システム。
【請求項3】
前記多次元チャート内には、現在時刻における前記回転機装置の前記複数の状態量、前記現在時刻を含む所定期間の前記回転機装置の前記複数の状態量の軌跡、又は、所定期間における前記回転機装置の前記複数の状態量の分布領域が表示される、
請求項1又は請求項2に記載の表示システム。
【請求項4】
前記表示装置には、前記多次元チャートとともに、
前記複数の状態量のうち、第1の状態量の時系列のデータを示す第1の時系列チャートと、
前記複数の状態量のうち、第2の状態量の時系列のデータを示す第2の時系列チャートと、が同時に表示される、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の表示システム。
【請求項5】
前記閾値設定部による前
記閾値の設定は、前記表示装置に表示された前記多次元チャート内の所定範囲を、入力インタフェースを用いて指定することにより行われる、
請求項
1乃至請求項4のいずれか1項に記載の表示システム。
【請求項6】
前記回転機装置の異常を検知するための前記複数の状態量のそれぞれに対応する閾値が、段階的にレベル分けされて設定されており、
前記回転機装置の前記複数の状態量が超過した前記閾値の前記レベルに応じた報知を行う報知部を更に備える、
請求項1乃至請求項
5のいずれか1項に記載の表示システム。
【請求項7】
前記回転機装置の異常を検知するための前記複数の状態量のそれぞれに対応する閾値が、前記回転機装置の機種別に関連付けられ、第1閾値群として保存された閾値メモリを備え、
前記表示制御部が、前記閾値を初期設定する際は、前記閾値メモリに保存された第1閾値群から、前記回転機装置の機種に関連付けられた閾値を設定する、
請求項1乃至請求項
6のいずれか1項に記載の表示システム。
【請求項8】
表示部と;
回転機及び前記回転機を回転させる駆動機を備える回転機装置の状態を示す
複数の状態量を取得するデータ取得部と;
前記回転機装置の異常を検知するための前記複数の状態量のそれぞれに対応する閾値を、互いに関連付けた状態で設定可能な閾値設定部と;
前記データ取得部で取得した前記複数の状態量に基づき、前記表示部にチャートを表示する表示制御部であって、前記チャートは、特定の時間における前記回転機装置の前記複数の状態量がプロットされ
且つ前記閾値設定部で設定された前記閾値が表示された、前記複数の状態量が各軸に対応する値として設定された多次元チャートで構成される、前記表示制御部と;を備える、
表示装置。
【請求項9】
回転機及び前記回転機を回転させる駆動機を備える回転機装置の状態を示す複数の状態量を取得するステップと;
前記複数の状態量が各軸に対応する値に設定された多次元チャートを生成するステップと;
前記多次元チャート内に、特定の時間における前記回転機装置の前記複数の状態量をプロットするステップと;
前記回転機装置の異常を検知するための前記複数の状態量のそれぞれに対応する閾値を、互いに関連付けた状態で設定するステップと;
前記多次元チャート内に、設定された前記閾値を表示するステップと;
前記特定の時間における前記回転機装置の前記複数の状態量がプロットされ
且つ設定された前記閾値が表示された前記多次元チャートを表示装置に表示するステップと;を備える、
表示方法。
【請求項10】
前記多次元チャート内に特定の時間における前記回転機装置の前記複数の状態量をプロットするステップは、
前記多次元チャート内に現在時刻における前記回転機装置の前記複数の状態量をプロットするステップ;
前記多次元チャート内に前記現在時刻を含む所定期間の前記回転機装置の前記複数の状態量の軌跡をプロットするステップ;又は、
前記多次元チャート内に所定期間における前記回転機装置の前記複数の状態量の分布領域をプロットするステップ;の少なくともいずれかを備える、
請求項
9に記載の表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転機装置の状態を表示する表示システム、表示装置及び表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
回転機、例えば給水装置に用いられるポンプには、その動作状態を監視して異常あるいは異常の兆候(以下、これらをまとめて単に「異常」という)を検出あるいは推定するために、様々な状態量を定期的に検出するセンサが1又は複数個取り付けられる。この1又は複数個のセンサとしては、ポンプの適所に配置されてポンプに生じる振動やポンプの温度を計測するものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ポンプの異常は様々な状態量の変化を伴う。そのため、複数の状態量を監視することでポンプの異常診断や故障予測する技術が知られている。例えば、特許文献1には、ポンプの一部にセンサを設け、このセンサにより検出される振動及び温度を監視することで、ポンプの状態を監視するものが記載されている。
【0005】
一般に、ポンプの異常の判断に用いる状態量の種類が多ければ、より正確に異常検知や故障予測ができる。しかしながら、複数の状態量それぞれに対し、異常と判断する閾値をどのように定めるかは、種々の要因によって変化し得る。例えば、ポンプの異常は機種や設置状況に依存するため、それに応じて閾値は変更する必要があり、また、例えば実際に異常が生じるまではそのまま使用したい、あるいは、ポンプが壊れる前に予防保全したい、といったユーザ毎の要求される管理レベルによっても異なる。そのため、異常と判断する閾値を現場に設置する前に設定しておくことは困難であり、ポンプが設置された現場において作業者等により閾値の設定が行える必要がある。また、特に異常の兆候までをも検知あるいは推定しようとした場合、各状態量単独で見た場合には設定された閾値に満たなくても、複数の状態量が閾値に近い数値で推移している際には、異常と判断した方が適切である場合も存在する。したがって、ポンプ装置の異常を適切に監視するために、ポンプの複数の状態量を相互に確認できるようなしくみが求められる。
【0006】
本発明は、上述した課題に鑑み、回転機装置の各種状態量を視認性高く表示することが可能な表示システム、表示装置及び表示方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様に係る表示システム1は、例えば
図1及び
図2に示すように、回転機11及び前記回転機11を回転させる駆動機12を備える回転機装置10と;前記回転機装置10の状態を表示可能な表示装置20と;前記回転機装置10の状態を示す複数の状態量を取得する検知部13と;前記検知部13で取得した前記複数の状態量に基づき、前記表示装置20に多次元チャート33、36、37を表示する表示制御部26であって、前記チャートは、特定の時間における前記回転機装置10の前記複数の状態量がプロットされた、前記複数の状態量が各軸に対応する値として設定された多次元チャートで構成される、前記表示制御部26と;を含むものである。
