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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-23
(45)【発行日】2023-10-31
(54)【発明の名称】堆積方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/285 20060101AFI20231024BHJP
   C23C 16/02 20060101ALI20231024BHJP
   C23C 16/14 20060101ALI20231024BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20231024BHJP
【FI】
H01L21/285 C
C23C16/02
C23C16/14
H01L21/28 301R
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020537778
(86)(22)【出願日】2019-02-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-06
(86)【国際出願番号】 IB2019050974
(87)【国際公開番号】W WO2019142176
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】519237203
【氏名又は名称】エーエスエム・アイピー・ホールディング・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】チユ・ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリ・ユッシラ
(72)【発明者】
【氏名】チ・シエ
【審査官】早川 朋一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/191183(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0262828(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0019165(US,A1)
【文献】特開平06-208967(JP,A)
【文献】特開平02-025568(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0062224(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3205-21/3215
H01L 21/768
H01L 23/52
H01L 23/522-23/532
H01L 21/28-21/288
H01L 21/44-21/445
H01L 29/40-29/51
C23C 16/00-16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に材料を選択的に堆積させる方法であって、
第一表面および前記第一表面と異なる第二表面を有する基材を提供することと、
前記基材上に材料を堆積させることであって、
金属原子と、ハロゲン原子と、金属原子またはハロゲン原子ではない少なくとも一種の追加的原子とを含むバルク前駆体を供給すること、および
反応物質を前記基材に供給することによって、前記バルク前駆体および前記反応物質が、前記第二表面上よりも前記第一表面上により多くの材料を形成するように前記第二表面に対して相対的に前記第一表面と反応すること、により、堆積させることと、を含み、
前記バルク前駆体が二塩化二酸化モリブデン(VI)(MoO Cl )を含み、
前記反応物質が水素原子を含み、
前記第一表面が金属窒化物を含み、
前記第二表面が誘電体表面を含む、方法。
【請求項2】
前記バルク前駆体および前記反応物質が、前記第二表面上よりも前記第一表面上に2倍以上、好ましくは5倍以上、最も好ましくは10倍以上の材料を形成するように前記第二表面に対する相対的な前記第一表面との反応性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも一種の追加的原子がカルコゲンから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記反応物質が水素(H)を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記反応物質がシランを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第二表面が、酸化物、窒化物、またはその組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第二表面が、AlO、SiO、SiN、HfO、ZrOおよびSiONの群から選択された材料を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記堆積した材料が3000μΩ・cm未満の電気抵抗率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記バルク前駆体を供給することの前に、前記方法が前記基材に前処理前駆体を供給することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記前処理前駆体が、金属原子およびハロゲン原子を含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記前処理前駆体が、前記バルク前駆体と同じ金属原子を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記前処理前駆体が、前記バルク前駆体と同じハロゲン原子を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記前処理前駆体がエッチャントとして作用する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記前処理前駆体が、五塩化モリブデン(MoCl)を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記前処理前駆体の金属原子が、タングステン(W)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、および銅(Cu)を含む遷移金属の群から選択される、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年1月19日に出願された「DEPOSITION METHOD」と題する、米国仮特許出願第62/619579号の優先権を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は一般に、基材上に材料を堆積する方法に関する。より具体的には、本開示は、第二表面に対して相対的な基板の第一表面上への材料の選択的堆積に関する。
【背景技術】
【0003】
集積回路は、様々な材料の層が半導体基材上の所定の配置で順次堆積される精巧なプロセスによって製造されている。半導体基材上の材料の所定の配置は、多くの場合、基材の表面全体に材料を堆積させた後、基材の所定の領域から材料を除去することにより、例えばマスク層の堆積及び後続のエッチングプロセス等により、達成され得る。材料は、集積回路内の電気接続を提供するように導電性としうる。
【0004】
基材上に集積化された表面を製造することに関わる工程の数は、非常に多く、製造プロセスを非常に複雑にしている。工程の数を、選択的堆積プロセスを利用することにより低減することができ、後続の処理を必要とすることなく、又は後続の処理の必要性を低減して、材料を第二表面に対して相対的に第一表面上に選択的に堆積する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
第二表面に対して相対的に第一表面上に材料を選択的に堆積させる方法に対するニーズがあり得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
したがって、基材上に材料を選択的に堆積させる方法が提供され得、この方法は、
第一表面および第二表面を有する基材に提供することであって、第一表面が第二表面とは異なる、提供することと、
基材上に材料を堆積させることであって、
金属原子、ハロゲン原子および金属またはハロゲン原子ではない少なくとも一種の追加的原子を含むバルク前駆体を供給すること、
反応物質を基材に供給することであって、それによって、バルク前駆体および反応物質が、第二表面上よりも第一表面上により多くの材料を形成するように第二表面に対して相対的に第一表面と反応すること、により、堆積させることと、を含む。
【0007】
金属原子を含むバルク前駆体、ハロゲン原子、および金属またはハロゲンではない少なくとも一種の追加的原子を供給することにより、材料は第二表面に対して相対的に第一表面に選択的に堆積され、第二表面上よりも第一表面上により多くの材料を形成し得る。バルク前駆体および反応物質は、第二表面上よりも第一表面上に2倍以上、好ましくは5倍以上、最も好ましくは10倍以上の材料を形成するように第二表面に対して相対的な第一表面との反応性を有し得る。
【0008】