【0008】
このように構成すると、複数の状態量を各軸に対応する値とした多次元チャートの形式で、回転機装置の各種状態量を表示することができるため、複数の状態量を1つのチャートにより確認することが可能な表示を実現できるようになる。
【0009】
本発明の第2の態様に係る表示システム1は、例えば
図3に示すように、上記本発明の第1の態様に係る表示システム1において、前記複数の状態量は、前記回転機装置10の温度と、前記回転機装置10に生じる振動と、前記回転機装置10により移送される流体の圧力と、前記流体の流量と、前記駆動機12の回転速度と、前記駆動機12の電流値とのうちの少なくとも2つを含む。
【0010】
このように構成すると、例えば回転機装置に生じる急激な温度上昇や大きな振動は、回転機装置の異常との相関関係が大きいため、異常の判断を高精度に実現可能な表示を行うことができるようになる。
【0011】
本発明の第3の態様に係る表示システム1は、例えば
図3、
図5及び
図6に示すように、上記本発明の第1又は第2の態様に係る表示システム1において、前記多次元チャート内には、現在時刻における前記回転機装置10の前記複数の状態量P、前記現在時刻を含む所定期間の前記回転機装置10の前記複数の状態量の軌跡L、又は、所定期間における前記回転機装置10の前記複数の状態量の分布領域E1~E3が表示される。
【0012】
このように構成すると、チャートの表示として複数種類の表示が可能となり、ユーザの要求に合致した表示を行うことができるようになる。
【0013】
本発明の第4の態様に係る表示システム1は、例えば
図3、
図5及び
図6に示すように、上記本発明の第1乃至3の態様に係る表示システム1において、前記表示装置には、前記多次元チャートとともに、前記複数の状態量のうち、第1の状態量の時系列のデータを示す第1の時系列チャート31と、前記複数の状態量のうち、第2の状態量の時系列のデータを示す第2の時系列チャート32と、が同時に表示される。
【0014】
このように構成すると、表示装置を見たユーザは、多次元チャートに加えて、一の状態量を示す時系列チャートを同時に確認することができるようになり、状態量の相対的な変化や分布状態をより把握しやすくなる。
【0015】
本発明の第5の態様に係る表示システム1は、例えば
図2に示すように、上記本発明の第1乃至4の態様に係る表示システム1において、前記回転機装置10の異常を検知するための前記複数の状態量のそれぞれに対応する閾値を、互いに関連付けた状態で設定可能な閾値設定部27を更に含む。
【0016】
このように構成すると、複数の状態量に対応する閾値それぞれを、互いに関連付けた形で設定できるため、複数の状態量を考慮した異常判断を実現できるようになる。
【0017】
本発明の第6の態様に係る表示システム1は、例えば
図2に示すように、上記本発明の第5の態様に係る表示システム1において、前記閾値設定部27による前記所定の閾値の設定は、前記表示装置20に表示された前記チャート内の所定範囲を、入力インタフェース25を用いて指定することにより行われる。
【0018】
このように構成すると、チャート内の所定範囲を指定するだけで閾値の設定が完了するため、直感的な操作で閾値を設定できるようになる。
【0019】
本発明の第7の態様に係る表示システム1は、上記本発明の第1乃至6の態様に係る表示システム1において、前記回転機装置10の異常を検知するための前記複数の状態量のそれぞれに対応する閾値が、段階的にレベル分けされて設定されており、前記回転機装置10の前記複数の状態量が超過した前記閾値の前記レベルに応じた報知を行う報知部を更に含む。
【0020】
このように構成すると、回転機装置の状態に応じて段階的な報知が可能となり、ユーザが回転装置の状態を容易に把握することができるようになる。
【0021】
本発明の第8の態様に係る表示システム1は、例えば
図9に示すように、上記本発明の第1乃至7の態様に係る表示システム1において、前記回転機装置10の異常を検知するための前記複数の状態量のそれぞれに対応する閾値が、前記回転機装置の機種別に関連付けられ、第1閾値群として保存された閾値メモリ51を備え、前記表示制御部26が、前記閾値を初期設定する際は、前記閾値メモリ51に保存された第1閾値群から、前記回転機装置の機種に関連付けられた閾値を設定する。
【0022】
このように構成すると、回転機装置の種類に合わせて閾値メモリに格納された閾値を用いた初期設定を簡単に行うことができるようになり、管理の手間が削減できる。
【0023】
本発明の第9の態様に係る表示装置20は、例えば
図2に示すように、表示部21と;回転機11及び前記回転機11を回転させる駆動機12を備える回転機装置10の状態を示す状態量を取得するデータ取得部23と;前記データ取得部23で取得した前記複数の状態量に基づき、前記表示部21にチャートを表示する表示制御部26であって、前記チャートは、特定の時間における前記回転機装置10の前記複数の状態量がプロットされた、前記複数の状態量が各軸に対応する値として設定された多次元チャートで構成される、前記表示制御部26と;を備える。
【0024】
このように構成すると、複数の状態量を各軸に対応する値とした多次元チャートの形式で、回転機装置の各種状態量を表示することができるため、複数の状態量を1つのチャートにより確認することが可能な表示を実現できるようになる。
【0025】
本発明の第10の態様に係る表示方法は、例えば
図7に示すように、回転機11及び前記回転機11を回転させる駆動機12を備える回転機装置10の状態を示す複数の状態量を取得するステップS101と;前記複数の状態量が各軸に対応する値に設定された多次元チャートを生成するステップS102と;前記多次元チャート内に、特定の時間における前記回転機装置10の前記複数の状態量をプロットするステップS103と;前記特定の時間における前記回転機装置の前記複数の状態量がプロットされた前記多次元チャートを表示装置に表示するステップS105と;を含む。
【0026】
このように構成すると、複数の状態量を各軸に対応する値とした多次元チャートの形式で、回転機装置の各種状態量を表示することができるため、複数の状態量を1つのチャートにより確認することが可能な表示を実現できるようになる。
【0027】
本発明の第11の態様に係る表示方法は、例えば
図7に示すように、上記本発明の第10の態様に係る表示方法において、前記回転機装置10の異常を検知するための前記複数の状態量のそれぞれに対応する閾値を、互いに関連付けた状態で設定するステップS104を更に含む。
【0028】