バルク前駆体は、例えば、モリブデンなどの遷移金属原子を含み得る。堆積された材料は導電性であり得る。ハロゲン原子は塩化物であり得る。少なくとも一種の追加的原子は、例えば、酸素などのカルコゲンから選択され得る。反応物質は水素を含み得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、半導体加工方法が提供される。方法は、基材のギャップ内に金属を含む材料を選択的に堆積させ、それによってギャップを充填することを含み得る。
【0010】
本明細書で開示される本発明のこれらおよび他の特徴、態様、ならびに利点は、ある特定の実施形態の図面を参照して以下に記載され、これは例示することを意図しており、本発明を限定することを意図してはいない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1aは、導電性を含む第一(底部)表面、および一実施形態による金属で充填された絶縁体を含む第二(側部)表面を有するギャップAを開示する。図1bは、図1aと同じギャップを開示するが、金属堆積プロセスがギャップ内の汚染によって妨げられ得ることを示す。
図2a】一実施形態による、層の堆積を前処理する方法を説明するフローチャートを示す。
図2b】一実施形態による、層の堆積方法を説明するフローチャートを示す。
図3図3aは、一実施形態による、充填される基材のギャップ構造の断面図を示す。図3bは、一実施形態による、充填された図3aのギャップ構造の断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
集積回路は、様々な材料の層が半導体基材上の所定の配置で順次堆積されるプロセスによって製造される。金属層は、これらの層を電気接続する半導体デバイスの導電層として必要でありうる。基材上に集積化された表面を製造することに関わる工程の数を、選択的堆積プロセスを利用することにより低減することができ、それによって、後続の処理を必要とすることなく、又は後続の処理の必要性を低減して、材料を、第二表面に対して相対的に第一表面上に選択的に堆積する。電気接続を提供するために、第二表面に対して相対的に第一表面上に導電材料を選択的に堆積させる方法に対するニーズがあり得ることが見出されてきた。
【0013】
集積回路デバイスの特徴部の製造中に作られるギャップは、金属材料が提供され得る。ギャップは、それらの深さが幅よりもはるかに大きくなるような高アスペクト比を有することができる。これらの層を通して、例えば、エッチングによってギャップが提供され得る。ギャップ内に導電材料を提供する必要性があり得る。
【0014】
図1aは、例えばタングステンまたは窒化チタンなどの導電性金属を含む第一(底部)表面、および例えば、酸化アルミニウムAlまたは二酸化ケイ素SiOなどを含む第二(側部)表面を有するギャップAを開示する。ギャップAは、バルク前駆体および反応物質を基材に供給することによって堆積された材料で充填され得る。バルク前駆体および反応物質が、第二表面上よりも第一表面上により多くの材料を形成するように第二表面に対して相対的に第一表面と反応し得る。それによって、ギャップは底部から上に向かって充填され得るが、これは、充填が底部および側部から成長する場合、側部からの成長が、底部が完全に材料で満たされる前に、底部が部分的に空のままになるように、ギャップの入口を閉鎖し得るため有利である。これにより、集積回路の性能が劣化しうる堆積した材料における隙間または継ぎ目が生じ得る。
【0015】
バルク前駆体は、金属原子、ハロゲン原子および金属またはハロゲン原子ではない少なくとも一種の追加的原子を含み得る。バルク前駆体および反応物質は、第二表面上よりも第一表面上に2倍以上、好ましくは5倍以上、最も好ましくは10倍以上の材料を形成するように、第二表面に対して相対的な第一表面との反応性を有し得る。実際に、図1aに示すように、第一表面に対して第二表面上の成長がゼロであり得る。
【0016】
金属は遷移金属原子であり得る。遷移金属原子はモリブデン(Mo)であり得る。ハロゲン原子は塩素であり得る。少なくとも一種の追加的原子は、例えば、カルコゲンから選択され得る。カルコゲンから選択される少なくとも一種の追加的原子は、酸素であり得る。バルク前駆体は五塩化モリブデン(MoCl)を含み得る。
【0017】
反応物質は水素を含み得る。反応物質は水素(H)であり得る。
【0018】
第一表面は、例えば遷移金属などの金属を含み得る。遷移金属は、チタン(Ti)、タンタル(Ta)、マンガン(Mn)、タングステン(W)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、および銅(Cu)の群から選択され得る。第一表面は、金属窒化物を含み得る。第二表面は、コバルトタングステンリン(CoWP)を含み得る。例えば、第二表面は、窒化チタン(TiN)、または窒化タンタル(TaN)を含み得る。別の方法として、金属はアルミニウム(Al)であり得る。
【0019】
第二表面は、酸化物、窒化物またはその組み合わせを含み得る。酸化物、窒化物、またはその組み合わせは、酸化アルミニウム(AlO)、酸化シリコン(SiO)、窒化ケイ素(SiN)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化ジルコニウム(ZrO)および酸窒化ケイ素(SiON)の群から選択され得る。酸化シリコンは、シリコンの熱酸化物であり得る。酸化シリコンは炭素ドープされ得る。第二表面は、誘電体表面であり得る。
【0020】
堆積した材料は、3000μΩ・cm未満の電気抵抗率を有する導電性であり得る。
【0021】
図1bは、図1aと同じギャップを開示するが、金属堆積プロセスが空気中の窒化チタン層の汚染によって妨げられ得ることを示す。汚染は、酸化シリコン層をプラズマ増強CVDプロセスで堆積させるプロセスによって生じ得る。例えば、窒化チタンは部分的に酸化され得る、または一部のシリコンはギャップ内に汚染を形成し得る。したがって、堆積された材料は、第一のギャップBを通して均一に形成され得ない、または第二のギャップCにおいて全く形成され得ない。したがって、方法は、前処理前駆体を基材に供給することを含み得る。
【0022】
前処理前駆体は、金属およびハロゲン原子を含み得る。材料の一部が堆積されたとき、この材料がバルク前駆体によって後に堆積される材料により一致するように、前処理前駆体は、バルク前駆体と同じ金属原子を含み得る。前処理前駆体はまた、バルク前駆体と異なる金属原子を含み得る。前処理前駆体中の金属は、例えばモリブデンなどの遷移金属であり得る。別の方法として、金属は、タングステン(W)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)、および銅(Cu)を含む遷移金属の群から選択され得る。
【0023】
ハロゲン化物の一部が残留したときに、この材料が後の堆積プロセスにおいて残留し得る材料と同一であるように、前処理前駆体は、バルク前駆体と同じハロゲン化物を含み得る。方法を最適化するために、前処理前駆体はまた、バルク前駆体と異なるハロゲン化物を含み得る。前処理前駆体は五塩化モリブデン(MoCl)を含み得る。
【0024】
前処理前駆体は、窒化チタン上に形成される酸化物層をエッチング除去するエッチャントとして作用し得る。バルク前駆体はその後、天然の窒化チタンとよりよく反応し得る。第一表面は、前処理前駆体で洗浄される金属、金属酸化物、金属窒化物、または窒化ケイ素を含み得る。
【0025】
前処理前駆体は、反応チャンバ内に10~2000、好ましくは30~600、より好ましくは50~200パルス、最も好ましくは約100パルスで供給され、パルスは0.1~10秒である。バルク前駆体は、反応チャンバ内に50~10000、好ましくは200~4000、より好ましくは500~2000パルス、最も好ましくは約1000パルスで供給され、パルスは0.1~10秒である。
【0026】
バルク前駆体の基材を有する反応チャンバへの流れは、50~1000sccmである。バルク前駆体の基材を有する反応チャンバへの流れは、50~50000sccmであり得る。反応チャンバ内の圧力は、0.1~100Torrであり得る。プロセス温度は300~800℃であり得る。
【0027】
基材は、実質的に水平な頂部表面および既に製造された層に垂直に延びるギャップを有し得、方法は、ギャップの第一表面上に材料を選択的に堆積させる前に、ギャップの第一および第二表面をエッチングすることを含む。
【0028】
材料を堆積させることは、バルク前駆体のパルスを基材に逐次的に供給すること、および反応物質のパルスを基材に供給することを含む原子層堆積(ALD)サイクルを繰り返すことを含み得る。バルク前駆体と前駆体のパルスの供給の間に、基材は0.5~50秒間パージされ得る。反応チャンバ内の基材にバルク前駆体を供給するには、0.5~50秒要する。
【0029】
ギャップは、実質的に水平な頂部表面を有する、すでに製造された層の中に垂直に延在し得る。垂直方向にあり金属層が提供されたギャップは、例えば、ダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(DRAM)タイプのメモリ集積回路のワード線に使用し得る。垂直方向であり金属で埋められたギャップは、例えば、論理集積回路にも使用できる。例えば、金属で埋められたギャップは、P型金属酸化物半導体(PMOS)または相補型金属酸化膜半導体(CMOS)集積回路またはソース/ドレイントレンチ接点のゲート充填として使用できる。
【0030】
ギャップはすでに製造された層の中に水平方向に配置されてもよい。再び、ギャップは、ここでは水平方向のそれらの深さが幅よりも大きくなるような高アスペクト比を有し得る。水平方向にあり金属を提供されたギャップは、例えば、3D NANDタイプのメモリ集積回路のワード線に使用し得る。ギャップは垂直方向および水平方向の組み合わせに配置してもよい。