このように構成すると、複数の状態量に対応する閾値それぞれを、互いに関連付けた形で設定できるため、複数の状態量を考慮した異常判断を実現できるようになる。
【0029】
本発明の第12の態様に係る表示方法は、例えば
図8に示すように、上記本発明の第10又は11の態様に係る表示方法において、前記多次元チャート内に特定の時間における前記回転機装置の前記複数の状態量をプロットするステップS103は、前記多次元チャート内に現在時刻における前記回転機装置の前記複数の状態量をプロットするステップS202;前記多次元チャート内に前記現在時刻を含む所定期間の前記回転機装置の前記複数の状態量の軌跡をプロットするステップS203;又は、前記多次元チャート内に所定期間における前記回転機装置の前記複数の状態量の分布領域をプロットするステップS204;の少なくともいずれかを含む。
【0030】
このように構成すると、チャートの表示として複数種類の表示が可能となり、ユーザの要求に合致した表示を行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0031】
上述した一連の構成を採用することにより、本発明に係る表示システム、表示装置及び表示方法によれば、回転機装置の各種状態量を視認性高く表示することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の一実施の形態に係る表示システムを示す概略構造図である。
【
図2】本発明の一実施の形態に係る表示システムの機能の一部を示すブロック図である。
【
図3】本発明の一実施の形態に係る表示装置に表示される第1の表示例を示す概略説明図である。
【
図4】本発明の一実施の形態に係る閾値設定画面の一例を示す概略説明図である。
【
図5】本発明の一実施の形態に係る表示装置に表示される第2の表示例を示す概略説明図である。
【
図6】本発明の一実施の形態に係る表示装置に表示される第3の表示例を示す概略説明図である。
【
図7】本発明の一実施の形態に係る表示方法の例を示すフローチャートである。
【
図8】本発明の一実施の形態に係る表示方法のサブルーチンの例を示すフローチャートである。
【
図9】本発明の他の実施の形態に係る表示システムを示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面を参照して本発明を実施するための各実施の形態について説明する。なお、以下では本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0034】
<表示システム>
図1は、本発明の一実施の形態に係る表示システムを示す概略構造図である。また、
図2は、本発明の一実施の形態に係る表示システムの機能の一部を示すブロック図である。本実施の形態の表示システム1は、
図1及び
図2に示すように、任意のポンプ装置(回転機装置に相当)の状態量を表示するために構成された一連のシステムであって、ポンプ装置10と、表示装置20とを少なくとも含んでいる。
【0035】
ポンプ装置10は、
図1に示すように、例えば横軸単段ポンプであって、建物等に水を供給するためのポンプ本体(回転機)11と、電動機(駆動機)12と、ポンプ装置10の適所に設置された検知部13と、を少なくとも含む。なお、本実施の形態においては、回転機としてポンプを、駆動機として電動機11をそれぞれ採用した回転機装置を例示しているが、他の回転機装置、例えば各種タービン、コンプレッサ、ファン、ブロア等に対して同様の表示システムを適用することも可能である。また、ポンプの形式についても、上述した横軸単段ポンプに限定されず、例えば縦軸多段ポンプや水中ポンプ等を採用することもできる。
【0036】
ポンプ本体11は、例えばマンションやオフィスビル等の建物に水道水を供給するために用いられる遠心ポンプとすることができる。このポンプ本体11の内部に設けられたインペラ(図示省略)は、後述する電動機12の駆動軸にカップリング14を介して回転可能に連結されている。
【0037】
電動機12は、上述したポンプ本体11のインペラを回転させるための駆動源であって、永久磁石型モータ、誘導モータ、あるいはSRモータ等を採用することができる。この電動機12の詳細な構成については詳述しないが、例えば、駆動軸を有するモータ本体と、このモータ本体の回転駆動を可変速するためのインバータと、このインバータを制御するコントローラとを含むものとすることができる。
【0038】
検出部13は、ポンプ装置10の適所に1又は複数個取り付けられ、ポンプ装置10の各種状態量、詳しくはポンプ装置10の温度及びポンプ装置10に生じる振動の少なくとも一方をリアルタイムに検知可能なものとすることができる。
図1に示す一実施の形態に係るポンプ装置10にあっては、ポンプ本体11のケーシングの外壁に1つ、及び電動機12の駆動軸を支持する軸受に2つ、合計3つの検出部(第1検出部13A、第2検出部13B、及び第3検出部13C)が採用されている。なお、検出部13の配置については、上述したものに限定されるものではなく、ポンプ本体10の軸受部分や電動機12のケーシング部分等、ポンプ装置10の温度及び振動の少なくとも一方が測定可能な位置であれば適宜変更することが可能である。
【0039】
この検出部13の検出対象としての状態量は、上記温度及び振動に加えて、ポンプ本体11内を流れる水の圧力及び流量や、電動機12の回転速度及び電流値等を例示することができる。すなわち、検出部13により検出される複数の状態量としては、好ましくは、回転機装置10の温度、回転機装置10に生じる振動、回転機装置10により移送される流体の圧力、同流体の流量、電動機12の回転速度、及び、電動機12の電流値のうち、少なくとも2つを含む。ここで、ポンプ本体11内を流れる水の圧力及び流量は、ポンプ本体11の所定位置に周知の圧力センサ及び流量センサを設けることにより、電動機12の回転速度及び電流値は、電動機12内のコントローラ又はインバータの制御信号等を取得することにより、それぞれ検出することができる。
【0040】
また、第1乃至第3検出部13A~13Cの具体的構成としては、例えば
図2に示すように、全て同一のものを採用することができる。詳しくは、第1乃至第3検出部13A~13Cは、(ポンプ装置側)無線通信部15A~15Cと、温度センサ16A~16Cと、振動センサ17A~17Cとを主に備えている。当然ながら、各検出部の具体的な構成については上記のように同一構成である必要はなく、適宜変更が可能である。例えば、ポンプ本体11の電動機12の軸受部分に設けられた第2及び第3検出部13B~13Cのうち、第2検出部13Bは温度センサ16Aを有さず、第3検出部13Cは振動センサ17Cを有しない態様、あるいは第1検出部13Aは振動センサ及び温度センサを有しておらず、代わりにポンプ本体11内を流れる水の圧力及びその流量を測定するための圧力センサ及び流量センサを有する態様等、各検出部の有するセンサの組み合わせは任意で調整することができる。なお、以下に述べる検出部の具体的な説明に際しては、代表して
図2に示す態様における第1検出部13Aについて説明を行うものとする。
【0041】
無線通信部15Aは、後述する温度センサ16A及び振動センサ17Aが検出した検出結果を、表示装置20に送信するための通信手段である。この無線通信部15Aにおける通信手法としては、近距離無線通信(NFC)、赤外線通信、(Beaconを含む)Bluetooth(登録商標)、あるいはWi-Fi(登録商標)通信等を採用することができる。また、この無線通信部15Aにより送信されるデータは、各種センサのリアルタイムの検出結果を常に送信するようにしてもよいし、この検出結果を所定期間蓄積しておき、定期的に、あるいは所定のタイミングで表示装置20へ送信するようにしてもよい。そのため、第1検出部13Aは、所定期間における各種センサの検出結果を格納できる、周知の記憶媒体等で構成された図示しない内部メモリを有していると好ましい。
【0042】
温度センサ16Aは、第1検出部15Aが設置されたポンプ本体11の外壁の温度を直接測定することで、ポンプ装置10の温度を検出するセンサである。ここで採用される温度センサとしては、周知のサーミスタあるいは熱電対等を適宜選択して使用することができる。
【0043】
振動センサ17Aは、ポンプ装置10に生じる振動を周波数として出力するものであって、加速度、速度、変位等を検出可能な周知の振動センサを採用することができる。本実施の形態においては、縦・横・高さ方向の三次元の振動を検出可能なものを採用しているが、これに限らず、一次元あるいは二次元方向の振動のみを検知可能な振動センサを採用することができる。ただし、ポンプ装置10に生じる振動は、ポンプ本体11及び電動機12の駆動軸に伝わることが多く、その振動方向は当該駆動軸に交差する方向となる場合が多い。そこで、電動機12の駆動軸を支持する軸受部分に設けられた第2検出部13B及び第3検出部13Cの振動センサ17B及び17Cとしては、少なくとも電動機12の駆動軸に垂直な方向の振動を検知可能な振動センサを採用すると好ましい。
【0044】
本実施の形態に係る表示システム1は、上述した構成を備える第1~第3検知部13A~13Cを採用することにより、ポンプ装置10における温度変化及びポンプ装置10に生じる振動を、高精度に検出し、表示装置20側にて視認することができるものである。
【0045】
次に、本実施の形態に係る表示システム1の表示装置20について説明する。表示装置20は、
図1及び
図2に示すように、少なくともポンプ装置10の各種の状態量に関連する情報を表示可能な表示部21を備えた装置である。この表示装置20としては、例えば、
図1に示すような、スマートフォン、タブレット端末あるいはモバイルPC等の携帯通信端末を採用してもよいし、ポンプ装置10が設置されたエリアを管理する管理システムのコンピュータ等を採用してもよい。そして、この表示装置20は、
図2に示すように、表示部21と、プロセッサ22と、(表示装置側)無線通信部(データ取得部に相当)23と、メモリ24と、入出力インタフェース(入力インタフェース)25とを少なくとも含むものである。
【0046】
表示部21は、ポンプ装置10の各種状態量を表示可能な、液晶パネルや有機ELパネル等の周知の表示手段によって構成された、いわゆるグラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)を構成するものである。この表示部21には、後述する表示制御部25において生成されたチャート(chart、図表)等が表示され、この表示内容を確認することにより、ユーザ(例えばポンプ装置のメンテナンス等を行う作業員)はポンプ装置10の異常の有無等を確認することができる。
【0047】
プロセッサ22は、表示装置20における種々の制御を実現するための演算手段であって、周知のCPU、GPU、あるいは他の演算装置から構成される。このプロセッサ22は、表示部21に表示する表示内容を特定するための表示制御部26、及びポンプ装置10の異常の判定に用いる閾値を設定するための閾値設定部27を含むものである。このうち、表示制御部26では、検出部13で検出され、後述する無線通信部24により受信した、ポンプ装置10の複数の状態量に基づき、表示部21に表示するチャートが生成される。このチャートの具体的な生成手法については後に詳述する。
【0048】
無線通信部23は、検出部13の検出結果としての各種状態量を受信するためのインタフェースであって、ポンプ装置10側の各無線通信部15A~15Cと同様の通信規格が採用された通信手段である。無線通信部23は、この無線通信部23の通信圏内に存在する1又は複数の検出部13から送信される検出結果のデータを逐次受信し、当該データをポンプ装置10の複数の状態量として、後述するメモリ23に格納することができる。
【0049】
メモリ24は、ROM、RAM、半導体メモリ等の、揮発性及び/又は不揮発性記録媒体で構成された記憶手段であって、このメモリ24内には、プロセッサ22に所定の動作を実行させるための各種プログラムや、無線通信部24を介して受信した検出部13の検出結果、あるいは表示制御部26でのチャート生成時に用いられる閾値の情報(後述)等が格納されている。
【0050】
入出力インタフェース25は、表示内容の切換要求や閾値の入力といった、ユーザによる操作を取得し、且つ必要に応じてユーザに対する報知等の所定の出力を実行するためのものである。この入出力インタフェース25としては、例えばマウス、タッチペン、タッチパネル、トラックボールといった種々のポインティングデバイスや、各種の操作ボタン、マイク等の入力インタフェース、及びスピーカや振動器等の出力インタフェース等を単独であるいは適宜組み合わせて採用することができる。本実施の形態に係る表示装置20は携帯通信端末であるため、この入出力インタフェース25としては、例えばタッチパネル、スピーカ及び振動器を採用することができる。
【0051】
上述した各種構成を備える表示装置20の表示部21に表示される各種状態量の表示の例について、いくつかの例を用いて以下に説明する。なお、以下に説明する第1~第3の表示例は、それぞれが第1~第3表示モードとして設定された表示態様であってよい。この場合、ユーザの操作等によって、これらの表示モードは切換可能となっていると好ましい。また、以下に示す第1の表示例及び第2の表示例においては、説明を簡略化するために、第1検知部13Aの検出結果のみを無線通信部23において受信した場合を想定している。
【0052】
図3は、本発明の一実施の形態に係る表示装置に表示される第1の表示例を示す概略説明図である。