【0031】
ギャップの表面は一種の堆積材料を含み得る。あるいは、ギャップの表面は異なる種類の堆積材料を含んでもよい。ギャップの表面は、例えば、タングステンおよび酸化シリコン層を含み得る(図1参照)。例えば、導電層がタングステン層と接触する必要があり得るとき、有利には、シリコン層に対してギャップの中のタングステン上に導電性材料を選択的に堆積し得る。
【0032】
ギャップを充填するために、バルク層を、バルクALDサイクルを順次反復することによって堆積し得る。あるいは、バルク層は、CVDプロセスによってシード層の上に堆積してもよい。CVDプロセスはパルスしてもよく、ここで第二の前駆体はパルスで基材上に供給される一方、第二の反応物質は連続的に基材に供給されるか、またはその反対でもよい。
【0033】
図2aおよび図2bは、一実施形態による、層を選択的に堆積する方法を説明するフローチャートを示し、前処理前駆体が、表面(図2a)の前処理のためにギャップに前駆体を提供され得、バルク前駆体と反応物質を用いてバルク層を前処理表面上に選択的に堆積し得る(図2b)。前処理前駆体を用いた前処理ALDサイクル1が図2aに示され、バルク層に対するバルクALDサイクル2が図2bに示され得る。前処理前駆体を用いた前処理サイクル1は、一実施形態に従って省略され得る。前処理前駆体を用いた前処理サイクル1は、一実施形態に従って薄シード層を堆積し得る。
【0034】
基材に第一および第二の表面を提供した後、第一表面は工程3における第二表面とは異なり、反応チャンバ内において前処理前駆体は、前処理パルスT1で工程5において基材に供給される金属およびハロゲン原子を含む(図1a参照)。その後、例えば、ステップ7の前処理前駆体除去期間R1の間、前処理前駆体の一部分を反応チャンバから除去(例えば、パージ)することにより、前処理前駆体の基材への追加的供給を停止することができる。金属およびハロゲン原子を含む前処理前駆体を供給することは、例えば、N回にわたり複数サイクルを繰り返し得る。前処理前駆体は、バルク層の堆積のために基材を前処理し得、および/または基材上のシード層の少なくとも一部を形成するために反応し得る。通常、シード層の堆積開始前に数(約50~100)サイクルを要するが、数サイクルはバルク層の堆積のために表面を前処理するのに十分であり得る。
【0035】
前処理前駆体は、ギャップの表面に適切なエッチング効果を有するように選択され得る。前処理サイクル1は、反応チャンバ内に、10~2000、好ましくは30~600、より好ましくは50~200、最も好ましくは約100パルスから選択されるNで、表面を前処理するためにN回繰り返され得、前処理パルスT1は0.1~10秒であり得る。
【0036】
金属およびハロゲン原子を含むバルク前駆体は、期間T2のバルクパルスによりバルクALDサイクル2の工程11で第一および第二表面を有する基材に供給され得る(図2b参照)。これは、図2aの前処理サイクル1と同じ反応チャンバで、または異なる反応チャンバで実施され得る。前処理サイクルに対する温度要件が異なる時は、バルクサイクルを前処理ALDサイクルとは異なる反応チャンバで行うことが有利なことがありうる。したがって基材搬送が必要となり得る。図2bのバルクALDサイクル2はまた、図2aの前処理サイクルなしに達成され得る。バルクALDサイクルの間、例えば、ステップ13のバルク除去期間R2の間、バルク前駆体の一部分を反応チャンバから例えパージなどによって除去することにより、バルク前駆体の基材への追加的供給を停止することができる。
【0037】
さらに、サイクルは、期間T3の間、反応物質パルスで基材に反応物質を供給すること15を含み得る。バルク前駆体および反応物質の一部は反応して、第二表面上よりも第一表面上により多くの材料を形成するように第二表面に対して相対的に第一表面上に選択的に少なくとも一部のバルク層を形成し得る。例えば、バルク前駆体および反応物質は、第二表面上よりも第一表面上に2倍以上、好ましくは5倍以上、最も好ましくは10倍以上の材料を形成するように第二表面に対して相対的な第一表面との反応性を有し得る。例えば、ステップ17の反応物質除去期間R3の間、反応物質の一部分を反応チャンバから例えばパージなどによって除去することにより、反応物質の基材への追加的供給を停止し得る。
【0038】
バルク前駆体および反応物質は、堆積した材料に適切な電子特性を生成するように選択され得る。例えば、低い電気抵抗率を有するように選択され得る。モリブデン膜は、3000μΩ・cm未満、または1000μΩ・cm未満、または500μΩ・cm未満、または200μΩ・cm未満、または100μΩ・cm未満、または50μΩ・cm未満、または25μΩ・cm未満、または15μΩ・cmまたはさらに10μΩ・cm未満の電気抵抗率を持つことができる。