図3に示す第1の表示例(「第1の表示モード」ともいう)においては、表示装置20の前面に位置する表示部21に、振動センサ17Aの検出結果である、振幅の時系列データを示す第1の時系列チャート31と、温度センサ16Aの検出結果である、温度の時系列データを示す第2の時系列チャート32と、振動センサ17Aが検出した振動の振幅の値を縦軸に、温度センサ16Aが検出した温度を横軸にとった第1の多次元チャート33とが表示されている。
【0053】
第1の時系列チャート31は、ポンプ装置10側の無線通信部15Aから送信された振動センサ17Aで検出された3次元の出力周波数データを、表示装置20側の無線通信部23において受信し、次いで表示制御部26において、受信した3次元の出力周波数データからその振幅の絶対値を特定し、時系列のチャートに調整した後、表示部21に表示したものである。同様に、第2の時系列チャート32は、ポンプ装置10側の無線通信部15Aから送信された温度センサ16Aで検出された温度データを、表示装置20側の無線通信部23において受信し、表示制御部26において当該データを時系列のチャートに調整した後、表示部21に表示したものである。
【0054】
第1の多次元チャート33は、ポンプ装置10の状態量を各軸に取った多次元チャートである。本実施の形態においては、当該状態量のうちの1つである振幅値と温度値とを縦軸及び横軸にそれぞれ関連付けた、二次元チャートが採用されている。この第1の多次元チャート33を画定する振幅値及び温度値は、上述した第1の時系列チャート31及び第2の時系列チャート32を生成する過程で特定された値、すなわちこれらのグラフの縦軸を参酌して規定されている。また、この第1の多次元チャート33中には、現在時刻におけるポンプ装置10の値が、現在時刻(例えばT0時点)における温度値(X0)と振幅値(Y0)とに基づいて、点Pとしてプロットされている。なお、本実施の形態においては、第1の多次元チャート33として温度値及び振幅値の2つを当該第1の多次元チャート33における各軸を規定するパラメータとして採用した二次元チャートが採用されているが、表示部21に表示可能なものであれば、3次元以上の次元で示されたチャートを採用することも可能である。この場合、パラメータとしては温度値及び振幅値以外のポンプ装置10の状態量を採用することができる。具体例を挙げるなら、例えば、電動機12の電流値と、高さ方向(
図1のz方向)における振幅値と、横方向(
図1のx方向)における振幅値とを各パラメータとして採用した三次元チャートとすることができる。なお、次元数が多くなることに比例して表示部21に表示した際のユーザの視認性も低下する傾向があるため、第1の多次元チャート33としては、好ましくは二次元又は三次元のチャートを生成することが好ましい。ここで、本発明に係る表示システム1において表示される多次元チャートは、各軸に対応するパラメータとして常にポンプ装置10の状態量を採用するものであることは、特に留意すべき事項である。本発明においては、チャートを構成するパラメータに各種状態量を採用していることにより、複数の状態量を一見して把握することが可能となり、また、閾値を設定する際には、複数の状態量を考慮した設定作業を容易に実現できるものとなる。
【0055】
この第1の多次元チャート33においては、現在時刻におけるポンプ装置10の各種状態量の値を示す点Pが、異常を示す値に達しているか否かが一見して把握できるように、複数の閾値点S1、S2が示されている。この閾値点S1、S2は、上述した閾値設定部27によって設定されるものである。
図3に示す閾値点S1、S2は、一例として許容可能な上限の振幅値とそのときの許容可能な最大の温度値との組み合わせからなる点(S1)と、許容可能な上限の温度値とそのときの許容可能な最大の振幅値との組み合わせからなる点(S2)とを規定したものである。
【0056】
上述した第1の表示例のように、表示部21上に3つのチャート31~33を並べて表示することは、ユーザによる異常検知に際しては特に有利である。すなわち、第1の多次元チャート33のように、複数の状態量を1つのチャートで示したものに加えて、1つの状態量のみに関する時系列チャートをも参酌することができることから、関連する2つの状態量の相対的な変化や、その分布範囲を確認しながら異常判断や故障予知をすることができ、これらの判断等の精度を向上させることができる。
【0057】
図4は、本発明の一実施の形態に係る閾値設定画面の一例を示す概略説明図である。閾値設定部27による複数の閾値点S1、S2の設定は、例えば、
図3に示す表示部21に表示された、閾値設定アイコン34を押下することにより実行することができ、その際に表示される閾値設定画面34としては、例えば
図4に示すものを表示することができる。本実施の形態における閾値点S1、S2の設定に際しては、
図4に示すように、閾値設定アイコン34を押下して閾値設定画面35を表示し、この閾値画面35において、閾値としてユーザが特定したい点のX座標(X1、X2、・・・Xn)及びY座標(Y1、Y2、・・・Yn)を入力することで、閾値の設定を行うことが可能である。第1の表示例においては、閾値点としてS1(X1,Y1)及びS2(X2,Y2)の2点のみが規定されているが、閾値を示す点の数は、設定等により適宜変更することができる。ここで、本発明の閾値設定部27における閾値の設定が、複数の状態量、詳しくは温度値及び振幅値の閾値が互いに関連付けられた状態で設定されていることは、特に留意すべき事項である。すなわち、上述のように、閾値点の設定をXY座標の入力によって実現する場合、ポンプ装置10の2つの状態量が1つの閾値点を構成するため、両状態量は互いに関連付けられた状態で特定される。これにより、複数の状態量を考慮した閾値設定が可能となっている。そして、このような閾値設定を行えば、例えば1つの状態量単独で見た場合には異常とは言えないものの、複数の状態量を考慮すると異常と判断した方が適切である場合等にも対応することができるようになる。
【0058】
閾値を設定する方法としては、複数の状態量が互いに関連付けられた状態で設定されるものであれば、上述した座標の入力操作によるものに限定されない。具体的には、例えば、閾値設定アイコン34を押下した後、表示装置20の表示部21に表示されたチャート内の所定範囲を、入出力インタフェース25、例えばタッチパネルを介して、チャート中の特定の領域をユーザの指等で囲む操作を行うことで、閾値を規定できるようにしてもよい。このような操作で閾値を設定した場合であっても、当該操作は2つの状態量をパラメータとするチャート上でなされる操作によって閾値が設定されていることから、これにより設定された複数の状態量に対応する閾値同士は互いに関連付けられた状態で設定されたものである。そして、このような操作を経て閾値を設定できれば、閾値を設定する際に事前に計算等により閾値の値を特定しておく必要がなく、より直感的な操作で閾値を設定することが可能となり、作業性が向上する。
【0059】
また、第1の表示例においては、閾値として2つの点(S1及びS2)のみが規定され、この2点を含む直線で正常値の範囲と異常値の範囲との境界(以下、この境界を「閾値ラインB」という。)を示しているが、当該閾値ラインBの形状は、閾値点の数や、ユーザの所定の入力操作等に基づいて、例えば長方形状や円形状等に変更することが可能である。更に、
図3においては、閾値ラインBで囲まれた内側の領域、すなわち正常値の範囲にハッチングを付して、正常値の範囲と異常値の範囲とを視覚的に区別しているが、このハッチングに代えて、色彩表示や他の表示パターンを用いてこれらの範囲を視覚的に区別した表示を行うようにしてもよい。
【0060】
本実施の形態において、仮に点Pが閾値ラインBを超えた位置にプロットされた場合には、表示装置20の図示しない報知部を用いて、ユーザにその旨を報知することができる。この報知の手段としては、例えば表示部21に異常である旨を色彩あるいは点滅動作等により表示したり、入出力インタフェース25の一部を構成するスピーカ及び振動器を動作させたりすることができる。
【0061】
上述した通り、本発明の実施の形態に係る第1の表示例によれば、各センサが検出したポンプ装置10の各種状態量を、1つのチャートの形式で表示することができる。これにより、ユーザは、当該チャートを確認するだけでポンプ装置10の状態を把握でき、ポンプ装置10の複数の状態量をそれぞれ個別に確認する必要のない、視認性の高い表示を実現することができる。また、閾値設定に際しては複数の状態量を考慮した設定操作が可能となるため、各状態量それぞれに対して独立した閾値を設定する場合に比べて、より高精度にポンプ装置10に生じる異常を検知することができるようになる。
【0062】
次に、本実施の形態に係る表示の他の例を説明する。
図5は、本発明の一実施の形態に係る表示装置20に表示される第2の表示例を示す概略説明図である。第2の表示例(「第2の表示モード」ともいう)においては、表示装置20の前面に位置する表示部21に、第1の時系列チャート31と、第2の時系列チャート32と、振動センサ17Aが検出した振動の振幅の値を縦軸に、温度センサ16Aが検出した温度を横軸にとった第2の多次元チャート36とが表示されている。この第2の多次元チャート36は、チャート中にプロットされる点の表示形態が異なること以外は第1の多次元チャート33と同様である。そこで、以下には第1の多次元チャート33と異なる点についてのみ説明し、第1の多次元チャート33と同様の点についてはその説明を省略する。
【0063】
第2の多次元チャート36においては、
図5に示すように、現在時刻におけるポンプ装置10の各種状態量の値(P3)に加えて、現在時刻を含む所定期間の各種状態量の変化の推移が分かるよう、当該所定期間においてプロットされた点(P1及びP2等)を、軌跡Lとして示して(描画して)いる。この軌跡Lとして第2の多次元チャート36内に表示する期間(すなわち、T1-T3の期間)は、予め設定されていてもよいし、ユーザによって任意の期間を設定することができるようにしてもよい。
【0064】
第2の多次元チャート36のように、チャート内に軌跡Lを表示すれば、現在時刻を含む所定期間の各種状態量を一見して把握することができる。これにより、ポンプ装置10の各種状態量の推移を把握することができるため、ユーザの視認性がより向上すると共に、ユーザによる異常の予見性を高めることができる。
【0065】
上述した第1及び第2の表示例においては、現在時刻におけるポンプ装置10の各種状態量をプロットしたものについて説示したが、プロットされる点は現在時刻におけるものに限定されない。例えば、ユーザが第1の時系列チャート31あるいは第2の時系列チャート32に表示された特定の時間における状態量を確認したい場合等には、当該特定の時点における状態量を第1の多次元チャート33又は第2の多次元チャート36中にプロットすることができる。その場合には、第2の表示例における軌跡Lの描画範囲も、上記特定の時点を含む所定の期間として適宜調整することが可能である。
【0066】
次に、本実施の形態に係る表示のさらに他の例を説明する。
図6は、本発明の一実施の形態に係る表示装置20に表示される第3の表示例を示す概略説明図である。第3の表示例(「第3の表示モード」ともいう)においては、表示部21に、第1~第3検知部13A~13Cの各振動センサ17A~17Cの検出結果の時系列データを示す第1の時系列チャート31’と、第1~第3検知部13A~13Cの各温度センサ16A~16Cの検出結果の時系列データを示す第2の時系列チャート32’と、ポンプ装置10に生じる振動の振幅の値を縦軸に、ポンプ装置10の温度の値を横軸にとった第3の多次元チャート37とが表示されている。この第3の多次元チャート37は、所定期間におけるポンプ装置10の複数の状態量の分布領域(E1~E3)が示される点、及び、プロットされている点が第1~第3検知部13A~13Cのうちのいずれか1つの検知部が検出した各状態量に対応している点以外は、第1の多次元チャート33と同様である。そこで、以下には第1の多次元チャート33と異なる点についてのみ説明し、第1の多次元チャート33と同様の点についてはその説明を省略する。
【0067】
第3の表示例に係る第1の時系列チャート31’及び第2の時系列チャート32’は、
図6に示すように、第1~第3検知部13A~13Cの各検出結果が表示されている。このように複数の検知部の検出結果を同時に表示させることで、検知部間の検出結果の違い、すなわち検出位置の違いに起因する検出結果の違いを把握することができる。よって、例えばポンプ装置10において温度あるいは振動の局所的な変位が生じた際に、ユーザが当該変位を把握しやすくなる。
【0068】
第3の表示例に係る第3の多次元チャート37は、第1の時系列チャート31’及び第2の時系列チャート32’に表示された複数の検知部の検出結果のうち、例えばユーザの選択操作により、一の検出部の検出結果に基づく状態量のプロットを実行する。
図6においては、第1検出部13Aの検出結果(第1の時系列チャート31’及び第2の時系列チャート32’中に実線で示したもの)を表示した場合を例示している。
【0069】