【0039】
バルク層に対するバルクALDサイクル2はM回繰り返すことができ、Mは200~2000、好ましくは400~1200、より好ましくは600~1000の間で選択され得る。バルク層は、基材の第一表面上に、1~100nm、好ましくは5~50nm、より好ましくは10~30nmの厚さを有し得る。
【0040】
前処理前駆体およびバルク前駆体は同じ金属原子を含み得る。金属は遷移金属原子であり得る。遷移金属原子はモリブデンであり得る。前処理前駆体およびバルク前駆体は同じハロゲン原子を含み得る。ハロゲン原子は塩素であり得る。同じ金属原子およびまたは同じハロゲンを有することにより、評価する必要があるのはただ一つの金属原子および/またはハロゲンとなるため、製作のツールおよびプロセスの適格条件が簡略化され得る。前処理前駆体がバルク前駆体と同じ金属原子を含む場合、それがバルク前駆体によって後で堆積される材料とより一致するため、前処理中の材料の一部の堆積には問題はない。前処理前駆体がバルク前駆体と同じハロゲン化物を含む場合、残留し得るハロゲン化物の一部は、バルク前駆体から後の堆積プロセスにおいて残留し得る材料と同一であり、プロセスの評価が簡略化され得る。前処理前駆体は五塩化モリブデン(MoCl)を含み得る。
【0041】
反応チャンバのプロセス温度は、前処理ALDサイクルの間、300~800℃、好ましくは400~700℃、より好ましくは450~550℃にて選択され得る。前処理前駆体が蒸発する容器は、40~100℃、好ましくは60~80℃、より好ましくはおよそ70℃に維持され得る。
【0042】
バルク前駆体は金属またはハロゲン原子ではない追加的原子を含み得る。追加的原子はカルコゲンであり得る。カルコゲンは、酸素、硫黄、セレンまたはテルルであり得る。バルク前駆体は二塩化二酸化モリブデン(VI)(MoOCl)を含み得る。
【0043】
反応チャンバのプロセス温度は、バルクALDサイクルの間、300~800℃、好ましくは400~700℃、より好ましくは500~650℃でありうる。第二の前駆体が蒸発する容器は、20~150℃、好ましくは30~120℃、より好ましくは40~110℃に維持されうる。
【0044】
前処理前駆体および/またはバルク前駆体を反応チャンバに供給することは、0.1~10秒、好ましくは0.5~5秒、より好ましくは0.8~2秒から選択され得る持続時間T1、T2をそれぞれ有するパルスにより達成され得る。例えば、T1は1秒であり、T2は1.3秒でもよい。前処理前駆体および/またはバルク前駆体の反応チャンバへの流量は、10~2000、50~1000、100~500、より好ましくは200~400sccmから選択され得る。反応チャンバの圧力は、0.1~100Torr、好ましくは1~50Torr、より好ましくは4~20Torrから選択され得る。
【0045】
反応物質は、例えば水素(H)などの水素原子を有し得る。反応物質パルスで反応チャンバ内に反応物質を供給することは、0.5~50、好ましくは1~10、より好ましくは2~8秒のT3を有し得る。反応物質の反応チャンバへの流量は、50~50000sccm、好ましくは100~20000sccm、より好ましくは500~10000sccmから選択され得る。
【0046】
反応物質についてシランが考慮され得る。シランの一般式はSiH2(x+2)であり、xは整数1、2、3、4…である。シラン(SiH)、ジシラン(Si)またはトリシラン(Si)は、水素原子を有する反応物質の適切な例であり得る。
【0047】
例えば、前処理前駆体、バルク前駆体、および反応物質の少なくとも一つの一部分を反応チャンバからパージするなど除去することは、0.5~50、好ましくは1~10、より好ましくは2~8秒の除去期間R1、R2、R3で行われ得る。パージすることは、前処理前駆体を基材に供給した後、バルク前駆体を供給した後、または前処理前駆体、バルク前駆体、または反応物質の少なくとも一つの一部分を反応チャンバから除去するために反応物質を供給した後、除去期間R1、R2、R3の間、使用され得る。除去は、パージガスをポンプ注入および/または供給することにより達成し得る。パージガスは窒素またはヘリウムなどの不活性ガスであり得る。
【0048】
方法は単一またはバッチウエハALD機器で使用し得る。方法は基材を反応チャンバに提供することを含み、反応チャンバ内の前処理サイクルは、反応チャンバ内の基材に前処理前駆体を供給すること、および前処理前駆体の一部分を反応チャンバからパージすることを含む。さらに方法は基材を反応チャンバに提供することを含み、反応チャンバ内のバルクALDサイクルは、バルク前駆体を反応チャンバ内の基材に供給すること、第二の前駆体の一部分を反応チャンバからパージすること、反応物質を反応チャンバ内の基材に供給すること、および反応物質の一部分を反応チャンバからパージすることを含む。