ところで、ポンプ装置10の各種の状態量は、ポンプ装置10の駆動状態、例えば運転初期、速度上昇初期、加速期、定常運転期といった駆動状態に合わせて変化するのが通常である。したがって、検知部の検出結果の範囲は、時間の経過に沿ってその分布領域が推移していくものであると想定される。そこで、第3の多次元チャート37においては、所定の時間範囲において検出部の検出結果がプロットされる領域を、第1~第3の分布領域E1~E3として多次元チャート上に表示している。これらの分布領域E1~E3は、該当する時間範囲を特定することで特定できるが、当該時間範囲の特定は、ユーザによる入力操作によって特定されてもよいし、例えばポンプ装置10の駆動状態の情報を参酌することで、表示制御部25が自動的に特定するようにしてもよい。
【0070】
第3の多次元チャート37に表示される第1の分布領域E1は、時間T1~T2の期間において、検出部の検出結果がプロットされる領域を指している。時間T1~T2の期間はポンプ装置10の運転初期に該当する期間であるため、振動及び温度の変化はわずかであることが第1の分布領域E1の大きさから理解できる。また、第2の分布領域E2は、時間T2~T3の期間において、検出部の検出結果がプロットされる領域を指している。この時間T2~T3の期間はポンプ装置10の速度上昇初期に該当する期間であり、第1の分布領域E1に比べて振幅値及び温度の変動幅が大きくなっている。そして第3の分布領域E3は、時間T3~T4の期間において、検出部の検出結果がプロットされる領域を指している。この時間T3~T4の期間はポンプ装置10の加速期に該当する期間であり、ポンプ装置10における振動及び温度上昇が最も大きくなる時期であることから、第3の分布領域E3の範囲も最も大きくなっている。
【0071】
第3の表示例のように、所定の時間範囲における検出結果の分布領域を表示すると、ポンプ装置10の駆動状態に則して正常に状態量が推移しているかどうかを容易に認識できる。
【0072】
上述した各表示例(表示モード)においては、閾値として正常値と異常値との境界Bを特定するための値を設定することについて説明したが、この閾値は段階的に設定することも可能である。例えば、正常値と異常値の境界Bを特定するための閾値に加えて、正常値ではあるものの近い将来異常が検出される可能性があるような値が検知された際に、それについて警告のみを行うべく、正常値の領域内に当該警告を行うレベルを特定するための閾値を設定してもよい。このように閾値を段階的にレベル分けして設定することにより、ポンプ装置10に生じ得る異常の予見性がさらに高くなる。
【0073】
加えて、上述したように閾値をそのレベルに応じて段階的に設定されている場合には、当該閾値のレベルに応じて、表示装置20の報知部による、ユーザに対する報知手段も適宜変更することが好ましい。具体的に例示すると、ユーザに対して警告を行うための閾値を超えた際には表示部21を黄色に点灯(あるいは点滅表示)し、ユーザに対して異常を報知するための閾値を超えた際には表示部21を橙色に点灯(あるいは点滅表示)することができる。このようにユーザに対して段階的にポンプ装置10の状態を報知することで、ユーザは容易にポンプ装置10の状態を把握することができるようになる。
【0074】
<表示方法>
次に、ポンプ装置10の各種状態量を表示するための方法について説明する。ここで説明する表示方法は、任意のコンピュータ、すなわち、少なくともプロセッサと、プロセッサを動作させるためのプログラム等を格納したメモリとを備えるコンピュータにより実施することができる。以下に示す説明においては、当該表示方法を実施するコンピュータとして、上述した表示装置20を採用している。表示装置20等の任意のコンピュータにおいて当該方法を実施するに際しては、コンピュータのプロセッサに、当該表示方法に示す動作を実行させるプログラムの形式で、あるいは当該プログラムが格納された非一時的なコンピュータ読取可能媒体の形式で、提供することができる。
【0075】
図7は、本発明の一実施の形態に係る表示方法を示すフローチャートである。本実施の形態に係る表示方法においては、
図7に示すように、先ず、ポンプ装置10の状態を示す複数の状態量を検出する第1~第3検知部13A~13Cより、ポンプ装置10の複数の状態量を取得する(ステップS101)。当該複数の状態量の取得は、表示装置20の無線通信部24と、第1~第3検知部13A~13Bの無線通信部15A~15Cとの間のデータ通信により行われる。無線通信部24において複数の状態量が取得されると、これらの複数の状態量をメモリ24に格納し、次いで、表示制御部26において、当該複数の状態量を表示するための多次元チャートを生成する(ステップS102)。ここで生成される多次元チャートは、メモリ24に格納された複数の状態量のデータから、2つ以上の状態量を選択し、それらをチャートの各軸に対応する値として設定することで生成される。なお、ここでチャートの各軸に対応する値として設定される状態量は、第1~第3検知部13A~13Cで検出された状態量をそのまま選定してもよいし、第1~第3検知部13A~13Cで検出された状態量のいくつかを組み合わせて算出されるような状態量を選定してもよい。多次元チャートが生成されると、次いで、生成された多次元チャート中に、特定の時間におけるポンプ装置10の複数の状態量をプロットする(ステップS103)。
【0076】
図8は、本発明の一実施の形態に係る表示方法における、多次元チャート内への状態量のプロット手法に関するサブルーチンの例を示したフローチャートである。ステップS103では、
図8に示すように、先ず事前に設定された、あるいはユーザにより選択された表示モードを確認する(ステップS201)。ステップS201の結果、第1の表示モードが設定あるいは選択されていると特定した場合には、現在時刻におけるポンプ装置10の状態量を示す点Pを、生成された多次元チャート内にプロットする(ステップS202)。また、ステップS201の結果、第2の表示モードが設定あるいは選択されていると特定した場合には、現在時刻におけるポンプ装置10の状態量を示す点P3をプロットすると共に、現在時刻を含む所定期間のポンプ装置10の状態量の軌跡Lを、生成された多次元チャート内に描画する(ステップS203)。さらに、ステップS201の結果、第3の表示モードが設定あるいは選択されていると特定した場合には、所定期間におけるポンプ装置10の状態量の分布領域E1~E3を多次元チャート内に描画する(ステップS204)。そして、上述したステップS202~S204のいずれかが実行されると、ステップS103に係るサブルーチンを完了し、ステップS104に移行する。
【0077】
ステップS103が完了すると、各状態量に対応する閾値の設定を行う(S104)。閾値の設定に際しては、複数の状態量のそれぞれに対応する閾値を、互いに関連付けた状態で設定することが必要である。この閾値の設定方法については、すでにいくつかの具体例を説明しているため、ここではその説明を省略する。また、この実施の形態に係る表示方法においては、閾値の設定を後述する多次元チャートの表示の前に実行する場合について説示しているが、閾値の設定のタイミングはこれに限定されない。例えば、多次元チャートを表示した後にユーザ操作により設定されてもよいし、ステップS103以前に設定されてもよい。