【0049】
ALDプロセスを実施するために特に設計された例示的単一ウエハ反応器が、ASM International NV(オランダ、アルメレ)からPulsar(登録商標)、Emerald(登録商標)、Dragon(登録商標)及びEagle(登録商標)の商品名で市販されている。方法は例えば、垂直炉などのバッチウエハ反応器でも実施し得る。例えば、堆積プロセスは、ASM International N.V.から市販されているA412(商標)垂直炉でも実施できる。炉は、300mmの直径を有する150個の半導体基材、またはウエハの量を収容できるプロセスチャンバを有してもよい。
【0050】
ウエハ反応器はコントローラおよび反応器を制御し得るメモリを持つことができる。本開示の実施形態に従って、メモリは、コントローラで実行する時、前駆体および反応物質を反応チャンバに供給するようなプログラムでプログラムすることができる。
【0051】
図3aは、ギャップに沿って延在する側壁19と、一実施形態に従って充填される穴20を有する構造18の断面を示す。示されるように、ギャップは、基材上の既に製造された層中に垂直に延在し得る。既に製造された層は、例えば、酸化シリコンSiO、酸化アルミニウムAl3、窒化チタンTiNおよびタングステンWを含み得る。
【0052】
間隙は、垂直および/または水平の深さが幅よりもはるかに大きくなるような高アスペクト比を持つことができる。間隙のアスペクト比(間隙の深さ/間隙の幅)は、約2を超える、約5を超える、約10を超える、約20を超える、約50を超える、約75を超えることができ、一部の場合は、約100を超える、または約150を超える、またはさらに約200を超えることができる。
【0053】
ギャップに対してアスペクト比を決定することは困難なこともあり得るが、この文脈では、アスペクト比は、ウエハまたはウエハの一部の総表面積のウエハまたはウエハの一部の平面表面積に対する比率である表面増強効果比で置き換え得ることが指摘され得る。ギャップの表面増強効果比(ギャップの表面/ウエハの表面)は、約2を超える、約5を超える、約10を超える、約20を超える、約50を超える、約75を超えることができ、一部の場合は、約100を超える、または約150を超える、またはさらに約200を超えることができる。
【0054】
図3aの構造は、ギャップの側壁19の表面を小さな程度に除去するために、ギャップからアクセス可能なタングステンWの異なる層を作るため、エッチングによって作製される。エッチバック中、異なる層であるタングステンWおよび酸化アルミニウムAlは異なるようにエッチングされるが、これによりタングステンWが必要以上にエッチングされて、穴20が作られる。エッチング後の穴20の表面は、例えば、導電性であり、タングステンWおよび窒化タングステンTiNを含む第一表面、ならびに窒化タングステンTiNを含む第一表面、および電気絶縁性であり、酸化アルミニウムAlおよび酸化シリコンSiOを含む第二表面など、異なる種の堆積された層を含み得る。
【0055】
選択的金属25を、酸化シリコンおよびAlを含む第二表面に対して相対的に、タングステンWを含む第一表面上に堆積させ得る。選択的金属25は、図2bに図示する通り、一実施形態に従って堆積サイクルを逐次的に繰り返すことによる層を堆積することによってギャップの表面19上に堆積され得る。図2aに図示した前処理前駆体を用いた前処理サイクルが適用され得る。バルク層は、実施形態によるバルク前駆体を用いて、ALDサイクルを逐次的に繰り返すことによって堆積され得る。使用された方法の詳細を図2aおよび2b、ならびに関連説明に示す。
【0056】
金属25は、3000μΩ・cm未満、または1000μΩ・cm未満、または500μΩ・cm未満、または200μΩ・cm未満、または100μΩ・cm未満、または50μΩ・cm未満、または25μΩ・cm未満、または15μΩ・cmまたはさらに10μΩ・cm未満の電気抵抗率を有するモリブデンを含み得る。いくつかの実施形態では、Moを含む堆積層25は、約50%より大きい、約80%より大きい、約90%より大きい、約95%より大きい、約98%より大きい、約99%より大きいステップカバレッジを有し得る。
【0057】
方法は原子層堆積装置で実施され得る。例えば、堆積プロセスはEMERALD(登録商標)XP ALD装置で実施し得る。
【0058】
方法は空間原子層堆積装置にも使用し得る。空間ALDでは、前駆体および反応物質は異なる物理的セクションに連続的に供給され、基材はセクション間を移動する。基材の存在下、半反応が起こり得る少なくとも二つのセクションを提供し得る。このような半反応セクションに基材が存在する場合、第一または第二の前駆体から単層を形成することができる。次に、基材を第二の半反応ゾーンに移動し、そこで第一または第二の反応物質と共にALDサイクルを完了して一つのALD単層を形成する。あるいは、基材の位置を固定し、ガス供給を移動する、またはその二つの何らかの組み合わせが可能である。より厚い膜を得るために、この順序を反復してもよい。
【0059】
空間ALD装置の実施形態によると、前処理方法は、
各セクションが隣接セクションからガスカーテンで分離されている複数のセクションを備える反応チャンバに基材を配置することと、
前処理前駆体を、反応チャンバの第一のセクションの基材に供給することと、
基材表面を、反応チャンバの第二のセクションへとガスカーテンを通して反応チャンバに対して側方に移動することと、
第一の反応物質を、反応チャンバの第二のセクションの基材に供給することと、
基材表面を、ガスカーテンを通して反応チャンバに対して側方に移動することと、
反応チャンバに対して基材表面を側方移動することを含む、前処理前駆体および反応物質の供給を反復することと、を含む。
【0060】
バルク層を形成するためには、方法はさらに、
各セクションが隣接セクションからガスカーテンで分離されている複数のセクションを備える反応チャンバに基材を配置することと、
バルク前駆体を、反応チャンバの第一のセクションの基材に供給することと、
基材表面を、反応チャンバの第二のセクションへとガスカーテンを通して反応チャンバに対して側方に移動することと、
第二の反応物質を、反応チャンバの第二のセクションの基材に供給して、バルク層を形成することと、
基材表面を、ガスカーテンを通して反応チャンバに対して側方に移動することと、
反応チャンバに対して基材表面を側方移動することを含む、バルク前駆体および反応物質の供給を反復して、バルク層を形成することと、を含む。
【0061】
CVDプロセスを実施するために特に設計された例示的単一ウエハ反応器が、ASM International NV(オランダ、アルメレ)からDragon(登録商標)の商品名で市販されている。方法は例えば、垂直炉などのバッチウエハ反応器でも実施し得る。例えば、堆積プロセスは、ASM International N.V.から市販されているA400(商標)、またはA412(商標)垂直炉でも実施できる。炉は、100個以上の半導体基材、またはウエハの量を収容できるプロセスチャンバを有し得る。
【0062】
追加的実施形態では、バルク層は、約40at.%未満、約30at.%未満、約20at.%未満、約10at.%未満、約5at.%未満、またはさらに約2at.%の酸素を含み得る。さらなる実施形態では、バルク層は、約30原子パーセント未満、約20原子パーセント未満、約10原子パーセント未満、約5原子パーセント未満、または約2原子パーセント、またはさらに約1原子パーセント未満の水素を含み得る。いくつかの実施形態では、バルク層は、約10原子パーセント、または約5原子パーセント未満、約1原子パーセント未満、またはさらに約0.5原子パーセント未満のハロゲン化物または塩化物を含み得る。またさらなる実施形態では、バルク層は、約10at.%未満、または約5at.%未満、または約2at.%未満、または約1at.%未満、またはさらに約0.5at.%未満の炭素を含み得る。本明細書で概要を述べる実施形態では、元素の原子百分率(at.%)濃度は、ラザフォード後方散乱(RBS)を利用して決定され得る。
【0063】
本開示のいくつかの実施形態では、半導体デバイス構造などの半導体デバイス構造の形成には、モリブデン膜を含むゲート電極構造を形成することを含むことができ、ゲート電極構造は、約4.9eVより大きい、または約5.0eVより大きい、または約5.1eVより大きい、または約5.2eVより大きい、または約5.3eVより大きい、またはさらに約5.4eVより大きい有効仕事関数を有する。いくつかの実施形態では、上述の有効仕事関数値は、約100オングストローム未満、または50オングストローム未満、または約40オングストローム未満、またはさらに30オングストローム未満の厚さを持つモリブデン膜を含む電極構造に対して示され得る。
【0064】
当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、上述のプロセスおよび構造に対して様々な省略、追加および修正を行うことができることを理解するであろう。実施形態の特定の特徴および態様のさまざまな組み合わせまたは部分組み合わせを作ることができ、それでもなお記述の範囲内となることが企図されている。開示された実施形態のさまざまな特徴および態様は、互いに任意の順番に組み合わせる、または置き換えることができる。このような修正および変更のすべては、添付の特許請求の範囲により規定されるように、本発明の範囲内に入ることが意図されている。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b