【0078】
そして最後に、生成された多次元チャートを、所定の表示モードに基づいてプロットされた点(P、P3)、描画された軌跡(L)あるいは分布領域(E1~E3)、及び、設定された閾値点(S1、S2)及びそれによって特定される閾値ライン(B)と共に表示部21に表示する(ステップS105)。
【0079】
以上の通り、本実施の形態に係る表示方法によれば、ポンプ装置10の複数の状態量がパラメータとして採用された多次元チャートを閾値等と共に表示できるため、視認性の高い表示手法にてポンプ装置10の各種状態量を表示することができるようになる。
【0080】
<他の実施の形態>
上述した本発明の一実施の形態に係る表示システム、表示装置及び表示方法は、当該実施の形態に示す態様に限定することを意図していない。したがって、上で述べた態様から種々の変更が可能である。上記一実施の形態に係る表示システム1においては、閾値を設定する場合には、ユーザが閾値設定アイコン34を押下し、入力操作を行うことによってのみ閾値設定部27が閾値を設定されるものについて例示しているが、閾値の設定の方法はこれに限定されない。具体的には、例えば、ユーザが閾値設定を行う前に、予め対象となる回転機装置10の機種に合わせた閾値の初期設定値を設定しておくことも可能である。以下には、本発明の他の実施の形態として、前述した閾値の初期設定値を設定可能とするための構成を備えた表示システム1Aについて説明を行う。
【0081】
図9は、本発明の他の実施の形態に係る表示システム1Aを示す概略説明図である。
図9に示す他の実施の形態に係る表示システム1Aは、表示装置20がネットワークNWを介して中央管理サーバ50に接続されている点以外は上述した一実施の形態に係る表示システム1と概ね同様の構成を有しているものである。よって、以下には表示システム1のものと共通する表示システム1Aの各種構成要素の詳細についてはその説明を省略し、表示システム1と異なる構成要素についてのみ説明を行うものとする。
【0082】
他の実施の形態に係る表示システム1Aは、
図9に示すように、ポンプ装置10、10’及び表示装置20に加えて、中央管理サーバ50を含む。この表示システム1A内のポンプ装置10、10’及び表示装置20は複数あってよく、さらにポンプ装置10、10’は、その機種が複数種類混在していてもよい。
【0083】
中央管理サーバ50は、ネットワークNWを介して複数の表示装置20と通信可能に構成されたデータサーバとすることができる。また、この中央管理サーバ50は、内部に周知の記録媒体等で構成された閾値メモリ51を備えている。閾値メモリ51には、ポンプ装置の複数の状態量それぞれに対する閾値の初期設定値が、ポンプ装置の機種別に複数個格納されている。そして、これらの閾値の初期設定値は、ネットワークNWを介して接続された表示装置20からの要求に基づいて選択され返信される。この中央管理サーバ50と通信可能な複数の表示装置20は、異なる現場(R1、R2)に配された表示装置20であってよく、且つそれぞれの表示装置20は、複数のポンプ装置10、10’の状態を選択的に表示可能なものである。
【0084】
上述した構成を含む表示システム1Aにおいて、閾値の初期設定を行う場合には、先ず、表示装置20において、表示対象となるポンプ装置10、10’の機種情報を取得する。この機種情報は、例えばユーザによる入力操作により、ポンプ装置10、10’に予め貼付された二次元バーコードやICタグを認識することにより、あるいはポンプ装置10、10’の工場出荷時等において表示装置20のメモリ24に格納しておいた機種名を抽出することにより、取得することができる。
【0085】
表示対象となるポンプ装置10、10’の機種情報を取得すると、表示装置20はこの機種情報を含むデータ取得要求を中央管理サーバ50へ送信する。データ取得要求を受信した中央管理サーバ50は、データ取得要求内の機種情報を参酌し、該当する機種の閾値の初期設定値を閾値メモリ51から抽出した後、表示装置20に当該閾値の初期設定値を返信する。そして、中央管理サーバ50から閾値の初期設定値を受信した表示装置20は、この初期設定値をメモリ24に格納すると共に、検出部13で取得した複数の状態量に基づいて作成し表示部21に表示された多次元チャート上に、当該閾値の初期設定値をプロットする。
【0086】
上述した一連の工程により、本実施の形態に係る表示システム1Aでは、表示対象となるポンプ装置の機種に対応した閾値の初期設定値が事前に取得できる。これにより、ユーザは検査対象となるポンプ装置において通常設定される閾値を、表示部21を確認するだけで知ることができる。したがって、閾値の設定が不要となるかあるいはその設定作業が大幅に簡略化でき、検査作業の効率が向上する。また、特に
図9に示す現場R1のように、検査対象となるポンプ装置10、10’の機種が複数種類混在している場合(現場R1のポンプ装置10は横軸単段ポンプであり、ポンプ10’は縦軸多段ポンプである)には、ユーザは機種ごとに最適な閾値を調べることなく初期設定値を把握でき、検査作業の効率が特に向上する。
【0087】
なお、上述した他の実施の形態に係る表示システム1Aにおいては、中央管理サーバ50内に閾値メモリ51が配された場合について説明したが、例えばこの閾値メモリ51と同様のデータを各表示装置20のメモリ24(あるいは図示しない表示制御部26内の記憶領域)内に格納し、このメモリ24を閾値メモリ51として機能させることで、同様の効果を得ることができる。また、この場合には表示装置20がネットワークNWを介した通信を行うことなく閾値の初期設定ができるため、通信環境に制約されることがない。
【0088】
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本発明の技術思想に含まれるものである。
【符号の説明】
【0089】
1、1A 表示システム
10、10’ ポンプ装置(回転機装置)
11 ポンプ本体
12 電動機
13、13A~13C 検知部
14 カップリング
15A~15C 無線通信部
16A~16C 温度センサ
17A~17C 振動センサ
20 表示装置
21 表示部
22 プロセッサ
23 無線通信部(データ取得部)
24 メモリ
25 入出力インタフェース
26 表示制御部
27 閾値設定部
31、31’ 第1の時系列チャート
32、32’ 第2の時系列チャート
33 第1の多次元チャート
34 閾値設定アイコン
35 閾値設定画面
36 第2の多次元チャート
37 第3の多次元チャート
50 中央管理サーバ
51 閾値メモリ
B 閾値ライン
E1~E3 分布領域
L 軌跡
S1、S2 閾値点